JP2011026163A - めっきスラッジからフェライト粉末を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リン化合物を含有するめっきスラッジに、鉄化合物を添加するか又は添加しないで、カルシウム化合物をCa分として乾燥スラッジ100質量部に対し、1〜8質量部添加し、混合して、900〜1300℃で焼成する粉末化が容易なソフトフェライトの製造方法。
【選択図】なし
Description
めっき産業ではめっき処理液に6価クロムやシアン化合物などの環境規制物質が含まれるために、その排液の浄化処理により有害成分を環境基準以下の含有量にし、無害化することが必要である。この無害化過程で亜鉛、ニッケル、銅、クロム、錫、および鉄などの重金属成分を水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムや凝集剤の添加によって沈殿させめっきスラッジが形成される。
例えば、めっき廃液に凝集剤と共に酸化鉄や鉄粉を加えたスラッジを700〜1100℃で焼成してフェライト化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、めっきスラッジを脱水し、酸化鉄源を加えて600〜1100℃で焼成してフェライトを得る方法があり、これらのフェライトの用途として電波吸収体や電磁誘導タイル、融雪材、制振ゴムの添加材などが挙げられている(例えば、特許文献2参照)。
また、製革工程で発生するクロムを多く含むスラッジをアーク加熱炉で溶融してフェロクロムとスラグ固化体を得る方法(例えば、特許文献6参照)も提案されている。
さらに、処理対象とするめっきスラッジは排出される事業所やめっき工業団地によりその成分組成が異なるため、特に近年増加してきたリン含有のめっきスラッジの処理では前者のフェライト化法では、種々の応用分野が期待される性能に優れたフェライトを得ることができず、未だ再利用には至っていない。
すなわち本発明は、
(1)リン化合物を含有するめっきスラッジに、鉄化合物を添加するか又は添加しないで、カルシウム化合物をCa分として乾燥めっきスラッジ100質量部に対し、1〜8質量部添加し、混合して、900℃〜1300℃で焼成することを特徴とするソフトフェライト粉末の製造方法、および
(2)前記カルシウム化合物が酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムまたは水酸化カルシウムであることを特徴とする(1)記載のソフトフェライト粉末の製造方法を提供するものである。ここで、炭酸カルシウムの代わりに炭酸カルシウムを主成分とするホタテ貝等の貝殻粉末を用いることも可能である。
なお、ここで「リン化合物を含有するめっきスラッジ」とは、リン成分の含有量が1質量%以上のめっきスラッジであり、乾燥めっきスラッジとは通常のめっきスラッジを110℃で12時間以上乾燥したものである。
そして、得られるフェライト焼結塊は容易に粉砕し、粉末とすることが可能で、磁石にはならないが磁石に強く吸着する性質を有するため、これを成形してタイルを作ると、このタイルは磁石に着く性能を発揮するので台所や風呂場等に活用すれば各種用品を吊り下げたり、挟んだりして保持することが可能となる。また、このフェライトをゴムやプラスチックと混合して金型などに入れて加熱・加圧して任意の形状に成形すると前述のタイルのように磁石の着く製品が得られる。なお、通常のプラスチック製品では帯電性が問題となることが多いが、このフェライト粉末を混合したプラスチック成形品の帯電性は著しく低下する。
更に、このフェライトの微粉末は磁気分離にも活用でき、排水中の微生物や汚れを微粉末に吸着させた後に、この微粉末を磁石に吸着させて急速に分離する磁気分離法に用いることが出来る。
まず、本発明者らは得られるソフトフェライトが磁石に吸着する強さを測定するため、測定器を作成し、測定法を定めた。測定器は市販のバネばかりの下端に円形の磁石を装着したものであり、この磁石に一定量のフェライト粉末試料を封入したプラスチック袋を磁着させ、その後に袋をゆっくりと下方に引き下げ、この袋が磁石から離れた時のバネばかりが示す重量を読み取るものである。ここで、フェライト粉末入りの袋が磁石から離れた時のバネばかりが示す重量から初期の重量を減じたものをそのフェライト粉末の磁着力と定義した。
この測定器を用いて各種条件で作成したフェライト粉末の磁着力を測定し、フェライト生成の焼成条件やCa分の添加量が磁着力に及ぼす影響を詳細に調査した。
一般に、めっきスラッジは、全体的に見ると凡そ下記表1に示すような組成範囲を有する。
これらのスラッジの分析は次のような手順で行った。最初に各スラッジを110℃に保たれた乾燥機に入れて24時間脱水乾燥させた[含水率約25質量%]。次に、これを乳鉢で粉砕し島津製作所製の蛍光X線分析器で各成分の分析を行い、各乾燥めっきスラッジの組成を求めた。各スラッジの組成は次のとおりである。
表2のスラッジAには亜鉛やニッケル、銅などの2価金属が21%に対し鉄とクロムの合計が9%余りなので鉄分の添加が必要となる。一方、スラッジBには鉄分が多く22%も含まれることから、スラッジAとBを適当に混合すれば外部から鉄分を加えなくてもフェライトの生成は可能である。
次に、スラッジA1部にスラッジBを2〜4部(質量部)配合し、ニーダーで充分に混合を行い、混合原料を調製し、電気高温マッフル炉にて900℃で1時間焼成を行いフェライトの作成を試み比較的良好なフェライトが得られることがわかった。
これらの実験から、焼成する乾燥スラッジ中の2価金属(MII)の含有量が10%の場合、鉄分含有量は20〜35%が好ましく、さらに好ましくは20〜30%であったので、当初のスラッジにこの程度の鉄分をもたらす量が含まれている場合は、鉄分は添加する必要はないことがわかった。
しかしながら、900℃以上、特に1100℃以上の温度での焼成となると、焼成物は強く凝固して粉砕が困難となり、通常用いられるボールミルでは焼成フェライトの粉体化が難しくその対策が新たな課題となった。一方、900℃未満で焼成し得られるフェライトの粉砕は可能であるが、これに粘土を混ぜてタイルを1100℃〜1250℃で焼成するとタイルがサヤ(タイルを置く基盤)に強く付着し、タイルの製造が困難になった。これを防止するには後述のようにカルシウムの添加が有効であることがわった。
高温での焼成が生成したフェライト塊を強固に固まらせる理由について種々考察したところ、めっきスラッジに含まれるリン化合物の存在がその原因ではないかと考えられた。すなわち、近年のめっき産業では精密機械部品のめっきに無電解ニッケルめっきが多用されるようになり、めっきスラッジにも表2、特にスラッジBのようにリン化合物がかなり含まれるようになった。
Ca(PO3)2 +2CaO → Ca3(PO4)2
Ca(PO3)2 +2CaCO3 → Ca3(PO4)2+2CO2
Ca(PO3)2 +2Ca(OH)2→ Ca3(PO4)2+2H2O
その結果、生成したフェライトは亀裂が多く入った柱状晶となり容易に粉砕可能なことを発見した。カルシウム化合物として、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムでも同様な作用効果を示すことがわかった。
このようにリン化合物を融点の高い正リン酸カルシウム〔Ca3(PO4)2〕にするにはリン2原子に対しカルシウム3原子が必要となり、質量ではカルシウム分はリンの約2倍が必要となる。従って、スラッジ中のリンの含有量からカルシウム添加量を予測することが可能となる。このことを次の実験で確認した。
そこで、カルシウム化合物の添加量と生成するフェライトの磁着力との関係を調べた。
2価の金属塩を多く含む乾燥した上記スラッジAと鉄分の多い乾燥した上記スラッジBの混合スラッジ(混合重量比1:4)に市販の炭酸カルシウム(純度98%以上)を添加し、ニーダーで充分に混合を行い混合原料を調製し、電気高温マッフル炉にて1250℃で1時間焼成を行った。総スラッジ量に対し、炭酸カルシウムの添加量は、各サンプルでそれぞれカルシウム分として総スラッジ量の0%、2質量%、4質量%、8質量%、12質量%とした。
得られたフェライトの磁着力を前記した手段で測定し、その結果を図2に示す。ここで、炭酸カルシウム無添加の試料は粉砕不能で磁着力は測定出来なかった。
なお、3価クロムを含むめっきスラッジを焼成すると僅かながら6価クロムが生成されることがわかっているが、焼成温度が900℃を超えるとその生成量は低下し環境基準値以下となる。しかしながら、添加Ca分が8%を超えると焼成フェライト中に6価クロムの生成量が増大し、環境基準を超えることがわかった。従って、生成フェライトの磁着力が低下しない範囲である8%以下のCa添加が望ましい。
ここで乾燥スラッジの含水率は、約25質量%のものである。
このようにして得られるフェライトの焼結体はボールミルで容易に粉砕できるものであるので、焼成温度は1100℃を超え1300℃以下がさらに好ましい。
最近、超電導体を用いた強力な磁場を利用した磁気分離法が開発されているが、このフェライト微粉末に排水中の微生物や汚れを吸着させた後に、この微粉末を磁石に吸着させて急速に分離する磁気分離法に用いることができる。
(実施例1)
めっきスラッジを110℃で24時間脱水・乾燥した(含水率約25%)前記の表2に記載した成分の異なるめっきスラッジAおよびスラッジBを1:4(質量比)の割合で配合した。この混合スラッジ質量の10質量%の炭酸カルシウム(昭和化学株式会社製)(カルシウム分として4質量%)を添加して良く混合した。これを磁性坩堝に入れてマッフル炉で加熱し、温度が1250℃に達してから1時間焼成した。得られた焼成物は灰黒色を呈し亀裂の多く入った柱状晶で容易に破砕できた。この砕塊の焼成物をボールミルで12時間かけて粉砕し直径が数μm〜数十μmのフェライト粉末を得た。このフェライトの磁着力は900gであった。
なお、めっきスラッジAおよびスラッジBを1:4(質量比)の割合で配合した混合スラッジ中のリン(P)の含有量は5.33%であり、カルシウム(Ca)は7.42%であるので、前述のCa/P=2の関係から添加するカルシウムの量は3.24質量%となる。
また、この混合スラッジ中の2価の金属イオン濃度は9.9%、3価は24.4%であるので、両者の比(MIII/MII)は2.5となり鉄分は添加しなくて良い。
次に、このフェライト粉末に粘土(「共栄A」(商品名):共栄株式会社製)の粉末を20質量%添加して乳鉢で良く混合した後、予め用意した金型に入れて約50kg/cm2(4.9MPa)の圧力で圧縮成型し、これをマッフル炉中で1250℃で1時間焼成し、タイルとした。このタイルは黒色を呈し磁石に強く吸着した。
表2に示した組成をもつめっきスラッジA(脱水乾燥済み、含水率約25%)に市販の酸化鉄(Fe203)(日新フェライト株式会社製)を2:1(質量比)の割合で添加して混合し、これに炭酸カルシウム(CaCO3)(昭和化学株式会社製)をその1質量%(カルシウム分として0.4質量%)加えて磁性坩堝に入れて1200℃で1時間焼成した。得られた焼成物をボールミルで粉砕し粉末とし、その磁着力が900gのソフトフェライト粉末が生成した。
なお、めっきスラッジA中のリン(P)の含有量は1.08%であり、カルシウム(Ca)は1.88%なので、前述のCa/P=2の関係から添加するカルシウムの量は約0.3質量%となる。
スラッジA中の2価の金属イオン濃度は20.9%、3価は9.5%であるので、両者の比(MIII/MII)は0.45となり鉄分として11.4%以上添加する必要がある。上記の酸化鉄の添加量は鉄分として全体の18%添加に相当する。これは前述のように6.6%鉄の過剰になるが鉄は2価としても作用するので問題は無い。
表2に示した成分組成を有するめっきスラッジAとスラッジB(両者とも脱水乾燥済みで含水率約25%)を1:2の割合(質量比)で混合して、これに市販の酸化カルシウム(生石灰・CaO)(昭和化学株式会社製)を5質量%(カルシウム分として3.6質量%)添加し、良く混合して坩堝に入れ1250℃で1時間焼成した。得られた焼成物をボールミルで粉末とし、その磁着力が850gのソフトフェライト粉末を得た。
なお、めっきスラッジAおよびスラッジBを1:2(質量比)の割合で配合した混合スラッジ中のリン(P)の含有量は4.9%であり、カルシウム(Ca)は6.5%であるので、前述のCa/P=2の関係から添加するカルシウムの量は3.3質量%となる。
また、この混合スラッジ中の2価の金属イオン濃度は11.7%、3価は21.8%であるので、両者の比(MIII/MII)は1.9となり鉄分は添加しなくて良い。
表2でニッケルや亜鉛などの2価金属の多いスラッジA、鉄分とリン分の多いスラッジBおよびクロムとカルシウム分の多いスラッジCを1:2.5:1.5の割合(質量比)で混合して1250℃で1時間焼成した。この焼成物は粉砕が比較的容易であり、磁着力も900gを示し、良好なフェライトが得られた。
この場合の混合スラッジのCa/P値は2.24であり、MIII/MIIの値は3である。カルシウム分はリン含有量の少ないめっきスラッジCとしたものであるが、良好なフェライトが得られることがわかった。
Claims (2)
- リン化合物を含有するめっきスラッジに、鉄化合物を添加するか又は添加しないで、カルシウム化合物をCa分として乾燥めっきスラッジ100質量部に対し、1〜8質量部添加し、混合して、900℃〜1300℃で焼成することを特徴とするソフトフェライト粉末の製造方法。
- 前記カルシウム化合物が、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムまたは水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1記載のソフトフェライト粉末の製造方法。
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