JP2011019327A - デュアルモードのインバータを含む列車制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】列車の編成能力を列車及び各車両の基本構成を変更することなく、リアルタイムで容易に変更できるフレキシブルな列車制御システムを提供する。
【解決手段】各車両に取り付けられた台車18aにはインバータ17が設けられる。インバータ17は主電動機23駆動用インバータ又は補機13の補助電源用インバータとして動作する。総括制御部24は、列車の走行状況に応じて、各インバータ17が主電動機駆動用インバータとして動作するか、又は前記補助電源用インバータとして動作するか制御する。
【選択図】 図3
【解決手段】各車両に取り付けられた台車18aにはインバータ17が設けられる。インバータ17は主電動機23駆動用インバータ又は補機13の補助電源用インバータとして動作する。総括制御部24は、列車の走行状況に応じて、各インバータ17が主電動機駆動用インバータとして動作するか、又は前記補助電源用インバータとして動作するか制御する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、主電動機の電力及び補助電源が、デュアルモードで動作するインバータにより提供される複数の車両を含む列車の制御システムに関する。
電車や機関車などの鉄道車両の電気車駆動装置では、安全性や迅速な製品納期が求められる。一般に電気車駆動装置は、主に主電動機及びVVVF(variable voltage variable frequency)インバータから構成される。電気車駆動装置のうちVVVFインバータが車体の床下に装荷され、台車内には車輪を駆動するための主電動機や、車輪にブレーキ力を作用させるブレーキシューなどが配置されていた。そのため、台車内の主電動機から動力線及び速度検出器の信号線などが車体側に渡るなど配線および配管が複雑になっており、車両製作に工数を要する問題点があった。このような問題を解消するため、下記特許文献1では、台車内にVVVFインバータ及び主電動機を設けた構成を開示している。
車両内に配備される空調装置等の補機の電源は、一般に補助電源により供給される。補助電源は、例えば架線から供給されるDC1500VをAC440Vに変換する。この交流電力は車両内に配備された補機に提供される。
上記のような駆動装置を有する台車をM台車、駆動装置を有していない台車をT台車という。1編成におけるT台車、M台車の数あるいは補助電源の数は、各列車編成について固定されていた。
例えば列車の加減速性能を向上させるような場合は、M台車の数などを車両単位で変更して編成の構成を変更し、トルク指令値などを該編成に適合する値に計算し直す必要がある。又、真夏の冷房能力を確保するために必要数の補助電源及び空調装置が設けられる。しかし春や秋など、空調設備をほとんど使用しない季節では、補助電源もほとんど使用されない。従来は、1編成の駆動力及び補助電源等の性能(編成能力)を容易に変更することはできなかった。
本発明は上記したような課題を鑑みてなされたもので、列車の編成能力を列車及び各車両の基本構成を変更することなく、リアルタイムで容易に変更し、変更された編成能力を把握して列車を制御できるフレキシブルな列車制御システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の列車制御システムは、車輪を回転駆動する主電動機と、補機とを含む複数車両で編成された列車の制御システムであって、前記主電動機駆動用インバータ又は前記補機の補助電源用インバータのデュアルモードで動作する主変換装置と、前記主変換装置が前記主電動機駆動用インバータとして動作するか、又は前記補助電源用インバータとして動作するか制御する制御手段と、を具備する。
本発明によれば、列車の編成能力を列車及び各車両の基本的構成を変更することなく、リアルタイムで容易に変更できるフレキシブルな列車制御システムが提供される。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明による列車制御システムが適用される列車編成の構成を示す図である。この列車は1例として10両編成で構成されている。
各車両11には2台の台車18が設けられ、各台車はM台車18aあるいはT台車18bである。M台車18aはモータ駆動台車であり、インバータ17及びモータ23の組が2組設けられている。モータ23は小型軽量に適した例えば永久磁石同期電動機で、メンテナンスフリーとするために全密閉型がよい。T台車18bは駆動装置を有さない台車である。各台車18は取り付け口22を介して車両11の本体に接続される。取り付け口22は車両本体側に設けられ、その構造は全車両において同一である。従って台車上部つまり取り付け口に結合される部分の機械的構造は全台車18において同一である。
パンタグラフ12に接続される第1パワーライン15は、各取り付け口22まで配線される。この第1パワーライン15には架線10からパンタグラフ12を介して例えば直流1500Vが供給される。M台車18aのインバータ17には、この直流1500Vが第1パワーライン15からコネクタ(図示せず)を介して供給される。
第2パワーライン14は補機用3相440Vを伝送するラインである。この3相440Vは補助電源(図示せず)により発生される。この補助電源は例えば第1パワーラインから供給される直流1500Vを補機用3相440Vに変換する。第2パワーライン14は補助電源から各取り付け口22まで配線され、更に空調設備などの各車両に搭載された補機13に接続される。
制御伝送ライン16は、総括制御部24から各取り付け口22に配線される。制御伝送ライン16では、インバータ17などを制御するための情報が伝送される。又制御伝送ライン16は、補機13などを制御するための信号が伝送される。
図2は本実施例に適用される各種台車18の構成を示す図である。
台車18にはM台車18a、T台車18bの他に、モータ23及びインバータ17の組を1組搭載した0.5M台車18c、インバータ17のみを搭載したINV台車18d、バッテリー34のみを搭載したBAT台車18e等がある。更に台車には補機用の補助電源を搭載しても良い。
本実施例を適用する列車は、M台車18aをT台車18b等の他の台車へ容易に入れ換えることが可能である。つまり各車両には、所要の性能に応じて様々な台車を取り付けることができる。例えばT台車をM台車へ交換すると、駆動性能及び回生ブレーキ性能を向上できる。又M台車同士の入れ替えが可能であるため、故障時の早期復旧及びメンテナンス性を向上できる。1車両に少なくとも1台のM台車を組み付けることにより、1車両単体で移動可能である。
各台車18に設けられている属性記録部21は、当該台車18に搭載された機器17、34、23の属性(能力)が記録されている。総括制御部24は、属性記録部21に記録された各台車18の能力を制御伝送ライン16を介して読み込むことにより、当該列車の総合的な能力(編成能力)、例えば列車の総合的な引っ張り力/ブレーキ力特性を判断することができる。総括制御部24は、このようにして判断した編成能力に応じて、列車の駆動力等を制御する。
以上説明したように、本発明の第1実施例によれば、様々な能力を有する台車の組み合わせにより、所要編成能力を実現するフレキシブルな列車制御システムを提供することが可能である。また、インバータ(主変換装置)17を標準化することにより、管理が容易となりコストダウンを実現する。全路線の運行を、共通規格の台車を用いた列車で実現可能である。更に、車両搭載機器を台車内に配置することで、開放された床下スペースに例えば蓄電装置を搭載し、電力アシスト及び電力リサイクルを実現できる。
尚、属性記録部21の属性情報及び制御情報の伝送は、制御伝送ライン16のような有線ではなく、無線により行っても良い。又、取り付け口22には、台車交換時などに作業員を保護するために、パワーラインを開放する手段を設けても良い。更に、各車両にM台車18aあるいは0.5M18c台車と、バッテリー台車18eを装備すれば、各車両は自走できる。
次に本発明の第2実施例を説明する。第2実施例に係る列車は、デュアルモードで動作するインバータを含み、編成内に設けられたインバータ総能力を、リアルタイムで駆動力(VVVF)と補助電源(SIV)に最適配分する。
図3は本発明の第2実施例に係る列車制御システムが適用される列車編成の構成を示す図である。
この第2実施例に係る列車の構造は第1実施例と同様である。第2実施例では、台車として全てM台車が用いられ、搭載されるインバータは全て又は一部がデュアルモードで動作する。尚、全台車がM台車であることは本発明の必須の条件ではない。使用されるM台車の台数(モータ駆動軸数)が通常より多いほど、本発明の特徴が顕著に現れる。
M台車18aに設けられた2台のインバータ17のうち例えば1台はデュアルモードで動作するようにしてもよい。デュアルモードで構成された場合、インバータ17は例えば補機用3相50Hz電圧及びモータ23駆動用3相VVVF電圧の一方を、総括制御部24の制御の基に発生する。
図4は本実施例に係るM台車18aの電気的構成を示す図である。
インバータ17aは、モータ駆動用VVVFインバータであって、第1パワーライン15から接触器19及びコネクタ20を介して供給される直流電力を、総括制御部24の制御の下に可変電圧可変周波数の三相電力に変換しモータ23を駆動する。
インバータ17bはデュアルモードで動作するインバータであって、モータ23に対する三相交流電力及び空調等の車両搭載の補機13に対する三相交流電力を提供する。インバータ17bの直流端子はインバータ17aと同様に第1パワーラインに接続される。インバータ17bの交流端子はスイッチ31を介してモータ23及び変圧器32の一次側に接続され、変圧器32の二次側はコネクタ20を介して第2パワーライン14に接続される。スイッチ31は半導体スイッチ31a及び31bを含む。モータ23を駆動する場合は、スイッチ31aがオフ、31bがオン状態となり、インバータ17bはインバータ17aと同様に動作する。補機電源を供給する場合は、スイッチ31aがオン、31bがオフ状態となり、インバータ17bは一定周波数三相電力を発生する。変圧器32はインバータ17bの三相交流電圧を補助電源電圧に降圧し、補助電源(SIV)を提供する。ここで、複数の変圧器32の二次側は、第2パワーライン14にて並列に接続される。尚、インバータ17bとスイッチ31と変圧器32を含む回路ブロックを、モータ駆動用又は補機用インバータとして動作するデュアルモードインバータとしても良い。
コンバータ33は、第1パワーライン15から接触器19を介して供給される直流1500Vを降圧し、バッテリー34を蓄電する。またコンバータ33は、バッテリー34に蓄電された電力の電圧を昇圧し、接触器19を介して第1パワーラインに電力を供給する。
第2実施例に係る列車制御システムは、編成内のインバータ総能力をリアルタイムで駆動力(VVVF)と補助電源(SIV)に最適配分する。
図5はインバータの能力配分を示す図である。
図5(a)は、従来システムのVVVFとSIVの配分を示す。一般にモータ駆動用VVVFインバータと補助電源用インバータは独立して車両に設けられ、それぞれの台数は決まっており、一般に変更されることはない。1編成に設けられる全VVVFインバータのうち、実際の走行時に動作するインバータの台数は、割合102のように決められており、割合101のように所定台数のVVVFインバータが予備インバータとして待機している。補助電源も同様に、実際の運行時に動作するSIV用インバータの台数は、割合103のように決められており、割合104のように所定台数のSIV用インバータが予備インバータとして待機している。
図5(b)は、本願システムのVVVFとSIVの配分を示す。本願システムに係る補助電源は、デュアルモードで動作するインバータにより全て提供される。インバータ17bは、割合112のようにSIVの電力として必要台数が割り当てられ、割合111のように残りすべての台数が駆動力に割り当てられる。待機用のインバータは設けられていない。こうすることで、列車としての粘着限界が高くなり、空転・滑走がなく安定した走行が可能となる。SIV電力とVVVF駆動力として割り当てられるインバータの台数は、走行中でもリアルタイムで変更可能である。図5(c)のように非常ブレーキ時は、駆動力(ブレーキ力)を優先して、必要最小限の台数のみが補助電源に割り当てられるか、あるいは全てVVVF駆動力として割り当てられる。これらSIVの電力として使用されるインバータと駆動力として使用されるインバータの割合は、総括制御部24が走行条件を判断して決定する。
この第2実施例に係るシステムで設けられるインバータの総台数は、従来のシステムのVVVFインバータとSIV用インバータの総台数より少ない。SIVの電力として使用されるインバータと駆動力として使用されるインバータの割合をリアルタイムで変更することにより、インバータ回路の冗長性、安全性を確保できる。
一実施例に係る編成列車では、例えば小容量ドライブ(インバータ及びモータ)を多数配置し、駆動力としてのVVVF性能の余力向上を図る。従って、高速性能が向上し、加速時間が短縮されるので、列車ダイヤの乱れを少なくすることができると共に省エネ運転が可能となる。又、駆動力及び制動力の1軸負荷が減り、空転・滑走を防止でき、回生ブレーキ性能を向上できる。この結果、従来の空制(空気制御)ブレーキを設けなくとも、所望のブレーキ力を得ることができる。空制ブレーキを設けない場合、回生失効への対策としては、回生電力を吸収する蓄電装置34の搭載、又はハイスリップブレーキ、又は非常停止用の簡易ブレーキ装置を設けてもよい。
図6は補助電源として動作させるインバータ及び駆動用として動作させるインバータの台数について説明する図である。例えば、春や秋のように冷房装置(空調)を殆ど使用しない季節では、図6(a)のように補助電源として動作するインバータ17Sの台数を減らして運行する。残りのインバータを全て駆動用のインバータ17Vとして使用することで、加速性能及び電気制御(電制)ブレーキ性能を向上することができる。また、真夏のように冷房装置をフル稼働させるような場合は、図6(b)のように補助電源として動作するインバータ17Sの台数を増やして運行する。この結果、快適な車内温度を乗客に提供することができる。尚、このインバータの動作モードの切換は、制御部24が自動的に行っても良いし、運転士が季節、走行条件、時間帯等を考慮して、運転台にて手動で行っても良い。
図7は従来編成列車と本発明が適用される編成列車の性能の違いを示す図である。
特性201は従来編成の性能を示す。このように従来編成の場合、所定速度V1までは最大引張り力(トルク)で加速し、速度V1を超えると引張り力は徐々に減少し、所定パワーで走行する。特性202は本実施例が適用される編成の性能を示す。本実施例が適用される編成では、駆動力を発生するために動作しているVVVFインバータの台数が従来より多いので、編成内の潜在性能は従来より高い。しかし速度V1までの低速域では、従来編成列車に合わせて、例えば特性201のように引張り力を発生して走行する。本実施例に係る編成では、領域203のように速度V1を超えても引張り力(加速)を維持した走行が可能である。尚、領域203では入力電流が大きくなり、架線電圧が規定値以下となる可能性がある。従って領域203では、蓄電装置34に蓄えた電力を放電して、架線から供給される電流のピークカット(補助)を行い、架線電圧が規定値以下となることを防止する。
以上のように本実施例によれば、列車の加減速特性を重視したシステムあるいは補機電力容量を重視したシステム等、編成能力(全インバータ能力)を走行条件及び環境に合わせて、駆動力用インバータと補助電源用インバータに最適に、且つリアルタイムで容易に割り振ることができるフレキシブルな列車制御システムを提供することが可能となる。
次に本発明の第3実施例に係る総括制御について説明する。
従来の列車システムには、自動列車運転装置(ATO)や編成ブレーキ力の配分機能はあるが、その制御の自由度は高く、それぞれが独自の情報源及び独自の判断によって、省エネルギーや時間短縮などを目的とした運転を行う。
しかしながら、複数の機能間をまたがった協調した運転が行われていない。従って、場合によっては、背反した動作をしたり、機器に負担がかかる運転を強要したりすることがある。
本実施例に係る総括制御部は、列車編成に関する様々な情報を考慮して、編成全体の編成ポリシーすなわち編成方策(今、この列車はどういう指針で動くべきか)を決定する。この編成ポリシーに基づいて、各機器間あるいは各機能間の動作を調整し、矛盾なく統制のとれた制御を行う。
図8は、本実施例に係る総括制御システムの構成を示すブロック図である。総括制御部(以下、制御部と記載する)24は、状態監視部41、機器能力管理部42、保安制御部43により生成された情報を一次指標として入力し、この一次指標に基づいて、列車が現在、何をすべきか(ポリシー)を決定する。このポリシーには、非常事態対応処理、省エネ対策、走行時分短縮処理などが含まれる。
状態監視部41は各装置49(ブレーキ装置、駆動装置、エネルギー蓄積装置(蓄電装置)、補機等)の長期・短期的なリスク(異常や故障)、他列車の状況、架線電圧の状況など、列車内外の動的な情報を集め把握する。機器能力管理部42は、システムに接続された各装置49の能力を算出し、当該列車編成が有する潜在力を把握する。保安制御部43は列車の衝突事故を回避するため、信号に基づき列車を減速・停止させる。
制御部24は、決定したポリシーを実現するために、自動列車運転装置44、編成能力分配部46、エネルギー管理部47、補機制御部48などに各種制御情報を編成ポリシーとして出力する。
自動列車運転装置44は、制御部24からの編成ポリシーに従う駅間走行となるように、編成全体の力(編成力)を制御する。又、自動列車運転装置44は、速度・位置検出部45からの列車速度及び位置、制御部24からの発進指令及び制限速度信号などに基づいて、加減速指令を編成能力分配部46に出力する。編成能力配分部46は、制御部24からの編成ポリシー等に従い、編成全体の引張力やブレーキ力をどの機器に配分するか決定する。エネルギー管理部47は、制御部24からの編成ポリシーに従い、エネルギーの充放電量を管理する。補機制御部48は、制御部24からの編成ポリシーに従い、エアコン等の補機を制御する。
図9は、状態監視部41の構成を示すブロック図である。
状態監視部41では、編成ポリシーを作成するために必要な1次指標の一部を算定する。以下、状態監視部41を構成する機器状態監視部50及び運転状況監視部51について説明する。
(1)機器状態監視部50
機器状態監視部50は、各機器の情報から、保護や故障に至る可能性をリスクとして算定する。各機器とは、例えば主電動機、VVVFインバータ、BCU、補助電源装置、空調機、コンプレッサー等である。
機器状態監視部50は、各機器の情報から、保護や故障に至る可能性をリスクとして算定する。各機器とは、例えば主電動機、VVVFインバータ、BCU、補助電源装置、空調機、コンプレッサー等である。
例えば、主電動機やVVVFインバータは、過負荷で運転継続すると、温度上昇により保護停止状態となり、運行に影響を及ぼす。よって機器状態監視部50は、このような機器の温度に基づき機器リスク指標を算出する。この温度に関する機器リスク指標は、列車に装備された各機器の検出温度と、当該機器の動作温度上限値との差に対応する余裕度を指標化したものとする。
制御部24は、編成ポリシーの決定において、リスク回避運転が可能と判断した場合には、機器リスク指標の高い装置のリスクを減らすように(つまり、その機器を稼動しない、あるいは電流値を減らして温度上昇を抑制して)運転させることができる。更に制御部24は、電流制限等によりパワーが低下した機器のパワーを補うように、同一機能の対応する他の機器のパワーを上げて運転することも可能である。
また機器状態監視部50は、空調機やコンプレッサー及び主電動機等の回転数情報より、正常な状態では現れない周波数スペクトルを抽出したら、故障の予兆であると判断する。すなわち、この様な機器の回転数情報に基づき、機器状態監視部50は機器リスク指標を算出する。制御部24の編成ポリシーの決定においては、可能であればこのような故障のリスクを回避するような編成運転をさせることができる。
(2)運転状況監視部51
編成ポリシーを決定するためには、当該駅間走行で必要とされる補機電力量や駆動力の情報、また編成列車の外的な状況や、エネルギー蓄積装置のエネルギーの余力などの情報が必要である。運転状況監視部51は、これらの情報を指標として提供する。
編成ポリシーを決定するためには、当該駅間走行で必要とされる補機電力量や駆動力の情報、また編成列車の外的な状況や、エネルギー蓄積装置のエネルギーの余力などの情報が必要である。運転状況監視部51は、これらの情報を指標として提供する。
以下、運転状況監視部51にて作成される各種指標について説明する。
[補機電力量指標]
補機電力量予測部52は、空調等の補機に必要な電力量を補機電力量指標として算出する。例えば、駆動(制動も同様)に必要な力は乗車率に影響され、補機電力量は外気温や湿度、乗車率に影響される。乗車率は応荷重信号で検出でき、また季節(あるいは気温)や時間にも相関があるため、それに応じて予測可能である。外気温や湿度についても、季節(あるいは気温)や時間に相関があり、予測可能である。補機電力量予測部52は、これらの情報に基づき、必要な補機電力量を予測して補機電力量指標として提供する。
補機電力量予測部52は、空調等の補機に必要な電力量を補機電力量指標として算出する。例えば、駆動(制動も同様)に必要な力は乗車率に影響され、補機電力量は外気温や湿度、乗車率に影響される。乗車率は応荷重信号で検出でき、また季節(あるいは気温)や時間にも相関があるため、それに応じて予測可能である。外気温や湿度についても、季節(あるいは気温)や時間に相関があり、予測可能である。補機電力量予測部52は、これらの情報に基づき、必要な補機電力量を予測して補機電力量指標として提供する。
[進路指標]
前方列車予測部53は、前方に列車が接近しているか等の前方列車の運行状況に基づき、進路の状況を進路指標として算定する。進路状況が悪ければ、無理やり走っても保安制御により、ブレーキがかかり減速するだけである。これは、乗り心地も劣化し、エネルギー的に損失となる。また、自車が減速することで、後続列車に影響を及ぼし、全体として遅延の増長する要因になる。
前方列車予測部53は、前方に列車が接近しているか等の前方列車の運行状況に基づき、進路の状況を進路指標として算定する。進路状況が悪ければ、無理やり走っても保安制御により、ブレーキがかかり減速するだけである。これは、乗り心地も劣化し、エネルギー的に損失となる。また、自車が減速することで、後続列車に影響を及ぼし、全体として遅延の増長する要因になる。
そこで、制御部24の編成ポリシーの決定においては、進路指標に応じて、それが悪ければ、ゆっくりとした運転計画を採用することで、安定走行(安定輸送)に寄与できる。
[架線電圧指標]
また架線電圧の高さも運転には重要な要素である。架線電圧予測部54は架線電圧を予測し、架線電圧指標(高/低)を提供する。例えば、中高速域の引張力は、架線電圧が高い方が大きい。これは、架線電圧が低い場合より、高い場合の方が加速がよいことを示し、走行時間余裕が大きくなる。よって、この架線電圧情報を考慮することで、“編成能力”が変わり、この編成能力に応じて編成ポリシーを決める方が、利することが大きい。
また架線電圧の高さも運転には重要な要素である。架線電圧予測部54は架線電圧を予測し、架線電圧指標(高/低)を提供する。例えば、中高速域の引張力は、架線電圧が高い方が大きい。これは、架線電圧が低い場合より、高い場合の方が加速がよいことを示し、走行時間余裕が大きくなる。よって、この架線電圧情報を考慮することで、“編成能力”が変わり、この編成能力に応じて編成ポリシーを決める方が、利することが大きい。
架線電圧の大きさは、他の列車や自車の駆動力に依存する。よって架線電圧は、ダイヤや運行状況、季節・時間などの要因から推測できる。
[エネルギー余力指標]
エネルギー蓄積装置を搭載した車両は、架線電圧の大きさに影響を及ぼす自車の(架線からの)電力量を制御できる。ただし、この電力量はエネルギー余力(SOC)に依存する。エネルギー余力算定部56は、エネルギー蓄積装置の余力(SOCの使用範囲に対する、その時点のSOC)をエネルギー余力指標として算定する。このエネルギー余力指標は、架線電圧指標の算出に考慮することもできる。
エネルギー蓄積装置を搭載した車両は、架線電圧の大きさに影響を及ぼす自車の(架線からの)電力量を制御できる。ただし、この電力量はエネルギー余力(SOC)に依存する。エネルギー余力算定部56は、エネルギー蓄積装置の余力(SOCの使用範囲に対する、その時点のSOC)をエネルギー余力指標として算定する。このエネルギー余力指標は、架線電圧指標の算出に考慮することもできる。
[滑り指標]
空転滑走予測部55は、編成内の空転・滑走の状況を分析し、走行線区が滑りやすいか否かを示す滑り指標を算出する。また空転滑走予測部55は、編成における滑りやすい箇所(編成の前中後など)あるいは滑り易い軸があるか否か判断する。
空転滑走予測部55は、編成内の空転・滑走の状況を分析し、走行線区が滑りやすいか否かを示す滑り指標を算出する。また空転滑走予測部55は、編成における滑りやすい箇所(編成の前中後など)あるいは滑り易い軸があるか否か判断する。
特に空転滑走予測部55は、滑り易い状況が、
(A)編成全体の力に影響を及ぼすレベル(つまり、加減速度が低下するレベル)、
(B)力を再配分して補正できるレベル、
(C)滑りやすくないレベル、
というように“滑り指標”を生成する。
制御部24の編成ポリシー決定においては、
(C)であれば、空転・滑走を考慮しなくてよい。
(A)編成全体の力に影響を及ぼすレベル(つまり、加減速度が低下するレベル)、
(B)力を再配分して補正できるレベル、
(C)滑りやすくないレベル、
というように“滑り指標”を生成する。
制御部24の編成ポリシー決定においては、
(C)であれば、空転・滑走を考慮しなくてよい。
(A)であれば、滑べらないように、編成能力(駆動力/制動力)をあえて下げて計画する方がよい。尚、このとき、各軸の駆動・制動力の負担量を下げるように制限するので、編成能力が落ちる可能性がある。
(B)の場合、空転滑走のリスクがある、という程度であり、他の指標との兼ね合いで、
・時間優先(最も駆動力が必要なポリシーであり、空転滑走のリスクは高い)
・省エネルギー優先(時間に余裕があるが、省エネ走行するため、運転自体は厳しく、空転滑走のリスクは高い)
・安定運行(時間的余裕があるが、安定走行を最優先とするため、各軸の負担力を落とし、空転滑走リスクを回避する)というポリシーの選択の余地がある。
・時間優先(最も駆動力が必要なポリシーであり、空転滑走のリスクは高い)
・省エネルギー優先(時間に余裕があるが、省エネ走行するため、運転自体は厳しく、空転滑走のリスクは高い)
・安定運行(時間的余裕があるが、安定走行を最優先とするため、各軸の負担力を落とし、空転滑走リスクを回避する)というポリシーの選択の余地がある。
滑り指標に応じて、各軸負担力の制限を行う必要があるので、この指標は、制御部24を介して、所定の機能(この例では、後述の編成能力配分部46)へ送る。
図10は、総括制御部24の構成例を示す図である。
制御部24には1次指標が入力される。編成能力演算部62では、状態監視部41、機器能力管理部42、保安制御部43から提供される1次指標、及び編成ポリシー決定部61の後述される追加条件に基づいて、編成能力を算定する。編成能力とは、列車編成の力行引張力(架線電圧指標やエネルギー余力指標を考慮したもの)と、回生ブレーキ力(架線電圧指標やエネルギー余力指標を考慮したもの)と、ブレーキ力(回生+空制)を示す。
編成指標演算部63では、1次指標及び編成能力に応じて後述の編成指標を求める。編成ポリシー決定部61は、1次指標及び編成指標演算部から提供される編成指標に基づいて、編成ポリシーを決定する。
次に、編成ポリシーの決定処理について説明する。図11は編成ポリシーの決定処理を示すフローチャートである。
先ず、ステップST01のように、編成ポリシー決定部61は補機電力量予測部52から得られる補機電力量指標に基づいて、予測された補機電力量をカバーできるように必要なインバータ出力電力容量を算定し、編成内のその電力容量分のインバータを、前述した第2実施例のように補助電源に割り当て、残りを駆動力へ割り当てる。
次に、ステップST02のように編成指標演算部63は、現時点の状況に応じて4つの指標を決定する。
(1)非常事態指標 :保安装置等からの信号に基づく非常停止状態であるかを示す指標である。
(2)時間余裕指標 :所定の走行時間に対して、何秒の余裕があるかを示す値に対応する指標である。つまり時間余裕指標とは、最大加速して次の駅に到着する時刻と、運行ダイヤに示される予定到着時刻との差の時間に対応する指標である。これは編成能力に基づいて、走行シミュレーションを行って求めることができる。
(3)装置リスク指標:各装置ごとに運転継続上のリスクがあるかを示す指標。これは、機器状態監視部50にて算定された機器リスク指標を使用できる。
(4)空転・滑走指標:空転・滑走が多発する状況かどうかを示す指標。これは、空転滑走予測部55により算出された滑り指標を使用できる。
例えば、回復運転の指示があった場合などは、(2)時間余裕の指標に考慮すればよい。
次に、ステップST03のように編成ポリシー決定部61は、2次指標を算出すべきか判断する。
図12は編成ポリシーの決定に用いるマトリクスの一例を示す。左端の列は、各種走行状態を示す状態番号である。
前述のステップST02のように算定した編成指標(第1次の編成指標)において、状態No.1〜No.5のように装置リスクが無い場合、編成ポリシー決定部61は第1次の編成指標に基づいて、主編成ポリシー(運転計画)及びサブポリシー(駆動力配分、補機運転、エネルギー蓄積装置の運転)に関する編成ポリシー(第1次ポリシー)を決定する(ST04)。
図12のマトリクスにおいて、例えば第1次の編成指標の時間余裕「0」は回復運転レベルであって、走行時間短縮が必要な(遅延している)レベルである。時間余裕「1」は余裕無しのレベルであって、現状の走行能力では、所定時間通り走行するのが精一杯であり、時間的余裕が無い状態である。時間余裕「2」は余裕有りのレベルであって、現状の走行能力で時間的な余裕がある状態である。このレベルの時は、比較的自由な走行パターンを策定できる。尚、編成指標は、例えば非常指標及び装置リスク指標というように、少なくとも2つ以上作成し、編成ポリシーの決定時に参照するのが良い。
また第1次の編成指標において、状態No.6〜No.10のように装置リスクが有る場合、編成ポリシー決定部61は第2次の編成指標を算出し、装置リスクを回避する条件(追加条件)にて編成ポリシー(第2次ポリシー)を決定する(ST05〜ST07)。
編成ポリシー決定部61は、例えば状態No.6のように、装置リスク指標が「有」の場合、第2次の編成指数を算定し、装置リスク指標が「0:無」となるように、主編成ポリシー及びサブ編成ポリシーを決定する。このような場合は、装置リスクを回避するために、サブポリシー(駆動力配分)を「1」とし、編成能力配分部46を制御して、装置リスクの高い装置のリスクを低減する。例えば駆動用のインバータ17Vの温度上昇が装置リスクとなっている場合、編成能力配分部46は当該機器の動作を停止するか、又は電力(電流)を低減させる。尚、この「駆動力配分」は、モータ(主電動機)及び補機が、前述の第2実施例のように、デュアルモードで動作するインバータにより電力供給されている場合、モータ駆動用として設定されるインバータの台数と、補機の補助電源用として設定されるインバータの台数の配分を含む。又、この「駆動力配分」は、モータ駆動用として設定されるインバータの台数に対応する回生ブレーキ力の配分をも含んでいる。
このとき編成ポリシー決定部61は、サブポリシー(補機)を例えば「1」とし、補機制御部48を制御する。補機制御部48は、最大負荷とならないように、ピークカット運転を行う。つまり補機制御部48は、補助電源の電力容量を超えないように補機を動作させる。
次に、図8のエネルギー管理部47について説明する。
編成ポリシーが決定すると、どのように駅間走行をするか(走行計画)が概略決まる。
エネルギー管理部47では、制御部24からの編成ポリシー及び走行計画を遵守できるようにエネルギー蓄積装置のエネルギー制御を行う。
例えば、補機電力量を小さく、駆動力を大きく割り当て、高速まで加速するような走行計画の場合、サブポリシー(エネルギー蓄積装置)として、「1:力行高速時の補足を優先」が決定される。この場合、エネルギー管理部47は、架線電圧が低下しやすい高速域で(架線電圧が下がると駆動力も下がって計画からずれる)、エネルギー蓄積装置の蓄積エネルギーで、駆動装置の電流をアシストする(ピークカットする)ようにエネルギー制御を行う。これにより、架線から供給される電流のピークがカットされ、架線電圧の低下を回避できると共に、自車の駆動力を確保することができ、走行計画通りに走行することを支援できる。
また、ブレーキ減速時も同様で、エネルギー管理部47は高速域のブレーキ動作で回生電力を吸収できるようにエネルギー制御を行う。回生力が大きいと架線電圧が増加し、架線電圧が所定の値を超えると回生電力を絞り込み、空制ブレーキの補足力を大きくする。
また、エネルギー蓄積装置は通常、寿命などの点から、充電深度SOC(充放の度合い)を所定の範囲内にしているが、編成ポリシーに応じて、エネルギー管理部47は特別にSOC範囲を拡大することもできる。上述のように、架線電圧によって加速性能には差異が生じる。よって、“非常時”や“回復運転レベルの時間短縮”という編成ポリシーが決定された場合、SOC範囲を拡大してエネルギー蓄積装置を利用することで、時間短縮に寄与できる。
以上説明したように本発明の第3実施例によれば、列車編成における各機器間あるいは各機能間の動作を調整し、矛盾なく統制のとれた制御を実行できる。従って、安定した運行(遅延なく走る)、運転時分短縮、省エネ効果、乗り心地改善などの効果を奏する。
以上の説明はこの発明の実施の形態であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。また、本発明の第3実施例として説明した列車の総括制御は、デュアルモードで動作するインバータまたはATOを装備していない従来形式の列車編成にも適用できるものである。
10…架線、11…車両、12…パンタグラフ、13…補機、14…第2パワーライン、15…第1パワーライン、16…制御伝送ライン、17…インバータ、18a…M台車、18b…T台車、19…接触器、20…コネクタ、21…属性記録部、22…取り付け口、23…モータ、24…総括制御部、31…スイッチ、32…変圧器、33…コンバータ、34…バッテリー。
Claims (5)
- 車輪を回転駆動する主電動機と、補機とを含む複数車両で編成された列車の制御システムであって、
前記主電動機駆動用インバータ又は前記補機の補助電源用インバータとして動作するデュアルモードの複数の主変換装置と、
各主変換装置が前記主電動機駆動用インバータとして動作するか、前記補助電源用インバータとして動作するか決定し、各主変換装置の動作を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする列車制御システム。 - 前記制御手段は、補助電源の必要電力量に応じて、前記補助電源として動作する前記主変換装置の台数を制御することを特徴とする請求項1記載の列車制御システム。
- 前記制御手段は、前記補助電源として動作する前記主変換装置以外の主変換装置を全て前記主電動機駆動用インバータとして動作させることを特徴とする請求項2記載の列車制御システム。
- 前記制御手段は、列車走行中に、前記補助電源として動作する前記主変換装置の台数を制御することを特徴とする請求項3記載の列車制御システム。
- 前記制御手段は、前記列車の非常ブレーキ指令を受信した時、必要最低限の主変換装置を前記補助電源として動作させ、残りの主変換装置を全て駆動用インバータとして動作させることを特徴とする請求項4記載の列車制御システム。
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