詳細な説明
本発明は、EphB3特異的抗体、そのような抗体を含む薬学的処方物、上記抗体および薬学的処方物を調製する方法ならびにその薬学的処方物および化合物で患者を処置する方法を提供する。本発明の抗体は、EphB3と結合し、EphB3のリン酸化を誘導し、EphB3のオリゴマー化を誘導し、EphB3の内部移行を誘導し、EphB3の分解を誘導し、EphB3のシグナル伝達を誘導し、そして/またはEphB3媒介性の細胞−細胞接着を調節する、所望の生物学的活性を有し得る。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドのアゴニストとして作用する。従って、いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、それが結合する標的抗原の機能を活性化し得るか、または誘導し得る(例えば、リン酸化活性または細胞内シグナル伝達のような標的の機能を増強する)。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、本明細書中で開示されるエピトープまたはその一部に結合する。いくつかの実施形態において、レセプターへの本抗体の結合は、レセプター分解を誘導する。いくつかの実施形態において、レセプターへの本抗体の結合は、レセプターのオリゴマー化を誘導する。いくつかの実施形態において、レセプターへの本抗体の結合は、レセプターのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態において、レセプターへの本抗体の結合は、レセプターの活性化を誘導する。レセプターの活性化(すなわち、シグナル伝達)は、当該分野で公知の手法によって測定され得る。例えば、レセプターの活性化は、免疫沈降後のウエスタンブロット解析によってレセプターまたはその基質のリン酸化(例えば、チロシンまたはセリン/トレオニン)を検出することによって測定することができる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようにリガンド活性またはレセプター活性を、本抗体の非存在下における活性の少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%または少なくとも50%調節する抗体が、提供される。
いくつかの実施形態において、EphB3抗体は、細胞内のアダプタータンパク質へのEphB3の結合を刺激する。いくつかの実施形態において、EphB3抗体は、FAK、Erk/MAPK経路、Cdc42/Rac経路を阻害および/または不活性化し、RasGAPを活性化し、Abl/Arg、Fyn、Src、LMW−PTP、インターセクチン、Cdc42経路、KalirinもしくはRac経路を阻害および/または不活性化する。いくつかの実施形態において、EphB3抗体は、R−rasを不活性化するか、またはSyndecanを活性化する。いくつかの実施形態において、EphB3抗体は、R−Rasのリン酸化に導く。
本明細書中で使用されるとき、用語「細胞内のアダプタータンパク質」とは、シグナル伝達複合体の様々なセグメントを接続するタンパク質のことをいう。そのアダプターは、酵素活性を有していてもよいし、有していなくてもよい。アダプタータンパク質の例は、当業者に公知である。例えば、Grb2は、固有の酵素活性を有しないアダプタータンパク質であり、RasGAPは、酵素活性を有するアダプタータンパク質である。
本発明の抗体は、あるいは(またはさらに)、癌細胞上で発現されるEphB3への結合の所望の生物学的活性を有するので、癌細胞に対して細胞傷害性治療を標的とするために働き得る。
インビトロアッセイで測定するときに高親和性および高力価を有するいくつかの好ましいマウス抗体またはキメラ抗体は、StudnickaらのHuman Engineering(商標)法に基づいてヒトにおいて免疫原性がより低くなるように改変される。簡潔には、ヒトの環境に関してその免疫原性を低下させつつ、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の表面に露出したアミノ酸残基を、抗原結合性またはタンパク質フォールディングのいずれかに悪影響を及ぼすことがありそうにないと決定された位置においてヒト残基に改変する。改変された重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする合成遺伝子を構築し、ヒトガンマ重鎖定常領域および/またはカッパ軽鎖定常領域に対するコード配列に連結する。任意のヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域は、Human Engineered(商標)抗体可変領域とともに使用され得る。ヒト重鎖遺伝子およびヒト軽鎖遺伝子を哺乳動物細胞に導入し、得られる組換え免疫グロブリン産物を得て、特徴付けする。
本発明の例示的な抗体としては、XPA.04.001、XPA.04.013、XPA.04.018、XPA.04.048、XHA.05.337、XHA.05.200、XHA.05.111、XHA.05.005、XHA.05.228、XHA.05.030、XHA.05.964およびXHA.05.885が挙げられる。以下の抗体分泌ハイブリドーマは、ブダペスト条約の規定に従って、2006年8月4日にAmerican Type Culture Collection(ATCC),10801 University Blvd.,Manassas,VA20110−2209(USA)に寄託された:
本発明をより十分に理解するための助けとして、以下の定義が提供される。
全般的な定義
標的抗原ヒト「EphB3」とは、本明細書中で使用されるとき、配列番号2およびその天然に存在する対立遺伝子変異体(allelic variant)と実質的に同じアミノ酸配列を有するヒトポリペプチドのことをいう。「EphB3のECD」とは、本明細書中で使用されるとき、配列番号2のアミノ酸37〜558によって表されるEphB3の細胞外部分のことをいう(ECDの公開されている分類に関して上の記述も参照のこと)。
「腫瘍」とは、本明細書中で使用されるとき、悪性であるか良性であるかに関係なく、また、すべての前癌性細胞および癌性細胞ならびに前癌性組織および癌性組織に関係なく、すべての新生物の細胞の成長および増殖のことをいう。
用語「癌」および「癌性」とは、代表的には調節不全の細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態のことをいうか、または説明する。癌の例としては、扁平上皮および小細胞肺癌腫、食道扁平上皮癌、卵巣明細胞癌、結腸腺癌および浸潤性乳管癌が挙げられるがこれらに限定されない。
「処置」は、障害の発症を予防する意図または障害の病状を変化させる意図で行われる介入である。従って、「処置」とは、治療的な処置と予防的または防止的な措置の両方のことをいう。処置の必要のある者としては、障害をすでに有している者ならびに障害を予防すべき者が挙げられる。腫瘍(例えば、癌)の処置では、治療薬は、腫瘍細胞の病状を直接減少させ得るか、または腫瘍細胞を他の治療薬による処置、例えば、放射線照射および/または化学療法に影響されやすくし得る。疾患の臨床的な症状、生化学的な症状、放射線学的な症状または自覚的な症状に苦しんでいる患者の処置としては、そのような症状の一部または全部を緩和することまたは疾患に対する素因を減少させることが挙げられ得る。癌の「病状」としては、患者の健康を損なうすべての現象が挙げられる。このこととしては、異常な細胞増殖または制御できない細胞増殖、転移、隣接する細胞の正常な機能の妨害、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症性応答または免疫学的応答の抑制または悪化などが挙げられるが、これらに限定されない。従って、処置後の改善は、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖速度の低下、既存の腫瘍細胞もしくは転移性細胞の破壊および/または転移のサイズもしくは数の減少として表れ得る。
処置の目的での「哺乳動物」とは、ヒト、家庭内の動物および家畜ならびに動物園の動物、スポーツ動物(sports)またはペット動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ)などをはじめとした哺乳動物として分類される任意の動物のことをいう。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
本明細書中で使用されるとき、句「治療有効量」は、所望の処置レジメンに従って投与されるときに、疾患のそのような症状の一部もしくは全部を緩和することまたは疾患に対する素因を減少させることを含む所望の治療的または予防的な効果または応答を誘発する、本発明の実施形態に適切である治療的な抗体または予防的な抗体の量のことをいうと意味している。
抗体
用語「免疫特異的(immunospecific)」または「特異的に結合する」は、本抗体が、約104M−1以上、好ましくは、約105M−1以上、より好ましくは、約106M−1以上のKaでEphB3またはそのECDに結合することを意味する。本抗体は、標的抗原に対して、他の無関係な分子と比べて実質的に高い親和性を有し得る。本抗体は、標的抗原に対して、オルソログまたはホモログと比べて実質的に高い親和性、例えば、標的抗原に対して少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍またはそれ以上の相対的な親和性も有し得る。あるいは、公知のホモログまたはオルソログと交差反応することが、本抗体にとって有用である場合がある。
本発明の抗体はまた、少なくとも10−4M、好ましくは少なくとも約10−4M〜約10−12M、より好ましくは少なくとも約10−5M、10−6M、10−7Mまたは10−8M、10−9M、10−10Mまたは10−11Mの親和性(KD)によって特徴づけられ得る。本抗体に対する適切な親和性は、治療的な適用に応じて変化し得る。例えば、非常に高い親和性を有する抗体が、血液癌の治療薬として最も望ましい場合があるが、非常に高い親和性を有する抗体は、固形腫瘍への弱い侵入を示す場合がある。従って、約10−6M〜10−10Mの親和性を有する抗体は、固形腫瘍の治療薬として、より適切であり得る。そのような親和性は、従来の手法を使用して(例えば、平衡透析によって;製造者が概要を述べている一般的な手順を用い、BIAcore 2000装置を使用することによって;放射性標識標的抗原を使用するラジオイムノアッセイによって;または、当業者に公知の別の方法によって)容易に測定され得る。親和性データは、例えば、Scatchardら、Ann N.Y.Acad.Sci,51:660(1949)の方法によって解析され得る。
「アゴニスト抗体」とは、それが結合する標的抗原の機能を活性化することができるか、または誘導することができる抗体分子のことを意味する。従って、「アゴニスト」抗標的抗体は、リン酸化活性または細胞内のシグナル伝達のような標的の機能を増加させることができる。
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原に結合することができる抗体フラグメント(例えば、Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ)および所望の生物学的活性を示す限り前述のもの(forgoing)を含む組換えペプチドを包含する。抗体フラグメントは、組換えDNA手法またはインタクトな抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によって作製され得、以下でさらに説明される。モノクローナル抗体の非限定的な例としては、マウスの免疫グロブリン、キメラ免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリン、ヒト免疫グロブリンおよびHuman Engineered(商標)免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリンから得られる配列を有するキメラ融合タンパク質またはムテインもしくはその誘導体が挙げられ、その各々は、以下でさらに説明される。化学的に誘導される抗体を含むインタクトな分子および/またはフラグメントの多量体または集合体が、企図される。本発明によれば、任意のアイソタイプクラスまたはサブクラスの抗体が、企図される。
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書中で使用されるとき、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいい、すなわち、その集団を含む個別の抗体は、微量存在し得る天然に存在し得る変異または選択的翻訳後修飾を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的である;代表的には、様々な決定基(エピトープ)に対して産生される様々な抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して産生される。モノクローナル抗体は、それらの特異性に加えて、様々な特異性および特性を有する他の免疫グロブリンで汚染されていない均一な培養によって合成されるという点で有利である。
修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるときの抗体の特性を示すものであり、任意の特定の方法によって抗体を作製する必要があると解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、1975 Nature,256:495によって初めて報告されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、組換え、キメラ、ヒト化、ヒト、Human Engineered(商標)または抗体フラグメントであり得る。
「単離された」抗体は、同定されており、かつ、その天然の環境の成分から分離され、回収されたものである。その天然の環境の夾雑物成分は、抗体にとって診断的または治療的な用途を妨害し得る材料であり、その成分としては、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が挙げられ得る。好ましい実施形態において、本抗体は、(1)Lowry法によって測定されるとき抗体の95重量%超に、最も好ましくは99重量%超に、(2)スピニングカップ配列決定装置を使用することによってN末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3)クマシーブルー染色または好ましくは銀染色を使用して還元条件下または非還元条件下でSDS−PAGEによって均一に、精製される。単離された抗体は、その抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内の原位置における抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製段階によって調製される。
「免疫グロブリン」または「天然抗体」は、4量体糖タンパク質である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2本の同一のポリペプチド鎖の対から構成され、その各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端の部分は、主に抗原認識に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の「可変」(「V」)領域を含む。各鎖のカルボキシ末端の部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域と定義されている。免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて様々なクラスに割り当てられ得る。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)およびイプシロン(ε)に分類され、抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと定義されている。これらのうちのいくつかは、さらにサブクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けられ得る。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する;例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖に分類される。軽鎖および重鎖内において、可変領域および定常領域は、約12またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域で連結されており、重鎖は、約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。
抗体の構造および作製の詳細な説明については、Roth,D.B.,and Craig,N.L.,Cell,94:411−414(1998)(本明細書中でその全体が参考として援用される)を参照のこと。簡潔には、重鎖および軽鎖の免疫グロブリン配列をコードするDNAを作製するためのプロセスは、主に、発生中のB細胞において起きる。様々な免疫グロブリン遺伝子セグメントの再編成および連結の前に、V、D、Jおよび定常(C)遺伝子セグメントは、一般に、単一染色体上の比較的近い位置に見られる。B細胞の分化中、V、D、J(または軽鎖遺伝子の場合はVおよびJのみ)遺伝子セグメントの適切なファミリーメンバーのうちの各々の1つが、組み換えられることにより、重鎖および軽鎖の免疫グロブリン遺伝子の機能的に再編成された可変領域が形成される。この遺伝子セグメント再編成プロセスは、連続的であるとみられる。まず、重鎖のDとJとの連結が行われ、続いて、重鎖のVとDJとの連結、そして軽鎖のVとJとの連結が行われる。V、DおよびJセグメントの再編成に加えて、軽鎖においてVセグメントとJセグメントが連結され、重鎖のDセグメントとJセグメントが連結される位置における可変的な組換えによって、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の主要なレパートリーにおいて、さらに多様性がもたらされる。軽鎖におけるそのようなバリエーションは、代表的には、V遺伝子セグメントの最後のコドンおよびJセグメントの最初のコドンの内側で起きる。連結時の同様の不正確さは、DセグメントとJHセグメントとの間の重鎖染色体上で起き、10ヌクレオチド以上延び得る。さらに、いくつかのヌクレオチドが、ゲノムDNAによってコードされていないDとJHとの間およびVHとD遺伝子セグメントとの間に挿入され得る。これらのヌクレオチドの付加は、N領域の多様性として知られている。このような連結中に起き得る可変領域遺伝子セグメントおよび可変的な組換えにおけるそのような再編成の正味の影響が、主要な抗体レパートリーの産生である。
「抗体フラグメント」は、インタクトな完全長抗体(例えば、ヒト抗体を含む)の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含み、抗体フラグメントには、抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体も包含される。抗体フラグメントの非限定的な例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、ミニボディ(minibodies)、鎖状抗体(Zapataら、Protein Eng.,8(10):1057−1062(1995));キレート組換え抗体、トリボディ(tribodies)またはバイボディ(bibodies)、イントラボディ(intrabodies)、ナノボディ(nanobodies)、小モジュール免疫薬剤(small modular immunopharmaceuticals)(SMTPs)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化(camelized)抗体、VHH含有抗体もしくはムテインまたはそれらの誘導体、および、抗体が所望の生物学的活性を保持する限り、CDR配列のようなそのポリペプチドに対して特異的な抗原結合性を付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。
抗体のパパイン消化によって、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント(各々が単一の抗原結合部位を有する)およびその残りの「Fc」フラグメント(容易に35を結晶化する能力を反映した名称)が生成する。ペプシン処理によって、2つの「Fv」フラグメントを有するF(ab’)2フラグメントが得られる。「Fv」フラグメントは、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、堅固な非共有結合での1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。この立体配置において、VHVL二量体の表面上の抗原結合部位を定義する各可変ドメインの3つのCDRが、相互作用する。6つのCDRが、集合的に、抗体に対する抗原結合特異性をもたらす。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのみのCDRを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識し、結合する能力を有する。
「一本鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、Fvが抗原に結合するための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照のこと。
Fabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含む。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域から1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において数残基が付加されるという点で、Fab’フラグメントと異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が、遊離チオール基を有するFab’に対する本明細書中での呼称である。F(ab’)2抗体フラグメントは、最初、それらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として作製された。
用語「超可変」領域とは、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基のことをいう。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわちCDR由来のアミノ酸残基[すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載されているように、軽鎖可変ドメイン中の残基24−34(L1),50−56(L2)および89−97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3)]および/または超可変ループ由来の残基(すなわち、[Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901−917(1987)]に記載されているように、軽鎖可変ドメイン中の残基26−32(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3)を含む。
「フレームワーク」またはFR残基は、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
句「定常領域」とは、エフェクター機能を付与する抗体分子の一部のことをいう。
句「キメラ抗体」とは、本明細書中で使用されるとき、代表的には異なる種を起源とする2つの異なる抗体から得られる配列を含む抗体のことをいう(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。最も代表的には、キメラ抗体は、ヒトとマウス(一般にヒト定常領域およびマウス可変領域)の抗体フラグメントを含む。
用語「ムテイン」とは、可変領域または可変領域と等価な部分に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失または挿入を含む抗体のポリペプチド配列のことをいうが、但し、ムテインは、所望の結合親和性または生物学的活性を保持している。ムテインは、親抗体と実質的に相同かまたは実質的に同一であり得る。
用語「誘導体」とは、本発明の抗体に関連して使用されるとき、ユビキチン化、治療的薬剤または診断用薬剤への結合体化、標識(例えば、放射性核種または様々な酵素を用いた標識)、ペグ化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)のような共有結合性のポリマー結合および非天然のアミノ酸の化学合成による挿入または置換のような手法によって共有結合的に改変された抗体のことをいう。本発明の誘導体は、本発明の非誘導化分子の結合特性を保持する。
用語「抗体」は、本明細書中で使用されるとき、EphB3の細胞外部分に結合する能力を保持する以下のもののうちの任意の1つを特に包含する:
1)親アミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%相同な可変重鎖アミノ酸配列を含み、そして/または親アミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%相同な可変軽鎖アミノ酸配列を含む(相同性の決定には類似のアミノ酸を考慮に入れる)ムテインをはじめとした図7に示されるアミノ酸配列を有する親抗体のアミノ酸ムテイン;
2)図7に示されるアミノ酸配列を有する親抗体の1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む、好ましくは重鎖の少なくともCDR3を含む、および好ましくは2つ以上または3つ以上または4つ以上または5つ以上または6つすべてのCDRを含む、EphB3結合ポリペプチド;
3)低リスク残基、中程度のリスク残基および高リスク残基を特定するためにKabatナンバリングを使用し、Studnickaら、米国特許第5,766,886号および本明細書中の実施例8に示される方法に従って親配列を変化させることによって作製されるHuman Engineered(商標)抗体;そのような抗体は、以下の重鎖の少なくとも1つおよび以下の軽鎖の少なくとも1つを含む:(a)ヒト参照免疫グロブリン配列中の対応する残基と異なる低リスクげっ歯類残基のすべてが、ヒト参照免疫グロブリン配列中のヒト残基と同じになるように改変されている重鎖、または(b)低リスクおよび中程度のリスクげっ歯類残基のすべてが、必要であれば、ヒト参照免疫グロブリン配列中のものと同じ残基になるように改変されている重鎖、(c)低リスク残基のすべてが、必要であれば、ヒト参照免疫グロブリン配列と同じ残基になるように改変されている軽鎖、または(b)低リスクおよび中程度のリスク残基のすべてが、必要であれば、ヒト参照免疫グロブリン配列と同じ残基となるように改変されている軽鎖
4)元のげっ歯類軽鎖と少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%および最も好ましくは、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性(例えば、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%および100%同一を含む)を有する重鎖もしくは軽鎖または重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域を含む前述のパラグラフ(3)における上述の抗体のムテイン;
5)げっ歯類抗体の1つ以上のCDRの高リスク残基を含む、および好ましくは2つ以上または3つ以上または4つ以上または5つ以上または6つすべてのCDRの高リスク残基を含む、および必要に応じて低リスクまたは中程度のリスク残基において1つ以上の変更を含む、EphB3結合ポリペプチド;
例えば、低リスク残基における1つ以上の変更および中程度のリスク残基における保存的置換を含むもの、または
例えば、中程度のリスクアミノ酸残基および高リスクアミノ酸残基を保持し、低リスク残基において1つ以上の変更を含むもの。
ここで、変更は、挿入、欠失または置換を含み、保存的置換であり得るか、またはその操作された抗体が、配列において、ヒト軽鎖配列もしくはヒト重鎖配列、ヒト生殖細胞系列軽鎖配列もしくはヒト生殖細胞系列重鎖配列、コンセンサスヒト軽鎖配列もしくはコンセンサスヒト重鎖配列またはコンセンサスヒト生殖細胞系列軽鎖配列もしくはコンセンサスヒト生殖細胞系列重鎖配列に、より近くなり得る。そのような企図される変更はまた、以下のように配列様式で表示され得る。AKKLVHTPYSFKEDFという仮説配列(Studnickaら、米国特許第5,766,886号に従って各残基に割り当てられるそれぞれのリスクは、HMLHMLHMLHMLHML(H=高、M=中、L=低)である)において、この仮説配列の低リスク残基に対する例示的な変更は:AKXLVXTPXSFXEDX(ここで、Xは、任意のアミノ酸であるか、あるいは、Xは、その位置における元の残基の保存的置換である)と表示され得、低リスクおよび中程度のリスク残基に対する例示的な変更は、同様に、例えば、AYXLYXTYXSYXEYX(ここで、Xは、任意のアミノ酸であり、Yは、その位置における元の残基の保存的置換である)と表示され得る。
用語「競合抗体」としては、以下が挙げられる。
1)例えば、X線結晶構造解析で測定されるとき、マウス抗体XHA.05.465、XHA.05.783、XHA.05.031、XHA.05.942、XHA.05.751、XHA.05.599、XPA.04.031、XPA.04.030、XPA.04.040、XHA.05.119、XHA.05.228、XHA.05.337、XHA.05.440、XPA.04.022、XHA.05.964、XHA.05.653、XHA.05.885、XPA.04.001、XPA.04.013、XPA.04.018、XPA.04.036、XPA.04.046、XPA.04.048、XHA.05.660、XHA.05.552、XHA.05.949、XHA.05.151、XPA.04.019、XHA.05.676、XHA.05.030、XHA.05.200、XHA.05.005、XHA.05.001、XHA.05.888またはXHA.05.111と同じEphB3のエピトープに結合する非マウスまたは非げっ歯類のモノクローナル抗体;および
2)マウス抗体XHA.05.465、XHA.05.783、XHA.05.031、XHA.05.942、XHA.05.751、XHA.05.599、XPA.04.031、XPA.04.030、XPA.04.040、XHA.05.119、XHA.05.228、XHA.05.337、XHA.05.440、XPA.04.022、XHA.05.964、XHA.05.653、XHA.05.885、XPA.04.001、XPA.04.013、XPA.04.018 XPA.04.036、XPA.04.046、XPA.04.048、XHA.05.660、XHA.05.552、XHA.05.949、XHA.05.151、XPA.04.019、XHA.05.676、XHA.05.030、XHA.05.200、XHA.05.005、XHA.05.001、XHA.05.888またはXHA.05.111と75%超、80%超または81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%もしくは95%競合する非マウスまたは非げっ歯類のモノクローナル抗体。
本発明の抗体は、好ましくは、少なくとも10−6、10−7、10−8,10−9、10−10または10−11M以下の親和性KDでEphB3のECDに結合し、そして好ましくは、レセプターのリン酸化、オリゴマー化、内部移行、分解、シグナル伝達および/またはEphB3媒介性の細胞−細胞接着を誘導する。
必要に応じて、本明細書の出願日前に公然と開示されているか、または本明細書の出願日前に出願された出願に開示されている、任意のキメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体は、本発明の範囲から除外される。
「非げっ歯類」モノクローナル抗体は、本明細書中で広く定義されるような、げっ歯類ハイブリドーマから産生される完全なインタクトなげっ歯類モノクローナル抗体ではない任意の抗体である。従って、非げっ歯類抗体としては、特に、げっ歯類抗体のムテイン、げっ歯類抗体フラグメント、鎖状抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Human Engineered(商標)抗体およびヒト抗体(トランスジェニック動物から産生されるヒト抗体またはファージディスプレイ技術によるヒト抗体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、非マウス抗体としては、マウス抗体のムテイン、マウス抗体フラグメント、鎖状抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Human Engineered(商標)抗体およびヒト抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
標的抗原
抗体の作製に使用される標的抗原は、例えば、エピトープがその天然の立体配座でディスプレイされることを可能にする別のポリペプチドに必要に応じて融合されていて、所望のエピトープを保持しているEphB3の細胞外部分またはそのフラグメントであり得る。あるいは、細胞の表面で発現されるインタクトなEphB3が、抗体を作製するために使用され得る。そのような細胞は、EphB3を発現するように形質転換され得るか、またはEphB3を発現する他の天然に存在する細胞であり得る。抗体を作製するために有用なEphB3ポリペプチドの他の型は、当業者に明らかである。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、EphB3のエピトープに結合し、ここで、そのエピトープは、表1に示される配列番号11−421からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ドメインは、リガンド結合ドメイン(配列番号2のアミノ酸残基39−212)、TNFRドメイン(配列番号2のアミノ酸残基256−331)、第1フィブロネクチンドメイン(配列番号2のアミノ酸残基340−435)および第2フィブロネクチンドメイン(配列番号2のアミノ酸残基453−535)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、EphB3のリガンド結合ドメインのエピトープに結合し、そのエピトープは、配列番号11−145からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、EphB3のTNFRドメインのエピトープに結合し、そのエピトープは、配列番号161−259からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、EphB3の第1フィブロネクチンドメインのエピトープに結合し、そのエピトープは、配列番号259−301からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、EphB3の第2フィブロネクチンドメインのエピトープに結合し、そのエピトープは、配列番号380−421からなる群から選択される。
以下の表1は、抗EphB3抗体による認識に適した鎖状エピトープと同定されているEphB3(配列番号2)の領域を提供する。
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)注射または腹腔内(ip)注射によって、動物において産生される。抗体応答の改善は、二官能性薬剤または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した結合体化)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸または当該分野で公知の他の薬剤を使用して、免疫される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビターに関連抗原を結合体化することによって得られうる。
例えば、100μgまたは5μgのタンパク質または結合体(それぞれウサギまたはマウスに対して)を3容積のフロイント完全アジュバントと組み合わせ、その溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性の結合体または誘導体に対して動物を免疫する。1ヶ月後に、その動物に、フロイント完全アジュバント中の最初の量の1/5から{一部(1/10)}のペプチドまたは結合体を複数部位に皮下注射することによって追加免疫する。追加免疫注射の7〜14日後に、その動物から出血させ、抗体価について血清をアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、その動物を、異なるタンパク質に結合体化されている同じ抗原の結合体および/または異なる架橋試薬を介した同じ抗原の結合体で追加免疫する。結合体は、タンパク質融合物として組換え細胞培養物中でも作製され得る。また、ミョウバンのような凝集剤が、免疫応答を増強するために適切に使用される。
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature,256:495(1975)によって初めて報告されたハイブリドーマ法を使用して作製され得るか、または組換えDNA法によって作製され得る。
ハイブリドーマ法では、本明細書中で記載されるように、マウスまたは他の適切な宿主動物(例えば、ハムスターまたはマカクザル)を免疫することによって、免疫に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、インビトロにおいてリンパ球を免疫してもよい。次いで、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を使用して、リンパ球をミエローマ細胞と融合することにより、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
このように調製されたハイブリドーマ細胞を播種し、そして、好ましくは、未融合の親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適当な培養液中で生育する。例えば、親ミエローマ細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマ用の培養液は、代表的には、HGPRT欠損細胞の増殖を阻止する、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む(HAT培地)。
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合するものであり、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援するものであり、培地に感受性のものである。ヒトミエローマ細胞株およびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の作製について報告されている(Kozbor,J.Immunol,133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。例示的なマウスミエローマ株としては、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから入手可能な、MOP−21およびM.C.−11マウス腫瘍由来のもの、ならびに、American Type Culture Collection,Rockville,Md.USAから入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞が挙げられる。
ハイブリドーマ細胞を生育している培養液を、抗原に対して産生されたモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(enzyme−linked immunoabsorbent assay)(ELISA))によって測定される。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Scatchard解析(Munsonら、Anal.Biochem.,107:220(1980))によって決定され得る。
所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンは、限界希釈法によりサブクローン化され、そして標準的な方法(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))によって生育され得る。この目的に適した培養液としては、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞を動物内の腹水腫瘍としてインビボにおいて生育してもよい。サブクローンから分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィ)によって、培養液、腹水または血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、ハイブリドーマ細胞から単離され、配列決定され得る。配列の決定は、一般に、目的の遺伝子またはcDNAの少なくとも一部の単離が必要である。通常、これには、モノクローナル抗体をコードするDNAまたは好ましくはmRNA(すなわち、cDNA)をクローニングすることが必要である。クローニングは、標準的な手法を使用して行われる(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1−3,Cold Spring Harbor Press(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。例えば、cDNAライブラリーを、ポリA+mRNA、好ましくは、膜関連mRNAの逆転写によって構築し、そのライブラリーをヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に特異的なプローブを使用してスクリーニングする。しかしながら、好ましい実施形態では、目的の免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば、軽鎖可変セグメント)をコードするcDNA(または全長cDNAの一部)を増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する。増幅された配列は、任意の適当なベクター、例えば、発現ベクター、ミニ遺伝子ベクターまたはファージディスプレイベクター内に容易にクローニングされ得る。目的の免疫グロブリンポリペプチドの一部の配列を決定することができる限り、使用されるクローニングの特定の方法は重要ではないことが認識されるだろう。本明細書中で使用されるとき、「単離された」核酸分子または「単離された」核酸配列は、(1)同定されていて、核酸の天然の供給源に通常関連する少なくとも1つの夾雑核酸分子から分離されているか、または(2)目的の核酸の配列を決定することができるように、クローニングされているか、増幅されているか、タグ化されているか、または別途バックグラウンド核酸から区別されている、核酸分子であり、それが、単離されたものと考えられる。単離された核酸分子は、天然において見られる形状または環境におけるもの以外のものである。ゆえに、単離された核酸分子は、天然細胞に存在するときの核酸分子と区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、通常、抗体を発現する細胞内に含まれている核酸分子を包含し、例えば、その核酸分子は、天然細胞の染色体位置と異なる染色体位置に存在する。
クローニングおよび配列決定に使用されるRNAに対する1つの供給源は、トランスジェニックマウスからB細胞を得て、そのB細胞を不死細胞に融合することによって作製されるハイブリドーマである。ハイブリドーマを使用する利点は、ハイブリドーマを容易にスクリーニングすることができる点および目的のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが選択される点である。あるいは、RNAは、免疫動物のB細胞(または脾臓全体)から単離することができる。ハイブリドーマ以外の供給源を使用するとき、特異的な結合特性を有する免疫グロブリンまたは免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列についてスクリーニングすることが望ましい場合がある。そのようなスクリーニングのための1つの方法は、ファージディスプレイ技術の使用である。ファージディスプレイは、例えば、Dowerら、WO91/17271、McCaffertyら、WO92/01047およびCaton and Koprowski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6450−6454(1990)(これらの各々が、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。ファージディスプレイ技術を使用する1つの実施形態において、免疫されたトランスジェニックマウス由来のcDNA(例えば、全脾臓cDNA)を単離し、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、免疫グロブリンポリペプチドの一部、例えば、CDR領域をコードするcDNA配列を増幅し、そしてその増幅された配列をファージベクターに挿入する。所望の結合特性を有する目的のペプチド、例えば、可変領域ペプチドをコードするcDNAを、パニングのような標準的な手法によって同定する。
次いで、増幅された核酸またはクローニングされた核酸の配列を決定する。代表的には、免疫グロブリンポリペプチドの可変領域全体をコードする配列を決定するが、しかしながら、時折、可変領域の一部のみの配列、例えば、CDRをコードする部分のみの配列で適切である。代表的には、配列決定される部分は、少なくとも30塩基長であり、しばしば、可変領域の少なくとも約3分の1または少なくとも約2分の1の長さをコードする部分が、配列決定される。
配列決定は、cDNAライブラリーから単離されたクローンにおいてか、または、PCRを使用するとき、増幅された配列のサブクローニング後に、もしくは増幅されたセグメントの直接的なPCR配列決定によって、行われ得る。配列決定は、標準的な手法を使用して行われる(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1−3,Cold Spring Harbor PressおよびSanger,F.ら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。当業者は、クローニングされた核酸の配列を、ヒト免疫グロブリン遺伝子およびcDNAの公開されている配列と比較することによって、配列決定された領域に応じて、(i)ハイブリドーマ免疫グロブリンポリペプチドの生殖細胞系列セグメントの用法(重鎖のアイソタイプを含む)および(ii)N領域の付加および体細胞変異のプロセスから得られる配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列を容易に決定することができる。免疫グロブリン遺伝子配列情報の1つの供給源は、National Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine,National Institutes of Health,Bethesda,Mdである。
抗体フラグメント
上で述べたように、抗体フラグメントは、インタクトな完全長抗体の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含み、鎖状抗体および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を包含する。抗体フラグメントの非限定的な例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fd、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、鎖状抗体、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫薬剤(SMIPs)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体もしくはムテインまたはそれらの誘導体、および、抗体が所望の生物学的活性を保持する限り、CDR配列のようなそのポリペプチドに対して特異的な抗原結合性を付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。そのような抗原フラグメントは、抗体全体の改変によって作製され得るか、または組換えDNA技術もしくはペプチド合成を使用して新規に合成され得る。
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントのことをいい、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VHVL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成することができないリンカーを使用することによって、それらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対を形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位が形成される。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;および30 Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に十分に説明されている。
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在し、VHドメインとVLドメインの間にFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを必要に応じて含む(Birdら、Science 242:423−426,1988およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988)。Fdフラグメントは、VHドメインおよびCH1ドメインからなる。
さらなる抗体フラグメントとしては、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)フラグメント(Wardら、Nature 341:544−546,1989)が挙げられる。
「鎖状抗体」は、1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデム型のFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を包含する。鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る(Zapataら、Protein Eng.8:1057−62(1995))。
ペプチドリンカー(ヒンジなし)を介してまたはIgGヒンジを介してCH3に融合されているscFvからなる「ミニボディ」は、Olafsenら、Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):315−23に記載されている。
軽鎖を欠いている機能的な重鎖抗体は、コモリザメ(nurse shark)(Greenbergら、Nature 374:168−73,1995)、テンジクザメ(wobbegong shark)(Nuttallら、Mol Immunol.38:313−26,2001)およびCamelidae(Hamers−Castermanら、Nature 363:446−8,1993;Nguyenら、J.Mol.Biol.275:413,1998)(例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびラマ)に天然に存在する。これらの動物において、抗原結合部位は、VHHドメインである単一ドメインに減少されている。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成する。すなわち、これらの機能的抗体は、構造H2L2のみを有する重鎖のホモ二量体である(「重鎖抗体」または「HCAb」と呼ばれる)。ラクダ化VHHは、報告によれば、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含み、CH1ドメインを欠いているIgG2定常領域およびIgG3定常領域で組み換えられる(Hamers−Castermanら、前出)。例えば、ラマIgG1は、VHがヒンジ、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む定常領域で組み換えられている従来の(H2L2)抗体アイソタイプであるのに対し、ラマIgG2およびIgG3は、CH1ドメインを欠いていて、軽鎖を含まない重鎖のみのアイソタイプである。古典的なVHのみのフラグメントは、可溶型で作製するのが困難であるが、フレームワーク残基が、よりVHH様に変更されるとき、溶解性および特異的結合の改善がもたらされ得る(例えば、Reichmanら、J Immunol Methods 1999,231:25−38を参照のこと)。ラクダ化VHHドメインは、高親和性で抗原に結合することが見出されており(Desmyterら、J.Biol.Chem.276:26285−90,2001)、溶液中での安定性が高い(Ewertら、Biochemistry 41:3628−36,2002)。ラクダ化重鎖を有する抗体を作製するための方法は、例えば、米国特許公開番号20050136049および20050037421に記載されている。
重鎖抗体の可変ドメインが、たった15kDaの分子量を有する、完全に機能的な最小の抗原結合フラグメントであるので、この実体は、ナノボディと呼ばれている(Cortez−Retamozoら、Cancer Research 64:2853−57,2004)。ナノボディライブラリーは、Conrathら(Antimicrob Agents Chemother 45:2807−12,2001)に記載されているように、または記載されているような組換え法を使用して、免疫されたヒトコブラクダから作製され得る。
イントラボディは、細胞内発現を示し、細胞内タンパク質機能を操作することができる一本鎖抗体である(Bioccaら、EMBO J.9:101−108,1990;Colbyら、Proc Natl Acad Sci USA.101:17616−21,2004)。細胞内領域に抗体構築物を保持するという細胞シグナル配列を含むイントラボディは、Mhashilkarら(EMBO J 14:1542−51,1995)およびWheelerら(FASEB J.17:1733−5.2003)に記載されているように作製され得る。トランスボディ(Transbodies)は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)が一本鎖可変フラグメント(scFv)抗体と融合されている細胞透過性抗体である。Hengら(Med Hypotheses.64:1105−8,2005)。
標的タンパク質に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体がさらに企図される。これらの構築物は、抗体エフェクター機能を発揮するために必要な免疫グロブリンドメインに融合された抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国特許公開20030133939および米国特許公開20030118592を参照のこと。
多価抗体
いくつかの実施形態において、多価モノクローナル抗体または多重特異性(例えば、二重特異性、三重特異性など)のモノクローナル抗体を作製することが望ましい場合がある。そのような抗体は、標的抗原の少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有し得るか、あるいは、2つの異なる分子、例えば、標的抗原および細胞表面タンパク質またはレセプターに結合し得る。例えば、二重特異性抗体は、標的発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させるために、標的に結合する腕および白血球上のトリガー分子(例えば、T細胞レセプター分子(例えば、CD2またはCD3)またはIgGに対するFcレセプター(FcγR)(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16))に結合する別の腕を含み得る。別の例として、二重特異性抗体は、標的抗原を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局在化させるために使用され得る。これらの抗体は、標的に結合する腕および細胞傷害性薬剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン−60、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位体ハプテン)に結合する腕を有する。多重特異性抗体は、完全長抗体または抗体フラグメントとして調製され得る。
二重特異性抗体は、架橋された抗体または「ヘテロ結合体」抗体を包含する。例えば、ヘテロ結合体における抗体の一方は、アビジンに結合され得、他方は、ビオチンに結合され得る。ヘテロ結合体抗体は、任意の簡便な架橋法を使用して作製され得る。適当な架橋剤は、当該分野で周知であり、多くの架橋手法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
二重特異性抗体を作製するための別のアプローチによれば、1対の抗体分子の間の界面を操作することによって、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にすることができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換する。その大きな側鎖と同一サイズまたは類似サイズの埋め合わせとなる「空洞」を、大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置換することによって第2の抗体分子の界面上に作る。このことにより、ヘテロ二量体の収量をホモ二量体のような他の不必要な最終生成物よりも多くするためのメカニズムがもたらされる。1996年9月6日に公開されたWO96/27011を参照のこと。
抗体フラグメントから二重特異性抗体を作製するための手法はまた、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製され得る。Brennanら、Science 229:81(1985)では、インタクトな抗体がタンパク分解性に切断されることにより、F(ab’)2フラグメントが作製される手順が記載されている。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、それにより、近接するジチオールを安定化させ、分子間のジスルフィド形成を阻止する。次いで、作製されたFab’フラグメントを、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次いで、Fab’−TNB誘導体の1つを、メルカプトエチルアミンで還元することによってFab’−チオールに再度変換し、そして、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を形成する。作製された二重特異性抗体は、酵素の選択的な固定化のための薬剤として使用され得る。Betterら、Science 240:1041−1043(1988)では、細菌由来の機能的抗体フラグメントの分泌が開示されている(例えば、Betterら、Skerraら、Science 240:1038−1041(1988)を参照のこと)。例えば、Fab’−SHフラグメントは、E.coliから直接回収され、そして、化学的に結合することにより、二重特異性抗体が形成され得る(Carterら、Bio/Technology 10:163−167(1992);Shalabyら、J.Exp.Med.175:217−225(1992))。
Shalabyら、J.Exp.Med.175:217−225(1992)では、完全なヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の作製が記載されている。各Fab’フラグメントは、E.coliから別々に分泌され、インビトロで定方向の化学結合に供され、二重特異性抗体が形成された。このように形成された二重特異性抗体は、HER2レセプターを過剰発現している細胞および正常ヒトT細胞に結合することができ、そして、ヒト乳房腫瘍標的に対してヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を引き起こすことができた。
組換え細胞培養物から二重特異性抗体フラグメントを直接作製し、単離するための様々な手法もまた報告されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパー、例えば、GCN4を使用して作製される(一般に、Kostelnyら、J.Immunol.148(5):1547−1553(1992)を参照のこと)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に結合した。その抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元することにより、モノマーが形成され、次いで、再度酸化することにより、抗体ヘテロ二量体が形成された。この方法は、抗体ホモ二量体の作製にも利用され得る。
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントのことをいい、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VHVL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成することができないリンカーを使用することによって、それらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対を形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位が形成される。例えば、Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)を参照のこと。
一本鎖Fv(sFv)二量体を使用することによる二重特異性抗体フラグメントを作製するための別のストラテジーもまた報告されている。Gruberら、J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
あるいは、二重特異性抗体は、Zapataら、Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)に記載されているように作製される「鎖状抗体」であり得る。簡潔には、これらの抗体は、1対の抗原結合領域を形成する、1対のタンデム型のFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
2を超える結合価を有する抗体もまた企図される。例えば、三重特異性抗体が、調製され得る(Tuttら、J.Immunol.147:60(1991))。
「キレート組換え抗体」は、標的抗原の隣接する非重複エピトープを認識する二重特異性抗体であり、同時に両方のエピトープに結合するのに十分可撓性である(Neriら、J Mol Biol.246:367−73,1995)。
二重特異性Fab−scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab−(scFv)(2)(「トリボディ」)の作製は、Schoonjansら(J Immunol.165:7050−57,2000)およびWillemsら(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.786:161−76,2003)に記載されている。バイボディまたはトリボディについて、scFv分子は、VL−CL(L)およびVH−CH1(Fd)鎖の一方または両方に融合される。例えば、トリボディを作製するために、2つのscFvをFabのC末端に融合し、バイボディでは、一方のscFvをFabのC末端に融合する。
抗体の組換え作製
抗体は、当該分野で周知の抗体発現系の1つを使用して、組換えDNA法によって作製され得る(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)を参照のこと)。
本発明の抗体をコードするDNAを発現ベクターに入れ、次いで、それを宿主細胞(例えば、E.coli細胞、サルCOS細胞、ヒト胎児腎293細胞(例えば、293E細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または別途免疫グロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞)にトランスフェクトすることにより、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成がもたらされ得る。抗体の組換え作製は、当該分野で周知である。抗体フラグメントは、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して得られる(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)およびBrennanら、Science 229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、これらのフラグメントは、現在、組換え宿主細胞によって直接産生され得る。ペプチド合成および共有結合をはじめとした、抗体フラグメントを作製するための他の手法は、当業者に明らかである。
発現調節配列とは、特定の宿主生物において、作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列のことをいう。原核生物に適した調節配列は、例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
核酸が、別の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、その核酸は、作動可能に連結されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーについてのDNAが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、そのDNAは、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結されている;プロモーターまたはエンハンサーが、配列の転写に影響を及ぼす場合、そのプロモーターまたはエンハンサーは、コード配列に作動可能に連結されている;または、リボソーム結合部位が、翻訳を促進するような位置に置かれている場合、そのリボソーム結合部位は、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が、連続的であり、分泌リーダーの場合は、連続的かつリーディングフェーズで(in reading phase)であることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続的である必要はない。連結は、便利な制限酵素認識部位におけるライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の習慣に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを使用する。
細胞、細胞株および細胞培養物は、しばしば交換可能に使用され、本明細書中のこのような呼称すべてが、子孫を包含する。形質転換体および形質転換された細胞は、継代の回数を問わず、主要な被験体細胞およびそれに由来する培養物を包含する。すべての子孫が、意図的な変異または偶然の変異に起因して、DNA含有量が正確に同一ではないかもしれないことも理解される。形質転換される元の細胞においてスクリーニングされるときに同じ機能または同じ生物学的活性を有する変異体の子孫が包含される。異なる呼称が意図される場合、それは本文中から明らかである。
別の実施形態において、目的の免疫グロブリンのアミノ酸配列は、直接的なタンパク質配列決定によって決定され得る。適当なコーディングヌクレオチド配列は、一般的なコドン表に従って、設計され得る。
所望の抗体のアミノ酸配列ムテインは、適切なヌクレオチドの変化をコーディングDNAに導入することによって、またはペプチド合成によって、調製され得る。そのようなムテインは、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失および/または抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換を含む。欠失と挿入と置換との任意の組み合わせが行われることにより、最終的な構築物に達するが、但し、最終的な構築物は、所望の特性を有する。アミノ酸の変更はまた、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、Human Engineered(商標)抗体またはムテイン抗体の翻訳後のプロセスも変化させ得る(例えば、グリコシル化部位の数または位置の変化)。
抗体のアミノ酸配列ムテインをコードする核酸分子は、当該分野で公知の種々の方法によって調製される。これらの方法としては、天然の供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列ムテインの場合)、あるいは、先に調製されたその抗体のムテインバージョンもしくは非ムテインバージョンのオリゴヌクレオチド媒介性の(または部位特異的な)突然変異誘発、PCR突然変異誘発およびカセット突然変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明はまた、宿主細胞によって認識される調節配列に必要に応じて作動可能に連結されている本発明の抗体をコードする単離された核酸、それらの核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに、その宿主細胞を培養することによって、その核酸が発現され、必要に応じて宿主細胞培養物または培養液から抗体を回収する工程を含み得る、抗体を作製するための組換え手法を提供する。
抗体の組換え作製にむけて、抗体をコードする核酸が単離され、そして、その核酸は、さらにクローニング(DNAの増幅)または発現にむけて、複製可能なベクターに挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定される。多くのベクターが利用可能である。そのベクター成分としては、一般に、以下:シグナル配列、複製起点、1つ以上の選択マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接、組換え的に作製され得るだけでなく、異種ポリペプチド(好ましくは、シグナル配列または成熟タンパク質もしくは成熟ポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有する他のポリペプチドである)との融合ポリペプチドとしても組換え的に作製され得る。選択されるシグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識されるものおよびプロセシングされるもの(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断されるもの)である。原核生物の宿主細胞が、天然抗体のシグナル配列を認識せず、プロセシングしない場合、そのシグナル配列は、例えば、ペクチン酸リアーゼ(例えば、pelB)アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択されるシグナル配列によって置換され得る。酵母分泌に対しては、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(SaccharomycesおよびKluyveromycesのα因子リーダーを含む)または酸ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダーまたはWO90/13646に記載されているシグナルで置換され得る。哺乳動物細胞発現では、哺乳動物のシグナル配列ならびにウイルスの分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
そのような前駆体領域に対するDNAは、抗体をコードするDNAに読み枠で連結される。
(2)複製起点成分
発現ベクターとクローニングベクターの両方が、選択される1つ以上の宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターでは、この配列は、宿主の染色体DNAとは無関係にベクターの複製を可能にする配列であり、複製の起点または自律複製配列を含む。種々の細菌、酵母およびウイルスに対するそのような配列は、周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性菌に適しており、2μプラスミド起点は、酵母に適しており、そして、哺乳動物細胞においては、様々なウイルスの起点がクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は、哺乳動物の発現ベクターに必要ではない(SV40起点は初期プロモーターを含むので、代表的にはこれだけが使用され得る)。
(3)選択マーカー成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択的な遺伝子を含み得る。代表的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他のトキシン、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、テトラサイクリン、G418、ジェネテシン、ヒスチジノールまたはミコフェノール酸に対する抵抗性を付与するタンパク質をコードするか、(b)栄養要求性欠損を補完するタンパク質をコードするか、または(c)複合培地から利用できない決定的な栄養分を供給するタンパク質をコードする(例えば、Bacilliに対するD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)。
選択スキームの1つの例は、宿主細胞の増殖を停止する薬物を利用する。異種遺伝子で首尾よく形質転換された細胞は、薬物抵抗性を付与するタンパク質を産生するので、選択レジメンを生き残る。そのような優性選択の例は、薬物メトトレキサート、ネオマイシン、ヒスチジノール、ピューロマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適した選択マーカーの別の例は、抗体をコードする核酸の取り込む能力のある細胞の同定を可能にするものである(例えば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−II、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなど)。
例えば、DHFRの競合性アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含む培養液中で形質転換体のすべてを培養することによって、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞が同定される。野生型DHFRを使用するとき、適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。
あるいは、本発明の抗体、野生型DHFRタンパク質およびアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような別の選択マーカーをコードするDNA配列で形質転換されているか、または共形質転換されている宿主細胞(特に、内因性DHFRを含む野生型宿主)は、選択マーカーに対する選択薬剤(例えば、アミノグリコシド系抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418)を含む培地中での細胞の増殖によって選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照のこと。
酵母において使用するのに適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら、Nature,282:39(1979))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で生育する能力を欠いている酵母の変異体株、例えば、ATCC No.44076またはPEP4−1に対して選択マーカーを提供する。Jones,Genetics,85:12(1977)。次いで、酵母宿主細胞ゲノムにおいてtrp1が破壊されていることにより、トリプトファンの非存在下における増殖によって形質転換を検出するために有効な環境が提供される。同様に、Leu2遺伝子を有する公知プラスミドによって、Leu2欠損酵母株(ATCC20,622または38,626)が補完される。ura3遺伝子を有するプラスミドによって、Ura3欠損酵母株が補完される。
さらに、1.6μmの環状プラスミドpKD1由来のベクターが、Kluyveromyces酵母の形質転換に使用され得る。あるいは、K.lactisに対して、組換え子ウシキモシンの大規模生産用の発現系が報告された。Van den Berg,Bio/Technology,8:135(1990)。Kluyveromycesの工業用株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌に適した多コピー発現ベクターもまた開示されている。Fleerら、Bio/Technology,9:968−975(1991)。
(4)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物に認識され、抗体をコードする核酸に作動可能に連結されているプロモーターを含む。原核生物宿主とともに使用することに適したプロモーターとしては、アラビノース(例えば、araB)プロモーターphoAプロモーター、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系およびtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の公知の細菌プロモーターが、適当である。細菌系で使用するためのプロモーターはまた、本発明の抗体をコードするDNAに作動可能に連結されているシャイン・ダルガノ(S.D.)配列を含む。
真核生物に対するプロモーター配列は、公知である。実質的にすべての真核生物遺伝子が、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、CNCAAT領域であり、ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり得る。コード配列の3’末端にポリAテールを付加するためのシグナルであり得るAATAAA配列が、ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端に存在する。これらの配列のすべてが、真核生物発現ベクター内に適切に挿入される。
酵母宿主とともに使用するための適当なプロモーター配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素(例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼおよびグルコキナーゼ)に対するプロモーターが挙げられる。
増殖条件によって制御される転写のさらなる利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素ならびにマルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素に対するプロモーター領域である。酵母の発現における使用に適したベクターおよびプロモーターは、EP73,657にさらに記載されている。酵母エンハンサーもまた、酵母プロモーターとともに有利に使用される。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗体の転写は、例えば、ウイルス(例えば、Abelson白血病ウイルス、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、最も好ましくは、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、サルウイルス40(SV40))のゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターによって制御される(但し、そのようなプロモーターが、宿主細胞系と適合している場合)。
SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含むSV40制限フラグメントとして便利よく得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして便利よく得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現するための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現については、Reyesら、Nature 297:598−601(1982)もまた参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列が、プロモーターとして使用され得る。
(5)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、しばしば、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって増加する。現在、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトプロテインおよびインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が知られている。しかしながら、代表的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用される。例としては、複製開始点(bp100−270)の後ろ側におけるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後ろ側におけるポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のための増強エレメントについては、Yaniv,Nature 297:17−18(1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体をコードする配列に対して5’位または3’位のベクター内にスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。
(6)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターはまた、転写を終結するためおよびmRNAを安定化するために必要な配列も含む。そのような配列は、通常5’から利用可能であり、時折、真核生物またはウイルスのDNAもしくはcDNAの3’非翻訳領域から利用可能である。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026および本明細書中で開示される発現ベクターを参照のこと。別のものは、マウス免疫グロブリン軽鎖転写ターミネーターである。
(7)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書中のベクター内のDNAのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、上に記載された原核生物、酵母または高等真核生物細胞である。この目的に適した原核生物としては、真正細菌(例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、Enterobacteriaceae(例えば、Escherichia(例えば、E.coli)、Enterobacter)、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescansおよびShigellaならびにBacilli(例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日公開のDD266,710に開示されているB.licheniformis 41P))、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa)およびStreptomyces)が挙げられる。1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli 294(ATCC31,446)であるが、他の株(例えば、E.coli B、E.coli X1776(ATCC31,537)およびE.coli W3110(ATCC27,325))が適当である。これらの例は、限定的ではなく、例示的なものである。
原核生物に加えて、真核生物の微生物(例えば、糸状菌または酵母)が、抗体をコードするベクターに適したクローニング宿主または発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeすなわち通常のパン酵母は、下等真核生物宿主微生物のうち最もよく使用される。しかしながら、多くの他の属、種および株(例えば、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces属宿主(例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K.waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906)、K.thermotoleransおよびK.marxianus);yarrowia(EP402,226);Pichia pastors(EP183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces(例えば、Schwanniomyces occidentalis);および糸状菌(例えば、Neurospora、Penicillium、TolypocladiumおよびAspergillus属宿主(例えば、A.nidulansおよびA.niger))が、一般に利用可能であり、本明細書中で有用である。
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物から得られる。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルスの株および変種ならびに宿主由来の対応する許容される昆虫宿主細胞(例えば、Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)およびBombyx mori)が同定されている。トランスフェクション用の種々のウイルス株(例えば、Autographa californica NPVのL−1変種およびBombyx mori NPVのBm−5株)が、公的に利用可能であり、そのようなウイルスは、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために本発明の本明細書中のウイルスとして使用され得る。
ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、タバコ、ウキクサ(lemna)および他の植物細胞の植物細胞培養物もまた、宿主として利用され得る。
しかしながら、脊椎動物細胞における関心が最も高く、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の繁殖は、通例の手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB−11、DG−44およびチャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含む);SV40で形質転換されたサル腎臓CV1系統(COS−7,ATCC CRL1651);ヒト胎児腎系統(293または懸濁培養物における増殖のためにサブクローン化された293細胞[Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977)];ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL10);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頚癌細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞(BRL3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーム系統(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体産生について上に記載された発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換されるか、またはトランスフェクトされ、そして、プロモーターを誘導するためか、形質転換体を選択するためか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に改変された従来の栄養培地中で培養される。さらに、選択マーカーで分断された多コピーの転写単位を有する新規ベクターおよびトランスフェクトされた細胞株が特に有用であり、抗体の発現にとって好ましい。
(8)宿主細胞の培養
本発明の抗体を作製するために使用される宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。市販の培地(例えば、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM),(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM),Sigma))が、宿主細胞を培養するために適している。さらに、Hamら、Meth.Enz.58:44(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90103430;WO87/00195;または米国特許Re.No.30,985に記載されている培地のいずれかが、宿主細胞用の培養液として使用され得る。これらの培地のいずれかは、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸)、緩衝剤(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、Gentamycin(商標)薬物)、微量元素(マイクロモル濃度の範囲で最終濃度に通常存在する無機化合物として定義される)およびグルコースまたは同等のエネルギー源が補充されていてもよい。他の任意の必要な栄養補助剤もまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれていてもよい。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現について選択された宿主細胞で以前に使用されていたものであり、当業者には明らかである。
(9)抗体の精製
組換え手法を使用するとき、抗体は、細胞内に産生され得るか、細胞周辺腔内に産生され得るか、または培地中(微生物の培養物を含む)に直接分泌され得る。抗体が、細胞内に産生される場合、第1の工程として、宿主細胞または溶解されたフラグメントのいずれかである粒子状の残骸が、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Betterら、Science 240:1041−1043(1988);ICSU Short Reports 10:105(1990);およびProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:457−461(1993)では、E.coliの細胞周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順が記載されている([Carterら、Bio/Technology 10:163−167(1992)]もまた参照のこと。
微生物または哺乳動物の細胞から調製される抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ陽イオンまたは陰イオン(avian)交換クロマトグラフィおよびアフィニティークロマトグラフィを使用して精製され得るが、ここで、アフィニティークロマトグラフィが、好ましい精製手法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに左右される。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用され得る(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に対して推奨されている(Gussら、EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドを固定するマトリックスは、アガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。力学的に安定なマトリックス(例えば、コントロールドポアガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン)は、アガロースで達成され得るものよりも速い流速および短い処理時間を可能にする。抗体が、CH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が、精製に有用である。タンパク質精製のための他の手法(例えば、イオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィ、ヘパリンにおけるクロマトグラフィ、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂におけるSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィ(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGEおよび硫安塩析)もまた、回収される抗体に応じて利用可能である。
キメラ抗体
ヒトにおいて単独でか、または結合体として、繰り返しインビボ投与されるときのげっ歯類抗体は、レシピエントにおいてそのげっ歯類抗体に対して免疫応答;いわゆるHAMA応答(ヒト抗マウス抗体)を惹起する。反復投薬が必要な場合に、このHAMA応答は、その医薬の有効性を制限し得る。抗体の免疫原性は、ポリエチレングリコールのような親水性ポリマーによる抗体の化学修飾によって、または抗体構造をよりヒト様、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはHuman Engineered(商標)抗体にする遺伝子操作法を使用することによって、低減され得る。そのような操作された抗体は、親マウスモノクローナル抗体よりもヒトにおいて免疫原性が低いので、その操作された抗体は、アナフィラキシーのリスクが極めて低い状態でヒトの処置に使用され得る。従って、これらの抗体は、ヒトへのインビボ投与を含む治療的な適用において好ましい場合がある。
マウスモノクローナル抗体の可変Igドメインがヒト定常Igドメインに融合されているキメラモノクローナル抗体は、当該分野で公知の標準的な手順を使用して作製され得る(Morrison,S.L.ら(1984)Chimeric Human Antibody Molecules;Mouse Antigen Binding Domains with Human Constant Region Domains,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6841−6855;およびBoulianne,G.L.ら、Nature 312,643−646(1984)を参照のこと)。例えば、CEAに結合するげっ歯類抗体の可変ドメインに対する遺伝子配列を、ヒトミエローマタンパク質の可変ドメインで置換することにより、組換えキメラ抗体を作製することができる。これらの手順は、EP194276、EP0120694、EP0125023、EP0171496、EP0173494およびWO86/01533に詳述されている。いくつかのキメラモノクローナル抗体の免疫原性は、ヒトにおいてが低いと証明されているが、マウス可変Igドメインは、なおも重大なヒト抗マウス応答をもたらし得る。
ヒト化抗体
ヒト化抗体は、例えば:(1)ヒトフレームワークおよび定常領域上に非ヒト相補性決定領域(CDR)を移植すること(当該分野において「CDR移植」を介したヒト化と呼ばれるプロセス)、あるいは、(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、それらを表面残基の置換によってヒト様表面で「覆い隠す」こと(当該分野において「ベニア化(veneering)」と呼ばれるプロセス)をはじめとした種々の方法によって達成され得る。本発明では、ヒト化抗体は、「ヒト化」抗体と「ベニア化(veneered)」抗体の両方を包含する。これらの方法は、例えば、Jonesら、Nature 321:522 525(1986);Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,81:6851 6855(1984);Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65 92(1988);Verhoeyerら、Science 239:1534 1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489 498(1991);Padlan,Molec.Immunol.31(3):169 217(1994);およびKettleborough,C.A.ら、Protein Eng.4(7):773 83(1991)(これらの各々が、本明細書中で参考として援用される)に開示されている。
例えば、げっ歯類抗体のCDRの遺伝子配列を、単離するか、または合成し、そして、相同なヒト抗体遺伝子の対応配列領域を置換することにより、元のげっ歯類抗体の特異性を有するヒト抗体が作製され得る。これらの手順は、EP023940、WO90/07861およびWO91/09967に記載されている。
CDR移植は、マウス重鎖可変Igドメインおよびマウス軽鎖可変Igドメイン由来の6つのCDRのうちの1つ以上をヒト可変Igドメインの適切な4つのフレームワーク領域に導入することを含み、これは、CDR移植とも呼ばれる。この手法(Riechmann,L.ら、Nature 332,323(1988))は、抗原との主要な接触物であるCDRループを支持する足場として、保存されたフレームワーク領域(FR1−FR4)を利用する。しかしながら、フレームワーク領域のアミノ酸が、抗原結合に寄与し得、CDRループのアミノ酸が、2つの可変Igドメインの会合に影響し得るので、CDR移植の欠点は、CDR移植が、元のマウス抗体よりも実質的に低い結合親和性を有するヒト化抗体がもたらされ得る点である。ヒト化モノクローナル抗体の親和性を維持するために、元のマウス抗体のフレームワーク領域に最もよく似たヒトフレームワーク領域を選ぶことによって、そして、抗原結合部位のコンピュータモデリングによって支援されるフレームワーク内またはCDR内の単一アミノ酸の部位特異的突然変異誘発によって、CDR移植の手法を改善することができる(例えば、Co,M.S.ら(1994),J.Immunol.152,2968−2976)。
抗体をヒト化する1つの方法は、非ヒト重鎖配列および非ヒト軽鎖配列をヒト重鎖配列およびヒト軽鎖配列とアラインメントする工程、そのようなアラインメントに基づいて非ヒトフレームワークを選択し、それをヒトフレームワークと置換する工程、ヒト化配列の立体配座を予測する分子モデリングを行う工程および親抗体の立体配座と比較する工程を含む。このプロセスは、ヒト化配列モデルの予測される立体配座が、親非ヒト抗体の非ヒトCDRの立体配座に近づくまで、CDRの構造を妨げるCDR領域内の残基の復帰突然変異の繰り返しが続く。そのようなヒト化抗体は、さらに、例えばAshwellレセプターを介する取り込みおよびクリアランスを促進するように誘導体化され得る(例えば、米国特許第5,530,101号および同第5,585,089号(これらの特許は本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
合理的な設計による多くのマウスモノクローナル抗体のヒト化が、報告されている(例えば、2002年7月11日公開の20020091240、WO92/11018および米国特許第5,693,762号、米国特許第5,766,866号を参照のこと。
Human Engineered(商標)抗体
句「Human Engineered(商標)抗体」とは、非ヒト抗体、代表的にはマウスモノクローナル抗体から得られる抗体のことをいう。あるいは、Human Engineered(商標)抗体は、非ヒト抗体である親抗体の抗原結合特性を保持しているか、または実質的に保持しているが、ヒトに投与されるときに親抗体と比べて低い免疫原性を示すキメラ抗体から得られうる。
抗体可変ドメインのHuman Engineering(商標)は、抗体分子の結合活性を維持しながら免疫原性を低下させるための方法として、Studnickaによって報告されている[例えば、Studnickaら、米国特許第5,766,886号;Studnickaら、Protein Engineering 7:805−814(1994)を参照のこと]。その方法によれば、各可変領域アミノ酸には、置換リスクが割り当てられている。アミノ酸置換は、3つのリスクカテゴリーのうちの1つによって区別される:(1)低リスク変更は、抗原結合を破壊する可能性が最も低く、免疫原性を低下させるために最も有望なものであり;(2)中程度のリスク変更は、免疫原性をさらに低下させ得るが、抗原結合またはタンパク質フォールディングに影響する可能性が高いものであり;(3)高リスク残基は、結合するためまたは抗体構造を維持するために重要であり、抗原結合またはタンパク質フォールディングに影響するリスクが最も高いものである。プロリンの3次元構造上の役割に起因して、プロリンにおける改変は、その位置が代表的には低リスクの位置であったとしても、少なくとも中程度のリスク変更であると通常考えられる。
げっ歯類抗体の軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合またはタンパク質フォールディングのいずれかに悪影響を及ぼしそうにないがヒトの環境において免疫原性を低下させる可能性があると決定された位置においてヒトアミノ酸で置換することによって、Human Engineered(商標)される(ヒト操作される)。「低リスク」の位置に存在し、上記方法の改変の候補であるアミノ酸残基は、げっ歯類可変領域のアミノ酸配列をヒト可変領域配列とアラインメントすることによって同定される。個別のVH配列もしくはVL配列またはヒトコンセンサスVH配列もしくはヒトコンセンサスVL配列または個別のヒト生殖細胞系列配列もしくはコンセンサスヒト生殖細胞系列配列をはじめとした任意のヒト可変領域が、使用され得る。任意の数の低リスク位置におけるアミノ酸残基またはすべての低リスク位置におけるアミノ酸残基が、変更され得る。例えば、低リスク位置の各々において、アラインメントされたマウスとヒトのアミノ酸残基が異なる場合、げっ歯類残基をヒト残基で置換するアミノ酸の改変が導入される。あるいは、すべての低リスク位置におけるアミノ酸残基および任意の数の中程度のリスク位置におけるアミノ酸残基が、変更され得る。理想的には、最低の免疫原性を達成するために、低リスク位置および中程度のリスク位置のすべてが、げっ歯類配列からヒト配列に変更される。
改変された重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む合成遺伝子が、構築され、そしてヒトγ重鎖および/またはカッパ軽鎖定常領域に連結される。任意のヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域が、IgA(IgA1またはIgA2のような任意のサブクラスのもの)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のような任意のサブクラスのもの)またはIgMを含むHuman Engineered(商標)抗体可変領域とともに使用され得る。ヒト重鎖遺伝子およびヒト軽鎖遺伝子は、哺乳動物細胞のような宿主細胞に導入され、生じる組換え免疫グロブリン生成物が得られ、特徴付けされる。
トランスジェニック動物由来のヒト抗体
標的抗原に対するヒト抗体はまた、内因性免疫グロブリンの産生がなく、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニック動物を使用して作製することもできる。例えば、WO98/24893は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示しており、ここで、その動物は、内在性の重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座の不活性化に起因して、機能的な内因性の免疫グロブリンを産生しない。WO91/10741はまた、免疫原に対して免疫応答を惹起することができるトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示しており、ここで、抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、内在性の免疫グロブリンをコードする遺伝子座は、置換されているか、または不活性化されている。WO96/30498は、哺乳動物において免疫グロブリン遺伝子座を改変するCre/Lox系を使用して、定常領域もしくは可変領域の全部または一部を置換し、改変された抗体分子を形成することを開示している。WO94/02602は、不活性化された内在性Ig遺伝子座および機能的なヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示している。米国特許第5,939,598号は、内因性の重鎖を欠いていて1つ以上の異種の定常領域を含む外来性免疫グロブリン遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスを作出する方法を開示している。
上に記載されたトランスジェニック動物を使用することにより、選択された抗原性分子に対する免疫応答がもたらされ得、そして抗体産生細胞をその動物から取り出し、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生するために使用され得る。免疫プロトコル、アジュバントなどは、当該分野で公知のものであり、例えば、WO96/33735に記載されているようなトランスジェニックマウスの免疫に使用されるものである。この公報は、IL6、IL8、TNFa、ヒトCD4、Lセレクチン、gp39および破傷風トキシンをはじめとした種々の抗原性分子に対するモノクローナル抗体を開示している。それらのモノクローナル抗体は、対応タンパク質の生物学的活性または生理学的作用を阻害する能力または中和する能力について試験され得る。WO96/33735は、IL−8に対するモノクローナル抗体が、IL−8で免疫されたトランスジェニックマウスの免疫細胞から得られ、好中球のIL−8誘導性の機能を抑制したことを開示している。トランスジェニック動物を免疫するために使用される抗原に対して特異性を有するヒトモノクローナル抗体もまた、WO96/34096および米国特許出願番号20030194404;および米国特許出願番号20030031667)に開示されている。Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature,362:255−258(1993);Bruggermannら、Year in Immuno.,7:33(1993);および米国特許第5,591,669号、米国特許第5,589,369号、米国特許第5,545,807号;および米国特許出願番号20020199213、WO96/34096および米国特許出願番号20030194404;および米国特許出願番号20030031667もまた参照のこと。
モノクローナル抗体を作製するために有用なさらなるトランスジェニック動物としては、米国特許第5,770,429号およびFishwildら(Nat.Biotechnol.14:845−851,1996)に記載されているMedarex HuMAb−MOUSE(登録商標)が挙げられ、これは、ヒト抗体の重鎖および軽鎖をコードする再編成されていないヒト抗体遺伝子由来の遺伝子配列を含んでいる。HuMAb−MOUSE(登録商標)を免疫することにより、標的タンパク質に対するモノクローナル抗体の産生が可能である。
また、Ishidaら(Cloning Stem Cells.4:91−102,2002)は、メガベースのサイズのヒトDNAのセグメントを含み、ヒト免疫グロブリン(hIg)遺伝子座全体を組み込んでいるTransChromo Mouse(TCMOUSE(商標))を報告している。TC MOUSEは、IgGのすべてのサブクラス(IgG1−G4)を含む十分に多様なhIgのレパートリーを有する。TC MOUSEを様々なヒト抗原で免疫することにより、ヒト抗体を含む抗体応答がもたらされる。
米国特許出願番号20030092125は、所望のエピトープに対する動物の免疫応答を片寄らせるための方法を記載している。ヒト抗体はまた、インビトロにおいて活性化されたB細胞によっても産生され得る(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照のこと)。
ファージディスプレイ技術による抗体
組換えヒト抗体遺伝子のレパートリーを作製するための技術および繊維状バクテリオファージの表面上におけるコードされた抗体フラグメントのディスプレイの開発によって、ヒト抗体を直接作製し、選択するための組換え手段が提供され、この手段は、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体またはムテイン抗体にも適用され得る。ファージ技術によって作製された抗体は、細菌において抗原結合フラグメント(通常、FvまたはFabフラグメント)として産生されるので、エフェクター機能を有しない。エフェクター機能は、2つのストラテジーのうちの1つによって導入され得る:フラグメントを、哺乳動物細胞において発現するように完全な抗体に操作し得るか、またはエフェクター機能を引き起こすことができる第2の結合部位を有する二重特異性抗体フラグメントに操作し得る。
代表的には、抗体のFdフラグメント(VH−CH1)および軽鎖(VL−CL)が、別々にPCRによってクローニングされ、そして、コンビナトリアル・ファージディスプレイ・ライブラリー中にランダムに組み換えられ、次いで、それを特定の抗原に対する結合について選択することができる。Fabフラグメントは、ファージ表面上で発現する、すなわち、それらをコードする遺伝子に物理的に連結されている。従って、抗原結合によるFabの選択によって、Fabをコードする配列について同時に選択し、続いてその配列を増幅し得る。抗原結合と再増幅(パニングと呼ばれる手順)を数回繰り返すことによって、抗原に特異的なFabが、濃縮され、最終的に単離される。
1994年には、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる抗体をヒト化するためのアプローチが報告された。誘導選択は、マウスモノクローナル抗体をヒト化するためにファージディスプレイ手法の力を利用する(Jespers,L.S.ら、Bio/Technology 12,899−903(1994)を参照のこと)。このために、マウスモノクローナル抗体のFdフラグメントは、ヒト軽鎖ライブラリーとともにディスプレイされ得、次いで、得られるハイブリッドFabライブラリーは、抗原を用いて選択され得る。それにより、マウスFdフラグメントは、選択を誘導する鋳型を提供する。続いて、選択されたヒト軽鎖が、ヒトFdフラグメントライブラリーと組み合わされる。得られるライブラリーを選択することにより、完全にヒトFabが得られる。
ファージディスプレイライブラリーからヒト抗体を得るための種々の手順が報告されている(例えば、Hoogenboomら、J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol,222:581−597(1991);米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号;Clackson,T. and Wells,J.A.,TIBTECH 12,173−184(1994)を参照のこと)。特に、ファージディスプレイライブラリーから得られる抗体のインビトロ選択およびインビトロ進化は、強力なツールになっている(Burton,D.R.,and Barbas III,C.F.,Adv.Immunol.57,191−280(1994);およびWinter,G.ら、Annu.Rev.Immunol.12,433−455(1994);米国特許出願番号20020004215およびWO92/01047;2003年10月9日公開の米国特許出願番号20030190317および米国特許第6,054,287号;米国特許第5,877,293号を参照のこと。
Watkins,“Screening of Phage−Expressed Antibody Libraries by Capture Lift”,Methods in Molecular Biology,Antibody Phage−Display:Methods and Protocols 178:187−193および2003年3月6日公開の米国特許出願番号200120030044772は、ファージによって発現される抗体ライブラリーまたは他の結合分子を捕捉リフト(capture lift)によってスクリーニングするための方法を記載しており、この方法は、固体支持体上に結合分子候補を固定化することを含んでいる。
抗体産物は、本明細書中の「スクリーニング法」と題される項に記載されるようなアッセイまたは当該分野で公知の任意の適当なアッセイを使用して、本発明の処置方法における活性および適合性についてスクリーニングされ得る。
アミノ酸配列ムテイン
本発明の抗体は、親抗体のムテインを包含し、ここで、その親抗体のポリペプチド配列は、可変領域または可変領域と等価な部分(CDR内の領域を含む)において少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または挿入によって変更されているが、但し、そのムテインは、所望の結合親和性または生物学的活性を保持している。ムテインは、親抗体と実質的に相同であり得るか、または実質的に同一であり得、例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一または相同であり得る。この配列に関する同一性または相同性は、配列がアラインメントされ、必要であれば、最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップが導入された後に親配列と同一であるアミノ酸残基の候補配列中のパーセンテージとして本明細書中で定義され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部としてみなされない。抗体配列に対するN末端、C末端または内部の伸長、欠失または挿入は、いずれも配列同一性または配列相同性に影響すると解釈されるべきでない。従って、配列同一性は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位置における類似性を比較するために通常使用される標準的な方法によって決定され得る。2つのポリペプチドは、BLASTまたはFASTAのようなコンピュータプログラムを使用して、それぞれのアミノ酸に最適に一致させるためにアラインメントされる(一方または両方の配列の完全長に対して、または、一方または両方の配列の所定の部分に対して)。上記プログラムは、デフォルトのオープニングペナルティ(opening penalty)およびデフォルトのギャップペナルティを提供し、スコア行列(例えば、PAM250[標準的なスコア行列;Dayhoffら、Atlas of Protein Sequence and Structure,vol.5,supp.3(1978)を参照のこと])が、このコンピュータプログラムとともに使用され得る。例えば、同一性パーセントは:完全一致の総数に100を乗じ、そして一致したスパン内の長いほうの配列の長さと2つの配列をアラインメントするために長い方の配列に導入されたギャップの数との合計で除するとして算出され得る。
本発明の抗体はまた、結合親和性に影響を及ぼさないが、エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)またはクリアランスおよび取り込み(および半減期に対して生じる影響))を変化させ得る、定常領域のポリペプチド配列中の変更も含み得る。
挿入
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さに及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合ならびに単一または複数のアミノ酸残基、例えば、2個、3個またはそれ以上の残基の配列内の挿入を包含する。末端の挿入の例としては、N末端のメチオニル残基を有する抗体またはエピトープタグもしくはサルベージ・レセプター・エピトープに融合された抗体(抗体フラグメントを含む)が挙げられる。抗体分子の他の挿入性ムテインは、グリコシル化部位の付加、分子内もしくは分子間の結合のためのシステインの付加または抗体の血清半減期を長くするポリペプチドへの、例えばN末端もしくはC末端における融合を包含する。例えば、システイン結合は、その安定性を改善するために抗体に付加され得る(特に、抗体が、Fvフラグメントのような抗体フラグメントである場合)。
抗体のグリコシル化は、代表的にはN結合型またはO結合型である。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合のことをいう。アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニンというトリペプチド配列(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)が、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的な結合に対する認識配列である。ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在することにより、潜在的なグリコシル化部位が形成される。従って、N結合型グリコシル化部位は、これらのトリペプチド配列の1つ以上を含むようにアミノ酸配列を変化させることによって抗体に付加され得る。O結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も多いのはセリンまたはトレオニンへの、糖N−アセチルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つの結合のことをいうが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンもまた、使用され得る。O結合型グリコシル化部位は、1つ以上のセリン残基またはトレオニン残基を元の抗体の配列に挿入するか、または置換することによって、抗体に付加され得る。
用語「エピトープタグ化」とは、エピトープタグに融合された抗体のことをいう。エピトープタグポリペプチドは、抗体をもたらし得るエピトープを提供するのに十分であるが、その抗体の活性を妨害しないくらい短い残基を有する。エピトープタグは、好ましくは、その抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないくらい十分特有のものである。適当なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6アミノ酸残基を有し、通常、約8〜50アミノ酸残基(好ましくは、約9〜30残基)を有する。例としては、flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Fieldら、Mol.Cell.Biol.8:2159−2165(1988)];c−mycタグならびにそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evanら、Mol.Cell.Biol.5(12):3610−3616(1985)];ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborskyら、Protein Engineering 3(6):547−553(1990)]が挙げられる。他の例示的なタグは、ニッケルキレート化を使用して標識される化合物の単離を可能にする、一般におよそ6ヒスチジン残基であるポリヒスチジン配列である。他の標識およびタグ(例えば、当該分野で周知であり、日常的に使用されているFLAG(登録商標)タグ(Eastman Kodak,Rochester,NY))は、本発明によって包含される。
本明細書中で使用されるとき、用語「サルベージレセプター結合エピトープ」とは、IgG分子のインビボにおける血清半減期の延長に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープのことをいう。
欠失
アミノ酸配列欠失は、標的抗原に対する結合親和性を保持しているフラグメントを生じる、1から100以上の残基の長さに及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端の欠失ならびに単一または複数のアミノ酸残基、例えば、2個、3個またはそれ以上の配列内の残基の欠失を包含する。例えば、グリコシル化部位は、グリコシル化のためのトリペプチドもしくは他の認識配列の一部または全部を欠失することによって欠失され得るか、または異なる位置に移動され得る。
置換
別のタイプのムテインは、アミノ酸置換ムテインである。これらのムテインでは、抗体分子内において少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その位置に異なる残基が挿入されている。超可変領域もしくはCDR領域またはフレームワーク領域のいずれかの内部における置換的な突然変異誘発が企図される。保存的置換を表2に示す。最も保存的な置換は、「好ましい置換」の欄に見られる。そのような置換が、生物学的活性を変化させない場合、表1において「例示的な置換」と命名されたより実質的な変化またはアミノ酸クラスに関してさらに下に記載されるようなより実質的な変化が、導入され得、そしてその生成物がスクリーニングされ得る。
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)例えば、シートまたはヘリックス立体配座のような置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造の維持、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性の維持、または(c)側鎖の嵩の維持に対するそれらの作用が有意に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて以下のグループに分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
保存的置換は、そのクラスの別のメンバーによるアミノ酸の置換を含む。非保存的置換は、別のクラスのメンバーによるこれらのクラスのうちの1つのメンバーの置換を含む。
抗体の適正な立体配座の維持に関係しない任意のシステイン残基もまた、分子の酸化安定性を改善するためおよび異常な架橋を防止するために一般にセリンで置換され得る。
親和性成熟は、一般に、親抗体のCDR内に置換を有する抗体ムテインの調製およびスクリーニングならびに親抗体と比べて結合親和性のような生物学的特性が改善されたムテインの選択を含む。そのような置換ムテインを作製するために便利な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟である。簡潔には、各部位において可能なすべてのアミノ置換を作製するために、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7部位)を変異させる。このようにして作製された抗体ムテインを、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物に対する融合物として繊維状ファージ粒子から一価の様式でディスプレイする。次いで、ファージによってディスプレイされたムテインをそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。例えば、WO92/01047、WO93/112366、WO95/15388およびWO93/19172を参照のこと。
現在の抗体親和性成熟法は、2つの突然変異誘発カテゴリー:確率論的および非確率論的なカテゴリーに属する。エラープローンPCR、ミューテーター細菌株(Lowら、J.Mol.Biol.260,359−68,1996)および飽和突然変異誘発(Nishimiyaら、J.Biol.Chem.275:12813−20,2000;Chowdhury,P.S.Methods Mol.Biol.178,269−85,2002)は、確率論的な突然変異誘発方法の代表的な例である(Rajpalら、Proc Natl Acad Sci USA.102:8466−71,2005)。非確率論的手法では、特定のムテインの限られた集合を作製するためにアラニンスキャニングまたは部位特異的突然変異誘発を使用することが多い。いくつかの方法を、以下でさらに詳細に説明する。
パニング法を介した親和性成熟 組換え抗体の親和性成熟は、通常、徐々に減少させた量の抗原の存在下において、数回の候補抗体のパニングによって行われる。1回あたりの抗原の量を減少させることにより、抗原に対して最も高い親和性を有する抗体が選択され、それによって、出発物質の大きなプールから高親和性の抗体が得られる。パニングを介した親和性成熟は、当該分野で周知であり、例えば、Hulsら(Cancer Immunol Immunother.50:163−71,2001)に記載されている。ファージディスプレイ技術を使用した親和性成熟の方法は、本明細書中の別の箇所に記載されており、当該分野で公知である(例えば、Daughertyら、Proc Natl Acad Sci USA.97:2029−34,2000を参照のこと)。
ルックスルー(Look−through)突然変異誘発 ルックスルー突然変異誘発(LTM)(Rajpalら、Proc Natl Acad Sci USA.102:8466−71,2005)は、抗体結合部位を迅速にマッピングするための方法を提供する。LTMでは、20個の天然のアミノ酸によって提供される主要な側鎖化学の代表である9つのアミノ酸を選択して、抗体の6つすべてのCDR中のすべての位置における結合に対する機能的な側鎖の寄与を精査する。LTMによって、CDR内で一連の位置的な単一変異が作製され、ここで、各「野生型」残基は、9個の選択されたアミノ酸のうちの1つで体系的に置換される。変異したCDRを組み合わせることにより、すべてのムテインの定量的なディスプレイが抑制されることなく、複雑性およびサイズが増大したコンビナトリアル一本鎖可変フラグメント(scFv)ライブラリーが得られる。ポジティブ選択の後、結合が改善されたクローンを配列決定し、有益な変異をマッピングする。
エラープローンPCR エラープローンPCRは、様々な選択回の間における核酸のランダム化を含む。ランダム化は、使用されるポリメラーゼの固有のエラー率によって低い割合で生じるが、転写中の固有の高いエラー率を有するポリメラーゼ(Hawkinsら、J Mol Biol.226:889−96,1992)を使用するエラープローンPCR(Zaccoloら、J.Mol.Biol.285:775−783,1999)によって増強され得る。変異のサイクルの後、当該分野で通例の方法(mehods)を使用して、抗原に対する親和性が改善されたクローンを選択する。
DNAシャフリング 核酸シャフリングは、改変体ポリヌクレオチドを作製するためにより短いかまたは小さいポリヌクレオチドのプールをインビトロまたはインビボにおいて相同組換えするための方法である。DNAシャフリングは、米国特許第6,605,449号、米国特許第6,489,145号、WO02/092780およびStemmer,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:10747−51(1994)に記載されている。一般に、DNAシャフリングは、3工程:DNアーゼIを用いてシャッフルされる遺伝子の断片化、フラグメントのランダムハイブリダイゼーションおよびDNAポリメラーゼの存在下でのPCR(セクシャルPCR(sexual PCR)による)断片化遺伝子の再構築または充填、ならびに、再構築された産物の従来のPCRによる増幅を含む。
DNAシャフリングは、逆の連鎖反応であるという点でエラープローンPCRとは異なる。エラープローンPCRでは、ポリメラーゼ開始部位の数および分子の数が、指数関数的に増える。対照的に、ランダムポリヌクレオチドの核酸再構築またはシャフリングでは、開始部位の数およびランダムポリヌクレオチドの数(サイズではない)は、経時的に減少する。
抗体の場合、DNAシャフリングによって、例えば、すべてのCDR1と、すべてのCDR2と、すべてのCDR3との自由な組み合わせ関係が可能になる。複数の配列ファミリーが、同じ反応においてシャッフルされ得ることが企図される。さらに、シャフリングは、例えば、CDR1がCDR2の位置に見られないように、一般に相対的な順序を保存する。シャッフラント(shufflant)が、多数の最良の(例えば、最高の親和性の)CDRを含むことは稀にしかなく、これらの稀なシャッフラントは、その優れた親和性に基づいて選択され得る。
DNAシャフリングにおいて使用され得る鋳型ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAであり得る。それらは、組み換えられるかもしくは再構築される遺伝子あるいはそれより短いかまたは小さいポリヌクレオチドのサイズに応じて様々な長さであり得る。好ましくは、鋳型ポリヌクレオチドは、50bp〜50kbである。鋳型ポリヌクレオチドは、しばしば、二本鎖であるべきである。
鋳型ポリヌクレオチドと同一の領域および鋳型ポリヌクレオチドに対して異種性の領域を有する一本鎖または二本鎖の核酸ポリヌクレオチドが、遺伝子選択の最初の工程中に、鋳型ポリヌクレオチドに付加され得ることが企図される。異なるが関連する2つのポリヌクレオチド鋳型が、最初の工程中で混合され得ることも企図される。
アラニンスキャニング アラニンスキャニング突然変異誘発は、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定するために行われ得る。Cunningham and Wells(Science 244:1081−1085,1989)。残基または標的残基の群(例えば、arg、asp、his、lysおよびgluのような帯電した残基)を同定し、中性のアミノ酸または負に帯電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)で置換することにより、そのアミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで、さらなる変異または他の変異を導入することによって、または、置換部位について、置換に対する機能的な感度を示すアミノ酸の位置を正確にする。従って、アミノ酸配列の変更を導入するための部位は、予め決められるが、変異の性質自体は、予め決められる必要はない。例えば、所与の部位において変異の性能を分析するために、標的コドンまたは標的領域においてalaスキャニングまたはランダム突然変異誘発を行い、発現される抗体ムテインを所望の活性についてスクリーニングする。
コンピュータ支援による設計 あるいは、またはさらに、抗原抗体複合体の結晶構造を分析することによって、その抗体と抗原との接触点を同定することまたはコンピュータソフトウェアを使用してそのような接触点をモデル化することが、有益であり得る。本明細書中で詳述される手法によれば、そのような接触残基および隣接残基は、置換の候補である。いったんそのようなムテインが作製されると、ムテインのパネルは、本明細書中に記載されるようなスクリーニングに供され、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体が、さらなる開発のために選択され得る。
親和性成熟は、親抗体のCDR内に置換を有する抗体ムテインの調製およびスクリーニングならびに親抗体と比べて結合親和性のような生物学的特性が改善されたムテインの選択を含む。そのような置換ムテインを作製するために便利な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟である。簡潔には、各部位において可能なすべてのアミノ置換を作製するために、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7部位)を変異させる。このようにして作製された抗体ムテインを、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物に対する融合物として繊維状ファージ粒子から一価の様式でディスプレイする。次いで、ファージによってディスプレイされたムテインをそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
アラニンスキャニング突然変異誘発は、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定するために行われ得る。あるいは、またはさらに、抗原抗体複合体の結晶構造を分析することによって、その抗体と抗原との接触点を同定することが有益であり得る。本明細書中で詳述される手法によれば、そのような接触残基および隣接残基は、置換の候補である。いったんそのようなムテインが作製されると、ムテインのパネルは、本明細書中に記載されるようなスクリーニングに供され、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体は、さらなる開発のために選択され得る。
エフェクター機能の変更
抗体の他の改変が企図される。例えば、癌を処置する際の抗体の有効性を増大させるために、例えば、エフェクター機能に関して本発明の抗体を改変することが望ましい場合がある。例えば、システイン残基をFc領域に導入することによって、この領域において鎖間のジスルフィド結合の形成が可能になり得る。このようにして作製されたホモ二量体抗体は、改善された内部移行能力ならびに/または高い補体媒介性細胞殺傷および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有し得る。Caronら、J.Exp Med.176:1191−1195(1992)およびShopes,B.J.Immunol.148:2918−2922(1992)を参照のこと。増強された活性を有するホモ二量体抗体はまた、Wolffら、Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されているようにヘテロ二官能性架橋剤を使用しても調製され得る。あるいは、二重Fc領域を有する抗体が操作され得、それによって、増強された補体溶解能力およびADCC能力を有し得る。Stevensonら、Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989)を参照のこと。さらに、CDR内の配列が、MHCクラスIIに結合する抗体を引き起こし得、不必要なヘルパーT細胞応答を引き起こし得ることが示されている。保存的置換により、抗体が結合活性を保持しながらも不必要なT細胞応答を引き起こす能力を無くすことが可能になり得る。マウスの可変領域がヒトガンマ1、ガンマ2、ガンマ3およびガンマ4定常領域と連結されたキメラ抗体について記載されているSteplewskiら、Proc Natl Acad Sci USA.1988;85(13):4852−6(その全体が本明細書中で参考として援用される)もまた参照のこと。
本発明のある特定の実施形態において、例えば、腫瘍への透過性を増大させるために、インタクトな抗体ではなく抗体フラグメントを使用することが望ましい場合がある。この場合、血清半減期を長くするために、抗体フラグメントを改変することが望ましい場合があり、例えば、抗体フラグメントに分子(例えば、PEGまたは多糖ポリマーをはじめとした他の水溶性ポリマー)を付加することによって、半減期を長くする。これは、例えば、抗体フラグメントにサルベージレセプター結合エピトープを組み込むことによって(例えば、抗体フラグメント内の適切な領域の変異によってまたはペプチドタグ中にエピトープを組み込み、そしてそれを末端または中央において抗体フラグメントに融合する(例えば、DNA合成またはペプチド合成によって)ことによって)も達成され得る(例えば、WO96/32478を参照のこと)。
サルベージレセプター結合エピトープは、好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループ由来の任意の1つ以上のアミノ酸残基が抗体フラグメントの類似の位置に移行されている領域を構成する。なおもより好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループ由来の3つ以上の残基が移行されている。なおもより好ましくは、このエピトープは、(例えば、IgGの)Fc領域のCH2ドメインから得られ、抗体のCH1、CH3もしくはVH領域または2つ以上のそのような領域に移行される。あるいは、このエピトープは、Fc領域のCH2ドメインから得られ、抗体フラグメントのC.sub.L領域もしくはV.sub.L領域またはその両方に移行される。Fcバリアントおよびサルベージレセプターとのそれらの相互作用について記載している国際出願WO97/34631およびWO96/32478もまた参照のこと。
従って、本発明の抗体は、Fcサルベージレセプターと相互作用する能力を保持している、ヒトFc部、ヒトコンセンサスFc部またはそれらのムテイン(ジスルフィド結合に関与しているシステインが、改変されているか、もしくは除去されており、そして/または、metが、N末端に付加されており、そして/またはN末端の20アミノ酸の1つ以上が、除去されており、そして/またはC1q結合部位のような補体と相互作用する領域が除去されており、そして/またはADCC部位が、除去されているムテインを含む)を含み得る[例えば、Molec.Immunol.29(5):633−9(1992)を参照のこと]。IgGクラスの抗体もまた、異なる定常領域を含み得る。例えば、IgG2抗体は、IgG1またはIgG4定常領域をディスプレイするように改変され得る。
IgG1の場合、定常領域、特にヒンジまたはCH2領域に対する改変によって、ADCC活性および/またはCDC活性を含むエフェクター機能が増加し得るか、または低下し得る。他の実施形態において、IgG2定常領域が改変されることにより、抗体−抗原集合体の形成が減少する。IgG4の場合、定常領域、特にヒンジ領域に対する改変によって、半分の抗体の形成が減少し得る。特定の例示的な実施形態において、IgG4ヒンジ配列Cys−Pro−Ser−CysをIgG1ヒンジ配列Cys−Pro−Pro−Cysに変異することが提供される。
以前の研究では、FcRに対するヒトおよびマウスのIgG上の結合部位は、主にIgG残基233−239から構成されるヒンジ領域下部にマッピングされた。他の研究では、さらに広いセグメント、例えば、ヒトFcレセプターIに対してGly316−Lys338、ヒトFcレセプターIIIに対してLys274−Arg301およびTyr407−Arg416が提案されたか、またはヒンジ下部の外側のいくつかの特異的な残基、例えば、マウスFcレセプターIIと相互作用するマウスのIgG2bに対してAsn297およびGlu318が見出された。ヒトFcレセプターIIIAを伴うヒトIgG1 Fcフラグメントの3.2Å結晶構造の報告では、IgG1残基Leu234−Ser239、Asp265−Glu269、Asn297−Thr299およびAla327−Ile332が、FcレセプターIIIAへの結合に関与していると記載された。ヒンジ下部(Leu234−Gly237)に加えて、IgG CH2ドメインループFG(残基326−330)およびBC(残基265−271)における残基は、FcレセプターIIAへの結合に関与し得ると結晶構造に基づいて示唆されている。Shieldsら、J.Biol.Chem.,276(9):6591−6604(2001)(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。Fcレセプター結合部位内の残基の変異によって、エフェクター機能の変更(例えば、ADCC活性もしくはCDC活性の変更または半減期の変更)がもたらされ得る。上に記載したように、可能な変異としては、1つ以上の残基の挿入、欠失または置換(アラニンによる置換、保存的置換、非保存的置換または異なるIgGサブクラスの同じ位置における対応アミノ酸残基による置換(例えば、その位置における対応IgG2残基によるIgG1残基の置換)を含む)が挙げられる。
Shieldsらは、すべてのヒトFcレセプターへの結合に関与するIgG1残基が、ヒンジの近位のCH2ドメインに位置していて、以下のとおり2つのカテゴリーに分類されると報告した:1)すべてのFcRと直接相互作用し得る位置としては、Leu234−Pro238、Ala327およびPro329(およびおそらくAsp265)が挙げられる;2)炭水化物の性質または位置に影響を及ぼす位置としては、Asp265およびAsn297が挙げられる。FcレセプターIIへの結合に影響したさらなるIgG1残基は、以下のとおりである:(最も大きい影響)Arg255、Thr256、Glu258、Ser267、Asp270、Glu272、Asp280、Arg292、Ser298ならびに(小さい影響)His268、Asn276、His285、Asn286、Lys290、Gln295、Arg301、Thr307、Leu309、Asn315、Lys322、Lys326、Pro331、Ser337、Ala339、Ala378およびLys414。A327Q、A327S、P329A、D265AおよびD270Aは、結合を低減した。すべてのFcRに対して上で同定された残基に加えて、FcレセプターIIIAへの結合を40%以上低下させたさらなるIgG1残基は、以下のとおりである:Ser239、Ser267(Glyのみ)、His268、Glu293、Gln295、Tyr296、Arg301、Val303、Lys338およびAsp376。FcRIIIAへの結合を改善したムテインとしては、T256A、K290A、S298A、E333A、K334AおよびA339Tが挙げられる。Lys414は、FcRIIAおよびFcRIIBに対する結合の40%低下を示し、Arg416は、FcRIIAおよびFcRIIIAに対する結合の30%低下を示し、Gln419は、FcRIIAに対する結合の30%低下およびFcRIIBに対する結合の40%低下を示し、そしてLys360は、FcRIIIAに対する結合の23%改善を示した。Prestaら、Biochem.Soc.Trans.(2001)30,487−490もまた参照のこと。
例えば、米国特許第6,194,551号(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、アミノ酸329、331または322位(Kabatナンバリングを使用)においてヒトIgG Fc領域中に変異を含む、エフェクター機能が変更したムテインが記載されており、それらのうちのいくつかは、C1q結合またはCDC活性の低下を示す。別の例として、米国特許第6,737,056号(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、アミノ酸238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439位(Kabatナンバリングを使用)においてヒトIgG Fc領域中に変異を含む、エフェクター結合またはFcガンマレセプター結合が変更されたムテインが記載されており、それらのうちのいくつかは、ADCC活性またはCDC活性の低下に関連するレセプター結合プロファイルを示す。これらのうち、アミノ酸238、265、269、270、327または329位における変異は、FcRIへの結合を低下すると述べられており、アミノ酸238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438または439位における変異は、FcRIIへの結合を低下すると述べられており、そして、アミノ酸238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435または437位における変異は、FcRIIIへの結合を低下すると述べられている。
米国特許第5,624,821号(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、マウス抗体のC1q結合活性が、重鎖のアミノ酸残基318、320または322を変異させることによって変更され得、そして、残基297(Asn)を置換することによって、溶解活性が無くなると報告している。
米国出願公開番号20040132101(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、アミノ酸240、244、245、247、262、263、266、299、313、325、328もしくは332位(Kabatナンバリングを使用)または234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330もしくは332位(Kabatナンバリングを使用)に変異を有するムテインが記載されており、それらのうち、234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330または332位における変異は、ADCC活性を低下させ得るか、またはFcガンマレセプターへの結合を低下させ得る。
Chappelら、Proc Natl Acad Sci USA.1991;88(20):9036−40(その全体が本明細書中で参考として援用される)は、IgG1の細胞親和性活性が、その重鎖CH2ドメインの固有の特性であると報告している。IgG1のアミノ酸残基234−237のいずれかにおける単一点変異によって、その活性が、有意に低下したか、または消滅した。IgG1残基234−237(LLGG)のすべてをIgG2およびIgG4に置換することが、完全な結合活性を回復するために必要であった。ELLGGP配列全体(残基233−238)を含むIgG2抗体は、野生型IgG1よりも活性であることが観察された。
Isaacsら、J Immunol.1998;161(8):3862−9(その全体が本明細書中で参考として援用される)は、FcガンマR結合にとって決定的なモチーフ内の変異(グルタミン酸233からプロリン、ロイシン/フェニルアラニン234からバリンおよびロイシン235からアラニン)によって、標的細胞の枯渇が完全に防がれたと報告している。グルタミン酸318からアラニンへの変異によって、マウスIgG2bのエフェクター機能が排除され、ヒトIgG4の効力も低下した。
Armourら、Mol Immunol.2003;40(9):585−93(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、野生型IgG1よりも少なくとも10倍低い効率で、活性化しているレセプターであるFcガンマRIIaと反応するが、阻害性レセプターであるFcガンマRIIbとの結合は、たった4倍低下しただけのIgG1ムテインが同定された。アミノ酸233−236の領域ならびに/またはアミノ酸327、330および331位において変異を作製した。WO99/58572(その全体が本明細書中で参考として援用される)もまた参照のこと。
Xuら、J Biol Chem.1994;269(5):3469−74(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、IgG1 Pro331をSerに変異させることによって、C1q結合が著しく低下し、実質的に(virually)溶解活性が排除されたと報告している。対照的に、IgG4中のSer331によるProの置換によって、IgG4 Pro331ムテインに対して部分的な溶解活性(40%)がもたらされた。
Schuurmanら、Mol Immunol.2001;38(1):1−8(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、重鎖間の結合形成に関与するヒンジシステインのうちの1つであるCys226をセリンに変異させることにより、より安定な重鎖間の結合がもたらされたと報告している。IgG4ヒンジ配列Cys−Pro−Ser−CysをIgG1ヒンジ配列Cys−Pro−Pro−Cysに変異させることによってもまた、重鎖間の共有結合性の相互作用が著しく安定化される。
Angalら、Mol Immunol.1993;30(1):105−8(その全体が本明細書中で参考として援用される)では、IgG4中のアミノ酸241位のセリンをプロリン(IgG1およびIgG2ではその位置において見られる)に変異させることによって、均一な抗体の産生ならびに元のキメラIgG4と比べて血清半減期の延長および組織分布の改善がもたらされたと報告している。
本発明はまた、エフェクター活性の変更をもたらす、炭水化物構造が変更された抗体分子(ADCC活性の改善を示す、フコシル化されていないかまたはフコシル化が少ない抗体分子を含む)の作製を企図する。これを達成する種々の方法が、当該分野で公知である。例えば、ADCCエフェクター活性は、FcγRIIIレセプターへの抗体分子の結合によって媒介され、このことは、CH2ドメインのAsn−297におけるN結合型グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、このレセプターと高親和性で結合し、FcγRIII媒介性のエフェクター機能を天然のフコシル化抗体よりも効率的に引き起こす。例えば、アルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ酵素がノックアウトされたCHO細胞における非フコシル化抗体の組換え産生は、100倍高いADCC活性を有する抗体をもたらす[Yamane−Ohnukiら、Biotechnol Bioeng.2004 Sep 5;87(5):614−22]。同様の効果は、この酵素またはフコシル化経路中の他の酵素の活性を低下させることによって、例えば、siRNAもしくはアンチセンスRNAで処理することによってか、酵素をノックアウトするように細胞株を操作することによってか、または選択的なグリコシル化インヒビターとともに培養することによって、達成され得る[Rothmanら、Mol Immunol.1989 Dec;26(12):1113−23]。いくつかの宿主細胞株、例えば、Lec13またはラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、天然に、フコシル化レベルの低い抗体を産生する。Shieldsら、J Biol Chem.2002 Jul 26;277(30):26733−40;Shinkawaら、J Biol Chem.2003 Jan 31;278(5):3466−73。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞において抗体を組換え的に産生することによるバイセクト型(bisected)炭水化物のレベルの上昇もまた、ADCC活性を増大させると決定されている。Umanaら、Nat Biotechnol.1999 Feb;17(2):176−80。2つのフコース残基のうちの1つが存在しないことだけで、ADCC活性を増加させるのに十分であり得ることが予測されている。[Ferraraら、J Biol Chem.2005 Dec 5]
他の共有結合性の改変
抗体の共有結合性の改変もまた本発明の範囲内に含まれる。それらは、適用可能である場合、抗体の化学合成または酵素的切断もしくは化学的切断によって作製され得る。他のタイプの抗体の共有結合性の改変は、抗体の標的アミノ酸残基を、選択される側鎖またはN末端もしくはC末端の残基と反応させることができる有機誘導体化剤と反応させることによって分子に導入されるものである。
システイニル残基は、カルボキシメチル誘導体またはカルボキシアミドメチル誘導体を得るために、α−ハロアセテート(および対応するアミン)(例えば、クロロ酢酸またはクロロアセトアミド)と反応させられることが最も多い。システイニル残基もまた、ブロモトリフルオロアセトン、アルファ−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノールまたはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
ピロ炭酸ジエチルが、ヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるので、この薬剤とpH5.5〜7.0において反応させることによってヒスチジル残基を誘導体化する。パラ−ブロモフェナシルブロミドもまた、有用である;この反応は、好ましくは、pH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリウム中で行われる。
リシニル残基およびアミノ末端残基を、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応させる。これらの薬剤を用いた誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆転する効果を有する。アルファ−アミノ含有残基を誘導するために適した他の試薬としては、イミドエステル(例えば、ピコリンイミド酸メチル、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオンおよび、グリオキシレートを用いたトランスアミナーゼで触媒される反応が挙げられる。
アルギニル残基は、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオンおよびニンヒドリンの中の1つまたはいくつかの従来の試薬との反応によって改変される。グアニジン官能基のpKaが高いので、アルギニン残基の誘導体化には、アルカリ性条件においてその反応を行うことが必要である。さらに、これらの試薬は、リシンならびにアルギニンイプシロン−アミノ基の群と反応し得る。
チロシル残基の特異的な改変は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によってスペクトル標識をチロシル残基に導入する際に、特定の目的で作製され得る。通常、N−アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンを使用することによって、それぞれO−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体が形成される。チロシル残基は、125Iまたは131Iを使用してヨウ素化されることにより、ラジオイムノアッセイにおいて使用するための標識タンパク質が調製される。
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド類(R−N.dbd.C.dbd.N−R’)と反応させることによって選択的に改変され、ここで、RおよびR’は、様々なアルキル基(例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミド)である。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンと反応させることによって、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、それぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基に脱アミドされることが多い。これらの残基は、中性または塩基性の条件下で脱アミドされる。これらの残基の脱アミド型は、本発明の範囲内に入る。
他の改変としては、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリル残基またはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン側鎖、アルギニン側鎖およびヒスチジン側鎖のアルファ−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.79−86(1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
別のタイプの共有結合性の改変は、抗体へのグリコシドの化学的または酵素的な結合を含む。これらの手順は、N結合型またはO結合型のグリコシル化に対してグリコシル化能力を有する宿主細胞における抗体の産生を必要としない点で有利である。使用される結合様式に応じて、糖を、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインの遊離スルフヒドリル基)、(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、トレオニンまたはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基)、(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンの芳香族残基)または(f)グルタミンのアミド基に、結合し得る。これらの方法は、1987年9月11日公開のWO87/05330およびAplin and Wriston,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306(1981)に記載されている。
抗体上に存在する任意の炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化には、抗体が化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物に対して露出していることが必要である。この処理によって、抗体がインタクトなままで、連結糖(linking sugar)(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたはすべての糖の切断がもたらされる。化学的な脱グリコシル化は、Hakimuddinら、Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987)およびEdgeら、Anal.Biochem.,118:131(1981)に記載されている。抗体上での炭水化物部分の酵素的な切断は、Thotakuraら、Meth.Enzymol.138:350(1987)に記載されているように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって達成され得る。
抗体の別のタイプの共有結合性の改変は、種々の非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレンまたは多糖ポリマー(例えば、デキストラン)のうちの1つに対する抗体の連結を含む。そのような方法は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、同第4,179,337号、同第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、同第4,609,546号またはEP315456を参照のこと。
各抗体分子は、1つ以上の(すなわち1、2、3、4、5個またはそれ以上の)ポリマー分子に結合され得る。ポリマー分子は、好ましくは、リンカー分子によって抗体に結合される。そのポリマーは、通常、合成ポリマーまたは天然に存在するポリマー、例えば、必要に応じて置換される直鎖もしくは分枝鎖のポリアルケンポリマー、ポリアルケニレンポリマーまたはポリオキシアルキレンポリマーあるいは分枝鎖または非分枝鎖の多糖、例えば、ホモ多糖またはヘテロ多糖であり得る。好ましいポリマーは、ポリオキシエチレンポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、室温の水に可溶性であり、一般式:R(O−CH2−CH2)nO−Rを有し、ここで、Rは、水素または保護基(例えば、アルキル基またはアルカノール基)であり得る。好ましくは、保護基は、1〜8個の炭素を有し、より好ましくは、メチルである。記号nは、正の整数であり、好ましくは、1〜1,000、より好ましくは、2〜500である。PEGは、1000〜40,000、より好ましくは、2000〜20,000、最も好ましくは、3,000〜12,000の好ましい平均分子量を有する。好ましくは、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し、より好ましくは、それは、末端のヒドロキシ基である。その末端のヒドロキシ基は、好ましくは、活性化されて、インヒビター上で遊離アミノ基と反応するヒドロキシ基である。しかしながら、反応基のタイプおよび量は、本発明の共有結合的に結合体化されたPEG/抗体を達成するために変化し得ることが理解される。好ましいポリマーおよびそれらをペプチドに結合する方法は、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号;および同第4,609,546号(これらのすべての全体が、本明細書によって参考として援用される)に示されている。
遺伝子治療
適切な細胞への治療用抗体の送達は、当該分野で公知の任意の適当なアプローチ(物理的なDNA移入方法(例えば、リポソームまたは化学処理)の使用またはウイルスベクターを使用することによる(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスまたはレトロウイルス)使用を含む)、エキソビボ、インサイチュまたはインビボにおける遺伝子治療を介して達成され得る。例えば、インビボ治療の場合、所望の抗体をコードする核酸は、単独でか、またはベクター、リポソームもしくは沈殿物とともに、被験体に直接注射され得、そしていくつかの実施形態では、抗体化合物の発現が望まれる部位に注射され得る。エキソビボ処置の場合、被験体の細胞を取り出し、これらの細胞に核酸を導入し、そして改変された細胞を直接被験体に戻すか、または例えば患者に移植される多孔性膜で被包して被験体に戻す。例えば、米国特許第4,892,538号および同第5,283,187号を参照のこと。生存可能な細胞への核酸の導入には、種々の手法が利用可能である。その手法は、核酸をインビトロで培養細胞に移入するのか、目的の宿主の細胞においてインビボで移入するのかに応じて、変化する。インビトロにおける哺乳動物細胞への核酸の移入に適した手法としては、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストランおよびリン酸カルシウム沈殿が挙げられる。核酸のエキソビボ送達に通常使用されるベクターは、レトロウイルスである。
他のインビボ核酸移入手法としては、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、I型単純ヘルペスウイルスまたはアデノ随伴ウイルス)を用いるトランスフェクションおよび脂質ベースの系が挙げられる。核酸およびトランスフェクション剤は、必要に応じて、微小粒子と会合される。例示的なトランスフェクション剤としては、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクション、四級アンモニウム両親媒性物質DOTMA(GIBCO−BRLによってリポフェクチンとして商品化されている(ジオレオイルオキシプロピル)トリメチルアンモニウムブロミド))(Felgnerら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413−7417;Maloneら(1989)Proc.Natl Acad.Sci.USA 86 6077−6081);垂れ下がったトリメチルアンモニウム頭部を有する脂肪親和性グルタミン酸ジエステル(Itoら(1990)Biochem.Biophys.Acta 1023,124−132);代謝可能な親脂質(例えば、陽イオン性脂質ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS,Transfectam,Promega)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)(J.P.Behr(1986)Tetrahedron Lett.27,5861−5864;J.P.Behrら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6982−6986);代謝可能な四級アンモニウム塩(DOTB,N−(1−[2,3−ジオレオイルオキシ]プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート(DOTAP)(Boehringer Mannheim)、ポリエチレンイミン(PEI)、ジオレオイルエステル、ChoTB、ChoSC、DOSC)(Leventisら(1990)Biochim.Inter.22,235−241);3ベータ[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、1対1混合物中のジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)/3ベータ[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロールDC−Chol(Gaoら(1991)Biochim.Biophys.Acta 1065,8−14)、スペルミン、スペルミジン、リポポリアミン(Behrら、Bioconjugate Chem,1994,5:382−389)、脂肪親和性ポリリシン(LPLL)(Zhouら(1991)Biochim.Biophys.Acta 939,8−18)、過剰ホスファチジルコリン/コレステロールを伴う水酸化[[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)クレ−ソキシ(cre−soxy)]エトキシ]エチル]ジメチルベンジルアンモニウム(水酸化DEBDA)(Ballasら(1988)Biochim.Biophys.Acta 939,8−18)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)/DOPE混合物(Pinnaduwageら(1989)Biochim.Biophys.Acta 985,33−37)、ホスファチジルエタノールアミンと混合した、DOPE、CTAB、DEBDA、臭化ジドデシルアンモニウム(DDAB)およびステアリルアミンとのグルタミン酸(TMAG)の脂肪親和性ジエステル(Roseら(1991)Biotechnique 10,520−525)、DDAB/DOPE(TransfectACE,GIBCO BRL)およびオリゴガラクトース保持脂質が挙げられる。移入の効率を上げる例示的なトランスフェクション増強剤としては、例えば、DEAE−デキストラン、ポリブレン、リソソーム破壊ペプチド(Ohmori N Iら、Biochem Biophys Res Commun Jun.27,1997;235(3):726−9)、コンドロイタンベースのプロテオグリカン、硫酸プロテオグリカン、ポリエチレンイミン、ポリリシン(Pollard Hら、J Biol Chem,1998 273(13):7507−11)、インテグリン結合ペプチドCYGGRGDTP、線状デキストランノナサッカリド、グリセロール、オリゴヌクレオチドの3’末端のヌクレオシド間結合において繋ぎ止められたコレステリル基(Letsinger,R.L.1989 Proc Natl Acad Sci USA 86:(17):6553−6)、リゾホスファチド、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンおよび1−オレオイルリゾホスファチジルコリンが挙げられる。
いくつかの状況において、標的細胞に核酸含有ベクターを向ける薬剤とともに核酸を送達することが望ましい場合がある。そのような「標的化」分子としては、標的細胞上の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上のレセプターに対するリガンドが挙げられる。リポソームが使用される場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質が、標的化するためおよび/または取り込みを促進するために使用され得る。そのようなタンパク質の例としては、特定の細胞型に対して向性のキャプシドタンパク質およびそのフラグメント、循環において内部移行するタンパク質に対する抗体、ならびに、細胞内の局在化を標的化し、細胞内の半減期を延長するタンパク質が挙げられる。他の実施形態において、レセプター媒介性のエンドサイトーシスが使用され得る。そのような方法は、例えば、Wuら、1987またはWagnerら、1990に記載されている。現在知られている遺伝子マーキングプロトコルおよび遺伝子治療プロトコルの概説については、Anderson 1992を参照のこと。WO93/25673およびそれに引用されている参考文献もまた参照のこと。遺伝子治療技術のさらなる概説については、Friedmann,Science,244:1275−1281(1989);Anderson,Nature,vol.392,no 6679に対する補遺,pp.25−30(1998);Verma,Scientific American:68−84(1990);およびMiller,Nature,357:455460(1992)を参照のこと。
スクリーニング法
本発明の別の局面は、EphB3の活性を増大させる抗体を同定する方法に関し、その方法は、EphB3を抗体と接触させる工程およびその抗体がEphB3の活性を改変するか否かを判定する工程を含む。試験抗体の存在下での活性を、試験抗体の非存在下での活性と比較する。試験抗体を含むサンプルの活性が、試験抗体を有しないサンプル中の活性よりも高い場合、その抗体は、活性化した活性または増加した活性を有する。効果的な治療薬は、有意な毒性を欠いている有効な薬剤の同定に左右される。抗体は、当該分野で公知の方法によって結合親和性についてスクリーニングされ得る。例えば、ゲルシフトアッセイ、ウエスタンブロット、放射性標識競合アッセイ、クロマトグラフィによる共分取(co−fractionation)、共沈、クロスリンキング、ELISAなどが使用され得、これらは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(1999)John Wiley & Sons,NY(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。さらに、Biacore(登録商標)を使用して、抗体競合を評価してもよい(例えば、下記の実施例5を参照のこと)。
はじめに、標的抗原上の所望のエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているような通例のクロスブロッキングアッセイ(cross−blocking assay)が行われ得る。通例の競合結合アッセイもまた使用され得、ここで、未知の抗体が、本発明の標的特異的な抗体への標的の結合を阻害する能力を特徴とする。インタクトな抗原、そのフラグメント(例えば、細胞外ドメイン)または線状エピトープが使用され得る。エピトープマッピングは、Champeら、J.Biol.Chem.270:1388−1394(1995)に記載されている。
インビトロ結合アッセイの1変法において、本発明は、(a)固定化されたEphB3を候補抗体と接触させる工程および(b)EphB3への候補抗体の結合を検出する工程を含む方法を提供する。別の実施形態では、候補抗体が固定化され、EphB3の結合が検出される。固定化は、当該分野で周知の方法のいずれかを使用して達成され、その方法としては、支持体、ビーズまたはクロマトグラフィ樹脂への共有結合ならびに非共有結合性の高親和性相互作用(例えば、抗体結合)またはストレプトアビジン/ビオチン結合の使用(ここで、固定化される化合物がビオチン部分を含む)が挙げられる。結合の検出は、(i)固定化されていない化合物上の放射性標識を使用して、(ii)固定化されていない化合物上の蛍光標識を使用して、(iii)固定化されていない化合物に免疫特異的な抗体を使用して、(iv)固定化されている化合物が結合している蛍光性の支持体を励起させる固定化されていない化合物上の標識を使用して、ならびに、当該分野において周知で日常的に行われている他の手法を使用して、達成され得る。
標的抗原の活性を増加させる抗体は、標的抗原(または標的抗原を発現している細胞)とともに候補抗体をインキュベートし、そして、標的抗原の活性または発現に対する候補抗体の効果を決定することによって同定され得る。試験抗体の存在下での活性を、試験抗体の非存在下での活性と比較する。試験抗体を含むサンプルの活性が、試験抗体を含まないサンプル中の活性よりも高い場合、その抗体は、増加した活性を有する。標的抗原ポリペプチドまたは標的抗原ポリヌクレオチドの活性を調節する抗体の選択力は、標的抗原に対する効果を他の関連化合物に対する効果と比較することによって評価することができる。
特定の例示的な実施形態において、レセプターのリン酸化、オリゴマー化、内部移行、分解、シグナル伝達および/またはEphB3媒介性の細胞−細胞接着を誘導する能力を測定するために、培養された細胞系中での効果について抗体を試験することが企図される。さらに、本明細書中に記載されるような増殖アッセイ、軟寒天アッセイおよび/または細胞傷害アッセイをはじめとした細胞アッセイを使用して、特定のEphB3抗体を評価してもよい。
特定の抗体または抗体の組み合わせの生物学的活性は、適当な動物モデルを使用してインビボにおいて評価され得る。例えば、ヒト癌細胞がヌードマウスまたはSCIDマウスのような免疫不全動物に導入される異種移植片癌モデルが使用され得る。有効性は、腫瘍形成、腫瘍退縮または転移などの阻害を測定するアッセイを使用して予測され得る。
本発明はまた、標的抗原の生物学的活性と相互作用するか、または標的抗原の生物学的活性を誘導する(すなわち、内部移行または細胞内シグナル伝達などを誘導する)抗体を同定するハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイも包含する。HTSアッセイによって、効率的な様式で多数の化合物をスクリーニングすることが可能になる。標的抗原とその結合パートナーとの相互作用を調べるために、細胞ベースのHTSシステムが企図される。HTSアッセイは、所望の特性を有する「ヒット(hits)」または「リード化合物」を同定するように設計され、そこから、所望の特性を改善するように改変が設計され得る。
本発明の別の実施形態では、標的抗原ポリペプチドに対して適当な結合親和性を有するCDR内のアミノ酸に対して1、2、3個またはそれ以上の改変を有する抗体フラグメントまたはCDRに対するハイスループットスクリーニングが使用される。
併用療法
動物モデルにおいて有効な2つ以上の抗体を同定したら、さらに改善された有効性を提供するために、2つ以上のそのような抗体(同じ標的抗原または異なる標的抗原に結合するもの)をともに混合することがさらに有益であり得る。1つ以上の抗体を含む組成物は、癌に罹患しているか、または癌に罹患しやすいヒトまたは哺乳動物に投与され得る。2つの治療薬の一致した投与は、それらの薬剤が、治療的な効果を発揮する期間が重複している限り、それらの薬剤が同じ時点で投与されるかまたは同じ経路によって投与される必要はない。同時投与または異なる日もしくは異なる週における投与であるような連続投与が企図される。
抗体治療は、癌のすべてのステージに有用であり得るが、抗体治療は、進行癌または転移性癌において特に適切であり得る。抗体治療法を化学療法レジメンまたは放射線照射レジメンと併用することが、化学療法的な処置を受けたことがない患者において好ましい場合があるのに対し、抗体治療による処置が、1つ以上の化学療法剤を投薬されたことのある患者に必要とされる場合がある。さらに、抗体治療は、特に化学療法剤の毒性を十分に許容しない患者において、低用量の併用化学療法剤を使用することもできる。
本発明の方法は、単一抗体の投与ならびに様々な抗体の組み合わせ、すなわち「カクテル」としての投与を企図する。そのような抗体カクテルは、様々なエフェクターメカニズムを利用する抗体を含むかまたは免疫エフェクター機能に依存する抗体と細胞傷害性抗体を直接組み合わせる限り、ある特定の利点を有し得る。そのような抗体の併用は、相乗的な治療効果を示し得る。
本発明の方法は、処置される特定の癌(例えば、肺癌、卵巣癌、食道癌、結腸癌または乳癌)に対して医学的に認識されている医療の標準と組み合わせた、単一抗体の投与または抗体カクテルの投与をさらに企図する。
細胞傷害性薬剤とは、細胞の機能を阻害するかまたは妨害し、そして/または細胞の破壊を引き起こす物質のことをいう。この用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90およびRe186)、化学療法剤およびトキシン(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性なトキシンまたは合成トキシンあるいはそれらのフラグメント)を包含すると意図される。非細胞傷害性薬剤とは、細胞の機能を阻害しないか、または妨害しない、そして/または細胞の破壊を引き起こさない物質のことをいう。非細胞傷害性薬剤は、細胞傷害性になるように活性化され得る薬剤を包含し得る。非細胞傷害性薬剤は、ビーズ、リポソーム、マトリックスまたは粒子を包含し得る(例えば、米国特許公報2003/0028071および2003/0032995(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。そのような薬剤は、本発明の抗体に結合体化され得るか、結合され得るか、連結され得るか、または会合され得る。
癌化学治療薬としては、アルキル化剤(例えば、カルボプラチンおよびシスプラチン);ナイトロジェンマスタードアルキル化剤;ニトロソ尿素アルキル化剤(例えば、カルムスチン(BCNU));代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート);フォリン酸;プリンアナログ代謝拮抗物質、メルカプトプリン;ピリミジンアナログ代謝拮抗物質(例えば、フルオロウラシル(5−FU)およびゲムシタビン(Gemzar(登録商標)));抗腫瘍性ホルモン薬(例えば、ゴセレリン、ロイプロリドおよびタモキシフェン);天然抗腫瘍薬(例えば、アルデスロイキン、インターロイキン−2、ドセタキセル、エトポシド(VP−16)、インターフェロンアルファ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))およびトレチノイン(ATRA));抗生物質性の天然抗腫瘍薬(例えば、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダウノマイシンおよびマイトマイシン(マイトマイシンCを含む));およびビンカアルカロイド天然抗腫瘍薬(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン);ヒドロキシ尿素;アセグラトン、アドリアマイシン、イホスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシタビン、ニムスチン、塩酸プロカルバジン、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クロモマイシンA3、抗腫瘍性多糖、抗腫瘍性血小板因子、シクロホスファミド(Cytoxin(登録商標))、シゾフィラン、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ダカルバジン、チオイノシン、チオテパ、テガフール、ドラスタチン、ドラスタチンアナログ(例えば、アウリスタチン(auristatin))、CPT−11(イリノテカン)、ミトキサントロン(mitozantrone)、ビノレルビン、テニポシド、アミノプテリン、カルミノマイシン(carminomycin)、エスペラミシン(esperamicin)(例えば、米国特許第4,675,187号を参照のこと)、ネオカルチノスタチン、OK−432、ブレオマイシン、フルツロン、ブロクスウリジン、ブスルファン、ホンバン、ペプロマイシン、ベスタチン(Ubenimex(登録商標))、インターフェロン−β、メピチオスタン、ミトブロニトール、メルファラン、ラミニンペプチド、レンチナン、Coriolus versicolor抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、癌患者に対する治療薬として使用されるさらなる薬剤としては、EPO、G−CSF、ガンシクロビル;抗生物質、ロイプロリド;メペリジン;ジドブジン(AZT);インターロイキン1〜18(変異体およびアナログを含む);インターフェロンまたはサイトカイン(例えば、インターフェロンα、βおよびγホルモン(例えば、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびアナログならびに性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)));成長因子(例えば、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、線維芽細胞成長因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子相同因子(FGFHF)、肝細胞成長因子(HGF)およびインスリン成長因子(IGF));腫瘍壊死因子−αおよびβ(TNF−αおよびβ);浸潤抑制因子−2(IIF−2);骨形成タンパク質1−7(BMP1−7);ソマトスタチン;サイモシン−α−1;γ−グロブリン;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);補体因子;抗血管新生因子;抗原性物質;およびプロドラッグが挙げられる。
プロドラッグとは、親薬物と比べて腫瘍細胞に対して細胞傷害性が低いかまたは非細胞傷害性であり、酵素的に活性化されるかまたは活性な型もしくはより活性な親型に変換されることが可能な、薬学的に活性な物質の前駆体型または誘導体型のことをいう。例えば、Wilman“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast(1986)およびStellaら、“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery”,Directed Drug Delivery,Borchardtら(ed.),pp.247−267,Humana Press(1985)を参照のこと。プロドラッグとしては、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸改変プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、必要に応じて置換されるフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは必要に応じて置換されるフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシンおよびより活性な細胞傷害性遊離薬物に変換され得る他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中の用途のためにプロドラッグ型に誘導体化され得る細胞傷害性薬物の例としては、上に記載した化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
投与および調製
本発明の抗体は、所望の送達方法に適したキャリアを含む薬学的組成物に製剤化され得る。適当なキャリアとしては、抗体と併用されるときに、抗体の所望の活性を保持し、被験体の免疫系に対して反応性でない任意の材料が挙げられる。例としては、多くの標準的な薬学的キャリア(例えば、滅菌リン酸緩衝食塩水溶液、静菌性水など)のうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。種々の水性キャリア(例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなど)が使用され得、それらとしては、穏やかな化学修飾などに供された、安定性を増大させるための他のタンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)が挙げられ得る。
本抗体の治療的な製剤は、所望の程度の純度を有する抗体を任意の生理的に許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態で貯蔵用に調製される。許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、それらとしては、緩衝剤(例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸);酸化防止剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む);保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム);塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン);カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン);単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG))が挙げられる。
本明細書中の製剤はまた、処置される特定の症状に必要なとき、2つ以上の活性な化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する化合物を含み得る。そのような分子は、意図される目的に有効な量で組み合わせ中に適切に存在する。
その活性成分はまた、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション手法または界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセルの中に封入され得る。そのような手法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
本抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内および鼻腔内投与ならびに局所的処置が所望であれば、病巣内投与をはじめとした任意の適当な手段によって投与される。非経口注入としては、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内または皮下投与が挙げられる。さらに、本抗体は、特に抗体の用量を減少させながらパルス注入によって適切に投与される。好ましくは、投薬は、注射によって行われ、最も好ましくは、静脈内または皮下注射によって行われる。局部的、特に、経皮的、経粘膜的、直腸、経口または局所投与、例えば、所望の部位の近位に配置されたカテーテルを介した投与をはじめとした他の投与方法が企図される。
経鼻投与では、薬学的処方物および薬物は、適切な溶媒および必要に応じて他の化合物(例えば、安定剤、抗菌剤、酸化防止剤、pH調整剤(pH modifier)、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤およびこれらの組み合わせであるがこれらに限定されない)を含むスプレーまたはエアロゾルであり得る。エアロゾル製剤用の噴霧剤としては、圧縮空気、窒素、二酸化炭素または炭化水素系低沸点溶媒が挙げられ得る。
注射可能な剤形としては、一般に、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して調製され得る水性懸濁液または油性懸濁液が挙げられる。注射可能な形態は、溶液相であり得るか、または溶媒もしくは希釈剤を用いて調製される懸濁液の形態であり得る。許容可能な溶媒またはビヒクルとしては、滅菌水、リンガー溶液または等張性食塩水溶液が挙げられる。
注射に対しては、薬学的処方物および/または薬物は、上に記載したような適切な溶液による再構成に適した粉末であり得る。これらの例としては、フリーズドライ粉末、回転乾燥粉末もしくは噴霧乾燥粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物または微粒子が挙げられるが、これらに限定されない。注射用に、製剤は、必要に応じて、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
徐放調製物が、調製され得る。徐放調製物の適当な例としては、本抗体を含んでいる固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、そのマトリックスは、成形された物品の形態、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とyエチル−L−グルタメートとの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体(例えば、Lupron Depot(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なミクロスフェア))およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸)が、100日よりも長く分子を放出することができるのに対し、ある特定のヒドロゲルは、それよりも短い期間にわたってタンパク質を放出する。被包性抗体が、長期間体内に残留するとき、それらは、37℃の水分に曝露される結果として、変性し得るか、または凝集し得、それによって、生物学的活性の喪失および免疫原性の変化の可能性がもたらされる。関与するメカニズムに応じて、合理的なストラテジーが、安定性に対して考案され得る。例えば、凝集メカニズムが、チオ−ジスルフィド交換による分子間のS−S結合形成であると発見される場合、安定性は、スルフヒドリル残基を改変することによって、酸性溶液から凍結乾燥することによって、水分含有量を制御することによって、適切な添加剤を使用することによって、そして特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって、達成され得る。当該分野で公知の他のストラテジーを使用してもよい。
本発明の製剤は、本明細書中に記載されるような短時間作用型、迅速放出型、長時間作用型または徐放型であるように設計され得る。従って、薬学的処方物はまた、制御放出性または緩効性に製剤化され得る。
本組成物はまた、長期間の貯蔵および/または送達効果を提供するために、例えば、ミセルもしくはリポソームまたはいくつかの他の被包性型を含み得るか、または持続放出型で投与され得る。ゆえに、薬学的処方物および薬物は、小丸剤またはボンベ内に圧縮され得、そして蓄積注射としてまたはステントのような埋没物として筋肉内にまたは皮下に埋め込まれ得る。そのような埋没物は、公知の不活性な材料(例えば、シリコーンおよび生分解性ポリマー)を使用し得る。
上に記載した代表的な剤形に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤およびキャリアが、一般に当業者に公知であり、ゆえに、本発明に含められる。そのような賦形剤およびキャリアは、例えば、“Remingtons Pharmaceutical Sciences”Mack Pub.Co.,New Jersey(1991)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
特定の投与量は、疾患の状態、被験体の年齢、体重、全般的な健康状態、遺伝子型、性別および食事、投薬間隔、投与経路、排出速度ならびに薬物の組み合わせに応じて調節され得る。有効量を含む上記剤形のいずれかが、通例の実験の範囲内に十分入っているので、それらは、十分に本発明の範囲内である。
本発明の抗体は、しばしば、他の天然に存在する免疫グロブリンまたは他の生物学的分子を実質的に含まずに調製される。また、好ましい抗体は、癌に苦しんでいるかまたは癌に罹患しやすい哺乳動物に投与されるとき、最小の毒性を示す。
本発明の組成物は、従来の周知の滅菌手法によって滅菌され得る。得られる溶液は、用途に合わせて包装され得るか、または無菌条件下で濾過され、凍結乾燥され得る(その凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌溶液と組み合わされる)。生理学的条件に近い条件が必要とされるとき、本組成物は、薬学的に許容可能な補助剤物質(例えば、pH調節剤および緩衝剤、張度調節剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび安定剤(例えば、120%マルトースなど))を含み得る。
本発明の抗体はまた、薬物(例えば、本明細書中で開示される抗体および必要に応じて化学療法剤)の送達に有用な様々なタイプの脂質および/またはリン脂質および/または界面活性剤から構成される小型ベシクルであるリポソームを介して投与され得る。リポソームとしては、エマルジョン、泡沫、ミセル、不溶性単層、リン脂質分散系、層状の層などが挙げられ、リポソームは、抗体を特定の組織に標的化するビヒクルならびに組成物の半減期を長くするビヒクルとして役立ち得る。例えば、米国特許第4,837,028号および同第5,019,369号(これらの特許は、本明細書中で参考として援用される)に記載されているようなリポソームを調製するための種々の方法が、利用可能である。
本抗体を含むリポソームは、当該分野で公知の方法(例えば、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwangら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 77:4030(1980);および米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されている方法)によって調製される。循環時間が増大したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって作製され得る。リポソームを規定のポアサイズのフィルターから押し出すことによって、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab’フラグメントは、ジスルフィド交換反応を介してMartinら、J.Biol.Chem.257:286−288(1982)に記載されているようにリポソームに結合体化され得る。化学療法剤(例えば、ドキソルビシン)が、必要に応じてそのリポソーム内に含められる[例えば、Gabizonら、J.National Cancer Inst.81(19):1484(1989)を参照のこと]。
これらの組成物中の抗体の濃度は、広範囲に(すなわち、約10重量%未満、通常、少なくとも約25重量%から75重量%または90重量%)変化し得、選択された特定の投与様式に従って、主に液量、粘性などによって選択される。経口的、局所的および非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)(本明細書中で参考として援用される)に詳細に記載されている。
患者において疾患を処置するための本発明の組成物の有効量の決定は、当該分野で周知の標準的な経験的な方法によって達成され得る。これを達成する適切な量は、「治療的に有効な用量」と定義される。抗体の有効量は、疾患の重症度ならびに処置される患者の体重および全般的な状態に応じて変化し、また、それらに左右されるが、一般に、約1.0μg/kg体重〜約100mg/kg体重の範囲である。例示的な用量は、1適用あたり約10μg/kg〜約30mg/kgまたは約0.1mg/kg〜約20mg/kgまたは約1mg/kg〜約10mg/kgの範囲であり得る。抗体はまた、体表面積によって投薬され得る(例えば、最大4.5g/平方メートル)。抗体の他の例示的な用量は、単回投与において合計最大8gを含む(体重が80kgまたは体表面積が1.8平方メートルであると仮定されるとき)。
投与は、当該分野で公知の任意の手段によるものであり得る。例えば、抗体は、1回以上の別個のボーラス投与によって投与され得るか、あるいは例えば、5、10、15、30、60、90、120分もしくはそれ以上にわたる短期間または長期間の注入によって、投与され得る。最初の処置期間の後、患者の応答および治療の寛容に応じて、維持用量が患者の応答を維持するために必要であるとき、その維持用量は、例えば、毎週、隔週、3週間毎、4週間毎、毎月、隔月、3ヶ月毎または6ヶ月毎に投与され得る。疾患症状の所望の抑制が生じるまで、より頻繁な投薬が必要である場合があり、必要に応じて用量が調節され得る。この治療の進行は、従来の手法およびアッセイによって容易にモニターされる。この治療は、規定の期間にわたるものであり得るか、または、長期間にわたり、疾患進行もしくは死亡まで数年にわたって継続されるものであり得る。
本組成物の単回投与または反復投与は、処置している医師によって選択される用量レベルおよびパターンを用いて行われ得る。疾患の予防または処置に対して、抗体の適切な投薬量は、上で定義されたような処置される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、その抗体を投与する目的が予防的であるのか治療的であるのか、以前の治療、患者の病歴および抗体に対する応答ならびに主治医の慎重さに左右される。本抗体は、一度に、または一連の処置において、患者に適切に投与される。
任意のイベントにおいて、本製剤は、所望の生物学的活性を発揮するのに十分な、例えば、癌の重症度を予防するかまたは最小にするのに十分な時間にわたって、ある量の治療用抗体を提供するべきである。本発明の組成物は、単独で投与され得るか、またはそのような疾患を処置するために当該分野で公知の他の治療薬とともに補助治療として投与され得る。
本抗体組成物は、優良な医療行為に一致する様式で、製剤化され、調薬され、そして、投与される。この文脈において考慮される因子としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個別の患者の臨床上の状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与の日程計画および医師に公知の他の因子が挙げられる。投与される抗体の治療有効量は、そのような考慮によって決定され、その治療有効量は、標的に媒介される疾患、状態または障害を予防するか、寛解するか、または処置するために必要な最小量である。そのような量は、好ましくは、宿主にとって毒性である量よりも少ない量または宿主を有意に感染症にかかりやすくする量よりも少ない量である。
本抗体は、対象の障害を予防するためまたは処置するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに製剤化される必要はないが、必要に応じてそのように製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患、状態もしくは障害のタイプまたは処置のタイプおよび上で述べた他の因子に左右される。これらは、一般に、その前に使用されたものと同じ投与量および同じ投与経路で使用されるか、またはこれまでに使用されてきた投与量の約1〜99%で使用される。
本発明の別の実施形態において、所望の状態の処置に有用な材料を備えた製品が提供される。その製品は、容器およびラベルを備える。適当な容器としては、例えば、ビン、バイアル、注射器および試験管が挙げられる。その容器は、種々の材料(例えば、ガラスまたはプラスチック)から形成され得る。その容器は、状態を処置するために有効な組成物を保持しており、滅菌された接続口を有し得る(例えば、その容器は、皮下注射針で貫通可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。その組成物中の活性薬剤は、本発明の抗体である。その容器上のラベルまたはその容器に付随するラベルは、その組成物が、最適の状態を処置するために使用されることを示している。その製品は、第2の治療薬(本明細書中で述べられている疾患に対する第2の治療薬または当該分野で公知の第2の治療薬のいずれかを含む)を含んでいる第2の容器をさらに備え得る。その製品は、薬学的に許容可能な緩衝液(例えば、凍結乾燥された抗体製剤を再構成するためのリン酸緩衝食塩水、リンガー溶液またはデキストロース溶液)を含んでいる別の容器をさらに備え得る。その製品は、商業的な観点およびユーザの観点から望ましい他の材料(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器および使用についての指示を含む添付文書を含む)をさらに備え得る。
免疫療法
癌を有する患者を処置する際に有用な抗体としては、腫瘍に対して強力な免疫応答を開始することができる抗体および細胞傷害性を指示することができる抗体が挙げられる。細胞傷害性薬剤に結合体化された抗体は、EphB3を発現している腫瘍組織に対して細胞傷害性薬剤を標的化するために使用され得る。あるいは、抗体は、補体媒介性または抗体依存性の細胞傷害(ADCC)メカニズムによって腫瘍細胞溶解を誘発し得、それらの両方が、エフェクター細胞のFcレセプター部位または補体タンパク質と相互作用するために、免疫グロブリン分子のインタクトなFc部を必要とする。さらに、腫瘍増殖に対して直接的な生物学的作用を発揮する抗体が、本発明の実施に有用である。そのような直接的な細胞傷害性抗体が作用し得る有望なメカニズムとしては、細胞増殖の阻害、細胞分化の調節、腫瘍血管新生因子プロファイルの調節およびアポトーシスの誘導が挙げられる。特定の抗体が抗腫瘍作用を発揮するメカニズムは、一般に当該分野で公知であるようなADCC、ADMMC、補体媒介性細胞溶解などを測定するために設計された任意の多くのインビトロアッセイを使用して評価され得る。
抗EphB3抗体は、「裸の」型もしくは非結合体型で投与され得るか、あるいは他の治療薬もしくは診断用薬剤に直接結合体化され得るか、またはそのような他の治療薬もしくは診断用薬剤を含むキャリアポリマーに間接的に結合体化され得る。
抗体は、放射性同位体、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジンなど)、酵素的標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光または発光または生物発光の標識(例えば、FITCまたはローダミンなど)、常磁性原子などの使用によって検出可能に標識され得る。そのような標識を達成するための手順は、当該分野で周知である;例えば、(Sternberger,L.A.ら、J.Histochem.Cytochem.18:315(1970);Bayer,E.A.ら、Meth.Enzym.62:308(1979);Engval,E.ら、Immunol.109:129(1972);Goding,J.W.J.Immunol.Meth.13:215(1976))を参照のこと。
抗体部分の結合体化は、米国特許第6,306,393号に記載されている。一般的な手法は、Shihら、Int.J.Cancer 41:832−839(1988);Shihら、Int.J.Cancer 46:1101−1106(1990);およびShihら、米国特許第5,057,313号にも記載されている。この一般的な方法は、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し、複数の薬物、トキシン、キレート剤、ホウ素付加物(boron addend)または他の治療薬が負荷されているキャリアポリマーと、酸化型の炭水化物部を有する抗体成分とを反応させる工程を含む。この反応によって、最初のSchiff塩基(イミン)結合がもたらされ、これにより、第二級アミンに還元されることで安定化されて、最終的な結合体が形成され得る。
そのキャリアポリマーは、例えば、アミノデキストランまたは少なくとも50アミノ酸残基のポリペプチドであり得る。薬物または他の薬剤をキャリアポリマーに結合体化するための様々な手法は、当該分野で公知である。アミノデキストランの代わりに、ポリペプチドキャリアが使用され得るが、そのポリペプチドキャリアは、その鎖において少なくとも50アミノ酸残基、好ましくは、100〜5000アミノ酸残基を有しているべきである。そのアミノ酸のうちの少なくともいくつかは、リシン残基またはグルタミン酸残基もしくはアスパラギン酸残基であるべきである。リシン残基の垂れ下がったアミンならびにグルタミンおよびアスパラギン酸の垂れ下がったカルボキシレートは、薬物、トキシン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素付加物または他の治療薬を結合するために便利である。適当なポリペプチドキャリアの例としては、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらの共重合体およびこれらのアミノ酸の混合ポリマー、ならびに、生じる負荷キャリアおよび結合体に対して望ましい溶解特性を付与するその他のもの、例えば、セリンが挙げられる。
あるいは、結合体化された抗体は、抗体成分を治療薬に直接結合体化することによって調製され得る。一般的な手順は、治療薬が酸化型の抗体成分に直接結合されることを除いて、結合体化の間接的な方法に類似する。例えば、半減期を延長するために、抗体の炭水化物部分をポリエチレングリコールに結合し得る。
あるいは、治療薬は、ジスルフィド結合の形成を介して、またはヘテロ二官能性架橋剤(例えば、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(proprionate)(SPDP))を使用して、還元型の抗体成分のヒンジ領域に結合され得る。Yuら、Int.J.Cancer56:244(1994)。そのような結合体化についての一般的な手法は、当該分野で周知である。例えば、Wong,Chemistry Of Protein Conjugation and Cross−Linking(CRC Press 1991);Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Birchら(eds.)中のUpeslacisら、“Modification of Antibodies by Chemical Methods”,187−230頁(Wiley−Liss,Inc.1995);Monoclonal Antibodies:Production,Enineering and Clinical Application,Ritterら(eds.)中のPrice,“Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies”,60−84頁(Cambridge University Press 1995)を参照のこと。種々の二官能性タンパク質カップリング剤(例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCL)、活性なエステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド(glutareldehyde))、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン))が、当該分野で公知である。
最終的には、1つ以上の抗EphB3抗体部分および別のポリペプチドを含む融合タンパク質が、構築され得る。抗体融合タンパク質を作製する方法は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第6,306,393号を参照のこと。インターロイキン−2部分を含む抗体融合タンパク質は、Boletiら、Ann.Oncol.6:945(1995),Nicoletら、Cancer Gene Ther.2:161(1995)、Beckerら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 93:7826(1996)、Hankら、Clin.Cancer Res.2:1951(1996)およびHuら、Cancer Res.56:4998(1996)に記載されている。
本発明の抗体は、「裸の」型もしくは非結合体型で投与され得るか、またはそれらに直接結合体化された治療薬を有し得る。1つの実施形態において、本発明の抗体は、放射線増感剤として使用される。そのような実施形態において、本抗体は、放射線増感薬剤に結合体化される。用語「放射線増感剤」は、本明細書中で使用されるとき、細胞の感度を増加させるために、電磁放射線に対して放射線増感されるために、および/または、電磁放射線で処置可能な疾患の処置を促進するために、治療有効量で動物に投与される分子、好ましくは、低分子量分子と定義される。電磁放射線で処置可能な疾患としては、新生物疾患、良性および悪性の腫瘍ならびに癌性細胞が挙げられる。
本明細書中で使用されるとき、用語「電磁放射線」および「放射線」としては、10−20〜100メートルの波長を有する放射線が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態は、ガンマ−放射線(10−20〜10−13m)、X線(10−12〜10−9m)、紫外線(10nm〜400nm)、可視光線(400nm〜700nm)、赤外線(700nm〜1.0mm)およびマイクロ波(1mm〜30cm)の電磁放射線を使用する。
放射線増感剤は、電磁放射線の有毒作用に対する癌性細胞の感度を増大させることが知られている。多くの癌処置プロトコルは、現在、X線の電磁放射線によって活性化される放射線増感剤を使用している。X線で活性化される放射線増感剤の例としては、以下:メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール(desmethylmisonidazole)、ピモニダゾール(pimonidazole)、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU1069、SR4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシ尿素、シスプラチンならびにそれらの治療的に有効なアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
癌の光線力学的療法(PDT)は、感作物質の放射線照射アクチベーターとして可視光線を使用する。光線力学的放射線増感剤の例としては、以下:ヘマトポルフィリン誘導体、Photofrin(r)、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、スズエチオポルフィリン(tin etioporphyrin)(SnET2)、フェオボルビド(pheoborbide)−a、バクテリオクロロフィル−a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニンならびにそれらの治療的に有効なアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
別の実施形態において、本抗体は、腫瘍の事前標的化において利用するためのレセプター(そのようなストレプトアビジン)に結合体化され得、ここで、その抗体−レセプター結合体は、患者に投与された後、洗浄剤を使用して循環から未結合の結合体が除去され、次いで、細胞傷害性薬剤(例えば、放射性核種)に結合体化されているリガンド(例えば、アビジン)が投与される。
本発明は、上記の抗体を検出可能に標識された形態でさらに提供する。抗体は、放射性同位体、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジンなど)、酵素的標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光または発光または生物発光の標識(例えば、FITCまたはローダミンなど)、常磁性原子などを使用することによって検出可能に標識され得る。そのような標識を達成するための手順は、当該分野で周知である;例えば、(Sternberger,L.A.ら、J.Histochem.Cytochem.18:315(1970);Bayer,E.A.ら、Meth.Enzym.62:308(1979);Engval,E.ら、Immunol.109:129(1972);Goding,J.W.J.Immunol.Meth.13:215(1976))を参照のこと。
「標識」とは、直接的または間接的に抗体に結合体化される検出可能な化合物または組成物のことをいう。この標識自体は、それ自体で検出可能であり得る(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)か、または、酵素的標識の場合、検出可能な基質化合物または基質組成物の化学的変化を触媒し得る。あるいは、この標識は、そのままで検出可能でなくてもよいが、検出可能な別の薬剤に結合しているエレメント(例えば、エピトープタグまたは結合パートナー対(例えば、ビオチン−アビジン)など)の一方であり得る。従って、本抗体は、その単離を容易にする標識またはタグを含み得、抗体を同定する本発明の方法は、その標識またはタグとの相互作用によって抗体を単離する工程を含む。
例示的な治療的免疫結合体は、細胞傷害性薬剤(例えば、化学療法剤、トキシン(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性なトキシンまたはそれらのフラグメント)または放射性同位体(すなわち、放射性結合体))に結合体化された本明細書中に記載される抗体を含む。融合タンパク質を、以下でさらに詳細に説明する。
免疫結合体の作製は、米国特許第6,306,393号に記載されている。免疫結合体は、治療薬を抗体成分に間接的に結合体化することによって調製され得る。一般的な手法は、Shihら、Int.J.Cancer 41:832−839(1988);Shihら、Int.J.Cancer 46:1101−1106(1990);およびShihら、米国特許第5,057,313号に記載されている。その一般的な方法は、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有していて、複数の薬物、トキシン、キレート剤、ホウ素付加物または他の治療薬が負荷されたキャリアポリマーと、酸化型の炭水化物部を有する抗体成分とを反応させる工程を含む。この反応によって、最初のSchiff塩基(イミン)結合がもたらされ、これにより、第二級アミンに還元されることで安定化されて、最終的な結合体が形成され得る。
そのキャリアポリマーは、好ましくは、アミノデキストランまたは少なくとも50アミノ酸残基のポリペプチドであるが、他の実質的に等価なポリマーキャリアも使用することができる。好ましくは、最終的な免疫結合体は、投与を容易にするためおよび治療における用途に向けて効率的に標的化するために、水溶液(例えば、哺乳動物の血清)に可溶性である。従って、キャリアポリマー上の官能基の可溶化は、最終的な免疫結合体の血清溶解性を増大させる。特に、アミノデキストランが、好ましい。
アミノデキストランキャリアとの免疫結合体(inmmunoconjugate)を調製するためのプロセスは、代表的には、デキストランポリマー、有利には、平均分子量が約10,000〜100,000のデキストランから出発する。そのデキストランを、その炭水化物環の一部の制御性酸化に影響を及ぼす酸化剤と反応させることにより、アルデヒド基が生成される。この酸化は、従来の手順によれば糖分解化学試薬(例えば、NaIO4)を用いて便利に影響を受ける。
次いで、酸化デキストランをポリアミン、好ましくはジアミン、より好ましくは、モノ−またはポリヒドロキシジアミンと反応させる。適当なアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミンまたは他の類似のポリメチレンジアミン、ジエチレントリアミンまたは類似のポリアミン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンまたは他の類似のヒドロキシル化されたジアミンまたはポリアミンなどが挙げられる。デキストランのアルデヒド基に対して過剰のアミンを使用することによって、Schiff塩基基へのアルデヒド官能基の実質的に完全な変換が保証される。
還元剤(例えば、NaBH4、NaBH3CNなど)を使用することによって、生じるSchiff塩基中間体の還元性の安定化が達成される。生じた付加物は、架橋されたデキストランを除去するために従来のサイジングカラムに通すことによって精製され得る。
アミン官能基を導入するためにデキストランを誘導体化する他の従来の方法(例えば、臭化シアンと反応させた後、ジアミンと反応させる方法)もまた使用され得る。
次いで、アミノデキストラン(amninodextran)を、従来の手段によって、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはその水溶性改変体を使用して調製された、負荷される特定の薬物、トキシン、キレート剤、免疫調節剤、ホウ素付加物または他の治療薬の誘導体(好ましくは、カルボキシルで活性化される誘導体)と活性型で反応させることにより、中間体付加物が形成される。
あるいは、ポリペプチドトキシン(例えば、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質またはリシンA鎖など)は、グルタルアルデヒド縮合によって、または、タンパク質上の活性化カルボキシル基とアミノデキストラン上のアミンとの反応によって、アミノデキストランに結合され得る。
放射性金属に対するキレート剤または磁気共鳴増感剤は、当該分野で周知である。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体が、その代表である。これらのキレート剤は、代表的には、そのキレート剤をキャリアに結合し得る基を側鎖上に有する。そのような基としては、例えば、ベンジルイソチオシアネートが挙げられ、それによって、DTPAまたはEDTAは、キャリアのアミン基に結合され得る。あるいは、キレート剤上のカルボキシル基またはアミン基が、活性化されるか、または事前に誘導体化され、次いで、すべての周知の手段によって結合することによって、キャリアに結合され得る。
ホウ素付加物(例えば、カルボラン)は、従来の方法によって抗体成分に結合され得る。例えば、カルボランは、当該分野で周知であるように垂れ下がっている側鎖上のカルボキシル官能基を用いて調製され得る。キャリア、例えば、アミノデキストランへのそのようなカルボランの結合は、カルボランのカルボキシル基の活性化およびキャリア上のアミンとの縮合によって達成されることにより、中間体結合体が生成され得る。次いで、そのような中間体結合体を抗体成分に結合することにより、以下に記載するような治療的に有用な免疫結合体が生成される。
アミノデキストランの代わりにポリペプチドキャリアが使用され得るが、そのポリペプチドキャリアは、その鎖において少なくとも50アミノ酸残基、好ましくは、100〜5000アミノ酸残基を有しているべきである。そのアミノ酸のうちの少なくともいくつかは、リシン残基またはグルタミン酸残基もしくはアスパラギン酸残基であるべきである。リシン残基の垂れ下がったアミンならびにグルタミンおよびアスパラギン酸の垂れ下がったカルボキシレートは、薬物、トキシン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素付加物または他の治療薬を結合するために便利である。適当なポリペプチドキャリアの例としては、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらの共重合体およびこれらのアミノ酸の混合ポリマー、ならびに、生じる負荷キャリアおよび免疫結合体に対して望ましい溶解特性を付与するその他のもの、例えば、セリンが挙げられる。
中間体結合体と抗体成分との結合体化は、抗体成分の炭水化物部を酸化し、そして、生じたアルデヒド(およびケトン)カルボニルを、薬物、トキシン、キレート剤、免疫調節剤、ホウ素付加物または他の治療薬を負荷された後のキャリア上に残存しているアミン基と反応させることによって達成される。あるいは、中間体結合体は、治療薬を負荷された後の中間体結合体に導入されたアミン基を介して、酸化された抗体成分に結合され得る。酸化は、化学的に、例えば、NaIO4もしくは他の糖分解性試薬を用いて、または酵素的に、例えば、ノイラミニダーゼおよびガラクトースオキシダーゼを用いて、都合よく達成される。アミノデキストランキャリアの場合、アミノデキストランのアミンのすべてが、治療薬を負荷するために代表的に使用されるとは限らない。アミノデキストランの残存アミンが、酸化された抗体成分と縮合することにより、Schiff塩基付加物が形成され、次いで、通常、ホウ水素化物還元剤を用いて、そのSchiff塩基付加物が還元的に安定化される。
類似の手順を使用することによって、本発明の他の免疫結合体が作製される。負荷されるポリペプチドキャリアは、好ましくは、抗体成分の酸化型の炭水化物部との縮合に対して残存している遊離リシン残基を有する。ポリペプチドキャリア上のカルボキシルは、必要であれば、例えば、DCCを用いる活性化および過剰ジアミンとの反応によってアミンに変換され得る。
最終的な免疫結合体は、従来の手法(例えば、Sephacryl S−300におけるサイジングクロマトグラフィまたは1つ以上のCD84Hyエピトープを使用するアフィニティークロマトグラフィ)を使用して精製される。
あるいは、免疫結合体は、抗体成分を治療薬に直接結合体化することによって調製され得る。一般的な手順は、治療薬を酸化型抗体成分に直接結合することを除いて、結合体化の間接的な方法に類似したものである。
他の治療薬が本明細書中に記載されるキレート剤と置き換えられ得ることが認識されるだろう。当業者は、過度の実験なしに結合体化スキームを工夫することができる。
さらなる説明として、治療薬を、ジスルフィド結合の形成を介して還元型抗体成分のヒンジ領域に結合することができる。例えば、破傷風トキソイドペプチドは、そのペプチドを抗体成分に結合するために使用される単一のシステイン残基を用いて構築され得る。代替として、そのようなペプチドは、ヘテロ二官能性架橋剤(例えば、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))を使用して抗体成分に結合され得る。Yuら、Int.J.Cancer56:244(1994)。そのような結合体化のための一般的な手法は、当該分野で周知である。例えば、Wong,Chemistry Of Protein Conjugation and Cross−Linking(CRC Press 1991);Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Birchら(eds.)中のUpeslacisら、“Modification of Antibodies by Chemical Methods”,187−230頁(Wiley−Liss,Inc.1995);Monoclonal Antibodies:Production,Enineering and Clinical Application,Ritterら(eds.)中のPrice,“Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies”,60−84頁(Cambridge University Press 1995)を参照のこと。
本抗体と細胞傷害性薬剤との結合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤(例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT))、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCL)、活性なエステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド(glutareldehyde))、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載されているように調製され得る。炭素−14で標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、本抗体との放射性核種の結合体に対する例示的なキレート剤である(例えば、WO94/11026を参照のこと)。
上に記載したように、抗体のFc領域における炭水化物部分は、治療薬を結合体化するために使用され得る。しかしながら、抗体フラグメントが免疫結合体の抗体成分として使用される場合、Fc領域は、存在しない場合がある。それにもかかわらず、炭水化物部分を抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域に導入することが可能である。例えば、Leungら、J.Immunol.154:5919(1995);Hansenら、米国特許第5,443,953号を参照のこと。次いで、その操作された炭水化物部分を使用して、治療薬を結合する。
さらに、当業者は、結合体化の方法には数多くの変法があり得ることを認識する。例えば、血液、リンパまたは他の細胞外流体中において、インタクトな抗体またはその抗原結合フラグメントの半減期を延長するために、炭水化物部分を使用して、ポリエチレングリコールを結合することができる。さらに、治療薬を炭水化物部分および遊離スルフヒドリル基に結合することによって「二価の免疫結合体」を構築することが可能である。そのような遊離スルフヒドリル基は、抗体成分のヒンジ領域に配置されている場合がある。
抗体融合タンパク質
本発明は、1つ以上の抗体部分および別のポリペプチド(例えば、免疫調節剤またはトキシン部分)を含む融合タンパク質の使用を企図する。抗体融合タンパク質を作製する方法は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第6,306,393号を参照のこと。インターロイキン−2部分を含んでいる抗体融合タンパク質は、Boletiら、Ann.Oncol.6:945(1995)、Nicoletら、Cancer Gene Ther.2:161(1995)、Beckerら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 93:7826(1996)、Hankら、Clin.Cancer Res.2:1951(1996)およびHuら、Cancer Res.56:4998(1996)に記載されている。さらに、Yangら、Hum.Antibodies Hybridomas 6:129(1995)では、F(ab’)2フラグメントおよび腫瘍壊死因子アルファ部分を含んでいる融合タンパク質が記載されている。
組換え分子が1つ以上の抗体成分およびトキシンまたは化学療法剤を含んでいる抗体−トキシン融合タンパク質を作製する方法もまた、当業者に公知である。例えば、抗体−Pseudomonas外毒素A融合タンパク質が、Chaudharyら、Nature 339:394(1989)、Brinkmannら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 88:8616(1991)、Batraら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:5867(1992)、Friedmanら、J.Immunol.150:3054(1993)、Welsら、Int.J.Can.60:137(1995)、Fominayaら、J.Biol.Chem.271:10560(1996)、Kuanら、Biochemistry 35:2872(1996)およびSchmidtら、Int.J.Can.65:538(1996)によって報告されている。ジフテリアトキシン部分を含んでいる抗体−トキシン融合タンパク質が、Kreitmanら、Leukemia 7:553(1993)、Nichollsら、J.Biol.Chem.268:5302(1993)、Thompsonら、J.Biol.Chem.270:28037(1995)およびValleraら、Blood 88:2342(1996)によって報告されている。Deonarainら、Tumor Targeting 1:177(1995)では、RNアーゼ部分を有する抗体−トキシン融合タンパク質が報告されたのに対し、Linardouら、Cell Biophys.24−25:243(1994)では、DNアーゼI成分を含んでいる抗体−トキシン融合タンパク質が作製された。Wangら、Abstracts of the 209th ACS National Meeting,Anaheim,Calif,Apr.2−6,1995,Part 1,BIOT005の抗体−トキシン融合タンパク質では、トキシン部分としてゲロニン(gelonin)が使用された。さらなる例として、Dohlstenら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 91:8945(1994)では、Staphylococcalエンテロトキシン−Aを含んでいる抗体−トキシン融合タンパク質が報告された。
そのような結合体の調製において適切に使用されるトキシンの代表例は、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNアーゼI、Staphylococcalエンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリン(diphtherin)トキシン、Pseudomonas外毒素およびPseudomonasエンドトキシンである。例えば、Pastanら、Cell 47:641(1986)およびGoldenberg,CA−A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照のこと。他の適当なトキシンが、当業者に公知である。
本発明の抗体はまた、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照のこと)を活性な抗癌薬物に変換するプロドラッグ活性化酵素に本抗体を結合体化することによってADEPTにおいて使用され得る。例えば、WO88/07378および米国特許第4,975,278号を参照のこと。
ADEPTに有用な免疫結合体の酵素成分としては、プロドラッグをそのより活性な細胞傷害型に変換するような方法で、プロドラッグに対して作用することができる任意の酵素が挙げられる。
本発明の方法において有用な酵素としては、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;無毒性の5−フルオロシトシンを抗癌薬物である5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なプロテアーゼ(例えば、セラチア属プロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL));D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用な炭水化物切断酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ);β−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なβ−ラクタマーゼ;およびそれぞれフェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基でアミン窒素において誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なペニシリンアミダーゼ(例えば、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、当該分野でアブザイムとしても知られている酵素活性を有する抗体を使用して、本発明のプロドラッグを活性な遊離薬物に変換することができる(例えば、Massey,Nature 328:457−458(1987)を参照のこと)。抗体−アブザイム結合体は、腫瘍細胞集団にアブザイムを送達するために本明細書中に記載されるように調製され得る。
本発明の酵素は、当該分野で周知の手法(例えば、上で述べたヘテロ二官能性架橋試薬の使用)によって本抗体に共有結合され得る。あるいは、本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部分に連結された本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質は、当該分野で周知の組換えDNA手法を使用して構築され得る(例えば、Neubergerら、Nature 312:604−608(1984)を参照のこと)。
非治療的な用途
本発明の抗体は、標的抗原に対する親和性精製剤として使用され得るか、または、例えば特定の細胞、組織または血清中のその発現を検出する、標的抗原に対する診断アッセイにおいて使用され得る。本抗体はまた、インビボ診断アッセイに使用され得る。一般に、これらの目的のために、本抗体は、免疫シンチグラフィ(immunoscintiography)を使用して腫瘍を突き止めることができるように放射性核種(例えば、111In、99Tc、14C、131I、125I、3H、32Pまたは35S)で標識される。
本発明の抗体は、任意の公知のアッセイ方法(例えば、競合結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイ(例えばELISA)ならびに免疫沈降アッセイ)において使用され得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)。また、本抗体を免疫組織化学に使用することによって、当該分野で公知の方法を使用して腫瘍サンプルが標識され得る。
都合上、本発明の抗体は、キット、すなわち、診断アッセイを行うための指示を備え、所定の量の試薬が包装された組み合わせ物として提供され得る。本抗体が、酵素で標識されている場合、そのキットは、その酵素に必要な基質および補因子を備える(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する基質前駆体)。さらに、他の添加物(例えば、安定剤、緩衝剤(例えば、ブロッキング緩衝剤または溶解緩衝剤)など)を備えていてもよい。様々な試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬溶液中での濃度を提供するために広く変化し得る。特に、試薬は、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含んだ乾燥粉末、通常、凍結乾燥粉末として提供され得る。
本発明は、以下の実施例によって説明され、これらの実施例は、決して限定する意図ではない。
(実施例1)
EPHB3細胞外ドメイン(ECD)の調製
EphB3のECDの組換え発現に向けて、まず、発現ベクターに組み込むための調製において、タグを組み込むため、およびコード領域の末端を操作するためにネステッド(nested)PCRアプローチを試みた。使用したプライマーは、以下のとおりである(すべて5’から3’への配列として記載する):
製造者の推奨に従ってPfuUltra(商標)Hotstart PCR Master Mix(Stratagene)を使用して、PCR増幅を行った。増幅に使用した鋳型は、pDONOR201内にクローニングされたEphB3 ECDフラグメントであった。トポイソメラーゼクローニングストラテジーを使用して、ECD PCR産物をpBlueBac4.5GWにクローニングした。最終的に選択されたクローンを二本鎖配列決定によって確認した。各クローンを代表する10〜20μgのDNAを昆虫トランスフェクションのために調製した。
その組換え構築物を使用して、以下のとおり昆虫細胞においてEphB3 ECDを発現させた。EphB3の細胞外ドメインをコードするプラスミドDNAとSapphire(商標)ゲノムAutographa californica DNAとの同時トランスフェクションのプラーク精製によって、バキュロウイルスを単離した。組換えウイルスを増幅し、それを使用して、10L(ワーキングボリューム)ウェーブバイオリアクター(wave bioreactor)において1〜1.5×106細胞/mlの範囲の濃度、2〜10の感染効率(moi)範囲でTn5昆虫細胞を感染させた。感染の48時間後、細胞および上清を回収して遠心し、そして、その上清を濃縮用に調製した。上清を0.45μm中空糸カートリッジにおいて浄化した後、タンジェンシャルフロー(tangential flow)10kDa MWカットオフ膜を用いて8×濃縮した。タンパク質精製の前に、その上清を、1Lの0.2μmポア真空フラスコを用いてフィルター滅菌した。
EphB3 ECDを以下のとおり精製した。EphB3 ECDを含んでいる昆虫細胞培養上清を、緩衝液A(PBS/0.35M NaCl/5mMイミダゾール)で平衡化した25mLのNi Chelatingカラム(G.E.resinカタログ番号17−5318−03)に対して13ml/分の流速で通過させた。EphB3 ECDを含んでいる結合したタンパク質を、緩衝液Aから緩衝液B(PBS/0.35M NaCl/250mMイミダゾール)の30カラム容積勾配を使用して溶出した。分画をSDS−PAGEで調べ、所望の純度でEphB3 ECDを含んでいるものを貯蔵した。その貯蔵物を緩衝液Aに対して透析し、2×5mLのHisTrap(G.E.)カラムに通した。そのHisTrapカラムを最初のNi Chelatingカラムと同じ様式で溶出した。分画をSDS−PAGEで調べ、所望の純度でEphB3 ECDタンパク質を含んでいるものを貯蔵した。最終的な貯蔵物をPBS/0.1Mアルギニンに対して透析した。その最終的な材料を、N末端配列決定ならびに還元および非還元SDS−PAGE(クーマシー染色およびWestern解析)によって同定および純度について解析した。
(実施例2)
マウスハイブリドーマによって分泌される標的特異的抗体の同定
ハイブリドーマ作製に使用した免疫原は、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系を使用して作製されたヒトEphB3の細胞外ドメイン(ECD)(配列番号2のアミノ酸37〜558に対応する)の組換え型であった。免疫のために、ECDを等体積のアジュバントと混合し、その混合物を後肢の足蹠の腹側表面に皮下注射した。様々な免疫スケジュールに従って、3〜14日ごとにマウスに免疫原を注射することによって、強力な免疫応答をもたらした。次いで、良好な免疫応答を示すマウスを屠殺し、リンパ節を回収し、そのリンパ節中のB細胞を回収した。次いで、当該分野で周知の手法に従って、そのB細胞をミエローマ細胞と融合することによって、ハイブリドーマを作製し、そのハイブリドーマをELISAおよびFACSアッセイにおいてEphB3タンパク質を認識する抗体の産生についてスクリーニングした。
(実施例3)
ファージディスプレイによる標的特異的抗体の同定
抗体のスクリーニング
アゴニスト活性を有する抗EphB3抗体のパネルを単離するために、EphB3の細胞外(ecxtracellular)ドメイン(ECD)で過免疫されたマウスから作製されたOmniclonalファージディスプレイライブラリー(Buechlerら、特許番号6057098)をスクリーニングした。
米国特許第6,057,098号におけるプロトコルに従ってそのOmniclonalライブラリーから得られたシングルコロニーをELISAアッセイにおいて結合活性についてスクリーニングした。簡潔には、ミクロ培養物をOD600=0.6まで生育し、その時点で、0.2%w/vのアラビノースを加え、その後、30℃の振盪恒温器において一晩培養することによって可溶性抗体フラグメントの発現を誘導した。細菌を遠沈し、ペリプラズム抽出物を調製し、それを使用して、マイクロプレートの製造者によって提供される標準的なELISAプロトコルに従って、Nunc MaxiSorp(商標)マイクロプレート上に固定化されたEphB3−ECDに対する抗体結合活性を検出した。蛍光励起細胞分取(FACS)解析を使用して、CHO−K1−EphB3発現細胞への結合を測定することによって抗体結合も評価した。
ファージディスプレイによって同定された候補抗体の完全IgGへの変換
最初のスクリーニング由来のリード候補結合物を、抗体重鎖および軽鎖定常領域を含む抗体に変換するために、結合物の重鎖と軽鎖の両方の可変領域に対するコード配列を、カッパ(κ)およびガンマ−1(γ1)定常領域遺伝子をコードする専売哺乳動物発現ベクター(WO2004/033693)内にクローニングした。
Handaら(2004 American Society of Cancer Biology Poster #1937)に記載されているように、抗体を293E細胞において一過性に発現させた。培養の6日目に、トランスフェクトされた細胞の上清を回収し、製造者のプロトコルに従ってプロテインAセファロース(GE HEalthcare)を使用してIgGを精製した。
(実施例4)
選択された抗EPHB3抗体の親和性決定
プロトコル1:
プロテインAを、アミン結合を介してCM5バイオセンサーチップ上に固定化した。0.75μg/mlの抗EphB3抗体を、HBS−EP緩衝液(0.1M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%Surfactant P20)中で1:100希釈し、その改変されたバイオセンサー表面上に1.5分間捕捉した。組換え可溶性EphB3 ECD(細胞外ドメイン)を、HBS−EP緩衝液中の様々な濃度で上記バイオセンサー表面に対して流した。1:1相互作用モデル/グローバルフィットを用いた、ScrubberとBiaEvaluationソフトウェアとの組み合わせを使用して速度定数および親和定数を決定した。
プロトコル2:
ラット抗マウスFc(RamFc)を、アミン結合を介してCM5バイオセンサーチップ上に固定化した。0.75μg/mlの抗EphB3抗体を、HBS−EP緩衝液中で1:200希釈し、その改変されたバイオセンサー表面上に1.5分間捕捉した。組換え可溶性EphB3 ECDを、HBS−EP緩衝液中の様々な濃度で上記バイオセンサー表面に対して流した。1:1相互作用モデル/グローバルフィットを用いた、ScrubberとBiaEvaluationソフトウェアとの組み合わせを使用して速度定数および親和定数を決定した。
親和性実験の結果を下記の表3に示す。
*XHA.05.111およびXHA.05.885は、RamFc形式で解析した。
(実施例5)
EPHB3抗体のエピトープのビンニング(BINNING)
表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用した一連の競合アッセイストラテジーによって、抗EphB3抗体をエピトープビン(epitope bin)に割り当てた。このアプローチでは、1つの抗体を、直接または捕捉剤を介してセンサーチップ上に固定化し、固定化された抗体の上にリガンド(EphB3 ECD)を注入して、そのリガンドを結合させた。続いて第2試験抗体を注入し、第1抗体によって捕捉されたリガンドと結合する能力を測定した。それらの抗体が、リガンド上の空間的に分断されたエピトープに結合する場合、第2抗体は、リガンド/第1抗体複合体にも結合することができるはずである。2つの異なる抗体が同じリガンド分子に同時に結合する能力は、対形成と呼ばれる。
1.第1の一連の実験では、すべてのフローセル上の高密度のウサギ抗マウスFc特異的抗体(RAM−Fc)でコーティングされたCM5センサーチップを利用した。
a.流動緩衝液は、HBS−EP(Biacore(登録商標),Inc.)であり、温度は、25℃に設定し、流速は、10μL/分であった。
b.1〜3分間、200〜1000RUの捕捉レベルをもたらす1〜10μg/mLの希釈物を注入することによって、異なる抗体を各フローセル上に捕捉した。
c.次いで、HBS−EP中の100μg/mLのマウスIgGを30分間注入することによって、その表面をブロッキングした。
d.対形成について試験される抗体を1μg/mLで注入することによって、そのチップが効率的にブロッキングされていることを確認し、その抗体のバックグラウンド結合レベルを測定した。
e.リガンドを2〜4分間、2〜10μg/mLで注入した。
f.上の工程1dと同様に、対形成される抗体を再度注入した。その抗体がこの注入中に結合した場合、これらの2抗体は、対を形成し、ゆえに、別個のエピトープビンに入れられる。第2抗体が結合しなかった場合、その第2抗体は、結合について第1抗体と競合し、それらは、同じエピトープビンまたは重複したエピトープビンに入れられる。
g.自己対形成(self−pairing)についてのコントロールとして、捕捉される抗体の各々を、それ自体での対形成について試験した。
2.いったん、いくつかのエピトープビンまたは非対形成抗体の特有のセットが明らかになると、それらの抗体を使用して、それらの抗体をさらに調べた。一度に4つの抗体を使用して、一連の様式で抗体を調べた。4つのフローセルの各々の上に、異なるエピトープビン由来のハイブリドーマ抗体を捕捉した後、一度に4つすべてに対して上記の対形成プロトコルを行うことによって、より多くのサンプルセットを調べた。
3.RAM−Fc表面はヒトFabを捕捉しないので、100μg/mLのマウスIgGを使用するブロッキング工程を使用しないという変法を用いて同様にこのプロセスを使用してヒト抗体Fabフラグメントを評価した。
競合実験の結果として、表4に示されるエピトープビンが定義された。最も高い結合親和性(上の実施例4を参照のこと)を有する抗体のすべてが、BIN3に入っている。
(実施例6)
フローサイトメトリーベースのアッセイを使用するアゴニストEPHB3抗体の選択ならびにEPHB3のリン酸化および分解の検出
EphB3に対して標的化されたアゴニスト抗体を同定するために、レセプター活性化の下流の効果をモニターする2つのフローサイトメトリー(FACS)ベースのアッセイを開発した:(1)シグナル伝達経路の活性化の基準としての全細胞ホスホ−チロシン(pY);および(2)活性化されたレセプターのダウンレギュレーションを測定するためのレセプター内部移行。
全細胞チロシンリン酸化
全細胞pYアッセイでは、懸濁液適合型で、安定的にトランスフェクトされ、高レベルのレセプターを発現するCHO細胞株を使用した。このアッセイを使用して、ハイブリドーマ上清、精製されたハイブリドーマ由来抗体および精製された完全IgGの再編成されたファージディスプレイ由来抗体をスクリーニングした。
EphB3を過剰発現する懸濁液適合型CHO−K1細胞を2×105細胞/ウェルで丸底96ウェルプレートに播種した。次いで、EphB3に対する抗体を各サンプルウェル中で直接1:10希釈した。サンプルを37℃で40〜45分間インキュベートした。インキュベートした後、2%ホルムアルデヒドを用い、室温において20分間、細胞を固定した。次いで、細胞を透過処理緩衝液で2回洗浄し、そしてPE結合体化マウス抗ホスホチロシン抗体(PY20)を含む透過処理緩衝液に再懸濁した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、透過処理緩衝液で2回洗浄し、そしてフローサイトメトリーで解析した。
試験された抗体の約24%が、このpYアッセイにおいてアゴニスト活性を示した。次いで、免疫沈降に続いてWestern解析(以下を参照のこと)を、抗体で処理した細胞(EphB3を過剰発現するCHO細胞株および腫瘍細胞株)由来の溶解産物において行い、そのデータから、pYを誘導する抗体が、EphB3のリン酸化を引き起こしたことを確認した。
細胞表面上のEphB3の定常状態レベルを測定するためのアッセイ
全細胞pYアッセイを使用して同定された上位候補を、細胞表面EphB3のダウンレギュレーションおよび分解についてさらに特徴付けした。まず、FACSおよびBiacore(登録商標)を使用してエピトープ競合研究を行うことにより、その上位pY誘導抗体に対して最小の競合性を示した強力なFACS陽性「検出」抗体を同定した。これらの抗体を使用して、pY誘導抗体添加の2〜72時間後の細胞表面のEphB3レベルをモニターするFACSベースのアッセイを開発した。
懸濁液適合型SW620細胞を10μg/mLの抗EphB3抗体または組換えリガンドタンパク質とともに2〜72時間培養した。各時点において、ハイブリドーマ由来マウス抗標的検出抗体(キメラヒト抗体で処理された細胞用)またはキメラヒト抗標的検出抗体(ハイブリドーマ由来抗体で処理された細胞用)のいずれかを使用するフローサイトメトリー解析によって、EphB3の細胞表面レベルを測定した。EphB3結合について処理抗体と最小の競合性を示す検出抗体を選択するためにスクリーニングを行ったが、ほとんどの場合において、干渉は低レベルであった(10〜20%)。検出抗体で染色する前に新しいSW620細胞を処理抗体で少しの間プレインキュベートするという条件を使用して、各処理抗体について最大検出抗体結合を決定した。
ある抗体のサブセットは、2時間で細胞表面レセプターの劇的なダウンレギュレーションを示し、それは、72時間を通じて維持された(例えば、図1を参照のこと)。
標的のリン酸化を検出するためのIP−ウエスタン:
EphB3を発現しているヒト細胞株をコンフルエント近くまで(subconfluency)生育し、無血清培地中で30分間インキュベートし、次いで、37℃において30分間、様々な濃度(0.2〜10μg/ml)のリガンドまたはアゴニスト抗体で処理した。細胞をPBSで洗浄し、プロテアーゼインヒビター(Roche Complete Mini,製造者の指示に従って使用した無EDTAプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤)およびホスファターゼインヒビター(Sigmaホスファターゼインヒビターカクテル1および2,製造者の推奨に従って使用した)の存在下において1%Triton X−100および0.1%SDSを含むTris緩衝食塩水に溶解した。抗EphB3特異的抗体を使用して、約800μgの浄化された溶解産物から標的を免疫沈降し、SDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロースに転写し、そして抗ホスホチロシン抗体(4G10,Upstate)を用いるウエスタンブロット解析に供した。そのブロットをはぎ取り(stripped)、抗EphB3特異的抗体で再度探索することにより、タンパク質ローディング(protein loading)を決定した。図2に示されるように、抗EphB3 mAbは、SW620細胞においてEphB3のリン酸化を引き起こす。図3に示されるように、抗EphB3抗体は、低(0.2μg/ml)抗体濃度においてEphB3のリン酸化を誘導する。
標的の分解を確認するウエスタンブロット:
EphB3を発現しているヒト細胞株を未処理のままにしておくか、または様々な時間(2〜72時間)にわたって完全培地中で10μg/mlのリガンドもしくはアゴニストAbで処理した。実験の開始時にそのリガンドまたは抗体を1回投与した。選択された時点において、細胞をPBSで洗浄し、プロテアーゼインヒビター(Roche Complete Mini,製造者の指示に従って使用した無EDTAプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤)およびホスファターゼインヒビター(Sigmaホスファターゼインヒビターカクテル1および2,製造者の指示に従って使用した)の存在下において1%Triton X−100および0.1%SDSを含むTris緩衝食塩水に溶解した。4℃において10分間、14,000rpmで遠心分離することによって浄化した後、40μgの溶解産物をSDS−PAGEを用いて分画し、ニトロセルロースに転写し、そして抗EphB3特異的抗体を用いるウエスタンブロット解析に供した。β−チューブリンをローディングコントロールとして可視化した。増強された化学発光およびオートラジオグラフィによって標的を検出した。図4に示されるように、抗EphB3 mAbは、EphB3の内部移行だけでなく、分解を誘導する。図5に示されるように、mAbのサブセットは、少なくとも72時間、EphB3を減少した。最終的に、図6に示されるように、複数の細胞株が、EphB3をリン酸化することによってアゴニストmAbに応答する。
上述のアッセイに関する選択された抗体の概要を下記の表5に示す:
(実施例7)
マウス抗体のヒト化
この実施例では、マウス抗EphB3抗体のヒト化についての手順を示す。
ヒト化されたXPA.04.001、XPA.04.013、XPA.04.018、XPA.04.048の軽鎖および重鎖に対する遺伝子の設計
マウス抗体XPA.04.001、XPA.04.013、XPA.04.018およびXPA.04.048に対する軽鎖および重鎖の可変領域アミノ酸配列を図7に示す。National Biomedical Foundation Protein Identification Resourceまたは類似のデータベースを使用して同定されたヒト抗体の配列を使用して、ヒト化抗体のフレームワークが提供される。ヒト化される重鎖の配列を選択するために、マウス重鎖配列をヒト抗体重鎖の配列とアラインメントする。その位置が、以下に定義される4つのカテゴリーのいずれか1つに入らない限り、その各位置においてヒト抗体アミノ酸がヒト化配列のために選択され、入る場合は、マウスアミノ酸が選択される:
(1)その位置が、Kabat,J.Immunol.,125,961−969(1980)によって定義されるような相補性決定領域(CDR)に入る;
(2)ヒト抗体のアミノ酸が、その位置においてヒト重鎖にとって稀なアミノ酸であるのに対し、マウスのアミノ酸が、その位置においてヒト重鎖にとって通常のアミノ酸である;
(3)その位置が、マウス重鎖のアミノ酸配列においてCDRに直接隣接している;または
(4)そのアミノ酸が抗原結合領域に物理的に近いとマウス抗体の3次元モデリングが示唆している。
ヒト化軽鎖の配列を選択するために、マウスの軽鎖配列をヒト抗体軽鎖の配列とアラインメントする。その位置が、上に記載され、以下にもう一度記載されるカテゴリーのうちの1つに再び入らない限り、ヒト化配列に対する各位置においてヒト抗体アミノ酸が選択される:
(1)CDR;
(2)ヒト抗体よりもマウスアミノ酸のほうが代表的である;
(3)CDRに隣接している;または
(4)結合領域に3次元的に近接している可能性がある。
重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の実際のヌクレオチド配列は、以下のとおり選択される:
(1)それらのヌクレオチド配列は、上に記載したように選択されるアミノ酸配列をコードする;
(2)これらのコード配列の5’であるヌクレオチド配列は、リーダー(シグナル)配列をコードする。これらのリーダー配列は、抗体の代表として選択した;
(3)それらのコード配列の3’であるヌクレオチド配列は、マウス配列の一部であるマウス軽鎖J5セグメントおよびマウス重鎖J2セグメントに続く配列である。これらの配列は、スプライスドナーシグナルを含むので、含められる;および
(4)XbaI部位での切断およびベクターのXbaI部位へのクローニングを可能にするXbaI部位が、この配列の各末端に存在する。
ヒト化軽鎖遺伝子およびヒト化重鎖遺伝子の構築
重鎖を合成するために、Applied Biosystems 380B DNA合成装置を使用して4つのオリゴヌクレオチドを合成する。これらのオリゴヌクレオチドのうちの2つは、重鎖の各鎖の一部であり、各オリゴヌクレオチドは、アニーリングを可能にするために次のオリゴヌクレオチドと約20ヌクレオチド重複している。それらのオリゴヌクレオチドは、併せると、ヒト化重鎖可変領域全体に及び、各末端にXbaI部位での切断を可能にする余分な数ヌクレオチドを有する。それらのオリゴヌクレオチドをポリアクリルアミドゲルから精製する。
標準的な手順(Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))によってATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼを使用して、各オリゴヌクレオチドをリン酸化する。そのリン酸化されたオリゴヌクレオチドをアニーリングするために、それらを各々約3.75μMの濃度で40μlのTA(33mM Tris酢酸塩,pH7.9、66mM酢酸カリウム、10mM酢酸マグネシウム)中に共に懸濁し、4分間95℃に加熱し、4℃までゆっくり冷却する。各オリゴヌクレオチドの逆鎖を合成することによって、これらのオリゴヌクレオチドから完全な遺伝子を合成するために、以下の成分を最終体積100μlに加える:
10μl アニーリングしたオリゴヌクレオチド
0.16mM 各デオキシリボヌクレオチド
0.5mM ATP
0.5mM DTT
100μg/ml BSA
3.5μg/ml T4 g43タンパク質(DNAポリメラーゼ)
25μg/ml T4 g44/62タンパク質(ポリメラーゼアクセサリータンパク質)
25μg/ml 45タンパク質(ポリメラーゼアクセサリータンパク質)
この混合物を37℃で30分間インキュベートする。次いで、10uのT4 DNAリガーゼを加え、37℃でのインキュベートを30分間再開する。その反応物を70℃で15分間インキュベートすることによって、上記のポリメラーゼおよびリガーゼを不活性化する。その遺伝子をXbaIで消化するために、200μg/mlのBSAおよび1mMのDTTを含む50μlの2×TA、43μlの水および5μl中の50uのXbaIをその反応物に加える。その反応物を37℃で3時間インキュベートし、次いで、ゲルにおいて精製する。そのXbaIフラグメントをゲルから精製し、そして標準的な方法によってプラスミドpUC19のXbaI部位にクローニングする。標準的な手法を使用してプラスミドを精製し、ジデオキシ法を使用して配列決定する。
ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖を発現するプラスミドの構築は、軽鎖および重鎖のXbaIフラグメントを、それが挿入されていたpUC19プラスミドから単離し、次いで、それを、適切な宿主細胞にトランスフェクトされたときに高レベルの完全な重鎖を発現する適切な発現ベクターのXbaI部位に挿入することによって達成される。
ヒト化抗体の合成および親和性
上記発現ベクターをマウスSp2/0細胞にトランスフェクトし、標準的な方法によって、発現ベクターによって付与された選択可能なマーカーに基づいて、そのプラスミドを組み込んでいる細胞を選択する。これらの細胞が、EphB3に結合する抗体を分泌したことを確認するために、それらの細胞からの上清を、EphB3を発現することが知られている細胞とともにインキュベートする。洗浄後、それらの細胞をフルオレセイン結合体化ヤギ抗ヒト抗体とともにインキュベートし、そして洗浄し、FACSCANサイトフルオロメーターにおいて蛍光について解析する。
次の実験に向けて、上記ヒト化抗体を産生する細胞をマウスに注射し、得られる腹水を回収する。標準的な手法に従ってAffigel−10支持体(Bio−Rad Laboratories,Inc.,Richmond,Calif.)上に調製されたヤギ抗ヒト免疫グロブリン抗体のアフィニティーカラムに通すことによって、その腹水からヒト化抗体を実質的に均一になるまで精製する。元のマウス抗体に対する上記ヒト化抗体の親和性は、当該分野で公知の手法に従って決定される。
(実施例8)
マウス抗体のヒト操作(HUMAN ENGINEERING)
この実施例では、Human Engineered(商標)抗体のクローニングおよび発現ならびにそのような抗体の精製および結合活性についての試験について記載する。
Human Engineered(商標)配列の設計
抗体可変ドメインのHuman Engineering(商標)は、抗体分子の結合活性を維持しつつ免疫原性を低下させるための方法としてStudnickaによって報告された[例えば、Studnickaら、米国特許第5,766,886号;Studnickaら、Protein Engineering 7:805−814(1994)を参照のこと]。この方法によれば、各可変領域アミノ酸を、置換のリスクについて割り当てる。アミノ酸置換は、3つのリスクカテゴリーのうちの1つに区別される:(1)低リスクの変更は、免疫原性を低下させる可能性が最も高く、抗原結合を妨害する可能性が最も低いものである;(2)中程度のリスクの変更は、免疫原性をさらに低下させ得るが、抗原結合またはタンパク質フォールディングに影響を及ぼす可能性がより高いものである;(3)高リスク残基は、結合または抗体構造の維持に重要であり、抗原結合またはタンパク質フォールディングが影響を受けるリスクが最も高いものである。プロリンの3次元構造上の役割に起因して、一般に、その位置が代表的には低リスクの位置であったとしても、そのプロリンにおける改変は少なくとも中程度のリスクの変更であると考えられる。置換的な(Subtitutional)変更が好ましいが、挿入および欠失も可能である。図7は、XPA.04.001、XPA.04.013、XPA.04.018、XPA.04.048の軽鎖および重鎖の各アミノ酸残基に対するリスクの割り当てを示しており、高リスク、中程度のリスクまたは低リスクの変更として分類されている。
マウス抗体の軽鎖および重鎖の可変領域は、この方法を使用してHuman Engineered(商標)(ヒト操作)される。低リスク位置における上記方法に従う改変の候補であるアミノ酸残基を、マウス可変領域のアミノ酸配列とヒト可変領域配列とをアラインメントすることによって同定する。個別のVH配列もしくはVL配列またはヒトコンセンサスVH配列もしくはVL配列をはじめとした任意のヒト可変領域を使用することができる。任意の数の低リスク位置またはすべての低リスク位置におけるアミノ酸残基を変更することができる。
同様に、低リスク位置および中程度のリスク位置のすべてにおいて上記方法に従う改変の候補であるアミノ酸残基を、マウス可変領域のアミノ酸配列とヒト可変領域配列とをアラインメントすることによって同定する。任意の数の低リスク位置もしくは中程度のリスク位置または低リスク位置および中程度のリスク位置のすべてにおけるアミノ酸残基を変更することができる。
永久細胞株開発用の発現ベクターの調製
合成ヌクレオチド合成法を使用して、抗体由来シグナル配列とともに上記の重鎖および軽鎖V領域配列の各々をコードするDNAフラグメントを構築する。上に記載された軽鎖V領域アミノ酸配列の各々をコードするDNAを、ヒトカッパ軽鎖定常領域を含んでいるベクターpMXP10に挿入する。上に記載された重鎖V領域アミノ酸配列の各々をコードするDNAを、ヒトガンマ−1、2、3または4重鎖定常領域を含んでいるベクターpMXP6に挿入する。これらのベクターのすべてが、hCMVプロモーターおよびマウスカッパ軽鎖3’非翻訳領域ならびに選択可能マーカー遺伝子(例えば、それぞれG418耐性またはヒスチジノール耐性トランスフェクタントの選択用のneoまたはまたはhis)を含んでいる。
一過性発現用の発現ベクターの調製
上にも記載された軽鎖遺伝子または重鎖遺伝子のいずれかを含むベクターを一過性トランスフェクション用に構築する。これらのベクターは、neo遺伝子またはhis遺伝子の代わりに、エプスタイン・バーウイルス核抗原を発現するHEK293細胞における複製のためのエプスタイン・バーウイルスoriPを含むことを除いて、持続性トランスフェクションについて上で記載されたものと類似である。
HEK293E細胞におけるヒト操作抗EphB3抗体の一過性発現
それぞれエプスタイン・バーウイルス由来のoriPおよび上に記載された軽鎖遺伝子または重鎖遺伝子を含む別個のベクターを、HEK293E細胞に一過性にトランスフェクトする。一過性にトランスフェクトされた細胞を、最大10日間インキュベートした後、その上清を回収し、プロテインAクロマトグラフィを使用して抗体を精製する。
持続性にトランスフェクトされたCHO−K1細胞の開発
各々1コピーの軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子を共に含む上に記載されたベクターをEx−Cell302適合型CHO−K1細胞にトランスフェクトする。代表的には、Ex−Cell302培地中での懸濁液増殖に適合しているCHO−K1細胞を、40μgの線形ベクターを用いて電気穿孔する。あるいは、線形DNAを線状ポリエチレンイミン(PEI)と複合体形成して、トランスフェクションに使用することができる。その細胞を、1%FBSおよびG418が補充されたEx−Cell302培地を含んでいる96ウェルプレートにプレーティングする。クローンを96ウェルプレート中でスクリーニングし、そして各トランスフェクションから上位約10%のクローンを、Ex−Cell302培地を含んでいる24ウェルプレートに移す。
7日間および14日間生育した培養物に対して、Ex−Cell302培地中の24ウェルプレートにおいて、産生性試験を行い、その時点で、IgGに対する免疫グロブリンELISAアッセイによって、分泌された抗体のレベルについて培養上清物を試験する。
上位のクローンを、Ex−Cell302培地を含んでいる振盪フラスコに移す。その細胞が、懸濁液増殖に適合したらすぐに、Ex−Cell302培地中のこれらのクローンを用いて振盪フラスコ試験を行う。これらの細胞を、25mlの培地を含んでいる125mlのErlenmeyerフラスコ内で最大10日間生育する。ガス交換するためにインキュベーション期間の少なくとも1日おきにそのフラスコを開け、そしてインキュベーション期間の終わりに、その培養液中の免疫グロブリンポリペプチドのレベルをIgG ELISAによって測定する。2つまたは3つのマルチユニット(multi−unit)転写ベクターを用いて同じ細胞株を複数回連続してトランスフェクションすることにより、免疫グロブリン産生のレベルのさらなる上昇、好ましくは、300μg/mlまたはそれ以上を示すクローンおよび細胞株がもたらされる。
精製
本発明のベクターおよびすべての系統から免疫グロブリンポリペプチドを精製するためのプロセスが、設計され得る。例えば、当該分野で周知の方法によれば、終了後に、細胞を濾過によって除去する。その濾液をプロテインAカラムに充填する(必要であれば複数回)。そのカラムを洗浄し、次いで、発現されて分泌された免疫グロブリンポリペプチドをそのカラムから溶出する。抗体生成物の調製のために、そのプロテインA貯蔵をウイルス不活性化工程として低pH(最短で30分間、最長で1時間、pH3)において行う。次に、吸着性陽イオン交換工程を使用して、さらにその生成物を精製する。吸着性分離カラムからの溶出液をウイルス担持フィルターに通すことによって、存在し得るウイルス粒子のさらなる除去がもたらされる。その生成物が結合しない陰イオン交換カラムに通すことによって、その濾液をさらに精製する。最終的には、膜分離法を介してその生成物を製剤緩衝液に移すことによって精製プロセスが終わる。その貯留物(retentate)を少なくとも1mg/mLのタンパク質濃度に調整し、安定剤を加える。
結合活性
組換えHuman Engineered(商標)抗体のEphB3結合活性を評価する。プロテインAカラムに通過させることによって振盪フラスコ培養上清からタンパク質を精製した後、A280によって濃度決定を行う。他の実施例に記載したように結合アッセイを行う。
(実施例9)
インビボにおけるEPHB3特異的抗体の効果
インビボにおいて腫瘍増殖に対する抗EphB3抗体の効果を試験するために、同所性異種移植片モデルを使用し、このモデルは、乳癌細胞株(例えば、MDA−MB−231またはMDA−MB−435)を雌のSCID−ベージュマウスの乳房脂肪パッドに、または乳房脂肪パッド付近に移植する。その癌細胞(1匹のマウスあたり:50〜100μl中の5×106細胞)を等体積のマトリゲルと混合し、外科的に露出された乳房脂肪パッドに直接注射するか、または乳房脂肪パッドの上の皮下に注射する。そのマウスをケージに戻し、体積が約100〜150mm3に達するまで腫瘍増殖をモニターする。次いで、そのマウスを処置群にランダム化する。
処置は、抗体またはアイソタイプコントロール抗体を1週間に2回投与する腹腔内注射からなる。有効性研究において使用される用量は、0.2〜20mg/kgの範囲である。腫瘍体積を1週間に2〜3回測定し、コントロール処置マウスに対するアゴニスト処置マウスの腫瘍体積の減少パーセントとして有効性を判定する。
本明細書中で参照され、そして/または出願データシート(Application Data Sheet)に列挙されている、上記の米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国の特許、外国の特許出願および非特許刊行物のすべての全体が、本明細書中で参考として援用される。
前述から、本発明の特定の実施形態が、例示目的で本明細書中において記載されてきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な改変が行われ得ることが認識されるだろう。