JP2010524435A - 種間特異的二重特異性バインダー - Google Patents

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Abstract

本発明は、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3(イプシロン)鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメイン並びにヒト及び/又は非チンパンジー霊長類のEGFR、Her2/neu又はIgEに結合可能な第2結合ドメインを含むポリペプチド並びに上述のポリペプチドを産生する方法に関する。本発明は、前記ポリペプチドをコードする核酸、前記を含むベクター及び前記ベクターを含むホスト細胞にさらに関する。他の態様において、本発明は、上述のポリペプチドを含む医薬組成物及び前記ポリペプチドの医学的使用を提供する。

Description

本発明は、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3(イプシロン)のエピトープに結合可能な第1のヒト結合ドメイン並びにヒト及び/又は非チンパンジー霊長類のEGFR、Her2/neu又はIgEに結合可能な第2の結合ドメインを含むポリペプチド並びに上記のポリペプチドの製造方法に関する。本発明は、前記ポリペプチドをコードする核酸、前記ポリペプチドを含むベクター及び前記ベクターを含むホスト細胞にさらに関する。他の態様において、本発明は、前記ポリペプチドを含む医薬組成物及び前記ポリペプチドの医学的使用を提供する。
T細胞認識は、ペプチドMHC(pMHC)のペプチド負荷分子と相互作用する、クロノタイプ的に分布するアルファベータ及びガンマデルタT細胞レセプター(TcR)により媒介される(Davis & Bjorkman, Nature 334 (1988), 395−402)。TcRの抗原特異的鎖は、シグナリングドメインを持たず、その代わりに保存されたマルチサブユニットシグナル伝達装置CD3に結合する(Call, Cell 111 (2002), 967− 979, Alarcon, Immunol. Rev. 191 (2003), 38−46, Malissen Immunol. Rev. 191 (2003), 7−27)。TcRライゲーションがシグナル伝達装置に直接通じる機構は、T細胞生物学の根本的な疑問のままである(Alarcon,上記引用文献; Davis, Cell 110 (2002), 285−287))。持続したT細胞応答が、コレセプターの関与、TcRオリゴマー化及び免疫シナプス中のTcR−pMHC複合体の高次配列を含むことは明らかなようである(Davis & van der Merwe, Curr. Biol. 11 (2001), R289−R291, Davis, Nat. Immunol. 4 (2003), 217− 224)。しかし、非常に早いTcRシグナル伝達は、これらの事象の非存在下で起こり、CD3イプシロン中のリガンドが誘起するコンフォメーション変化を含むかもしれない(Alarcon,上記引用文献, Davis (2002),上記引用文献, Gil, J. Biol. Chem. 276 (2001), 11174−11179, Gil, Cell 109 (2002), 901 −912)。シグナル伝達複合体のイプシロン、ガンマ、デルタ及びゼータサブユニットは互いに会合して、CD3イプシロン−ガンマヘテロダイマー、CD3イプシロン−デルタヘテロダイマー及びCD3ゼータ−ゼータホモダイマーを形成する(Call, 上記引用文献)。様々な研究は、CD3分子がアルファベータTcRの正常な細胞表面発現及び通常のT細胞発達にとって重要であることを明らかにした(Berkhout, J. Biol. Chem. 263 (1988), 8528−8536, Wang, J. Exp. Med. 188 (1998), 1375−1380, Kappes, Curr. Opin. Immunol. 7 (1995), 441−447)。マウスCD3イプシロンガンマヘテロダイマーのエクトドメイン断片の溶液構造は、イプシロンガンマサブユニットが、両方とも、互いに相互作用して異常な側々ダイマーコンフィグレーションを形成するC2セットIgドメインであることを示した(Sun, Cell 105 (2001), 913− 923)。システインに富んだ軸は、CD3の二量体化を進めるのに重要な役割を果たすようであるが(Su,上記引用文献, Borroto, J. Biol. Chem. 273 (1998), 12807−12816)、CD3イプシロン及びCD3ガンマの細胞外ドメインによる相互作用は、これらのタンパク質とTcRベータとの集合に十分である(Manolios, Eur. J. Immunol. 24 (1994), 84−92, Manolios & Li, Immunol. Cell Biol. 73 (1995), 532−536)。未だ議論の的となっているが、TcRの優勢な化学量論は、1つのアルファベータTcR、1つのCD3イプシロンガンマヘテロダイマー、1つのCD3イプシロンデルタヘテロダイマー及び1つのCD3ゼータゼータホモダイマーを含むことが最も可能性がある(Call,上記引用文献)。免疫応答におけるヒトCD3イプシロンガンマヘテロダイマーの中心的な役割を仮定して、治療抗体OKT3に結合したこの複合体の結晶構造が最近解明された(Kjer−Nielsen, PNAS 101, (2004), 7675−7680)。
多くの治療戦略は、TcRシグナル伝達を標的にしてT細胞免疫性を調整し、特に免疫抑制領域で臨床的に広く利用されている抗ヒトCD3モノクローナル抗体(mAb)がある。CD3特異性マウスmAb OKT3は、ヒトへの使用に認可された最初のmAbであり(Sgro, Toxicology 105 (1995), 23−29)、移植(Chatenoud, Clin. Transplant 7 (1993), 422−430, Chatenoud, Nat. Rev. Immunol. 3 (2003), 123−132, Kumar, Transplant. Proc. 30 (1998), 1351−1352)、1型糖尿病(Chatenoud (2003),上記引用文献)及び乾癬(Utset, J. Rheumatol. 29 (2002), 1907−1913)における免疫抑制剤として臨床的に広く使用されている。さらに、抗CD3mAbは、部分的なT細胞シグナル伝達及びクローンアネルギーを誘起することがある(Smith, J. Exp. Med. 185 (1997), 1413−1422)。OKT3は、潜在的なT細胞マイトジェン(Van Wauve, J. Immunol. 124 (1980), 2708−18)並びに潜在的なT細胞キラー(Wong, Transplantation 50 (1990), 683−9)として、文献に記載されてきた。OKT3は、時間依存的にこれらの活性の両方を示す。サイトカイン放出につながるT細胞の早期活性化に続き、さらにOKT3を投与すると、公知のT細胞機能の全てを後に阻害する。同種移植組織拒絶の低減又はさらには全廃のために治療レジメンにおいて免疫抑制剤としてそのような広い用途をOKT3が見いだしたのは、この後期のT細胞機能の阻害による。
OKT3は、急性拒絶反応に主要な役割を果たす全てのT細胞の機能を阻害することにより、同種移植組織拒絶を一変させていることが最も確からしい。OKT3は、T細胞(TCR)の抗原認識構造に関連しシグナル伝達に必須のヒトT細胞の細胞膜中でCD3複合体と反応しその機能を阻害する。TCR/CD3のどのサブユニットがOKT3と結合するかは、多くの研究のテーマであった。TCR/CD3複合体のイプシロンサブユニットに対するOKT3の特異性を指摘したエビデンスもいくつかあった(Tunnacliffe, Int. Immunol. 1 (1989), 546−50; Kjer−Nielsen, PNAS 101, (2004), 7675−7680)。さらなるエビデンスは、TCR/CD3複合体とのOKT3の結合には、この複合体の他のサブユニットの存在が必要であることを示している(Salmeron, J. Immunol. 147 (1991), 3047−52)。
CD3分子に特異的である他の周知の抗体は、Tunnacliffe, Int. Immunol. 1 (1989), 546−50に列記されている。上述のとおり、そのようなCD3特異性抗体は、リンホカイン産生(Von Wussow, J. Immunol. 127 (1981), 1197; Palacious, J. Immunol. 128 (1982), 337)、増殖(Van Wauve, J. Immunol. 124 (1980), 2708−18)及びサプレッサーT細胞誘起(Kunicka, in “Lymphocyte Typing II” 1 (1986), 223)などの種々のT細胞応答を誘起することができる。すなわち、実験条件によって、CD3特異性モノクローナル抗体は、細胞障害性を阻害することも、誘起することもできる(Leewenberg, J. Immunol. 134 (1985), 3770; Phillips, J. Immunol. 136 (1986) 1579; Platsoucas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78 (1981), 4500; Itoh, Cell. Immunol. 108 (1987), 283−96; Mentzer, J. Immunol. 135 (1985), 34; Landegren, J. Exp. Med. 155 (1982), 1579; Choi (2001), Eur. J. Immunol. 31, 94−106; Xu (2000), Cell Immunol. 200, 16−26; Kimball (1995), Transpl. Immunol. 3, 212−221)。
当分野に記載されている多くのCD3抗体がCD3複合体のCD3イプシロンサブユニットを認識すると報告されているが、それらのほとんどは、実際は、立体配座エピトープに結合しており、そのためTCRのネイティブコンテクストにおけるCD3イプシロンを認識しているのみである。立体配座エピトープは、一次配列中では分かれているがネイティブタンパク質/抗原中にポリペプチドが折り畳まれる時分子の表面で一緒になる、2つ以上の別々のアミノ酸残基の存在により特徴づけられる(Sela, (1969) Science 166, 1365及びLaver, (1990) Cell 61 , 553−6)。当分野に記載されているCD3イプシロン抗体に結合される立体配座エピトープは、2つの群に分けることができる。主要な群では、前記エピトープは、2つのCD3サブユニット、例えばCD3イプシロン鎖及びCD3ガンマ鎖又はCD3デルタ鎖により形成されている。例えば、最も広く使用されているCD3イプシロンモノクローナル抗体OKT3、WT31、UCHT1、7D6及びLeu−4は、CD3イプシロン鎖により単独にトランスフェクトされた細胞には結合しなかったことが複数の研究で見出された。しかし、これらの抗体は、CD3イプシロンとCD3ガンマ又はCD3デルタの組み合わせにより二重にトランスフェクトされた細胞を染色した(Tunnacliffe,上記引用文献; Law, Int. Immunol. 14 (2002), 389−400; Salmeron, J. Immunol. 147 (1991), 3047−52; Coulie, Eur. J. Immunol. 21 (1991), 1703−9)。第2のより小さな群では、立体配座エピトープは、CD3イプシロンサブユニット自体の中に形成される。この群のメンバーは、例えば変性CD3イプシロンに対して産出されたmAb APA1/1である(Risueno, Blood 106 (2005), 601−8)。ひとまとめにすると、当分野に記載されているCD3イプシロン抗体のほとんどは、CD3の2つ以上のサブユニット上に位置する立体配座エピトープを認識する。これらのエピトープの三次元構造を形成する別々のアミノ酸残基は、この結果、CD3イプシロンサブユニット自体の上に位置するか、CD3イプシロンサブユニットとCD3ガンマ又はCD3デルタなどの他のCD3サブユニットの上に位置することがある。
CD3抗体に関する他の問題は、多くのCD3抗体が種特異的であると見いだされたことである。他のモノクローナル抗体では一般的に正しいとされているとおり、抗CD3モノクローナル抗体は、それらの標的分子の高度に特異的な認識により機能する。それらは、標的CD3分子上の単一の部位又はエピトープのみを認識する。例えば、最も広く使用されキャラクタリゼーションが詳細に行われているCD3複合体に特異的なモノクローナル抗体の1つはOKT3である。この抗体は、チンパンジーのCD3と反応するが、マカクザルなど他の霊長類のCD3ホモログ又はイヌCD3とは反応しない(Sandusky et al., J. Med. Primatol. 15 (1986), 441−451)。抗CD3モノクローナル抗体UCHT1もチンパンジーのCD3とは反応性であるが、マカクザルのCD3とは反応しない(発明者らのデータ)。その一方で、マカクザル抗原を認識するが、そのヒト対応物を認識しないモノクローナル抗体の例もある。この群の1例は、マカクザル由来のCD3を対象とするモノクローナル抗体FN−18である(Uda et al., J. Med. Primatol. 30 (2001), 141−147)。興味深いことに、カニクイザルの約12%の末梢リンパ球が、マカクザル中のCD3抗原の多形性により、抗アカゲザルCD3モノクローナル抗体(FN−18)との反応性を欠くことが見いだされている。Udaらは、FN−18と反応性である動物から誘導されたCD3と比較し、FN−18と反応性でないカニクイザルのCD3配列中にある2つのアミノ酸の置換を記載した(Uda et al., J Med Primatol. 32 (2003), 105−10; Uda et al., J Med Primatol. 33 (2004), 34−7)。
CD3モノクローナル抗体及びその断片に固有のこの識別能力、すなわち種特異性は、ヒトの疾患を治療するための治療薬としての開発には著しい妨げである。市場の認可を得るためには、どの新規薬剤候補も、厳しい試験を通過しなくてはならない。この試験は、前臨床相と臨床相に分けることができる。後者は、一般的に公知の臨床相I、II及びIIIとしてさらに分かれているが、ヒトの患者に実施され、前者は動物に実施される。前臨床試験の目的は、薬剤候補が望まれる活性を持ち、最も重要なことであるが安全であることを証明することである。動物での安全性及び薬剤候補の見込みのある効力が前臨床試験で確立された場合にのみ、その薬剤候補は、それぞれの規制当局によりヒトへの臨床試験を認可されるであろう。以下の3種の方法で、(i)関連種、すなわち薬剤候補がオルソログ抗原を認識できる種において、(ii)ヒトの抗原を含むトランスジェニック動物において、及び(iii)動物に存在するオルソログ抗原に結合できる薬剤候補のサロゲートの使用により、薬剤候補の動物での安全性を試験することができる。トランスジェニック動物の限界は、この技術が典型的には齧歯動物に限られることである。齧歯動物と人間の間には生理機能に著しい違いがあり、安全性の結果は容易にヒトに外挿できない。薬剤候補のサロゲートの限界は、実際の薬剤候補に比べて異なる組成物であり、多くの場合使用される動物は先に議論した限界を持つ齧歯動物である。したがって、齧歯動物で作られた前臨床データは、薬剤候補に関して限られた予測力しかない。安全性試験の選択の手法は、関連種、好ましくは下等霊長類の利用である。当分野に記載される人間の治療介入に好適なCD3結合分子の目下の限界は、関連種が高等霊長類、特にチンパンジーであることである。チンパンジーは絶滅危惧種と考えられており、ヒトに似た性質のためそのような動物を薬剤安全性試験に使用することは欧州では禁じられており、他の地域でも非常に制限されている。
本発明は、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε(イプシロン)鎖のエピトープに結合可能な、好ましくはヒトの、第1結合ドメイン並びにヒト及び/又は非チンパンジー霊長類のEGFR、Her2/neu又はIgEに結合可能な第2結合ドメインを含むポリペプチドに関するが、前記エピトープは配列番号2、4、6又は8からなる群に含まれるアミノ酸配列の一部である。配列番号2、4、6及び8に示される配列並びにその断片は、コンテクスト独立性CD3エピトープである。
本発明の利点は、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε(イプシロン)鎖に異種間特異性を示す、好ましくはヒトの結合ドメインを含むポリペプチドの提供であり、これは、霊長類におけるこれらの、好ましくはヒトの、結合ドメインの安全性、活性及び/又は薬物動態学的なプロファイルの前臨床評価のために、且つ理想的な形態ではヒトの薬剤として使用できる。同じ分子が、前臨床動物試験並びにヒトでの臨床試験にも使用できる。これにより、種に特異的なサロゲート分子に比べて、動物試験が高度に同等な結果を生みだし、予測力がはるかに増す。本発明において、当分野に記載されるCD3イプシロンの他の公知のエピトープ全てとは対照的に、CD3複合体のネイティブ環境から取り出された(そして、EpCAM又は免疫グロブリンFc部などの異種アミノ酸配列に融合した)時にその三次元構造完全性を維持する、CD3イプシロンの細胞外ドメインのN末端1−27アミノ酸残基ポリペプチド断片が、驚くべきことに確認された。
本発明に提供されるCD3エピトープのコンテクスト独立性は、CD3イプシロンの最初の27のN末端アミノ酸又はこの27アミノ酸ストレッチの機能断片に相当する。CD3エピトープに関連して本願で使用される「コンテクスト独立性」という句は、本願記載の本発明の結合分子/抗体分子の結合が、抗原決定基又はエピトープを取り巻く立体配座、配列又は構造の変化又は修飾につながらないことを意味する。対照的に、従来のCD3結合分子(例えば、国際公開第99/54440号又は国際公開第04/106380号に開示される)により認識されるCD3エピトープは、コンテクスト独立性エピトープのCD3イプシロン鎖C末端からN末端1−27アミノ酸に局在化するが、その場合、イプシロン鎖の残りの部分に埋め込まれ、イプシロン鎖とCD3ガンマ又はデルタ鎖とのヘテロダイマー化により正しい位置に保持されないと正しいコンフォメーションがとれない。
本願に提供されコンテクスト独立性CD3エピトープに対して発生した(対象とした)二重特異性結合分子の一部として、抗CD3結合分子は、T細胞再分布に関して驚くべき臨床上の改善及びさらに好ましい安全性プロファイルを与える。理論に拘束されないが、CD3エピトープはコンテクスト独立性であり、CD3複合体の残りの部分にあまり影響を与えずに自律的で完全なサブドメインを形成するので、本願に提供されるCD3結合分子は、コンテクスト依存性CD3エピトープを認識する従来のCD3結合分子(国際公開第99/54440号に提供されている様な分子)よりも、CD3コンフォメーションに誘起するアロステリック変化が少ない。
二重特異性結合分子の一部として本発明のCD3結合分子のCD3エピトープのコンテクスト独立性は、本発明のCD3結合分子による治療の開始段階におけるより低いT細胞再分布に関連し、コンテクスト依存性CD3エピトープを認識する、当分野に公知の従来のCD3結合分子と比べて、本発明のCD3結合分子の安全性プロファイルをより良好にする。特に、CD3結合分子による治療の開始段階におけるT細胞再分布は、CNS有害事象の主な危険因子であるため、コンテクスト依存性ではくコンテクスト独立性のCD3エピトープを認識することにより、本発明のCD3結合分子は、当分野に公知のCD3結合分子に勝り、著しい安全性の利点を有する。従来のCD3結合分子による治療の開始段階におけるT細胞再分布に関連したそのようなCNS有害事象を経験する患者は、通常混乱と失見当職になり、場合によっては尿失禁も患う。混乱は、患者が自身の通常の明晰さのレベルで考えられない、精神状態の変化である。患者は、通常集中が困難となり、思考が不鮮明で不明確であるだけでなく、しばしば著しく遅くなる。従来のCD3結合分子による治療の開始段階におけるT細胞再分布に関連したCNS有害事象を経験する患者は、記憶喪失も患うことがある。多くの場合、混乱により、人及び/又は場所を認識する能力又は時間及び日付が分かる能力が失われる。方角が分からない感覚は混乱には通常のものであり、意志決定能力が損なわれる。従来のCD3結合分子による治療の開始段階におけるT細胞再分布に関連したCNS有害事象は、不明瞭な発語及び/又は言葉を探すことの困難を含むこともある。この障害は、言語の表現及び理解並びに読みとり及び書きとりの両方を損なうことがある。尿失禁の他に、患者によっては、空間識失調及び目眩も、従来のCD3結合分子による治療の開始段階におけるT細胞の再分布に関連したCNS有害事象に加わることがある。
CD3イプシロンの言及された27アミノ酸N末端ポリペプチド断片内の三次元構造の維持は、インビトロでN末端CD3イプシロンポリペプチド断片に、インビボでT細胞上のネイティブ(CD3イプシロンサブユニット)CD3複合体に同じ結合親和性で結合する、好ましくはヒトの、結合ドメインの生成に使用できる。これらのデータは、本願に記載のN末端断片が、インビボで通常存在する構造に類似した三次コンフォメーションを形成していることを強く示している。CD3イプシロンのN末端ポリペプチド断片のアミノ酸1−27の構造完全性の重要性に関して非常に微妙な試験が実施された。CD3イプシロンのN末端ポリペプチド断片のアミノ酸1−27の個々のアミノ酸をアラニンに変えて(アラニンスキャニング)、微小な混乱に対するCD3イプシロンのN末端ポリペプチド断片のアミノ酸1−27の感受性を試験した。本発明の二重特異性結合分子の一部としてのCD3特異性抗体分子を使用して、CD3イプシロンのN末端ポリペプチド断片のアミノ酸1−27のアラニン変異体への結合を試験した(添付される実施例5参照)。断片の正にN末端での最初の5つのアミノ酸残基及びCD3イプシロンのN末端ポリペプチド断片のアミノ酸1−27の位置23及び25の2つのアミノ酸の個々の変化が、抗体分子の結合に重要であった。残基Q(位置1でのグルタミン)、D(位置2でのアスパラギン酸)、G(位置3でのグリシン)、N(位置4でのアスパラギン)及びE(位置5でのグルタミン酸)を含む、位置1〜5の領域のアミノ酸残基をアラニンに置換すると、前記断片に対する、本発明の、好ましくはヒトの、結合分子の結合が無くなった。その一方で、本発明の、好ましくはヒトの、結合分子の少なくともいくつかでは、言及された断片T(位置23でのスレオニン)及びI(位置25でのイソロイシン)のC末端での2つのアミノ酸残基、は、本発明の、好ましくはヒトの、結合分子への結合エネルギーを低下させた。
予期せぬことに、このように単離された、好ましくはヒトの、結合分子が、CD3イプシロンのヒトのN末端断片だけでなく、新世界猿(マーモセット、カリスリクス・ジャカス(Callithrix jacchus);サグイヌス・オイディプス(Saguinus oedipus);サイミリ・シウレウス(Saimiri sciureus))及び旧世界猿(カニクイザルとしても知られるマカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis);又はアカゲザルとしても知られるマカカ・ムラッタ(Macaca mulatta))を含む種々の霊長類のCD3イプシロンの対応する相同断片も認識することが見いだされた。したがって、本発明のCD3結合分子の多霊長類特異性が検出された。以下の配列分析は、CD3イプシロンの細胞外ドメインのN末端で高度に相同性のある配列ストレッチを、ヒト及び霊長類が共有することを確認した。
CD3イプシロンに特異的な、好ましくはヒトの結合分子であって、同一分子を前臨床動物試験に、臨床試験にも、さらにヒトの治療にも使用できる結合分子を発生させることが可能であることが本発明において見いだされた。これは、ヒトCD3イプシロンへの結合に加え(おそらくはチンパンジー対応物との遺伝的類似性により)新世界猿及び旧世界猿を含む、非チンパンジー霊長類の前記抗原のホモログにも結合する、好ましくはヒトの結合分子の予期せぬ確認による。以下の実施例に示されるとおり、前記CD3イプシロン特異的な、好ましくはヒトの、結合分子は、ガン又は免疫疾患を含むが、これらに限定されない種々の疾患に対する治療薬を生成するため、二重特異性単鎖抗体に一体化できる。したがって、サロゲートCD3イプシロン結合ドメイン又は系統発生的に(ヒトから)遠い種での試験のためにそれを含む二重特異性単鎖抗体を構築する必要は消える。結果として、臨床試験でヒトに投与されるよう意図されるのと正に同じ分子を動物の前臨床試験に使用でき、それに続く市場の認可及び治療薬投与にも使用できる。後のヒトへの投与と同じ分子を前臨床動物試験に使用する能力があるので、前臨床動物試験で得られるデータのヒトの場合への適応性が限定される危険が、事実上消え、又は少なくとも大幅に低減する。手短に言うと、ヒトに実際に投与されるであろう分子と同じ分子を動物に使用して前臨床安全性データを得ることは、ヒトの関連するシナリオへのデータの適応性を確実にするために多くをなす。対照的に、サロゲート分子を使用する従来の手法では、前記サロゲート分子は前臨床安全性評価に使用される動物試験システムに分子的に適応させる必要がある。したがって、実際にヒトの治療に使用されるべき分子は、薬物動態パラメータ及び/又は生物的活性の前臨床試験に使用されるサロゲート分子とはその配列が異なり、おそらくは構造も異なり、前臨床動物試験で得られるデータのヒトの場合への適応性/転移性が限定される結果となる。サロゲート分子の使用は、完全に新しいコンストラクトの構築、製造、精製及びキャラクタリゼーションを必要とする。それにより、その分子を得るために追加の開発コスト及び時間がかかる。要するに、ヒトの治療に使用されるべき実際の薬剤に加えサロゲートは別に開発される必要があり、そのため2つの分子の2つの開発ラインが実施されなくてはならない。したがって、本願に記載される異種間特異性を示すヒト結合分子又は抗体系コンストラクトの主な利点は、同一の分子が、ヒトの治療薬のために、及び前臨床動物試験に使用できることである。
本発明のポリペプチドでは、ヒト及び非チンパンジー霊長類のCD3イプシロン鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメインはヒト起源であることが好ましい。
さらに、本発明のヒト結合分子のヒト起源のため、前記結合分子に対する免疫反応の発生は、ヒトの患者への結合分子の投与時に、最大限可能な程度除外される。
本発明の二重特異性結合分子の一部として、好ましくはヒトの、CD3イプシロン特異性ヒト結合分子の他の主な利点は、種々の霊長類での前臨床試験のためのその適応性である。動物中の薬剤候補の挙動は、理想的には、ヒトへの投与時に予期されるこの薬剤候補の挙動を示さなければならない。その結果、したがって、そのような前臨床試験から得たデータは、一般的にヒトの場合への高度な予測力を当然持つ。しかし、最近のTGN1412(CD28モノクローナル抗体)の第I相臨床試験の悲劇的な結果から分かるように、霊長類の種の中では、ヒトの中と薬剤候補の挙動が異なる。前記抗体の前臨床試験において、カニクイザルで実施された動物試験では有害事象が無いか、限定された有害事象のみが観察されたが、前記抗体の投与時に6人のヒトの患者が多臓器不全を起こした(Lancet 368 (2006), 2206−7)。これらの望ましくない有害な事象の結果は、前臨床試験を1つの(霊長類)種のみに限定することが十分でないことを示す。本発明のCD3イプシロン特異性ヒト結合分子が、一連の新世界猿及び旧世界猿と結合するという事実は、上記の事例で直面する問題を克服する助けになることもある。したがって、本発明は、ヒトの治療用の薬剤が開発及び試験されている時に、事象における種の差異を最低限にする手段及び方法を提供する。
本発明の二重特異性結合分子の一部としての、好ましくはヒトの、異種間特異性CD3イプシロン結合ドメインにより、トランスジェニック動物の作製など、ヒトへの投与用の薬剤候補に試験動物を適応させることももはや必要でない。本発明の使用及び方法により異種間特異性を示す、CD3イプシロン特異的な、好ましくはヒトの、結合分子(又はそれを含む二重特異性単鎖抗体)は、動物の遺伝子操作を全くせずに、非チンパンジー霊長類での前臨床試験に直接使用できる。当業者に周知のように、試験動物が薬剤候補に適応させられる手法では、動物が修飾されているので、前臨床安全性試験で得られる結果の典型性が低く、ヒトのための予測性が低いという危険性を常に帯びている。例えば、トランスジェニック動物では、導入遺伝子によりコードされるタンパク質が高度に過剰発現されることが多い。したがって、このタンパク質抗原に対する抗体の生物的活性に関して得られたデータは、タンパク質の発現がはるかに低くより生理学的なレベルであるヒトに対する予測値において限定されることがある。
異種間特異性を示すCD3イプシロン特異的な、好ましくはヒトの、結合分子(又はそれを含む二重特異性単鎖抗体)を使用するさらなる利点は、絶滅危惧種としてのチンパンジーが動物試験で回避される事実である。チンパンジーは、ヒトに最も近い近縁動物であり、ゲノムシーケンシングデータに基づき最近ヒト科に分類された(Wildman et al., PNAS 100 (2003), 7181)。したがって、チンパンジーで得られたデータは、一般的にヒトにとって高度に予測的であると考えられる。しかし、絶滅危惧種としての状況により、医学実験に使用できるチンパンジーの数は高度に制限されている。上述のとおり、したがって、動物試験のためのチンパンジーの維持は、コストがかかり、且つ倫理的にも問題である。本発明のCD3イプシロン特異的な、好ましくはヒトの、結合分子(又はそれを含む二重特異性単鎖抗体)を使用すると、得られる動物試験データの質、すなわち適応性を損なわずに、前臨床試験の間の倫理的な支障及び資金面での負担を避けられる。これに照らして、CD3イプシロン特異的な、好ましくはヒトの、結合分子(又はそれを含む二重特異性単鎖抗体)の使用は、チンパンジーでの研究の妥当な代替物を与える。
本発明のCD3イプシロン特異的な、好ましくはヒトの、結合分子(又はそれを含む二重特異性単鎖抗体)のさらなる利点は、動物前臨床試験の一部として使用している場合、例えば、薬物動態学動物試験の途中で、複数の血液サンプルを抽出する能力である。複数採血は、ネズミなどの下等動物よりも、非チンパンジー霊長類ではるかに容易に得られる。複数の血液サンプルを抽出すると、本発明の、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)により誘起される生物的効果を測定するための血液パラメータを連続試験できる。さらに、複数の血液サンプルの抽出により、本願に定義される、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)の薬物動態学的プロファイルを研究者が評価できるようになる。さらに、血液パラメータに反映されている、前記の、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)により誘起されるかもしれない潜在的な副作用が、前記抗体の投与の間に抽出された異なる血液サンプルで測定できる。これにより、本願に定義される、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)の潜在的な毒性プロファイルを測定できる。
本願に定義される、異種間特異性を示す、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)の利点は、以下のとおり簡単に要約できる。
第1に、前臨床試験に使用される、本願に定義される、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)は、ヒトの治療に使用される物と同じである。したがって、薬物動態学的な性質及び生物的活性が異なることがある、2つの独立した分子を開発する必要はもはやない。これは、例えば薬物動態学的結果が、例えば議論の的となるサロゲート手法よりも、より直接的にヒトの状況に転移可能で適用可能である点で、非常に有利である。
第2に、ヒトの治療薬を製造するために、本願に定義される、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)を使用すると、サロゲート手法よりもコスト集約性及び労働集約性が低い。
第3に、本願に定義される、好ましくはヒトの、結合分子(又は二重特異性単鎖抗体)は、1つの霊長類種だけでなく、一連の異なる霊長類種での前臨床試験に使用でき、そのため、霊長類とヒトの間の潜在的な種の差異の危険性を限定できる。
第4に、動物試験のための、絶滅危惧種としてのチンパンジーが避けられる。
第5に、複数の血液サンプルを、広範な薬物動態研究のために抽出できる。
第6に、本発明の好ましい実施形態による、好ましくはヒトの、結合分子のヒト起源のため、ヒトの患者に投与した場合、前記結合分子に対する免疫反応の発生が最低限になる。マウス起源の治療分子に対するヒト−抗ヒト抗体(HAMA)の発生につながる、ヒトでない種、例えばマウスから誘導された薬剤候補に特異的な抗体との免疫応答の誘起が排除される。
「タンパク質」という用語は当分野に周知であり、生物学的化合物を記述する。タンパク質は、1つ以上のアミノ酸鎖(ポリペプチド)を含み、それによりアミノ酸がペプチド結合により互いに結合する。本願での「ポリペプチド」という用語は、30を超えるアミノ酸からなる、1群の分子を説明する。本発明によると、ポリペプチドの1群は、タンパク質が単一のポリペプチドからなる限り、「タンパク質」を構成する。定義と調和して、「ポリペプチド」という用語は、断片が30を超えるアミノ酸からなる限り、タンパク質の断片を記述する。ポリペプチドは、ダイマー、トリマーなどのマルチマー及び高次のオリゴマー、すなわち2以上のポリペプチド分子からなるものをさらに形成することもある。そのようなダイマー、トリマーなどを形成するポリペプチド分子は、同一でも、異なっていてもよい。したがって、そのようなマルチマーの対応する高次の構造は、ホモ又はヘテロダイマー、ホモ又はヘテロトリマーなどと呼ばれる。ヘテロマルチマーの一例は抗体分子であり、その天然の形態で、2つの同一のポリペプチド軽鎖及び2つの同一のポリペプチド重鎖からなる。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などの翻訳後修飾により修飾が実施される、天然修飾ポリペプチド/タンパク質も意味する。そのような修飾は当分野に周知である。
本願では、「ヒト」及び「人間」はホモ・サピエンス(Homo sapiens)を意味する。本願に記載されるコンストラクトの医学的使用に関する限り、ヒトの患者が同じ分子で治療される。
本発明の分子の文脈で使用される「ヒト起源」という用語は、ヒトライブラリーから誘導可能か、又はヒト等価物に相当する構造/配列を有する分子を記述する。したがって、アナログヒト配列に対応するアミノ酸配列を有するタンパク質、例えばヒト生殖細胞配列に対応するフレームワーク中にアミノ酸配列を有する抗体断片は、ヒト起源の分子と理解される。
本願では、「非チンパンジー霊長類」又は「非チンプ霊長類」又はその文法的変形は、チンパンジー以外の任意の霊長類、すなわちチンパンジー属(Pan)に属し、アンスロポピテクス・トログロディテス(Anthropopithecus troglodytes)又はシミア・サティルス(Simia satyrus)としてもまた知られる、ボノボ(Pan paniscus)種及びナミチンパンジー(Pan troglodytes)種を含む動物以外である。「霊長類(primate)」、「霊長類種」、「霊長類(primates)」又はその文法的変形は、原猿(prosimians)及び類人猿(anthropoids)の2つの亜目に分けられ、人間、類人猿(apes)、猿(monkeys)及びキツネザル(lemurs)を含む真獣類の目を意味する。具体的には、本願の「霊長類」は、曲鼻猿亜目(Strepsirrhini)(非メガネザル(non−tarsier)原猿)を含み、前記亜目は、キツネザル下目(Lemuriformes)(それ自体、コビトキツネザル上科(Cheirogaleoidea)及びキツネザル上科(Lemuroidea)を含む)、アイアイ下目(Chiromyiformes)(それ自体、アイアイ科(Daubentoniidae)を含む)及びロリス下目(Lorisiformes)(それ自体、ロリス科(Lorisidae)及びガラゴ科(Galagidae)を含む)を含む。本願の「霊長類」は、直鼻猿亜目(Haplorrhini)もまた含み、前記亜目は、メガネザル下目(Tarsiiformes)(それ自体、メガネザル科(Tarsiidae)を含む)、真猿下目(Simiiformes)(それ自体、広鼻小目(Platyrrhini)又は新世界猿、及びオナガザル科(Cercopithecidea)を含む狭鼻小目(Catarrhini)又は旧世界猿を含む)を含む。
非チンパンジー霊長類種は、本発明の意味の中で、キツネザル、メガネザル、テナガザル、マーモセット(マーモセット科(Cebidae)の新世界猿に属する)又は旧世界猿(オナガザル上科(Cercopithecoidea)に属する)であると理解されうる。
本願では「旧世界猿」は、オナガザル上科(Cercopithecoidea)に分類されるあらゆる猿を含み、それ自体、主にアフリカ系であるがアジア及び北アフリカである種々のマカク属を含むオナガザル亜科(Cercopithecinae);及びアジア属のほとんど及びアフリカコロブスザルも含むコロブス亜科(Colobinae)に再分される。
具体的には、オナガザル亜科の中で、有利な非チンパンジー霊長類は、オナガザル族(Cercopithecini)由来でよく、アレンモンキー属(Allenopithecus)内(アレン沼地ザル、アレノピテクス・ニグロビリディス(Allenopithecus nigroviridis));コビトグエノン属(Miopithecus)内(コビトグエノン、ミオピテクス・タラポイン(Miopithecus talapoin);ガボン・タラポアン、ミオピテクス・オゴウエンシス(Miopithecus ogouensis));パタスモンキー属(Erythrocebus)内(パタスモンキー、エリスロセブス・パタス(Erythrocebus patas));クロロセブス属(Chlorocebus)内(ミドリザル、クロロセブス・サバセウス(Chlorocebus sabaceus));グリベットモンキー、クロロセブス・アエチオプス(Chlorocebus aethiops);ベールマウンテン・ベルベットモンキー、クロロセブス・ドジャムドジャメンシス(Chlorocebus djamdjamensis);タンタルスモンキー、クロロセブス・タンタルス(Chlorocebus tantalus);ベルベットモンキー、クロロセブス・ピゲリスラス(Chlorocebus pygerythrus);マルブルック、クロロセブス・シノスロス(Chlorocebus cynosuros));又はオナガザル属(Cercopithecus)内(ドリアスグエノン又はサロンゴモンキー、セルコピテクス・ドリアス(Cercopithecus dryas);ダイアナモンキー、セルコピテクス・ダイアナ(Cercopithecus diana);ロロウェイモンキー、セルコピテクス・ロロウェイ(Cercopithecus roloway);オオハナジログエノン、セルコピテクス・ニクチタンス(Cercopithecus nictitans);ブルーモンキー、セルコピテクス・ミティス(Cercopithecus mitis);シルバーモンキー、セルコピテクス・ドゲッティ(Cercopithecus doggetti);ゴールデンモンキー、セルコピテクス・カンジチ(Cercopithecus kandti);サイクスモンキー、セルコピテクス・アルボグラリス(Cercopithecus albogularis);モナモンキー、セルコピテクス・モナ(Cercopithecus mona);キャンベル・モナモンキー、セルコピテクス・キャンベリ(Cercopithecus campbelli);ロウ・モナモンキー、セルコピテクス・ロウイ(Cercopithecus lowei);クラウングエノン、セルコピテクス・ポゴニアス(Cercopithecus pogonias);ウォルフグエノン、セルコピテクス・ウォルフィ(Cercopithecus wolfi);デント・モナモンキー、セルコピテクス・デンティ(Cercopithecus denti);ショウハナジログエノン、セルコピテクス・ペタウリスタ(Cercopithecus petaurista);アカハラグエノン、セルコペテクス・エリスロガスター(Cercopithecus erythrogaster);スクラターグエノン、セルコピテクス・スクラテリ(Cercopithecus sclateri);アカミミグエノン、セルコピテクス・エリスロティス(Cercopithecus erythrotis);クチヒゲグエノン、セルコピテクス・セファス(Cercopithecus cephus);アカオザル、セルコピテクス・アスカニウス(Cercopithecus ascanius);ロエストグエノン、セルコピテクス・ロエスティ(Cercopithecus lhoesti);プロイッスモンキー、セルコピテクス・プロイッシ(Cercopithecus preussi);サンテイルド・モンキー、セルコピテクス・ソラタス(Cercopithecus solatus);ハムリンズモンキー(Hamlyn’s monkey)又はフクロウグエノン、セルコピテクス・ハムリニ(Cercopithecus hamlyni);ブラッザモンキー、セルコピテクス・ネグレクタス(Cercopithecus neglectus))である。
或いは、やはりオナガザル亜科内であるが、ヒヒ族(Papionini)内の有利な非チンパンジー霊長類は、マカク属(Macaca)内(バーバリマカク、マカカ・シルバヌス(Macaca sylvanus);シシオザル、マカカ・シレヌス(Macaca silenus);ブタオザル又はベルク(Beruk)、マカカ・ネメストリナ(Macaca nemestrina);キタブタオザル、マカカ・レオニア(Macaca leonina);パガイモンキー又はボッコイ(Bokkoi)、マカカ・パゲンシス(Macaca pagensis);シブルー島マカク(Siberut Macaque)、マカカ・シベル(Macaca siberu);ムーアモンキー、マカカ・マウラ(Macaca maura);ウスイロマカク、マカカ・オケレアタ(Macaca ochreata);トンケアンマカク、マカカ・トンケアナ(Macaca tonkeana);ヘックモンキー、マカカ・ヘッキ(Macaca hecki);ゴロンタロモンキー、マカカ・ニグリシェンス(Macaca nigriscens);スラウェシトサカマカク又はクロザル、マカカ・ニグラ(Macaca nigra);シノモルガスサル又はカニクイザル又はオナガザル又はクラ、マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis);ベニガオザル又はクマザル、マカカ・アークトイデス(Macaca arctoides);アカゲザル、マカク・ムラッタ(Macaca mulatta);タイワンザル、マカカ・キュクロピス(Macaca cyclopis);ニホンザル、マカカ・フスカタ(Macaca fuscata);トクモンキー、マカカ・シニカ(Macaca sinica);ボンネットモンキー、マカカ・ラディアタ(Macaca radiata);バーバリーマカク、マカカ・シルバヌス(Macaca sylvanmus);アッサムモンキー、マカカ・アサメンシス(Macaca assamensis);チベットマカク又はミルンエドワーズマカク(Milne−Edwards’ Macaque)、マカカ・チベタナ(Macaca thibetana);アルナチャルモンキー又はムンザラ、マカカ・ムンザラ(Macaca munzala));ロフォセブス属(Lophocebus)内(ホホジロマンガベイ、ロフォセブス・アルビゲナ(Lophocebus albigena);ロフォセブス・アルビゲナ・アルビゲナ(Lophocebus albigena albigena);ロフォセブス・アルビゲナ・オスマニ(Lophocebus albigena osmani);ロフォセブス・アルビゲナ・ジョンストニ(Lophocebus albigena johnstoni);ブラックマンガベイ、ロフォセブス・アテリムス(Lophocebus aterrimus);オプデンボッシュ・マンガベイ(Opdenbosch’s Mangabey)、ロファセブス・オプデンボッシィ(Lophocebus opdenboschi);ハイランド・マンガベイ、ロファセブス・キプンジ(Lophocebus kipunji));ヒヒ属(Papio)内(マントヒヒ、パピオ・ハマドリアス(Papio hamadryas));ギニアヒヒ、パピオ・パピオ(Papio papio);アヌビスヒヒ、パピオ・アヌビス(Papio anubis);キイロヒヒ、パピオ・シノセファルス(Papio cynocephalus);チャクマヒヒ、パピオ・ウルシヌス(Papio ursinus));ゲラダヒヒ属(Theropithecus)内(ゲラダヒヒ、テロピテクス・ゲラダ(Theropithecus gelada));マンガベイ属(Cercocebus)内(スーティ・マンガベイ、セルコセブス・アティス(Cercocebus atys);セルコセブス・アティス・アティス(Cercocebus atys atys);セルコセブス・アティス・ルヌラトゥス(Cercocebus atys lunulatus);シロエリマンガベイ、セルコセブス・トルクアトゥス(Cercocebus torquatus);アジルマンガベイ、セルコセブス・アギリス(Cercocebus agilis);ゴールデンマンガベイ、セルコセブス・クリソガスター(Cercocebus chrysogaster);ボウシマンガベイ、セルコセブス・ガレリトゥス(Cercocebus galeritus);サンジェマンガベイ、セルコセブス・サンジェイ(Cercocebus sanjei));又はマンドリル属(Mandrillus)内(マンドリル、マンドリルス・スフィンクス(Mandrillus sphinx);ドリル、マンドリルス・ロイコファエウス(Mandrillus leucophaeus))由来でよい。
最も好ましいのは、マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis)(カニクイザルとしても知られ、したがって実施例では「カニクイザル」と称される)及びマカカ・ムラッタ(Macaca mulatta)(アカゲザル、「アカゲザル」と称される)である。
コロブス亜科内で、有利な非チンパンジー霊長類は、アフリカ系の群に由来してもよく、コロブス属(Colobus)内(クロコロブス、コロブス・サタナス(Colobus satanas);アンゴラコロブス、コロブス・アンゴレンシス(Colobus angolensis);キングコロブス、コロブス・ポリコモス(Colobus polykomos);クマコロブス、コロブス・ベレロサス(Colobus vellerosus);アビシニアコロブス、コロブス・ゲレザ(Colobus guereza));ピリオコロブス属(Piliocolobus)内(ウェスタン・アカコロブス、ピリオコロブス・バディウス(Piliocolobus badius);ピリオコロブス・バディウス・バディウス(Piliocolobus badius badius);ピリオコロブス・バディウス・テミンキー(Piliocolobus badius temminckii);ピリオコロブス・バディウス・ワルドロネ(Piliocolobus badius waldronae);ペナントアカコロブス、ピリオコロブス・ペナンティ(Piliocolobus pennantii);ピリオコロブス・ペナンティ・ペナンティ(Piliocolobus pennantii pennantii);ピリオコロブス・ペナンティ・エピエニ(Piliocolobus pennantii epieni);ピリオコロブス・ペナンティ・ボウビエリ(Piliocolobus pennantii bouvieri);プレウス・アカコロブス(Preuss’s Red Colobus)、ピリオコロブス・プレウシ(Piliocolobus preussi);トロン・アカコロブス、ピリオコロブス・トロニ(Piliocolobus tholloni);中央アフリカ・アカコロブス、ピリオコロブス・フォアイ(Piliocolobus foai);ピリオコロブス・フォアイ・フォアイ(Piliocolobus foai foai);ピリオコロブス・フォアイ・エリオッティ(Piliocolobus foai ellioti);ピリオコロブス・フォアイ・オウスタレティ(Piliocolobus foai oustaleti);ピリオコロブス・フォアイ・セムリキエンシス(Piliocolobus foai semlikiensis);ピリオコロブス・フォアイ・パルメンティエロルム(Piliocolobus foai parmentierorum);ウガンダ・アカコロブス、ピリオコロブス・テフロスケルス(Piliocolobus tephrosceles);ウジングワ・アカコロブス、ピリオコロブス・ゴロドノルム(Piliocolobus gordonorum);ザンジバル・アカコロブス、ピリオコロブス・キルキ(Piliocolobus kirkii);タナリバーアカコロブス、ピリオコロブス・ルフォミトラトゥス(Piliocolobus rufomitratus));又はプロコロブス属(Procolobus)内(オリーブコロブス、ポロコロブス・ベラス(Procolobus verus))でよい。
コロブス亜科内で、有利な非チンパンジー霊長類は、或いは、ラングール(Langur(leaf monkey))群由来でもよく、ラングール属(Semnopithecus)内(ネパール・グレイラングール、センノピテクス・スキスタケウス(Semnopithecus schistaceus);カシミール・グレイラングール、センノピテクス・アジャクス(Semnopithecus ajax);タライ・グレイラングール、センノピテクス・ヘクター(Semnopithecus hector);ハヌマンラングール、センノピテクス・エンテラス(Semnopithecus entellus);クロアシラングール(Black−Footed Gray Langur)、センノピテクス・ヒュポレウコス(Semnopithecus hypoleucos);南部平野グレイラングール(Southern Plains Gray Langur)、センノピテクス・デゥスミエリ(Semnopithecus dussumieri);タフテッド・グレイラングール(Tufted Gray Langur)、センノピテクス・プリアム(Semnopithecus priam));T.ベツルス(T. vetulus)群又はトラキピテクス属(Trachypithecus)内(カオムラサキラングール、トラキピテクス・ベツルス(Trachypithecus vetulus);ニルギリラングール、トラキピテクス・ジョーニ(Trachypithecus johnii));トラキピテクス属のT.クリスタトゥス(T.cristatus)群内(ジャワ・ルトン、トラキピテクス・アウラトゥス(Trachypithecus auratus);シルバーリーフモンキー又はシルバー・ルトン、トラキピテクス・クリスタトゥス(Trachypithecus cristatus);インドシナ・ルトン、トラキピテクス・ジャーマイニ(Trachypithecus germaini);テナセリム・ルトン、トラキピテクス・バーベイ(Trachypithecus barbei));トラキピテクス属のT.オブスキュルス(T.obscurus)群内(ダスキー・リーフモンキー又はスペクタクルリーフモンキー、トラキピテクス・オブスキュラス(Trachypithecus obscurus);ファイレ・リーフモンキー、トラキピテクス・ファイレイ(Trachypithecus phayrei));トラキピテクス属のT.ピレアトゥス(T.pileatus)群内(ボウシラングール、トラキピテクス・ピレアトゥス(Trachypithecus pileatus);ショートリッジ・ラングール、トラキピテクス・ショートリジェイ(Trachypithecus shortridgei);ゴールデンラングール、トラキピテクス・ギー(Trachypithecus geei));トラキピテクス属のT.フランコイシ(T.francoisi)群内(フランソワ・ルトン、トラキピテクス・フランコイシ(Trachypithecus francoisi);ハティン・ラングール、トラキピテクス・ハティンヘンシス(Trachypithecus hatinhensis);ハクトウラングール、トラキピテクス・ポリオセファラス(Trachypithecus poliocephalus);ラオス・ラングール、トラキピテクス・ラオタム(Trachypithecus laotum);コシジロラングール、トラキピテクス・デラコーリ(Trachypithecus delacouri);インドシナ・クロラングール、トラキピテクス・エベヌゥス(Trachypithecus ebenus));又はリーフモンキー属(Presbytis)内(クロカンムリリーフモンキー、プレスビティス・メラロフォス(Presbytis melalophos);シマコノハザル、プレスビティス・フェモラリス(Presbytis femoralis);サラワク・スリリ(Sarawak Surili)、プレスビティス・クリソメラス(Presbytis chrysomelas);シロモモ・スリリ(White−thighed Surili)、プレスビティス・シアメンシス(Presbytis siamensis);シロビタイ・スリリ(White−fronted Surili)、プレスビティス・フロンタタ(Presbytis frontata);ジャワ・スリリ(Javan Surili)、プレスビティス・コマタ(Presbytis comata);トーマスラングール、プレスビティス・トマシ(Presbytis thomasi);ホースラングール、プレスビティス・ホセイ(Presbytis hosei);クリイロ・リーフモンキー、プレスビティス・ルビクンダ(Presbytis rubicunda);オナガラングール又はジョジャ(Joja)、プレスビティス・ポテンチアニ(Presbytis potenziani);ナツナ島スリリ(Natuna Island Surili)、プレスビティス・ナツナエ(Presbytis natunae))でよい。
コロブス亜科内で、有利な非チンパンジー霊長類は、或いは、シシバナ(Odd−Nosed)群由来でもよく、ドゥクモンキー属(Pygathrix)内(アカアシドゥクモンキー、ピガスリクス・ネマエウス(Pygathrix nemaeus);クロアシドゥクモンキー、ピガスリクス・ニグリペス(Pygathrix nigripes);ハイイロアシドゥクモンキー、ピガスリクス・シネレア(Pygathrix cinerea));シシバナザル属(Rhinopithecus)内(キンシコウ、リノピテクス・ロクセラーナ(Rhinopithecus roxellana);クロキンシコウ、リノピテクス・ビエティ(Rhinopithecus bieti);ハイイロシシバナザル、リノピテクス・ブレリチ(Rhinopithecus brelichi);トンキンシシバナザル、リノピテクス・アバンキュラス(Rhinopithecus avunculus));テングザル属(Nasalis)内(テングザル、ナサリス・ラバトゥス(Nasalis larvatus));又はコバナテングザル属(Simias)内(メンタウェーコバナテングザル、シミアス・コンコラー(Simias concolor))でよい。
本願での用語「マーモセット」はマーモセット属(Callithrix)内の任意の新世界ザルを意味し、例えば、マーモセット亜属(原文のまま)の大西洋マーモセットに属するもの(コモンマーモセット、カリスリクス(カリスリクス)ジャカス(Callithrix(Callithrix)jacchus);クロミミマーモセット、カリスリクス(カリスリクス)ペニシラータ(Callithrix(Callithrix)penicillata);クールマーモセット、カリスリクス(カリスリクス)クーリ(Callithrix(Callithrix)kuhlii);ジョフロワマーモセット、カリスリクス(カリスリクス)ジョフロイ(Callithrix(Callithrix)geoffroyi);キクガシラコモンマーモセット、カリスリクス(カリスリクス)フラビセプス(Callithrix(Callithrix)flaviceps);ミミナガコモンマーモセット、カリスリクス(カリスリクス)アウリタ(Callithrix(Callithrix)aurita));ミコ亜属(Mico)のアマゾンマーモセットに属するもの(リオアカリマーモセット、カリスリクス(ミコ)アカリエンシス(Callithrix(Mico)acariensis);マニコアマーモセット(Manicore Marmoset)、カリスリクス(ミコ)マニコレンシス(Callithrix(Mico)manicorensis);シルバーマーモセット、カリスリクス(ミコ)アルゲンタタ(Callithrix(Mico)argentata);ホワイトマーモセット、カリスリクス(ミコ)ロイシペ(Callithrix(Mico)leucippe);エミリアマーモセット(Emilia’s Marmoset)、カリスリクス(ミコ)エミリアエ(Callithrix(Mico)emiliae);クロテマーモセット、カリスリクス(ミコ)ニグリセプス(Callithrix(Mico)nigriceps);マルカマーモセット(Marca’s Marmoset)、カリスリクス(ミコ)マルカイ(Callithrix(Mico)marcai);オグロマーモセット、カリスリクス(ミコ)メラヌラ(Callithrix(Mico)melanura);サンタレムマーモセット、カリスリクス(ミコ)フメラリフェラ(Callithrix(Mico)humeralifera);マウエスマーモセット(Maues Marmoset)、カリスリクス(ミコ)マウエシ(Callithrix(Mico)mauesi);キンシロフサミミマーモセット、カリスリクス(ミコ)クリソロイカ(Callithrix(Mico)chrysoleuca);フサミミマーモセット、カリスリクス(ミコ)インテルメディア(Callithrix(Mico)intermedia);サテアマーモセット(Satere Marmoset)、カリスリクス(ミコ)サテレイ(Callithrix(Mico)saterei);カリベラ亜属(Callibella)に属するルースマレン・ドワーフマーモセット(Roosmalens’ Dwarf Marmoset)、カリスリクス(カリベラ)ヒュミリス(Callithrix(Callibella)humilis);又はセブエラ亜属(Cebuella)に属するピグミーマーモセット、カリスリクス(セブエラ)ピグマエア(Callithrix(Cebuella)pygmaea)を意味する。
新世界ザルの他の属は、タマリン属(Saguinus)のタマリン(サグイヌス・オイディプス(S.oedipus)群、サグイヌス・ミダス(S.midas)群、サグイヌス・ニグロコリス(S.nigricollis)群、サグイヌス・ミスタックス(S.mystax)群、サグイヌス・ビコラー(S.bicolor)群及びサグイヌス・イヌスタス(S.inustus)群を含む)及びリスザル属(Saimiri)のリスザル(例えば、サイミリ・シウレウス(Saimiri sciureus)、サイミリ・オエルステディ(Saimiri oerstedii)、サイミリ・ウストゥス(Saimiri ustus)、サイミリ・ボルビエンシス(Saimiri boliviensis)、サイミリ・バンゾリニ(Saimiri vanzolini)を含む。
「結合ドメイン」という用語は、本発明に関連して、ある標的構造/抗原/エピトープに特異的に結合/相互作用する、ポリペプチドのドメインを特徴づける。したがって、結合ドメインは、「抗原−相互作用部位」である。「抗原−相互作用部位」という用語は、本発明によると、特定の抗原又は抗原の特定の基、例えば異なる種における同一の抗原と特異的に相互作用できる、ポリペプチドのモチーフを定義する。前記結合/相互作用は、「特異的認識」を定義するとも理解される。「特異的に認識する」という用語は、本発明によると、抗体分子が、抗原、例えば本願に定義されるヒトCD3抗原の、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つのアミノ酸と特異的に相互作用し、且つ/又はそれらと結合可能であることを意味する。そのような結合は、「鍵と鍵穴の原理」の特異性により例示することができる。したがって、結合ドメインのアミノ酸配列及び抗原における特異的なモチーフが、その一次、二次及び三次構造の結果として、並びに前記構造の二次修飾の結果として、互いを結合させる。抗原相互作用部位とその特異的な抗原との特異的な相互作用は、抗原に対する前記部位の単純な結合も起こすことがある。さらに、抗原相互作用部位とその特異的な抗原との特異的な相互作用は、或いは、抗原のコンフォメーションの変化の誘起、抗原のオリゴマー化などにより、シグナルの開始となることもある。本発明と調和する結合ドメインの好ましい例は抗体である。結合ドメインは、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、或いはモノクローナル又はポリクローナル抗体から誘導されていることがある。
「抗体」という用語は、その誘導体又は機能性断片であって、結合特異性を未だ保持するものを含む。抗体の製造の技術は、当分野に周知であり、例えば、Harlow and Lane “Antibodies, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988及びHarlow and Lane “Using Antibodies: A Laboratory Manual” Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999に記載されている。「抗体」という用語は、異なるクラス(すなわち、IgA、IgG、IgM、IgD及びIgE)及びサブクラス(IgG1、IgG2など)の免疫グロブリン(Ig)も含む。これらの抗体は、例えば、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質の免疫沈降法、アフィニティ精製及び免疫局在化並びに、例えば、組換え原核生物或いは真核細胞又は真核生物の培養においてそのようなポリペプチドの存在及び量をモニタリングするために使用できる。
「抗体」という用語の定義は、キメラ、単鎖及びヒト化抗体並びに抗体断片、とりわけFab断片などの実施形態も含む。抗体断片又は誘導体は、F(ab’)、Fv、scFv断片又は単一ドメイン抗体、単一可変ドメイン抗体又は他のV領域又はドメインとは独立に抗原又はエピトープと特異的に結合するVH又はVLのことがある、1つの可変ドメインのみを含む免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む。例えば、Harlow and Lane (1988) and (1999)の上記引用文献を参照されたい。そのような免疫グロブリン単一可変ドメインは、単離された抗体単一可変ドメインポリペプチドのみでなく、抗体単一可変ドメインポリペプチド配列の1つ以上のモノマーを含むより大きなポリペプチドも包含する。
そのような抗体及び/又は断片の製造には、種々の手順が当分野に公知であり使用することができる。例えば、(抗体)誘導体は、ペプチドミメティックスにより製造できる。さらに、単鎖抗体の製造のために記載された技術(中でも米国特許第4,946,778号を参照されたい)を適応して、選択されたポリペプチド(複数可)に特異的な単鎖抗体を製造できる。また、トランスジェニック動物を使用して、本発明のポリペプチド及び融合タンパク質に特異的なヒト化抗体を発現できる。モノクローナル抗体の調製には、連続継代性細胞株により産生される抗体を提供するどのような技術も利用できる。そのような技術の例には、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein Nature 256 (1975), 495−497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, Immunology Today 4 (1983), 72)及びヒトモノクローナル抗体を製造する(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985), 77−96)EBVハイブリドーマ技術がある。BIACoreシステムに使用されている表面プラズモン共鳴を利用して、CD3イプシロンなどの、標的ポリペプチドのエピトープに結合するファージ抗体の効率を高めることができる(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7 (1996), 97−105; Malmborg, J. Immunol. Methods 183 (1995), 7−13)。本発明の文脈において、「抗体」という用語が、本願中で以下に記載する通りホスト中に発現される抗体コンストラクト、例えば、とりわけウイルス又はプラスミドベクターを介してトランスフェクト及び/又は形質導入される抗体コンストラクトを含むことも想定される。
本発明により使用される「特異的な相互作用」という用語は、結合分子により結合されるものと類似の構造を持ち、対象とするポリペプチドと同じ細胞により発現されるポリペプチドと、結合(ドメイン)分子が、公差反応しないか、又は著しく公差反応しないことを意味する。調査している結合分子パネルの公差反応性を、例えば、従来の条件下で結合分子の前記パネルの結合を評価することにより試験できる(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988及びUsing Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999を参照されたい)。結合ドメインと特異的な抗原との特異的な相互作用の例は、リガンドとそのレセプターとの特異性を含む。そのような定義は、特にその特異的なレセプターとの結合時にシグナルを誘起するリガンドの相互作用を含む。前記定義により特に構成される、前記相互作用の例は、抗体の結合ドメイン(抗原結合部位)との抗原決定基(エピトープ)との相互作用である。
本願での「異種間特異性」又は「種間特異性」という用語は、本願に記載される結合ドメインの、ヒト及び非チンパンジー霊長類における同じ標的分子への結合を意味する。例えば、「異種間特異性」又は「種間特異性」は、異なる種に発現される同じ分子X以外の分子に対してではなく、同じ分子Xに対する種間反応性であると理解されたい。非チンパンジー霊長類CD3イプシロン、例えばマカクザルCD3イプシロンに対する、例えばヒトCD3イプシロンを認識するモノクローナル抗体の異種間特異性は、例えば、FACS分析により測定できる。FACS分析は、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロン抗原をそれぞれ発現するヒト及び非チンパンジー霊長類細胞、例えばマカクザル細胞に対する結合に関して、それぞれのモノクローナル抗体を試験する方法で実施される。適当なアッセイは、以下の実施例に示される。
本願では、CD3イプシロンは、T細胞レセプターの一部として発現された分子を意味し、従来技術で典型的にそれに属する意味を有する。ヒトでは、公知の全てのCD3サブユニット、例えば、CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD3アルファ及びCD3ベータの個別又は独立に組み合わされた形態を包含する。本願で言及される非チンパンジー霊長類CD3抗原は、例えば、マカカ・ファシキュラリスCD3及びマカカ・ムラッタCD3である。マカカ・ファシキュラリスでは、それはCD3イプシロンFN−18陰性及びCD3イプシロンFN−18陽性、CD3ガンマ及びCD3デルタを包含する。マカカ・ムラッタでは、それはCD3イプシロン、CD3ガンマ及びCD3デルタを包含する。好ましくは、本願で使用される前記CD3は、CD3イプシロンである。
ヒトCD3イプシロンは、GenBankアクセッション番号NM_000733に示されており、配列番号1を含む。ヒトCD3ガンマは、GenBankアクセッション番号NM_000073に示されている。ヒトCD3デルタは、GenBankアクセッション番号NM_000732に示されている。
マカカ・ファシキュラリスのCD3イプシロン「FN−18陰性」(すなわち、上述の多形性のためモノクローナル抗体FN−18に認識されないCD3イプシロン)は、GenBankアクセッション番号AB073994に示されている。
マカカ・ファシキュラリスのCD3イプシロン「FN−18陽性」(すなわち、モノクローナル抗体FN−18に認識されるCD3イプシロン)は、GenBankアクセッション番号AB073993に示されている。マカカ・ファシキュラリスのCD3ガンマは、GenBankアクセッション番号AB073992に示されている。マカカ・ファシキュラリスのCD3デルタは、GenBankアクセッション番号AB073991に示されている。
マカカ・ムラッタのそれぞれのCD3イプシロン、ガンマ及びデルタホモログの核酸配列及びアミノ酸配列は、当分野に記載されている組換え技術により同定及び単離できる(Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd edition 2001)。これは、本願に定義される他の非チンパンジー霊長類のCD3イプシロン、ガンマ及びデルタホモログにも、必要な変更を加えて当てはまる。カリスリクス・ジャカス、サイミリ・シウレウス及びサグイヌス・オイディプスのアミノ酸配列の同定は、添付する実施例に記載されている。カリスリクス・ジャカスのCD3イプシロンの細胞外ドメインのアミノ酸配列は配列番号3に示されており、サグイヌス・オイディプスの配列は配列番号5に、サイミリ・シウレウスの配列は配列番号7に示されている。
上記のことと調和して、「エピトープ」という用語は、上記で定義された結合分子により特異的に結合/同定される抗原決定基を意味する。結合ドメイン又は分子は、標的構造に特有な、立体配座エピトープ又は連続エピトープ、例えばヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロン鎖と特異的に結合/相互作用することができる。立体配座エピトープ又は不連続エピトープは、一次配列中では分かれているがポリペプチドがネイティブタンパク質/抗原中に折り畳まれる時分子の表面上で一緒になる2つ以上の別々なアミノ酸残基の存在により、ポリペプチド抗原のために特徴づけられる(Sela, (1969) Science 166, 1365及びLaver, (1990) Cell 61 , 553−6)。
エピトープに寄与する2つ以上の別々なアミノ酸残基は、1つ以上のポリペプチド鎖(複数可)の別々なセクションに存在する。これらの残基は、ポリペプチド鎖(複数可)が三次元構造中に折り畳まれる時分子の表面上で一緒になり、エピトープを構成する。対照的に、連続エピトープ又は直線エピトープは、ポリペプチド鎖の単一の直線セグメントに存在する2つ以上の別々のアミノ酸残基からなる。本発明の中では、「コンテクスト依存性」CD3エピトープは、前記エピトープのコンフォメーションを意味する。CD3のイプシロン鎖に局在化する、そのようなコンテクスト依存性エピトープは、イプシロン鎖の残りの部分に埋め込まれイプシロン鎖とCD3ガンマ又はデルタ鎖とのヘテロダイマー化により正しい位置に保持されないと、その正しいコンフォメーションがとれない。対照的に、本願に提供されるコンテクスト独立性CD3エピトープは、CD3イプシロンのN末端1−27アミノ酸残基ポリペプチド又はその機能性断片を意味する。このN末端1−27アミノ酸残基ポリペプチド又はその機能性断片は、CD3複合体中でそのネイティブ環境から出される時、その三次元構造完全性及び正しいコンフォメーションを維持する。CD3イプシロンの細胞外ドメインの一部である、N末端1−27アミノ酸残基ポリペプチド又はその機能性断片のコンテクスト独立性は、国際公開第2004/106380号におけるヒト結合分子の調製方法に関して記載されているCD3イプシロンのエピトープとは完全に異なるエピトープである。前記方法は、単独で発現したリコンビナントCD3イプシロンを使用した。この単独で発現したリコンビナントCD3イプシロンのコンフォメーションは、その天然形態で採り入れられたものとは異なり、すなわちTCR/CD3複合体のCD3イプシロンサブユニットが、TCR/CD3複合体のCD3デルタ又はCD3ガンマサブユニットとの非共有結合複合体の一部として存在する形態である。そのような単独で発現したリコンビナントCD3イプシロンタンパク質が、抗体ライブラリーから抗体を選択するための抗原として使用される場合、この抗原に特異的な抗体はライブラリーから同定されるが、そのようなライブラリーは自己抗原(self−antigens)/自己抗原(autoantigens)に対する特異性を持つ抗体を含まない。これは、単独に発現したリコンビナントCD3イプシロンタンパク質がインビボで存在しない事実による。それは自己抗原ではない。その結果、このタンパク質に特異的な抗体を発現するB細胞の亜集団は、インビボで枯渇していない。そのようなB細胞から構成される抗体ライブラリーならば、単独で発現したリコンビナントCD3イプシロンタンパク質に特異的な抗体の遺伝物質を含むであろう。
しかし、コンテクスト独立性N末端1−27アミノ酸残基ポリペプチド又はその機能性断片は、そのネイティブ形態で折り畳まれたエピトープであるので、本発明に調和する結合ドメインは、国際公開第04/106380号に記載されている手法に基づく方法では同定できない。したがって、国際公開第04/106380号に開示されている結合分子が、CD3イプシロン鎖のN末端1−27アミノ酸残基に結合できないことが試験で実証されうる。そのため、従来の抗CD3結合分子又は抗CD3抗体分子(例えば、国際公開第99/54440号に開示されたもの)は、本願に提供されるコンテクスト独立性N末端1−27アミノ酸残基ポリペプチド又はその機能性断片よりも、よりC末端に位置する位置でCD3イプシロン鎖と結合する。従来技術抗体分子OKT3及びUCHT−1は、アミノ酸残基35から85の間のTCR/CD3複合体のイプシロンサブユニットに特異性を有し、したがって、これらの抗体のエピトープもよりC末端側に位置する。更に、UCHT−1は、アミノ酸残基43から77の領域でCD3イプシロン鎖と結合する(Tunnacliffe, Int. Immunol. 1 (1989), 546−50; Kjer−Nielsen, PNAS 101, (2004), 7675− 7680; Salmeron, J. Immunol. 147 (1991), 3047−52)。したがって、従来技術の抗CD3分子は、本願に定義されるコンテクスト独立性N末端1−27アミノ酸残基エピトープ(又はその機能性断片)と結合せず、それに対して作られていない。
本発明のポリペプチド中に、例えば本願に定義された二重特異性単鎖抗体中に含まれる、好ましくはヒトの、結合ドメインを生成するために、例えば、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロン(例えば、マカクザルCD3イプシロン)の両方に結合するモノクローナル抗体が使用できる。
本発明のポリペプチドの好ましい実施形態において、非チンパンジー霊長類は旧世界猿である。ポリペプチドのより好ましい実施形態において、旧世界猿は、ヒヒ属、マカク属のサルである。最も好ましくは、マカク属のサルは、アッサムモンキー(マカカ・アサメンシス、Macaca assamensis)、バーバリーマカク(マカカ・シルバヌス、Macaca sylvanus)、ボンネットモンキー(マカカ・ラディアタ、Macaca radiata)、ウスイロマカク又はスラウェシマカク(マカカ・オケレアタ、Macaca ochreata)、クロザル(マカカ・ニグラ、Macaca nigra)、タイワンザル(マカカ・キュクロピス、Macaca cyclopsis)、スノーモンキー又はニホンザル(マカカ・フスカタ、Macaca fuscata)、シノモルガスサル又はカニクイザル又はオナガザル又はクラ(マカカ・ファシキュラリス、Macaca fascicularis)、シシオザル(マカカ・シレヌス、Macaca silenus)、ブタオザル(マカカ・ネメストリナ、Macaca nemestrina)、アカゲザル(マカク・ムラッタ、Macaca mulatta)、チベットマカク(マカカ・チベタナ、Macaca thibetana)、トンケアンモンキー(マカカ・トンケアナ、Macaca tonkeana)、トクモンキー(マカカ・シニカ、Macaca sinica)、ベニガオザル(Stump−tailed macaque)、ベニガオザル(Red−faced macaque)又はクマザル(マカカ・アークトイデス、Macaca arctoides)又はムーアモンキー(マカカ・マウラ、Macaca maurus)である。最も好ましくは、ヒヒ属のサルは、マントヒヒ(パピオ・ハマドリアス、Papio hamadryas);ギニアヒヒ(パピオ・パピオ、Papio papio);アヌビスヒヒ(パピオ・アヌビス、Papio anubis);キイロヒヒ(パピオ・シノセファルス、Papio cynocephalus);チャクマヒヒ(パピオ・ウルシヌス、Papio ursinus)である。
本発明のポリペプチドの別の好ましい実施形態において、非チンパンジー霊長類は新世界猿である。ポリペプチドのより好ましい実施形態において、新世界猿は、マーモセット属(マーモセット)、タマリン属又はリスザル属のサルである。最も好ましくは、マーモセット属のサルはカリスリクス・ジャカスであり、タマリン属のサルはサグイヌス・オイディプスであり、リスザル属のサルはサイミリ・シウレウスである。
本願で上述したように、本発明のポリペプチドは、ヒト及び非チンパンジー類人猿CD3ε(イプシロン)鎖のエピトープに、第1結合ドメインで結合するが、前記エピトープは、配列番号2、4、6又は8に記載される27アミノ酸残基からなる群に含まれるアミノ酸配列の一部である。
本発明と調和して、本発明のポリペプチドにとって、前記エピトープが、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6又は5アミノ酸を含むアミノ酸配列の一部であることが好ましい。
より好ましくは、前記エピトープは、少なくともアミノ酸配列Gln−Asp−Gly−Asn−Glu(Q−D−G−N−E−D)を含む。
本発明の中で、「N末端1−27アミノ酸残基の機能性断片」は、CD3複合体のネイティブ環境から取り出された(そして、例えば実施例3.1に示すとおり、EpCAM又は免疫グロブリンFc部などの異種アミノ酸配列に融合された)時に、前記機能性断片が、まだ、その三次元構造完全性を維持するコンテクスト独立性エピトープであることを意味する。CD3イプシロンの27アミノ酸N末端ポリペプチド又はその機能性断片内の三次元構造の維持は、インビトロでのN末端CD3イプシロンポリペプチド断片に、及びインビボでのT細胞上のネイティブ(CD3イプシロンサブユニット)CD3複合体に、同じ結合親和力で結合する結合ドメインの生成に利用できる。本発明の中で、N末端1−27アミノ酸残基の機能性断片は、本願に提供されるCD3結合分子が、コンテクスト独立的にそのような機能性断片に結合できることを意味する。当業者は、そのような抗CD3結合分子がエピトープのどのアミノ酸残基を認識するのかを測定するエピトープマッピングの方法(例えば、アラニンスキャニング又はペップスポット(pep spot)分析を承知している。
本発明の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、ヒト及び非チンパンジー類人猿CD3ε鎖のエピトープに結合可能な(第1)結合ドメイン及び細胞表面抗原に結合可能な第2結合ドメインを含む。
本願での「細胞表面抗原」という用語は、細胞の表面上に提示されている分子を意味する。ほとんどの場合で、この分子は、この分子の少なくとも一部分が、三次形態で細胞の外部から接近可能なままであるように、細胞の細胞膜の中又はその上に位置するであろう。細胞膜中に位置する細胞表面分子の非限定的な例は、その三次コンフォメーションで、親水性及び疎水性の領域を含む膜貫通型タンパク質である。ここで、少なくとも1つの疎水性領域は、細胞表面分子が細胞の疎水性細胞膜に埋め込まれるか、挿入されるようにし、その一方で親水性領域は、細胞膜の両面に延びてそれぞれ細胞質及び細胞外空間に延びる。細胞膜上に位置する細胞表面分子の非限定的な例は、パルミトイル基を持つようにシステイン残基で修飾されたタンパク質、ファルネシル基を持つようにC末端システイン残基で修飾されたタンパク質又はグリコシルホスファチジルイノシトール(「GPI」)アンカーを持つようにC末端で修飾されたタンパク質である。これらの基により、細胞膜の外部表面にタンパク質が共有結合でき、それらは抗体などの細胞外分子による認識のために接近可能なままである。細胞表面抗原の例には、EGFR、EGFRvIII、MCSP、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CD30、CD33、Her2/neu、IgE、CD44v6及びMuc−1がある。さらに、対応する細胞表面抗体の例は、特定の疾病又は病気、すなわち、ガン、自己免疫疾患又はウイルス感染を含む感染症に特徴的な抗原を含む。したがって、「細胞表面抗原」という用語は、感染細胞の表面に露出するネイティブの、未処理のウイルスタンパク質(とりわけ、B型、C型肝炎ウイルス及びHIV−1のエンベロープタンパク質に関して記載される)などのウイルスタンパク質を明確に含む。
細胞障害性T細胞の防御機能の1つはウイルス感染細胞の破壊であり、したがって、本発明の二重特異性結合分子が、その自己由来の特異性にかかわらず、細胞障害性T細胞を活性化させ向け直す独特な性質は、広い分野の慢性ウイルス感染に大きな影響を持つ。これらの感染症の大部分にとって、持続感染している細胞の除去は、治癒のための唯一の機会である。最近、慢性CMV及びEBV感染症に対して、養子T細胞療法が開発されつつある(Rooney, CM., et al., Use of gene−modified virus−specific T lymphocytes to control Epstein−Barr−virus−related lymphoproliferation. Lancet, 1995. 345 (8941): p. 9−13; Walter, EA, et al., Reconstitution of cellular immunity against cytomegalovirus in recipients of allogeneic bone marrow by transfer of T−cell clones from the donor. N Engl J Med, 1995. 333 (16): p. 1038−44)。
慢性B型肝炎感染は、明らかに、最も興味深くやりがいのある適応症の1つである。世界中で3億5千万人から4億人がHBVに感染している。慢性HBV肝炎の最近の治療は、インターフェロンγ及びヌクレオシド又はヌクレオチドアナログにあり、肝炎拡大、発熱、筋痛症、血小板減少及び鬱の誘起などの著しい副作用を伴う長期の治療である。現在4を超える認可された治療レジメンがあるが、ウイルスの除去が達成されることは希である。慢性B型肝炎の持続炎症は、25%を超える患者に肝硬変及び肝細胞ガンを起こす。さらに、慢性B型肝炎の患者の40%までが、重篤な合併症で死亡し、これは世界中で年間に60万人から100万人の死亡原因となっている。
ヘパドナウイルスの原型であるHBVは、その緩和環状(rc)ゲノムがRNAプレゲノムに逆転写される、エンベロープウイルスである。感染後、rcDNAは肝細胞の細胞核に取り込まれ、そこで4つの重複するリーディングフレームを含む共有結合閉環状DNA(cccDNA)になる。それは、プレゲノムRNA及び3つのサブゲノムRNAのための転写鋳型として働く。RNAプレゲノムは、ウイルスコア及びポリメラーゼタンパク質の翻訳のためのmRNAとして機能する。感染細胞は、HBV複製が停止した時でも、cccDNAからHBV表面タンパク質(HBsAg)を連続的に産生する。HBsAgは、極低い割合の中程度及び大きい(L)表面タンパク質と共に小さい表面(S)タンパク質からなる。HBV S及びLのどちらも、小胞体(ER)膜を標的とし、そこでそれらは膜小胞中でトランスゴルジ小器官を介して細胞膜に輸送される(Gorelick, F. S. and C. Shugrue, Exiting the endoplasmic reticulum. Mol Cell Endocrinol, 2001. 177 (1−2): p. 13−8)。最近示されたとおり、S及びLタンパク質は、HBVを複製する肝細胞の表面上で永久に発現される(Chu, CM. and Y.F. Liaw, Membrane staining for hepatitis B surface antigen on hepatocytes: a sensitive and specific marker of active viral replication in hepatitis B. J Clin Pathol, 1995. 48(5): p.470−3)。
細胞表面でエンベロープタンパク質を露出するプロトタイプウイルスは、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びHIV−1であり、そのどちらも世界的に莫大な疾病の苦しみを象徴する。HIV−1ウイルス適応症では、gp120エンベロープタンパク質に対するFv抗体コンストラクトを持つキメラTCRにより修飾されたT細胞がHIV−1に感染した標的細胞を殺すことができることが最近示された(Masiero, S., et al., T−cell engineering by a chimeric T−cell receptor with antibody−type specificity for the HIV−1 gp120. Gene Ther, 2005. 12 (4): p. 299−310)。ヘパドナウイルスのうち、B型肝炎ウイルス(HBV)は、HBV複製が低下した場合ですら、エピソーマルcccDNAから連続的に産生されるエンベロープタンパク質複合体HBsAgを発現する。
細胞表面上での無傷のS及びL HBVタンパク質としての発現は、患者が感染の急性期から回復し、循環するHBsAgから抗HBsに変わる時に、血清変換の特徴である抗体にとって接近可能になる。血清変換が起こらない場合、最大30%の肝細胞が、長期間の非常に活性な抗ウイルス治療の後でも、HBV Sタンパク質を発現し続ける。したがって、細胞内で処理されたHBVペプチドを特異的に認識し細胞表面でMHC分子により提示されるTリンパ球を超えて、外部細胞膜中で接近可能なS及びL抗原などの無傷の表面タンパク質に向けられた、他の形態のT細胞関与がありうる。B型肝炎ウイルス小(S)及び大(L)エンベロープタンパク質を認識する単鎖抗体断片を使用して、グラフトT細胞を感染した肝細胞に向け、これらのT細胞の抗原接触活性化時にサイトカインを分泌し、感染した肝細胞を殺すことを可能にする、人工T細胞レセプターが生成された。
この手法の限界は、(i)T細胞をインビトロで操作する必要がある、(ii)T細胞レセプターの輸送に使用するレトロウイルスは、T細胞中に挿入突然変異を起こすことがある、(iii)T細胞が一旦輸送されると細胞障害性応答は制限できない。
これらの限界を克服するため、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロン抗原(本発明の文脈中で本願に提供される)に対する結合特異性を持つ第1ドメイン並びに感染肝細胞のHBV又はHBCエンベロープタンパク質に対する結合特異性を持つ第2ドメインを含む、二重特異性単鎖抗体分子を生成することができ、これは本発明の範囲内である。
本発明の中で、第2結合ドメインが、ヒト細胞表面抗原及び/又はEGFR、Her2/neu又はIgEから選択されるヒト細胞表面抗原の非チンパンジー霊長類対応物と結合することがさらに好ましい。
本発明のポリペプチド、例えば本願に定義される二重特異性単鎖抗体の第2結合ドメインを生成するために、それぞれのヒト及び/又は非チンパンジー霊長類の細胞表面抗原の両方に結合するモノクローナル抗体が利用できる。本願に定義される二重特異性ポリペプチドのための適切な結合ドメインは、当分野に記載されている組換え法による異種間特異性モノクローナル抗体から誘導できる。ヒトの細胞表面抗原及び非チンパンジー霊長類の前記表面抗原のホモログに結合するモノクローナル抗体は、上述のとおりFACSアッセイにより試験できる。異種間特異性抗体も文献に記載されているハイブリドーマ技術から生成できることは当業者には明らかである(Milstein and Kohler, Nature 256 (1975), 495−7)。例えば、マウスを、ヒト及び非チンパンジー霊長類のCD33に対して交互に免疫することができる。これらのマウスから、異種間特異性抗体を産生するハイブリドーマ細胞がハイブリドーマ技術により単離され、上述のとおりFACSにより分析される。本願に記載された異種間特異性を示す二重特異性単鎖抗体などの二重特異性ポリペプチドの生成及び分析は、以下の実施例に示される。異種間特異性を示す二重特異性単鎖抗体の利点は、以下に列挙された点を含む。
本発明のポリペプチドにとって、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープと結合可能な第1結合ドメインが、以下から選択されるCDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3を含むVL領域を含むことが特に好ましい:
(a)配列番号27に示されるCDR−L1、配列番号28に示されるCDR−L2及び配列番号29に示されるCDR−L3;
(b)配列番号117に示されるCDR−L1、配列番号118に示されるCDR−L2及び配列番号119に示されるCDR−L3;
(c)配列番号153に示されるCDR−L1、配列番号154に示されるCDR−L2及び配列番号155に示されるCDR−L3。
可変領域、すなわち可変軽鎖(「VL」の「L」)及び可変重鎖(「H」又は「VH」)は、抗体の結合ドメインを与えると当分野で理解される。この可変領域は、相補性決定領域を含む。「相補性決定領域」(CDR)という用語は、抗体の抗原特異性を示すことが当分野に周知である。「CDR−L」又は「L CDR」という用語は、VL中のCDRを意味し、「CDR−H」又は「H CDR」という用語は、VH中のCDRを意味する。
本発明のポリペプチドの別の好ましい実施形態において、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメインは、以下から選択されるCDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3を含むVH領域を含む:
(a)配列番号12に示されるCDR−H1、配列番号13に示されるCDR−H2及び配列番号14に示されるCDR−H3;
(b)配列番号30に示されるCDR−H1、配列番号31に示されるCDR−H2及び配列番号32に示されるCDR−H3;
(c)配列番号48に示されるCDR−H1、配列番号49に示されるCDR−H2及び配列番号50に示されるCDR−H3;
(d)配列番号66に示されるCDR−H1、配列番号67に示されるCDR−H2及び配列番号68に示されるCDR−H3;
(e)配列番号84に示されるCDR−H1、配列番号85に示されるCDR−H2及び配列番号86に示されるCDR−H3;
(f)配列番号102に示されるCDR−H1、配列番号103に示されるCDR−H2及び配列番号104に示されるCDR−H3;
(g)配列番号120に示されるCDR−H1、配列番号121に示されるCDR−H2及び配列番号122に示されるCDR−H3;
(h)配列番号138に示されるCDR−H1、配列番号139に示されるCDR−H2及び配列番号140に示されるCDR−H3;
(i)配列番号156に示されるCDR−H1、配列番号157に示されるCDR−H2及び配列番号158に示されるCDR−H3;及び
(j)配列番号174に示されるCDR−H1、配列番号175に示されるCDR−H2及び配列番号176に示されるCDR−H3。
ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメインが、配列番号35、39、125、129、161又は165に示されるVL領域からなる群から選択されるVL領域を含むことがさらに好ましい。
或いは、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメインが、配列番号15、19、33、37、51、55、69、73、87、91、105、109、123、127、141、145、159、163、177又は181に示されるVH領域からなる群から選択されるVH領域を含むことが好ましい。
より好ましくは、本発明のポリペプチドは、以下からなる群から選択されるVL領域及びVH領域を含む、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメインにより特徴づけられる。
(a)配列番号17又は21に示されるVL領域及び配列番号15又は19に示されるVH領域;
(b)配列番号35又は39に示されるVL領域及び配列番号33又は37に示されるVH領域;
(c)配列番号53又は57に示されるVL領域及び配列番号51又は55に示されるVH領域;
(d)配列番号71又は75に示されるVL領域及び配列番号69又は73に示されるVH領域;
(e)配列番号89又は93に示されるVL領域及び配列番号87又は91に示されるVH領域;
(f)配列番号107又は111に示されるVL領域及び配列番号105又は109に示されるVH領域;
(g)配列番号125又は129に示されるVL領域及び配列番号123又は127に示されるVH領域;
(h)配列番号143又は147に示されるVL領域及び配列番号141又は145に示されるVH領域;
(i)配列番号161又は165に示されるVL領域及び配列番号159又は163に示されるVH領域;及び
(j)配列番号179又は183に示されるVL領域及び配列番号177又は181に示されるVH領域。
本発明のポリペプチドの好ましい実施形態によると、VH領域とVL領域の組は、単鎖抗体(scFv)のフォーマットにある。VH及びVL領域は、VH−VL又はVL−VHの順番に配置されている。VH領域が、リンカー配列のN末端に位置することが好ましい。VL領域は、リンカー配列のC末端に位置する。
本発明の上述のポリペプチドの好ましい実施形態は、配列番号23、25、41、43、59、61、77、79、95、97、113、115、131、133、149、151、167、169、185又は187からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメインにより特徴づけられる。
本発明は、第2結合ドメインが、好ましくは腫瘍抗原である細胞表面抗原に結合する、上述のポリペプチドにさらに関する。
本願での「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞上に提示される抗原であると理解されうる。これらの抗原は、分子の膜貫通及び細胞質部分と結合していることが多い細胞外部分とともに細胞表面に提示されることがある。これらの抗原は、腫瘍細胞によりのみ提示され、通常細胞によっては決して提示され得ない。腫瘍抗原は、腫瘍細胞上にのみ発現されるか、通常細胞と比較して腫瘍特異的な突然変異を表すことがある。この場合、それらは腫瘍特異的抗原と呼ばれる。腫瘍細胞及び通常細胞により提示される抗原がより一般的であり、それらは腫瘍関連抗原と呼ばれる。これらの腫瘍関連抗原は、通常細胞に比べて過剰発現されることがあり、通常細胞に比べ腫瘍細胞の密集性の低い構造のため、腫瘍細胞中で抗体結合のために接近可能である。本願で使用される腫瘍抗原の非限定的な例はEGFRである(Liu, Br. J. Cancer 82/12 (2000), 1991−1999; Bonner, Semin. Radiat. Oncol. 12 (2002), 11−20; Kiyota, Oncology 63/1 (2002), 92−98; Kuan, Brain Tumor Pathol. 17/2 (2000), 71−78)。
EGFR(c−erb1又はHER1としても知られる)は、erbBレセプターチロシンキナーゼファミリーに属する。成長因子のEGFファミリーのリガンドの結合により活性化すると、EGFRは、第2のEGFR又はerbBレセプターファミリーの他のメンバーとそれぞれホモダイマー化又はヘテロダイマー化し、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ及び他の転写因子によりシグナル伝達カスケードを開始し、増殖、分化及び修復が起こる(Olayioye, EMBO J. 19 (2000), 3159−67)。EGFRは、結直腸ガン、乳ガン、肺ガン及び頭頸部ガンを含む多くの上皮ガンで過剰発現される(Mendelsohn, J. Clin. Oncol. 21 (2003), 2787−99; Mendelsohn, J. Clin. Oncol. 20 (18, Suppl.) (2002), 1S−13S; Prewett, Clin. Cancer Res. 8 (2002), 994−1003)。悪性細胞中でのEGFRの過剰発現及び/又は突然変異は、キナーゼ活性の恒常的活性化につながり、増殖、血管形成、浸潤、転移及びアポトーシスの阻害を起こす(Mendelsohn (2003,上記引用文献; Ciardiello, Clin. Cancer Res. 7 (2001), 2958−70; Perez−Soler, Oncologist 9 (2004), 58−67)。細胞外リガンド結合ドメイン又はEGFRの細胞内チロシンキナーゼシグナル伝達カスケードを標的にするモノクローナル抗体は、抗腫瘍標的としての効力が示されている(Laskin, Cancer Treat. Review 30 (2004), 1−17)。例えば、セツキシマブ(Erbitux)、EGFRに対するヒト化モノクローナル抗体は、EGFRの細胞外ドメインを競合阻害し、レセプターのリガンド活性化を阻害するが、トポイソメラーゼ阻害剤イリノテカンと組み合わせた転移性大腸ガンの治療用に食品医薬品局(FDA)により2004年に認可された。
本発明の好ましい実施形態において、ポリペプチドは二重特異性単鎖抗体分子である。
前臨床試験のためのサロゲート分子の開発に関する本願で先に記載した問題は、薬剤候補が二重特異性抗体、例えば二重特異性単鎖抗体である場合、さらにひどくなる。そのような二重特異性抗体では、認識される抗原の両方が、ある動物種に異種間特異性であり、そのような動物での安全性試験を可能にすることが要される。
やはり本願で先に記したとおり、本発明は、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメイン及びEGFR、Her2/neu又はIgEから選択される細胞表面抗原に結合可能な第2結合ドメインを含むポリペプチドを提供するが、前記第2結合ドメインは、ヒト及び/又は非チンパンジー霊長類の細胞表面抗原にも結合することが好ましい。本発明の好ましいポリペプチドの要件を満たす薬剤候補としての二重特異性単鎖抗体分子の利点は、その様な分子の前臨床動物試験での使用並びに臨床試験で、さらにはヒトの治療での使用である。本発明の種間特異的二重特異性単鎖抗体の好ましい実施形態において、細胞表面抗原に結合可能な第2の結合ドメインはヒト起源である。本発明の種間特異的二重特異性分子において、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロン鎖のエピトープに結合可能な結合ドメインは、二重特異性分子のN末端又はC末端でVH−VL又はVL−VHの順で位置する。第1及び第2結合ドメインにおいてVH及びVL鎖の異なる配列にある本発明の種間特異的二重特異性分子の例は、添付する実施例に記載される。
本願では、「二重特異性単鎖抗体」は、2つの結合ドメインを含むポリペプチド単鎖を意味する。各結合ドメインは、抗体重鎖からの1つの可変領域(「VH領域」)を含むが、第1結合ドメインのVH領域は、CD3ε分子に特異的に結合し、第2結合ドメインのVH領域は、以下により詳細に定義される細胞表面抗原に特異的に結合する。2つの結合ドメインは、短いポリペプチドスペーサーにより任意に互いに結合する。ポリペプチドスペーサーの非限定的な例は、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(G−G−G−S)及びそのリピートである。各結合ドメインは、抗体軽鎖からの1つの可変領域(「VL領域」)をさらに含み、第1及び第2結合ドメインのそれぞれにおいて、VH領域及びVL領域は、例えばEP623679B1に開示され特許請求されているタイプのポリペプチドリンカーにより互いに結合しているが、しかしいずれにせよ第1結合ドメインのVH領域及びVL領域と第2結合領域のVH領域及びVL領域が、それぞれの第1及び第2分子と特異的に結合できるように、互いに組むことが可能なほど長い。
本発明の好ましい実施形態によると、先に特徴を述べた二重特異性単鎖抗体分子は、第2結合ドメインにおけるCDR H1、CDR H2、CDR H3、CDR L1、CDR L2及びCDR L3として、配列番号441〜446、配列番号453〜458、配列番号463〜468、配列番号481〜486から選択される配列の群を含む。
本発明の特に好ましい実施形態は、二重特異性単鎖抗体分子が以下から選択される配列を含む、先に特徴を述べたポリペプチドに関する:
(a)配列番号389、391、393、395、397、399、409、411、413、415、417、419、429、431、433、435、437、439、447、449、451、469、471、473、475、477、479、495、497、499、501、503及び505のいずれかに示されるアミノ酸配列;並びに
(b)配列番号390、392、394、396、398、400、410、412、414、416、418、420、430、432、434、436、438、440、448、450、452、470、472、474、476、478、480、496、498、500、502、504及び506のいずれかに示される核酸配列によりコードされるアミノ酸配列。
本発明の好ましい実施形態において、二重特異性単鎖抗体は、CD3イプシロンに対して、及びその第2結合ドメインにより認識される腫瘍抗原に対して異種間特異的である。
別の実施形態において、本発明は、本発明の上述のポリペプチドをコードする核酸配列を提供する。
本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターにも関する。
多くの好適なベクターが分子生物学の当業者に公知であり、その選択は望まれる機能に依存するであろうが、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ及び遺伝子工学で従来使用される他のベクターがある。当業者に周知の方法を利用して種々のプラスミド及びベクターを構築することができる。例えば、Sambrook et al.(上記引用文献)及びAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989), (1994)に記載されている技術を参照されたい。或いは、本発明のポリヌクレオチド及びベクターを、標的細胞への送達のため、リポソーム中に再構築することもできる。以下に詳細に議論されるように、クローニングベクターを使用してDNAの個別の配列を単離することもできる。関連する配列を、特定のポリペプチドの発現が求められる発現ベクター中に移すこともできる。典型的なクローニングベクターは、pBluescript SK、pGEM、pUC9、pBR322及びpGBT9がある。典型的な発現ベクターにはpTRE、pCAL−n−EK、pESP−1、pOP13CATがある。
好ましくは、前記ベクターは、本願に定義される前記核酸配列に機能的に結合している調節配列である核酸配列を含む。
「調節配列」という用語は、それがライゲーションされるコード配列の発現をもたらすのに必要なDAN配列を意味する。そのような制御配列の性質は、ホスト生物により異なる。原核生物では、一般的に、制御配列はプロモーター、リボソーム結合部位及びターミネーターを含む。真核生物では、一般的に、制御配列は、プロモーター、ターミネーター及び、場合によって、エンハンサー、トランスアクティベーター又は転写因子を含む。「制御配列」という用語は、最低でも、その存在が発現に必要な全成分を含むものとし、追加の有利な成分も含むことがある。
「機能的に結合する」という用語は、そのように記載される成分が、その意図される方法で機能することを可能にする関係にある並列である。コード配列に「機能的に結合する」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と同等の条件下で達成するようにライゲーションされる。制御配列がプロモーターである場合、二本鎖核酸が使用されることが好ましいことは当業者には明らかである。
例えば、列挙されるベクターは好ましくは発現ベクターである。「発現ベクター」は、選択されたホストを形質転換するために使用でき、選択されたホスト中にコード配列の発現を可能にするコンストラクトである。発現ベクターは、例えば、クローニングベクター、バイナリーベクター又は組み込み型ベクターでよい。発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの核酸分子の転写を含む。原核生物及び/又は真核生物において発現を確実にする調節因子は、当業者に周知である。真核細胞の場合には、それらは、転写の開始を確実にするプロモーター並びに、任意に、転写の停止及び転写の安定化を確実にするポリAシグナルを通常含む。原核生物ホスト細胞での発現を可能にする可能性のある調節因子は、例えば、大腸菌でのP、lac、trp又はtacプロモーターがあり、真核生物ホスト細胞での発現を可能にする調節因子の例は、酵母菌中のAOX1又はGAL1プロモーター、又は哺乳類又は他の動物細胞中のCMV−、SV40−、RSV−プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV−エンハンサー、SV−40エンハンサー又はグロビンイントロンがある。
転写の開始の原因となる因子の他に、そのような調節因子は、ポリヌクレオチドの下流に、SV−40−ポリA部位又はtk−ポリ−A部位など転写停止シグナルを含むこともある。
さらに、使用される発現系によって、ポリペプチドを細胞区画に向けることが可能な、又はそれを媒体中に分泌することが可能なリーダー配列も、列記された核酸配列のコード配列に加えることができ、当分野に周知である。添付される実施例も参照されたい。リーダー配列(複数可)は、翻訳、開始及び停止配列並びに好ましくは、翻訳されたタンパク質又はその一部を細胞膜周辺腔又は細胞外媒体へ分泌するよう指示することのできるリーダー配列と適当な相で組み立てられる。任意に、異種配列は、所望の特性、例えば発現された組換え産物の安定化又は簡易化精製を付与するN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードすることができる。上記を参照されたい。この文脈において、Okayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In−vitrogene)、pEF−DHFR、pEF−ADA又はpEF−neo(Mack et al.PNAS(1995)92,7021−7025及びRaum et al.Cancer Immunol Immunother (2001) 50(3), 141−150)又はpSPORT1(GIBCO BRL)などの好適な発現ベクターが当分野に公知である。
好ましくは、発現制御配列は真核生物ホスト細胞を形質転換若しくはトランスフェクトすることが可能なベクター中の真核生物プロモーター系であろうが、原核生物ホスト用の制御配列も使用できる。ベクターが適当なホスト中に一旦取り入れられると、ホストは、ヌクレオチド配列の高レベルな発現に好適な条件下に維持され、望まれる場合、本発明のポリペプチドの回収及び精製を続けてよい。例えば、添付される実施例を参照されたい。
細胞周期相互作用タンパク質の発現に使用できる、別な発現系はインサート系である。そのような系において、オートグラファー・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用し、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia)幼虫に外来遺伝子を発現する。言及された核酸分子のコード配列は、ポリヘドリン遺伝子など、ウイルスの非必須領域中にクローニングされ、ポリヘドリンプロモーターの制御下におくことができる。前記コード配列の挿入がうまくいくと、ポリヘドリン遺伝子が不活性化し、コートタンパク質コートを欠く組換えウイルスが産生されるであろう。次いで、組換えウイルスを使用して、エス・フルギペルダ細胞又はイラクサギンウワバ幼虫を感染させ、そこで本発明のタンパク質が発現される(Smith, J. Virol. 46 (1983), 584; Engelhard, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91 (1994), 3224−3227)。
追加の調節因子には、転写エンハンサー並びに翻訳エンハンサーが含まれる。上述の本発明のベクターが、選択マーカー及び/又はスコア可能なマーカーを含むことが有利である。
形質転換された細胞及び、例えば、植物組織及び植物の選択に有用な選択マーカー遺伝子は当業者に周知であり、例えば、メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.) 13 (1994), 143−149);アミノグリコシドネオマイシン、カナマイシン及びパロマイシンに対する耐性を与えるnpt(Herrera−Estrella, EMBO J. 2 (1983), 987−995);及びハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Marsh, Gene 32 (1984), 481−485)に対する選択の基礎として代謝拮抗剤耐性を含む。追加の選択的遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用するのを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用するのを可能にするhisD(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988), 8047);細胞がマンノースを利用するのを可能にするマンノース−6−ホスフェートイソメラーゼ(国際公開第94/20627号)及びオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である2−(ジフルオロメチル)−DLオルニチン、DFMOに対する耐性を与えるODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)又はブラストシジンSに対する耐性を与えるアスペルギルス・テルレウス(Aspergillus terreus)由来のデアミナーゼ(Tamura, Biosci. Biotechnol. Biochem. 59 (1995), 2336−2338)が記載されている。
有用なスコア可能なマーカーも当業者に公知であり、市販されている。前記マーカーが、ルシフェラーゼ(Giacomin, Pl. Sci. 116 (1996), 59−72; Scikantha, J. Bact. 178 (1996), 121)、緑色蛍光タンパク質(Gerdes, FEBS Lett. 389 (1996), 44−47)又はβ−グルクロニダーゼ(Jefferson, EMBO J. 6 (1987), 3901−3907)をコードする遺伝子であることが有利である。この実施形態は、記載されたベクターを含む細胞、組織及び生物の簡単で迅速なスクリーニングに特に有用である。
上述のとおり、記載された核酸分子は、例えば、精製のため、それのみならず遺伝子治療目的に、単独又は細胞に本発明のポリペプチドを発現するベクターの一部として使用できる。本発明の上述のポリペプチドのいずれかをコードするDNA配列(複数可)を含む核酸分子又はベクターは、細胞に導入され、次に目的とするポリペプチドを産生する。遺伝子治療は、エキソビボ又はインビボ技術による細胞への治療遺伝子の導入に基づくが、遺伝子導入の最も重要な用途の1つである。インビトロ又はインビボ遺伝子治療のための好適なベクター、方法又は遺伝子送達システムは文献に記載されており、当業者に公知である。例えば、Giordano, Nature Medicine 2 (1996), 534−539; Schaper, Circ. Res. 79 (1996), 911−919; Anderson, Science 256 (1992), 808−813; Verma, Nature 389 (1994), 239; Isner, Lancet 348 (1996), 370−374; Muhlhauser, Circ. Res. 77 (1995), 1077−1086; Onodera, Blood 91 (1998), 30−36; Verma, Gene Ther. 5 (1998), 692−699; Nabel, Ann. N.Y. Acad. Sci. 811 (1997), 289−292; Verzeletti, Hum. Gene Ther. 9 (1998), 2243−51 ; Wang, Nature Medicine 2 (1996), 714−716;国際公開第94/29469号;国際公開第97/00957号、米国特許第5,580,859号;米国特許第5,589,466号;又はSchaper, Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 635−640を参照されたい。記載された核酸分子及びベクターは、細胞への直接導入用にも、或いはリポソーム又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)による導入用にも設計できる。好ましくは、前記細胞は、生殖細胞株細胞、胚細胞又は卵細胞であり、或いはそれらから誘導されており、最も好ましくは前記細胞は幹細胞である。胚性幹細胞の例は、とりわけ、Nagy, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993), 8424−8428に記載されている幹細胞でよい。
本発明は、本発明のベクターにより形質転換又はトランスフェクトされたホストも提供する。前記ホストは、本発明の上述のベクター又は本発明の上述の核酸分子をホストへ導入して製造できる。ホスト中の少なくとも1つのベクター又は少なくとも1つの核酸分子の存在が、上述の単鎖抗体コンストラクトをコードする遺伝子の発現を媒介することができる。
記載された本発明の核酸分子又はベクターは、ホストに導入され、ホストのゲノムに統合されることがあるが、染色体外に維持されることもある。
ホストは、どのような原核生物細胞でも真核生物細胞でもよい。
「原核生物」という用語は、細菌全てを含むように意味し、本発明のタンパク質の発現のためDNA又はRNA分子により形質転換又はトランスフェクトすることができる。原核細胞ホストは、大腸菌、ネズミチフス菌、霊菌及び枯草菌などのグラム陰性菌並びにグラム陽性菌を含む。「真核」という用語は、酵母、高等植物、昆虫、好ましくは哺乳類の細胞を含むように意味する。組換え産生手順に使用されるホストにより、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質はグリコシル化されることがあるが、非グリコシル化されることもある。本発明のポリペプチドのコード配列を含みN末端FLAGタグ及び/又はC末端Hisタグが遺伝子的に融合されるプラスミド又はウイルスの使用が特に好ましい。好ましくは、前記FLAGタグの長さは、約4〜8アミノ酸であり、最も好ましくは8アミノ酸である。上述のポリヌクレオチドを使用して、当業者に通常公知である技術のいずれかを利用して、ホストを形質転換又はトランスフェクトすることができる。さらに、融合し、機能的に結合した遺伝子の調製及び、例えば哺乳類細胞及び細菌中でのそれらの発現の方法は、当業者に周知である(Sambrook、上記引用文献中)。
好ましくは、前記ホストは、細菌或いは昆虫、真菌、植物又は動物の細胞である。
記載されたホストが哺乳類細胞であることが特に想定される。特に好ましいホスト細胞は、CHO細胞、COS細胞、SP2/0又はNS/0などのミエローマ細胞株を含む。添付される実施例に示すとおり、CHO細胞がホストとして特に好ましい。
より好ましくは、前記ホスト細胞は、ヒトの細胞又はヒトの細胞株、例えばper.c6である(Kroos, Biotechnol. Prog., 2003, 19:163−168)。
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドの産生方法にも関するが、前記方法は、本発明のポリペプチドの発現を可能にする条件下で本発明のホストを培養する工程及び産生されたポリペプチドを培養物から回収する工程を含む。
形質転換されたホストは、当業者に公知の技術により発酵槽中で生育され、培養されて、最適な細胞成長を得る。次いで、本発明のポリペプチドは、増殖培養液、細胞溶解物又は細胞膜分画から単離できる。例えば、細菌により発現した本発明のポリペプチドの単離及び精製は、例えば、分取クロマトグラフ分離並びに、例えば本発明のポリペプチドのタグに対するモノクローナル又はポリクローナル抗体の使用を含むもの或いは添付される実施例に記載のものなどの免疫学的分離など、どのような従来の手段によってもよい。
発現を可能にするホストの培養条件は当業者に公知であり、ホスト系及びそのような方法に利用される発現系/ベクターに依存する。組換えポリペプチドの発現を可能にする条件を得るために修正すべきパラメータは当分野に公知である。例えば、好適な条件は、さらなる発明のインプットなしに当業者により決定できる。
一旦発現すると、本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当分野の標準的な手順により精製することができる。Scopes, “Protein Purification”, Springer−Verlag, N.Y. (1982)を参照されたい。少なくとも約90から95%の均質性の実質的に純粋なポリペプチドが好ましく、98から99%以上の均質性が医薬用途に最も好ましい。部分的に又は望まれるとおり均質に一旦精製されると、本発明のポリペプチドを(体外を含む)治療用に又はアッセイ手順の開発及び実施に使用できる。さらに、培養物からの本発明のポリペプチドの回収方法の例は、添付される実施例に詳細に記載される。
さらに、本発明は本発明のポリペプチド又は先に開示された方法により産生されたポリペプチドを含む組成物を与える。好ましくは、前記組成物は医薬組成物である。
本発明によると、「医薬組成物」という用語は、患者、好ましくはヒトの患者に投与するための組成物に関する。本発明の特に好ましい医薬組成物は、コンテクスト独立性CD3エピトープを対象としそれに対して生成された結合分子を含む。好ましくは、医薬組成物は、キャリア、安定剤及び/又は賦形剤の好適な製剤を含む。好ましい実施形態において、医薬組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、髄腔内及び/又は鼻腔内投与のための、又は組織への直接注入による組成物を含む。前記組成物が、注入又は注射により患者に投与されることが特に想定される。好適な組成物の投与は、種々の方法により、例えば、静脈中への、腹膜内への、皮下への、筋肉内への、局所又は皮内への投与により実施することができる。特に、本発明は、好適な組成物の中断されない投与を与える。非限定的な例として、中断されない、すなわち連続的な投与が、患者の体内への治療薬の流入を測定する、患者が装着する小さなポンプシステムにより実現できる。本発明のコンテクスト独立性CD3エピトープを対象としそれに対して生成された結合分子を含む医薬組成物は、前記ポンプシステムの利用により投与できる。そのようなポンプシステムは一般的に当分野に公知であり、注入すべき治療薬を含むカートリッジの周期的な交換に通常頼る。そのようなポンプシステムでカートリッジを交換する際、患者の体内への治療薬のそうでなければ中断されない流入の一時的な中断が起こることがある。そのような場合、カートリッジ交換の前の投与の時期及びカートリッジ交換の後の投与の時期は、それでも医薬手段の意味の中にあると考えられ、本発明の方法は共に、そのような治療薬の1つの「中断されない投与」を作り上げる。本発明のコンテクスト独立性CD3エピトープを対象とし又はそれらに対して生成されたこれら結合分子の連続又は中断されない投与は、流体を貯蔵器から出すための流体駆動機構及び前記駆動機構を作動させるための作動機構を含む流体送達装置又は小さなポンプシステムにより、静脈又は皮下へ実施できる。皮下投与のためのポンプシステムは、患者の皮膚を貫通し、好適な組成物を患者の体内へ送達するための針又はカニューレを含む。前記ポンプシステムは、静脈、動脈又は血管に関係なく、患者の皮膚に直接固定又は付着してよく、それによりポンプシステムと患者の皮膚の直接接触を可能にする。ポンプシステムは、数日程度、24時間、患者の皮膚に付着してよい。ポンプシステムは、小さい容積の貯蔵器を持つ小さなサイズでもよい。非限定的な例として、投与すべき好適な医薬組成物の貯蔵器の容積は、0.1から50mlでありうる。
連続投与は、皮膚に貼り付け時々交換するパッチによる経皮でもよい。当業者は、この目的に好適な薬物送達のためのパッチシステムを承知している。好都合には、第1の使用済みパッチの交換が、例えば、第1の使用済みパッチのすぐ隣の皮膚表面で第1の使用済みパッチの除去の直前に、新しい第2のパッチの配置と同時に実施できるので、経皮投与が中断されない投与を特に受け入れやすいことに留意されたい。流入の中断又は電池の消耗の問題が起こらない。
特に、コンテクスト独立性CD3エピトープを対象としそれに対して生成される結合分子を含む本発明の組成物は、薬剤的に許容できるキャリアをさらに含んでよい。好適な医薬キャリアの例は当分野に周知であり、溶液、例えばリン酸緩衝食塩水、水、水中油滴型エマルションなどのエマルション、種々の湿潤剤、無菌液、リポソームなどが挙げられる。そのようなキャリアを含む組成物は、周知の従来法により処方できる。製剤は、炭水化物、緩衝溶液、アミノ酸及び/又は界面活性剤を含むことがある。炭水化物は、非還元糖、好ましくはトレハロース、スクロース、八硫酸エステル、ソルビトール又はキシリトールでよい。そのような製剤は、ポンプシステムがある、及び/又はポンプシステムがない経皮でも皮下でもよい連続投与に使用できる。アミノ酸は、荷電アミノ酸、好ましくはリジン、リジン酢酸塩、アルギニン、グルタミン酸塩及び/又はヒスチジンでよい。界面活性剤は、好ましくは分子量が1.2kDを超える洗剤及び/又は好ましくは分子量が3kDを超えるポリエーテルでよい。好ましい洗剤の非限定的な例は、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80又はTween85である。好ましいポリエーテルの非限定的な例は、PEG3000、PEG3350、PEG4000又はPEG5000である。本発明に使用される緩衝系は、pH5〜9を有することが好ましく、クエン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、ヒスチジン及び酢酸塩を含むことがある。本発明の組成物は、例えば、非チンパンジー霊長類、例えばマカクザルへの、本願に記載される異種間特異性を示す本発明のポリペプチドの投与量を増加させることによる用量増加試験により決定できる好適な用量で、被験者に投与することができる。上述のとおり、本願に記載される異種間特異性を示す本発明のポリペプチドは、好都合には、非チンパンジー霊長類における前臨床試験とヒトの薬剤として同一の形態で使用できる。これらの組成物は、他のタンパク質又は非タンパク質薬剤と組み合わせて投与することもできる。これらの薬剤は、本願に定義される本発明のポリペプチドを含む組成物と同時に投与してもよいが、前記ポリペプチドの投与の前又は後に、折良く決められた間隔及び用量で別々に投与することもできる。投与計画は、主治医及び臨床因子により決定されるであろう。医学分野に周知の通り、ある1人の患者への投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、全般的な健康状態及び同時に投与される他の薬剤など多くの因子による。非経口投与の調剤薬は、無菌の水溶液又は非水溶液、懸濁液及びエマルションを含む。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性キャリアには、塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液がある。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は不揮発性油がある。静注用賦形剤には、流体及び栄養補液、電解質補液(リンゲルデキストロースに基づくものなど)等がある。抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどの防腐剤及び他の添加物も存在してよい。さらに、本発明の組成物は、好ましくはヒト起源の、血清アルブミン又は免疫グロブリンなどのタンパク質キャリアを含んでよい。本発明の組成物が、本願に定義された本発明のポリペプチドに加え、組成物の意図される用途によって、生物活性薬剤をさらに含むことが想定される。そのような薬剤は、胃腸系に作用する薬剤、細胞増殖抑止剤として作用する薬剤、高尿酸血症を防ぐ薬剤、免疫反応を阻害する薬剤(例えば、コルチコステロイド)、炎症反応を和らげる薬剤、循環系に作用する薬剤及び/又は当分野に工程のサイトカインなどの薬剤であることがある。
本願に定義される医薬組成物の生物活性は、例えば、以下の実施例、国際公開第99/54440号又はSchlerethら(Cancer Immunol. Immunother. 20 (2005), 1 − 12)に記載される通り、細胞障害性アッセイにより測定することができる。本願での「効能」又は「インビボ効能」は、例えば標準化されたNCI応答基準を利用する、本発明の医薬組成物による治療への応答を意味する。本発明の医薬組成物を使用する治療の成功又はインビボ効能は、その意図された目的のための組成物の効力、すなわち組成物がその望まれる効果を起こす能力、すなわち、例えば腫瘍細胞など病的細胞の消耗を意味する。インビボ効能は、白血球数、ディファレンシャル、蛍光活性化細胞選別、骨髄穿刺法などがあるがこれらに限定されない、それぞれの疾病のための確立された標準方法により監視できる。それに加え、種々の疾病特異的な臨床化学パラメータ及び他の確立された標準法を使用してよい。さらに、コンピュータによる断層撮影、X線、核磁気共鳴断層撮影(例えば、米国国立ガン研究所の基準に基づく反応評価[Cheson BD, Horning SJ, Coiffier B, Shipp MA, Fisher Rl, Connors JM, Lister TA, Vose J, Grillo−Lopez A, Hagenbeek A, Cabanillas F, Klippensten D, Hiddemann W, Castellino R, Harris NL, Armitage JO, Carter W, Hoppe R, Canellos GP. Report of an international workshop to standardize response criteria for non−Hodgkin’s lymphomas. NCI Sponsored International Working Group. J Clin Oncol. 1999 Apr; 17(4): 1244])、陽電子放出断層撮影スキャニング、白血球数、ディファレンシャル、蛍光活性化細胞選別、骨髄穿刺、リンパ節生検/組織構造及び種々のリンパ腫特異的な臨床化学的パラメータ(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ)及び他の確立された標準的な方法を利用できる。
本発明の医薬組成物などの薬剤の開発における他の主な課題は、薬物動態学的性質の予測可能な調整である。このために、薬剤候補の薬物動態学的プロファイル、すなわちある病気を治療するための特定の薬剤の能力を発揮する薬物動態学パラメータが確立される。ある疾病を治療するための薬剤の能力に影響を与える薬剤の薬物動態学的パラメータには、半減期、分布容積、肝初回通過代謝及び血清タンパク結合率があるが、これらに限定されない。ある薬剤の効能は、上述のパラメータのそれぞれにより影響を受けうる。
「半減期」は、投与された薬剤の50%が、例えば代謝、排泄などの生物学的過程により除去される時間である。
「肝初回通過代謝」は、肝臓との初回接触時、すなわち肝臓を最初に通過する間に薬剤が代謝される傾向を意味する。「分布容積」は、体の種々の区画、例えば細胞内及び細胞外空間、組織及び器官等における薬剤の保持の程度及びこれらの区画中の薬剤の分布を意味する。「血清結合率」は、薬剤が、アルブミンなどの血清タンパク質と相互作用及び結合し、薬剤の生物活性の低下又は損失をもたらす傾向を意味する。
薬物動態学的パラメータには、投与されるある量の薬剤に対して、バイオアベイラビリティ、ラグタイム(Tlag)、Tmax、吸収速度、より多くの発症及び/又はCmaxがある。
「バイオアベイラビリティ」は、血液区画中の薬剤の量を意味する。
「ラグタイム」は、薬剤の投与と血液又は血漿中のその検出及び可測性の間の遅延時間を意味する。
「Tmax」は、薬剤の最高血液濃度に達する時間であり、「Cmax」はある薬剤で最大に得られる血液濃度である。その生物学的効果のために要する薬剤の血液又は組織濃度に達する時間は、全てのパラメータに影響される。異種間特異性を示す本発明のポリペプチドの好ましい実施形態である、二重特異性単鎖抗体の薬物動態学的パラメータは、上記のとおり非チンパンジー霊長類における前臨床動物試験で測定可能だが、例えばSchlerethら(Cancer Immunol. Immunother. 20 (2005), 1−12)による刊行物にも述べられている。
本願での「毒性」という用語は、有害事象又は重篤な有害事象に明らかになる薬剤の毒作用を意味する。これらの副作用は、全般的な薬剤の耐容性の欠如及び/又は投与後の局所耐容性の欠如を意味することがある。毒性は、薬剤により起こる催寄性又は発ガン作用も含むことがある。
本願での「安全性」、「インビボ安全性」又は「耐容性」は、投与の直後(局所耐容性)及びより長い期間の薬剤の使用の間の重篤な有害事象を引き起こさない薬剤の投与を定義する。「安全性」、「インビボ安全性」又は「耐容性」は、例えば治療及び継続管理期間の間に定期的に評価できる。測定には、臨床評価、例えば器官の症状及び臨床検査値異常のスクリーニングが挙げられる。臨床評価は、NCI−CTC及び/又はMedDRA基準により記録/コード化された通常の所見により実施され基準から外れることもある。器官の症状には、Common Terminology Criteria for adverse events v3.0 (CTCAE)に述べられている通り、アレルギー/免疫、血液/骨髄、不整脈、凝固などの基準が含まれる。試験できる臨床検査パラメータには、例えば、血液、臨床化学検査、凝固プロファイル及び尿の分析があり、血清、血漿、リンパ球又は髄液、リカーなどの他の体液の検査がある。例えば、安全性は、身体検査、イメージング技術(すなわち、超音波、X線、CTスキャン、磁気共鳴イメージング(MRI))、技術装置による他の手段(すなわち、心電図)、バイタルサインにより、臨床検査パラメータ測定及び有害事象の記録により評価できる。例えば、本発明の使用及び方法における非チンパンジー霊長類での有害事象は、組織病理学的及び/又は組織化学的方法により調査できる。
本願での「有効且つ非毒性の投与量」は、目立った毒作用を伴わず、又は基本的に伴わずに、病的細胞の枯渇、腫瘍の消去、腫瘍の縮小又は疾病の安定化をもたらすに十分なほど高い、本願に定義される二重特異性単鎖抗体の耐容量を意味する。そのような有効且つ非毒性の投与量は、例えば、当分野に記載される用量増加試験により決定することができ、重篤な有害事象を引き起こす用量未満でなくてはならない(用量規制毒性、DLT)。
上記の用語は、例えば、バイオテクノロジー由来医薬品の前臨床における安全性評価S6;ICH Harmonised Tripartite Guideline; ICH Steering Committee meeting on July 16, 1997にも言及されている。
さらに、本発明は、増殖性疾患、腫瘍性疾患又は免疫疾患から選択された疾患の予防、治療又は回復のための本発明のポリペプチド(すなわち、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロン鎖のエピトープに結合可能な少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチドであって、前記エピトープが、本発明の、又は本発明の方法により産生された配列番号2、4、6又は8からなる群に含まれるアミノ酸配列の一部である)を含む医薬組成物に関する。好ましくは、前記医薬組成物は、キャリア、安定剤及び/又は賦形剤の好適な製剤をさらに含む。
本発明のさらなる態様は、先に本願に定義されたポリペプチド又は先に本願に定義された方法により産生されるポリペプチドの、疾患の予防、治療又は回復のための医薬組成物を調製するための使用に関する。好ましくは、前記疾患は、増殖性疾患、腫瘍性疾患又は免疫疾患である。前記腫瘍性疾患が悪性疾患、好ましくはガンであることがさらに好ましい。
本発明のポリペプチドの使用の他の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、追加の薬剤と組み合わせて、すなわち併用療法の一部として投与されることが好適である。前記併用療法において、活性薬剤が、本発明のポリペプチドとして同じ医薬組成物中に任意に含まれてもよく、或いは別な医薬組成物に含まれることもある。この後者の場合、前記の別な医薬組成物の投与は、本発明のポリペプチドを含む前記医薬組成物の投与の前でも、同時でも、その後でも好適である。追加の薬剤又は医薬組成物は、非タンパク質化合物でも、タンパク質化合物でもよい。追加の薬剤がタンパク質化合物である場合、タンパク質化合物が、免疫エフェクター細胞のための活性化シグナルを提供できるタンパク質化合物であることが有利である。
好ましくは、前記タンパク質化合物又は非タンパク質化合物は、本発明のポリペプチド、上記に定義された核酸分子、上記に定義されたベクター又は上記に定義されたホストと同時にでも、又は非同時にでも投与できる。
本発明の他の態様は、その必要のある被験者での疾患の予防、治療又は回復の方法に関するが、前記方法は本発明の有効量の医薬組成物を投与する工程を含む。好ましくは、前記疾患は、増殖性疾患、腫瘍性疾患又は免疫疾患である。さらにより好ましくは、前記腫瘍性疾患は、悪性疾患、好ましくはガンである。
本発明の方法の他の好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、追加の薬剤と組み合わせて、すなわち併用療法の一部として投与されるのが好ましい。前記併用量において、活性薬剤が、本発明のポリペプチドとして同じ医薬組成物中に任意に含まれてもよく、或いは別な医薬組成物に含まれることもある。この後者の場合、前記の別な医薬組成物の投与は、本発明のポリペプチドを含む前記医薬組成物の投与の前でも、同時でも、その後でも好適である。追加の薬剤又は医薬組成物は、非タンパク質化合物でも、タンパク質化合物でもよい。追加の薬剤がタンパク質化合物である場合、タンパク質化合物が、免疫エフェクター細胞のための活性化シグナルを提供できるタンパク質化合物であることが有利である。
好ましくは、前記タンパク質化合物又は非タンパク質化合物は、本発明のポリペプチド、上記に定義された核酸分子、上記に定義されたベクター又は上記に定義されたホストと同時にでも、又は非同時にでも投与できる。
本発明の上記の方法では、前記被験者がヒトであることが好ましい。
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明の核酸分子、本発明のベクター又は本発明のホストを含むキットに関する。
本発明は、以下のアイテムのリストによりさらに特徴づけられる。
アイテム1 ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロン(CD3ε)のエピトープに結合可能な異種間特異性結合ドメインを含むポリペプチド(複数可)の同定方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)該ポリペプチド(複数可)を、アミノ酸配列Gln−Asp−Gly−Asn−Glu−Glu−Met−Gly(配列番号381)又はGln−Asp−Gly−Asn−Glu−Glu−Ile−GIy(配列番号382)を含み、そのC末端で固定相に固定されている最大27アミノ酸のCD3εの細胞外ドメインのN末端断片に接触させる工程;
(b)結合したポリペプチド(複数可)を前記断片から溶離する工程;及び
(c)該ポリペプチド(複数可)を(b)溶離液から単離する工程。
本発明の上記方法で同定されたポリペプチド(複数可)がヒト起源であることが好ましい。
本「ポリペプチド(複数可)の同定方法」は、複数のポリペプチド候補から、アミノ酸配列Gln−Asp−Gly−Asn−Glu−Glu−Met−Gly(配列番号381)又はGln−Asp−Gly−Asn−Glu−Glu−Ile−GIy(配列番号382)をそのN末端で含むCD3εの細胞外ドメインの断片に対して同じ特異性を持つ1つ以上の異なるポリペプチドを単離する方法並びに溶液からのポリペプチドの精製方法であると理解される。CD3εの細胞外ドメインの断片に対して同じ特異性を持つ1つ以上の異なるポリペプチドを単離する方法の非限定的な実施形態には、抗原特異性結合体の選択方法、例えばハイブリドーマスクリーニングに通常利用されるパニング法、真核ホスト細胞の一過性導入/安定導入されたクローンのスクリーニング、ファージディスプレイ法がある。後者の溶液からのポリペプチドの精製方法の非限定的な例は、例えば、培養上清からのリコンビナント発現ポリペプチドの精製又はそのような培養液の調製である。
上述のとおり、本発明の方法に使用される断片は、霊長類CD3ε分子の細胞外ドメインのN末端断片である。異なる霊長類のCD3ε分子の細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号1、3、5及び7に示されている。N末端オクタマーの2つの形態は、配列番号381及び382に示されている。本発明の方法により同定されるポリペプチドの結合用に、N末端が自由に利用可能であることが好ましい。本発明の文脈において、「自由に利用可能」という用語は、His−tagなどの追加モチーフがないと理解される。そのようなHis−tagと本発明の方法により同定される結合分子との干渉は、添付する実施例6に記載されている。
本発明の方法によると、前記断片はC末端で固定相に固定されている。当業者は、本発明の方法の利用される実施形態に頼って、好適な固定相支持体を容易に発明の労作無く選択するであろう。固体支持体の例は、ビーズなどのマトリックス(例えば、アガロースビーズ、セファロースビーズ、ポリスチロールビーズ、デキストランビーズ)、プレート(培養プレート又は多穴プレート)並びに例えばBiacore(登録商標)から知られるチップがあるが、これらに限定されない。断片の前記固体支持体への固定(fixation)/固定化(immobilization)の手段及び方法の選択は、固体支持体の選択による。固定/固定化に通常利用される方法は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルによるカップリングである。このカップリングの基となる化学作用並びに固定/固定化の他の方法は、例えばHermanson “Bioconjugate Techniques”, Academic Press, Inc. (1996)から当業者に公知である。クロマトグラフィ支持体に固定/固定化するには、以下の手段が通常利用される:NHS活性化セファロース(例えば、GE Life Science−AmershamのHiTrap−NHS)、CnBr−活性化セファロース(例えば、GE Life Science−Amersham)、NHS活性化デキストランビーズ(Sigma)又は活性化ポリメタクリレート。これらの試薬は、バッチ式手法にも使用できる。さらに、酸化鉄を含むデキストランビーズ(例えばMiltenyiから市販)もバッチ式手法に使用できる。これらのビーズは、溶液からビーズを分離するための磁石と組み合わせて使用できる。ポリペプチドは、NHS活性化カルボキシメチルデキストランの使用によりBiacoreチップ(例えばCM5チップ)に固定化できる。適当な固体支持体のさらなる例は、アミン反応性MultiWellプレート(例えば、NuncImmobilizer(商標)プレート)である。
本発明の方法によると、CD3イプシロンの細胞外ドメインの前記断片は、直接に、或いは、リンカー又は他のタンパク質/ポリペプチド部分であることもあるアミノ酸のストレッチを介して固体支持体にカップリングできる。別法としては、CD3イプシロンの細胞外ドメインは、1つ以上のアダプター分子(複数可)により間接的にカップリングできる。
固定化されたエピトープに結合したペプチドを溶離する手段及び方法は当分野に周知である。同定されたポリペプチド(複数可)を溶離液から単離する方法にも同じことがいえる。
本発明と調和して、複数のポリペプチド候補から、そのN末端でアミノ酸配列Gln−Asp−Gly−Asn−Glu−GIu−X−GIyを含むCD3εの細胞外ドメインの断片に同じ特異性を持つ1つ以上の異なるポリペプチドを単離する方法は、抗原特異体の選択に以下の方法の1つ以上の工程を含むことがある。
CD3ε特異的結合分子は、抗体から誘導されたレパートリーから選択できる。例えば、“Phage Display: A Laboratory Manual”; Ed. Barbas, Burton, Scott & Silverman; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に開示されている標準的な手順に基づき、ファージディスプレイライブラリーを構築できる。抗体ライブラリー中の抗体断片のフォーマットはscFvでよいが、一般的にはFab断片でも、さらには単一ドメイン抗体断片でもよい。抗体断片の単離には、ナイーブ抗体断片ライブラリーを利用できる。後に治療で利用するための潜在的に低い抗原性結合体の選択には、ヒト抗体断片ライブラリーが、ヒト抗体断片の直接選択に有利であることがある。場合によっては、それらは合成抗体ライブラリーの基礎を形成することがある(Knappik et al. J Mol. Biol. 2000, 296:57 ff)。対応するフォーマットは、Fab、scFv(以下に記載されるとおり)又はドメイン抗体(dAbs、Holt et al., Trends Biotechnol. 2003, 21 :484 ffに総評されるとおり)でもよい。
多くの場合において、標的抗原に対し利用可能な免疫ヒト抗体源がないことも当分野で公知である。したがって、動物を標的抗原により免疫し、それぞれの抗体ライブラリーが動物組織、例えば脾臓又はPBMCから単離される。N末端断片をビオチン化し、或いはKLH又はウシ血清アルブミン(BSA)などのタンパク質に共有結合することができる。通常の手法によると、齧歯動物が免疫に使用される。非ヒト起源の免疫抗体レパートリーが、他の理由で、例えばラクダ種から誘導された単一ドメイン抗体(VHH)の存在により(Muyldermans, J Biotechnol. 74:277; De Genst et al. Dev Como Immunol. 2006, 30:187 ffに記載のとおり)特に有利である。したがって、抗体ライブラリーの対応するフォーマットは、Fab、scFv(以下に記載の通り)又は単一ドメイン抗体(VHH)でよい。
可能性のある一手法において、balb/c x C57黒交配の10週齢のF1マウスを、成熟CD3ε鎖のN末端アミノ酸1から27を翻訳融合としてN末端で示す膜貫通型EpCAMを発現する全細胞で免疫することができる。別法としては、マウスを、1−27CD3イプシロンFc融合タンパク質で免疫することもできる(対応する手法は添付する実施例2に記載される)。追加免疫(複数可)の後、血液サンプルをとり、CD3陽性T細胞に対する抗体血清力価を、例えばFACS分析で試験できる。通常、血清力価は、非免疫動物より免疫動物でははるかに高い。
免疫動物は、免疫抗体ライブラリーの構築の基礎を形成できる。そのようなライブラリーの例は、ファージディスプレイライブラリーがある。そのようなライブラリーは、一般的に、例えば“Phage Display: A Laboratory Manual”; Ed. Barbas, Burton, Scott & Silverman; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に開示されている標準的な手順に基づき構築することができる。
非ヒト抗体は、より可変的な抗体ライブラリーの生成のためファージディスプレイによりヒト化でき、次いで選択の間バインダーのために高めることができる。
ファージディスプレイ手法では、抗体ライブラリーをディスプレイするファージのプールのいずれも、標的分子としてそれぞれの抗原を使用して結合体を選択する基礎を形成する。抗原特異的な抗原に結合したファージが単離される中心工程はパニングと呼ばれる。ファージの表面の抗体断片のディスプレイのため、この一般的な方法はファージディスプレイと呼ばれる。選択の好ましい一方法は、ファージによりディスプレイされたscFvのN末端に翻訳融合した繊維状ファージN2ドメインなどの小さいタンパク質の使用である。結合体を単離するのに使用できる、当分野に公知の他のディスプレイ法は、リボソームディスプレイ法である(Groves & Osbourn, Expert Opin Biol Ther. 2005, 5:125 ff; Lipovsek & Pluckthun, J Immunol Methods 2004, 290:52 ffに総評されている)。
1−27CD3ε−FC融合タンパク質へのscFvファージ粒子の結合を示すために、クローニングされたscFvレパートリーを持つファージライブラリーを、それぞれの培養上清からPEG(ポリエチレングリコール)により採取することができる。scFvファージ粒子は、固定化されたCD3ε融合タンパク質とともにインキュベートすることができる。固定化されたCD3εFc融合タンパク質は固体相に被覆することができる。結合体は溶離することができ、溶離液を、新鮮な未感染細菌ホストの感染のために使用できる。ヒトscFv断片をコードする、ファージミドコピーにうまく形質導入された細菌ホストは、再びカルベニシリン耐性に関して選択され、次いで、例えばVCMS13ヘルパーファージに感染させられ、第2ラウンドの抗体ディスプレイ及びインビトロ選択を開始する。通常、合計で4から5ラウンドの選択が実施される。
単離された結合体の結合は、フローサイトメトリーアッセイを利用して、CD3イプシロン陽性Jurkat細胞、HPBall細胞、PBMC又は表面提示されたEpCAMに融合したN末端CD3ε配列を有するトランスフェクトされた真核細胞で試験することができる(添付した実施例4参照)。
アイテム2 ポリペプチド(複数可)が、第1結合ドメインとして同定された結合ドメイン及び細胞表面抗原に結合可能な第2結合ドメインを含む、アイテム1の方法。
本発明の方法により同定されるポリペプチドの第2結合ドメインの生成のため、例えば、本願に定義される二重特異性単鎖抗体、それぞれのヒト及び非チンパンジー霊長類細胞表面抗原の両方に結合するモノクローナル抗体を使用できる。本願に記載される二重特異性ポリペプチドのための適当な結合ドメインを、当分野に記載の組換え法により異種間特異性モノクローナル抗体から誘導できる。ヒト細胞表面抗原及び非チンパンジー霊長類での前記細胞表面抗原のホモログに結合するモノクローナル抗体は、上述のとおりFACSにより試験できる。文献に記載されるハイブリドーマ技術(Milstein and Kohler, Nature 256 (1975), 495−7)も異種間特異性抗体の生成に利用できる。例えば、マウスを、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD33で交互に免疫できる。これらのマウスから、異種間特異性抗体産生ハイブリドーマ細胞をハイブリドーマ技術により単離し、上述のFACSにより分析できる。本願に記載される異種間特異性を示す二重特異性単鎖抗体などの二重特異性ポリペプチドの生成及び分析は以下の実施例に示される。異種間特異性を示す二重特異性単鎖抗体の利点には以下に列記される点がある。
アイテム3 第2結合ドメインがヒト及び/又は非チンパンジー霊長類の細胞表面抗原と結合する、アイテム2の方法。
アイテム4 第1結合ドメインが抗体である、アイテム1から3のいずれかの方法。
アイテム5 抗体が単鎖抗体である、アイテム4の方法。
アイテム6 第2結合ドメインが抗体である、アイテム2から5のいずれかの方法。
アイテム7 CD3εの細胞外ドメインの断片が、配列番号2、4、6又は8に示されるいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドの1つ以上の断片からなる、アイテム1から6のいずれかの方法。
アイテム8 前記断片の長さが、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27アミノ酸残基である、アイテム7の方法。
アイテム9 同定の方法が、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3εとのエピトープに結合可能な異種間特異性結合ドメインを含む複数のポリペプチドをスクリーニングする方法である、アイテム1から8のいずれかの方法。
アイテム10 同定の方法が、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3εのエピトープに結合可能な異種間特異性結合ドメインを含むポリペプチドを精製/単離する方法である、アイテム1から8のいずれかの方法。
アイテム11 異種間特異性結合ドメインの生成のための、アミノ酸配列Gln−Asp−Gly−Asn−Glu−Glu−Met−Gly(配列番号381)又はGln−Asp−Gly−Asn−Glu−Glu−Ile−Gly(配列番号382)を含む最大27アミノ酸のCD3εの細胞外ドメインのN末端断片の使用。本発明の前記使用と調和して、生成した異種間特異性結合ドメインがヒト起源であることが好ましい。
アイテム12 異種間特異性結合ドメインが抗体である、アイテム11による使用。
アイテム13 抗体が単鎖抗体である、アイテム12による使用。
アイテム14 抗体が二重特異性抗体である、アイテム12から13による使用。
これらの実施形態及び他の実施形態は、本発明の説明及び実施例により開示されており、それらに包含される。免疫学における組換え技術及び方法は、例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd edition 2001 ; Lefkovits; Immunology Methods Manual; The Comprehensive Sourcebook of Techniques; Academic Press, 1997; Golemis; Protein−Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual; Cold Spring Laboratory Press, 2002に記載されている。本発明により利用されるべき抗体、方法、使用及び化合物のいずれかに関するさらなる文献は、例えば電子デバイスを利用して公共の図書館及びデータベースから検索できる。例えば、インターネットで利用可能な公共データベース「Medline」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.htmlで利用できる。さらなるデータベース及びhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/などのアドレス又はhttp://www.embl.de/services/index.htmlでEMBLサービスホームページに列挙されたアドレスは当業者に公知であり、例えばhttp://www. google.comを利用しても得られる。
[図1]異種可溶性タンパク質への霊長類CD3イプシロンのN末端アミノ酸1−27の融合。
[図2]一過性導入された293細胞の上清中で、ヒトIgG1のヒンジ及びFcガンマ領域並びにC末端6ヒスチジンタグに融合した成熟ヒトCD3イプシロンのN末端アミノ酸1−27を含むコンストラクトの存在を検出するELISAアッセイで測定された4連のサンプルの平均吸収値である。「27アミノ酸ヒトCD3E」と名称を付けられた第1カラムは、コンストラクトの平均吸収値を示し、「無関係な上清」と名称を付けられた第2のカラムは、ネガティブコントロールとして無関係なコンストラクトによりトランスフェクトされた293細胞の上清の平均値である。コンストラクトで得られた値をネガティブコントロールで得られた値と比較すると、組換えコンストラクトの存在を明らかに示している。
[図3]ヒトIgG1のヒンジ及びFcガンマ領域並びにC末端His6タグに融合した成熟ヒトCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27を含むコンストラクトへの、ペリプラズム発現された単鎖抗体の粗調製物の形態である異種間特異性抗CD3結合分子の結合を検出するELISAアッセイで測定された4連のサンプルの平均吸収値を示す。カラムは、左から右へ、A2J HLP、I2C HLP、E2M HLP、F7O HLP、G4H HLP、H2C HLP、E1L HLP、F12Q HLP、F6A HLP及びH1E HLPと呼ばれる特異性の平均吸収値を示す。「ネガティブコントロール」と呼ばれる一番右のカラムは、ネガティブコントロールとしてネズミ抗ヒトCD3抗体の単鎖調製物の平均吸収値を示す。抗CD3特異性で得られた値とネガティブコントロールで得られた値を比べると、成熟ヒトCD3イプシロン鎖のN末端1−27アミノ酸への抗CD3特異性の強い結合を明らかに示している。
[図4]異種膜結合タンパク質への霊長類CD3イプシロンのN末端アミノ酸1−27の融合。
[図5]カニクイザルEpCAM並びにそれぞれ、ヒト、マーモセット、タマリン、リスザル及び家畜ブタのCD3イプシロン鎖のN末端1−27アミノ酸からなる組換え膜貫通型融合タンパク質の存在を検出するFACSアッセイで試験された異なるトランスフェクタントのヒストグラムオーバーレイである。ヒストグラムオーバーレイは、左から右へ、上から下へ、それぞれヒト27量体、マーモセット27量体、タマリン27量体、リスザル27量体及びブタ27量体を含むコンストラクトを発現するトランスフェクタントの結果を示す。個別のオーバーレイで、細線はネガティブコントロールとして抗FlagM2の代わりに2%FCSを含むPBSでインキュベートされたサンプルを表し、太線は抗FlagM2抗体とともにインキュベートされたサンプルを表す。各コンストラクトで、ヒストグラムのオーバーレイは、トランスフェクタントへの抗FlagM2抗体の結合を示し、トランスフェクタントでの組換えコンストラクトの発現を明らかに示している。
[図6A]カニクイザルEpCAMにそれぞれ融合したヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27への、ペリプラズム発現された単鎖抗体の粗調製物の形態である異種間特異性抗CD3結合分子の結合を検出するFACSアッセイで測定された種々のトランスフェクタントのヒストグラムオーバーレイである。
ヒストグラムオーバーレイは、左から右へ、上から下へ、H2C HLP、F12Q HLP、E2M HLP及びG4H HLPとそれぞれ称されるCD3特異的結合分子とともに試験されたヒト27量体を含む1−27CD3−EpCAMを発現するトランスフェクタントの結果を示す。
個別のオーバーレイにおいて、細線はネガティブコントロールとしてネズミ抗ヒトCD3抗体の単鎖調製物とともにインキュベートされたサンプルを表し、太線は示されているそれぞれの抗CD3結合分子とともにインキュベートされたサンプルを表す。ブタ27量体トランスフェクタントへの結合の欠如及び図5に示されるコンストラクトの発現レベルを考察すると、ヒストグラムのオーバーレイは、カニクイザルEpCAMに融合したそれぞれヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27を含む組換え膜貫通型融合タンパク質を発現する細胞への、完全に異種間特異的なヒト二重特異性単鎖抗体の試験された抗CD3特異性の特異的で強い結合を示し、したがって、抗CD3結合分子の多種霊長類異種間特異性を示す。
[図6B]カニクイザルEpCAMにそれぞれ融合したヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27への、ペリプラズム発現された単鎖抗体の粗調製物の形態である異種間特異性抗CD3結合分子の結合を検出するFACSアッセイで測定された種々のトランスフェクタントのヒストグラムオーバーレイである。
ヒストグラムオーバーレイは、左から右へ、上から下へ、H2C HLP、F12Q HLP、E2M HLP及びG4H HLPとそれぞれ称されるCD3特異的結合分子とともに試験されたマーモセット27量体を含む1−27CD3−EpCAMを発現するトランスフェクタントの結果を示す。
個別のオーバーレイにおいて、細線はネガティブコントロールとしてネズミ抗ヒトCD3抗体の単鎖調製物とともにインキュベートされたサンプルを表し、太線は示されているそれぞれの抗CD3結合分子とともにインキュベートされたサンプルを表す。ブタ27量体トランスフェクタントへの結合の欠如及び図5に示されるコンストラクトの発現レベルを考察すると、ヒストグラムのオーバーレイは、カニクイザルEpCAMに融合したそれぞれヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27を含む組換え膜貫通型融合タンパク質を発現する細胞への、完全に異種間特異的なヒト二重特異性単鎖抗体の試験された抗CD3特異性の特異的で強い結合を示し、したがって、抗CD3結合分子の多種霊長類異種間特異性を示す。
[図6C]カニクイザルEpCAMにそれぞれ融合したヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27への、ペリプラズム発現された単鎖抗体の粗調製物の形態である異種間特異性抗CD3結合分子の結合を検出するFACSアッセイで測定された種々のトランスフェクタントのヒストグラムオーバーレイである。
ヒストグラムオーバーレイは、左から右へ、上から下へ、H2C HLP、F12Q HLP、E2M HLP及びG4H HLPとそれぞれ称されるCD3特異的結合分子とともに試験されたタマリン27量体を含む1−27CD3−EpCAMを発現するトランスフェクタントの結果を示す。
個別のオーバーレイにおいて、細線はネガティブコントロールとしてネズミ抗ヒトCD3抗体の単鎖調製物とともにインキュベートされたサンプルを表し、太線は示されているそれぞれの抗CD3結合分子とともにインキュベートされたサンプルを表す。ブタ27量体トランスフェクタントへの結合の欠如及び図5に示されるコンストラクトの発現レベルを考察すると、ヒストグラムのオーバーレイは、カニクイザルEpCAMに融合したそれぞれヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27を含む組換え膜貫通型融合タンパク質を発現する細胞への、完全に異種間特異的なヒト二重特異性単鎖抗体の試験された抗CD3特異性の特異的で強い結合を示し、したがって、抗CD3結合分子の多種霊長類異種間特異性を示す。
[図6D]カニクイザルEpCAMにそれぞれ融合したヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27への、ペリプラズム発現された単鎖抗体の粗調製物の形態である異種間特異性抗CD3結合分子の結合を検出するFACSアッセイで測定された種々のトランスフェクタントのヒストグラムオーバーレイである。
ヒストグラムオーバーレイは、左から右へ、上から下へ、H2C HLP、F12Q HLP、E2M HLP及びG4H HLPとそれぞれ称されるCD3特異的結合分子とともに試験されたリスザル27量体を含む1−27CD3−EpCAMを発現するトランスフェクタントの結果を示す。
個別のオーバーレイにおいて、細線はネガティブコントロールとしてネズミ抗ヒトCD3抗体の単鎖調製物とともにインキュベートされたサンプルを表し、太線は示されているそれぞれの抗CD3結合分子とともにインキュベートされたサンプルを表す。ブタ27量体トランスフェクタントへの結合の欠如及び図5に示されるコンストラクトの発現レベルを考察すると、ヒストグラムのオーバーレイは、カニクイザルEpCAMに融合したそれぞれヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27を含む組換え膜貫通型融合タンパク質を発現する細胞への、完全に異種間特異的なヒト二重特異性単鎖抗体の試験された抗CD3特異性の特異的で強い結合を示し、したがって、抗CD3結合分子の多種霊長類異種間特異性を示す。
[図6E]カニクイザルEpCAMにそれぞれ融合したヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27への、ペリプラズム発現された単鎖抗体の粗調製物の形態である異種間特異性抗CD3結合分子の結合を検出するFACSアッセイで測定された種々のトランスフェクタントのヒストグラムオーバーレイである。
ヒストグラムオーバーレイは、左から右へ、上から下へ、H2C HLP、F12Q HLP、E2M HLP及びG4H HLPとそれぞれ称されるCD3特異的結合分子とともに試験されたブタ27量体を含む1−27CD3−EpCAMを発現するトランスフェクタントの結果を示す。
個別のオーバーレイにおいて、細線はネガティブコントロールとしてネズミ抗ヒトCD3抗体の単鎖調製物とともにインキュベートされたサンプルを表し、太線は示されているそれぞれの抗CD3結合分子とともにインキュベートされたサンプルを表す。ブタ27量体トランスフェクタントへの結合の欠如及び図5に示されるコンストラクトの発現レベルを考察すると、ヒストグラムのオーバーレイは、カニクイザルEpCAMに融合したそれぞれヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27を含む組換え膜貫通型融合タンパク質を発現する細胞への、完全に異種間特異的なヒト二重特異性単鎖抗体の試験された抗CD3特異性の特異的で強い結合を示し、したがって、抗CD3結合分子の多種霊長類異種間特異性を示す。
[図7]トランスフェクトされたネズミEL4 T細胞上でのヒトCD3イプシロンの検出のためのFACSアッセイ。グラフ解析は、ヒストグラムのオーバーレイを示す。太線は、抗ヒトCD3抗体UCHT−1とともにインキュベートされたトランスフェクトされた細胞を示す。細線は、マウスIgG1アイソタイプコントロールとともにインキュベートされた細胞を表す。抗CD3抗体UCHT−1の結合は、トランスフェクトされたネズミEL4 T細胞の細胞表面でのヒトCD3イプシロン鎖の発現を明らかに示す。
[図8A]アラニンスキャニング実験でのアラニン変異体への異種間特異性抗CD3抗体の結合。個別の図で、カラムは、左から右へ、野生型トランスフェクタント(WT)及び位置1から27からの全てのアラニン変異体の対数スケールでの任意単位の計算結合値を示す。結合値は以下の式を利用して計算される:
(式)
Figure 2010524435
この式において、「サンプル値」は、図に示される特定のアラニン変異体に対する特定の抗CD3抗体の結合の程度を示す任意単位の結合の値を意味し、「サンプル」は、特定のアラニンスキャニングトランスフェクタントにアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「ネガティブコントロール」は、特定のアラニン変異体にアッセイされたネガティブコントロールで得られた幾何平均蛍光値を意味し、UCHT−1は、特定のアラニン変異体にアッセイされたUCHT−1抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「野生型」は、野生型トランスフェクタントでアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、xはそれぞれのトランスフェクタントを明示し、yはそれぞれの抗CD3抗体を明示し、wtはそれぞれのトランスフェクタントが野生型であることを明示する。個々のアラニン変異体の位置は、野生型アミノ酸の1文字のコード及び位置の数により標識づけられている。
キメラIgG分子として発現した異種間特異性抗CD3抗体A2J HLPの結果を示す。位置4(アスパラギン)、位置23(スレオニン)及び位置25(イソロイシン)でのアラニンへの変異体では結合活性の低下が見られる。位置1(グルタミン)、位置2(アスパラギン酸)及び位置3(グリシン)及び位置5(グルタミン酸)でのアラニンへの変異体では結合が完全に失われている。
[図8B]アラニンスキャニング実験でのアラニン変異体への異種間特異性抗CD3抗体の結合。個別の図で、カラムは、左から右へ、野生型トランスフェクタント(WT)及び位置1から27からの全てのアラニン変異体の対数スケールでの任意単位の計算結合値を示す。結合値は以下の式を利用して計算される:
(式)
Figure 2010524435
この式において、「サンプル値」は、図に示される特定のアラニン変異体に対する特定の抗CD3抗体の結合の程度を示す任意単位の結合の値を意味し、「サンプル」は、特定のアラニンスキャニングトランスフェクタントにアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「ネガティブコントロール」は、特定のアラニン変異体にアッセイされたネガティブコントロールで得られた幾何平均蛍光値を意味し、UCHT−1は、特定のアラニン変異体にアッセイされたUCHT−1抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「野生型」は、野生型トランスフェクタントでアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、xはそれぞれのトランスフェクタントを明示し、yはそれぞれの抗CD3抗体を明示し、wtはそれぞれのトランスフェクタントが野生型であることを明示する。個々のアラニン変異体の位置は、野生型アミノ酸の1文字のコード及び位置の数により標識づけられている。
キメラIgG分子として発現した異種間特異性抗CD3抗体E2M HLPの結果を示す。位置4(アスパラギン)、位置23(スレオニン)及び位置25(イソロイシン)でのアラニンへの変異体では結合活性の低下が見られる。位置1(グルタミン)、位置2(アスパラギン酸)及び位置3(グリシン)及び位置5(グルタミン酸)でのアラニンへの変異体では結合が完全に失われている。
[図8C]アラニンスキャニング実験でのアラニン変異体への異種間特異性抗CD3抗体の結合。個別の図で、カラムは、左から右へ、野生型トランスフェクタント(WT)及び位置1から27からの全てのアラニン変異体の対数スケールでの任意単位の計算結合値を示す。結合値は以下の式を利用して計算される:
(式)
Figure 2010524435
この式において、「サンプル値」は、図に示される特定のアラニン変異体に対する特定の抗CD3抗体の結合の程度を示す任意単位の結合の値を意味し、「サンプル」は、特定のアラニンスキャニングトランスフェクタントにアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「ネガティブコントロール」は、特定のアラニン変異体にアッセイされたネガティブコントロールで得られた幾何平均蛍光値を意味し、UCHT−1は、特定のアラニン変異体にアッセイされたUCHT−1抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「野生型」は、野生型トランスフェクタントでアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、xはそれぞれのトランスフェクタントを明示し、yはそれぞれの抗CD3抗体を明示し、wtはそれぞれのトランスフェクタントが野生型であることを明示する。個々のアラニン変異体の位置は、野生型アミノ酸の1文字のコード及び位置の数により標識づけられている。
キメラIgG分子として発現した異種間特異性抗CD3抗体H2C HLPの結果を示す。位置4(アスパラギン)でのアラニンへの変異体では結合活性の低下が見られる。位置1(グルタミン)、位置2(アスパラギン酸)及び位置3(グリシン)及び位置5(グルタミン酸)でのアラニングルタミンへの変異体では結合が完全に失われている。
[図8D]アラニンスキャニング実験でのアラニン変異体への異種間特異性抗CD3抗体の結合。個別の図で、カラムは、左から右へ、野生型トランスフェクタント(WT)及び位置1から27からの全てのアラニン変異体の対数スケールでの任意単位の計算結合値を示す。結合値は以下の式を利用して計算される:
(式)
Figure 2010524435
この式において、「サンプル値」は、図に示される特定のアラニン変異体に対する特定の抗CD3抗体の結合の程度を示す任意単位の結合の値を意味し、「サンプル」は、特定のアラニンスキャニングトランスフェクタントにアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「ネガティブコントロール」は、特定のアラニン変異体にアッセイされたネガティブコントロールで得られた幾何平均蛍光値を意味し、UCHT−1は、特定のアラニン変異体にアッセイされたUCHT−1抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「野生型」は、野生型トランスフェクタントでアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、xはそれぞれのトランスフェクタントを明示し、yはそれぞれの抗CD3抗体を明示し、wtはそれぞれのトランスフェクタントが野生型であることを明示する。個々のアラニン変異体の位置は、野生型アミノ酸の1文字のコード及び位置の数により標識づけられている。
ペリプラズム発現した単鎖抗体として試験される、異種間特異性抗CD3抗体F12Q HLPの結果を示す。位置1(グルタミン)、位置2(アスパラギン酸)及び位置3(グリシン)及び位置5(グルタミン酸)でのアラニンへの変異体では結合が完全に失われている。
[図9]N末端His6タグがある場合と無い場合のヒトCD3への、異種間特異性抗CD3結合分子H2C HLPの結合を検出するFACSアッセイ。ヒストグラムオーバーレイは、異種間特異性結合分子H2C HLPの結合を検出するFACSアッセイで試験された、野生型ヒトCD3イプシロン鎖(左のヒストグラム)又はN末端His6タグがあるヒトCD3イプシロン鎖(右のヒストグラム)によりトランスフェクトされたEL4細胞株で実施される。サンプルは、ネガティブコントロールとして適当なアイソタイプコントロールと(細線)、ポジティブコントロールとして抗ヒトCD3抗体UCHT−1と(点線)及びキメラIgG分子の形態の異種間特異性抗CD3抗体H2C HLPと(太線)ともにインキュベートされる。
ヒストグラムオーバーレイは、組換え構築体の両方の発現を示すアイソタイプコントロールに比べ、両トランスフェクタントへのUCHT−1抗体の同等な結合を示す。ヒストグラムオーバーレイは、His6ヒトCD3イプシロン鎖でなく、野生型ヒトCD3イプシロン鎖のみへの抗CD3結合分子H2C HLPの結合も示す。これらの結果は、異種間特異性抗CD3結合分子H2C HLPの結合にはフリーのN末端が必須であることを表す。
[図10]FACS分析による、細胞上でのCD3結合のKD値を測定する、ヒトCD3陽性PBMCへのEGFR−21−63 LH x H2Cの飽和結合。このアッセイは、実施例7に記載されるとおり実施される。
[図11a]ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、カニクイザルEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は実施例12に記載のとおり実施される。太線は、2μg/mlの精製タンパク質とともにインキュベートされ、その後抗his抗体及びPE標識検出抗体とともにインキュベートされた細胞を表す。細いヒストグラムの線はネガティブコントロールを表す:細胞は、抗his抗体及び検出抗体とインキュベートされるのみである。
[図11b]ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、カニクイザルEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は実施例12に記載のとおり実施される。太線は、2μg/mlの精製タンパク質とともにインキュベートされ、その後抗his抗体及びPE標識検出抗体とともにインキュベートされた細胞を表す。細いヒストグラムの線はネガティブコントロールを表す:細胞は、抗his抗体及び検出抗体とインキュベートされるのみである。
[図11c]ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、カニクイザルEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は実施例12に記載のとおり実施される。太線は、2μg/mlの精製タンパク質とともにインキュベートされ、その後抗his抗体及びPE標識検出抗体とともにインキュベートされた細胞を表す。細いヒストグラムの線はネガティブコントロールを表す:細胞は、抗his抗体及び検出抗体とインキュベートされるのみである。
[図11d]ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、カニクイザルEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は実施例12に記載のとおり実施される。太線は、2μg/mlの精製タンパク質とともにインキュベートされ、その後抗his抗体及びPE標識検出抗体とともにインキュベートされた細胞を表す。細いヒストグラムの線はネガティブコントロールを表す:細胞は、抗his抗体及び検出抗体とインキュベートされるのみである。
[図12a]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性EGFR特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)及びB)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例13に記載のとおり実施される。
[図12b]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性EGFR特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)及びB)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例13に記載のとおり実施される。
[図12c]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性EGFR特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)及びB)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例13に記載のとおり実施される。
[図12d]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性EGFR特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)及びB)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例13に記載のとおり実施される。
[図13]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性EGFR特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)及びB)マカクザルT細胞株4119LnPxがエフェクター細胞として使用され、カニクイザルEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例13に記載のとおり実施される。
[図14]ヒトMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、カニクイザルMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119 LnPxへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は、実施例17に記載されたとおり実施される。太線は、2μg/mlの精製タンパク質とともにインキュベートされ、その後抗his抗体及びPE標識検出抗体とともにインキュベートされた細胞を表す。細いヒストグラム線はネガティブコントロールを表す。細胞は、抗his抗体及び検出抗体とインキュベートされるのみである。
[図15]ヒトMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、カニクイザルMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119 LnPXへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は、実施例17に記載されたとおり実施される。太線は、2μg/mlの精製タンパク質とともにインキュベートされ、その後抗his抗体及びPE標識検出抗体とともにインキュベートされた細胞を表す。細いヒストグラム線はネガティブコントロールを表す。細胞は、抗his抗体及び検出抗体とインキュベートされるのみである。
[図16]ヒトMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、カニクイザルMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119 LnPXへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は、実施例17に記載されたとおり実施される。太線は、2μg/mlのモノマータンパク質とともにインキュベートされ、その後抗his抗体及びPE標識検出抗体とともにインキュベートされた細胞を表す。細いヒストグラム線はネガティブコントロールを表す。細胞は、抗his抗体及び検出抗体とインキュベートされるのみである。
[図17]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性MCSP特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。B)マカクザルT細胞株4119LnPxがエフェクター細胞として使用され、カニクイザルMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例18に記載のとおり実施される。
[図18]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性MCSP特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)及びB)マカクザルT細胞株4119 LnPxがエフェクター細胞として使用され、カニクイザルMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例18に記載のとおり実施される。
[図19]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性MCSP特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)及びB)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例18に記載のとおり実施される。
[図20]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性MCSP特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。B)マカクザルT細胞株4119 LnPxがエフェクター細胞として使用され、カニクイザルMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例18に記載のとおり実施される。
[図21]示される標的細胞株に向け直された、明示された異種間特異性MCSP特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性。A)刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用され、ヒトMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。B)マカクザルT細胞株4119 LnPxがエフェクター細胞として使用され、カニクイザルMCSP D3によりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞として使用される。アッセイは実施例18に記載のとおり実施される。
[図22−1]50%ヒト血漿とともにそれぞれ37℃及び4℃で24時間インキュベートされた、或いは細胞障害性試験の直前に50%ヒト血漿が添加された、又は血漿が添加されない、明示された単鎖コンストラクトのサンプルにより誘起された、細胞障害活性の測定により試験されるMCSP及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体の血漿安定性。ヒトMCSPによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞株として使用され、刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用される。アッセイは実施例19に記載されるとおり実施される。
[図22−2]50%ヒト血漿とともにそれぞれ37℃及び4℃で24時間インキュベートされた、或いは細胞障害性試験の直前に50%ヒト血漿が添加された、又は血漿が添加されない、明示された単鎖コンストラクトのサンプルにより誘起された、細胞障害活性の測定により試験されるMCSP及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体の血漿安定性。ヒトMCSPによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞株として使用され、刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用される。アッセイは実施例19に記載されるとおり実施される。
[図22−3]50%ヒト血漿とともにそれぞれ37℃及び4℃で24時間インキュベートされた、或いは細胞障害性試験の直前に50%ヒト血漿が添加された、又は血漿が添加されない、明示された単鎖コンストラクトのサンプルにより誘起された、細胞障害活性の測定により試験されるMCSP及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体の血漿安定性。ヒトMCSPによりトランスフェクトされたCHO細胞が標的細胞株として使用され、刺激されたCD4−/CD56−ヒトPBMCがエフェクター細胞として使用される。アッセイは実施例19に記載されるとおり実施される。
[図23a]それぞれ、ヒトHER2によりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、マカクザルHER2によりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119 LnPxへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は、実施例23.4に記載されるとおり実施される。太線は、2μg/ml精製二重特異的単鎖コンストラクトとともにインキュベートされた細胞を表す。細線はネガティブコントロールを表す。2%FCSを含むPBSがネガティブコントロールとして使用された。各種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトで、ヒストグラムのオーバーレイは、ヒト及びマカクザルのHER2並びにヒト及びマカクザルCD3へのコンストラクトの特異的な結合を示す。
[図23b]それぞれ、ヒトHER2によりトランスフェクトされたCHO細胞、ヒトCD3+T細胞株HPB−ALL、マカクザルHER2によりトランスフェクトされたCHO細胞及びマカクザルT細胞株4119 LnPxへの、明示された種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトのFACS結合分析。FACS染色は、実施例23.4に記載されるとおり実施される。太線は、2μg/ml精製二重特異的単鎖コンストラクトとともにインキュベートされた細胞を表す。細線はネガティブコントロールを表す。2%FCSを含むPBSがネガティブコントロールとして使用された。各種間特異的二重特異性単鎖コンストラクトで、ヒストグラムのオーバーレイは、ヒト及びマカクザルのHER2並びにヒト及びマカクザルCD3へのコンストラクトの特異的な結合を示す。
[図24a]ダイヤグラムは、示される標的細胞株へ向け直される、明示される異種間特異性HER2特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性を測定する、クロム放出アッセイの結果を示す。示されるとおり、エフェクター細胞も使用された。アッセイは、実施例23.5に記載されるとおり実施される。ダイヤグラムは、示される各コンストラクトで、それぞれヒト及びマカクザルHER2でトランスフェクトされたCHO細胞に対してヒト及びマカクザルエフェクター細胞の細胞障害活性の潜在的な漸増を明らかに示す。
[図24b]ダイヤグラムは、示される標的細胞株へ向け直される、明示される異種間特異性HER2特異性単鎖コンストラクトにより誘起される細胞障害活性を測定する、クロム放出アッセイの結果を示す。示されるとおり、エフェクター細胞も使用された。アッセイは、実施例23.5に記載されるとおり実施される。ダイヤグラムは、示される各コンストラクトで、それぞれヒト及びマカクザルHER2でトランスフェクトされたCHO細胞に対してヒト及びマカクザルエフェクター細胞の細胞障害活性の潜在的な漸増を明らかに示す。
[図25]選択されたクローンからのFlagタグ付きscFvタンパク質断片を含むペリプラズム調製物のCD3特異的ELISA分析。可溶性ヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質でコートされ、さらに3%BSAを含むPBSでブロックされたELISAプレートのウェルに、可溶性scFvタンパク質断片のペリプラズム調製物が加えられた。検出は、モノクローナル抗Flag−ビオチン−標識抗体、次いでペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンにより実施された。ELISAは、ABTS基質溶液により展開された。OD値(y軸)は、ELISAリーダーにより405nmで測定された。クローン名がx軸上に示されている。
[図26]選択されたクローンからのFlagタグ付きscFvタンパク質断片を含むペリプラズム調製物のELISA分析。hulgG1(Sigma)とともにヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質でコートされ、さらに3%BSAを含むPBSでブロックされたELISAプレートのウェルに、図25と同じ可溶性scFvタンパク質断片のペリプラズム調製物が加えられた。
検出は、モノクローナル抗Flag−ビオチン−標識抗体、次いでペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンにより実施された。ELISAは、ABTS基質溶液により展開された。OD値(y軸)は、ELISAリーダーにより405nmで測定された。クローン名がx軸上に示されている。
本発明のより良い理解及び多くの利点を提供する、実例となる非限定的な以下の実施例により、本発明はさらに説明される。
1.非ヒト霊長類の血液サンプルからのCD3イプシロン配列の同定
以下の非ヒト霊長類、カリスリクス・ジャカス、サグイヌス・オイディプス及びサイミリ・シウレウスの血液サンプルを、CD3イプシロン同定に使用した。新鮮なヘパリン処理全血サンプルを、製造業者のプロトコルに従い(QIAamp RNA Blood Mini Kit、Qiagen)トータル細胞RNAの単離のために調製した。抽出したmRNAは、発表されているプロトコルに従いcDNAに転写した。簡単に言うと、10μlの沈殿したRNAを、1.2μlの10×ヘキサヌクレオチドミックス(Roche)と70℃で10分間インキュベートし、氷上で保存した。4μlの5×superscript IIバッファ、0.2μlの0.1Mジチオスレイトール、0.8μlのsuperscript II(Invitrogen)、1.2μlのデオキシリボヌクレオシド三リン酸(25μM)、0.8μlのRNase Inhibitor(Roche)及び1.8μlのDNase・RNaseフリーウォーター(Roche)からなる反応ミックスを加えた。反応ミックスを、室温で10分間インキュベートし、次いで42℃で50分間、90℃で5分間インキュベートした。反応を氷上で冷却してから、0.8μlのRNaseH(1U/μl、Roche)を加え、37℃で20分間インキュベートした。
各種からの第1鎖cDNAに、TaqDNAポリメラーゼ(Sigma)及びデータベース研究で設計された以下のプライマー組み合わせを利用して、別々な35サイクルポリメラーゼ連鎖反応を施した:フォワードプライマー5’−AGAGTTCTGGGCCTCTGC−3’(配列番号377);リバースプライマー5’−CGGATGGGCTCATAGTCTG−3’(配列番号378)。増幅された550bpバンドをゲル精製し(Gel Extraction Kit、Qiagen)、配列決定した(Sequiserve、Vaterstetten/ドイツ、配列表参照)。
CD3イプシロン、カリスリクス・ジャカス
ヌクレオチド
CAGGACGGTAATGAAGAAATGGGTGATACTACACAGAACCCATATAAAGTTTCCATCTCAGGAACCACAGTAACACTGACATGCCCTCGGTATGATGGACATGAAATAAAATGGCTCGTAAATAGTCAAAACAAAGAAGGTCATGAGGACCACCTGTTACTGGAGGACTTTTCGGAAATGGAGCAAAGTGGTTATTATGCCTGCCTCTCCAAAGAGACTCCCGCAGAAGAGGCGAGCCATTATCTCTACCTGAAGGCAAGAGTGTGTGAGAACTGCGTGGAGGTGGAT
アミノ酸
QDGNEEMGDTTQNPYKVSISGTTVTLTCPRYDGHEIKWLVNSQNKEGHEDHLLLEDFSEMEQSGYYACLSKETPAEEASHYLYLKARVCENCVEVD
CD3イプシロン、サグイヌス・オイディプス
ヌクレオチド
CAGGACGGTAATGAAGAAATGGGTGATACTACACAGAACCCATATAAAGTTTCCATCTCAGGAACCACAGTAACACTGACATGCCCTCGGTATGATGGACATGAAATAAAATGGCTTGTAAATAGTCAAAACAAAGAAGGTCATGAGGACCACCTGTTACTGGAGGATTTTTCGGAAATGGAGCAAAGTGGTTATTATGCCTGCCTCTCCAAAGAGACTCCCGCAGAAGAGGCGAGCCATTATCTCTACCTGAAGGCAAGAGTGTGTGAGAACTGCGTGGAGGTGGAT
アミノ酸
QDGNEEMGDTTQNPYKVSISGTTVTLTCPRYDGHEIKWLVNSQNKEGHEDHLLLEDFSEMEQSGYYACLSKETPAEEASHYLYLKARVCENCVEVD
CD3イプシロン、サイミリ・シウレウス
ヌクレオチド
CAGGACGGTAATGAAGAGATTGGTGATACTACCCAGAACCCATATAAAGTTTCCATCTCAGGAACCACAGTAACACTGACATGCCCTCGGTATGATGGACAGGAAATAAAATGGCTCGTAAATGATCAAAACAAAGAAGGTCATGAGGACCACCTGTTACTGGAAGATTTTTCAGAAATGGAACAAAGTGGTTATTATGCCTGCCTCTCCAAAGAGACCCCCACAGAAGAGGCGAGCCATTATCTCTACCTGAAGGCAAGAGTGTGTGAGAACTGCGTGGAGGTGGAT
アミノ酸
QDGNEEIGDTTQNPYKVSISGTTVTLTCPRYDGQEIKWLVNDQNKEGHEDHLLLEDFSEMEQSGYYACLSKETPTEEASHYLYLKARVCENCVEVD
2.ヒト及び異なる非チンパンジー霊長類のCD3イプシロンのN末端アミノ酸1−27に結合する異種間特異性単鎖抗体断片(scFv)の生成
2.1 異種可溶性タンパク質への融合による、そのナイーブCD3コンテクストから分離されるCD3イプシロンのN末端を利用するマウスの免疫
balb/c x c57黒交配の10週齢のF1マウスを、ヒト及び/又はサイミリ・シウレウスの成熟CD3イプシロン鎖の最もN末端アミノ酸1−27を持つCD3イプシロンFc融合タンパク質(1−27CD3−Fc)で免疫した。このために、マウスあたり300μlのPBS中の40μgの1−27CD3Fc融合タンパク質を、10nmolのチオアート修飾CpG−オリゴヌクレオチド(5’−tccatgacgttcctgatgct−3’)とともに腹腔内に注射した。マウスには、21日後、42日後、任意に63日後に追加免疫を同様に与えた。最初の追加免疫の10日後に、血液サンプルをとり、1−27CD3Fc融合タンパク質に対する抗体血清力価をELISAにより試験した。追加的に、CD3陽性ヒトT細胞株HPBallに対する力価も、標準プロトコルによりフローサイトメトリーで試験した。血清力価は、非免疫動物よりも免疫動物で著しく高かった。
2.2 免疫マウス抗体scFvライブラリーの生成:コンビナトリアル抗体ライブラリー及びファージディスプレイの構築
最後の注射の3日後、マウスの脾臓細胞を、標準プロトコルによりトータルRNAの調製のために摘出した。
マウス免疫グロブリン(Ig)軽鎖(カッパ)可変領域(VK)及びIg重鎖可変領域(VH)DNA断片のライブラリーを、VK及びVH特異的なプライマーを利用してマウス脾臓RNAに対するRT−PCRにより構築した。cDNAは、標準プロトコルにより合成した。
増幅した重鎖V断片のための5’−Xhol及び3’−BstEll認識部位及び増幅したVK DNA断片のための5’−Sacl及び3’−Spel認識部位を生じるように、プライマーを設計した。
VH DNA断片のPCR増幅のために、8つの異なる5’−VHファミリー特異性プライマー(MVHI(GC)AG GTG CAG CTC GAG GAG TCA GGA CCT;MVH2 GAG GTC CAG CTC GAG CAG TCT GGA CCT;MVH3 CAG GTC CAA CTC GAG CAG CCT GGG GCT;MVH4 GAG GTT CAG CTC GAG CAG TCT GGG GCA;MVH5 GA(AG) GTG AAG CTC GAG GAG TCT GGA GGA;MVH6 GAG GTG AAG CTT CTC GAG TCT GGA GGT;MVH7 GAA GTG AAG CTC GAG GAG TCT GGG GGA;MVH8 GAG GTT CAG CTC GAG CAG TCT GGA GCT)をそれぞれ、1つの3’−VHプライマー(3’MuVHBstEll tga gga gac ggt gac cgt ggt ccc ttg gcc cca g)と組み合わせた:VK鎖断片のPCR増幅のために、7つの異なる5’−VKファミリー特異性プライマー(MUVK1 CCA GTT CCG AGC TCG TTG TGA CTC AGG AAT CT;MUVK2 CCA GTT CCG AGC TCG TGT TGA CGC AGC CGC CC;MUVK3 CCA GTT CCG AGC TCG TGC TCA CCC AGT CTC CA;MUVK4 CCA GTT CCG AGC TCC AGA TGA CCC AGT CTC CA;MUVK5 CCA GAT GTG AGC TCG TGA TGA CCC AGA CTC CA;MUVK6 CCA GAT GTG AGC TCG TCA TGA CCC AGT CTC CA;MUVK7 CCA GTT CCG AGC TCG TGA TGA CAC AGT CTC CA)を、それぞれ、1つの3’−VKプライマー(3’MuVkHindIII/BsiW1 tgg tgc act agt cgt acg ttt gat ctc aag ctt ggt ccc)と組み合わせた。
以下のPCRプログラムを増幅に利用した:94℃で20秒間変性;52℃で50秒間プライマーアニーリング及び72℃で60秒間プライマー伸長及び40サイクル、次いで72℃で10分間の最終伸長。
450ngのカッパ軽鎖断片(Sacl−Spel消化)を、1400ngのファージミドpComb3H5Bhis(Sacl−Spel消化;大きい断片)とライゲーションした。次いで、得られたコンビナトリアル抗体ライブラリーを、エレクトロポレーション(2.5kV、0.2cmギャップキュベット、25uFD、200オーム、Biorad ジーンパルサー)により300μlのエレクトロコンピテント大腸菌(Escherichia coli)XL1 Blue細胞中に形質転換し、10を超える独立クローンのライブラリーサイズを得た。表現型発現の1時間後、陽性形質転換体を、100mlの液体スーパーブロス(SB)培地中で一晩、pComb3H5BHisベクターによりコードされるカルベニシリン耐性に関して選択した。次いで、細胞を遠心分離により採取し、市販のプラスミド調製キット(Qiagen)を利用してプラスミド調製を実施した。
VKライブラリーを含む2800ngのこのプラスミドDNA(Xhol−BstEII消化;大きい断片)を、900ngの重鎖V断片(Xhol−BstEII消化)にライゲーションし、エレクトロポリマーレーション(2.5kV、0.2cmギャップキュベット、25uFD、200オーム)により再びエレクトロコンピテント大腸菌XL1 Blue細胞の2つの300μlアリコート中に形質転換し、10を超える独立クローンの総VH−VK scFv(単鎖可変断片)ライブラリーサイズを得た。
表現型発現及びカルベニシリンへのゆっくりとした適応の後、抗体ライブラリーを含む大腸菌細胞を、SB−カルベニシリン(50μg/ml)の選択培地に移した。次いで、抗体ライブラリーを含む大腸菌細胞を、ヘルパーファージVCSM13の1012粒子の感染量に感染させ、繊維状M13ファージの産生及び分泌を得たが、ファージ粒子は、マウスscFv断片をコードする単鎖pComb3H5BHis−DNAを含み、ファージコートタンパク質IIIへの翻訳融合として対応するscFvタンパク質を提示した。抗体ライブラリーを提示するファージのプールは、後に抗体結合体の選択に使用した。
2.3ファージディスプレイに基づくCD3特異性バインダーの選択
クローニングされたscFvレパートリーを持つファージライブラリーを、PEG8000/NaCl沈殿及び遠心分離によりそれぞれの培養上清から採取した。およそ1011から1012のscFvファージ粒子を、0.4mlのPBS/0.1%BSAに再懸濁し、10から10のJurkat細胞(CD3陽性ヒトT細胞株)と共に氷上で1時間ゆっくりと攪拌しながらインキュベートした。これらのJurkat細胞は、事前に、ウシ胎児血清(10%)、グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを富化したRPMI培地中で生育し、遠心分離により採取し、PBSで洗浄して、PBS/1%FCS(アジ化ナトリウム含有)に再懸濁した。Jurkat細胞に特異的に結合しないscFvファージは、最大5回のPBS/1%FCS(アジ化ナトリウム含有)による洗浄工程により除去した。洗浄の後、細胞をHCl−グリシン pH2.2(10分間インキュベート、その後ボルテックス処理)に再懸濁して結合体を細胞から溶出し、2MのTris pH12で中和の後、溶出液を、新鮮な未感染大腸菌XL1 Blue培養液(OD600>0.5)の感染に使用した。ヒトscFv断片をコードする、ファージミドコピーによりうまくトランスフェクトされた大腸菌細胞を含む大腸菌培養液を、再びカルベニシリン耐性で選択し、次いでVCMS 13ヘルパーファージに感染させて、抗体ディスプレイ及びインビトロ選択の第2ラウンドを開始した。通常、4から5ラウンドの選択を実施した。
2.4 CD3特異性バインダーのスクリーニング
4から5ラウンドのパニングに相当するプラスミドDNAを、選択の後大腸菌培養液から単離した。可溶性scFvタンパク質の産生のため、VH−VL−DNA断片をプラスミドから切除した(Xhol−Spel)。これらの断片を、元々のpComb3H5BHisとは、発現コンストラクト(例えばscFv)がscFvとHis6−タグの間にFlagタグ(TGD YKDDDDK)を含む点で異なるプラスミドpComb3H5BFlag/His中で、同じ制限部位によりクローニングし、追加のファージタンパク質を排除した。ライゲーションの後、プラスミドDNAの各プール(異なるパニングのラウンド)を、100μlヒートショックコンピテント大腸菌TG1又はXL1−Blue中に形質転換し、カルベニシリンLBアガーに播種した。単一のコロニーを100μlのLB carb(50ug/ml)に選び入れた。
VL及びVHセグメントを含むpComb3H5BHisにより形質転換された大腸菌は、遺伝子III断片の切除及び1mM IPTGによる誘導の後、可溶性scFvを十分な量産生する。好適なシグナル配列により、scFv鎖はペリプラズムにエクスポートされ、機能的コンフォメーションに折り畳まれる。
形質転換プレートから単一の大腸菌TG1細菌コロニーを、小スケールペリプラズム調製物のために選び取り、採取の後、20mM MgCl及びカルベニシリン50μg/mlを補い(及びPBS(例えば1ml)に再溶解された)SB培地(例えば10ml)中で増殖させた。−70℃での冷凍及び37℃での解凍の4ラウンドにより、細菌の外膜を温度ショックにより破壊し、scFvを含む可溶性ペリプラズムタンパク質を上清中に放出させた。無傷の細胞及び細胞片を遠心分離で除去した後、ヒト抗ヒトCD3−scFvを含む上清を回収し、さらなる実験に使用した。
2.5 CD3特異性バインダーの同定
単離したscFvの結合を、真核細胞上でフローサイトメトリーにより試験したが、真核細胞は、その表面で、そのN末端でCD3イプシロンの最初の27N末端アミノ酸を提示する異種タンパク質を発現する。
実施例4に記載されるとおり、ヒトT細胞レセプター複合体の成熟CD3イプシロン鎖のN末端配列の最初のアミノ酸1−27(アミノ酸配列: QDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILT)を、N末端が外部細胞表面に位置するように、膜貫通型タンパク質EpCAMのN末端に融合した。さらに、FLAGエピトープを、N末端1−27CD3イプシロン配列とEpCAM配列の間に挿入した。この融合産物は、ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK)及びチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)中に発現した。
他の霊長類種の成熟CD3イプシロンの27の最もN末端アミノ酸を提示する真核細胞は、サイミリ・シウレウス(リスザル)(CD3イプシロンN末端アミノ酸配列:QDGNEEIGDTTQNPYKVSISGTTVTLT)、カリスリクス・ジャカス(CD3イプシロンN末端アミノ酸配列: QDGNEEMGDTTQNPYKVSISGTTVTLT)及びサグイヌス・オイディプス(CD3イプシロンN末端アミノ酸配列:QDGNEEMGDTTQNPYKVSISGTTVTLT)に対して同様に調製した。
フローサイトメトリーには、2.5×10細胞を、50μlの上清又は2%FCSを含む50μlのPBS中で5μg/mlの精製コンストラクトと共にインキュベートする。コンストラクトの結合は、2%FCSを含む50μlのPBS中で2μg/mlで抗His抗体(Penta−His Antibody、BSA不含、Qiagen GmbH、ヒルデン、ドイツ)により検出された。第2工程試薬として、2%FCSを含む50μl PBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG(Fc−ガンマ断片特異性)(Dianova、ハンブルグ、ドイツ)を使用した。サンプルを、FACSscan(BD biosciences、ハイデルブルグ、ドイツ)で測定した。
結合は、ヒト及び異なる霊長類(サイミリ・シウレウス、カリスリクス・ジャカス、サグイヌス・オイディプス)の一次T細胞上で前記段落に記載されたとおりフローサイトメトリーにより常に確認した。
2.6 非ヒトCD3イプシロン特異性scFvのヒト/ヒト化等価物の生成
マウス抗CD3scFvのVH領域を、ヒト抗体生殖細胞株アミノ酸配列に対して整列させた。非ヒトVHに最も近い相同性を有する、ヒト抗体生殖細胞株VH配列を選び、2つのアミノ酸配列の直接整列を実施した。ヒトVHフレームワーク領域とは異なる、非ヒトVHのフレームワーク残基が多くあった(「異なるフレームワーク位置」)。これらの残基のいくつかは、標的への抗体の結合及び活性に寄与しているかも知れない。
マウスCDRと、選択されたヒトVH配列とは異なる全てのフレームワーク位置に両方の可能性(ヒト及び母系マウスアミノ酸残基)を含むライブラリーを構築するために、変性したオリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチドは、異なる部位で、75%の確率でヒトの残基を、25%の確率でマウスの残基を取り込む。1つのヒトVHでは、例えば、およそ20ヌクレオチドの末端ストレッチに重複する、これらのオリゴヌクレオチドの6つが合成されなくてはならなかった。このために、1つおきのプライマーはアンチセンスプライマーであった。オリゴヌクレオチド内の後のクローニングに必要な制限部位を削除した。
これらのプライマーは、V配列全体に拡がるのに必要とされるプライマーの数により、60から90ヌクレオチドの長さを有することがある。
これらの、例えば6つのプライマーを同量(例えば、1μlの各プライマー(プライマーストック、20から100μM)を20μlのPCR反応に)で混合し、PCRバッファ、ヌクレオチド及びTaqポリメラーゼからなるPCRミックスに加えた。このミックスを94℃で3分間、65℃で1分間、62℃で1分間、59℃で1分間、56℃で1分間、52℃で1分間、50℃で1分間、72℃で10分間、PCRサイクラー中でインキュベートした。その後、産物を、アガロースゲル電気泳動にかけ、200から400のサイズの産物を標準法によりゲルから単離した。
次いで、このPCR産物を鋳型として、N末端及びC末端好適クローニング制限部位を取り込むプライマーを利用して、標準PCR反応に使用した。適当なサイズのDNA断片(VHではおよそ350ヌクレオチド)を、標準法によりアガロースゲル電気泳動により単離した。このようにして、十分なVH DNA断片を増幅した。このVH断片は、それぞれの異なるフレームワーク位置で、それぞれに異なる量のヒト及びマウス残基を有するVH断片のプールであった(ヒト化VHのプール)。同じ手順を、マウス抗CD3scFvのVL領域にも実施した(ヒト化VLのプール)。
次いで、ヒト化VHのプールを、ファージディスプレイベクターpComb3H5Bhis中でヒト化VLのプールと組み合わせ、機能性scFvのライブラリーを形成し、繊維状ファージ上での提示の後、ここから母系非ヒト(マウス)抗CD3scFvに関して上述のとおり抗CD3バインダーを選択し、スクリーニングし、同定し、確認した。次いで、単一のクローンを、望ましい性質及びアミノ酸配列に関して分析した。ヒト生殖細胞株Vセグメントに、アミノ酸配列相同性で最も近いこれらのscFvは好ましく、VHのCDRI及びII並びにVLカッパのCDRI及びII並びにVLラムダのCDRI及びIIの中の少なくとも1つのCDRが、全てのヒト生殖細胞株Vセグメントの最も近いそれぞれのCDRに、80%を超えるアミノ酸配列同一性を示す物が特に好ましい。抗CD3scFvを、以下の実施例10及び16に記載されるとおり組換え二重特異性単鎖抗体に変換し、さらにキャラクタリゼーションした。
3.IgG1のFc部に融合したヒトCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27の組換え融合タンパク質の生成(1−27CD3−Fc)
3.1 1−27CD−3Fcのクローニング及び発現
ヒト免疫グロブリンIgG1のヒンジ及びFcガンマ領域並びに6ヒスチジンタグに融合したヒトCD3イプシロン鎖の1−27N末端アミノ酸のコード配列は、標準プロトコルによる遺伝子合成により得た(組換え融合タンパク質のcDNA配列及びアミノ酸配列は、配列番号350及び349に記されている)。遺伝子合成断片は、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位をまず含み、次いで19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチド、次いでフレームを合わせて成熟ヒトCD3イプシロン鎖の細胞外部分の最初の27アミノ酸のコード配列、次いでフレームを合わせてヒトIgG1のヒンジ領域及びFcガンマ部分のコード配列、次いでフレームを合わせて6ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように設計した(図1)。遺伝子合成断片は、融合タンパク質をコードするcDNAの最初及び最後に制限部位を導入するようにも設計した。導入された制限部位、5’末端でのEcoRI及び3’末端でのSallは、以下のクローニング手順で利用する。遺伝子合成断片を、標準プロトコルに従い、EcoRI及びSallによりpEF−DHFRと呼ばれるプラスミド中にクローニングした(pEF−DHFRは、Mack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021−7025に記載されている)。配列実証済みプラスミドを、製造業者のプロトコルに従い、FreeStyle 293 Expression System(Invitrogen GmbH、カールスルーエ、ドイツ)でのトランスフェクションに使用した。3日後、トランスフェクタントの細胞培養上清を採取し、ELISAアッセイで組換えコンストラクトの存在を試験した。ヤギ抗ヒトIgG、Fcガンマ断片特異性抗体(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.ニューマーケット、サフォーク、英国から入手)をPBS中に希釈し5μg/mlとし、MaxiSorp 96ウェルELISAプレート(Nunc GmbH & Co.KG、ヴィースバーデン、ドイツ)にウェルあたり100μlで、4℃で一晩コーティングした。ウェルを、0.05%Tween20を含むPBS(PBS/Tween)で洗浄し、室温(RT)で60分間PBS中3%BSA(ウシアルブミン、V分画、Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)でブロックした。その後、ウェルをPBS/Tweenで再び洗浄し、次いで60分間RTで細胞培養上清とともにインキュベートした。洗浄の後、ウェルを、1%BSAを含むPBSに1:500で希釈したペルオキシダーゼ結合抗His6抗体(Roche Diagnostics GmbH,Roche Applied Science、マンハイム、ドイツ)とともに60分間RTでインキュベートした。その後、ウェルを200μlのPBS/Tweenで洗浄し、100μlのSIGMAFAST OPD(SIGMAFAST OPD(o−フェニレンジアミンジヒドロクロライド)基質溶液(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)を、製造業者のプロトコルに従い加えた。100μlの1M HSOを加えて反応を停止した。呈色反応を、PowerWaveXマイクロプレート分光光度計(BioTek Instruments,Inc、ウィヌースキ、バーモント州、米国)で、490nmで測定し、620nmでのバックグラウンド吸収を差し引いた。図2に示されるとおり、ネガティブコントロールとして使用した模擬トランスフェクションHEK293細胞の無関係な上清に比べ、コンストラクトの存在がはっきりと検出できた。
3.2 1−27CD3−Fcへの異種間特異性単鎖抗体の結合アッセイ
1−27CD3−Fcへの、CD3イプシロンに特異的なペリプラズム発現した異種間特異性単鎖抗体の粗調製物の結合を、ELISAアッセイで試験した。ヤギ抗ヒトIgG、Fc−ガンマ断片特異性抗体(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.ニューマーケット、サフォーク、英国)をPBS中に希釈し5μg/mlとし、MaxiSorp 96ウェルELISAプレート(Nunc GmbH & Co.KG、ヴィースバーデン、ドイツ)にウェルあたり100μlで、4℃で一晩コーティングした。ウェルを、0.05%Tween20を含むPBS(PBS/Tween)で洗浄し、RTで60分間PBS中3%BSA(ウシアルブミン、V分画、Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)でブロックした。その後、ウェルをPBS/Tweenで洗浄し、次いで60分間RTで1−27CD3−Fcコンストラクトを発現する細胞の上清とともにインキュベートした。ウェルを、PBS/Tweenで洗浄し、ペリプラズム発現した異種間特異性単鎖抗体の粗調製物とともに室温で60分間インキュベートした。PBS/Tweenで洗浄した後、ウェルを1%BSAを含むPBSに1:10000で希釈したペルオキシダーゼ結合抗Flag M2抗体(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)とともに60分間RTでインキュベートした。その後、ウェルをPBS/Tweenで洗浄し、100μlのSIGMAFAST OPD(OPD(o−フェニレンジアミンジヒドロクロライド))基質溶液(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)とともに、製造業者のプロトコルに従いインキュベートした。100μlの1M HSOを加えて呈色反応を停止し、PowerWaveXマイクロプレート分光光度計(BioTek Instruments,Inc、ウィヌースキ、バーモント州、米国)で、490nmで測定し、620nmでのバックグラウンド吸収を差し引いた。マウス抗CD3単鎖抗体に比べ、1−27CD3−Fcコンストラクトへの、CD3イプシロンに特異的な異種間特異性ヒト単鎖抗体の強い結合を観察した(図3)。
4. カニクイザル由来のEpCAMに融合した異なる非チンパンジー霊長類由来のCD3イプシロンのN末端アミノ酸1−27の組換え膜貫通型融合タンパク質の生成(1−27CD3−EpCAM)
4.1 1−27CD3−EpCAMのクローニング及び発現
異なる非チンパンジー霊長類(マーモセット、タマリン、リスザル)及びブタから、CD3イプシロンを単離した。Flagタグ付きカニクイザルEpCAMのN末端に融合した、成熟ヒト、コモンマーモセット(カリスリックス・ジャカス)、ワタボウシタマリン(サグイヌス・オイディプス)、コモンリスザル(サイミリ・シウレウス)及び家畜ブタ(サス・スクローファ、Sus Scrofa;ネガティブコントロールとして使用)のCD3イプシロン鎖の1−27N末端アミノ酸のコード配列を、標準プロトコルに従い、遺伝子合成により得た。組換え融合タンパク質のcDNA配列及びアミノ酸配列は、配列番号351から360に示されている。遺伝子合成断片は、第1に、標的発現ベクターにすでに存在する19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチドのコード配列と正しいリーディングフレームでの融合を可能にするBsrGI部位を含むように、次いで、フレームを合わせて成熟CD3イプシロン鎖の細胞外部分のN末端1−27アミノ酸のコード配列を、次いで、フレームを合わせてFlagタグのコード配列を、次いで、フレームを合わせて、成熟カニクイザルEpCAM膜貫通型融合タンパク質のコード配列を含むように設計した(図4)。遺伝子合成断片を、融合タンパク質をコードするcDNAの末端に制限部位を導入するように設計した。導入された制限部位、5’末端でのBsrGI及び3’末端でのSallを、以下のクローニング手順に利用した。遺伝子合成断片を、BsrGI及びSallにより、標準プロトコルに従い、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチドのコード配列をすでに含む、pEF−DHFRと呼ばれるプラスミドの誘導体中にクローニングした(pEF−DHFRは、Mack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021−7025に記載されている)。配列実証済みプラスミドを使用して、製造業者のプロトコルに従い、175mlの細胞培養フラスコ中の接着性293−HEK細胞のために、MATra−A試薬(IBA GmbH、ゲッティンゲン、ドイツ)及び12μgのプラスミドDNAを使用し、293−HEK細胞を一過性導入した。細胞培養の3日後、トランスフェクタントを、標準プロトコルに従い、FACSアッセイにより、組換え膜貫通型タンパク質の細胞表面発現に関して試験した。その目的のため、2.5×10の細胞を、2%FCSを含むPBS中で5μg/mlで抗Flag M2抗体(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)と共にインキュベートした。結合した抗体を、R−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、2%FCSを含むPBS中で1:100のヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異的(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。サンプルを、FACSCalibur(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)で測定した。カニクイザルEpCAM及び、それぞれ、ヒト、マーモセット、タマリン、リスザル及びブタのCD3イプシロン鎖の1−27N末端アミノ酸からなるFlagタグ付き組換え膜貫通型融合タンパク質の、トランスフェクトされた細胞上での発現は、はっきりと検出可能であった(図5)。
4.2 1−27CD3−EpCAMへの異種間特異性抗CD3単鎖抗体の結合
カニクイザルEpCAMに融合した、それぞれヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルCD3イプシロン鎖の1−27N末端アミノ酸への、ペリプラズム発現した異種間特異性抗CD3単鎖抗体の粗調製物の結合を、標準プロトコルに従いFACSアッセイで試験した。その目的のため、2.5×10の細胞を、ペリプラズム発現した異種間特異性抗CD3単鎖抗体(上述のとおり、標準プロトコルに従い調製した)の粗調製物及びネガティブコントロールとしての単鎖マウス抗ヒトCD3抗体とともにインキュベートした。二次抗体として、Penta−His抗体(Qiagen GmbH、ヒルデン、ドイツ)を、2%FCSを含む50μlPBS中で5μg/mlで使用した。抗体の結合は、2%FCSを含むPBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異的(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.、ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。サンプルを、FACSCalibur(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)で測定した。図6(AからE)に示されるとおり、カニクイザルEpCAMに融合した、それぞれヒト、マーモセット、タマリン及びリスザルのCD3イプシロンの1−27N末端アミノ酸からなる組換え膜貫通型タンパク質を発現するトランスフェクタントへの、単鎖抗体の結合が観察された。異種間特異性単鎖抗体の、ネガティブコントロールとして使用したカニクイザルEpCAMに融合したブタの1−27N末端CD3イプシロンからなる融合タンパク質への結合は全く見られなかった。抗CD3単鎖抗体の多霊長類異種間特異性が示された。抗Flag M2抗体と異種間特異性単鎖抗体で得られたシグナルは同等であり、異種間特異性単鎖抗体のCD3イプシロンのN末端アミノ酸1−27への強い結合活性を示している。
5.ヒトCD3イプシロン鎖及びそのアラニン変異体でトランスフェクトされたマウス細胞のアラニンスキャニングによる異種間特異性抗CD3単鎖抗体の結合分析
5.1 ヒト野生型CD3イプシロンのクローニング及び発現
ヒトCD3イプシロン鎖のコード配列は、標準プロトコルに従い遺伝子合成により得た(ヒトCD3イプシロン鎖のcDNA配列及びアミノ酸配列は、配列番号362及び361に記す)。遺伝子合成断片は、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位及びヒトCD3イプシロンをコードするcDNAの最初と最後に制限部位を含むように設計した。導入された制限部位、5’末端でのEcoRI及び3’末端でのSallを以下のクローニング手順で利用した。次いで、以下の標準プロトコルに従い、pEF NEOと呼ばれるプラスミド中で、EcoRI及びSallにより、遺伝子合成断片をクローニングした。pEF NEOは、pEF−DHFR(Mack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021−7025)から、従来の分子クローニングにより、DHFRのcDNAをネオマイシン耐性のcDNAに置換することにより誘導した。配列実証済みプラスミドを使用して、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%HEPES、1%ピルビン酸、1%非必須アミノ酸(全て、Biochrom AG、ベルリン、ドイツ)を補った安定化Lグルタミンを含むRPMI中で、37℃、湿度95%、CO7%で培養したマウスT細胞株EL4(ATCC No.TIB−39)にトランスフェクトした。トランスフェクションは、SuperFect Transfection Reagent(Qiagen GmbH、ヒルデン、ドイツ)及び2μgのプラスミドDNAにより、製造業者のプロトコルに従って実施した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、再び上述の細胞培養培地で、選択のために600μg/mlのG418(PAA Laboratories GmbH、パッシング、オーストリア)とともに培養した。トランスフェクションの16から20日後に、耐性細胞の増殖が観察された。さらに7から14日後、標準プロトコルに従い、ヒトCD3イプシロンの発現に関して、FACS分析により細胞を試験した。2.5×10の細胞を、2%FCSを含むPBS中で5μg/mlで、抗ヒトCD3抗体UCHT−1(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)と共にインキュベートした。抗体の結合は、2%FCSを含むPBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異的(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.、ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。サンプルを、FACSCalibur(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)で測定した。トランスフェクトされたEL4細胞上での、ヒト野生型CD3イプシロンの発現が図7に示されている。
5.2 IgG1抗体としての異種間特異性抗CD3単鎖抗体のクローニング及び発現
異種間特異性抗CD3単鎖抗体の結合を検出する改善された手段を提供するために、H2C HLP、A2J HLP及びE2M HLPを、マウスIgG1及びヒトラムダ定常部とともにIgG1抗体中に変換した。それぞれのIgG抗体の重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、標準プロトコルに従い、遺伝子合成により得た。各特異性の遺伝子合成断片は、まず、コンストラクトの真核細胞発現を可能にするコザック部位を含むように、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチド(配列番号364及び363)を、次いで、フレームを合わせて、それぞれの重鎖可変領域又はそれぞれの軽鎖可変領域のコード配列を、次いで、フレームを合わせて、それぞれ、マウスIgG1の重鎖定常領域のコード配列(配列番号366及び365)又はヒトラムダ軽鎖定常領域のコード配列(配列番号368及び367)を含むように設計した。制限部位は、融合タンパク質をコードするcDNAの最初と最後に導入した。制限部位、5’末端でのEcoRI及び3’末端でのSallを以下のクローニング手順に利用した。遺伝子合成断片は、標準プロトコルに従い、EcoRI及びSallにより、重鎖コンストラクト用にpEF DHFR(Mack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021−7025)と呼ばれるプラスミド中に、軽鎖コンストラクト用にはpEF ADA(pEF ADAは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(3), (2001), 141−150に記載されている)と呼ばれるプラスミド中にクローニングした。配列実証済みプラスミドを、製造業者のプロトコルに従い、FreeStyle 293 Expression System(Invitrogen GmbH、カールスルーエ、ドイツ)中で、それぞれの軽鎖及び重鎖コンストラクトの同時導入に使用した。3日後、トランスフェクタントの細胞培養上清を採取し、アラニンスキャニング実験に使用した。
5.3 アラニンスキャニングのためのヒトCD3イプシロンのアラニン変異体のクローニング及び発現
ヒトCD3イプシロン鎖をコードする27cDNA断片であって、ヒトCD3イプシロンの野生型配列の1つのコドンを、成熟ヒトCD3イプシロン鎖の細胞外領域のアミノ酸1−27の各アミノ酸のアラニン(GCC)をコードするコドンに置換した断片を、遺伝子合成により得た。置換したコドンの他は、cDNA断片は、上述のヒト野生型CD3cDNA断片と同一であった。各コンストラクト中で、上述のヒト野生型CD3cDNA断片に比べ、1つのコドンのみを置換した。制限部位、EcoRI及びSallを、野生型コンストラクトに比べて同一の部位でcDNA断片中に導入した。全てのアラニンスキャニングコンストラクトを、pEF NEO中にクローニングし、配列実証済みプラスミドを、EL4細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクション及びトランスフェクタントの選択は、上述のとおり実施した。その結果、発現したコンストラクトのパネルが得られ、ヒトCD3イプシロン鎖の第1アミノ酸、位置1でのグルタミン(Q、Gln)をアラニンに置換した。アラニンに置換された最後のアミノ酸は、成熟ヒト野生型CD3イプシロンの位置27でのスレオニン(T、Thr)である。グルタミン1からスレオニン27の間の各アミノ酸で、野生型アミノ酸をアラニンに置換した、それぞれのトランスフェクタントを生成した。
5.4 アラニンスキャニング実験
2)に記載されたキメラIgG抗体及びCD3イプシロンに特異的な異種間特異性単鎖抗体を、アラニンスキャニング実験で試験した。3)に記載されたヒトCD3イプシロンのアラニン変異体コンストラクトでトランスフェクトされたEL4細胞株への抗体の結合は、標準プロトコルに従い、FACSアッセイにより試験した。2.5×10のそれぞれのトランスフェクタントの細胞を、キメラIgG抗体を含む細胞培養上清50μl又はペリプラズム発現した単鎖抗体の粗調製物50μlとともにインキュベートした。ペリプラズム発現した単鎖抗体の粗調製物と共にインキュベートしたサンプルでは、抗Flag M2抗体(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)を、二次抗体として、2%FCSを含む50μlPBS中で5μg/mlで使用した。キメラIgG抗体と共にインキュベートしたサンプルでは、二次抗体は必要なかった。全てのサンプルで、抗体分子の結合は、2%FCSを含むPBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異的(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.、ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。サンプルを、FACSCalibur(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)で測定した。ヒトCD3イプシロンのアラニン変異体によりトランスフェクトされたEL4細胞株への、キメラIgG分子又は異種間特異性単鎖抗体の異なる結合が検出された。ネガティブコントロールとして、アイソタイプコントロール又は関係ない特異性のペリプラズム発現した単鎖抗体の粗調製物をそれぞれ使用した。UCHT−1抗体を、ヒトCD3イプシロンのアラニン変異体の発現レベルのポジティブコントロールとして使用した。成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置15でのチロシン、位置17でのバリン、位置19でのイソロイシン、位置24でのバリン又は位置26でのロイシンのアラニン変異体によりトランスフェクトされたEL4細胞株は、非常に低い発現レベルのため(データ示さず)評価しなかった。異種間特異性単鎖抗体及びキメラIgGフォーマットの単鎖抗体の、ヒトCD3イプシロンのアラニン変異体によりトランスフェクトされたEL4細胞株への結合を、任意単位での相対結合と、全てのそれぞれの幾何平均蛍光サンプル値からそれぞれのネガティブコントロールの幾何平均蛍光値を引いた値とともに、図8A−8Dに示す。発現レベルの違いを補償するため、あるトランスフェクタントの全サンプル値を、それぞれのトランスフェクタントのUCHT−1抗体の幾何平均蛍光値で割った。ある特異性の野生型サンプル値の比較のため、それぞれの特異性の全サンプル値を、野生型サンプル値で最終的に割り、野生型サンプル値を結合の任意単位1に設定した。
利用した計算は、以下の式に詳細に示される。
Figure 2010524435
この式において、「サンプル値」は、図8Aから8Dに示される特定のアラニン変異体に対する特定の抗CD3抗体の結合の程度を示す任意単位の結合の値を意味し、「サンプル」は、特定のアラニンスキャニングトランスフェクタントにアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「ネガティブコントロール」は、特定のアラニン変異体にアッセイされたネガティブコントロールで得られた幾何平均蛍光値を意味し、UCHT−1は、特定のアラニン変異体にアッセイされたUCHT−1抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、「野生型」は、野生型トランスフェクタントでアッセイされた特定の抗CD3抗体で得られた幾何平均蛍光値を意味し、xはそれぞれのトランスフェクタントを明示し、yはそれぞれの抗CD3抗体を明示し、wtはそれぞれのトランスフェクタントが野生型であることを明示する。
図8Aから8Dで分かるとおり、IgG抗体A2J HLPは、成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置4でのアスパラギン、位置23でのスレオニン、位置25でのイソロイシンに対して、著しい結合の低下を示した。IgG抗体A2J HLPの結合の完全な喪失が、成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置1でのグルタミン、位置2でのアスパラギン酸、位置3でのグリシン及び位置5でのグルタミン酸に対して見られた。IgG抗体E2M HLPは、成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置4でのアスパラギン、位置23でのスレオニン及び位置25でのイソロイシンに対して、著しい結合の低下を示した。IgG抗体E2M HLPは、成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置1でのグルタミン、位置2でのアスパラギン酸、位置3でのグリシン及び位置5でのグルタミン酸に対して、結合の完全な喪失を示した。IgG抗体H2C HLPは、成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置4でのアスパラギンに対して中程度の結合の低下を示し、成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置1でのグルタミン、位置2でのアスパラギン酸、位置3でのグリシン及び位置5でのグルタミン酸に対して、結合の完全な喪失を示した。単鎖抗体F12Q HLPは、成熟CD3イプシロン鎖のアミノ酸、位置1でのグルタミン、位置2でのアスパラギン酸、位置3でのグリシン及び成熟CD3イプシロン鎖の位置5でのグルタミン酸に対して、基本的に完全な結合の喪失を示した。
6.マウスT細胞株EL4にトランスフェクトされた、N末端His6タグの付いた、又は付いていないヒトCD3イプシロン鎖への、異種間特異性抗CD3結合分子H2C HLPの結合分析
6.1 N末端6ヒスチジンタグ(His6タグ)の付いたヒトCD3イプシロン鎖のクローニング及び発現
N末端His6タグの付いたヒトCD3イプシロン鎖をコードするcDNA断片を遺伝子合成により得た。遺伝子合成断片は、まず、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位、次いで、フレームを合わせて、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチドのコード配列、次いで、フレームを合わせて、His6タグのコード配列、次いで、フレームを合わせて、成熟ヒトCD3イプシロン鎖のコード配列を含むように設計した(コンストラクトのcDNA配列及びアミノ酸配列は、配列番号380及び379に記す)。遺伝子合成断片は、cDNAの最初及び最後に制限部位を含むようにも設計した。導入された制限部位、5’末端でのEcoRI及び3’末端でのSallを、以下のクローニング手順で利用した。次いで、遺伝子合成断片を、EcoRI及びSallにより、標準プロトコルに従い、pEF−NEO(上述)と呼ばれるプラスミド内にクローニングした。配列実証済みプラスミドを使用して、ネズミT細胞株EL4にトランスフェクトした。トランスフェクション及びトランスフェクタントの選択は、上述のとおり実施した。細胞培養の34日後、トランスフェクタントを、以下に記載されるアッセイに使用した。
6.2 N末端His6タグの付いた、又は付いていないヒトCD3イプシロン鎖への、異種間特異性抗CD3結合分子H2C HLPの結合
CD3イプシロンに特異的な結合特異性H2C HLPを持つ、キメラIgG抗体を、N末端His6タグの付いた、又は付いていないヒトCD3イプシロンへの結合に関して試験した。それぞれ、His6ヒトCD3イプシロン及び野生型ヒトCD3イプシロンによりトランスフェクトされたEL4細胞株への抗体の結合を、標準プロトコルに従いFACSアッセイにより試験した。2.5×10のトランスフェクタントの細胞を、キメラIgG抗体を含む細胞培養上清50μl又は2%FCSを含むPBS中の5μg/mlのそれぞれの対照抗体50μlとともにインキュベートした。ネガティブコントロールとして適当なアイソタイプコントロールを、又はコンストラクトの発現のポジティブコントロールとしてCD3特異性抗体UCHT−1をそれぞれ使用した。抗体の結合は、2%FCSを含むPBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異的(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.、ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。サンプルを、FACSCalibur(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)で測定した。野生型ヒトCD3イプシロンにトランスフェクトされたEL4細胞株に比べ、N末端His6タグの付いたヒトCD3イプシロンへの、結合特異性H2C HLPを持つキメラIgGの結合の明らかな低下が検出された。これらの結果は、CD3イプシロンのフリーのN末端が、ヒトCD3イプシロン鎖への、異種間特異性抗CD3結合特異性H2C HLPの結合に必須であることを示した(図9)。
7.蛍光活性化細胞選別機(FACS)により測定するCD3発現PBMCへの結合に比較した、表面プラズモン共鳴測定による融合タンパク質1−27CD3−Fcへの、霊長類EGFR及び霊長類CD3に異種間特異的な二重特異性単鎖抗体(EGFR LH x H2C HLP)の結合定数KDの決定
7.1 表面プラズモン共鳴測定
ヒトCD3イプシロン鎖のN末端のアミノ酸1−27への、完全に異種間特異的な二重特異性単鎖抗体EGFR−21−63 LH x H2C HLPの結合親和性を測定するため、ヒトIgG1のFc部に融合した成熟ヒトCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27からなる組換え融合タンパク質(1−27CD3−Fc)で、表面プラズモン共鳴測定を実施した。このために、Biacore Carboxymethyl−Dextran CM5チップ(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)を、Biacore 2000(登録商標)システム(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)に取り付けた。1フローセルを、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩/N−ヒドロキシスクシンイミド溶液で、標準プロトコルに従い活性化した。融合タンパク質1−27CD3−Fcの溶液をその後加えると、Biacoreチップのデキストラン層へのタンパク質の安定な共有結合が生じた。結合していないタンパク質を徹底的な洗浄により除去し、次いで、エタノールアミン溶液の添加により、未反応の残存NHS活性化カルボキシ基をブロックした。カップリングの前のシグナルに比べ、応答単位として測定されるより高いシグナルにより、タンパク質カップリングの成功を確認した。対照セルを、タンパク質溶液を加えずに上述のとおり調製した。
精製した二重特異的抗体EGFR−21−63 LH x H2C HLPを、Slide−A−Lyzer(登録商標)Mini Dialysis Unit(Pierce、ロックフォード、イリノイ州、米国)中で、HBS−EPバッファ(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)に対して徹底的に透析した。透析後のタンパク質濃度は、UV280nm吸収により測定し、43μg/mlの濃度となった。
タンパク質溶液を、96ウェルプレートに移し、さらに10のウェルに1:1の比でHBS−EPバッファで連続的に希釈した。
表面プラズモン共鳴測定は、全11ウェルを別々にサンプリングして行った。測定の間で、フローセルをアセテートバッファにより再生し、結合したタンパク質を放出した。
二重特異性抗体分子の結合シグナルは、1−27CD3−Fcタンパク質と結合した測定セルのシグナルから対照セルのシグナルを引いて得た。会合及び解離曲線を応答単位として測定し記録した。結合定数は、ラングミュアモデルに基づくBiacore(登録商標)カーブフィッティングソフトウェアを利用して計算した。
計算した結合定数KDは、最初の5種の濃度で、1.52×10−7Mであった。
7.2 FACS測定によるCD3結合定数の決定
ナイーブヒトCD3への結合強度に関して種間特異的二重特異性抗体分子の親和性を試験するため、追加の飽和FACS結合分析を実施した。選択した二重特異性抗体分子EGFR−21−63 LH x H2C HLPを使用し、1:1.5の係数及び出発濃度63.3μg/mlで希釈列を設定した。二重特異性抗体分子を、これらの異なる濃度で、それぞれ1.25×10のヒトPBMCとともに4℃で1時間インキュベートし、次いで、4℃でPBS中で2回洗浄した。結合した二重特異性抗体分子の検出は、Penta−His抗体(Qiagen GmbH、ヒルデン、ドイツ)を、2%FCSを含む50μlPBS中で5μg/mlで使用して実施した。4℃で45分間インキュベーション及び2回の洗浄工程の後、Penta−His抗体の結合を、2%FCSを含むPBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異性(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.、ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。フローサイトメトリーは、FACS−Canto II装置で実施し、FACS Divaソフトウェアを利用して、データを取得し分析した(Becton Dickinson biosciences、ハイデルベルグ)。FACS染色及び蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology(Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober,Wiley−lnterscience,2002)に記載のとおり実施した。取得した蛍光強度平均値を、使用した二重特異性抗体分子濃度の関数としてプロットし、生物数学ソフトウェアPrismにより、片側結合分析(双曲線)で分析した。ソフトウェアは、質量作用の法則に従う、リガンド(二重特異性抗体分子)のレセプター(CD3陽性PBMCサブフラクション)への結合を記載する、対応するKD値を計算した。基礎となる式は以下のとおりである:Y=Bmax x X/(Kd+X)、ここでBmaxは最大結合である。KDは、半最大結合に達するのに要するリガンドの濃度である。FACS染色は2連で実施し、R値は0.95より高かった。
二重特異性抗体分子EGFR−21−63 LH x H2C HLPの決定した半最大結合は、8472ng/mlの濃度に達し、55000ダルトンの分子量で154nM(1.54×10−7M)に相当する(図10)。したがって、ネイティブCD3コンテクストから分離されたヒトCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27への、EGFR−21−63 LH x H2C HLPの親和性は、無傷のT細胞上のネイティブCD3へのEGFR−21−63 LH x H2C HLPの親和性と同等であることが証明された。
8.ヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞の生成
ヒトEGFRに陽性の細胞株、A431(表皮ガン細胞株、CRL−1555、アメリカンタイプカルチャーコレクション、ロックビル、メリーランド州)を使用し、キットマニュアル(Qiagen RNeasy Mini Kit、ヒルデン、ドイツ)の説明書に従い単離されたトータルRNAを得た。得られたRNAを、ランダムプライムド逆転写によりcDNA合成に使用した。ヒトEGFR抗原の全長配列のクローニングには、以下のオリゴヌクレオチドを使用した:
5’EGFR AG Xbal 5’−GGTCTAGAGCATGCGACCCTCCGGGACGGCCGGG−3’
3’EGFR AG Sall 5’−TTTTAAGTCGACTCATGCTCCAATAAATTCACTGCT−3’
コード配列をPCR(最初のサイクルに、94℃で5分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で2分間伸長;30サイクルに、94℃で1分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で2分間伸長;72℃で5分間末端伸長)により増幅した。次いで、PCR産物をXbal及びSallで消化し、適切に消化された発現ベクターpEF−DHFR(Raum et al., Cancer Immunol Immunother. 2001;50: 141−150)中にライゲーションし、大腸菌中に形質転換した。上述の手順を標準的なプロトコルに従い実施した(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, New York (2001))。配列実証済みヌクレオチド配列を持つクローン(配列番号370、アミノ酸配列番号369)を、コンストラクトの真核細胞発現のためにDHFR欠損CHO細胞中にトランスフェクトした。DHFR欠損CHO細胞中の真核細胞タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537−566により記載されるとおり実施した。コンストラクトの遺伝子増幅は、メトトレキサート(MTX)の濃度を20nM MTXまでの最終濃度に上昇させることにより誘導した。
9. カニクイザルEGFRの細胞外ドメインを発現するCHO細胞の生成
カニクイザルEGFRの細胞外ドメインのcDNA配列を、以下の反応条件を利用し、カニクイザル結腸cDNA(カタログ番号C1534090−Cy−BC;BioCat GmbH、ハイデルベルグ、ドイツから入手)への1組の2つのPCRにより得た:94℃で3分間で1サイクル、次いで94℃で1分間で35サイクル、53℃で1分間及び72℃で2分間、次いで72℃で3分間で停止サイクル。以下のプライマーを使用した:
1.フォワードプライマー;5’− CGCTCTGCCCGGCGAGTCGGGC−3’
リバースプライマー;5’− CCGTCTTCCTCCATCTCATAGC−3’
2.フォワードプライマー;5’− ACATCCGGAGGTGACAGATCACGGCTCGTGC−3’
リバースプライマー;5’−CAGGATATCCGAACGATGTGGCGCCTTCGC−3’
これらのPCRは、2つの重複する断片を生成し(A:1−869、B:848−1923)、PCRプライマーを使用して標準プロトコルにより単離及び配列決定し、成熟タンパク質のコドン+1の第3ヌクレオチドから膜貫通ドメインの21番コドンまでのカニクイザルEGFRのcDNA配列の1923 bp部分を与えた。カニクイザルEGFRの発現のためのコンストラクトを生成するため、cDNA断片を標準プロトコルに従い遺伝子合成により得た(コンストラクトのcDNA及びアミノ酸配列は、配列番号372及び371に記す)。このコンストラクトにおいて、成熟EGFRタンパク質のアミノ酸+2から+641のカニクイザルEGFRのコード配列を、ヒトEGFRのコード配列中に融合し、アミノ酸+2から+641のコード配列を置換した。遺伝子合成断片は、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、ヒトEGFRの膜貫通ドメイン及び細胞間ドメインに融合したカニクイザルEGFRの細胞外ドメインを基本的にコードするcDNAの最初と最後に制限部位を含むように設計した。さらに、保存的突然変異をアミノ酸627(膜貫通ドメインの第4のアミノ酸)に導入し、バリンをロイシンに変異し、クローニング目的の制限部位(Sphl)を生成した。導入された制限部位、5’末端でのXbal及び3’末端でのSallを以下のクローニング手順に利用した。次いで、遺伝子合成断片を、Xbal及びSallにより、pEF−DHFR(pEF−DHFRはMack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021−7025に記載されている)と呼ばれるプラスミド中にクローニングした。このプラスミドの配列実証済みクローンを使用して、上述のとおりCHO/dhfr−細胞にトランスフェクトした。
10. EGFR及びCD3種間特異的二重特異性単鎖分子の生成
10.1 異種間特異性結合分子のクローニング
一般的に、ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロンに対して異種間特異的な結合特異性を有するドメイン並びにヒト及び非チンパンジー霊長類EGFRに対して異種間特異的な結合特異性を有するドメインをそれぞれ含む、二重特異性単鎖抗体分子を、以下の表1に記載のとおり設計した。
表1 抗CD3及び抗EGFR種間特異的二重特異性単鎖抗体分子のフォーマット
Figure 2010524435
ヒト及びカニクイザルEGFRに対して異種間特異的な可変軽鎖(L)及び可変重鎖(H)ドメインを含む上述のコンストラクトは、遺伝子合成により得た。遺伝子合成断片は、まず、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、次いで19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチド、次いで、フレームを合わせて、それぞれの二重特異性単鎖抗体分子のコード配列を、次いで、フレームを合わせて、6ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように設計した。遺伝子合成断片は、好適なN及びC末端制限部位を導入するようにも設計した。遺伝子合成断片を、これらの制限部位により、標準プロトコルに従い(Sambrook、 Molecular Cloning; A Laboratory Manual、 3rd edition、 Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour、 New York (2001))、pEF−DHFR(pEF−DHFRはRaum et al.、 Cancer Immunol Immunother. 50(2001) 141−150に記載されている)と呼ばれるプラスミドにクローニングした。配列実証済みヌクレオチド配列を有するクローンを、コンストラクトの真核細胞発現のために、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中にトランスフェクトした。
コンストラクトを、DHFR欠損CHO細胞(ATCC No.CRL9096)にエレクトロポレーションにより安定導入又は一過性導入し、或いは、標準プロトコルに従い一過性にHEK293(ヒト胎児由来腎臓細胞、ATCC番号 CRL1573)にトランスフェクトした。
10.2 二重特異性単鎖抗体分子の発現及び精製
二重特異性単鎖抗体分子は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)中で発現した。DHFR欠損CHO細胞での真核生物タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537−566に記載されているとおり実施した。コンストラクトの遺伝子増幅は、MTXの最終濃度を20nMまで上昇させて誘導した。静置培養の2回の継代後、細胞を、ヌクレオシドを含まないHyQ PH CHO液体大豆培地により(4.0mMのL−グルタミン及び0.1%のプルロニックF−68、HyCloneを含む)回転瓶中で7日間生育してから、採取した。細胞を遠心分離により除去し、発現したタンパク質を含む上清を−20℃で保存した。或いは、コンストラクトを、HEK293細胞中で一過性発現させた。トランスフェクションは製造業者のプロトコルに従い、293fectin試薬(Invitrogen、12347−019番)により実施した。
Akta(登録商標) Explorer System(GE Health Systems)及びUnicorn(登録商標)Softwareをクロマトグラフィに使用した。製造業者が提供するプロトコルに従い、ZnClを充填したFractogel EMDキレート(登録商標)(Merck)を使用して、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(「IMAC」)を実施した。バッファA(20mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.2、0.1M NaCl)によりカラムを平衡化し、細胞培養上清(500ml)を、3ml/分の流速で、カラム(10ml)に注いだ。カラムをバッファAで洗浄して結合してないサンプルを除いた。結合したタンパク質を、バッファB(20mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.2、0.1M NaCl、0.5M イミダゾール)の2段階勾配を利用して、以下のとおり溶離した:
工程1:6カラム容積の20%バッファB
工程2:6カラム容積の100%バッファB
工程2から溶離したタンパク質分画を、さらなる精製のために貯蔵した。全ての試薬は、研究用グレードであり、Sigma(ダイゼンホーフェン)又はMerck(ダルムシュタット)から購入した。
Equi−buffer(25mM シトレート、200mM リジン、5%グリセロール、pH 7.2)により平衡化したHiLoad16/60Superdex 200分取用カラム(GE/Amersham)で、ゲル濾過クロマトグラフィを実施した。溶離したタンパク質サンプル(流速1ml/分)を、検出のため、標準的なSDS−PAGE及びウェスタンブロットにかけた。精製の前に、分子量測定のために(分子量マーカーキット、Sigma、MW GF−200)カラムを平衡化した。タンパク質濃度は、OD280nmを利用して測定した。
精製した二重特異性単鎖抗体タンパク質を、プレキャスト4−12%Bis−Trisゲル(Invitrogen)により実施した還元条件下でSDS−PAGEで分析した。サンプル調製及び適用は、製造業者が提供するプロトコルに従って実施した。分子量は、MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen)により測定した。ゲルを、コロイド状クーマシー(Invitrogenプロトコル)により染色した。単離したタンパク質の純度は、SDS−PAGEにより測定して95%を超えていた。
天然条件下でPBS中のゲル濾過により測定して、二重特異性単鎖抗体の分子量は約52kDaである。コンストラクトは全てこの方法により精製した。
ウェスタンブロットは、Optitran(登録商標)BA−S83メンブレン及びInvitrogen Blot Moduleを利用して、製造業者が提供するプロトコルにより実施した。使用した抗体に、His Tag(Pent His、Qiagen)及びアルカリホスファターゼ(AP)標識ヤギ抗マウスIg(Sigma)及び基質としてのBCIP/NBT(Sigma)を作用させた。精製した二重特異性単鎖抗体に相当する52kDでシングルバンドを検出した。
11. 表面プラズモン共鳴測定による、融合タンパク質1−27CD3−Fcへの、完全に種間特異的二重特異性単鎖抗体の結合定数KDの決定
成熟ヒトCD3イプシロン鎖のN末端のアミノ酸1−27への、霊長類EGFR及び霊長類CD3に異種間特異的な二重特異性単鎖抗体分子の結合親和性を測定するため、表面プラズモン共鳴測定を、ヒトIgG1のFc部に融合したヒトCD3イプシロン鎖のN末端アミノ酸1−27からなる組換え融合タンパク質で実施した(1−27CD3−Fc)。このために、Biacore Carboxymethyl−Dextran CM5チップ(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)を、Biacore 2000(登録商標)システム(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)に取り付けた。フローセルを、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩/N−ヒドロキシスクシンイミド溶液で、標準プロトコルに従い活性化した。融合タンパク質1−27CD3−Fcの溶液をその後加えると、Boacoreチップのデキストラン層へのタンパク質の安定な共有結合が生じた。結合していないタンパク質を徹底的な洗浄により除去し、次いで、エタノールアミン溶液の添加により、未反応の残存NHS活性化カルボキシ基をブロックした。カップリングの前のシグナルに比べ、応答単位として測定されるより高いシグナルの検出により、タンパク質カップリングの成功を確認した。対照セルを、タンパク質溶液を加えずに上述のとおり調製した。
以下に列記する精製した二重特異性単鎖抗体は、HBS−EPバッファ(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)で5μg/mlに調整し、それぞれ150μlの体積で96ウェルプレートに移した。
全サンプルに表面プラズモン共鳴測定を実施し、測定の間にフローセルをアセテートバッファで再生し、結合したタンパク質を放出した(全て標準プロトコルによる)。
二重特異性単鎖抗体の結合シグナルは、1−27CD3−Fcタンパク質に結合した測定セルのシグナルから、対照セルのシグナルを引いて得た。
会合及び解離曲線を応答単位として測定し記録した。結合定数は、ラングミュアモデルに基づくBiacore(登録商標)カーブフィッティングソフトウェアを利用して計算した。ヒトCD3イプシロンのN末端アミノ酸1−27への、試験した完全に種間特異的二重特異性の単鎖分子の親和性計算値は、以下のKD値として与えられ、2.54×10−6Mから2.49×10−7Mの範囲である。「LH」は、VL−VHの順の可変ドメインの配置を意味する。「HL」は、VH−VLの順の可変ドメインの配置を意味する。G4H、F70、A2J、E1L、E2M、H1E及びF6Aは、異なる異種間特異性CD3結合分子を意味する。
Figure 2010524435
12. EGFR及びCD3種間特異的二重特異性抗体のフローサイトメトリー結合分析
それぞれ、ヒト及びカニクイザルのEGFR及びCD3へ結合能に関して、種間特異的二重特異性抗体コンストラクトの機能性を試験するために、FACS分析を実施した。この目的のため、実施例8に記載したヒトEGFRによりトランスフェクトされたCHO細胞及びヒトCD3陽性T細胞白血病細胞株HPB−ALL(DSMZ、ブラウンシュヴァイク、ACC483)を使用し、ヒト抗原への結合を試験した。カニクイザル抗原の結合反応性は、実施例9に記載された生成したカニクイザルEGFRトランスフェクタント及びマカクザルT細胞株4119LnPx(Fickenscher教授による提供に感謝、Hygiene Institute, Virology, Erlangen−Nuernberg;Knappe A, et al., and Fickenscher H.,Blood 2000,95,3256−61に発表)を使用して試験した。それぞれの細胞集団の20万の細胞を、種間特異的二重特異性抗体コンストラクト(2μg/ml)の精製タンパク質50μlとともに氷上で30分間インキュベートした。或いは、一過的に産生したタンパク質の細胞培養上清を使用した。細胞をPBSで2回洗浄し、コンストラクトの結合を、マウスPenta His抗体(Qiagen;2%FCSを含む50μlPBSで1:20に希釈)により検出した。洗浄の後、結合した抗His抗体を、2%FCSを含むPBSに1:100で希釈された、フィコエリスリンに結合したFcガンマ特異性抗体(Dianova)により検出した。新鮮な培地をネガティブコントロールとして使用した。
フローサイトメトリーをFACS−Calibur装置で実施し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson biosciences、ハイデルベルグ)を利用してデータを取得し分析した。FACS染色及び蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology (Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober, Wiley−lnterscience, 2002)に記載のとおり実施した。
EGFRに特異的でヒト及び非チンパンジー霊長類CD3に異種間特異的であるいくつかの二重特異性単鎖分子の結合能は、図11に示されるとおり、明らかに検出可能であった。FACS分析において、全コンストラクトが、ネガティブコントロールとしての培地及び1次・2次抗体に比べ、CD3及びEGFRへの結合を示した。ヒト及びカニクイザルCD3及びEGFR抗原に対する二重特異性抗体の異種間特異性が示された。
13.EGFR及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体の生理活性
生成した二重特異性単鎖抗体の生理活性を、実施例8及び9に記載されたEGFR陽性細胞株を利用して、インビトロ細胞障害アッセイにおいてクロム51(51Cr)の放出により分析した。エフェクター細胞として、刺激を受けたヒトCD8陽性T細胞又はマカクT細胞株4119LnPxをそれぞれ使用した。
刺激を受けたCD8+T細胞の生成は以下のとおり実施した:
ペトリ皿(直径145mm、Greiner)を、市販の抗CD3特異性抗体により、最終濃度1μg/mlで1時間37℃でプレコートした。未結合のタンパク質を、PBSでの1洗浄工程で除去した。新鮮なPBMCを、標準プロトコルに従い、Ficoll勾配遠心分離により末梢血(30〜50ml、ヒトの血液)から単離した。3〜5×10PBMCを、プレコートされたペトリ皿に、120mlのRPMI 1640/10% FCS/IL−2 20U/ml(Proleukin、Chiron)に加え、2日間刺激した。3日目に、細胞を回収し、RPMI 1640で1回洗浄した。IL−2を20 U/mlの最終濃度で加え、1日間再び培養した。CD4+T細胞及びCD56+NK細胞の除去により、CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)を単離した。
標的細胞をPBSで2回洗浄し、50%FCSを含む100μlのRPMIの最終体積で、37℃で45分間、11.1MBq51Crで標識した。次いで、標識した標的細胞を、5mlのRPMIで3回洗浄し、次いで、細胞障害性アッセイに使用した。アッセイは、10:1のE:T比で、RPMI(上述)を補った総体積250μlで96ウェルプレート中で実施した。1μg/mlの種間特異的二重特異性単鎖抗体分子及びその20回の3倍希釈体を利用した。或いは、一過性産生されたタンパク質の細胞培養上清を、1:2ステップで連続的に希釈した。アッセイ時間は18時間であり、細胞障害性は、最大溶解(Triton Xの添加)と自然溶解(エフェクター細胞なし)の差に関連する上清中の放出クロムの相対値として測定した。測定は全て4連で実施した。上清中のクロム活性の測定を、Wizard 3”ガンマカウンター(Perkin Elmer Life Sciences GmbH、ケルン、ドイツ)で実施した。実験データの分析は、Windows用Prism 4(バージョン4.02、GraphPad Software Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)で実施した。S字状の用量応答曲線のR値は、該ソフトウェアにより測定して、通常0.90を超えた。分析プログラムにより計算されたEC50値を、生理活性の比較に使用した。
図12及び13に示されるように、生成した全ての種間特異的二重特異性単鎖抗体コンストラクトは、ヒトCD8+細胞により誘発されたヒトEGFR陽性標的細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxにより誘発されたカニクイザルEGFR陽性標的細胞に対して、細胞障害活性を現した。異なる標的特異性を持つ二重特異性単鎖抗体をネガティブコントロールとして使用した。
14. ヒトMCSPのC末端の膜貫通及び先端切断型細胞外ドメインのクローニング及び発現
ヒトMCSPのC末端の膜貫通及び先端切断型細胞外ドメイン(アミノ酸1538〜2322)のコード配列を、標準プロトコルに従い遺伝子合成により得た(ヒトMCSP(ヒトD3と呼ばれる)のC末端の、膜貫通及び先端切断型細胞外ドメインの発現のための組換えコンストラクトのcDNA配列及びアミノ酸配列は配列番号374及び373に記す)。遺伝子合成断片は、まず、コンストラクトの真核細胞発現を可能にするコザック部位、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチドのコード配列、次いで、フレームを合わせて、FLAGタグ、次いで、フレームを合わせて、クローニング目的のいくつかの制限部位を含み9アミノ酸人工リンカー(SRTRSGSQL)をコードする配列、次いで、フレームを合わせて、ヒトMCSPのC末端膜貫通及び先端切断型細胞外ドメインのコード配列及び終止コドンを含むように設計した。DNA断片の最初と最後に制限部位を導入した。制限部位、5’末端でのEcoRI及び3’末端でのSallを以下のクローニング手順で使用した。断片をEcoRI及びSallにより消化し、pEF−DHFR(pEF−DHFRはMack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021−7025に記載されている)に以下の標準プロトコルでクローニングした。配列実証済みプラスミドを使用し、CHO/dhfr−細胞(ATCC No.CRL9096)にトランスフェクトした。細胞を、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(全て、Biochrom AG、ベルリン、ドイツから入手)及び細胞培養グレード試薬(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)のストック溶液から10μg/mlのアデノシン、10μg/mlのデオキシアデノシン及び10μg/mlのチミジンの最終濃度にヌクレオシドを補い安定化グルタミンを含むRPMI 1640中で、37℃、湿度95%、CO7%でインキュベーター中で培養した。トランスフェクションは、PolyFect Transfecton Reagent(Qiagen GmbH、ヒルデン、ドイツ)及び5μgのプラスミドDNAを製造業者のプロトコルに従い使用して実施した。24時間培養の後、細胞をPBSで1回洗浄し、安定化グルタミン及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI 1640中で再び培養した。このように、細胞培地はヌクレオシドを含んでおらず、選択はトランスフェクトされた細胞に行われた。トランスフェクションのおよそ14日後、耐性細胞の増殖が観察された。さらに7から14日後、トランスフェクタントを、FACSによりコンストラクトの発現に関して試験した。2.5×10の細胞を、2%FCSを含むPBS中で5μg/mlに希釈された抗Flag M2抗体(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)50μlとともにインキュベートした。抗体の結合を、2%FCSを含むPBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異的(ImmunoResearch Europe Ltd.、ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。サンプルを、FACSCalibur(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)で測定した。
15. マカクMSCPのC末端の膜貫通及び先端切断型細胞外ドメインのクローニング及び発現
マカクザルMCSP(マカクD3と呼ばれる)C末端の膜貫通及び先端切断型細胞外ドメインのcDNA配列を、以下の反応条件により、マカクザル皮膚cDNA(カタログ番号C1534218−Cy−BC;BioCat GmbH、ハイデルベルグ、ドイツ)への1組の3つのPCRにより得た:94℃で3分間で1サイクル、40サイクルを94℃で0.5分間、52℃で0.5分間、そして72℃で1.75分間、72℃で3分間の停止サイクル。以下のプライマーを使用した:
フォワードプライマー:5’’−GATCTGGTCTACACCATCGAGC−3’’
リバースプライマー:5’’−GGAGCTGCTGCTGGCTCAGTGAGG−3’’
フォワードプライマー:5’’−TTCCAGCTGAGCATGTCTGATGG−3’’
リバースプライマー:5’’−CGATCAGCATCTGGGCCCAGG−3’’
フォワードプライマー:5’’−GTGGAGCAGTTCACTCAGCAGGACC−3’’
リバースプライマー:5’’−GCCTTCACACCCAGTACTGGCC−3’’
これらのPCRは、3つの重複断片を生成したが(A:1−1329、B:1229−2428、C:1782−2547)、PCRプライマーを使用して標準プロトコルにより単離及び配列決定し、C末端ドメインのコード配列の74 bp上流から終止コドンの121 bp下流まで、マカクザルMCSPのcDNA配列の2547 bp部分を与えた(マカクザルMCSPのこの部分のcDNA配列及びアミノ酸配列は、配列番号376及び375に記す)。以下の反応条件を利用するもう1つのPCRを使用して、上述の反応A及びBのPCR産物を融合した:94℃で3分間で1サイクル、10サイクルを94℃で1分間で10サイクル、52℃で1分間及び72℃で2.5分間、72℃で3分間の停止サイクル。以下のプライマーを使用する:
フォワードプライマー:5’’−tcccgtacgagatctggatcccaattggatggcggactcgtgctgttctcacacagagg−3’’
リバースプライマー:5’’−agtgggtcgactcacacccagtactggccattcttaagggcaggg−3’’
このPCRのプライマーは、マカクザルMCSPのC末端膜貫通及び先端切断型細胞ドメインをコードするcDNA配列の最初と最後に制限部位を導入するように設計した。導入された制限部位、5’末端でのMfel及び3’末端でのSallを以下のクローニング手順で使用した。次いで、PCR断片を、Mfel及びSallにより、ヒトMCSPのC末端膜貫通及び先端切断型細胞外ドメインを置換することにより、上述のプラスミドpEF−DHFR(pEF−DHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother. 50(2001) 141−150に記載されている)のEcoRI/Mfel断片を含むBlueScriptプラスミド中にクローニングした。遺伝子合成断片は、免疫グロブリンリーダーペプチド及びFlagタグのコード配列並びにマカクザルMCSPのC末端膜貫通及び先端切断型細胞外ドメインをコードするcDNA断片の5’末端にフレームを合わせて人工リンカー(SRTRSGSQL)を含んでいた。このベクターを使用して、CHO/dhfr−細胞(ATCC No.CRL 9096)にトランスフェクトした。細胞を、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(全て、Biochrom AG、ベルリン、ドイツから入手)及び細胞培養グレード試薬(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)のストック溶液から10μg/mlのアデノシン、10μg/mlのデオキシアデノシン及び10μg/mlのチミジンの最終濃度にヌクレオシドを補い安定化グルタミンを含むRPMI 1640中で、37℃、湿度95%CO7%でインキュベーター中で培養した。トランスフェクションは、PolyFect Transfecton Reagent(Qiagen GmbH、ヒルデン、ドイツ)及び5μgのプラスミドDNAを製造業者のプロトコルに従い使用して実施した。24時間培養の後、細胞をPBSで1回洗浄し、安定化グルタミン及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI 1640中で再び培養した。このように、細胞培地はヌクレオシドを含んでおらず、選択はトランスフェクトされた細胞に行われた。トランスフェクションのおよそ14日後、耐性細胞の増殖が観察された。さらに7から14日後、トランスフェクタントを、FACSにより組換えコンストラクトの発現に関して試験した。2.5×10の細胞を、2%FCSを含むPBS中で5μg/mlに希釈された抗Flag−M2抗体(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)50μlとともにインキュベートした。結合した抗体を、2%FCSを含むPBS中に1:100で希釈されたR−フィコエリスリン結合アフィニティ精製F(ab’)2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fc−ガンマ断片特異的(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.、ニューマーケット、サフォーク、英国)により検出した。サンプルを、FACSCalibur(BD biosciences、ハイデルベルグ、ドイツ)で測定した。
16.MCSP及びCD3種間特異的二重特異性単鎖分子の生成及びキャラクタリゼーション
ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3イプシロンに異種間特異的な結合ドメイン並びにヒト及び非チンパンジー霊長類MCSPに異種間特異的な結合ドメインをそれぞれ含む二重特異性単鎖抗体分子を、以下の表2に記載のとおり設計する。
表2 MCSP及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体のフォーマット
Figure 2010524435
ヒト及びマカクザルMCSP D3に異種間特異的な可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメイン及びヒト及びマカクザルCD3に異種間特異的なVH及びVLドメインを含む上述のコンストラクトを、遺伝子合成により得た。遺伝子合成断片を、まずコンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチドを、次いで、フレームを合わせて、それぞれの二重特異性単鎖抗体分子のコード配列を、次いで、フレームを合わせて、ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように、設計した。遺伝子合成断片を、好適なN末端及びC末端制限部位を導入するようにも設計した。遺伝子合成断片を、これらの制限部位により、pEF−DHFRと呼ばれるプラスミド(pEF−DHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(2001) 141−150に記載されている)中に、標準プロトコルに従い(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, New York (2001))クローニングした。コンストラクトを、エレクトロポレーションによりDHFR欠損CHO細胞(ATCC No.CRL 9096)に安定導入又は一過性導入し、或いはHEK293(ヒト胎児由来腎臓細胞、ATCC番号 CRL−1573)に標準プロトコルに従い一過性導入させた。
DHFR欠損CHO細胞での真核細胞タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537−566により記載されるとおりに実施した。コンストラクトの遺伝子増幅は、メトトレキサート(MTX)の濃度を、20nmのMTX最終濃度まで上昇することにより誘導した。静置培養の2回の継代後、細胞を、ヌクレオシドを含まないHyQ PH CHO液体大豆培地により(4.0mMのL−グルタミン及び0.1%のプルロニックF−68、HyCloneを含む)回転瓶中で7日間生育してから、採取した。細胞を遠心分離により除去し、発現したタンパク質を含む上清を−20℃で保存した。
Akta(登録商標) Explorer System(GE Health Systems)及びUnicorn(登録商標)Softwareをクロマトグラフィに使用した。製造業者が提供するプロトコルに従い、ZnClを充填したFractogel EMDキレート(登録商標)(Merck)を使用して、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(「IMAC」)を実施した。バッファA(20mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.2、0.1M NaCl)によりカラムを平衡化し、細胞培養上清(500ml)を、3ml/分の流速で、カラム(10ml)に注いだ。カラムをバッファAで洗浄して結合してないサンプルを除いた。結合したタンパク質を、バッファB(20mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.2、0.1M NaCl、0.5M イミダゾール)の2段階勾配を利用して、以下のとおり溶離した:
工程1:6カラム容積の20%バッファB
工程2:6カラム容積の100%バッファB
工程2から溶離したタンパク質分画を、さらなる精製のために貯蔵した。全ての試薬は、研究用グレードであり、Sigma(ダイゼンホーフェン)又はMerck(ダルムシュタット)から購入した。
Equi−buffer(25mM シトレート、200mM リジン、5%グリセロール、pH 7.2)により平衡化したHiLoad16/60Superdex 200分取用カラム(GE/Amersham)で、ゲル濾過クロマトグラフィを実施した。溶離したタンパク質サンプル(流速1ml/分)を、検出のため、標準的なSDS−PAGE及びウェスタンブロットにかけた。精製の前に、分子量測定のために(分子量マーカーキット、Sigma、MW GF−200)カラムを平衡化した。タンパク質濃度は、OD280nmを利用して測定した。
精製した二重特異性単鎖抗体タンパク質を、プレキャスト4−12%Bis−Trisゲル(Invitrogen)により実施した還元条件下でSDS−PAGEで分析した。サンプル調製及び適用は、製造業者が提供するプロトコルに従って実施した。分子量は、MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen)により測定した。ゲルを、コロイド状クーマシー(Invitrogenプロトコル)により染色した。単離したタンパク質の純度は、SDS−PAGEにより測定して95%を超える。
天然条件下でリン酸緩衝食塩水(PBS)中のゲル濾過により測定して、二重特異性単鎖抗体の分子量は約52kDaである。コンストラクトは全てこの方法により精製した。
ウェスタンブロットは、Optitran(登録商標)BA−S83メンブレン及びInvitrogen Blot Moduleを利用して、製造業者が提供するプロトコルにより実施した。二重特異性単鎖抗体タンパク質抗体の検出には、抗His Tag抗体(Penta His,Qiagen)を使用した。アルカリホスファターゼ(AP)標識ヤギ抗マウスIg抗体(Sigma)を二次抗体として使用し、基質としてBCIP/NBT(Sigma)を使用した。精製した二重特異性単鎖抗体に相当する52kDでシングルバンドを検出した。
或いは、コンストラクトは、DHFR欠損CHO細胞中に一過性発現した。簡単に言うと、コンストラクト当たり4×10の細胞を、10%胎児ウシ血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び細胞培養グレード試薬(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヒェン、ドイツ)のストック溶液から10μg/mlのアデノシン、10μg/mlのデオキシアデノシン及び10μg/mlのチミジンの最終濃度にヌクレオシドを補い安定化グルタミンを含む3mlのRPMI 1640 all medium中で、37℃、湿度95%、CO7%でインキュベーター中で、トランスフェクションの1日前に培養した。トランスフェクションは、製造業者のプロトコルに従い、Fugene 6 Tranfection Reagent(Roche、番号11815091001)により実施した。94μlのOptiMEM培地(Invitrogen)及び6μlのFugene6を混合し、室温で5分間インキュベートする。その後、コンストラクト当たり1.5μgのDNAを加え、混合し、室温で15分間インキュベートした。その間、DHFR欠損CHO細胞を、1×PBSで洗浄し、1.5mlのRPMI 1640 all mediumに再懸濁した。トランスフェクションミックスを、600μlのRPMI 1640 all mediumで希釈し、細胞に加え、37℃で、湿度95%、CO7%で一晩インキュベートした。トランスフェクションの翌日、各アプローチのインキュベーション容積を5mlのRPMI all mediumに増量した。インキュベーションの3日後に上清を採取した。
17.MCSP及びCD3種間特異的二重特異性抗体のフローサイトメトリー結合分析
それぞれヒト及びマカクザルMCSP D3及びCD3に結合する能力に関して種間特異的二重特異性抗体コンストラクトの機能性を試験するため、FACS分析を実施した。この目的のため、ヒトMCSP D3でトランスフェクトされたCHO細胞(実施例14に記載のとおり)及びヒトCD3陽性T細胞白血病細胞株HPB−ALL(DSMZ、ブラウンシュヴァイク、ACC483)を使用して、ヒト抗原への結合を試験した。マカクザル抗原への結合反応性は、生成したマカクザルMCSP D3トランスフェクタント(実施例15に記載のとおり)及びマカクザルT細胞株4119LnPx(Fickenscher教授による提供に感謝、Hygiene Institute, Virology, Erlangen−Nuernberg;Knappe A, et al., and Fickenscher H.,Blood 2000,95,3256−61に発表)を使用して試験した。それぞれの細胞株の20万の細胞を、種間特異的二重特異性抗体コンストラクト(2μg/ml)の精製タンパク質50μl又は種間特異的二重特異性抗体コンストラクトを発現するトランスフェクトされた細胞の細胞培養上清とともに氷上で30分間インキュベートした。細胞を、2%FCSを含むPBSで2回洗浄し、コンストラクトの結合を、マウス抗His抗体(Penta His抗体;Qiagen,2%FCSを含む50μlPBSで1:20に希釈)により検出した。洗浄の後、結合した抗His抗体を、2%FCSを含むPBSに1:100で希釈された、フィコエリスリンに結合したFcガンマ特異性抗体(Dianova)により検出した。トランスフェクトされていないCHO細胞の上清を、T細胞株への結合のネガティブコントロールとして使用した。無関係な標的特異性を持つ単鎖コンストラクトを、MCSP−D3にトランスフェクトされたCHO細胞への結合のネガティブコントロールとして使用した。
フローサイトメトリーをFACS−Calibur装置で実施し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson biosciences、ハイデルベルグ)を利用してデータを取得し分析した。FACS染色及び蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology (Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober, Wiley−lnterscience, 2002)に記載のとおり実施した。
MCSP D3に異種間特異的でヒト及びマカクザルCD3に異種間特異的である、先に列記した単鎖分子の二重特異性結合は、図14、15及び16に示されるとおり、明らかに検出可能であった。FACS分析において、全コンストラクトが、それぞれのネガティブコントロールに比べ、CD3及びMCSP−D3への結合を示した。ヒト及びマカクザルCD3及びMCSP D3抗原に対する二重特異性抗体の異種間特異性が示された。
18.MCSP及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体の生理活性
図17から21に示されるとおり、生成した種間特異的二重特異性単鎖抗体コンストラクトの全ては、ヒトCD8+細胞により誘発されたヒトMSCP陽性標的細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxにより誘発されたカニクイザルMCSP陽性標的細胞に対して、細胞障害活性を現した。異なる標的特異性を持つ二重特異性単鎖抗体をネガティブコントロールとして使用した。
19.MCSP及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体の血漿安定性
二重特異性単鎖抗体を50%ヒト血漿中で、37℃及び4℃で24時間インキュベートし、その後生理活性を試験して、生成された二重特異性単鎖抗体のヒト血漿中での安定性を分析した。生理活性は、MCSP陽性CHO細胞株(実施例14及び15によりクローニング時にMCSPを発現)を標的として、刺激を受けたヒトCD8陽性T細胞をエフェクター細胞として利用して、インビトロ細胞障害アッセイにおいてクロム51(51Cr)の放出により分析した。
上述の分析プログラムにより計算されたEC50値を、50%ヒト血漿とともに24時間それぞれ37℃及び4℃でインキュベートされた二重特異性単鎖抗体と、血漿を添加していない二重特異性単鎖抗体又はアッセイの直前に同量の血漿と混合された二重特異性単鎖抗体との生理活性の比較に使用した。
図22及び表3に示されるとおり、G4 H−L x I2C H−L、G4 H−L x H2C H−L及びG4 H−L x F12Q H−L二重特異性抗体の生理活性は、血漿の添加されていないコントロール又は生理活性試験の直前に血漿を添加されたコントロールと比較して、著しく低下しなかった。
表3 血漿を添加された、又はされていない二重特異性抗体の生理活性
Figure 2010524435
20.ヒトEGFR及びCD3種間特異的二重特異性単鎖分子の生成
ヒト及びカニクイザルCD3に異種間特異的な結合ドメイン並びにヒトEGFRに異種間特異的な結合ドメインを持つ二重特異性単鎖抗体分子を、以下の表4に記載のとおり設計する。
表4 EGFR及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体のフォーマット
Figure 2010524435
ヒト及びカニクイザルEGFRに異種間特異的な可変軽鎖(L)及び可変重鎖(H)ドメインを含む上述のコンストラクトを、遺伝子合成により得た。遺伝子合成断片は、まず、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチド、次いで、フレームを合わせて、それぞれの二重特異性単鎖抗体分子のコード配列、次いで、フレームを合わせて、6ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように、設計した。
遺伝子合成断片は、好適なN末端及びC末端制限部位を導入するようにも設計した。遺伝子合成断片は、これらの制限部位により、pEF−DHFRと呼ばれるプラスミド(pEF−DHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(2001) 141−150に記載されている)中に、標準プロトコルに従い(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, New York (2001))クローニングした。コンストラクトを、DHFR欠損CHO細胞(ATCC No.CRL 9096)に安定導入し、実施例10に記載されるとおり、産生及び精製した。
21.ヒトEGFR及びCD3種間特異的二重特異性単鎖分子の生成
ヒト及びカニクイザルCD3に異種間特異的な結合ドメイン並びにヒトEGFRに異種間特異的な結合ドメインを持つ二重特異性単鎖抗体分子を、以下の表5に記載のとおり設計する。
表5 EGFR及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体のフォーマット
Figure 2010524435
ヒト及びカニクイザルEGFRに異種間特異的な可変軽鎖(L)及び可変重鎖(H)ドメインを含む上述のコンストラクトを、遺伝子合成により得た。遺伝子合成断片は、まず、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチド、ついで、フレームを合わせて、それぞれの二重特異性単鎖抗体分子のコード配列、次いで、フレームを合わせて、6ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように設計した。
遺伝子合成断片を、好適なN末端及びC末端制限部位を導入するようにも設計した。遺伝子合成断片は、これらの制限部位により、pEF−DHFRと呼ばれるプラスミド(pEF−DHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(2001) 141−150に記載されている)中に、標準プロトコルに従い(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, New York (2001))クローニングした。コンストラクトを、DHFR欠損CHO細胞(ATCC No.CRL 9096)に安定導入し、実施例10に記載されるとおり、産生及び精製した。
22.ヒトHer2/neu及びCD3種間特異的二重特異性単鎖分子の生成
ヒト及びカニクイザルCD3に異種間特異的な結合ドメイン並びにヒトHer2/neuに異種間特異的な結合ドメインを持つ二重特異性単鎖抗体分子を、以下の表6に記載のとおり設計する。
表6 Her2/neu及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体のフォーマット
Figure 2010524435
ヒト及びカニクイザルHER2/neuに異種間特異的な可変軽鎖(L)及び可変重鎖(H)ドメインを含む上述のコンストラクトを、遺伝子合成により得た。遺伝子合成断片を、まず、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチドを、次いで、フレームを合わせて、それぞれの二重特異性単鎖抗体分子のコード配列、次いで、フレームを合わせて、6ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように設計した。
遺伝子合成断片を、好適なN末端及びC末端制限部位を導入するようにも設計した。遺伝子合成断片は、これらの制限部位により、pEF−DHFRと呼ばれるプラスミド(pEF−DHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(2001) 141−150に記載されている)中に、標準プロトコルに従い(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, New York (2001))クローニングした。コンストラクトを、DHFR欠損CHO細胞(ATCC No.CRL 9096)に安定導入し、実施例10に記載されるとおり、産生及び精製した。
23.1 ヒトHER2を発現するCHO細胞の生成
GenBank(アクセッション番号X03363)に発表されているヒトHER2のコード配列を、標準プロトコルに従い遺伝子合成により得る。遺伝子合成断片は、そのリーダーペプチドを含むヒトHER2タンパク質のコード配列を含むように設計する(コンストラクトのcDNA及びアミノ酸配列を、配列番号459及び460に記す)。遺伝子合成断片は、断片の最初と最後に制限部位を導入するようにも設計される。導入される制限部位、5’末端でのXbal及び3’末端でのSallを以下のクローニング手段に利用する。遺伝子合成断片は、Xbal及びSallにより、pEF−DHFRと呼ばれるプラスミド(pEF−DHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(2001) 141−150に記載されている)中に、標準プロトコルに従いクローニングする。上述の手順は、標準プロトコルに従い実施する(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, New York (2001))。配列実証済みヌクレオチド配列を有するクローンを、コンストラクトの真核細胞発現のためにDHFR欠損CHO細胞中にトランスフェクトする。DHFR欠損CHO細胞での真核細胞タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537−566に記載されるとおり実施する。コンストラクトの遺伝子増幅は、メトトレキサート(MTX)の濃度を20nM MTXまでの最終濃度に上昇させることにより誘導する。
23.2 マカクザルHer2の細胞外ドメインを発現するCHO細胞の生成
上述のヒトHer2のコード配列を、GenBank(アクセション番号XP_001090430)に発表されるマカクザルHer2タンパク質のアミノ酸123から1038をコードするように修飾する。このキメラタンパク質のコード配列を、標準プロトコルに従い、遺伝子合成により得る(コンストラクトのcDNA及びアミノ酸配列を、配列番号461及び462に記す)。遺伝子合成断片は、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位及び断片の最初と最後に制限部位を含むように設計する。導入される制限部位、5’末端でのXbal及び3’末端でのSallを以下のクローニング手順で利用する。次いで、遺伝子合成断片を、Xbal及びSallにより、pEF−DHFRと呼ばれるプラスミド(pEF−DHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(2001) 141−150に記載されている)中にクローニングする。このプラスミドの配列実証済みクローンを使用して、上述のとおりCHO/dhfr−細胞にトランスフェクトする。
23.3 HER2及びCD3種間特異的二重特異性単鎖分子の生成
3.1 異種間特異性結合分子のクローニング
一般的に、ヒト及びマカクザルのCD3イプシロンに異種間特異的な結合特異性を持つドメイン並びにヒト及びマカクザルHER2に異種間特異的な結合特異性を持つドメインをそれぞれ含む、二重特異性単鎖抗体分子を、以下の表7に記載の通り設計する。
表7 抗CD3及び抗HER2種間特異的二重特異性単鎖抗体分子のフォーマット
Figure 2010524435
ヒト及びマカクザルHER2に異種間特異的な可変軽鎖(L)及び可変重鎖(H)ドメイン並びにヒト及びマカクザルCD3に異種間特異的なCD3特異的VH及びVL組み合わせを含む上述のコンストラクトを、遺伝子合成により得る。遺伝子合成断片を、まず、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチド、次いで、フレームを合わせて、それぞれの二重特異性単鎖抗体分子のコード配列、次いで、フレームを合わせて、6ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように設計する。遺伝子合成断片を、断片の最初と最後に好適な制限部位を導入するようにも設計する。導入される制限部位を以下のクローニング手順に使用する。遺伝子合成断片は、pEFDHFRと呼ばれるプラスミド(pEFDHFRは、Raum et al., Cancer Immunol Immunother., 50(2001) 141−150に記載されている)中に、標準プロトコルに従いクローニングする。上述の手順は、標準プロトコルに従い実施する(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, New York (2001))。配列実証済みヌクレオチド配列を有するクローンを、コンストラクトの真核細胞発現のためにDHFR欠損CHO細胞中にトランスフェクトする。DHFR欠損CHO細胞中の真核細胞タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537−566に記載されるとおり実施する。コンストラクトの遺伝子増幅は、メトトレキサート(MTX)の濃度を20nM MTXまでの最終濃度に上昇させることにより誘導する。
3.2 二重特異性単鎖抗体分子の発現及び精製
二重特異性単鎖抗体分子は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)中に発現する。DHFR欠損CHO細胞中の真核細胞タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537−566に記載されるとおり実施する。コンストラクトの遺伝子増幅は、MTXの濃度を20nM MTXまでの最終濃度に上昇させることにより誘導する。静置培養の2回の継代後、細胞を、ヌクレオシドを含まないHyQ PH CHO液体大豆培地により(4.0mMのL−グルタミン及び0.1%のプルロニックF−68、HyCloneを含む)回転瓶中で7日間生育してから、採取する。細胞を遠心分離により除去し、発現したタンパク質を含む上清を−80℃で保存する。トランスフェクションは、製造業者のプロトコルに従い、293fectin試薬(Invitrogen、12347−019番)により実施する。
Akta(登録商標) Explorer System(GE Health Systems)及びUnicorn(登録商標)Softwareをクロマトグラフィに使用する。製造業者が提供するプロトコルに従い、ZnClを充填したFractogel EMDキレート(登録商標)(Merck)を使用して、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(「IMAC」)を実施する。バッファA(20mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.2、0.1M NaCl)によりカラムを平衡化し、細胞培養上清(500ml)を、3ml/分の流速で、カラム(10ml)に注ぐ。カラムをバッファAで洗浄して結合してないサンプルを除く。結合したタンパク質を、バッファB(20mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.2、0.1M NaCl、0.5M イミダゾール)の2段階勾配を利用して、以下のとおり溶離する:
工程1:6カラム容積の20%バッファB
工程2:6カラム容積の100%バッファB
工程2から溶離したタンパク質分画を、さらなる精製のために貯蔵した。全ての試薬は、研究用グレードであり、Sigma(ダイゼンホーフェン)又はMerck(ダルムシュタット)から購入する。
Equi−buffer(25mM シトレート、200mM リジン、5%グリセロール、pH 7.2)により平衡化したHiLoad16/60Superdex 200分取用カラム(GE/Amersham)で、ゲル濾過クロマトグラフィを実施する。溶離したタンパク質サンプル(流速1ml/分)を、検出のため、標準的なSDS−PAGE及びウェスタンブロットにかける。精製の前に、分子量測定のために(分子量マーカーキット、Sigma、MW GF−200)カラムを平衡化する。タンパク質濃度は、OD280nmを利用して測定する。
精製した二重特異性単鎖抗体タンパク質を、プレキャスト4−12%Bis−Trisゲル(Invitrogen)により実施した還元条件下でSDS−PAGEで分析する。サンプル調製及び適用は、製造業者が提供するプロトコルに従って実施する。分子量は、MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen)により測定する。ゲルを、コロイド状クーマシー(Invitrogenプロトコル)により染色する。単離したタンパク質の純度は、SDS−PAGEにより測定して95%を超える。
天然条件下でPBS中のゲル濾過により測定して、二重特異性単鎖抗体分子の分子量は約52kDaである。コンストラクトは全てこの方法により精製する。
ウェスタンブロットは、Optitran(登録商標)BA−S83メンブレン及びInvitrogen Blot Moduleを利用して、製造業者が提供するプロトコルにより実施する。二重特異性単鎖抗体タンパク質抗体の検出のため、抗His Tag抗体を使用する(Pent His、Qiagen)。アルカリホスファターゼ(AP)標識ヤギ抗マウスIg抗体(Sigma)を二次抗体として、BCIP/NBT(Sigma)を基質として作用する。精製した二重特異性単鎖抗体に相当する52kDでシングルバンドを検出する。
23.4 HER2及びCD3種間特異的二重特異性抗体のフローサイトメトリー結合分析
それぞれヒト及びマカクザルHER2及びCD3に結合する能力に関して種間特異的二重特異性抗体コンストラクトの機能性を試験するため、FACS分析を実施する。この目的のため、実施例23.1に記載されるヒトHER2にトランスフェクトされたCHO細胞及びヒトCD3陽性T細胞白血病細胞株HPB−ALL(DSMZ、ブラウンシュヴァイク、ACC483)を使用して、ヒト抗原への結合を試験する。マカクザル抗原への結合反応性は、実施例23.2に記載される生成したマカクザルHER2トランスフェクタント及びマカクザルT細胞株4119LnPx(Fickenscher教授による提供に感謝、Hygiene Institute, Virology, Erlangen−Nuernberg;Knappe A, et al., and Fickenscher H.,Blood 2000,95,3256−61に発表)を使用して試験する。それぞれの細胞株の20万の細胞を、種間特異的二重特異性抗体コンストラクト(2μg/ml)の精製タンパク質50μlとともに氷上で30分間インキュベートする。細胞を、2%FCSを含むPBSで2回洗浄し、コンストラクトの結合を、マウス抗His抗体(Penta His抗体;Qiagen,2%FCSを含む50μlPBSで1:20に希釈)により検出する。洗浄の後、結合した抗His抗体を、2%FCSを含むPBSに1:100で希釈された、フィコエリスリンに結合したFcガンマ特異性抗体(Dianova)により検出する。2%FCSを含むPBSを、T細胞株への、並びにHER2にトランスフェクトされたCHO細胞への結合のネガティブコントロールとして使用する。
フローサイトメトリーをFACS−Calibur装置で実施し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson biosciences、ハイデルベルグ)を利用してデータを取得し分析する。FACS染色及び蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology (Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober, Wiley−lnterscience, 2002)に記載のとおり実施する。
HER2に異種間特異的でヒト及び非チンパンジー霊長類CD3に異種間特異的である、先に列記した単鎖分子の二重特異性結合は、図23に示されるとおり、明らかに検出可能である。FACS分析において、全コンストラクトが、それぞれのネガティブコントロールに比べ、CD3及びHER2への結合を示す。ヒト及びマカクザルCD3及びHER2抗原に対する二重特異性抗体の異種間特異性が示される。
23.5 HER2及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体の生理活性
生成した二重特異性単鎖抗体の生理活性を、実施例23.1及び23.2に記載されたHER2陽性細胞株を利用して、インビトロ細胞障害アッセイにおいてクロム51(51Cr)の放出により分析する。エフェクター細胞として、刺激を受けたヒトCD4/CD56除去PBMC又はマカクザルT細胞株4119LnPxを、それぞれの図に示されるとおり使用する。
刺激を受けたCD4/CD56除去PBMCの生成は以下のとおり実施する:
ペトリ皿(直径85mm、Nunc)を、市販の抗CD3特異性抗体(例えばOKT3、Othoclone)により、最終濃度1μg/mlで1時間37℃でプレコートする。未結合のタンパク質を、PBSでの1洗浄工程で除去する。新鮮なPBMCを、標準プロトコルに従い、Ficoll勾配遠心分離により末梢血(30〜50ml、ヒトの血液)から単離する。3〜5×10PBMCを、プレコートされたペトリ皿に、安定化グルタミン/10% FCS/IL−2 20U/ml(Proleukin、Chiron)を含む50mlのRPMI 1640に加え、2日間刺激する。3日目に、細胞を回収し、RPMI 1640で1回洗浄する。IL−2を20 U/mlの最終濃度で加え、細胞を、上述のものと同じ細胞培地で1日間再び培養した。標準プロトコルによるCD4+T細胞及びCD56+NK細胞の除去により、CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)を富化する。
標的細胞をPBSで2回洗浄し、50%FCSを含む100μlのRPMIの最終体積で、37℃で45分間、11.1MBq51Crで標識する。次いで、標識した標的細胞を、5mlのRPMIで3回洗浄し、次いで、細胞障害アッセイに使用する。アッセイは、それぞれの図中に示す1:1又は10:1のE:T比で、補われたRPMI(上述)最終体積250μlで96ウェルプレート中で実施する。1μg/mlの種間特異的二重特異性単鎖抗体分子及びその15〜21倍希釈体を利用する。アッセイ時間は18時間であり、細胞障害性は、最大溶解(Triton Xの添加)と自然溶解(エフェクター細胞なし)の差に関連する上清中の放出クロムの相対値として測定する。測定は全て4連で実施する。上清中のクロム活性の測定を、Wizard 3”ガンマカウンター(Perkin Elmer Life Sciences GmbH、ケルン、ドイツ)で実施する。実験データの分析は、Windows用Prism 4(バージョン4.02、GraphPad Software Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)で実施する。S字状の用量応答曲線のR値は、前記ソフトウェアにより測定して、通常0.90を超える。分析プログラムにより計算されたEC50値を、生理活性の比較に使用する。
図24に示されるように、種間特異的二重特異性単鎖抗体コンストラクトは、刺激されたヒトCD4/CD56除去PBMCにより誘発されたヒトHER2陽性標的細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxにより誘発されたマカクザルHER2陽性標的細胞に対して、細胞障害活性を現す。
実施例24 ヒト及びマカクザルの膜結合形態のIgEのクローニング及び発現
マウス細胞株J588L(Interlab Project、lstituto Nazionale per Ia Ricerca sul Cancro、ジェノバ、イタリア、ECACC 88032902)、ラムダ軽鎖を産生し分泌する、自然重鎖欠損バリアントミエローマ細胞株を使用して、それぞれヒト及びマカクザルIgEの膜結合型重鎖バリアントにより補わせた。そのようなコンストラクトを生成するために、標準プロトコルに従い、合成分子を遺伝子合成により得た(コンストラクトのヌクレオチド配列を、配列番号507及び508に記す)。これらのコンストラクトにおいて、ヒト及びマカクザルcイプシロン鎖のコード配列を、それぞれ、IgEのヒト膜貫通領域に融合した。VH鎖の組み込まれた特異性は、ハプテン(4−ヒドロキシ−3−ニトロ−フェニル)アセチル)(NP)に向けられる。遺伝子合成断片は、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位並びに免疫グロブリンリーダー及びDNAの最初と最後に制限部位を含むようにも設計した。導入された制限部位、5’末端でのEcoRI及び3’末端でのSallを、pEFDHFRと呼ばれる発現プラスミド中へのクローニング工程の間に利用した。配列実証(マカクザル:XM_001116734 マカカ・マラッタ(macaca mulatta)、IgイプシロンC領域、mRNA;ヒト:NC_000014 ホモサピエンス、染色体14、完全配列、National Center for Biotechnology Information, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)の後、プラスミドを使用して、上述のとおりCHO/dhfr−細胞にトランスフェクトした。DHFR欠損CHO細胞中での真核細胞タンパク質発現は、Kaufmann RJ. (1990) Methods Enzymol. 185, 537− 566に記載されるとおり実施される。コンストラクトの遺伝子増幅は、メトトレキサート(MTX)の濃度を20nM MTXまでの最終濃度に上昇させることにより誘導する。
実施例25 IgE及びCD3種間特異的二重特異性単鎖分子の生成
一般的に、ヒト及びカニクイザルCD3抗原への結合特異性を持つドメイン並びにヒト及びマカクザルIgE抗原への結合特異性を持つドメインをそれぞれ含む二重特異性単鎖抗体分子は、以下の表8に記載されるとおり設計した。
表8 抗CD3及び抗IgE種間特異的二重特異性単鎖抗体分子のフォーマット
Figure 2010524435
ヒト及びマカクザルIgEに異種間特異的である可変軽鎖(L)及び可変重鎖(H)ドメイン並びにヒト及びマカクザルCD3に異種間特異的であるCD3特異性VH及びVL組み合わせを含む上述のコンストラクトを、遺伝子合成により得る。遺伝子合成断片を、まず、コンストラクトの真核細胞発現のためのコザック部位を含むように、次いで、19アミノ酸免疫グロブリンリーダーペプチド、次いで、フレームを合わせて、それぞれの二重特異性単鎖抗体分子のコード配列、次いで、フレームを合わせて、6ヒスチジンタグのコード配列及び終止コドンを含むように設計する。遺伝子合成断片は、断片の最初と最後に好適な制限部位を導入するようにも設計される。導入される制限部位を以下のクローニング手順で利用する。遺伝子合成断片を、これらの制限部位により、pEFDHFRと呼ばれるプラスミド中に、標準プロトコルに従いクローニングする。配列実証済みヌクレオチド配列を持つクローンを、DHFR欠損CHO細胞中に、コンストラクトの真核細胞発現のためにトランスフェクトする。DHEF欠損CHO細胞中の真核細胞タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537−566に記載されるとおり実施する。コンストラクトの遺伝子増幅は.メトトレキサート(MTX)の濃度を20nM MTXまでの最終濃度に上昇させることにより誘導する。或いは、コンストラクトを、標準プロトコルに従い、一過的にDHFR欠損CHO細胞中にトランスフェクトする。
FACS結合実験を、ヒトIgEにトランスフェクトされたJ558L細胞株に実施し、ヒトIgEへの結合能を評価した。マカクザルIgE陽性細胞への異種間特異性は、マカクザルIgEにトランスフェクトされたJ558L細胞を展開して試験した。細胞株での同じ変化が、IgE及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体で実施した細胞障害アッセイに当てはまる。これとは別に、実施例4及び5に記載されたとおり、アッセイを実施した。
図23に示されるとおり、生成したIgE及びCD3種間特異的二重特異性単鎖抗体は、ヒト及びカニクイザルの抗原両方への結合を示し、完全に異種間特異性であることが証明された。
図24に示されるとおり、生成した種間特異的二重特異性単鎖抗体コンストラクトの全てが、ヒトCD8+細胞に誘発されるヒトIgE陽性標的細胞及びマカクザルT細胞株4119LnPxにより誘発されるマカクザルIgE陽性標的細胞に対して細胞障害活性を現した。ネガティブコントロールとして、無関係な二重特異性単鎖抗体を使用した。
実施例26 ヒトCD3イプシロンのN末端へのscFvクローンの特性結合
26.1 大腸菌XL1 Blue中でのscFvコンストラクトの細菌発現
先に述べたとおり、VL及びVHセグメントを含むpComb3H5Bhis/Flagでトランスフェクトされた大腸菌XL1 Blueは、遺伝子III断片の切除及び1mM IPTGによる誘起の後、可溶性scFvを十分な量で産生する。scFv鎖は、ペリプラズムにエクスポートされ、機能的コンフォメーションに折り畳まれる。
以下のscFvクローンをこの実験のために選択した:
i)国際公開第2004/106380号に記載のScFv4−10、3−106、3−114、3−148、4−48、3−190及び3−271
ii)本願に記載されたヒト抗CD3イプシロン結合クローンH2C、F12Q及びI2C由来のscFv。
ペリプラズム調製物のため、ペリプラズム発現を可能にするプラスミドを含むそれぞれのscFvで形質転換された細菌細胞を、20mM MgCl及びカルベニシリン50μg/mlを補ったSB培地中で生育し、採取の後PBSに再溶解した。−70℃での冷凍及び37℃での解凍を4回行い、浸透圧衝撃により細菌の外膜を破壊し、scFvを含む可溶性ペリプラズムタンパク質を上清中に放出させた。無傷の細胞及び細胞片を遠心分離で除去した後、ヒト抗ヒトCD3−scFvを含む上清を回収し、さらなる実験に使用した。scFvを含むこれらの粗上清を、さらにペリプラズム調製物(PPP)と呼ぶ。
26.2 ヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質へのscFvの結合
ヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質を、典型的には4℃で一晩、96ウェルプラスティックプレート(Nunc、maxisorb)のウェルにコーティングすることにより、ELISA実験を実施した。次いで、抗原コーティング溶液を除去し、ウェルをPBS/0.05%Tween20により1回洗浄し、次いで少なくとも1時間PBS/3%BSAによりブロックした。ブロッキング溶液の除去後、PPP及びコントロール溶液をウェルに加え、典型的には1時間室温でインキュベートした。次いで、ウェルを、PBS/0.05%Tween20で3回洗浄した。固定化抗原に結合したscFvの検出は、ビオチン標識抗Flagタグ抗体(M2抗Flag−Bio、Sigma、典型的には1μg/mlPBSの最終濃度で)を利用して実施し、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Dianova、1μg/mlPBS)により検出した。ABTS基質溶液を加えてシグナルを発生させ、波長405nmで検出した。試験サンプルのブロッキング剤及び/又はヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質のヒトIgG1部分への非特異的な結合を、ヒトIgG1(Sigma)によりコーティングされたELISAプレート上の同一試薬及び同一タイミングを利用する同一なアッセイの実施により検討した。ネガティブコントロールとしてPBSを使用した。
図25に示されるとおり、scFv H2C、F12Q及びI2Cは、ヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質に強い結合シグナルを示す。ヒトscFv 3−106、3−114、3−148、3−190、3−271、4−10及び4−48(国際公開第2004/106380号に記載)は、ネガティブコントロールレベルを超える有意な結合を示さない。
scFV H2C、F12Q及びI2Cの、ヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質をコーティングされたウェルの陽性の結合が、BSA(ブロッキング剤として使用)及び/又はヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質のヒトIgG1 Fcガンマ部分への結合によるものかもしれないという可能性を排除するため、第2のELISA実験を同時に行った。この第2のELISA実験では、ヒトCD3イプシロン(aa1−27)Fc融合タンパク質の代わりにヒトIgG1(Sigma)をコーティングした以外、全パラメータを第1のELISA実験と同じにした。図26に示されるとおり、試験したscFvで、バックグラウンドレベルを超えてBSA及び/又はヒトIgG1と有意な結合を示したものはない。
まとめると、これらの結果により、scFv 4−10、3−271、3−148、3−190、4−48、3−106及び3−114はヒトCD3イプシロン(aa1−27)領域に特異的に結合せず、scFv H2C、F12Q及びI2Cは、ヒトCD3イプシロンのN末端27アミン酸への特異的な結合をはっきりと示すという結論が認められる。
表9
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Claims (35)

  1. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε(イプシロン)鎖のエピトープに結合可能な第1結合ドメイン並びにヒト及び/又は非チンパンジー霊長類のEGFR、Her2/neu又はIgEに結合可能な第2結合ドメインを含むポリペプチドであって、前記エピトープが、配列番号2、4、6又は8からなる群に含まれるアミノ酸配列の一部であるポリペプチド。
  2. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε(イプシロン)鎖のエピトープに結合可能な前記第1結合ドメインが、ヒト起源である、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な前記第1結合ドメインが、
    (a)配列番号27に記載のCDR−L1、配列番号28に記載のCDR−L2及び配列番号29に記載のCDR−L3;
    (b)配列番号117に記載のCDR−L1、配列番号118に記載のCDR−L2及び配列番号119に記載のCDR−L3;及び
    (c)配列番号153に記載のCDR−L1、配列番号154に記載のCDR−L2及び配列番号155に記載のCDR−L3;
    から選択される、CDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3を含むVL領域を含む、請求項1又は2のいずれかに記載のポリペプチド。
  4. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な前記第1結合ドメインが、
    (a)配列番号12に記載のCDR−H1、配列番号13に記載のCDR−H2及び配列番号14に記載のCDR−H3;
    (b)配列番号30に記載のCDR−H1、配列番号31に記載のCDR−H2及び配列番号32に記載のCDR−H3;
    (c)配列番号48に記載のCDR−H1、配列番号49に記載のCDR−H2及び配列番号50に記載のCDR−H3;
    (d)配列番号66に記載のCDR−H1、配列番号67に記載のCDR−H2及び配列番号68に記載のCDR−H3;
    (e)配列番号84に記載のCDR−H1、配列番号85に記載のCDR−H2及び配列番号86に記載のCDR−H3;
    (f)配列番号102に記載のCDR−H1、配列番号103に記載のCDR−H2及び配列番号104に記載のCDR−H3;
    (g)配列番号120に記載のCDR−H1、配列番号121に記載のCDR−H2及び配列番号122に記載のCDR−H3;
    (h)配列番号138に記載のCDR−H1、配列番号139に記載のCDR−H2及び配列番号140に記載のCDR−H3;
    (i)配列番号156に記載のCDR−H1、配列番号157に記載のCDR−H2及び配列番号158に記載のCDR−H3;及び
    (j)配列番号174に記載のCDR−H1、配列番号175に記載のCDR−H2及び配列番号176に記載のCDR−H3;
    から選択される、CDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3を含むVH領域を含む、請求項1又は2のいずれかに記載のポリペプチド。
  5. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な前記第1結合ドメインが、配列番号35、39、125、129、161又は165に記載のVL領域からなる群から選択されるVL領域を含む、請求項1から3のいずれかに記載のポリペプチド。
  6. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な前記第1結合ドメインが、配列番号15、19、33、37、51、55、69、73、87、91、105、109、123、127、141、145、159、163、177又は181に記載のVH領域からなる群から選択されるVH領域を含む、請求項1又は2及び4のいずれかに記載のポリペプチド。
  7. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な前記第1結合ドメインが、
    (a)配列番号17又は21に記載のVL領域及び配列番号15又は19に記載のVH領域;
    (b)配列番号35又は39に記載のVL領域及び配列番号33又は37に記載のVH領域;
    (c)配列番号53又は57に記載のVL領域及び配列番号51又は55に記載のVH領域;
    (d)配列番号71又は75に記載のVL領域及び配列番号69又は73に記載のVH領域;
    (e)配列番号89又は93に記載のVL領域及び配列番号87又は91に記載のVH領域;
    (f)配列番号107又は111に記載のVL領域及び配列番号105又は109に記載のVH領域;
    (g)配列番号125又は129に記載のVL領域及び配列番号123又は127に記載のVH領域;
    (h)配列番号143又は147に記載のVL領域及び配列番号141又は145に記載のVH領域;
    (i)配列番号161又は165に記載のVL領域及び配列番号159又は163に記載のVH領域;及び
    (j)配列番号179又は183に記載のVL領域及び配列番号177又は181に記載のVH領域;
    からなる群から選択されるVL領域及びVH領域を含む、請求項1から6のいずれかに記載のポリペプチド。
  8. ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε鎖のエピトープに結合可能な前記第1結合ドメインが、配列番号23、25、41、43、59、61、77、79、95、97、113、115、131、133、149、151、167、169、185又は187からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
  9. 前記ポリペプチドが二重特異性単鎖抗体分子である、請求項1から8のいずれかに記載のポリペプチド。
  10. 前記二重特異性単鎖抗体分子が、第2結合ドメインにおけるCDR H1、CDR H2、CDR H3、CDR L1、CDR L2及びCDR L3として、配列番号441〜446、配列番号453〜458、配列番号463〜468、配列番号481〜486から選択される配列の群を含む、請求項9に記載のポリペプチド。
  11. 前記二重特異性単鎖抗体分子が、
    (a)配列番号389、391、393、395、397、399、409、411、413、415、417、419、429、431、433、435、437、439、447、449、451、469、471、473、475、477、479、495、497、499、501、503及び505のいずれかに記載のアミノ酸配列;並びに
    (b)配列番号390、392、394、396、398、400、410、412、414、416、418、420、430、432、434、436、438、440、448、450、452、470、472、474、476、478、480、496、498、500、502、504及び506のいずれかに記載の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列
    から選択される配列を含む、請求項9に記載のポリペプチド。
  12. 請求項1から11のいずれかに定義されるポリペプチドをコードする核酸配列。
  13. 請求項12に定義される核酸配列を含むベクター。
  14. 前記ベクターが、請求項12に定義される前記核酸配列に機能的に結合している調節配列をさらに含む、請求項13に記載のベクター。
  15. 前記ベクターが発現ベクターである、請求項14に記載のベクター。
  16. 請求項13から15のいずれかに定義されるベクターにより形質転換又はトランスフェクトされたホスト。
  17. 請求項1から11のいずれかに記載のポリペプチドの産生方法であって、請求項1から11のいずれかに定義されるポリペプチドの発現を可能にする条件下で請求項16に定義されるホストを培養する工程及び産生されたポリペプチドを培養物から回収する工程を含む方法。
  18. 請求項1から11のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項17に記載の方法により産生されたポリペプチドを含む医薬組成物。
  19. キャリア、安定剤及び/又は賦形剤の好適な製剤をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
  20. 増殖性疾患、腫瘍性疾患又は免疫疾患から選択される疾患の予防、治療又は回復のための、請求項1から11のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項17に記載の方法により産生されたポリペプチドを含む医薬組成物。
  21. キャリア、安定剤及び/又は賦形剤の好適な製剤をさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
  22. 疾患の予防、治療又は回復のための医薬組成物の調製のための、請求項1から11のいずれかに定義されたポリペプチド又は請求項17により産生されるポリペプチドの使用。
  23. 前記疾患が、増殖性疾患、腫瘍性疾患又は免疫疾患である、請求項22に記載の使用。
  24. 前記腫瘍性疾患が悪性疾患である、請求項23に記載の使用。
  25. 前記医薬組成物が、追加の薬剤と組み合わせて投与するのに好適である、請求項22から24のいずれかに記載の使用。
  26. 前記薬剤が、非タンパク質化合物又はタンパク質化合物である、請求項25に記載の使用。
  27. 前記タンパク質化合物又は非タンパク質化合物が、請求項18又は19に記載の医薬組成物と同時に、又は非同時に投与される、請求項26に記載の使用。
  28. 疾患の予防、治療又は回復を必要とする被験者における疾患の予防、治療又は回復のための方法であって、請求項18又は19に記載の有効量の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
  29. 前記疾患が、増殖性疾患、腫瘍性疾患又は免疫疾患である、請求項28に記載の方法。
  30. 前記腫瘍性疾患が悪性疾患である、請求項29に記載の方法。
  31. 前記医薬組成物が、追加の薬剤と組み合わせて投与される、請求項28から30のいずれかに記載の方法。
  32. 前記薬剤が、非タンパク質化合物又はタンパク質化合物である、請求項31に記載の方法。
  33. 前記タンパク質化合物又は非タンパク質化合物が、請求項18又は19に記載の医薬組成物と同時に、又は非同時に投与される、請求項32に記載の方法。
  34. 前記被験者がヒトである、請求項28から33のいずれか一項に記載の方法。
  35. 請求項1から11のいずれかに定義されたポリペプチド、請求項12に定義された核酸分子、請求項13から15のいずれかに定義されたベクター又は請求項16に定義されたホストを含むキット。
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