JP2011027115A - 容量可変型斜板式圧縮機、及び空調用冷房回路 - Google Patents

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一哉 木村
Yuji Kaneshige
雄二 兼重
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Abstract

【課題】容量可変型斜板式圧縮機において、揺動斜板を傾角0ーの状態からでも確実に復帰可能として、斜板の最小傾角を0ー近傍に設定できるようにする。
【解決手段】斜板22は、ヒンジ機構23を介して駆動軸6に対し傾動可能かつ同期回転可能に作動連結されている。斜板22の最小傾角は、傾角0ー(斜板が駆動軸に対し直交する状態)近くに設定されている。駆動軸6上には、斜板22を挟んで傾角減少バネ26と復帰バネ27とが設けられている。傾角0ー近傍から最大傾角に向けての斜板22の復帰は、斜板22の回転に伴って傾角増大方向に作用する回転運動のモーメントと復帰バネ27の付勢力に基づくモーメントとの協働によって確保される。
【選択図】図2

Description

本発明は、容量可変型斜板式圧縮機に関し、特に空調システムOFF時における圧縮機の動力消費を従来よりも低減できる容量可変型斜板式圧縮機と、その圧縮機を用いた空調用冷房回路とに関する。
車輌用空調システムの冷房回路には、冷媒ガスを圧縮するための圧縮機が組み込まれている。かかる圧縮機は通常、車輌エンジンから動力を得て駆動される。従来型の車輌用圧縮機は、電磁クラッチ機構を介して駆動源たるエンジンと作動連結されており、冷房負荷が生じたときのみ電磁クラッチによって圧縮機とエンジンとを接続し圧縮機に圧縮動作を行わせている。しかしながら、圧縮機に電磁クラッチ機構を併設すると、全体重量の増加、製造コストの増加、更には電磁クラッチを作動させるための電力消費が避けられないという欠点がある。
これらの欠点を解消するため、電磁クラッチ機構を介在させることなく車輌用圧縮機とエンジンとを直結して圧縮機に常時動力を伝達するいわゆるクラッチレス方式の車輌用圧縮機が提案されている。近年、クラッチレス方式に適した圧縮機として容量可変型の斜板式圧縮機が注目されている。容量可変型斜板式圧縮機は、冷房負荷の変動に応じた圧縮能力(吐出容量)の自律的又は他律的な可変調節性に優れており、エンジンから動力を常に提供する設計を採用しても、エンジン動力の合理的消費が可能と考えられたためである。
確かに、冷房負荷が大きく継続的な冷房運転が求められる限り、クラッチレスタイプの容量可変型斜板式圧縮機には何の不都合もない。しかし、その反面、例えば搭乗者によって車輌空調システムの作動スイッチがOFFされた場合のように、外部からの指令によって冷房機能を停止したときに、クラッチレス圧縮機によるエンジン動力の消費をいかに低減するかが課題となる。というのも、従来の容量可変型斜板式圧縮機には次のような事情があったからである。
一般に容量可変型斜板式圧縮機は、駆動軸に対する斜板の角度(傾角)を制御することでピストンストロークを調節し、その圧縮能力(吐出容量)を調節している。斜板の傾角制御は、特殊な容量制御弁を用いてハウジング内に区画されたクランク室の内圧(Pc)を制御することに依っている。具体的には、クランク室内圧Pcを高めることで傾角が減少し吐出容量が低下するように構成されている。かかる構成において傾角増大方向への斜板の揺動を実現するためには、クランク室内圧Pcを低下させたときに斜板が最大傾角に向けて角度復帰することが必須となるが、従来、斜板角度の復帰動作を確保するためには最小傾角が0°近傍であってはならないという制約があった。即ち、斜板の最小傾角を0°近傍に設定すると、圧縮動作が実質上行われなくなって復帰に必要な圧縮反力が得られず、斜板角度の復帰が非常に困難となり、本来の圧縮動作に入れないという不具合がある。それ故、斜板の最小傾角を例えば+3°〜+5°程度にとどめておき、最小傾角状態でも圧縮機の吐出動作が僅かに維持されるようにして圧縮反力が斜板の傾角増大に貢献する状況を確保する必要があった。こうすることで、容量制御弁によるクランク室内圧Pcの低下に呼応した、傾角増大方向への斜板の復帰が達成される。
このため、従来の容量可変型斜板式圧縮機をクラッチレス化して車輌用空調システムに組み込んだ場合、空調システムの作動スイッチがOFFとされて斜板の傾角が最小傾角に調節されたとしても、常に斜板に圧縮反力が作用するように圧縮機は最小吐出容量での圧縮動作を継続し、エンジンの動力を僅かずつでも消費してしまうという難点があった。このOFF時の動力消費を低減するためには、最小容量運転時の斜板傾角を極力小さくして圧縮反力を極力小さくする必要があるが、この圧縮反力を小さくし過ぎると最小吐出容量(最小傾角)からの復帰ができなくなる。最小吐出容量時の動力消費を低減することと、圧縮反力による角度復帰を確保することとは相反する要求であるため、両方の要求を満足するためには、最小吐出容量(即ち最小傾角)を高精度に調節する必要がある。それ故、従来の容量可変型斜板式圧縮機は製造が難しく製造コストが高かった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容量可変型斜板式圧縮機における最小吐出容量(最小傾角)からの復帰能力を何ら損なうことなく、空調システムOFF時における圧縮機の動力消費を極力低減できるとともに、製造の容易な容量可変型斜板式圧縮機を提供することにある。又、そのような圧縮機を用いた空調用冷房回路を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ハウジング内に区画形成されたシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室と、前記シリンダボアに往復動可能に収容されたピストンと、前記クランク室内に回転可能に支持されると共に外部駆動源から動力を伝達される駆動軸と、連結案内機構により前記駆動軸に対し傾動可能且つ同期回転可能に作動連結されるとともに前記駆動軸と同期回転するときには前記ピストンを往復駆動するためのカムプレートとして機能し得る斜板と、前記クランク室の内圧を制御することにより前記斜板の傾角を制御して、前記ピストンの往復動作に伴う前記シリンダボアから前記吐出室への吐出容量を変化させるクランク圧制御機構とを備えた容量可変型斜板式圧縮機において、前記斜板の最小傾角(θmin)は、吐出反力による角度復帰が確実に可能となる限界角度(θB)未満に設定されており、且つ、前記限界角度(θB)未満の傾角状態にある斜板を最大傾角(θmax)に向けて付勢する復帰バネが設けられており、前記限界角度(θB)未満の斜板が回転する際には、前記復帰バネの付勢力のモーメントが前記斜板の慣性乗積に基づく該斜板を最大傾角へ向かわせる回転運動モーメントと協働して前記限界角度(θB)未満から前記斜板を角度復帰することを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機をその要旨とする(図1,2,7及び9参照)。
この斜板式圧縮機によれば、連結案内機構によって作動連結された駆動軸及び斜板の同期回転時に、クランク圧制御機構によって制御されるクランク室内圧に応じて斜板の傾角が制御され、その傾角に応じて圧縮機の吐出容量が変化する。これは、クランク室内圧の変化に呼応して、クランク室内圧やシリンダボア内圧等のガス圧に基づいて斜板に働く斜板角度を変更するモーメントが増減することに起因する。即ち、シリンダボア内圧によるモーメントは斜板の傾角増大方向に作用し、クランク室内圧によるモーメントは傾角減少方向に作用する。クランク室内圧が吸入圧と等しい場合は、シリンダボア内圧による傾角増大方向のモーメントが勝るが、クランク室内圧が吸入圧より高くなるにつれて傾角減少方向のモーメントが大きくなる。つまり、ガス圧に基づいて斜板に作用するモーメントは斜板の傾角増大方向から傾角減少方向まで広範囲に設定でき、それはクランク室内圧を調節することで自在に制御できる。それ故、クランク圧制御機構によってクランク室内圧が大きくなると、復帰バネの付勢作用等をしのぐ程に前記ガス圧による傾角減少モーメントが増大し、斜板の傾角が最小傾角又はその近傍に設定される。この場合、圧縮機の吐出容量は最小化される。小傾角状態で回転する斜板には、復帰バネの付勢力に基づくモーメントを含む傾角増大方向のモーメントが作用しており、この傾角増大モーメントが前記ガス圧による傾角減少モーメントと均衡することで、斜板の傾角が最小傾角又はその近傍に保持される。
前記限界角度(θB)未満の小傾角状態にある斜板の最大傾角に向けての復帰は、ガス圧による傾角減少モーメントに対してバネ力による傾角増大モーメントを相対的に大きくすることにより達成される。即ち、角度復帰させる場合には、クランク圧制御機構によりクランク室内圧を低下させ、前記ガス圧による傾角減少モーメントを低下させて、バネ力によるモーメントを含む傾角増大モーメントの作用を前記ガス圧による傾角減少モーメントの作用よりも大きくする。こうして、斜板は、吐出反力による角度復帰が可能となる限界角度(θB)未満の小傾角状態からでも最大傾角に向けて角度復帰することができる。
また、斜板の慣性乗積の設定の仕方如何で、斜板回転時の遠心力に起因して斜板に作用する回転運動のモーメントを、斜板角度の復帰動作に役立てることが可能となる。逆に、最小傾角に向かうモーメントが発生するように斜板の慣性乗積が設定された場合には、高速回転時での復帰動作が不能となることがある。請求項1の発明によれば、復帰バネとの協働により、いかなる回転数にあっても容量復帰(斜板の角度復帰)を確実に行うことが可能となる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記斜板が前記駆動軸に対して直交するときの斜板の傾角を0°とした場合、前記斜板の最小傾角(θmin)は、0°又は該圧縮機の運転に必要な動力が傾角0°の場合の必要動力とほぼ等しくなる正もしくは負の角度に設定されていることを特徴とする(図1,2及び8参照)。
請求項2の発明は、傾角が0°近傍の一定範囲では、斜板を回転させるための圧縮機の動力消費は傾角が0°の場合とほとんど変わらないという技術的知見に基づいている(図8のグラフ参照)。斜板の傾角が0°又はその近傍に設定されれば、斜板は、自己の回転にもかかわらずピストンを往復駆動させるためのカムプレートとしての機能を実質上失い、結果として圧縮機の吐出容量がゼロ又は極小状態となり、動力消費を低減可能な最小値まで低減することができる。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記復帰バネは、小傾角状態にある斜板を該圧縮機の最大吐出容量の2%〜20%の吐出容量に対応した正の角度(θx)に復帰させるまでの間は少なくとも、前記斜板に付勢作用を及ぼすものであることを特徴とする。
復帰バネの作用により斜板の傾角を前記正の角度(θx)にまで復帰させることができれば、圧縮機の吐出動作時の圧縮反力がピストンに作用し、これが傾角増大方向へのモーメントとして貢献するようになる。さすれば、復帰バネが斜板に付勢作用を及ぼさなくとも、それ以後の角度復帰は確保される。
請求項4の発明は、請求項3に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記圧縮機の最大吐出容量の2%〜20%の吐出容量に対応した正の角度(θx)は前記限界角度(θB)以上に設定されていることを特徴とする(図7参照)。
この構成によれば、駆動軸及び斜板の回転開始直後から、圧縮機の吐出動作時の圧縮反力に基づく傾角増大モーメントが働くため、吐出能力の迅速な立ち上げが可能となる。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量可変型斜板式圧縮機及びそれに繋がれた外部冷媒回路から構成される空調用冷房回路であって、前記圧縮機の内部又は前記外部冷媒回路の途中には、前記圧縮機の吐出室と前記外部冷媒回路とを連通させる吐出通路を選択的に開放又は閉塞する逆止弁機構が設けられており、この逆止弁機構は、吐出室側圧力と外部冷媒回路側圧力との差圧が所定の圧力未満である限り、前記吐出通路を閉塞することを特徴とする空調用冷房回路をその要旨とする(図4及び図5参照)。
この空調用冷房回路によれば、吐出室側圧力と外部冷媒回路側圧力との差圧が所定の圧力未満である限り、逆止弁機構によって吐出通路が閉塞される。従って、圧縮機の運転が実質上停止されている場合(最小吐出容量での運転時を含む)に、外部冷媒回路内を冷媒が流動する事態を確実に阻止して空調用冷房回路の作動を確実に停止することができる。又、前記吐出通路を完全に閉塞することで、圧縮機の内部循環経路を確実に確保して冷媒ガスと共に潤滑油の内部移動を確実に行わせることが可能となる。
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の容量可変型斜板式圧縮機によれば、復帰バネの採用によって、吐出反力による角度復帰が可能な限界角度未満の小傾角状態からでも斜板の復帰動作が確保される。このため、斜板式圧縮機における最小吐出容量からの復帰能力を損なうことなく、空調システムのOFF時における圧縮機の動力消費を極力低減することができる。又、従来の容量可変型斜板式圧縮機とは異なり、最小傾角設定の困難さがなく、製造の容易な容量可変型斜板式圧縮機とすることができる。特に、本件の容量可変型斜板式圧縮機をクラッチレス方式で車輌用空調システムに組み込んだ場合には、外部駆動源から斜板への動力伝達にもかかわらず、外部駆動源の動力を無駄に消費する事態を回避することができ、従来のクラッチレス方式よりも経済性を更に高めることができるという効果を奏する。
請求項5に記載の空調用冷房回路によれば、逆止弁機構の配設により、空調システムのOFF時に、外部冷媒回路内を冷媒が流動する事態を確実に阻止して空調用冷房回路の作動を確実に停止することができる。又、圧縮機の吐出室と外部冷媒回路とを連通させる吐出通路を逆止弁機構で完全に閉塞することで、圧縮機内に内部循環経路を確保して冷媒ガスと共に潤滑油の内部移動を確実に行わせることが可能となる。
斜板が最大傾角状態にあるときの斜板式圧縮機の断面図。 斜板の傾角が減少した状態の斜板式圧縮機の断面図。 第1実施形態におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 図1の斜板式圧縮機における吐出通路等を示す要部断面図。 図4の吐出通路の閉塞状態を示す要部断面図。 斜板の傾動範囲を説明するための部分断面図。 斜板角度と圧縮機の吐出容量との関係を概念的に示すグラフ。 斜板角度と圧縮機の駆動動力との関係を概念的に示すグラフ。 斜板の回転運動モーメントの特性を示すグラフ。 傾角決定に関与する二つのバネの合力の作用と吐出容量との関係を示すグラフ。 第2実施形態におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第3実施形態の実施例3−1におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第3実施形態の実施例3−2におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第3実施形態の実施例3−3におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第3実施形態の実施例3−4におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第3実施形態の実施例3−5におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第3実施形態の実施例3−6におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第4実施形態の実施例4−1におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第4実施形態の実施例4−2におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第5実施形態の実施例5−1におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第5実施形態の実施例5−2におけるクランク圧制御機構の概要とそこで用いる容量制御弁の断面を示す図。 第5実施形態の実施例5−3におけるクランク圧制御機構の概要を示す図。 前記実施例5−3で用いる容量制御弁の断面図。 第6実施形態におけるクランク圧制御機構の概要を示す図。
以下に、本発明を車輌用空調システムに用いられる容量可変型斜板式圧縮機に具体化した第1〜第6実施形態について説明する。なお、第1実施形態において説明する容量可変型斜板式圧縮機におけるクランク圧制御機構(容量制御弁を含む)以外の構成は、第2〜第6実施形態においても共通する。第2〜第6実施形態は、主としてクランク圧制御機構のその他の類型を示すものである。
(第1実施形態)
(圧縮機本体の基本構成)
容量可変型斜板式圧縮機(クラッチレスタイプ)の基本構成を図1及び図2を参照して説明する。斜板式圧縮機は、シリンダブロック1と、そのシリンダブロック1の前端に接合されるフロントハウジング2と、シリンダブロック1の後端に弁形成体3を介して接合されるリヤハウジング4とを備えている。シリンダブロック1、フロントハウジング2、弁形成体3及びリヤハウジング4は、複数本の通しボルト16(図4及び図5に一本のみ図示)により相互に接合固定され、この斜板式圧縮機のハウジングを構成している。シリンダブロック1とフロントハウジング2とに囲まれた領域には、クランク室5が区画されている。
駆動軸6は、クランク室5内においてフロントハウジング2とシリンダブロック1のそれぞれに設けられた前後一対のラジアル軸受け7,8によって回転可能に支持されている。シリンダブロック1の中央には、コイルバネ9及びスラスト軸受け10が配設され、駆動軸6の後端部は、コイルバネ9で前方に付勢されたスラスト軸受け10によって支持されている。又、フロントハウジング2の前端円筒部には、ボールベアリング11を介してプーリ12が回転可能に支持されている。プーリ12は、フロントハウジング2から突出した駆動軸16の前端部に連結されている。プーリ12の外周にはベルト13が巻き掛けられており、このベルト13を介して当該圧縮機は外部駆動源としての車輌エンジン14に、電磁クラッチ等のクラッチ機構を介することなく作動連結されている。なお、このようにクラッチ機構を介在させることなく外部駆動源から駆動軸6に直接的に動力を伝達するタイプの圧縮機をクラッチレスタイプと呼ぶ。
駆動軸6の前端部外周とフロントハウジング2の内周壁との間には、軸封装置とてのリップシール15が介在され、クランク室5の前方を封止している。
クランク室5において駆動軸6上には、回転支持体21が固定されている。また、クランク室5内にはカムプレートとしての斜板22が収容されている。斜板22の中央部には挿通孔が貫設され、この挿通孔に駆動軸6が挿通されている。更に斜板22は、連結案内機構としてのヒンジ機構23を介して回転支持体21及び駆動軸6に作動連結されている。斜板22は、駆動軸6を挟んで前記ヒンジ機構23と反対側にカウンタウエイト部22aを有している。
前記ヒンジ機構23は、回転支持体21のリヤ面に突設された一対の支持アーム24(一つのみ図示)と、斜板22のフロント面に突設された一対のガイドピン25(一つのみ図示)とで構成される。各支持アーム24はその先端部に形成された円筒状のガイド孔24aを有し、各ガイドピン25はその先端部に形成された球状部25aを有している。これら球状部25aは、それぞれ対応する支持アーム24のガイド孔24a内に挿入されている。ヒンジ機構23を構成する支持アーム24とガイドピン25との連係、及び、斜板22の中央挿通孔内での駆動軸6との接触により、斜板22は駆動軸6と同期回転可能であると共に、駆動軸6の軸心(軸線)L1に沿った方向へスライド可能な状態で駆動軸6に対して傾動可能となっている。なお、この傾動の回動中心を枢軸Aと呼ぶ。この枢軸Aは図1の紙面と直交する方向に延びており、駆動軸の軸心L1とはねじれの位置で直角に交差する関係にある。又、枢軸Aは、駆動軸6に沿った斜板22のスライド移動に伴ってその位置を変更する。
図1及び図2に示すように、回転支持体21と斜板22との間において駆動軸6上には、傾角減少バネとしてのコイルバネ26が設けられている。このコイルバネ26は斜板22をシリンダブロック1に接近する方向(即ち傾角減少方向)に付勢する。又、斜板22よりも後方の駆動軸6上にはサークリップ27aが固着され、そのサークリップ27aと斜板22との間には、復帰バネとしてのコイルバネ27が設けられている。このコイルバネ27は、駆動軸6に沿って前後に移動できるが、斜板22による押圧を受けるとそれに抗して該斜板22をシリンダブロック1から離れる方向(即ち傾角増大方向)に付勢する。又、サークリップ27aは、コイルバネ27がサークリップ27aの位置よりも後方へ移動するのを規制する。
次に、斜板22の傾動範囲について説明する。
図6に示すように、駆動軸6の軸心L1と直交し、且つ枢軸Aを含む垂直平面をHとする。この平面Hと斜板22とのなす角度が斜板角度(傾角)である。斜板22と平面Hが平行となるときが傾角0°である。傾角0°では、斜板22はカムプレートとして機能しなくなり、ピストンストロークがゼロとなり、圧縮機の吐出容量もゼロとなる。
斜板22の上端がシリンダブロック1側に傾倒する方向(図6において+θと示された方向)を正の方向とし、それとは反対の方向(図6において−θと示された方向)を負の方向とする。又、斜板22が傾動可能な最大角度をθmaxとし、斜板22が傾動可能な最小角度をθminとすると、斜板22の傾動可能範囲はθmin〜θmaxである。
斜板角度θが正の方向に増大すると圧縮機の吐出容量は増大し、傾角θが最大傾角θmaxのときに最大吐出容量(100%容量)となる。この最大傾角θmaxは、図1に示すように、回転支持体21のリヤ面に設けられた規制突部21aに斜板22のカウンタウエイト部22aが当接することで規制される。
他方、斜板22の最小傾角θminは次の手法1又は2のいずれかによって規制される。
(手法1)斜板22を最大吐出容量状態(θmax)から傾角減少方向に移動させると、斜板22はまず復帰バネ27の一端に当接する。更に移動させると、サークリップ27aと斜板22との間に挟まれた復帰バネ27は収縮し、ついには復帰バネ27が縮みきって斜板22はそれ以上の傾角減少方向への移動が不能となる。これにより、最小傾角θminが規制される。
(手法2)下死点位置のピストン29Bの端面が弁形成体3に当接することで斜板22のそれ以上の傾動が阻止される。これにより、最小傾角θminが規制される。
次に、最小傾角θminの設定値を図7及び図8に基づいて説明する。
本件発明者らは、図8に示すように、斜板22の傾角θが傾角0°を含む一定範囲R内にある限り、斜板22を回転させるのに必要な動力Wは、傾角0°の場合の必要動力とほとんど変わらないことを発見した。換言すれば、斜板22を必要最小な動力で駆動できる角度範囲Rが0°近傍に存在することを見出したのである。その角度範囲Rの上限値をθAとすれば、θAは、従来の斜板式圧縮機において最小傾角とされていた角度θCより小さく、且つ、吐出反力による角度復帰が可能となる限界角度θB以下である。そして、前記最小傾角θminは、空調システムOFF時の動力消費の低減に支障を来たさないように、角度範囲R内の任意の値に設定されている(図7参照)。結果として、各角度は、θmin≦θA≦θB<θCの関係となっている。
最小傾角θminの値は、θA以下である限り、極小の正の値、0°又は0°を超えた負の値のいずれに設定されてもよいが、第1〜第6実施形態では、最小傾角θminはほぼ0°に設定されている。
なお、車輌エンジン14が停止して圧縮機が完全に停止した状態では、傾角減少バネ26も復帰バネ27も共に斜板22に当接する。このときの斜板角度θxは、両バネ26,27の付勢力の釣り合いによって決定される。第1〜第6実施形態では、その傾角θxは、吐出反力による容量復帰が可能な限界角度θB(図7参照)以上に設定されている。この傾角θxは、従来の最小傾角θCと同等又はそれ以上であってもよい。
上記θmin、復帰バネ27、両バネ26,27の付勢力設定は、本発明の最も特徴的な部分である。これらの技術的意義については後述の動作説明において更に詳細に述べる。
シリンダブロック1には、駆動軸6を取り囲むように複数のシリンダボア1a(図1では二つだけ図示するが当該圧縮機では7つを想定)が形成され、各シリンダボア1aには片頭型のピストン29が往復動可能に収容されている。各ピストン29の前端部(ピストンの圧縮端面と反対側の端部)は、一対のシュー30を介して斜板22の円盤状外周部に係留され、各ピストン29と斜板22とはシュー30を介して作動連結されている。このため、斜板22が0°以外の傾角で傾斜している限り、駆動軸6と作動連結された斜板22の回転運動がシュー30を介してピストン29の往復直線運動に変換される。換言すれば、斜板22の傾角変化に応じてピストン29のストロークが変わり、圧縮機の吐出容量が変化する。但し、前述のようなヒンジ機構23を採用したため、斜板22の傾角変化にもかかわらず、各シリンダボア1aでのピストン29の上死点位置はほぼ一定となる。各ピストン29が上死点位置にあるときのボア内トップクリアランスは、ゼロ近辺に維持される。
尚、斜板22が正の最大傾角(θmax)にあるときに(図1参照)、この圧縮機の吐出能力が最大となる。又、図1の上側のピストン29Aの位置が上死点位置Tであり、図1の下側のピストン29Bの位置が下死点位置である。前記ヒンジ機構23は上死点位置T側に存在する。
リヤハウジング4には、吸入室31と、その吸入室31を取り囲む略環状の吐出室32とが区画形成されている。図1及び図4に示すように、吸入室31は、リヤハウジング4に穿設された吸入通口43を介して外部冷媒回路50(後述)の下流側と接続されている。なお、吸入室31および吸入通口43は、この圧縮機における吸入圧領域を構成する。
更に弁形成体3には、各シリンダボア1aに対応して、吸入ポート33、同吸入ポート33を開閉する吸入弁34、吐出ポート35および同吐出ポート35を開閉する吐出弁36が形成されている。
外部冷媒回路50から吸入通口43を介して吸入室31に提供される冷媒ガス(吸入圧Ps)は、ピストン29の吸入動作(上死点位置から下死点位置への移動)に伴い、吸入ポート33及び吸入弁34を介してシリンダボア1aへ吸入される。シリンダボア1aに吸入された冷媒ガスは、ピストン29の圧縮動作(下死点位置から上死点位置への移動)に伴い、吐出ポート35及び吐出弁36を介して吐出室32へ吐出される。ピストン29、斜板22及びヒンジ機構23を介して回転支持体21に作用する冷媒ガス圧縮時の圧縮反力(F)は、回転支持体21及びそのフロント側に設けられたスラストベアリング28を介してフロントハウジング2の内壁に受け止められる。
図4及び図5に示すように、シリンダブロック1の側壁部(図4では上部)には、吐出ケース90が取着され、その内部空間は吐出マフラ91として区画されている。吐出ケース90の上壁部には略L字状に屈曲設定された吐出口92が設けられ、この吐出口92を介して吐出マフラ91は外部冷媒回路50の上流側と接続されている。なお、吐出マフラ91は、各シリンダボア1aから吐出室32へ間欠的に吐出される圧縮冷媒ガスの吐出脈動に起因する騒音等を緩和する。
シリンダブロック1の側壁部内には、通しボルト16と平行に延びる弁孔93が形成されている。この弁孔93の後端(図4では右端)は、弁形成体3に穿設された吐出通口94を介して、リヤハウジング4の吐出室32と連通している。又、シリンダブロック1には、弁孔93の略中央域と吐出マフラ91とを連通させる通孔95が形成されている。従って、吐出通口94、弁孔93、通孔95、吐出マフラ91および吐出口92は、吐出室32に吐出された圧縮冷媒ガス(吐出圧Pd)を外部冷媒回路50に導く吐出通路を構成する。又、この吐出通路(91〜95)と吐出室32とは、この圧縮機における吐出圧領域を構成する。
前記弁孔93内には、開閉弁体としてのスプール弁96が前後摺動可能に配設されている。弁孔93に配置されたスプール弁96の内部は、シリンダブロック1に形成された背圧通路98を介して吐出マフラ91と連通している。スプール弁96の後端面96aは、吐出通口94を完全に閉塞できる程度の面積を有している。
又、スプール弁96内にはバネ97が配設され、このバネ97は、その一端を弁孔93の前端(図4では左端)の弁孔底面に掛止してスプール弁96を弁形成体3の方向に付勢している。このため、スプール弁96は、弁孔93内において、バネ97及びスプール弁背圧による右方向への付勢作用とスプール弁の後端面96aが受ける前記吐出通路の内圧(即ち吐出圧Pd)に基づく左方向への押圧作用とが均衡する位置に配置される。
バネ97の付勢力は、吐出室32の内圧(吐出圧Pd)と吐出マフラ91の内圧(Pm)との差(Pd−Pm)が所定値ΔP(例:0.5kgf/cm2 )未満では、スプール弁96が吐出通路(91〜95)を閉塞するように設定されている。前記差圧(Pd−Pm)が所定値ΔP以上のときには、スプール弁96が常に弁孔93の前半領域の開放位置(図4に示す位置)に配置され、吐出通口94と通孔95とが弁孔93の後半領域を介して相互に連通する。他方、前記差圧(Pd−Pm)が所定値ΔP未満のときには、バネ97による右方向への付勢作用が勝って、スプール弁96が弁孔93の後半領域の閉塞位置(図5に示す位置)に配置され、吐出通口94と通孔95との相互連通がスプール弁96によって遮断されるようになっている。なお、吐出通路(91〜95)を選択的に開放又は閉塞するスプール弁96とその関連要素(93,97)は、逆止弁機構を構成する。前記ΔPは逆止弁機構の開弁圧として位置付けられる。
更に、この第1実施形態によれば、前記斜板式圧縮機のシリンダブロック1及びリヤハウジング4内には、図3に示すような吐出室32とクランク室5とを接続する一連の給気通路38,39が設けられると共に、クランク室5と吸入室31とを接続する抽気通路40が設けられている。抽気通路40の途中には固定絞り41が設けられ、給気通路38,39の途中には容量制御弁60が設けられている。又、リヤハウジング4には、前記給気通路38,39及び抽気通路40と干渉することなく、検圧通路42が設けられている。検圧通路42は、吸入圧領域を構成する吸入室31の内圧(吸入圧Ps)を容量制御弁60の一部に作用させるための連通路である。
なお、前記通路38,39,40及び42、固定絞り41、並びに、容量制御弁60は、吸入圧力を目標値に制御するのに必要な斜板角度を得られるようにクランク室5の内圧(クランク圧Pc)を制御するためのクランク圧制御機構を構成する。
(斜板に働くモーメント等)
斜板22にはその回転運動(即ち遠心力)に起因するモーメントが働く。図9に示すように、斜板22の傾角θが小さい場合には回転運動のモーメントが傾角増大方向に作用し、傾角θが大きい場合には回転運動のモーメントが傾角減少方向に作用するように斜板22は設計されている。より詳しくは、斜板22が傾角0°の近傍にある場合には、斜板22の回転に伴って回転運動のモーメントが傾角増大方向に作用する(もしくはゼロとなる)ように、斜板22の形状、斜板22の重心Gの座標および斜板22の質量m等が決められている。
なお、本件出願と同一出願人の先願である特開平7−293429号公報(その公知先願に対応する外国出願として、米国特許第5573379号、ドイツ特許公開第19514748号がある)には、斜板の形状、斜板の重心Gの座標および斜板の質量等をうまく選択して斜板の慣性乗積を適切に設定すれば、斜板回転時に斜板に働く回転運動のモーメントを前述したように設定することができる旨、詳細に述べられている。
斜板22の傾角決定に関与するモーメントとしては、前記回転運動のモーメントの他に、傾角減少バネ26と復帰バネ27との付勢作用バランスに基づくバネ力によるモーメントと、ガス圧によるモーメントとがあり、これら三者の関係に基づいて、斜板22の傾角θが前記θminとθmaxとの間の任意の角度に決定される。
前記ガス圧によるモーメントとは、圧縮工程にあるシリンダボアのピストンに作用する圧縮反力と、吸入工程にあるシリンダボアの内圧と、クランク室の内圧Pcとの相互関係に基づいて発生するモーメントである。このモーメントは、後述するように、容量制御弁(60等)によるクランク圧Pcの制御によって調節される。
前記回転運動のモーメントは、斜板22の回転時の遠心力に起因するものであるため、斜板22の停止時や低速回転時にはほとんど作用しない。
前記バネ力によるモーメントは、傾角減少バネ26と復帰バネ27との付勢作用バランスに基づいて作用するものである。この圧縮機では、これら両バネ26,27の付勢力は図10に示すような関係に設定されている。
図10において始動容量とは、完全停止した状態の圧縮機を始動するときの容量であり、最大吐出容量の2%〜20%程度(好ましくは4%〜10%程度)に設定されている。その始動容量に対応する斜板22の角度は前記θxである。図10から読み取れるように、斜板の傾角θが前記θx以下の場合には、復帰バネ27の作用が優勢となり、二つのバネ26,27の合力は傾角増大方向に作用する。このとき、バネ力によるモーメントも傾角増大方向に作用する。他方、斜板の傾角θが前記θx〜θmaxの範囲にある場合には、二つのバネ26,27の合力(及びバネ力によるモーメント)は傾角減少方向に作用することになる。
(外部冷媒回路と外部制御系の概要)
圧縮機に組み込まれている容量制御弁60について説明する前に、それと関係の深い外部冷媒回路50と外部制御系の概要を説明する。
図4に示すように、圧縮機の吐出ケース90の吐出口92と、リヤハウジング4の吸入通口43とは、外部冷媒回路50を介して接続されている。この外部冷媒回路50は圧縮機とともに車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
外部冷媒回路50には、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53が設けられている。膨張弁52は、凝縮器51と蒸発器53との間に介在される可変絞り抵抗として機能する。そして、凝縮器51と蒸発器53との間に圧力差が存在し得るように作用し、且つ熱負荷に見合った液冷媒を蒸発器53に供給する。この膨張弁52の弁開度は、蒸発器53の出口側に設けられた感温筒52aの温度検知および蒸発圧力(具体的には蒸発器入口又は出口の圧力)に基づいてフィードバック制御される。これにより、蒸発器53での冷媒の蒸発状態が適度な過熱度を持つように外部冷媒回路50における冷媒流量が調節される。
更に蒸発器53の近傍には、温度センサ54が設置されている。この温度センサ54は蒸発器53の温度を検出し、この検出温度情報を制御コンピュータ55に提供する。この制御コンピュータ55は、車輌用空調システムの冷暖房に関する一切の制御を司っている。温度センサ54の他に、制御コンピュータ55の入力側には、車輌の室内温度を検出する室温センサ56と、車輌の室内温度を設定するための室温設定器57と、空調システム作動スイッチ58と、日射量を検知する日射量センサ56Aとが接続されている。他方、制御コンピュータ55の出力側には、容量制御弁60のコイル86(後述)への通電を制御する駆動回路59が接続されている。
制御コンピュータ55は、温度センサ54から得られる蒸発器温度、室温センサ56から得られる車室内温度、日射量センサ56Aからの日射量情報、室温設定器57によって予め設定された所望室温、及び、空調システム作動スイッチ58からのON/OFF設定状況等の外部情報に基づいてコイル86への適切な通電量を演算する。そして、その演算した電流値の電流を駆動回路59から容量制御弁60に供給させ、容量制御弁60の設定圧(設定吸入圧)Psetを外部的に可変制御する。
又、制御コンピュータ55は、図示しないエンジン14の電子制御装置(ECU)とも接続されており、当該ECUからエンジン14の起動・停止やエンジン回転数に関する情報を入力している。なお、制御コンピュータ55及び駆動回路59は、第1〜第6実施形態における外部制御手段を構成する。
(容量制御弁60の構成)
次に、第1実施形態におけるクランク圧制御機構を構成する容量制御弁60の詳細を図3に基づいて説明する。
容量制御弁60は、バルブハウジング61とソレノイド部62とを備え、両者は該制御弁60の中央付近で相互に接合されている。バルブハウジング61とソレノイド部62との間には弁室63が区画形成され、その弁室63内には弁体64が移動可能に収容されている。この弁室63は、その側壁部に形成された弁室ポート67および上流側給気通路38を介して吐出室32に連通している。
弁室63の上部には弁孔66が開口形成されている。この弁孔66は、バルブハウジング61の軸線方向に延びている。又、弁室63よりも上のバルブハウジング61には、ポート65が形成されている。このポート65は前記弁孔66と直交する方向に延びている。そして、弁室63は、弁孔66、ポート65および下流側給気通路39を介してクランク室5に連通されている。
バルブハウジング61の上部には、感圧室68が区画形成されている。この感圧室68は、その側壁部に形成された圧導入ポート69および前記検圧通路42を介して吸入室31に連通され、吸入圧Psを導入可能となっている。感圧室68の内部にはベローズ70が設けられ、そのベローズ70内にはベローズ70の可動端(下端)を伸張方向に付勢する設定バネ70aが設けられている。ベローズ70内は真空又は減圧状態とされている。なお、ベローズ70及び設定バネ70aは感圧部材を構成する。
感圧室68と弁室63との間においてバルブハウジング61の中心には、前記弁孔66と連続するガイド孔71が形成されている。このガイド孔71内には、感圧ロッド72が摺動可能に挿通されている。感圧ロッド72の上端部はベローズ70の可動端に固着され、感圧ロッド72の下端部は弁体64の上端に固定されている。なお、感圧ロッド72の弁体64側端部は、弁孔66での冷媒ガス流通を確保するために弁孔66の内径よりも小径となっている。このように、感圧ロッド72を介して弁体64はベローズ70に作動連結されている。なお、感圧室68、ベローズ70、設定バネ70a及び感圧ロッド72は、吸入圧Psの変動を弁体64に伝達する感圧機構を構成する。
容量制御弁60の下半部を占めるソレノイド部62は、有底円筒状の収容筒75を備えている。収容筒75の上部には固定鉄心76が嵌合され、この嵌合により収容筒75内にソレノイド室77が区画される。ソレノイド室77には、ほぼ有蓋円筒状をなすプランジャとしての可動鉄心78が垂直方向に往復動可能に収容されている。可動鉄心78と収容筒75の底面との間には、追従バネ79が介装されている。追従バネ79は、可動鉄心78を上方向(固定鉄心76に接近する方向)に付勢している。又、固定鉄心76の中心にはガイド孔80が垂直に形成され、このガイド孔80内には、前記弁体64と一体化されたソレノイドロッド81が摺動可能に挿通されている。なお、感圧ロッド72、弁体64及びソレノイドロッド81は一体となって作動部材を構成する。
弁室63内には強制開放バネ74が設けられている。この強制開放バネ74は、弁体64及びソレノイドロッド81を下方向(弁孔66を開放する方向)に付勢する。尚、この強制開放バネ74の下向きの付勢力は、前記追従バネ79の上向きの付勢力に比してかなり大きく設定されており、電磁力がゼロもしくは小さい間は、弁は強制開放バネ74によって常に開いた状態とされる。
ソレノイドロッド81の下端部(可動鉄心78側の端部)は、前述のような強制開放バネ74と追従バネ79との付勢バランスに基づいて可動鉄心78の上面に当接される。こうして、可動鉄心78と弁体64とがソレノイドロッド81を介して作動連結されている。
ソレノイド室77は、固定鉄心76の側壁部に形成された連通溝82、バルブハウジング61内に貫通形成された連通孔83、及び、この制御弁60の装着時にリヤハウジング4の壁部との間に形成される環状の小室84を介して、前記ポート65に連通されている。換言すれば、ソレノイド室77は、弁孔66と同じ圧力環境下(即ちクランク圧Pc下)に置かれている。又、有蓋円筒状の可動鉄心78には孔85が穿設され、この孔85を介してソレノイド室77における可動鉄心78の内外が均圧化されている。
更に、固定鉄心76及び可動鉄心78の周囲には、これら鉄心76,78を跨ぐ範囲においてコイル86が巻回されている。このコイル86には、制御コンピュータ55の指令に基づいて駆動回路59から所定の電流が供給される。そして、その供給電流に応じた大きさの電磁力がコイル86によって生じ、その電磁力の影響を受けて可動鉄心78が固定鉄心76に吸引され、ソレノイドロッド81を上動させる。こうして、容量制御弁60の設定圧Psetが外部的に可変制御される。
(圧縮機の通常運転時における容量可変動作)
次に、この圧縮機の通常運転時での容量可変に関する作用等を説明する。
車輌エンジン14の駆動中で空調システム作動スイッチ58がON状態の場合に、室温センサ56の検出した室温が室温設定器57の設定温度を超えているものとする。この場合、制御コンピュータ55は、空調制御プログラムに定められた計算方式に従ってコイル86への通電量を演算し、その通電量でのコイル励磁を駆動回路59に指令する。すると、駆動回路59によってコイル86に所定電流が供給され、両鉄心76,78間にはその供給電流値に応じた電磁吸引力が生じる。この電磁吸引力により、強制開放バネ74の付勢力に抗して、ソレノイドロッド81及び弁体64が上動され、弁孔66の開度が減少する。ここで言う開度減少には、弁体64によって弁孔66が完全に閉塞される場合も含まれる。こうして強制開放バネ74の下向き付勢力と、前記電磁吸引力及び追従バネ79による上向き付勢力とが均衡する位置に弁体64が配置され、その配置に応じて弁孔66の開度が調節される(設定圧Psetの設定)。
更に、前述のようにコイル86が励磁され弁孔66が所定の開度に調節された状態にあって、検圧通路42を介して感圧室68に導入される吸入圧Psの変動に応じてベローズ70が変位する。このベローズ70の変位は感圧ロッド72を介して弁体64に伝達される。その結果、コイル励磁に基づく弁孔66の開度が、吸入圧Psに感応したベローズ70の影響を受けた弁体64によって再調整(又は補正)される。
このように、容量制御弁60における弁孔66の開度(以下単に「弁開度」と言う)は、駆動回路59からの供給電流値によって調節される可動鉄心78の上向き付勢力、追従バネ79の上向き付勢力、強制開放バネ74の下向き付勢力および吸入圧Psの変動の影響を受ける感圧機構の付勢力の四者のバランスにより最終的に決定される。
さて、車輌エンジン14の駆動中且つ空調システム作動スイッチ58がON状態のもとで、冷房負荷が大きい場合には、例えば室温センサ56が検出した車輌の室温が室温設定器57の設定温度よりも大きくなる。この場合、制御コンピュータ55は、検出した室温と設定温度とに基づいて、制御弁60の設定吸入圧Psetが小さくなるように駆動回路59を制御する。即ち、検出室温が高いほど、制御コンピュータ55は駆動回路59に対して供給電流値を大きくするように指令する。そして、固定鉄心76と可動鉄心78との電磁吸引力を高め、弁体64によって弁開度を小さくする方向とする。そして、吸入圧Psが低くても、弁孔66が弁体64によって閉塞され易くする。別言すれば、冷房負荷が大きくて(即ち室温が高め)吸入圧Psが高くなる場合には、感圧機構の動作によって弁孔66が確実に閉塞され(弁開度がゼロ)、それ故に斜板22の傾角が最大傾角(θmax)に向かって迅速に増大するようにする。
弁孔66が閉塞された(又は弁開度が絞られた)場合に斜板22の傾角が増大するのは次の理由による。
クランク室5は、給気通路38、容量制御弁60及び給気通路39を介して吐出室32から高圧冷媒ガスの供給を受ける一方、固定絞り41を有する抽気通路40を介して吸入室42に冷媒ガスを逃がしている。制御弁60の弁開度が小さくなって冷媒ガスの供給量よりも放出量の方が多くなると、クランク圧Pcが次第に低下する。その結果、ピストン29の背圧が次第に低くなり、ピストンをシリンダ方向に押す荷重、即ち斜板傾角を減少させる方向の荷重が相対的に小さくなり、斜板22の傾角が増大する。
弁孔66が弁体64によって閉塞されて容量制御弁60の弁開度がゼロになると、吐出室32からクランク室5への高圧冷媒ガスの供給が停止する。すると、クランク圧Pcは吸入圧Psにほぼ等しくなり、圧縮反力によるガス圧のモーメントが相対的に大きくなって、斜板22の傾角が最大となる。この最大傾角(θmax)においては各ピストン29のストロークも最大となり、圧縮機の吐出容量は最大となる。こうして、大きな冷房負荷に対応すべく、車輌空調システムの冷房能力が最大となる。
逆に、空調システム作動スイッチ58がON状態のもとで、冷房負荷が小さい場合には、例えば室温センサ56が検出した室温と室温設定器57の設定温度との差が小さくなる。この場合、制御コンピュータ55は、設定吸入圧Psetが大きくなるように駆動回路59を制御する。即ち検出室温が低いほど、制御コンピュータ55は駆動回路59に対して供給電流量を小さくするように指令する。そして、固定鉄心76と可動鉄心78との電磁吸引力を弱め、弁開度を大きくする方向とする。そして、吸入力Psが少々高くても、弁孔66が弁体64によって閉塞され難くする。別言すれば、冷房負荷が小さくて(即ち室温が低め)吸入圧Psが低めの場合には、感圧機構の動作にもかかわらず、弁孔66の開放が確実に確保され、それ故に、斜板22の傾角が減少方向に向かって迅速に減少するようにする。
弁開度が大きくなると斜板22の傾角が減少するのは、弁開度の増大によってクランク室5からのガス放出量よりもガス供給量が増えることでクランク圧Pcが次第に上昇することに由来する。クランク圧Pcの上昇は、ピストン29の背圧を高める。その結果、ガス圧による傾角減少方向のモーメントが大きくなり、斜板22の傾角が減少する。
更に、熱負荷が低い場合、例えば車外の気温の方が室温設定器57の設定温度より低い場合、斜板22の傾角θは最終的に0°又はその近傍まで減少される。この場合、斜板22が回転するにもかかわらず各ピストン29のストロークはほぼゼロとなり、結果として圧縮機の吐出容量はほぼ0%となる。このとき、圧縮機はエンジン14から動力伝達を受けるにもかかわらず、実質的な仕事をしないので動力をほとんど消費しない。
(OFF運転状態での圧縮機の動作)
次に、第1実施形態における容量可変型斜板式圧縮機のOFF運転時動作について各場面毎に説明する。
場面1:車輌エンジン14の駆動中に空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り替えられたとき
圧縮機が通常の吸入・圧縮動作をしているときに、空調システム作動スイッチ58がOFFされると、制御コンピュータ55は、容量制御弁60への電流供給を停止する。すると、制御弁60は全開となり、吐出室32から大量の冷媒ガスがクランク室5に流入し、クランク圧Pcが上昇する。この時のPcの昇圧度合いは、通常の可変運転時よりもはるかに大きい。
クランク圧Pcの上昇に伴い、ガス圧によるモーメントが傾角減少方向に作用するようになり、吐出容量が小さくなる。小吐出容量では、斜板慣性乗積による回転運動のモーメントとバネ力によるモーメントが傾角増大方向に作用するが、クランク圧Pcの上昇による傾角減少方向のモーメントがこれらに勝っており、斜板22の傾角θは最小傾角θmin付近まで減少し、吐出容量はほぼゼロとなる。
吐出容量がほぼゼロとなると、吐出室32からの制御弁60を経由してのクランク室5へのガス流出もあるため、吐出室32の内圧は減少する。すると、スプール弁96の前後差圧が前記所定値(弁開圧)ΔP未満となり、逆止弁機構が閉じられ、外部冷媒回路50の高圧側から吐出室32への高圧冷媒ガスの逆流も阻止され、吐出室32の内圧は更に下降傾向を著しくする。このとき、クランク圧Pcは、吸入室31及び吐出室32の各内圧、並びに、全開の制御弁60及び抽気側の固定絞り41での流体抵抗によって決定される圧力となる。
上記のように吐出容量がゼロ、逆止弁機構が閉、制御弁60が全開の状態が、数秒から数十秒続くと、吐出室32の内圧と吸入室31の内圧との差圧が小さくなる(0.1MPa以下程度)。この差圧の減少により、ガス圧が斜板に及ぼす傾角減少方向のモーメントが減少し、斜板の回転運動とバネ力とによる傾角増大方向のモーメントが相対的に大きくなる。すると、斜板傾角は少しだけ増大し、圧縮機は冷媒ガスの吸入・圧縮動作を開始する。すると再び吐出室32の内圧が上昇し、ガス圧による傾角減少方向のモーメントが再び大きくなり、傾角は再びやや減少する。空調システム作動スイッチ58のOFFによって斜板22の傾角は最小傾角θminに設定されるが、スイッチOFF直後には斜板22は最小傾角θmin付近で微少な角度変動を繰り返した後、ガス圧による傾角減少方向のモーメントと、回転運動とバネ力とによる傾角増大方向のモーメントとがバランスする傾角θに、斜板22が安定する。この安定状態での吐出室32と吸入室31との差圧よりも、逆止弁機構の開弁圧ΔPは大きく設定されている。故に、制御弁60の全開状態では、逆止弁機構は閉弁状態となり、外部冷媒回路50において冷媒ガス循環のない冷房OFF状態が実現される。
場面2:車輌エンジン14の駆動中に空調システム作動スイッチ58がOFFからONに切り替えられたとき
空調システム作動スイッチ58がONされると、制御コンピュータ55は、駆動回路59に制御弁60への通電を指令し、弁開度が小さく又は全閉とされる。すると、抽気通路40を介したクランク室5からのガス流出が相対的に多くなりクランク圧Pcが低下する。すると、ガス圧による傾角減少方向のモーメントが小さくなり、回転運動による傾角増大方向のモーメントとバネ力による傾角増大方向のモーメントとの合成モーメントの方が勝り、斜板傾角0°近辺から傾角増大方向への角度復帰が実現する。
場面3:空調システム作動スイッチ58がOFF状態で停止中の車輌エンジン14が起動されたとき
クラッチレス圧縮機が停止状態にあるときには、前述したように、斜板角度θは、傾角減少バネ26と復帰バネ27との付勢力がバランスする角度θxとなっている。この角度θxは0°近傍にはない。このため、エンジン14の起動によって斜板22が回転すると、吸入・圧縮動作が開始され、吐出室32の圧力が上昇する。
制御弁60が全開状態にあるので、吐出室32からクランク室5へのガス供給が多くなり、クランク圧Pcが相対的に高くなる。この結果、ガス圧によるモーメントが斜板の傾角減少方向に作用し、最終的には前記場面1で説明したように、斜板の傾角は、ガス圧による傾角減少方向のモーメントと、回転運動とバネ力とによる傾角増大方向のモーメントとがバランスする傾角θに安定する。
以上説明したように、容量制御弁60は、制御コンピュータ55等による外部制御を受けて設定吸入圧Psetを可変設定する機能のみならず、感圧室68に作用する吸入圧Psの如何にかかわらず圧縮機に最小容量運転(第1実施形態では吐出容量がほぼゼロの運転)を強制する機能とを有している。そして、この容量制御弁60により、外部冷媒回路50を含めた車輌空調システムの冷房能力が適宜調節されるようになっている。
ところで、斜板22の傾角が0°近傍となると、エンジン14からの動力を受けて駆動軸6及び斜板22が回転していても、吐出室32の内圧たる吐出圧Pdが低下し、前記差圧(Pd−Pm)が開弁圧ΔPを下回るようになる。すると、吐出通路(91〜95)の途中に設けられたスプール弁96が閉塞位置(図5)に配置され、吐出室32と外部冷媒回路50との連通が完全に遮断される。こうして、圧縮機がその吐出能力を極力抑制したときにスプール弁96が閉塞位置に配置されることで、圧縮機内に潤滑油の内部循環経路が確実に確保される。
斜板22がたとえ僅かでも傾角を有する限り、吸入室31から各シリンダボア1aへのガス吸入および各シリンダボア1aから吐出室32へのガス吐出は僅かながらも持続する。吐出通路(91〜95)がスプール弁96によって遮断された場合には、圧縮機内部には、吸入室31→シリンダボア1a→吐出室32→制御弁60→クランク室5→吸入室31という冷媒ガスの内部循環経路が確実に確保される。そして、僅かでも吐出動作が行われる限り、その内部循環経路を冷媒ガスが循環し、圧縮機内に予め収容された潤滑油が冷媒ガスと共に圧縮機内を流動することになる。そして、その潤滑油は圧縮機内の各摺動部を潤滑する。
(本件の斜板式圧縮機と従来型の斜板式圧縮機との比較)
従来型の斜板式圧縮機では、斜板の最小傾角θCは、駆動軸に装着されたサークリップ等の規制手段に斜板が直接当接することで規制される。そして、その最小傾角θCの規制により最小吐出容量が決定されている。空調システムがスイッチOFF状態にあるときでも、その従来型圧縮機がクラッチレスタイプであれば、最小傾角θCによって決まる最小吐出容量での吸入・圧縮動作が継続し、この最小吐出容量がそのまま「OFF時容量」ということになる。
これに対し、本発明の斜板式圧縮機では、そのOFF時容量は、二つのバネ26,27の付勢力バランスによるモーメント、吸入圧Ps、吐出圧Pd及びクランク圧Pcがピストン29に及ぼすガス圧に基づくモーメント、並びに、斜板の慣性乗積に基づく回転運動のモーメントの三者のバランスによって決定される。このOFF時容量と、機械的規制によって決定される最小傾角θminに対応した最小吐出容量とは必ずしも一致せず、通常、「最小吐出容量」<「OFF時容量」の関係にある。この点が本件の特徴的な部分であり、これにより種々の利点が生まれる。
例えば、最大吐出容量が120cc級の容量可変型斜板式圧縮機では、OFF運転時の吐出容量を約3cc以下とすることでOFF運転時動力をほぼ最小とすることができる(吐出容量が約3ccとなる傾角が図7,8の上限角度θA)。これに対し、圧縮反力による確実な容量復帰を行うためには、3〜5cc以上の吐出容量が必要となる(吐出容量が3〜5ccとなる傾角が図7,8の限界角度θB)。容量復帰動作が確保されないと容量可変型圧縮機は実用にならないので、復帰バネのない従来型の圧縮機では、OFF時容量(即ち最小吐出容量)を3〜5cc以上とするために最小傾角θCを復帰の限界角度θB以上とし、それ故、十分なOFF時動力の低減ができなかった。又、従来型の圧縮機において、仮に最小吐出容量を3〜4ccの範囲に設定しようとすると、1ccあたりのピストンストロークが約0.2mmとなるため、0.2mm以下の公差でピストンストロークを設定できるように非常に精密に最小傾角θCを調整する必要がある。これは、僅かでもθCが大きくなればOFF時動力の増大を招き、逆に僅かでもθCが小さくなれば容量復帰動作が不確実となるためである。
これに対し、本件の斜板式圧縮機によれば、復帰バネ27を用いたことで、最小傾角θminを、圧縮反力による復帰が不確実になるほど小さな正の角度から0°以下の負の角度領域までの広い角度範囲(即ち図7,8におけるθB以下の領域、より好ましくは角度範囲Rの領域)のいずれかの値に設定することができる。このため、OFF運転時には、従来復帰が不確実とされていた極小容量での運転が可能となり、OFF時の動力消費を従来よりも大幅に低減することができる。又、斜板の角度復帰が必要な場合には、制御弁60の強制閉弁に呼応してクランク圧Pcを迅速に低下させ、復帰バネ27等のバネ力による傾角増大モーメントを相対的に大きくして傾角復帰を確実に達成することができる。又、本件の斜板式圧縮機によれば、従来の斜板式圧縮機におけるような最小傾角設定の困難さからも開放されることになる。
(効果):第1実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 車輌エンジン14の駆動中であって空調システム作動スイッチ58のOFF時には、制御コンピュータ55からの外部制御によって斜板22の傾角を最小傾角0°の近傍に設定することができる。それ故、クラッチレス方式であるために車輌エンジン14から圧縮機に常時動力が伝達されているにもかかわらず、圧縮機での動力消費は極力低減される。従って、図1等に示す斜板式圧縮機を組み込んだ車輌用空調システムは、省エネルギー性に優れる。
○ 第1実施形態の斜板式圧縮機では、冷房動作の停止時における斜板22の傾角θが0°近傍となるにもかかわらず、復帰バネ27の配設および斜板22の慣性乗積の最適設定等により、冷房動作の再開時には斜板22の角度を傾角増大方向に確実に復帰させることができる。
○ 0°近傍からの角度復帰を、回転運動のモーメントと復帰バネ27等のバネ力によるモーメントとの協働作用によるものとしたので、高回転時の吐出圧と吸入圧との差圧が小さくなるという利点がある。本発明とは異なり、仮に復帰バネ27を設けない圧縮機とした場合、0°近傍からの角度復帰を主として回転運動のモーメントに依存する設計を採用することも可能ではある。しかし、その場合には、斜板22の回転速度がエンジン14のアイドリング回転数相当の最低回転速度のときでも斜板の角度復帰が可能となるようにその慣性乗積を大きめに設定する必要がある。このようにすると高速回転時の前記差圧が大きくなり、動力の増大や逆止弁開弁圧を高くしなければならないといった不都合が生じる。これに対し本発明によれば、かかる不都合は生じない。
○ 容量制御弁60は、制御コンピュータ55からの外部制御によってソレノイド部62のコイル86に対する供給電流値を調節することにより設定吸入圧Psetを可変設定できる他、弁孔66の開度を強制的に変更(全開又は全閉)できる。このため、空調システムのON/OFF切り換えに対応した、斜板傾角の迅速な設定変更の制御に極めて適している。
○ 空調システム作動スイッチ58がOFFされたときに、スプール弁96が閉塞位置(図5参照)に配置されることで、外部冷媒回路50における冷媒の移動を阻止して、空調システムの冷房動作を確実に停止させることができる。
○ 空調システム作動スイッチ58がOFFされたときに、スプール弁96が閉塞位置(図5参照)に配置されることで、圧縮機内部に冷媒ガス及び潤滑油の内部循環経路が確実に確保される。このため、エンジンが停止されない限り圧縮機内の各摺動部に潤滑油が常時供給され、内部潤滑上の支障を生じない。又、潤滑油が圧縮機から外部冷媒回路50の方に漏れ出すことを回避して、圧縮機が潤滑油不足に陥ることを極力回避することができる。
(第2〜第6実施形態)
次に、図1,2,4及び5に示した斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に適用可能なクランク圧制御機構のその他の類型を、第2〜第6実施形態として説明する。なお、以下の各実施形態において、外部制御手段を構成する制御コンピュータ55及び駆動回路59、外部冷房回路50並びにこれらに関連する付随的構成要素については、前記第1実施形態と同じであるので詳述はしない。
(第2実施形態)
この第2実施形態は、抽気通路の途中に該通路を選択的に開閉可能な開閉弁手段を付加することにより、容量可変型斜板式圧縮機が通常運転から最小容量運転に迅速且つ確実に移行できるようにしたものである。
図11に示すように、第2実施形態のクランク圧制御機構は、吐出室32とクランク室5とを繋ぐ給気通路38と、クランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40とを備えている。給気通路38には固定絞り121が設けられており、この固定絞り121を介して吐出室32からクランク室5への高圧冷媒ガスの供給が確保される。又、抽気通路40には、開閉弁手段としての電磁式の開閉弁120と容量制御弁100とが直列に設けられている。電磁開閉弁120は、駆動回路59を介して制御コンピュータ55により開閉制御される。
(容量制御弁100の説明):図11に示す制御弁100は内部制御方式の抜き側制御弁である。抜き側制御とは、抽気通路40の途中に設けた制御弁(抜き側制御弁)の開度を制御してクランク室5から吸入室31への冷媒ガスの放出量を調節し、もってクランク圧Pcを必要な値に誘導して斜板傾角を調節する制御方式をいう。
図11の制御弁100は、筒体と蓋体とからなるバルブハウジング101を備え、そのバルブハウジング内には感圧室102が区画形成されている。感圧室102内にはベローズ103が配設されている。ベローズ103は、感圧室102の底に嵌合保持された固定端103aと、その反対側の可動端103bとを有している。ベローズの可動端103bには、制御弁の軸方向に延びるピン体104が保持されている。このピン体104の下端(ベローズ内の端部)は、ベローズの収縮時にベローズ内に配置されたストッパ105に当接し、それ以上のベローズの収縮を規制する。ベローズ103内は真空又は減圧状態にされると共に、ベローズ103内にはそのベローズを伸張方向に付勢する設定バネ106が配設されている。なお、ベローズ103及び設定バネ106は感圧部材を構成する。
他方、蓋体とベローズの可動端103bとの間には、ベローズ103を収縮方向に付勢する円錐型のバネ109が配設されている。このバネ109は、設定バネ106の付勢作用に対抗することで感圧室102内にベローズ103を保持・位置決めする役割を担う。
ピン体104の上端(ベローズ外の端部)には弁体107が支持され、この弁体107は、バルブハウジング101を構成する蓋体に形成された凹部領域(弁室108)内に配置されている。そして、弁体107は、ベローズ103の伸縮に呼応したピン体104の移動に伴い、バルブハウジング101に形成されたポート110と感圧室102との間の連通断面積(即ち制御弁100の弁開度)を変化させる。ポート110は圧縮機のクランク室5に連通し、感圧室102はバルブハウジングに形成されたポート111を介して圧縮機の吸入室31に連通している。こうして、ポート110、弁室108、感圧室102及びポート111は、抽気通路40の一部を構成している。又、ポート111と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40を介して感圧室102に吸入圧Psが及んでいるため、該抽気通路40は感圧室102に吸入圧Psを作用させるための検圧通路としても機能する。
この内部制御弁100の弁開度は主として、吸入圧Ps、並びに、ベローズ103、設定バネ106及びバネ109の付勢力のバランスによって決定される。そして、前記感圧室102内に設けられたベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106及びバネ109は、この内部制御弁100の設定圧Psetを決定すると共に吸入圧Psの変化に応じて前記弁体107を作動させる感圧機構を構成する。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50はこの第2実施形態における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は電磁開閉弁120を開状態にする。そして、抜き側制御弁100による内部制御によってクランク圧Pcを適宜調節し、斜板角度ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する(抜き側内部制御による通常運転)
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は電磁開閉弁120を閉状態とする。すると、抽気通路40(及び制御弁100)を経由してのクランク室5から吸入室31へのガス放出が完全に遮断され、クランク圧Pcが上昇する。その結果、斜板角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。なお、空調システム作動スイッチ58が再びONされた場合には、電磁開閉弁120が開状態となり圧縮機は通常運転状態に復帰する。
(効果):第2実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 抜き側制御弁100を備えた抽気通路40の途中に外部からの制御によって開閉可能な電磁開閉弁120を設け、前述のように電磁開閉弁120の開閉状態を切り替え制御することで、圧縮機の運転状態を、典型的な抜き側内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適する。
○ クランク室5と抜き側制御弁100との間に設けた電磁開閉弁120を、空調システム作動スイッチ58のOFF時に閉じることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(第3実施形態)
この第3実施形態は、圧縮機の吐出室とクランク室とを繋ぐ給気経路に並列な二つの給気通路を用意すると共に、前記二つの給気通路の一つと抽気通路とから構成される一連の給抽気通路上に、二つの開閉弁又は一つの切替え弁からなる開閉弁手段を配設したものである。そして、前述の開閉弁又は切替え弁を適宜制御することで、給気通路のほぼ全開状態と抽気通路の完全封止状態とを同時に達成し、容量可変型斜板式圧縮機が通常運転から最小容量運転に迅速且つ確実に移行できるようにしたものである。この第3実施形態の着想に従う六つの実施例(実施例3−1〜3−6)を以下に説明する。
(実施例3−1)
図12に示す実施例3−1のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを結ぶ二つの並列な給気通路38,39と、クランク室5と吸入室31とを結ぶ抽気通路40とを備えている。更に、一方の給気通路38の途中には以下に説明するような容量制御弁130が設けられ、他方の給気通路39の途中には該通路39を封止可能な給気側開閉弁122が設けられている。また、抽気通路40の途中には、該通路40を封止可能な抽気側開閉弁123と固定絞り124とが直列に設けられている。
給気通路39の途中に設けられた給気側開閉弁122及び抽気通路40の途中に設けられた抽気側開閉弁123は、それぞれ電磁式の開閉弁であり、これらは駆動回路59を介して制御コンピュータ55により開閉制御される開閉弁手段を構成する。
(容量制御弁130の説明):図12に示す制御弁130は、内部制御方式の入れ側制御弁である。入れ側制御とは、給気通路の途中に設けた制御弁(入れ側制御弁)の開度を制御して吐出室32からクランク室5への高圧冷媒ガスの導入量を調節し、もってクランク圧Pcを必要な値に誘導して斜板傾角を調節する制御方式をいう。
図12の制御弁130はバルブハウジング131を備え、そのバルブハウジング131の下端領域には感圧室132が、バルブハウジング131の上端領域には弁室133がそれぞれ区画されている。
感圧室132内にはダイヤフラム134が設けられ、このダイヤフラム134によって感圧室132が上下二つの領域に区分されている。感圧室132の下側領域内は真空又は減圧状態とされ、且つその下側領域内には設定バネ135が配設され、その設定バネ135によりダイヤフラム134が上方向に付勢されている。なお、ダイヤフラム134及び設定バネ135は感圧部材を構成する。他方、感圧室132の上側領域は、バルブハウジング131に形成された感圧ポート136及び検圧通路144を介して圧縮機の吸入室31と連通されており、当該上側領域には吸入圧Psが及んでいる。
弁室133はバルブハウジング131に形成された導入ポート137を介して吐出室32と連通すると共に、同じくバルブハウジング131に形成された弁孔138及び導出ポート139を介してクランク室5と連通可能となっている。即ち、導入ポート137、弁室133、弁孔138及び導出ポート139は、給気通路38の一部を構成している。
弁室133内には、弁体140と付勢バネ141とが設けられている。弁体140は例えば球形状をなし、前記弁孔138を構成する弁座142に離接可能となっている。付勢バネ141は、弁体140を前記弁座142に着座させて弁孔138を閉塞する方向に作用する。
バルブハウジング131の中央には、制御弁130の軸方向に延びる感圧ロッド143が該軸方向に摺動可能に設けられている。この感圧ロッド143の下端部は感圧室132の上側領域内に進入してダイヤフラム134と作動連結関係を構築し、他方、感圧ロッド143の上端部は弁室133内の弁体140に接触して作動連結関係を構築している。こうして感圧ロッド143は、ダイヤフラム134と、付勢バネ141によってバネ付勢された弁体140とによって軸方向に移動可能に支持されている。
この内部制御弁130の弁開度(弁孔138における連通断面積)は主として、吸入圧Ps及び吐出圧Pd、並びに、付勢バネ141、ダイヤフラム134及び設定バネ135の各付勢力のバランスによって決定される。そして、付勢バネ141、感圧ロッド143、ダイヤフラム134及び設定バネ135は、この制御弁130の設定圧Psetを決定すると共に吸入圧Psの変化に応じて前記弁体140を作動させる感圧機構を構成する。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50は、この実施例3−1における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は給気側開閉弁122を閉状態とすると共に抽気側開閉弁123を開状態にする。即ち、クランク室5からのガス放出を固定絞り124で一定限度に規制する一方で、クランク室5へのガス供給制御を入れ側内部制御弁130に委ねるという典型的な入れ側内部制御の状態が作り上げられる。そして、その入れ側制御弁130による内部制御によってクランク圧Pcを調節し、斜板傾角ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は給気側開閉弁122を開状態とすると共に抽気側開閉弁123を閉状態にする。即ち、抽気通路40を介したクランク室5からのガス放出を完全に遮断する一方で、入れ側内部制御弁130の弁開度にかかわらず吐出室32からクランク室5へのガス供給を強行するというクランク圧Pcの強制上昇状態が作り上げられる。その結果、斜板の角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。なお、空調システム作動スイッチ58が再びONされた場合には、給気側開閉弁122が閉状態で抽気側開閉弁123が開状態となり、圧縮機は通常運転状態に復帰する。
(効果):実施例3−1によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 入れ側制御弁130を途中に設けた給気通路38とは別に(並列に)、給気側開閉弁122を有する給気通路39を設けると共に、抽気通路40の途中に抽気側開閉弁123を設け、前述のように二つの開閉弁122,123の開閉状態を切り替え制御することで、圧縮機の運転状態を、典型的な入れ側内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適する。
○ 抽気通路40に設けた抽気側開閉弁123を、空調システム作動スイッチ58のOFF時に閉じることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例3−2)
図13に示す実施例3−2のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを結ぶ給気通路38と、途中に開閉弁手段たる切替え弁としての三方向弁146を備えた給抽気通路147とを備えている。なお、この実施例3−2は、前記実施例3−1(図12)の二つの開閉弁122,123に代えて三方向弁146を採用したものに相当する。
給気通路38には入れ側内部制御弁130が設けられている。この制御弁130は前記実施例3−1の制御弁130と同じものであり、その感圧室132には検圧通路144を介して吸入室31の圧力(吸入圧Ps)が及んでおり、吸入圧Psの変動に応じて該入れ側制御弁130の弁開度が自律的に調節される。
給抽気通路147の途中の分岐点に設けられた三方向弁146は、クランク室5を吸入室31又は吐出室32に選択的に接続する電磁切替え弁であり、駆動回路59を介して制御コンピュータ55によりその接続状態を切り替えられる。また、三方向弁146と吸入室31とを結ぶ給抽気通路147の途中には、固定絞り124が設けられている。この固定絞り124は、前記実施例3−1の固定絞り124と同じものである。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記実施例3−1と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50は、この実施例3−2における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は電磁切替え弁146を、クランク室5と吸入室31とを連通する第1の切替え位置に配置する。この状態は、図12において給気側開閉弁122を閉状態とし抽気側開閉弁123を開状態にしたのと同じ状態である。即ち、クランク室5からのガス放出を固定絞り124で一定限度に規制する一方で、クランク室5へのガス供給制御を入れ側内部制御弁130に委ねるという典型的な入れ側内部制御の状態が作り上げられる。そして、その入れ側制御弁130による内部制御によってクランク圧Pcを調節し、斜板傾角ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り替えられた場合、制御コンピュータ55は電磁切替え弁146を、クランク室5と吐出室31とを連通する第2の切替え位置に配置する。この状態は、給気側開閉弁122を開状態とし抽気側開閉弁123を閉状態にしたのと同じ状態である。即ち、給抽気通路147を介したクランク室5からのガス放出を完全に遮断する一方で、入れ側内部制御弁130の弁開度にかかわらず吐出室32からクランク室5へのガス供給を強行するというクランク圧Pcの強制上昇状態が作り上げられる。その結果、斜板の角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。
(効果):実施例3−2によれば以下のような効果を得ることができる。
○ クランク室5、吸入室31及び吐出室32の三者を結ぶ給抽気通路147の分岐点に電磁切替え弁146を配設し、この電磁切替え弁146の切替え状態を制御することで、圧縮機の状態を、典型的な入れ側内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時に、給抽気通路147を介してのクランク室5と吸入室31との連通を遮断することとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例3−3)
図14に示す実施例3−3のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを結ぶ二つの並列な給気通路38,39と、クランク室5と吸入室31とを結ぶ抽気通路40とを備えている。更に、並列に設けられた二つの給気通路38,39のうち、一方の給気通路38には固定絞り148が設けられ、他方の給気通路39には該通路39を封止可能な給気側開閉弁149が設けられている。又、抽気通路40には、該通路40を封止可能な抽気側開閉弁150と抽気側(抜き側)内部制御弁100とが直列に設けられている。
図14に示す給気側開閉弁149及び抽気側開閉弁150はそれぞれ電磁式の開閉弁であり、これらは駆動回路59を介して制御コンピュータ55により開閉制御される開閉弁手段を構成する。
図14の抜き側内部制御弁100は図11の内部制御弁100と同じものであり、その感圧室102には吸入室31の圧力(吸入圧Ps)が及んでおり、吸入圧Psの変動に応じて該抜き側制御弁100の弁開度が自律的に調節される。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50は、この実施例3−3における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は給気側開閉弁149を閉状態とすると共に抽気側開閉弁150を開状態とする。即ち、クランク室5へのガス供給を固定絞り148で一定限度に規制する一方で、クランク室5からのガス放出制御を抜き側内部制御弁100に委ねるという典型的な抜き側内部制御の状態が作り上げられる。そして、その抜き側制御弁100による内部制御によってクランク圧Pcを調節し、斜板傾角ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は給気側開閉弁149を開状態とすると共に抽気側開閉弁150を閉状態とする。即ち、抽気通路40を介したクランク室5からのガス放出を完全に遮断する一方で、固定絞り148の存在にもかかわらず吐出室32からクランク室5へのガス供給を強行するというクランク圧Pcの強制上昇状態が作り上げられる。その結果、斜板の角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。なお、空調システム作動スイッチ58が再びONされた場合には、給気側開閉弁149が閉状態で抽気側開閉弁150が開状態となり、圧縮機は通常運転状態に復帰する。
(効果):実施例3−3によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 固定絞り148を途中に設けた給気通路38とは別個(並列)に給気通路39を設け、その給気通路39と抽気通路40の途中にそれぞれ給気側及び抽気側開閉弁149,150を設けた。そして、前述のように二つの開閉弁149,150の開閉状態を切り換え制御することで、圧縮機の運転状態を、典型的な抜き側内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替え可能とした。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 抽気通路40に設けた抽気側開閉弁150を、空調システム作動スイッチ58のOFF時に閉じることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例3−4)
図15に示す実施例3−4のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを結ぶ給気通路38と、途中に開閉弁手段たる切替え弁としての三方向弁152を備えた給抽気通路153とを備えている。なお、この実施例3−4は、前記実施例3−3(図14)の二つの開閉弁149,150に代えて三方向弁152を採用したものに相当する。
給気通路38には固定絞り148が設けられており、これは前記実施例3−3の固定絞り148と同じものである。
給抽気通路153には、三方向弁152と抜き側内部制御弁100とが直列に設けられている。その抜き側内部制御弁100は、前記実施例3−3(図14)の抜き側内部制御弁100と同じものであり、その感圧室102には吸入室31の圧力(吸入圧Ps)が及んでおり、吸入圧Psの変動に応じて該抜き側制御弁100の弁開度が自律的に調節される。
給抽気通路153の途中の分岐点に設けられた三方向弁152は、クランク室5を吸入室31又は吐出室32に選択的に接続する電磁切替え弁であり、駆動回路59を介して制御コンピュータ55によりその接続状態を切り替えられる。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記実施例3−3と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50は、この実施例3−4における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は電磁切替え弁152を、クランク室5と吸入室31とを連通する第1の切替え位置に配置する。この状態は、図14において給気側開閉弁149を閉状態とし抽気側開閉弁150を開状態にしたのと同じ状態である。即ち、クランク室5へのガス供給を固定絞り148で一定限度に規制する一方で、クランク室5からのガス放出制御を抜き側内部制御弁100に委ねるという典型的な抜き側内部制御の状態が作り上げられる。そして、その抜き側制御弁100による内部制御によってクランク圧Pcを調節し、斜板傾角ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り替えられた場合、制御コンピュータ55は電磁切替え弁152を、クランク室5と吐出室31とを連通する第2の切替え位置に配置する。この状態は、図14において給気側開閉弁149を開状態とすると共に抽気側開閉弁150を閉状態にしたのと同じ状態である。即ち、給抽気通路153を介したクランク室5からのガス放出を完全に遮断する一方で、固定絞り148の存在にもかかわらず吐出室32からクランク室5へのガス供給を強行するというクランク圧Pcの強制上昇状態が作り上げられる。その結果、斜板の角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。
(効果):実施例3−4によれば以下のような効果を得ることができる。
○ クランク室5、吸入室31及び吐出室32の三者を結ぶ給抽気通路153の分岐点に電磁切替え弁152を配設し、この電磁切替え弁152の切替え状態を制御することで、圧縮機の状態を、典型的な抜き側内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時に、給抽気通路153を介してのクランク室5と吸入室31との連通を遮断することとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例3−5)
図16に示す実施例3−5のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを結ぶ二つの並列な給気通路38,39と、クランク室5と吸入室31とを結ぶ抽気通路40とを備えている。更に、給気通路38及び抽気通路40の途中には、以下に説明する入れ側制御及び抜き側制御連動型の容量制御弁160が介在されている。ちなみに、この実施例3−5のクランク圧制御機構は、実施例3−3(図14)のクランク圧制御機構における固定絞り148を連動型制御弁160の入れ側制御弁部で置き換えたものに相当する。
図16に示すように、給気通路39には該通路39を封止可能な給気側開閉弁171が設けられ、抽気通路40には該通路40を封止可能な抽気側開閉弁172が設けられている。給気側開閉弁171及び抽気側開閉弁172は、それぞれ電磁式の開閉弁であり、これらは駆動回路59を介して制御コンピュータ55により開閉制御される開閉弁手段を構成する。なお、抽気通路40において抽気側開閉弁172は、制御弁160の抜き側制御弁部と直列に設けられている。
(容量制御弁160の説明):図16に示す制御弁160は、内部制御方式の入れ側制御及び抜き側制御連動型の制御弁である。入れ側及び抜き側の連動制御とは、給気通路38の途中に配設された入れ側制御弁部の開度制御と、抽気通路40の途中に配設された抜き側制御弁部の開度制御とを関連付けて行うことで、クランク室5への冷媒ガス供給量とクランク室5からの冷媒ガス放出量との優劣関係を調節し、もってクランク圧Pcを必要な値に誘導して斜板傾角を調節する制御方式をいう。
図16の制御弁160は、複数の部材から構成されるバルブハウジング101を備え、そのバルブハウジング101内の下部領域には感圧室102及び抜き側弁室108が区画され、バルブハウジング101内の上部領域には入れ側弁室161が区画されている。
感圧室102内にはベローズ103が配設されている。ベローズ103は、感圧室102の底に嵌合保持された固定端103aと、その反対側の可動端103bとを有している。ベローズの可動端103bには、制御弁の軸方向に延びるピン体104が保持されている。このピン体104の下端(ベローズ内の端部)は、ベローズの収縮時にベローズ内に配置されたストッパ105に当接し、それ以上のベローズの収縮を規制する。ベローズ103内は真空又は減圧状態にされ、ベローズ103内にはそのベローズを伸張方向に付勢する設定バネ106が配設されている。尚、ベローズ103及び設定バネ106は感圧部材を構成する。
他方、バルブハウジング101とベローズの可動端103bとの間には、ベローズ103を収縮方向に付勢する円錐型のバネ109が配設されている。このバネ109は、設定バネ106の付勢作用に対抗することで感圧室102内にベローズ103を保持・位置決めする役割を担う。
バルブハウジング101の中央領域には、感圧ロッド162が制御弁の軸方向に摺動可能に設けられている。感圧ロッド162の下端部162aは、図11の弁体107とほぼ同形状に形成されている。そして、感圧ロッド下端部162aは、ピン体104の上端(ベローズ外の端部)に支持されると共に、抜き側弁室108内に配置されて抜き側弁体としての役割を果たす。そして、感圧ロッド下端部(抜き側弁体)162aは、ベローズ103の伸縮に呼応したピン体104の移動に伴い、バルブハウジング101に形成されたポート110と感圧室102との間の連通断面積(即ち抜き側制御弁部の弁開度)を変化させる。
ポート110は圧縮機のクランク室5に連通し、感圧室102はバルブハウジングに形成されたポート111を介して圧縮機の吸入室31と連通している。こうして、ポート110、抜き側弁室108、感圧室102及びポート111は、クランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40の一部を構成している。又、ポート111と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40を介して感圧室102に吸入圧Psが及んでいるため、該抽気通路40は感圧室102に吸入圧Psを作用させるための検圧通路としての役目も担う。
このように、感圧室102内に配設されたベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、バネ109及び感圧ロッド162は、この制御弁160における抜き側制御弁部を構成し、抜き側弁体(感圧ロッド下端部162a)の配置に応じて抜き側制御弁部の開度(即ち抽気通路40の開度)が調節される。
入れ側弁室161を区画するバルブハウジング101の内周域には、略環状の弁座部163(中央が弁孔となる)が設けられている。その弁座部163を境界として、入れ側弁室161は上部領域(吐出室側領域)と下部領域(クランク室側領域)とに区分されている。そして、バルブハウジング101には、入れ側弁室161の上部領域を吐出室32に連通するポート166と、入れ側弁室161の下部領域をクランク室5に連通するポート167とが形成されている。こうして、ポート166、入れ側弁室161及びポート167は、吐出室32とクランク室5とを繋ぐ給気通路38の一部を構成している。
入れ側弁室161の上部領域内には、入れ側弁体164が軸方向に移動可能に収容されている。この弁体164が弁座部163に着座することで前記上部領域と下部領域との連通が遮断される。入れ側弁体164は、それとバルブハウジング101との間に介装されたバネ165により弁座部163に着座する方向に付勢されている。他方、感圧ロッド162の上端部162bは弁座部163の弁孔を介して入れ側弁体164の底に接しており、感圧ロッド162の上動により、バネ165の付勢力に抗して入れ側弁体164は弁座部163から離間する方向に押し上げられる。
このように、入れ側弁室161内に配設された感圧ロッド162、弁座部163、入れ側弁体164及びバネ165は、この制御弁160における入れ側制御弁部を構成し、弁体164の配置に応じて入れ側制御弁部の開度(即ち給気通路38の開度)が調節される。
この制御弁160において、ベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、バネ109、感圧ロッド162及びバネ165は、この制御弁160の設定圧Psetを決定すると共に吸入圧Psの変化に応じて前記感圧ロッド162(抜き側弁体でもある)及び入れ側弁体164を作動させる感圧機構を構成する。このように、制御弁160の抜き側制御弁部および入れ側制御弁部は、共通の感圧機構によって連動する関係にある。
制御弁160の抜き側制御弁部および入れ側制御弁部における各開度は、主に吸入圧Ps及び吐出圧Pd、並びに、設定バネ106、バネ109及び165の各付勢力のバランスによって決定される。より具体的には、概して吸入圧Psが高い場合には、感圧ロッド162及びピン体104が下動して抜き側制御弁部の弁開度が大きくなる一方で入れ側制御弁部の弁開度が小さくなる。この場合にはクランク室5へのガス供給よりもクランク室5からのガス放出が優勢となり、クランク圧Pcが低下して斜板傾角が増大傾向となる。他方、概して吸入圧Psが低い場合には、感圧ロッド162及びピン体104が上動して抜き側制御弁部の弁開度が小さくなる一方で入れ側制御弁部の弁開度が大きくなる。この場合には、クランク室5からのガス放出よりもクランク室5へのガス供給が優勢となり、クランク圧Pcが上昇して斜板傾角が減少傾向となる。
なお、この制御弁160によれば、入れ側弁体164及び感圧ロッド162を介して吐出圧Pdの圧力付勢が感圧機構の設定バネ106に対抗し、その設定バネ106の付勢力を減殺する。こうして、吐出圧Pdの大きさに応じて制御弁160の設定圧Psetを減少補正するいわゆる高圧補正が実現されている。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50は、この実施例3−5における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は給気側開閉弁171を閉状態とすると共に抽気側開閉弁172を開状態とする。そして、クランク室5へのガス供給を制御弁160の入れ側制御弁部が介在した給気通路38経由で行うと共に、クランク室5からのガス放出を制御弁160の抜き側制御弁部が介在した抽気通路40経由で行う。即ち、クランク室5へのガス供給制御もクランク室5からのガス放出制御も連動型内部制御弁160に委ねる状態とする。そして、制御弁160による内部制御により、クランク圧Pcを調節し、斜板傾角ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は給気側開閉弁171を開状態とすると共に抽気側開閉弁172を閉状態とする。即ち、抽気通路40を介したクランク室5からのガス放出を完全に遮断する一方で、制御弁160の入れ側制御弁部の開度にかかわらず吐出室32からクランク室5へのガス供給を強行するというクランク圧Pcの強制上昇状態が作り上げられる。その結果、斜板の角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。なお、空調システム作動スイッチ58が再びONされた場合には、給気側開閉弁171が閉状態で抽気側開閉弁172が開状態となり、圧縮機は通常運転状態に復帰する。
(効果):実施例3−5によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 制御弁160の入れ側制御弁部を途中に介在させた給気通路38とは別個(並列)に給気通路39を設け、その給気通路39と抽気通路40の途中にそれぞれ給気側及び抽気側開閉弁171,172を設けた。そして、前述のように二つの開閉弁171,172の開閉状態を切り替え制御することで、圧縮機の運転状態を、典型的な入れ側及び抜き側連動制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小運転状態との間で切り替え可能とした。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 抽気通路40に設けた抽気側開閉弁172を、空調システム作動スイッチ58のOFF時に閉じることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例3−6)
図17に示す実施例3−6のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを結ぶ給気通路38と、途中に開閉弁手段たる三方向弁152を備えた給抽気通路153と、容量制御弁160とを備えている。図17の容量制御弁160は、実施例3−5(図16)で説明した入れ側制御及び抜き側制御連動型の内部制御弁160と同じものである。なお、この実施例3−6は、前記実施例3−5の二つの開閉弁171,172に代えて三方向弁152を採用したものに相当する。
給気通路38の途中には、制御弁160の入れ側制御弁部が介在されている。又、給抽気通路153には、前記三方向弁152と制御弁160の抜き側制御弁部とが直列に設けられている。制御弁160の感圧室102には吸入室31の圧力(吸入圧Ps)が及んでおり、吸入圧Psの変動に応じて入れ側及び抜き側の各制御弁部の弁開度が自律的に調節される。
給抽気通路153の途中の分岐点に設けられた三方向弁152は、クランク室5を吸入室31又は吐出室32に選択的に接続する電磁切替え弁であり、駆動回路59を介して制御コンピュータ55によりその接続状態を切り替えられる。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記実施例3−5と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50は、この実施例3−6における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は電磁切替え弁152を、クランク室5と吸入室31とを連通する第1の切替え位置に配置する。この状態は、図16において給気側開閉弁171を閉状態とし抽気側開閉弁172を開状態にしたのと同じ状態である。即ち、クランク室5へのガス供給制御もクランク室5からのガス放出制御も連動型内部制御弁160に委ねる状態とする。そして、その制御弁160による内部制御により、クランク圧Pcを調節し、斜板傾角ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り替えられた場合、制御コンピュータ55は電磁切替え弁152を、クランク室5と吐出室31とを連通する第2の切替え位置に配置する。この状態は、図16において給気側開閉弁171を開状態とし抽気側開閉弁172を閉状態にしたのと同じ状態である。即ち、給抽気通路153を介したクランク室5からのガス放出を完全に遮断する一方で、制御弁160の入れ側制御弁部の弁開度にかかわらず吐出室32からクランク室5へのガス供給を強行するというクランク圧Pcの強制上昇状態が作り上げられる。その結果、斜板角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。
(効果):実施例3−6によれば以下のような効果を得ることができる。
○ クランク室5、吸入室31及び吐出室32の三者を結ぶ給抽気通路153の分岐点に電磁切替え弁152を配設し、この電磁切替え弁152の切替え状態を制御することで、圧縮機の状態を、典型的な入れ側及び抜き側連動制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替え可能とした。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時に、給抽気通路153を介してのクランク室5と吸入室31との連通を遮断することとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(第4実施形態)
この第4実施形態は、圧縮機のクランク室と吸入室とを繋ぐ抽気通路に特殊な内部制御弁を配設すると共に、その内部制御弁に抽気通路の選択的封止機能を持たせたものである。そして、その内部制御弁によって抽気通路に封止状態をもたらすことにより、容量可変型斜板式圧縮機が通常運転から最小容量運転に迅速且つ確実に移行できるようにしたものである。この第4実施形態の着想に従う二つの実施例(実施例4−1及び4−2)を以下に説明する。
(実施例4−1)
図18に示す実施例4−1のクランク圧制御機構は、吐出室32とクランク室5とを繋ぐ給気通路38と、クランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40とを備えている。給気通路38には固定絞り121が設けられ、これは図11の固定絞り121と同じものである。この固定絞り121を介して吐出室32からクランク室5への高圧冷媒ガスの供給が確保される。又、抽気通路40には、以下に説明するような容量制御弁180が設けられている。ちなみに、この実施例4−1の容量制御システムは、第2実施形態(図11)の容量制御システムから開閉弁120を除去すると共に制御弁100に代えて制御弁180を採用したものに相当する。
(容量制御弁180の説明):図18に示す制御弁180は、基本的に内部制御方式の抜き側制御弁であり、図11の内部制御弁100の下部に電磁石部を付加したものに相当する。
即ち、図11の内部制御弁100と同じく、制御弁180のバルブハウジング101内には感圧室102と弁室(抜き側弁室)108とが区画され、これらはバルブハウジング101に形成されたポート110及び111と共に抽気通路40の一部を構成する。又、バルブハウジング101内には、ベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、弁体107及びバネ109が設けられており、これらは、制御弁180の設定圧Psetを決定すると共に吸入圧Psの変化に応じて前記弁体107を作動させる感圧機構を構成する。
制御弁180は更に、バルブハウジング101の下部に付加された電磁石部181を備えている。電磁石部181は、バルブハウジング101の底部に接合されたハウジング182と、そのハウジング182内に軸方向に移動可能に保持されたプランジャ183とを備えている。ハウジング182の少なくとも底部182aは鉄で形成され、当該底部182aは固定鉄心としての役割を担う。他方、プランジャ183は可動鉄心としての役割を担う。そのプランジャ183の上端部は感圧室102内に進入して前記ストッパ105と一体化しており、且つプランジャ183の上端部にはベローズ103の固定端103aが固着されている。従って、プランジャ183はベローズ103及びストッパ105と共に一体移動可能である。
電磁石部181は更に、ハウジング182内において追従バネ184とコイル185とを備えている。追従バネ184は、プランジャ183を上方向(感圧室102の方向)に付勢する。コイル185は可動鉄心たるプランジャ183を包囲するように設けられ、駆動回路59を介して制御コンピュータ55により通電制御される。コイル185への通電が行われると、電磁吸引力が発生しプランジャ183が追従バネ184の付勢力に抗して下動され、プランジャ183の下端部がハウジング底部182aに接触する最下動位置にプランジャ183が配置される。他方、コイル185への通電を停止すると、電磁吸引力が消失しプランジャ183が追従バネ184によって上動される。プランジャ183の上動の過程でストッパ105がピン体104の下端に当接し、それ以後はピン体104及び弁体107がプランジャ183と共に上動する。そして、弁体107が弁室108の上壁に接触してプランジャ183が最上動位置に配置されると、ピン体104、弁体107及びプランジャ183のそれ以上の上動が規制され、ポート110が閉塞される。このように、容量制御弁180は、外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持つ。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50はこの実施例4−1における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は電磁石部181のコイル185への通電を維持する。このとき、コイル185に生じた電磁吸引力によりプランジャ183が追従バネ184の付勢力に抗して下動され、最下動位置に配置される。この状態では、制御弁180は、図11の制御弁100と同じく、抜き側内部制御弁として機能する。即ち、制御弁180の弁開度が主として、吸入圧Ps、並びに、ベローズ103、設定バネ106及びバネ109の各付勢力のバランスによって決定される。そして、抜き側制御弁180による内部制御によってクランク圧Pcを適宜調節し、斜板角度ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する(抜き側内部制御による通常運転)。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は電磁石部181のコイル185への通電を停止する。すると、コイル185の電磁吸引力が消失し、追従バネ184の付勢力によってプランジャ183、ストッパ105、ピン体104及び弁体107が上動し、弁体107が弁室108の上壁に接触してポート110を閉塞する。即ち、制御弁180が閉弁状態(弁開度ゼロ)となり、抽気通路40を経由してのクランク室5から吸入室31へのガス放出が遮断される。その結果、クランク圧Pcが上昇して斜板の角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。その後、空調システム作動スイッチ58が再びONされた場合には、電磁石部コイル185への通電が再開され、圧縮機は通常運転状態に復帰する。
ところで、制御弁180の閉弁状態(即ち弁体107が弁室108の上壁に接触してポート110を閉塞する位置に配置された状態)では、追従バネ184の付勢力がプランジャ183、ストッパ105及びピン体104を介して直接的に弁体107に伝達されている。換言すれば、追従バネ184のバネ力を主とする閉弁方向(上方向)の付勢力が弁体107に作用する。他方、ポート110の閉塞位置に配置された弁体107の上面にはクランク圧Pcが作用する一方で、弁体107の下面には吸入圧Psが作用する。容量可変型斜板式圧縮機では通常、Ps<Pcであるから、クランク圧と吸入圧との差圧(Pc−Ps)に基づく開弁方向(下方向)の付勢力が弁体107に作用する。追従バネ184のバネ力が(Pc−Ps)差圧による付勢力に常に打ち負かされるようでは、制御弁180を閉弁状態にすることが不可能となるので、追従バネ184のバネ力は原則として(Pc−Ps)差圧による付勢力を上回るように設定される。
しかしながら、空調システム作動スイッチ58がOFFされ、それに応答して制御弁180により抽気通路40が閉じられると、クランク室5からの放圧がほとんどなくなる。それ故、吐出圧Pdが相当高い状態で空調システム作動スイッチ58がOFFされた場合には、クランク圧Pcが短時間のうちにその高い吐出圧Pd相当の圧力にまで上昇し、その結果として圧縮機の軸封装置を損傷しクランク室5の気密性を損なう虞れがある。
この点、実施例4−1の制御弁180によれば、弁体107に働く(Pc−Ps)差圧が予め定められた最大許容値を超える場合には、当該(Pc−Ps)差圧による開弁方向の付勢力が追従バネ184による閉弁方向の付勢力を上回るように、追従バネ184のバネ力をやや抑え目に設定することが可能である。前記(Pc−Ps)差圧の最大許容値は、圧縮機の軸封装置の耐圧限界と、圧縮機の容量可変制御に必要な(Pc−Ps)差圧の最大値とを考慮して適宜定め得る。従って、追従バネ184のバネ力を前述のようにやや抑え目に設定しておくことで、閉弁状態にある制御弁180を一種のリリーフ弁として機能させることができる。それ故、この場合には、抽気通路40の閉塞によって次第に高まる傾向のクランク圧Pcが軸封装置の耐圧限界を超えるレベルにまで過度に高まることが未然に防止される。
(効果):実施例4−1によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 給気通路38に固定絞り121を設けて吐出室32からクランク室5に所定量の冷媒ガスを常時供給可能とすると共に、抽気通路40に設けた抜き側制御弁180を外部からの通電制御によって閉弁状態に設定可能なタイプとした。それ故、前述のように電磁石部コイル185への通電状態を制御することで、圧縮機の運転状態を、典型的な抜き側内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 追従バネ184のバネ力を、弁体107に働く(Pc−Ps)差圧が予め定められた最大許容値を超える場合には当該(Pc−Ps)差圧による開弁方向の付勢力が追従バネ184による閉弁方向の付勢力を上回るように設定することにより、閉弁状態の制御弁180をクランク圧Pcが過度に高まるのを防止するためのリリーフ弁として機能させることができる。従って、抽気通路40を閉塞して圧縮機を最小容量運転状態にした後でも、クランク圧Pcが圧縮機に障害をもたらすほど高まるという事態を未然に防止することができる。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時には、抽気通路40途中の制御弁180を閉弁状態にすることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例4−2)
図19に示す実施例4−2のクランク圧制御機構は、吐出室32とクランク室5とを繋ぐ給気通路38と、クランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40とを備えている。更に、給気通路38及び抽気通路40の途中には、以下に説明する入れ側制御及び抜き側制御連動型の容量制御弁190が介在されている。ちなみに、この実施例4−2のクランク圧制御機構は、実施例4−1(図18)のクランク圧制御機構における固定絞り121を連動型制御弁190の入れ側制御弁部で置き換えたものに相当する。
(容量制御弁190の説明):図19に示す制御弁190は、基本的に内部制御方式の入れ側制御及び抜き側制御連動型の制御弁であり、図16の内部制御弁160の下部に電磁石部を付加したものに相当する。
制御弁190は、図16の内部制御弁160と同じく、バルブハウジング101内の下部領域に区画された感圧室102及び抜き側弁室108、並びに、バルブハウジング101内の上部領域に区画された入れ側弁室161を有している。感圧室102及び抜き側弁室108は、バルブハウジング101に形成されたポート110及び111と共に抽気通路40の一部を構成する。又、入れ側弁室161は、バルブハウジング101に形成されたポート166及び167と共に給気通路38の一部を構成する。そして、バルブハウジング101の中央領域には、感圧ロッド162が制御弁の軸方向に摺動可能に設けられている。
感圧室102及び抜き側弁室108内には、ベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、バネ109及び感圧ロッド162の下端部162a(抜き側弁体として機能する)が設けられ、これらによって制御弁190における抜き側制御弁部が構成されている。この抜き側制御弁部の開度(即ち抽気通路40の開度)は抜き側弁体162aの配置に応じて調節される。他方、入れ側弁室161内には、感圧ロッド162の上端部162b、弁座部163、入れ側弁体164及びバネ165が設けられ、これらによって制御弁190における入れ側制御弁部が構成されている。この入れ側制御弁部の開度(即ち給気通路38の開度)は入れ側弁体164の配置に応じて調節される。そして、ベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、バネ109、感圧ロッド162及びバネ165は、この制御弁190の設定圧Psetを決定すると共に吸入圧Psの変化に応じて前記感圧ロッド162(抜き側弁体でもある)及び入れ側弁体164を作動させる感圧機構を構成する。このように、制御弁190の抜き側制御弁部および入れ側制御弁部は、共通の感圧機構によって連動する関係にある。
制御弁190は更に、バルブハウジング101の下部に付加された電磁石部191を備えている。電磁石部191は、バルブハウジング101の底部に接合されたハウジング192と、そのハウジング192内に軸方向に移動可能に保持されたプランジャ193とを備えている。ハウジング192の少なくとも底部192aは鉄で形成され、当該底部192aは固定鉄心としての役割を担う。他方、プランジャ193は可動鉄心としての役割を担う。そのプランジャ193の上端部は感圧室102内に進入して前記ストッパ105と一体化しており、且つプランジャ193の上端部にはベローズ103の固定端103aが固着されている。従って、プランジャ193はベローズ103及びストッパ105と共に一体移動可能である。
電磁石部191は更に、ハウジング192内において追従バネ194とコイル195とを備えている。追従バネ194は、プランジャ193を上方向(感圧室102の方向)に付勢する。コイル195は可動鉄心たるプランジャ193を包囲するように設けられ、駆動回路59を介して制御コンピュータ55により通電制御される。コイル195への通電が行われると、電磁吸引力が発生しプランジャ193が追従バネ194の付勢力に抗して下動され、プランジャ193の下端部がハウジング底部192aに接触する最下動位置にプランジャ193が配置される。他方、コイル195への通電を停止すると、電磁吸引力が消失しプランジャ193が追従バネ194によって上動される。プランジャ193の上動の過程でストッパ105がピン体104の下端に当接し、それ以後はピン体104及び感圧ロッド162がプランジャ193と共に上動する。そして、抜き側弁体162aが抜き側弁室108の上壁に接触し、プランジャ193が最上動位置に配置されると、ピン体104、感圧ロッド162及びプランジャ193のそれ以上の上動が規制される。このとき、抜き側制御弁部のポート110が実質的に閉塞されると共に、入れ側制御弁部の弁体164が感圧ロッド上端部162bにより突き上げられ、入れ側制御弁部の開度が強制的に広げられる。このように、容量制御弁190は、外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持つ。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50はこの実施例4−2における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がONの場合、制御コンピュータ55は電磁石部191のコイル195への通電を維持する。このとき、コイル195に生じた電磁吸引力によりプランジャ193が追従バネ194の付勢力に抗して下動され、最下動位置に配置される。この状態では、制御弁190は、図16の制御弁160と同じく、入れ側及び抜き側連動の内部制御弁として機能する。即ち、制御弁160の抜き側制御弁部および入れ側制御弁部における各開度は、主に吸入圧Ps及び吐出圧Pd、並びに、設定バネ106、バネ109及び165の各付勢力のバランスによって決定される。そして、この連動弁の内部制御によってクランク圧Pcを適宜調節し、斜板角度ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する(入れ側及び抜き側内部制御による通常運転)。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は電磁石部191のコイル195への通電を停止する。すると、コイル195の電磁吸引力が消失し、追従バネ194の付勢力によってプランジャ193、ストッパ105、ピン体104及び感圧ロッド162が一体上動し、感圧ロッド下端部162aが抜き側弁室108の上壁に接触して上動が止まる。このようにプランジャ193が最上動位置に配置されると、制御弁190の抜き側制御弁部が閉弁状態(弁開度ゼロ)となって抽気通路40を経由してのクランク室5から吸入室31へのガス放出が遮断されると共に、入れ側制御弁部の開度が強制的に広げられ給気通路38を経由して吐出室32からクランク室5へ多量の冷媒ガスが供給される。その結果、クランク圧Pcが上昇して斜板の角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。その後、空調システム作動スイッチ58が再びONされた場合には、電磁石部コイル195への通電が再開され、圧縮機は通常運転状態に復帰する。
なお、前記実施例4−1の場合と同様、この実施例4−2の制御弁190によれば、抜き側弁体としての感圧ロッド162に働く(Pc−Ps)差圧が予め定められた最大許容値を超える場合には、当該(Pc−Ps)差圧による開弁方向の付勢力が追従バネ194による閉弁方向の付勢力を上回るように、追従バネ194のバネ力をやや抑え目に設定することが可能である。前記(Pc−Ps)差圧の最大許容値は、圧縮機の軸封装置の耐圧限界と、圧縮機の容量可変制御に必要な(Pc−Ps)差圧の最大値とを考慮して適宜定め得る。従って、追従バネ194のバネ力を前述のようにやや抑え目に設定しておくことで、閉弁状態にある制御弁190の抜き側制御弁部を一種のリリーフ弁として機能させることができる。それ故、この場合には、抽気通路40の閉塞によって次第に高まる傾向のクランク圧Pcが軸封装置の耐圧限界を超えるレベルにまで過度に高まることが未然に防止される。
(効果):実施例4−2によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 給気通路38及び抽気通路40の途中に入れ側制御及び抜き側制御連動型の制御弁190を介在させ、当該制御弁190を、外部からの通電制御によって強制的にその抜き側制御弁部を閉弁状態に且つ入れ側制御弁部を開弁状態に設定可能なタイプとした。それ故、前述のように電磁石部コイル195への通電状態を制御することで、圧縮機の運転状態を、典型的な入れ側及び抜き側連動の内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 追従バネ194のバネ力を、抜き側弁体162aに働く(Pc−Ps)差圧が予め定められた最大許容値を超える場合には当該(Pc−Ps)差圧による開弁方向の付勢力が追従バネ194による閉弁方向の付勢力を上回るように設定することにより、抜き側制御弁部が閉弁状態の制御弁190を、クランク圧Pcが過度に高まるのを防止するためのリリーフ弁として機能させることができる。従って、抽気通路40を閉塞して圧縮機を最小容量運転状態にした後でも、クランク圧Pcが圧縮機に障害をもたらすほど高まるという事態を未然に防止することができる。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時には、抽気通路40途中の抜き側制御弁部を閉弁状態にすることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(第5実施形態)
この第5実施形態は、圧縮機のクランク室と吸入室とを繋ぐ抽気通路に設定圧可変型の特殊な制御弁を配設すると共に、その制御弁に抽気通路の選択的封止機能を持たせたものである。そして、その制御弁によって抽気通路に封止状態をもたらすことにより、容量可変型斜板式圧縮機が通常運転から最小容量運転に迅速且つ確実に移行できるようにしたものである。この第5実施形態の着想に従う三つの実施例(実施例5−1,5−2及び5−3)を以下に説明する。
(実施例5−1)
図20に示す実施例5−1のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを繋ぐ給気通路38と、クランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40とを備えている。給気通路38には固定絞り121が設けられ、これは図11の固定絞り121と同じものである。この固定絞り121を介して吐出室32からクランク室5への高圧冷媒ガスの供給が確保される。又、抽気通路40には、以下に説明するような容量制御弁200が設けられている。ちなみに、この実施例5−1のクランク圧制御機構は、第2実施形態のクランク圧制御機構(図11)から開閉弁120を除去すると共に制御弁100に代えて制御弁200を採用したものに相当する。又、実施例5−1は、実施例4−1(図18)における制御弁180を制御弁200で置換したものにも相当する。
(容量制御弁200の説明):図20に示す制御弁200は、吸入圧Psの変化に応じて弁開度を自律的に調節可能な点で内部制御方式の抜き側制御弁であり、外部からの制御によって設定圧Psetを変更可能な点で外部制御方式の抜き側制御弁でもある。制御弁200は、図11の内部制御弁100の下部に設定圧可変装置を付加したものに相当する。
即ち、図11の内部制御弁100と同じく、制御弁200のバルブハウジング101内には感圧室102と弁室(抜き側弁室)108とが区画され、これらはバルブハウジング101に形成されたポート110及び111と共に抽気通路40の一部を構成する。又、バルブハウジング101内には、ベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、弁体107及びバネ109が設けられており、これらは当該制御弁200の設定圧Psetを決定すると共に吸入圧Psの変化に応じて前記弁体107を作動させる感圧機構を構成する。
制御弁200は更に、バルブハウジング101の下部に付加された設定圧可変装置201を備えている。設定圧可変装置201は、バルブハウジング101の下部に軸方向に移動可能に設けられた可動体202と、往復動機構203と、モータ204とを備えている。
可動体202の上部には、ベローズ103の固定端103aを挟んでストッパ105が固着されており、可動体202、ベローズ固定端103a及びストッパ105は一体移動可能となっている。モータ204は正逆回転可能なモータ(例えばステッピングモータ)であり、駆動回路59を介して制御コンピュータ55により通電制御される。
往復動機構203は、可動体202とモータ204との間に介在して両者を作動連結している。往復動機構203は例えばネジ機構によって構成されており、モータ204の出力軸の正逆回転に伴い制御弁軸方向(垂直方向)に往復移動する駆動軸203aを有している。換言すれば、往復動機構203は、モータ204の出力軸(図示略)の回転運動を駆動軸203aの直線運動に変換する駆動変換機構である。往復動機構の駆動軸203aの先端は可動体202に連結されており、それ故、駆動軸203aの動きに応じて可動体202及びストッパ105も軸方向に往復移動する。
図20には、ストッパ105の一部(下面)がバルブハウジング101に当接して可動体202及びストッパ105がそれ以上下動することができない最下動位置にある状態が示されている。この状態から可動体202が上動されると、ストッパ105がバルブハウジング101から離れてピン体104に接近する。可動体202の上動の過程でストッパ105がピン体104の下端に当接すると、それ以後はピン体104及び弁体107が可動体202とともに上動する。そして、弁体107が弁室108の上壁に接触して可動体202が最上動位置に配置されると、ピン体104、弁体107及び可動体202のそれ以上の上動が規制され、ポート110が閉塞される。モータ204の回転方向が反転すれば、上記とは逆の過程を経て、可動体202が最上動位置から最下動位置に向けて移動する。なお、この制御弁200によれば、可動体202を最上動位置と最下動位置との間の任意の位置に配置することで、制御弁200の設定圧Psetを変化させることができる。又、容量制御弁200は、外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持つ。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50はこの実施例5−1における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がON状態では、制御コンピュータ55は、例えば温度センサ54、室温センサ56、日射量センサ56A及び室温設定器57からの入力情報に基づいてその時々に最適な制御弁設定圧Psetを演算する。そして、制御弁200がその演算された設定圧Psetとなるようにモータ204への通電制御により可動体202を前記最上動位置と最下動位置との間の任意の位置に配置する。この状態の下、制御弁200は、図11の制御弁100と同じく、抜き側内部制御弁として機能する。そして、抜き側制御弁200による内部制御によってクランク圧Pcを適宜調節し、斜板角度ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する(抜き側内部制御による通常運転)。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は、設定圧Psetの演算結果にかかわらず、モータ204への通電制御によって可動体202、ストッパ105、ピン体104及び弁体107を最上動位置に上動させる。そして、弁体107でポート110を閉塞して制御弁200を閉弁状態(弁開度ゼロ)とし、抽気通路40を経由してのクランク室5から吸入室31へのガス放出を遮断する。その結果、クランク圧Pcが上昇して斜板角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。
その後、空調システム作動スイッチ58が再びONされると、モータ204への通電制御によって可動体202が元の位置に戻され、演算された設定圧Psetでの抜き側内部制御が再開されて圧縮機は通常運転状態に復帰する。
(効果):実施例5−1によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 給気通路38に固定絞り121を設けて吐出室32からクランク室5に所定量の冷媒ガスを常時供給可能とすると共に、抽気通路40に設けた抜き側制御方式の設定圧可変弁に抽気通路の選択的封止機能を持たせた。即ち、制御弁200を外部制御によって閉弁状態に設定可能なタイプとした。それ故、前述のようにモータ204への通電制御によって圧縮機の運転状態を、典型的な抜き側内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 設定圧可変装置201を備えた制御弁200は、制御コンピュータ55及び駆動回路59との組み合わせにより、設定圧可変機能と、圧縮機を最小容量運転に導くための開閉弁機能とを併せ持つことができる。このため、この制御弁200を利用することで圧縮機のクランク圧制御機構が簡素化される。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時には、抽気通路40途中の制御弁200を閉弁状態にすることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例5−2)
図21に示す実施例5−2のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを繋ぐ給気通路38と、クランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40とを備えている。更に、給気通路38及び抽気通路40の途中には、以下に説明する入れ側制御及び抜き側制御連動型の容量制御弁210が介在されている。ちなみに、この実施例5−2のクランク圧制御機構は、実施例5−1のクランク圧制御機構(図20)における固定絞り121を連動型制御弁210の入れ側制御弁部で置き換えたものに相当する。又、実施例5−2は、実施例4−2(図19)における制御弁190を制御弁210で置換したものにも相当する。
(容量制御弁210の説明):図21に示す制御弁210は、吸入圧Psの変化に応じて弁開度を自律的に調節可能な点で内部制御方式の入れ側制御及び抜き側制御連動型の制御弁であり、外部からの制御によって設定圧Psetを変更可能な点で外部制御方式の制御弁でもある。制御弁210は、図16の内部制御弁160の下部に設定圧可変装置を付加したものに相当する。
即ち、制御弁210は、図16の内部制御弁160と同じく、バルブハウジング101内の下部領域に区画された感圧室102及び抜き側弁室108、並びに、バルブハウジング101内の上部領域に区画された入れ側弁室161を有している。感圧室102及び抜き側弁室108は、バルブハウジング101に形成されたポート110及び111と共に抽気通路40の一部を構成する。又、入れ側弁室161は、バルブハウジング101に形成されたポート166及び167と共に給気通路38の一部を構成する。そして、バルブハウジング101の中央領域には、感圧ロッド162が制御弁の軸方向に摺動可能に設けられている。
感圧室102及び抜き側弁室108内には、ベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、バネ109及び感圧ロッド162の下端部162a(抜き側弁体として機能する)が設けられ、これらによって制御弁210における抜き側制御弁部が構成されている。この抜き側制御弁部の開度(即ち抽気通路40の開度)は抜き側弁体162aの配置に応じて調節される。他方、入れ側弁室161内には、感圧ロッド162の上端部162b、弁座部163、入れ側弁体164及びバネ165が設けられ、これらによって制御弁210における入れ側制御弁部が構成されている。この入れ側制御弁部の開度(即ち給気通路38の開度)は入れ側弁体164の配置に応じて調節される。そして、ベローズ103、ピン体104、ストッパ105、設定バネ106、バネ109、感圧ロッド162及びバネ165は、この制御弁210の設定圧Psetを決定すると共に吸入圧Psの変化に応じて前記感圧ロッド162(抜き側弁体でもある)及び入れ側弁体164を作動させる感圧機構を構成する。このように、制御弁210の抜き側制御弁部および入れ側制御弁部は、共通の感圧機構によって連動する関係にある。
制御弁210は更に、バルブハウジング101の下部に付加された設定圧可変装置211を備えている。設定圧可変装置211は、バルブハウジング101の下部に軸方向に移動可能に設けられた可動体212と、往復動機構213と、モータ214とを備えている。
可動体212の上部には、ベローズ103の固定端103aを挟んでストッパ105が固着されており、可動体212、ベローズ固定端103a及びストッパ105は一体移動可能となっている。往復動機構213及びモータ214はそれぞれ前記実施例5−1の往復動機構203及びモータ204と同じものであるので重複説明はしない。従って、駆動回路59を介しての制御コンピュータ55による通電制御によってモータ214の出力軸は正逆回転し、それに伴い往復動機構213の駆動軸213aが制御弁軸方向(垂直方向)に往復移動する。駆動軸213aの先端は可動体212に連結されているため、駆動軸213aの動きに応じて可動体212及びストッパ105も軸方向に往復移動する。
図21には、ストッパ105の一部(下面)がバルブハウジング101に当接して可動体212及びストッパ105がそれ以上下動することができない最下動位置にある状態が示されている。この状態から可動体212が上動されると、ストッパ105がバルブハウジング101から離れてピン体104に接近する。可動体212の上動の過程でストッパ105がピン体104の下端に当接すると、それ以後はピン体104及び感圧ロッド162が可動体212と共に上動する。そして、ロッド下端部(抜き側弁体)162aが弁室108の上壁に接触して可動体212が最上動位置に配置されると、ピン体104、感圧ロッド162及び可動体212のそれ以上の上動が規制され、ポート110が閉塞される。モータ214の回転方向が反転すれば、上記とは逆の過程を経て、可動体212が最上動位置から最下動位置に向けて移動する。なお、この制御弁210によれば、可動体212を最上動位置と最下動位置との間の任意の位置に配置することで、制御弁210の設定圧Psetを変化させることができる。又、容量制御弁210は外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持つ。
圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50はこの実施例5−2における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がON状態では、制御コンピュータ55は、例えば温度センサ54、室温センサ56、日射量センサ56A及び室温設定器57からの入力情報に基づいてその時々に最適な制御弁設定圧Psetを演算する。そして、制御弁210がその演算された設定圧Psetとなるようにモータ214への通電制御によって可動体212が前記最上動位置と最下動位置との間の任意の位置に配置される。この状態の下、制御弁210は、図16の制御弁160と同じく、入れ側及び抜き側連動の内部制御弁として機能する。そして、この連動型制御弁210による内部制御によってクランク圧Pcを適宜調節し、斜板角度ひいては圧縮機の吐出容量を自律的に調節する(入れ側及び抜き側連動の内部制御による通常運転)。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は、設定圧Psetの演算結果にかかわらず、モータ214への通電制御によって可動体212、ストッパ105、ピン体104及び感圧ロッド162を最上動位置に移動させる。このように可動体212等が最上動位置に配置されると、抜き側弁体162aでポート110が閉塞され制御弁210の抜き側制御弁部が閉弁状態(弁開度ゼロ)となり、抽気通路40を経由してのクランク室5から吸入室31へのガス放出が遮断されると共に、ロッド上端部162bによって入れ側弁体164が押し上げられ入れ側制御弁部の開度が強制的に広げられ給気通路38を経由して吐出室32からクランク室5へ多量の冷媒ガスが供給される。その結果、クランク圧Pcが上昇して斜板角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行してエンジン14の動力損失が最小に抑えられる。
その後、空調システム作動スイッチ58が再びONされると、モータ214への通電制御によって可動体212が元の位置に戻され、演算された設定圧Psetでの内部制御が再開されて圧縮機は通常運転状態に復帰する。
(効果):実施例5−2によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 給気通路38及び抽気通路40の途中に入れ側制御及び抜き側制御連動型で且つ設定圧可変型の制御弁210を介在させ、更に当該制御弁210に、給気通路の選択的強制開放機能および抽気通路の選択的封止機能を持たせた。即ち、制御弁210を、外部制御によって強制的にその抜き側制御弁部を閉弁状態に且つ入れ側制御弁部を開弁状態に設定可能なタイプとした。それ故、前述のようにモータ214への通電制御によって圧縮機の運転状態を、典型的な入れ側及び抜き側連動の内部制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 設定圧可変装置211を備えた制御弁210は、制御コンピュータ55及び駆動回路59との組み合わせにより、設定圧可変機能と、圧縮機を最小容量運転に導くための強制閉開弁機能とを併せ持つことができる。このため、制御弁210を利用することで圧縮機のクランク圧制御機構が簡素化される。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時には、抽気通路40途中の制御弁210の抜き側制御弁部を閉弁状態にすることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
(実施例5−3)
図22及び図23に示す実施例5−3のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを繋ぐ給気通路38と、クランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路40とを備えている。更に、給気通路38及び抽気通路40の途中には、以下に説明する入れ側制御及び抜き側制御連動型の容量制御弁230が介在されている。ちなみに、この実施例5−3のクランク圧制御機構は、実施例5−2のクランク圧制御機構(図21)における制御弁210を制御弁230で置き換えたものに相当する。
なお、図22に示すように、圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50はこの実施例5−3における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(容量制御弁230の説明):図22に示す制御弁230は、吸入圧Psの変化に応じて弁開度を自律的に調節可能な点で内部制御方式の入れ側制御及び抜き側制御連動型の制御弁であり、外部からの制御によって設定圧Psetを変更可能な点で外部制御方式の制御弁でもある。図23は、制御弁230の拡大断面図である。図23と図3とを比較して分かるように、図3の入れ側制御弁60の上半分を設計変更して連動弁としたのが制御弁230である。
図23に示すように、制御弁230は、バルブハウジング61とソレノイド部62とを備え、両者は該制御弁230の中央付近で相互に接合されている。ソレノイド部62は、制御弁230の設定圧可変装置としての役割を担っている。更にバルブハウジング61は上半部と下半部とに分けられ、その上半部が抜き側制御弁部となり、下半部が入れ側制御弁部となっている。
入れ側制御弁部を構成するバルブハウジング61内には、入れ側弁室63が区画形成されている。この弁室63は、その側壁部に形成された弁室ポート67および上流側の給気通路38を介して吐出室32に連通している。弁室63の上部には該制御弁230の軸方向に延びる弁孔66が形成され、更に弁室63よりも上のバルブハウジング61には、前記弁孔66と直交するポート65が形成されている。ポート65は下流側の給気通路38を介してクランク室5に連通する。こうして、弁室ポート67、入れ側弁室63、弁孔66及びポート65は、給気通路38の一部を構成している。
入れ側弁室63内には、入れ側弁体64が垂直方向(制御弁の軸方向)に移動可能に収容されている。換言すれば、入れ側弁体64は、給気通路38の流通面積を変更すべく前記弁孔66に接近離間可能に設けられている。又、弁室63内には強制開放バネ74が収容されている。この強制開放バネ74は、入れ側制御弁部の弁開度(即ち給気通路38の流通面積)を極力大きくすべく、弁体64が弁孔66から離間する方向(下方向)に弁体64を付勢する。そして、入れ側弁体64は、弁室63内での位置に応じて該制御弁230の入れ側制御弁部の弁開度を調節する。
他方、抜き側制御弁部を構成するバルブハウジング61内には、抜き側弁室231が区画形成されている。この弁室231は、その側壁部に形成されたポート232および下流側の抽気通路40を介して吸入室31に連通している。その下流側抽気通路40は検圧通路としても機能し、該通路40を介して吸入圧Psが抜き側弁室231内に及んでいる。弁室231の下部には、弁孔233を区画する弁座部234が設けられている。弁孔233は該制御弁230の軸方向に延びている。バルブハウジング61には弁孔233と直交するポート235が形成されており、該ポート235は上流側の抽気通路40を介してクランク室5に連通している。こうして、ポート235、弁孔233、抜き側弁室231及びポート232は、抽気通路40の一部を構成している。
抜き側弁室231内には、抜き側弁体236が垂直方向(制御弁の軸方向)に移動可能に収容されており、その移動に伴い弁体236は弁座部234に対して着座可能(接離可能)となっている。弁体236は好ましくは球形状をなしている。抜き側弁体236が弁座部234に着座すると、該弁体236によって弁孔233が閉塞され、抽気通路40の連通が遮断される。又、抜き側弁室231内には、閉弁バネ237が配設されている。閉弁バネ237の一端(上端)はバルブハウジング61の内周段部に掛止され、他端(下端)は弁体236上の介装材238に掛止されている。そして、介装材238を介在させた閉弁バネ237により、弁体236は弁座部234に着座する方向(弁孔233を閉塞する方向)に常時付勢されている。
抜き側弁室231内には更にベローズ240が設けられている。バルブハウジング61の上部には調節体(アジャスタ)239が螺着され、その調節体239にベローズ240の上端(固定端)が固着されている。他方、ベローズ240の下端は可動端となっている。ベローズ240内は真空又は減圧状態にされると共に、ベローズ240内には伸張バネ241が配設されている。この伸張バネ241はベローズ240の可動端を伸張方向に付勢する。なお、ベローズ240及び伸張バネ241は感圧部材を構成する。
これに対し、抜き側弁室231内に及んでいる吸入圧Psは、ベローズ240を収縮する方向に作用する。このため、主として伸張バネ241と吸入圧Psとの付勢バランスに応じてベローズ240の可動端は、介装材238を介して弁体236を閉弁方向に押圧するか、又は介装材238から離間して弁体236との作動連結関係を絶つかする。抜き側弁体236は、弁室231内での位置に応じて該制御弁230の抜き側制御弁部の弁開度(即ち抽気通路40の開度)を調節する。
抜き側制御弁部と入れ側制御弁部との境界域においてバルブハウジング61の中心にはガイド孔71が垂直に形成され、このガイド孔71内には感圧ロッド72が摺動可能に挿通されている。感圧ロッド72の下端部は、弁孔66を通って入れ側弁体64の上端に固定されている。その感圧ロッド下端部の径は、弁孔66での冷媒ガス流通を確保するために弁孔66の内径よりも小径となっている。他方、感圧ロッド72の上端部は該ロッド72の動きに応じて抜き側弁体236の底に接離可能となっている。
制御弁230の下部を占めるソレノイド部62は、図3に示す制御弁60のソレノイド部62とほぼ同じ構成を持つ。即ち、有底円筒状の収容筒75の上部には固定鉄心76が嵌合され、この嵌合により収容筒75内にはソレノイド室77が区画されている。ソレノイド室77には、プランジャとしての可動鉄心78が垂直方向に往復動可能に収容されている。可動鉄心78は略有蓋円筒状をなす。又、固定鉄心76の中心にはガイド孔80が垂直に形成され、このガイド孔80内には、ソレノイドロッド81が摺動可能に挿通されている。ソレノイドロッド81の上端は前記弁体64と一体化されている。このため、感圧ロッド72、入れ側弁体64及びソレノイドロッド81は、一体化した一つの作動部材(72,64,81)を構成する。
ソレノイドロッド81の下端部(可動鉄心78側の端部)は可動鉄心78の上面に当接し、可動鉄心78と収容筒75の底面との間には、追従バネ79が介装されている。この追従バネ79は可動鉄心78を上方向(固定鉄心76に接近する方向)に常時付勢する。このため、可動鉄心78と弁体64とはソレノイドロッド81を介して作動連結関係にある。故に、ロッド72、弁体64及びロッド81からなる作動部材は、少なくとも追従バネ79によって上向き付勢された可動鉄心78と、少なくとも閉弁バネ237によって下向き付勢された抜き側弁体236との間において垂直方向に移動可能に保持されている。そして、当該作動部材(72,64,81)は、抜き側弁体236及び入れ側弁体64の連動を担保しつつ、これらと少なくとも前記可動鉄心(プランジャ)78との作動連結を許容する手段として機能する。
ソレノイド室77は、固定鉄心76の側壁部に形成された連通溝82、バルブハウジング61内に貫通形成された連通孔83、及び、この制御弁230の圧縮機への装着時にリヤハウジング4の壁部との間に形成される環状の小室84を介して、前記ポート65に連通されている。換言すれば、ソレノイド室77は、弁孔66と同じ圧力環境下(即ちクランク圧Pc下)に置かれている。又、有蓋円筒状の可動鉄心78には孔85が穿設され、この孔85を介してソレノイド室77における可動鉄心78の内外が均圧化されている。
ソレノイド部62において固定鉄心76及び可動鉄心78の周囲には、これら鉄心76,78を跨ぐ範囲においてコイル86が巻回されている。このコイル86には、制御コンピュータ55の指令に基づいて駆動回路59から所定の電流が供給される。その供給電流の大きさに応じて電磁力がコイル86に生じ、その電磁力の影響を受けて可動鉄心78が固定鉄心76に吸引され、ソレノイドロッド81を上動させる上向きの電磁付勢力が発生する。
なお、入れ側弁室63内の強制開放バネ74は前記作動部材(72,64,81)を下方向に付勢するが、この強制開放バネ74の下向き付勢力は、前記追従バネ79の上向き付勢力に比してかなり大きく設定されている。このため、前記上向きの電磁付勢力がなければ、強制開放バネ74によって作動部材(72,64,81)は最下動位置に配置され、感圧ロッド72による抜き側弁体236の下からの突き上げもなくなる。その結果、入れ側制御弁部が最大開度で開状態となる一方で、閉弁バネ237の作用によって抜き側弁体236が弁孔233を閉塞し抜き側制御弁部が閉弁状態となる。この意味で、容量制御弁230は、外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持つ。
他方、コイル86への通電が行われソレノイド部62が上向きの電磁付勢力をもたらすと、作動部材(72,64,81)の全体が持ち上げられ、該作動部材と抜き側弁体236及びべローズ240との作動連結関係が構築され、入れ側制御弁部と抜き側制御弁部の間に連動関係が成立する。このとき、当該連動型制御弁230の設定圧Psetは、バネ79,74,237及び241の各々のバネ力と電磁付勢力との関係に基づいて決定されるが、その電磁付勢力を外部的に調節することで制御弁230の設定圧Psetは外部的に可変制御される。
なお、ベローズ240の可動端が介装材238に当接している限り、ベローズ240の伸縮が弁体236及び作動部材(72,64,81)の位置決めに影響を及ぼす。この意味で、ベローズ240、伸張バネ241、介装材238、閉弁バネ237、弁体236及び感圧ロッド72は、吸入圧Psの変動を抜き側弁体236及び入れ側弁体64に伝達し、吸入圧Psの変化に応じて両弁体236,64を作動させる感圧機構を構成する。このように一定条件の下で、制御弁230の抜き側制御弁部と入れ側制御弁部とは共通の感圧機構によって連動する。
(作用):空調システム作動スイッチ58がON状態では、制御コンピュータ55は、例えば温度センサ54、室温センサ56、日射量センサ56A及び室温設定器57からの入力情報に基づいてその時々に最適な制御弁設定圧Psetを演算し、制御弁230の設定圧がその演算された設定圧Psetとなるようにコイル68への通電量を制御する。こうして、前述の上向き電磁付勢力が調節されて入れ側弁体64及び抜き側弁体236が位置決めされる。
この状態では、抜き側弁体236および作動部材(72,64,81)がベローズ240と作動連結関係にあり、吸入圧Psの変化に対応したベローズ240の伸縮動作が両弁体64,236の位置決めに影響を及ぼす。換言すれば、制御弁230は、外部制御によって設定圧Psetが変わり得るという状況の下で、吸入圧Psに感応する入れ側及び抜き側連動の内部制御弁として作動する。このように外部制御及び内部制御の協働のもと、入れ側制御弁部および抜き側制御弁部の各々の弁開度がきめ細かく調節される。こうしてクランク圧Pcが調節され、斜板角度ひいては圧縮機の吐出容量が自律的に調節される(入れ側及び抜き側の連動制御による通常運転)。
なお、制御コンピュータ55が該制御弁230の設定圧Psetを演算するに際しては、前記第1実施形態の制御弁60の場合と同様、冷房負荷の大きさが考慮される。即ち、冷房負荷が大きい場合、例えば室温センサ56の検出室温が室温設定器57の設定温度よりも大きい場合には、制御コンピュータ55はコイル86への供給電流値を大きくし、前記上向き電磁付勢力を高め、制御弁230の設定圧Psetを小さくする。これにより、冷房負荷が大きく吸入圧Psも高くなる場合には、ベローズ240を含む感圧機構の作用によって入れ側制御弁部の弁開度が絞られ(弁開度ゼロとなる場合も含む)且つ抜き側制御弁部の弁開度が拡大されるようにして、クランク圧Pcを低め誘導し、斜板角度が増大し易くする。それとは逆に、冷房負荷が小さい場合、例えば室温センサ56の検出室温と室温設定器57の設定温度との差が小さい場合には、制御コンピュータ55はコイル86への供給電流値を小さくし、前記上向き電磁付勢力を弱め、制御弁230の設定圧Psetを大きくする。これにより、冷房負荷が小さく吸入圧Psも低めの場合には、ベローズ240を含む感圧機構の作用にもかかわらず、入れ側制御弁部の弁開度が大きく保たれ且つ抜き側制御弁部の弁開度が絞られる(弁開度ゼロとなる場合も含む)ようにして、クランク圧Pcを高め誘導し、斜板角度が減少し易くする。このように、制御コンピュータ55を用いた外部制御によって、制御弁230の設定圧Psetは常にフィードバック制御される。
他方、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられた場合、制御コンピュータ55は、設定圧Psetの演算結果にかかわらず、コイル68への通電を停止する。すると、強制開放バネ74の作用によって作動部材(72,64,81)の全体が押し下げられ、入れ側制御弁部が最大開度で開状態となる一方、抜き側制御弁部が閉弁状態となる。その結果、給気通路38を経由して吐出室32からクランク室5へ多量の冷媒ガスが供給される一方で、抽気通路40を経由してのクランク室5から吸入室31へのガス放出が遮断される。こうしてクランク圧Pcが上昇して斜板角度が最小傾角(0°近傍)に設定され、圧縮機が最小容量運転状態に移行して、エンジン14の動力損失が最小に抑えられる。
その後、空調システム作動スイッチ58が再びONされると、コイル68への通電制御が再開され、設定圧Psetの可変制御及び感圧機構による内部制御が行われて圧縮機は通常運転状態に復帰する。
(効果):実施例5−3によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 給気通路38及び抽気通路40の途中に入れ側制御及び抜き側制御連動型で且つ設定圧可変型の制御弁230を介在させ、更に当該制御弁230に、給気通路の選択的強制開放機能および抽気通路の選択的封止機能を持たせた。即ち、制御弁230を、外部制御によって強制的にその抜き側制御弁部を閉弁状態に且つ入れ側制御弁部を開弁状態に設定可能なタイプとした。それ故、前述のようにコイル86への通電制御に基づいて圧縮機の運転状態を、典型的な入れ側及び抜き側の連動制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
○ 設定圧可変装置としてのソレノイド部62を備えた制御弁230は、制御コンピュータ55及び駆動回路59との組み合わせにより、設定圧可変機能と、圧縮機を最小容量運転に導くための強制閉開弁機能とを併せ持つことができる。それ故、この制御弁230を利用することで圧縮機のクランク圧制御機構が簡素化される。
○ 空調システム作動スイッチ58のOFF時には、抽気通路40途中の制御弁230の抜き側制御弁部を閉弁状態にすることとしたため、最小容量運転時に、冷媒ガスと共に潤滑油がクランク室5から流出して圧縮機の内部機構の潤滑が損なわれる事態を未然に回避することができる。
○ 制御弁230は、抜き側弁体236を閉弁バネ237で閉弁方向に常時付勢すると共に、ベローズ240の可動端が介装材238から離れることができるように構成されている。このため、外気温が高くなり、それに応じて外部冷媒回路50の飽和圧力ひいては蒸発器53の出口圧力(吸入圧Psに相当)も高くなって伸張バネ241の付勢力に抗してベローズ240が収縮動作するときには、ベローズ240と抜き側弁体236との作動連結関係が絶たれる。それ故、空調システム作動スイッチ58がOFFされてソレノイド部62への通電が停止されているときに、外気温の高低にかかわらず、容量制御弁230の状態を、抜き側制御弁部が閉じられ且つ入れ側制御弁部が開かれた状態に確実に維持することができる。
これに対し、仮にベローズ240が抜き側弁体236及び作動部材(72,64,81)と常時作動連結される構成であったとれば、外気温が高くなった場合にそれに感応したベローズ240によって抜き側弁体236が影響を受け、抜き側制御弁部を閉弁状態に維持することが難しくなる。そうなれば、圧縮機の最小容量運転を実現できなくなる虞が生ずる。この実施例5−3の容量制御弁230によれば、かかる不都合は生じない。
○ 制御弁230の抜き側制御弁部が閉弁状態にあるときでも、この抜き側制御弁部を、クランク圧Pcが過度に高まるのを防止するためのリリーフ弁として機能させることが可能である。即ち、閉弁バネ237のバネ力を、抜き側弁体236に働く(Pc−Ps)差圧が予め定められた最大許容値を超える場合には、当該(Pc−Ps)差圧による開弁方向の付勢力が閉弁バネ237による閉弁方向の付勢力を上回るように設定することにより、リリーフ弁の機能を持たせることができる。この場合には、抽気通路40を閉塞して圧縮機を最小容量運転状態にした後でも、クランク圧Pcが圧縮機に障害をもたらすほど高まるという事態を未然に防止することができる。
(第6実施形態)
前記第2〜第5実施形態(図11〜図23)のクランク圧制御機構では、空調システム作動スイッチ58をONからOFFに切り換えたときに、圧縮機のクランク室5と吸入室31とを繋ぐ抽気通路(又は抽気経路)をほぼ完全に閉塞することでクランク圧Pcの上昇を促し圧縮機が最小容量運転状態に速やかに移行できるようにしていた。
しかしながら、抽気通路を完全に閉じてしまうと、クランク室5内にとどまる潤滑オイルの量が次第に減少するという事態が生じ得る。この点について説明すると、圧縮機が最小容量運転状態(斜板角度が0°近傍)にあり抽気通路が閉塞状態で且つ給気通路が開放状態の下では、吸入圧Ps、クランク圧Pcおよび吐出圧Pdの間には、Ps<Pc=Pdの関係が生まれる。即ち最小容量運転が継続すれば、クランク圧Pcは吸入圧Psよりも常に高くなる。このことが災いしてクランク室5内の潤滑オイルが、ピストン29とシリンダボア1aとの間の僅かな隙間から、吸入行程にあるシリンダボア1a内に進入し、更にそこから吐出ポート35を経由して吐出室32に入り込み、吐出室32内に溜まってしまう。このように抽気通路を完全に閉じた結果、潤滑オイルがクランク室5から吐出室32に次第に逃れ出てしまうという好ましからざる事態を招く。
かかる事態を防止すべく考案されたのが、この第6実施形態である。
図24に示すように、第6実施形態のクランク圧制御機構は、圧縮機(図1等参照)の吐出室32とクランク室5とを結ぶ給気通路38と、クランク室5と吸入室31とを結ぶ二つの並列な抽気通路251,252と、入れ側制御及び抜き側制御連動型の容量制御弁260とを備えている。
連動型制御弁260は、入れ側制御弁部261と、抜き側制御弁部262と、吸入圧Psの変化に対応して両制御弁部261,262を連動させて内部制御を実現する感圧機構263とを備えている。入れ側制御弁部261は給気通路38の途中に配設され、抜き側制御弁部262は第1の抽気通路251の途中に配設されている。制御弁260はまた、駆動回路59を介在させた制御コンピュータ55によって外部制御される。そして、空調システム作動スイッチ58がONからOFFに切り換えられたときには、入れ側制御弁部261は全開状態となり、抜き側制御弁部262は全閉状態となる。従って、容量制御弁260は、外部制御手段によって抽気通路の開度を調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持つものである。
第6実施形態の連動型制御弁260として使用可能なものとしては、例えば、図19の制御弁190、図21の制御弁210および図23の制御弁230があげられる。
更に図24に示すように、給気通路38の入口38aは、圧縮機の吐出室32の底(最も低い位置)に接続されている。又、第1の抽気通路251に対して並列に設けられた第2の抽気通路252には固定絞り253が設けられている。この固定絞り253付き抽気通路252により、抜き側制御弁部262の弁開度にかかわらず、クランク室5から吸入室31への最低限の連通が確保される。
なお、圧縮機の吐出室32と吸入室31とは、前記第1実施形態と同様、凝縮器51、膨張弁52及び蒸発器53を備えた外部冷媒回路50によって結ばれており、該圧縮機と外部冷媒回路50はこの第6実施形態における車輌用空調システムの冷房回路を構成する。
(効果):第6実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
○ 図24の構成によれば、空調システム作動スイッチ58のOFFによる圧縮機の最小容量運転時(抜き側制御弁部262が閉塞状態)でも、固定絞り253付き抽気通路252によってクランク室5と吸入室31との最低限の連通が保証される。このため、吸入室31→シリンダボア1a(ピストンの吸入動作による)→吐出室32(ピストンの吐出動作による)→給気通路38及び入れ側制御弁部261(開放状態)→クランク室5→固定絞り253付き抽気通路252→吸入室31という圧縮機内部での冷媒ガスの内部循環が確保される。従って、冷媒ガスに運ばれてクランク室5から流出するオイル量とクランク室5に流入するオイル量とが均衡し、クランク室5に存在する潤滑オイルの量が常に一定に保たれる。それ故、最小容量運転を継続したときにクランク室5に存在する潤滑オイルの量が次第に減少するという不都合な事態が未然に防止され、結果として、圧縮機の内部機構の焼き付きを防止しその寿命を延ばすことができる。
○ 給気通路38の入口38aを吐出室32の底(最も低い位置)に接続したことで、吐出室32の底に溜まりがちな潤滑オイルを、制御弁260経由でクランク室5に効率的に戻すことができる。
○ 最小容量運転時においても圧縮機内の冷媒ガスを前述のように内部循環させることができるため、クランク室5で生じた熱を冷媒ガスに吸収させ、吸入室31等において放熱させることができる。このため、クランク室5の温度上昇を緩和することができる。
○ 給気通路38及び抽気通路251の途中に入れ側制御及び抜き側制御連動型の制御弁260を介在させ、当該制御弁260に、給気通路38の選択的強制開放機能および抽気通路251の選択的封止機能を持たせた。即ち、制御弁260を、外部制御によって強制的にその抜き側制御弁部262を閉弁状態に且つ入れ側制御弁部261を開弁状態に設定可能なタイプとした。それ故、制御コンピュータ55による外部制御に基づいて圧縮機の運転状態を、典型的な入れ側及び抜き側の連動制御による通常運転状態と、クランク圧Pcの強制上昇による最小容量運転状態との間で切り替えることができる。従って、このクランク圧制御機構は、図1等に示す斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機に極めて適している。
なお、図24では固定絞り253付きの第2抽気通路252を設けたが、あえてこれら(252,253)を設けること無く、空調システム作動スイッチ58のOFFによる最小容量運転時に、連動弁260の抜き側制御弁部262の弁開度が固定絞り253の絞り断面積相当の開度となるように設定してもよい。その場合でも同様の効果を得ることができる。
(その他の別例)本発明の実施形態を以下のように変更してもよい。
○ 前記各実施形態ではクラッチレス方式の斜板式圧縮機の例を示したが、圧縮機と外部駆動源との間に電磁クラッチ機構を介在させその電磁クラッチ機構によって外部駆動源から圧縮機への動力伝達を選択的に行うようにした空調システムに本発明を適用してもよい。この場合、電磁クラッチ機構の連結/遮断の操作回数を低減することが可能となるという利点がある。
○ 復帰補助手段としての復帰バネ27は、図1及び図2に示すようなコイルバネ27に限定されるものではなく、リーフスプリングその他のバネ、あるいはバネ相当の付勢部材であってもよい。
○ 復帰バネ27が斜板22に対して付勢作用を及ぼす範囲は、斜板22の全傾動範囲(θmin〜θmax)にわたってもよい。
○ 前記逆止弁機構(93,96及び97)は圧縮機のハウジングに設けられたが、その逆止弁機構を外部冷媒回路50の上流側部分に設けてもよい。
○ 前記第3実施形態の実施例3−1(図12)において、抽気通路40に設けられた抽気側開閉弁123が省略されてもよい。この場合、抽気通路40には固定絞り124のみが設けられることになるが、実施例3−1とほぼ同様の効果を得ることができる。なお、抽気通路40が完全に閉塞されない構成となるので、前記第6実施形態で説明したのと同様の効果を得ることもできる。
○ 第1〜第6実施形態で示した外部冷媒回路50において、凝縮器51と、減圧装置としての膨張弁52との間にレシーバ(受液器)が介在されてもよい。レシーバは、カーエアコンにおける必要冷媒量の変動に対応するために余分な冷媒を貯留しておくと共に、凝縮器51の出口側での気液分離を行って常に液冷媒のみを膨張弁52に送り出すためのものである。
○ 第1〜第6実施形態で示した外部冷媒回路50は減圧装置としての膨張弁52を採用した回路であるが、この膨張弁使用の回路に代えて、凝縮器、減圧装置としての固定オリフィス、蒸発器及びアキュムレータタンクからなる外部冷媒回路が採用されてもよい。アキュムレータタンクは、前記レシーバに代わって余分な冷媒を貯留しておくと共に、前記膨張弁52に代わって蒸発器出口における過熱度(スーパーヒート)を管理する役目を担う。
○ この明細書で言う「斜板式圧縮機」とは、斜板たるスワッシュプレートを備えた圧縮機のみならずワッブル型の圧縮機をも含むものであり、傾斜したカムプレートによってピストンを往復動させる方式の圧縮機のすべてを意味するものである。
次に、前記各実施形態及び別例から把握できる、前記請求項に記載した発明以外の技術的思想イ〜ヘを、それらの効果と共に以下に記載する。
(思想イ:第2実施形態・図11参照)
請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記クランク圧制御機構は、前記吐出室と前記クランク室とをつなぐ絞り121付きの給気通路と、前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ抽気通路と、前記抽気通路に設けられて検知圧力としての吸入圧の変化に応じて自律的に開度調節可能な容量制御弁100と、前記抽気通路に設けられて外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段120とを備えており、前記外部制御手段からの指令により前記開閉弁手段によって前記抽気通路を実質的に閉塞状態とすることで前記斜板の傾角を強制的に最小傾角(θmin)に設定可能となっていること。
この構成によれば、斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機の運転状態を通常運転状態と最小容量運転状態との間で迅速且つ確実に切り替えることができる。
(思想ロ:第3実施形態・図12〜17参照)
請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記クランク圧制御機構は、前記吐出室と前記クランク室とをつなぐ二つの並列な給気通路と、前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ抽気通路と、前記給気通路及び抽気通路の少なくとも一方に設けられて検知圧力としての吸入圧の変化に応じて自律的に開度調節可能な容量制御弁130,100,160と、前記二つの給気通路の一つと前記抽気通路とから構成される一連の給抽気通路に設けられて外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段(二つの開閉弁又は一つの切替え弁によって構成される)とを備えており、前記外部制御手段からの指令により前記開閉弁手段によって前記抽気通路を実質的に閉塞状態とすることで前記斜板の傾角を強制的に最小傾角(θmin)に設定可能となっていること。
この構成によれば、斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機の運転状態を通常運転状態と最小容量運転状態との間で迅速且つ確実に切り替えることができる。
(思想ハ:第4実施形態・図18及び19参照)
請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記クランク圧制御機構は、前記吐出室と前記クランク室とをつなぐ給気通路と、前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ抽気通路と、少なくとも前記抽気通路に設けられて検知圧力としての吸入圧の変化に応じて自律的に開度調節可能な容量制御弁180,190とを備えてお
り、前記容量制御弁は、外部からの制御により当該制御弁を選択的に閉弁状態に設定可能な電磁石部181,191を備えることで、外部制御手段によって開度調節可能な開閉
弁手段としての機能を併せ持ち、前記外部制御手段からの指令により前記容量制御弁(開閉弁手段)によって前記抽気通路を実質的に閉塞状態とすることで前記斜板の傾角を強制的に最小傾角(θmin)に設定可能となっていること。
この構成によれば、斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機の運転状態を通常運転状態と最小容量運転状態との間で迅速且つ確実に切り替えることができる。
(思想ニ:第5実施形態・図20〜23参照)
請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記クランク圧制御機構は、前記吐出室と前記クランク室とをつなぐ給気通路と、前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ抽気通路と、少なくとも前記抽気通路に設けられて検知圧力としての吸入圧の変化に応じて自律的に開度調節可能な容量制御弁200,210,230) とを
備えており、前記容量制御弁は、外部からの制御により当該制御弁の設定圧Psetを変更可能な設定圧可変装置201,211,62を備えることで外部制御手段によって開度調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持ち、前記外部制御手段からの指令により前記容量制御弁(開閉弁手段)によって前記抽気通路を実質的に閉塞状態とすることで前記斜板の傾角を強制的に最小傾角(θmin)に設定可能となっていること。
この構成によれば、斜板傾角を0°近傍に設定可能な容量可変型斜板式圧縮機の運転状態を通常運転状態と最小容量運転状態との間で迅速且つ確実に切り替えることができる。
(思想ホ:第6実施形態・図24参照)
請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量可変型斜板式圧縮機において、前記クランク圧制御機構は、前記吐出室と前記クランク室とをつなぐ給気通路38と、前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ少なくとも一つの抽気通路251と、前記給気通路及び抽気通路に設けられて検知圧力としての吸入圧の変化に応じて自律的に開度調節可能な入れ側制御及び抜き側制御連動型の容量制御弁260とを備えており、前記容量制御弁は、外部制御手段によって前記抽気通路の開度を調節可能な開閉弁手段としての機能を併せ持っており、前記外部制御手段からの指令により該容量制御弁(開閉弁手段)によって前記抽気通路を絞ること又は閉塞することで、前記斜板の傾角を強制的に最小傾角(θmin)に設定すると共に最小容量運転を行う圧縮機内での冷媒ガスの内部循環を維持可能とすることを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。
この構成によれば、圧縮機が最小容量運転を行う場合でも、圧縮機内における冷媒ガスの継続的な内部循環を確保して、圧縮機の内部機構の潤滑を維持すると共に内部機構の過熱を未然防止することができる。
(思想ヘ:第6実施形態・図24参照)
前記「思想ホ」において、前記クランク圧制御機構は、前記抽気通路251に対して並列に設けられた第2の抽気通路252を備えており、その第2の抽気通路252には絞り253が設けられていること。
この構成によれば、外部制御手段の指令によって容量制御弁260が第1抽気通路
251を完全に閉塞した場合でも、絞り付きの第2抽気通路252により、クランク
室と吸入室との間で最低限の連通が確保される。このため、圧縮機の最小容量運転を維持しつつも冷媒ガスの内部循環を維持することが可能となる。
1…シリンダブロック、1a…シリンダボア、2…フロントハウジング、3…弁形成体、4…リヤハウジング(1,2,3及び4は圧縮機のハウジングを構成する)、5…クランク室、6…駆動軸、14…車輌エンジン(外部駆動源)、22…斜板(カムプレート)、23…ヒンジ機構(連結案内機構)、26…傾角減少バネ、27…復帰バネ、29…ピストン、31…吸入室、32…吐出室、38,39…給気通路、40…抽気通路、41…絞り、42…検圧通路、60…容量制御弁(38〜42及び60はクランク圧制御機構を構成する)、50…外部冷媒回路、55…制御コンピュータ、59…駆動回路(55,59は外部制御手段を構成する)、62…ソレノイド部、63…入れ側弁室、64…入れ側弁体、66…弁孔、72…感圧ロッド、74…強制開放バネ、78…可動鉄心(プランジャ)、81…ソレノイドロッド(64,72及び81は作動部材を構成する)、91…吐出マフラ、92…吐出口、93…弁孔、94…吐出通口、95…通孔(91〜95は吐出通路を構成する)、96…スプール弁、97…バネ(93,96及び97は逆止弁機構を構成する)、100,130,160,180,190,200,210,230,260…容量制御弁、120,123,146,150,152,172,180,190,200,210,230,260…開閉弁手段、231…抜き側弁室、233…弁孔、234…弁座部、236…抜き側弁体、237…閉弁バネ、240…ベローズ、241…伸張バネ(240及び241は感圧部材を構成する)、Pc…クランク室内圧、Pd…吐出圧、Ps…吸入圧、Pset…設定圧。

Claims (5)

  1. ハウジング内に区画形成されたシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室と、
    前記シリンダボアに往復動可能に収容されたピストンと、
    前記クランク室内に回転可能に支持されると共に外部駆動源から動力を伝達される駆動軸と、
    連結案内機構により前記駆動軸に対し傾動可能且つ同期回転可能に作動連結されるとともに前記駆動軸と同期回転するときには前記ピストンを往復駆動するためのカムプレートとして機能し得る斜板と、
    前記クランク室の内圧を制御することにより前記斜板の傾角を制御して、前記ピストンの往復動作に伴う前記シリンダボアから前記吐出室への吐出容量を変化させるクランク圧制御機構と
    を備えた容量可変型斜板式圧縮機において、
    前記斜板の最小傾角(θmin)は、吐出反力による角度復帰が確実に可能となる限界角度(θB)未満に設定されており、且つ、前記限界角度(θB)未満の傾角状態にある斜板を最大傾角(θmax)に向けて付勢する復帰バネが設けられており、
    前記限界角度(θB)未満の斜板が回転する際には、前記復帰バネの付勢力のモーメントが前記斜板の慣性乗積に基づく該斜板を最大傾角へ向かわせる回転運動モーメントと協働して前記限界角度(θB)未満から前記斜板を角度復帰することを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。
  2. 前記斜板が前記駆動軸に対して直交するときの斜板の傾角を0°とした場合、前記斜板の最小傾角(θmin)は0°又は該圧縮機の運転に必要な動力が傾角0°の場合の必要動力とほぼ等しくなる正もしくは負の角度に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の容量可変型斜板式圧縮機。
  3. 前記復帰バネは、小傾角状態にある斜板を該圧縮機の最大吐出容量の2%〜20%の吐出容量に対応した正の角度(θx)に復帰させるまでの間は少なくとも、前記斜板に付勢作用を及ぼすものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の容量可変型斜板式圧縮機。
  4. 前記圧縮機の最大吐出容量の2%〜20%の吐出容量に対応した正の角度(θx)は前記限界角度(θB)以上に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の容量可変型斜板式圧縮機。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の容量可変型斜板式圧縮機及びそれに繋がれた外部冷媒回路から構成される空調用冷房回路であって、前記圧縮機の内部又は前記外部冷媒回路の途中には、前記圧縮機の吐出室と前記外部冷媒回路とを連通させる吐出通路を選択的に開放又は閉塞する逆止弁機構が設けられており、この逆止弁機構は、吐出室側圧力と外部冷媒回路側圧力との差圧が所定の圧力未満である限り、前記吐出通路を閉塞することを特徴とする空調用冷房回路。
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