JP2011020960A - オロパタジン固形製剤、およびオロパタジン錠剤の製造方法 - Google Patents

オロパタジン固形製剤、およびオロパタジン錠剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オロパタジン製剤の良好な溶出性を維持したまま、安定性を向上させる新規な技術を提供すること。
【解決手段】本発明では、オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、結晶セルロースを含まない、オロパタジン固形製剤を提供する。また、本発明では、オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、結晶セルロースを含まない原料粉末混合体を、直接打錠する工程を少なくとも行うオロパタジン錠剤の製造方法を提供する。本発明に係るオロパタジン固形製剤は、優れた溶出性を維持したまま、優れた硬度、光安定性などを有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、オロパタジン固形製剤に関する。より詳しくは、安定性の高いオロパタジン固形製剤および安定性の高いオロパタジン錠剤の製造方法に関する。
近年、生活環境の変化、食生活の変化、抗原に対する過剰暴露、遺伝などを原因としたアレルギー疾患が急増している。アレルギー疾患とは、特定の抗原に対して、免疫反応が過剰に起こる疾患の総称であり、例えば、喘息、花粉症などのアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、などが挙げられる。
このようなアレルギー疾患の治療効果を示す物質として、オロパタジンが知られている(特許文献1)。オロパタジンは、喘息、花粉症などのアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症、尋常性乾癬、多形滲出性紅斑)、などに有効であることが報告されている(特許文献2)。
現在、オロパタジン製剤は、錠剤の形態で市販されているが、オロパタジンは、光による不安定性や、経口投与用の医薬品製剤の製造に多用される賦形剤、崩壊剤、結合剤および滑沢剤等の添加物の添加により保存時に経時的に分解されることが知られており、現在市販されている錠剤も、光安定性を向上させるためにフィルムで被覆されているのが実情である。
オロパタジン製剤の安定性を高める技術として、特許文献3には、乳糖および結晶セルロースをベースとした処方に、セルロース誘導体を添加することにより、オロパタジン製剤の安定性を高める技術が提案されている。
また、特許文献4には、パウダーコーティング法により、所定の核被覆層でオロパタジン固形製剤をコーティングすることにより、光安定性等の保存安定性を高める技術が提案されている。
更に、特許文献5には、オロパタジン素製剤100重量部に対して0.6重量部以上の遮光剤を含有する皮膜またはカプセルで、オロパタジン固形製剤を被覆することにより、光安定性等の保存安定性を高める技術が提案されている。
通常、オロパタジン錠剤は、オロパタジンに各種添加剤を混合し、造粒した後、乾燥して打錠するという、間接打錠法(乾式圧縮法、湿式圧縮法)を用いて製造される。錠剤の製造方法としては、間接打錠法の他に、造粒を行うことなく打錠を行う直接打錠法(直接圧縮法)があるが、オロパタジン錠剤の製造において、直接打錠法(直接圧縮法)が用いられたという報告はない。
直接打錠法(直接圧縮法)を用いて錠剤を製造する場合には、適切な賦形剤を使用しなければ、硬度が不足したり、崩壊性が悪くなったりする場合があるため、賦形剤の選択は非常に重要である。例えば、特許文献6には、直接打錠用賦形剤として最も優れているものは、結晶セルロースであるとの報告がある。
特開昭63−10784号公報 EP235796 特開平11−35460号公報 WO2005/097070 WO2005/097104 特開昭59−130821号公報
前述の通り、オロパタジン製剤は、高いアレルギー疾患治療効果を示す一方で、製剤としての安定性が低いという問題がある。この問題に対し、前記のような様々な技術が提案されているが、得られるオロパタジン錠剤の光安定性・苛酷安定性等は、充分なものではなかった。これは、前記の通り、市販されているオロパタジン製剤が、フィルムで被覆されたフィルムコーティング錠であることからもうかがえる。
そこで、本発明では、オロパタジン製剤の良好な溶出性を維持したまま、安定性を向上させる新規な技術を提供することを主目的とする。
本発明者らは、オロパタジン固形製剤の安定性を向上させるために鋭意研究を行った結果、従来、必須とされていた賦形剤について、発想を全く転換することにより、従来にない安定性を示すオロパタジン固形製剤を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明では、まず、オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、
結晶セルロースを含まない、オロパタジン固形製剤を提供する。
従来、オロパタジン製剤の安定性向上には、結晶セルロースが必須と考えられていたが(特許文献3)、本発明においては、敢えて結晶セルロースを含有させないことにより、オロパタジン製剤の安定性を向上させることが見出された。
本発明に係るオロパタジン固形製剤の具体的な剤型は特に限定されないが、本発明においては特に、錠剤とすることが好ましい。
本発明に係るオロパタジン固形製剤の剤型を錠剤とする場合、その製造方法としては、直接打錠法を用いることが好ましい。
本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いる糖類の種類も、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、本発明では特に、乳糖を用いることが好ましい。
また、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いる崩壊剤の種類も、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、本発明では特に、セルロース誘導体を用いることが好ましい。
この場合、セルロース誘導体の種類も、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、本発明では特に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)を用いることが好ましい。
本発明では、次に、オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、結晶セルロースを含まない原料粉末混合体を、直接打錠する工程を少なくとも行うオロパタジン錠剤の製造方法を提供する。
本発明に係る製造方法では、結晶セルロースを用いずに、直接打錠法を行うにも関わらず、製造されるオロパタジン錠剤の安定性を高めることが可能であり、硬度や崩壊性等の物性が良好な錠剤を得ることができる。
本発明によれば、オロパタジン製剤の良好な溶出性を維持したまま、安定性を飛躍的に向上させることが可能である。
実験1において、実施例1〜6および比較例1に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験2において、実施例1、2、7に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験2において、実施例3、4、8に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験2において、実施例5、6、9に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験2において、実施例10、12、13に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験2において、実施例11、14、15に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験3において、実施例10および比較例2に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験3において、実施例11よび比較例3に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験4において、実施例16〜20に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験5において、実施例7〜11に係るオロパタジン固形製剤のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験6において、実施例1、2、7および比較例1に係るオロパタジン固形製剤の溶出率を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験6において、実施例3、4、8および比較例1に係るオロパタジン固形製剤の溶出率を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験6において、実施例5、6、9および比較例1に係るオロパタジン固形製剤の溶出率を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験6において、実施例10、12、13および比較例1、2に係るオロパタジン固形製剤の溶出率を測定した結果を示す図面代用グラフである。 実験6において、実施例11、14、15および比較例1、3に係るオロパタジン固形製剤の溶出率を測定した結果を示す図面代用グラフである。
以下、本発明を実施するための好適な形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<オロパタジン固形製剤>
本発明に係るオロパタジン固形製剤は、オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、結晶セルロースを含まないことを特徴とする。前述の通り、従来の技術常識からすると、オロパタジン固形製剤を製造するには、賦形剤として結晶セルロースが第一選択されるのが当然である(特許文献6参照)。現に、オロパタジン製剤の安定性を高めるために、結晶セルロース賦形剤として用いることが公知技術となっている(特許文献3参照)。このように、結晶セルロースは、医薬品の安定性に影響を及ぼす報告はほとんどなく、結晶セルロースは良好な賦形剤として医薬品に多用されているものである。
しかしながら、本発明者らは、オロパタジン固形製剤に結晶セルロースを用いたところ、意外にも安定性の低下が見られること、逆に、オロパタジン固形製剤においては結晶セルロースを用いないことにより、安定性が向上することを見出した。以下、本発明に係るオロパタジン固形製剤に含有する各成分、および剤型などについて詳細に説明する。
(1)オロパタジン
オロパタジンは、(Z)−11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6、11−ジヒドロジベンズ〔b、e〕オキセピン−2−酢酸であって、(E)−11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6、11−ジヒドロジベンズ〔b、e〕オキセピン−2−酢酸・塩酸塩の一般名である。その製造および薬理学的活性は、前記特許文献2に記載されているが、喘息、花粉症などのアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症、尋常性乾癬、多形滲出性紅斑)などに有効な物質であり、本発明に係るオロパタジン固形製剤においても、このオロパタジンを有効成分として含有する。
本発明で使用する「オロパタジン」とは、遊離塩基形およびその製薬学的に許容可能な酸付加塩を広く包含する。ここで、「付加塩」とは、オロパタジン、並びにその塩類が形成できる溶媒和物も広く包含し、溶媒和物としては、例えば、アルコレート類などを挙げることができる。オロパタジンの溶解度は、このような塩の生成で増加し、それらは塩基形と適当な酸との反応により得ることができる。
塩を形成する無機酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸、ナトリウム−オルトリン酸塩、カリウム水素硫酸塩などが挙げられる。
また、塩を形成する有機酸の例としては、モノ、ジ、トリカルボン酸、などが挙げられる。これらの酸の例としては、例えば、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、などが挙げられる。塩を形成するその他の有機酸としては、メタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸の様なスルホン酸を挙げることができる。
これらの塩及び基本化合物は、水和形態、或いは実質的に無水の形態で存在する。酸塩は、水性溶液または水性−アルコール溶液、或いは適当な酸を含むその他の適当な溶媒に、遊離の塩基を溶解し、溶液を蒸発させて単離するか、または、塩の直接分離又は溶液の濃縮によって得る事のできるいずれかの場合において、遊離の塩基を有機溶媒で反応させる様な一般的な方法によって調製することができる。
(2)糖類
本発明に係るオロパタジン固形製剤には、賦形剤として糖類を用いる。本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な糖類の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、医薬製剤に用いることができる糖類を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。
本発明では特に、後述の実施例で示すように、糖類中でも乳糖を用いることで、オロパタジン固形製剤の安定性を高めることができることが見出された。本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な乳糖とは、α−含水乳糖、α−無水乳糖、β−無水乳糖の全てを含み、一般的に医薬品として使用しうるグレートのものであれば、自由に選択して用いることが可能である。
本発明に係るオロパタジン固形製剤における糖類の含有量は、本発明の効果を損なわなければ自由に設計することができるが、20〜95質量%とすることが好ましく、35〜90質量%とすることがより好ましい。
(3)崩壊剤
本発明に係るオロパタジン固形製剤には、固形製剤の崩壊を促進させるために、崩壊剤を配合する。本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な崩壊剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、医薬製剤に用いることができる崩壊剤を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、クロスポビドン、ポビドン、各種セルロース誘導体などが挙げられる。
この中でも特に本発明においては、セルロース誘導体を用いることで、後述の実施例で示すように、オロパタジン固形製剤の安定性を高めることができることが見出された。本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能なセルロース誘導体の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、医薬製剤に用いることができるセルロース誘導体を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロースなどが挙げられ、単糖類であるグルコースが多数重合し高分子を形成して多糖類として存在するセルロースの水酸基の一部または全部がエステル化あるいはエーテル化されたセルロースから誘導されるものを挙げることができる。この中でも特に本発明においては、安定性を最も満足させる崩壊剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)を用いることが好ましい。
本発明に係るオロパタジン固形製剤における崩壊剤の含有量は、本発明の効果を損なわなければ自由に設計することができるが、1〜30質量%とすることが好ましく、5〜20質量%とすることがより好ましい。1質量%未満では、投与時に固形製剤の崩壊を十分に促進させることができない場合があり、逆に、30質量%を超えると、錠剤が大型化する場合があるからである。
(4)その他添加剤
本発明に係るオロパタジン固形製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性薬剤に通常使用されている種々の添加剤、例えば、賦形剤、滑沢剤、流動化剤、結合剤、粘稠剤、緩衝剤、保存剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、等張化剤、コーティング剤、矯味剤、溶解補助剤、基剤、分散剤、安定化剤、着色剤、香料、清涼化剤などを使用して公知の方法により製剤化することができる。以下、代表的な添加剤について、具体例を示す。
例えば、賦形剤としては、アラビアゴム末、アルファー化デンプン、カゼインナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、含水二酸化ケイ素、カンテン、キシリトール、クロスカルメロースナトリウム、D-マンニトール、マルチトール、マルトース水和物、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプン、軽質無水ケイ酸、精製白糖、ソルビトール、ポビドン、マクロゴール等を1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
例えば、滑沢剤としては、カカオ脂、カルナウバロウ、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化油、フマル酸ステアリルナトリウムなどを1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、タルクなどを1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
例えば、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な結合剤としては、水溶性高分子が好ましく、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
例えば、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な溶解補助剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノパルミテート等のポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の親水性の非イオン性界面活性剤、トロメタモール、ポリビニルピロリドン及びマクロゴールなどを、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
例えば、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、リン酸塩類(リン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等)、アルコール類(クロロブタノール、ベンジルアルコール等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、糖類などを、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。本発明に係るオロパタジン固形製剤における保存剤の濃度は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、0.05%〜1%とするのが好ましく、0.1%〜0.5%とするのがより好ましく、そして約0.2%とするのが最も好ましい。
例えば、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な酸化防止剤(抗酸化剤)としては、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)、ロンガリット、エリソルビン酸、L−アスコルビン酸、システイン、チオグリセロール、ブチルヒドロキシアニゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、dl−α−トコフェロールなどを、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
例えば、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な矯味料としては、ショ糖、グルコースシロップ等の糖類、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール、シクラメートナトリウム、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア等の合成甘味料、グリチルリチン及びその塩類、及びハチミツ、ソーマチン、アマチャ末、アミノ酢酸、レモン油、オレンジ油等の精油などを、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
例えば、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いることが可能な香料又は清涼化剤としては、テルペン類(例えば、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、メントール、リモネン、リュウノウ、精油(ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など))などを、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
その他、製薬学的に許容可能なシクロデキストリンまたはその誘導体を添加することにより、活性成分の水溶解度を増加させることも可能である。
(5)剤型について
本発明に係るオロパタジン固形製剤は、固形であれば、その剤型は特に限定されず、公知の方法で自由に設計することができる。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤などが挙げられる。本発明では特に、錠剤とすることが好ましい。
本発明に係るオロパタジン固形製剤の剤型を錠剤とする場合、従来のオロパタジン錠剤のように、いわゆる造粒工程を経た後に打錠する間接打錠法(乾式圧縮法、湿式圧縮法)を用いて製造することもできるが、本発明においては、後述の製造方法に記載する通り、直接打錠法(直接圧縮法)を用いて製造することが好ましい。
直接打錠法(直接圧縮法)は、錠剤の各構成成分をただ単に混合するだけで圧縮成形に付する極めて簡便な製造方法であるため、製造時のコストや時間の削減に貢献する。また、製造工程中に水分などの添加をしていないので、錠剤の構成成分の安定性などにおいても好ましい製剤方法である。一方、製剤学分野では、錠剤の硬度や溶出性を向上させるためには、造粒工程を経た後に打錠する間接打錠法(顆粒圧縮法)を用いることが有効であるということが技術常識である。
しかしながら、本発明に係るオロパタジン固形製剤においては、前述した各成分を含有させ、且つ、結晶セルロースを含有させないことで、直接打錠法(直接圧縮法)を用いて錠剤を製造した場合であっても、十分な錠剤硬度と十分な溶出性を備え、光や熱などに対する安定性が向上したオロパタジン錠剤を製造することに成功した。
このように、本発明に係るオロパタジン固形製剤は、その剤型を錠剤とした場合にも、十分な錠剤硬度を備え、光や熱などに対する安定性も高いため、裸錠の状態でも十分な効果を発揮するが、薬物の放出の制御、薬物の味のマスキング、より確実な遮光、プロテクト(他の賦形剤との接触防止など)、防湿などの目的のために、その表面を1層または2層以上、コーティングすることも可能である。
本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いるコーティング剤は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、公知のコーティング剤を1種または2種以上選択して用いることができる。例えば、水溶性高分子、水不溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子、疎水性有機化合物などのコーティング剤を使用することができる。
より具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)などの水溶性セルロースエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリビニル誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルキレンオキシド重合体等の水溶性高分子、エチルセルロースなどの水不溶性セルロースエーテル、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等の水不溶性高分子、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、スチレン・アクリル酸共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸共重合体、アクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸無水物共重合体、スチレン・マレイン酸無水物共重合体、ポリビニルアルコールフタレート、ポリビニルアセタールフタレートなどの腸溶性高分子、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどの胃溶性ポリビニル誘導体、メタアクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体等の胃溶性高分子などを挙げることができる。
このコーティング層には、上記のようなコーティング剤成分のほか、必要に応じて着色剤、隠蔽剤、可塑剤、滑沢剤などの種々の添加剤を更に含有させることができる。
着色剤としては、例えば、食用色素、レーキ色素、カラメル、カロチン、アナット、コチニール、三二酸化鉄などに加えて、レーキ色素とシロップを主体とした不透明着色剤オパラックス(OPALUX)などを挙げることができる。より具体的には、食用赤色2号、3号、黄色4号、5号、緑色3号、青色1号、2号、紫1号などの食用アルミニウムレーキ、アナット(ベニノキ由来の天然色素)、カルミン(カルミン酸アルミニウム塩)、パールエッセンス(グアニンを主成分とする)などを使用することができる。
隠蔽剤としては、二酸化チタン(酸化チタン)、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウムなどを挙げることできる。
可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのフタル酸誘導体のほか、シリコン油、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、トリアセチン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、セタノール、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベートなどを挙げることができる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、合成ケイ酸マグネシウム、微粒子性酸化ケイ素、などを挙げることができる。また、光沢化剤としては、カルナウバロウ、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、タルク、パラフィン、マクロゴール、ミツロウ、モノステアリン酸グリセリン、流動パラフィンなどを挙げることができる。
本発明に係るオロパタジン固形製剤の剤型を錠剤とする場合、その錠剤の種類は特に限定されず、例えば、内服錠に限らず、バッカル錠、舌下錠、チュアブル錠などの口腔錠として製剤することも可能である。
以上説明した本発明に係るオロパタジン固形製剤の引張強度は、0.5MPa以上、好ましくは約0.8MPa以上、より好ましくは約1MPa以上である。また、第十五改正日本薬局方崩壊試験(試験液:水)による崩壊時間は、好ましくは5分以下、より好ましくは2分以下であり、口腔内速崩壊性製剤とした場合の口腔内崩壊時間は、好ましくは約60秒以下、より好ましくは約30秒以下、最も好ましくは約20秒以下である。
<オロパタジン錠剤の製造方法>
本発明に係るオロパタジン錠剤の製造方法は、オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、結晶セルロースを含まない原料粉末混合体を、直接打錠する工程を少なくとも行う方法である。前述した通り、本発明においては、前記各成分を含有させ、且つ、結晶セルロースを含有させないことで、直接打錠法(直接圧縮法)を採用した場合であっても、得られたオロパタジン錠剤は、十分な錠剤硬度と十分な溶出性を備え、光や熱などに対する安定性が非常に高いことを特徴とする。
また、本発明に係る製造方法が採用する直接打錠法(直接圧縮法)は、極めて簡便な製造方法であるため、製造時のコストや時間を大幅に削減することができる。また、製造工程中に水分などの添加をしていないので、間接打錠法(顆粒圧縮法)を採用する場合に比べ、錠剤の構成成分の安定性などを向上させることができる。
具体的な打錠には、一般的な錠剤の成型または造粒に用いられる装置を、自由に選択して用いることができる。例えば、単発錠剤機、ロータリー式錠剤機などを用いることができる。
本発明に係る製造方法における打錠の際の成型圧力は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、自由に設定することができる。通常は、3〜160Kg/cm(2.94×10〜1.57×10Pa)、好ましくは5〜130Kg/cm(4.90×10〜1.27×10Pa)、より好ましくは8〜50Kg/cm(7.84×10〜4.90×10Pa)程度である。
本発明に係る製造方法における打錠時の温度は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では、用いる糖類粒子が溶解又は溶融しない程度に設定することが好ましく、通常室温(例えば20〜30℃程度)で行えば十分である。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<実験1.結晶セルロースの必要性の検討>
本実験では、結晶セルロースを用いたオロパタジン固形製剤と、結晶セルロースを用いないオロパタジン固形製剤とについて、安定性の比較検討を行った。
(1)実施例1
以下の方法で、実施例1に係るオロパタジン固形製剤を得た。
A.まず、オロパタジン塩酸塩5.0mg、乳糖95.05mg及び崩壊剤(カルボキシメチルセルロース)11.50mgを混合し、ポリビニルアルコール水溶液2.30mgを用いて造粒した後、十分乾燥して造粒物を得た。
B.次に、Aで得られた造粒物にステアリン酸マグネシウム1.15mgを混合し、錠用末を得た。
C.Bで得られた錠用末を、1錠115mgになるように打錠し、実施例1に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(2)実施例2
造粒時に用いたポリビニルアルコール水溶液の代わりにヒドロキシプロピルセルロース水溶液2.30mgを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例2に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(3)実施例3
カルボキシメチルセルロースの代わりにクロスカルメロースナトリウム11.50mgを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例3に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(4)実施例4
造粒時に用いたポリビニルアルコール水溶液の代わりにヒドロキシプロピルセルロース水溶液2.30mgを用いた以外は、実施例3と同様の方法で実施例4に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(5)実施例5
カルボキシメチルセルロースの代わりに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)11.50mgを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例5に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(6)実施例6
造粒時に用いたポリビニルアルコール水溶液の代わりにヒドロキシプロピルセルロース水溶液2.30mgを用いた以外は、実施例5と同様の方法で実施例6に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(7)比較例1
市販の先発製剤(アレロック(登録商標))のフィルムコーティングをカッターで剥離し素錠としたものを、比較例1として用いた。なお、比較例1に係るオロパタジン固形製剤の配合組成は、下記表1に示す。
以上のように製造した実施例1〜6および比較例1に係るオロパタジン固形製剤について、安定性試験を行った。具体的には、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した。なお、安定性が高ければ、オロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合は小さい値となる。
結果を下記の表1および図1に示す。合わせて表1には、比較を容易にするために、各オロパタジン固形製剤の配合組成を記載した。
Figure 2011020960
表1および図1に示す通り、結晶セルロースを用いた比較例1にくらべ、結晶セルロースを用いない実施例1〜6は、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合が顕著に低いことが分かった。即ち、オロパタジン固形製剤には、結晶セルロースを含有させないことにより、安定性が向上することが実証された。
<実験2.打錠法の検討>
本実験では、間接打錠法(顆粒圧縮法)を用いた場合と、直接打錠法(直接圧縮法)を用いた場合について、得られたオロパタジン錠剤の安定性を比較検討した。オロパタジン固形製剤として、前記実験1で製造した実施例1〜6に係るオロパタジン固形製剤と、下記の方法で製造した実施例7〜15に係るオロパタジン固形製剤を用いた。
(1)実施例7
以下の方法で、実施例7に係るオロパタジン固形製剤を得た。
A.まず、オロパタジン塩酸塩5.0mg、乳糖95.05mg及び崩壊剤(カルボキシメチルセルロース)11.50mgを混合した。
B.次に、Aで得られた混合物にステアリン酸マグネシウム1.15mgを混合し、錠用末を得た。
C.Bで得られた錠用末を、1錠115mgになるように打錠し、実施例7に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(2)実施例8
カルボキシメチルセルロースの代わりにクロスカルメロースナトリウム11.50mgを用いた以外は、実施例7と同様の方法で実施例8に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(3)実施例9
カルボキシメチルセルロースの代わりに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)11.50mgを用いた以外は、実施例7と同様の方法で実施例9に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(4)実施例10
カルボキシメチルセルロースの代わりにカルボキシメチルスターチナトリウム11.50mgを用いた以外は、実施例7と同様の方法で実施例10に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(5)実施例11
カルボキシメチルセルロースの代わりにクロスポビドン11.50mgを用いた以外は、実施例7と同様の方法で実施例11に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(6)実施例12
カルボキシメチルセルロースの代わりにカルボキシメチルスターチナトリウム11.50mgを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例12に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(7)実施例13
造粒時に用いたポリビニルアルコール水溶液の代わりにヒドロキシプロピルセルロース水溶液2.30mgを用いた以外は、実施例12と同様の方法で実施例13に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(8)実施例14
カルボキシメチルセルロースの代わりにクロスポビドン11.50mgを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例14に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(9)実施例15
造粒時に用いたポリビニルアルコール水溶液の代わりにヒドロキシプロピルセルロース水溶液2.30mgを用いた以外は、実施例14と同様の方法で実施例15に係るオロパタジン固形製剤を得た。
以上のように製造した実施例1〜15に係るオロパタジン固形製剤について、安定性試験を行った。具体的には、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合、および、白色蛍光灯下(60万Lux・hr、120万Lux・hr)に放置場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した。
結果を下記の表2〜6および図2〜6に示す。合わせて表2〜6には、比較を容易にするために、各オロパタジン固形製剤の配合組成および打錠法を記載した。なお、各表2〜6は、用いた崩壊剤の種類ごとに比較した結果である。
Figure 2011020960
Figure 2011020960
Figure 2011020960
Figure 2011020960
Figure 2011020960
表2〜6および図2〜6に示す通り、各崩壊剤ごとに安定性を比較した結果、間接打錠法(顆粒圧縮法)を用いた実施例1〜6、12〜15に比べ、直接打錠法(直接圧縮法)を用いた実施例7〜11は、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合、および白色蛍光灯下(60万Lux・hr、120万Lux・hr)に放置場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合が低いことが分かった。即ち、オロパタジン固形製剤を製造する場合、直接打錠法(直接圧縮法)を用いることにより、安定性が向上することが実証された。
<実験3.結晶セルロースおよび打錠法の検討>
前記実験2では、結晶セルロースを含有しないオロパタジン固形製剤について、その打錠法の違いによる安定性を比較し、直接打錠法が好適であることが見出された。そこで、実験3では、直接打錠法において、結晶セルロースの有無による安定性の違いについて検討した。オロパタジン固形製剤として、前記実験2で製造した実施例10、11に係るオロパタジン固形製剤と、下記の方法で製造した比較例2、3に係るオロパタジン固形製剤を用いた。
(1)比較例2
以下の方法で、比較例2に係るオロパタジン固形製剤を得た。
A.まず、オロパタジン塩酸塩5.0mg、乳糖80.50mg、結晶セルロース16.85及び崩壊剤(カルボキシメチルスターチナトリウム)11.50mgを混合した。
B.次に、Aで得られた混合物にステアリン酸マグネシウム1.15mgを混合し、錠用末を得た。
C.Bで得られた錠用末を、1錠115mgになるように打錠し、実施例7に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(2)比較例3
カルボキシメチルスターチナトリウムの代わりにクロスポビドン11.50mgを用いた以外は、比較例2と同様の方法で比較例3に係るオロパタジン固形製剤を得た。
以上のように製造した実施例10、11および比較例2、3に係るオロパタジン固形製剤について、安定性試験を行った。具体的には、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した。
結果を下記の表7、8および図7、8に示す。合わせて表7および8には、比較を容易にするために、各オロパタジン固形製剤の配合組成および打錠法を記載した。なお、各表7および8は、用いた崩壊剤の種類ごとに比較した結果である。
Figure 2011020960
Figure 2011020960
表7、8および図7、8に示す通り、各崩壊剤ごとに安定性を比較した結果、同一の打錠法(直接打錠法(直接圧縮法))を用いた場合であっても、結晶セルロースを含有する比較例2および3に比べ、結晶セルロースを含有しない実施例10、11は、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合が低いことが分かった。即ち、オロパタジン固形製剤を製造する場合、直接打錠法(直接圧縮法)を用いるだけでなく、結晶セルロースを含有させないことが、安定性向上に重要であることが実証された。
<実験4.用いる糖類の検討>
実験4では、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いる好適な糖類について検討した。具体的には、乳糖、精製白糖、ブドウ糖、還元麦芽糖水飴、マンニトールを用いた場合に、オロパタジン固形製剤の安定性の違いについて検討した。
(1)実施例16
以下の方法で、実施例16に係るオロパタジン固形製剤を得た。
A.まず、オロパタジン塩酸塩5.0mg、乳糖91.60mg及びヒドロキシプロピルセルロース17.25mgを混合した。
B.次に、Aで得られた混合物にステアリン酸マグネシウム1.15mgを混合し、錠用末を得た。
C.Bで得られた錠用末を、1錠115mgになるように打錠し、実施例16に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(2)実施例17
乳糖の代わりに精製白糖91.60mgを用いた以外は、実施例16と同様の方法で実施例17に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(3)実施例18
乳糖の代わりにブドウ糖91.60mgを用いた以外は、実施例16と同様の方法で実施例18に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(4)実施例19
乳糖の代わりに還元麦芽糖水飴91.60mgを用いた以外は、実施例16と同様の方法で実施例19に係るオロパタジン固形製剤を得た。
(5)実施例20
乳糖の代わりにマンニトール91.60mgを用いた以外は、実施例16と同様の方法で実施例20に係るオロパタジン固形製剤を得た。
以上のように製造した実施例16〜20に係るオロパタジン固形製剤について、安定性試験を行った。具体的には、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間および7日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した。
結果を下記の表9および図9に示す。合わせて表9には、比較を容易にするために、各オロパタジン固形製剤の配合組成および打錠法を記載した。
Figure 2011020960
表9および図9に示す通り、糖類として乳糖を用いた実施例16は、他の糖類を用いた実施例17〜20に比べ、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間および7日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合が顕著に低いことが分かった。即ち、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いる糖類としては、乳糖が好適であることが分かった。
<実験5.用いる崩壊剤の検討>
実験5では、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いる好適な崩壊剤について検討した。具体的には、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドンを用いた場合に、オロパタジン固形製剤の安定性の違いについて検討した。オロパタジン固形製剤として、前記実験2で製造した実施例7〜11に係るオロパタジン固形製剤を用いた。
製造した各実施例7〜11係るオロパタジン固形製剤について、安定性試験を行った。具体的には、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合、および、白色蛍光灯下(60万Lux・hr、120万Lux・hr)に放置場合のオロパタジン塩酸塩の類縁物質の割合を測定した。
結果を下記の表10および図10に示す。合わせて表10には、比較を容易にするために、各オロパタジン固形製剤の配合組成および打錠法を記載した。
Figure 2011020960
表10および図10に示す通り、光安定性(60万Lux・hr、120万Lux・hr)に関しては、それほどの違いがなかったが、高温高湿度下における安定性については、崩壊剤としてセルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いた場合の方が、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドンを用いた場合に比べ、向上することが分かった。即ち、本発明に係るオロパタジン固形製剤に用いる崩壊剤としては、セルロース誘導体が好適であることが分かった。
また、セルロース誘導体の中では、光安定性(60万Lux・hr、120万Lux・hr)の観点から考えると、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好適であることが分かった。
<実験6.溶出性の確認>
実験6では、本発明に係るオロパタジン固形製剤の溶出性について確認した。オロパタジン固形製剤として、前記実験1〜3で製造した実施例1〜15、比較例1〜3に係るオロパタジン固形製剤を用いた。
製造した各実施例1〜15、比較例1〜3に係るオロパタジン固形製剤について、溶出試験を行った。具体的には、実施例1〜15、比較例1〜3に係るオロパタジン固形製剤を各々1個を用いて、試験液として水900mLを用い、パドル法により、毎分50回転で試験を行った。溶出試験開始5、10、15分後に、溶出液を10mL以上とり、孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過し、このろ液を試料溶液とした。別にオロパタジンを溶解した標準溶液を調製し、試料溶液及び標準溶液10μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、オロパタジンピーク面積を求めた。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:299nm)
カラム:内径4.0mm、長さ25cmのステンレス管に、5μmの液体クロマトグラフィー用オクチルシリル化シリカゲルを充てんした。
カラム温度:40℃付近の一定温度
また、各実施例1〜15、比較例1〜3に係るオロパタジン固形製剤について、苛酷条件下(60℃、75%RH、3日間)に放置した後の溶出性についても、同様に溶出試験を行った。
結果を図11〜15に示す。なお、各図11〜15は、用いた崩壊剤の種類ごとに比較した結果である。
図11〜15に示す通り、本発明係るオロパタジン固形製剤である実施例1〜15は、従来のオロパタジン固形製剤である比較例1〜3と同様の溶出性を示すことが確認できた。即ち、本発明に係るオロパタジン製剤は、良好な溶出性を維持したまま、安定性が向上することが確認できた。
本発明に係るオロパタジン固形製剤は、従来のオロパタジン固形製剤の溶出性を維持したまま、従来のオロパタジン固形製剤に比べて優れた硬度、光安定性などを有する。そのため、従来のオロパタジン固形製剤のように、コーティングなどの必要性が低いため、得られた製剤の小型化にも貢献し、更に、製造コスト、製造時間を著しく短縮することもできる。
また、その製造方法も、直接打錠法(直接圧縮法)という簡便な方法を採用することが可能であるため、製造方法の面からも、製造コスト、製造時間の短縮へ貢献することができる。

Claims (7)

  1. オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、
    結晶セルロースを含まない、オロパタジン固形製剤。
  2. 錠剤である請求項1記載のオロパタジン固形製剤。
  3. 直接打錠法により製造される請求項2記載のオロパタジン固形製剤。
  4. 前記糖類は、乳糖である請求項1から3のいずれか一項に記載のオロパタジン固形製剤。
  5. 前記崩壊剤は、セルロース誘導体である請求項1から4のいずれか一項に記載のオロパタジン固形製剤。
  6. 前記セルロース誘導体は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)である請求項5記載のオロパタジン固形製剤。
  7. オロパタジン、糖類、崩壊剤を含み、結晶セルロースを含まない原料粉末混合体を、直接打錠する工程を少なくとも行うオロパタジン錠剤の製造方法。
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