JP2010539985A - 油性真核生物中の多価不飽和脂肪酸および総脂質含量を変更するためのペルオキシソーム生合成因子(pex)タンパク質の中断 - Google Patents

油性真核生物中の多価不飽和脂肪酸および総脂質含量を変更するためのペルオキシソーム生合成因子(pex)タンパク質の中断 Download PDF

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Abstract

ペルオキシソーム生合成因子(Pex)タンパク質の活性を修正することで達成される、多価不飽和脂肪酸(PUFA)産生油性真核生物における総脂質画分中および油画分中のPUFA量を増大させる方法。PUFA産生油性真核生物株中の染色体のPex3遺伝子、Pex10p遺伝子またはPex16p遺伝子の中断は、天然Pexタンパク質が中断されていない親株と比較して、株の総脂質画分中および油画分中の、総脂肪酸%としておよび乾燥細胞重量%としてのPUFA量の増大をもたらす。

Description

本明細書は、どちらも2007年10月3日に出願され、どちらもその全体を参照によって本明細書に援用する、米国仮特許出願第60/977,174号明細書および米国仮特許出願第60/977,177号明細書の優先権を主張する。
本発明は、生物工学分野にある。より具体的には本発明は、ペルオキシソーム生合成因子(Pex)タンパク質の中断に基づいて、真核生物の多価不飽和脂肪酸(PUFA)組成および脂質含量を操作するのに有用な方法に関する。
多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]、特にω−3およびω−6PUFAと関連付けられている健康上の利点は、文献で十分に立証されている。大量のω−3およびω−6PUFAを製造する方法を見つけるために、研究者らは彼らの研究を遺伝子の発見、および脂質および脂肪酸をもたらすコードされた生合成経路の理解に向けている。
これらのPUFAを生成する1つの努力により、天然ではω−3/ω−6PUFAを産生しない生物に、ω−3/ω−6PUFA生合成経路を導入した。大規模に操作されたこのような1つの生物が、非油性酵母サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。しかし、リノール酸[「LA」]、γ−リノレン酸[「GLA」]、α−リノレン酸[「ALA」]、ステアリドン酸[「STA」]および/またはエイコサペンタエン酸[「EPA」]の限定的生成を実証した予備段階の結果は、いずれも商業的開発に適さない。
大量のω−3/ω−6PUFAを生成する別の努力では、例えば従属栄養珪藻キクロテラ(Cyclotella)種およびニッチア(Nitzschia)種、シュードモナス(Pseudomonas)、アルテロモナス(Alteromonas)またはシュワネラ(Shewanella)種、クサレカビ(Pythium)、またはモルティエラ・エロンガータ(Mortierella elongata)、M.エクシグア(exigua)またはM.ハイグロフィラ(hygrophila)属の糸状菌などの選択された脂肪酸を天然に産生する微生物が培養された。
これらの努力は全て、発酵が微生物の天然の能力に依存するため、油の収率を実質的に改善できず、または生成する油組成の特徴を制御できないという欠点がある。
同一譲受人の特許文献1は、PUFA生成のための生産宿主としての油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の使用について記載している。油性酵母は油を天然に合成して、典型的に細胞の乾燥重量の25%を超える量を蓄積できる酵母と定義される。生産宿主の最適化については、当該技術分野において記載されている(例えば特許文献2〜5を参照されたい)。そこに記載されている組み換え株は、異種のデサチュラーゼ、エロンガーゼ、およびアシル基転移酵素の複数コピーを発現する様々なキメラ遺伝子を含んでなり、任意に様々な天然デサチュラーゼおよびアシル基転移酵素ノックアウトを含んでなり、PUFAの合成および蓄積を可能にする。PUFAの商業生産のために、宿主細胞のさらなる最適化が必要である。
Lin Y.らは、ペルオキシソームが異化および同化脂質代謝の双方に必要であることを提案する(非特許文献1)。しかしこの仮説は、異常なペルオキシソーム生合成および脂肪酸合成(すなわちsse1種子中では油が野性型のおよそ10〜16%に減少することが報告された)の双方を有する、アラビドプシス(Arabidopsis)変異体中のPex16pの相同体に関する研究に基づいていた。非特許文献2もまた、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)中のペルオキシソームと脂質体の間の密接な協力を実証した。しかし以前のPexノックアウトの研究は、PUFA産生生物中では実施されていない。
出願人らは、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)組み換えPUFA産生株中の総脂肪酸の%としてのPUFA量の増大に予測不可能な結果をもたらす、PUFA産生生物中のペルオキシソーム生合成因子タンパク質中断の予測不可能な機序によって、PUFA商業生産のための宿主細胞最適化という表明された問題を解決した。ペルオキシソーム生合成因子タンパク質の中断を含有する、新しい株について本明細書に記載する。
米国特許第7,238,482号明細書 国際公開第2006/033723号パンフレット 米国特許出願公開第2006−0094092号明細書 米国特許出願公開第2006−0115881号明細書 米国特許出願公開第2006−0110806号明細書
Plant Physiology,135:814〜827(2004年) Binns,D.ら、J.Cell Biol.,173(5):719〜731(2006年)
発明の要約
本明細書に記載されているのは、総脂質含量、総脂質画分、および油画分を有する油性真核生物中の総脂肪酸[「TFA」]重量%に対する少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]の重量%を増大させる方法であり、
a)1)機能性多価不飽和脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子と、
2)ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子中の中断と
を含んでなる油性真核生物を提供することによって、PEX中断生物を提供するステップと、
b)ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子がいずれも中断されていない油性真核生物における、総脂質画分中または油画分中の総脂肪酸の重量%に対する少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の重量%と比較して、総脂質画分または油画分中の総脂肪酸の重量%に対する少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の重量%を増大させる条件下で、PEX中断生物を生育させるステップと、
を含んでなる。
この増大させる方法を使用して、(a)および(b)と同一ステップを適用することで、乾燥細胞重量[「DCW」]に対する少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]の%を増大させてもよい。
本明細書に記載されているいくつかの方法では、TFAの重量%に対するPUFAの重量%は少なくとも1.3倍に増大する。
いくつかの記載されている方法では、PEX中断生物中の総脂質含量は、天然PEX遺伝子中に中断を有さない油性真核生物と比較して、増大または減少し得る。
これらの方法のいずれでも、増大するPUFAは、単一PUFAまたはPUFAの組み合わせであってもよい。どちらの場合でも、増大するPUFAまたは増大するPUFAの組み合わせは、リノール酸、抱合型リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、ドコサヘキサエン酸、これらのヒドロキシル化またはエポキシ脂肪酸、C18多価不飽和脂肪酸またはそれらの組み合わせ、C20多価不飽和脂肪酸またはそれらの組み合わせ、C20〜22多価不飽和脂肪酸とC22多価不飽和脂肪酸との組み合わせ、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
これらのいずれの方法でも、PEX中断生物は次の一員であってもよい。油性特質を有するヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、リポマイセス(Lipomyces)、モルティエラ(Mortierella)、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、およびサッカロミセス(Saccharomyces)。そして記載されている方法のいずれにおいても、PUFA生合成経路は、次の酵素のいずれかまたは組み合わせをコードする遺伝子を含む。Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ4デサチュラーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、C20/22エロンガーゼ、およびΔ9エロンガーゼ。
中断は、以下をはじめとするペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードするPEX遺伝子に生じてもよい。Pex1p、Pex2p、Pex3p、Pex3Bp、Pex4p、Pex5p、Pex5Bp、Pex5Cp、Pex5/20p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex10p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex15p、Pex16p、Pex17p、Pex14/17p、Pex18p、Pex19p、Pex20p、Pex21p、Pex21Bp、Pex22p、Pex22p様、およびPex26p。そしてこれらの方法のいずれにおいても、中断は、タンパク質のC末端部分をコードする遺伝子の一部における遺伝子ノックアウトまたは欠失であってもよい。これらのいくつかの方法では、欠失は、タンパク質のC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフのC末端部分をコードする遺伝子の部分にある。
請求項1に記載の方法によって達成される少なくとも1つのPUFA重量%の増大を経験した、PEX中断生物中の油画分または総脂質画分についてもまた、本明細書に記載されている。Pex3pまたはPex10pまたはPex16pをコードする天然遺伝子中に中断を有するPEX中断ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)についてもまた、本明細書に記載されている。このY.リポリティカ(Y.lipolytica)は、ATCC称号ATCC PTA−8614(Y4128株)を有してもよい。
生物学的寄託
以下の生体物質が10801ユニバーシティ・ブールヴァード、マナッサス、VA20110−2209の米国微生物系統保存機関(ATCC)に寄託され、以下の命名、登録番号、および寄託日を有する。
Figure 2010539985
上に列挙した生体物質は、「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約」の条項に従って寄託された。列挙した寄託物は、表示された国際受託機関に少なくとも30年間保存され、それを開示する特許の付与時に一般に公開される。寄託株の利用可能性は、政府の行動によって付与された特許権を失墜させて主題発明を実施する認可とはみなされない。
図1Bと共にω−3/ω−6脂肪酸生合成経路を図示し、下のこの経路の説明を考察する際には合わせ見るべきである。 図1Aと共にω−3/ω−6脂肪酸生合成経路を図示し、下のこの経路の説明を考察する際には合わせ見るべきである。 次のC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフのアラインメントを提供する。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex10p(すなわち配列番号10[GenBank登録番号CAG81606]のアミノ酸327〜364)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex2p(すなわち配列番号2[GenBank登録番号CAG77647]のアミノ酸266〜323)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex12p(すなわち配列番号11[GenBank登録番号CAG81532]のアミノ酸342〜391)。保存されたC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフのシステインおよびヒスチジン残基を星印によって示す。 Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Pex10p C3HC4フィンガーモチーフの様々なアミノ酸残基と、それらが結合する2個の亜鉛イオンとの間の提案される相互作用を模式的に図示する。 総脂質画分中に37.6%のEPAを産生するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4128株の作成を図示する。 pZP3−Pa777Uのプラスミドマップを提供する。 pY117のプラスミドマップを提供する。 pZP2−2988のプラスミドマップを提供する。 pZKUE3Sのプラスミドマップを提供する。 pFBAIN−MOD−1のプラスミドマップを提供する。 pFBAIN−PEX10のプラスミドマップを提供する。 pEXP−MOD−1のプラスミドマップを提供する。 pPEX10−1のプラスミドマップを提供する。 ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4184U株の作成を図示する。 pZKL1−2SP98Cのプラスミドマップを提供する。 pZKL2−5U89GCのプラスミドマップを提供する。 pYPS161のプラスミドマップを提供する。 pYRH13のプラスミドマップを提供する。 ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305U3株の作成を図示する。 pZKUMのプラスミドマップを提供する。 pZKD2−5U89A2のプラスミドマップを提供する。 pY87のプラスミドマップを提供する。 pY157のプラスミドマップを提供する。
本発明は、本明細書の一部をなす以下の詳細な説明および添付の配列説明から、より完全に理解できる。
次の配列は、37C.F.R.1.§821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998年)、およびEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822に記載の規則に従う。
配列番号1〜86は、表1に示すような、プライマー、遺伝子またはタンパク質(またはそれらの部分)をコードするORF、あるいはプラスミドである。
Figure 2010539985
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Figure 2010539985
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PUFA産生真核生物中の長鎖多価不飽和脂肪酸[「LC−PUFA」]の濃度(総脂肪酸の%として)、および含量(乾燥細胞重量の%として)を操作する一般的方法について本明細書に記載する。これらの方法は、宿主内の天然ペルオキシソーム生合成因子[「Pex」]タンパク質の中断に依存し、藻類、真菌、卵菌綱、酵母、ユーグレナ属、ストラメノパイル、植物、およびいくつかの哺乳類系をはじめとする、PUFAを産生する天然または遺伝改変された能力を有する多様な真核生物に対して広範な適応性を有する。
PUFA、またはその誘導体は、食事代用物、または栄養補給剤、特に乳児用調製粉乳として、静脈内栄養補給を受ける患者のために、または栄養失調を予防しまたは治療するために使用できる。例えば、料理用油、脂肪またはマーガリン中にPUFAを組み込んで、消費者が日常の食事の一部として摂取することによって、消費者が所望の食事補給を得られるようにしてもよい。さらに、PUFAはまた、乳児用調製粉乳、栄養補給剤またはその他の食品中に組み込んでもよく、抗炎症薬またはコレステロール低下剤としての用途があるかもしれない。場合により組成物は、ヒトまたは動物のいずれかのため製薬用途に使用してもよい。
定義
本開示では、いくつかの用語および略語を使用する。以下の定義が提供される。
「読み取り枠」はORFと略記される。
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと略記される。
「米国微生物系統保存機関」はATCCと略記される。
「多価不飽和脂肪酸」はPUFAと略記される。
「トリアシルグリセロール」はTAGと略記される。
「総脂肪酸」は「TFA」と略記される。
「脂肪酸メチルエステル」は「FAME」と略記される。
「乾燥細胞重量」は「DCW」と略記される。
「発明」または「本発明」という用語は、本明細書での用法では限定を意図せず、特許請求の範囲で定義されるかまたは本明細書に記載される本発明のいずれにも全般的に当てはまる。
「ペルオキシソーム」という用語は、全ての真核細胞に見られる遍在性細胞小器官を指す。それらは、内容物を細胞質ゾルから隔て、後述の機能に必須である様々な膜タンパク質を含む単一脂質二重層膜を有する。ペルオキシソームは、「拡張シャトル機構」を通じて選択的にタンパク質を取り込む。より具体的には、ペルオキシンとしてもまた知られている既知のペルオキシソームタンパク質が少なくとも32個あり、ペルオキシソーム膜を通じたATP加水分解の手段によるタンパク質取り込み過程に関与する。いくつかのペルオキシンは、N末端またはC末端のどちらかに特異的タンパク質シグナル、すなわちペルオキシソームを標的とするシグナルまたは「PTS」を含んでなり、ペルオキシソーム膜を通じた取り込みが起こるべきことを伝達する。ひとたび細胞タンパク質がペルオキシソーム中に取り込まれると、それらは典型的に何らかの分解措置を受ける。例えば、ペルオキシソームは、細胞にとって有毒な物質を分解できるようにするカタラーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、および尿酸オキシダーゼなどの酸化的酵素を含有する。あるいはペルオキシソームは、β−酸化と称される過程において脂肪酸分子を分解してアセチル−CoAの遊離分子を生成し、それは細胞質ゾル中に戻されて取り込まれる。
「ペルオキシソーム生合成因子タンパク質」、「ペルオキシン」、および「Pexタンパク質」という用語は同義であり、ペルオキシソーム生合成に関与するタンパク質、および/またはATP加水分解の手段によるペルオキシソーム膜を通じた細胞性のタンパク質取り込み過程に関与するタンパク質を指す。これらのタンパク質のいずれかをコードする遺伝子の頭字語が「Pex遺伝子」である。Pex遺伝子命名法の体系については、Distelら、J.Cell Biol.,135:1〜3(1996年)に記載されている。これまでに少なくとも32個の異なるPex遺伝子が、様々な真核生物中で同定されている。異常なペルオキシソーム機能または構造を示す変異株の分析から、多数のPex遺伝子が単離されている。17の異なる真菌種のゲノム配列のコンピュータシミュレーションによる分析が実施された、Kiel,J.A.K.W.ら(Traffic,7:1291〜1303(2006年))によるレビューに基づいて、次のPexタンパク質が同定された。Pex1p、Pex2p、Pex3p、Pex3Bp、Pex4p、Pex5p、Pex5Bp、Pex5Cp、Pex5/20p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex10p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex15p、Pex16p、Pex17p、Pex14/17p、Pex18p、Pex19p、Pex20p、Pex21p、Pex21Bp、Pex22p、Pex22p様、およびPex26p。したがってこれらの各タンパク質は本明細書では「Pexタンパク質」、「ペルオキシン」または「ペルオキシソーム生合成因子タンパク質」と称され、少なくとも1つの「Pex遺伝子」によってコードされる。
「保存ドメイン」または「モチーフ」という用語は、進化的に関連したタンパク質の整合配列に沿って特定の位置で保存されたアミノ酸のセットを指す。その他の位置のアミノ酸は、相同的なタンパク質間で変動できるが、特定の位置で高度に保存されたアミノ酸は、タンパク質の構造、安定性、または活性に必須であるアミノ酸であることを示唆する。それらはタンパク質相同体ファミリーの整合配列中のそれらの高度な保存によって同定されるので、それらを識別子または「シグネチャー」として使用して、新たに判定された配列のタンパク質が以前同定されたタンパク質ファミリーに属するかどうかを判定できる。それに関連してPex2p、Pex10p、およびPex12pは全て、それらのカルボキシル末端の近辺に、C3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフとして知られているシステインに富むモチーフを共有する。このモチーフは、タンパク質のドッキングおよびペルオキシソーム内への転位に関与し、それらの活性に必要なようである(Kiel,J.A.K.W.ら、Traffic,7:1291〜1303(2006年))。
「C3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフ」または「C3HC4モチーフ」という用語は、総称的に、式Iに記載のアミノ酸配列存在によって同定される、2つの亜鉛イオンを結合する保存されたシステインに富むモチーフを指す。
式I:CX2CX9-27CX1-3HX2CX2CX4-48CX2
ペルオキシソーム生合成因子10タンパク質をコードするヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子、すなわちYlPex10p内のC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフは配列番号10のアミノ酸327〜364の間に位置し、CX2CX11CX1HX2CX2CX10CX2Cモチーフ(配列番号25)によって定義される。ペルオキシソーム生合成因子2タンパク質をコードするY.リポリティカ(Y.lipolytica)遺伝子、すなわちYlPex2p内のC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフは、配列番号2のアミノ酸266〜323の間に位置する。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ペルオキシソーム生合成因子12タンパク質、すなわちYlPex12pは、配列番号11のアミノ酸342〜391の間に位置する不完全C3HC4リングフィンガーモチーフを含有する。YlPex10、YlPex2、およびYlPex12のC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフに対応するタンパク質配列を全て図2Aに整列させた。星印は、モチーフの保存されたシステインまたはヒスチジン残基を示す。
YlPex10、YlPex2、およびYlPex12は、タンパク質−タンパク質相互作用によってリングフィンガー複合体を形成すると考えられる。2つの亜鉛残基があるYlPex10pのC3HC4フィンガーモチーフのシスチンとヒスチジン残基間の提案される相互作用を図2Bに模式的に図示する。
「Pex10」という用語は、ペルオキシソーム生合成因子10タンパク質またはペルオキシソームアセンブリータンパク質ペルオキシン10をコードする遺伝子を指し、ペルオキシンタンパク質は下文において「Pex10p」と称される。Pex10pの機能は明確に解明されていないが、その他の生物における研究は、Pex10生成物がペルオキシソーム膜中に局在し、細胞小器官の正常な機能化に必須であることを明らかにした。C3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフはPex10pのC末端領域中に保存されているようであり(Kalish,J.E.ら、Mol.Cell Biol.,15:6406〜6419(1995年);Tan,X.ら、J.Cell Biol.,128:307〜319(1995年);Warren,D.S.ら、Am.J.Hum.Genet.,63:347〜359(1998年))、酵素活性に必要とされる。
「YlPex10」という用語は、ペルオキシソーム生合成因子10タンパク質をコードするヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子を指し、タンパク質は下文において「YlPex10p」と称される。この特定のペルオキシンは、最近Sumitaら(FEMS Microbiol.Lett.,214:31〜38(2002年))によって研究された。YlPex10のヌクレオチド配列は、GenBank登録番号CAG81606(配列番号10)、AB036770(配列番号20、21、および22)、およびAJ012084(配列番号23および24)をはじめとする複数の登録番号の下にGenBankに登録された。配列番号24に記載のYlPex10p配列は、長さが354個のアミノ酸である。対照的に配列番号10および配列番号22に記載のYlPex10p配列は、100%同一の配列が追加的な23個のアミノ酸をタンパク質のN末端に有するので、それぞれ長さが377個のアミノ酸である(GenBank登録番号AJ012084(配列番号24)で同定されるのとは異なる開始コドンに対応する)。
「Pex3」という用語はペルオキシソーム生合成因子3タンパク質またはペルオキシソームアセンブリータンパク質ペルオキシン3をコードする遺伝子を指し、ペルオキシンタンパク質は下文において「Pex3p」と称される。Pex3pの機能に関する機構的詳細は明らかには解明されていないが、Pex3pが、ペルオキシソーム膜形成のためのペルオキシソーム生合成初期に必要とされるペルオキシソーム内在性膜タンパク質であることは明らかである(例えばBaerends,R.J.ら、J.Biol.Chem.,271:8887〜8894(1996年);Bascom,R.A.ら、Mol.Biol.Cell,14:939〜957(2003年)を参照されたい)。
「YlPex3」という用語は、ペルオキシソーム生合成因子3タンパク質をコードするヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子を指し、タンパク質は下文において「YlPex3p」と称される。YlPex3のヌクレオチド配列は、GenBankに登録番号CAG78565(配列番号3)として登録された。
「Pex16」という用語は、ペルオキシソーム生合成因子16タンパク質またはペルオキシソームアセンブリータンパク質ペルオキシン16をコードする遺伝子を指し、ペルオキシンタンパク質は下文において「Pex16p」と称される。Pex16pの機能は明らかには解明されていないが、その他の様々な生物における研究は、Pex16生成物がペルオキシソーム膜形成およびペルオキシソーム増殖制御で役割を果たすことを明らかにした(Platta,H.W.およびR.Erdmann,Trends Cell Biol.,17(10):474〜484(2007年))。
「YlPex16」という用語は、ペルオキシソーム生合成因子16タンパク質をコードするヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子を指し、タンパク質は下文において「YlPex16p」と称される。この特有のペルオキシンについては、Elizen G.A.ら(J.Cell Biol.,137:1265〜1278(1997年))およびTitorenko,V.I.ら(Mol.Cell Biol.,17:5210〜5226(1997年))に記載されている。YlPex16のヌクレオチド配列は、GenBankに登録番号CAG79622(配列番号14)として登録された。
天然Pex遺伝子中のまたはそれと関連した「中断」という用語は、遺伝子がゲノムから欠失していかなるタンパク質も翻訳されないような完全な遺伝子ノックアウトか、または挿入、欠失、アミノ酸置換またはその他の標的を定めた変異を有する翻訳されたPexタンパク質のどちらかをもたらす、その遺伝子の一部内の挿入、欠失、または標的を定めた変異を指す。タンパク質中の中断の位置は、例えばタンパク質のN末端部分内またはタンパク質のC末端部分内であってもよい。中断されたPexタンパク質は、中断されていないPexタンパク質と比較して損なわれた活性を有し、非機能性であり得る。Pexタンパク質をコードする天然遺伝子中の中断としては、制御配列、転写および翻訳因子および/または情報伝達経路の操作を通じて、またはセンス、アンチセンスまたはRNAi技術の使用によってもたらされるものなどのPexタンパク質の低発現または発現欠如をもたらす別の手段が挙げられる。
本明細書での用法では、「PEX中断生物」という用語は、機能性多価不飽和脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子を含み、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子中に上で定義される中断を有する、あらゆる油性真核生物を指す。
「脂質」という用語は、あらゆる脂溶性(すなわち親油性)天然分子を指す。脂質は、細胞膜の構成成分、エネルギー保存源、およびシグナル伝達経路中間体などの多数の重要な生物学的機能を有する多様な化合物である。脂質はケトアシル基またはイソプレン基のどちらかから完全にまたは部分的に由来する疎水性または両親媒性の小型分子として広く定義されてもよい。Lipid Metabolites and Pathways Strategy(LIPID MAPS)分類体系(National Institute of General Medical Sciences,Bethesda,MD)に基づく脂質の一般的概要を下の表2に示す。
Figure 2010539985
細胞の「総脂質画分」という用語は、本明細書では細胞の全てのエステル化脂肪酸を指す。トリアシルグリセロール[「油」]画分、ホスファチジルコリン画分、およびホスファチジルエタノールアミン画分をはじめとする、総脂質画分内の様々な下位画分が単離できるが、これは決して全ての下位画分を包含するものではない。
「脂質体」は、リン脂質単層によって、および通常特定のタンパク質によって結合される脂質小滴を指す。これらの細胞小器官は、ほとんどの生物が中性脂質を輸送/保存する部位である。脂質体は、TAG生合成酵素を含有する小胞体のミクロドメインから生じると考えられる。それらの合成およびサイズは、特定のタンパク質構成要素によって制御されるようである。
「中性脂質」とは、細胞中において脂質体内に貯蔵脂肪および油として一般に見られる脂質を指し、細胞のpHでは脂質は荷電群を有さないためこのように称される。一般にそれらは完全に非極性であり、水に対する親和性がない。中性脂質は一般にグリセロールと脂肪酸のモノ−、ジ−、および/またはトリエステルを指し、それぞれモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールまたはトリアシルグリセロールとも称され、または集合的にアシルグリセロールとも称される。遊離脂肪酸をアシルグリセロールから放出するには、加水分解反応が起きなくてはならない。
「トリアシルグリセロール」[「TAG」]および「油」という用語は同義であり、グリセロール分子にエステル化された3つの脂肪酸アシル残基から構成される中性脂質を指す。TAGは、長鎖PUFA、ならびにより短い飽和および不飽和脂肪酸、およびより長鎖の飽和脂肪酸を含有できる。細胞のTAG画分はまた「油画分」とも称され、「油生合成」は総称的に細胞内のTAG合成を指す。油またはTAG画分は総脂質画分の下位画分であるが、それはまた油性生物中において、乾燥細胞重量の%としての細胞中の総脂肪酸の重量として測定される、総脂質含量の主要部分も構成する[下記参照]。油[「TAG」]画分中の脂肪酸組成および総脂質画分の脂肪酸組成は、一般に類似している。したがって総脂質画分中のPUFA濃度の増大または減少は、油[「TAG」]画分中のPUFA濃度の増大または減少に対応し、逆もまた然りである。
「総脂肪酸」[「TFA」]という用語は、本明細書では所定のサンプル中において、(当該技術分野で知られているような)塩基エステル交換法によって脂肪酸メチルエステル[「FAME」]に誘導体化できる全ての細胞脂肪酸の和を指し、それは例えば総脂質画分または油画分であってもよい。したがって総脂肪酸は、ホスファチジルコリン画分、ホスファチジルエタノールアミン画分、およびジアシルグリセロールとモノアシルグリセロールとトリアシルグリセロール[「TAGまたは油」]画分をはじめとする、中性および極性脂質画分からの脂肪酸を含むが、遊離脂肪酸は含まない。
細胞の「総脂質含量」という用語は、乾燥細胞重量[「DCW」]の%としてのTFAの測定値である。したがって総脂質含量[「TFA%DCW」]は、例えば100ミリグラムのDCWあたりの総脂肪酸のミリグラムに等しい。
一般に脂肪酸濃度は、本明細書では、例えば100ミリグラムのTFAあたりの所定の脂肪酸のミリグラムなどのTFA[「%TFA」]の重量%として表される。本開示中で特に断りのない限り、総脂質に対する所定の脂肪酸の%への言及は、%TFAとしての脂肪酸濃度に等しい(例えば総脂質の%EPAは、EPA%TFAに等しい)。
場合によっては、細胞中の所定の脂肪酸の含量をその乾燥細胞重量の%[「%DCW」]として表すことが有用である。したがって例えばエイコサペンタエン酸%DCWは、次式に従って求められる。
(エイコサペンタエン酸%TFA)*(TFA%DCW)]/100
「脂質プロフィール」および「脂質組成」という用語は同義であり、総脂質画分中または油[「TAG」]画分中などの特定の脂質画分に含有される個々の脂肪酸の量を指し、量はTFAの%として表される。混合物中に存在する個々の各脂肪酸の和は、100になるはずである。
本明細書での用法では、「倍の増大」という用語は、数値で乗じることで得られる増大を指す。例えば数量、量、濃度、重量%などを1.3で乗じることは、1.3倍の増大を提供する。
「脂肪酸」という用語は、(より長い、およびより短い鎖長の酸の双方も知られているが)約C12〜22の様々な鎖長の長鎖脂肪族酸(アルカン酸)を指す。優勢な鎖長はC16〜22の間である。脂肪酸の構造は単純な表記体系「X:Y」で表され、式中、Xは特定の脂肪酸中の炭素[「C」]原子総数であり、Yは二重結合数である。「飽和脂肪酸」対「不飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」対「多価不飽和脂肪酸」[「PUFA」]、および「オメガ−6脂肪酸」[「ω−6」または「n−6」]対「オメガ−3脂肪酸」[「ω−3」または「n−3」]の違いについて、さらに詳しくは米国特許第7,238,482号明細書で規定される。
本明細書においてPUFAを既述するのに使用される命名法を表3に示す。「略記法」と題された欄では、オメガ−参照システムが使用されて炭素数、二重結合数、およびこの目的では番号1のオメガ炭素から数えて、オメガ炭素に最も近い二重結合の位置を示唆する。表の残りは、ω−3およびω−6脂肪酸およびそれらの前駆物質の一般名、本明細書全体で使用される略語、および各化合物を要約する。
Figure 2010539985
本明細書に記載されている方法を使用すると、油性酵母の油画分中には表3に列挙されるω−3/ω−6PUFAが蓄積する可能性が最も高いが、この一覧は限定的または完全なものと解釈すべきではない。
本明細書での用法では、「多価不飽和脂肪酸の組み合わせ」または「多価不飽和脂肪酸のあらゆる組み合わせ」という用語は、上で表3に列挙した多価不飽和脂肪酸のいずれか2つ以上の混合物を指す。このような組み合わせは、細胞中の総脂肪酸の重量%をはじめとする、細胞中の多様な濃度または重量%に対して測定できる、濃度および重量%の属性を有する。
代謝経路または生合成経路は、生化学的意味において、細胞内で順番に起きて酵素によって触媒され、細胞によって使用されまたは保存される代謝産物の形成、または「流束発生ステップ」と呼ばれる別の代謝経路の開始のどちらかを達成する一連の化学反応と見なすことができる。これらの経路の多くは複雑であり、開始物質を所望の正確な化学構造を有する生成物に成形する段階を追った改変を伴う。
「PUFA生合成経路」という用語は、オレイン酸をLA、EDA、GLA、DGLA、ARA、DRA、DTA、およびDPAn−6などのω−6脂肪酸に、そしてALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPA、およびDHAなどのω−3脂肪酸に変換する代謝過程を指す。この過程については文献に詳細に記載されている。例えば国際公開第2006/052870号パンフレットを参照されたい。簡単に述べるとこの過程は、小胞体膜中に存在する「PUFA生合成経路酵素」と称される一連の特別な延長および不飽和化酵素による、炭素原子の付加を通じた炭素鎖の延長、および二重結合の付加を通じた延長分子の不飽和化を伴う。より具体的には「PUFA生合成経路酵素」とは、PUFAの生合成と関連付けられている次の酵素(およびそれらをコードする遺伝子)のいずれかを指す。Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼおよび/またはC20/22エロンガーゼ。
「ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路」という用語は、適切な条件下で発現すると、ω−3およびω−6脂肪酸の片方または双方の生成を触媒する酵素をコードする一組の遺伝子を指す。典型的にω−3/ω−6脂肪酸生合成経路に関与する遺伝子は、PUFA生合成経路酵素をコードする。代表的な経路を図1に示し、様々な中間体を経由するミリスチン酸のDHAへの変換を提供して、ω−3およびω−6脂肪酸の双方が共通の原料からどのように生成できるかを実証する。経路は自然に2つの部分に別れ、1つの部分はω−3脂肪酸、別の部分はω−6脂肪酸のみを発生させる。ω−3脂肪酸のみを発生させる部分を本明細書ではω−3脂肪酸生合成経路と称する一方、ω−6脂肪酸のみを発生させる部分は本明細書ではω−6脂肪酸生合成経路と称する。
「機能性」という用語は、本明細書ではω−3/ω−6脂肪酸生合成経路に関して、経路中の遺伝子のいくつか(または全て)が、活性酵素を発現し、生体内触媒作用または基質変換をもたらすことを意味する。いくつかの脂肪酸生成物は、この経路の遺伝子のサブセットの発現のみを必要とするので、「ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路」または「機能性ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路」は、上の段落に列挙される遺伝子の全てが必要とされることを暗示しないものとする。
「Δ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路」という用語は、最低限少なくとも1つのΔ6デサチュラーゼおよび少なくとも1つのC18/20エロンガーゼを含み、それによってGLAおよび/またはSTAを中間体脂肪酸として、LAおよびALAからそれぞれD
GLAおよび/またはETAを生合成できるようにするPUFA生合成経路を指す。その他のデサチュラーゼおよびエロンガーゼが発現すれば、ARA、EPA、DPA、およびDHAもまた合成されるかもしれない。
「Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路」という用語は、最低限少なくとも1つのΔ9エロンガーゼおよび少なくとも1つのΔ8デサチュラーゼを含み、それによってEDAおよび/またはETrAを中間体脂肪酸として、LAおよびALAからのそれぞれDGLAおよび/またはETAの生合成を可能にするPUFA生合成経路を指す。その他のデサチュラーゼおよびエロンガーゼが発現すれば、ARA、EPA、DPA、およびDHAもまた合成されるかもしれない。
「デサチュラーゼ」という用語は、隣接する炭素の1つから水素を取り去り、それによってそれらの間に二重結合を導入することによって、脂肪酸中の隣接する炭素を不飽和化できるポリペプチドを指す。不飽和化からは、対象の脂肪酸または前駆物質が生じる。特定の脂肪酸に言及するために明細書全体を通じてオメガ基準系を使用したにもかかわらず、デルタ系を使用して基質のカルボキシル末端から数えることによってデサチュラーゼ活性を示す方が、より都合がよい。ここで特に興味深いのは、1)基質脂肪酸DGLAのARAへの、および/または基質脂肪酸ETAのEPAへの変換を触媒するΔ5デサチュラーゼ、2)分子のカルボキシル末端から数えて17番目と18番目の炭素原子の間で脂肪酸を不飽和化し、例えば基質脂肪酸ARAのEPAへの変換および/または基質脂肪酸DGLAのETAへの変換を触媒するΔ17デサチュラーゼ、3)基質脂肪酸LAのGLAへの変換、および/または基質脂肪酸ALAのSTAへの変換を触媒するΔ6デサチュラーゼ、4)基質脂肪酸オレイン酸のLAへの変換を触媒するΔ12デサチュラーゼ、5)基質脂肪酸LAのALAへの変換および/または基質脂肪酸GLAのSTAへの変換を触媒するΔ15デサチュラーゼ、6)基質脂肪酸DPAのDHAへの変換および/または基質脂肪酸DTAのDPAn−6への変換を触媒するΔ4デサチュラーゼ、7)基質脂肪酸EDAのDGLAへの変換および/または基質脂肪酸ETrAのETAへの変換を触媒するΔ8デサチュラーゼ、および8)基質脂肪酸パルミチン酸のパルミトレイン酸(16:1)への変換および/または基質脂肪酸ステアリン酸のオレイン酸への変換を触媒するΔ9デサチュラーゼである。Δ15およびΔ17デサチュラーゼはまた、ω−6脂肪酸をそれらのω−3対応物に変換するそれらの能力に基づいて、(例えばLAをALAへの、およびARAをEPAへのそれぞれの変換)「オメガ−3デサチュラーゼ」、「w−3デサチュラーゼ」、および/または「ω−3デサチュラーゼ」と称されることもある。適切な宿主を脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子で形質転換し、宿主の脂肪酸プロフィールに対するその影響を判定することによって、特定の脂肪酸デサチュラーゼの特異性を経験的に判定することが望ましいかもしれない。
「エロンガーゼ」という用語は、脂肪酸炭素鎖を延長して、エロンガーゼが作用する脂肪酸基質よりも炭素2個分長い酸を生成できるポリペプチドを指す。この延長過程は、米国特許出願公開第2005/0132442号明細書および国際公開第2005/047480号パンフレットに記載されているように、脂肪酸シンターゼと関連している多段階機序で起きる。エロンガーゼ系によって触媒される反応の例は、GLAからDGLA、STAからETA、およびEPAからDPAへの変換である。一般にエロンガーゼの基質選択性はいくぶん広いが、鎖長および不飽和の程度とタイプの双方によって区別される。例えばC14/16エロンガーゼは例えばミリスチン酸などのC14基質を利用し、C16/18エロンガーゼは例えばパルミチン酸などのC16基質を利用し、C18/20エロンガーゼ[Δ6エロンガーゼとしてもまた知られており、用語は同義的に使用できる]は例えばGLAまたはSTAなどのC18基質を利用し、C20/22エロンガーゼは例えばEPAなどのC20基質を利用する。同様にΔ9エロンガーゼは、LAをEDAへの、およびALAをETrAへの、それぞれの変換を触媒できる。いくつかのエロンガーゼは幅広い特異性を有し、したがって単一酵素がいくつかのエロンガーゼ反応を触媒できるかもしれないことに留意することが重要である。例えば単一酵素が、C16/18エロンガーゼとC18/20エロンガーゼの双方として機能してもよい。
「変換効率」および「%基質変換」という用語は、それによってデサチュラーゼなどの特定の酵素が基質を生成物に変換できる効率を指す。変換効率は、次式に従って測定される。
([生成物]/[基質+生成物])*100
式中、「生成物」は即時生成物および経路中のそれから誘導される全生成物を含む。
「油性」という用語は、それらのエネルギー源を油の形態で保存する傾向がある生物を指す(Weete、「Fungal Lipid Biochemistry」、第2版、Plenum、1980年)。
「油性酵母菌」という用語は、TAGである油を生成できる酵母菌として分類される微生物を指す。一般に油性微生物の細胞油またはTAG含量はS字形曲線に従い、対数増殖後期または定常増殖初期において脂質濃度が最大に達するまで増大し、次に定常増殖後期および死滅期において徐々に減少する(YongmanitchaiおよびWard、Appl.Environ.Microbiol.57:419〜25(1991年))。本明細書に記載のとおり油性微生物は、典型的に約25%を超えるその乾燥細胞重量を油またはTAGとして蓄積する。油性酵母菌の例としては、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)属が挙げられるが、決してこれに限定されるものではない。
本明細書の用法では、「単離された核酸断片」および「単離された核酸分子」という用語は同義的に使用されて、一本鎖または二本鎖で、場合により合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を含有するRNAまたはDNAのポリマーを指す。DNAポリマーの形態の単離された核酸断片は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントを含んでなってもよい。
核酸断片は、適切な温度および溶液イオン強度条件下で、核酸断片の一本鎖形態がその他の核酸断片とアニールできる場合、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸断片と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件については良く知られており、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1989年)で例証される。
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「かなりの部分」とは、当業者による配列の手動評価によって、あるいはBLAST(「基礎的局在性配列検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool」、Altschul,S.F.ら、J.Mol.Biol.215:403〜410(1993年))などのアルゴリズムを使用したコンピュータ自動化アラインメントおよび同定によって、遺伝子またはポリペプチドの推定上の同定を得るのに十分なポリペプチドまたは遺伝子のヌクレオチド配列のアミノ酸配列を含んでなる部分である。一般に推定的にポリペプチドまたは核酸配列が既知のタンパク質または遺伝子に相同的であると同定するためには、10個以上の隣接するアミノ酸または30個以上の連続的なヌクレオチド配列が必要である。さらにヌクレオチド配列に関して、配列依存遺伝子同定法(例えばサザンハイブリダイゼーション)および微生物コロニーまたはバクテリオファージプラークの原位置ハイブリダイゼーションのような単離において、20〜30個の隣接するヌクレオチドを含んでなる遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを使用しても良い。さらにプライマーを含んでなる特定の核酸断片を得るために、塩基12〜15個の短いオリゴヌクレオチドを増幅プライマーとしてPCRで使用しても良い。したがってヌクレオチド配列の「かなりの部分」は、配列を含んでなる核酸断片を特異的に同定、および/または単離できるようにする十分な配列を含んでなる。
「相補的」という用語は、互いにハイブリダイズできるヌクレオチド塩基間の関係について述べるために使用される。例えばDNAについて、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。
「相同性」、および「相同的」という用語は、本明細書では区別なく使用される。これらは、1個もしくはそれ以上のヌクレオチド塩基の変化が、遺伝子発現を仲介するまたは特定の表現型を生成する核酸断片の能力に影響しない核酸断片を指す。これらの用語はまた、最初の未変性断片と比べて、得られる核酸断片の機能特性を実質的に変化させない、1個もしくはそれ以上のヌクレオチドの欠失または挿入などの本明細書に記載されているPex核酸断片の変更も指す。
さらに当業者は、相同的な核酸配列が、0.5×SSC、0.1%SDS、60℃のような中程度にストリンジェントな条件下において、本明細書に例示されている配列と、または機能的にそれらと同等物である本明細書に記載されている本ヌクレオチド配列のあらゆる部分とハイブリダイズする、それらの能力によってもまた定義されることを認識する。
「コドン縮重」とは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響しないヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝子コードの性質を指す。当業者は、特定のアミノ酸を特定化するヌクレオチドコドンの使用における、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」についてよく知っている。したがって宿主細胞中の改善された発現のために遺伝子を合成する場合、そのコドン使用頻度が、宿主細胞の好むコドン使用頻度に近くなるように遺伝子をデザインすることが望ましい。
「合成遺伝子」は、当業者に公知の手順を使用して化学的に合成されるオリゴヌクレオチド構成単位からアセンブルできる。これらのオリゴヌクレオチド構成単位をアニールし次にライゲーションして遺伝子セグメントを形成し、次にそれを酵素的にアセンブルして遺伝子全体を構築する。したがって遺伝子をヌクレオチド配列の最適化に基づいて、最適な遺伝子発現のために個別に調整し、宿主細胞のコドンバイアスを反映させることができる。当業者は、コドン利用が宿主によって好まれるコドンに偏っている場合の遺伝子発現成功の可能性を理解する。好ましいコドンの判定は、配列情報が利用できる宿主細胞由来の遺伝子の調査に基づくことができる。
「遺伝子」とは特定のタンパク質を発現する核酸断片を指し、それはコード領域のみを指してもよく、またはコード配列に先行する(5’非コード配列)およびそれに続く(3’非コード配列)制御配列を含んでもよい。「天然遺伝子」とは、自然界にそれ自体の制御配列と共に見られる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、自然界に共に見られない制御およびコード配列を含んでなる天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。したがってキメラ遺伝子は、異なる起源由来の制御配列およびコード配列、あるいは同一起源由来であるが、自然界に見られるのとは異なる様式で配列される制御配列およびコード配列を含んでなってもよい。「内在性遺伝子」とは、生物ゲノム中のその天然位置にある天然遺伝子を指す。「外来性」遺伝子とは、遺伝子移入によって宿主生物に導入された遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子、天然宿主内の新しい位置に導入された天然遺伝子、あるいはキメラ遺伝子を含んでなることができる。「導入遺伝子」とは、形質転換によってゲノム中に導入された遺伝子である。「コドン最適化遺伝子」とは、そのコドン使用頻度が宿主細胞の好むコドン使用頻度を模倣するようにデザインされた遺伝子である。
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適した制御配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、配列内、または下流(3’非コード配列)に位置して、転写、RNAプロセシングまたは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。制御配列は、プロモータ、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列(例えば転写開始部位と翻訳開始コドンの間)、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、およびステムループ構造を含んでもよい。
「プロモーター」とは、コード配列または機能性RNAの発現を調節できるDNA配列を指す。一般にコード配列はプロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターはその全体が天然遺伝子に由来しても良く、あるいは自然界に見られる異なるプロモーター由来の異なる要素からなっても良く、あるいは合成DNAセグメントを含んでなってさえ良い。異なるプロモーターが、異なる組織または細胞タイプ中で、あるいは異なる発育段階で、あるいは異なる環境または生理学的条件に呼応して、遺伝子の発現を導いても良いことが当業者には理解される。ほとんどの場合にほとんどの細胞タイプ中で遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構造プロモーター」と称される。ほとんどの場合、制御配列の正確な境界は完全に画定されていないので、異なる長さのDNA断片が、同一プロモーター活性を有してもよいこともさらに認識される。
「3’非翻訳配列」および「転写ターミネーター」という用語は、コード配列下流に位置するDNA配列を指す。これには、mRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響できる調節シグナルをコードするポリアデニル化認識配列、およびその他の配列が含まれる。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆物質の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響することで特徴づけられる。3’領域は、関連したコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響できる。
「RNA転写物」とは、RNAポリメラーゼが触媒するDNA配列転写から得られる生成物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは一次転写物と称され、あるいはそれは一次転写物の転写後プロセッシング由来のRNA配列であってもよく、成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」とは、イントロンがなく、細胞によってタンパク質に翻訳されることができるRNAを指す。「cDNA」とは、mRNAに対して相補的であり、それに由来する二重鎖DNAを指す。「センスRNA」とは、mRNAを含み、細胞によってタンパク質に翻訳されることができるRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」とは、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部に相補的であり、標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写物を指す(米国特許第50,170,065号明細書、国際公開第99/28508号パンフレット)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物のあらゆる部分、すなわち5’非コード配列、3’非コード配列、またはコード配列にあっても良い。「機能性RNA」とは、翻訳されないがそれでもなお細胞プロセスに影響するアンチセンスRNA、リボザイムRNA、またはその他のRNAを指す。
「作動的に結合した」という用語は、1つの機能が他方の機能による影響を受けるような、単一核酸断片上の核酸配列のつながりを指す。例えばプロモーターがコード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、それはそのコード配列と作動的に結合する。すなわちコード配列がプロモーターの転写調節下にある。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で制御配列に作動的に結合できる。
「発現」という用語は、本明細書での用法では、核酸断片由来のセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写と安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳も指す。
「成熟」タンパク質とは、翻訳後処理されたポリペプチド、すなわち一次翻訳生成物中に存在するあらゆるプレペプチドまたはプロペプチドがそれから除去されたものを指す。「前駆」タンパク質とは、mRNAの翻訳の一次生成物、すなわちプレまたはプロペプチドが依然として存在するものを指す。プレペプチドまたはプロペプチドは、細胞内局在化シグナルであってもよいが、これに限定されるものではない。
「形質転換」とは、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす核酸分子の宿主生物中への転移を指す。核酸分子は、例えば自律的に複製するプラスミドであってもよく、またはそれは宿主生物のゲノムに組み込まれてもよい。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」または「組み換え」または「形質転換」生物と称される。
「安定した形質転換」とは、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす、核および細胞小器官ゲノムの双方をはじめとする宿主生物ゲノム中への核酸断片の転移を指す。対照的に「一過性形質転換」とは、組み込みまたは安定した遺伝形質なしに遺伝子発現をもたらす、宿主生物の核、またはDNA含有細胞小器官中への核酸断片の転移を指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」生物と称される。
「プラスミド」および「ベクター」という用語は、細胞の中心的代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多く、通常環状二本鎖DNA断片の形態である染色体外要素を指す。このような要素は、あらゆる供給源に由来する一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの配列、ゲノム一体化配列、直鎖または環状のファージまたはヌクレオチド配列を自律的に複製するかもしれず、そこではいくつかのヌクレオチド配列が独自の構成に結合または組み換えされ、それは選択された遺伝子産物のために、発現カセットを細胞中に導入することができる。
「発現カセット」という用語は、選択された遺伝子産物の発現に必要とされる、選択された遺伝子のコード配列、およびコード配列に先行する制御配列(5’非コード配列)およびコード配列に続く制御配列(3’非コード配列)を含んでなるDNA断片を指す。したがって発現カセットは、典型的に1)プロモータ配列、2)コード配列、すなわち読み取り枠[「ORF」]、および3)3’非翻訳領域、すなわち真核生物中では通常ポリアデニル化部位を含有するターミネーターから構成される。発現カセットは通常ベクター内に含まれ、クローニングおよび形質転換を容易にする。各宿主に対する正しい制御配列が使用される限りは、異なる発現カセットを細菌、酵母、植物、および哺乳類細胞をはじめとする、異なる生物に形質転換することができる。
「%同一性」という用語は、配列を比較して判定される2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の関係であると言及される。「同一性」は、場合によってはこのような比較配列間の整合パーセンテージによって判定される、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「%同一性」および「%類似性」は、1.)「計算分子生物学(Computational Molecular Biology)Lesk,A.M.編)Oxford University、NY(1988年)、2.)「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.編)Academic、NY(1993年)、3.)「Computer Analysis of Sequence Data」、第一部、(Griffin,A.M.、およびGriffin,H.G.編)Humania、NJ(1994年)、4.)「Sequence Analysis in Molecular Biology」von Heinje,G.編、Academic、NY(1987年)、5.)「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)Stockton、NY(1991年)に記載されているものをはじめとするが、これに限定されるものではない公知の方法によって容易に計算できる。
%同一性を判定する好ましい方法は、試験された配列間に最良の一致を与えるようにデザインされている。%同一性および%類似性を判定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラム中で体系化されている。配列アラインメントおよび%同一性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイート(DNASTAR Inc.(Madison,WI))のMegAlignTMプログラムを使用して実施されてもよい。配列の多重アラインメントは、「アラインメントのClustal V法」および「アラインメントのClustal W法」をはじめとするアルゴリズムのいくつかの変法を包含し、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイート(DNASTAR Inc.)のMegAlignTMv6.1プログラムにある、「Clustalアラインメント法」(HigginsおよびSharp,CABIOS,5:151〜153(1989年);Higgins,D.G.ら、Comput.Appl.Biosci.,8:189〜191(1992年)に記載されている)を使用して実施される。いずれかのClustalプログラムを使用した配列アラインメントの後、プログラムの「配列距離」表を見ることで「%同一性」を得ることができる。
同一のまたは類似した機能または活性を有するポリペプチドをその他の種から識別するのに、配列%同一性の様々な測定が有用であることは、当業者によって良く理解されている。%同一性の有用な例としては、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%、または50%〜100%の間のあらゆる整数百分率が挙げられるが、これに限定されるものではない。実際、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%などの50%〜100%のあらゆる整数のアミノ酸同一性が、本明細書に記載されている方法および宿主細胞においてポリペプチドをコードする、適切な核酸断片(単離されたポリヌクレオチド)について述べるのに有用かもしれない。場合によっては適切な核酸断片(単離されたポリヌクレオチド)は、本明細書に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約75%同一、およびより好ましくは少なくとも約80%同一のポリペプチドをコードする。好ましい核酸断片は、本明細書に記載のアミノ酸配列と少なくとも約85%同一のアミノ酸配列をコードする。より好ましい核酸断片は、本明細書に記載のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一のアミノ酸配列をコードする。最も好ましいのは、本明細書に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一のアミノ酸配列をコードする核酸断片である。
適切な核酸断片は上の相同性を有するだけでなく、典型的に少なくとも50個のアミノ酸、好ましくは少なくとも100個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも150個のアミノ酸、なおもより好ましくは少なくとも200個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも250個のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
「配列分析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析のために有用なあらゆるコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は、市販のものでも、あるいは独立して開発されても良い。典型的な配列分析ソフトウェアとしては、1.)Genetics Computer Group(GCG)(Madison,WI)からのGCGプログラム一式(Wisconsin Package Version 9.0)、2.)BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403〜410(1990年))、および3.)DNASTAR,Inc.(Madison、WI)からのDNASTAR、4.)Gene Codes Corporation(Ann Arbor、MI)からのSequencher、および5.)スミス−ウォーターマン・アルゴリズムを組み入れたFASTAプログラム(W.R.Pearson、Comput.Methods Genome Res.[Proc.Int.Symp.](1994年)、1992年会議、111〜20、編集者:Suhai,Sandor、Plenum、New York,NY)が挙げられるが、これに限定されるものではない。この説明では、配列分析ソフトウェアを分析のために使用する場合、分析結果は特に断りのない限り、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づく。本明細書での用法では、「デフォルト値」とは、最初に初期化されるときにソフトウェアに元からロードされる、あらゆる値またはパラメータの組を意味する。
本明細書で使用される標準リコンビナントDNAおよび分子クローニング技術については技術分野で良く知られており、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.、およびManiatis,T.、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1989年)(下文においてManiatis);Silhavy,T.J.、Bennan,M.L.およびEnquist,L.W.、「Experiments with Gene Fusions」Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、NY(1984年);およびAusubel,F.M.ら、「Current Protocols in Molecular Biology」Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience、Hoboken,NJによる出版(1987年)に記載されている。
概説:脂肪酸およびトリアシルグリセロールの生合成
一般に、油性微生物中の脂質蓄積は、増殖培地中に存在する全体的な炭素対窒素比に応えて誘発される。油性微生物中に遊離パルミチン酸(16:0)の新規(de novo)合成をもたらすこのプロセスについては、米国特許第7,238,482号明細書に詳細に記載されている。パルミチン酸は、エロンガーゼおよびデサチュラーゼの作用を通じて形成される、より長鎖の飽和および不飽和脂肪酸誘導体の前駆物質である(図1)。
TAG(脂肪酸の主要な貯蔵単位)は、以下が関与する一連の反応によって形成される。1.)アシルトランスフェラーゼによる1分子のアシル−CoAのグリセロール−3−リン酸塩へのエステル化がリゾホスファチジン酸を生じ、2.)アシルトランスフェラーゼによる第2のアシル−CoA分子のエステル化が、一般にホスファチジン酸として同定される1,2−ジアシルグリセロールリン酸塩を生じ、3.)ホスファチジン酸ホスファターゼによるリン酸塩の除去が1,2−ジアシルグリセロール[「DAG」]を生じ、4.)アシルトランスフェラーゼの作用による第3の脂肪酸の付加がTAGを形成する。
飽和および不飽和脂肪酸および短鎖および長鎖脂肪酸をはじめとする、幅広い脂肪酸をTAGに組み込むことができる。アシル基転移酵素によってTAGに組み込むことができる脂肪酸のいくつかの非限定的例としては次が挙げられる。カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、LA(18:2)、エレオステアリン酸(18:3)、GLA(18:3)、ALA(18:3)、STA(18:4)、アラキジン酸(20:0)、EDA(20:2)、DGLA(20:3)、ETrA(20:3)、ARA(20:4)、ETA(20:4)、EPA(20:5)、ベヘン酸(22:0)、DPA(22:5)、DHA(22:6)、リグノセリン酸(24:0)、ネルボン酸(24:1)、セロチン酸(26:0)、およびモンタン酸(28:0)脂肪酸。本明細書に記載されている方法および宿主細胞では、「長鎖」PUFAのTAGへの組み込みが最も望ましいかもしれず、長鎖PUFAとしては、長さが少なくとも炭素18個である、すなわちC18以上である、18:1基質から誘導されるあらゆる脂肪酸が挙げられる。これにはまたヒドロキシル化脂肪酸、エポキシ脂肪酸、および抱合型リノール酸も含まれる。
ほとんどのPUFAは中性脂質としてTAGに組み込まれて脂質体中に保存されるが、油性生物中の総PUFAの測定は、ホスファチジルコリン画分、ホスファチジルエタノールアミン画分、およびトリアシルグリセロール(TAGまたは油としてもまた知られている)画分中に位置するPUFAを含むべきであることに留意することが重要である。
オメガ脂肪酸の生合成
オレイン酸がω−3/ω−6脂肪酸に変換される代謝プロセスは、炭素原子付加を通じた炭素鎖の延長、および二重結合添加を通じた分子の不飽和化を伴う。これは、小胞体膜内に存在する一連の特別な不飽和化酵素および延長酵素を必要とする。しかし図1に示され下に記載されるように、特定ω−3/ω−6脂肪酸生成のための複数の代案の経路があることが多い。
具体的には図1は後述の経路を描写する。全ての経路は、オレイン酸がΔ12デサチュラーゼによって、第1のω−6脂肪酸であるリノール酸[「LA」]に最初に変換されることを必要とする。次に「Δ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路」および基質としてLAを使用して、長鎖ω−6脂肪酸が次のように形成される。1)LAがΔ6デサチュラーゼによってγ−リノレン酸[「GLA」]に変換され、2)GLAがC18/20エロンガーゼによってジホモ−γ−リノレン酸[「DGLA」]に変換され、3)DGLAがΔ5デサチュラーゼによってアラキドン酸[「ARA」]に変換され、4)ARAがC20/22エロンガーゼによってドコサテトラエン酸[「DTA」]に変換され、5)DTAがΔ4デサチュラーゼによってドコサペンタエン酸[「DPAn−6」]に変換される。
代案としては、「Δ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路」は基質としてα−リノレン酸[「ALA」]を使用し、次のように長鎖ω−3脂肪酸を生成できる。1)LAがΔ15デサチュラーゼによって第1のω−3脂肪酸ALAに変換され、2)ALAがΔ6デサチュラーゼによってステアリドン酸[「STA」]に変換され、3)STAがC18/20エロンガーゼによってエイコサテトラエン酸[「ETA」]に変換され、4)ETAがΔ5デサチュラーゼによってエイコサペンタエン酸[「EPA」]に変換され、5)EPAがC20/22エロンガーゼによってドコサペンタエン酸[「DPA」]に変換され、6)DPAがΔ4デサチュラーゼによってドコサヘキサエン酸[「DHA」]に変換される。任意にω−6脂肪酸がω−3脂肪酸に変換されてもよい。例えばΔ17デサチュラーゼ活性によって、DGLAからETAが、およびARAからEPAが、それぞれ生成される。
ω−3/ω−6脂肪酸の生合成のための別の経路は、Δ9エロンガーゼおよびΔ8デサチュラーゼすなわち「Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路」を利用する。より具体的にはΔ9エロンガーゼによって、LAがEDAに、およびALAがETrAに、それぞれ変換されてもよい。次にΔ8デサチュラーゼは、EDAをDGLAに、および/またはETrAをETAに変換する。下流PUFAが、上述のように引き続いて形成される。
ここで宿主生物は、天然にまたは遺伝子操作技術を通じてのどちらかによって、PUFA産生能力を有さなくてはならない。多数の微生物が、通常の細胞代謝過程において(ω−3/ω−6脂肪酸をはじめとする)PUFAを合成できるが、商業的に培養できるのはそのいくつかであり、医薬品、食餌代用物、メディカルフード、栄養補給剤、その他の食品、工業油脂化学またはその他の最終用途で使用するための所望の含油量および組成を有する油を産生する生物は、ほとんどない。したがって脂肪酸含量および組成が遺伝子操作によって注意深く規定されている「デザイナー」脂質および油の生産のために、微生物を操作する能力がさらに重要視されるようになってきている。これに基づき、宿主は恐らく機能性PUFA生合成経路をコードする異種遺伝子を含んでなることが予期されるが、必須ではない。
宿主生物が天然では所望のPUFAを産生せず、または所望の脂質プロフィールを有さない場合、当業者は、選択された宿主生物に、PUFA生合成のための適切な酵素をコードする1つ以上の発現カセットを導入するのに必要な考察事項および技術に精通している。文献において、このような発現カセットを様々な宿主生物に導入するための多数の教示が、当業者に提供される。宿主生物ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を使用した、次のようないくつかの参考文献が提供される。米国特許第7,238,482号明細書、国際公開第2006/033723号パンフレット、米国特許出願公開第2006−0094092号明細書、米国特許出願公開第2006−0115881−A1号明細書、および米国特許出願公開第2006−0110806−A1号明細書。この一覧は網羅的でなく、限定的と見なすべきではない。
簡単に述べると、宿主細胞中に存在するまたはそれに形質転換される、ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路の脂肪酸基質および特定遺伝子次第で、それらのTAGへの転写に先だって多様なω−3/ω−6PUFA生成物が生成できる。したがって所望の脂肪酸生成物の生成は、直接または間接的に起こり得る。直接的生成は、脂肪酸基質が、いかなる中間体ステップまたは経路中間体もなしに所望の脂肪酸生成物に直接変換される場合に起きる。間接生成は、所望のPUFAを生成する一連の反応が起きるような組み合わせで、PUFA生合成経路をコードする複数の遺伝子が使用されてもよい場合に起きる。具体的にはEPAの過剰生成のために、Δ12デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、C18/20エロンガーゼ、Δ5デサチュラーゼ、およびΔ17デサチュラーゼを含んでなる発現カセットで油性酵母を形質転換することが望ましいかもしれない。米国特許第7,238,482号明細書および国際公開第2006/052870号パンフレットを参照されたい。当業者に良く知られているように、PUFA生合成経路の酵素をコードする遺伝子のその他の様々な組み合わせが、油性生物中での発現に有用かもしれない(図1参照)。特定の発現カセット内に含まれる特定の遺伝子は宿主生物、そのPUFAプロフィールおよび/またはデサチュラーゼ/エロンガーゼプロフィール、基質可用性、および所望の最終産物に左右される。
GenBank、特許文献、およびPUFA産生能力を有する生物の実験解析などの公的に入手可能な文献に従って、所望のデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼ活性を有するいくつかの候補遺伝子が同定できる。有用なデサチュラーゼおよびエロンガーゼ配列は、例えば細菌、藻類、真菌、卵菌類、酵母、植物、動物などからの天然原料から単離される起源、半合成経路または新規合成によって生成される起源などのあらゆる起源に由来してもよい。これらの候補遺伝子の同定に続いて、デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有する特定のポリペプチドを選択する上での検討事項としては、次が挙げられる。1)ポリペプチドの基質特異性、2)ポリペプチドまたはその構成要素が律速酵素であるかどうか、3)デサチュラーゼまたはエロンガーゼが所望のPUFAの合成に必須であるかどうか、4)ポリペプチドに必要な補助因子、および/または5)ポリペプチドの生成後に、それがキナーゼまたはプレニル基転移酵素などによって修飾されるかどうか。
発現されるポリペプチドは、好ましくは宿主細胞中のその位置の生化学的環境に適したパラメーターを有する。米国特許第7,238,482号明細書を参照されたい。特定の各デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼの変換効率を考慮することもまた有用かもしれない。より具体的には各酵素は、基質を生成物に変換するのに100%効率では滅多に機能しないので、宿主細胞中に生じる未精製油の最終脂質プロフィールは、典型的に所望のω−3/ω−6脂肪酸、ならびに様々な上流中間PUFAからなる様々なPUFAの混合物である。したがって各酵素の変換効率もまた、所望の脂肪酸の生合成を最適化する際に考慮すべき変数である。
ペルオキシソーム生合成およびPex遺伝子
前述したように、ペルオキシソームは全ての真核細胞に見られる遍在性細胞小器官である。それらの主な役割は、有毒化合物、脂肪酸など、細胞の局在性細胞小器官内の様々な物質の分解である。例えば脂肪酸分子が分解されて、(細胞質ゾル中に排出されて戻る)アセチル−CoAの遊離分子を究極的に生じるβ−酸化の過程は、ペルオキシソーム中で起きる。ミトコンドリア中のβ−酸化過程はATP合成をもたらすが、ペルオキシソーム中のβ−酸化は高電位電子のO2への転移を引き起こして、H22の形成をもたらし、それは引き続いてペルオキシソームカタラーゼによって水とO2に変換される。C18〜22などの超長鎖脂肪酸は、ペルオキシソーム中で最初にβ−酸化を被り、ミトコンドリアβ−酸化がそれに続く。
ペルオキシソーム膜を通じたATP加水分解の手段によって、タンパク質を取り込む役割を担うタンパク質は、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質、または「ペルオキシン」として知られている。これらのペルオキシソーム生合成因子タンパク質はまた、ペルオキシソーム生合成/アセンブリーに関与するタンパク質も含む。ペルオキシソーム生合成因子タンパク質の遺伝子頭字語はPexであり、命名システムはDistelら、J.Cell Biol.,135:1〜3(1996年)に記載されている。これまでに様々な真核生物中で、少なくとも32個の異なるPex遺伝子が同定されている。しかし真菌では、Kielら(Traffic,7:1291〜1303(2006年))の最近のレビューが、ペルオキシソーム生合成/マトリックスタンパク質取り込みの最小要件が合計17であり、したがってPex1p、Pex2p、Pex3p、Pex4p、Pex5p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex10p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex17p、Pex19p、Pex20p、Pex22p、およびPex26pのみが必要であると提案している。これらのタンパク質は協調して作用し、ペルオキシソームを増殖(複製)して、ペルオキシソーム中への転移によってタンパク質を取り込む(Waterham,H.R.およびJ.M.Cregg.BioEssays.19(1):57〜66(1996年)によるレビュー)。
多数のPex遺伝子は、最初は、異常なペルオキシソーム機能または構造を示す変異型の分析から単離された。しかし完全なゲノム配列が利用できるようになって、相同性に基づくコンピュータ配列検索によってPex遺伝子を同定することが次第に容易になった。Kielら(Traffic,7:1291〜1303(2006年))は、時折の低い配列類似性にもかかわらず、ペルオキシソーム生合成機構の強力な保存を主張した。より具体的には酵母および糸状菌の中では、彼らのデータは、これまでに同定されたほとんど全てのPexタンパク質が保存されていることを示唆する。下の表4は、Kielら(前出)によって、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、アシュビア・ゴッシピイ(Ashbya gossypii)、クリヴェロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、デバリオミセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ジベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)、トウモロコシ黒穂菌(Ustilago maydis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)ネオフォルマンス(neoformans)変異株、およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)中で同定されたペルオキシソーム生合成因子タンパク質を示す。
Figure 2010539985
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損なわれたペルオキシソーム生合成につながるPex遺伝子の変異は、酵母、ヒト、お
よび植物において、重篤な代謝および発達障害をもたらす(Eckert,J.H.およびR.Erdmann,Rev.Physiol.Biochem Pharmacol.,147:75〜121(2003年);Weller,S.ら、Annual Review of Genomics and Human Genetics,4:165〜211(2003年);Wanders,R.J.,Am.J.Med.Genet.,126A:355〜375(2004年);Mano,S.およびM.Nishimura,Vitam Horm.,72:111〜154(2005年);Wanders,J.A.,およびH.R.Waterham,Annu.Rev.Biochem.,75:295〜332(2006年);Fujiki,Yukio.Peroxisome Biogenesis Disorders.,Encyclopedia of Life Sciences.John Wiley & Sons,2006年)。例えばX連鎖副腎白質萎縮症[「X−ALD」]およびツェルヴェーガー症候群、ならびにいくつかの重篤性のより低い疾患形態は、単一酵素欠乏症および/またはペルオキシソーム生合成障害に起因し得る。
酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中では、表4で同定されているように多様な異なるPex遺伝子が単離され特性決定されている。より具体的にはBascom,R.A.ら(Mol.Biol.Cell,14:939〜957(2003年))はYlPex3pについて述べ、Szilard,R.K.ら(J.Cell Biol.,131:1453〜1469(1995年))はYlPex5pについて述べ、Nuttley,W.M.ら(J.Biol.Chem.,269:556〜566(1994年))はYlPex6pについて述べ、Elizen G.A.ら(J.Biol.Chem.,270:1429〜1436(1995年))はYlPex9pについて述べ、Elizen G.A.ら(J.Cell Biol.,137:1265〜1278(1997年))およびTitorenko,V.I.ら(Mol.Cell Biol.,17:5210〜5226(1997年))はYlPex16pについて述べ、Lambkin,G.R.およびR.A.Rachubinski(Mol.Biol.Cell.,12(11):3353〜3364(2001年))はYlPex19について述べ、Titorenko V.I.ら(J.Cell Biol.,142:403〜420(1998年))およびSmith J.J.およびR.A.Rachubinski(J.Cell Biol.,276:1618〜1625(2001年))はYlPex20pについて述べている。
ここで最初に興味深かったのはYlPex10p(GenBank登録番号CAG81606、AB036770、およびAJ012084)であった。Sumitaら(FEMS Microbiol.Lett.,214:31〜38(2002年)では、1)YlPex10pがペルオキシソーム構成要素として機能すること、2)C341S、C346S、およびH343W点突然変異の創出とそれに続く成長分析による判定で、YlPex10pのC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフがタンパク質の機能に必須であることが実証された。
Pex10のC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフの研究はその他の生物で行われ、同様の結果であった。例えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)のPex10pのC3HC4モチーフ中の保存された残基を変更する点突然変異は、タンパク質の機能を消滅させることが分かった(Kalish,J.E.ら、Mol.Cell Biol.,15:6406〜6419(1995年))。同様に線維芽細胞系中における機能的相補性アッセイの後、Warren D.S.ら(Hum.Mutat.,15(6):509〜521(2000年))は、C3HC4モチーフがPex10p機能に重要であると結論した。いくつかの研究は、アラビドプシス(Arabidopsis)におけるPex10p機能の損失が、心形期における胚死亡を引き起こすことを示す(Hu,J.ら、Science,297:405〜409(2002年);Schmumann,U.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,100:9626〜9631(2003年);Sparkes,I.A.ら、Plant Physiol.,133:1809〜1819(2003年);Fan,J.ら、Plant Physiol.,139:231〜239(2005年))。経過観察研究で、Schemann,U.ら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,104:1069〜1074(2007年))は、非致死性部分機能喪失型アラビドプシス(Arabidopsis)変異株においてPex10pの機能を調査した。具体的にはアラビドプシス(Arabidopsis)野生型バックグラウンドで、機能不全C3HC4モチーフがある、Pex10pを発現する4つのT−DNA挿入系統を作り出した。変異型植物は損なわれた緑葉ペルオキシソームを示し、著者らはPex10p中のリングフィンガーモチーフの不活性化が、ペルオキシソームの葉緑体への付着と、ペルオキシソームおよび葉緑体間の代謝産物移動とに必要なタンパク質相互作用を排除したことを提案した。
研究はその他のPexタンパク質中の必須ドメインを同定していないが、研究は脂質代謝における役割が知られている細胞小器官であるペルオキシソームをアセンブルし、維持し、増殖させ、遺伝させるために、進化的に多様な生物が使用する戦略および分子機序を学ぶため、様々なPex変異型の影響を検討している。例えばBascom,R.A.らは、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex3pのノックアウトおよび過剰発現を実施した(Mol.Biol.Cell,14:939〜957(2003年))。ノックアウト細胞は野生型ペルオキシソームを含有しなかったが、代わりに多数の小型小胞を有した。過剰発現は、より少数のより大型で密集するペルオキシソームがある細胞をもたらした。彼らは、ペルオキシソーム生合成の構成要素の隔離、すなわちペルオキシソーム標的シグナル(PTS)1および2取り込み機序によって、Pex3pがペルオキシソームアセンブリーの開始に関与するという仮説を立てた。同様にGuo,T.らの研究では、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex16pのノックアウトが未熟ペルオキシソーム小胞の過剰な増殖をもたらし、それらの成熟ペルオキシソームへの変換の速度と効率を顕著に低下させたのに対し(J.Cell Biol.,162:1255〜1266(2003年))、過剰発現は少数であるが肥大したペルオキシソームをもたらした(Eitzenら、J.Cell Biol.,137:1265〜1278(1997年))。Guoらは、Pex16pが、初期ペルオキシソーム前駆物質の分裂に必要な膜切断事象を負に調節すると結論した。
上に要約した進歩にもかかわらず、様々なPexタンパク質の役割、それらの相互作用、およびペルオキシソーム中の生合成/アセンブリー機序に関わる多くの詳細は、未だに解明されていない。したがってYlPex10pのC3HC4モチーフ内の変異、またはYlPex3p、YlPex10pまたはYlPex16pのノックアウトが、PUFA、特にC20〜22分子などの長鎖PUFAを細胞中の総脂質画分および油画分に組み込む能力が増大したヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)変異株の創出をもたらすという、本明細書に記載されているデータは、その他の植物または動物を用いた研究で未だ検証されていない新しい観察である。
ペルオキシソームは、異化および同化脂質代謝の双方に必要とされることが提案されている(Lin,Y.ら、Plant Physiology,135:814〜827(2004年))が、この仮説はPex16p相同体の研究に基づく。より具体的にはLin,Y.ら(前出)は、sse1 seedの野性型のおよそ10〜16%への油減少に基づいて、アラビドプシス(Arabidopsis)Shrunken Seed 1(sse1)変異型が、異常なペルオキシソーム生合成および脂肪酸合成の双方を有することを報告した。Binns,D.ら(J.Cell Biol.,173(5):719〜731(2006年))は、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)においてペルオキシソームと脂質体の相互作用を調べ、2つの細胞小器官の間の広範囲に及ぶ物理的接触が、ペルオキシソーム脂肪酸酸化による脂質体内の脂肪分解のカップリングを促進すると判定した。より具体的には様々なPexノックアウト中で遊離脂肪酸とTAGとの比率を調べ、野生型に比べて増大することを見いだした。ペルオキシソームおよび特にPex3p、Pex10p、およびPex16pタンパク質の代謝的役割を理解するには、明らかにさらなる調査が必要であろう。
いかなる特定の説明または理論による拘束も望まないが、油性酵母細胞中のPex遺伝子の中断またはノックアウトは、ペルオキシソーム中で自然に起きる、またはペルオキシソームによって影響される、異化および同化脂質代謝の双方に影響するという仮説が立てられる。中断またはノックアウトは、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない油性酵母と比較して、総脂肪酸の%としての、総脂質画分中および油画分中のPUFA量の増大をもたらす。場合によっては、乾燥細胞重量%としての総脂質画分中および油画分中のPUFA量の増大、および/または乾燥細胞重量%としての総脂質含量の増大もまた観察された。藻類、真菌、卵菌綱、酵母、ユーグレナ属、ストラメノパイル(Stramenopiles)、植物、およびいくつかの哺乳類系などの全ての真核生物は全てペルオキシソームを含んでなることから、この一般機序が適用できるという仮説が立てられる。
Pex相同体の同定および単離
好ましい宿主生物中の特定のPex遺伝子またはタンパク質の配列が未知である場合、当業者は、コードされるタンパク質の活性を調節するのに先だって、これらの遺伝子またはその一部を同定および単離することが最も望ましいことを認識し、次に調節は、総脂肪酸の%としての、真核生物の総脂質画分中および油画分中に組み込まれるPUFA量の変更を容易にする。好ましい宿主のPex遺伝子の配列知識もまた、標的を定めた中断による相同染色体の遺伝子中断を容易にする。
配列分析ソフトウェアを使用して、表4中のPex配列またはその一部を使用して、同一または別の藻類、真菌、卵菌類、ユーグレナ属、ストラメノパイル(Stramenopiles)、酵母または植物種中のPex相同体を検索してもよい。一般にこのようなコンピュータソフトウェアは、様々な置換、欠失、およびその他の修飾に相同性の程度を割り当てることで類似した配列をマッチさせる。低複雑性フィルターと、次のパラメーター:期待値=10、マトリックス=Blosum 62(Altschul,ら、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(1997年))でのBLASTPアラインメント法などのソフトウェアアルゴリズムの使用は、表4中のいずれかのPexタンパク質を核またはタンパク質配列のデータベースと比較して、それによって好ましい宿主生物内の類似した既知の配列を同定するために良く知られている。
既知の配列のデータベースを綿密にチェックするためのソフトウェアアルゴリズムの使用は、特に表4に記載されているものなどの公的に入手可能なPex配列と比較的低い%同一性を有する相同体の単離に適する。公的に入手可能なPex配列と少なくとも約70%〜85%同一性のPex相同体について、単離が比較的容易であろうことは予測可能である。さらに少なくとも約85%〜90%同一の配列は特に単離に適し、少なくとも約90%〜95%同一の配列は最も容易に単離されるであろう。
いくつかのPex相同体はまた、Pex酵素にユニークなモチーフの使用によって単離されている。例えばPex2p、Pex10p、およびPex12pは、全てそれらのカルボキシル末端近辺に、C3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフとして知られている、システインに富むモチーフを共有することが良く知られている(図2A)。この「保存ドメイン」領域は特定の位置の高度に保存されたアミノ酸セットに対応し、タンパク質の構造、安定性または活性に必須であるPexタンパク質の領域を表す可能性が高い。モチーフは、それらがタンパク質相同体ファミリーの整合配列内に高度に保存されていることによって同定される。それらはユニークな「シグネチャー」として、新たに判定された配列を有するタンパク質が、以前同定されたタンパク質ファミリーに属するかどうかを判定できる。これらのモチーフは、それぞれ新しいPex2、Pex10および/またはPex12遺伝子の迅速な同定のための診断用ツールとして有用である。
代案としてはΔ17デサチュラーゼ相同体の同定のために、公的に入手可能なPex配列またはそのモチーフをハイブリダイゼーション試薬としてもよい。核酸ハイブリダイゼーション試験の基本的構成要素には、プローブ、対象とする遺伝子または遺伝子断片を含有することが疑われるサンプル、および特定のハイブリダイゼーション法が含まれる。プローブは、典型的に、検出される核酸配列に相補的な一本鎖核酸配列である。プローブは、検出される核酸配列とハイブリダイズ可能である。プローブの長さは、5個の塩基から数万個の塩基の間で変動してもよいが、典型的に約15個の塩基から約30個の塩基のプローブ長が適切である。プローブ分子の一部のみが、検出される核酸配列に相補的であればよい。さらにプローブと標的配列との間の相補性は完璧でなくてもよい。ハイブリダイゼーションは不完全に相補的な分子間でも生じ、その結果、ハイブリダイズした領域の特定塩基の一部は、適切な相補的塩基と対合形成しない。
ハイブリダイゼーション法については、良く知られている。典型的には、プローブおよびサンプルは、核酸ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で混合されなくてはならない。これは適切な濃度および温度条件下において、無機または有機塩存在下で、プローブとサンプルを接触させることを伴う。プローブとサンプル核酸の間であらゆる可能なハイブリダイゼーションが起きるように、プローブおよびサンプル核酸は、十分長い時間接触しなくてはならない。混合物中のプローブまたは標的濃度が、ハイブリダイゼーションが生じるのに必要な時間を決定する。プローブまたは標的の濃度が高いほど、必要なハイブリダイゼーションインキュベーション時間は短くなる。場合により、塩化グアニジニウム、グアニジニウムチオシアネート、ナトリウムチオシアネート、テトラクロロ酢酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸ルビジウム、ヨウ化カリウム、またはトリフルオロ酢酸セシウムのようなカオトロピック剤を添加してもよい。所望するならば、ハイブリダイゼーション混合物にホルムアミドを典型的に30〜50%(v/v)[「容量で」]添加できる。
様々なハイブリダイゼーション溶液を用いることができる。それらは典型的に約20〜60容量%、好ましくは30容量%の極性有機溶剤からなる。一般的なハイブリダイゼーション溶液は、約30〜50%v/vのホルムアミドと、約0.15〜1Mの塩化ナトリウムと、(例えばクエン酸ナトリウム、トリス−HCl、PIPESまたはHEPES(pH範囲約6〜9)などの)約0.05〜0.1Mの緩衝液と、(例えばドデシル硫酸ナトリウムなどの)約0.05〜0.2%の洗剤、または0.5〜20mMのEDTA、ファーマシア(Pharmacia Inc.)からのFICOLL(約300〜500kdal)、ポリビニルピロリドン(約250〜500kdal)、および血清アルブミンを用いる。また典型的なハイブリダイゼーション溶液には、約0.1〜5mg/mLの非標識の担体核酸、仔ウシ胸腺またはサケ精子DNA、または酵母菌RNAのような核酸DNA断片、および場合により約0.5〜2%wt/vol[重量/容量]のグリシンも含まれる。ポリエチレングリコールのような極性水溶性または水性膨張剤、(例えばポリアクリレートまたはポリメチルアクリレートなどの)陰イオンポリマー、硫酸デキストランのような陰イオン糖類ポリマーをはじめとする体積排除剤などのその他の添加剤を含めてもよい。
核酸ハイブリダイゼーションは多様なアッセイ型式に適合できる。最も適切なもの1つは、サンドイッチアッセイ型式である。サンドイッチアッセイは、特に非変性条件下でのハイブリダイゼーションに適合できる。サンドイッチタイプのアッセイの主要構成要素は、固体担体である。固体担体は、未標識で配列の一部と相補的である固定化核酸プローブをそれに吸着し、またはそれと共有結合する。
任意のPex核酸断片または同定されたあらゆる相同体のいずれかを使用して、同一または別の藻類、真菌、卵菌綱、ユーグレナ属、ストラメノパイル(Stramenopiles)、酵母または植物種から、相同的なタンパク質をコードする遺伝子を単離してもよい。配列依存プロトコルを使用した相同的遺伝子の単離は、当該技術分野で周知である。配列依存プロトコルの例としては以下が挙げられるが、これに限定されるものではない。1.)核酸ハイブリダイゼーション法、2.)ポリメラーゼ連鎖反応[「PCR」](米国特許第4,683,202号明細書)などの、核酸増幅技術の様々な使用で例示されるようなDNAおよびRNA増幅法;リガーゼ連鎖反応[「LCR」](Tabor,S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、82、1074(1985年));または連鎖置換増幅[「SDA」](Walkerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89、392(1992年))、および3.)相補性によるライブラリー構築およびスクリーニング法。
例えば公的に入手可能なPex遺伝子またはそれらのモチーフと類似したタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、周知の方法を使用して、DNAハイブリダイゼーションプローブとして公的に入手可能な核酸断片の全てまたは一部を使用して、あらゆる所望の生物からのライブラリーをスクリーンして直接単離できる。公的に入手可能な核酸配列に基づく特異的オリゴヌクレオチドプローブは、技術分野で既知の方法によってデザインおよび合成できる(Maniatis、前出)。さらにランダムプライマーDNA標識、ニック翻訳または末端標識技術のような当業者に既知の方法によって、配列全体を直接使用してDNAプローブを合成でき、または利用できる生体外転写システムを使用してRNAプローブを合成できる。さらに特異的プライマーをデザインして使用し、公的に入手可能な配列の一部(または全長)を増幅できる。得られた増幅生成物を増幅反応中に直接標識し、または増幅反応後に標識して、適切なストリンジェンシー条件下でプローブとして使用し、完全長DNA断片を単離できる。
典型的にPCR−タイプ増幅技術では、プライマーは異なる配列を有し、互いに相補的でない。所望の試験条件次第で、プライマーの配列は、標的核酸の効率的かつ忠実な複製を提供するようにデザインされるべきである。PCRプライマーデザインの方法は一般的であり、よく知られている。(K.E.Davis編、「Human Genetic Diseases:A Practical Approach」よりTheinおよびWallace、「The use of oligonucleotide as specific hybridization probes in the Diagnosis of Genetic Disorders」(1986年)33〜50、IRL:Herndon,VA;White,B.A.編、「Methods in Molecular Biology」よりRychlik,W.、「PCR Protocols:Current Methods and Applications」(1993年)第15巻、31〜39、Humana:Totowa,NJ)。
一般に、入手可能なPex配列の2本の短い断片をPCRプロトコルで使用して、DNAまたはRNAからの相同遺伝子をコードするより長い核酸断片を増幅してもよい。1つのプライマーの配列が入手可能な核酸断片またはそれらのモチーフに由来する、クローンされた核酸断片ライブラリーに対して、PCRを実施してもよい。別のプライマーの配列は遺伝子をコードするmRNA前駆物質の3’末端のポリアデニル酸トラクトの存在を利用する。
代案としては第2のプライマー配列は、クローニングベクターに由来する配列に基づいてもよい。例えば当業者は、RACEプロトコル(Frohmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:8998(1988年))に従って、PCRを使用して転写物の一点と3’または5’末端との間の領域のコピーを増幅し、cDNAを作り出すことができる。3’および5’方向を向いたプライマーは、入手可能な配列からデザインできる。市販される3’RACEまたは5’RACEシステム(例えば、BRL(Gaithersburg,MD))からを使用して、特定の3’または5’cDNA断片を単離できる(Oharaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、86:5673(1989年);Lohら、Science 243:217(1989年))。
すぐ上で論議したこれらの周知の方法のいずれかに基づいて、あらゆる選択された好ましい真核生物中でPex遺伝子相同体を同定および/または単離することが可能であろう。総脂質画分のおよび油画分の脂質プロフィールが、標的を定めたPex遺伝子中断を欠く生物中のものと比較して変更されることから、PUFA産生宿主生物の内在性遺伝子の標的を定めた中断によって、あらゆる推定上のPex遺伝子の活性が容易に確認できる。
天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質の中断による総脂質画分中および油画分中のPUFA量の増大
上述のように、本開示は、
a)ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子の中断と、機能性PUFA生合成経路をコードする遺伝子とを含んでなる油性真核生物を提供することで、PEX−中断生物を作り出すステップと、
b)天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない油性真核生物中の重量%と比較して、総脂肪酸重量%に対する総脂質画分中および油画分中の1つのPUFAまたはPUFAの組み合わせの重量%を増大させる条件下で、(a)の真核生物を成長させるステップを含む、油性真核生物中の1つのPUFAまたはPUFAの組み合わせの重量%を増大させるための方法に関する。
総脂肪酸の%としてのPUFA量の増大は、1)PUFA中間体または副産物とは対照的に機能性PUFA生合成経路の所望の最終産物であるPUFA、2)C20〜22PUFA、および/または、3)総PUFAであり得る。
総脂肪酸重量%に対する1つのまたは合わせたPUFAの重量%の増大に加えて、場合によっては細胞の総脂質含量(TFA%DCW)が増大または減少するかもしれない。これはPEX遺伝子中の中断が、PEX中断細胞内の総脂質量の増大または減少を引き起こすかどうかにかかわらず、中断が、常にPUFAまたはPUFAの組み合わせの重量%の増大を引き起こすことを意味する。
本明細書で提供される別の方法は、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子中の中断に関し、前記中断は、天然Pexタンパク質が中断されていない、または中断された天然Pexタンパク質の「置換」コピーを発現する親株中の%と比較して、乾燥細胞重量に対する1つのPUFAまたはPUFAの組み合わせの%の増大をもたらすことができる。
上の方法の好ましい態様では、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子中の中断は、天然Pexタンパク質が中断されていない親株、または中断された天然Pexタンパク質の「置換」コピーを発現する親株と比較した、乾燥細胞重量の%として、PUFA中間体または副産物とは対照的に機能性PUFA生合成経路の所望の最終産物であるPUFA量の増大をもたらす。場合によっては乾燥細胞重量に対するPUFAの組み合わせ%の増大は、C20〜22PUFAの組み合わせ、または総PUFAである。
少なくとも1つのペルオキシソーム生合成因子タンパク質の中断を含んでなる方法によって生成される生物についてもまた、本明細書に記載されている。これらの生物から得られる脂質および油、脂質および油の加工から得られる製品、食品、動物飼料または産業上の利用におけるこれらの脂質および油の使用、および/または食品または動物飼料における副産物の使用についてもまた記載されている。
上述の方法における好ましい真核生物としては、藻類、真菌、卵菌綱、酵母、ユーグレナ属、ストラメノパイル(Stramenopiles)、植物、およびいくつかの哺乳類系が挙げられる。
これらのいずれかの方法のためのペルオキシソーム生合成因子タンパク質は、Pex1p、Pex2p、Pex3p、Pex3Bp、Pex4p、Pex5p、Pex5Bp、Pex5Cp、Pex5/20p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex10p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex15p、Pex16p、Pex17p、Pex14/17p、Pex18p、Pex19p、Pex20p、Pex21p、Pex21B、Pex22p、Pex22p様、およびPex26p(およびそのタンパク質相同体)からなる群から選択されてもよい。本明細書に記載されているいくつかの好ましい方法では、中断されたペルオキシソーム生合成因子タンパク質は、Pex2p、Pex3p、Pex10p、Pex12pおよび/またはPex16pからなる群から選択される。しかしいくつかのより好ましい方法では、中断されたペルオキシソーム生合成因子タンパク質は、Pex3p、Pex10pおよび/またはPex16pからなる群から選択される。
ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子中の中断は、タンパク質N末端部分内またはタンパク質C末端部分内などの遺伝子の一部内の挿入、欠失、または標的を定めた変異であり得る。代案としては中断は、遺伝子が宿主細胞ゲノムから除去されるような完全な遺伝子ノックアウトをもたらすことができる。あるいは中断は、非機能性タンパク質をもたらす標的を定めた変異であり得る。
中断方法
本発明は、好ましい宿主細胞内における、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子の中断を含む。当業者は中断を達成するのに多数の技術を利用できるが、一般に特定遺伝子の内在性活性は次の技術によって低下または排除できる。例えば1)標的遺伝子全部または一部の挿入、置換および/または欠失を通じた遺伝子の中断、または2)タンパク質発現を調節する制御配列の操作。これらの技術についてはどちらも下で論じられる。しかし当業者は、これらについて既存の文献に詳しく記載されており、本明細書に記載されている方法、宿主細胞、および生成物を限定するものではないことを理解する。当業者はまた、あらゆる特定の油性酵母と共に使用するための最も適切な技術を理解する。
挿入、置換および/または欠失を通じた中断:遺伝子中断のために、典型的に選択可能なマーカー遺伝子である外来性DNA断片が構造遺伝子中に挿入される。これは構造遺伝子のコード配列を妨害して、その遺伝子の不活性化を引き起こす。中断カセットの宿主細胞への形質転換は,非機能性中断遺伝子との相同的組換えによる機能性天然遺伝子の置換をもたらす。例えばHamiltonら、J.Bacteriol.,171:4617〜4622(1989年);Balbasら、Gene,136:211〜213(1993年);Gueldenerら、Nucleic Acids Res.,24:2519〜2524(1996年);およびSmithら、Methods Mol.Cell.Biol.,5:270〜277(1996年)を参照されたい。当業者は、正または負の選択と、遺伝子ノックアウト創出と、哺乳類系、植物細胞、糸状菌、藻類、卵菌綱、ユーグレナ属、ストラメノパイル(Stramenopiles)、酵母および/または微生物系の特定ゲノム部位への外来性DNA配列の挿入を可能にする、遺伝子標的技術の一般方法の多数のバリエーションを理解する。
対照的に遺伝子中断の非特異的方法は、転位因子またはトランスポゾンの使用である。トランスポゾンはDNAに無作為に挿入される遺伝的要素であるが、後で配列に基づいて検索して挿入遺伝子座を判定できる。生体内および生体外双方における遺伝子転位技術が知られており、トランスポサーゼ酵素と組み合わされた転位因子の使用を伴う。転位因子またはトランスポゾンをトランスポサーゼ存在下で核酸断片に接触させると、転位因子は核酸断片中に無作為に挿入される。中断された遺伝子は転位因子の配列に基づいて同定されてもよいので、技術はランダム変異誘発のためおよび遺伝子単離のために有用である。生体外遺伝子転位のためのキットは市販され、Perkin Elmer Applied Biosystems(Branchburg,NJ)から入手できる酵母Ty1要素に基づくPrimer Island遺伝子転位キット、New England Biolabs(Beverly,MA)から入手できる細菌トランスポゾンTn7に基づくGenom Priming System、およびEpicentre Technologies(Madison,WI)から入手できるTn5細菌転位因子に基づくEZ::TN Transposon Insertion Systemsが挙げられる。
Pex制御配列の操作:当該技術分野で良く知られているように、コード配列と関連付けられている制御配列としては、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、または下流(3’非コード配列)に位置して、関連コード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響する、転写および翻訳「制御」ヌクレオチド配列が挙げられる。したがってPex遺伝子の制御配列の操作は、特定のPex遺伝子のプロモータ、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列(転写開始部位および翻訳開始コドンの間)、イントロン、エンハンサー、開始制御領域、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、およびステムループ構造の操作を指してもよい。しかし全ての場合で、操作の結果は、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない油性酵母と比較して、総脂肪酸%として、総脂質画分中および油画分中のPUFA量の増大を促進するPex遺伝子の発現のダウンレギュレートである。
例えばPex10遺伝子のプロモータは、欠失しまたは中断されてもよい。代案としてはPex10遺伝子発現を促進する天然プロモータは、天然プロモータと比較して低下したプロモータ活性を有する異種プロモータで置換されてもよい。制御配列を操作する有用な方法については、良く知られている。
当業者はこれらのおよびその他の良く知られている技術を使用して、哺乳類系、植物細胞、糸状菌、藻類、卵菌綱、ユーグレナ属、ストラメノパイル(Stramenopiles)、および酵母などの本明細書に記載されている好ましい宿主細胞中の天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質を中断できる。
当業者は、天然Pex遺伝子を中断して、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない真核生物と比較して、総脂肪酸の%として、総脂質画分中および油画分中に蓄積するPUFA量の増大を達成する、最適手段を識別できる。
ω−3および/またはω−6脂肪酸生合成の代謝エンジニアリング
天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質の中断ための本明細書に記載されている方法に加えて、ω−3および/またはω−6脂肪酸生合成を操作することもまた有用であるかもしれない。これはPUFA生合成経路中の直接代謝エンジニアリング、またはPUFA生合成経路に炭素を提供する経路の追加的操作を必要とするかもしれない。
望ましい生化学的経路をアップレギュレートし、望ましくない生化学的経路をダウンレギュレートするのに有用な技術は、当該技術分野で良く知られている。例えばω−3および/またはω−6脂肪酸生合成経路とエネルギーまたは炭素について競合する生化学的経路、または特定のPUFA最終産物の生成を妨げる天然PUFA生合成経路酵素は、遺伝子中断によって排除してもよく、またはアンチセンスmRNAおよび亜鉛フィンガー標的技術などのその他の手段によってダウンレギュレートしてもよい。
以下はGLA、ARA、EPAまたはDHAをそれぞれ増大させる手段としてのPUFA生合成経路の改変、およびTAG生合成経路およびTAG分解経路における望ましい操作について論じている。国際公開第2006/033723号パンフレット、国際公開第2006/055322号パンフレット[米国特許出願公開第2006−0094092−A1号明細書]、国際公開第2006/052870号パンフレット[米国特許出願公開第2006−0115881−A1号明細書]、および国際公開第2006/052871号パンフレット[米国特許出願公開第2006−0110806−A1号明細書]。
発現系、カセット、ベクター、および宿主細胞形質転換
組み換えコンストラクトを作り出して、例えば哺乳類系、植物細胞、糸状菌、藻類、卵菌綱、ユーグレナ属、ストラメノパイル(Stramenopiles)、および酵母などの好ましい真核生物の宿主に導入し、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質の中断、および/またはPUFA生合成経路をコードする遺伝子の導入をもたらす必要があるかもしれない。当業者は、1)DNA分子、プラスミドなどの高分子の構築操作、および単離のための特定の条件と手順、2)組み換えDNA断片および組み換え発現コンストラクトの作成、および3)クローンのスクリーニングおよび単離について記載している標準資料を理解する。Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989年);Maligaら、Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor,NY(1995年);Birrenら、Genome Analysis:Detecting Genes、第1巻、Cold Spring Harbor,NY(1998年);Birrenら、Genome Analysis:Analyzing DNA、第2巻、Cold Spring Harbor:NY(1998);Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual,Clark,ed.Springer:NY(1997)を参照されたい。
一般にコンストラクトに含める配列の選択は、所望の発現産物、宿主細胞の性質、および非形質転換細胞に対して形質転換された細胞を分離するのに提案される手段に左右される。当業者は、キメラ遺伝子を含有する宿主細胞を成功裏に形質転換し、選択し、増殖させるのに、プラスミドベクター上に存在しなくてはならない遺伝的要素を十分承知している。しかし典型的にベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳に向けた配列、選択可能なマーカー、および自律複製または染色体の組み込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始を制御する遺伝子の領域5’、すなわちプロモータと、転写終結を制御するDNA断片の領域3’、すなわちターミネーターとを含んでなる。双方の制御領域が、形質転換宿主細胞からの遺伝子に由来することが最も好ましい。
所望の宿主細胞中において異種遺伝子またはその部分の発現を促進するのに有用な開始制御領域またはプロモータは多数あり、良く知られている。これらの制御領域は、プロモータ、エンハンサー、サイレンサー、イントロン配列、3’UTRおよび/または5’UTR領域、およびタンパク質および/またはRNA安定化要素を含んでもよい。このような要素はそれらの強度および特異性が異なっていてもよい。実質的に、選択された宿主細胞中において、これらの遺伝子の発現を指示できるあらゆるプロモータ(すなわち天然、合成、またはキメラ)が適切である。宿主細胞中における発現は、誘発的または構成的に起きることができる。誘導的発現は、関心のあるPex遺伝子と作動的に連結する調節可能なプロモータの活性を誘導することによって起きる。構成的発現は、関心のある遺伝子と作動的に連結する構成的プロモータを使用することによって起きる。
宿主細胞が例えば酵母である場合、酵細胞中で機能する転写および翻訳領域が、特に宿主種から提供される。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中で使用するのに好ましい転写開始調節領域については、国際公開第2006/052870号パンフレットを参照されたい。構成的または誘導的転写が所望されるかどうか、関心のあるORFを発現するプロモータの効率、構築の容易さなどに応じて、いくつかの制御配列のいずれを使用してもよい。
転写終結シグナルコードする3’非コード配列、すなわち「終結領域」が、組み換えコンストラクト中に提供されなくてはならず、それから開始領域が得られた遺伝子の3’領域からのもの、または異なる遺伝子からのものであってもよい。多数の終結領域が知られており、それらが由来するのと同一のおよび異なる属および種のどちらで利用しても、多様な宿主中で満足に機能する。終結領域は特定の特質についてでなく、より便宜的に選択される。終結領域はまた、好ましい宿主に天然の様々な遺伝子に由来してもよい。
酵母中で使用するのに特に有用な終結領域は、酵母遺伝子、特にサッカロミセス(Saccharomyces)、分裂酵母(Schizosaccharomyces)、カンジダ(Candida)、ヤロウィア(Yarrowia)またはクリヴェロミセス(Kluyveromyces)に由来するものである。哺乳類のγ−インターフェロンおよびα−2インターフェロンをコードする遺伝子3’領域は、酵母中でもまた機能することが知られている。当業者は入手できる情報を利用して、転写ターミネーターとして機能する3’領域配列をデザインおよび合成できるので、3’領域はまた合成することもできる。終結領域は不要かもしれないが、高度に好ましい。
ベクターは、上述の制御要素に加えて、選択可能なおよび/またはスコア可能なマーカーを含んでなってもよい。好ましくはマーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子であり、細胞を抗生物質で処置することは、非形質転換細胞の成長阻害または死亡、および形質転換細胞の阻害されない生育を引き起こす。酵母形質転換体の選択のためには、カナマイシン、ハイグロマイシン、およびアミノグリコシドG418に対する抵抗性がある、酵母中で機能するあらゆるマーカーが有用であり、ウラシル、リジン、ヒスチジンまたはロイシンを欠く培地上の生育能力が特に有用である。
遺伝子をクローニングベクターに単に挿入することは、所望の速度、濃度、量などでのその発現を保証しない。高発現率に対する必要に応えて、転写、RNA安定性、翻訳、タンパク質安定性および位置、酸素制限、および宿主細胞からの分泌を制御する、いくつかの異なる遺伝的要素を操作することにより、多数の特殊発現ベクターが作り出されている。操作される特徴のいくつかとしては、次が挙げられる。関連する転写プロモータおよびターミネーター配列の性質、クローン遺伝子コピー数、および遺伝子がプラスミド由来であるかまたは宿主細胞のゲノム中に組み込まれているかどうか、合成外来性タンパク質の最終的細胞内所在、宿主生物中のタンパク質翻訳および正しい折りたたみの効率、宿主細胞中のクローン遺伝子のmRNAおよびタンパク質の固有の安定性、およびその使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近くなるようなクローン遺伝子中のコドン使用頻度。これらのそれぞれを本明細書に記載されている方法および宿主細胞中で使用して、PUFA生合成経路遺伝子の発現をさらに最適化し、天然Pex遺伝子の発現を減少させてもよい。
例えばプロモータ、ORF、およびターミネーターを含んでなるキメラ遺伝子を含んでなり、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質の中断またはノックアウト、および/またはPUFA生合成経路活性をコードする遺伝子の発現に適した、組み換えコンストラクトを作り出した後、それを宿主細胞中で自律複製できるプラスミドベクターに入れ、または宿主細胞のゲノムに直接組み込む。発現カセットの組み込みは、宿主ゲノム中で無作為に起きることができ、または宿主遺伝子座での遺伝子組み換えを標的とするのに十分な宿主ゲノムとの相同性領域を含有するコンストラクトの使用を通じて、標的を定めることができる。コンストラクトが内在性遺伝子座に標的を定めれば、全てまたはいくつかの転写および翻訳調節領域を内在性遺伝子座によって提供できる。
別々の複製ベクターから2つ以上の遺伝子が発現する場合、各ベクターは異なる選択手段を有してもよく、他のコンストラクトに対する相同性を欠いて、安定した発現を維持し、コンストラクト中の要素の再集合を防止すべきである。調節領域、選択手段、および導入コンストラクト増殖方法の思慮深い選択は、全ての導入された遺伝子が必要なレベルで発現して、所望の生成物の合成を提供するように実験的に判定できる。
対象とする遺伝子を含んでなるコンストラクトは、あらゆる標準的技術によって宿主細胞に導入してもよい。これらの技術としては、形質転換、例えば酢酸リチウム形質転換(Methods in Enzymology、194:186〜187(1991年))、プロトプラスト融合、微粒子銃衝撃、電気穿孔、マイクロインジェクション、真空ろ過、または宿主細胞中に対象とする遺伝子を導入するその他のあらゆる方法が挙げられる。
便宜上、例えば発現カセット中のDNA配列を取り込むように、あらゆる方法によって操作されている宿主細胞を本明細書では「形質転換された」または「組み換え」と称する。形質転換された宿主は、遺伝子がゲノム中に組み込まれるか、増幅されるか、または複数のコピー数を有する染色体外要素上に存在するかどうか次第で、発現コンストラクトの少なくとも1つのコピーを有し、2つ以上を有してもよい。
形質転換宿主細胞は、導入されるコンストラクト上に含有されるマーカーを選択することで同定できる。代案としては、多数の形質転換技術は多数のDNA分子を宿主細胞に導入するので、別個のマーカーコンストラクトを所望のコンストラクトと共に同時形質転換してもよい。典型的に、形質転換された宿主は、選択培地上で生育するそれの能力について選択される。選択培地には抗生物質が組み込まれていてもよく、または栄養素または成長因子などの非形質転換宿主の生育に必要な要素を欠いていてもよい。導入されたマーカー遺伝子は抗生物質耐性を与え、または必須成長因子または酵素をコードしてもよく、それによって形質転換宿主中で発現されると選択培地上で生育できるようにする。形質転換宿主の選択は、発現されたマーカータンパク質が直接または間接的に検出できる場合にもまた起きることができる。マーカータンパク質は、単独で、または別のタンパク質との融合物として発現されてもよい。マーカータンパク質は、その酵素活性(例えばβ−ガラクトシダーゼは基質X−gal[「5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド」]を着色産物に変換でき、ルシフェラーゼはルシフェリンを発光生成物に変換できる)、またはその発光または変光特徴(例えばオワンクラゲ(Aequorea victoria)の緑色蛍光タンパク質は青色光を照射すると蛍光を発する)によって検出できる。代案としては抗体を使用して、例えば関心のあるタンパク質上のマーカータンパク質または分子タグを検出できる。マーカータンパク質またはタグを発現する細胞は、例えば視覚的に、または蛍光活性化細胞選別または抗体を使用したパニングなどの技術によって選択できる。
異なる独立した形質転換事象が異なるレベルとパターンの発現をもたらすので、選択される宿主または発現コンストラクトに関係なく、複数の形質転換体をスクリーンして所望の発現レベル、制御、およびパターンを示す株または植物系統を得なくてはならない(Jonesら、EMBO J.,4:2411〜2418(1985年);De Almeidaら、Mol.Gen.Genetics,218:78〜86(1989年))。このようなスクリーニングは、DNAブロットのサザン分析(Southern,J.Mol.Biol.,98:503(1975年))、mRNA発現のノーザン分析(Kroczek,J.Chromatogr.Biomed.Appl.,618(1〜2):133〜145(1993年))、タンパク質発現のウェスタンおよび/またはELISA分析、PUFA生成物の表現型分析またはGC分析によって達成されてもよい。
好ましい真核生物の宿主生物
天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質の中断およびPUFA生合成経路をコードする遺伝子を含んでなる形質転換体宿主生物を生じるために、多様な真核生物がここで宿主として適し、形質転換された真核生物の宿主生物は、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない真核生物と比較して、総脂肪酸の%として、総脂質画分中および油画分中に組み込まれたPUFA量の増大を有する。様々な哺乳類系、植物細胞、真菌、藻類、卵菌綱、酵母、ストラメノパイル(Stramenopiles)および/またはユーグレナ属が、有用な宿主かもしれない。油性生物が好ましいが、非油性生物もまたここで有用性を有し、それらの天然PEX遺伝子の1つが中断されると、総脂質画分中または油画分中の総脂肪酸の重量%に対する少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の重量%の増大が認められ、PUFAの1.3倍の増大がもたらされるかもしれない。さらにPUFAの%は、非油性生物中の乾燥細胞重量に対して増大してもよい。代案の実施態様では、例えばサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母などの非油性生物を遺伝子改変して、油性にすることができる。
油性生物は天然に油を合成および蓄積でき、総含油量は典型的に細胞乾燥重量の約25%以上を構成する。様々な藻類、コケ、真菌、酵母、ストラメノパイル(Stramenopiles)および植物が、自然に油性として分類される。
好ましい油性微生物としては、ω−3/ω−6PUFAを天然に産生する、藻類、ストラメノパイル(Stramenopiles)、および真菌生物が挙げられる。例えばキクロテラ(Cyclotella)種、ニッチア(Nitzschia)種、クサレカビ(Pythium)、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種、シゾキトリウム(Schizochytrium)種、およびモルティエラ(Mortierella)によってARA、EPAおよび/またはDHAが生じる。M.アルピナ(M.alpina)の形質転換法については、Mackenzieら(Appl.Environ.Microbiol.,66:4655(2000年))に記載されている。同様に、ヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)微生物(例えばスラウストキトリウム(Thraustochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium))の形質転換法は、米国特許第7,001,772号明細書で開示されている。
より好ましいのは、ω−3/ω−6PUFAを天然に産生するもの、およびそれらを産生するように遺伝子改変されたものをはじめとする油性酵母である。油性酵母菌として典型的に同定されている属としては、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)が挙げられるが、これに限定されるものではない。より具体的には、例示的な油合成酵母菌としては、ロドスポリジウム・トルイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プルケリマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランス(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルティナス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R.graminis)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(以前はカンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)として分類されていた)が挙げられる。
最も好ましいのは油性酵母菌ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)であり、さらなる実施態様で最も好ましいのは、ATCC#76982、ATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944、および/またはLGAMS(7)1と称されるY.リポリティカ(Y.lipolytica)株である(Papanikolaou S.、およびAggelis G.、Bioresour.Technol.82(1):43〜9(2002年))。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換に関する特定の教示は米国特許第4,880,741号明細書および米国特許第5,071,764号明細書およびChen,D.C.ら(Appl.Microbiol.Biotechnol.,48(2):232〜235(1997年))に含まれている一方、適切な選択技術については米国特許第7,238,482号明細書および国際公開第2005/003310号パンフレットおよび国際公開第2006/052870号パンフレットに記載されている。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中で遺伝子を発現する好ましい方法は宿主の線状DNAのゲノムへの組み込みによる。Ura3遺伝子座(GenBank登録番号AJ306421)、Leu2遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号AF260230)、Lys5遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号M34929)、Aco2遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号AJ001300)、Pox3遺伝子遺伝子座(Pox3:GenBank登録番号XP#503244またはAco3:GenBank登録番号AJ001301)、Δ12デサチュラーゼ遺伝子遺伝子座(米国特許第7,214,491号明細書)、Lip1遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号Z50020)、Lip2遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号AJ012632)、SCP2遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号AJ431362)、Pex3遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号CAG78565)、Pex16遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号CAG79622)および/またはPex10遺伝子遺伝子座(GenBank登録番号CAG81606)中などのゲノム内の複数位置への組み込みは、遺伝子の高レベル発現が所望される場合に特に有用であり得る。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)において使用される好ましい選択方法は、カナマイシン、ハイグロマイシン、およびアミノグリコシドG418に対する抵抗性、ならびにウラシル、ロイシン、リジン、トリプトファンまたはヒスチジンを欠く培地に生育する能力である。5−フルオロオロト酸[5−フルオロウラシル−6−カルボン酸一水和物または「5−FOA」]もまた、酵母Ura-突然変異体の選択のために使用され得る。この化合物はオロチジン5’−一リン酸デカルボキシラーゼ[OMPデカルボキシラーゼ]をコードする機能性URA3遺伝子を有する酵母細胞に対して有毒である。したがってこの毒性に基づいて、5−FOAはUra-突然変異酵母株の選択および同定のために特に有用である(Bartel,P.L.およびFields,S.、「Yeast 2−Hybrid System」、Oxford University:New York、第7巻、109〜147、1997年;ヤロウィア(Yarrowia)における5−FOAについての国際公開第2006/052870号パンフレットも参照)。
ヤロウィア(Yarrowia)で使用される代案の好ましい選択方法は、スルホニル尿素(クロリムロンエチル;E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE))抵抗性に基づいた、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のための優性非抗生物質マーカーに依存する。より具体的にはマーカー遺伝子は、スルホニル尿素除草剤抵抗性を与える単一アミノ酸変化、すなわちW497Lを有する天然アセトヒドロキシ酸シンターゼ(「AHAS」またはアセト乳酸シンターゼ、E.C.4.1.3.18)である(国際公開第2006/052870号パンフレット)。AHASは、分枝鎖アミノ酸、すなわちバリン、ロイシン、イソロイシンの生合成経路中の最初の共通酵素であり、それはスルホニル尿素およびイミダゾリノン除草剤の標的である。
多価不飽和脂肪酸生成のための発酵過程
形質転換された宿主細胞は、PUFA生合成遺伝子の発現を最適化する条件下で生育させて、最大かつ最も経済的な所望のPUFA収率を生じさせる。一般に、修正により最適化されてもよい培地条件としては、炭素源のタイプおよび量、窒素源のタイプおよび量、炭素−対−窒素比、異なる無機イオンの量、酸素レベル、生育温度、pH、バイオマス生成相の長さ、油蓄積相の長さ、および細胞収穫時間および方法が挙げられる。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のような対象の油性酵母は、一般に酵母菌抽出物−ペプトン−デキストロース液体培地(YPD)のような複合培地で、または生育に必要な構成要素が欠如して所望の発現カセットの選択を強要する合成最少培地(例えばDIFCO Laboratories(Detroit,MI)からの酵母菌窒素ベース)上で生育させる。
本明細書に記載されている方法および宿主細胞のための発酵培地は、米国特許第7,238,482号明細書で教示されているものなどの適切な炭素源を含有しなくてはならない。適切な炭素源としては多種多様な原料が挙げられ、糖、グリセロールおよび/または脂肪酸が好ましい。最も好ましいのはグルコースおよび/または10〜22個の間の炭素を含有する脂肪酸である。
窒素は、無機(例えば(NH42SO4)または有機(例えば尿素またはグルタミン酸)源から供給されてもよい。適切な炭素および窒素源に加えて、発酵培地はまた、適切なミネラル、塩、補助因子、緩衝液、ビタミン、および油性酵母の生育と、PUFA生成の酵素的経路の促進とに適した、当業者に既知であるその他の構成要素を含有しなくてはならない。脂質およびPUFAの合成を促進する、Fe+2、Cu+2、Mn+2、Co+2、Zn+2およびMg+2のようないくつかの金属イオンが注目されている(D.J.KyleおよびR.Colin編、「Ind.Appl.Single Cell Oil」より、Nakahara,T.ら、61〜97(1992年)。
本明細書に記載されている方法および宿主細胞のための好ましい増殖培地は、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)からの酵母菌窒素ベースなどの一般的な市販の調製培地である。その他の合成または人工増殖培地もまた使用されてもよく、形質転換宿主細胞の生育に適する培地は、微生物学または発酵科学の当業者に知られている。発酵に適したpH範囲は、典型的に約pH4.0〜pH8.0の間であり、pH5.5〜pH7.5が初期生育条件の範囲として好ましい。発酵は好気性または好気性条件下で実施されてもよく、微好気条件が好ましい。
典型的に油性酵母菌細胞中のPUFAおよびTAGの高レベルの蓄積は、代謝状態が生育と脂肪合成/貯蔵との間で「平衡状態」でなくてはならないので、二段階過程を必要とする。したがって最も好ましくは、油性酵母中の油の生成には、二段階発酵過程が必要である。このアプローチについては米国特許第7,238,482号明細書に記載され、様々な適切な発酵過程デザイン(すなわちバッチ、供給バッチ、および連続)および成育中の考察事項についても同様に述べられる。
PUFA油の精製および加工
PUFAをはじめとする脂肪酸は、遊離脂肪酸として、またはアシルグリセロール、リン脂質、スルホ脂質または糖脂質などのエステル化形態体で、宿主生物中にあってもよい。これらの脂肪酸は、当該技術分野で良く知られている多様な手段を通じて、宿主細胞から抽出されてもよい。酵母脂質の抽出技術、品質分析、および許容基準の1つのレビューは、Z.Jacobs(Critical Reviews in Biotechnology,12(5/6):463〜491(1992年))である。A.SinghおよびO.Ward(Adv.Appl.Microbiol.,45:271〜312(1997年))による後処理プロセスの簡潔なレビューもまた入手できる。
一般に(PUFAをはじめとする)脂肪酸を精製する手段としては、有機溶剤を用いた抽出(例えば米国特許第6.797,303号明細書および米国特許第5,648,564号明細書)、超音波処理、(例えば二酸化炭素を使用した)超臨界流体抽出、鹸化、および加圧などの物理的手段、またはそれらの組み合わせが挙げられる。米国特許第7,238,482号明細書を参照されたい。
食材、健康食品、医薬品、および動物飼料で使用される油
市場は、ω−3および/またはω−6脂肪酸、特にALA、GLA、ARA、EPA、DPA、およびDHAを組み込んだ多数の食品および飼料製品を包含する。長鎖PUFA、PUFAを含んでなる部分的に精製された微生物由来資源、PUFAを含んでなる精製微生物油、および/または本明細書に記載されている方法および宿主細胞によって作成された精製PUFAを含んでなる生物由来資源は、それらの添加によって改善された食品または飼料の摂取に際し、健康上の利点を与えることが考察される。これらの油は2、3例を挙げると類似食品、飲料、肉製品、穀物製品、ベークド食品、スナック食品。および酪農製品に添加できる。米国特許出願公開第2006/0094092号明細書を参照されたい。
これらの組成物は、医療栄養物、栄養補助食品、乳児用調製粉乳、および医薬品をはじめとするメディカルフードに添加されることで、健康上の利点を与えてもよい。当業者は、健康上の利点を与えるために、食品、飼料、栄養補助食品、栄養補給食品、医薬品、およびその他の摂取可能な製品に添加されるべき油の量を認識するであろう。これらの油を摂取することの健康上の利点は、当該技術分野において記載されており、継続的に研究されている。このような量は本明細書では「効果的」量と称され、とりわけこれらの油を含有する摂取される製品の性質、およびそれらが対処することが意図される健康状態に左右される。
好ましい実施態様の説明
実施例で実証され下の表5で要約されるように、YlPex10pのC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフのC末端部分中の中断、染色体YlPex10遺伝子全体または染色体YlPex16遺伝子全体の欠失、染色体YlPex10遺伝子全体および染色体YlPex16遺伝子全体の双方の欠失、および染色体YlPex3遺伝子全体の欠失は全て、天然Pexタンパク質が中断されていない親株と比較して、総脂肪酸の%としてPUFAの重量%が増大している改変されたヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)PUFA産生株をもたらす。ゲノムPex10pに中断を有し、総脂質画分中および油画分中のPUFA量が増大している改変されたEPA産生ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株中における染色体外YlPex10pの発現は、影響を逆転した。
表5は、実施例3、4、5、7、9、11、および12からのデータを集計し、総脂質含量[「TFA%DCW」]に関する傾向、総脂肪酸の重量%[「%TFA」]として発現される特定の脂肪酸濃度、および乾燥細胞重量%[「%DCW」]としての特定の脂肪酸含量は、Pex中断またはノックアウトの存在/不在に基づいて推定できる。「所望のPUFA%TFA」および「所望のPUFA%DCW」は、それぞれ、改変されたPUFA生合成経路が生成するようにデザインされた、所望のPUFA生成物(すなわちDGLAまたはEPA)の特定の濃度または含量を定量化する。「全てのPUFA」がLA、ALA、EDA、DGLA、ETrA、ETA、およびEPA含むのに対し、「C20 PUFA」はEDA、DGLA、ETrA、ETA、およびEPAに限定される。
Figure 2010539985
Figure 2010539985
データは実施例間で直接比較できないが、異なるヤロウィア(Yarrowia)株および生育条件の結果として、(天然Pexタンパク質が中断されていない親株、または中断された天然Pexタンパク質の「置換」コピーを発現する親株と比較して)次の結論を導くことができる。
1)PUFA産生ヤロウィア(Yarrowia)中のPex中断は、総脂質画分中および油画分中の総脂肪酸の重量%(%TFA)に対する例えばEPAまたはDLGAなどの単一PUFAの重量%の増大をもたらす。
2)PUFA産生ヤロウィア(Yarrowia)中のPex中断は、総脂質画分中および油画分中の総脂肪酸の重量%に対するC20 PUFAの重量%増大をもたらす。
3)1)の延長線上で考えると、PUFA産生ヤロウィア(Yarrowia)中のPex中断は、総脂質画分中および油画分中の総脂肪酸の重量%に対するあらゆるそして全てのPUFA組み合わせの量の増大をもたらす。
4)PUFA産生ヤロウィア(Yarrowia)中のPex中断は、乾燥細胞重量に対する例えばEPAまたはDLGAなどの単一PUFAの%増大をもたらす。
「全PUFA%DCW」、「C20 PUFA%DCW」、およびTFA%DCW中におけるPex中断の影響を比較すると、変動する結果が観察される。具体的にはPUFA産生ヤロウィア(Yarrowia)中のPex中断は、総脂質画分中および油画分中の乾燥細胞重量%としてのC20 PUFAまたは全PUFA量の増大をもたらす(天然Pexタンパク質が中断されていない親株と比較して)場合もある。他の事例では、総脂質画分中および油画分中の乾燥細胞重量%としてのC20 PUFAまたは全PUFA量が減少する(天然Pexタンパク質が中断されていない親株と比較して)。総脂質含量(TFA%DCW)に関しても同様の結果が観察され、そこではPex中断の影響は、総脂質含量の増大または減少のどちらかをもたらすことができる。
上の一般化はそれぞれ興味深いが、生物がそれを生成するように改変された所望のPUFAの総PUFA量に対する比率に対する、Pex中断の影響を調べることが特に有用である。
例えばC末端の最後の32個のアミノ酸のトランケーションをもたらすPex10中断を含有するY4128株中では、PUFAの54%(%TFAとして)がEPAであったのに対し、親株Y4086中ではPUFAの16.3%(%TFAとして)のみがEPAであった。したがって中断は、所望のPUFA量の3.3倍(%TFAとして)の増大の原因であった(実施例3、4)。同様にY4036(ΔPex16)株中ではPUFAの62.8%(%TFAとして)がDGLAであったのに対し、Y4036中ではPUFAの38.1%(%TFAとして)のみがDGLAであり、1.65倍の増大であった(実施例9)。そしてY4036(ΔPex3)株中ではPUFAの67.7%(%TFAとして)がDGLAであったのに対し、Y4036中ではPUFAの33.3%(%TFAとして)のみがDGLAであり、2.0倍の増大であった(実施例12)。これらの結果は、Pex中断が、総脂質および油画分中において、生物が産生するように改変された所望のPUFA量の%TFAとしての選択的増大をもたらすという仮説を支持する。
総PUFA量に対するC20 PUFAの比率に対するPex中断の影響を調べると、著しさにより劣る選択性が観察される。例えばPex10中断を含有するY4128株中ではPUFAの73%(%TFAとして)がC20 PUFAであったのに対し、Y4086株中ではPUFAの42%(%TFAとして)のみがC20 PUFAであった。したがって中断は、総PUFAに対する総脂質および油画分中に蓄積するC20 PUFA量の1.7倍の増大の原因であった(実施例3、4)。同様にY4036(ΔPex16)株中では、PUFAの71%(%TFAとして)がC20 PUFAであったのに対し、Y4036中ではPUFAの54.8%(%TFAとして)のみがC20 PUFAであり、1.3倍の増大であった(実施例9)。そしてY4036(ΔPex3)株中ではPUFAの82.4%(%TFAとして)がC20 PUFAであったのに対し、Y4036中ではPUFAの47.4%(%TFAとして)のみがC20 PUFAであり、1.7倍の増大であった(実施例12)。
本明細書に記載されている教示および結果に基づいて、PUFA産生真核生物中で生成するPUFA量を増大させる手段として、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子中の様々な中断を用いることの実現可能性および商業的可用性が評価されることが予期される。PUFA産生真核生物は、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路またはΔ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路のどちらかを使用して、多様なω−3および/またはω−6PUFAを合成できる。
本発明の具体化を例示するが、その可能なバリエーション全てを完全に定義するものではない以下の実施例において、本発明をさらに説明する。
一般方法
実施例で使用する標準組み換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野でよく知られており、1.)Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989年)(Maniatis);2.)T.J.Silhavy、M.L.Bennan、およびL.W.Enquist、「Experiments with Gene Fusions」、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984年);および3.)Ausubel,F.M.ら、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版、Hoboken,NJ(1987年)に記載されている。
微生物培養の維持および生育に適した材料および方法は、技術分野でよく知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術については、以下に記載されている。Phillipp Gerhardt、R.G.E.Murray、Ralph N.Costilow、Eugene W.Nester、Willis A.Wood、Noel R.Krieg、およびG.Briggs Phillips編、「Manual of Methods for General Bacteriology」、American Society for Microbiology、Washington,D.C.(1994年)、またはThomas,D.Brock、「Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology」、第2版、Sinauer Associates:Sunderland,MA(1989年)。微生物細胞の生育および維持のために使用される全ての試薬制限酵素および材料は、特に断りのない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、またはSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から得た。大腸菌(E.coli)(XL1−Blue)コンピテント細胞は、Stratagene Company(San Diego,CA)から購入した。大腸菌(E.coli)株は、典型的にルリア・ベルターニ(Luria Bertani)(LB)プレート上で37℃で生育させた。
一般分子クローニングは、標準法に従って実施された(Sambrookら、前出)。DNA配列は、染料ターミネーター技術(米国特許第5,366,860号明細書、欧州特許第272,007号明細書)を使用し、ベクターおよび挿入断片特異的プライマーの組み合わせを使用して、ABI Automatic配列決定装置上で作成した。配列編集はSequencher(Gene Codes Corporation(Ann Arbor,MI))内で実施した。全ての配列は、両方向に少なくとも2回のカバレッジに相当する。本明細書で特に断りのない限り、遺伝子配列の比較はDNASTARソフトウェア(DNASTAR Inc.(Madison,WI))を使用して達成した。
略語の意味は以下の通り。「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kB」はキロベースを意味する。
発現カセットの命名法:
発現カセットの構造は単純な表記体系「X::Y::Z」によって表され、Xはプロモータ断片を記述し、Yは遺伝子断片を記述し、Zはターミネーター断片を記述し、それらは全て互いに作動的に連結する。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換および培養
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362株はAmerican Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入した。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株は、下に示す処方に従った数種の培地中で、慣例的に28〜30℃で生育させた。寒天プレートは、標準法に従って各液体培地に20g/L寒天を添加することによって、必要に応じて調製した。
YPD寒天培地(1Lあたり):10g酵母抽出物[Difco]、20gのBactoペプトン[Difco]、および20gグルコース。
基礎最少培地(MM)(1Lあたり):20gグルコース、1.7gアミノ酸非含有酵母窒素ベース、1.0gプロリン、およびpH6.1(未調節)。
最少培地+ウラシル(MM+ウラシルまたはMMU)(1Lあたり):MM培地を上のように調製して、0.1gウラシルおよび0.1gウリジンを添加する。
最少培地+ウラシル+スルホニル尿素(MMU+SU)(1Lあたり):MMU培地を上のように調製して、280mgスルホニル尿素を添加する。
最少培地+ロイシン+リジン(MMLeuLys)(1Lあたり):MM培地を上のように調製して、0.1gロイシンおよび0.1gリジンを添加する。
最少培地+5−フルオロオロト酸(MM+5−FOA)(1Lあたり):20gグルコース、6.7g酵母窒素ベース、75mgウラシル、75mgウリジン、および100mg/L〜1000mg/Lの一連の濃度に対するFOA活性試験に基づく適量のFOA(Zymo Research Corp.(Orange,CA))(供給元から受け取った各バッチ内で変動があるため)。
高グルコース培地(HGM)(1Lあたり):80グルコース、2.58gのKH2PO4および5.36gのK2HPO4、pH7.5(調節の必要なし)。
酵母抽出物を含まない発酵培地(YE非含有FM)(1Lあたり):6.70g酵母窒素ベース、6.00gのKH2PO4、2.00gのK2HPO4、1.50gのMgSO4
7H2Oおよび20gグルコース。
発酵培地(FM)(1Lあたり):上のようにYE非含有FM培地を調製して、5.00g酵母抽出物(BBL)を添加する。
合成デキストロース培地(SD)(1Lあたり):硫酸アンモニウムを添加したアミノ酸非含有6.7g酵母窒素ベース、および20gグルコース。
ウラシル非含有完全最小グルコースブロス(CSM−Ura):カタログ番号C8140(Teknova(Hollister,CA))(0.13%ウラシル非含有アミノ酸ドロップアウト粉末。0.17%酵母窒素ベース、0.5%(NH42SO4、2.0%グルコース)。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の形質転換は、特に断りのない限りChen,D.C.ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.48(2):232〜235(1997年)の方法に従って実施した。簡単に述べると、ヤロウィア(Yarrowia)をYPDプレート上に画線培養し、30℃でおよそ18時間生育させた。いくつかの大型白金耳を満たす細胞をプレートからこすり取り、平均分子量3350の2.25mLの50%PEG、pH6.0の0.125mLの2M酢酸Li、および0.125mLの2M DTTを含有する1mLの形質転換緩衝液に再懸濁した。次に約500ngの直線化プラスミドDNAを100μLの再懸濁細胞内でインキュベートし、15分間隔でボルテックス混合しながら39℃に1時間保った。細胞を選択培地プレートに蒔いて、30℃に2〜3日間保った。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の脂肪酸分析
脂肪酸分析のために、Bligh,E.G.およびDyer,W.J.、Can.J.Biochem.Physiol.37:911〜917(1959年)に記載されているように、細胞を遠心分離して収集し、脂質を抽出した。ナトリウムメトキシドでの脂質抽出物のエステル交換反応によって、脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製し(Roughan,G.およびNishida,I.、Arch Biochem Biophys.276(1):38〜46(1990年))、引き続きHewlett−Packardからの30m×0.25mm(内径)HP−INNOWAXカラムを装着したHewlett−Packard 6890 GCで分析した。オーブン温度は3.5℃/分で、170℃(25分間保持)から185℃であった。
直接塩基エステル交換のために、ヤロウィア(Yarrowia)培養物(3mL)を収集し、蒸留水で1回洗浄し、スピードバック(Speed−Vac)内で真空下において5〜10分乾燥させた。ナトリウムメトキシド(100μLの1%)をサンプルに添加して、次にサンプルをボルテックスし20分間振盪した。3滴の1M NaClおよび400μLのヘキサンを添加した後、サンプルをボルテックスして遠心分離した。上層を除去して上述のようにGCで分析した。
実施例1
Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路を通じて総脂質の約14%のEPAを生成するためのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4086株の作成
本例は、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路(図3A)を通じて、総脂質に対して約14%のEPAを産生できるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来するY4086株の構築について述べる。
Y4086株の開発は、Y2224株(野生型ヤロウィア(Yarrowia)ATCC#20362株のUra3遺伝子の自律突然変異からのFOA抵抗性変異体)、Y4001株(Leu−表現型で17%のEDAを産生する)、Y4001U株(Leu−およびUra−表現型)、Y4036株(Leu−表現型で18%のDGLAを産生する)、Y4036U株(Leu−およびUra−表現型)、およびY4070株(Ura−表現型で12%のARAを産生する)の構築を必要とした。Y2224、Y4001、Y4001U、Y4036、Y4036U、およびY4070株の構築に関するさらなる詳細については、国際公開第2008/073367号パンフレットの実施例7に記載されている。
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対してY4070株の最終遺伝子型は、Ura3−、unknown 1−、unknown 3−、Leu+、Lys+、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::OCT、YAT1::ME3S::Pex16、GPAT::EgD9e::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD5::Aco、EXP1::EgD5S::Pex20、YAT1::RD5S::OCT(FmD12はフザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)Δ12デサチュラーゼ遺伝子[国際公開第2005/047485号パンフレット]であり、ME3Sはモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)に由来するコドン最適化C16/18エロンガーゼ遺伝子[国際公開第2007/046817号パンフレット]であり、EgD9eはミドリムシ(Euglena gracilis)Δ9エロンガーゼ遺伝子[国際公開第2007/061742号パンフレット]であり、EgD9eSはミドリムシ(Euglena gracilis)に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子[国際公開第2007/061742号パンフレット]であり、EgD8Mはミドリムシ(Euglena gracilis)[米国特許第7,256,033号明細書]に由来する合成変異Δ8デサチュラーゼ[国際公開第2008/073271号パンフレット]であり、EgD5はミドリムシ(Euglena gracilis)Δ5デサチュラーゼ[米国特許出願公開第2007−0292924−A1号明細書]であり、EgD5Sはミドリムシ(Euglena gracilis)に由来するコドン最適化Δ5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2007−0292924号明細書]であり、RD5Sはペリディニウム(Peridinium)種CCMP626に由来するコドン最適化Δ5デサチュラーゼ[米国特許出願公開第2007−0271632号明細書]である)であった。
総脂質の約14%のEPAを生成するためのY4086株の作成
国際公開第2008/07336号パンフレットの表19に記載されているコンストラクトpZP3−Pa777U(図3B、配列番号28)を作成し、3つのΔ17デサチュラーゼ遺伝子をY4070株のPox3遺伝子座(GenBank登録番号AJ001301)に組み込み、それによってEPA産生を可能にした。Δ17デサチュラーゼ遺伝子は、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)Δ17デサチュラーゼであるPaD17(国際公開第2008/054565号パンフレット)、およびピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)に由来するコドン最適化Δ17デサチュラーゼであるPaD17Sであった(国際公開第2008/054565号パンフレット)。
pZP3−Pa777UプラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般方法に従ってY4070株の形質転換のために使用した。形質転換体細胞をMMプレート上に播種して、2〜3日間30℃に保った。単一コロニーをMMプレート上に再度画線塗抹し、次に30℃の液体MMLeuLys中に接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出してエステル交換によってFAMEを調製し、引き続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した。
GC分析からは、pZP3−Pa777Uの3つのキメラ遺伝子を含有する形質転換体中にEPAの存在が示されたが、Y4070親株では示されなかった。選択された96株の大部分は、総脂質の10〜13%のEPAを産生した。総脂質の約14.2%および13.8%のEPAを産生した2株(すなわち#58および#79)があった。これらの2つの株をそれぞれY4085およびY4086と称する。
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対してY4086株の最終遺伝子型は、Ura3+、Leu+、Lys+、unknown 1−、unknown 2−、YALI0F24167g−、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::OCT、YAT1::ME3S::Pex16、GPAT::EgD9e::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD5::Aco、EXP1::EgD5S::Pex20、YAT1::RD5S::OCT、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Acoであった。
実施例2
Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路を通じて総脂質の約37%のEPAを生成するためのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4128株の作成
本実施例は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来し、総脂質に対して約37.6%のEPAを産生できるY4128株の構築について述べる(すなわちY4086と比較して総脂肪酸の%として2倍を超えるEPA濃度の増大、図3A)。
Y4128株の開発は、Y2224、Y4001、Y4001U、Y4036、Y4036U、Y4070、およびY4086株の構築(実施例1に記載されている)、ならびにY4086U1株(Ura−)の構築を必要とした。
Y4086U1株(Ura−)の作成
Y4086株中において、コンストラクトpY117中のCreリコンビナーゼ酵素の一時的な発現によってUra−表現型を作り出し、Y4086U1株を創出した(図4A、配列番号29、国際公開第2008/073367号パンフレットの表20に記載されている)。これによってゲノムから、LoxPで挟まれたUra3遺伝子が放出された。プラスミドpY117中の変異ヤロウィア(Yarrowia)アセトヒドロキシ酸シンターゼ[「AHAS」、E.C.4.1.3.18]酵素(すなわちGenBank登録番号XP#501277、配列番号27に記載のW497L変異を含んでなる、国際公開第2006/052870号パンフレットを参照されたい)は、スルホニル尿素除草剤抵抗性(SUR)を与え、それを陽性スクリーニングマーカーとして使用した。
一般方法に従って、プラスミドpY117を使用してY4086株を形質転換した。形質転換に続いて、細胞をMMU+SU(280μg/mLスルホニル尿素、クロリムロンエチルとしてもまた知られている、E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE))プレート上に播種し、2〜3日間30℃に保った。MMU+SUプレート上で生育した個々のSURコロニーを拾って30℃のYPD液体培地中に画線塗抹し、250rpm/分で1日間振盪してpY117プラスミドをキュアした。生育した培養をMMUプレート上に画線塗抹した。30℃で2日間の後、個々のコロニーをMMおよびMMUプレート上に再度画線塗抹した。MMU上で生育できたが、MMプレート上では生育できなかったコロニーを選択した。Ura−表現型であるこれらの株の2つをY4086U1およびY4086U2と称する。
総脂質の約37%のEPAを生成するY4128株の作成
コンストラクトpZP2−2988(図4B、配列番号30、国際公開第2008/073367号パンフレットの表21に記載されている)を作成して、1つのΔ12デサチュラーゼ遺伝子(すなわちFmD12S、フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)に由来するコドン最適化Δ12デサチュラーゼ遺伝子[国際公開第2005/047485号パンフレット])、2つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子(すなわちEgD8M)、および1つのΔ9エロンガーゼ遺伝子(すなわちEgD9eS)をY4086U1株のPox2遺伝子座(GenBank登録番号AJ001300)に組み込み、それによってより高レベルのEPA産生を可能にした。pZP2−2988プラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般方法に従ってY4086U1株の形質転換のために使用した。形質転換体細胞をMMプレート上に播種して、および2〜3日間30℃に保った。単一コロニーをMMプレート上に再度画線塗抹し、次に30℃の液体MMLeuLys中に接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集しHGMに再懸濁して、次に250rpm/分で5日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出してエステル交換によってFAMEを調製し、引き続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した。
GC分析は、選択された96株の大部分が総脂質の12〜15.6%のEPAを産生することを示した。総脂質の約37.6%および16.3%のEPAを産生する2株(すなわちI群中の#37およびII群中の#33)があった。これらの2株をそれぞれY4128およびY4129と称する。
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対してY4128株の最終遺伝子型は、YALI0F24167g−、Pex10−、unknown 1−、unknown 2−、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::OCT、GPM/FBAIN::FmD12S::OCT、YAT1::ME3S::Pex16、GPAT::EgD9e::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、FBA::EgD9eS::Pex20、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、GPDIN::EgD8M::Lip1、YAT1::EgD8M::Aco、FBAIN::EgD5::Aco、EXP1::EgD5S::Pex20、YAT1::RD5S::OCT、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Acoであった。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4128株は2007年8月23日にAmerican Type Culture Collectionに寄託され、ATCC PTA−8614と命名された。
Ura−表現型を用いたY4128U株の作成
Y4128株中のUra3遺伝子を中断するために、コンストラクトpZKUE3S(図5A、配列番号31、国際公開第2008/073367号パンフレットの表22に記載されている)を作成し、EXP1::ME3S::Pex20キメラ遺伝子をY4128株のUra3遺伝子に組み込んだ。プラスミドpZKUE3SをSphI/PacIで消化し、次に一般方法に従って使用してY4128株を形質転換した。形質転換に続いて、細胞をMM+5−FOA選択プレート上に播種し、2〜3日間30℃に保った。
MM+5−FOA選択プレート上に生育した合計24個の形質転換体を拾って、新鮮なMM+5−FOAプレート上に再度画線塗抹した。細胞をプレートからはぎ取って脂質を抽出し、エステル交換によってFAMEを調製し、引き続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した。
GC分析はプレートからのpZKUE3Sがある全ての形質転換体中に、10〜15%のEPAの存在を示した。総脂質の12.9%、14.4%、15.2%、15.4%、14%、および10.9%のEPAを産生した、#3、#4、#10、#12、#19、および#21と同定された株をそれぞれY4128U1、Y4128U2、Y4128U3、Y4128U4、Y4128U5、およびY4128U6(集合的にY4128U)と称した。
%EPAのY4128U中での定量化(平均13.8%)とY4128中での定量化(37.6%)との食い違いは、異なる生育条件に根ざしている。具体的にはY4128の培養が液体培養中で2日間の生育に続いて分析されたのに対し、Y4128Uの培養は、寒天プレート上での生育後に分析された。出願人らは、寒天プレートからの結果を液体培養と比較した際に、%EPAの2〜3倍の増大を観察した。したがって結果を直接比較することはできないが、Y4128およびY4128U株のどちらもEPAの産生を実証する。
実施例3
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4128株の総脂質含量の定量
Y4128株によって生成される脂質総量および脂質中の各脂肪酸種の百分率は、GC分析によって測定された。具体的には一般方法において記載されているようにして総脂質を抽出し、エステル交換によってFAMEを調製し、引き続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した。
乾燥細胞重量は、10mLの培養から遠心分離によって細胞を収集し、細胞を1回水洗して残留培地を除去し、細胞を真空オーブン内で80℃で一晩乾燥させ、乾燥細胞を秤量することで測定された。サンプル中のFAMEの総量は、GCプロフィール中の全てのピーク面積と、添加された既知量の内部基準C15:0脂肪酸のピーク面積とを比較することで判定された
上の分析に基づき、Y4086およびY4128株について、乾燥細胞重量(DCW)の百分率としての脂質含量および脂質組成を判定した。Y4128株は、Y4086株と比較して脂質含量が減少していた(11.2のTFA%DCW対28.6のTFA%DCW)。対照的にY4128株は、下の表6で示されるようにY4086株と比較して脂質中のEPA濃度が増大していた。脂肪酸は18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、LA、ALA、EDA、DGLA、ETrA、ETA、およびEPAと同定された。脂肪酸組成は総脂肪酸(TFA)の重量%として表される。
Figure 2010539985
細胞中のEPA含量はmg EPA/g乾燥細胞として表され、式、
(%EPA/脂質)*(%脂質/乾燥細胞重量)*0.1
に従って計算されるが、値はY4086株中の28mg EPA/g DCWからY4128株中の47.9mg EPA/g DCWに増大した。
したがって表6中の結果は、Y4128株が、Y4086親株と比較してより低い総脂質含量(TFA%DCW)(11.2%対28.6%)、より高いEPA%TFA(42.8%対9.8%)、およびより高いEPA%DCW(4.8%対2.8%)を有したことをを示す。さらにY4128株は、総PUFAに対するEPA量の3.3倍の増大(54%のPUFA[%TFAとして]対16.3%のPUFA[%TFAとして])、および総PUFAに対するC20 PUFA量の1.7倍の増大(73%のPUFA[%TFAとして]対42%のPUFA[%TFAとして])を有した。
実施例4
Pex10組み込みとしてのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4128株中のpZP2−2988組み込み部位の判定
Y4128株中のpZP2−2988のゲノム組み込み部位をClontech(Palo Alto,CA)からのUniversal GenomeWalkerTMキットを使用して製造業者の推奨プロトコルに従って、ゲノム歩行により判定した。プラスミド配列に基づいて、次のプライマーをゲノム歩行のためにデザインした。pZP−GW−5−1(配列番号32)、pZP−GW−5−2(配列番号33)、pZP−GW−5−3(配列番号34)、pZP−GW−5−4(配列番号35)、pZP−GW−3−1(配列番号36)、pZP−GW−3−2(配列番号37)、pZP−GW−3−3(配列番号38)、およびpZP−GW−3−4(配列番号39)。
Qiagen Miniprepキットを使用し、修正プロトコルを用いてY4128株からゲノムDNAを調製した。細胞をYPD培地プレートからはぎ取り、1.5mL微量遠心管内に入れた。0.125Mのβ−メルカプトエタノールおよび1mg/mLのzymolyase 20T(MP Biomedicals,Inc.(Solon,OH))を含有する250μlの緩衝液P1に、細胞ペレット(100μl)を再懸濁した。細胞懸濁液を37℃で30分間インキュベートした。次に緩衝液P2(250μl)を遠心管に添加した。遠心管を数回反転して混合した後、350μlの緩衝液N3を添加した。次に微量遠心管内で、混合物を14,000rpmで5分間遠心分離した、上清をQiagen miniprepスピンカラム内に注いで、1分間遠心分離した。0.75mLの緩衝液PEを添加してカラムを1回洗浄し、14,000rpmで1分間の遠心分離がそれに続た。カラムを14,000rpmで1分間のさらなる遠心分離によって乾燥させた。50μlの緩衝液EBをカラムに添加してゲノムDNAを溶出し、1分間静置して14,000rpmで1分間遠心分離した。
精製されたゲノムDNAをゲノム歩行のために使用した。GenomeWalkerキットプロトコルに従って、DNAを制限酵素DraI、EcoRV、PvuII、およびStuIで別々に消化した。各消化では、反応混合物は総容積100μl中に、10μlの10×制限酵素緩衝液、10μlの適切な制限酵素、および8μgのゲノムDNAを含有した。反応混合物を37℃で4時間インキュベートした。次にQiagen PCR精製キットを使用して製造業者のプロトコルに正確に従って、消化DNAサンプルを精製した。DNAサンプルを16μlの水中で溶出した。次に精製された消化ゲノムDNAサンプルをGenome Walkerアダプター(下記)にライゲートした。各ライゲーション混合物は、1.9μlのGenome Walkerアダプター、1.6μlの10×ライゲーション緩衝液、0.5μlのT4DNAリガーゼ、および4μlの消化DNAを含有した。反応混合物を16℃で一晩インキュベートした。次に72μlの50mM Tris HCl、1mM EDTA、pH7.5を各ライゲーション混合物に添加した。
5’末端ゲノム歩行では、テンプレートとして個々に1μlの各ライゲーション混合物を使用して、4回のPCR反応を実施した。さらに各反応混合物は、1μlの10μMプライマーpZP−GW−5−1(配列番号32)、1μlの10μMキット提供Genome Walkerアダプター、41μlの水、5μlの10×cDNA PCR反応緩衝液、およびClontechからの1μlのAdvantage cDNAポリメラーゼ混合物を含有した。Genome Walkerアダプターの配列(配列番号40[上のストランド]および41[下のストランド])を下に示す。
Figure 2010539985
PCR条件は次のとおり。95℃で1分間、次に95℃で20秒間および68℃で3分間を30サイクルと、それに続く68℃で7分間の最終延長。PCR産物をそれぞれ1:100に希釈し、1μlの希釈PCR産物を第2ラウンドのPCRのためのテンプレートとして使用した。pZP−GW−5−1(配列番号32)をpZP−GW−5−2(配列番号33)で置き換えたこと以外は、条件は全く同じであった。
3’末端ゲノム歩行では、プライマーpZP−GW−3−1(配列番号36)およびネステッドアダプタープライマー(配列番号42)を使用したこと以外は、上記のように4回のPCR反応を実施した。PCR産物を同様に希釈し、pZP−GW−3−2(配列番号37)を使用してpZP−GW−3−1(配列番号36)を置き換えて、第2ラウンドのPCRのためのテンプレートとして使用した。
PCR産物をゲル電気泳動法によって分析した。テンプレートとしてEcoRV消化ゲノムDNA、およびプライマーpZP−GW−3−2およびネステッドアダプタープライマーを使用して、1つの反応生成物から、約1.6kBの断片が作成された。この断片を単離してQiagenゲル精製キットを用いて精製し、pCR2.1−TOPO中にクローンした。配列分析は、断片がプラスミドpZP2−2988の部分および染色体Cからのヤロウィア(Yarrowia)ゲノムDNAの双方を含むことを示した。それらの間の接合部は、染色体Cのヌクレオチド位置139826にあった。これはPex10遺伝子のコード領域の内側であった(GenBank登録番号CAG81606、配列番号10)。
接合部の5’末端を判定するために、Y4128株からのゲノムDNAをテンプレートとして、プライマーPer10F1(配列番号43)およびZPGW−5−5(配列番号44)を使用して、PCR増幅を実施した。反応混合物は1μlの各20μMプライマー、1μlのゲノムDNA、22μlの水、および25μlのTaKaRa ExTaq 2×プレミックス(タカラバイオ株式会社(滋賀県大津市))を含んだ。サーモサイクラー条件は、94℃で1分間、次に94℃で20秒間、55℃で20秒間、および72℃で2分間を30サイクルと、それに続く72℃で7分間の最終延長であった。1.6kBのDNA断片が増幅され、pCR2.1−TOPO中にクローンされた。配列分析は、それが染色体Cからのヤロウィア(Yarrowia)ゲノムDNAと、pZP2−2988とのキメラ断片であることを示した。接合部は染色体Cのヌクレオチド位置139817にあった。したがってY4128株中では、染色体Cのヌクレオチド10個のセグメントが、pZP2−2988からのAscI/SphI断片によって置換された(図4B)。その結果、Y4128株中のPex10は、コードされるタンパク質の最後の32個のアミノ酸を欠いていた。
上の結論に基づいて、実施例2(前出)で単離されたY4128U株を引き続いてΔpex10株と称する。明確さのために述べると、Y4128U1株は、Y4128U1(Δpex10)株の同等物である。
実施例5
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4128U1(Δpex10)株中のPex10のプラスミド発現
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Pex10遺伝子を保持する3つのプラスミドを構築した。1)pFBAIn−PEX10は、FBAINmプロモータ制御下にあるPex10 ORFの発現を可能にし、2)pPEX10−1およびpPEX10−2は、天然Pex10プロモータ制御下のPex10の発現を可能にしたが、pPEX10−1がより短いバージョン(約500bp)のプロモータを使用したのに対し、pPEX10−2はより長いバージョン(約900bp)を使用した。これらの発現プラスミドの構築および形質転換に続き、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4128U1(Δpex10)株中の総油およびEPAレベルに対するPex10プラスミド発現の影響を判定した。Pex10の欠失は細胞中で、TFAの%としてのEPA量の増大をもたらしたが、DCWの%としての総脂質量を低下させた。
pFBAIn−PEX10、pPEX10−1、およびpPEX10−2の構築
pFBAIn−PEX10を構築するために、テンプレートとしてY.リポリティカ(Y.lipolytica)ゲノムDNAを使用して、プライマーPer10 F1(配列番号43)およびPer10 R(配列番号45)を使用して、Pex10遺伝子のコード領域を増幅した。PCR反応混合物は、1μlの各20μMプライマー、1μlのY.リポリティカ(Y.lipolytica)ゲノムDNA(約100ng)、25μlのExTaq2×プレミックス、および22μlの水を含有した。反応を次のように実施した。94℃で1分間、次に94℃で20秒間、55℃で20秒間、および72℃で90秒間を30サイクルと、それに続く72℃で7分間の最終延長。PCR産物である1168bpのDNA断片をQiagen PCR精製キットを用いて精製し、NcoIおよびNotIで消化してpFBAIn−MOD−1中にクローンし(配列番号46、図5B)、同じ2種の制限酵素で消化した。
配列分析した8つの個々のクローンの内、2つは誤りなしにPex10の正しい配列を有した。pFBAIn−PEX10(配列番号47、図6A)の構成要素を下の表7に列挙する。
Figure 2010539985
pPEX10−1およびpPEX10−2を構築するために、プライマーPEX10−R−BsiWI(配列番号48)、PEX10−F1−SalI(配列番号49)、およびPEX10−F2−SalI(配列番号50)をデザインして合成した。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ゲノムDNAおよびプライマーPEX10−R−BsiWIおよびPEX10−F1−SalIを使用したPCR増幅からは、両端をSalIおよびBsiWI制限部位で挟まれた、Pex10 ORF、Pex10遺伝子の500bpの5’上流領域、および215bpの3’下流領域を含有する1873bpの断片が生じた。この断片をQiagen PCR精製キットを用いて精製し、SalIおよびBsiWIで消化してpEXP−MOD−1(配列番号51、図6B)にクローンし、同じ2種の酵素で消化してpPEX10−1(配列番号52、図7A)を作成した。プラスミドpEXP−MOD1は、FBAINmプロモータがEXP1プロモータで置換されていることを除いて、pFBAIn−MOD−1(配列番号46、図5B)と類似する。表8はpPEX10−1の構成要素を列挙する。
Figure 2010539985
PEX10−R−BsiWI(配列番号48)およびPEX10−F2−SalI(配列番号50)を使用したヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ゲノムDNAのPCR増幅からは、両端をSalIおよびBsiWI制限部位で挟まれた、PEX10 ORF、Pex10遺伝子の991bpの5’上流領域、および215bpの3’下流領域を含有する2365bpの断片が生じた。この断片をQiagen PCR精製キットを用いて精製し、SalIおよびBsiWIで消化して同様に消化されたpEXP−MOD−1にクローンした。これはキメラPex10−5’::Pex10::Pex10−3’遺伝子中のより長いPex10−5’プロモータを別として、その構造がプラスミドpPEX10−1(表8、前出)と類似するpPEX10−2(配列番号53)の合成をもたらした。
Y4128U1(Δpex10)株中におけるPex10の発現
一般方法のプロトコルに従って、プラスミドpFBAIN−MOD−1(対照、配列番号46)、pFBAIn−PEX10(配列番号47)、pPEX10−1(配列番号52)、およびpPEX10−2(配列番号53)をY4128U1(Δpex10)に形質転換した。形質転換体をMMプレート上に播種した。上のプラスミドを保持する形質転換体の総脂質含量および脂肪酸組成を実施例3に記載されているように分析した。
乾燥細胞重量(DCW)百分率としての脂質含量、および脂質組成を下の表9に示す。具体的には脂肪酸は18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、LA、ALA、EDA、DGLA、ETrA、ETA、およびEPAとして同定された。脂肪酸組成は総脂肪酸の重量%として表される。
Figure 2010539985
表9中の結果は、Y4128U1(Δpex10)中における、天然Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Pex10プロモータまたはY.リポリティカ(Y.lipolytica)FBAINmプロモータどちらかからのPex10の発現が、EPA%を低下させてY4086のレベルに戻す一方、総脂質含量(TFA%DCW)をY4086のレベルにまで増大させることを示した(比較するのには表6のデータを参照されたい)。乾燥細胞1グラムあたりのEPA含量は、対照サンプル(すなわちpFBAIn−MOD−1を保持する細胞)の63.2mgから、pFBAIn−PEX10を保持する細胞中では31.5mg、pPEX10−1を保持する細胞中では29mg、およびpP
EX10−2を保持する細胞中では30.8mgに変化した。これらの結果は、Pex10のリングフィンガードメインの中断が、細胞中のEPAの量を増大させるが総脂質含量は低下させることを実証した。
したがって表9の結果は、対照プラスミドがあるY4128U1(Δpex10)形質転換体との比較で、Pex10発現プラスミドがある全ての形質転換体は、より高い脂質含量(TFA%DCW)(>27%対22.8%)、より低いEPA%TFA(約10.8%対27.7%)、およびより低いEPA%DCW(<3.1%対6.3%)を示すことを明らかにした。さらに対照プラスミドがあるY4128U1(Δpex10)株形質転換体は、Pex10発現プラスミドがある形質転換体と比較して、総PUFAに対するEPA量に2.5倍の増大を有し(44%PUFA[%TFAとして]対17.5%(平均)PUFA[%TFAとして])、総PUFAに対するC20 PUFA量に1.5倍の増大を有した(67%PUFA[%TFAとして]対44%(平均)PUFA[%TFAとして])。
実施例6
EPAを生成するためのY4184U株の作成
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4184U株を下の実施例7における宿主として使用した。Y4184U株はY.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に由来し、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現を通じてEPAを産生できる。株はUra−表現型を有し、その構築については国際公開第2008/073367号パンフレットの実施例7に記載されている。
しかし要約すれば、Y4184U株の開発はY2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株、およびY4069株の構築を必要とした(前出、実施例1)。Y4184U株のさらなる開発(図7Bに略図で示す)は、株Y4084、株Y4084U1、株Y4127(American Type Culture CollectionにATCC PTA−8802の登録番号の下に2007年11月29日に寄託された)、Y4127U2株、Y4158株、Y4158U1株、およびY4184株の作成を必要とした。Y4127U2株の形質転換のために使用されるプラスミドコンストラクトpZKL1−2SP98Cを図8Aに略図で示す(配列番号54、国際公開第2008/073367号パンフレットの表23に記載されている)。Y4158U1株の形質転換のために使用されるプラスミドpZKL2−5U89GCを図8Bに示す(配列番号55、国際公開第2008/073367号パンフレットの表24に記載されている)。
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対してY4184株(総脂質の31%のEPAを産生する)の最終遺伝子型は、unknown 1−、unknown 2−、unknown 4−、unknown 5−、unknown 6−、unknown 7−、YAT1::ME3S::Pex16、EXP1::ME3S::Pex20(2コピー)、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBA::EgD9eS::Pex20、YAT1::EgD9eS::Lip2、GPD::EgD9eS::Lip2、GPDIN::EgD8M::Lip1、YAT1::EgD8M::Aco、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1(2コピー)、GPM/FBAIN::FmD12S::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、YAT1::FmD12::Oct、GPD::FmD12::Pex20、EXP1::EgD5S::Pex20、YAT1::EgD5S::Aco、YAT1::Rd5S::Oct、FBAIN::EgD5::Aco、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT1::Aco、GPD::YlCPT1::Aco(FmD12はフザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)Δ12デサチュラーゼ遺伝子[国際公開第2005/047485号パンフレット]であり、FmD12Sはフザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)に由来するコドン最適化Δ12デサチュラーゼ遺伝子[国際公開第2005/047485号パンフレット]であり、ME3Sはモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)に由来するコドン最適化C16/18エロンガーゼ遺伝子[国際公開第2007/046817号パンフレット]であり、EgD9eはミドリムシ(Euglena gracilis)Δ9エロンガーゼ遺伝子[国際公開第2007/061742号パンフレット]であり、EgD9eSはミドリムシ(Euglena gracilis)に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子[国際公開第2007/061742号パンフレット]であり、EgD8Mはミドリムシ(Euglena gracilis)[米国特許第7,256,033号明細書]に由来する合成Δ8デサチュラーゼ変異体[国際公開第2008/073271号パンフレット]であり、EgD5はミドリムシ(Euglena gracilis)Δ5デサチュラーゼ[米国特許出願公開第2007−0292924−A1号明細書]であり、EgD5Sはミドリムシ(Euglena gracilis)に由来するコドン最適化Δ5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2007−0292924号明細書]であり、RD5Sはペリディニウム(Peridinium)種CCMP626に由来するコドン最適化Δ5デサチュラーゼ[米国特許出願公開第2007−0271632号明細書]であり、PaD17はピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)Δ17デサチュラーゼ[国際公開第2008/054565号パンフレット]であり、PaD17Sはピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)に由来するコドン最適化Δ17デサチュラーゼ[国際公開第2008/054565号パンフレット]であり、YlCPT1はヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ジアシルグリセロールコリンリン酸転移酵素遺伝子[国際公開第2006/052870号パンフレット]である)であった。
Y4184株中でUra3遺伝子を中断するために、コンストラクトpZKUE3S(図5A、配列番号31、国際公開第2008/073367号パンフレットの表22に記載されている)を使用して、EXP1::ME3S::Pex20キメラ遺伝子をY4184株のUra3遺伝子に組み込み、それぞれY4184U1株(総脂質の11.2%のEPA)、Y4184U2株(総脂質の10.6%のEPA)、およびY4184U4株(総脂質の15.5%のEPA)、(集合的にY4184U株)を得た。
実施例7
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4184U4株中のPex10の染色体欠失はEPA蓄積および総脂質含量を増大させる
コンストラクトpYPS161(図9A、配列番号56)を使用して、EPA産生ヤロウィア(Yarrowia)Y4184U4株(実施例6)から染色体Pex10遺伝子をノックアウトした。Pex10ノックアウトコンストラクトによるY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4184U4株の形質転換は、Y4184(Δpex10)株の創出をもたらした。総油およびEPAレベルに対するPex10ノックアウトの影響を判定して比較した。具体的にはPex10のノックアウトは、EPA百分率(%TFAおよび%DCWとして)の増大および細胞中の総脂質含量の増大をもたらした。
コンストラクトpYSP161
コンストラクトpYPS161は、次の構成要素を含有した。
Figure 2010539985
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ノックアウトY4184(ΔPex10)株の作成
標準プロトコルを使用して、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4184U4株(実施例6)をPex10ノックアウトコンストラクトpYPS161の精製された5.3kBのAscI/SphI断片(前出)で形質転換し、細胞単独対照もまた調製した。実験的形質転換のそれぞれで約200〜250個のコロニーが存在したのに対し、細胞単独プレート上にはコロニーは存在しなかった(予想通り)。
コロニーPCRを使用して、Pex10欠失を有する細胞についてスクリーンした。具体的にはMasterAmpTaqポリメラーゼ(Epicentre Technologies(Madison,WI))を使用して、標準プロトコルに従って、PCRプライマーPex−10del13’.Forward(配列番号57)およびPex−10del25’.Reverse(配列番号58)を使用してPCR反応を実施した。PCR反応条件は、94℃で5分間、次に94℃で30秒間、60℃で30秒間、および72℃で2分間を30サイクルと、それに続く72℃で6分間の最終延長であった。次に反応を4℃に保った。Pex10ノックアウトコンストラクトがPex10領域中に組み込まれれば、サイズ2.8kBの単一PCR産物が生じることが予期される。対照的に株がPex10領域以外の染色体領域にPex10ノックアウトコンストラクトを組みめば、2つのPCR断片、すなわち2.8kBおよび1.1kBが生じる。スクリーンした288個のコロニーの内、大多数はランダム部位に組み込まれたPex10ノックアウトコンストラクトを有した。288個のコロニーの内1個だけが、Pex10ノックアウトを含有した。この株をY4184(Δpex10)と称した。
総油およびEPA産生に関するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4184株およびY4184(ΔPex10)株の評価
総脂質画分中のPUFA%、および細胞中の総脂質含量に対するPex10ノックアウトの影響を評価するために、比較できる油性条件下でY4184株およびY4184(Δpex10)株を生育させた。具体的には250mLフラスコ内で、25mLの発酵培地(FM)または25mLの酵母抽出物を含まないFM培地(YE非含有FM)どちらかの中で、培養を開始OD600約0.1で48時間生育させた。50mLの円錐管内で8000rpmで10分間遠心分離して、細胞を収集した。上清を廃棄して細胞を25mLのHGMに再懸濁し、新しい250mLフラスコに移した。細胞を30℃でさらに120時間通気培養した。
乾燥細胞重量(DCW)を測定するために、5mLのFM生育培養、および10mLのYE非含有FM生育培養からの細胞を処理した。培養細胞を4300rpmで10分間遠心分離した。ペレットを10mLの食塩水を使用して再懸濁し、同一条件下で2回目の遠心分離をした。次にペレットを1mLの無菌H20(3倍)を使用して再懸濁し、あらかじめ秤量したアルミ皿に移した。細胞を真空オーブン内において80℃で一晩乾燥させた。細胞重量を測定した。
上記プラスミドを保持する形質転換体の総脂質含量および脂肪酸組成を実施例3に記載されているようにして分析した。DCW、総脂質含量(TFA%DCW)、総EPA%TFA、およびEPA%DCWを下の表11に示す。
Figure 2010539985
表11中の結果は、Y4184(ΔPex10)中の染色体Pex10遺伝子のノックアウトが、天然Pex10pがノックアウトされていないY4184株中のEPA%および総含油量と比較して、EPA%(%TFAおよび%DCWとして)を増大し、および総含油量を増大することを示した。より具体的にはFM培地中では、EPA(%TFA)の約109%の増大、EPA生産性(%DCW)の約216%の増大、および総油(TFA%DCW)の約49%の増大があった。YE非含有FM培地中では、EPA(%TFA)の約100%の増大、EPA生産性(%DCW)の約205%の増大、および総油(TFA%DCW)の約50%の増大があった。
したがって表11の結果は、FM培地中では、Y4184親株と比較してY4184(ΔPex10)株が、より高い脂質含量(TFA%DCW)(17.6%対11.8%)、より高いEPA%TFA(43.2%対20.6%)、およびより高いEPA%DCW(7.6%対2.4%)を有することを示した。同様にYE非含有FM培地中では、Y4184親株と比較してY4184(ΔPex10)株は、より高い脂質含量(TFA%DCW)(13.2%対8.8%)、より高いEPA%TFA(46.1%対23.2%)、およびより高いEPA%DCW(6.1%対2.0%)を有した。
実施例8(予測的)
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)PUFA産生株中における代案のPex遺伝子の染色体ノックアウト
本例は、改変されてω−3/ω−6PUFAを産生するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の様々な株について述べる。前出の実施例7の方法を使用して遺伝子Pex1p、Pex2p、Pex3p、Pex3Bp、Pex4p、Pex5p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex16p、Pex17p、Pex19p、Pex20p、Pex22pまたはPex26pをコードする染色体が中断されれば、これらのY.リポリティカ(Y.lipolytica)宿主株のいずれかを改変して、総脂質画分中および油画分中に増大する量のω−3/ω−6 PUFAを産生できることが考察される。
より具体的には出願人の譲受人によって多様なヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株が改変されて、異種のΔ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼPUFA経路または異種のΔ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼPUFA経路の発現を通じて、高濃度の様々なω−3/ω−6PUFAが生成されている。
ω−3/ω−6PUFAを産生する代表的なヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株の要約
いくつかの代表的な株を下の表に要約するが、ω−3/ω−6PUFAを産生するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株の開示は、その中の株にどのようにも限定されない。それよりもむしろ本明細書で提供される全ての教示は、以下の同一譲受人のおよび同時係属出願に加えて、改変されてω−3/ω−6PUFAを産生する適切なヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株を開発するのに有用である。これらとしては、具体的には以下の出願人らの譲受人の同時係属特許および出願が挙げられる。米国特許第7,125,672号明細書、米国特許第7,189,559号明細書、米国特許第7,192,762号明細書、米国特許第7,198,937号明細書、米国特許第7,202,356号明細書、米国特許第7,214,491号明細書、米国特許第7,238,482号明細書、米国特許第7,256,033号明細書、米国特許第7,259,255号明細書、米国特許第7,264,949号明細書、米国特許第7,267,976号明細書、米国特許第7,273,746号明細書、米国特許出願公開第10/985254号明細書および米国特許出願公開第10/985691号明細書(2004年11月10日出願)、米国特許出願公開第11/183664号明細書(2005年7月18日出願)、米国特許出願公開第11/185301号明細書(2005年7月20日出願)、米国特許出願公開第11/190750号明細書(2005年7月27日出願)、米国特許出願公開第11/198975号明細書(2005年8月8日出願)、米国特許出願公開第11/253882号明細書(2005年10月19日出願)、米国特許出願公開第11/264784号明細書および米国特許出願公開第11/264737号明細書(2005年11月1日出願)、米国特許出願公開第11/265761号明細書(2005年11月2日出願)、米国特許出願公開第11/601563号明細書および米国特許出願公開第11/601564号明細書(2006年11月16日出願)、米国特許出願公開第11/635258号明細書(2006年12月7日出願)、米国特許出願公開公開第11/613420号明細書(2006年12月20日出願)、米国特許出願第11/787772号明細書(2007年4月18日出願)、米国特許出願公開第11/737772号明細書(2007年4月20日出願)、米国特許出願公開第11/740298号明細書(2007年4月26日出願)、米国特許出願公開第12/111237号明細書(2008年4月29日出願)、米国特許出願公開第11/748629号明細書および米国特許出願公開第11/748637号明細書(2007年5月15日出願)、米国特許出願公開第11/779915号明細書(2007年7月19日出願)、米国仮特許出願第60/991266号明細書(2007年11月30日出願)、米国特許出願公開第11/952243号明細書(2007年12月7日出願)、米国仮特許出願第61/041716号明細書(2008年4月2日出願)、米国特許出願公開第12/061738号明細書(2008年4月3日出願)、米国特許出願公開第12/099811号明細書(2008年4月9日出願)、米国特許出願公開第12/102879号明細書(2008年4月15日出願)、米国特許出願公開第12/111237号明細書(2008年4月29日出願)、米国仮特許出願第61/055511号明細書(2008年5月23日出願)、および米国仮特許出願第61/093007号明細書(2008年8月29日出願)。
Figure 2010539985
Pex遺伝子の染色体ノックアウト
望ましいω−3/ω−6PUFA(またはそのPUFAの組み合わせ)を産生する好ましいヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株の選択に続いて、当業者は実施例7のpYPS161に類似した適切なノックアウトコンストラクトを容易に操作でき、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)親株への形質転換に際して、染色体Pex遺伝子のノックアウトがもたらされる。好ましいPex遺伝子としては、YlPex1p(GenBank登録番号CAG82178、配列番号1)、YlPex2p(GenBank登録番号CAG77647、配列番号2)、YlPex3p(GenBank登録番号CAG78565、配列番号3)、YlPex3Bp(GenBank登録番号CAG83356、配列番号4)、YlPex4p(GenBank登録番号CAG79130、配列番号5)、YlPex5p(GenBank登録番号CAG78803、配列番号6)、YlPex6p(GenBank登録番号CAG82306、配列番号7)、YlPex7p(GenBank登録番号CAG78389、配列番号8)、YlPex8p(GenBank登録番号CAG80447、配列番号9)、YlPex12p(GenBank登録番号CAG81532、配列番号11)、YlPex13p(GeBbank登録番号CAG81789、配列番号12)、YlPex14p(GenBank登録番号CAG79323、配列番号13)、YlPex16p(GenBank登録番号CAG79622、配列番号14)、YlPex17p(GenBank登録番号CAG84025、配列番号15)、YlPex19p(GenBank登録番号AAK84827、配列番号16)、YlPex20p(GenBank登録番号CAG79226、配列番号17)、YlPex22p(GenBank登録番号CAG77876、配列番号18)、およびYlPex26p(GenBank登録番号NC#006072、ヌクレオチド117230〜118387のアンチセンス翻訳、配列番号19)が挙げられる。
Pexの染色体中断は、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない真核生物と比較して、総脂肪酸の%として総脂質画分中および油画分中のPUFA量の増大をもたらすことが予期され、PUFAの量は、1)PUFA中間体または副産物とは対照的に、機能性PUFA生合成経路の所望の最終産物であるPUFA、2)C20およびC22PUFA、および/または3)総PUFAであり得る。好ましい結果は、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない真核生物と比較して、総脂肪酸の%としてのPUFA量の増大を達成するだけでなく、乾燥細胞重量の%としてのPUFA量の増大ももたらす。この場合もPUFAの量は、1)PUFA中間体または副産物とは対照的に、機能性PUFA生合成経路の所望の最終産物であるPUFA、2)C20およびC22PUFA、および/または3)総PUFAであり得る。場合によっては、天然ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が中断されていない真核生物と比較して、総脂質含量もまた増大する。
実施例9
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4036U株中におけるPex16の染色体欠失は蓄積DGLA%を増大させる
本実施例はDGLA産生ヤロウィア(Yarrowia)Y4036U株(実施例1)中において、染色体のPex16遺伝子をノックアウトするためのコンストラクトpYRH13(図9B、配列番号59)の使用について述べる。Pex16ノックアウトコンストラクトによるY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4036U株の形質転換はY4036U(Δpex16)株の創出をもたらした。DGLAレベルに対するPex16ノックアウトの影響を判定して比較した。具体的にはPex16のノックアウトは、細胞中の総脂肪酸の%としてのDGLA百分率の増大をもたらした。
コンストラクトpYRH13
プラスミドpYRH13は、プラスミドpYPS161(図9A、配列番号56、実施例7)から誘導された。具体的にはヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex16遺伝子(GenBank登録番号CAG79622)の1982bpの5’プロモータ領域がpYPS161のAscI/BsiWI断片を置換し、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex16遺伝子(GenBank登録番号CAG79622)の448bpの3’ターミネーター領域がpYPS161のPacI/SphI断片を置換して、pYRH13(配列番号59、図9B)を生成した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ノックアウト株Y4036(ΔPex16)の作成
標準プロトコルを使用して、Pex16ノックアウトコンストラクトpYRH13の精製された6.0kBのAscI/SphI断片で、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4036U株(実施例1)を形質転換した。
Pex16欠失を有する細胞についてスクリーンするために、Taqポリメラーゼ(Invitrogen(Carlsbad,CA))およびPCRプライマーPEX16Fii(配列番号60)およびPEX16Rii(配列番号61)を使用して、コロニーPCRを実施した。このプライマーセットは、未変性Pex16遺伝子の1.1kB領域を増幅するようにデザインされ、したがってPex16欠失変異体(すなわちΔpex16)はバンドを形成しない。プライマーの第2のセットは、Pex16遺伝子が欠失している場合にのみバンドを生成するようにデザインされた。具体的には1つのプライマー(すなわち3UTR−URA3、配列番号62)が導入された6.0kBのAscI/SphI中断断片のベクター配列中の領域に結合し、別のプライマー(すなわちPEX16−conf、配列番号63)は中断断片の相同的な領域外の染色体のPex16ターミネーター配列に結合する。
より具体的には以下を含有する反応混合物を使用して、コロニーPCRを実施した。20mMのTris−HCl(pH8.4)、50mMのKCl、1.5mMのMgCl2、各400μMのdGTP、dCTP、dATP、およびdTTP、各2μMのプライマー、20μlの水、および2UのTaqポリメラーゼ。増幅を次のように実施した。94℃で120秒間の最初の変性、次に94℃で60秒間の変性、55℃で60秒間のアニーリング、および72℃で120秒間の延長を35サイクル。72℃で5分間の最終延長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
スクリーンされた205個のコロニーの内、195個は染色体中のランダム部位に組み込まれたPex16ノックアウト断片を有し、したがってΔpex16変異体ではなかった(しかしpYRH13の存在のために、細胞はura−プレート上に生育できた)。Y4036U−17、Y4036U−19、およびY4036U−33と称されるこれらのランダム組み込み体の3つを脂質生成実験(後述)における対照として使用した。
スクリーンされた残りの10個のコロニー(すなわち合計は205個)は、Pex16ノックアウトを含有した。Y4036U株バックグラウンド内のこれら10個のΔpex16変異体をRHY25〜RHY34と称した。
定量的リアルタイムPCRによるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ノックアウトY4036U(ΔPex16)株の確認
RHY25〜RHY34株中のPex16ノックアウトのさらなる確認は、ヤロウィア(Yarrowia)翻訳延長因子(tef−1)遺伝子(GenBank登録番号AF054510)を対照として使用して、定量的リアルタイムPCRによって実施された。
最初にそれぞれPex16遺伝子およびtef−1遺伝子を標的とする、リアルタイムPCRプライマーおよびTaqManプローブをPrimer Expressソフトウェアv2.0(AppliedBiosystems(Foster City,CA))を用いてデザインした。具体的にはリアルタイムPCRプライマーef−324F(配列番号64)、ef−392R(配列番号65)、PEX16−741F(配列番号66)、およびPEX16−802R(配列番号67)、ならびにTaqManプローブef−345T(すなわち5’6−FAMTM−TGCTGGTGGTGTTGGTGAGTT−TAMRATM、ヌクレオチド配列は配列番号68で記載される)およびPEX16−760T(すなわち5’−6FAMTM−CTGTCCATTCTGCGACCCCTC−TAMRATM、ヌクレオチド配列は配列番号69で記載される)をデザインした。TaqMan蛍光発生的プローブの5’末端が6FAMTM蛍光性レポーター染料結合を有するのに対し、3’末端はTAMRATM失活剤を含んでなる。全てのプライマーおよびプローブは、Sigma−Genosys(Woodlands,TX)から得られた。
1個のコロニーを50μlの水に懸濁することにより、ノックアウト候補DNAを調製した。各サンプルについて三連で、tef−1およびPEX16のための反応を別個に実施した。リアルタイムPCR反応は、各20pmoleの順方向および逆方向プライマー(すなわちef−324F、ef−392R、PEX16−741F、およびPEX16−802R 5’、前出)、各5pmoleのTaqManプローブ(すなわちef−345TおよびPEX16−760T)、10μlのTaqMan Universal PCR Master Mix−−No AmpErase(登録商標)Uracil−N−Glycosylase(UNG)(カタログ番号PN 4326614、AppliedBiosystems)、1μlのコロニー懸濁液、および8.5μlのRNA分解酵素/デオキシリボヌクレアーゼ非含有水を反応あたりの総容積20μlに含んだ。反応をABI PRISM(登録商標)7900 Sequence Detection System上で次の条件下で実施した。95℃で10分間の最初の変性、次に95℃で15秒間の変性および60℃で1分間のアニーリングを40サイクル。各サイクル中に6−FAMTM蛍光をモニターして、リアルタイムデータを自動的に収集した。ABI PRISM(登録商標)7900 Sequence Detection Systemの取扱説明書の通り、データ正規化のためにtef−1遺伝子閾値サイクル(CT)値を使用してデータ分析を実施した。
この分析に基づいて、10個のY4036U(Δpex16)コロニー(すなわちRHY25〜RHY34)は全て、pYRH13コンストラクトが染色体YlPex16中に組み込まれた有効なPex16ノックアウトであると結論された。
DGLA産生に関するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4036U株およびY4036U(ΔPex16)株の評価
総脂質画分中および総脂質含量細胞中のPUFA%に対するPex16ノックアウトの影響を評価するために、比較できる油性条件下でY4036UおよびY4036U(Δpex16)株を生育させた。より具体的には染色体中のランダム部位に組み込まれたPex16ノックアウト断片を有するY4036U−17、Y4036U−19、およびY4036U−33株はPex16野性型(すなわちY4036U)と見なされ、RHY25〜RHY34株はPex16変異株(すなわちY4036U(Δpex16))であった。125mLフラスコ内で、90mg/LL−ロイシンを含有する25mLのMM中で各株の培養を開始OD600約0.1で48時間生育させた。50mLの円錐管内で4300rpmで5分間遠心分離して、細胞を収集した。上清を廃棄して細胞を25mLのHGMに再懸濁し、新しい125mLフラスコに移した。細胞を30℃でさらに120時間通気培養した。
各株の脂肪酸組成(すなわちLA(18:2)、ALA、EDA、およびDGLA)を下の表13に示す。脂肪酸組成は総脂肪酸の重量%として表される。Y4036UおよびY4036U(Δpex16)株の平均脂肪酸組成は、灰色で強調表示され「Ave.」で示される。試験されたいずれの株もMM+L−ロイシン培地中には十分な細胞集団を提供せず、したがって総脂質含量は分析しなかった。
Figure 2010539985
表13の結果は、Y4036U(Δpex16)中の染色体のPex16遺伝子ノックアウトが、天然Pex16pがノックアウトされていないY4036U株中のDGLA%TFAと比較して、DGLA%TFAをおよそ85%増大することを示した。しかしY4036U(Δpex16)はまた、LA(18:2)蓄積に約40%の減少も有した。
したがって表13中の結果は、親株Y4036と比較して、Y4036(ΔPex16)株がより高い平均DGLA%TFA(43.4%対23.4%)を有したことを示した。さらにY4036U(Δpex16)株は、総PUFAに対してDGLAの量に1.65倍の増大(62.8%のPUFA[%TFAとして]対38.1%のPUFA[%TFAとして])を有し、総PUFAに対してC20 PUFA量に1.3倍の増大(71%のPUFA[%TFAとして]対54.8%のPUFA[%TFAとして])を有した。
実施例10
総脂質の約53.2%のEPAを生成するためのY4305株の作成
Ura−表現型を有するY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4305U株を後述の実施例11において宿主として使用した。Y4305株(Y4305Uの親株であるUra+株)はY.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362から誘導され、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現を通じて総脂質に対して約53.2%のEPAを産生できる。
Y4305U株の開発は、Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株、Y4070株、およびY4086株(前出、実施例1)の構築を必要とした。Y4305U株のさらなる開発は、Y4086U1株、Y4128株、およびY4128U3株(前出、実施例2)の構築を必要とした。引き続いてY4305U株の開発(図10に略図で示す)は、Y4217株(42%のEPAを産生する)、Y4217U2株(Ura−)、Y4259株(46.5%のEPAを産生する)、Y4259U2株(Ura−)、およびY4305株(53.2%のEPAを産生する)の構築を必要とした。
Y4128U3株の後に開発されたEPA産生株の形質転換および選択に関する詳細についてはここに詳しく記載しないが、Y4217株、Y4217U2株、Y4259株、Y4259U2株、Y4305株、およびY4305U株の単離のために使用される方法は、実施例1および2に記載されている通りである。
簡単に述べると、コンストラクトpZKL2−5U89GC(図8B、配列番号55、国際公開第2008/073367号パンフレットの表24に記載されている)を作成し、1つのΔ9エロンガーゼ遺伝子(すなわちEgD9eS)、1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子(すなわちEgD8M)、1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子(すなわちEgD5S)、および1つのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ジアシルグリセロールコリンリン酸転移酵素(CPT1)遺伝子をY4128U3株のLip2遺伝子座(GenBank登録番号AJ012632)に組み込み、それによってより高レベルのEPA産生を可能にした。Y4215、Y4216、Y4217、Y4218、Y4219、およびY4220と称される6つの株は、それぞれ総脂質の約41.1%、41.8%、41.7%、41.1%、41%、および41.1%のEPAを産生した。
Ura3遺伝子を標的とするキメラEXP1::ME3S::Pex20遺伝子を含んでなるコンストラクトpZKUE3S(図5A、配列番号31、国際公開第2008/073367号パンフレットの表22に記載されている)を通じて、Y4217株中のUra3遺伝子を中断することで、Y4217U1株およびY4217U2を作り出した。コンストラクトpZKL1−2SP98C(図8A、配列番号54、国際公開第2008/073367号パンフレットの表23に記載されている)を利用して、1つのΔ9エロンガーゼ遺伝子(すなわちEgD9eS)、1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子(すなわちEgD8M)、1つのΔ12デサチュラーゼ遺伝子(すなわちFmD12S)、および1つのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)CPT1遺伝子をY4217U2株のLip1遺伝子座(GenBank登録番号Z50020)に組み込み、それによってそれぞれ総脂質の約46.5%、44.5%、44.5%、44.8%、44.5%、および44.3%のEPAを産生する、Y4259、Y4260、Y4261、Y4262、Y4263、およびY4264株の単離をもたらした。
次にUra3変異体遺伝子をY4259株のUra3遺伝子に組み込むコンストラクトpZKUM(図11A、配列番号70、国際公開第2008/073367号パンフレットの表33に記載されている)での形質転換を通じて、Ura−誘導体(すなわちY4259U2株)を作り出し、それによってY4259U1、Y4259U2、およびY4259U3株(集合的にY4259U)の単離をそれぞれもたらした(それぞれ総脂質の31.4%、31%および31.3%のEPAを産生する)。
最後にコンストラクトpZKD2−5U89A2(図11B、配列番号71)を作成して、1つのΔ9エロンガーゼ遺伝子、1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子、1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、および1つのΔ12デサチュラーゼ遺伝子をY4259U2株のジアシルグリセロールアシル基転移酵素(DGAT2)遺伝子座に組み込み、それによってEPA産生を増大できるようにした。pZKD2−5U89A2プラスミドは、次の構成要素を含有した。
Figure 2010539985
pZKD2−5U89A2プラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般方法に従ってY4259U2株の形質転換のために使用した。形質転換された細胞をMMプレート上に播種し、プレートを30℃で3〜4日間保った。単一コロニーをMMプレート上に再度画線塗抹して、得られたコロニーを使用して液体MMに接種した。液体培養を250rpm/分で2日間30℃で振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、HGMに再懸濁して次に250rpm/分で5日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出した。FAMEをエステル交換によって調製し、引き続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した。
GC分析は、選択された96株のほとんどが、総脂質の40〜46%のEPAを産生したことを示した。Y4305、Y4306、Y4307、およびY4308と称される4株はそれぞれ総脂質の約53.2%、46.4%、46.8%、および47.8%のEPAを産生した。Y4305の完全な脂質プロフィールは次のとおりである。16:0(2.8%)、16:1(0.7%)、18:0(1.3%)、18:1(4.9%)、18:2(17.6%)、ALA(2.3%)、EDA(3.4%)、DGLA(2.0%)、ARA(0.6%)、ETA(1.7%)、およびEPA(53.2%)。乾燥細胞重量総脂質%は27.5であった。
野性型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対してY4305株の最終遺伝子型は、SCP2−(YALI0E01298g)、YALI0C18711g−、Pex10−、YALI0F24167g−、unknown 1−、unknown 3−、unknown 8−、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::OCT、GPM/FBAIN::FmD12S::OCT、EXP1::FmD12S::Aco、YAT1::FmD12S::Lip2、YAT1::ME3S::Pex16、EXP1::ME3S::Pex20(3コピー)、GPAT::EgD9e::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、FBA::EgD9eS::Pex20、GPD::EgD9eS::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、YAT1::E389D9eS::OCT、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1(2コピー)、EXP1::EgD8M::Pex16、GPDIN::EgD8M::Lip1、YAT1::EgD8M::Aco、FBAIN::EgD5::Aco、EXP1::EgD5S::Pex20、YAT1::EgD5S::Aco、EXP1::EgD5S::ACO、YAT1::RD5S::OCT、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、YAT1::YlCPT1::ACO、GPD::YlCPT1::ACOであった。
Y4305株中のUra3遺伝子を中断するために、コンストラクトpZKUM(図11A、配列番号70、国際公開第2008/073367号パンフレットの表33に記載されている)を使用して、Ura3変異体遺伝子をY4305株のUra3遺伝子に組み込んだ。MM+5−FOAプレート上に生育した合計8つの形質転換体を拾って、MMプレートおよびMM+5−FOAプレート上に別々に再度画線塗抹した。8株の全てがUra−表現型を有した(すなわち細胞はMM+5−FOAプレート上で生育できたが、MMプレート上では生育できなかった)。細胞をMM+5−FOAプレートからはぎ取って、脂質を抽出した。FAMEをエステル交換によって調製し、引き続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した。
GC分析は、MM+5−FOAプレート上に生育したpZKUM形質転換体#1、#6、および#7の中に、総脂質の37.6%、37.3%、および36.5%のEPAの存在を示した。これらの3つの株をそれぞれY4305U1、Y4305U2、およびY4305U3株(集合的にY4305U)と称する。実施例11中における明確さのために述べると、Y4305U株はY4305U(Δpex10)株と称される。
実施例11
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305U(Δpex10)株中のPex16の染色体欠失は蓄積EPA%をさらに増大させる(二重Pex10−Pex16ノックアウト)
本実施例は、ヤロウィア(Yarrowia)Y4305U(Δpex10)株(実施例10)中の染色体Pex16をノックアウトし、それによってPex10−Pex16二重変異体をもたらすためのコンストラクトpYRH13(図9B、配列番号59)の使用について述べる。総油およびEPAレベルに対するPex10−Pex16二重ノックアウトの影響を判定して比較した。具体的にはY4305U(Δpex10)(Δpex16)株中のPex10−Pex16二重変異の影響は、単一変異体(すなわちY4305U(Δpex10)株)と比較して、細胞中のEPA量(EPA%TFAおよびEPA%DCW)の増大をもたらした。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ノックアウトY4305U(Δpex10)(Δpex16)株の作成
標準プロトコルを使用して、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305U(Δpex10)株(実施例10)をPex16ノックアウトコンストラクトpYRH13(実施例9、配列番号59)の精製された6.0kBのAscI/SphI断片で形質転換した。Pex16欠失を有する細胞のスクリーニングおよび同定は、実施例9に記載されているようにコロニーPCRによって実施した。
スクリーンした93個のコロニーの内、88個は染色体中のランダム部位に組み込まれたPex16ノックアウト断片を有し、したがってΔpex16変異体ではなかった(しかしpYRH13の存在のために細胞はUra−プレート上で生育できる)。Y4305U−22およびY4305U−25と称するこれらのランダム組み込み体の2つを脂質生成実験(後述)において対照として使用した。
スクリーンした残りの5個のコロニー(すなわち合計は93個)は、Pex16ノックアウトを含有した。Y4305U株バックグラウンド内のこれらの5つのΔpex16変異体をRHY20、RHY21、RHY22、RHY23、およびRHY24と称した。YlPex16ノックアウトのさらなる確認は、実施例9に記載されているように定量的リアルタイムPCRによって実施した。
EPA産生に関するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305U(ΔPex10)株およびY4305U(ΔPex10)(Δpex16)株の評価
総脂質画分中および総脂質含量細胞の中のPUFA%に対する複数Pex遺伝子中の変異の影響を評価するために、Y4305U(Δpex10)株およびY4305U(Δpex10)(Δpex16)株を比較できる油性条件下で生育させた。より具体的には染色体中のランダム部位に組み込まれたPex16ノックアウト断片を有するY4305U−22およびY4305U−25株はPex16野性型、Pex10ノックアウト(すなわちY4305U(Δpex10))と見なされ、RHY22、RHY23、およびRHY24株は二重ノックアウト変異体(すなわちY4305U(Δpex10)(Δpex16))株であった。各株の培養は、比較できる油性条件下で二連で生育させた。
具体的には125mLフラスコ内で、25mLの合成デキストロース培地(SD)中で培養を開始OD600約0.1で48時間生育させた。50mLの円錐管内で4300rpmで5分間遠心分離して、細胞を収集した。上清を廃棄して細胞を25mLのHGMに再懸濁し、新しい125mLフラスコに移した。細胞を30℃でさらに120時間通気培養した。
乾燥細胞重量(DCW)を測定するために、5mLのHGM生育培養からの細胞を処理した。培養細胞を4300rpmで5分間遠心分離した。ペレットを10mLの滅菌水を使用して再懸濁し、同一条件下で2回目の遠心分離をした。次にペレットを1mLの無菌H20(3倍)を使用して再懸濁し、あらかじめ秤量したアルミ皿に移した。細胞懸濁液を真空オーブン内において80℃で一晩乾燥させた。細胞重量を測定した。
総脂質含量を測定するために、1mLのHGM培養細胞を13,000rpmで1分間の遠心分離によって収集して総脂質を抽出し、エステル交換によってFAMEを調製し、び引き続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した(一般方法)。
各株の脂肪酸組成(すなわち16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、18:3(ALA)、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、およびEPA)(総脂肪酸(TFA)の重量%として表される)、ならびにDCW(g/L)および総脂質含量(TFA%DCW)を下の表15に示す。Y4305U(Δpex10)株およびY4305U(Δpex10)(Δpex16)株の平均脂肪酸組成は灰色で強調表示され、「Ave」で示される。
Figure 2010539985
表15の結果は、Y4305U(Δpex10)(Δpex16)中の染色体Pex16遺伝子のノックアウトが、天然Pex16pがノックアウトされていないY4305U(Δpex10)株中のEPA%TFAと比較して、EPA%TFAをおよそ8%増大することを示した。さらに単一変異株と比較して、二重変異体中ではEPA%DCWもまた増大した一方で、TFA%DCWは変化なしであった。
したがって表15の結果は、対照Y4305(ΔPex10)株と比較して、Y4305(ΔPex10、ΔPex16)株が平均してより高いEPA%TFA(48.3%対44.7%)およびより高いEPA%DCW(14.57%対13.23%)を有したことを示す。Y4305(ΔPex10、ΔPex16)株は、Y4305(ΔPex10)株と比較して、総PUFAに対してEPA量に1.05倍のみの増大を有した(61%のPUFA[%TFAとして]対58.3%のPUFA[%TFAとして])一方、総PUFAに対するC20 PUFA量の増大は事実上同一であった(73%のPUFA[%TFAとして]対72%のPUFA[%TFAとして])。
実施例12
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4036U株中のPex3の染色体欠失は蓄積DGLA%を増大させる
本例は、Ura−、DGLA産生ヤロウィア(Yarrowia)Y4036U株(実施例1)中の染色体Pex3遺伝子(配列番号3)をノックアウトするためのコンストラクトpY157(図12B、配列番号82)の使用について述べる。Pex3ノックアウトコンストラクトによるY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4036U株の形質転換は、Y4036(Δpex3)株の創出をもたらした。DGLAレベルに対するPex3ノックアウトの影響を判定して、対照Y4036株(Y4036U株の親株であるUra+株)と比較した。具体的にはPex3のノックアウトは、対照と比較して総脂肪酸の百分率としてのDGLAを増大し、DGLA%DCWをほぼ3倍改善した。
コンストラクトpY157
プラスミドpY87(図12A)は、表16で後述するように、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ジアシルグリセロールアシル基転移酵素(DGAT2)遺伝子をノックアウトするためのカセットを含有した。
Figure 2010539985
プラスミドpY157はプラスミドpY87から誘導された。具体的にはヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex3遺伝子の704bpの5’プロモータ領域がpY87のSphI/PacI断片を置換し、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Pex3遺伝子の448bpの3’ターミネーター領域がpY87のBglII/AscI断片を置換して、pY157(配列番号82、図12B)を生成した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ノックアウトY4036(ΔPex3)株の作成
標準プロトコルを使用して、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4036U株(実施例1)をPex3ノックアウトコンストラクトpY157の精製された3648bpのAscI/SphI断片(前出)で形質転換した。
Pex3欠失を有する細胞についてスクリーンするために、Taqポリメラーゼ(Invitrogen(Carlsbad,CA))およびPCRプライマーUP768(配列番号85)およびLP769(配列番号86)を使用してコロニーPCRを実施した。このプライマーのセットは未変性Pex3遺伝子の2039bpの野性型バンドを増幅するよう、およびPex3遺伝子が標的ノックアウトによって中断された場合は3719bpのノックアウト特異的バンドを増幅するようにデザインされた。
より具体的には、MasterAmp Taq kit(Epicentre Technologies(Madison,WI)、カタログ番号82250)および製造業者の使用説明書を使用して、以下を含んでなる25μlの反応液中でコロニーPCRを実施した。2.5μlの10×MasterAmp Taq緩衝液、2.0μlの25mM MgCl2、7.5μlの10×MasterAmp Enhancer、2.5μlの2.5mM dNTP(タカラバイオ株式会社(滋賀県大津市))、1.0μlの10μMアッパープライマー、1.0μlの10μMロウアープライマー、0.25μlのMasterAmp Taq DNAポリメラーゼ、および19.75μlの水。増幅は次のように実施した。95℃で5分間の最初の変性、次に95℃で30秒間の変性、56℃で60秒間のアニーリング、および72℃で4分間の延長を40サイクル。最終延長サイクルは72℃で10分間実施して、4℃での反応終結がそれに続いた。
スクリーンされた48個のコロニーの内46個は、野性型(すなわち非中断)Pex3遺伝子から予期される2039bpのバンドを有し、したがってΔpex3変異体ではなかった。残りの2つのコロニーは、2039bpの淡いバンドのみを示し、それらがバックグラウンド中にいくらかの汚染非形質転換細胞が存在するΔpex3変異体であることが示唆された。これは2つの推定上のノックアウトコロニーを選択プレート上に画線塗抹して、単一コロニーを単離することによって確認された。次に推定上の各ノックアウト株からの3個の単一コロニーからゲノムDNAを単離して、同一プライマーペア、すなわちUP 768およびLP 769(配列番号85および86)によってスクリーニングした。この方法はコロニーPCRより高感度であると見なされた。双方の一次形質転換体からの3つの単一コロニーは全て2039bpの野性型バンドを欠いており、代わりに3719bpのノックアウト特異的バンドを有した。Y4036U株バックグラウンド内の2つのΔpex3変異体をL134およびL135と称した。
DGLA産生に関するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4036株およびY4036(ΔPex3)株の評価
細胞中の総脂質画分中および総脂質含量のPUFA%に対するPex3ノックアウトの影響を評価するために、Y4036株およびY4036(Δpex3)株を比較できる油性条件下で生育させた。Y4036、L134(すなわちY4036(Δpex3))、およびL135(すなわちY4036(Δpex3))株を25mLのCSM−Ura中に接種して、振盪機内で30℃で一晩生育させた。前培養を0.4の最終OD600で、新鮮な25mLのCSM−Uraフラスコ内へ等分した。培養を振盪機内で30℃で生育させた。48時間後、細胞(ほとんど生育しなかった)を遠沈して新鮮な25mLのCSM−Uraに再懸濁し、生育を72時間継続させた。細胞を遠沈して25mLのHGMに再懸濁し、上記のように生育を72時間継続させた。細胞を遠心分離により収集して蒸留水で1回洗浄し、25mLの水に再懸濁して20.5mLの最終容積を得た。脂質含量のためにアリコート(1.5mL)を使用し、総脂質の抽出、塩基性エステル交換によるFAMEの調製、およびHewlett−Packard 6890 GCによる分析(一般方法)がそれに続いた。残りのアリコートを乾燥させ、実施例11に記載されているようにして乾燥細胞重量(DCW)を測定した。
各株の脂肪酸組成(すなわち16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、EDA、およびDGLA)(総脂肪酸(TFA)の重量%として表される)ならびに総脂質含量(TFA%DCW)を下の表17に示す。変換効率(「CE」)は、次式に従って測定される。
([生成物]/[基質+生成物])*100
式中、「生成物」は、即時生成物および経路中のそれから誘導される全生成物を含む。したがってΔ12デサチュラーゼ変換効率(Δ12%CE)は、次のように計算される。
([LA+EDA+DGLA]/[18:1+LA+EDA+DGLA])*100
Δ9エロンガーゼ変換効率(Δ9elo%CE)は、次のように計算される。
([EDA+DGLA]/[LA+EDA+DGLA])*100
Δ8デサチュラーゼ変換効率(Δ8%CE)は、次のように計算される。
([DGLA]/[EDA+DGLA])*100
Y4036、L134、およびL135株の平均脂肪酸組成が灰色で強調表示されて「Ave」で示される一方、「S.D.」は標準偏差を示す。予期されたようにΔpex3株は、オレイン酸を唯一の炭素源とするプレート上では生育しなかった。
Figure 2010539985
表17の結果は、Y4036(Δpex3)中の染色体Pex3遺伝子のノックアウトが、天然Pex3pがノックアウトされていないY4036株中のDGLA%TFAと比較して、DGLA%TFAをおよそ142%増大させることを示した。具体的にはPex3ノックアウトはDGLAレベルをY4036中の約19%から、Y4036(Δpex3)株、L134株およびL135株中の46%に増大させた。さらにΔ9エロンガーゼ%変換効率は、Y4036株中の約48%からY4036(Δpex3)株、L134株およびL135株中では83%に増大し、TFA%DCWは4.7%からL134株およびL135株中では6%に増大した。LA%TFAは30%から12%に減少した。Pex3欠失は脂肪酸の流入を実際増大させ、したがってΔ9延長のための基質利用性を増大させた。
したがって表17の結果は、Y4036親株と比較して、Y4036(ΔPex3)株が、平均してより高い脂質含量(TFA%DCW)(約6.0%対4.7%)、より高いDGLA%TFA(46%対19%)、およびより高いDGLA%DCW(約2.8%対0.9%)を有したことを示す。さらにY4036(ΔPex3)株は、総PUFAに対するDGLAの量に2倍の増大(67.7%のPUFA[%TFAとして]対33.3%のPUFA[%TFAとして])を有し、総PUFAに対するC20 PUFA量に1.7倍の増大(82%のPUFA[%TFAとして]対47%のPUFA[%TFAとして])を有した。
改善されたDGLA生産性は、EPA産生について改変されたヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株(例えば実施例10に記載されているようなY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y4305U株、およびその誘導体)中において、改善されたEPA生産性をもまたもたらすという仮説が立てられる。

Claims (15)

  1. 総脂質含量、総脂質画分、および油画分を有する油性真核生物における総脂肪酸質量%に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の質量%を増大させる方法であって、
    a)1)機能性多価不飽和脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子;および
    2)ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子の破壊;
    を含む油性真核生物を備え、それによりPEX破壊生物を備えること:および
    b)ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子が破壊されていない油性真核生物における総脂質画分中または油画分中の総脂肪酸の質量%に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の質量%を比較した場合、総脂質画分中または油画分中の総脂肪酸の質量%に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の質量%を増大させる条件下で、PEX破壊生物を生育させること
    を含む、上記方法。
  2. 油性真核生物の乾燥細胞質量に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸のパーセントを増大させる方法であって、
    a)1)機能性多価不飽和脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子;および
    2)ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子の破壊;
    を含む油性真核生物を備え、それによりPEX破壊生物を備えること:および
    b)ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子が破壊されていない油性真核生物における乾燥細胞質量に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸のパーセントと比較した場合、乾燥細胞質量に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸のパーセントを増大させる条件下で、PEX破壊生物を生育させること
    を含む、上記方法。
  3. ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子が破壊されていない油性真核生物における総脂質画分中または油画分中の総脂肪酸の質量%に対して多価不飽和脂肪酸の質量%を比較した場合、総脂肪酸の質量%に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸質量%の増大が少なくとも1.3である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸が、リノール酸、共役リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、ドコサヘキサエン酸、これらの水酸化またはエポキシ脂肪酸、C18多価不飽和脂肪酸、C20多価不飽和脂肪酸、およびC22多価不飽和脂肪酸からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
  5. 少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸が多価不飽和脂肪酸の組み合わせからなり、組み合わせの質量%が総脂肪酸の質量%に対して増大する、請求項1に記載の方法。
  6. 多価不飽和脂肪酸の組み合わせが、リノール酸、共役リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、ドコサヘキサエン酸、これらの水酸化またはエポキシ脂肪酸、C20多価不飽和脂肪酸の組み合わせ、C2022多価不飽和脂肪酸の組み合わせ、およびC22多価不飽和脂肪酸の組み合わせからなる群から選択される、2つまたはそれ以上の多価不飽和脂肪酸の任意の組み合わせからなる、請求項4に記載の方法。
  7. PEX破壊生物における総脂質含量が、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子が破壊されていない油性真核生物における総脂質含量と比較した場合、変化させられる、請求項1または2に記載の方法。
  8. PEX破壊生物が、油性性質を有するヤロウィア属、カンジダ属、ロドトルラ属、ロドスポリジウム属、クリプトコッカス属、トリコスポロン属、リポミセス属、クサレケカビ属、スラウストキトリウム属、シゾキトリウム属、およびサッカロミセス属からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
  9. 多価不飽和脂肪酸生合成経路が、Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ4デサチュラーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、C20/22エロンガーゼ、およびΔ9エロンガーゼからなる群から選択される酵素をコードする遺伝子を含む、請求項1または2に記載の方法。
  10. ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子の破壊が、タンパク質のC末端部分をコードする遺伝子の一部の欠失および遺伝子ノックアウトからなる群から選択される欠失を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
  11. ペルオキシソーム生合成因子タンパク質が、Pex1p、Pex2p、Pex3p、Pex3Bp、Pex4p、Pex5p、Pex5Bp、Pex5Cp、Pex5/20p、Pex6p、Pex7p、Pex8p、Pex10p、Pex12p、Pex13p、Pex14p、Pex15p、Pex16p、Pex17p、Pex14/17p、Pex18p、Pex19p、Pex20p、Pex21p、Pex21Bp、Pex22p、Pex22p様、およびPex26pからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
  12. ペルオキシソーム生合成因子は、破壊が遺伝子ノックアウト、またはタンパク質のC3HC4亜鉛リングフィンガーモチーフのC末端部分をコードする遺伝子の一部の欠失である、請求項11に記載の方法。
  13. 総脂肪酸の質量%に対して少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の質量%の増大を有し、増大が請求項1に記載の方法によって得られる、PEX破壊生物における油画分または総脂質画分。
  14. 請求項1に記載の方法によって、総脂肪酸の質量%に対して質量%が増大している、PEX破壊生物の少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の食品、飼料としての、または産業上の利用における使用。
  15. 破壊が、Pex3p、Pex10p、およびPex16pからなる群から選択される、ペルオキシソーム生合成因子タンパク質をコードする天然遺伝子中で起きる、PEX破壊ヤロウィア・リポリティカ。
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