JP2011012784A - 締結具とボルト及びナットの製造方法並びに締結具の締結方法 - Google Patents

締結具とボルト及びナットの製造方法並びに締結具の締結方法 Download PDF

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Abstract

【課題】確実な緩み防止機能を有し、疲労強度を大幅に改善でき、従来の螺子締結具では得られなかった優れた安全性、信頼性を実現し、ボルト,ナットの使用数や寸法を大幅に低減し、製品の小型化、軽量化を実現できるだけでなく、ボルトの孔あけ加工や締付け作業等に要する工数を低減して製品のコストダウンを図り、製品設計の自在性、組立て作業性、量産性を著しく向上させることができる実用性に優れる締結具の提供。
【解決手段】(a)ボルト軸部の少なくとも先端部側に形成された雄螺子部と、雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部と、を有するボルト又は(b)端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を有するナットの少なくともいずれか一方を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、緩み防止機能を有する締結具とそれに用いられるボルト及びナットの製造方法並びに締結具の締結方法に関する。
ボルトは、通常、同一箇所に複数本使用され、これらが緩まなければ使用中に破損することはほとんど考えられなかった。また、ボルトは螺子のテーパー効果(楔効果)で、厚い部材でも強力な締付けを行うことができ、かつ締付けたものでも簡単な工具で容易に緩ませることもできる、という優れた特徴を有している。その反面、締付けたものでも、長期の使用期間中にナットまたはボルトが逆回転し、「緩む」という現象が発生し、一度緩みが発生すると、その部分を再度締め直さない限り、その後の繰返し応力によって、ボルトに過大な応力が負荷され、ボルトが簡単に破壊するという問題点が発生していた。
特に、可動部または外部から振動を受ける部材の接合部に使用される螺子締結具(主として、ボルトおよびナット)においては、当初はきちんと締結されていても、長期にわたって繰返し使用されることにより、外部応力によってボルトに緩みが発生することは避けられず、使用期間中に締め直す必要があった。
そこで、これらの問題点を解決するために、近年、緩み防止機能を有する種々のボルト及びその製造方法等が研究・開発されている。
例えば、ダブルナット・ボルトの一種として、(特許文献1)のように、同一箇所に並目および細目の螺子を加工し、それぞれに対応して内側に並目、外側に細目のナットを嵌合させることで、極めて緩み難いボルトとナットの締結システムが提案されている。
このようなダブルナット・ボルトの締結システムは、繰返し荷重が加わった場合、螺子締結部が緩まないという利点はあるものの、少なくとも二種類のナットを使用しなければならないので、作業性、値段、重さ等の点において、必ずしもユーザーを充分に満足させるものではなかった。また、ボルトそのものには疲労強度向上策が適用されていないので、現状の螺子締結具よりもボルト本数を減らす、あるいはより安全性を確保する、というような利点までは期待できない場合があり、また、ボルトの疲労強度の向上も望まれていた。
しかし、ボルトの疲労強度向上策として有効なものが極めて少ないばかりか、緩み防止機能と疲労強度向上策を兼ね備えた螺子締結具については検討されていなかった。
つまり、緩みは発生しないが、強度が不足するボルトや、十分な強度があっても、緩みが発生するボルトを使用する限り、ボルトの本数や寸法等を低減することはでき難く、製品の重量や寸法が増加し易く、設計の自由度に欠けると共に、孔あけ加工やボルトの締付け作業等に工数を要するという問題点を有していた。
そこで、本願出願人は、これらの問題点を解決するために鋭意研究した結果、「ボルト軸部の少なくとも先端部側に形成されたピッチpの雄螺子部と、雄螺子部のボルト頭側又はボルト円筒部側の螺子山の頂部の一部が除去されボルト頭側又はボルト円筒部側に向かって螺子山外径が縮径したテーパ部と、テーパ部の最小径部からボルト頭側又はボルト円筒部側に向かって緩やかに円弧状に拡径して形成された不完全螺子除去部と、を有し、雄螺子部のピッチpと雄螺子部と螺合して締結される雌螺子のピッチpが、0.003≦(p−p)/p≦0.05の関係であることを特徴とするボルト。」を(特許文献2)として出願した。
(特許文献2)は、シングルナットで、繰り返し荷重(振動)を受けても緩み難い優れた緩み防止機能と締結力を有するだけでなく、大幅に改善された疲労強度を兼ね備えることにより、従来の螺子締結具では得られなかった優れた安全性、信頼性を備えたボルトを提供すると共に、そのボルトを用いることにより簡素な構成で、部品点数が少なく、ボルト,ナットの使用数や寸法を大幅に低減し、製品の小型化、軽量化を図り、ボルトの孔あけ加工や締付け作業等に要する工数を大幅に低減して製品のコストダウンを実現して、製品設計の自在性、組立て作業性を著しく向上させることができる実用性に優れた締結具を提供するものであった。
特許第3770320号公報 特願2008−10975号
しかし、上記(特許文献2)に記載の発明も、更に研究を進めた結果、以下のような課題を有していることが分かった。
(1)(特許文献2)では、雄螺子部のピッチpと、雄螺子部と螺合して締結される雌螺子のピッチpが、0.003≦(p−p)/p≦0.05の関係を満たすように、ボルトの雄螺子部又は雌螺子(ナット)を形成しなければならないが、通常のボルト又はナットのピッチそのものは全長に渡って同一であるので、これらを加工するにあたって、ピッチのわずかに異なる専用の転造用ダイス又は切削用タップを用いて、ボルト又はナットを一から製造する必要があり、既製のボルトやナットを使用することができず、生産性に欠ける。
(2)常に嵌合すべきボルト又はナットのピッチに併せて、極くわずかなピッチ差を設ける必要があるので、専用の転造用ダイス又は切削用タップを注文生産しなければならず、寸法管理が煩雑で、加工性、量産性に欠ける。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、確実な緩み防止機能を有すると共に、疲労強度を大幅に改善することができ、従来の螺子締結具では得られなかったような優れた安全性、信頼性を実現して、ボルト,ナットの使用数や寸法を大幅に低減し、製品の小型化、軽量化を実現できるだけでなく、ボルトの孔あけ加工や締付け作業等に要する工数を低減して製品のコストダウンを図ることができ、製品設計の自在性、組み立て作業性、量産性を著しく向上させることができる実用性に優れる締結具の提供、ボルトやナットに簡単な加工を施すだけで、繰返し荷重(振動)を受けても緩むことがなく、締結力に優れ、低原価で量産性に優れる緩み防止機能と疲労強度を兼ね備えたボルト及びナットの製造方法の提供、並びに既製のボルトとナットを螺合した後に簡単な加工を施すことにより、ボルトとナットを強固に固定することができ、繰返し荷重(振動)を受けても緩むことがなく、優れた締結力を実現することができる安全性、信頼性に優れる締結具の締結方法の提供を目的とする。
上記従来の課題を解決するために本発明の締結具とボルト及びナットの製造方法並びに締結具の締結方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の締結具は、ボルトと、前記ボルトに螺合されるナットと、を有する締結具であって、(a)ボルト軸部の少なくとも先端部側に形成された雄螺子部と、前記雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部と、を有するボルト又は(b)端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を前記螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を有するナットの少なくともいずれか一方を備えている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ボルト軸部の少なくとも先端部側に形成された雄螺子部と、雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部と、を有するボルトを用いることにより、標準のピッチで形成される雄螺子部に対応したナットを螺合させた際に、ボルトの塑性変形雄螺子部とナットの雌螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。
(2)端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を有するナットを用いることにより、ナットの標準のピッチに対応した既製のボルトを螺合した際に、ナットの塑性変形雌螺子部とボルトの雄螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。
ここで、ボルトとしては、ボルト頭部を有するものとして、六角ボルト、四角ボルト、アイボルト、角根丸頭ボルト、皿ボルト、蝶ボルト、基礎ボルト、六角穴付きボルト等があり、また、両端に雄螺子部が形成されボルト頭部を有さないものとして、植込みボルトやUボルト等がある。
ボルト及びナットの材料に関しては、金属又は塑性変形可能な非金属にその考え方を適用できる。しかし、特に効果が顕著と考えられるのは、鉄鋼材料や銅,アルミニウム,チタン,マグネシウム等の軟質金属とそれらの合金類である。
雄螺子部の螺子山の断面形状としては、三角螺子、台形螺子、角螺子、のこ刃螺子、丸螺子等が挙げられる。
塑性変形雄螺子部は、雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせて形成すればよい。尚、塑性変形雄螺子部における各々の螺子山の頂部の位置ずれ量や位置ずれ方向は均一或いは同一である必要はない。また、位置ずれ量や位置ずれ方向は、円周方向についても、均一或いは連続的である必要はなく、断続的或いは部分的に変形していてもよい。
塑性変形雌螺子部は、端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせればよい。尚、塑性変形雌螺子部の螺子山の頂部の位置ずれ量や位置ずれ方向は、螺子孔の端面の周縁に沿って均一或いは連続的である必要はなく、断続的或いは部分的に変形していてもよい。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の締結具であって、前記ボルトの前記塑性変形雄螺子部の前記螺子山の軸方向の位置ずれ量dbpと、前記ボルトの前記雄螺子部のピッチpが、0.003≦dbp/p≦0.05の関係である構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ボルトの塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量(螺子山先端の位置ずれ量)dbpと、ボルトの雄螺子部のピッチpが、0.003≦dbp/p≦0.05の関係であることにより、ボルトの塑性変形雄螺子部とナットの雌螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。塑性変形雄螺子部の螺子山の位置ずれによって螺子谷底に比べて螺子山の頂部がずれることにより、ナットの雌螺子部のピッチが塑性変形雄螺子部のピッチよりも大きくなることになり、螺合状態で塑性変形雄螺子部の螺子山の間隔を広げようとする力と、その力に抗する力に基づいて、塑性変形雄螺子部とナットの螺子山間に適度な摩擦力を発生させることができる。
ここで、塑性変形雄螺子部の螺子山の頂部の軸方向の位置ずれ量dbpの雄螺子部のピッチpに対する割合は0.3%〜5%が好ましい。この割合が0.3%より小さくなるにつれ、相対的にピッチが狭くなっている部分の螺子山の間隔を広げようとする力やボルトとナットの螺子山間に生じる摩擦力が低下し、緩み止め機能が低下し易くなる傾向があり、5%より大きくなるにつれ、ボルトとナットの間にかじり付きが発生し易くなり、締結に必要な締付トルクが増加して、施工性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
また、塑性変形雄螺子部の螺子山の頂部の位置ずれ量や位置ずれ方向は全域に渡って均一である必要はなく、一部(部分的)でもその位置ずれ量の絶対値が、上記の範囲に入っていればよい(但し、上限を超える部分が存在すると、かじり付きの発生原因となるので好ましくない。)。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の締結具であって、前記ナットの前記塑性変形雌螺子部の前記螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpと、前記ナットの雌螺子部のピッチpが、それぞれ0.003≦dnp/p≦0.05の関係である構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ナットの塑性変形雌螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpと、ナットの雌螺子部のピッチpが、0.003≦dnp/p≦0.05の関係であることにより、ボルトの雄螺子部とナットの塑性変形雌螺子部の間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。
ここで、塑性変形雌螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpの雌螺子部のピッチpに対する割合は0.3%〜5%が好ましい。この割合が0.3%より小さくなるにつれ、ナットの塑性変形雌螺子部とボルトの雄螺子部の螺子山との間に生じる摩擦力が低下し、緩み止め機能が低下し易くなる傾向があり、5%より大きくなるにつれ、ボルトとナットの間にかじり付きが発生し易くなり、締結に必要な締付トルクが増加して、施工性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。尚、塑性変形雌螺子部の螺子山は半径方向にも位置ずれが発生するが、その位置ずれ量dnaは、塑性変形雌螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpと同程度であることが好ましい。半径方向の位置ずれ量dnaと軸方向の位置ずれ量dnpのどちらか一方でも雌螺子部のピッチpに対する割合が5%を超えると、かじり付きが発生し易くなり、好ましくないが、半径方向の位置ずれ量dnaが0.3%より小さくても、軸方向の位置ずれ量dnpが一部でも上記の範囲に入っていれば、良好な緩み止め効果が得られる。
さらに、塑性変形雌螺子部の螺子山の頂部の位置ずれ量や位置ずれ方向は、螺子山の全周に渡って均一である必要はなく、部分的に上記の範囲に入っていればよい(但し、上限を超える部分が存在すると、かじり付きの発生原因となるので好ましくない。)。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の締結具であって、前記ボルトが、前記雄螺子部のボルト頭側又はボルト円筒部側の螺子山の頂部の一部が除去され前記ボルト頭側又は前記ボルト円筒部側に向かって螺子山外径が縮径したテーパ部と、前記テーパ部の最小径部から前記ボルト頭側又は前記ボルト円筒部側に向かって緩やかに円弧状に拡径して形成された不完全螺子除去部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)雄螺子部のボルト頭側又はボルト円筒部側の螺子山の頂部の一部が除去されボルト頭側又はボルト円筒部側に向かって螺子山外径(呼び径)が縮径したテーパ部を有することにより、ナットの雌螺子部と螺合されるテーパ部の各々の螺子山の高さが、分担する面圧力に逆比例して漸減するので、テーパ部の各々の螺子山の荷重分担が均一化し、ナットを螺合した際に、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側(内側)の端面近傍のテーパ部の螺子谷底に引張りや曲げの応力が集中するのを緩和でき、ボルトの疲労強度を大幅に向上することができる。
(2)通常、雄螺子部の切始めに形成される不完全螺子部には応力集中が発生し易いが、テーパ部の最小径部からボルト頭側又はボルト円筒部側に向かって緩やかに円弧状に拡径して不完全螺子除去部を形成することにより、テーパ部を形成しても不完全螺子除去部に応力集中がほとんど発生せず、テーパ部による疲労強度改善効果を維持することができる。
(3)テーパ部の作用により、ナット内側の端面近傍の螺子谷底に引張りや曲げの応力集中が著しく増大することはないが、ボルトの雄螺子部のピッチpよりもピッチが小さくなる方向にボルトの塑性変形雄螺子部を変形させ、ナットの雌螺子部のピッチpが塑性変形雄螺子部のピッチよりも大きくなるようにするか、或いはボルトの雄螺子部のピッチpよりもピッチが大きくなる方向にナットの塑性変形雌螺子部を変形させておけば、通常(静止)状態ではボルトの塑性変形雄螺子部或いは雄螺子部の螺子谷底に圧縮応力が生じるので、外部からボルトに引張り応力が加わったとしても、この引張り応力と圧縮応力が相殺し、外部応力の影響を確実に抑えることができ、疲労破壊の一番の原因である繰返しの変動応力に対する耐性を大幅に向上させることができ、優れた緩み防止機能と疲労強度を兼ね備えることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の締結具であって、前記ナットの雌螺子部の少なくとも一部が前記ボルトの前記テーパ部と螺合して締結される構成を有している。
この構成により、請求項4で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ナットの雌螺子部の少なくとも一部がボルトのテーパ部と螺合して締結されることにより、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側(内側)の端面のテーパ部の螺子山に対し、撓み易いナットの螺子山の先端側のみで接触し、接触面積が小さくなるため、片当たりが緩和され、危険断面に近いテーパ部の螺子谷底における応力を大幅に低減して破壊を防止することができ、ボルトの疲労限を向上できる。
ここで、ナットの材料に関しては、上述したように、ボルトと同様のものが好適に用いられるが、一部の硬質金属を使用する場合、ボルトおよびナットの両方とも同じ硬質であると、嵌合時に噛り付きを起こす恐れもあるので、その場合は破壊され難いナットの材料をいくらか軟らかいものにした方が望ましい。具体的には、ボルトのビッカース硬さHvbとナットのビッカース硬さHvの関係が、0.4≦Hv/Hvb≦0.9のものが好適に用いられる。ボルトの塑性変形雄螺子部の軸方向の位置ずれ量dbp或いはナットの塑性変形雌螺子部の軸方向の位置ずれ量dnpが、ナットの雌螺子部のピッチp或いはボルトの雄螺子部のpに対して小さければ、ボルトとナットの硬さの差も小さくすることができるので、位置ずれ量dbp,dnpに応じて、各々の硬さHvb,Hvを前述の範囲から選択することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の締結具であって、前記ナットが、前記雌螺子部の全長の50%〜80%の範囲で前記ボルトの前記テーパ部と螺合される構成を有している。
この構成により、請求項5で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ナットが、雌螺子部の全長の50%〜80%の範囲でボルトのテーパ部と螺合されることにより、危険断面であるナットの内側端面側のボルトのテーパ部の螺子谷底において、確実かつ効率的に、荷重分担の均一化,引張り及び曲げの応力集中の緩和,片当たりの緩和を図ることができ、疲労強度の信頼性に優れる。
ここで、ナットは、雌螺子部の全長の50%〜80%の範囲で、ボルトのテーパ部と螺合されることが好ましい。ナットの雌螺子部と、ボルトの雄螺子部又は塑性変形雄螺子部と、の嵌合部分に含まれるテーパ部が雌螺子部の全長の50%より少なくなるにつれ、テーパ部による疲労強度向上作用が低下する傾向があり、80%より多くなるにつれ、テーパ部による疲労強度向上作用が低下すると共に、雌螺子部と雄螺子部又は塑性変形雄螺子部との引掛かりが減少して締付け力が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
尚、ナットの位置を最適な位置とするために、被締結体の厚みに応じて、ボルトのボルト軸部の長さを選択するが、必要に応じてワッシャを用いることにより、ナットの位置を調節して良好な締結状態を得ることができ、優れた疲労強度及び緩み防止機能を実現できる。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の締結具であって、前記ナットの前記ボルト頭側又は前記ボルト円筒部側の端部の螺子山と嵌合する前記ボルトの前記テーパ部の螺子山の高さが、前記ナットの前記螺子山の高さの10%〜75%の高さである構成を有している。
この構成により、請求項5又は6で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側の端部の螺子山と嵌合するテーパ部の螺子山の高さが、ナットの螺子山の高さの10%〜75%の高さであることにより、十分な締付け力を確保することができ、安全性の低下を防ぐことができる。
ここで、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側の端部の螺子山と嵌合するテーパ部の螺子山の高さは、ナットの螺子山の高さの10%〜75%の高さとすることが好ましい。危険断面であるナットの内側端面側でナットの螺子山と嵌合するテーパ部の螺子山の高さが、ナットの螺子山の高さの10%より低くなるにつれ、引張り負荷を負担することができなくなり、十分な疲労強度向上効果が得られ難くなる傾向があり、75%より高くなるにつれ、テーパ部による疲労強度向上作用が得られ難くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
本発明の請求項8に記載のボルトの製造方法は、ボルト軸部の少なくとも先端部側に雄螺子部を転造又は切削により形成する雄螺子部形成工程と、前記雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部を形成する雄螺子部塑性変形工程と、を備えている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ボルト軸部の少なくとも先端部側に雄螺子部を転造又は切削により形成する雄螺子部形成工程と、雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部を形成する雄螺子部塑性変形工程を有するので、雄螺子部形成工程で通常通り規格に沿った標準のピッチpで雄螺子部を形成した後、雄螺子部塑性変形工程において、ボルト軸部の長さや被締結体の厚みに応じて、雄螺子部の螺子山の所望の位置を選択的(部分的)に軸方向に塑性変形させて塑性変形雄螺子部を形成することができ、生産性に優れる。
(2)通常の雄螺子部形成工程に雄螺子部塑性変形工程を一工程加えるだけで簡便かつ確実に緩み防止機能を付加することができ、既存のボルトを有効に利用することができ、量産性、省資源性に優れる。
ここで、ボルト材料は、請求項1で説明した通りである。ボルト軸部を形成するために金属製,合成樹脂製等で円柱状又は円錐状に形成されたものを用いることができる。
雄螺子部形成工程を転造で行う場合でも、特別に加工された転造ダイス(丸ダイスまたは平ダイス)を使用する必要がなく、量産性に優れる。
雄螺子部塑性変形工程は、雄螺子部の螺子山の少なくとも一部を軸方向に位置ずれさせて塑性変形できるものであればよい。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のボルトの製造方法であって、前記ボルト軸部のボルト頭側又はボルト円筒部側から前記ボルト軸部の先端部側に向かって緩やかに円弧状に縮径する不完全螺子除去部と前記不完全螺子除去部の最小径部から前記ボルト軸部の先端部側に向かって螺子山外径が拡径するテーパ部とを形成する絞り加工工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項8で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)絞り加工工程で、ボルト軸部のボルト頭側又はボルト円筒部側からボルト軸部の先端部側に向かって緩やかに円弧状に縮径する不完全螺子除去部と不完全螺子除去部の最小径部からボルト軸部の先端部側に向かって螺子山外径(呼び径)が拡径するテーパ部とを形成することにより、不完全螺子除去部に応力集中がほとんど発生せず、さらに、ナットと螺合されるテーパ部の各々の螺子山の高さを、分担する面圧力に逆比例して漸減させることができ、テーパ部の各々の螺子山の荷重分担を均一化し、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側(内側)の端面近傍のテーパ部の螺子谷底に引張りや曲げの応力が集中するのを緩和して、疲労強度を大幅に向上させることが可能なボルトを製造することができる。
(2)絞り加工工程で不完全螺子除去部とテーパ部を形成した後、雄螺子部形成工程と雄螺子部塑性変形工程で雄螺子部及び塑性変形雄螺子部を形成することができ、低原価で量産可能であり、生産性に優れる。
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載のボルトの製造方法であって、前記雄螺子部塑性変形工程が、前記雄螺子部の螺子山の少なくとも一部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を備えた構成を有している。
この構成により、請求項8又は9で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)雄螺子部塑性変形工程が、雄螺子部の螺子山の少なくとも一部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を有することにより、雄螺子部の所望の位置を所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができ、量産性に優れる。
ここで、ブラスト工程としては、鋳鉄,アルミニウム,亜鉛等の金属、アルミナ,炭化ケイ素等のセラミック、ポリカーボネート等の合成樹脂、ガラス等の材質で形成された粒状の投射材を螺子山の表面に吹き付けて衝突させるショットブラストが好適に用いられる。投射材の材質はボルトの材質等に応じて、適宜、選択することができる。また、投射材の硬度は、ボルトの材質等によっても変わるが、Hv=800〜1200が好ましい。投射材の硬度Hvが800より小さくなるにつれ、螺子山の軸方向の位置ずれ量が不足し、初期の目的を達成し難くなる傾向があり、1200より大きくなるにつれ、投射材の靭性が低下し、耐久性が低下し易くなって、投射材を繰返し使用することができず、省資源性に欠ける傾向があり、いずれも好ましくない。投射材の粒径は、ボルトの材質や呼び径等によっても変わるが、直径φ=0.5mm〜3mmが好ましい。投射材の直径φが0.5mmより小さくなるにつれ、より速い投射速度で投射材を衝突させる必要が生じ、設備によっては十分な投射速度が得られず、初期の目的を達成し難くなる傾向があり、3mmより大きくなるにつれ、投射材が衝突した表面の粗さが粗くなり、商品価値が低下したり、疲労強度の向上効果を阻害したりする傾向があり、いずれも好ましくない。投射材の投射速度は、ボルトの材質や呼び径等によっても変わるが、投射速度v=50m/s〜200m/sが好ましい。投射材の投射速度vが50m/sより遅くなるにつれ、加工に時間がかかり、量産性が低下し易くなる傾向があり、200m/sより速くなるにつれ、螺子山の軸方向の位置ずれ量が大きくなり過ぎて、ナットとの嵌合時にかじり付きが発生し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
高圧水噴射工程における高圧水の噴射速度、噴射径は、ボルトの材質や呼び径等によって適宜、選択することができる。また、押圧工程で用いる押圧具としては、金属製のローラ等が好適に用いられる。
本発明の請求項11に記載のナットの製造方法は、螺子孔の端面の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を前記螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を形成する雌螺子部塑性変形工程を備えている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)螺子孔の端面の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を形成する雌螺子部塑性変形工程を有するので、雌螺子部塑性変形工程において、既存のナットに簡便に緩み防止機能を付加することができ、既存のナットを有効に利用することができ、量産性、省資源性に優れる。
ここで、ナット材料は、請求項1で説明した通りである。雌螺子部塑性変形工程は、ナットの螺子孔の端面の周縁部の螺子山の少なくとも一部が、螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれするように、塑性変形させるものであればよい。塑性変形雌螺子部は、螺子孔の周縁部の全周に渡って複数の突起が螺子山から半径方向に向かって形成されたものや螺子孔の周縁部の螺子山が全周に渡って軸方向に位置ずれしたもの等が好適に用いられる。締付力を略均一に保ち、安定した緩み止め機能を維持できるためである。尚、塑性変形雌螺子部として複数の突起が形成される場合、雌螺子の元の螺子山の頂部から突起の先端までの距離(突起の突出量)が、塑性変形雌螺子部における螺子山の半径方向の位置ずれ量dnaに相当する。
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のナットの製造方法であって、雌螺子部塑性変形工程が、前記端面の螺子孔の周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を備えた構成を有している。
この構成により、請求項11で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)雌螺子部塑性変形工程が、端面の螺子孔の周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を有することにより、端面の螺子孔の周縁部を所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができ、量産性に優れる。
ここで、ブラスト工程、高圧水噴射工程、押圧工程については、請求項10と同様なので説明を省略する。
本発明の請求項13に記載の締結具の締結方法は、ボルトにナットを螺合する螺合工程と、前記ナットの端面周辺で前記ボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又は前記ナットの螺子孔の周縁部の少なくとも一部を塑性変形させる塑性変形工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ボルトにナットを螺合する螺合工程と、ナットの端面周辺でボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又はナットの螺子孔の周縁部の少なくとも一部を塑性変形させる塑性変形工程を有するので、螺合工程で通常通り規格に沿って形成されたボルトとナットを螺合させた後、塑性変形工程において、ナットの端面周辺にあるボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又はナットの螺子孔の周縁部の少なくとも一部を塑性変形させるだけで、優れた緩み止め機能を実現することができ、使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、施工性、信頼性、メンテナンス性に優れる。
(2)通常の螺合工程に塑性変形工程を一工程加えるだけで簡便かつ確実な緩み防止になり、既存のボルト及びナットを有効に利用することができ、量産性、省資源性に優れる。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の締結具の締結方法であって、前記塑性変形工程が、前記ボルトの前記雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又は前記ナットの前記螺子孔の前記周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を備えた構成を有している。
この構成により、請求項13で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)塑性変形工程が、ボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又はナットの螺子孔の周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を有することにより、螺合したボルトとナットの少なくともいずれか一方を、ナットの端面の螺子孔の周縁部で、所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができ、施工性、省力性に優れる。
ここで、ブラスト工程、高圧水噴射工程、押圧工程については、請求項10と同様なので説明を省略する。
以上のように、本発明の締結具とボルト及びナットの製造方法並びに締結具の締結方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)ボルトが雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部を有することにより、標準のピッチで形成される雄螺子部に対応したナットを螺合させた際に、ボルトの塑性変形雄螺子部とナットの雌螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することが可能で、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止できる信頼性、メンテナンス性に優れた締結具を提供することができる。
(2)ナットが端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を有することにより、ナットの標準のピッチに対応した既製のボルトを螺合した際に、ナットの塑性変形雌螺子部とボルトの雄螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することが可能で、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止できる信頼性、メンテナンス性に優れた締結具を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)ボルトの塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量(螺子山先端の位置ずれ量)dbpと、ボルトの雄螺子部のピッチpが、0.003≦dbp/p≦0.05の関係であることにより、ボルトの塑性変形雄螺子部とナットの雌螺子部の螺子山間に十分な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にし、緩み方向への大きな抵抗を付与して、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができると共に、ボルトとナットの間にかじり付きが発生し難く、締結に必要な締付トルクが過大になり過ぎず、施工性に優れた締結具を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)ナットの塑性変形雌螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpと、ナットの雌螺子部のピッチpが、0.003≦dnp/p≦0.05の関係であることにより、ボルトの雄螺子部とナットの塑性変形雌螺子部の間に十分な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にし、緩み方向への大きな抵抗を付与して、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができると共に、ボルトとナットの間にかじり付きが発生し難く、締結に必要な締付トルクが過大になり過ぎず、施工性に優れた締結具を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)ボルトの雄螺子部のピッチpよりもピッチが小さくなる方向にボルトの塑性変形雄螺子部を変形させ、ナットの雌螺子部のピッチpが塑性変形雄螺子部のピッチよりも大きくなるようにするか、或いはボルトの雄螺子部のピッチpよりもピッチが大きくなる方向にナットの塑性変形雌螺子部を変形させることにより、通常(静止)状態ではボルトの塑性変形雄螺子部或いは雄螺子部の螺子谷底に圧縮応力が生じ、外部からボルトに引張り応力が加わったとしても、この引張り応力と圧縮応力が相殺し、外部応力の影響を確実に抑えることができ、疲労破壊の一番の原因である繰返しの変動応力に対する耐性を大幅に向上させて、優れた緩み防止機能と疲労強度を兼ね備えた締結具を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)ナットの雌螺子部の少なくとも一部がボルトのテーパ部と螺合して締結されることにより、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側(内側)の端面のテーパ部の螺子山に対し、撓み易いナットの螺子山の先端側のみで接触し、接触面積を小さくして、片当たりを緩和し、危険断面に近いテーパ部の螺子谷底における応力を大幅に低減して破壊を防止し、ボルトの疲労限を向上できる耐久性、長寿命性に優れた締結具を提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)ナットが、雌螺子部の全長の50%〜80%の範囲でボルトのテーパ部と螺合されることにより、危険断面であるナットの内側端面側のボルトのテーパ部の螺子谷底において、確実かつ効率的に、荷重分担の均一化,引張り及び曲げの応力集中の緩和,片当たりの緩和を図ることができる疲労強度の信頼性に優れた締結具を提供することができる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項5又は6に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側の端部の螺子山と嵌合するテーパ部の螺子山の高さが、ナットの螺子山の高さの10%〜75%の高さであることにより、十分な締付け力を確保し、安全性の低下を防ぐことができる耐久性、信頼性に優れた締結具を提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)雄螺子部形成工程で通常通り規格に沿った標準のピッチpで雄螺子部を形成した後、雄螺子部塑性変形工程において、ボルト軸部の長さや被締結体の厚みに応じて、雄螺子部の螺子山の所望の位置を選択的(部分的)に軸方向に塑性変形させて塑性変形雄螺子部を形成することができる生産性に優れたボルトの製造方法を提供することができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)絞り加工工程で不完全螺子除去部とテーパ部とを形成することにより、応力集中の発生を抑え、各々の螺子山の荷重分担を均一化し、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側(内側)の端面近傍のテーパ部の螺子谷底に引張りや曲げの応力が集中するのを緩和して、疲労強度を大幅に向上させることが可能なボルトの製造方法を提供することができる。
請求項10に記載の発明によれば、請求項8又は9に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)雄螺子部塑性変形工程として、ブラスト工程、高圧水噴射工程、押圧工程のいずれか1以上を行うことにより、雄螺子部の所望の位置を所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができる量産性に優れたボルトの製造方法を提供することができる。
請求項11に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)雌螺子部塑性変形工程で塑性変形雌螺子部を形成することにより、既存のナットに簡便に緩み防止機能を付加して有効に利用することができる量産性、省資源性に優れたナットの製造方法を提供することができる。
請求項12に記載の発明によれば、請求項11に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)雌螺子部塑性変形工程として、ブラスト工程、高圧水噴射工程、押圧工程のいずれか1以上を行うことにより、端面の螺子孔の周縁部を所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができる量産性に優れたナットの製造方法を提供することができる。
請求項13に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)螺合工程で通常通り規格に沿って形成されたボルトとナットを螺合させた後、塑性変形工程において、ナットの端面周辺にあるボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又はナットの螺子孔の周縁部の少なくとも一部を塑性変形させるだけで、優れた緩み止め機能を実現することができ、使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑え、緩みに伴うトラブルを防止できる施工性、信頼性、メンテナンス性に優れた締結具の締結方法を提供することができる。
請求項14に記載の発明によれば、請求項13に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)塑性変形工程として、ブラスト工程、高圧水噴射工程、押圧工程のいずれか1以上を行うことにより、螺合したボルトとナットの少なくともいずれか一方を、ナットの端面の螺子孔の周縁部で、所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができる施工性、省力性に優れた締結具の締結方法を提供することができる。
実施の形態1の締結具に用いるボルトの要部側面図 (a)図1のA部における雄螺子部塑性変形工程前の拡大模式断面側面図(b)図1のA部における雄螺子部塑性変形工程後の拡大模式断面側面図 実施の形態1のボルトを用いた締結具の使用状態を示す要部模式断面側面図 実施の形態1の締結具に用いるボルトの製造方法における雄螺子部塑性変形工程の変形例を示す要部模式断面側面図 (a)実施の形態2の締結具に用いるナットの製造方法における雌螺子部塑性変形工程前の拡大模式断面側面図(b)実施の形態2の締結具に用いるナットの製造方法における雌螺子部塑性変形工程後の拡大模式断面側面図 実施の形態2のナットを用いた締結具の使用状態を示す要部模式断面側面図 実施の形態2の締結具に用いるナットの製造方法における雌螺子部塑性変形工程の変形例を示す要部模式断面側面図 実施の形態3の締結具の締結方法を示す拡大模式断面側面図
以下、本発明の実施の形態における締結具とボルト及びナットの製造方法並びに締結具の締結方法について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の締結具に用いるボルトの要部側面図である。
図1中、1は実施の形態1の締結具におけるボルト、2はボルト1のボルト軸部、3は冷間鍛造等により形成されたボルト1のボルト頭、4は切削又は転造によりボルト軸部2の先端部から所定部まで形成されたボルト1の雄螺子部である。
次に、実施の形態1の締結具に用いるボルトの詳細形状をその製造方法に基づいて説明する。
図2(a)は図1のA部における雄螺子部塑性変形工程前の拡大模式断面側面図であり、図2(b)は図1のA部における雄螺子部塑性変形工程後の拡大模式断面側面図である。
図2(a)中、1aは雄螺子部塑性変形工程を施してない絞り加工ボルト、4aは雄螺子部4の螺子山の頂部、4bは雄螺子部4の谷底部、4cは雄螺子部4のフランク、5は雄螺子部4のボルト頭3側の螺子山の頂部の一部が除去されボルト頭3側に向かって螺子山外径(呼び径)が縮径した絞り加工ボルト1aのテーパ部、6はテーパ部5の最小径部からボルト頭3側に向かって緩やかに円弧状に螺子山外径(呼び径)が拡径して形成された絞り加工ボルト1aの不完全螺子除去部である。
実施の形態1の締結具に用いるボルト1を製造するには、まず、絞り加工工程において、ボルト材料に不完全螺子除去部6とテーパ部5を形成する。
次に、雄螺子部形成工程により、ボルト軸部の少なくとも先端部側に雄螺子部4を転造又は切削により形成し、雄螺子部塑性変形工程を施してない絞り加工ボルト1aが得られる。このとき、絞り加工ボルト1aの雄螺子部4のピッチはpである。
次に、雄螺子部塑性変形工程を行う。
図2(a)は雄螺子部塑性変形工程として、ブラスト工程を行う場合を示している。
ブラスト工程としては、絞り加工ボルト1aの雄螺子部4の一部の螺子山に、鋳鉄,アルミニウム,亜鉛等の金属、アルミナ,炭化ケイ素等のセラミック、ポリカーボネート等の合成樹脂、ガラス等の材質で形成された粒状の投射材30を螺子山の表面に吹き付けて衝突させるショットブラストを用いた。こうして、実施の形態1の締結具に用いるボルト1が得られる。
図2(b)中、4Aは雄螺子部4の一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせて形成した塑性変形雄螺子部、dbp1〜dbp6は塑性変形雄螺子部4Aの各々の螺子山の軸方向の位置ずれ量である。
雄螺子部塑性変形工程を行うことにより、図2(b)に示すように、雄螺子部4の一部の螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部4Aを形成することができる。
本実施の形態では、図2(a)に示したように、ボルト頭3側と反対側の斜め上方から螺子山のフランク4cに向けて投射材30を吹き付けて塑性変形雄螺子部4Aを形成したが、ボルト頭3を上にして絞り加工ボルト1aを吊り下げるようにし、絞り加工ボルト1aを回転させながら移動させ、投射材30を吹き付けるようにすれば、短時間で多量の絞り加工ボルト1aに対して雄螺子部塑性変形工程を行うことができ、量産性に優れる。
各々の螺子山の軸方向の位置ずれ量dbp1〜dbp6をまとめてdbpとすると、塑性変形雄螺子部4Aの螺子山の頂部の軸方向の位置ずれ量dbpの雄螺子部4のピッチpに対する割合は0.3%〜5%が好ましい。この割合が0.3%より小さくなるにつれ、相対的にピッチが狭くなっている部分の螺子山の間隔を広げようとする力やボルトとナットの螺子山間に生じる摩擦力が低下し、緩み止め機能が低下し易くなる傾向があり、5%より大きくなるにつれ、ボルトとナットの間にかじり付きが発生し易くなり、締結に必要な締付トルクが増加して、施工性が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
尚、塑性変形雄螺子部4Aの螺子山の頂部の位置ずれ量dbp1〜dbp6や位置ずれ方向は全域に渡って均一である必要はない。また、全ての位置ずれ量dbp1〜dbp6が全て上記の範囲に入っている必要もなく、一部(部分的)でもその位置ずれ量の絶対値が、上記の範囲に入っていればよい(但し、上記の範囲を超える部分が存在すると、かじり付きの発生原因となるので好ましくない。)。
尚、投射材30の材質や粒径は絞り加工ボルト1aの材質や呼び径等に応じて、適宜、選択することができる。投射材30の硬度は、絞り加工ボルト1aの材質等によっても変わるが、Hv=800〜1200のものを用いた。また、投射材30の粒径は、絞り加工ボルト1aの材質や呼び径等によっても変わるが、直径φ=0.5mm〜3mmのものを用いた。
投射材30の硬度Hvが800より小さくなるか、直径φが0.5mmより小さくなるにつれ、各々の投射材30による塑性変形量が小さくなり、緩み止め効果が低下し易くなる傾向がみられ、硬度Hvが1200より大きくなるか、直径φが3mmより大きくなるにつれ、各々の投射材30による塑性変形量が大きくなり、螺子山の形状が崩れて雌螺子との引掛かりが少なくなって締結力が低下したり、螺子山の軸方向の位置ずれが大きくなって締結時に大きな締付けトルクが必要となり、かじり付きが発生し易くなったりする傾向がみられることがわかったためである。
投射材30の投射速度は、絞り加工ボルト1aの材質や呼び径等によっても変わるが、投射速度v=50m/s〜200m/sとした。投射材30の投射速度vが50m/sより遅くなるにつれ、加工に時間がかかり、量産性が低下し易くなる傾向がみられ、200m/sより速くなるにつれ、短時間で大きな塑性変形が発生し、変形量のばらつきや嵌合時のかじり付きが発生し易くなる傾向がみられることがわかったためである。
尚、雄螺子部塑性変形工程では、ショットブラストを用いたブラスト工程以外に、高圧水を噴射する高圧水噴射工程によっても同様の加工を行うことができる。
図3は実施の形態1のボルトを用いた締結具の使用状態を示す要部模式断面側面図である。
図3中、10は実施の形態1のボルト1を用いた締結具においてボルト頭3側の一部がボルト1の塑性変形雄螺子部4Aと螺合して締結されたピッチpのナット、10aはナット10の端面、20は実施の形態1のボルトを用いた締結具によって締結された被締結体、hはナット10の螺子山の高さ、hはナット10のボルト頭3側の端部の螺子山と嵌合するボルト1のテーパ部5の螺子山の中央高さ(ナット10に嵌合するテーパ部5の最小螺子山高さという。)、lはナット10の全長、lはボルト1のテーパ部5の内のナット10と螺合される部分の長さである。
図2(b)で説明したように、0.003≦dbp/p≦0.05とすることにより、ボルト1とナット10を螺合する際に、抵抗が発生するが、位置ずれ量dbp1〜dbp6が小さく、螺子山の弾性変形によって吸収できる範囲となっているので、一般的に用いられる工具のみで容易に締結することができると共に、締結後は緩み止め効果を発揮することができる。
尚、ボルト1やナット10の材料に関して、金属又は塑性変形可能な非金属を用いることができるが、効果の面からは、鉄鋼材料や銅,アルミニウム,チタン,マグネシウム等の軟質金属とそれらの合金類が好ましい。一部の硬質金属を使用する場合、ボルト1及びナット10の両方とも同じように硬質であると、嵌合時に噛り付きを起こす恐れもあるので、その場合は破壊し難い側であるナット10の材料をいくらか軟らかいものにした方が望ましい。具体的には、ボルト1のビッカース硬さHvとナット10のビッカース硬さHvの関係が、0.5≦Hv/Hv<0.9のものが好適に用いられる。ボルト1の塑性変形雄螺子部4Aの軸方向の位置ずれ量dbpが、ナット10の雌螺子部のピッチpに対して小さければ、ボルト1とナット10の硬さの差も小さくすることができるので、位置ずれ量dbpに応じて、各々の硬さHvb,Hvを前述の範囲から選択することができる。
また、ナット10の全長lと、ボルト1の塑性変形雄螺子部4Aを含むテーパ部5の内のナット10と螺合される部分の長さlの関係が、0.5≦l/l≦0.8となるようにした。ナット10とボルト1の雄螺子部4(少なくとも一部に塑性変形雄螺子部4Aを含む)の嵌合部分に含まれるテーパ部5がナット10の全長lの50%より少なくなるにつれ、テーパ部5による疲労強度向上作用が低下する傾向があり、80%より多くなるにつれ、テーパ部5による疲労強度向上作用が低下すると共に、ナット10と塑性変形雄螺子部4Aの引掛かりが減少してナット10による締付け力が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
ナット10のボルト頭3側の端部の螺子山と嵌合するテーパ部5の螺子山の高さhと、ナット10の螺子山の高さhの関係が、0.1≦h/h≦0.75となるようにした。危険断面であるナット10の内側端面側でナット10の螺子山と嵌合するテーパ部5の螺子山の高さhが、ナット10の螺子山の高さhの10%より低くなるにつれ、疲労強度が低下し、テーパ部5における各々の螺子山の引掛かりが少なくなり、嵌合している残りの螺子山の負担が増加して、応力集中が発生し易くなると共に、寸法精度がばらつき易く、その影響によって疲労強度のばらつきも発生し易くなり、締結安定性が低下する傾向があり、75%より高くなるにつれ、テーパ部5による疲労強度向上作用が得られ難くなる傾向があることがわかったためである。
図3において、所定位置で締付けが完了した状態では、ナット10側から見れば、ボルト1の塑性変形雄螺子部4Aの螺子山の頂部4aの位置をナット10のピッチpに合うように近づけようとする力、つまり、塑性変形雄螺子部4Aの螺子山を元の位置に戻そうとする力が働いている。
一方、ボルト1側から見れば、塑性変形雄螺子部4Aの螺子山を元の位置に戻そうとする力に抗する力が発生し、ボルト1とナット10の螺子山間に適度な摩擦力が生じ、緩み難い状態となっている。
尚、塑性変形雄螺子部4Aの各々の螺子山の位置ずれ量dbp1〜dbp6は、前述したように均一である必要はなく、周方向にも変動しているので、ナット10の位置が変われば、ボルト1とナット10の各々の螺子山の嵌合状態は変化し、それに伴って、働く力の大きさも変化することになる。
通常のピッチの等しいボルトとナットの組合せでは、締結使用中のボルトの螺子谷底では、引張応力が発生し、ナット側では圧縮応力が発生する。螺子谷底の径は、ボルト側よりもナット側が大きいことから、一般にボルト側から破壊が発生し易くなっている。そして、ボルトが疲労破壊する場合には、一般に引張応力によって、螺合するナットの内側端面側から破壊が起こる。
ボルト1の塑性変形雄螺子部4Aを軸方向に変形させ、ナット10の雌螺子部のピッチpが塑性変形雄螺子部4Aのピッチよりも大きくなるようにしておけば、通常(静止)状態ではボルト1の塑性変形雄螺子部4A或いは雄螺子部4の螺子谷底に圧縮応力が生じるので、外部からボルト1に引張り応力が加わったとしても、この引張り応力と圧縮応力が相殺し、外部応力の影響を確実に抑え、変動応力に対する耐性を大幅に向上させることができる。
また、ナット10と螺合されるテーパ部5の各々の螺子山の高さを、螺子山が分担する面圧力に逆比例するように漸減させることにより、テーパ部5の各々の螺子山の荷重分担を均一化し、ナット10の内側端面近傍のテーパ部5の螺子谷底に引張りや曲げの応力が集中するのを緩和すると共に、ナット10の一部をボルト1のテーパ部5と螺合させて締結することにより、ナット10の内側端面のテーパ部5の螺子山に対し、撓み易いナット10の螺子山の先端側のみで接触させ、接触面積を低減することができ、片当たりを緩和して、危険断面に近いテーパ部5の螺子谷底における応力を大幅に低減している。
これらの相乗効果により、緩み防止機能に加え、ボルト1の疲労強度を飛躍的に向上させることができる。
尚、このボルト1は埋込みボルトとしても使用することができ、通常のナット10だけでなく、接合部に埋設された雌螺子部材や接合部に形設された雌螺子部などと螺合して用いることもできる。
次に、雄螺子部塑性変形工程の変形例について説明する。
図4は実施の形態1の締結具に用いるボルトの製造方法における雄螺子部塑性変形工程の変形例を示す要部模式断面側面図である。
図4中、40は雄螺子部4の内の塑性変形させたい螺子山のフランク4cに押し当てられる押圧具、41は押圧具40の回転軸、42は押圧具40の回転軸41に固設された算盤玉型のローラ、42aは螺子山のフランク4cに当接するローラ42の傾斜面、αは谷底部4bの角度、βはローラ42の傾斜面42aのなす角度である。
図4において、変形例の雄螺子部塑性変形工程が実施の形態1と異なるのは、ブラスト工程の代わりに、雄螺子部4の一部の螺子山に押圧具40を押し当てる押圧工程を行う点である。
押圧具40のローラ42の傾斜面42aのなす角βを谷底部4bの角度αよりもやや大きめに形成し、押圧具40を回転させながら螺子山のフランク4cに押し付けることにより、螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせて、図2(b)と同様の塑性変形雄螺子部4Aを形成することができる。
以上のような本発明の実施の形態1の締結具によれば、以下のような作用が得られる。
(1)ボルト軸部の少なくとも先端部側に形成された雄螺子部と、雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部と、を有するボルトを用いることにより、標準のピッチで形成される雄螺子部に対応したナットを螺合させた際に、ボルトの塑性変形雄螺子部とナットの雌螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。
(2)ボルトの塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dbpと、ボルトの雄螺子部のピッチpが、0.003≦dbp/p≦0.05の関係であることにより、ボルトの塑性変形雄螺子部とナットの雌螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。塑性変形雄螺子部の螺子山の位置ずれによって螺子谷底に比べて螺子山の頂部がずれることにより、ナットの雌螺子部のピッチが塑性変形雄螺子部のピッチよりも大きくなることになり、螺合状態で塑性変形雄螺子部の螺子山の間隔を広げようとする力と、その力に抗する力に基づいて、塑性変形雄螺子部とナットの螺子山間に適度な摩擦力を発生させることができる。
(3)雄螺子部のボルト頭側の螺子山の頂部の一部が除去されボルト頭側に向かって螺子山外径(呼び径)が縮径したテーパ部を有することにより、ナットの雌螺子部と螺合されるテーパ部の各々の螺子山の高さが、分担する面圧力に逆比例して漸減するので、テーパ部の各々の螺子山の荷重分担が均一化し、ナットを螺合した際に、ナットのボルト頭側(内側)の端面近傍のテーパ部の螺子谷底に引張りや曲げの応力が集中するのを緩和でき、ボルトの疲労強度を大幅に向上することができる。
(4)通常、雄螺子部の切始めに形成される不完全螺子部には応力集中が発生し易いが、テーパ部の最小径部からボルト頭側又はボルト円筒部側に向かって緩やかに円弧状に拡径して不完全螺子除去部を形成することにより、テーパ部を形成しても不完全螺子除去部に応力集中がほとんど発生せず、テーパ部による疲労強度改善効果を維持することができる。
(5)テーパ部の作用により、ナット内側の端面近傍の螺子谷底に引張りや曲げの応力集中が著しく増大することはないが、ボルトの雄螺子部のピッチpよりもピッチが小さくなる方向にボルトの塑性変形雄螺子部を変形させ、ナットの雌螺子部のピッチpが塑性変形雄螺子部のピッチよりも大きくなるようにしておけば、通常(静止)状態ではボルトの塑性変形雄螺子部或いは雄螺子部の螺子谷底に圧縮応力が生じるので、外部からボルトに引張り応力が加わったとしても、この引張り応力と圧縮応力が相殺し、外部応力の影響を確実に抑えることができ、疲労破壊の一番の原因である繰り返しの変動応力に対する耐性を大幅に向上させることができ、優れた緩み防止機能と疲労強度を兼ね備えることができる。
(6)ナットの雌螺子部の少なくとも一部がボルトのテーパ部と螺合して締結されることにより、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側(内側)の端面のテーパ部の螺子山に対し、撓み易いナットの螺子山の先端側のみで接触し、接触面積が小さくなるため、片当たりが緩和され、危険断面に近いテーパ部の螺子谷底における応力を大幅に低減して破壊を防止することができ、ボルトの疲労限を向上できる。
(7)ナットが、雌螺子部の全長の50%〜80%の範囲でボルトのテーパ部と螺合されることにより、危険断面であるナットの内側端面側のボルトのテーパ部の螺子谷底において、確実かつ効率的に、荷重分担の均一化,引張り及び曲げの応力集中の緩和,片当たりの緩和を図ることができ、疲労強度の信頼性に優れる。
(8)ナットのボルト頭側の端部の螺子山と嵌合するテーパ部の螺子山の高さが、ナットの螺子山の高さの10%〜75%の高さであることにより、十分な締付け力を確保することができ、安全性の低下を防ぐことができる。
以上のような本発明の実施の形態1の締結具に用いるボルトの製造方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)ボルト軸部の少なくとも先端部側に雄螺子部を転造又は切削により形成する雄螺子部形成工程と、雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部を形成する雄螺子部塑性変形工程を有するので、雄螺子部形成工程で通常通り規格に沿った標準のピッチpで雄螺子部を形成した後、雄螺子部塑性変形工程において、ボルト軸部の長さや被締結体の厚みに応じて、雄螺子部の螺子山の所望の位置を選択的(部分的)に軸方向に塑性変形させて塑性変形雄螺子部を形成することができ、生産性に優れる。
(2)通常の雄螺子部形成工程に雄螺子部塑性変形工程を一工程加えるだけで簡便かつ確実に緩み防止機能を付加することができ、既存のボルトを有効に利用することができ、量産性、省資源性に優れる。
(3)絞り加工工程で、ボルト軸部のボルト頭側又はボルト円筒部側からボルト軸部の先端部側に向かって緩やかに円弧状に縮径する不完全螺子除去部と不完全螺子除去部の最小径部からボルト軸部の先端部側に向かって螺子山外径(呼び径)が拡径するテーパ部とを形成することにより、不完全螺子除去部に応力集中がほとんど発生せず、さらに、ナットと螺合されるテーパ部の各々の螺子山の高さを、分担する面圧力に逆比例して漸減させることができ、テーパ部の各々の螺子山の荷重分担を均一化し、ナットのボルト頭側又はボルト円筒部側(内側)の端面近傍のテーパ部の螺子谷底に引張りや曲げの応力が集中するのを緩和して、疲労強度を大幅に向上させることが可能なボルトを製造することができる。
(4)絞り加工工程で不完全螺子除去部とテーパ部を形成した後、雄螺子部形成工程と雄螺子部塑性変形工程で雄螺子部及び塑性変形雄螺子部を形成することができ、低原価で量産可能であり、生産性に優れる。
(5)雄螺子部塑性変形工程が、雄螺子部の螺子山の少なくとも一部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を有することにより、雄螺子部の所望の位置を所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができ、量産性に優れる。
(実施の形態2)
図5(a)は実施の形態2の締結具に用いるナットの製造方法における雌螺子部塑性変形工程前の拡大模式断面側面図であり、図5(b)は実施の形態2の締結具に用いるナットの製造方法における雌螺子部塑性変形工程後の拡大模式断面側面図である。尚、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図5(a)中、10Aは雌螺子部塑性変形工程を施してない未加工ナット、10bは未加工ナット10Aの螺子孔であり、図5(b)中、10Bは雌螺子部塑性変形工程が施された実施の形態2の締結具に用いるナット、11は雌螺子部塑性変形工程によって端面10aの螺子孔10bの周縁部に形成されたナット10Bの梨地状の凹凸部、12は雌螺子部塑性変形工程によって端面10aの螺子孔10bの周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔10bの半径方向及び軸方向に位置ずれさせたナット10Bの塑性変形雌螺子部、dnpは塑性変形雌螺子部12の螺子山の軸方向の位置ずれ量、dnaは塑性変形雌螺子部12の螺子山の半径方向の位置ずれ量である。
実施の形態2の締結具に用いるナット10Bを製造するには、図5(a)に示すように、まず、ISOやJIS等の寸法規格に適合するように製造された未加工ナット10Aを準備する。
次に、雌螺子部塑性変形工程を行う。
図5(a)は雌螺子部塑性変形工程として、ブラスト工程を行う場合を示している。
未加工ナット10Aに対し、雌螺子部塑性変形工程を行うことにより、図5(b)に示すように、端面10aの螺子孔10bの周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔10bの半径方向及び軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部12を有するナット10Bが得られる。
本実施の形態では、図5(a)に示したように、未加工ナット10Aのボルト頭側と反対側の斜め上方から未加工ナット10Aの端面10aの螺子孔10bの周縁部に向けて投射材30を吹き付けて塑性変形雄螺子部12を形成した。
ナット10Bの塑性変形雄螺子部12の螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpの雌螺子部のピッチpに対する割合は0.3%〜5%が好ましい。この割合が0.3%より小さくなるにつれ、ナット10Bの塑性変形雌螺子部12とボルトの雄螺子部の螺子山との間に生じる摩擦力が低下し、緩み止め機能が低下し易くなる傾向があり、5%より大きくなるにつれ、ボルトとナット10Bの間にかじり付きが発生し易くなり、締結に必要な締付トルクが増加して、施工性が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
尚、塑性変形雄螺子部12の螺子山の頂部の位置ずれ量dnpや位置ずれ方向は螺子山の全周に渡って均一である必要はない。また、位置ずれ量dnpが全周に渡って上記の範囲に入っている必要もなく、一部(部分的)でもその位置ずれ量の絶対値が、上記の範囲に入っていればよい(但し、上記の範囲を超える部分が存在すると、かじり付きの発生原因となるので好ましくない。)。
また、塑性変形雌螺子部12の螺子山の半径方向の位置ずれ量dnaは、塑性変形雌螺子部12の螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpと同程度であることが好ましい。半径方向の位置ずれ量dnaと軸方向の位置ずれ量dnpのどちらか一方でも雌螺子部のピッチpに対する割合が5%を超えると、かじり付きが発生し易くなり、好ましくないが、半径方向の位置ずれ量dnaが0.3%より小さくても、軸方向の位置ずれ量dnpが一部でも上記の範囲に入っていれば、良好な緩み止め効果が得られる。
尚、このブラスト工程は、加工の対象が実施の形態1の加工前ボルト1aから加工前ナット10Aに変わっただけであり、投射材30の材質、粒径、硬度、投射速度等の加工条件は実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
また、雌螺子部塑性変形工程では、実施の形態1で説明した雄螺子部塑性変形工程と同様に、ショットブラストを用いたブラスト工程以外に、高圧水を噴射する高圧水噴射工程によっても同様の加工を行うことができる。
図6は実施の形態2のナットを用いた締結具の使用状態を示す要部模式断面側面図である。
本実施の形態では、実施の形態1で説明した塑性変形雄螺子部4Aを有していない絞り加工ボルト1aに実施の形態2のナット10Bを螺合させた。
図5(b)で説明したように、0.003≦dnp/p≦0.05とすることにより、絞り加工ボルト1aとナット10Bを螺合する際に、抵抗が発生するが、位置ずれ量dnpが小さく、螺子山の弾性変形によって吸収できる範囲となっているので、一般的に用いられる工具のみで容易に締結することができると共に、締結後は緩み止め効果を発揮することができる。
図6において、所定位置で締付けが完了した状態では、絞り加工ボルト1a側から見れば、塑性変形雌螺子部12の螺子山の頂部の位置を絞り加工ボルト1aのピッチpに合うように近づけようとする力、つまり、塑性変形雌螺子部12の螺子山を元の位置に戻そうとする力が働いている。
一方、ナット10B側から見れば、塑性変形雌螺子部12の螺子山を元の位置に戻そうとする力に抗する力が発生し、ナット10Bの端面10aにおいて、絞り加工ボルト1aとナット10Bの螺子山間に適度な摩擦力が生じ、緩み難い状態となっている。
尚、塑性変形雌螺子部12の螺子山の位置ずれ量dnpは、前述したように周方向に変動しており、全周に渡って均一な摩擦力が生じている訳ではない。また、ナット10Aの位置が変われば、絞り加工ボルト1aとナット10Bの嵌合状態は変化し、それに伴って、働く力の大きさも変化することになる。
ナット10Bの全長lと、絞り加工ボルト1aのテーパ部5の内のナット10Bと螺合される部分の長さlの関係が、0.5≦l/l≦0.8となるようにした点、ナット10Bのボルト頭3側の端部の螺子山と嵌合するテーパ部5の螺子山の高さhと、ナット10Bの螺子山の高さhの関係が、0.1≦h/h≦0.75となるようにした点については、実施の形態1と同様であり、それによって得られる作用、効果も同様であるので、説明を省略する。
次に、雌螺子部塑性変形工程の変形例について説明する。
図7は実施の形態2の締結具に用いるナットの製造方法における雌螺子部塑性変形工程の変形例を示す要部模式断面側面図である。
図7中、50は未加工ナット10Aの端面10aの螺子孔10bの周縁部の螺子山の塑性変形させたい箇所に押し当てられる押圧具、51は押圧具50の回転軸、52は押圧具50の回転軸51の先端に形設された円錐状の当接部、52aは螺子孔10bの周縁部の螺子山に当接する当接部52の傾斜面である。
図7において、変形例の雌螺子部塑性変形工程が実施の形態2と異なるのは、ブラスト工程の代わりに、未加工ナット10Aの端面10aの螺子孔10bの周縁部の螺子山に押圧具50を押し当てる押圧工程を行う点である。
押圧具50を回転させながら螺子孔10bの周縁部に押し付けることにより、端面10aの螺子山を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を軸方向や半径方向に位置ずれさせて、図5(b)と同様の塑性変形雌螺子部12を有するナット10Bを形成することができる。
以上のような本発明の実施の形態2の締結具によれば、以下のような作用が得られる。
(1)端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を有するナットを用いることにより、ナットの標準のピッチに対応した既製のボルトを螺合した際に、ナットの塑性変形雌螺子部とボルトの雄螺子部の螺子山間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。
(2)ナットの塑性変形雌螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpと、ナットの雌螺子部のピッチpが、0.003≦dnp/p≦0.05の関係であることにより、ボルトの雄螺子部とナットの塑性変形雌螺子部の間に適度な摩擦力を発生させ、強固な螺合、締付けを可能にすると共に、緩み方向への大きな抵抗を付与することができ、外部から変動応力が加わっても優れた緩み止め機能を維持することができる。この結果、長期の使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、信頼性、メンテナンス性に優れる。
(3)雄螺子部のボルト頭側の螺子山の頂部の一部が除去されボルト頭側に向かって螺子山外径(呼び径)が縮径したテーパ部を有することにより、ナットの雌螺子部と螺合されるテーパ部の各々の螺子山の高さが、分担する面圧力に逆比例して漸減するので、テーパ部の各々の螺子山の荷重分担が均一化し、ナットを螺合した際に、ナットのボルト頭側(内側)の端面近傍のテーパ部の螺子谷底に引張りや曲げの応力が集中するのを緩和でき、ボルトの疲労強度を大幅に向上することができる。
(4)通常、雄螺子部の切始めに形成される不完全螺子部には応力集中が発生し易いが、テーパ部の最小径部からボルト頭側に向かって緩やかに円弧状に拡径して不完全螺子除去部を形成することにより、テーパ部を形成しても不完全螺子除去部に応力集中がほとんど発生せず、テーパ部による疲労強度改善効果を維持することができる。
(5)ナットの雌螺子部の少なくとも一部がボルトのテーパ部と螺合して締結されることにより、ナットのボルト頭側(内側)の端面のテーパ部の螺子山に対し、撓み易いナットの螺子山の先端側のみで接触し、接触面積が小さくなるため、片当たりが緩和され、危険断面に近いテーパ部の螺子谷底における応力を大幅に低減して破壊を防止することができ、ボルトの疲労限を向上できる。
(6)ナットが、雌螺子部の全長の50%〜80%の範囲でボルトのテーパ部と螺合されることにより、危険断面であるナットの内側端面側のボルトのテーパ部の螺子谷底において、確実かつ効率的に、荷重分担の均一化,引張り及び曲げの応力集中の緩和,片当たりの緩和を図ることができ、疲労強度の信頼性に優れる。
(7)ナットのボルト頭側の端部の螺子山と嵌合するテーパ部の螺子山の高さが、ナットの螺子山の高さの10%〜75%の高さであることにより、十分な締付け力を確保することができ、安全性の低下を防ぐことができる。
以上のような本発明の実施の形態2の締結具に用いるナットの製造方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)螺子孔の端面の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて螺子山の頂部の位置を螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を形成する雌螺子部塑性変形工程を有するので、雌螺子部塑性変形工程において、既存のナットに簡便に緩み防止機能を付加することができ、既存のナットを有効に利用することができ、量産性、省資源性に優れる。
(2)雌螺子部塑性変形工程が、端面の螺子孔の周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を有することにより、端面の螺子孔の周縁部を所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができ、量産性に優れる。
実施の形態1のボルト1と実施の形態2のナット10Bは組合わせて締結具として用いることができる。その場合、実施の形態1で説明したボルト1の緩み止め効果と実施の形態2で説明したナット10Bの緩み止め効果の相乗効果により、さらに優れた緩み止め効果を実現することができる。
(実施の形態3)
図8は実施の形態3の締結具の締結方法を示す拡大模式断面側面図である。尚、実施の形態1又は2と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
まず、螺合工程において、実施の形態1で説明した絞り加工ボルト1aに実施の形態2で説明した未加工ナットを螺合する。
次に、塑性変形工程において、未加工ナット10Aの端面10a周辺で未加工ナット10Aの螺子孔10bの周縁部の螺子山の一部や絞り加工ボルト1aの雄螺子部4の螺子山の一部を塑性変形させる。
これにより、未加工ナット10Aに対し、図6に示した実施の形態2のナット10Bと同様の塑性変形雌螺子部12を形成することができる。尚、端面10aにおける絞り加工ボルト1aと未加工ナット10Aの螺子山の嵌合状態は周方向に変化する。図6の断面では未加工ナット10Aの端面10aが露出しているために螺子孔10bの周縁部の螺子山が塑性変形し塑性変形雌螺子部12が形成されるが、未加工ナット10Aの端面10aの外側に絞り加工ボルト1aの螺子山が接触している断面では、絞り加工ボルト1aの螺子山が塑性変形し塑性変形雄螺子部が形成される。
この締結具の締結方法により、塑性変形雄螺子部4Aを有していない絞り加工ボルト1aや塑性変形雌螺子部12を有していない未加工ナット10Aを螺合した後、塑性変形工程を施すだけで、実施の形態1又は実施の形態2の締結具と同様の緩み防止機能と疲労強度を実現することができる。
尚、塑性変形工程では、実施の形態1及び実施の形態2と同様のブラスト工程、高圧水噴射工程、押圧工程のいずれか1以上を用いることができる。
以上のような本発明の実施の形態3の締結具の締結方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)ボルトにナットを螺合する螺合工程と、ナットの端面周辺でボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又はナットの螺子孔の周縁部の少なくとも一部を塑性変形させる塑性変形工程を有するので、螺合工程で通常通り規格に沿って形成されたボルトとナットを螺合させた後、塑性変形工程において、ナットの端面周辺にあるボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又はナットの螺子孔の周縁部の少なくとも一部を塑性変形させるだけで、優れた緩み止め機能を実現することができ、使用期間を通して外力による緩みの発生を確実に抑えることができ、緩みに伴うトラブルを防止でき、施工性、信頼性、メンテナンス性に優れる。
(2)通常の螺合工程に塑性変形工程を一工程加えるだけで簡便かつ確実な緩み防止になり、既存のボルト及びナットを有効に利用することができ、量産性、省資源性に優れる。
(3)塑性変形工程が、ボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又はナットの螺子孔の周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を有することにより、螺合したボルトとナットの少なくともいずれか一方を、ナットの端面の螺子孔の周縁部で、所望の量だけ塑性変形させて簡便に緩み防止機能を付加することができ、施工性、省力性に優れる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1,2による塑性変形雄螺子部の軸方向の位置ずれ量の評価)
まず、JIS B 0205−1997に規定されるM16の並目ナットを基準として、実施の形態1で説明したボルトの製造方法により、雄螺子部の基準ピッチpで塑性変形雄螺子部を有するボルト1を製造した。
製造したボルトの雄螺子部のピッチpに対する塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の最大の位置ずれ量dbpの割合(%)を表1に示す。
比較例2のボルトはナットとのかじり付きが発生したので、実施例1〜3及び比較例1のボルトを振動バーレルに挿通し、ボルトの雄螺子部にJIS B 0205−1997に規定されるM16のナット10を螺合し、同一の締付トルク(145N・m)で締結した。
十分な疲労強度が得られるように、ナットに嵌合するテーパ部の最小螺子山高さの割合(=(h/h)×100(%))を10%とし、ナット全長に対するテーパ部長さの割合(=(l/l)×100(%))を80%として評価を行った結果を表1に示す。
Figure 2011012784
以上のようにして、振動バーレルに締結した締結具に、NAS式高速緩み試験機(米国航空機規格NAS3350に準じる)を用いて、ボルトの軸方向と直交する方向に振動を繰り返し与える振動試験を17分間(30000回)行った。振動数は1780rpmm、加振ストロークは11mm、インパクトストロークは19mmとした。
評価の結果、比較例1では、試験後にナットに緩みが発生したが、実施例1〜3については、試験後にナットに緩みが発生しているものはなかった。
次に、実施例1〜3及び比較例1のボルトについて疲労強度試験を行った。
実施例1〜3及び比較例1のボルトを治具に挿通し、ボルトの雄螺子部にJIS B 0205−1997に規定されるM16のナットを螺合し、同一の締付トルク(145N・m)で締結した。ナットの位置は表1に示した通りである。
サーボ型疲労試験機(±392kN)を用い、ボルトの頭部とナットをボルトの軸方向に繰返し引張り、破壊が発生するまでの繰返し回数(時間)をカウントした。尚、引張りの平均応力は176.4MPaで一定とし、繰返し速度は500回/分とした。
評価は、従来のM16の並目ボルトと並目ナットを螺合した締結具の疲労強度を100%とした時の相対値とした。
表1に示すように、ボルトの雄螺子部のピッチpに対する塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の最大の位置ずれ量dbpの割合が0.3%〜5%の範囲を満たす実施例1〜3では、従来の2倍以上の優れた疲労強度を有することがわかった。
ボルトの雄螺子部のピッチpに対する塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の最大の位置ずれ量dbpの割合が0.3%より小さな比較例1では、従来の並目ボルトと並目ナットを螺合した締結具と同等の疲労強度しかなく、疲労強度改善効果が得られないことがわかった。
(実施例4〜12、比較例3〜10によるナット螺合位置の評価)
実施例1〜3、比較例1,2による塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量の評価で、ボルトの塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dbpと、ボルトの雄螺子部のピッチpの関係を0.003≦dbp/p≦0.05とすることにより、優れた緩み防止機能が得られることがわかったので、ボルトの塑性変形雄螺子部の螺子山の軸方向の位置ずれ量dbpと、ボルトの雄螺子部のピッチpの関係をdbp/p=0.02で一定(実施例2相当)にし、ナットの位置を変えながら、緩みの発生及び疲労強度について評価を行った結果を表2に示す。
Figure 2011012784
尚、実施例4〜12、比較例3〜10のボルトに螺合したナットに嵌合するテーパ部の最小螺子山高さの割合(=(h/h)×100(%))及びナット全長に対するナットが螺着されたテーパ部長さの割合(=(l/l)×100(%))は、それぞれ表2に示した通りである。
振動バーレルに締結した締結具に、NAS式高速緩み試験機(米国航空機規格NAS3350に準じる)を用いて、ボルトの軸方向と直交する方向に振動を繰り返し与える振動試験を17分間(30000回)行った。振動数は1780rpmm、加振ストロークは11mm、インパクトストロークは19mmとした。
評価の結果、試験後又は試験中にナットに緩みが発生するものはなく、実施例4〜12、比較例3〜10の全てが合格となった。
次に、実施例4〜12、比較例3〜10のボルトについて疲労強度試験を行った。
ナットの位置が異なる以外は、実施例1〜3及び比較例1と同様にして評価を行った。
表2に示すように、ナットに嵌合するテーパ部の最小螺子山高さhが、ナットの螺子山の高さhの10%〜75%の高さで、ナットが、ナットの全長lの50%〜80%の範囲でボルトのテーパ部と螺合された実施例4〜12は、優れた疲労強度を有することがわかった。
また、ナットに嵌合するテーパ部の最小螺子山高さhをナットの螺子山の高さhの80%とした比較例4,6,8では、従来の並目ボルトと並目ナットを螺合した締結具と同等の疲労強度しかなく、疲労強度改善効果が得られないことがわかった。
さらに、ナットが、ナットの全長lの40%でボルトのテーパ部と螺合された比較例9では、50%の実施例4と比べて急激に疲労強度改善効果が低下することがわかった。また、ナットが、ナットの全長lの90%でボルトのテーパ部と螺合された比較例10では、従来の1.5倍の疲労強度が得られることはわかったが、ナットの全長lのほとんどがテーパ部で螺合しているため、外力などによってすっぽ抜ける可能性があり、締結の信頼性に欠けるので、好ましくない。
尚、ナットに嵌合するテーパ部の最小螺子山高さhをナットの螺子山の高さhの5%とした比較例3,5,7は、ナットに嵌合するテーパ部の最小螺子山高さhをナットの螺子山の高さhの50%とした実施例5,8,11ほぼ同程度の疲労強度となっているが、ナットに嵌合するテーパ部の最小螺子山高さhをナットの螺子山の高さhの10%とした実施例4,7,10をピークとして、急激に疲労強度が低下しており、5%〜10%の範囲は、少しの位置の違いで疲労強度にばらつきが発生し易い不安定な領域であると言える。また、テーパ部における各々の螺子山の引掛かりが少ないため、嵌合している残りの螺子山の負担が増加し、応力集中が発生し易くなり、実用性に欠けるので、好ましくない。さらに、螺子山の高さが低くなると、寸法精度のばらつきの影響を受け易く、製造安定性に欠けると共に、疲労強度のばらつきが発生し易く、締結安定性に欠けるので、好ましくない。
本実施例では、一般的に使用される代表的なM16のサイズに形成されたボルトを用いたが、ボルトのサイズによらず、表1,2と同様の傾向が見られる。
本発明は、確実な緩み防止機能を有すると共に、疲労強度を大幅に改善することができ、従来の螺子締結具では得られなかったような優れた安全性、信頼性を実現して、ボルト,ナットの使用数や寸法を大幅に低減し、製品の小型化、軽量化を実現できるだけでなく、ボルトの孔あけ加工や締付け作業等に要する工数を低減して製品のコストダウンを図ることができ、製品設計の自在性、組み立て作業性、量産性を著しく向上させることができる実用性に優れる締結具の提供、ボルトやナットに簡単な加工を施すだけで、繰返し荷重(振動)を受けても緩むことがなく、締結力に優れ、低原価で量産性に優れる緩み防止機能と疲労強度を兼ね備えたボルト及びナットの製造方法の提供、並びに既製のボルトとナットを螺合した後に簡単な加工を施すことにより、ボルトとナットを強固に固定することができ、繰返し荷重(振動)を受けても緩むことがなく、優れた締結力を実現することができる安全性、信頼性に優れる締結具の締結方法の提供を行うことができ、各種機械装置、鉄橋、建築物、建設機械、各種搬送機器、電気製品、眼鏡等の可動部または外部から振動を受ける部材の接合部の信頼性を高めることができ、遅れ破壊や応力腐食割れの発生率を低減することができる。
1 ボルト
1a 絞り加工ボルト
2 ボルト軸部
3 ボルト頭
4 雄螺子部
4a 頂部
4b 谷底部
4c フランク
4A 塑性変形雄螺子部
5 テーパ部
6 不完全螺子除去部
10 ナット
10a 端面
10A 未加工ナット
10b 螺子孔
10B ナット
11 凹凸部
12 塑性変形雌螺子部
20 被締結体
30 投射材
40,50 押圧具
41,51 回転軸
42 ローラ
42a,52a 傾斜面
52 当接部

Claims (14)

  1. ボルトと、前記ボルトに螺合されるナットと、を有する締結具であって、
    (a)ボルト軸部の少なくとも先端部側に形成された雄螺子部と、前記雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部と、を有するボルト又は(b)端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を前記螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を有するナットの少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする締結具。
  2. 前記ボルトの前記塑性変形雄螺子部の前記螺子山の軸方向の位置ずれ量dbpと、前記ボルトの前記雄螺子部のピッチpが、0.003≦dbp/p≦0.05の関係であることを特徴とする請求項1に記載の締結具。
  3. 前記ナットの前記塑性変形雌螺子部の前記螺子山の軸方向の位置ずれ量dnpと、前記ナットの雌螺子部のピッチpが、それぞれ0.003≦dnp/p≦0.05の関係であることを特徴とする請求項1又は2に記載の締結具。
  4. 前記ボルトが、前記雄螺子部のボルト頭側又はボルト円筒部側の螺子山の頂部の一部が除去され前記ボルト頭側又は前記ボルト円筒部側に向かって螺子山外径が縮径したテーパ部と、前記テーパ部の最小径部から前記ボルト頭側又は前記ボルト円筒部側に向かって緩やかに円弧状に拡径して形成された不完全螺子除去部と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の締結具。
  5. 前記ナットの雌螺子部の少なくとも一部が前記ボルトの前記テーパ部と螺合して締結されることを特徴とする請求項4に記載の締結具。
  6. 前記ナットが、前記雌螺子部の全長の50%〜80%の範囲で前記ボルトの前記テーパ部と螺合されることを特徴とする請求項5に記載の締結具。
  7. 前記ナットの前記ボルト頭側又は前記ボルト円筒部側の端部の螺子山と嵌合する前記ボルトの前記テーパ部の螺子山の高さが、前記ナットの前記螺子山の高さの10%〜75%の高さであることを特徴とする請求項5又は6に記載の締結具。
  8. ボルト軸部の少なくとも先端部側に雄螺子部を転造又は切削により形成する雄螺子部形成工程と、前記雄螺子部の少なくとも一部の螺子山を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を軸方向に位置ずれさせた塑性変形雄螺子部を形成する雄螺子部塑性変形工程と、を備えたことを特徴とするボルトの製造方法。
  9. 前記ボルト軸部のボルト頭側又はボルト円筒部側から前記ボルト軸部の先端部側に向かって緩やかに円弧状に縮径する不完全螺子除去部と前記不完全螺子除去部の最小径部から前記ボルト軸部の先端部側に向かって螺子山外径が拡径するテーパ部とを形成する絞り加工工程と、を備えたことを特徴とする請求項8に記載のボルトの製造方法。
  10. 前記雄螺子部塑性変形工程が、前記雄螺子部の少なくとも一部の螺子山に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を備えたことを特徴とする請求項8又は9に記載のボルトの製造方法。
  11. 端面の螺子孔の周縁部の螺子山の少なくとも一部を塑性変形させて前記螺子山の頂部の位置を前記螺子孔の半径方向及び/又は軸方向に位置ずれさせた塑性変形雌螺子部を形成する雌螺子部塑性変形工程を備えたことを特徴とするナットの製造方法。
  12. 雌螺子部塑性変形工程が、前記端面の螺子孔の周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を備えたことを特徴とする請求項11に記載のナットの製造方法。
  13. ボルトにナットを螺合する螺合工程と、前記ナットの端面周辺で前記ボルトの雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又は前記ナットの螺子孔の周縁部の少なくとも一部を塑性変形させる塑性変形工程と、を備えたことを特徴とする締結具の締結方法。
  14. 前記塑性変形工程が、前記ボルトの前記雄螺子部の螺子山の少なくとも一部及び/又は前記ナットの前記螺子孔の前記周縁部に、投射材を衝突させるブラスト工程、高圧水を噴射する高圧水噴射工程、押圧具を押し当てる押圧工程のいずれか1以上を備えたことを特徴とする請求項13に記載の締結具の締結方法。
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