JP2008292492A - 電気泳動分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】巨大分子の溶解度およびフォーカシングにかかわる改良が、チオール含有還元剤を含有する類似の等電点電気泳動媒質中における同一巨大分子の等電点電気泳動に比較して増強するものを提供する。
【解決手段】等電点電気泳動による巨大分子の改良された分離方法に関し、この方法は、チオールを実質的に含有しない還元剤、好ましくは三価リン化合物、さらに好ましくはトリブチルホスフィンを含有する等電点電気泳動媒質中で、巨大分子を電気泳動に付すことを包含する。巨大分子の溶解度およびフォーカシングにかかわる改良が、チオール含有還元剤を含有する類似の等電点電気泳動媒質中における同一巨大分子の等電点電気泳動に比較して増強される。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゲル電気泳動の分野に関し、特に二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動用の改良された分離方法およびゲルに関する。
二次元(two−dimensional)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)は、70年代初めに、第一次元(first dimension)における等電点電気泳動(IEF)と第二次元におけるドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)の組合わせ方法が公開されて以来、広く使用されてきた。2D−PAGEは、高分割性分離を提供するが、慣用の担体両性電解質IEF(CA−IEF)を用いては、分離用(preparative)タンパク質装填の達成は困難である。担体両性電解質が発現したpH勾配はゲルに固定されず、その結果として、この勾配は、崩壊傾向を有する。CA−IEFが付随する主要問題は、勾配の流動(ドリフト)および低緩衝力にあり、これは貧弱な再現性および小さいタンパク質収容能力を導く。CA−IEFでは、pH勾配の流動はしばしば、試料中の全部のタンパク質が、位置をフォーカシング(focusing)する定常状態に到達する以前に、当該勾配を崩壊させる。固定化されたpH勾配(IPG)を導入することによって、CA−IEFが付随する問題は解消され、2D−PAGEを、エドマン(Edman)配列決定、アミノ酸分析およびマススペクトロメトリー(質量分析)などの分析のためのタンパク質の分離精製方法として選択される方法にした[1,2]。
IPGから第二次元ゲルへのタンパク質の貧弱な移動が報告されており[3]、最近、IPGを用いた2D−PAGEによってタンパク質を分離した場合、この損失が報告された[4]。これらの損失は、その等電点または等電点付近におけるIPGマトリックスへのタンパク質吸着に反映し、また担体両性電解質を用いるIEFが第一次元用に用いられた場合、これらの損失は見出されなかった[4]。IPGマトリックスへのタンパク質吸着は多分、アクリルアミド緩衝性基との疎水性相互反応によるものである。最近の報告は、IPGにおけるタンパク質の縞形成(streaking)は、疎水性pK7.0アクリルアミド緩衝剤のレベルに直接に関連することを示した[5]。
タンパク質とアクリルアミド緩衝剤との間の相互反応は、タンパク質をゼロの正味の電荷を有するpHにする、すなわちタンパク質を定常状態に到達させるのに要する延長されたフォーカシング期間中に生起することがある。さらに、CA−IEFに比較して、IPGで見出されるタンパク質の不溶性は、IPGにおける最適のフォーカシングに要求される非常に長い操作期間中のジチオスレイトール(DTT)の消失により部分的に引き起こされることがある。DTT上のチオール基は、IEF期間中にイオン化され、これが電極へのDTTの輸送を生じさせる。IEF期間中にDTT濃度が低下すると、或る種のタンパク質は、その内部鎖ジスルフィド結合の再形成の結果として、ほとんど不溶になる。IPGにおけるIEF後、フォーカシングされたタンパク質の溶解度を増加させ、また第二次元ゲルへの移動を促進させるために、IPGストリップは通常、1または2%DTT、6M尿素、2%SDS、20%グリセロールおよびトリス(Tris)緩衝剤(pH6.8)の溶液中で10〜15分間平衡化する[3]。SDSと組合わされた尿素のカオトロピック作用は、タンパク質とIPGマトリックスとの間の疎水性相互反応を破壊する。IPGにおいて、再−架橋することができるタンパク質の再−可溶化には、高濃度のDTTが要求される。
正しいSDS結合を得るためには、タンパク質が、折り畳まれず、また全部のスルフィド結合が破壊されることが必須である。第二の平衡化工程を行い、そしてDTTの代わりに、遊離のチオール基をアルキル化し、これにより過剰のDTTを分離する、2〜4%のヨウドアセトアミドが使用される。DTTなどの遊離チオールが第二次元ゲル中に存在すると、タンパク質の垂直方向の縞を生じ、銀染色による濃色の背景に関与することから、過剰の遊離チオールは分離することが望ましい。
DTTの平衡化に加えて、タンパク質の溶解度および第二次元への移動を増加させるための、もう一つの方法は、IPGでIEFに使用される変性用溶液中にチオ尿素を配合する方法である。IPGにおいて、尿素、チオ尿素および界面活性剤、例えばCHAPSまたはSB3−10の混合物を使用すると、凝集傾向を有する試料とのタンパク質溶解度の増加が得られることが見出された[4]。しかしながら、高濃度のカオトロピック物質、例えばチオ尿素は、SDSのタンパク質に対する結合を抑制する。従って、チオ尿素は、平衡化に使用することはできず、またIPGで使用されるチオ尿素の最高濃度は、2Mであった。さらに高濃度のチオ尿素が、垂直方向の縞を生じさせるのは、多分、チオ尿素が、平衡化期間中にIPGを完全に拡散させないからである[4]。
チオ尿素の使用またはDTTの平衡化によっては解消されない、現在の2D−PAGE法が伴うもう一つの問題は、ヨウドアセトアミドとアクリルアミドとの間のアルキル化から生じるシステインの混合付加物の形成にある。平衡化操作中に、どの程度のシステインがヨウドアセトアミドによりアルキル化されるかは、不明である。Gorg等は[3]、平衡化条件下に、タンパク質をアルキル化させることなく、ヨウドアセトアミドが過剰のチオール還元剤と反応することを報告した。しかしながら、タンパク質変性を回避するために、Bjellqvist等は[6]、2Dゲルからのタンパク質を抗体産生に使用しようとする場合、平衡化工程からヨウドアセトアミドを排除した。ヨウドアセトアミドによる完全タンパク質のアルキル化が平衡化中に生じないことは、システインのアクリルアミド付加物が通常、エドマン配列決定およびアミノ酸分析中に見出されることから明白である(未公開の発見)。アクリルアミドモノマーによるタンパク質のアルキル化は、第二次元ゲルの一夜にわたる重合の後でさえも、このゲルの操作期間中に生じる。
この混合付加物の形成は、分離後(post−sepalation)分析中に多くの問題を提供する。タンパク質確認用の多くの分離後方策は、完全タンパク質またはタンパク質断片のマススペクトロメトリー(MS)に基づいており、この場合、どのような付加物が形成されうるかを知ることは有利である。得られるペプチドマップを単純にするためには、酵素による消化に先立ち、還元およびアルキル化によるジスルフィド結合形成をブロックすることが重要である。Moritz等は[7]、DTTおよび4−ビニルピリジンを用いる還元およびアルキル化方法を報告した。この方法は、コマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue)染色後に、1Dまたは2Dゲル全体に対して行われる。還元され、アルキル化されたタンパク質のその場でのトリプシン開裂(tryptic cleavage)を行い、次いでペプチドを回収し、次いでオンラインエレクトロスプレータンデム(electrospray tandem)MSとともに逆相高速液体クロマトグラフイ[RP−HPLC]により分析する。システイン含有ペプチドは、RP−HPLC操作中に、254nmにおけるそれらの特徴的吸光により、およびエレクトロスプレータンデムMS操作中に、106Daのピリジルエチル断片イオンの発現により、同定されている[7]。2D電気泳動後のシステインの4−ビニルピリジンによるアルキル化は、アクリルアミドモノマーによる完全アルキル化が、第二次元ゲル工程中には生じないことを示す。完全アルキル化が、平衡化工程および第二次元ゲル操作中に生じた場合、2D後の4−ビニルピリジンによるアルキル化は不可能である。従って、Mortiz等による方法[7]は、若干のタンパク質、すなわちcys−ヨウドアセトアミド、cys−アクリルアミドおよびcys−ビニルピリジン中のシステインの3種の付加物の形成をもたらすものと見做される。1種以上のシステインの付加物が形成されたタンパク質は、マススペクトロメトリーを用いる分析が困難である。この理由は、各システインが、それに付加した質量と同一の質量を有するものと見做すことができないことにある。
マススペクトロメトリーに加えて、アミノ酸組成マッピングおよびエドマン(Edman)“Tag”配列決定を使用して、迅速にスクリーニングすることができ、また2D−PAGEにより分離されたタンパク質を同定することができる[8]。エドマン配列決定において、非アルキル化システイン残基は回収されず、また配列決定において、この残基は、これらの位置を指定することはできない。これに反して、アクリルアミドアルキル化システインのPTH誘導体は、配列決定操作中に回収され、同定される。同様に、アミノ酸分析において、システインのアルキルアミド付加物は、他のアミノ酸から分離することができ、次いで定量することができる。これは、アミノ酸組成マッピングの目的に使用することができるアミノ酸の数を17にまで増加させる。
要約して、2D−PAGEにおけるIPGの使用は、タンパク質の分離精製用の強力な技術であるが、現在の方法には、固有の多くの問題がある。分離されたタンパク質が、第一次元分離でIPGマトリックスに対して吸着傾向を有し、また第二次元ゲルに適当に輸送される結果を得るためには、高濃度のDTTが必要である。さらに、第二次元ゲルへの輸送に先立つタンパク質の可溶化に現在使用されている平衡化方法は、システインの混合付加物の形成を生じさせ、これは分離後分析を複雑にする。
電気泳動に使用されている現在の方法が付随する少なくとも若干の問題を解消するために、本発明者は、電気泳動によりペプチド、タンパク質および糖タンパク質を包含する巨大分子を分離するための改良された方法を開発した。
第一の態様において、本発明は、等電点電気泳動による巨大分子の分離方法からなり、この方法は、チオールを実質的に含有しない還元剤を含有する等電点電気泳動媒質中で、巨大分子を電気泳動に付すことを包含する。
本発明の第一の態様に従う方法は、巨大分子の分離において、チオール−還元剤を使用する等電点電気泳動の標準技術に優る改良をもたらす。この改良は、チオール−還元剤を含有する類似の等電点電気泳動媒質における同一巨大分子の等電点電気泳動に比較して、巨大分子の溶解度およびフォーカシングを高めるという点にある。
チオールを含有しない還元剤は、標準等電点電気泳動法に比較して、巨大分子の溶解度を増加させ、またフォーカシングを改善する。
好ましくは、このチオールを含有しない還元剤は、三価リン化合物であり、さらに好ましくは、トリブチルホスフィン(TBP)である。チオールを含有しない還元剤の濃度は、分離される巨大分子の量および種類に依存して変わる。約0.1〜200mM、好ましくは約1〜10mMの程度の濃度が適当であることが見出されたが、さらに高い濃度またはさらに低い濃度もまた使用することができることは明白である。好ましくは、ゲル等電点電気泳動用の三価リン化合物は、次の性質を有するべきである:水性溶液中で溶解することができる;定常等電点電気泳動pH値で非帯電である;およびほとんど爆発性でないか、または高度に反応性ではない。しかしながら、帯電した三価リン化合物もまた、等電点電気泳動に使用することができることは明白である。
好ましくは、ゲル電気泳動の場合、三価リン化合物は、次の性質を有するべきである:水性溶液中で溶解することができる;定常等電点電気泳動pH値で帯電する;およびほとんど爆発性でないか、または高度に反応性ではない。しかしながら、非帯電三価リン化合物もまた、ゲル電気泳動に使用することができることは明白である。
本発明に適する三価リン化合物の別の例には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニル−ジフェニル−ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジフェニル(メトキシメチル)ホスフィンオキサイド、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、およびトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンが包含される。しかしながら、別種の三価リン化合物もまた、本発明に適することができることは明白である。
本発明の第一の態様の好適具体例の一つでは、標準的等電点電気泳動技術に現在使用されているジチオスレイトール(DTT)などのチオール含有還元剤が実質的に存在しない条件下に、焦点化を行う。好適態様では、現在使用されている標準方法に、DTTの代わりに、低濃度のTBPを使用する。すなわち、100mM DTTの代わりに、約1〜10mM、好ましくは約2mMのTBPを使用する。しかしながら、或る種の分離またはフォーカシング条件下においては、IEF操作期間中、チオールを含有しない還元剤とチオール含有還元剤との両方を使用することが望ましい。
この本発明の第一の態様は、巨大分子の還元が要求される場合、いずれのIEFにも適している。特に、この方法は、IEFが2D−PAGE分離におけるPAGEまたはSDS−PAGEの第二次元に先立つ、第一次元として使用される場合に特に適している。
チオール−還元剤は、溶液として使用することができ、あるいはまた電気泳動媒質または壁に、あるいは分離される巨大分子と接触しているか、または組合わされている電気泳動分離を行う装置の表面に、結合または固定化させることができる。
第二の態様において、本発明は、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)による巨大分子の改良された分離方法からなり、この方法は、
(a)本発明の第一の態様による第一次元ゲルにおいて、等電点電気泳動により巨大分子を分離し;
(b)場合により、(a)により分離された巨大分子を含有する第一次元ゲルを、チオールを含有しない還元剤およびアルキル化剤の存在下に、全部の遊離チオールが除去され、そしてシステインとの混合付加物が実質的に形成されないように、平衡化し;次いで
(c)ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、巨大分子をさらに分離する;ことを包含する。
第一次元分離に引き続くアルキル化[任意工程(b)]の主要利点の一つは、第一次元における帯電によって、巨大分子が分離され、従って、アルキル化剤が第一次元分離に影響しない点にある。好ましくは、このアルキル化剤は、アクリルアミドまたは蛍光剤である。蛍光剤は、ハロアセチル誘導体、マレイミド化合物、ミセル状スルフヒドリル試薬、またはその混合物から選択することができる。特に好適な蛍光剤の一つは、マレイミド蛍光剤である。
このアルキル化剤の濃度は、(b)で処理される巨大分子の量および種類に依存して変わる。約0.1〜5%の程度、好ましくは約2.5%(w/v)のアクリルアミド濃度が適当であることが見出されているが、さらに高い、またはさらに低い濃度を使用することもできることは明白である。約0.01〜20mM程度、好ましくは約0.25mMの蛍光剤濃度が適当であることが見出されているが、さらに高い、またはさらに低い濃度を使用することもできることは明白である。アルキル化剤として蛍光剤を使用することによる更なる利点は、第二次元で分離するのに先立ち、巨大分子が標識付けされる点にある。これは、分離後の追加の染色を要することなく、分離された巨大分子を目で見えるようにする。
任意の平衡化工程(b)に適する別種のアルキル化剤の例には、ゲル中のアクリルアミドの代用品として使用されるモノマーが包含され、これらの例には、ビニルピリジン、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、アクリルアミド−N,N−ジエトキシエタノール、N−アクリロイル−トリス(ヒドロメチル)アミノメタン、アクリルアミド糖類、例えばN−アクリロイル(またはメタアクリロイル)−1−アミノ−デオキシ−D−グリシトールまたは対応するD−キシリトール誘導体、およびN,N−ジエチルアクリルアミドが包含される。しかしながら、別種のアルキル化剤もまた、本発明に適することができることは明白である。
任意の平衡化工程(b)に適する蛍光剤の別の例には、ハロアセチル誘導体、マレイミド化合物およびミセル状スルフヒドリル試薬が包含され、これらは供給源、例えばMolecular Probes,Inc.から容易に入手することができる。しかしながら、別種の蛍光剤もまた、本発明に適することができることは明白である。
必要に応じて、標準2D−PAGE法で現在使用されているヨウドアセトアミドが実質的に存在しない条件下に、平衡化を行うことがまた好ましい。
分離は、現在使用されている電流および計画を用いて、いずれか適当な電気泳動装置で行う。
第三の態様において、本発明は、巨大分子の電気泳動分離におけるチオールを含有しない還元剤の使用からなる。
本発明が、巨大分子の還元が望ましい全ての分離法に適することは明白である。これらの方法には、これらに制限されないものとして、SDS−PAGE、等電点電気泳動法、毛管ゾーン電気泳動法、分離用電気泳動法などが包含される。チオール−還元剤は、溶液として使用することができ、あるいはまた電気泳動媒質または壁に、あるいは分離される巨大分子と接触しているか、または組合わされている電気泳動分離を行う装置の表面に、結合または固定化させることができる。
好適なチオールを含有しない還元剤は、三価リン化合物であり、さらに好ましくはトリブチルホスフィン(TBP)である。本発明に適する三価リン化合物の別の例には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニル−ジフェニル−ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジフェニル(メトキシメチル)ホスフィンオキサイド、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、およびトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンが包含される。しかしながら、別種の三価リン化合物もまた、本発明に適することができることは明白である。
第四の態様において、本発明は、本発明による第一または第二の態様により分離される1種または2種以上の巨大分子からなる。
本発明は、タンパク質、ペプチドおよび糖タンパク質を包含する全ての巨大分子、特にバイオ分子の分離に適している。
本明細書全体をとおして、別段の意味が要求されていないかぎり、「包含する」あるいはその変形の「包含する」(単数形)または「包含」の用語は、記載されている要素または全体、あるいは要素または全体のグループを包含するものであるが、いずれか別種の要素または全体、あるいは要素または全体のグループを包含するものではないものと理解されるべきである。
本発明をさらに明白に理解するために、下記の例および図面を引用して、好適態様を説明する。
本発明の実施方法
本発明の効果を証明するために、DTTの代わりに、TBPを使用すると、IEF操作中のタンパク質の溶解度が増加された。平衡化操作を簡単にするために、現在使用されている慣用の二工程平衡化の代わりに、TBPおよびアクリルアミドを用いる任意の一工程方法を使用した。種々の理由で、還元剤として、DTTを取り換えた。DTTなどのチオール含有還元剤によるジスルフィド結合の切断は、大量の遊離チオールを用いる平衡置換法(equilibrium displacement process)により達成される。ジスルフィド結合の切断に好ましい平衡の移動には、高濃度の遊離チオールが必要であることから、アルキル化において、大量のアルキル化剤がチオール還元剤と反応する。すなわち、このことは、モル過剰のアルキル化剤を得ることを困難にすることがある。チオール還元剤に比較して、ホスフィン族の還元剤は、平衡置換よりもむしろ、化学量論的な還元を生じさせる[9]。ホスフィン還元剤の機能の主要利点は、ホスフィン化合物がチオールを含有していないことから、これらがアルキル化されることができない点にあり、これは、単純な還元およびアルキル化操作方法を導く。
材料および方法
材料
トリブチルホスフィン(97%v/v)は、Flukaから入手し、ピペリジンジアクリルアミド(PDA)、アクリルアミド、尿素、トリス(Tris)、グリシン、過硫酸アンモニウム、TEMED、3−[(3−クロルアミドプロピル)ジメチル]アンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、ジチオスレイトール(DTT)およびポリ−ビニリデンジフルオライド膜(PVDF)は、Bio−Rad(Herecules,CA)から入手した。「オンジナ」(Ondina)メディカルグレード(医療品質)パラフィン油は、Shellから入手した。エンドヌクレアーゼは、Sigmaから入手した。その他全部の化学物質は、BDHから入手した分析グレード(AnalaR grade)のものであった。イモビリン ドライストリップ(Immobiline DryStrips)およびファーマライト(Pharmalyte),pH3〜10両性電解質は、Pharmacia(Uppsala,Sweden)から入手した。
トリブチルホスファイトストック溶液
TBPは、無水イソプロパノール中の200mMストック溶液として調製した。TBP濃縮液および200mMストック溶液を、各使用後、窒素により浄化し、4℃で保存した。この処理は、ヒュームカップボード内で行わなければならず、またその他の適当な安全上の予防手段、例えば手袋および実験衣を着るべきである。濃縮されたTBPは、乾燥有機材料、例えば紙と接触すると、無毒性の煙を発生する。漏出は、湿った布で拭き取らなければならない。
等電点電気泳動試料溶液
IEF用の試料を溶解するために、2種の溶液を使用した。溶液Aは、8M尿素、4%CHAPS、100mM DTT、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5、調整されていない)であった。マウス前足の場合、10mM DTTを含有する追加の修正溶液Aを使用した。溶液Bは、8M尿素、4%CHAPS、2mM TBP、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5、調整されていない)であった。
羊毛タンパク質抽出
ロムネイ種(Romney)羊からの羊毛を準備し、Herbert等の方法[10]に従い抽出した。抽出後に、上清を脱イオン水(5回交換)で透析し、次いで凍結乾燥させた。この抽出されたタンパク質は、アルキル化されなかった。IEF用の準備のために、この凍結乾燥させた乾燥した羊毛タンパク質1mgを、溶液A中に溶解し、およびまた1mgを溶液Bに溶解した。
チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質の可溶化
CHO K1細胞(1×10細胞)を、1mlの溶液A中に溶解し、およびまた1×10細胞を、1mlの溶液B中に溶解した。DNAは、最終溶液にエンドヌクレアーゼ(150単位/ml)を添加することにより分離した。この溶液を、室温まで1時間放置し、次いでIPG再水和を開始した。
胎児マウス前足の可溶化
8対の前足(交尾後13.5日目)を、2mlの溶液A中に溶解し、およびまた8対を、2mlの溶液B中に溶解した。DNAは、最終溶液にエンドヌクレアーゼ(150単位/ml)を添加することにより分離した。この溶液を、室温まで1時間放置し、次いでIPG再水和を開始した。
等電点電気泳動
分析用および分離用ゲルのために、各18cmのイモビリン ドライストリップ(pH4〜7または3.5〜10非線型)を、19cmの長さに切断した2mlプラスティック勾配付きピペット中のタンパク質溶液500μLで再水和した。各11cm(pH4〜7)IPGを、12cmの長さに切断した2mlプラスティック製勾配付きピペット中のタンパク質溶液250μLで再水和した。再水和は、室温で24時間、進行させた。ドライストリップ キットとともに、ファーマシア マルチホール(Pharmacia Multiphor)IIを用いて、IEFを行った;動力は、コンソート(Consort)5000V電力源を用いて供給し、そしてファーマシア マルチテンプ(Pharmacia Multitemp)IIIを用いて、20℃で冷却水を供給した。11cmおよび18cmIPGを用いるIEFに使用した操作条件は、300Vで2時間、1000Vで1時間、2500Vで1時間および5000Vの最終相で、最大80,000Vhまでであった。各試料にかかわる実際の総合Vhは、各図の説明文に示されている。IEFの後、これらのストリップは、第二次元用に必要とされるまで、−80℃で保存した。
ジチオスレイトールを用いるIPGの平衡化
DTTを含有する溶液Aを使用してフォーカシングされているIPGを、慣用の方法を用いて平衡化した。IPGは、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび2%DTT、0.375Mトリス(pH8.8)中で、10分間平衡化し、次いでDTTの代わりに、2.5%ヨウドアセトアミドを使用して、全部の遊離のDTTをアルキル化する以外は、同一溶液中でさらに10分間平衡化した。この平衡化用溶液のpHは、8.8であった。これは、Gorg等の方法[1]における場合のように、第二次元ゲルがpH6.8においてゲルへの粘着性を有していないためである。
トリブチルホスフィンを用いるIPGの平衡化
TBPを含有する溶液Bを使用してフォーカシングされているIPGを、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび5mM TBP、0.375Mトリス(pH8.8)中で、20分間平衡化した。
第二次元SDS−PAGE
第二次元ゲルは、Bio−Rad(Hercules,CA)からのプロテアン(Protean)IIxiを用いて行った。ゲルは、1.5mm厚さ、8〜18%T孔勾配を有し、また2.5%CでPDAにより架橋されている。ゲルおよびアノード緩衝液は、0.375Mトリス/HCl(pH8.8)であった。カソード緩衝液は、トリスを用いてpH8.3に調整された192mMグリシン、0.1%(w/v)SDSおよび0.001%(w/v)ブロモフェノールブルー(Bromophenol Blue)であった。平衡化されたIPGストリップを、カソード緩衝液中の溶解1%(w/v)アガロースを用いて、SDS−PAGEゲルの表面上に埋め込んだ。ゲルは、ブロモフェノールブルー前面がゲルを横切るまで、4mA/ゲルの一定電流で2時間、次いで18mA/ゲルで一夜にわたり行った。
完成された分析用2−Dゲルを、アンモニア性銀染色により染色した。分離用2−Dゲルは、30%(v/v)メタノール、5%(v/v)酢酸中の0.2%(w/v)コマシーブリリアントブルーR250中で一夜かけて染色した。脱色は、30%(v/v)メタノール中で行った。
結果および評価
羊毛タンパク質の分離
IEF中のタンパク質の溶解度を増加させるTBPの能力を評価するために、羊毛タンパク質を用いて、標準DTT法を、TBP法と比較した。羊毛は2種のタンパク質、すなわち中間フィラメント状タンパク質(IFP)および中間フィラメント会合タンパク質(Intermediate Filament Associated Proteins)(IFAP)から構成されている。IFPには、2種の付属グループ、すなわちタイプIおよびタイプIIが存在し、分子生物学試験およびタンパク質化学試験は、各付属グループが、4種の構造的に相同のタンパク質を含有することを示す。IEPは、相当する試験の対象であり、グリコシル化およびホスホリル化により、翻訳後修飾されることが知られている。Herbert等は[10]、IEFにDTTを用いて、羊毛IFPの予備分離を行ったが、IFPの分割は貧弱であり、また各IFPイソフォームを分離することはできなかった。IEFにおいて、DTTの代わりに、TBPを使用することによって、分離が改善され、IFPを各スポットに分割することができる。図1は、同一条件下に分離された羊毛タンパク質150μgの銀染色された2−Dゲルを示しており、ただし図1aでは、100mM DTTを含有する溶液Aを使用する第一次元で分離されており、そして図1bでは、2mM TBPを含有する溶液Bを使用する第一次元で分離されている。図1aにおいて、IPG平衡化工程は、最初に2%DTTを使用し、二回目に2.5%ヨウドアセトアミドを使用する二工程法であり、そして図1bにおいて、IPG平衡化工程は、5mM TBPを使用する一工程法であった。IEFにDTTを使用し、そして平衡化した図1aの場合、IFPの分割は貧弱であり、特にタイプI IFPグループの分割は貧弱であった。IEFにDTTを使用し、そして平衡化した場合、IFPの分割は、5000Vで500,000Vhまで延長されたフォーカシング期間の後でさえも、IEPの分割は改善されない。IEFにTBPを使用し、そして平衡化した場合、フォーカシングが改良され、またIFPは、スポットの少なくとも4つの条線に良好に分割される(図1b)。このタンパク質は、30,000Vhで9時間のIEF操作期間の後に、定常状態に達した。これは、従来羊毛タンパク質に使用されていたほぼ100時間に優る格別の改善である。
図2は、図1と同一の羊毛タンパク質抽出物1mgのコマシーブリリアントブルーR250染色した分離用ゲルである。この画像のIEFを示す部分を切り取った。タイプI IFPは、それぞれが少なくとも3種のイソホームを含有する4本の条線に分割される。タイプII IEPの4種の遺伝子生成物は、タイプI IEPの場合に比較して、明瞭には分割されない。しかしながら、タイプII IEPは、スポットの2本の主要な条線に分割され、これらのスポットの数本のかすかに染色された条線を、タイプII IEPに密接しているゲル上に見ることができるが、これらの条線は、走査画像上には明確に現れない。本発明による分離技術を使用すると、タイプI IEPおよびタイプII IEP遺伝子生成物およびそれらの翻訳後修飾物のそれぞれの相対量を定量することができる。各遺伝子生成物およびそれらの翻訳後修飾物の分離および定量能力は、強度および色などのファイバー物性の決定におけるIFPの役割の評価にとって重要である。
チャイニーズハムスター卵巣細胞分離
図3は、同一条件下に分離された1×10CHO K1細胞の銀染色された2−Dゲルを示しており、ただし図3aでは、100mM DTTを含有する溶液Aを使用する第一次元で分離されており、そして図3bでは、2mM TBPを含有する溶液Bを使用する第一次元で分離されている。図3aにおいて、IPG平衡化工程は、最初に2%DTTを使用し、二回目に2.5%ヨウドアセトアミドを使用する二工程法であり、そして図3bにおいて、IPG平衡化工程は、5mM TBPを使用する一工程法であった。図3aに見出される水平方向の縞は、不完全なフォーカシングの結果を表わしている。これは、IEF操作中に、若干のタンパク質が不溶性になることを示している。図3bでは、水平方向の縞は消失しており、これは、IEF操作中に、タンパク質がTBPの使用によりさらに溶解性になり、また凝集傾向が低くなることを示している。この増加された溶解度は、IEF操作中、タンパク質が還元条件に維持され、内部鎖または外部鎖ジスルフィド結合が再形成されない結果であると言うことができる。スポットの或るグループ(図3aおよび3b上の矢印)は、図3bにおける相違する明白な塊の複数の条線に分割される。これに対して、図3aでは、これらはフォーカシングが貧弱であるか、または一本の条線に分割されるのみである。CHO細胞などの培養系では、増殖条件が、糖タンパク質中のオリゴ糖のマクロ異原性(macrohetrogeneity)およびミクロ異原性(microhetrogeneity)に影響することができる。研究を続けることによって、図3bに見出される複数の条線が、同一タンパク質の相違してグリコシル化された形態の結果であることができること、および或る種の糖形態が、DTTを用いるIEF操作中に、ほんの少しだけ可溶化され、正常に分割されないことが示唆された。
胎児マウス前足
多くの発表されているIEF操作方法では、IPG再水和溶液に低濃度、例えば10mM〜20mMのDTTが使用されている。本発明者は、IEF試料溶液に100mMのDTTを用いて、CHO細胞で得られた多くの縞が存在するパターンが、IPGにおける高濃度の帯電したDTTから生じる電気浸透(electroendosmosis)によるものでありうるものと考えた。セルラインに比較してさらに複雑である哺乳動物の組織を用いて、この研究を拡大することを決定した。交尾後13.5日目の胎児マウスの前足を、モデルとして使用した。図4は、同一条件下に分離された2対の前足の銀染色した2−Dゲルを示しており、ただし図4aでは、10mM DTTを含有する溶液Aを使用する第一次元で分離されており、図4bでは、100mM DTTを含有する溶液Aを使用する第一次元で分離されており、そして図4cでは、2mM TBPを含有する溶液Bを使用する第一次元で分離されている。図4aおよび4bにおいて、IPG平衡化工程は、最初に2%DTTを使用し、二回目に2.5%ヨウドアセトアミドを使用する二工程法であり、そして図4cでは、IPG平衡化工程は、5mM TBPを使用する一工程法であった。TBPを使用して達成された分離は、10mMおよび100mMのDTTを使用して達成された両方の分離に比較して、優れている。図4cは、最小の水平方向および垂直方向の縞を有し、分割されたスポットの数は、図4aおよび4bよりも多い。フォーカシングは、DTT濃度が10mMのみである図4aにおいては、明らかに悪い。このことは、DTT濃度が各試料について最適化されるべきパラメーターであることを示唆している。従来、水平方向の縞形成による問題を招くことなく、65mMのジチオエリスリトール (DTE)がイースト菌および肝臓試料の微量予備分離用のIEF再水和溶液に使用されていた。典型的還元およびアルキル化実験は、タンパク質ジスルフィドの完全還元を行うためには、ほぼ50mM濃度のチオール還元剤、例えばDTTが必要であるものと述べられている。DTTなどのチオール還元剤が平衡置換により作用されると、IEF操作中における遊離チオールの生成に対して、全体的に平衡化を推し進めるために、10mMほどの低い濃度で充分であるものとは、ほとんど見做されない。
結論的所見
チオール還元剤DTTの代わりに、トリブチルホスフィンを用いることによる、2D−PAGEにおける改良された分離が証明された。TBPの主要利点は、IEF操作中に帯電せず、従って移動しない点にある。このことは、試料タンパク質が、全IEF操作期間にわたり還元条件下に維持され、これによりタンパク質の溶解度が増加され、また最終2D−PAGEゲル上に多くのタンパク質スポットをもたらすことを意味する。大部分の場合、IEF操作期間中にTEPを使用すると、水平方向の縞形成の格別の減少が生じる。
CHO K1細胞およびマウス前足の両方で、TBPを用いて得られた改良された分割は、哺乳動物細胞および組織の2Dマップの作成にTBPを使用すると有利であることを示唆している。CHO K1細胞の2Dゲルに見出されるように(図3aおよび3b)、増加された溶解度および相違するタンパク質の糖形態の分割能力は、哺乳動物細胞および組織の複雑性を明確にするために必須である。
TBPの追加の利点は、IPG平衡化を単一工程で行うことができることにあり、これは、非帯電TBPが移動せず、また第二次元において、アートファクチュアル ポイント縞形成(artefactual point streaking)を生じさせることによるものである。さらにまた、平衡化に、アルキル化剤、例えばアクリルアミドまたは蛍光マレイミド誘導体を組み入れることができ、これにより第二次元ゲルへの輸送に先立ち、分離されたタンパク質上のシステイン残基をアルキル化することができる。
最も広く説明されている、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、多くの変更および(または)修正をなすことができることは、当業者にとって明白である。従って、上記具体例は、全ての観点で、本発明を説明するものであり、制限するものではない。
略語
IEF 等電点電気泳動
SDS−PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
2D−PAGE 二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動
CA−IEF 担体両性電解質等電点電気泳動
IPG 固定化したpH勾配
MS マススペクトロメトリー
RP−HPLC 逆相高速液体クロマトグラフイ
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
TBP トリブチルホスフィン
DTT ジチオスレイトール
IAA ヨウドアセトアミド
5IAF 5−ヨウドアセトアミド蛍光剤
CHAPS 3−[(3−クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]
−1−プロパンスルホネート
参考文献
Figure 2008292492
図1は、羊毛タンパク質の銀染色された2−Dゲルを示している。図1aは、溶液A:8M尿素、4%CHAPS、100mM DTT、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いて分離した。図1bは、溶液B:8M尿素、4%CHAPS、2mM TBP、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いて分離した。総合30000VhのIEFの後に、図1aにおけるIPGは、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび2%DTT、0.375Mトリス(pH8.8)中で、10分間平衡化し、次いでDTTの代わりに2.5%ヨウドアセトアミドを使用して、全部の遊離のDTTをアルキル化する以外は、同一溶液中でさらに10分間平衡化した。図1bのIPGは、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび5mMTBP、0.375Mトリス(pH8.8)中で、20分間平衡化した。中間フィラメント状タンパク質(Intermediate Filament Proteins)、特にタイプI中間フィラメント状タンパク質は、図1aにおいて、ほとんど分割されない。これに対して、図1bは、中間フィラメント状タンパク質の改良された分離を示しており、特にタイプI中間フィラメント状タンパク質がスポットの少なくとも4つの主要条線(strings)に良好に分割された(矢印)。 図2は、溶液B:8M尿素、4%CHAPS、2mM TBP、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いる総合30000VhのIEFにより分離され、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび5mM TBP、0.375Mトリス(pH8.8)中で、20分間平衡化された、図1と同一の羊毛タンパク質抽出物のコマシーブリリアントブルーR250染色した2−Dゲルを示している。タイプI中間フィラメント状タンパク質がスポットの少なくとも4つの主要条線(矢印)に分離されており、これは4種のタイプI中間フィラメント状タンパク質遺伝子を表わす。タイプII中間フィラメントタンパク質はスポットの2つの主要条線(矢印)に分離されている。 図3は、1×10チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞タンパク質の銀染色した2−Dゲルを示している。図3aは、溶液A:8M尿素、4%CHAPS、100mM DTT、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いて分離した。図3bは、溶液B:8M尿素、4%CHAPS、2mM TBP、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いて分離した。総合80000VhのIEF後に、図3aのIPGは、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび2%DTT、0.375Mトリス(pH8.8)中で、10分間平衡化し、次いでDTTの代わりに、2.5%ヨウドアセトアミドを使用して、全部の遊離のDTTをアルキル化する以外は、同一溶液中でさらに10分間平衡化した。図3bのIPGは、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび5mM TBP、0.375Mトリス(pH8.8)中で、20分間平衡化した。図3aには、明確な水平方向の縞が存在し、これはIEF中のジスルフィド結合の再形成の結果である。図3bでは、水平方向の縞が消失しており、タンパク質のスポットは、図3aに比較して、さらに明白に目で見ることができる。IEFにおいてTBPを使用して分離された場合、矢印で示されているスポットは、相違する明白な質量の多数の条線に分割されている。 図4は、2対の胎児マウス前足タンパク質の銀染色した2−Dゲルを示している。図4aは、修正溶液A:8M尿素、4%CHAPS、10mM DTT、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いて分離し、図4bは、溶液A:8M尿素、4%CHAPS、100mM DTT、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いて分離した。図4cは、溶液B:8M尿素、4%CHAPS、2mM TBP、0.5%pH3〜10両性電解質および40mMトリス(pH約9.5)を用いて分離した。総合60000VhのIEF後に、図4aおよび4bのIPGは、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび2%DTT、0.375Mトリス(pH8.8)中で、10分間平衡化し、次いでDTTの代わりに、2.5%ヨウドアセトアミドを使用して、全部の遊離のDTTをアルキル化する以外は、同一溶液中でさらに10分間平衡化した。図4cのIPGは、6M尿素、20%グリセロール、2%SDSおよび5mM TBP、0.375Mトリス(pH8.8)中で、20分間平衡化した。図4aにおいて、フォーカシングは、100mM DTTまたはTBPを用いた場合に比較して、貧弱である。TBPを用いる図4cは、図4aおよび4bに比較して、スポット数の格別の増加を示している。

Claims (32)

  1. 等電点電気泳動による巨大分子の分離方法であって、チオールを実質的に含有しない還元剤を含有する等電点電気泳動媒質中で、巨大分子を電気泳動に付すことを包含する方法。
  2. チオールを実質的に含有しない還元剤が、三価リン化合物である、請求項1に記載の方法。
  3. 三価リン化合物が、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニル−ジフェニル−ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジフェニル(メトキシメチル)ホスフィンオキサイド、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリブチルホスフィン、およびトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 三価リン化合物が、トリブチルホスフィンである、請求項3に記載の方法。
  5. チオールを含有しない還元剤の濃度が、0.1〜200mMである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. チオールを含有しない還元剤の濃度が、1〜10mMである、請求項5に記載の方法。
  7. 巨大分子の等電点電気泳動を、チオール含有還元剤が実質的に存在しない条件下に行う、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. チオールを含有しない還元剤が、固定化した形態である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)による巨大分子の分離方法であって、
    (a)チオールを実質的に含有しない還元剤を含有する等電点電気泳動媒質中で巨大分子を電気泳動に付すことによって、第一次元ゲルにおける等電点電気泳動により巨大分子を分離し;
    (b)場合により、(a)により第一次元ゲルにおいて分離された巨大分子を、チオールを含有しない還元剤およびアルキル化剤を存在させて、全部の遊離チオールが除去され、そしてシステインとの混合付加物が実質的に形成されないように、平衡化し;次いで
    (c)ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、巨大分子をさらに分離する;ことを包含する方法。
  10. チオールを実質的に含有しない還元剤が、三価リン化合物である、請求項9に記載の方法。
  11. 三価リン化合物が、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニル−ジフェニル−ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジフェニル(メトキシメチル)ホスフィンオキサイド、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリブチルホスフィン、およびトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 三価リン化合物が、トリブチルホスフィンである、請求項11に記載の方法。
  13. チオールを含有しない還元剤の濃度が、0.1〜200mMである、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. チオールを含有しない還元剤の濃度が、1〜10mMである、請求項13に記載の方法。
  15. (a)における巨大分子の等電点電気泳動を、チオール含有還元剤が実質的に存在しない条件下に行う、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. チオールを含有しない還元剤が、固定化された形態である、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. アルキル化剤が、アクリルアミド、蛍光剤、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、アクリルアミド−N,N−ジエトキシエタノール、N−アクリロイル−トリス(ヒドロメチル)アミノメタン、アクリルアミド糖類、例えばN−アクリロイル(またはメタアクリロイル)−1−アミノ−デオキシ−D−グリシトールまたは対応するD−キシリトール誘導体、およびN,N−ジエチルアクリルアミドからなる群から選択される、請求項9〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. アルキル化剤が、アクリルアミドである、請求項17に記載の方法。
  19. アクリルアミドの濃度が、0.1〜5%(w/v)である、請求項18に記載の方法。
  20. アクリルアミドの濃度が、2.5%(w/v)である、請求項19に記載の方法。
  21. 蛍光剤が、ハロアセチル誘導体、マレイミド化合物およびミセル状スルフヒドリル試薬からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
  22. 蛍光剤が、マレイミド蛍光剤である、請求項21に記載の方法。
  23. 蛍光剤の濃度が、0.01〜20mMである、請求項21または22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 蛍光剤の濃度が、0.25mMである、請求項23に記載の方法。
  25. (b)における任意の平衡化を、ヨウドアセトアミドが実質的に存在しない条件下に行う、請求項9〜24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 巨大分子の電気泳動分離における、チオールを含有しない還元剤の使用。
  27. チオールを含有しない還元剤が、三価リン化合物である、請求項26に記載の使用。
  28. 三価リン化合物が、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニル−ジフェニル−ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジフェニル(メトキシメチル)ホスフィンオキサイド、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリブチルホスフィン、およびトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される、請求項27に記載の使用。
  29. 三価リン化合物が、トリブチルホスフィンである、請求項28に記載の使用。
  30. チオールを含有しない還元剤が、固定化された形態である、請求項26〜29のいずれか一項に記載の使用。
  31. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法により分離された巨大分子。
  32. 請求項9〜25のいずれか一項に記載の方法により分離された巨大分子。
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