特に重車輌においては、各種形態の冷却に対する要求が増大している。燃焼機関を冷却する冷却系統の冷却剤は車輌のその他の要素、例えばリターダ(静動機)を冷却するためにも益々使用されつつある。更に高度の給気を有する過給気(スーパチャージ)燃焼機関が、環境上の理由から、かつより高度の性能に対する要求に応えて重車輌を駆動するために益々使用されつつある。圧縮空気は燃焼機関に導かれる前に給気冷却器(チャージエアクーラ)で効果的に冷却される必要がある。環境上の理由から、燃焼機関からの排気ガスの一部が再循環され、燃焼機関への入口空気と混合されるEGR(排気ガス再循環)と称される技術の利用も増大しつつある。入口空気へ排気ガスを添加することによって燃焼温度を低下させ、その結果特に排気ガスの窒素酸化物(NOx)の含有量を低減させる。再循環する排気ガスは空気と混合され、燃焼機関へ導かれる前に少なくとも1個のEGR冷却器において冷却される。
車輌は通常その前方部分においてラジエータファンを備えた空気通路であって、該ファンが該通路に空気を強制的に貫流させるような空気通路を含んでいる。燃焼機関を冷却する冷却剤を冷却するラジエータは通常そのような空気通路に配置されている。過給気燃焼機関によって駆動される車輌においては、空冷の給気冷却器も通常冷却剤を具備したラジエータの前方の位置においてそのような空気通路に位置されている。給気冷却器をそのように位置させることによって給気を周囲空気の温度に概ね対応する温度まで冷却することを可能にする。そのような位置決めの欠点は給気を冷却するために既に使用された空気によって冷却剤が冷却されるので後方に位置したラジエータにおいては冷却剤の冷却が少ないことである。しかしながら、車両におけるスペースは極めて限られており、そのため前後に位置した複数の冷却要素における二つ以上の媒体を冷却するために前記空気通路における既存の空気の流れを使用することが屡必要とされる。再循環されている排気ガスを冷却するために使用される何らかの空冷EGR冷却器も既存の空気通路に位置させることができる。
本発明の目的は空気通路における諸々の媒体を冷却するために少なくとも3個の冷却要素を有する冷却装置であって、そのため冷却要素における媒体を冷却するために前記空気通路を通しての冷却空気の流れを最適に使用することが可能とされる冷却装置を提供することである。
この目的は請求項1において特徴を述べている部分に指示されている主要点を特徴としている該請求項の導入部分に記述された種類の冷却装置によって達成される。空気通路における多数の冷却要素を冷却空気の流れが貫流するときにその冷却空気の流れによって提供される冷却効果は冷却要素を貫流する空気の質量流量に冷却要素を通過することによって冷却空気が受ける温度増加を乗算することによって得られる積に関連している。冷却要素における媒体を冷却するために最適な態様で使用可能であるように空気通路を通しての利用可能な空気の流れに対しては、空気はそれぞれの冷却要素における各媒体について大きな温度差を保持する必要がある。そのような場合に対して、冷却通路を空気が貫流する順序は各媒体がそれを先行する媒体よりも高い温度であるようにする必要がある。このように、既存の冷却空気の流れは媒体に最適な総体的な冷却が与えられるような仕方で使用される。空気通路において冷却要素をそのような順序で配置させることによって冷却空気の流れにより最適な総体的な冷却のみならず、それぞれの媒体の比較的均一な冷却が可能とされる。
本発明の好適実施例によれば、前記冷却要素の一つは燃焼機関を冷却させる目的のラジエータ液の形態の媒体を備えたラジエータである。そのようなラジエータは通常車輌の前方部分における空気通路に位置している。燃焼機関の作動の間、ラジエータ液はそれがラジエータに達したとき約100℃の温度である。前記冷却要素の一つは燃焼機関まで導くようにした圧縮空気の形態の媒体を備えた過気冷却器としうる。給気は車輌のターボユニットにおいて圧縮された後は200℃までの温度でありうる。空冷された給気冷却器は冷却剤を具備したラジエータと同じ空気通路において車輌の前方部分に位置されることが多い。前記冷却要素の一つは燃焼機関まで再循環されるようにした排気ガスの形態の媒体を備えたEGR冷却器としうる。燃焼機関を出ていく排気ガスは700℃までの温度になりうる。もしも前記3個の冷却要素が空気通路に配置されるとすれば、冷却剤のためのラジエータは、その冷却剤が最も低い温度の媒体であるので前記空気通路の最前方に装着する必要がある。給気冷却器は、給気が空気通路における空気の流れによって冷却されるべき媒体の中で次に低い温度であるので冷却剤のためのラジエータの背後に配置される。EGR冷却器は、排気ガスが前記空気通路において冷却されるべき媒体の中で最も高い温度を有しているので前記空気通路の最も後方に配置される。このように、冷却要素は空気の流れ方向における媒体の一連の温度上昇の順序で配置される。その結果、媒体が最適に総体的に冷却される。前述した以外の媒体はその他の冷却要素と共に空気通路に位置した冷却要素において冷却しうることは勿論である。そのような媒体は車輌の空調系統において使用される冷却媒体であったりする。
本発明の別の実施例によれば、冷却装置は空気通路を通して空気を強制的に流すようにされたラジエータファンである。空気通路を通しての空気の流れが車輌の運動によって全体的に発生するとした場合よりもこのようにしてより大きな空気流量とより大きな冷却効果を得ることが出来る。ラジエータファンは燃焼機関によって駆動されることが有利である。従って、空気通路を通してその結果得られる空気の強制的な流れの大きさは燃焼機関の速度に関連する。
本発明の別の好適実施例によれば、冷却装置は空気がその中を貫流するようにつくられた追加の空気通路と、第一の空気通路において既に冷却された前述の媒体の少なくとも一つを冷却する更に別の段階を提供するようにされた少なくとも1個の追加の冷却要素とを含む。燃焼機関の最適な性能のためには、給気と再循環する排気ガスとは周囲の温度に概ね対応する低い温度まで冷却される必要がある。給気冷却器とEGR冷却器とは冷却剤用のラジエータの下流側に位置しているので、それらは第一の空気通路における空気によっては周囲温度まで冷却されえない。前記ような追加の空気通路が給気および(または)再循環排気ガスが周囲温度にある空気によって冷却される別の段階を経由するようにさせることを可能とする。第一の空気通路における空気は媒体の最適な総体的冷却を提供するような仕方で使用されてきたので、追加の空気通路における追加の冷却要素は多くの場合極めて小型のものでよい。
本発明の好適実施例によれば、追加の冷却要素は給気冷却器からの圧縮された空気とEGR冷却器からの戻り排気ガスとの混合物を冷却するようにされている。給気冷却器からの冷却された空気とEGR冷却器からの冷却された排気ガスとはここで混合することができ、続いてその混合物は前記追加の冷却要素まで導かれ、そこで前記追加の空気通路を貫流する周囲温度の空気によって冷却される別の段階を提供される。本冷却装置は前記追加の空気通路を通して強制的な空気の流れを提供するようにされた第二のラジエータファンを有利に含んでいる。第二のラジエータファンは電動モータによって駆動すればよい。このようにして、燃焼機関の速度とは独立している追加の空気通路を通して空気の流れが提供される。
添付図面を参照して本発明の好適実施例を例示として以下説明する。
図1は過給気燃焼機関2によって駆動される車輌を概略的に示している。前記車輌は過給気ディーゼルエンジンによって駆動される重車輌であってよい。燃焼機関2は冷却剤配管3を循環する冷却剤を入れている冷却系統によって従来の仕方で冷却される。冷却剤は冷却剤ポンプ4によって冷却系統内を循環する。前記冷却系統はまたサーモスタット5も含む。前記冷却系統の冷却剤は空気通路Aにおいて前記車輌1の前方部分に配置されたラジエータ6において冷却されるべきものである。冷却剤は特定の方向にラジエータファン7によって前記空気通路Aを貫流するようにされた空気によってラジエータ6において冷却される。ラジエータファン7は適当な接続手段を介して燃焼機関2によって駆動される。
燃焼機関2のシリンダからの排気ガスは排気マニホールド8を介して排気ガス配管9まで導かれる。大気圧より高い排気ガス配管9内の排気ガスはターボユニットのタービン10まで導かれる。タービン10は接続手段を介してコンプレッサ11まで伝達される駆動力を提供する。コンプレッサ11は空気フィルタ12を介して入口配管13中へ導かれる空気を圧縮する。給気冷却器14が入口配管13に位置している。給気冷却器14は、空気通路Aを貫流する空気の流れ方向に対してラジエータ6の下流側の位置において空気通路Aに位置している。給気冷却器14の機能は圧縮空気をそれが燃焼機関2まで導かれる前に冷却することである。
燃焼機関2には排気ガスを再循環させるためのEGR(排気ガス再循環)装置が設けられている。燃焼機関2まで導かれる圧縮空気に排気ガスを添加することによって燃焼温度を下げ、従って圧縮工程中に形成される窒素酸化物(NOx)の含有量も低下させる。排気ガスを再循環させるための戻り配管15が排気ガス配管9から入口配管13まで延在している。前記戻り配管15はEGR弁16を含み、該弁によって戻り配管15中における排気ガスの流れを遮断することができる。EGR弁16はまた、排気ガス配管9から戻り配管15を介して入口配管13まで導かれる排気ガスの量を無段階に制御するために使用することができる。制御ユニット17は、戻り配管15を介して所望の量の排気ガスが戻るようにEGR弁16を制御するために、例えば燃焼機関2の負荷についての情報を利用するようにされている。戻り配管15は排気ガスを冷却するためのEGR冷却器18を含む。EGR冷却器18はラジエータ6および給気冷却器14の下流側の位置において空気通路Aに位置している。
過給気ディーゼルエンジン2においては、或る作動状況では排気ガス配管9における排気ガスの圧力は入口配管13における圧縮空気の圧力よりも低い。そのようは状況においては、特殊な補助手段無しには戻り配管15における排気ガスを入口配管13における圧縮空気と直接混合することはできない。そのために、例えばベンチュリ19を使用すればよい。もしも代わりに燃焼機関2が過給気オットー機関であるとすれば、概ね全ての作動状況においてオットー機関の排気ガス配管9内での排気ガスは入口配管13における圧縮空気よりも高い圧力なので、戻り配管15における排気ガスは入口配管13中へ直接導入することが出来る。排気ガスが入口配管13における圧縮空気と混合されると、その混合物は追加の冷却器20まで導かれ、そこで排気ガスと空気との混合物には第二段階の冷却が行われる。前記追加の冷却器20は追加の空気通路Bに位置している。排気ガスと空気との混合物は、ラジエータファン21により特定の方向に前記通路Bを貫流するようにされる空気によって前記追加の冷却器20において冷却される。ラジエータファン21はここでは電動モータ22によって駆動される。その後、排気ガスと空気との冷却された混合物はマニホールド22を介して燃焼機関2のそれぞれのシリンダまで導かれる。
燃焼機関2の作動の間、空気通路Aを貫流する空気によって冷却されるべく温かくなった冷却剤が配管3を介して燃焼機関2からラジエータ6まで導かれる。ここでは冷却剤は約100℃までの温度でありうる。最初に空気通路Aを貫流する空気の温度は概ね周囲の温度に対応する。その結果、ラジエータ6を貫流する冷却空気とラジエータ6における冷却剤との間には比較的大きな温度差ができる。このようにして冷却剤にはラジエータ6において極めて良好な冷却がなされる。圧縮された温かい空気は圧縮機11から配管13を介して給気冷却器14まで導かれる。圧縮された空気はここでは約200℃までの温度でありうる。空気通路Aを貫流する空気はラジエータ6において冷却剤を冷却した後はより高い温度となっているが、過給空気冷却器14を貫流する空気と給気冷却器14における圧縮された空気との間には依然として大きな温度差がある。その結果、給気冷却器14における給気には良好な冷却がなされる。排気ガスが排気ガス配管9から戻り配管15を介してEGR冷却器18に導かれる。排気ガスは約700℃までの温度でありうる。空気通路Aを貫流する空気はラジエータ6における冷却剤および給気冷却器14における圧縮空気を冷却することによって徐々により高い温度となるにもかかわらず、その温度は依然としてEGR冷却器18における排気ガスのそれよりもはるかに低い。このように、再循環している排気ガスもまたEGR冷却器18において良好な冷却をなすことができる。
空気通路Aを貫流する空気が提供する全体の冷却効果は、空気がラジエータ6、給気冷却器14およびEGR冷却器18を貫流するにつれて、その空気が受ける全体の温度上昇ΔTに関連する。全体の温度上昇ΔTは空気がラジエータ6、給気冷却器14およびEGR冷却器18を通過し、そしてそれらにおけるそれぞれの媒体を冷却することによる空気の温度上昇の総量である。前述の冷却要素6,14,18は該冷却要素6,14,18を貫流する空気が各々の媒体がそれを先行するものより高い温度である一連の媒体を冷却するような仕方でそれぞれの冷却要素6,14,18における媒体の温度と関連するような順序で空気通路Aにおいてここでは相互に前後関係に配置されている。冷却要素6,14,18からなるそのような冷却装置によって、冷却空気の流れはそれぞれの冷却要素6,14,18における媒体を最適に総体的に冷却する。このように、空気は冷却要素6,14,18を通過することによって相応して最大の温度上昇ΔTがなされる。冷却要素6,14,18からなるそのような冷却装置により、それぞれの冷却要素6,14,18における媒体を比較的均一に冷却できるようにもする。このように、既存の冷却空気の流れはそれぞれの冷却要素6,14,18における媒体を冷却するために最適に使用できるようにされる。前述の冷却配置によって、給気冷却器14における圧縮空気およびEGR冷却器18における排気ガスは周囲の温度よりも高い温度である空気によって冷却される。従って、0℃以下の温度で周囲空気を使用した場合にありうることであるが、それぞれ給気冷却器14およびEGR冷却器18内で圧縮空気に水蒸気が発生したり、排気ガスが凝結したり氷結する危険性がない。
しかしながら周囲の温度が0℃以上である場合、給気と排気ガスを周囲の温度に概ね対応した温度にまで冷却したいと思うことがよくある。給気冷却器14からの冷却された給気とEGR冷却器18からの排気ガスは参照番号19のところで混合され、その後それらは追加の空気通路Bに位置した追加の冷却要素20まで共に導かれる。前記空気と排気ガスの混合物が燃焼機関2まで導かれる前に周囲の温度に概ね対応する温度となるように、ラジエータファン21はここで追加の冷却要素20を通して周囲温度で空気を圧送する。周囲の温度が0℃以下であるような状況においては、圧縮空気と排気ガスを空気通路Aにおいて冷却するだけで全く充分である。冷却要素20において圧縮空気と排気ガスがそれ以上冷却されるのを阻止するために、周囲の温度が特定の値以下に低下すると冷却要素20に氷が形成されないようにするべくラジエータファン21はスイッチを切ることができる。代替的に、周囲の空気温度が低すぎる場合、冷却装置は圧縮空気と排気ガスの混合物を追加の冷却要素20を飛ばして導くような分岐配管を含みうる。
本発明は図面が指示する実施例に何ら限定されるのではなく、特許請求の範囲内で自在に変更しうる。上記例示した媒体以外の媒体を空気通路Aにおける冷却要素において冷却してもよいことは勿論である。追加の冷却要素20は第一の空気通路Aにおいて第一段階の冷却が既になされた一つの媒体のみを冷却するために使用してもよい。