JP2011018612A - 内燃機関用点火プラグ - Google Patents

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大典 角力山
Osamu Yoshimoto
修 吉本
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Abstract

【課題】内燃機関用点火プラグの電極の先端に設けられた貴金属チップの耐酸化性を向上させると共に、電極と貴金属チップの間の溶融部の耐久性を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】内燃機関用点火プラグは、電極の先端部に貴金属チップを備える。貴金属チップは、Crの含有添加量が7重量%以上30重量%以下であり、残部の主成分をIrとする。
【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関用点火プラグの電極の先端に設けられた貴金属チップの組成に関するものである。
従来、内燃機関用点火プラグの電極の先端に設けられた貴金属チップの耐酸化性の向上を目的とする技術としては、例えば、主成分をイリジウム(以下、元素記号を用いてIrと表記する。他の元素も同じ)とする貴金属チップに、Ptを添加するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
特開平9−298083号公報 特開平9−7733号公報 特開昭61−88479号公報 特許第3135224号公報 特許第2877035号公報
しかし、この技術では、Ptが非常に高価であるため、生産コストが高くなってしまうといった問題や、貴金属チップを電極に接合した場合に、接合部付近に形成される溶融部の耐久性については考慮されていないといった問題があった。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、内燃機関用点火プラグの電極の先端に設けられた貴金属チップの耐酸化性を向上させると共に、電極と貴金属チップの間の溶融部の耐久性を向上させることのできる技術を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
[適用例1]
電極の先端部に貴金属チップを備えた内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、
Crの添加量が7重量%以上30重量%以下であり、
残部の主成分をIrとする、内燃機関用点火プラグ。
適用例1の内燃機関用点火プラグによれば、Irを主成分とした貴金属チップに対して適量のCrを添加するので、貴金属チップの加工性を保ちつつ、貴金属チップの耐酸化性を向上させると共に、電極と貴金属チップの間の溶融部の耐久性を向上させることができる。
[適用例2]
適用例1記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、
Crの添加量が9重量%以上25重量%以下であり、
内部には、Ir−Cr金属間化合物ε相を有する、内燃機関用点火プラグ。
適用例2の内燃機関用点火プラグによれば、貴金属チップの融点の低下を抑制しつつ、電極と貴金属チップの間の溶融部の耐久性をさらに向上させることができる。
[適用例3]
適用例2記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、
Crの添加量が12重量%以上25重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
適用例3の内燃機関用点火プラグによれば、Irを主成分とした貴金属チップに対して適量のCrを添加するので、貴金属チップの耐酸化性をさらに向上させると共に、電極と貴金属チップの間の溶融部の耐久性をさらに向上させることができる。
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、さらに、
Alの添加量が0.15重量%以上0.7重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
適用例4の内燃機関用点火プラグによれば、Irを主成分とした貴金属チップに対して適量のAlを添加するので、貴金属チップの表面に形成されたCr酸化物による被膜が剥離しにくくなる。したがって、Crの添加量を少なくしても、貴金属チップの耐酸化性を向上させることが可能となる。
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、さらに、
希土類元素及びHfからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の元素の添加量の合計が0.1重量%以上3重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
適用例5の内燃機関用点火プラグによれば、貴金属チップの耐酸化性をさらに向上させることが可能となる。
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかに記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、さらに、
Rh、Pt、Pd、Ru及びReからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の元素の添加量の合計が1重量%以上20重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
適用例6の内燃機関用点火プラグによれば、Irを主成分とした貴金属チップに対してRh等を添加するので、Ir自体の酸化揮発を抑制することが可能となる。したがって、貴金属チップの耐酸化性をさらに向上させることが可能となる。
[適用例7]
適用例2ないし6のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、
内部に、Ir−Cr金属間化合物ε相を有し、
表層には、Ir−Cr固溶体相を有し、
前記Ir−Cr固溶体相の表面には、酸化被膜を有している、内燃機関用点火プラグ。
適用例7の内燃機関用点火プラグによれば、高融点である固溶体が貴金属チップの耐火花消耗性を向上させ、酸化被膜が貴金属チップの耐酸化性を向上させることができる。
[適用例8]
適用例1ないし7のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップは、表面に1μm以上10μm以下の酸化被膜を有する、内燃機関用点火プラグ。
適用例8の内燃機関用点火プラグによれば、貴金属チップの表面から、酸化被膜が剥離することを抑制することができる。
[適用例9]
適用例7記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記酸化被膜の厚さは、1μm以上10μm以下であり、
前記Ir−Cr固溶体相の厚さは、1μm以上30μm以下である、内燃機関用点火プラグ。
適用例9の内燃機関用点火プラグによれば、固溶体相の表面に酸化被膜が形成されにくくなることを抑制することができる。
[適用例10]
適用例1ないし9のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記貴金属チップを備えた前記電極は、中心電極と接地電極とのうちの少なくとも一方である、内燃機関用点火プラグ。
[適用例11]
適用例10に記載の内燃機関用点火プラグであって、さらに、
前記中心電極と前記貴金属チップの間と、前記接地電極と前記貴金属チップの間と、のうちの少なくとも一方に、前記電極と前記貴金属チップの中間的な融点と中間的な線膨張係数とのうちの少なくとも一方を有する中間部材が設けられている、内燃機関用点火プラグ。
適用例11の内燃機関用点火スパークプラグによれば、中間部材により、電極に生じる熱応力と貴金属チップに生じる熱応力との差異が緩和されるので、貴金属チップが電極から剥離することを抑制することができる。
[適用例12]
適用例1ないし11のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記電極の少なくとも一方と前記貴金属チップとの接合部分には溶融部が存在し、前記溶融部は、Crを含有する、内燃機関用点火プラグ。
適用例12の内燃機関用点火プラグによれば、溶融部がCrを含有するので、溶融部の耐酸化性を向上させることができる。
[適用例13]
適用例1ないし12のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記電極は、Crを含有する、内燃機関用点火プラグ。
適用例13の内燃機関用点火プラグによれば、電極がCrを含有するので、電極の耐酸化性を向上させることができる。
[適用例14]
適用例1ないし13のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
前記電極は、Crを含有し、残部の主成分をNiとする、内燃機関用点火プラグ。
適用例14の内燃機関用点火によれば、電極がNiを主成分としてCrを含有するので、電極の耐酸化性を向上させることができる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、スパークプラグの製造方法、スパークプラグの電極に設けられる貴金属チップの製造方法等の形態で実現することができる。
本発明の一実施形態としてのスパークプラグの部分断面図である。 スパークプラグの中心電極の先端部付近の拡大図である。 貴金属チップと電極との接合部を拡大して示す断面図である。 貴金属チップの内部の組成を示す模式図である。 Ir−Crの二元状態図である。 サンプルの評価試験の内容とその結果を表形式で示す説明図である。 サンプルの評価試験の内容とその結果を表形式で示す説明図である。 耐溶融部消耗性の評価試験についての説明図である。 サンプルの評価試験の内容とその結果を表形式で示す説明図である。 サンプルの評価試験の内容とその結果を表形式で示す説明図である。
次に、本発明の一態様であるスパークプラグの実施の形態及び実施例を、以下の順序で説明する。
A.スパークプラグの構造:
B.貴金属チップの組成:
C.実施例1:
C1.耐酸化性の評価試験:
C2.耐火花消耗性の評価試験:
C3.耐溶融部消耗性の評価試験:
C4.耐実機消耗性の評価試験:
C5.評価結果:
C5−1.Crの添加効果:
C5−2.Alの添加効果:
C5−3.Hfの添加効果:
C5−4.Rhの添加効果:
C5−5.Crと、Alと、Rhの添加効果:
D.実施例2:
E.実施例3:
A.スパークプラグの構造:
図1は、本発明の一実施形態としてのスパークプラグ100の部分断面図である。なお、図1において、スパークプラグ100の軸線方向ODを図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。
スパークプラグ100は、絶縁碍子10と、主体金具50と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40とを備えている。中心電極20は、絶縁碍子10内に軸線方向ODに延びた状態で保持されている。絶縁碍子10は、絶縁体として機能しており、主体金具50は、この絶縁碍子10を保持している。端子金具40は、絶縁碍子10の後端部に設けられている。なお、中心電極20と接地電極30の構成については、図2において詳述する。
絶縁碍子10は、アルミナ等を焼成して形成され、軸中心に軸線方向ODへ延びる軸孔12が形成された筒形状を有する。軸線方向ODの略中央には外径が最も大きな鍔部19が形成されており、それより後端側(図1における上側)には後端側胴部18が形成されている。鍔部19より先端側(図1における下側)には、後端側胴部18よりも外径の小さな先端側胴部17が形成され、さらにその先端側胴部17よりも先端側に、先端側胴部17よりも外径の小さな脚長部13が形成されている。脚長部13は先端側ほど縮径され、スパークプラグ100が内燃機関のエンジンヘッド200に取り付けられた際には、その燃焼室に曝される。脚長部13と先端側胴部17との間には段部15が形成されている。
主体金具50は、低炭素鋼材より形成された円筒状の金具であり、スパークプラグ100を内燃機関のエンジンヘッド200に固定する。そして、主体金具50は、絶縁碍子10を内部に保持しており、絶縁碍子10は、その後端側胴部18の一部から脚長部13にかけての部位を主体金具50によって取り囲まれている。
また、主体金具50は、工具係合部51と、取付ねじ部52とを備えている。工具係合部51は、スパークプラグレンチ(図示せず)が嵌合する部位である。主体金具50の取付ねじ部52は、ねじ山が形成された部位であり、内燃機関の上部に設けられたエンジンヘッド200の取付ねじ孔201に螺合する。
主体金具50の工具係合部51と取付ねじ部52との間には、鍔状のシール部54が形成されている。取付ねじ部52とシール部54との間のねじ首59には、板体を折り曲げて形成した環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、スパークプラグ100をエンジンヘッド200に取り付けた際に、シール部54の座面55と取付ねじ孔201の開口周縁部205との間で押し潰されて変形する。このガスケット5の変形により、スパークプラグ100とエンジンヘッド200間が封止され、取付ねじ孔201を介したエンジン内の気密漏れが防止される。
主体金具50の工具係合部51より後端側には、薄肉の加締部53が設けられている。また、シール部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に、薄肉の座屈部58が設けられている。主体金具50の工具係合部51から加締部53にかけての内周面と、絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間には、円環状のリング部材6,7が介在されている。さらに両リング部材6,7間にタルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53を内側に折り曲げるようにして加締めると、絶縁碍子10は、リング部材6,7およびタルク9を介して主体金具50内の先端側に向け押圧される。これにより、絶縁碍子10の段部15は、主体金具50の内周に形成された段部56に支持され、主体金具50と絶縁碍子10とは、一体となる。このとき、主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性は、絶縁碍子10の段部15と主体金具50の段部56との間に介在された環状の板パッキン8によって保持され、燃焼ガスの流出が防止される。座屈部58は、加締めの際に、圧縮力の付加に伴い外向きに撓み変形するように構成されており、タルク9の圧縮ストロークを稼いで主体金具50内の気密性を高めている。なお、主体金具50の段部56よりも先端側と絶縁碍子10との間には、所定寸法のクリアランスCが設けられている。
図2は、スパークプラグ100の中心電極20の先端部22付近の拡大図である。中心電極20は、電極母材21の内部に芯材25を埋設した構造を有する棒状の電極である。電極母材21は、インコネル(商標名)600または601等のNiまたはNiを主成分とする合金から形成されている。芯材25は、電極母材21よりも熱伝導性に優れるCuまたはCuを主成分とする合金から形成されている。通常、中心電極20は、有底筒状に形成された電極母材21の内部に芯材25を詰め、底側から押出成形を行って引き延ばすことで作製される。芯材25は、胴部分においては略一定の外径をなすものの、先端側においては先細り形状に形成される。また、中心電極20は、軸孔12内を後端側に向けて延設され、シール体4およびセラミック抵抗3(図1)を経由して、端子金具40(図1)に電気的に接続されている。端子金具40には、高圧ケーブル(図示せず)がプラグキャップ(図示せず)を介して接続され、高電圧が印加される。
中心電極20の先端部22は、絶縁碍子10の先端部11よりも突出している。中心電極20の先端部22の先端面23には、中間部材91を介して、貴金属チップ90が接合されている。貴金属チップ90は、軸線方向ODに延びた略円柱形状を有しており、耐火花消耗性を向上するため、高融点の貴金属によって形成されている。なお、貴金属チップ90の具体的な組成については、後述する。
中間部材91は、台座形状をなしており、電極母材21と貴金属チップ90の中間的な融点又は線膨張係数を有する材料によって形成されている。このため、このスパークプラグ100では、中間部材91により、中心電極20の電極母材21に生じる熱応力と貴金属チップ90に生じる熱応力との差異が緩和される。したがって、中間部材91自体に歪が生じ難く、中心電極20の電極母材21と中間部材91との間や、中間部材91と貴金属チップ90との間に剥離が生じ難い。中間部材91は、例えば、耐熱性、耐蝕性の優れた13重量%以上のCrを含んだNi合金によって形成されていることが好ましいが、その他にも、熱伝導性の良好な純NiあるいはSi、Mn、Cr、Al等の総添加量が10%以下のNi合金によって形成されていることとしてもよい。中間部材91と貴金属チップ90との接合は、レーザ溶接によって行なうことができる。また、中間部材91と中心電極20との接合は、抵抗溶接によって行なうことができる。なお、中間部材91は省略してもよい。
接地電極30は、耐腐食性の高い金属から形成され、例えば、インコネル(商標名)600または601等のNi合金から形成されている。この接地電極30の基部32は、溶接によって、主体金具50の先端面57に接合されている。また、接地電極30は屈曲しており、接地電極30の先端部33は、貴金属チップ90の端面92と対向している。なお、中心電極20および接地電極30には、Crを添加することが好ましい。そうすれば、中心電極20および接地電極30の耐酸化性を向上させることができる。
さらに、接地電極30の先端部33には、貴金属チップ95が接合されている。貴金属チップ95は、軸線方向ODに延びた略円柱形状を有しており、貴金属チップ95の端面96は、貴金属チップ90の端面92と対向している。なお、貴金属チップ95は、貴金属チップ90と同様の材料で形成することができる。また、接地電極30と貴金属チップ95との間には、中心電極側と同様に、中間部材91を設けることとしてもよい。なお、以下では、中心電極20と接地電極30をまとめて、「電極20,30」とも呼ぶ。また、貴金属チップ90と貴金属チップ95との間には、火花が発生する隙間である火花放電ギャップG(mm)が形成されている。なお、スパークプラグ100の構成は、上記の構成に限定されず、より単純な又は複雑な他の構成であってもよい。
B:貴金属チップの組成:
図3は、貴金属チップ90,95と電極20,30との接合部を拡大して示す断面図である。なお、この図3は、中間部材91を省略し、貴金属チップ90,95を直接、電極20,30に溶接した例を示している。貴金属チップ90,95は、Irを主成分としてCrを添加した合金によって形成されている。IrにCrを添加すると、Irの表面にCrの酸化被膜が形成されるため、貴金属チップ90,95の酸化消耗や酸化揮発を抑制することができる。
また、貴金属チップ90,95と電極20,30との間には、溶融部120が形成されている。溶融部120は、貴金属チップ90,95を電極20,30に溶接する時に形成されるため、貴金属チップ90,95と電極20,30の両方の金属成分を含んでいる。したがって、Crを添加した貴金属チップ90,95によれば、溶融部120もCrを含有することとなる。このため、貴金属チップ90,95にCrを添加すると、この溶融部120の耐酸化性を向上させることができ、スパークプラグ100の長時間の使用によっても、溶融部120の酸化を抑制することができる。
Crの添加量については、7重量%以上とすると、耐酸化性の向上効果と、溶融部120の耐消耗性の向上効果が現れ始める。一方、30重量%を超えると、貴金属チップ90,95の内部における金属間化合物Cr3Irの割合が増えるため加工性が低下する。したがって、Crの添加量は、7重量%以上、30重量%以下とすることが好ましい。なお、溶融部120の耐消耗性を以下では「耐溶融部消耗性」とも呼び、後に詳述する。
さらに、Crの添加量を9重量%以上とすると、耐溶融部消耗性をさらに向上させることができる。またCrの添加量を25重量%以下とすると、貴金属チップ90,95の融点の低下を抑制することができ、耐火花消耗性の低下を抑制することができる。したがって、Crの添加量は、9重量%以上、25重量%以下とすることがさらに好ましい。
さらに、Crの添加量を12重量%以上とすると、耐酸化性と耐溶融部消耗性をさらに向上させることができる。したがって、Crの添加量は、12重量%以上、25重量%以下とすることが最も好ましい。
ここで、Crの添加量を12重量%以上25重量%以下とすると、後述するように、貴金属チップ90,95の内部の組成はIr−Cr金属間化合物のε相を有する一つ以上の相からなり、プラグとして使用される(酸化雰囲気で使用される)ことで、このIr−Cr金属間化合物ε相の周囲にはIr−Cr固溶体相が形成され、さらにこのIr−Cr固溶体相の周囲には酸化被膜が形成される。Ir−Cr固溶体相は、貴金属チップ90,95の耐火花消耗性を向上させ、酸化被膜は、貴金属チップ90,95の耐酸化性を向上させることができる。したがって、Crの添加量は、12重量%以上25重量%以下とすることが特に好ましい。
なお、Crの添加量を9重量%以上12重量%未満としても、内部の組成は、Ir−Cr金属間化合物のε相を有する一つ以上の相からなり、使用中に貴金属チップ90,95の表層にはIr−Cr固溶体相が形成され、さらにこのIr−Cr固溶体相の周囲には酸化被膜が形成される。ただし、貴金属チップ90,95の内部のIr−Cr金属間化合物ε相の割合は12重量%以上25重量%以下の場合と同じかそれよりも少ない。
また、Crを添加した貴金属チップ90,95には、さらに、Alを添加することが好ましい。Alを添加すると、貴金属チップ90,95の表面に形成されたCr酸化物による被膜が剥離しにくくなるため、Crの添加量を少なくしても、耐酸化性を向上させることが可能となる。また、Alの添加は、溶融部120の耐酸化性の向上にも効果的である。Alの添加量については、0.15重量%未満では耐酸化性向上の効果が乏しく、0.7重量%を超えると融点が低下し、耐火花消耗性が低下してしまう。したがって、Alの添加量は、0.15重量%以上0.7重量%以下であることが好ましい。
さらに、Crを添加した貴金属チップ90,95には、希土類元素及びHfからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の元素(以下では、「希土類元素等」とも呼ぶ。)を添加することが好ましい。これらの元素を添加しても、貴金属チップ90,95の耐酸化性を向上させることが可能となる。希土類元素等の添加量の総和については、0.1重量%未満では耐酸化性向上の効果が乏しく、3重量%を超えると融点が低下し、耐火花消耗性が低下してしまう。したがって、希土類元素等の添加量の総和は、0.1重量%以上3重量%以下とすることが好ましい。
また、Crを添加した貴金属チップ90,95には、Rh、Pt、Pd、Ru、及びReからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の元素(以下では、「Rh等」とも呼ぶ。)を添加することが好ましい。上述したRh等を添加すると、Ir自体の酸化揮発を抑制することが可能となるため、貴金属チップ90,95の耐酸化性を向上させることが可能となる。Rh等の添加量については、1重量%未満では耐酸化性向上の効果が乏しく、20重量%を超えると融点が低下し、耐火花消耗性が低下してしまう。したがって、Rh等の添加量の合計は、1重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
なお、Crを添加した貴金属チップ90,95には、Alと、希土類元素等と、Rh等を全て添加することとしてもよく、これらのうちの少なくとも1つを添加することとしてもよい。
図4は、Crの添加量が9重量%以上25重量%以下の貴金属チップ90,95の内部の組成を示す模式図である。貴金属チップ90,95は、Crの含有量が12重量%以上であるIr−Cr金属間化合物ε相を含む一つ以上の相からなる内部相252からなる。プラグとして使用されるか、事前の酸化処理を行なうことでCrの含有量が9重量%以下であるIr−Cr固溶体相254と、酸化被膜256とが形成される。Ir−Cr金属間化合物ε相を含む一つ以上の相からなる内部相252は、酸化被膜256の形成元素であるCrの供給を担うCr供給源として機能する。Ir−Cr固溶体相254は、金属間化合物ε相を含む一つ以上の相からなる内部相252の周囲に形成されたIr−Cr固溶体であり、高融点であるため、貴金属チップ90,95の耐火花消耗性を向上させることができる。酸化被膜256は、貴金属チップ90,95の表面のCrが酸化されることにより形成されたCr23の保護酸化膜であり、貴金属チップ90,95の耐酸化性を向上させることができる。
なお、酸化被膜256は、1μm未満の厚さでは耐酸化性の向上効果が乏しく、10μmを超える厚さでは固溶体相254の表面から剥離しやすくなる。したがって、酸化被膜256の厚さは、1μm以上10μm以下であることが好ましい。
また、Ir−Cr固溶体相254は、1μm未満の厚さでは耐火花消耗性の向上効果が乏しく、30μmを超える厚さでは酸化被膜256が形成されにくくなる。したがって、Ir−Cr固溶体相254の厚さは、1μm以上30μm以下であることが好ましい。
図5は、Ir−Crの二元状態図である。図4に示した内部構成を有する貴金属チップ90,95の製造方法の一例としては、まずCrの含有量が12重量%以上であるIr−Cr金属間化合物ε相を含む一つ以上の相からなる内部相252(図5におけるε領域)でチップ全体を形成する。そして、大気中又は低酸素分圧下で、このチップに対して1050℃の熱処理を20時間行なう。すると、チップの表面に酸化被膜256(Cr23)が形成されると共に、酸化被膜256のすぐ内側に、Ir−Cr固溶体相254(図5における(Ir)領域)が形成される。Ir−Cr固溶体相254が形成される理由は、酸化被膜256の形成にCrが消費されることにより、内部相252の表層部分のCrの含有量が9重量%以下となるため、内部相252の表層部分がIr−Cr固溶体相に変化するためであると考えられる。
なお、上述した酸化処理は、大気中又は低酸素分圧下で行なうため、実機のエンジン内のような不安定な雰囲気中と異なり、酸化被膜256を固溶体相254の表面に緻密に形成することができ、貴金属チップ90,95の耐酸化性および耐火花消耗性を向上させることができる。
また、酸化処理における温度や時間等の条件を変えれば、Ir−Cr固溶体相254の厚さや、酸化被膜256の厚さを変えた貴金属チップ90,95を製造することができる。なお、この酸化処理は、貴金属チップ90,95を電極20,30に接合する前に行なってもよく、また接合する後に行なってもよい。
また、貴金属チップ90,95は、中心電極20と絶縁碍子10とを接合させる工程や、実機のエンジン内においても酸化されるため、上述した予備酸化を省略しても、Ir−Cr金属間化合物ε相を含む一つ以上の相からなる内部相252の周囲に、Ir−Cr固溶体相254と、酸化被膜256とを形成させることが可能である。例えば、貴金属チップ90,95は、中心電極20と絶縁碍子10とを接合させる工程において、適当な条件を選定することでもIr−Cr金属間化合物ε相を含む一つ以上の相からなる内部相252の周囲に、Ir−Cr固溶体相254と、酸化被膜256とを形成させることが可能である。なお、上記実施形態では、貴金属チップ90,95は円柱形状としたが、角柱形状、角錐形状または円錐形状としてもよい。つまり貴金属チップ90,95の形状は、任意の形状としてもよい。
また、上記実施形態では、中心電極20に貴金属チップ90を接合し、接地電極30に貴金属チップ95を接合していたが、貴金属チップ90,95のうちのどちらか一方を省略してもよい。また、中間部材91は、接地電極30と貴金属チップ95との間に設けることとしてもよく、省略してもよい。
C.実施例1:
Irを含む貴金属チップ90,95への所定の元素の添加効果を確認するため、貴金属チップ90,95の複数のサンプルを用意し、耐酸化性、耐溶融部消耗性、耐火花消耗性、耐実機消耗性についての評価試験を行なった。評価試験の内容と評価基準については、後述する。
図6は、サンプル#1〜#11の評価試験の内容とその結果を表形式で示す説明図である。また、図6の右端には、各サンプルの総合評価も示している。この総合評価の判定基準は、評価試験の結果のうち、×が3つあった場合は総合評価を×、×が2つあった場合は総合評価を△、×が1つあった場合は総合評価を○と判定し、評価試験の結果のうち1つも×がなければ、総合評価を◎として判定するものである。なお、総合評価が△以上であったものは実施例に該当し、総合評価が×であったものは比較例に該当する。
サンプル#1〜#11は、Irに対するCrの添加効果を確認するために用意されたものである。サンプル#1〜#11におけるCrの添加量は、それぞれ0重量%、3重量%、7重量%、9重量%、12重量%、15重量%、17重量%、20重量%、25重量%、26重量%、30重量%である。また、Al、Hf、Rhの添加量は0である。これらのサンプルに対しては、後述する耐酸化性と、耐火花消耗性と、耐溶融部消耗性と、耐実機消耗性についての評価試験を行なった。
図7は、サンプル#12〜#29の評価試験の内容とその結果を表形式で示す説明図である。また、図7の右端には、各サンプルの総合評価を示す。これらに対しても、後述する耐酸化性と、耐火花消耗性と、についての評価試験を行なった。この総合評価の判定基準は、評価試験の結果のうち、○が二つの場合のみ総合評価を○として判定し、△があった場合は総合評価を△と判定するものである。なお、総合評価が○であったものは実施例に該当し、総合評価が△であったものは比較例に該当する。
サンプル#12〜#17は、Crを添加したIrに対して、さらにAlを添加した場合の効果を確認するために用意されたものである。サンプル#12〜#17は、Irに対してCrを12重量%添加し、さらにAlをそれぞれ0.01重量%、0.05重量%、0.15重量%、0.4重量%、0.7重量%、1.0重量%添加したものである。換言すれば、サンプル#12〜#17は、サンプル#5に対してさらにAlを添加したものである。これらのサンプル#12〜#17に対しては、後述する耐酸化性と、耐火花消耗性についての評価試験を行なった。
サンプル#18〜#22は、Crを12重量%添加して、さらにHfを添加した場合の効果を確認するために用意されたものである。サンプル#18〜#22は、Irに対してCrを12重量%添加し、さらにHfをそれぞれ0.05重量%、0.10重量%、1.00重量%、3.00重量%、5.00重量%添加したものである。換言すれば、サンプル#18〜#22は、サンプル#5に対してさらにHfを添加したものである。これらに対しても、後述する耐酸化性と、耐火花消耗性についての評価試験を行なった。
サンプル#23〜#28は、Crを添加したIrに対して、さらにRhを添加した場合の効果を確認するために用意されたものである。サンプル#23〜#28は、Irに対してCrを12重量%添加し、さらにRhをそれぞれ0.5重量%、1重量%、3重量%、10重量%、20重量%、25重量%添加したものである。換言すれば、サンプル#23〜#28は、サンプル#5に対してさらにRhを添加したものである。これらのサンプル#23〜#28に対しては、後述する耐酸化性と、耐火花消耗性についての評価試験を行なった。
サンプル#29は、Crを添加したIrに対して、さらにAlと、Rhとを添加した場合の効果を確認するために用意されたものである。サンプル#29は、Irに対してCrを12重量%添加し、さらにAlを0.15重量%添加し、さらにRhを3重量%添加したものである。換言すれば、サンプル#29は、サンプル#5に対してさらにAlとRhを添加したものである。このサンプル#29に対しては、後述する耐酸化性と、耐火花消耗性についての評価試験を行なった。
C1.耐酸化性の評価試験:
耐酸化性の評価試験では、まず各サンプルの質量を測定した。そして、各サンプルに対し、電気炉にて大気雰囲気下で1000℃、20時間の加熱を行なった後、炉冷を行なった。なお、加熱時の昇温速度は10℃/minである。炉冷後、各サンプルの質量を測定することにより、加熱後の質量残存率を算出し、所定の元素の添加量と質量残存率との相関を調べた。
この評価試験では、質量残存率が95%以上の場合を○と評価し、80%以上95%未満の場合を△と評価し、80%未満の場合を×と評価した。
なお、サンプル#12〜#29に対しては、Al、HfまたはRhの添加効果を確認するために、サンプル#5の質量残存率と比較した評価を行なった。つまり、サンプル#12〜#29の質量残存率が、サンプル#5の質量残存率に比べて±2%未満の場合には、△(大きな変化なし)と評価した。そして、サンプル#12〜#29の質量残存率が、サンプル#5の質量残存率に比べて+2%以上の場合を○と評価した。
C2.耐火花消耗性の評価試験:
耐火花消耗性の評価試験は、耐久試験後に火花放電ギャップGの増加量を測定し、火花放電ギャップGの増加量と所定の元素の添加量との相関を調べる試験である。具体的には、まず中心電極20と接地電極30の双方に貴金属チップ90,95を接合し、火花放電ギャップGが1.1mmとなるように調整したスパークプラグのサンプルを作製した。そして、各スパークプラグのサンプルに対して、0.4MPaの不活性雰囲気中で700時間、周波数60Hzで電圧を印加した。電圧印加後、火花放電ギャップGを測定し、火花放電ギャップGの増加量を算出した。
この評価試験では、火花放電ギャップGの増加量が0.1mm以内の場合を◎と評価し、火花放電ギャップGの増加量が0.1mmを超え0.2mm以内の場合を○と評価し、火花放電ギャップGの増加量が0.2mmを超える場合を×と評価した。
さらに、サンプル#12〜#29に対しては、Al、HfまたはRhの添加効果を確認するために、サンプル#5の火花放電ギャップGの増加量と比較した評価を行なった。つまり、サンプル#12〜#29の火花放電ギャップGの増加量が、サンプル#5の火花放電ギャップGの増加量に比べて±0.05mm以内の場合を○と評価した。そして、サンプル#12〜#29の火花放電ギャップGの増加量が、サンプル#5の火花放電ギャップGの増加量に比べて0.05mmを超える場合を△と評価した。
C3.耐溶融部消耗性の評価試験:
図8は、耐溶融部消耗性の評価試験についての説明図である。耐溶融部消耗性の評価試験は、耐久試験後における溶融部120の直径の残存率と、所定の元素の添加量との相関を調べる試験である。具体的には、まず各サンプルの貴金属チップ90,95と溶融部120との界面BFから溶融部120側へ0.05mmの位置の直径(以下では、「溶融部直径FD」とも呼ぶ。)を測定した(図8(A))。そして、各サンプルを6気筒(排気量2800cc)のエンジンに搭載し、スロットルを全開として回転数5500rpmで100時間、耐久試験を行なった。耐久試験後、各サンプルの溶融部直径FDを測定し(図8(B))、溶融部直径FDの残存率を算出した。
この評価試験では、溶融部直径FDの残存率が95%以上の場合を◎と評価し、90%以上95%未満の場合を○と評価し、85%以上90%未満の場合を△と評価し、85%未満の場合を×と評価した。
C4.耐実機消耗性の評価試験:
耐実機消耗性の評価試験は、スパークプラグ100を実際のエンジンに搭載して耐久試験を行なった後、火花放電ギャップGの増加量を算出することにより、火花放電ギャップGの増加量と所定の元素の添加量との相関を調べる試験である。具体的には、まず各サンプルの火花放電ギャップGを測定した。そして、各サンプルを6気筒(排気量2800cc)のエンジンに搭載し、スロットルを全開として回転数5500rpmで100時間、耐久試験を行なった。耐久試験後、各サンプルの火花放電ギャップGを測定し、火花放電ギャップGの増加量を算出した。
この評価試験では、火花放電ギャップGの増加量が0.3mm以内の場合を○と評価し、火花放電ギャップGの増加量が0.3mmを超え0.5mm以内の場合を△と評価し、火花放電ギャップGの増加量が0.5mmを超える場合を×と評価した。
C5.評価結果:
C5−1.Crの添加効果:
図6を参照してIrに対するCrの添加効果について説明する。サンプル#1(Cr:0%)は、Irに対してCrが添加されていないため、耐酸化性と、耐溶融部消耗性と、耐実機消耗性の評価が×であり、総合評価は×であった。また、サンプル#2(Cr:3%)は、Crの添加量が増えたために、耐酸化性が若干向上したが、まだCrの添加量が十分でなく、ほとんど効果はなかった。サンプル#3(Cr:7%)は、Crの添加量が増えたために耐溶融部消耗性が改善され、総合評価は△であった。サンプル#4(Cr:9%)は、さらにCrの添加量が増えたために、耐溶融部消耗性に加え、耐実機消耗性も向上し、総合評価は○であった。サンプル#5〜#9(Cr:12〜25%)は、いずれも耐酸化性と、耐溶融部消耗性と、耐実機消耗性が改善されたため、総合評価は◎であった。サンプル#10〜#11(Cr:26〜30%)は、耐酸化性と耐溶融部消耗性は優れていたが、Crの添加量が多いために融点が下がり、耐火花消耗性と耐実機消耗性の評価が×であり、総合評価は△であった。Crの添加量が30%を超えると、金属間化合物Cr3Irの割合が増え、加工性が悪く評価に至らなかった。
以上のように、Irに対してCrを添加すると、貴金属チップ90,95の耐酸化性と、耐溶融部消耗性を向上させることができる。また、Irに対するCrの添加量は、7重量%以上30重量%以下の範囲が好ましく、さらに、9重量%以上25重量%以下の範囲が好ましく、12重量%以上25重量%以下の範囲が特に好ましい。
C5−2.Alの添加効果:
図7を参照してAlの添加効果について説明する。サンプル#12(Al:0.01%)およびサンプル#13(Al:0.05%)は、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価は△であった。サンプル#14〜#17(Al:0.15〜0.7%)は、サンプル#5と比べて、耐酸化性が2%以上向上し、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価は○であった。ただし、サンプル#17は、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価は○であったが、融点が低下したため、耐火花消耗性の評価は△となった。
以上のように、Crを添加したIrに対して、さらにAlを0.15重量%以上0.7重量%以下添加すれば、貴金属チップ90,95の耐酸化性をさらに向上させることができる。
C5−3.Hfの添加効果:
図7を参照してHfの添加効果について説明する。サンプル#18(Hf:0.05%)は、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価は△であり、総合評価は△となった。サンプル#19〜#21(Hf:0.1〜3%)は、サンプル#5と比較した耐酸化性、耐火花消耗性の評価がともに○であり、総合評価は○となった。サンプル#22(Hf:5%)は、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価が△であり、また融点が低下したため、耐火花消耗性の評価も△となり、総合評価は△となった。
以上のように、Crを添加したIrに対して、さらにHfを0.1重量%以上3重量%以下添加すれば、貴金属チップ90,95の耐酸化性をさらに向上させることができる。同様に、Crを添加したIrに対して、さらに希土類元素等を0.1重量%以上3重量%以下添加すれば、貴金属チップ90,95の耐酸化性をさらに向上させることができる。
C5−4.Rhの添加効果:
図7を参照してRhの添加効果について説明する。サンプル#23(Rh:0.5%)は、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価は△であり、総合評価は△となった。サンプル#24〜#27(Rh:1〜20%)は、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価は○であり、総合評価は○となった。ただし、サンプル#28(Rh:25%)は、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価は○であったが、融点が低下したため、耐火花消耗性の評価は△となり、総合評価は△となった。
以上のように、Crを添加したIrに対して、さらにRhを1重量%以上20重量%以下添加すれば、貴金属チップ90,95の耐酸化性をさらに向上させることができる。同様に、Crを添加したIrに対して、さらに、Rh、Pt、Pd、Ru及びReからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の元素を1重量%以上20重量%以下添加すれば、貴金属チップ90,95の耐酸化性をさらに向上させることができる。
C5−5.Crと、Alと、Rhの添加効果:
図7に示すサンプル#29は、サンプル#5に対してAlとRhを添加したものであるが、サンプル#5と比較した耐酸化性及び耐火花消耗性の評価は○であり、総合評価は○となった。
以上のように、Crを添加したIrに対して、さらにAlと、Rhとを添加すれば、貴金属チップ90,95の耐酸化性をさらに向上させることができる。
D.実施例2:
図4に示す貴金属チップ90,95のIr−Cr固溶体相254の厚さと、耐酸化性及び耐火花消耗性との関係を調べるため、貴金属チップ90,95の複数のサンプルを用意し、耐酸化性及び耐火花消耗性についての評価試験を行なった。評価試験の内容については、上述したものと同じである。評価基準については、後述する。
図9は、サンプル#9および#30〜#34の評価試験の内容とその結果を表形式示す説明図である。また、図9の右端には、各サンプルの総合評価も示している。この総合評価の判定基準については後述する。サンプル#9および#30〜#34の組成は、Irに対してCrを25重量%添加したものである。また、サンプル#9および#30〜#34のIr−Cr固溶体相254の厚さは、それぞれ0μm、0.5μm、1μm、10μm、30μm、50μmである。
各サンプルの耐火花消耗性は、Ir−Cr固溶体相254の厚さが大きくなるに従って向上し、火花放電ギャップGの増加量は少なくなる。したがって、耐火花消耗性の評価試験では、Ir−Cr固溶体相254の厚さと、耐火花消耗性との関係を調べるために、Ir−Cr固溶体相254を有していないサンプル#9と比較した評価を行なった。すなわち、サンプル#9の火花放電ギャップGの増加量から、サンプル#30〜#34の火花放電ギャップGの増加量を減算する。そして、この減算した値が0.05mm以上である場合を○(効果あり)と評価し、0.05mm未満の場合を△(ほぼ変化なし)と評価した。
一方、各サンプルの耐酸化性は、Ir−Cr固溶体相254の厚さが大きくなるほど低下する。したがって、Ir−Cr固溶体相254の厚さと、耐酸化性との関係を調べるために、Ir−Cr固溶体相254を有していないサンプル#9と比較した評価を行なった。すなわち、サンプル#30〜#34の質量残存率が、サンプル#9の質量残存率に比べて2%以上低下した場合を×(変化あり)と評価し、質量残存率の低下が2%未満の場合を△(ほぼ変化なし)と評価した。
図9によると、Ir−Cr固溶体相254の厚さが大きくなるに従って、耐火花消耗性は改善されたが、反対に、耐酸化性が徐々に低下していくことが理解できる。そこで、サンプル#9と比較した耐火花消耗性の評価が○であり、かつ、サンプル#9と比較した耐酸化性の評価が△であるサンプルを、総合評価○として評価し、それ以外のサンプルを総合評価△として評価した。その結果、サンプル#31〜#33の総合評価が○となった。すなわち、Ir−Cr固溶体相254の厚さは、1μm以上30μm以下であることが好ましいことが理解できる。
以上のように、Ir−Cr固溶体相254の厚さを1μm以上30μm以下とすると、貴金属チップ90,95の表面上に酸化被膜が形成されにくくなることによる耐酸化性の低下を抑えつつ、耐火花消耗性を向上させることができる。
E.実施例3:
図4に示す貴金属チップ90,95の酸化被膜256の厚さと、耐酸化性との関係を調べるため、貴金属チップ90,95の複数のサンプルを用意し、耐酸化性についての評価試験を行なった。評価試験の内容については、上述したものと同じである。評価基準については、後述する。
図10は、サンプル#5及び#35〜#39の評価試験の内容とその結果を表形式で示す説明図である。また、図10の右端には、各サンプルの総合評価も示している。この総合評価の判定基準については後述する。サンプル#5及び#35〜#39の組成は、Irに対してCrを12重量%添加したものである。また、サンプル#35〜#39は、それぞれ酸化被膜256の厚さが異なる試料である。
各サンプルの耐酸化性は、酸化被膜256の厚さが薄すぎても厚すぎても効果がない。したがって、酸化被膜256の厚さと、耐酸化性との関係を調べるために、酸化被膜256を有していないサンプル#5と比較した評価も行なった。すなわち、サンプル#35〜#39の質量残存率が、サンプル#5の質量残存率に比べて2%以上向上した場合を○(効果あり)と評価し、質量残存率の向上が2%未満の場合を△(ほぼ変化なし)と評価した。
図10によると、酸化被膜256の厚さがごく薄い場合、耐酸化性に変化は見られなかったが、ある厚さ以上で耐酸化性が向上した。また、厚すぎても耐酸化性が低下することが理解できる。そこで、サンプル#5と比較した耐酸化性の評価を見ると、サンプル#36〜#38(1μm以上10μm以下)の評価が○となった。すなわち、酸化被膜256の厚さは、1μm以上10μm以下であることが好ましいことが理解できる。
以上のように、酸化被膜256の厚さを1μm以上10μm以下とすると、貴金属チップ90,95の耐酸化性を向上させることができる。
なお、これらの貴金属チップ90,95は、上述したスパークプラグに限らず、一般に、プラズマプラグ等を含む内燃機関用点火プラグに適用することができる。
3…セラミック抵抗
4…シール体
5…ガスケット
6…リング部材
8…板パッキン
9…タルク
10…絶縁碍子
11…先端部
12…軸孔
13…脚長部
15…段部
17…先端側胴部
18…後端側胴部
19…鍔部
20…中心電極
21…電極母材
22…先端部
23…先端面
25…芯材
30…接地電極
32…基部
33…先端部
40…端子金具
50…主体金具
51…工具係合部
52…取付ねじ部
53…加締部
54…シール部
55…座面
56…段部
57…先端面
58…座屈部
59…ねじ首
90…貴金属チップ
91…中間部材
92…端面
95…貴金属チップ
96…端面
100…スパークプラグ
120…溶融部
200…エンジンヘッド
201…取付ねじ孔
205…開口周縁部
252…内部相
254…Ir−Cr固溶体相
256…酸化被膜
C…クリアランス
G…火花放電ギャップ
OD…軸線方向
FD…溶融部直径
BF…界面

Claims (14)

  1. 電極の先端部に貴金属チップを備えた内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、
    Crの添加量が7重量%以上30重量%以下であり、
    残部の主成分をIrとする、内燃機関用点火プラグ。
  2. 請求項1記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、
    Crの添加量が9重量%以上25重量%以下であり、
    内部には、Ir−Cr金属間化合物ε相を有する、内燃機関用点火プラグ。
  3. 請求項2記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、
    Crの添加量が12重量%以上25重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
  4. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、さらに、
    Alの添加量が0.15重量%以上0.7重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、さらに、
    希土類元素及びHfからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の元素の添加量の合計が0.1重量%以上3重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、さらに、
    Rh、Pt、Pd、Ru及びReからなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の元素の添加量の合計が1重量%以上20重量%以下である、内燃機関用点火プラグ。
  7. 請求項2ないし6のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、
    内部に、Ir−Cr金属間化合物ε相を有し、
    表層には、Ir−Cr固溶体相を有し、
    前記Ir−Cr固溶体相の表面には、酸化被膜を有している、内燃機関用点火プラグ。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップは、表面に1μm以上10μm以下の酸化被膜を有する、内燃機関用点火プラグ。
  9. 請求項7記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記酸化被膜の厚さは、1μm以上10μm以下であり、
    前記Ir−Cr固溶体相の厚さは、1μm以上30μm以下である、内燃機関用点火プラグ。
  10. 請求項1ないし9のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記貴金属チップを備えた前記電極は、中心電極と接地電極とのうちの少なくとも一方である、内燃機関用点火プラグ。
  11. 請求項10に記載の内燃機関用点火プラグであって、さらに、
    前記中心電極と前記貴金属チップの間と、前記接地電極と前記貴金属チップの間と、のうちの少なくとも一方に、前記電極と前記貴金属チップの中間的な融点と中間的な線膨張係数とのうちの少なくとも一方を有する中間部材が設けられている、内燃機関用点火プラグ。
  12. 請求項1ないし11のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記電極の少なくとも一方と前記貴金属チップとの接合部分には溶融部が存在し、前記溶融部は、Crを含有する、内燃機関用点火プラグ。
  13. 請求項1ないし12のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記電極は、Crを含有する、内燃機関用点火プラグ。
  14. 請求項1ないし13のいずれか一項に記載の内燃機関用点火プラグであって、
    前記電極は、Crを含有し、残部の主成分をNiとする、内燃機関用点火プラグ。
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