JP2011006338A - プロピレンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エタノール及び炭素数4以上のアルコールとの共変換反応により、高められた選択率と耐久性にてプロピレンを合成することのできる、工業的に有利な製造方法を提供する。
【解決手段】周期律表第6族及び/又は第7族に属する金属を含む化合物で修飾された多孔性固体酸化物を触媒とし、エタノール及び炭素数4以上のアルコールを共変換してプロピレンを製造する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、エタノールを変換してプロピレンを合成する方法に関する。
石油を原料とする化学工業の基幹物質であるプロピレンの工業的な製造方法は、1)900℃程度でのナフサのスチーム分解、2)プロパンの脱水素または酸化脱水素、などが代表的なものである。
他方、石油資源の枯渇の懸念と共に、非石油系原料とりわけバイオマス由来アルコールからのプロピレン製造方法の開発が、今後ますます必要になると予想されている。プロピレンの原料としては、発酵法によるエタノールが量的にも有望であり、またブタノールはアセトン−ブタノール発酵が知られている。
しかしながら、一価のイソプロパノールの脱水によるプロピレン合成の例は知られているものの(特許文献1)、エタノールからの製造では、脱水/2量化/不均化などの反応を制御する必要があり、困難度は高い。たとえば、H-ZSM-5を触媒とする単独のエタノールからのプロピレン生成が報告されているが、プロピレンが主生成物ではなく、芳香族類を含むC5+炭化水素(非特許文献1)、プロパン(非特許文献2)、またはエチレン(非特許文献3)などが主に生成した。また、反応時間の経過と共に、一層プロピレン選択率が低下し、エチレン選択率が増加する傾向であり、触媒耐久性の点でも問題があった。さらにエタノールとブタノールの混合系からのプロピレン製造も試みられているが(非特許文献4)、反応温度が400℃程度と低く、またタングステン等で修飾をしたゼオライトではないため、C4や芳香族炭化水素の副生が激しく、プロピレン選択率において満足するものではなかった。
米国特許第6441262号明細書
J.Chem.Tech.Biotech., 77, 211-216 (2002) Catal. Lett., 31, 395-403 (1995). Green Chem., 9, 638-646 (2007). 第102回触媒討論会−討論会A予稿集、2008年9月24日、第41頁
本発明は、エタノールの変換反応により、高められた選択率と触媒安定性でプロピレンを合成することのできる、工業的に有利な新規なプロピレン合成用触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々の触媒群について鋭意研究を重ねた結果、タングステン等で修飾したゼオライトを触媒として用い、エタノールと炭素数4以上のアルコールの共反応を600℃程度の比較的高温の条件下で反応させることにより、炭素数4の炭化水素や芳香族炭化水素の副生が減少しプロピレン選択率が向上すること、またエタノールより疎水性のブタノール等の効果により、触媒表面での脱水反応が制御され、活性低下の主原因の一つである脱アルミが抑制されることにより、触媒の耐久性も併せて改善されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
[1]多孔性固体酸化物の存在下、エタノールと炭素数4以上のアルコールとを反応させることを特徴とするプロピレンの製造方法。
[2]多孔性固体酸化物を周期律表第6族及び/又は第7族に属する金属を含む化合物で修飾することを特徴とする上記[1]のプロピレンの製造方法。
[3]炭素数4以上のアルコールがブタノール類であることを特徴とする上記[1]又は[2]のプロピレンの製造方法。
[4]多孔性固体酸化物がゼオライト化合物であることを特徴とする上記[1]又は[2]請求項1又は2に記載のプロピレンの製造方法。
[5]エタノールおよびブタノールのうち一方または両方が、発酵により得られたバイオエタノールまたはバイオブタノールであることを特徴とする上記[1]〜[4]のプロピレンの製造方法。
本発明の方法によれば、バイオエタノールなどのエタノール原料から一段で、高められた選択率と耐久性によりプロピレンを合成することができる。
本発明のエタノールを変換してプロピレンを合成する際に用いられるプロピレン合成方法では、多孔性固体酸化物の存在下、エタノールとブタノール類など炭素数4以上のアルコールとを、通常より高められた温度で反応させることを特徴とする。さらには、周期律表第6族及び/又は第7族に属する金属を含む化合物で修飾された多孔性固体酸化物を含有することを特徴とする。
多孔性固体酸化物としては、周期律表第6族及び/又は第7族金属を含む化合物と共存、またはその表面にこれらの金属を含む化合物を担持できるものであればいかなる酸化物も含まれる。
このような多孔性固体酸化物としては、ゼオライト化合物などが代表的であり、Y-型、L-型、モルデナイト、フェリエライト、ベータ型、H-ZSM-5などを挙げることができる。
また、ゼオライト化合物以外の多孔性固体酸化物としては、TS-1、MCM-41、MCM-22、MCM-48、ガロシリケート、などの結晶性メタロシリケート、大口径シリカ化合物などを挙げることができる。
またこれらの多孔性固体酸化物には、チタン、アルミニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、ホウ素、ジルコニウムなどの元素を含有するものや非晶質多孔性シリカ化合物も含まれる。
他の多孔性固体酸化物としては、たとえば、メソポーラス型のシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリアなどの酸化物を挙げることができる。
本発明でとりわけ好ましく使用される多孔性固体酸化物は、エタノールを表面に吸着でき、エタノールのOH基にプロトンを供給して脱水を促すことができる、種々のシリカ/アルミナ比を有するH-ZSM-5ゼオライトなどを挙げることができる。
本発明で用いる多孔性固体酸化物はその使用に当たって、周期律表第6族及び/又は第7族に属する金属を含む化合物で修飾することが一層好ましい。
修飾法としては、固体酸化物にタングステン等の化合物を含有させ、空気中で焼成する方法等が採られる。
ここで、周期律表第6族及び/又は第7族に属する金属を含む化合物とは、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウムの少なくとも一種の金属を含む化合物を意味する。
周期律表第6族及び/又は第7族に属する金属を含む化合物としては、代表的には、タングステン化合物、レニウム化合物、モリブデン化合物などが挙げられ、タングステン化合物としては、塩化タングステンなどのハロゲン化タングステン、12タングステン酸(10-)アンモニウム10水和物、メタタングステン酸アンモニウム、12タングステン酸(10-)カリウム10水和物などのタングステン酸カチオン化合物、ドデカタングストリン酸(3-)14水和物、ドデカタングストケイ酸(4-)26水和物などのタングストヘテロ酸化合物、ヘキサカルボニルタングステン、ヘキサメチルタングステン(VI)などの有機金属タングステン化合物、などが挙げられる。
レニウム化合物としては、硝酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、塩化物、臭化物などのハロゲン化物、ヘキサクロロレニウム酸カリウムなどのレニウム酸化合物、過レニウム酸アンモニウムなどのレニウム酸塩、デカカルボニル2レニウム(0)、ペンタカルボニルメチルレニウムなどの有機金属レニウム化合物、などが挙げられる。
またモリブデン化合物としては、塩化モリブデンなどのハロゲン化物、4酢酸2モリブデンなどのモリブデン錯化合物、ヘキサカルボニルモリブデン(0)などの有機金属モリブデン類、2モリブデン酸ナトリウム、7モリブデン酸(6-)アンモニウム4水和物などのモリブデン酸カチオン化合物、ドデカボリブドリン酸(3-)30水和物、ドデカもリブドリン酸(3-)アンモニウムなどのドデカモリブド化合物、などが例示される。
多孔性固体酸化物にタングステン等の化合物を含有させる方法としては、物理混合法や、含浸法、沈殿法、混練法、インシピエントウェットネス法等の従来公知の方法を採用することが出来る。
たとえば、タングステン等の化合物は、通常、水溶液として固体酸化物に担持される。また、アセトン、イソプロパノール、ベンゼンなどの有機溶媒も用いられる。
タングステン等の化合物を含有させたゼオライト酸化物等の焼成温度は、300〜900℃、好ましくは500〜700℃程度である。
タングステン等の担持量は、任意であるが、タングステン金属として、担体酸化物100g当たり、0.001〜50g、好ましくは1〜20gである。これらの添加物は、単独もしくは2種以上の混合物として用いることができる。とりわけ周期律表第6族のタングステン元素の場合には、エタノールの脱水により生成したエチレン中間体の2量化を促進するので特に好ましい。
本発明に用いるエタノールとしては、試薬グレードのものだけでなく、水を含むエタノールや発酵によるバイオエタノールなどが用いられる。この場合の水の含有量は任意であるが、0〜50wt%、好ましくは0〜15wt%が用いられる。
本発明でエタノールと共に用いられる炭素数4以上のアルコールとして、ブタノール類、ペンタノール類、ヘキサノール類などのアルカノール類、ブタンジオール類、ペンタンジオール類、ヘキサンジオール類などのアルカンジオール類、ペンタエリスリトールなどのポリオール類などが挙げられる。
これら炭素数4以上のアルコール類の導入量は、エタノール1モルに対して0.01〜100モル、好ましくは0.5〜5モルである。また、これらの炭素数4以上のアルコール類は、反応条件条件下で、脱水によりブテン類、ペンテン類などのオレフィン類を生成するため、初めからこれら炭素数4以上のオレフィン類と水を導入することもできる。これらオレフィン類の導入量は、炭素数4以上のアルコール類と同程度であり、水もアルコールと同モル程度が好ましい。
本発明の方法においては、前記した触媒の存在下で、エタノールとブタノールなどを同時に反応器の中で変換させればよい。この合成反応では、下記の反応式に示されるように、主たる生成物として、プロピレンが得られるが、その他に、エチレン、およびブテン類や炭素数1〜10程度の飽和炭化水素及びベンゼン/トルエン/キシレンなどの芳香族及び水が生成する。
OH+COH→
+C+C+C2n+2(n=1〜10)+C+C+C10+HO・・・・・(1)(係数は考慮無し)
プロピレンの生成機構は、現時点では定かではないが、エタノールやブタノールの脱水反応(エチレンやブテンの生成反応)/不均化反応(エチレンとブチレンの不均化反応によるプロピレンの生成)などの複合反応によるものと考えている。またエタノールよりも相対的に疎水性のブタノールの共存により、エタノール脱水により触媒表面に生成した水の除去が促進され、水生成の条件で通常起こりやすいゼオライトの脱アルミ(失活の主原因)がある程度抑制されるため、耐久性が増大すると想定している。
本発明のプロピレンの合成反応は、気相及び液相のいずれで行うこともできるが、エタノールの沸点は水よりも低く、またプロピレンは常温でガスであるので、触媒との分離を考慮して通常は気相系で行われる。
この場合の反応温度は、50〜800℃、好ましくは400〜650℃の条件下であり、また反応圧力は任意であり、0.01〜100MPa、好ましくは0.05〜5MPaである。
通常は、希釈ガスと共にエタノール及びブタノールを触媒層に導入し、希釈ガスとして、窒素やアルゴンなどの不活性ガス、COまたは水蒸気が用いられる。
希釈ガスの使用割合は、エタノール1モル当たり、0.05〜50モル、好ましくは0.5〜10モルの割合である。
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[10wt%W/H-ZSM-5触媒の調製]
ゼオリスト社製H-ZSM-5(Si/Al比=280)2gに、メタタングステン酸アンモニウム0.27g(タングステン換算で10wt%)を含浸させ、60℃で一晩乾燥し、さらに100℃で3時間乾燥後、600℃で5時間空気焼成し、2.18gのW/H-ZSM-5触媒を得た。
[プロピレンの合成反応]
こうして得られた10%W/H-ZSM-5(0.5g)を固定床流通式反応装置に導入し、エタノール、n−ブタノールと窒素の混合ガス(体積比(エタノール/n−ブタノール/窒素=30/22/48)を全圧0.1MPaにて、W/F(N)=6.15m0l(g cat h)−1、WHSV(EtOH)=0.49h−1、WHSV(n−BuOH)=0.67h−1、600℃で反応させた。
反応開始30分後に、生成物をガスクロマトグラフにより分析したところ、エタノール転化率100%、プロピレン選択率40.6%、プロピレン/エチレン比1.50にてプロピレンが生成した(表1)。副生物として、エチレン27.0%、ブテン類17.0%、BTX(ベンゼン+トルエン+キシレンの和)2.79%の他(表1)、C1からC10の飽和炭化水素及びCOが少量検出された。
エタノール転化率、プロピレン選択率は便宜的に以下のように計算した。
Figure 2011006338
ここでCnは炭素数nの炭化水素、B、T、Xはそれぞれベンゼン、トルエン、キシレンを示す。また*は積を表す。他の炭化水素選択率も同様に計算した。
(比較例1)
n−ブタノールを用いない以外は実施例1と同様にしてプロピレンの合成反応をおこなった。その結果を表1に示す。
エタノール転化率76.4%、プロピレン選択率32.3%となったが、プロピレン/エチレン比は0.82であり、むしろエチレンが主生成物であった。
(比較例2)
エタノールを用いない以外は実施例1と同様にしてプロピレンの合成反応をおこなった。その結果を表1に示す。
n−ブタノール転化率85.4%、プロピレン選択率35.8%となったが、プロピレン/エチレン比は1.14と、実施例1より低く、また、プロピレン/プロパン比が5.63と、実施例1の約1/2であり、プロピレンが水素化されたプロパンの副生が多かった。
(実施例2〜3)
WHSV(n−BuOH)=0.33及び1.04h−1とした以外は実施例1と同様にプロピレンの合成反応を行った。その結果を表1に示す。
エタノール転化率、プロピレン選択率、プロピレン/エチレン比が、実施例2でそれぞれ87.2%、プロピレン選択率36.2%、プロピレン/エチレン比が1.03、また実施例3で、それぞれ、88.8%、38.8%、1.40となり、ブタノール導入量が少ないときには、少しプロピレン選択率が低下した。
(実施例4〜6)
担体のH-ZSM-5のSi/Al比を、80、50及び23とし、WHSV(EtOH)及びWHSV(n−BuOH)を、それぞれ1.10、1.33、1.35、1.63、1.98、2.3h−1とした以外、実施例1と同様に反応させたところ、プロピレン選択率は、それぞれ35.1%、36.1%、37.5%であり、また、プロピレン/エチレン比は、ぞれぞれ、1.21、1.19、1.47と、実施例1と同程度であった。
(実施例7〜8)
触媒として、タングステン修飾を行わないH-ZSM-5(280)を用い、実施例1と同様に600℃で反応を行い、反応開始1時間及び8時間後の生成物を分析した。
1時間後にはエタノール転化率91%、プロピレン選択率37.5%、プロピレン/エチレン比1.42であったが、8時間後には、60%および37.8%となり、また、プロピレン/エチレン比1.20と少し低下する傾向を示した。
(実施例9〜10)
タングステン修飾したH-ZSM-5(280)触媒を用い、実施例1と同様に反応させ、1時間後および8時間後に分析を行った。
1時間後にはエタノール転化率67.2%、プロピレン選択率36.9%、プロピレン/エチレン比1.25であり、8時間後には、71.3%および38.6%と変化せず、またプロピレン/エチレン比1.38と少し向上する傾向を示し、耐久性が認められた。
(比較例3)
エタノールを用いない以外、実施例9と同様に反応させ、1時間後に分析したところ、ブタノール転化率45.6%、プロピレン選択率30.4%、プロピレン/エチレン比も0.92と低かった。
Figure 2011006338

Claims (5)

  1. 多孔性固体酸化物の存在下、エタノールと炭素数4以上のアルコールとを反応させることを特徴とするプロピレンの製造方法。
  2. 多孔性固体酸化物を周期律表第6族及び/又は第7族に属する金属を含む化合物で修飾することを特徴とする請求項1に記載のプロピレンの製造方法。
  3. 炭素数4以上のアルコールがブタノール類であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレンの製造方法。
  4. 多孔性固体酸化物がゼオライト化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレンの製造方法。
  5. エタノールおよびブタノールのうち一方または両方が、発酵により得られたバイオエタノール又はバイオブタノールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレンの製造方法。
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