JP2011002481A - 雑音除去装置および雑音除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 非定常的なノイズ信号が発生する環境においても、ノイズ信号を高精度で予測してノイズキャンセル信号を生成することで、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消す。
【解決手段】 本発明の雑音除去装置は、外部の音を収音して音信号に変換するマイクロホン110と、変換された音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成する予測信号生成部118と、変換された音信号に基づいて第1閾値を導出する閾値導出部120と、予測信号の絶対値が導出された第1閾値を超えないように予測信号を補正する予測信号補正部122と、補正された予測信号を反転する予測信号反転部124と、原音信号に反転された予測信号を加算する加算器128と、反転された予測信号が加算された原音信号を出力するスピーカ132と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、外部からのノイズ(雑音)によって所望する原音の音質が損なわれるのを防止することが可能な雑音除去装置および雑音除去方法に関する。
ヘッドホンから出力された音(原音)は、空間等の伝送路を通じてそのヘッドホンを装着している人の耳に伝達される。従って、所望する原音以外の所謂ノイズも同伝送路を通じて人の耳に伝達されてしまい、所望する原音の音質が損なわれる。
そこで、ヘッドホンの外側にモニタ用マイクロホンを設置し、そのマイクロホンの出力を反転した信号をノイズキャンセル信号とし、原音信号に加算してスピーカから出力することで、外部からのノイズを打ち消すヘッドホンが知られている。かかるノイズキャンセル信号は、アナログ回路のみならずデジタル回路を用いて生成することもできる。
しかし、デジタル回路を用いてノイズキャンセル信号を生成すると、実際のノイズと計算されたノイズキャンセル信号との間に遅延による位相差が生じ、十分にノイズを打ち消すことができなかった。そこで、ノイズ信号の過去から現在までの一定数のサンプリングデータから一定数先のサンプリングデータを予測し、位相を合わせてその予測した信号を加算する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
特開2007−189530号公報
上述したように、特許文献1の技術では、定常的(周期的)なノイズ、例えば、オフィスのエアコンの動作音、飛行機等の乗物のエンジン音等については、精度の高い予測を行うことができるため、ある程度のノイズを打ち消すことができる。
しかし、非定常的なノイズ、例えば、周囲の会話やアナウンス放送等の音声、事務機器や家具の接触音、電車内に響くレールの段差と車輪との接触音等、予測が困難でありかつ音圧が高いノイズが、上述の定常的なノイズに加わると、装置側がその非定常的なノイズ信号までも予測しようとして、その後のノイズの予測が予測誤差による精度悪化に伴い信頼性の低下を招くことがある。かかる音圧の高い非定常的なノイズによる影響を、音圧の低い定常的なノイズによって元に戻すのには時間を要する。
このように、ノイズ信号の予測誤差が大きくなると、ノイズキャンセル信号はノイズをキャンセルできなくなるばかりか、ノイズキャンセル信号自体がノイズとして作用し原音の音質を損ねてしまう。
本発明は、このような課題に鑑み、非定常的なノイズ信号が発生する環境においても、ノイズ信号を高精度で予測してノイズキャンセル信号を生成することで、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能な雑音除去装置および雑音除去方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の雑音除去装置は、外部の音を収音して音信号に変換するマイクロホンと、変換された音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成する予測信号生成部と、変換された音信号に基づいて第1閾値を導出する閾値導出部と、予測信号の絶対値が導出された第1閾値を超えないように予測信号を補正する予測信号補正部と、補正された予測信号を反転する予測信号反転部と、原音信号に反転された予測信号を加算する加算器と、反転された予測信号が加算された原音信号を出力するスピーカと、を備えることを特徴とする。
収音した音信号に音圧が高い非定常的なノイズ信号が含まれている場合に、単純に将来の音信号を予測した予測信号を生成してしまうと、予測信号の音圧も不用意に高くなり予測誤差が拡大する。そこで、本発明の雑音除去装置は、予測信号の音圧(絶対値)が第1閾値を超えた場合に、第1閾値以下の音圧に補正することで、非定常ノイズ成分の影響を回避する。従って、定常的ノイズ信号を想定した適切な予測信号を生成し、反転処理を加えノイズキャンセル信号として原音信号に加算することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
上記第1閾値は、音信号の絶対値の所定期間における、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅のいずれかに基づいて導出されてもよい。
本発明の雑音除去装置は、音信号を所定期間サンプリングすることで、音信号に含まれる非定常的なノイズ信号の影響を平滑化して抑えることができる。また、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅等を上限値とすることで妥当な予測信号を求めることが可能となる。
上記予測信号補正部は、その絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以上となる補正された予測信号に低域通過フィルタリングを施してもよい。
音圧が第1閾値より大きい予測信号を第1閾値を超えないように上限を設け補正する場合、予測信号が第1閾値に到達または離脱するエッジ部分において、予測信号の音圧の変化軌跡が急激に変化する矩形部分が生じる場合がある。この変化軌跡の急激な変化は、最終的に出力される原音信号に高周波数成分のノイズとして影響してしまう。本発明の雑音除去装置は、予測信号に低域通過フィルタリングを施すことで、変化軌跡の急激な変化による高周波数成分のノイズを抑えることができる。
上記予測信号補正部は、その絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以下の予測信号を補正せず、その絶対値が、第2閾値以上となる予測信号には上限を第1閾値とする漸増関数を乗じてもよい。
かかる構成により、音圧が第2閾値以上の予測信号を、第1閾値に漸近するように補正でき、補正後の予測信号の音圧の変化が緩やかになり、音圧の急激な変化を抑えることができる。
上記課題を解決するために、本発明の他の雑音除去装置は、外部の音を収音して音信号に変換するマイクロホンと、変換された音信号に基づいて第1閾値を導出する閾値導出部と、音信号の絶対値が導出された第1閾値を超えないように音信号を補正する音信号補正部と、音信号補正部が補正した音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成する予測信号生成部と、予測信号を反転する予測信号反転部と、原音信号に反転された予測信号を加算する加算器と、反転された予測信号が加算された原音信号を出力するスピーカと、を備えることを特徴とする。
本発明の雑音除去装置は、音信号の音圧(絶対値)が第1閾値を超えた場合に、予測信号の生成前に第1閾値以下の音圧に補正する。従って、予測信号の予測対象である音信号自体を抑制し、予測誤差を縮小した適切な予測信号をノイズキャンセル信号として原音信号に加算することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
上記雑音除去装置は、予測信号の絶対値が第1閾値を超えないように予測信号を補正する予測信号補正部をさらに備え、予測信号反転部は、補正された予測信号を反転してもよい。
本発明の雑音除去装置は、音圧が第1閾値を超える音信号を、予測信号の生成前に第1閾値以下の音圧に補正するとともに、補正後の音信号に基づいて生成した予測信号についても、音圧が第1閾値を超える区間を、第1閾値以下の音圧に補正することで、予測誤差を縮小することができる。
上記第1閾値は、音信号の絶対値の所定期間における、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅のいずれかに基づいて導出されてもよい。
本発明の雑音除去装置は、音信号を所定期間サンプリングすることで、音信号に含まれる非定常的なノイズ信号の影響を平滑化して抑えることができる。また、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅等を上限値とすることで妥当な予測信号を求めることが可能となる。
上記音信号補正部は、その絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以上となる補正された音信号に低域通過フィルタリングを施してもよい。
音圧が第1閾値より大きい音信号を第1閾値を超えないように上限を設け補正する場合、音信号が第1閾値に到達または離脱するエッジ部分において、音信号の音圧の変化履歴が急激に変化する矩形部分が生じる場合がある。この音圧の変化軌跡の急激な変化は、最終的に出力される原音信号に高周波数成分のノイズとして影響してしまう。本発明の雑音除去装置は、音信号に低域通過フィルタリングを施すことで、音圧の急激な変化による高周波数成分のノイズを抑えることができる。
上記音信号補正部は、その絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以下の音信号を補正せず、その絶対値が、第2閾値以上となる音信号には上限を第1閾値とする漸増関数を乗じてもよい。
かかる構成により、音圧が第2閾値以上の音信号を、第1閾値に漸近するように補正でき、補正後の音信号の音圧の変化が緩やかになり、音圧の急激な変化を抑えることができる。
上記課題を解決するために、本発明の雑音除去方法は、外部の音を収音して音信号に変換し、変換した音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成し、変換した音信号に基づいて第1閾値を導出し、予測信号の絶対値が導出した第1閾値を超えないように予測信号を補正し、補正した予測信号を反転し、原音信号に反転した予測信号を加算し、反転した予測信号を加算した原音信号を出力することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の他の雑音除去方法は、外部の音を収音して音信号に変換し、変換した音信号に基づいて第1閾値を導出し、音信号の絶対値が導出した第1閾値を超えないように音信号を補正し、補正した音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成し、予測信号を反転し、原音信号に反転した予測信号を加算し、反転した予測信号を加算した原音信号を出力することを特徴とする。
上述した雑音除去装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該雑音除去方法にも適用可能である。
本発明の雑音除去装置は、非定常的なノイズ信号が発生する環境においても、ノイズ信号を精度よく予測しノイズキャンセル信号を生成することで、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
第1の実施形態にかかるヘッドホンの電気的な構成を示した機能ブロック図である。 ノイズ信号の音圧の推移を示した時間波形図である。 予測信号の補正の例を示した時間波形図である。 予測信号の補正の他の例を示した説明図である。 第1の実施形態にかかるヘッドホンを用いた雑音除去方法の全体の処理の流れを説明したフローチャートである。 第2の実施形態にかかるヘッドホンの電気的な構成を示した機能ブロック図である。 第2の実施形態にかかるヘッドホンを用いた雑音除去方法の全体の処理の流れを説明したフローチャートである。 第3の実施形態にかかるヘッドホンの電気的な構成を示した機能ブロック図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
以下の実施形態では、雑音除去装置として、ヘッドホン(ノイズキャンセルヘッドホン)を例に挙げているが、かかる場合に限られず、例えば、イヤホン、携帯電話、PHS、トランシーバ等、ユーザが耳に装着したり押しあてたりすることで、ユーザに音声(音)を聞き取らせることができる電気機器を用いることが可能である。
以下の実施形態におけるヘッドホンは、そのヘッドホンの内側(耳に面した側)から所望する音楽等の原音の音声信号である原音信号をユーザに対して出力する際、外部から侵入してくる不特定のノイズを、例えばユーザの耳等の所望する点で相殺することを目的としている。ここでは、ヘッドホンの外側(外部)にマイクロホンを設置し、そのマイクロホンが収音した音信号を反転し、ノイズキャンセル信号として原音信号に加えヘッドホンの内側に設けたスピーカから出力する。スピーカから出力されたノイズキャンセル音は外部のノイズと打ち消し合い(相殺し)、ユーザはノイズが排除された原音のみを聞くことが可能となる。
かかるノイズキャンセル信号は、アナログ回路のみならずデジタル回路を用いて生成することができる。デジタル回路を用いるデジタル方式では、アナログ回路に特有の個々の部品の特性のばらつきによる計算誤差がないので収音した音信号を正確に反転できる。また、デジタル回路の方がアナログ回路よりも詳細な信号処理に適しているので、原音信号に音質向上効果を加えることが容易となる。しかし、かかるデジタル回路を用いてノイズキャンセル信号を生成すると、実際のノイズと計算されたノイズキャンセル信号との間に遅延による位相差が生じ、そのままでは十分にノイズを打ち消すことができない。
そこで、デジタル回路を用いたヘッドホンは、マイクロホンが収音した音信号から将来の音信号を予測し予測信号を生成する。かかる予測信号を用いることで、ノイズ音をノイズキャンセル音で相殺する際、ノイズ音との位相を合わせることができる。
しかし、予測信号を生成する際、上述した非定常的なノイズ、即ち、予測が困難でありかつ音圧が高いノイズが音信号に含まれると、予測信号の予測誤差が大きくなってしまう。以下の実施形態では、この非定常的なノイズが発せられる環境においても、予測信号の予測誤差を小さく抑えノイズを適切に打ち消すことができるデジタル方式のヘッドホンについて詳述する。また、以下の実施形態では、特に、ヘッドホンの筐体(ハウジング)の外側にマイクロホン(収音部)を持つフィードフォワード型の構造を例に挙げる。
(第1の実施形態:ヘッドホン100)
図1は、第1の実施形態にかかるヘッドホン100の電気的な構成を示した機能ブロック図である。ヘッドホン100は、マイクロホン110と、マイクアンプ112と、ADC(Analog Digital Converter)114と、LPF(Low Pass Filter)116と、予測信号生成部118と、閾値導出部120と、予測信号補正部122と、予測信号反転部124と、DAC(Digital Analog Converter)126と、加算器128と、増幅器130と、スピーカ132と、を含んで構成される。
マイクロホン110は、物理振動を電気信号に変換する機器であり、ヘッドホン100の外部の音を収音して音信号に変換する。従って、マイクロホン110周囲のノイズ源150から発せられたノイズを音信号に変換できる。また、本実施形態に適用可能なマイクロホン110は、任意の伝達媒体の振動を音信号に変換できれば足り、例えば、コンデンサマイク、ダイナミックマイク、リボンマイク、圧電マイク、カーボンマイク等を用いることができる。
本実施形態の目的は、少なくともユーザの耳の位置におけるノイズをキャンセルしユーザの聴覚にノイズの影響を与えないことにある。従って、マイクロホン110をユーザの耳の近傍、例えば、ヘッドホン100の耳を覆うハウジングに配置し、その位置で収音したノイズをユーザの耳に入るノイズとみなしてノイズキャンセル信号を生成する。
マイクアンプ112は、マイクロホン110が変換した音信号の振幅を増幅する増幅器である。また、マイクアンプ112には標本化定理に基づいて、折り返しノイズ(エイリアシングノイズ)を除去するLPFが含まれる。
ADC114は、マイクアンプ112が増幅した音信号を所定のサンプリング周波数でデジタル信号に変換する。
LPF116は、所定の周波数以上の信号を減衰させることで所定の周波数未満の周波数のみを通過させるフィルタである。本実施機形態のヘッドホン100では、ユーザの耳をハウジングで覆うことによる遮音効果によって、ノイズのうち高周波数成分(1〜2kHz以上)を低減することができる。従って、ノイズの高周波数成分がユーザに知覚される可能性は低域の成分に比べて極めて低く、予測処理の過程において新たに生成された高周波数帯域のノイズキャンセル信号は却って原音の音質を損ねてしまう。ここでは、予測信号生成に不要なノイズ信号の高周波数成分を排除している。
かかる構成により、後述する予測信号の周波数帯域も絞ることができるため、計算負荷を軽減でき予測信号の精度を向上することが可能となる。また、予測信号の予測誤差が大きくなってしまう場合であっても、原音信号へ影響を及ぼす周波数帯域を限定できる。
本実施形態では、ADC114によってデジタル信号に変換された後の音信号に対しLPF116をかけているが、ADC114の前に同等の特性を有するLPF116を設け、デジタル信号に変換される前のアナログ信号の高周波数成分(高域成分)を減衰してもよい。
また、ノイズ源150からマイクロホン110の位置に到達したノイズは、ヘッドホン100自体を振動させたりヘッドホン100の周囲の空気を振動させたりしてユーザの耳に伝播する。従ってノイズは、耳に伝達されるまでに、ヘッドホン100の筐体およびユーザの顔の輪郭や耳の形等に基づく所定の伝達特性の影響を受ける。顔の輪郭や耳の形等は個人差があるものの、少なくとも形状・性質が分かっているヘッドホン100の筐体の影響は測定でき、その伝達特性は予め算出することが可能である。
上述したLPF116は、高周波数成分を除いた音信号に対して、さらにこの伝達特性を加味した変換処理を施す。かかる構成により、音信号を、実際に耳に到達するノイズの信号により近づけることができる。
また、LPF116は、低域の信号を対象とした予測信号を生成する際に演算負荷低減効果のあるダウンサンプリング処理を施す場合、折り返しノイズ(エイリアシングノイズ)を除去するデシメーションフィルタとしても機能する。
予測信号生成部118は、ADC114がデジタル信号に変換し、LPF116がフィルタリングを施した音信号の履歴に基づいて、将来の音信号を予測した予測信号を生成する。
かかる予測信号生成部118の予測信号の生成法は、例えば高次関数を組み合わせた前方線形予測法、統計的手法であるバーグ法、自体の相関性を基に将来の信号を算出するLMS(Least Mean Square)法等、既存の様々な方法を用いることができる。これらの予測方法は、有限長のタップ数を持つFIR(Finite Impulse Response)フィルタ構造を用い、現在および過去の1または複数のサンプルとフィルタ係数(予測係数)に基づいて導出した値の積和を取ることで、将来のサンプル(予測信号)を予測するものである。
本実施形態において、求めるべき予測信号は、ADC114およびDAC126における変換処理により生じる変換遅延と、デジタル信号処理における計算遅延と、ノイズの伝播時間を考慮し、ノイズの伝播に対する遅延分を補償する将来のサンプル点である。
すなわち、マイクロホン110の位置からユーザの耳まで、実際に筐体や空気を振動させて伝播する経路Aと、マイクロホン110の位置で収音されデジタル処理等を施されてからスピーカ132を介してユーザの耳まで伝搬する経路Bとで、ノイズの位相を合わせる。以下、ノイズの位相を合わせるためにどの程度先のサンプル点を予測する必要があるかについて、単純化した数値を用いた計算例を示す。
例えば、一般的なオーディオ機器のADCおよびDACの変換処理にかかる遅延量はサンプル数で表すと約10サンプル程度であり、デジタル信号処理およびその前後のバッファにかかる遅延量は10サンプル程度であるものとする。従って経路Bでは、マイクロホン110の位置からスピーカ132の位置までに、これらの処理分を合わせて20サンプル程度の遅延が生じる。
経路Bに対して、経路Aでは、マイクロホン110の位置からスピーカ132の位置までに、筐体を振動させて伝播するために、所定の時間を要する。かかる伝播の距離(マイクロホン110の位置からスピーカ132の位置までの筐体の厚み)を、例えば3.5cm程度として、伝搬時間を計算する。
サンプリング周波数が96kHzである場合、1秒間に96000個のサンプルを取ることとなる。また、音速を340m/sとすると、ノイズは1秒間に340000mmの距離を進む。この場合、隣り合ったサンプル間の間隔は、340000/96000=3.5mmに相当する。従ってノイズが伝播する距離3.5cmに対して、約10サンプル分程度の伝播時間を要する。
スピーカ132からユーザの耳までの伝播は、経路Aと経路Bで同一とみなすことができるため、伝搬時間は相殺できる。従って、マイクロホン110の位置からスピーカ132の位置まで、経路Aでは、10サンプル分、経路Bでは20サンプル分の時間を要することとなり、経路Bに10サンプル分の遅延が生じる。すなわち、予測信号生成部118は、10サンプル分将来のサンプルを予測すればよい。
かかる遅延量は、温度変化やヘッドホン100の装着具合等により多少の誤差は生じるものの、影響は極めて軽微であるため、予め導出しておくことができる。
上述したように、LPF116は、デシメーションフィルタとしても機能するため、ADC114がアナログ信号をデジタル信号に変換する際のサンプリング周波数を落とすことができる。サンプリング周波数が落ちれば、予測信号生成部118が予測する予測信号のサンプル数も減るため処理負荷を軽減できる。さらに、予測信号を低次成分で予測可能であるため予測信号の急激な変化が減り、予測誤差を抑えることができる。
例えば、上述した経路Aおよび経路Bの場合、予測信号生成部118は、10サンプル先のサンプル点を予測すれば遅延を補償できる。ここで、例えば、サンプリング周波数を1/10の9.6kHzとしてダウンサンプリングすると、1サンプル先のサンプル点を予測すれば、遅延を補償できることになる。このように、サンプリング周波数を落とすことで、処理負荷を軽減でき、さらに、例えば、1〜数サンプル先を予測すればよくなるので、妥当な予測精度を保つことができる。
上述した構成により、予測信号生成部118は、定常的なノイズだけであれば、妥当な予測信号を生成することができる。しかし、ノイズに非定常的なノイズが含まれる場合、予測誤差が無視できないレベルまで拡大してしまう可能性がある。以下、図2を用いて非定常的なノイズの影響について説明する。
図2は、ノイズ信号の音圧の推移を示した時間波形図である。特に、図2(a)は定常的なノイズ信号の一例を示し、図2(b)は図2(a)の時間波形の一部分である0.02秒間についてゲインを4倍に拡大したものであり、図2(c)は定常的なノイズ信号および非定常的なノイズ信号を共に含むノイズ信号の一例を示している。
図2(a)は、例えば、飛行機の機内で収音したノイズ信号の波形であり、特にエンジン音以外の音が少ない時間帯の約3秒間の時間波形を示している。ここでノイズ信号は予めLPFを通過し約2kHz以下の帯域に制限されている。図2(a)を拡大した図2(b)に示すように、ノイズ信号には連続性があり、予測信号生成部118は、上述した予測方法で十分な精度で予測信号を生成することが可能である。
一方、図2(c)は、例えば、電車内で収音したノイズ信号であり、定常的なノイズに車輪とレールの継ぎ目の摩擦音、周囲の人の会話音、車内アナウンス等の非定常的なノイズ信号が加わっている。図2(c)において、音圧が高いノイズ源が多数存在しており、このような状態では、将来のノイズ信号を予測することは困難である。
そこで、本実施形態のヘッドホン100において、以下に示す構成により、非定常的なノイズの影響を抑え予測信号の精度を向上する。
閾値導出部120は、マイクロホン110によって変換された音信号の音圧基準値を一旦導出し、その音圧基準値に基づいて第1閾値を導出する。音圧基準値は、音信号の絶対値の所定期間における、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅のいずれかであるものとする。また、音圧基準値として、所定期間の平均エネルギーを√2倍した値や、所定期間のピークレベルの平均値を採用することもできる。
ここで、第1閾値は、例えば、上述した音圧基準値そのものとしてもよいし、音圧基準値に所定の係数を乗じた値としてもよい。第1閾値は音信号の音圧の上限値であるため、本来、音圧の平均値(平均エネルギー、平均振幅)や最大値(最大エネルギー、最大振幅)よりも大きく設定する。しかし、予測精度を多少犠牲にしても予測信号を抑制した方が、ノイズ抑制のための妥当な値を得ることができる。
本実施形態においては、かかる音圧が高い音信号を補正の対象とするため、第1閾値を音圧の平均値や最大値に置換することで、音圧が高い信号の補正対象を広げ、非定常的なノイズの影響を抑えることができる。
この場合の所定期間は、非定常的(突発的)なノイズ信号の影響を抑えるためにも数秒間程度とすることができる。定常的なノイズの音圧基準値が変動する場合もあるため、所定期間は有限な値とし、第1閾値は適宜更新する。
本実施形態のヘッドホン100は、音信号を所定期間サンプリングすることで、音信号に含まれる非定常的なノイズ信号の影響を平滑化して抑えることができる。また、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅等を上限値(第1閾値)とすることで妥当な予測信号を求めることが可能となる。
予測信号補正部122は、予測信号の絶対値が閾値導出部120によって導出された第1閾値を超えないように予測信号を補正する。
図3は、予測信号の補正の例を示した時間波形図である。特に、図3(a)は、非定常的なノイズの影響で振幅が大きくなった補正前の予測信号を示し、図3(b)は、図3(a)の予測信号を予測信号補正部122が補正した後の予測信号を示す。
図3(a)に示す第1閾値を大きく超えた振幅の予測信号は、非定常的なノイズの影響を受けたものである可能性が高く実際のノイズからは乖離しているため、そのまま出力してしまうと原音を損ねてしまう。
そこで、図3(b)に示すように、予測信号補正部122は、第1閾値を超える予測信号のサンプル値を補正する。本実施形態では予測信号の絶対値を対象としているため、予測信号補正部122は、予測信号が正の値でかつ第1閾値以上の場合(図3(b)中白丸の点)、予測信号を第1閾値(図3(b)中黒丸の点)に置き換え、予測信号が負の値でかつ−(マイナス)第1閾値以下の場合(図3(b)中白丸の点)、予測信号を−第1閾値(図3(b)中黒丸の点)に置き換える。かかる構成により、非定常的なノイズに基づく不本意なノイズキャンセル信号によって原音信号に影響を与えることを回避できる。
さらに、予測信号補正部122は、補正された予測信号の絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以上である場合に低域通過フィルタリングを施す。ここでは第2閾値を、例えば、第1閾値の1/2の値とするが、第1閾値より小さい値であればよい。
音圧が第1閾値より大きい予測信号を、第1閾値を超えないように上限を設け補正する場合、予測信号が第1閾値に到達または離脱するエッジ部分180(図3(b)を参照)において、予測信号の音圧の変化軌跡が急激に変化する短形部分が生じる場合がある。この変化軌跡の急激な変化は、最終的に出力される原音信号に高周波数成分のノイズとして影響してしまう。本実施形態のヘッドホン100は、予測信号に低域通過フィルタリングを施すことで、変化軌跡の急激な変化による高周波数成分のノイズを抑えることができる。
また、予測信号補正部122は、その絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以下の予測信号を補正せず、その絶対値が第2閾値以上となる予測信号には上限を第1閾値とする漸増関数を乗じてもよい。
図4は、予測信号の補正の他の例を示した説明図である。特に、図4(a)は、非定常的なノイズの影響で振幅が大きくなった補正前の予測信号を示し、図4(b)は、予測信号と補正前後の値の対応関係を示し、図4(c)は、図4(a)の予測信号を予測信号補正部122が補正した後の予測信号を示す。
図3(a)と同様、図4(a)においても、補正前は、振幅の絶対値が第1閾値を大きく超えた予測信号がある。この予測信号(図4(c)中白丸の点)に対して、図4(b)に示す上限を第1閾値とする漸増関数を用いて導出した補正値によって、第1閾値を超える予測信号のサンプル値を第1閾値以下の点(図4(c)中黒丸の点)に置き換える。ここでは、漸増関数を用いて補正後の値を導出する例を示したが、かかる漸増関数を、所定数の補正前の値と補正後の値とを対応付けたテーブルで表し、処理効率の向上を図ることも可能である。
補正が為されると、図4(c)に示すように、予測信号は、第2閾値から第1閾値までの間で、緩やかな曲線を描く。ここで、第2閾値未満の予測信号については、補正を行わずそのままの値とする。
このように、音圧が第2閾値以上の予測信号を、第1閾値に漸近するように補正でき、補正後の予測信号の音圧の変化が緩やかになるため、音圧の急激な変化を抑えることができる。
予測信号反転部124は、予測信号補正部122によって補正された予測信号を逆位相に反転する。DAC126は、予測信号反転部124によって反転された予測信号(ノイズキャンセル信号)をデジタル信号からアナログ信号に変換する。
加算器128は、原音信号に、予測信号反転部124によって反転され、DAC126によってアナログ信号に変換された予測信号を加算する。原音信号に反転された予測信号を加算する事で、原音信号はノイズ低減効果を伴った信号となる。ここで、原音信号がデジタル信号である場合、加算器128は、予測信号反転部124とDAC126の間に配置する。
増幅器130は、反転された予測信号を加算した原音信号を、所定の音圧に増幅する。
スピーカ132は、電磁素子や圧電素子などの電気信号を物理振動に変換する振動素子によって構成される機器である。スピーカ132は、反転された予測信号が加算された原音信号を物理振動に変換して出力する。
スピーカ132から出力された原音には、遅延分を位相補償された予測信号の逆位相成分が含まれ、ヘッドホン100の筐体を通過したノイズとユーザの耳で打ち消し合うため、ユーザの耳には原音のみが届くこととなる。
上述したように、収音した音信号に音圧が高い非定常的なノイズ信号が含まれている場合に、単純に将来の音信号を予測した予測信号を生成してしまうと、予測信号の音圧も不用意に高くなり予測誤差が拡大する。そこで、本実施形態のヘッドホン100は、予測信号の音圧(絶対値)が第1閾値を超えた場合に、第1閾値以下の音圧に補正することで、非定常ノイズ成分の影響を回避する。従って、定常的ノイズ信号を想定した適切な予測信号を生成し、反転処理を加えノイズキャンセル信号として原音信号に加算することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
続いて上述したヘッドホン100を用いた雑音除去方法について、フローチャートを用いて説明する。
(雑音除去方法)
図5は、第1の実施形態にかかるヘッドホン100を用いた雑音除去方法の全体の処理の流れを説明したフローチャートである。
サンプリング周期が到来すると(S200のYES)、マイクロホン110は外部の音を収音して音信号に変換する(S202)。マイクアンプ112は、マイクロホン110が変換した音信号の振幅を増幅する(S204)。ADC114は、マイクアンプ112が増幅した音信号を所定のサンプリング周波数でデジタル信号に変換する(S206)。
続いて、LPF116は、音信号のうち高周波数成分を遮断する(S208)。予測信号生成部118は、マイクロホン110によって変換された音信号の履歴に基づいて、将来の音信号を予測した予測信号を生成する(S210)。
そして、前回第1閾値を導出してから所定時間(所定期間)が経過しているか否かを判定し(S212)、所定時間が経過していた場合(S212のYES)、その所定時間の間の音圧基準値から第1閾値を導出し第1閾値を更新する(S214)。所定時間が経過していなかった場合(S212のNO)第1閾値を更新せずそのまま予測信号補正ステップ(S216)に進む。
そして予測信号補正部122は、予測信号の絶対値が導出された第1閾値を超えないように予測信号を補正する(S216)。続いて、予測信号反転部124は、予測信号補正部122によって補正された予測信号を逆位相に反転する。(S218)。
DAC126は、予測信号反転部124によって反転された予測信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する(S220)。加算器128は、原音信号に、DAC126によってアナログ信号に変換された予測信号を加算する(S222)。
そして、増幅器130は、反転された予測信号を加算した原音信号を、所定の音圧に増幅する(S224)。スピーカ132は、反転された予測信号が加算された原音信号を物理振動に変換して出力する(S226)。
かかる処理は、ヘッドホン100が起動している間、例えば、所定のサンプリング周期ごとに繰り返し実行される。
上述したように、本実施形態の雑音除去方法によれば、収音した音信号に音圧が高い非定常的なノイズ信号が含まれている場合においても、音圧が第1閾値を超える予測信号を、第1閾値以下の音圧に補正することで、予測信号の予測誤差を縮小する。従って、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
第1の実施形態では、予測信号から非定常的なノイズの影響による部分を取り除くことで、予測信号の予測誤差を抑えるヘッドホン100について説明した。続いて、第2の実施形態では、予測信号自体には補正を行わず、予測信号の予測対象である音信号に対して、非定常的なノイズの影響を排除する処理を行うヘッドホンについて説明する。なお、上述したヘッドホン100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
(第2の実施形態:ヘッドホン300)
図6は、第2の実施形態にかかるヘッドホン300の電気的な構成を示した機能ブロック図である。ヘッドホン300は、マイクロホン110と、マイクアンプ112と、ADC114と、LPF116と、予測信号生成部118と、閾値導出部120と、予測信号反転部124と、DAC126と、加算器128と、増幅器130と、スピーカ132と、音信号補正部334と、を含んで構成される。
音信号補正部334は、音信号の絶対値が閾値導出部120によって導出された第1閾値を超えないように音信号を補正する。予測信号生成部118は、音信号補正部334が補正した音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成する。
第1の実施形態と同様、音圧基準値は、音信号の絶対値の所定期間における、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅のいずれかであってもよく、第1基準値は、その音圧基準値に基づいて導出される。
本実施形態のヘッドホン300は、音信号を所定期間サンプリングすることで、音信号に含まれる非定常的なノイズ信号の影響を平滑化して抑えることができる。また、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅等を上限値(第1閾値)とすることで妥当な予測信号を求めることが可能となる。
音信号補正部334は、その絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以上の補正された音信号に低域通過フィルタリングを施してもよい。
音圧が第1閾値より大きい音信号を第1閾値を超えないように上限を設け補正する場合、予測信号が第1閾値に到達または離脱するエッジ部分において、音信号の音圧の変化履歴が急激に変化する短形部分が生じる場合がある。この音圧の変化軌跡の急激な変化は、最終的に出力される原音信号に高周波数成分のノイズとして影響してしまう。本実施形態のヘッドホン300は、音信号に低域通過フィルタリングを施すことで、音圧の急激な変化による高周波数成分のノイズを抑えることができる。
また、音信号補正部334は、その絶対値が、第1閾値より小さい第2閾値以下の音信号を補正せず、その絶対値が、第2閾値以上の音信号には上限を第1閾値とする漸増関数を乗じてもよい。
かかる構成により、音圧が第2閾値以上の音信号を、第1閾値に漸近するように補正でき、補正後の音信号の音圧の変化が緩やかになるため、音圧の急激な変化を抑えることができる。
このように、第1の実施形態と異なり、第2の実施形態のヘッドホン300は、予測信号補正部122を備えず、予測信号自体は補正しない。その代りに、音信号の音圧(絶対値)が第1閾値を超えた場合に、予測信号の生成前に第1閾値以下の音圧に補正する。従って、予測信号の予測対象である音信号自体を抑制し、予測誤差を縮小した適切な予測信号をノイズキャンセル信号として原音信号に加算することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
続いて上述したヘッドホン300を用いた雑音除去方法について、フローチャートを用いて説明する。
(雑音除去方法)
図7は、第2の実施形態にかかるヘッドホン300を用いた雑音除去方法の全体の処理の流れを説明したフローチャートである。この雑音除去方法は、図5の雑音除去方法と異なり、マイクロホン110によって変換された音信号を、第1閾値を超えないように補正してから予測信号を生成する。サンプリング周期判定ステップ(S200)から高周波数成分遮断ステップ(S208)までの処理は、図5において説明した処理と実質的に等しいため、同一の符号を付して説明を省略する。
音信号に含まれる高周波数成分を遮断した後(S208)、予測信号を生成する前に、前回第1閾値を導出してから所定時間が経過しているか否かを判定する(S212)。所定時間が経過していた場合(S212のYES)、その所定時間の間の音圧基準値を導出し第1閾値を更新する(S214)。所定時間が経過していなかった場合(S212のNO)第1閾値を更新せずそのまま音信号補正ステップ(S428)に進む。
音信号補正部334は、音信号の絶対値が閾値導出部120によって導出された第1閾値を超えないように音信号を補正する(S428)。予測信号生成部118は、マイクロホン110によって変換された音信号の履歴に基づいて、将来の音信号を予測した予測信号を生成する(S210)。
以下、予測信号反転ステップ(S210)から出力ステップ(S226)までの処理は、図5において説明した処理と実質的に等しいため説明は省略する。
上述したように、本実施形態の雑音除去方法によれば、収音した音信号に音圧が高い非定常的なノイズ信号が含まれている場合においても、音圧が第1閾値を超える音信号を、第1閾値以下の音圧に補正することで、かかる音信号に基づいて生成した予測信号の予測誤差を縮小する。従って、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
上述した第1の実施形態では予測信号を、第2の実施形態では音信号を、それぞれ、補正するヘッドホン100、300について説明した。続いて、第3の実施形態では、音信号および予測信号それぞれを補正するヘッドホンについて説明する。なお、上述したヘッドホン100、300と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
(第3の実施形態:ヘッドホン500)
図8は、第3の実施形態にかかるヘッドホン500の電気的な構成を示した機能ブロック図である。ヘッドホン500は、マイクロホン110と、マイクアンプ112と、ADC114と、LPF116と、予測信号生成部118と、閾値導出部120と、予測信号補正部122と、予測信号反転部124と、DAC126と、加算器128と、増幅器130と、スピーカ132と、音信号補正部334と、を含んで構成される。
ヘッドホン300と同様、音信号補正部334は音信号の絶対値が閾値導出部120によって導出された第1閾値を超えないように音信号を補正する。そして、予測信号生成部118は、補正された音信号に基づいて予測信号を生成し、その後、予測信号補正部122が第1閾値を超えないように予測信号を補正する。
本実施形態のヘッドホン500は、音圧が第1閾値を超える音信号を、予測信号の生成前に第1閾値以下の音圧に補正するとともに、補正後の音信号に基づいて生成した予測信号についても、音圧が第1閾値を超える区間を、第1閾値以下の音圧に補正することで、予測誤差を縮小することができる。
また、ヘッドホン500についても、ヘッドホン100、300と同様、第2閾値を設定し、低域通過フィルタリングを施したり、漸増関数を乗じたりして、補正を行ってもよい。このとき、音信号を補正する際に利用する第1閾値および第2閾値と、予測信号を補正する際に利用する第1閾値および第2閾値とは、同じ値でもよいし、異なる値としてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上述した実施形態においては、ノイズキャンセルの作用点として人の耳を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、スピーカとマイクロホンの位置関係に応じて様々な位置を作用点とすることができる。
また、本実施形態は、筐体の外部にマイクロホン110がある、フィードフォワード方式のノイズキャンセリングを行うヘッドホン100、300、500について説明したが、かかる場合に限定されず、筐体内部にマイクを持つフィードバック方式を併用してもよい。
さらに、上述したヘッドホン100、300、500を構成する、LPF116から予測信号反転部124までの各構成部は、その機能を有する半導体チップ等のハードウェアであってもよいし、その機能をプログラムされたソフトウェアであってもよい。また、ADC114に代わってマイクロホン110から直接デジタルの音信号を取得する構成を採用してもよいし、DAC126に代わってデジタルのノイズキャンセル信号や原音信号を直接スピーカ132に出力する構成を採用することもできる。
なお、本明細書の雑音除去方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
本発明は、外部からの雑音(ノイズ)によって所望する原音の音質が損なわれるのを防止することが可能な雑音除去装置および雑音除去方法に利用することができる。
100、300、500 …ヘッドホン(雑音除去装置)
110 …マイクロホン
118 …予測信号生成部
120 …音圧導出部
122 …予測信号補正部
124 …予測信号反転部
128 …加算器
132 …スピーカ
334 …音信号補正部

Claims (11)

  1. 外部の音を収音して音信号に変換するマイクロホンと、
    前記変換された音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成する予測信号生成部と、
    前記変換された音信号に基づいて第1閾値を導出する閾値導出部と、
    前記予測信号の絶対値が前記導出された第1閾値を超えないように前記予測信号を補正する予測信号補正部と、
    前記補正された予測信号を反転する予測信号反転部と、
    原音信号に前記反転された予測信号を加算する加算器と、
    前記反転された予測信号が加算された原音信号を出力するスピーカと、
    を備えることを特徴とする雑音除去装置。
  2. 前記第1閾値は、前記音信号の絶対値の所定期間における、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅のいずれかに基づいて導出されることを特徴とする請求項1に記載の雑音除去装置。
  3. 前記予測信号補正部は、その絶対値が、前記第1閾値より小さい第2閾値以上となる前記補正された予測信号に低域通過フィルタリングを施すことを特徴とする請求項1または2に記載の雑音除去装置。
  4. 前記予測信号補正部は、その絶対値が、前記第1閾値より小さい第2閾値以下の予測信号を補正せず、その絶対値が、前記第2閾値以上となる予測信号には上限を前記第1閾値とする漸増関数を乗じることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の雑音除去装置。
  5. 外部の音を収音して音信号に変換するマイクロホンと、
    前記変換された音信号に基づいて第1閾値を導出する閾値導出部と、
    前記音信号の絶対値が前記導出された第1閾値を超えないように前記音信号を補正する音信号補正部と、
    前記音信号補正部が補正した音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成する予測信号生成部と、
    前記予測信号を反転する予測信号反転部と、
    原音信号に前記反転された予測信号を加算する加算器と、
    前記反転された予測信号が加算された原音信号を出力するスピーカと、
    を備えることを特徴とする雑音除去装置。
  6. 前記予測信号の絶対値が前記第1閾値を超えないように前記予測信号を補正する予測信号補正部をさらに備え、
    前記予測信号反転部は、補正された前記予測信号を反転することを特徴とする請求項5に記載の雑音除去装置。
  7. 前記第1閾値は、前記音信号の絶対値の所定期間における、最大エネルギー、平均エネルギー、最大振幅、または平均振幅のいずれかに基づいて導出されることを特徴とする請求項5または6に記載の雑音除去装置。
  8. 前記音信号補正部は、その絶対値が、前記第1閾値より小さい第2閾値以上となる前記補正された音信号に低域通過フィルタリングを施すことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の雑音除去装置。
  9. 前記音信号補正部は、その絶対値が、前記第1閾値より小さい第2閾値以下の音信号を補正せず、その絶対値が、前記第2閾値以上となる音信号には上限を前記第1閾値とする漸増関数を乗じることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の雑音除去装置。
  10. 外部の音を収音して音信号に変換し、
    前記変換した音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成し、
    前記変換した音信号に基づいて第1閾値を導出し、
    前記予測信号の絶対値が前記導出した第1閾値を超えないように前記予測信号を補正し、
    前記補正した予測信号を反転し、
    原音信号に前記反転した予測信号を加算し、
    前記反転した予測信号を加算した原音信号を出力することを特徴とする雑音除去方法。
  11. 外部の音を収音して音信号に変換し、
    前記変換した音信号に基づいて第1閾値を導出し、
    前記音信号の絶対値が前記導出した第1閾値を超えないように前記音信号を補正し、
    前記補正した音信号の履歴に基づいて将来の音信号を予測した予測信号を生成し、
    前記予測信号を反転し、
    原音信号に前記反転した予測信号を加算し、
    前記反転した予測信号を加算した原音信号を出力することを特徴とする雑音除去方法。
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