JP2011032468A - 水性顔料分散液の製造方法 - Google Patents

水性顔料分散液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
極めて微小粒径に分散した水性顔料分散液を高い製造効率で得ることができ、該分散液を主成分として作製したインクジェット記録用インク組成物が、優れた光沢と発色を有する画像を与えることが可能な、C.I.ピグメントイエロー74の水性顔料分散液の製造方法を提供すること。
【解決手段】
顔料、スチレンアクリル酸系共重合体、湿潤剤、及び塩基性化合物を含有する混合物を混練して、常温で固形の着色混練物を作製する混練工程と、前記着色混練物に水性媒体を添加し撹拌する混合工程を有するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、前記顔料はC.I.ピグメントイエロー74であり、前記混練工程においては顔料に対して15〜50質量%の水を添加することを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明はインクジェット記録用インクの原料として使用可能な水性顔料分散液の製造方法に関する。
従来、耐久性、耐候性に優れ、また環境負荷の小さなインク原料として水を主成分とする液媒体中に顔料が分散された水性顔料分散液が提案され、これを希釈してインクジェット記録用インク組成物が製造されている。水性顔料分散液を製造するに当たっては、顔料、水、水性有機溶剤、樹脂、塩基性化合物を混合し、分散機を用いて顔料の分散処理を行うのが一般的である。その結果、樹脂にて被覆され、あるいは樹脂がその表面に吸着した粒子状の顔料が、水溶性溶剤中に分散した水性顔料分散液が得られる。
例えばイエロー顔料を用いて水性顔料分散液を作製するときには、水溶性樹脂あるいはアルカリ成分の添加によって水溶性化した樹脂を水に溶解した水溶液を作製し、これにイエロー顔料を加えて十分撹拌した後、さらに分散効率の高い高速サンドミルなどを用いて顔料を分散させて水性顔料分散液を得る方法が提案されている。水性顔料分散液を使用したインクジェット記録用のインクは、従来の染料インクと比べて耐光性、耐水性などが格段に優れているが、水性媒体中に顔料粒子を安定分散させる必要があり、優れた分散性を実現するために多くの検討がなされている。特に近年、写真印刷用途への利用が活発な状況にあるため、より高い光沢、優れた発色など高画質化の要求が高まっており、水性顔料分散液中の顔料粒子をできるだけ微細化しかつ粒子径の揃ったものとすることが一層必要となってきている。
例えば上記の、サンドミルを用いて水性顔料分散液を製造する方法は、通常、顔料等の固形分比率の小さい、低粘度の混合液を用いて分散液を作製する。そのため、顔料に強力な負荷がかかりにくく、顔料の粗大粒子を粉砕するのに時間がかかる。また、このようにして得られた水性顔料分散液には、分散後にも相当量の粒径1μm以上の粗大粒子が含まれていた。
このような問題の解決のため、例えば、分散機を用いて分散処理を行う前に、前処理として顔料と高分子分散剤を混練処理することが検討されており、例えば、イエロー顔料とポリマー分散剤を2−ロールミリング装置によって分散体を得た後に、水性媒体中に分散し顔料分散液を得る製造方法が行われており、顔料とポリマー分散剤によって作製された顔料分散体と中和剤である水酸化カリウムと水とを混合し、水性顔料分散液が得られている。(特許文献1参照)
しかしながら、上記製造方法では2−ロールミリング装置であらかじめ混練することで未混練のものよりは顔料の微細化が進み水性媒体中への分散性の向上が図られるが、顔料とポリマー分散剤の分散体を水性媒体中へ分散させる際に生じる顔料凝集物を完全に防止できない問題があった。またこの方法においては、分散時間が長時間にわたり、製造効率が低いという問題があった。またさらに、このようにして得られた水性顔料分散液においても、分散性、分散安定性は未だ不十分であった。
そこで、上記課題を解決するため、樹脂、イエロー顔料を含む混合物にさらに塩基性化合物を配合し、高粘度で混練し、常温で固体もしくは半固体状の混練物を製造する工程と、該混練物を水性媒体中に分散させて水性顔料分散液を製造する工程を有する水性顔料イエロー分散液の製造方法が提案されている。(特許文献2参照)
多くの顔料については上記の製造方法を使用することにより、混練工程での顔料の微細化が進行し、分散性の良好な水性顔料分散液を製造することができる。しかし高粘度で長時間にわたる混練は、混練物の温度を上昇させ、特に混練装置が密閉系のときには、顔料によっては混練物の物性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、黄色顔料であるC.I.ピグメントイエロー74においては、上記製造方法を用いると混練中の温度上昇によって混練物の力学的特性が大きく変化し、粘度が低下するため、効果的に混練物に負荷がかからず、顔料粒子の十分な微細化が進行しない。このため、このようにして製造した水性顔料分散液からインクジェット記録用インク組成物を作製しても、良好な印刷特性が得られない問題があった。
特開平6−157954号公報 特開2005−60411号公報
本発明の目的は、極めて微小粒径に分散した水性顔料分散液を得ることができ、該分散液を主成分として作製したインクジェット記録用インク組成物が、優れた光沢と発色を有する画像を与えることが可能であって、且つ製造効率の高いC.I.ピグメントイエロー74の水性顔料分散液の製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために、C.I.ピグメントイエロー74の混練工程を検討した結果、水の添加により混練中の混練物の温度上昇を抑えて、粘度の低下を防ぎ、混練物に高い負荷がかかる状態を維持することが有効であることを見出し、本発明を完成した。特に顔料がC.I.ピグメントイエロー74の場合には、上記のような方法を用いることにより、混練工程の効率が向上し、微細化された顔料の極めて良好な分散性を達成できる。このため、従来使用していた分散装置を用いなくても、ほぼ同等の特性が得られることが判明した。すなわち本発明は、顔料、スチレンアクリル酸系共重合体、湿潤剤、及び塩基性化合物を含有する混合物を混練して、常温で固形の着色混練物を作製する混練工程と、前記着色混練物に水性媒体を添加し撹拌する混合工程を有するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、前記顔料はC.I.ピグメントイエロー74であり、前記混練工程においては顔料に対して10〜50質量%の水を添加することを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法を提供する。
10〜50質量%の水を添加して混練物の温度上昇を防ぎ、上記混練物を半固形または固形状態に維持して混練することで、凝集した顔料を物理的に解砕すると同時に、解砕された顔料表面にスチレンアクリル酸系共重合体を被覆または吸着することができるため、粗大顔料の減少ならびに顔料の分散安定性の向上に極めて効果的である。
本発明において、プラネタリーミキサーなどの閉鎖系の混練機を用いて混練すると、混練物が剪断され、混練物に高負荷がかかと同時に、混練物と撹拌槽または撹拌羽との摩擦熱等により混練物が加温され、粘度の低下が起こる。そのため、混練物は時間と共に広範囲で粘度が変動する。
このような閉鎖系での混練においては、混練工程中、混練物を適切な粘度に調整する必要がある。粘度が低すぎると、混練物に十分に負荷がかからないために、顔料の微細化が進行しない。また、粘度が高すぎると、混練機の装置に機械的負担がかかる危険がある。
特にC.I.ピグメントイエロー74を用いた混練物においては、混練工程中に混練物の温度が100℃を超えると著しく粘度が低下し、混練物に十分な負荷がかからず、顔料の微細化の進行が妨げられる。そのため、混練工程中に混練物を冷却し、混練物を高粘度状態に維持して混練を行うことが好ましい。しかし本発明においては混練工程中の混練物の状態は、半固形または固形状態であるため、撹拌槽の壁面との間では必ずしも良好な密着状態が保てず、効果的な熱移動を行うことは難しい。このため、撹拌槽を十分に冷却しても混練物の温度を効果的に下げることは難しい。
本発明の製造方法は、顔料、スチレンアクリル酸系共重合体、湿潤剤、及び塩基性化合物を含有する混合物を混練して、常温で固形の着色混練物を作製する混練工程を有し、該混練工程において、顔料に対して特定範囲の量の水を添加しているため、混練物の温度上昇による粘度の低下を抑えることができる。そのため、混練物に十分な剪断力がかかり、顔料の粒度分布の狭い、微細化された顔料を含有する水性顔料分散液を製造することができる。また、混練物が高粘度に保たれることで、撹拌層の壁面への混練物付着も抑えられ、工程の製造収率が向上する。さらに、顔料が効果的に微細化されることで、従来、混練工程後に必要であった公知の分散装置を用いた分散工程を省略ことができ、水性媒体を添加し撹拌するだけで水性顔料分散液を製造することができる。このため製造効率の向上が著しい。
実施例と比較例の混練工程における混練物の温度変化を示す図である。
以下に本発明の水性顔料分散液の製造方法について、さらに詳細な説明を行う。まず最初に本発明の製造方法で使用する各種の基本的な原材料について詳細に説明し、その後で本発明の場合のそれら原材料のより好ましい選定、使用量に触れ、またそれら材料を用いた本発明の製造方法を詳細に説明する。
本発明で用いる顔料C.I.ピグメントイエロー74は、強い着色力、鮮明な色相を特徴とするモノアゾイエロー顔料であり、粒子径を小さくして透明性を高めたタイプから粒子径を大きくして隠蔽性を高めたタイプまでの多種多様な製品が揃えられていることから、印刷色材として幅広く使用されている。透明性が高い色相が求められるインクジェット印刷用途として、顔料の粒子径はインクジェット記録物の印刷特性に影響を与えるため、粒子径は0.2マイクロメートル以下であることが望ましく、0.1マイクロメートル以下であることがさらに望ましい。C.I.ピグメントイエロー74は、適宜乾燥粉末状、果粒状、ペースト状、含水スラリー状等の形態を問わず本発明の顔料分散液に用いることができる。
本発明の水性顔料分散液に用いるスチレンアクリル酸系共重合体は、スチレン系モノマー単位ならびにアクリル酸モノマー単位とメタクリル酸モノマー単位の少なくともどちらかを必須成分として含有する。
スチレン系モノマー単位としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−ジメチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレンの如きアルキルスチレン、4−クロロスチレン、3−ブロモスチレンの如きハロゲン化スチレン、更に3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン等が挙げることができるが、スチレンが好ましい。
本発明の水性顔料分散液に用いられるスチレンアクリル酸系共重合体には、スチレン系モノマーおよび(メタ)アクリル酸モノマーに加えてスチレン系モノマーおよび(メタ)アクリル酸モノマーと共重合するビニル基を有する各種誘導体の併用が可能である。
利用可能なビニル基を有する各種誘導体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸アウテアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸p−トリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸p−トリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジーn−ブチル、マレイン酸ビス(2−エチルヘキシル)、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、酢酸アリル、プロプオン酸アリル、n−酪酸アリル、ヘプタン酸アリル、フェノキシ酢酸アリル、メタクリル酸アリル等の不飽和エステル類、;アクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−[(3−ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド等の不飽和アミド類;アクリルニトリル、メタクリロニトリル、3−ヒドロキシプロピオニトリル等の不飽和ニトリル類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル等の不飽和エーテル類;2−ビニルピロジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等の複素環ビニル化合物;等を挙げることができる。共重合可能なモノマー成分の選択においては、必ずしもここに挙げた例に限定されるものではない。ここで、(メタ)アクリル酸モノマーとはアクリル酸モノマーおよびメタクリル酸モノマーを包含して表すものとする。
上記スチレンアクリル酸系共重合体の組成において、スチレン系モノマー単位は全構成モノマーの50〜90質量%を占めることが好ましく、70〜80質量%の範囲を占めることがさらに好適である。スチレン系モノマー単位の全モノマー単位の総量に対する割合が50質量%以上であるとスチレンアクリル酸系共重合体がスチレン部位を中心として、C.I.ピグメントイエロー74の表面により有効に吸着することができ、水性顔料分散液の保存安定性が良好に維持される傾向にある。また水性顔料分散液から調整されたインクジェット記録用インク組成物を用いて普通紙等の紙への印刷を行うとき、高い画像記録濃度を有する印字品質に優れた印刷をおこなうことが可能であり、画像の耐水性も良好に維持することができる。スチレン系モノマー単位が90質量%以下であると、上記スチレン系モノマーが多くの成分比を占めることによる利点が大きく発揮されるとともに、極性基を有するモノマーを適正量配合することが可能であり、水性媒体中におけるスチレンアクリル酸系樹脂の分散性安定性の維持が良好に行える傾向にある。さらに、スチレン系モノマー単位とアクリル酸モノマー単位とメタクリル酸モノマー単位の総和が全モノマーの総量に対して95質量%以上であることが好ましい。スチレン系モノマー単位とアクリル酸モノマー単位とメタクリル酸モノマー単位の総和を全モノマー単位の総量に対して95質量%以上にすることにより、スチレン系モノマー単位の含有量をさらに増やしつつ、75〜200の酸価を確保できるため、顔料表面へのスチレンアクリル酸系共重合体の良好な吸着性を維持しつつ、十分な親水性を付与することが可能となり水性媒体中におけるスチレンアクリル酸系共重合体の分散性を向上させることができる。
さらにはアクリル酸およびメタクリル酸以外の親水性モノマー単位の総和を全モノマー単位の総量の2質量%以下とすることが好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。ここで、親水性モノマーを実質的に含まないとは、親水性モノマーによるスチレンアクリル酸系共重体の特性に影響が生じる量よりはるかに少ない量以下という意味であり、0.5質量%程度以下を示すものとする。
特に本発明のスチレンアクリル酸系共重合体に対して、使用を制限することが好ましい親水性モノマーとしては、モノマーの化学構造中に水酸基やスルホン基、アミノ基、4級アンモニウム基当の親水性の置換基に加え、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの繰り返し単位を含むものが挙げられる。これらの親水性モノマーを含まないスチレンアクリル酸系共重合体を用いることにより、インクジェット印刷画像の耐水性が印刷直後から一層向上する。
スチレンアクリル酸系共重合体の分子量は、重量平均分子量7,000〜15,000が選択される。これは、C.I.ピグメントイエロー74を用いたときは分子量が15,000以下であると、水性顔料分散液の調整時の粘度が高過ぎることが無く、インクジェットの吐出、特にサーマル方式のインクジェット吐出がより良好に行われる。一方分子量が7,000以上であれば、目的とする顔料粒子の分散の安定性がより向上する。
ここで重量平均分子量とはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法で測定される値であり、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。本発明で使用したスチレンアクリル酸系共重合体の重量平均分子量は以下の装置及び条件により測定するものとする。
送液ポンプ:島津製作所社製 商品名「LC−9A」、システムコントローラー:島津製作所社製 商品名「SIL−6B」、オートインジェクター:島津製作所社製 商品名「SIL−6B」、検出器:島津製作所社製 商品名「RID−6A」。データ処理ソフト:システムインスツルメント社製 商品名「Sic480IIデータステーション」。カラム:日立化成工業社製 商品名「GL−R400(ガードカラム)」+「GL−R440」+「GL−R450」+「GL−R400M」、溶出溶媒:THF、溶出容量:2ml/min、カラム温度:35℃。
本発明のスチレンアクリル酸系共重合体の酸価は75〜200が好ましく、100〜200がさらに好ましい。これは、酸価を200以下に設定することにより、顔料であるC.I.ピグメントイエロー74の表面に優先的に吸着すると考えられる疎水性成分量が確保されるため、スチレンアクリル酸系共重合体による被覆がより良好に行われ、水性顔料分散液の分散性がより向上する傾向にあるからである。一方、酸価が75以上に設定されることにより、酸基が塩基成分によって中和されたときの分散性向上効果が十分に発揮されるため、水性媒体中におけるスチレンアクリル酸系共重合体の分散性がより良好となる傾向にある。
顔料とスチレンアクリル酸系共重合体の質量比率に関しては、顔料表面を安定なカプセル状に被覆するのに必要な量が存在していれば十分であり、それを超える該共重合体の含有はむしろ好ましくない。スチレンアクリル酸系共重合体が過剰量存在すると、分散液中に顔料に吸着していない遊離の該共重合体が増加するため、特にインクジェット記録用インク組成として使用したときに該共重合体がインクジェットノズルに固着してインク吐出不良の原因となりやすく、特にサーマルジェットプリンターにおいてはこの吐出不良の問題が発生する危険性が高い。そのため、本発明の水性顔料分散液用混練物の製造において、前記水性顔料分散液用混練物中のスチレンアクリル酸系共重合体/顔料の質量比率は1/10〜2/1であることが好ましく、1/10〜6/10であることがさらに好ましい。
顔料分散液用混練物においては、顔料の表面を一様に被覆できる量のスチレンアクリル酸系共重合体が含有されることが必要とされる。このため、該共重合体の配合比率が少なすぎると顔料が十分に被覆されず、分散安定性、長期保存安定性が低下するおそれがある。しかしながら、必要量を越える過剰のスチレンアクリル酸系共重合体が多量に含有されていると、顔料表面に付着せずに、水もしくは湿潤剤中へ粒子状態や溶解状態で存在する該共重合体が増加することにより、粘度上昇の原因となり好ましくない。
本発明の水性顔料分散液に用いられるスチレンアクリル酸系共重合体は、アクリル酸及びメタクリル酸から由来するカルボキシル基を含んでいるため、塩基性化合物による中和によって、水中で安定した分散性を得ることができる。本発明で使用する塩基性化合物は混練時に添加され、スチレンアクリル酸系共重合体を中和して、湿潤剤存在下における膨潤状態への移行を促進させる。
このような目的のために用いられる塩基性化合物としては、アルカリ金属水酸化物、低分子有機アミン化合物等が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアルコールアミン類は水性顔料分散液をインクジェットインクへ調整した場合、分散性、保存安定性やインクジェットプリンターのデキャップ特性、印刷物の耐水性等の面から好適である。これらの塩基性化合物の中で、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムに代表されるアルカリ金属水酸化物は顔料分散液の低粘度化に寄与し、インクジェットインクの吐出安定性の面から特に好ましい。
塩基性成分による中和を行う場合は、本発明のスチレンアクリル系共重合体の酸価に対して、50〜130%の中和率の塩基性成分を用いることが好ましく、さらに50〜110%の中和率の塩基性成分を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインクジェットインクの組成物のPH管理の面からもさらに好ましい。
なお本発明において中和率とは次の式において示される数値である。
中和率(%)=((塩基性化合物の質量(g)×56×1000)/(スチレンアクリル系共重合体の酸価×塩基性化合物の当量×スチレンアクリル系共重合体量(g)))×100
本発明で使用する湿潤剤は、水性顔料分散液用混練物の作製においては混練工程において添加され、湿潤剤の存在化で混練が進行することが必要である。湿潤剤が存在しないと十分に混練することができず、顔料表面が濡れないため、スチレンアクリル酸系共重合体による被覆が不十分となるおそれがある。
湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、(読点を挿入)テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、などのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、及びこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトールなどのジエチレングリコールエーテル類;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのモノグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、及びこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン、エステル、ケトン、γ―ブチルラクトンなどのラクトン類等を用いることができる。
湿潤剤は、水性顔料分散液において、乾燥防止剤としての役割を果たすため、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。
湿潤剤の選択は、使用するスチレンアクリル系共重合体によって決まるが、ある程度の溶解性を持つものが好ましく、該共重合体の溶解性によりその添加量が調整される。通常は混合物中に10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%配合される。その添加量は、該共重合体の1/2〜5倍程度であり、好ましくは該共重合体量の1〜4倍程度である。湿潤剤の量が該共重合体量の1/2以上であると、該共重合体を溶解、部分溶解、又は膨潤させることが十分に可能となり、イエロー顔料の分散安定性が低下するおそれがある。また5倍を越えると混練物の粘度が低下し、十分な混練が行えないため、イエロー顔料の分散性が低下し、インクにおいて、吐出不良等の画質低下を生じされるおそれがある。なお、上記のように、塩基性化合物などに由来して溶剤の役割を果たすものが他に配合されている場合には、これを考慮して湿潤剤の配合量を決定すると好ましい。
また、湿潤剤は顔料に対して、質量比で1/5倍以上、好ましくは1/3〜1倍配合すると好ましい。これにより、スチレンアクリル系共重合体が常に半溶解もしくは膨潤状態となりつつ混練工程が進行し、顔料表面への該共重合体の被覆が良好に行われる。1/5倍未満では、混練初期に顔料の表面を十分に濡らすことができない、または該共重合体を溶解、部分溶解、又は膨潤させることができないために、その効果が十分に得られないおそれがある。
以下に、上記の原材料を用いた本発明の水性顔料分散液の製造方法について詳細に説明を行う。
(a)混練工程
本発明の製造方法においては、顔料、スチレンアクリル酸系共重合体、湿潤剤、及び塩基性化合物を含有する混合物を混練して、常温で固形の着色混練物を作製する混練工程と、前記着色混練物に水性媒体を添加し撹拌する混合工程を有し、さらに前記混練工程においては顔料に対して10〜50質量%の水を添加することを特徴とする。
本発明においては、顔料とスチレンアクリル酸系共重合体を湿潤剤と塩基性化合物存在下で混練する。このため、該共重合体が溶解、膨潤あるいは部分的に溶解した状態で顔料と混練することで、顔料の解砕による微細化と、微細化された顔料表面への該共重合体の被覆および吸着とが同時に進行する。
混練物を常温状態では高粘度な粘土状態にするためには、混練する混合物の固形分比率が50〜80質量%であることが好ましい。55〜75質量%であるとさらに好ましい。固形分比率が50質量%以上であると混合物の粘度が十分に高いため混合物をより高剪断力下で混練することが可能となり好ましい。また固形分比率が80質量%以下であると、混練時に混合物がより纏まりやすく、より良好な混練が進行する傾向にある。
混練工程における混練物の温度は、通常60〜120℃程度になり得るが、C.I.ピグメントイエロー74に高温による物性変化をもたらさないためには100℃以下に抑えることが好ましい。本発明の製造方法においては、顔料に対して10〜50質量%の水を加えることにより、添加された水が蒸発時に気化熱を奪うので混練物の温度が低下する。添加する水の量としては12〜50質量%がより好ましく、15〜50質量%がさらに好ましく、15〜35質量%であることがより好ましく、20〜35質量%であることがさらにより好ましい。そしてこれにより混練工程中、混練物の温度を100℃以下に維持して好適に混練することができ、より好ましくは60〜100℃に維持して混練することも可能となる。
混練工程における水の添加は、混練工程の進行に伴う混練物の温度上昇に応じて適宜行うことができ、混練工程の途中に添加してもよいし、また混練工程における混合物の配合時に添加してもよい。さらに前記水の添加は一度に行うこともでき、また数回に分割して行うこともできるが、分割して添加する方が混合物の固さや混合物中の水の分布の均一性が大きく損なわれることがなく、顔料分散をより良好に進行させることができる。
添加により混練工程における混合物の固形分比は低下するが、水の気化熱による冷却効果により、混合物の温度上昇が抑制される。混練工程開始とともに混合物にかかる剪断力は増加し、混練装置の負荷電流は20〜60分でピークを迎えた後、徐々に減少する傾向にある。このため負荷電流がピークを迎える前に顔料に対して10〜50質量%の量の水の添加を行うことが混合物の温度上昇抑制の点で好ましい。さらに混練工程を通じて、例えば撹拌槽中に存在する水の量が前記範囲となっていると温度上昇の抑制の点でより効果的であり、混練工程を通じて混合物への水の配合量が前記範囲となっていることがさらに好ましい。
本発明の混練工程において顔料に添加する水の量としては、明確に添加したもののほか、他の添加物の副成分として添加されたものも考慮する、すなわち、混練工程の混合物中に含有されるに至る経緯はどうあれ、気化することで混練工程における混練物の温度低下に寄与するすべての水の量が考慮される。したがって混練工程開始後に混練物に加えられる水のほか、例えば混練開始前に金属アルカリ水酸化物の水溶液として混合物にすでに添加されている水も含むものとする。
このように本発明の製造方法における混練工程で規定する「添加する水の量」は、混練開始時に前記混合物に配合されていた水を含み、かつこれに混練工程を通して新たに添加された水の量全体を加えた量である。しかし混練開始時の急激な温度上昇を低下させるためには混練の最初から撹拌槽内に本発明で規定する量の水を含むことが好ましく、混練工程の全てを通じて、撹拌槽内の水の存在量が、前記本発明で規定する量の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の混練工程において、添加する水の量が顔料に対して10質量%未満であると、混練物の温度を100℃以下に維持できないため、混練物の粘度が低下する傾向にある。そのため、混練物に十分な剪断力がかからず、顔料の微細化が進行しにくい。一方、水の量が顔料に対して50質量%を超えると、混練物が柔らかくなり、混練工程において混練物に高剪断力をかけることができず、顔料の解砕による微細化および微細化された顔料表面のスチレンアクリル酸系共重合体による被覆が不十分になりやすい。
混練物に水を直接添加することで、混練工程中、混練物を100℃以下、より好ましくはを60℃以上かつ100℃以下の好適な温度条件で混練することができる。さらに、閉鎖系で混練を行うため、蒸発した水蒸気は撹拌槽の内壁で結露し、これが繰り返し混練物の冷却に利用される。
混練工程において混練物に水を添加することは、中和されたスチレンアクリル酸系共重合体の一部が水成分の方に溶解するため、顔料表面への該共重合体の被覆および吸着を妨げ、顔料の分散性または長期分散安定性を減殺するおそれがある。そのため、従来ではスチレンアクリル酸系共重合体の中和に用いられる塩基化合物に由来する最小限の水の添加量で混練を行ってきた。
しかしC.I.ピグメントイエロー74を使用顔料とする本発明においては、一部のスチレンアクリル酸系共重合体の水性媒体への溶解という懸念があるものの、それを補ってあまりある混練工程における温度低下効果、それによる顔料の微細化効果が示される。
本発明の混練工程に用いる混練装置としては、混練工程中に水や湿潤剤などが外部に飛散しないように、閉鎖系構造であることが好ましい。そのため、密閉可能な撹拌槽と、一軸あるいは多軸の撹拌羽根を供えた混練機を用いると好ましい。撹拌羽の数は特に限定はしないが、高い混練作用を得るためには二つ以上の撹拌羽のものが好ましい。
このような構成の混練装置においては、添加した水が揮散することなく冷却に用いられるため、効率的な冷却を行うことが可能である。通常そのような密閉系の混練装置においてはもともと熱の拡散が行い難いため、壁面を冷却することによって混練温度の過度な上昇の抑制が試みられる。
しかしこのような従来の方法では、混練物との熱接触は撹拌槽に壁面を通してしか行われないため、通常は高剪断力とともに発生する温度上昇を十分に抑制させることは困難である。特に撹拌槽の容積の大きい大型機になればなるほど、混練物の体積に対する壁面の表面積の比率は小さくなるため、冷却能力は低下する。
しかし、このような密閉可能な混練装置を用い、混練物に直接水を添加することにより、混練物の表面もしくは内部から気化熱で冷却を行うことにより、効果的な混練温度上昇の抑制をはかることが可能である。添加された水は蒸発して気化熱を奪い混練物を冷却し、水蒸気は混練装置の壁面で冷却されて凝結し、壁面を伝わって落下して混練物に戻るため、繰り返し冷媒として機能すると考えられる。
さらに、このような構成の混練機を用いると、顔料分散用混練物を作製した後、これを同一撹拌槽中で直接水および湿潤剤により希釈し分散させて、顔料分散液を製造することができる。
このような撹拌槽と撹拌羽根を備え、密閉可能な混練装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどが例示され、特にプラネタリーミキサーなどが好適である。本発明においては、好ましくは顔料濃度と顔料とスチレンアクリル酸系共重合体からなる固形分濃度が高い状態で混練を行うため、混練物の混練状態に依存して混練物の粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは特に低粘度から高粘度まで広範囲に対応することができる。
混練物の温度を下げる水溶性有機溶剤として、気化熱が高く、且つ水性顔料分散液の組成に悪影響を与えなければ、水以外の使用も可能である。また水との併用も可能である。
水の添加方法としては、混練当初から多量の水を添加すると混練物が軟らかくなり、混練物に十分な負荷がかからない。逐次的に水を添加してできるだけ均一な剪断力が混練物に加わるように調整する方法が好適である。
(b)混合工程
本発明の製造方法における混合工程においては、混練工程で作製した着色混練物に水性媒体を添加して、混合、撹拌することにより着色混練物を希釈、液状化し、低粘度化する。水の添加は必要量を一度に添加してもよいが、撹拌、混合を行いながら連続的、あるいは断続的に必要量を添加すると、粗大粒子の発生を効果的に抑制できるため好ましい。

混練工程において作製された水性顔料分散液用混練物は、通常は固体状あるいは固体状の堅練品である。そのため、従来の水性顔料分散液の作製には、混合工程によって水性顔料分散液用混練物を水性媒体で希釈し、撹拌した後、ナノミル等の公知の分散装置を用いて分散する分散工程を必要とした。そうすることで、混練工程で解砕され、且つスチレンアクリル系共重合体によって被覆されつつ、緩く凝集した顔料が、その凝集を解かれ、粒径がより微細化するため、インクジェット記録用インク組成物の吐出安定性、印字濃度、光沢等のインクジェット特性が改善される。
混練工程後の混練物に対して混合工程を開始する時は、混練物を必ずしも混合工程用の装置に移送せず、混練工程に用いた装置の撹拌槽中で水性媒体を添加し撹拌して液状化を行っても良い。混合工程においては混練工程と同様に水の添加を行うが、この添加は混合物の温度低下ではなく、固形分比を低下させ液状化させることが目的であるため、最小限の水添加に留める混練工程と比較して、添加速度、添加量が圧倒的に大きく、混合物の固形分比は混練のための好ましい値である50〜80質量%の範囲を外れてさらに減少し続け液状化に向かう。
このため同一の混練工程と同一の装置を用いて混合工程を開始するときであっても、通常は両工程の差違は明確である。
本発明においては、上記の混練工程を用いた製法を行うことで、顔料であるC.I.ピグメントイエロー74の微細化と、スチレンアクリル酸系共重合体の顔料表面への一様な被覆、または吸着が極めて効果的に進行する。そのため、例えば上記の撹拌槽と撹拌羽根を備えた混練機で本発明の製造方法による混練工程を行って混練物を得た後、この撹拌槽内の混練物に水性媒体を混合し、希釈、撹拌しただけの水性顔料分散液は、従来の水を添加しない混練方法を用い、混合工程の後にさらに分散工程まで行って作製した水性顔料分散液と比較しても、より優れた分散特性を有することになる。そして、水の添加により混練物の温度上昇を抑制する。本発明の製造方法における混練工程を行っておくことにより、たとえ混練工程後に、水性媒体を添加する混合工程だけで水性顔料分散液を作製したとしても、さらに公知の分散装置を用いた分散工程を経て作製した水性顔料分散液と同等の粒径、分散安定性、インクジェット特性等を得ることができる。このように、混練後に分散装置による分散を省略出来るので、混練物の製造から粘度調整までをひとつの装置で連続的に行うことができ、製造効率を向上させることができる。
混合工程において使用する水性媒体は、水性インクジェットインクに用いられる水、あるいは水を主成分とし、水と相互に溶解する水溶性有機溶剤を含むものである。使用できる有機溶剤としては通常、水性顔料分散液の溶剤成分として用いられる有機溶剤を使用することができるが、混練工程において例示した湿潤剤を使用することが好ましく、混練工程で実際に使用した湿潤剤と同じ湿潤剤を用いることが好ましい。
このように混練物を水性媒体に希釈することで、顔料表面をカプセル状に被覆したスチレンアクリル酸系共重合体中のアニオン性の親水基を、カプセル状態を保ちつつ徐々に周囲の水性媒体の方向に配向させていくことが可能であり、水性媒体に対する分散性が良好で且つ安定な被覆状態を可能にする。
混合工程の開始後に、混練工程で製造した着色混練物に水性媒体を添加し撹拌して、混合工程を行い、しかる後に従来のように分散装置を用いて水性媒体中への分散を行ってもよい。この場合混合工程において、使用する分散装置に適合した粘度調整や、分散時に必要な添加物を添加することができる。このような分散装置を用いた分散を、混合工程に引き続き行うことによって、工程自体はやや複雑になり製造効率は低下するが、混合工程のみで混練後の着色混練物を水性媒体中に分散するよりは、より確実に水性顔料分散液やインクジェット記録用インク組成物の体積平均粒径を低下させることができ、また仮に種々の原因で原料の、形状、組成等が変動し、所望の特性が得られなかった場合なども、分散工程を用いることで当初の特性を回復することが出来る場合が多い。
分散工程においては、分散装置として、公知のものを用いることができ、例えば、メディアを用いたものでは、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグライダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル、ナノミル、ピコミルなどが挙げられる。
メディアとしては、ガラス、セラミック、金属、金属酸化物、プラスチックなどの、公知の微粒子を用いることができる。
また、メディアを用いないものとしては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機などが挙げられるが、これらの中でもメディアを用いた分散機は分散能力が高いため好ましい。
なお、用いる分散装置などの種類によっては、分散機で分散を行う前に、混合工程で水性顔料分散液用混練物に水溶性溶剤を添加し、混合、希釈して、前記分散機で処理するのに適した粘度に調整することが好ましい。
(c)遠心分離工程
上記の各製造工程を経ることによって得られた水性顔料分散液に対して、遠心分離処理を行い、水性顔料分散液中に存在する粗大粒子を除去する操作を行っても良い。
遠心分離条件としては、10,000Gで3分間以上遠心分離を行う方法が好ましく、15,000〜21,000Gで、5〜10分間の遠心分離を行うことが更に好ましい。遠心分離を行うことで、分散の不十分な粗大粒子が相当除去できるため、顔料の沈降性が大幅に改善される。
以下に、上記、製造方法の各工程を経て製造された水性顔料分散液を用いてインクジェット記録用インク組成物を製造する場合の製造方法を詳細に説明する。
本発明の製造方法で製造した水性顔料分散液を水性媒体で希釈し、必要に応じて添加剤を加えて、インクジェット記録用インクを製造するができる。インク組成物中に含有される顔料濃度は、2〜10質量%程度が好ましい。
水性顔料分散液を希釈するために用いられる水性媒体に湿潤剤が配合されると、該湿潤剤がインクジェット記録用インクの製造後に、乾燥防止、粘度調整、濃度調整等の各機能を発揮するため、好ましい。湿潤剤としては混合工程において混練物を水性媒体に分散させるときに用いたものと同様の湿潤剤を用いることができる。あるいはまた、混練工程において混合物中に配合され、乾燥防止機能果たした湿潤剤と同様のものを用いることが出来る。乾燥防止を主目的とする湿潤剤のインク組成物中の含有量は、3〜50質量%であることが好ましい。
またインクジェット記録用インク組成物の調整において、記録媒体へのインク組成物の浸透性は、記録媒体上のドット径の調整を通じて画質に大きな影響を及ぼすため、浸透剤の添加による浸透性の調整を行うことが好ましい。
浸透性の調整に使用することのできる水溶性有機溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのアルキルアルコールノエチレンオキシド付加物;プロピレングリコールプロピレンエーテルなどのアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。インク組成物中の浸透剤の添加量としては、0.01〜10質量%であることが好ましい。
インクジェット記録用インク組成物を調整する場合、表面張力等のインク特性を調整するために、界面活性剤を添加することができる。添加することができる界面活性剤は、特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられ、これらの中ではアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。さらに必要に応じて、アルカリ剤、PH調整剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等のインクジェット記録用インクのための添加成分を適宜加えて、水性媒体の量、顔料濃度の調整が行われる。
上記のように調整した本発明のインクジェット記録用インク組成物は、基本的に良好な分散性、分散安定性、吐出性を有しており、ピエゾ方式、サーマルジェット方式等のオンデマンド型インクジェット記録方法のインク組成物として、また連続噴射型のインクジェット記録方法のインク組成物として好適に用いることができる。またこれらインク組成物を適用して記録媒体上に形成された塗膜は優れた色調と光沢を発現する。このため他の色のインクジェット記録用インク組成物と併用して用いると、これらインク組成物によって形成された塗膜とともに高画質な画像を形成することができる。
以下実施例、比較例において使用したスチレンアクリル酸共重合体は、モノマー組成比において、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、酸価153〜156mgKOH/g、重量平均分子量11000であるスチレンアクリル酸共重合体を合成して使用した。
(実施例1)
以下、本発明の実施例を示して詳しく説明する。
なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
ピグメントイエロー74
(山陽色素社製、Fast Yellow 7413) 50部
スチレン−アクリル酸共重合体 15部
(酸価155mgKOH/g 重量平均分子量11000)
ジエチレングリコール 24部
8Nの水酸化カリウム水溶液(固形分濃度=34質量%) 6.84部
純水 2.5部
上記配合(配合時において顔料に対する水の量は14%)の混合物を作製し、60℃に保温されたプラネタリーミキサー(井上製作所製PLM−V−50V)に投入し、自転回転数30rpm、公転回転数10rpmで5分間撹拌の後、自転回転数59rpm、公転回転数20rpmで混練を開始した。混練40分後に純水2.5部を添加し、混練を継続した(添加時において顔料に対する水の量は19%)。その後、混練70分後、100分後、162分後に同様の操作を繰り返した。混練中の混練物の温度測定を7〜8回行った結果を図1に示す(添加時において顔料に対する水の量は各々24、29、34%)。混練物の温度は100℃を超えることなく、混練後30分程度から混練終了まで80〜90℃程度で安定していることがわかる。混練中の消費電流値は撹拌翼の回転周期に応じて増減を繰り返した。これは混合物が極めて高粘度の半固形であるために、容器内部に均一に分布せず、撹拌翼が、混合物を周期的に剪断する毎に大きな力がこれに加わることによる。240分経過後、混合工程におけるレットダウン操作として、水87.5部を添加し、顔料濃度が26.6質量%の均一な混合物を得た。
得られた混合物をステンレスドラムに移送し、イオン交換水50.86部、ジエチレングリコール23.97部、Proxel GXL 0.248部を加え、撹拌して混合したものを、ビーズミル(浅田鉄工社製ナノミルNM−G−2L)に通じ、19℃の温度、2.5分の滞留時間で分散し分散液を得た。
次いで、この分散液を、連続式遠心分離機(国産遠心機社製 H−600S、2L容量)に通じ、33℃の温度、18900Gの遠心力、10分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行った。水40.8部加えて、フィルターでろ過(日本ポール社製 ネクシスNXA 0.5、カートリッジ長さ2インチを使用)をして、14.4質量%の顔料濃度を有する水性顔料分散液を得た。
(インクの調製)
得られた水性顔料分散液を用いて、以下の配合により、顔料濃度が4%のインクジェット記録用インクを調製した。
水性顔料分散液 5.54 部
2−ピロリジノン 1.60部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.60部
アセチレングリコール系界面活性剤サーフィノール440
(日信化学工業(株)) 0.10部
グリセリン 0.60部
イオン交換水 10.56部
なお得られたインクジェット記録用インクを60℃の高温槽に8週間静置したが、分散している顔料の体積平均粒子径が大きく増加することはなかった。
(比較例1)
ピグメントイエロー74
(山陽色素社製、Fast Yellow 7413) 50部
スチレン−アクリル酸共重合体 15部
(酸価155mgKOH/g 重量平均分子量11000)
ジエチレングリコール 24部
8Nの水酸化カリウム水溶液(固形分濃度=34質量%) 6.84部
上記の成分を順に、60℃に保温された、プラネタリーミキサー(井上製作所製PLM−V−50V)に投入して混合物とし、自転回転数30rpm、公転回転数10rpmで5分間撹拌の後、自転回転数59rpm、公転回転数20rpmで混練を開始した(添加時において顔料に対する水の量は9%)。混練中の消費電流値は撹拌翼の回転周期に応じて増減を繰り返した。混練中の混練物の温度測定を7〜8回行った結果を図1に示す。混練物の温度は混練開始時から徐々に上昇し終了時には110℃程度にまで到達していることがわかる。
ここで図1を参照して、実施例1と比較例1の混練物の温度上昇を比較すると、実施例1では、混練中に適宜水を添加することで混練物温度が常時100℃以下で推移している。一方混練中に水添加を行わなかった比較例1では、混練当初の温度は実施例とほぼ同じであったが、混練1時間以降から100℃をはるかに越えていることがわかる。
なお、混練物の温度測定は、混練を短時間停止して混練中の混練物に直接温度計を挿入して行った。
上記混合物の混練開始から240分経過後、レットダウン操作として、水100部を添加し、顔料濃度が25.0質量%の均一な混合物を得た。
得られた混合物をステンレスドラムに移送し、イオン交換水35.44部、ジエチレングリコール21.07部、Proxel GXL 0.218部を加え、撹拌して混合したものを、ビーズミル(浅田鉄工社製ナノミルNM−G−2L)に通じ、14℃の温度、2.5分の滞留時間で分散し分散液を得た。
次いで、この分散液を、連続式遠心分離機(国産遠心機社製 Hー600S、2L容量)に通じ、28℃の温度、18900Gの遠心力、10分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行った。水1.3部加えて、フィルターろ過(日本ポール社製 ネクシスNXA 0.5、カートリッジ長さ2インチを使用)をして、17.4質量%の顔料濃度を有する水性顔料分散液を得た。
(インクの調製)
得られた水性顔料分散液を用いて、以下の配合により、顔料濃度が4%のインクジェット記録用インクを調製した。
水性顔料分散液 4.60 部
2−ピロリジノン 1.60部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.60部
アセチレングリコール系界面活性剤サーフィノール440
(日信化学工業(株)) 0.10部
グリセリン 0.60部
イオン交換水 11.5部
なお得られたインクジェット記録用インクを60℃の高温槽に8週間静置したが、分散している顔料の体積平均粒子径が大きく増加することはなかった。
(実施例2)
ピグメントイエロー74
(山陽色素社製、Fast Yellow 7413) 50部
スチレン−アクリル酸共重合体 15部
(酸価155mgKOH/g 重量平均分子量11000)
ジエチレングリコール 22.69部
8Nの水酸化カリウム水溶液(固形分濃度=34質量%) 6.84部
純水 2.5部
上記配合の混合物を作製し、60℃に保温されたプラネタリーミキサー(井上製作所製PLM−V−50V)に投入し、自転回転数30rpm、公転回転数10rpmで5分間撹拌の後、自転回転数70rpm、公転回転数24rpmで混練を開始した(添加時において顔料に対する水の量は14%)。混練40分後に純水2.5部を添加し、混練を継続した(添加時において顔料に対する水の量は19%)。その後、混練70分後、100分後、160分後に同様の操作を繰り返した(添加時において顔料に対する水の量は各々、24%、29%、34%)。混練中の消費電流値は撹拌翼の回転周期に応じて増減を繰り返した。
240分経過後、混合工程におけるレットダウン操作として、水87.5部を添加し、顔料濃度が26.9質量%の均一な混合物を得た。得られた混合物をステンレスドラムに移送し、イオン交換水49.57部、ジエチレングリコール24.17部、Proxel GXL 0.238部を加え、撹拌して混合した。
次いで、この分散液を、連続式遠心分離機(国産遠心機社製 H−600S、2L容量
)に通じ、15℃の温度、18900Gの遠心力、10分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行った。水8.1部加えて、フィルターろ過(日本ポール社製 ネクシスNXA 0.5、カートリッジ長さ2インチを使用)をして、15.7質量%の顔料濃度を有する水性顔料分散液を得た。
(インクの調製)
得られた水性顔料分散液を用いて、以下の配合により、顔料濃度が4.1%のインクジェット記録用インクを調製した。
水性顔料分散液 5.26部
2−ピロリジノン 1.60部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.60部
アセチレングリコール系界面活性剤サーフィノール440
(日信化学工業(株)) 0.10部
グリセリン 0.60部
イオン交換水 10.84部
なお得られたインクジェット記録用インクを60℃の高温槽に8週間静置したが、分散している顔料の体積平均粒子径が大きく増加することはなかった。
(実施例3)
実施例2で混練後に水とジエチレングリコールで希釈した水性顔料分散液をビーズミル(浅田鉄工社製ナノミルNM−G−2L)に通じ、13℃の温度、2.5分の滞留時間で分散し分散物を得た。
次いで、この分散液を、連続式遠心分離機(国産遠心機社製 H−600S、2L容量)に通じ、21℃の温度、18900Gの遠心力、10分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行った。水7.7部加えて、フィルターろ過(日本ポール社製 ネクシスNXA 0.5、カートリッジ長さ2インチを使用)をして、14.8質量%の顔料濃度を有する水性顔料分散液を得た。
(インクの調製)
得られた水性顔料分散液を用いて、以下の配合により、顔料濃度が4.1%のインクジェット記録用インクを調製した。
水性顔料分散液 5.50部
2−ピロリジノン 1.60部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.60部
アセチレングリコール系界面活性剤サーフィノール440
(日信化学工業(株)) 0.10部
グリセリン 0.60部
イオン交換水 0.60部
なお得られたインクジェット記録用インクを60℃の高温槽に8週間静置したが、分散している顔料の体積平均粒子径が大きく増加することはなかった。
(参考例1)
ピグメントイエロー155
(クラリアント社製、Ink Jet Yellow 4GP) 50部
スチレン−アクリル酸共重合体 10部
(酸価155mgKOH/g 重量平均分子量11000)
ジエチレングリコール 14.50部
8Nの水酸化カリウム水溶液(固形分濃度=34質量%) 4.50部
上記配合の混合物を作製し、60℃に保温された、50L容量のプラネタリーミキサー(井上製作所製PLM−V−50V)に投入し、自転回転数30rpm、公転回転数10rpmで10分間撹拌の後、自転回転数70rpm、公転回転数24rpmで混練を開始した。混練30分後にジエチレングリコール0.50部と純水0.50部を添加し、混練を継続した。その後、混練43分後、53分後、63分後に同様の操作を繰り返した。混練中撹拌翼の回転周期に応じて増減を繰り返した。120分経過後、混合工程におけるレットダウン操作として、ジエチレングリコール13.5部、水118部添加し、顔料濃度が20.5質量%の均一な混合物を得た。
得られた混合物をステンレスドラムに移送し、イオン交換水46.41部、Proxel GXL 0.234部を加え、撹拌して混合したものを、ビーズミル(浅田鉄工社製ナノミルNM-G-2L)に通じ、21℃の温度、100秒の滞留時間で分散し分散物を得た。
次いで、この分散液を、連続式遠心分離機(国産遠心機社製 H−600S、2L容量)に通じ、23℃の温度、18900Gの遠心力、10分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行った。水18.1部加えて、フィルターろ過(日本ポール社製 ネクシスNXA 0.5、カートリッジ長さ2インチを使用)をして、14.7質量%の顔料濃度を有する水性顔料分散液を得た。
(参考例2)
ピグメントイエロー155
(クラリアント社製、Ink Jet Yellow 4GP) 50部
スチレン−アクリル酸共重合体 10部
(酸価155mgKOH/g 重量平均分子量11000)
ジエチレングリコール 14.5部
8Nの水酸化カリウム水溶液(固形分濃度=34質量%) 4.50部
上記配合の混合物を作製し、60℃に保温された、50L容量のプラネタリーミキサー(井上製作所製PLM−V−50V)に投入し、自転回転数30rpm、公転回転数10rpmで10分間撹拌の後、自転回転数70rpm、公転回転数24rpmで混練を開始した。120分経過後、混合工程におけるレットダウン操作として、ジエチレングリコール15.5部、水120部を添加し、顔料濃度が22.8質量%の均一な混合物を得た。
得られた混合物をステンレスドラムに移送し、イオン交換水50.88部、Proxel GXL 0.241部を加え、撹拌して混合したものを、ビーズミル(浅田鉄工社製ナノミルNM−G−2L)に通じ、24℃の温度、100秒の滞留時間で分散し分散物を得た。
次いで、この分散液を、連続式遠心分離機(国産遠心機社製 H−600S、2L容量)に通じ、32℃の温度、18900Gの遠心力、10分間の滞留時間で、連続的に遠心分離を行った。水19.6部加えて、フィルターろ過(日本ポール社製 ネクシスNXA 0.5、カートリッジ長さ1インチ)をして、15.0質量%の顔料濃度を有する水性顔料分散液を得た。
上記の実施例と比較例で得られた水性顔料分散液、および水性顔料分散液から作製するインク組成物に対して、下記に評価項目によって評価を行い、得られた結果を表1に示す。
<粒径評価>
実施例、比較例、参考例で得られた水性顔料分散液を、イオン交換水で約1,000倍に希釈し、[マイクロトラックUPA150](リージ・アンド・ノースラップ(Leeds&Northrup)社製)を用い、室温にて測定した体積平均粒径を、各実施例、比較例における水性顔料分散液の粒径とした。
<光沢・彩度>
上記実施例、比較例で得られたインクジェット記録用インクを、インクジェットプリンターEM−930(EPSON社製)のブラックカートリッジに搭載し、記録媒体としてPremium Photo Paper Glossy(EPSON社製)を用いて、50〜100%画質濃度の記録を行い、得られた画像の光沢を「micro−TRI−gloss」(BYK−Gardner社製)を用いて20°の角度のグロス値により測定して当該範囲でのグロスの最高値を各実施例、比較例における光沢とした。彩度においては、「SpectroScan Transmission」(GretagMacbeth社製)を用い、画質濃度100%での値を実施例、比較例における彩度とした。
結果を以下に示す。
Figure 2011032468
表1からわかるように混練工程中に水を添加した実施例1〜3においては、分散工程の有無に係わらず、混練工程中に水を添加しなかった比較例1と比べると、粒径、光沢、彩度いずれの光沢においても優れた特性を有することが明確である。実施例1、実施例2と実施例3を比較すると、分散工程無しでも十分に特性を維持できることがわかる。なお実施例1は実施例2と混練工程における混練装置の回転数が異なっていたため、これを実施例2と同一回転数とした実施例3を追加した。
さらに顔料をC.I.ピグメントイエロー155に変更して行った参考例1、参考例2においては、混練工程中の水の添加によって、実施例と同様に体積平均粒径の減少が認められるが、C.I.ピグメントイエロー74のほうがその改良効果ははるかに大きいことがわかる。

Claims (6)

  1. 顔料、スチレンアクリル酸系共重合体、湿潤剤、及び塩基性化合物を含有する混合物を混練して、常温で固形の着色混練物を作製する混練工程と、前記着色混練物に水性媒体を添加し撹拌する混合工程を有するインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法であって、前記顔料はC.I.ピグメントイエロー74であり、前記混練工程においては顔料に対して10〜50質量%の水を添加することを特徴とするインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  2. 前記混練工程での着色混練物の温度が60〜100℃である請求項1に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  3. 前記常温で固形の着色混練物は50〜80質量%の固形分比を有する請求項1または2に記載の水性顔料分散液の製造方法。
  4. 前記スチレンアクリル酸系共重合体は、酸価75〜200であって、全モノマー成分に対して、50質量%以上のスチレン系モノマー単位を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  5. 前記塩基性化合物はアルカリ金属水酸化物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
  6. 前記混練工程においては撹拌槽と撹拌羽根を有する密閉可能な混練装置を用いて混練を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法。
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