JP2011004579A - 同期電動機の回転子位相推定装置 - Google Patents

同期電動機の回転子位相推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、同期電動機のための駆動制御装置に使用される回転子位相推定装置に関し、特に、印加高周波信号の応答である応答高周波高周波信号をヘテロダイン法に立脚し処理して回転子位相推定値を生成する回転子位相推定装置に関し、汎用性に富み、推定系の安定性を保証でき、更には、印加高周波電圧の変動にロバストな回転子位相推定装置を提供する。
【解決手段】
γδ準同期座標系上で正弦形状となる高周波電圧指令値を固定子電流制御ループ外部で生成する手段10−1と、高周波電圧指令値のγ軸要素に対して約±π/2(rad)の位相差を有する信号をδ軸要素とするキャリア信号を生成し、キャリア信号と高周波電流とを利用した乗算処理を通じて高周波積信号を生成する手段10−2と、高周波積信号自体を直接入力として回転子位相推定値を生成出力する高周波PLL手段10−3とにより、回転子位相推定装置を構成し、課題を解決した。
【選択図】図4

Description

本発明は、駆動基本周波数より高い周波数の信号(例えば、高周波電圧)の印加に対し回転子が突極特性を示す同期電動機(例えば、回転子に永久磁石を有する永久磁石同期電動機、巻線形同期電動機、同期リラクタンス電動機、回転子に永久磁石と界磁巻線とをもつハイブリッド界磁形同期電動機など)のための駆動制御装置に使用される回転子の位相(位置と同義)、速度を、位置速度センサを利用することなくすなわちセンサレスで、推定するための回転子位相推定装置に関する。
同期電動機の高性能な制御は、いわゆるベクトル制御法により達成することができる。ベクトル制御法には、回転子位相の情報が必要であり、従来よりエンコーダ等の位置速度センサが利用されてきた。しかし、この種の位置速度センサの利用は、信頼性、軸方向の容積、センサケーブルの引回し、コスト等の観点において、好ましいものではなく、位置速度センサを必要としない、いわゆるセンサレスベクトル制御法の研究開発が長年に行なわれてきた。
有力なセンサレスベクトル制御法として、駆動基本周波数より高い周波数の高周波信号を電動機に強制印加し、この応答である応答高周波信号を検出・処理して回転子位相を推定する高周波信号印加法が、これまで、種々、開発・報告されてきた。高周波信号印加法は、高周波電圧を印加して応答である高周波電流を検出・処理して回転子位相推定値を得る(広義)高周波電圧印加法と、高周波電流を印加して応答である高周波電圧を検出・処理して回転子位相推定値を得る(広義)高周波電流印加法と、がある。実際性が高いのは、前者の(広義)高周波電圧印加法である。この点を考慮し、以降では、実用性の高い高周波電圧印加法を中心に説明を行う。高周波電流印加法に関しては、必要に応じ補足的に説明する。
推定すべき回転子位相は回転子の任意の位置に定めてよいが、回転子の負突極位相または正突極位相の何れかを回転子位相に選定するのが一般的である。当業者には周知のように、負突極位相と正突極位相の間には、電気的に±π/2(rad)の位相差があるに過ぎず、何れかの位相が判明すれば、他の位相は自ずと判明する。以上を考慮の上、以降では、特に断らない限り、回転子の負突極位相を回転子位相とする。
広義の高周波電圧印加法は、印加すべき高周波電圧の生成法を定めた狭義高周波電圧印加法と、印加高周波電圧の応答である高周波電流を処理し回転子位相推定値の生成を定めた位相推定法との組合せとして構成される。正弦形状の高周波電圧を印加する狭義高周波電圧印加法としては、一般化楕円形高周波電圧印加法、一定真円形高周波電圧印加法(一定振幅の真円形高周波電圧印加法)、直線形高周波電圧印加法が少なくとも知られている。
正弦形状高周波電圧の印加は、uvw座標系上、αβ固定座標系上、回転子位相をd軸位相とするdq同期座標系への位相差のない同期を目指したγδ準同期座標系上のいずれの座標系上でも印加は可能である。αβ固定座標系、dq同期座標系、γδ準同期座標系を特別の場合として包含する、座標速度ωγで回転するγδ一般座標系上で電圧印加する場合、一般化楕円形高周波電圧印加法による正弦形状高周波電圧は次式で表現される。
Figure 2011004579
また、一定真円形高周波電圧印加法による正弦形状高周波電圧は次式で表現される。
Figure 2011004579
また、直線形高周波電圧印加法による正弦形状高周波電圧は次式で表現される。
Figure 2011004579
上に(1)〜(3)式を用いて疑義のない形で明示したように、いずれの高周波電圧もベクトル各要素の信号は、正確に正弦形状(余弦関数あるいは正弦関数で表現される形状)をなしている。正弦形状の高周波電圧を印加するには、正弦形状の高周波電圧指令値を電流制御ループ外部から与え、これを電力変換器(インバータ)への入力とすればよい。これにより、正弦形状の高周波電圧を生成・印加することができる。本発明が扱う狭義高周波電圧印加法は、上記のような正弦形状の高周波電圧を印加するものである。特に、印加高周波電圧のγ軸要素(第1要素、余弦関数表記部分)とδ軸要素(第2要素、正弦関数表記部分)との振幅が同一の場合には、印加高周波電圧の軌跡は、真円軌跡となる。
正弦形状の高周波電圧を印加する高周波電圧印加法(狭義)のための位相推定法としては種々存在するが、本発明と関連する位相推定法は、ベクトルヘテロダイン法、スカラヘテロダイン法(以下、ヘテロダイン法と総称)である。ヘテロダイン法に関しては、後掲の「先行技術文献」欄に列挙した先行発明がある。
ベクトルヘテロダイン法は、一定真円形高周波電圧印加法のために開発されたものであり(非特許文献1〜3)、他の狭義高周波電圧印加法(一般化楕円形高周波電圧印加法、直線形高周波電圧印加法等)への適用を示した事例はない。一方、スカラヘテロダイン法は直線形高周波電圧印加法のために開発されたものであり(特許文献1、非特許文献4〜6)、他の狭義電圧印加法(一般化楕円形高周波電圧印加法、一定真円形高周波電圧印加法等)への適用を示した事例はない。これらヘテロダイン法は、元来、ゼロ速近傍のごく低速領域での位相推定法として開発されたもので、中〜高速域での安定的な利用を示した事例はない。
一般には、回転子位相推定のための高周波電圧の印加は、uvw座標系、αβ固定座標系、γδ準同期座標系のいずれの座標系上でも可能である。また、印加高周波電圧の応答である高周波電流の処理も、いずれの座標系上でも可能である。高周波電圧印加と高周波電流処理をγδ準同期座標系上で行う場合には、同座標系上の駆動用電流の周波数は定常的にはゼロ(すなわち、直流)となるので、駆動用電流と高周波電流とは、任意の速度において、高周波数ωhと実質的に同等な周波数差ωhをもつことになる。一般に、回転子位相情報を有する高周波電流の処理においては、回転子位相情報を有しない駆動用電流の影響を排除することが好ましい。両電流間における大きな周波数差ωhは、両電流の分離、さらには高周波残留外乱の選択的抑圧に好都合である。本発明は、回転子位相推定の総合的な簡易性を考慮し、主として、γδ準同期座標系上で高周波電圧を印加し、同座標系上で高周波電流を処理する。
γδ準同期座標系上で回転子位相推定を行う、従来のベクトルヘテロダイン法としては、非特許文献3がある。図10は、同文献で提示された図面を再掲したものである。同文献では、先ず、固定子電流から高周波電流を抽出し、次に、抽出した高周波電流と印加高周波電圧(正相かつ一定振幅で(2)式で表現されるもの)に対し逆相順のベクトルキャリア信号との乗算を介して高周波積信号を生成し、続いて、高周波積信号をローパスフィルタ(LPF)で処理して高周波成分を除去した直流成分を抽出し、最後に、本直流成分を1次PI形位相制御器を備えた2次直流PLLブロックへの入力信号とし、回転位相推定値を生成している。図と上記説明より明白なように、本推定法の特徴は、先ず、高周波積信号を高周波成分除去用ローパスフィルタで処理して直流成分のみを抽出し、次に、本直流成分を直流PLLブロックへの入力信号とする点にある。
γδ準同期座標系上で回転子位相推定を行う、従来のスカラヘテロダイン法としては、特許文献1、非特許文献4〜6がある。図11は、特許文献1で提示された図面を、複写再掲したものである。これによる位相推定の手順は、図より理解されるように、以下のように説明される。γδ準同期座標系上で(3)式の直線形高周波電圧指令値を、電流制御ループ外部から与える。この上で、先ず、γδ準同期座標系上における固定子電流のδ軸要素からこの高周波成分(すなわち、高周波電流のδ軸要素)を抽出する。次に、抽出した高周波電流δ軸要素と印加高周波電圧に対し−π/2(rad)の位相差をもつスカラキャリア信号との積を取り、高周波積信号を生成する。続いて、高周波積信号に対して、移動平均形ローパスフィルタ(FIRディジタルフィルタ)を用いて高周波成分の除去処理を行い、直流成分を抽出する。最後に、本直流成分を1次PI形位相制御器を備えた2次の直流PLLブロックへ入力し、回転位相推定値を生成する。図と上記説明より明白なように、本推定法の特徴は、先ず、高周波積信号を高周波成分除去用ローパスフィルタで処理して高周波成分を除去した直流成分を抽出し、次に、本直流成分を直流PLLブロックへの入力信号とする点にある。非特許文献4〜6も同様に、先ず、高周波積信号を高周波成分除去用ローパスフィルタでフィルタ処理して高周波成分を除去した直流成分を抽出し、次に、本直流成分を直流PLLブロックに代表される位相推定ブロックへの入力信号としている。
しかしながら、直流PLLブロックに高周波成分除去用ローパスフィルタを前置した従来の位相推定法では、PLL推定系が容易に不安定化することが知られている。直流PLLブロックに前置された高周波成分除去用ローパスフィルタは、結果的には、位相推定ループであるPLL推定系にダイナミックスを導入することを意味し、これがPLL推定系を不安定化する大きな要因となった。しかしながら、従来技術は、直流PLLブロックへの入力信号が高周波成分を有することを許容できず、第1等の目的である位相推定のためには、不安定化要因になるといえども、高周波成分除去用ローパスフィルタの導入・前置は避けることができなかった。
後に本発明の説明に際して明らかにするが、高周波積信号を高周波成分除去用ローパスフィルタで処理して得た直流成分の大きさは、少なくとも、高周波電圧の振幅、周波数、電動機の固定子インダクタンスの関数となる。このため、これらを無視して、PLL推定系の1次PI形位相制御器を設計することは、大変困難であり、高周波電圧の振幅、周波数を変更するたびに、1次PI形位相制御器の再設計に大きな苦労を強いられてきた。非特許文献2では、位相推定系における制御器の設計における上述の問題が繰り返し指摘されている。しかしながら、位相推定系の安定性を保証する制御器(直流PLLでは、位相制御器に該当)の設計法に関しては、そのあるべき構造を含め未確立のままである。
山本康弘:「PMモータの制御装置」、公開特許公報、特開2003−348896(2002−5−24)
L.Wang and R.D.Lorenz:"Rotor Position Estimation for Permanent−Magnet Synchronous Motor Using Saliency−Tracking Self−Sensing Method"、Conference Record of 2000 IEEE Industry Applications Conference(IAS 2000)、pp.445−450、(2000−10) Y.Chen、L.Wang、and L Kong:"Research of Position Sensorless Control of PMSM Based on High Frequency Signal Injection"、Proc.of International Conference of Electrical Machines and Systems(ICEMS 2008)、pp.3973−3977(2008−10) 近藤圭一郎・米山崇・谷口峻・望月伸亮・若尾真治:「鉄道駆動用永久磁石同期電動機の回転角速度センサレス制御に関する考察、シンプルかつ高性能な制御システム」、電気学会研究会資料、SPC−06−185、LD−06−87、pp.37−42(2006) J.H.Jang、S.K.Sul、J.I.Ha、K.Ide、and M.Sawamura:"Sensorless Drive of SMPM Motor by High−Frequency Signal Injection Based on Magnet Saliency"、Proc.of 17th IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition(APEC 2002)、Vol.1、pp.279−285(2002−3). J.H.Jang、S.K.Sul、J.I.Ha、K.Ide、and M.Sawamura:"Sensorless Drive of Surface−Mounted Permanent−Magnet Motor by High−Frequency Signal Injection Based on Magnet Saliency"、IEEE Trans.on Industry Applications、Vol.39、No.4、pp.1031−1039(2003−7/8) Y.Nakano、H.Sugiyama、Y.Yamamoto、and T.Ashikaga:"Sensor−less Vector Control System Using Concentrated Winding Permanent Magnet Motor"、Proc.of 22nd International Battery、Hybrid and Fuel Cell Electric Vehicle Symposium & Exposition(EVS22)、pp.677−686(2006−10) 新中新二:「永久磁石同期モータのベクトル制御技術、上巻(原理から最先端まで)」、電波新聞社(2008−12) 新中新二:「永久磁石同期モータのベクトル制御技術、下巻(センサレス駆動制御の真髄)」、電波新聞社(2008−12)
以上の説明から明らかなように、狭義高周波電圧印加法のための位相推定法としての従来のヘテロダイン法は、以下の問題点を有していた。
1)特定の狭義高周波電圧印加法のみ適用可能であり、汎用性に欠けた。
2)直流PLLブロックの前段に高周波成分除去用ローパスフィルタを前置して高周波積信号から高周波成分を除去し、直流成分のみからなる直流PLLブロック入力信号を生成する必要があった。しかしながら、前置した高周波成分除去用ローパスフィルタのために、PLL推定系の安定性がしばしば損なわれ不安定化した。
3)PLL推定系の安定性を確保するためのPLL推定系の構造、さらにはPLL推定系の制御器設計法は未確立であり、制御器係数の設計は試行錯誤的に行われてきた。
4)直流成分のみからなる直流PLLブッロク入力信号は、少なくとも、高周波電圧の振幅、周波数、固定子インダクタンスの関数であり、これらの変更あるいは変動により、PLL推定系は不安定化した。制御器設計法が未確立のため、高周波電圧の変更に伴い、PLL推定系における位相制御器の再設計に、試行錯誤を伴う多大な労力が強要された。
本発明は上記背景の下になされたものであり、その目的は以下の通りである。
1) 正弦形状の高周波電圧を印加する狭義高周波電圧印加法(一般化楕円形高周波電圧印加法、一定真円形高周波電圧印加法、直線形高周波電圧印加法等を含む)に広く適用できる、汎用性に富む位相推定装置を提供する。
2) PLL推定系の不安定化の主要因となった高周波成分除去用ローパスフィルタの導入・前置を必要としない、構造的に安定性が確保しやすい位相推定装置を提供する。
3) 第2)目的に示した構造において、PLL推定系の安定性を保証できる設計法を備えた位相推定装置を提供する。
4) 高周波電圧の振幅、周波数、固定子インダクタンスの変更変動がある場合にも、推定系における位相制御器等の再設計を一切必要としない位相推定装置を提供する。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動基本周波数より高い周波数をもつ高周波信号の印加に対し回転子が突極特性を示す同期電動機のための駆動制御装置に使用され、かつ、印加高周波信号の応答である応答高周波信号の検出・処理を通じて回転子位相推定値を生成出力する回転子位相推定装置であって、高周波電圧印加のために駆動制御装置内の電力変換器への最終電圧指令値に含まれ、かつ、回転子位相推定値を基軸(γ軸)位相とする2軸直交のγδ準同期座標系上で正弦形状となる高周波電圧指令値を固定子電流制御ループ外部で生成する手段と、高周波電圧指令値のγ軸要素に対して約−π/2(rad)または約+π/2(rad)の位相差を有する信号をδ軸要素とするキャリア信号を生成し、キャリア信号と高周波電圧指令値に起因した高周波電流とを利用した乗算処理を通じて、またはキャリア信号と高周波電流を含有する固定子電流とを利用した乗算処理を通じて、高周波成分を含有しうる高周波積信号を生成する手段と、高周波積信号をuPLLで、回転子
Figure 2011004579
プラス演算子、cdi,cniは係数)
Figure 2011004579
として記述され、高周波積信号自体を直接入力として回転子位相推定値を生成出力する高周波PLL手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の回転子位相推定装置であって、該高周波PLL手段を記述した該有理関数の係数を、該印加高周波電圧指令値の振幅、周波数等から定まる信号係数Kθをもつ多項式
Figure 2011004579
Figure 2011004579
うに、定めることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載の回転子位相推定装置であって、該高周波積信号の生成をγδ準同期座標系上で遂行することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1記載の回転子位相推定装置であって、該キャリア信号のγ軸要素を常時ゼロとし、該キャリア信号を実質的にスカラ信号とすることを特徴とする。
請求項5の発明は、駆動基本周波数より高い周波数をもつ高周波信号の印加に対し回転子が突極特性を示す同期電動機のための駆動制御装置に使用され、かつ、印加高周波信号の応答である応答高周波信号の検出・処理を通じて回転子位相推定値を生成出力する回転子位相推定装置であって、高周波信号印加のために駆動制御装置内の電力変換器への最終信号指令値に含まれ、かつ、真円軌跡を描く高周波信号指令値を生成する手段と、高周波信号指令値に起因した応答高周波信号の中から、印加高周波信号に対し逆相順となる逆相成分を抽出する手段と、抽出した逆相成分をベクトルとして捕らえ、このノルムを1に代表される値に正規化して、正規化逆相成分を生成する手段と、高周波信号指令値に対し逆相順となるキャリア信号を生成し、生成キャリア信号を用いて正規化逆相成分を処理し、回転子位相推定値を生成出力する手段と、を備えることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5記載の回転子位相推定装置であって、生成される該高周波信号指令値を高周波電圧指令値とし、これに起因した該応答高周波信号を高周波電流とすることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5記載の回転子位相推定装置であって、該キャリア信号を用いた該正規化逆相成分の処理を、回転子位相推定値を基軸(γ軸)位相とする2軸直交のγδ準同期座標系上で遂行することを特徴とする。
請求項1の発明の効果を、数式を用いて説明する。図1に示したように、任意の速度ωγで回転するγδ一般座標系を考える(非特許文献7参照)。主軸(γ軸)から副軸(δ軸)への回転を正方向とする。また、突極特性をもつ同期電動機の回転子位相がγ軸に対し、ある瞬時に位相θγをなしているものとする。以下に扱う同期電動機の物理量を表現した2x1ベクトル信号は、特に断らない限り、すべて本座標系上で定義されているものとする。γδ一般座標系は、その特別の場合として、αβ固定座標系、dq同期座標系、γδ準同期座標系を含んでいる。すなわち、γδ準同期座標系は、γδ一般座標系の特別な場合であり、この点を考慮して両座標系では同一の表現を採用している。
以下の説明では、一般性を失うことなく、電動機はゼロ速度を含め正方向へ回転するもの、γδ一般座標系の速度もゼロを含め正とする。また、回転子位相推定のために、駆動用電圧に重畳される高周波電圧の一定周波数ωは正とする。本前提は、高周波電圧、高周波電流の正相、逆相成分を区別するためのものであり、これにより説明の一般性を失うことも、本発明原理の本質を失うこともない(非特許文献8)。以上の前提は、(1)〜(3)式に示した高周波電圧にも当然のことながら適用する。正弦形状をもつ高周波電圧の表現は、余弦関数(cos関数)、正弦関数(sin関数)のいずれを用いても可能であるが、本発明の説明では、(1)〜(3)式に示した高周波電圧のように、印加電圧のγ軸要素(第1要素)を余弦関数で表現するものとする。また、印加電圧のγ軸要素(第1要素)を基準に、他の信号の位相を表現するものとする(非特許文献8参照)。
以降の説明の簡明性を期し、若干の信号、関数等の定義を行っておく。γδ一般座標系上に存在し、一定高周波数ωかつ単位ノルムをもつ正相信号u(ωt)、逆相信号u(ωt)を以下のように定義する(非特許文献8参照)。
Figure 2011004579
Figure 2011004579
また、2x2行列であるベクトル回転器R(θγ)を以下のように定義する(非特許文献8)。
Figure 2011004579
更には、(6)、(7)式の正相信号、逆相信号に対してπ/2(rad)位相進みをもつ正相信号、逆相信号を各々ujp(ωt),ujn(ωt)と定義する。すなわち、
Figure 2011004579
Figure 2011004579
(9)、(10)式に示した正相信号、逆相信号においては、そのδ軸要素(すなわち、第2要素、sinωt)は印加高周波電圧のγ軸要素(すなわち第1要素、cosωt、(1)〜(3)式参照)に対して、高周波数ωhが正の場合には−π/2(rad)の位相差を有する点には、反対に高周波数ωhが負の場合に約+π/2(rad)の位相差を有する点には、特に注意されたい。本発明では、このような信号を、高周波積信号生成のためのキャリア信号として利用する。このため、これらの信号をキャリア正相信号、キャリア逆相信号と呼称する。
突極性をもつ同期電動機に、正弦形状をもつ(1)〜(3)式のような高周波電圧をγδ一般座標系上で印加する場合には、この応答である高周波電流i1hは、γδ一般座標系上では、次式となる(非特許文献8参照)。
Figure 2011004579
(11)式が明示しているように、一般には、高周波電流の正相成分ihp、逆相成分ihnのいずれにも、回転子位相情報がR(2θγ)u(ωt),R(2θγ)u(ωt)という形式で含まれている。真円軌跡を描く真円形高周波電圧を印加する場合に限り、次の(12)式が成立し、回転子位相情報は高周波電流の逆相成分のみに含まれる(非特許文献8参照)。
Figure 2011004579
(11)式の高周波電流は、固定子電流iの高周波成分として含まれる。これは、数式を用いて以下のように表現することができる。
Figure 2011004579
上式における脚符f、hは、それぞれ駆動周波数、高周波数の成分であることを示している。
請求項1の発明では、高周波積信号を生成するためのキャリア信号として、(9)、(10)式のキャリア正相信号、キャリア逆相信号、あるいは両者をベクトル合成した信号を使用する。この代表は、次のキャリア和信号u(ωt)である。
Figure 2011004579
(14)式のキャリア和信号も、本信号の元となった(9)、(10)式のキャリア正相信号、キャリア逆相信号と同様に、そのδ軸要素(すなわち、第2要素、sinωt)は、印加高周波電圧のγ軸要素(すなわち第1要素、cosωt、(1)〜(3)式参照)に対して±π/2(rad)の位相差を有する点には、特に注意されたい。
請求項1の発明では、キャリア信号と高周波電流または高周波電流を含む固定子電流とを利用した乗算処理を通じて、高周波成分を含有しうる高周波積信号を生成する。たとえば、キャリア信号としてのキャリア和信号u(ωt)と固定子電流iとの乗算処理を通じて生成した高周波積信号は次式となる。
Figure 2011004579
ここに、iδfは駆動用電流(固定子電流の駆動周波数成分)i1fのδ軸要素を意味する。
(15)式における高周波積信号の右辺第1項sは、ある範囲の回転子位相と正相関を有する、回転子位相検出上最も重要な信号である。本発明では、本第1項を高周波正相関信号と呼称する。高周波正相関信号は直流成分と周波数2ωの高周波成分から成っており、θγ=0の場合に限りゼロとなる。(11)式より理解されるように、高周波正相関信号の振幅を支配する係数(gpm+gnm)の内、第1係数は高周波電流の正相成分から、第2係数は高周波電流の逆相成分から来ている。高周波電流正相成分が有する位相情報は、キャリア正相信号との乗算処理(内積処理)により得ている。また、高周波電流逆相成分が有する位相情報は、キャリア逆相信号との乗算処理(内積処理)により得ている。キャリア和信号は、キャリア正相信号とキャリア逆相信号との正逆両相の合成信号であるので、高周波電流の正相成分、逆相成分に含まれる位相情報を共に抽出することができる。当然のことながら、キャリア正相信号のみと固定子電流との乗算処理により高周波積信号を生成する場合には、高周波電流の正相成分が有する位相情報しか抽出できない。同様に、キャリア逆相信号のみと固定子電流との乗算処理により高周波積信号を生成する場合には、高周波電流の逆相成分が有する位相情報しか抽出できない。請求項1の発明では、このような高周波積信号を高周波PLL手段への入力信号uPLLとして表現している((4)式参照)。
(15)式の高周波積信号の右辺第2項nは、周波数2ω、ωの高周波成分を示しており、これは回転子位相の如何にかかわらず非ゼロである。本高周波成分は、回転子位相がゼロであるθγ=0の場合には、以下のように整理される。
Figure 2011004579
上式の右辺第2項は、駆動用電流i1fのδ軸要素iδfに起因する項であり、固定子電流に代わって高周波電流とキャリア信号との乗算処理による場合には、本項は存在しない。換言するならば、固定子電流から駆動用電流を除去することにより、本項は除去できる。一方、右辺第1項は、印加高周波電圧によって支配される項であり、高周波積信号に常時残留し、回転子位相推定上の外乱として作用する。高周波積信号に含まれる残留成分(本発明では、高周波残留外乱と呼称している)に対する位相推定上の対策の良し悪しが、ヘテロダイン法の性能を支配する。
1例を示す。(4)式に示した高周波PLL手段の直接入力(すなわち、高周波積信号)として、キャリア和信号と固定子電流の乗算処理を介して得た(15)式のものを用いることを考える。更に、γδ一般座標系を、この特別の場合としてγδ準同期座標系とする。この場合、(15)式と(4)式とによるPLL推定系は、図2のように表現することができる。同図の例では、(4)式の有理関数を、次の(17)式のように高周波位相制御器C(s)と位相積分器1/sに分離して実現している。
Figure 2011004579
この場合には、位相積分器の出力が高周波PLLブロックの出力となり、回転子位相推定
Figure 2011004579
器C(s)の出力)が、γδ準同期座標系の速度ωγとなる。なお、同図では、固定子電流の駆動用成分のδ成分の分離除去が可能である点を考慮して、これに起因する高周波残留外乱は破線で示している。(4)式、(17)式、更には図2により明白なように、高周波積信号は、ローパスフィルタ処理されることなく、直接的に、高周波PLLブロックに入力されている。この点には特に注意されたい。
図2のPLL推定系は、3次以上の有理関数C(s)/s=C(s)/(sC(s))で高周波PLLブロックを構成しているので、大きな設計自由度を有する。本自由度を利用することにより、PLL推定系の安定性の確保が可能となる(安定化のための高周波位相制御器の設計は、請求項2の発明効果の説明に関連して行う)。この場合、高周波数2ωhの高周波残留外乱は、定常的には、位相推定値に次式の率を乗じた形で増幅あるいは低減して出現する。
Figure 2011004579
請求項2の発明効果の説明に関連して、具体例を交えながら改めて説明するが、高周波PLL手段(高周波PLLブロック)を定めた有理関数の次数を3次以上とする場合には、(すなわち、高周波位相制御器の次数を2次以上とする場合には)、(18)式の減衰率を十分に小さくできる。
(15)式を用いて説明したように、請求項1の発明によれば、正弦形状の高周波電圧を印加する狭義高周波電圧印加法(一般化楕円形高周波電圧印加法、一定真円形高周波電圧印加法、直線形高周波電圧印加法等を含む)によって発生した高周波電流に含まれる回転子位相情報を、高周波積信号に取り込むことができる。また、(17)、(18)式と図2を用いて説明したように、高次の高周波位相制御器を有しているPLL推定系は安定化でき(安定化の詳細は、請求項2の発明効果に関連して説明する)、高周波残留外乱の影響を実質的に排除して回転子位相推定値を得ることができる。これらは、請求項1の発明によれば、以下の効果が得られることを意味する。
1)正弦形状の高周波電圧を印加する狭義高周波電圧印加法(一般化楕円形高周波電圧印加法、一定真円形高周波電圧印加法、直線形高周波電圧印加法等を含む)に広く適用できる、汎用性に富む位相推定装置を実現できるようになる。
2)PLL推定系の不安定化の主要因となった高周波成分除去用ローパスフィルタの導入・前置を必要としない、構造的に安定性が確保しやすい位相推定装置が実現できるようになる。
続いて請求項2の発明の効果を説明する。請求項1の発明に基づき構成されたPLL推定
Figure 2011004579
位相真値から同推定値に至る伝達特性F(s)は、以下のように近似表現される。
Figure 2011004579
上の伝達特性は、図2において、高周波残留外乱を撤去し、(15)式の高周波正相関信号sを以下のように近似することによっても得ることができる。
Figure 2011004579
信号係数Kθは、印加高周波電圧の振幅、周波数、インダクタンス等によって定まる係数である。信号係数は、例えば、(1)〜(3)式に示した一般化楕円形高周波電圧、一定真円形高周波電圧、直線形高周波電圧では、各々次式となる。
Figure 2011004579
上式におけるLmは、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLqから一意に定まる鏡相インダクタンスである(非特許文献7参照)。また振動係数Khは、(20)式に明示しているように、0〜2の間で高周波振動するゲイン相当値を係数化したものである。
Figure 2011004579
対してフルビッツ多項式(すなわち、安定多項式)となるように有理関数の係数(高周波制御器係数の係数と同一)を定めることになる。(5)式で定義した多項式は(19)式の伝達特性をもつ分母多項式そのものであり、ひいては、分母多項式が振動係数の高周波振動にもかかわらず、フルビッツ多項式となる。この結果、(19)式の伝達特性をもつPLL推定系が安定に動作するようになる。すなわち、請求項2の発明によれば、請求項1の発明による手段を備えた回転子位相推定装置が安定に動作できるようになる、と言う効果が得られるようになる。
高周波位相制御器を次式の形状の2次とし、有理関数を3次とする場合には、振動係数Khが1の時にPLL推定系が安定化するように、有理関数の係数(高周波位相制御器係数)を設計しておけば、任意の振動係数に対してPLL推定系は安定化する。
Figure 2011004579
3次分母多項式が安定な3重実根p0をもつようにするには、有理関数係数(高周波位相制御器係数)は以下のように定めればよい。
Figure 2011004579
この場合、(18)式で記述した高周波残留外乱の低減率は次式となり、一般に十分な低減が確保される。
Figure 2011004579
高周波位相制御器を次式の形状の3次とし、有理関数を4次とする場合には、振動係数Khが2の時にPLL推定系が安定化するように、有理関数の係数(高周波位相制御器係数)を設計しておけば、任意の振動係数に対してPLL推定系は安定化する。
Figure 2011004579
4次分母多項式が安定な4重実根p0をもつようにするには、有理関数係数(高周波位相制御器係数)は以下のように定めればよい。
Figure 2011004579
この場合、(18)式で記述した高周波残留外乱の低減率は次式となり、一般に十分な低減が確保される。
Figure 2011004579
高周波位相制御器を次式の形状の3次とし、有理関数を4次とする場合には、振動係数Khが2の時にPLL推定系が安定化するように、有理関数の係数(高周波位相制御器係数)を設計しておけば、任意の振動係数に対してPLL推定系は安定化する。
Figure 2011004579
4次分母多項式が安定な4重実根p0をもつようにするには、有理関数係数(高周波位相制御器係数)は以下のように定めればよい。
Figure 2011004579
この場合、(18)式で記述した高周波残留外乱の低減率は次式のようにゼロとなり、理論上は完全な外乱排除が実施される。
Figure 2011004579
上記に提示した設計法から理解されるように、請求項2の発明を遂行するための有理関数の係数(高周波位相制御器の係数)は、伝達特性の分母多項式の根の指定を通じ、一意に定めることができる。このように、請求項1の発明に請求項2の発明を備えさすことにより、「PLL推定系の安定性を保証するための設計法を備えた位相推定装置を実現できる」と言う効果を得ることができる。ひいては、請求項1の発明の効果を高めることができる。
続いて、請求項3の発明の効果を説明する。既に説明したように、印加高周波電圧の応答である高周波電流に対する処理は、uvw座標系、αβ固定座標系、γδ準同期座標系のいずれの座標系上でも可能である。高周波電圧印加と高周波電流処理を同一のγδ準同期座標系上で行う場合には、同座標系上の駆動用電流の周波数は定常的にはゼロとなるので、駆動用電流と高周波電流とは、任意の速度において、高周波数ωhと実質的に同等な周波数差ωhをもつことになる。この結果、高周波積信号に含まれる高周波残留外乱の周波数を2ωhとなる。直流に対する高周波残留外乱の大きな周波数差は、この排除に有利である。事実、(24)、(27)式には、2ωhのべき乗に応じて、高周波残留外乱の低減率が定まる様子が示されている。以上の説明より理解されるように、請求項3の発明によれば、「高周波成分除去用ローパスフィルタを導入・前置しない請求項1に基づくPLL推定系においても、高周波残留外乱の排除をより容易に行えるようになる」と言う効果が得られる。ひいては、請求項1の発明の効果を高めることができる。
続いて、請求項4の発明の効果を説明する。(15)式を用いて説明したように、(14)式のキャリア和信号を用いて高周波積信号を生成する場合には、高周波電流の正相成分と逆相成分に含まれる回転子位相情報を、共に、高周波積信号に取り込むことができる。このときのキャリア和信号は、(14)式の右辺に明示しているように、「キャリア信号のγ軸要素を常時ゼロとし、キャリア信号を実質的にスカラ信号とする」ことを意味する。この場合には、高周波積信号の生成を示した(15)式の乗算処理は、次の(31)式のように再整理することができる。
Figure 2011004579
(31)式は、スカラキャリア信号と高周波電流のδ軸要素あるいは高周波電流を含む固定子電流のδ軸要素とのスカラ乗算処理で、高周波積信号が生成できることを意味している。ベクトル乗算と比較するならば、高周波積信号生成のための演算をおおよそ半減できる。以上の説明より明白なように、請求項4の発明によれば、「高周波電流の正相成分、逆相成分の両成分に含まれる回転子位相情報を、少ない演算量で、高周波積信号に含有させることができる」と言う効果が得られる。ひいては、請求項1の発明の効果を高めることができる。
続いて、請求項5の発明の効果を説明する。請求項5の発明によれば、真円軌跡を描く高周波信号を印加して、この応答である応答高周波信号を検出し、これから逆相成分を抽出することになる。ここでは、簡単のため、印加高周波信号としては高周波電圧とし、応答高周波信号としては高周波電流を考え、本発明の効果を説明する。また、真円軌跡を描く高周波信号としては、応速形と一定形が知られているが、ここでは(2)式の一定真円形高周波電圧の印加の場合を例にとり、本発明の効果を説明する。(2)式に対応した高周波電流は、(11c)式の特別の場合として、次式で記述される((12)式参照)。
Figure 2011004579
上式に明示しているように、逆相成分には(11c)式の右辺第1項に対応した成分が存在せず、第2項に対応した成分のみから構成される。請求項5の発明に従って、(32)式の逆相成分を、例えば、ノルム1に正規化すると、次の正規化逆相成分を得る。
Figure 2011004579
(32)式の逆相成分は、印加高周波電圧の振幅、周波数等の影響を受けているが、(33)式の正規化逆相成分は、これらの影響を全て排除した形で、回転子位相情報のみを有している。
請求項5の発明に従い、(33)式の正規化逆相成分と(10)式に定義したキャリア逆相信号との乗算処理(内積処理)を通じて、積信号を生成する。すなわち、
Figure 2011004579
(34)式は、積信号は、γδ一般座標系のγ軸から見た回転子位相の正弦値そのものとなってること示している。特に、本積信号は、高周波残留外乱の影響も、印加高周波電圧の振幅、周波数の影響も、更には、電動機のインダクタンスの影響も排除した形となっている。すなわち、直流の積信号となっている。本積信号を、直流PLLブロック、トラッキングオブザーバ等に用いることにより、これらの影響を排除した状態で、αβ固定座標系のα軸からみた回転子位相推定値を得ることができる。上記は、印加高周波信号として高周波電圧を用いた場合の説明であるが、印加高周波信号として高周波電流を用いた場合にも同様の説明が可能である。
以上の説明より明らかなように、請求項5の発明による場合には、「高周波残留外乱の影響も、印加高周波電圧の振幅、周波数の影響も、更には、電動機のインダクタンスの影響も排除した形で回転子位相推定値が得られるようになる」と言う効果が得られる。更には、「印加高周波電圧の振幅、周波数、電動機のインダクタンスが変更変動がある場合にも、PLL推定系における位相制御器等の再設計を一切必要としない位相推定装置が構成できるようになる」と言う効果が得られる。
続いて、請求項6の発明の効果を説明する。電動機への高周波信号印加は、電力変換器(インバータ)を介して行うことになる。電力変換器としては電圧形と電流形が存在するが、今日では電圧形が主流である。電圧形電力変換器の利用を前提とするとき、真円軌跡をもつ高周波信号としては、高周波電圧の発生・印加がより容易である。以上より、既に明らかなように、請求項6の発明によれば、「真円形軌跡をもつ高周波信号を容易に電動機へ印加できるようになる」と言う効果が得られる。ひいては、請求項5の効果を高める効果が得られるようになる。
続いて、請求項7の発明の効果を説明する。請求項7の発明によれば、印加高周波信号の周波数をωhとするならば、本周波数を、応答高周波信号の逆相成分と駆動用成分との周波数差とすることができ、ひいては、逆相成分の抽出がより容易となる。この結果、請求項7の発明によれば、より簡単に正規化逆相成分、回転子位相推定値を得られるようになると言う効果が得られる。ひいては、請求項5の効果を高める効果が得られるようになる。
「3種の座標系と回転子位相の1関係例を示す図」 「本発明に基づく回転子位相推定の原理を示す図」 「1実施例における駆動制御装置の基本構成を示すブロック図」 「1実施例における位相速度推定器の基本構成を示すブロック図」 「1実施例における発明の妥当性を示す試験データ図」 「1実施例における発明の妥当性を示す試験データ図」 「1実施例における発明の妥当性を示す試験データ図」 「1実施例における位相速度生成器の基本構成を示すブロック図」 「1実施例における位相速度生成器の基本構成を示すブロック図」 「従来のベクトルヘテロダイン法を示すブロック図」 「従来のスカラヘテロダイン法を示すブロック図」
以下、図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。代表的な同期電動機である永久磁石同期電動機に対し、本発明の回転子位相推定装置を備えた駆動制御装置の1例を図3に示す。本発明の主眼は回転子位相推定装置にあるが、電動機駆動制御システム全体における回転子位相推定装置の位置づけを明示すべく、あえて、駆動制御装置を含む電動機駆動制御システム全体から説明する。1は同期電動機を、2は電力変換器(電圧形)を、3は電流検出器を、4a、4bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、5a、5bは共にベクトル回転器を、6は電流制御器を、7は指令変換器を、8は速度制御器を、9はバンドストップフィルタを、10は本発明を利用した位相速度推定器を、11は係数器を、12は余弦正弦信号発生器を、各々示している。図3では、1の電動機を除く、2から12までの諸機器が駆動制御装置を構成している。本図では、簡明性を確保すべく、2x1のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。以下のブロック図表現もこれを踏襲する。
電流検出器3で検出された3相の固定子電流は、3相2相変換器4aでαβ固定座標系上の2相電流に変換された後、ベクトル回転器5aで回転子位相へゼロ位相差で位相同期を目指したγδ準同期座標系の2相電流に変換される。変換電流からバンドストップフィルタ9を介して駆動用電流を抽出し、これを電流制御器6へ送る。電流制御器6は、γδ準同期座標系上の駆動用2相電流が、各相の電流指令値に追随すべくγδ準同期座標系上の駆動用2相電圧指令値を生成する。ここで、位相速度推定器10から受けた2相の高周波電圧指令値を、駆動用2相電圧指令値に重畳させ、重畳合成した2相電圧指令値を、ベクトル回転器5bへ送る。5bでは、γδ準同期座標系上の重畳合成の電圧指令値をαβ固定座標系の2相電圧指令値に変換し、2相3相変換器4bへ送る。4bでは、2相電圧指令値を3相電圧指令値に変換し、電力変換器2への最終指令値として出力する。電力変換器2は、指令値に応じた電力を発生し、同期電動機1へ印加しこれを駆動する。
位相速度推定器10は、ベクトル回転器5aの出力である固定子電流を受けて(必要に応じて、駆動用電流の指令値も受けて)、回転子位相推定値、回転子の電気速度推定値、及び高周波電圧指令値を出力している。回転子位相推定値は、余弦正弦信号発生器12で余弦・正弦信号に変換された後、γδ準同期座標系を決定づけるベクトル回転器5a、5bへ渡される。これは、回転子位相推定値をγδ準同期座標系の位相とすることを意味する。
γδ準同期座標系上の2相電流指令値は、当業者には周知のように、トルク指令値を指令変換器7に通じ変換することにより得ている。速度制御器8には、位相速度推定器10からの出力信号の1つである回転子速度推定値(電気速度推定値)が、一定値である極対数Npの逆数を係数器11を介して乗じられ機械速度推定値に変換された後、送られている。図3の本例では、速度制御システムを構成した例を示しているので、速度制御器8の出力としてトルク指令値を得ている。当業者には周知のように、制御目的がトルク制御にあり速度制御システムを構成しない場合には、速度制御器8は不要である。この場合には、トルク指令値が外部から直接印加される。
本発明の核心は、回転子位相推定装置と実質同義でる位相速度推定器10にある。速度制御、トルク制御の何れにおいても、位相速度推定器10には何らの変更を要しない。また、駆動対象電動機を他の同期電動機とする場合にも位相速度推定器10には何らの変更を要しない。以下では、速度制御、トルク制御等の制御モードに関し一般性を失うことなく、更には、駆動対象の同期電動機に対して一般性を失うことなく、位相速度推定器10の実施例について説明する。
図4に、請求項1〜4の発明を利用した位相速度推定器10の1実施例を示した。本位相速度推定器10は、基本的に、高周波電圧指令器(HFVCと表示)10−1、高周波積信号生成器10−2、高周波位相同期器10−3の3機器から構成されている。
高周波電圧指令器10−1は、回転子位相推定値を基軸(γ軸)位相とする2軸直交のγδ準同期座標系上で正弦形状となる高周波電圧指令値を生成している。図3に示したように、高周波電圧指令器10−1は、駆動制御装置内の機器5b、4b、2と共に、高周波電圧印加を遂行している。高周波電圧指令器で生成される高周波電圧指令値としては、(1)〜(3)式に基づく次のものが、少なくとも考えられる。
Figure 2011004579
Figure 2011004579
Figure 2011004579
(35)式の高周波電圧指令値生成では、γ軸速度に代わって、回転子電気速度推定値を利用している。図4に明示しているように、電気速度推定値はγ軸速度と本質的に等価であるが、必要に応じ、γ軸速度をローパスフィルタ処理して電気速度推定値を得るようにしている。なお、このときのローパスフィルタは、通常は、簡単な1次フィルタでよい。
高周波電圧指令値が駆動用電圧指令値に重畳されて、電力変換器を介して高周波電圧が同期電動機に印加され、ひいては高周波電流が流れる。高周波電流は、固定子電流の高周波成分としてこれに含まれている。高周波成分を含有しうる高周波積信号を生成する役割を担っている高周波積信号生成器10−2は、図4の実施例では、次式の最終式を忠実に実現している。
Figure 2011004579
すなわち、固定子電流のδ軸要素から駆動用電流指令値のδ軸要素を減じ、実質的に高周波電流のδ軸要素を得て、高周波電流δ軸要素と印加高周波電圧指令値のγ軸要素に対して−π/2(rad)の位相差を有するキャリア信号sinωtとの(スカラ)乗算処理を通じて、高周波積信号を生成している。本高周波信号の生成は、(38)式の第2式が示しているように、印加高周波電圧のγ軸要素に対して−π/2(rad)の位相差を有する信号をδ軸要素とするキャリア和信号(ベクトル)と高周波電流(ベクトル)の内積処理と等価である。高周波電圧指令値が(35)、(36)式のようにδ軸要素をもつ場合には、キャリア信号を本δ軸要素から直接生成するようにすると、演算量を低減できる。図4はこの例を示している。すなわち、高周波積信号生成器は、実質的にスカラ乗算器のみで実現できる。なお、(37)式のようなδ軸要素を持たない高周波電圧指令値を利用する場合には、高周波電圧指令値のγ軸要素に所定の位相差を付与して、キャリア信号を生成することになる。
高周波積信号生成器は、(38)式に代わって、次の高周波積信号を生成するように構成してもよい。
Figure 2011004579
Figure 2011004579
(39)式におけるFdc(s)はFdc(0)=0の性質をもつ、直流成分のみの除去を目的とした広帯域幅をもつ直流成分除去フィルタである。(39)式は広帯域の直流成分除去フィルタのPLL推定系内への導入を意味するが、この種のフィルタの導入は、高周波位相同期器の設計に実質影響を与えない。換言するならば、この導入を無視して、PLL推定系を安定化するための高周波位相同期器を設計できる。
高周波位相同期器は、高周波PLL手段を実現したものであり、本例では、(17)式に忠実に従い実現されている。すなわち、高周波積信号を入力として得て、γδ準同期座標系
Figure 2011004579
係数(有理関数の係数)は、既に説明した設計法に従い、PLL推定系が安定に動作するように設計されている。
次に、本発明の効果ひいては有用性を確認すべく遂行した数値実験の1例を示す。駆動制御システムの構成は、図2、図3、図4に示した実施例と同一である。高周波電圧指令器10−1としては、一般化楕円形高周波電圧法に基づく(35)式に従い構成した。この際、この際、高周波位相同期器による高周波残留外乱の低減特性を確認すべく、最大の高周波残留外乱が発生する楕円パラメータK=1を選定した。供試電動機の仕様概要を表1に示す。
Figure 2011004579
印加高周波電圧の振幅、周波数は次式とする。
Figure 2011004579
この場合、(21)式の第1式で定義した信号係数Kθは次の値をとる。
Figure 2011004579
高周波位相制御器C(s)の係数(有理関数の係数と同一)の設計は、PLL推定系の帯域幅が概ね150(rad/s)となるように、行うものとする。
高周波位相制御器は(22)式の2次のものを、ひいては有理関数は3次のものを利用するものとする。PLL推定系の伝達特性の分母多項式が安定な3重根をもつように定めることする。所期の帯域幅を持たせるには、このときの根は根pは概ねp=−88となる。振動係数Kを1として、(23)式を利用し高周波位相制御器係数を算定すると、直ちに次を得る。
Figure 2011004579
また、(24)式に定めた高周波残留外乱低減率に関し、以下を得る。
Figure 2011004579
上の高周波位相制御器係数は、試行錯誤的には選定が難しい、桁数の大きく異なる幅のある数値を示している。また、高周波残留外乱低減率は、実用上十分に小さい値を示している。
永久磁石同期電動機は電気速度30(rad/s)で一定速回転中とし、また、PLL推定系は、回
Figure 2011004579
子位相推定動作を開始させた。数値実験結果を図5に示す。図5(a)は、回転子位相推定
Figure 2011004579
大きくしている。同図(b)は、これに対応した速度を示したものであり、上から、回転子の電気速度真値ω2n、座標系速度ωγ、座標系速度を帯域幅150(rad/s)の1次ローパスフ
Figure 2011004579
ける高周波積信号、すなわち高周波位相制御器への入力信号(高周波位相同期器への入力信号)uPLLである。図(a)より、回転子位相は約0.1(s)後には正しく推定されていることが確認される。一方、座標系速度には高い振幅(約9(rad/s))の高周波成分が出現しており、速度推定値として利用するには、追加的なフィルタが不可欠であることが確認される。図(c)より、高周波位相制御器への入力信号(高周波積信号)は回転子位相推定値が同真値へ実質的に収斂した後も高周波残留外乱を有していることを示している。しかしながら、この高周波残留外乱は、回転子位相推定値に対しては、(44)式の低減率で低減されており、回転子位相推定値上には実質的には出現していない。これら応答は、すでに解説した「本発明の効果」を裏付けるものである。
高周波位相制御器は(25)式の3次のものを、ひいては有理関数は4次のものを利用するものとする。PLL推定系の伝達特性の分母多項式が安定な4重根をもつように定めることする。所期の帯域幅を持たせるには、このときの根は根pは概ねp=−115となる。振動係数Kを2として、(26)式を利用し高周波位相制御器係数を算定すると、直ちに次を得る。
Figure 2011004579
また、(27)式に定めた高周波残留外乱低減率に関し、以下を得る。
Figure 2011004579
上の高周波位相制御器係数は、試行錯誤的には選定が難しい桁数の大きく異なる幅のある数値を示している。また、高周波残留外乱低減率は、実用上十分に小さい値を示している。
図5と同一条件で実験を行った。数値実験結果を図6に示す。図6の波形の意味は、図5
Figure 2011004579
定されていることが確認される。また、座標系速度ωγには、若干の高周波残留外乱が出現しているが(本図では、必ずしも明瞭でない)、その振幅は実用上の許容範囲内に収ま
Figure 2011004579
ない。なお、本数値実験における、定常状態での入力信号(高周波積信号)は図5(c)と同様であるので、この表示は避けた。これら応答は、すでに解説した「本発明の効果」を裏付けるものである。
高周波位相制御器は(28)式の3次のものを、ひいては有理関数は4次のものを利用するものとする。PLL推定系の伝達特性の分母多項式が安定な4重根をもつように定めることする。所期の帯域幅を持たせるには、このときの根は根pは概ねp=−100となる。振動係数Kを2として、(29)式を利用し高周波位相制御器係数を算定すると、直ちに次を得る。
Figure 2011004579
上の高周波位相制御器係数は、試行錯誤的には選定が難しい桁数の大きく異なる幅のある数値を示している。本高周波位相制御器による高周波残留外乱低減率は、(30)式に示したように、ゼロである。
図5、6と同一条件で実験を行った。数値実験結果を図7に示す。図7の波形の意味は
Figure 2011004579
切に推定されていることが確認される。また、座標系速度ωγには、高周波残留外乱が実質的に出現していないことも確認される。すなわち、(30)式の性質が確認される。高周波残留外乱の回転子推定値への出現有無を除けば、本高周波位相制御器による応答は、図6に示した高周波位相制御器による応答と、過渡応答においても、概ね同様である。これら応答は、すでに解説した「本発明の効果」を裏付けるものである。
続いて、第2実施例を示す。図8に、請求項1〜3の発明を利用した位相速度推定器10の1実施例を示した。高周波電圧指令器10−1、高周波位相同期器10−3は、図5の実施例と同一である。図8と図5の相違は、高周波積信号生成器10−2にある。まず、直流成分除去フィルタFdc(s)を用いて固定子電流から直流成分である駆動用電流を除去し、高周波電流を得る。次に、高周波電流とキャリア逆相信号との内積演算を行い、高周波積信号(高周波位相制御器の入力信号)を生成している。このときのキャリア逆相信号のδ軸要素は、(10)式の第2式が示しているように、高周波電圧指令値のγ軸要素に対して−π/2(rad)の位相差を有する。上記の内積演算は、数式を用いて、以下のように表現することもできる。
Figure 2011004579
キャリア逆相信号との乗算処理(内積処理)に利用する信号としては、(48)式に代わって、次式を利用してもよい。
Figure 2011004579
Figure 2011004579
高周波電圧指令値が(35)、(36)式のようなベクトル信号の場合には、キャリア逆相信号は、これらのγ軸、δ軸要素から直接得ることができる。図8はこの例を示しており、高周波積信号生成器は、実質的に内積器のみで実現できる。また、(37)式のようなγ軸要素しか持たない高周波電圧指令値を利用する場合には、キャリア逆相信号は、高周波電圧指令値のγ軸要素に所定の位相差を付与して生成することになる。
以上は、キャリア逆相信号を利用した実施例であるが、当業者には既に容易に理解できるように、キャリア正相信号を利用する場合も同様である。
続いて、請求項5〜7の発明を利用した1実施例(第3実施例)を示す。電動機駆動制御システムの代表的構成は、図3と概ね同様である。請求項5〜7の発明に基づき構成されている機器が、位相速度推定器10である。図8に、請求項5〜7の発明を利用した位相速度推定器10の1実施例を示した。これは、高周波電圧指令器(HFVCと表示)10−1、逆相成分抽出器10−4、正規化器10−5、最終位相生成器10−6の4機器から構成されている。
本実施例の高周波電圧指令器10−1は、K=1を条件とした(35)式、あるいは(36)式等に基づき、真円軌跡を描く高周波電圧指令値を生成している。逆相成分抽出器10−4は、固定子電流より、高周波電流の逆相成分を抽出する役割を担っている。このときの逆相成分は、印加高周波信号と逆相順にある成分である。逆相成分の抽出には、非特許文献7に解説されているD因子フィルタ等を利用すればよい。抽出された逆相成分は、正規化器10−5へ送られる。正規化器は、逆相成分を正規化し、正規化逆相成分を最終位相生成器10−6へ向け、出力している。
本実施例における最終位相生成器は、先ず、(34)式に示した内積処理を行い、次式の積信号を生成している。
Figure 2011004579
このときの積信号は、(51)式が示しているように、高周波成分を含有しない、直流的な成分である。最終位相生成器では、本積信号を位相同期器で処理して、回転子位相推定値とγδ準同期座標系の速度を出力している。直流的な位相偏差を入力として、回転子位相推定値等を生成出力する役割を担っている位相同期器は、通常の代表的な直流PLL法に基づき構成すればよい。この種の位相同期器の構成法に関しては、非特許文献7等に詳説されており、当業者には公知であるので、これ以上の説明は省略する。位相同期器の出力の1つである座標系速度は、必要に応じてローパスフィルタで処理して、回転子速度推定値として利用される。この点は、図5、8の実施例と同様であるので、これ以上の説明は、省略する。
図8の実施例は、位相速度推定器をγδ準同期座標系上で構成した例である。位相速度推定器は、αβ固定座標系上でも構成可能である。本発明による位相速度推定器を、αβ固定座標系上での構成は、積信号の生成に留意すればよい。積信号の生成上の留意点は非特許文献1、2と同様である。当業者はこれら文献より留意点を容易に理解できるので、これ以上の説明は省略する。
図8の実施例は、印加高周波信号、応答高周波信号を、各々、高周波電圧、高周波電流とした。印加高周波信号、応答高周波信号を、各々、高周波電流、高周波電圧とする場合の構成は、当業者には、図8より容易に理解できるので、これ以上の説明を省略する。
図8の実施例では、最終位相生成器として、直流成分の積信号と位相同期器とを用いた構成にしたが、本発明は、最終位相生成器の構成をこれに限定するものでないことを指摘しておく。
本発明は、同期を電動機をセンサレス駆動する応用の中で、特に、ゼロ速度を含む低速域で高トルク発生を必要とする用途に好適である。
1 同期電動機
2 電力変換器
3 電流検出器
4a 3相2相変換器
4b 2相3相変換器
5a ベクトル回転器
5b ベクトル回転器
6 電流制御器
7 指令変換器
8 速度制御器
9 バンドストップフィルタ
10 位相速度推定器
10−1 高周波電圧指令器
10−2 高周波積信号生成器
10−3 高周波位相同期器
10−4 逆相成分抽出器
10−5 正規化器
10−6 最終位相生成器
11 係数器
12 余弦正弦信号発生器

Claims (7)

  1. 駆動基本周波数より高い周波数をもつ高周波信号の印加に対し回転子が突極特性を示す同期電動機のための駆動制御装置に使用され、かつ、印加高周波信号の応答である応答高周波信号の検出・処理を通じて回転子位相推定値を生成出力する回転子位相推定装置であって、
    高周波電圧印加のために駆動制御装置内の電力変換器への最終電圧指令値に含まれ、かつ、回転子位相推定値を基軸(γ軸)位相とする2軸直交のγδ準同期座標系上で正弦形状となる高周波電圧指令値を固定子電流制御ループ外部で生成する手段と、
    高周波電圧指令値のγ軸要素に対して約−π/2(rad)または約+π/2(rad)の位相差を有する信号をδ軸要素とするキャリア信号を生成し、キャリア信号と高周波電圧指令値に起因した高周波電流とを利用した乗算処理を通じて、またはキャリア信号と高周波電流を含有する固定子電流とを利用した乗算処理を通じて、高周波成分を含有しうる高周波積信号を生成する手段と、
    Figure 2011004579
    理関数(sは微分演算子またはラプラス演算子、cdi,cniは係数)
    Figure 2011004579
    として記述され、高周波積信号自体を直接入力として回転子位相推定値を生成出力する高周波PLL手段と、
    を備えることを特徴とする回転子位相推定装置。
  2. 該高周波PLL手段を記述した該有理関数の係数を、該印加高周波電圧指令値の振幅、周波数等から定まる信号係数Kθをもつ多項式
    Figure 2011004579
    うに、定めることを特徴とする請求項1記載の回転子位相推定装置。
  3. 該高周波積信号の生成をγδ準同期座標系上で遂行することを特徴とする請求項1記載の回転子位相推定装置。
  4. 該キャリア信号のγ軸要素を常時ゼロとし、該キャリア信号を実質的にスカラ信号とすることを特徴とする請求項1記載の回転子位相推定装置。
  5. 駆動基本周波数より高い周波数をもつ高周波信号の印加に対し回転子が突極特性を示す同期電動機のための駆動制御装置に使用され、かつ、印加高周波信号の応答である応答高周波信号の検出・処理を通じて回転子位相推定値を生成出力する回転子位相推定装置であって、
    高周波信号印加のために駆動制御装置内の電力変換器への最終信号指令値に含まれ、かつ、真円軌跡を描く高周波信号指令値を生成する手段と、
    高周波信号指令値に起因した応答高周波信号の中から、印加高周波信号に対し逆相順となる逆相成分を抽出する手段と、
    抽出した逆相成分をベクトルとして捕らえ、このノルムを1に代表される値に正規化して、正規化逆相成分を生成する手段と、
    高周波信号指令値に対し逆相順となるキャリア信号を生成し、生成キャリア信号を用いて正規化逆相成分を処理し、回転子位相推定値を生成出力する手段と、
    を備えることを特徴とする回転子位相推定装置。
  6. 生成される該高周波信号指令値を高周波電圧指令値とし、これに起因した該応答高周波信号を高周波電流とすることを特徴とする請求項5記載の回転子位相推定装置。
  7. 該キャリア信号を用いた該正規化逆相成分の処理を、回転子位相推定値を基軸(γ軸)位相とする2軸直交のγδ準同期座標系上で遂行することを特徴とする請求項5記載の回転子位相推定装置。
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