JP2011033545A - 等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】等電点電気泳動用ゲルに対して、検体を膨潤用緩衝液で溶解してなる膨潤用検体溶液を適用した後、前記等電点電気泳動用ゲルの長手方向の側端部から油性成分を流し込む等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法。
【選択図】図1
Description
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、等電点電気泳動用ゲルに対して、検体を膨潤用緩衝液で溶解してなる膨潤用検体溶液を適用した後、前記等電点電気泳動用ゲルの長手方向の側端部から油性成分を流し込む、等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法である。
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明において、等電点電気泳動用ゲルの長手方向の両側の側端部から同時に油性成分を流し込む、等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法である。
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明において、油性成分がシリコンオイルである、等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法である。
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明において、等電点電気泳動用ゲルが2次元電気泳動に用いるものである、等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法である。
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明において、検体が生物細胞の抽出物であって、該抽出物は酸沈殿、エタノール沈殿、アセトン沈殿又はそれらの組み合わせによる沈殿処理を受けたものである、等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法である。
少量の検体を効率的にゲルに取り込むために、検体を膨潤用緩衝液で溶解して膨潤用検体溶液を作成し、この膨潤用検体溶液を等電点電気泳動用ゲルに適用する。そして、ゲルの長手方向の側端部から油性成分を流し込むと、油性成分はゲルの側端部から中央部に向かって広がりゲルを覆う。油性成分がゲルを覆った状態でしばらく放置すると、検体は効率的にゲルに取り込まれる。
第2発明においては、油性成分がゲルの両側の側端部から中央部に向かって同時に広がって行くので、検体のゲルへの染み込みに要する時間が一層短縮され、かつ、検出できる蛋白質等のゲルからの脱落という不具合も一層有効に防止される。
油性成分としては、上記第1発明又は第2発明の効果をより良好に確保できるという点で、特にシリコンオイルが好ましい。
第1発明〜第3発明に係る等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法は、2次元電気泳動における1次元目の電気泳動に用いる等電点電気泳動用ゲルに対しても、好ましく適用することができる。
第1発明〜第4発明において、電気泳動に供する検体としては、例えば生物細胞の抽出物、特に動物細胞の抽出物、とりわけヒト細胞の抽出物を好ましく例示することができる。これらの抽出物は、分離・精製の対象とならない粗雑物を含んでおり、これらは機器への負荷を軽減し、また、ゲル中のスポットの詰まりを抑制するために、できるだけ除去しておくことが好ましい。
本発明に係る等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法は、等電点電気泳動に供する細胞抽出物等の検体を膨潤用の緩衝液(Buffer)で溶解して膨潤用検体溶液を調製し、乾燥固化した等電点電気泳動用ゲルに対して前記の膨潤用検体溶液を適用してゲルを膨潤させる際に、等電点電気泳動用ゲルの長手方向の側端部から油性成分を流し込むという方法である。特に好ましくは、油性成分を等電点電気泳動用ゲルの長手方向の両側の側端部から同時に流し込む。
本発明において用いられる等電点電気泳動用ゲルは、単独に等電点電気泳動を行うためのゲルであっても良いし、2次元電気泳動における1次元目の等電点電気泳動に用いるゲルであっても良い。
本発明の等電点電気泳動方法において、泳動に用いられる機器は特に限定されない。しかし、小型装置・高分解能・高スループットを実現するためには、ゲル長5〜10cmのゲルの使用に合致した電気泳動用機器が好ましい。
等電点電気泳動は、2次元電気泳動における1次元目の電気泳動として行うこともできる。この場合、2次元目の電気泳動は、必ずしも限定されないがSDS−PAGEであることが好ましい。1次元目の等電点電気泳動が小型装置で行われ、高分解能を有し、高スループットを実現している場合、2次元目の電気泳動も装置を小型化でき、高分解能、高スループットを実現できる。よって、本発明は単独に行う等電点電気泳動のみならず、2次元電気泳動における1次元目の電気泳動にも適用できる。2次元電気泳動を行う場合、等電点電気泳動に続いて、好ましくはSDS−PAGEが行われるので、以下、2次元目のSDS−PAGEについて説明する。
1次元目電気泳動の完了後、その1次元目電気泳動ゲルを2次元目電気泳動用ゲル上へ設置するプロセスでは、接着用(封入用)アガロースとしてゲル化温度が35〜40℃である高融点アガロースを用い、かつ、この接着用アガロースを予め2次元目電気泳動用ゲル上へ流し込んだ後に前記1次元目電気泳動ゲルを設置することが好ましい。
1次元目電気泳動用ゲルのゲル長が短く設定されている場合には、2次元目として行うSDS−PAGEでは、その電気泳動用ゲルにおける泳動方向基端部のゲル濃度が3〜6%程度の低濃度であることが好ましい。ゲル濃度とは、直接的には当該ゲルの重合反応時のモノマー濃度を意味するが、重合反応時のモノマー濃度が高い程ゲルの網目構造は密になるので、実質的にはゲルの網目構造の密度を意味する。
等電点電気泳動に供される検体は特に限定されないが、動物、植物、微生物由来の抽出物や、化学的又は生化学的に合成された化合物、蛋白質、核酸等を含む種々の検体を適用できる。検体としては、生物細胞、特に動物細胞、とりわけヒト細胞の抽出物であることが好ましい
等電点電気泳動においては、検体中の蛋白質等の分離対象物質が有する等電点を利用して分離を行う。正に荷電した分離対象物質は陰極側に移動し、他方、負に荷電した分離対象物質は陽極側に移動する。そして、等電点(pI)と等しいpHのゲルの位置で分離対象物質の正味の電荷がゼロとなり、泳動を止める。よって泳動開始後は荷電状態の化合物が移動するので、電流が流れることとなる。
(蛋白質の抽出)
ヒトケラチノサイトからなる再構成3次元培養皮膚(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製の商品名LabCyte EPI-MODEL 12)の培養物1枚(約1cm2)を、蛋白質抽出液であるmammalian cell lysis kit;MCL1(SIGMA−ALDRICH社製)500μlに浸漬し、4℃で2時間、voltexを使用して振とう破砕した。この振とう破砕の後、蛋白質抽出液を回収した。上記のmammalian cell lysis kit;MCL1の組成は下記の通りである。
50mM Tris−HCl pH7.5
1mM EDTA
250mM NaCl
0.1%(w/v) SDS
0.5%(w/v) Deoxycholic acid sodium salt
1%(v/v) Igepal CA-630(SIGMA−ALDRICH社製の界面活性剤(Octylphenoxy)polyethoxyethanol)
適量のProtease Inhibitor
その後、2D-CleanUPキット〔GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社(以下、GE社と省略する)製〕を使用して2回の沈殿操作を行った。第1回目の沈殿操作は、回収した上記蛋白質抽出液にTCAを加えて沈殿を行い、当該操作で生じた沈殿(TCA沈殿)を回収した。第2回目の沈殿操作は、回収した前記TCA沈殿にアセトンを加えて沈殿を行い、当該操作で得られた沈殿(検体)を回収した。回収した当該検体は全量500μgであった。
得られた検体の一部30μgを、1次元目等電点電気泳動用ゲルの膨潤用緩衝液であるDeStreak Rehydration Solution(GE社製)130μlに溶解し、1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)とした。DeStreak Rehydration Solutionの組成は以下の通りである。
7M Thiourea
2M Urea
4%(w/v) CHAPS:
3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate
0.5%(v/v) IPGbuffer;GE社製
適量のDeStreakReagent;GE社製
適量のBPB(ブロモフェノールブルー)
(1次元目等電点電気泳動用ゲルの調製)
本実施例で用いる1次元目の等電点電気泳動用ゲル(ポリアクリルアミドゲル)を調製した。このゲルは長さが7cm、径が約0.3cmの棒状ゲルであり、T=4%、C=3%であって、次のpH勾配上の特徴を備えている。
pHの範囲:3〜10
pH3〜5のゲル長:1.7cm
pH5〜7のゲル長:3.6cm
pH7〜10のゲル長:1.7cm
(1次元目等電点電気泳動用ゲルへの検体の浸透)
前記の図1に示す実施形態の要領に従って、1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)130μlに浸漬した後、当該ゲルの長手方向の両側の側端部から同時に、ピペットを用いてシリコンオイルを流し込んだ。流し込んだシリコンオイルはゲルの内側に向かって広がった。シリコンオイルがゲルを覆った状態で、一晩、室温にて検体溶液をゲルに浸透させた。その後、シリコンオイルは廃棄した。
本実施例においては、電気泳動機器としてGE社製のIPGphor と Cup Loading Manifold Light Kitを使用した。
上記の1次元目の等電点電気泳動を行った後、等電点電気泳動機器からゲルを取り外し、還元剤を含む平衡化緩衝液に当該ゲルを浸漬して、15分・室温にて振とうした。上記還元剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M Urea
30%(v/v) Glycerol
2%(w/v) SDS
1%(w/v) DTT
次に、上記還元剤を含む平衡化緩衝液を除き、ゲルをアルキル化剤を含む平衡化緩衝液に浸漬して、15分・室温にて振とうし、SDS平衡化したゲルを得た。上記アルキル化剤を含む平衡化緩衝液の組成は以下の通りである。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
6M Urea
30%(v/v) Glycerol
2%(w/v) SDS
2.5%(w/v) Iodoacetamide
(2次元目のSDS−PAGE)
本実施例においては、電気泳動機器としてInvitrogen社製のXCell SureLock Mini-Cellを使用した。2次元目泳動用ゲルはInvitrogen社製NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gelsを使用した。また、以下の組成の泳動用緩衝液を調製し、使用した。
50mM MOPS
50mM Tris base
0.1%(w/v) SDS
1mM EDTA
(2次元目のSDS−PAGE)
又、本実施例においては泳動用緩衝液に0.5%(w/v)のアガロースS(ニッポンジーン社製:融解温度≦90℃、ゲル化温度37℃〜39℃のいわゆる高融点アガロース)と適量のBPB(ブロモフェノールブルー)を溶解させた接着用アガロース溶液を使用した。
SyproRuby(Invitrogen社製)を用いてゲルの蛍光染色を行った。
上記一連の処理を施した2次元目泳動用ゲルをTyphoon9400(GE社製)を使用した蛍光イメージのスキャンに供した。2次元電気泳動の結果を図2(a)に示す。図2(a)の左端にマーカーの分子量(KDa)を示す。
第2実施例では、2D−DIGEを行った。第2実施例においては、第1実施例に記載した手順の内、「(検体溶液の調製)」の項の手順を下記「(2D−DIGEにおける検体溶液の調製)」の項の手順に変更し、又、「(ゲルの蛍光染色)」のプロセスを省略した以外は、第1実施例と同様の手順の操作を行った。
得られた検体の全量を下記の組成の溶液100μlに溶解した。
30mM Tris−HCl(pH8.5)
2M ThioUrea
7M Urea
4%(w/v) CHAPS
溶解したサンプル20μgに対しCydye(GE社製)160pmolを添加し、その溶液の入った容器を氷上で30分間静置した。その後10mMリジン水溶液を0.5μl添加して更に10分間、容器を氷上で静置した。このような処理を行った後、溶液を等電点電気泳動に適した量である130μlまでDeStreak Rehydration Solutionでメスアップした。メスアップ後充分に攪拌し、氷上で10分以上静置して、1次元目の等電点電気泳動用の検体溶液とした。
本比較例では、第1実施例における「(1次元目等電点電気泳動用ゲルへの検体の浸透)」の項の手順を以下のように変更して行った点以外は、検体の調製からゲルの蛍光染色及び解析に至る全てのステップを第1実施例と全く同様に行った。
1次元目等電点電気泳動用の検体溶液(膨潤用検体溶液)130μlを1次元目等電点電気泳動用ゲルに膨潤させた。次いでピペットを用いて当該ゲルの表面にシリコンオイルを流し込んだ。流し込んだシリコンオイルはゲルの表面から広がった。シリコンオイルがゲルを覆った状態で、一晩、室温にて検体溶液をゲルに浸透させた。
(ゲルに染み込まなかった検体溶液量)
上記の第1実施例と比較例について、検体溶液で膨潤させた1次元目等電点電気泳動用ゲルにシリコンオイルを適用した後、1時間、4時間及び8時間経過後に前記図1に示す容器2からゲル1を取り除き、容器2に残った検体溶液(着色液である)を透明カップに回収して、その回収量を対比した。
上記の第1実施例と比較例について、検体溶液による膨潤処理とシリコンオイルの適用処理後に一晩経過させた1次元目等電点電気泳動用ゲルを300Vで1.0時間の電気泳動にかけた時点での結果を図4に示す。図4(a)が第1実施例の結果、図4(b)が比較例の結果である。これらの図において、縦向きの短い縞模様はゲルのバーコード(識別情報)を表す。
2 容器
3 注液具
4 膨潤用検体溶液
5 注液具
6 油性成分
Claims (5)
- 等電点電気泳動用ゲルに対して、検体を膨潤用緩衝液で溶解してなる膨潤用検体溶液を適用した後、前記等電点電気泳動用ゲルの長手方向の側端部から油性成分を流し込むことを特徴とする等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法。
- 前記等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法において、等電点電気泳動用ゲルの長手方向の両側の側端部から同時に油性成分を流し込むことを特徴とする請求項1に記載の等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法。
- 前記等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法において、油性成分がシリコンオイルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法。
- 前記等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法において、等電点電気泳動用ゲルが2次元電気泳動に用いるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法。
- 前記等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法において、検体が生物細胞の抽出物であって、該抽出物は酸沈殿、エタノール沈殿、アセトン沈殿又はそれらの組み合わせによる沈殿処理を受けたものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の等電点電気泳動用膨潤ゲルの作成方法。
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