以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の実施の形態の理解を容易にするために、本発明の各実施の形態において具体例として想定する出力装置は、CMYK、CMYKR、CMYKRG、CMYKRGBなどの4色から7色(C=シアン、M=マゼンタ、Y=イエロー、K=墨(ブラック)、R=レッド、G=グリーン、B=ブルー)の色材を用いて画像を出力することとする。もちろん、他にもCMYKOG(O=オレンジ)やCMYKOV(V=バイオレット)などの色材を用いる出力装置であってもよい。また、必要に応じてCMYを主要色と呼び、この主要色以外のKRGB(OV)などは、色域拡大や粒状性を向上させるための特色と呼ぶことにする。もちろん出力装置によってはRGBを主要色とし、他の色を特色とするなど、この例に限られるものではない。
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図中、11は条件選択部、12は変更部、13は数調整部、14は設定部である。条件選択部11は、M色を使用して色を出力する出力装置で目標色が得られるM個の色成分の値の組み合わせのうち、M個の色成分の値の総和が最小となるM個の色成分の値の組み合わせであってあらかじめ設定されている制限を満たす組み合わせを選択する。ここで制限は、例えばM個の色成分の値の総和が、出力装置に課せられた総量制限値以内という制限、あるいは、M個の色成分のそれぞれの値が出力装置に課せられた色成分毎の単色制限値以内という制限などがある。総和が最小となるM個の色成分の値の組み合わせは、後述するように目標色が得られるM個の色成分の値の組み合わせのうち、特色の値を最大とした場合の組み合わせである。そして、その場合が最も広い色再現域に目標色を設定した場合に相当する。そのような組み合わせのうちから、条件を満たしていないものを削除すればよい。得られた組み合わせによって得られる色域は、制限を満たす最も広い色域を示す。
変更部12は、条件選択部11で選択したM個の色成分の値の組み合わせについて制限を満たす範囲内で変更し、色票色となるM個の色成分の値の組み合わせを取得する。条件選択部11では目標色について特色を最大限に使用する組み合わせを求めているので、この変更部12では、特色成分を減らして他の成分を増やす変更を行うことになる。変更のための規則は予め決めておけばよいが、M個の色成分に補色の関係にある色成分が含まれている場合には、特色を変更することにより当該特色と補色の関係にある色成分についても、色域外郭から内部に変化するに従って値が大きくなるように変更するとよい。補色とは、一般的には合わせるとグレーとなる2つの色を言い、例えばCとR(O)、MとG、YとB(V)が補色となる。なお、予め設定されている色成分を保存するために、当該色成分の値をいくつかに設定し、それに伴って他の色成分を変更したM個の色成分の値の組み合わせを複数取得してもよい。このように複数の組み合わせを取得するか否かは、設定部14からの指示に従いように構成するとよい。
数調整部13は、得られているM個の色成分の値の組み合わせの数を、色領域に応じて増減する。変更部12で変更したM個の色成分の組み合わせ、あるいはさらに条件選択部11で選択して変更部12で変更しなかったM個の色成分の値の組み合わせを含め、これらの組み合わせにより得られる色を、例えばLAB色空間などの装置独立の色空間に変換してみると、色が集中し、あるいはほとんど存在しないなど、粗密にばらつきが生じている場合がある。そのため、この数調整部13では色が集中している色領域では組み合わせを削除し、まばらな色領域では組み合わせを増やす。増減する領域は、装置独立の色空間における色領域ごとに判断したり、あるいは設定部14からの指示に従って行ってもよい。なお、組み合わせの数を調整しなくてよい場合には、この数調整部13を設けずに構成してもよい。
設定部14は、数調整部13に対してM個の色成分の値の組み合わせの数を増減する色領域を設定する。また、変更部12でM個の色成分の値の組み合わせを複数取得するか否かについても設定する。これらの設定は、利用者あるいは外部機器からの指示を受けるか、あるいは予め指定されていてもよい。予め変更部12や数調整部13の動作を固定するのであれば、この設定部14を設けずに構成してもよい。
上述の本発明の第1の実施の形態の構成について、さらに説明する。本発明の第1の実施の形態における基本的な考え方は、出力装置に課せられた制限を満たす最大の色域でM個の色成分の値の組み合わせを求めておいて、それらの組み合わせから、制限を満たす範囲内でM個の色成分の値の組み合わせを変更するものである。M個の色成分の値の組み合わせが存在しない色域では、その組み合わせを用いた色票色と測色値との対が得られず、従って色変換の際にもそのような色域は使用されなくなってしまう。そのため、制限を満たす最大の色域の隅々までM個の色成分の値の組み合わせが存在しているとよく、そのようなM個の色成分の値の組み合わせを求める。
出力装置によって再現される色の範囲を色域と呼んでいるが、色域内のある色に着目し、その色(目標色)をM色の色材で再現する場合、M色の色材量の組み合わせは複数存在する。図2は、注目色を再現するM色の組み合わせの一例の説明図である。ここではCMYKの4色を用いるものとし、簡単のためにUCR(Under Color Removal)を用いてCMYの各色をKに置き換える場合の例を示している。図2(A)ではUCR率が0%の場合を、図2(B)は50%の場合を、図2(C)は100%の場合を、それぞれ示している。ここでは3つの場合しか示していないが、UCR率を制御することにより、様々なCMYKの値の組み合わせが作成される。ここで、4色の値の総和を考えると、図2(A)に示したKを最小とした場合に総和が最も大きくなり、図2(C)に示したKを最大とした場合に総和が最も小さくなる。
図3は、出力装置がCMYKを用いる場合のL* a* b* 色空間における色域の一例の説明図である。例えば、出力装置がCMYKの色を用いる場合、出力装置から出力される色の範囲をL* a* b* 色空間で示すと、図3において太線で示すようになる。図2に示したように、ある目標色を出力装置に再現させるのに、Kの値をどの程度にするかは色再現の設計によるものであり、最大限にKを使用してもよいし、Kの使用を最小限に抑えてもよい。例えばKを最大限に使用した場合の色域外郭の変化を図3(A)に示し、Kを最小限に抑えた場合の色域外郭の変化を図3(B)に示している。例えば図3(A)においてK=50と記載した色域外郭は、CMYのいずれかが0%であって、Kは50%までしか加えられない色を示している。すなわち、Kを最大限に使用するとしても、これよりL* が大きい色についてはKは50%より少ない量しか使用できない。逆に、例えば図3(B)においてK=50と記載した色域外郭はCMYのいずれかが100%であって、最低でもKを50%まで加えないと色が再現されないことを示している。すなわち、Kを最小限に抑えるにしても、これよりL* が小さい色についてはさらにKを増やす必要がある。
図3(A)と図3(B)に示した色域外郭(太線)の形状を参照してわかるように、制限が設けられていない状態では、Kを最大限に使用しても、Kを最小限に抑えたとしても、再現される色の範囲は変わらない。従って、色域の内部においては、最大限にKを使用した場合のCMYKの組み合わせからKを最小限に抑えた場合のCMYKの組み合わせの範囲内で、CMYKの組み合わせを変更してよいことを示している。そして、この色域の外郭においては、最大限にKを使用した場合のKの値Kmaxと、最小限にKを抑えた場合のKの値Kminとは、Kmax=Kminの関係にある。
図2、図3では制限を設けない場合について説明したが、出力装置が使用する色成分の値に、例えば総量制限が課せられている場合について説明する。図4は、出力装置に総量制限が課せられている場合のL* a* b* 色空間における色域の一例の説明図である。図4でも、例えば出力装置がCMYKの色を用いるものとして、出力装置から出力される色の範囲をL* a* b* 色空間で示している。図4(A)はKを最大限に使用した場合の色域外郭の変化を示し、図4(B)はKを最小限に抑えた場合の色域外郭の変化を示している。図2でも説明したように、Kを最大限に使用する場合には、Kを最小限に抑えた場合に比べてCMYKの総和は小さくなる。そのため、図4(A)と図4(B)を比較して分かるように、Kを最大限に使用する場合の方が、Kを最小限に抑えた場合よりもL* 値が小さい色についても色域内に含まれることになる。Kを最大と最小の間に設定する場合の色域外郭は、図4(A)と図4(B)に示す色域外郭の間に存在し、Kを最大限に使用する場合に、色域は最も広くなる。
このように、出力装置に総量制限が課せられている場合には、Kを最大限に使用すると最大の広がりを持つ色域が確保されることが分かる。従って、Kを最大限に使用し、CMYKの値の総和が最小となるCMYKの値の組み合わせであって、そのCMYKの値の組み合わせが総量制限を満たすCMYKの値の組み合わせを求めてゆけば、総量制限を満たす最も広い色域においてCMYKの値の組み合わせが求まることになる。このような見地から、条件選択部11では、M個の色成分の値の総和が最小となるM個の色成分の値の組み合わせであって、総量制限を満たす組み合わせを選択している。
上述の説明では、出力装置に課せられている制限として総量制限の場合を示した。制限は総量制限に限られるものではなく、種々の制限が課せられる場合があり、そのような場合にも対応している。図5は、出力装置に単色制限が課せられている場合のL* a* b* 色空間における色域の一例の説明図である。例えば出力装置がCMYKの色を用いるものとして、それぞれの色成分が80%以内という単色制限が課せられた場合の色域をL* a* b* 色空間で示している。ここではL* の高明度側から見た色域を示している。
このような単色制限が出力装置に課せられている場合でも、それぞれの色成分が単色制限を満たす範囲内で、目標色を再現するCMYKの値の組み合わせのうち総和が最小となる組み合わせを選択してゆけば、単色制限を満たす最も広い色域が確保されることになる。もちろん、単色制限と総量制限の両方が課せられる場合や、その他の制限が課せられている場合についても、目標色を再現するCMYKの値の組み合わせのうち総和が最小となる組み合わせであって、制限を満たす組み合わせを選択すればよい。このようにして選択されたCMYKの値の組み合わせは、制限を満たす最も広い色域内の色を示し、制限を満たして確実に再現される。
上述のように、条件選択部11で選択されたCMYKの値の組み合わせは、制限を満たして再現されるが、当該組み合わせにより再現される色を目標色とした場合、その目標色に対するCMYKの値の組み合わせは他にも存在する場合がある。変更部12では、選択されたCMYKの値の組み合わせについて、制限を満たす範囲内で変更し、色票色となるM個の色成分の値の組み合わせを取得する。図6は、変更部における色成分の値の組み合わせを変更した場合の一例の説明図である。例えば上述の総量制限が課せられている場合、総和が最小となるCMYKの値の組み合わせから、総和が最大又は総量制限値となるCMYKの値の組み合わせまでの間でCMYKの値の組み合わせが存在することになる。この範囲内でCMYKの値を変更すればよい。例えば図6(A)に示す例は、総和が最小となるCMYKの値の組み合わせを示しており、この組み合わせをそのまま変更後の組み合わせとしてもよい。また図6(C)に示す例は、総和が総量制限値となるCMYKの値の組み合わせを示しており、この組み合わせに変更してもよい。あるいは図6(B)に示す例のように、総量が最小と総量制限値との中間のCMYKの組み合わせに変更してもよい。
図6(D)には総和が最大となるCMYKの値の組み合わせを示しており、この例では総量制限値を超えているものとしている。このような場合には、総和が総量制限値を超え、総和が最大となるまでの間のCMYKの値の組み合わせには変更せず、総和が最小から総量制限値までの間でCMYKの値の組み合わせを変更すればよい。また、総和が最大の場合でも総量制限値を超えない場合には、総和が最小から最大までの間でCMYKの組み合わせを制御すればよい。もちろん、例えば単色制限や他の制限が課せられている場合には、その制限の範囲内でCMYKの組み合わせを制御することになる。
上述のようにCMYKの値の組み合わせをある範囲内で変更する方法は、Kをどのように使用するかを示す設計方針に従えばよい。例えば、Kを最大限に使用する設計方針であれば、CMYKの総和が最小となるCMYKの値の組み合わせを変更後の組み合わせとすればよい。また、Kを最小限に抑える設計方針であれば、CMYKの総和が最大又は総量制限などの制限値となるCMYKの値の組み合わせとすればよい。このほかにも、例えば明度が高くなるに従ってKの割合を少なくする設計方針、彩度が高くなるに従ってKの割合を少なくする設計方針など、種々の設計方針が考えられる。色域が設定されているので、色域の内部及び外郭の色であれば、CMYKの値の総和が最小となる組み合わせから、総和が最大または制限値となるCMYKの値の組み合わせまでの範囲で様々な設計方針に従ってCMYKの値の組み合わせを変更すればよい。
上述の説明では基本色をCMYとし、特色としてKを用いた場合について説明した。ここでは、さらにK以外の特色も用いた場合について説明する。上述のように、各色成分の総和が最小となる色域を生成することで、最大の色域が得られる。従って条件選択部11では、さらに特色が用いられた場合でも、特色の色成分の値が最大となる色成分の組み合わせを求めることにより色成分の値の総和を最小とし、これによって最大の色域を求める。
図7は、特色を最大として総和が最小となるM色の組み合わせを求める一例の説明図である。ここではCMYKRの5色を用いるものとし、簡単のためにUCRの手法を用いてCMYの各色をK及びRに置き換える場合の例を示している。ここで、KはCMYで表現される色域の低明度側の色域拡大を行うための特色であり、RはMYで表現される領域の彩度の拡大を行うための特色である。よって、KとRの両方を用いることで、低明度側及び赤の方向について彩度側への色域の拡大が図られることになる。
図7(A)には、ある目標色を表すCMYKRの一例を示している。図7(B)では、CMYを等量ずつ減らしてその分だけKを増やした場合を示している。図7(C)は、図7(B)の組み合わせから、MYを等量ずつ減らしてその分だけRを増やした場合を示している。この例では図7(C)に示したCMYKRの値の組み合わせの場合が、特色であるK及びRが最大となる組み合わせであり、CMYKRの値の総和が最小となる。
図8は、K以外の特色を用いる場合の最大色域の一例の説明図である。まず図8(A)に示すように、Kを最大限に使用するCMYK(R=0)4色色域を生成する。この色域は上述の図3(A)で示した色域である。
次に、C=0の領域に対してR=100とするCMYKR(C=0のときR=100)の5色色域を生成する。図8(A)で示した4色色域のうち、C=0としても再現される色の領域を、図8(B)において斜線を付して示している。この領域の色は、図8(A)の4色色域を求めた際にはR=0としている。このC=0の領域の色を示すCMYKR(C=0,R=0)の組み合わせについて、Rを0から100に変更する。これにより得られるCMYKR(C=0)の組み合わせにより再現される色の領域は、図8(C)において斜線を付した領域となる。
そして、図8(B)に示したR=0から、図8(C)に示したR=100までの間で、Rを変化させてゆく。この状態を図8(D)に示している。例えば図8(C)に示したR=100の立体(図8(E)参照)の外郭からRを減らして行けばよい。あるいは、図8(B)に示したC=0、R=0の色域の外郭からRを増やして行けばよい。このようにして、図8(F)に示すCMYKRの5色色域(KとRを最大限に使用する色域)が生成される。このKとRを最大限に使用する色域は、CMYKRの5色を使用する場合の色成分の総和が最小となる色域である。
図8で求めた色域は各種の制限を考慮していない。制限が課せられている場合には、得られた色域から制限を満たしていない部分を削除すればよい。例えば色成分の総和に制限(総量制限)が課せられている場合には、KとRを最大限に使用した場合のCMYKRの組み合わせの総和が総量制限値を満たしているか否かを判断し、満たしていないCMYKRの組み合わせを削除して行けばよい。
図9は、KとRを最大限に使用するCMYKRの値の組み合わせを総量制限により選択する処理の一例の説明図、図10は、CMYKRによる総量制限を満たす最大の色域の一例の説明図である。図9に示す例では、総和が280%以内という制限を付した場合を示している。条件選択部11は、KとRを最大限に使用するCMYKRの値の組み合わせのそれぞれについて、総和が制限を満たすか否かを判断し、抽出する組み合わせを選択している。例えば(C,M,Y,K,R)=(0,80,50,20,10)の組み合わせの場合は、総和が160%となるため選択する。また、(C,M,Y,K,R)=(0,90,80,90,100)の組み合わせの場合は、総和が360%となるため選択しない。このように、KとRを最大限に使用するCMYKRの値の組み合わせのうち、総和の制限を満たすCMYKRの組み合わせを選択する。選択された組み合わせは、設定されている総和の制限を満たす最大の色域に配された目標色に対応するものである。選択された組み合わせに対応する色をL* a* b* 色空間で示すと、例えば図10において斜線を付した色域となる。なお、斜線を付した色域の外側の実線で示した色域が、図8(F)で示した総和の制限を設けない場合の色域である。
他の制限が課せられている場合についても、KとRを最大限に使用するCMYKRの組み合わせのうちから制限を満たすものを抽出することにより、制限を満たす最大の色域が得られる。
図11は、CMYKRGBを使用した場合の最大の色域の一例の説明図である。図8ではCMYKRの5色で説明を行ったが、例えばCMYKRGBを使用する場合には、RとともにGやBにより拡張された色域に存在する組み合わせも選択する。R、G、Bが互いに重なることはなく、従ってCMYKRGBの7色を扱う場合は、CMYKR、CMYKG、CMYKBと分けて考えればよい。Rに対する手法をそのまま用い、GについてはM=0の領域についてGを0から100まで変化させて拡張された色域を取得すればよく、BについてはY=0の領域についてBを0から100まで変化させて拡張された色域を取得すればよい。このようにして得られた色域を図11に示している。図11では、L* a* b* 色空間において、L* の値が大きい側から見た色域の外郭を示している。
もちろん、CMYKRやCMYKRGBに限らず、CMYKRGや他の特色を使用する場合についても、それぞれの特色について上述したRに対する手法を用いて色域を設定し、制限を満たす色域内の組み合わせを選択すればよい。
上述のようにして条件選択部11で選択された組み合わせは、制限を満たして再現されるが、当該組み合わせにより再現される色を目標色とした場合、その目標色に対する組み合わせは他にも存在する場合がある。変更部12では、選択されたCMYKの値の組み合わせについて、制限を満たす範囲内で変更し、色票色となるM個の色成分の値の組み合わせを取得する。
図12は、色域内でのCMYKRの組み合わせの範囲の一例の説明図である。例えば制限が課せられていない場合には、色域内のある色を再現するCMYKRの組み合わせは、総和が最小の組み合わせから総和が最大の組み合わせまでの間で選択すればよい。また、制限が課せられている場合も、総和が最小の組み合わせから制限の上限となる組み合わせまでの間で選択すればよい。図12では制限が課せられていない場合を示しており、図12(A)ではKとRを最大限に使用する場合を示している。KとRに着目すると、色域内ではKを使用することになり、C=0で再現される色の領域内ではKとRを使用することになる。図12(B)ではKとRを最小限に使用する場合を示しており、CMYで再現される色の領域についてはKもRも使用せず、Kを使用しなければ再現されない色の領域、及び、KとRを使用しなければ再現されない色の領域が存在する。KやRを用いない場合には、その代わりにKであればCMYの使用量が、RであればMYの使用量が、それぞれ増加することになり、図12(B)の場合に総和が最大となる。もちろん、図12(A)に示した総和が最小の場合と図12(B)に示した総和が最大の場合の中間の総和となる組み合わせも存在する。このように、条件選択部11で選択したCMYKRの値の組み合わせに対応する目標色を再現するためのCMYKRの組み合わせは他にも存在する場合があり、変更部12でCMYKRの組み合わせを変更する。
具体例として、CMYKRの値の総和が最小となる組み合わせの1つを
(C,M,Y,K,R)=(0,0,50,30,30)
とする。総和が最小となる組み合わせでは、CMYのいずれかが少なくとも0である。このCMYKRの値の組み合わせについて、UCRの原理を用い、まず、RをYMで置き換えることにより、
(C,M,Y,K,R)=(0,30,80,30,0)
となる。さらに、KをCMYで置き換えることにより、
(C,M,Y,K,R)=(20,50,100,10,0)
となる。以上のようにして得られた、総和が最小となるCMYKの値の組み合わせである(C,M,Y,K,R)=(0,0,50,30,30)と、総和が最大となるCMYKの値の組み合わせである(C,M,Y,K,R)=(20,50,100,10,0)を上下限とする範囲で、CMYKRの値を変更すればよい。
変更方法としては、総和が最小となる変更方法、総和が最大(制限が課せられている場合には制限を満たす)となる変更方法、グレー軸に近づくにつれてKを増やし、彩度が高いほどKを減らす変更方法など、種々の変更方法を適用すればよい。RGBなどの特色で彩度を高める色域拡大では、彩度が高くなるに従い、特色を増やすように変更するとよい。また、特色を減らす場合には当該特色と補色の関係にある色成分についても増やすと、階調の連続性がよくなる。
どのように変更するにしろ、KとRの値は、総和が最小となる場合のKR(KとRが最大)と、総和が最大(又は制限値)となる場合のKR(KとRが最小)とを上下限とする範囲内の値のいずれかとする。変更の際には、もちろん、KとRのどちらを先に決めるかによって、後に決める方は制限される。どちらを優先させるにしても、総和が最小の組み合わせと総和が最大の組み合わせとを上下限とする範囲で各色成分の値を変更しなければならない。
図13は、CMYKRを使用する場合のK及びRの変更方法の一例の説明図である。この例では、Rが最小となるように制御する場合の一例を示している。色域設定部31で設定された色域において、Kを使用するがRを使用しない色の領域と、K及びRをともに使用する色の領域に、それぞれ斜線を付してある。図13(A)ではKを最大限に使用する場合であり、図13(B)はKを最小限に抑えた場合である。この例ではRを最小とすると決定しているので、その条件の下でKが取り得る範囲でKを制御することになる。
あるいは、Rが最大となるように先に決め、その条件の下でKが取り得る範囲でKを制御したり、逆にKが最大あるいは最小となるように先に決め、その条件の下でRが取り得る範囲でRを制御してもよい。もちろん、K、Rとも、最大や最小に限らず、その間の値となるように一方を制御し、その条件の下で他方を制御してもよいことは言うまでもない。
また、CMYKRを用いる場合、RとCを変更する際にRとCが共存する色領域を設けておくとよい。その領域では、例えばRの増加に伴いCを減少させて行く。これにより、RとCの変化による色の連続性が保証される。
なお、例えばCMYKR以外の場合についても、上述の変更方法を適用すればよい。例えばCMYKRGBを使用する場合には図11に示した色域が得られている。上述のようにR、G、Bは独立させて考えればよいので、図11に示した色域について、上述のKとRの場合の手法を用い、KとG、KとBについて変更すればよい。また、図12、図13では出力装置に課せられている制限については考慮していないが、制限が課せられている場合には、図9,図10で説明した制限が課せられている場合の色域を使用し、制御する範囲についても当該制限を満たす範囲として制御すればよい。
上述のように変更部12でM個の色成分の値の組み合わせを得る場合に、異なる変更を行った複数の組み合わせを得てもよい。例えばKやRを保持する色変換を行うための色票色を得ようとする場合には、保持されるKやRの値に対応する組み合わせを用意しておくとよい。そのために、KやRなど、予め設定されている色成分について、いくつかの値とした場合のM個の色成分の値の組み合わせを求めておくとよい。
図14は、機器独立の色空間においてM個の色成分の値の組み合わせが示す色の分布の一例の説明図である。上述のようにして変更部12で得られたM個の色成分の値の組み合わせ(条件選択部11で得られた組み合わせを変更しなかった場合を含め)がどのような色であるかを、例えばLAB色空間などの機器独立の色空間において調べると、色領域によって集中している領域やまばらな領域が存在する。図14ではLAB色空間においてM個の色成分の値の組み合わせが示す色を白丸で示している。図14を参照して分かるように、白丸が集中している色領域とまばらな色領域が存在することが分かる。M個の色成分の値の組み合わせがまばらな色領域では、色票色を用いて色変換を行う際に、変換誤差が大きくなる。そのため数調整部13では、基本的には集中している色領域では組み合わせを減らし、まばらな色領域では組み合わせを増やす。
図15は、数調整部13の動作の具体例の説明図である。図15(A)には変更部12から得たCMYKRの値の組み合わせを示しており、図15(B)には数調整部13で組み合わせの数を調整した結果の一例を示している。ここでは、(C、M、Y、K、R)=(0,80,50,20,10)の組み合わせについて、さらに(0.78,48,18,8)と(2,82,52,22,12)の2つの組み合わせを追加している。また、(C、M、Y、K、R)=(0,50,80,80,70)の組み合わせについて、さらに(0.48,78,78,68)と(2,52,82,82,72)の2つの組み合わせを追加している。この例ではCMYKRの値の組み合わせを追加する例を示しているが、上述のように色が集中している色領域では、組み合わせを削除してもよい。
このようにして得られたM個の色成分の値の組み合わせをそれぞれ色票色とすればよい。得られた色票色は、例えば対応する出力装置で出力し、出力された色を測色して色票色と測色値の対を得て、その対をベースデータとして色変換を行うための係数を求めて色変換を行えばよい。
図16は、設定部に利用者が設定を行うための表示画面の一例の説明図である。上述のように、変更部12である色成分について変更した複数の組み合わせを取得する場合や、数調整部13で組み合わせの数を増減する色領域を設定する場合などの機能を使用する際には、設定部14で設定を行う。その際の表示画面の一例を図16に示している。
図16に示した例では、設定項目21、22,23は択一的に選択する項目としており、設定項目23が選択された場合、設定項目24のそれぞれについて設定するようになっている。設定項目21は出力装置の特性に応じた色票色を生成する場合の設定項目である。この設定項目21が選択されている場合には、条件選択部11で選択し、変更部12で必要に応じて変更したM個の色成分の値の組み合わせを色票色とする。あるいはさらに数調整部13で組み合わせの数を調整してもよい。図16にはsRGBからの変換を例示しているが、LAB色空間やCMYK色空間などの他の色空間からの変換でもよく、ここでは変換対象の色信号の色成分を保存せずに色票色を生成することを示している。
設定項目22は色成分の値を保存した色変換を行うための色票色を生成する場合の設定項目である。この設定項目22が選択されている場合には、変更部12である色成分について変更した組み合わせを複数作成する。例えばCMYKのうちのKを保存する場合には、条件選択部11で選択されたそれぞれの組み合わせについて、Kを最大の値から条件を満たす最小の値までのうちのいくつかに設定した複数の組み合わせを求める。もちろんこれらの組み合わせは、ある色領域に集中するが、数調整部13の削除の対象とはしない。生成した色票色を用いて色変換を行う際には、保存すべき色成分の値としてどのような値が与えられるかは分からないが、条件を満たす範囲内でいくつかの色票色を作成していることから、当該色成分の値がを保存された色変換が行われることになる。
設定項目23は、装置独立の色空間におけるM個の色成分の値の組み合わせに対応する色の粗密を調整する場合の設定項目である。この例では、設定項目24により組み合わせを増やす色領域を選択する。ここでは、RまたはGを使用する色領域について組み合わせの数を増やす設定、Kを使用する色領域について組み合わせの数を増やす設定、ランダムに組み合わせの数を増やす設定が用意されている。いずれか1つ、またはいずれか2つ、あるいは3つとも選択してもかまわない。それぞれ設定された色領域について、数調整部13が組み合わせを増やす処理を行う。なお、ランダムの場合、装置独立の色空間における色票色の偏在を認識する処理を行い、まばらな色領域に組み合わせを増やす最適化の処理を行ってもよい。また、数調整部13がこの処理に固定して行う場合には、設定項目23を設けない構成でもよい。
設定部14は、このような設定項目21、22,23(及び24)の設定を変更部12,数調整部13に通知し、それぞれの設定に応じた色票色の生成処理を行う。
もちろん図16に示した表示画面は一例であって、さまざまな設定方法を適用してよい。また、設定する項目も、この例に限られるものではない。
図17は、本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図中、15は色変換試行部である。上述の第1の実施の形態との違いについて主に説明する。この第2の実施の形態では、数調整部13がM個の色成分の値の組み合わせを増減する際に、増減させる組み合わせを変更する。数調整部13で組み合わせの数を増減させてできた複数の組み合わせを組み合わせ集合とし、この組み合わせ集合を複数作成することになる。例えば図16の設定項目24に示した3つのパターンのそれぞれについて組み合わせ集合を作成したり、まばらな色領域と見なす程度を変更して組み合わせを増加させたいくつかの組み合わせ集合を作成するなど、種々の方法を適用して複数の組み合わせ集合を作成すればよい。
ここでは数調整部13で組み合わせを増減する手法を変更して複数の組み合わせ集合を作成するものとしているが、例えば変更部12で総量最小の組み合わせから各色成分の値を変更する際に、変更する手法を変えて複数の組み合わせを生成し、それぞれ異なる組み合わせ集合を作成してもよい。
色変換試行部15は、数調整部14で作成された複数の組み合わせ集合と、それぞれの組み合わせ集合に対応する与えられた測色値集合とから構成される色変換モデルによる色変換を擬似的に行って、色変換の指標を出力する。色変換の指標としては、平均色差や最大色差などの統計値を出力するとよい。例えばこのような指標を色領域ごとに求めたり、ある特定の色についての色差を求めるなど、種々の指標を算出し、出力してもよい。
この色変換試行部15が出力する色変換の指標をもとに、複数の組み合わせ集合からいずれかを選択すればよい。あるいは、予め設定されている方法により、いずれかの組み合わせ集合を選択して出力するように構成してもよい。例えば、平均色差が最小の組み合わせ集合を出力する、平均色差と最大色差を用いた関数値から最適な組み合わせ集合を選択して出力する、などとしてもよい。
第2の実施の形態における動作の一例について、簡単に説明する。それぞれの組み合わせ集合を求める処理については、第1の実施の形態で説明した処理を行う。その際に、この例では数調整部13で増減する組み合わせを変更し、複数の組み合わせ集合を作成する。それぞれの組み合わせ集合がどのようなものであるかが分かっていれば、そのままいずれかを選択して出力させてもよい。しかし、それぞれの組み合わせ集合がどのような特性を有しているかが分からない場合もある。その場合には、色変換試行部15により色変換を擬似的に行って指標を得ればよい。
色変換試行部15で色変換を擬似的に行うに当たり、それぞれの組み合わせ集合と、実際にそれぞれの組み合わせ集合を出力装置で出力して測色した測色値の集合とを対応付ける必要がある。図18は、組み合わせ集合と測色値との対応付けを行うための表示画面の一例の説明図である。図18では組み合わせ集合をパッチパターンと記している。ここでは3つの組み合わせ集合を作成している場合を示しており、それぞれパターン1、パターン2,パターン3としている。それぞれの組み合わせ集合を出力装置で出力して測色した測色値のデータの例えばファイル名などを各欄に記して「OK」を操作すればよい。
このようにして各組み合わせ集合と測色値のデータとが対応付けられたら、色変換試行部15は、それぞれの組み合わせ集合と測色値とから色変換モデルを構築し、その色変換モデルにより予め用意しておいたデータを変換して、与えられた測色値とのずれ(色差)を求めて統計的に処理する。
図19は、色変換試行部により出力された色変換の指標の一例の説明図である。図19では、図18に示した3つの組み合わせ集合(パターン)について、色変換試行部15で求めた平均色差及び最大色差を一覧形式で出力した例を示している。出力された色変換の指標を参照し、最終的に使用する組み合わせ集合を選択すればよい。
なお、図18及び図19に示した表示は一例であって、種々の形式で表示してよいことは言うまでもない。また、色変換の指標を表示することなく、予め決められている方法により組み合わせ集合を選択したり、色変換の指標を他の装置へ転送して使用してもよい。
この第2の実施の形態では、色変換試行部15は組み合わせ集合と測色値(実測値)から色変換モデルを構築して予め用意しておいたデータを変換し、測色値との色差を求めた。この例に限らず、例えばそれぞれの組み合わせ集合から、出力装置について予め求めておいた色変換モデルを用いて色変換を行い、変換結果と測色値との色差を求めてもよい。
図20は、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、31はプログラム、32はコンピュータ、41は光磁気ディスク、42は光ディスク、43は磁気ディスク、44はメモリ、51はCPU、52は内部メモリ、53は読取部、54はハードディスク、55はインタフェース、56は通信部である。
上述の本発明の各実施の形態で説明した各部の機能の全部または部分的に、コンピュータにより実行可能なプログラム31によって実現してもよい。その場合、そのプログラム31およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部53に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部53にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク41,光ディスク42(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク43,メモリ44(ICカード、メモリカードなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
これらの記憶媒体にプログラム31を格納しておき、例えばコンピュータ32の読取部53あるいはインタフェース55にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム31を読み出し、内部メモリ52またはハードディスク54に記憶し、CPU51によってプログラム31を実行することによって、上述の本発明の各実施の形態で説明した機能が全部又は部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム31をコンピュータ32に転送し、コンピュータ32では通信部56でプログラム31を受信して内部メモリ52またはハードディスク54に記憶し、CPU51によってプログラム31を実行することによって実現してもよい。
コンピュータ32には、このほかインタフェース55を介して様々な装置と接続してもよい。例えば情報を表示する表示手段や利用者からの情報を受け付ける受付手段等も接続されていてもよい。例えば図16,図18,図19に示した表示画面を表示手段に表示させ、利用者による操作を受け付け手段で受け付けるように構成すればよい。
また、例えば出力装置としての画像形成装置がインタフェース55を介して接続され、生成した色票色の集合である組み合わせ集合の画像を画像形成装置で形成するように構成してもよい。なお、各構成が1台のコンピュータにおいて動作する必要はなく、処理段階に応じて別のコンピュータにより処理が実行されてもよい。