JP2011012521A - 杭頭結合構造及びその施工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る杭頭結合構造は、少なくとも杭頭部に鋼管部を有する杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造であって、鋼管杭1の杭頭部に設けたずれ止め5a、5bと、鋼管杭1の杭頭部に挿通され、かつずれ止め5bよりも下方に配置されたリング部材7と、下端部が屈曲されることによりU字状になったU字状部8を有し、U字状部8でリング部材7を挟むように保持すると共にU字状部7から立ち上がる上端部が杭頭部より上方に延出する定着鉄筋9と、定着鉄筋9とリング部材7を含む杭頭部に打設されたコンクリート11とを備えたことを特徴とするものである。
【選択図】 図1
Description
なお、杭と結合される鉄筋コンクリート構造物とは、杭と直接結合されるものが鉄筋コンクリート造であることを意味しており、その上部の構造物まで鉄筋コンクリートであることを意味するものではない。
従来の杭頭結合構造として、例えば鋼管杭の杭頭部内面にずれ止めを設置すると共に杭頭部内周部に中詰め補強筋を配置するという道路橋示方書に方法Bとして示された杭頭結合方法がある。しかし、この方法では杭本体の強度に対して、十分な杭頭結合部の強度を得ることは難しく、結合部の強度不足により基礎構造全体が不安定となってしまう懸念がある。
このような構造の場合、上部の鉄筋コンクリート構造物の配筋との干渉の危険が生ずること、また荷重伝達が不十分になること等の理由から外鋼管の上端を杭上端よりも上方に突出させるとことができない。
また、外鋼管の上端を杭上端よりも下方に位置させると荷重伝達が不十分になるので好ましくない。
このように先行文献1に記載のものでは外鋼管の上端位置を杭上端位置と一致させる必要があり、それ故に外鋼管は杭上端から下方に延びる所定の長さを有することが必須となる。
このように外鋼管が所定の長さを有することが必須となることから、先行文献1の鋼管杭頭部の接合構造では以下のような問題がある。
(a)杭が高止りした場合であっても、外鋼管の上端を杭上端に一致させなければならず、そのようにすると定着筋が上方に延出しすぎるため上部の鉄筋コンクリート構造物の配筋との取り合いに不具合が生ずる可能性がある。その場合に定着鉄筋の長さを調整することも考えられるが、そうすると荷重伝達が不十分になる可能性がある。
(b)他方、杭が低止りしたような場合には、外鋼管の上端を杭上端よりも上方に延出させることができず杭上端に一致させなければならないため、地盤の掘削をしなければならないと共に定着筋の長さが不足して荷重伝達が不十分になるという危険がある。
(c)また、杭芯ずれが生じた場合には、外鋼管と鋼管杭との間でずれを吸収することになるが、特許文献1の構造では定着部材が杭側に張り出しているため、外鋼管と鋼管杭との隙間でずれを吸収するだけの余裕がなく対応できない。また、杭芯ずれの他の態様として杭が斜めになったような場合には、外鋼管と杭との隙間が上下で不均等になり荷重伝達が不確実になるという危険もある。
このように、特許文献1のものでは、杭の施工誤差の影響を受けるという問題がある。
さらに、外鋼管が所定の長さを必要としていることから、全体の形状が大きくなり現場までの運搬や現場でのハンドリングが容易でないという問題もある。
また、杭の高止り、低止り、杭芯ずれなどの杭の施工誤差による施工の影響を受けず、製作が容易で、ハンドリングにも優れる杭頭結合構造及びその施工方法を提供することを目的としている。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm)
W≧t×s
但し、t:ずれ止め高さ(mm)
s:ずれ止めの段数
図1乃至図4に基づいて本発明の実施の形態1を説明する。
本発明の実施の形態1に係る杭頭結合構造は、図1乃至図4に示すように、鋼管杭1と鉄筋コンクリート構造物である基礎梁3とを結合する杭頭結合構造であって、鋼管杭1の杭頭部に設けた2段のずれ止め5a、5bと、鋼管杭1の杭頭部に挿通され、かつ下段のずれ止め5bよりも下方に配置されたリング部材7と、下端部が180°屈曲されることによりU字状になったU字状部8を有し、U字状部8でリング部材を挟むように保持すると共にU字状部8から立ち上がる上端部が杭頭部より上方に延出する定着鉄筋9と、定着鉄筋9とリング部材7を含む杭頭部に打設されたコンクリート11とを備えたことを特徴とするものである。
以下、各構成について詳細に説明する。
鋼管杭1の杭頭内部には、図2に示すように、コンクリート12を充填してもよいし、あるいはコンクリートを充填しないものでもよい。
なお本実施の形態では鋼管杭1を例に挙げているが、本発明が対象としている杭は鋼管杭1に限らず少なくとも杭頭部に鋼管を有していれば杭頭部以外の下部構造は鋼管でないような杭や、杭内部の全長に亘ってコンクリートを充填した杭であってもよい。例えば、杭頭部に鋼管を巻いた耐震場所打コンクリート杭(通称TB杭)や、高強度コンクリートを鋼管の中空部に注入し、遠心締固めによって製造した鋼管コンクリート杭(SC杭)などが挙げられる。
基礎梁3は、本発明の鉄筋コンクリート構造物に相当するものである。基礎梁3には下端筋14が配筋されている。
なお、本発明の鉄筋コンクリート構造物は、鋼管杭1と直接結合する部分を指している。したがって、鋼管杭1と直接結合される部分が鉄筋コンクリート構造物であれば、その上部構造物が例えば鉄骨造などの鉄筋コンクリート構造物ではない構造物であってもよい。
ずれ止め5a、5bは、杭頭部に設けられてコンクリート11を介してリング部材7との間で力の伝達を行なう部材である。ずれ止め5a、5bは、本実施の形態では、図1に示されるように、2段設けているがこれに限られるものではなく1段でもよく、あるいは3段以上でもよい。最上段のずれ止め5aは端板を杭径外に張り出させたものでもよいし、杭周面に固定したリング部材7でもよい。なお、本実施の形態における2段目のずれ止め5bはリング部材7を杭周面に固定したものである。
リング部材7は、鋼管杭1の杭頭部に挿通され、ずれ止め5bよりも下方に配置されてコンクリート11を介してずれ止め5a、5bとの間で力の伝達を行なう部材である。
リング部材7はその上面が支圧部として機能し、ずれ止め5a、5bとの間で応力伝達する。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm)
W≧t×s
但し、t:ずれ止め高さ(mm)
s:ずれ止めの段数
なお、リング部材7の径を大きくすることは可能であるが、その分、リング部材7の設置深さを深くする必要があり、定着鉄筋長やコンクリート打設量が大きくなって不経済になることが考えられる。そこで、リング部材7の内径Dinは杭径φの2倍程度以内とするのが望ましい。
定着鉄筋9はその下端部が180°屈曲されることによりU字状になったU字状部8を有し、U字状部8でリング部材7を挟むように保持している。そして、U字状部8から立ち上がる上端部が杭頭部より上方に延出している。定着鉄筋9はリング部材7の周方向に所定の間隔で複数本(本例では12本)配置されている。
また、本実施の形態のリング部材7はその高さが特許文献1に記載の外鋼管よりも著しく小さいので、杭の高止り、低止りなどの杭の施工誤差に対して、より自由な位置にリング部材7を配置して対処することができ、杭の施工誤差の影響を受けない。
この点、特許文献1に示した外鋼管を用いるものでも外鋼管の径を大きくすることは可能ではあるが、外鋼管が所定の長さを必要としていることから外鋼管の径を大きくすると外鋼管が大きくなり、運搬やハンドリングが大変になるが、本実施の形態では上下方向に大きな長さを必要としないリング部材7を用いているのでそのようなことがない。
さらにまた、本実施の形態においては、定着鉄筋9のU字状部8にリング部材7を保持させる構造であるため、現場溶接やボルト接合などの作業が不要となり、施工が簡略化できると共に、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生しないので、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」ともなっている。
外配筋径D1(図1参照)=1640mm
内配筋径D2(図1参照)=1500mm
鋼管杭径φ=1000mm
リング部材の外径:1600mm、内径:1520mm、断面形状:120mm(高さ)×40mm(幅)
定着鉄筋:折曲げ鉄筋D22-14本
図5、図6は本発明の実施の形態2に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1、図2と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。なお、図6は図5の矢視B−B線に沿う断面図であって、鋼管杭1周囲のコンクリート11を省略して示した図である。
本実施の形態においては、杭径方向に所定間隔を離して並列配置された2本で一対となった定着鉄筋9の下端部を支圧板として機能するドーナツ状板15によって連結することによって連結部16を形成したものである。定着鉄筋9の下端部にはねじ部17が形成され、ねじ部17がドーナツ状板15に形成された貫通孔に貫通されて定着ナット19によって定着されている。
ドーナツ状板15が周方向に連続しているので、ドーナツ状板15がコンクリート型枠としても機能し、コンクリート打設時の型枠を簡略化できると共にずれ止め5a、5bとリング部材7間の応力伝達をより十分なものにすることができる。
図8、図9は本発明の実施の形態3に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1、図2と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。なお、図9は図8の矢視C−C線に沿う断面図であって、鋼管杭1周囲のコンクリート11を省略して示した図である。
本実施の形態においては、リング部材7の上面に複数箇所に亘って支圧板23を設置したものである。
支圧板23を設置することによって基礎梁3から鋼管杭1への荷重伝達能力を高めることができる。
[実施の形態4]
図10は本発明の実施の形態4に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態においては、リング部材7を囲むように杭頭部にフープ筋25を設置したものである。フープ筋25を設置することにより、基礎梁3から鋼管杭1への荷重伝達能力を高めることができる。
図11は本発明の実施の形態5に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態においては、リング部材7を囲むように杭頭部に鋼管27を設置したものである。鋼管27を設置することにより、コンクリート打設時の型枠として使用できると共にコンクリート打設後もコンクリート拘束部材として利用でき、基礎梁3から鋼管杭1への荷重伝達能力を高めることができる。
図12、図13は図1に示した杭頭結合構造の施工方法の説明図である。以下、図12、図13に基づいて本実施の形態を説明する。
鋼管杭1を地盤29に打設する(図12(a))。次に、屈曲した定着鉄筋9のU字状部8によってリング部材7を保持し、リング部材7を杭頭部の所定位置に配置する(図12(b))。所定位置とは、実施の形態1で説明したように、リング部材7の上端面から2段目のずれ止め5bの下端位置までの距離H(mm)が下式を満たすような位置である。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm)
3 基礎梁
5a、5b ずれ止め
7 リング部材
8 U字状部
9 定着鉄筋
11 コンクリート
12 コンクリート
14 下端筋
15 ドーナツ状板
16 連結部
17 ねじ部
19 定着ナット
21 支圧板
23 支圧板
25 フープ筋
27 鋼管
29 地盤
31 型枠
Claims (6)
- 少なくとも杭頭部に鋼管部を有する杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造であって、
前記鋼管部に設けたずれ止めと、前記鋼管部に挿通され、かつ前記ずれ止めよりも下方に配置されたリング部材と、下端部が屈曲されることによりU字状になったU字状部を有し、該U字状部で前記リング部材を挟むように保持すると共に前記U字状部から立ち上がる上端部が前記杭頭部より上方に延出する定着鉄筋と、該定着鉄筋と前記リング部材を含む前記杭頭部に打設されたコンクリートとを備えたことを特徴とする杭頭結合構造。 - 少なくとも杭頭部に鋼管部を有する杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造であって、
前記鋼管部に設けたずれ止めと、前記鋼管部に挿通され、かつ前記ずれ止めよりも下方に配置されたリング部材と、所定間隔を離して並列配置された複数の鉄筋の下端部を支圧板を介して連結してなる連結部を有し、該連結部で前記リング部材を保持すると共に前記連結部から立ち上がる上端部が前記杭頭部より上方に延出する定着鉄筋と、該定着鉄筋と前記リング部材を含む前記杭頭部に打設されたコンクリートとを備えたことを特徴とする杭頭結合構造。 - 前記リング部材の上端面から最下段に設置された前記ずれ止めの下端位置までの距離H(mm)が下式を満たすように前記リング部材が配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭頭結合構造。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm) - 前記リング部材の幅W(mm)が下式を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の杭頭結合構造。
W≧t×s
但し、t:ずれ止め高さ(mm)
s:ずれ止めの段数 - 前記リング部材の中心と前記鋼管杭の杭芯が一致していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の杭頭結合構造。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の杭頭結合構造の施工方法であって、
杭を打設する杭打設工程と、複数の定着鉄筋のU字状部に前記リング部材を保持させるリング部材保持工程と、複数の定着鉄筋に保持された前記リング部材を前記鋼管部に挿通して前記ずれ止めよりも下方になるようにリング部材を設置するリング部材設置工程と、杭頭部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程とを有することを特徴とする杭頭結合構造の施工方法。
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