JP2010522891A - 光学素子、その作製方法およびその使用方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、光学素子と、その作製方法と、この光学素子をアイソレータまたは偏光子として使用する使用方法に関する。電磁スペクトルの周波数窓に対する本発明の光学素子には、4分の1波長板の機能を有する第1コンポーネントと、円2色性を有しかつ第1コンポーネントに続く第2コンポーネントとが含まれる。第1コンポーネントに直線偏光波を当てると、上記の光学素子は光アイソレータとして使用されるが、第2コンポーネンに直線偏光波を当てると上記の光学素子は偏光子として使用される。光アイソレータとして使用される本発明の光学素子は、レーザの戻り結合を低減または抑圧するためにレーザシステムに使用可能である。さらにこれにより、所定の周波数窓において1方向だけから見て透明な窓が実現可能である。またこれによって赤外線の波長領域に対して単方向のイオン熱アイソレーションが得られる。
Description
本発明は、光学アイソレータまたは偏光子としての光学素子、その作製方法およびその使用方法に関する。
光学アイソレータは、所定の周波数窓内、例えば紫外線、可視および赤外線の周波数領域の電磁ビームを実質的にただ1つの方向に伝搬(伝播)させ、また逆方向に進む光波の透過を減衰させるかまたは完全に抑圧するという性質を有する。これによって光アイソレータは、例えば、殊に半導体レーザにおけるレーザ動作を大きく損なうレーザの戻り結合(Rueckkopplung)の問題を低減ないしは阻止するのである。
従来技術からはファラデー効果に基づく光学アイソレータが公知であり、ここでは静的な磁場によって光の偏光を回転させる。このようなファラデー素子を互いに45°回転させた2つの偏光子の間に配置した場合、このファラデー素子によって偏光をちょうど45°だけ回転させて往路および復路において合計して90°になると、光学アイソレータが得られる。しかしながらファラデー効果には、上記の光学アイソレータを形成するために静的な磁場が必要である。
偏光子は、所定の周波数窓内の電磁ビーム、殊に紫外線、可視および赤外線の周波数領域の電磁ビームに一定の偏光状態にするという特性を有する。このため、偏光子はほとんどすべての光学構造に設けられるのである。
従来技術からはブルースター角に基づく偏光子が公知である。このため、このような偏光子は、垂直の入射からは大きく偏差した入射角で動作させなければならない。さらに偏光機能は、入射角に大きく依存してしまうのである。
J. Hwang,M.H. Song,B. Park,S. Nishimura,T. Toyooka,J. W. Wu,Y. Takanishi,K. IshikawaおよびH. TakezoeによるElectro-tunable optical diode based on photonic bandgap liquid-crystal heterojunctions,Nature Master. 4, p. 383,2005からは、円偏光ビーム用の光ダイオードが公知であるが、これは光のアイソレーションには適していない。例えば、右円偏光ビームがこの光ダイオードに当たると、この右円偏光ビームは透過する。この光ダイオードの後ろにミラーを配置すると、この右円偏光ビームは、左円偏光ビームに変換され、これは妨げられることなく上記の光ダイオードを通って伝搬することができる。しかしながら光アイソレータでは逆方向へのビームの伝搬は減衰されるかまたは完全に抑圧されなければならないのである。
上記のことから出発すると、本発明の課題は、光学素子と、その作製方法と、この光学素子を光アイソレータないしは偏光子として使用する方法を提案して、上述の欠点および制限を有しないようにすることである。
殊に上記の光学素子は、光アイソレータとして使用した際に静的な磁場が不要であるようにする。これによってこの光アイソレータは、一層コンパクトに構成することができ、また磁場の影響を受けやすい適用においても使用することができる。
上記の光学素子は、例えば、偏光子として使用される場合に上記のブルースター角ベースでないようにする。
上記の課題は、光学素子については請求項1の特徴部分に記載した特徴的構成によって解決され、作製方法については請求項10または11のステップによって解決され、また使用方法については、請求項12および15によって解決される。従属請求項にはそれぞれ本発明の有利な実施形態が記載されている。
本発明の光学素子には、コンパクトなフォトニックヘテロ構造が含まれており、このヘテロ構造は、設定可能な所定の周波数窓に対してアイソレータとして作用する。このヘテロ構造は、少なくとも2つのコンポーネントを有し、また第1コンポーネントは4分の1波長板の機能を有しており、また第2コンポーネントは円2色性を有する。
4分の1波長板(λ/4プレート)である第1コンポーネントの機能は、有利には色消しまたは超色消し性の遅延プレートの形態で、例えば石英およびMgF2から得られる。これによって上記の光学素子は、電磁スペクトルの殊に広い周波数窓にわたって使用することができる。
択一的な実施形態では、4分の1波長板である互いに平行に配置されたフィン(Lamelle)からなる構造が使用される。ここでこのフィンの高さは、電場の1成分が、この電場に垂直な成分に対して精確に4分の1波長だけ位相シフトされるように選択される。1500nmの周りの波長領域に対して可能な限り良好な効果を得るため、屈折率がn=1.57でありまたフィンの間隔が1μmの場合に高さ4μmのフィンが必要である。
上記の第2コンポーネントは、円2色性を有する材料からなる。すなわちこの第2コンポーネントは、右円偏光および左円偏光のビームを別個に通過(透過)させる。このような材料は、その鏡像と重ねることができないという特徴を有する。
有利な実施形態ではこのためにキラルフォトニック結晶を使用する。ここで殊に有利であるのは、互いに平行に配置された多数の螺旋を有しかつそれらの長手方向軸が上記の第1コンポーネントの光軸に対して垂直に配置されたフォトニック結晶である。
また上記に対して、90°ではない角度だけ互いに回転した複屈折形の非等方性層から構成されるキラルフォトニック結晶を使用するのが有利である。
択一的な実施形態では、第2コンポーネントとしてトルマリンならびに所定の液晶、例えばコレステリンが有利である。後者は、例えば自己組織化によって作製される。
本発明による光学素子は、上記の第1コンポーネントまたは第2コンポーネントのいずれに直線偏光波を当てるか応じて、光アイソレータまたは偏光子として使用することができる。
前記の第1コンポーネントに直線偏光波を当てる場合、上記の光学素子は、光アイソレータになる。このような光アイソレータは基本的にあらゆるレーザシステムにおいてレーザの戻り結合を低減または抑圧するために使用可能である。近赤外領域での通信における半導体レーザでの使用が有利である。
本発明に基づく光アイソレータの動作の仕方はつぎのように説明することができる。4分の1波長板の光軸がビーム入射面に対して45°に配向される場合、この4分の1波長板は、例えばレーザから発した入射直線偏光ビームから、円偏光ビームを形成する。この円偏光ビームは、続いてキラルコンポーネントに入射し、このキラルコンポーネントが右手系であるか左手系であるかに相応して透過するかまたは反射する。このキラルコンポーネントが右手系である場合、右に円偏光されたビームの伝搬が抑圧され、このキラルコンポーネントが左手系である場合、左に円偏光されたビームの伝搬が抑圧される。光アイソレータに戻るビームがちょうど逆の手系を有する場合、上記の装置の逆ではない特性が得られる。すなわちビームは、上記のアイソレータを通して逆方向に伝搬することができないのである。
第4コンポーネントとして付加的な偏光子を有する本発明の光アイソレータを用いれば、所定の周波数範囲内のビームが、上記のアイソレータを通過して逆方向に伝搬することが大いに低減されるかまたは完全に阻止される。したがって紫外線光または可視光に対する所定の周波数窓において1つの方向からだけ透過可能な窓が実現できるのである。これにより、赤外線の波長領域に調整すれば、一方向の熱アイソレーションが得られる。すなわちパッシブハウスにおいて熱放射は外から家の中に入るが、熱放射が家から出ることはできないのである。
上記の第2コンポーネントに直線偏光波が当たる場合、上記の光学素子は偏光子になり、偏光された紫外線光、可視光または赤外線光が形成される。
本発明に基づく偏光子の動作の仕方はつぎのように説明することができる。偏光されていない光が、円2色性を有するコンポーネントに当たると、このコンポーネントは、光の反射成分と透過成分とを形成する。ここでこれらの2つの成分は円偏光されている。上記の4分の1波長板の光軸が光入射面に対して45°で配向される場合、この4分の1波長板は、円偏光ビームから直線偏光ビームを形成するのである。
第1および第2のコンポーネントを有しまた第1コンポーネントが円2色性を有しかつた第2コンポーネントが4分の1波長板である本発明の実施形態では、円偏光の反射成分と、直線偏光の透過成分とが得られる。
3つのコンポーネントを有する特別な実施形態では、第2コンポーネントに続く第3コンポーネントが設けられており、ここでも4分の1波長板から構成される第3コンポーネントの光軸は、第1コンポーネントの光軸に対して垂直に配置される。この場合、反射光も直線偏光されるが、透過した偏光に対して90°だけ回転している。
本発明の光学素子は、直接レーザ書き込みによって作製可能である。大きな面積を作製するためには、いわゆる直接レーザ書き込みのマイクロレンズアレイまたはホログラフィック方式が有利である。考えられる別の方式は、GLAD(Glancing Angle Deposition)とも称されるストライプ状の角度での分離である。
本発明は、以下に説明する利点を有する。
光アイソレータとして使用される本発明による光学素子は、ファラデーアイソレータとは異なり、静的な磁場が不要である。静的な磁場を省略することによって、磁場の影響を受けやすい適用に使用することができ、また一層薄くかつ面積の大きな光アイソレータを作製することができる。これによって本発明の光アイソレータは、極めてコンパクトに作製することができる。このため、例えばレーザの出力結合ミラーの背後など、光学系への組み込みが簡単に可能となるのである。
偏光子として使用される本発明の光学素子は、垂直の入射とは大きく偏差している所定の入射角、ブルースター角で動作させる必要はない。入射角に対する偏光の依存性は、小さい角度に対してわずかである。
本発明を以下、実施例および図面に基づいて詳しく説明する。
図1a)には光アイソレータとして使用される本発明の光学素子が略示されている。ここで第1コンポーネント1である4分の1波長板には、直線偏光波10が当てられる。またこの光学素子はさらに円2色性を有する第2コンポーネント2から構成される。
図1b)には偏光子として使用される本発明の光学素子が略示されている。ここで円2色性を有する第2コンポーネント2には直線偏光波10が当てられる。またこの光学素子はさらに第1コンポーネント1である4分の1波長板から構成される。
図2には本発明の光学素子が略示されており、この光学素子には直線偏光波10が当たられ、またこの光学素子は、第1コンポーネント1である4分の1波長板と、円2色性を有する第2コンポーネント2と、第3コンポーネント3である別の4分の1波長板とから構成される。
図3には光学素子からなる本発明の装置が略示されており、この光学素子は、第1コンポーネント1である4分の1波長板と、円2色性を有する第2コンポーネント2とからなり、付加的に第4コンポーネントとして偏光子4を有する。
図4には光学素子の実施例が示されており、この光学素子は、基板5に配置されており、また第1コンポーネント1はフィン構造で、また第2コンポーネント2は螺旋構造で実施されている。第1コンポーネント1の光軸11は、第2コンポーネント2の光軸12に対して垂直である。このような光学素子は、実験室において直接レーザ書き込みによって作製される。
図5a)には光学素子の実施例が示されており、この光学素子は、基板5に配置されており、また第1コンポーネント1はフィン構造で、また第2コンポーネント2は螺旋構造で、さらに第3コンポーネント3も同様にフィン構造で実施されている。第1コンポーネント1の光軸11は、第2コンポーネント2の光軸12にも、第3コンポーネント3の同じ光軸13にも垂直である。このような光学素子は、実験室において同様に直接レーザ書き込みによって作製される。
図5b),c)およびd)には通信の分野における光学素子の使用に対し、すなわち1000nm〜1600nmの波長に対してキラルフォトニック結晶の螺旋構造の有利な設計が示されている。ここでは螺旋の間隔および周期は1μm〜1.5μm、有利には約1.2μmとし、またこの螺旋の直径は、0.5μm〜1μmの範囲とし、有利には約0.72μmとする。ボクセル形に対して直接レーザ書き込みにおいてに対してχ=2の比を選択する。ここでは一般的にχ=1〜χ=5の比も同様に有利である。材料としてポリマフォトレジスト、例えばSU−8,例えばAs2S3などのカルコゲンガラスまたはケイ素が有利である。
図6には光学素子の第2コンポーネントに対する別の実施例が示されており、この第2コンポーネントはフォトニック結晶からなり、90°ではない角だけ互いに回転された複屈折の非等方性層から構成されており、また基板に設けられている。多くの場合に90°の角度を有するこのようなフォトニック結晶は、ウッドパイル(wood-pile)構造と称される。
図7には、1000〜1750nmの波長領域にわたって実験的に記録した本発明による光学素子の透過スペクトルが示されており、ここでこの光学素子は、負のポリマコートSU−8(屈折率n=1.57)からなる。図4にしたがい、1μmの格子定数および4μmの高さを有するフィン構造を4分の1波長板として使用する。1.2μmの格子定数を有する螺旋構造は、キラル素子として使用される。
上記の透過スペクトルから明らかに分かるのは、入射光の振動面が45°または−45°の角度で入射する場合に透過性が1500nm〜約1800nmの範囲ではっきりと変化することである。これに加えて主軸も90°回転する。また期待通りにこれに相補的な結果が得られる。これによって証明されるのは、この光学素子が、170〜200THzの周波数窓における使用に適していることである。
Claims (15)
- 電磁スペクトルの周波数窓に対する光学素子において、
該光学素子は、4分の1波長板の機能を備えた第1コンポーネントを有し、かつ当該第1コンポーネントに続きかつ円2色性を有する第2コンポーネントを含むことを特徴とする
光学素子。 - 付加的に前記の第2コンポーネントに続く第3コンポーネントを有しており、
当該の第3コンポーネントは、4分の1波長板の機能を有しており、
当該の第3コンポーネントの光軸は、前記の第1コンポーネントの光軸に対して垂直に配置されている、
請求項1に記載の光学素子。 - 付加的に前記の第1コンポーネントに続く第4コンポーネントを有しており、
当該の第4コンポーネントは偏光子の機能を有しており、
当該の第4コンポーネントは前記の第1コンポーネントに平行に配置されている、
請求項1に記載の光学素子。 - 4分の1波長板として色消しまたは超色消し遅延プレートを有する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の光学素子。 - 4分の1波長板として互いに平行に配置されたフィンからなる構造を有する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の光学素子。 - 第2コンポーネントとしてキラルフォトニック結晶を有する、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の光学素子。 - 互いに平行に配置された多数の螺旋からなるフォトニック結晶を有し、
ここで当該フォトニック結晶の長手方向軸は前記の第1コンポーネントの光軸に対して垂直に配置されている、
請求項6に記載の光学素子。 - 90°とは異なる角度だけ互いに回転させた複屈折の非等方性層から構成されるフォトニック結晶を有する、
請求項6に記載の光学素子。 - 第2コンポーネントとしてコレステリンの液晶を有する、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の光学素子。 - 直接レーザ書き込みを用いてまたはホログラフィを用いて作製することを特徴とする、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の光学素子を作製する方法。 - 前記の第2コンポーネントをコレステリン液晶の自己組織化によって作製する、
請求項9に記載の方法。 - 前記の第1コンポーネントに直線偏光波を当てて光アイソレータとして使用することを特徴とする、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の光学素子の使用方法。 - レーザにおける戻り結合を低減するために使用する、
請求項12に記載の使用方法。 - 1方向における紫外線光、可視光または赤外線光の伝搬を低減するために使用する、
請求項12に記載の使用方法。 - 前記の第2コンポーネントに直線偏光波を当てて偏光子として使用する、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の光学素子の使用方法。
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