JP2011001598A - 摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な初期なじみ性および耐摩耗性を有するなじみ層を提供し、これにより、摺動時におけるなじみ性を向上させることができる摺動部材を提供すること。
【解決手段】アウタークラッチプレート35の表面(基材2Aの表面)は、DLC膜15によって被覆されている。DLC膜15上には、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの堆積層であるなじみ層16が形成されている。なじみ層16は、N(窒素)、H(水素)およびSi(シリコン)を含有している。
【選択図】図3

Description

この発明は、表面がDLC膜で被覆された摺動部材に関する。摺動部材には、たとえば、電磁クラッチのクラッチプレート、軸受の保持器および内外輪の軌道面、ならびにプロペラシャフト(駆動軸)のスプライン部などが含まれる。
自動車の燃費低減を実現するために、自動車に搭載される摺動部材の摺動抵抗の低減が求められている。そのため、摺動部材の表面を、低摩擦性および耐摩耗性を有するDLC(Diamond Like Carbon)膜で被覆した構成が知られている。
DLC膜は、使用初期におけるなじみ性(以下、「初期なじみ性」という。)が悪いという問題がある。これは、DLC膜の表面が平滑化しにくく、また、DLC膜が潤滑性に優れるものに変化しにくいことが原因と考えられる。DLC膜の初期なじみ性が悪ければ、摩擦初期に当該膜の剥離のおそれがあり、また、摩擦初期において相手部材への攻撃により相手部材に材料破壊を生じさせるおそれがある。
DLC膜の初期なじみ性を改良するために、良好な初期なじみ性を有するなじみ膜をDLC膜の表面上に形成する構成が種々提案されている。このなじみ膜に関する先行技術として、たとえば、特許文献1および2で提案されている構成を挙げることができる。
特許文献1では、DLC膜の表面上にグラファイト層を形成する構成が提案されている。
特許文献2は、DLC膜の表面上に、Siを50〜70wt%の比率で含有するDLC膜を形成する構成が提案されている。
特開2007−162099号公報 特開2003−14121号公報
ところが、特許文献1で提案されているなじみ層は柔らかい。そのため、摺動部材の表面層に要求されている耐摩耗性を満たさないおそれがある。特許文献2は、Si-C系のため、潤滑条件などの過酷な条件下では、割れを起こすおそれがある。
そこで、本発明は、良好な初期なじみ性および耐摩耗性を有するなじみ層を提供し、これにより、摺動初期におけるなじみ性を向上させることができる摺動部材を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、表面(31)の少なくとも一部がDLC(「Diamond Like Carbon」)膜(15)によって覆われた摺動部材(35)であって、前記DLC膜の表面上には、直流パルスプラズマCVD法(Direct Pulse Current Plasma Chemical Vapor Deposition)によるDLCの堆積層であるなじみ層(16)が形成されている、摺動部材である。
なお、括弧内の数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの堆積層であるなじみ層が、DLC膜の表面に形成される。直流パルスプラズマCVD法により形成されるDLCの堆積層の表面は滑らかであり、ほとんど凹凸がない。このため、なじみ層は、耐摩耗性だけでなく、良好な初期なじみ性を有している。これにより、摺動部材の摺動時におけるなじみ性を向上させることができる。
また、前記なじみ層は、N(窒素)、H(水素)およびSi(シリコン)を含有していてもよい(請求項2)。N、HおよびSiの含有によりなじみ層の硬度を調整することができ、DLCの初期なじみ性が向上する。これにより、なじみ層の初期なじみ性がより一層向上する。
前記なじみ層には、炭素間結合(アモルファス結合)として、sp結合(グラファイト結合)がsp結合(ダイヤモンド結合)よりも多い割合で含まれていてもよい(請求項3)。DLCに含まれる炭素間結合として、sp結合と、そのsp結合よりも結合力が弱いsp結合とがある。sp結合よりもsp結合がDLCに多い割合で含まれると、そのDLCは、比較的柔らかく初期なじみ性も良好である。したがって、なじみ層にsp結合よりもsp結合が多い割合で含まれることにより、なじみ層の初期なじみ性がより一層良好になる。
また、前記なじみ層が、30wt%以上50wt%未満の比率でSiを含有していてもよい(請求項4)。Siを極めて高い比率(たとえば50wt%以上)で含有するDLCは、その初期なじみ性が高くなるが、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの堆積層の初期なじみ性が良好であるので、なじみ層へのSiの含有比率は30wt%以上50wt%未満の範囲にすればよく、また、Siの含有比率をこの範囲に止めることで、なじみ層の耐摩耗性の低下を防止または抑制することができる。
また、前記DLC膜が、直流プラズマCVD法(Direct Current Plasma Chemical Vapor Deposition)によるDLCの堆積層であってもよい(請求項5)。この場合、DLC膜およびなじみ層の双方を、共通のCVD装置を用いて形成することもできる。したがって、摺動部材(基材)を途中で大気中に戻す必要がないので、摺動部材へのDLC膜およびなじみ層の形成を、効率良く行うことができる。また、密着力が低下することもない。
本発明の一実施形態にかかるアウタークラッチプレートが組み込まれた駆動力伝達装置の概略構成を示す断面図である。 図1に示す摩擦クラッチの断面図である。 図2に示すDLC膜の拡大断面図である。 DLC膜およびなじみ層の作成に用いられる装置の構成を説明するための模式的な断面図である。 他の実施形態にかかるアウタークラッチプレートの表面の拡大断面図である。 さらに他の実施形態にかかるアウタークラッチプレートの表面の拡大断面図である。
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかるアウタークラッチプレート(摺動部材)35が組み込まれた駆動力伝達装置1の概略構成を示す断面図である。駆動力伝達装置1は、たとえば四輪駆動車に搭載されており、プロペラシャフト(図示しない)側から与えられる駆動力を、ピニオンシャフト(図示しない)に伝達するためのものである。駆動力伝達装置1は、入力ケーシング2、出力軸3、パイロットクラッチ機構部4、カム機構部5およびメインクラッチ機構部7を備えている。入力ケーシング2はプロペラシャフト(図示しない)に連結されており、出力軸3はピニオンシャフト(図示しない)に連結されている。
入力ケーシング2は有底円筒状をなしている。入力ケーシング2の後部(図1に示す右側)の開口は、リヤケーシング6によって覆われている。入力ケーシング2には、パイロットクラッチ機構部4、カム機構部5およびメインクラッチ機構部7が収容されている。メインクラッチ機構部7は、湿式多板式のクラッチ機構からなるものである。メインクラッチ機構部7では、多数枚のインナークラッチプレート8およびアウタークラッチプレート9が交互に配置されている。
出力軸3は、リヤケーシング6の中央部を貫通し、入力ケーシング2の内部を挿通している。出力軸3は、入力ケーシング2およびリヤケーシング6に対して回転可能に設けられている。
パイロットクラッチ機構部4は、電磁コイル10、摩擦クラッチ11およびアーマチャ12を備えている。アーマチャ12は、円環状をなしており、入力ケーシング2の内周に沿って配置されている。アーマチャ12は、入力ケーシング2にスプライン嵌合されており、これにより、入力ケーシング2に対する軸方向への移動が許容されている。アーマチャ12は、摩擦クラッチ11の一方側に対向して配置されている。摩擦クラッチ11は、鉄製の2枚のアウタークラッチプレート35と、この2枚のアウタークラッチプレート35に挟まれた1枚のインナークラッチプレート36とを備えている。
カム機構部5は、第1カム部材17および第2カム部材18を備えている。第1カム部材17および第2カム部材18は、互いに対向するように配置されている。第1カム部材17は、出力軸3に対して回転可能に設けられている。第2カム部材18は、出力軸3にスプライン嵌合されており、出力軸3と一体回転可能に設けられている。また、第2カム部材18は、出力軸3に対する軸方向への移動が許容されている。第1および第2カム部材17,18の対向面には、周方向にのびるカム溝が間隔をあけて複数形成されている。第1カム部材17と第2カム部材18との間には、ボール状のカムフォロア19がカム溝に嵌った状態で介在している。カム溝は、周方向中央部から両端部へ向かうにつれて浅くなっている。
アウタークラッチプレート35およびインナークラッチプレート36は、円環板状をなしている。2枚のアウタークラッチプレート35の間にインナークラッチプレート36が配置されている。アウタークラッチプレート35とインナークラッチプレート36とは、互いに接離可能に設けられている。インナークラッチプレート36とアウタークラッチプレート35とが互いに当接するときは、インナークラッチプレート36とアウタークラッチプレート35とが摩擦接触する。また、インナークラッチプレート36とアウタークラッチプレート35とが互いに離間した状態にあるときは、両者は接触しない。インナークラッチプレート36は、第1カム部材17の外周にスプライン嵌合されており、これにより、第1カム部材17に対する軸方向への移動が許容されている。アウタークラッチプレート35は、入力ケーシング2の内周にスプライン嵌合されており、入力ケーシング2に対する軸方向への移動が許容されている。
入力ケーシング2およびリヤケーシング6によって形成された収容室内には、潤滑油が充填されている。この潤滑油によって、パイロットクラッチ機構部4の各クラッチプレート35,36およびメインクラッチ機構部7の各クラッチプレート8,9が潤滑される。
電磁コイル10に通電されていない状態では、パイロットクラッチ機構部4は非作動状態にある。そのため、メインクラッチ機構部7は非作動状態にある。このため、入力ケーシング2に入力された回転トルクは、出力軸3には伝達されず、車両は二輪駆動の駆動モードとなる。
電磁コイル10に通電された状態では、アーマチャ12が、電磁コイル10の吸引により電磁コイル10に向けて移動し、そのため、アーマチャ12が摩擦クラッチ11と摩擦係合するようになる。アーマチャ12と摩擦クラッチ11とが摩擦係合することにより、第1カム部材17と入力ケーシング2側とが連結される。これにより、第1カム部材17は、入力ケーシング2の回転に伴い回転し、第2カム部材18に対して相対回転する。そして、カムフォロア19がカム溝の浅い箇所にのりあげることにより、第2カム部材18がメインクラッチ機構部7側へ移動する。これにより、アウタークラッチプレート9とインナークラッチプレート8とが摩擦係合し、入力ケーシング2と出力軸3とが連結されて、入力ケーシング2に入力された回転トルクは、出力軸3に伝達される。このため、車両は四輪駆動の駆動モードになる。
また、電磁コイル10への電流量を変化させることにより、アーマチャ12に発生する吸引力が、電流量に比例して変化する。これが、カム機構部5によって軸方向に力に変換されて、電流量に比例した摩擦トルクが発生する。
図2は、摩擦クラッチ11の断面図である。
アウタークラッチプレート35およびインナークラッチプレート36は、工具鋼(たとえばSKH51)を用いて形成されている。アウタークラッチプレート35におけるインナークラッチプレート36と対向する第1対向面(表面)31には、クラッチプレート35,36間に残存した潤滑油を受け入れるためのメッシュ状(網目状)の潤滑油溝23が形成されている。第1対向面31は、DLC膜15で被覆されている。
また、インナークラッチプレート36におけるアウタークラッチプレート35と対向する第2対向面32の全域には、微小幅の多数の溝25が、微小の間隔を隔てて配列されている。図2では、理解し易いように溝25を誇張して図示してあるが、溝25の幅やそのピッチは、たとえば数μm程度に設定されている。第2対向面32は、アウタークラッチプレート35と摺動する第2摺動面として機能している。
図3は、図2に示すDLC膜15の拡大断面図である。
DLC膜15は、アウタークラッチプレート35における基材2Aの表面上に形成されている。DLC膜15は直流プラズマCVD法によるDLCの堆積層によって構成されている。DLC膜15の厚みは、たとえば1.0〜6.0μmである。DLC膜15の表面上にはなじみ層16が形成されている。この実施形態では、なじみ層16は、DLC膜15の全域を被覆し、DLC膜15の表面膜として機能する。
なじみ層16は、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの堆積層によって構成されている。なじみ層16はDLCだけでもよいが、Si、HおよびNを含有させた構成とすることもできる。この場合、なじみ層16へのSi含有比率は1.0〜20.0wt%であり、Hの含有比率は15.0〜45.0wt%、Nの含有比率は1.0〜5.0wt%とすることが可能である。
なじみ層16の厚みは、たとえば50〜150nmであり、なじみ層16のナノインデンテーション硬さは、10〜20GPa程度である。
直流パルスプラズマCVD法により形成されるDLCの堆積層の表面は滑らかであり、ほとんど凹凸がない。この滑らかなDLCの堆積層によってなじみ層16が構成されるので、なじみ層16は、耐摩耗性だけでなく、良好な初期なじみ性をも有している。すなわち、動摩擦係数と静摩擦係数との差が小さい。これにより、アウタークラッチプレート35の摺動時におけるなじみ性を向上させることができる。
また、なじみ層16が、N(窒素)原子、H(水素)原子およびSi(シリコン)原子を含有している。具体的には、なじみ層16には、C原子の間のアモルファス結合の他、C−Si結合、C−H結合、C−N結合、Si−H結合、Si−N結合およびC−Si−N結合などの結合が含まれる。N、HおよびSiの含有によりDLCの初期なじみ性が向上する。これにより、なじみ層16の初期なじみ性がより一層向上する。なお、なじみ層16にAr(アルゴン)原子が含まれていてもよい。
DLC膜15およびなじみ層16の双方は、共通の装置40を用いて形成される。
図4は、DLC膜15の形成に用いられる装置40の構成を示す模式的な断面図である。この装置40を用いて、直流プラズマCVD法によりDLC膜15を作成することができる。また、この装置40を用いて、直流パルスプラズマCVD法によりなじみ層16を作成することができる。
この装置40は、隔壁41で取り囲まれた処理室42を備えている。この隔壁41は、ステンレス鋼などの導電材料を用いて形成されている。処理室42内には、処理対象となる基材2A(アウタークラッチプレート35)を支持するための基台43が収容されている。基台43は、水平姿勢をなす支持プレート38と、鉛直方向に延び、支持プレート38を支持する支持軸44とを備えている。この実施形態では、基台43として、支持プレート38が上下方向に3つ並んで配置された3段式のものが採用されている。
また、基台43は、鋼などの導電材料を用いて形成されている。基台43には、直流のパルス電源(直流パルス電源)46が電気的に接続されている。パルス電源46からは、負極性のパルス電圧が出力されるようになっている。また、基台43には、直流電源58が電気的に接続されている。直流電源58からは、負極性の直流電圧が出力されるようになっている。
処理室42の隔壁41は、アース接続されている。隔壁41および基台43は、絶縁部39によって絶縁されている。そのため、隔壁41はアース電位に保たれている。
基台43とパルス電源46および直流電源58との間には、切換え器59が配置されている。切換え器59は、基台43の電気的な接続先を、パルス電源46と直流電源58との間で切り換えるためのものである。
基台43がパルス電源46と電気的に接続された状態で、パルス電源46がオンされると、基台43にパルス電源46からの負極性の電圧が印加される。そして、基台43に支持された処理対象となるアウタークラッチプレート35にパルス電圧が印加される。
また、切換え器59によって、基台43と直流電源58とが電気的に接続された状態で、直流電源58がオンされると、基台43に直流電源58からの負極性の電圧が印加される。そして、基台43に支持された処理対象となるアウタークラッチプレート35に直流電圧が印加される。
原料ガス導入管47は、処理室42内における基台43の上方を、水平方向に延びている。原料ガス導入管47の基台43に対向する部分には、原料ガス導入管47の長手方向に沿って配列された多数の吐出孔48が形成されている。原料ガス導入管47には、原料ガスとして、メタンガス(CH)やアセチレン(C)、ベンゼン(C)などの炭化水素系のガスが供給されるようになっている。
処理室42の隔壁41には、処理室42内の雰囲気を排気するための第1排気管51が接続されている。この第1排気管51の先端は、排気設備(図示しない)に接続されている。第1排気管51の途中部には、第1調節バルブ52および第1ポンプ53が、処理室42側からこの順で介装されている。第1調節バルブ52は、開度を調節して、処理室42内の処理圧を調整するためのものである。第1ポンプ53として、たとえば、ロータリポンプなどが採用されている。
処理室42の隔壁41には、処理室42内の雰囲気を排気するための第2排気管54が接続されている。この第2排気管54の先端は、第1排気管51の途中部、より詳しくは第1ポンプ53と第1調節バルブ52との間に接続されている。第2排気管54の途中部には、第2調節バルブ55および第2ポンプ56が、処理室42側からこの順で介装されている。第2調節バルブ55は、開度を調節して、処理室42内の処理圧を調整するためのものである。第2ポンプ56としては、たとえばターボ分子ポンプが採用されている。
次に、DLC膜15およびなじみ層16を形成する方法について説明する。以下、アウタークラッチプレート35の基材2Aの表面が、アウタークラッチプレート35の第1対向面31である。基材2Aの表面に、直流プラズマCVD法によりDLC膜15が形成される。
まず、処理対象の基材2Aが、処理室42内に搬入されて、支持プレート38上に載置される(基台43に支持される)。基材2Aの処理室42への収容後、処理室42内が密閉される。処理室42が密閉された後、処理室42内が減圧される。具体的には、第1ポンプ53のみが駆動されて、処理室42内が粗引きされる。第1ポンプ53の駆動開始後しばらくした後、第2ポンプ56も駆動される。その後、第2ポンプ56の駆動が停止されて、第1ポンプ53だけで処理室42内が減圧される。
処理室42内の減圧後、原料ガス導入管47からの原料ガスが吐出孔48を介して処理室42内に導入開始される。また、第1調節バルブ52によって、第1排気管51の開度が調節されることにより、処理室42内が所定の処理圧(たとえば100Pa)まで減圧され、その減圧状態が維持される。
次いで、直流電源58がオンされて、基台43に負極性の直流電圧が印加される。これにより、アース電位に保たれている隔壁41と基台43(基材2A)との間に電位差が生じ、処理室42内でプラズマが発生する。処理室42内にプラズマが発生することにより、処理室42内の原料ガスがプラズマ化して、処理室42内に、主としてCイオンおよびHイオンが浮遊するようになる。そして、処理室42内で生じる化学反応により、DLCが基材2Aの表面上に堆積し、堆積層をなすようになる。これにより、基材2Aの表面上にDLC膜15が形成される。直流電源58のオンから予め定める処理時間(たとえば、30分間)が経過すると、直流電源58がオフされて、処理室42内における放電が終了する。
次いで、DLC膜15上に、直流パルスプラズマCVD法によりなじみ層16が堆積される。具体的には、切換え器59によって基台43の電気的な接続先が、直流電源58からパルス電源46に切り換えられる。
その後、パルス電源46がオンされて、基台43に負極性のパルス電圧が印加される。これにより、アース電位に保たれている隔壁41と基台43(基材2A)との間に電位差が生じ、処理室42内でプラズマが発生する。処理室42内にプラズマが発生することにより、処理室42内の原料ガスがプラズマ化して、処理室42内に、原料ガスから生成されるイオン・ラジカル(主としてCイオンおよびHイオン)が浮遊するようになる。そして、処理室42内で生じる化学反応により、Siを含有するDLCが基材2Aの表面上に堆積し、堆積層をなすようになる。これにより、DLC膜15の表面上にDLCの堆積層からなるなじみ膜16が形成される。パルス電源46のオンから予め定める処理時間(たとえば、15分間)が経過すると、パルス電源46がオフされて、処理室42内における放電が終了する。そして、減圧下で常温まで冷却された後、基材2Aが処理室42内から搬出される。これにより、アウタークラッチプレート35の第1対向面31にDLC膜15が形成され、DLC膜15上になじみ層16が形成される。
また、直流プラズマCVD法によるDLC膜15と、直流パルスプラズマCVD法によるなじみ層16とを共通の処理室42内で形成することができるので、DLC膜15の形成終了後、基材2Aを処理室42の外に搬出させる必要がない。このため、基材2AへのDLC膜15およびなじみ層16の形成を、効率良く行うことができる。
なお、この実施形態では、アウタークラッチプレート35のDLC膜15およびなじみ層16が形成されるべき部分のみを露出させておき、他の部分をマスクで覆えば、マスクで覆われた部分には、DLC膜15およびなじみ層16は形成されない。
図5は、この発明の他の実施形態にかかるアウタークラッチプレート(摺動部材)35の表面の拡大断面図である。この図5が図3と相違する点は、なじみ層16に代えて、なじみ層16Aを形成した点にある。
なじみ層16Aは、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの堆積層によって構成されている。なじみ層16Aの厚みは、たとえば50〜150nmであり、なじみ層16Aのナノインデンテーション硬さは、10〜20GPa程度である。
なじみ層16Aには、炭素間結合として、sp結合がsp結合よりも多い割合で含まれている。DLCに含まれる炭素間結合として、sp結合と、そのsp結合よりも結合力が弱いsp結合とがある。このため、sp結合よりもsp結合が多い割合で含まれるDLCは比較的柔らかく、初期なじみ性はより一層良好である。したがって、なじみ層16Aにsp結合よりもsp結合が多い割合で含まれることにより、なじみ層16Aがより一層良好な初期なじみ性を有する。
このなじみ層16Aの堆積は、図4に示す装置40を用いて行なわれる。このなじみ層16Aの堆積の際の原料ガス(炭酸水素系の原料ガス)として、ベンゼン蒸気(C)やトルエン蒸気(C(CCH))を用いることができる。ベンゼン環の分子構造を有するベンゼン蒸気やトルエン蒸気を原料ガスとすることにより、なじみ層16Aに、sp結合がsp結合よりも多い割合で含ませることができる。
図6は、この発明のさらに他の実施形態にかかるアウタークラッチプレート(摺動部材)35の表面の拡大断面図である。この図6が図3と相違する点は、なじみ層16に代えて、なじみ層16Bを形成した点にある。
なじみ層16Bは、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの堆積層によって構成されている。なじみ層16Bの厚みは、たとえば50〜150nmであり、なじみ層16Bのナノインデンテーション硬さは、10〜20GPa程度である。
なじみ層16Bは、30wt%以上50wt%未満の比率でSiを含有している。Siを高い比率で含有するDLCは、その初期なじみ性が高い。これにより、なじみ層16Bが、より一層良好な初期なじみ性を有するようになる。
このなじみ層16Bの堆積は、図4に示す装置40を用いて行なわれる。このなじみ層16Bの堆積の際には、原料ガスとして、炭酸水素系のガスに加えて、テトラメチルシランガス((Si(CH)。以下、「TMS」という。)やジメチルシロキサンなどのSiを含有するガスを採用する必要がある。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
基材2Aの表面上に直接DLC膜15が形成されずに、基材2Aの表面とDLC膜15との間に中間層(たとえば、SiNおよびCrNなどの窒化膜、Cr、TiならびにSiC)が配置された構成であってもよい。
DLC膜15がアウタークラッチプレート35の表面上に形成された構成について説明したが、DLC膜15がインナークラッチプレート36の表面上に形成される構成であってもよい。
また、前述の実施形態では、摩擦クラッチ11のクラッチプレート35,36の一方の表面にDLC膜15が形成される場合を例に挙げて説明したが、DLC膜15は、ステアリング装置のウォームの歯面、軸受の内外輪の軌道面または保持器、およびプロペラシャフト(駆動軸)の雄スプライン部および/または雌スプライン部の表面に形成することができる。
また、DLC膜15がSiを含有しない構成を例に挙げて説明したが、DLC膜15が0〜50wt%の比率でSiを含有する構成であってもよい。この場合、DLC膜15の堆積の際には、原料ガスとして、炭酸水素系のガスに加えて、テトラメチルシランガス((Si(CH)。以下、「TMS」という。)やジメチルシロキサンなどのSiを含有するガスを採用する必要がある。
さらに、DLC膜15が、Siに代えて他の金属(たとえばCr、Tiなど)を含有するものであってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
2A…基材、15…DLC膜、16…なじみ層、35…アウタークラッチプレート(摺動部材)

Claims (5)

  1. 表面の少なくとも一部がDLC膜によって覆われた摺動部材であって、
    前記DLC膜の表面上には、直流パルスプラズマCVD法によるDLCの堆積層であるなじみ層が形成されている、摺動部材。
  2. 前記なじみ層は、N、HおよびSiを含有している、請求項1記載の摺動部材。
  3. 前記なじみ層には、炭素間結合として、sp結合がsp結合よりも多い割合で含まれている、請求項1記載の摺動部材。
  4. 前記なじみ層は、30wt%以上50wt%未満の比率でSiを含有している、請求項1記載の摺動部材。
  5. 前記DLC膜が、直流プラズマCVD法によるDLCの堆積層である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の摺動部材。
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