JP2010287904A - 光半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この発明に係る光半導体装置は第1の端面に高反射率膜が配設された共振器を有し、利得が極大値となる第1の波長を有する半導体レーザと、この半導体レーザの共振器の第2の端面上に配設され、反射率が極小値となる第2の波長が第1の波長より長くかつ反射率が4%以下である低反射率膜とを備え、第1の波長近傍における波長変化に対するミラー損失の変化率が0.13cm−1/nm以上としたもので、周囲温度及び注入電流が変化した場合における半導体レーザ装置の発振波長の変化を小さくすることができる。
【選択図】図60
Description
図53は従来の半導体レーザの波長の出力依存性を示す模式図である。
図53の出力依存性をしめす半導体レーザは、その前端面はSiO2膜、後端面はSiO2膜/アモルファスシリコン(以下、a−Siと表記する)多層膜がそれぞれコーティングされ、前端面の反射率は6%、後端面の反射率は94%となっている(例えば非特許文献1参照)。
この波長変化は、注入電流増加による活性層の温度上昇が引き起こすものであり、温度に換算した場合、AlGaAs系半導体レーザでは約0.2〜0.3nm/℃、InGaAsP系半導体レーザで約0.4〜0.7nm/℃と言われている(例えば、非特許文献2参照)。
さらに、半導体レーザの前端面には、波長λにたいして厚さがλ/4のSiO2膜を設けたのみなので、端面の反射率は6%程度で、1%以下の低反射率ではない。
また、従来の半導体レーザの無反射膜の構成を示す記載がある。(例えば特許文献2、非特許文献3参照)
あるいはコーティング膜のトータル膜厚が所望の波長λ0の1/4以下である場合には、1%以下の低反射率のとなる波長λ0近傍の波長領域幅が100nmを越えるようにすることが出来るが、トータル膜厚が薄いために放熱が悪く端面劣化の原因になる場合があった。
また所望の波長λ0で無反射になるコーティング膜を形成し、放熱をよくするために所望の波長λ0の1/4以上の厚さにすると、波長に対する反射率依存性が急峻になるなどの問題があった。
図54において、200は従来の半導体レーザで、202は実効屈折率がnpの半導体レーザ素子、204は屈折率がn01、膜厚がd01の第1層膜で半導体レーザ202の端面に形成されている。206は屈折率がn02、膜厚がd02の第2層膜で、第1層膜204の表面に形成されている。208は屈折率がn03、膜厚がd03の第3層膜で、第2層膜206の表面に形成されている。n0は第3層膜208の表面が接している外界の屈折率である。
図55において、曲線a、及び曲線bは、半導体レーザ素子202の実効屈折率がnc=3.2で、波長λ0=1.3μm近傍における無反射膜の反射率の波長依存性を示している。
曲線aは第1層膜204及び第3層膜208がAl2O3により構成されその屈折率がn01=n03=1.6、第2層膜206がアモルファスシリコン(a−Si)で形成されその屈折率が=3.2となり、それぞれの膜厚がd01=d03=90.23nm、d02=8.25nmとした場合の反射率である。
半導体レーザ202の実効屈折率がnc=3.2とすると、nf=(nc×n0)1/2=1.78885である。波長λ0=1.3μmとした場合、λ0/4は約325nmとなる。
曲線aの場合の3層膜のトータル膜厚(n01・d01+n02・d02+n03・d03)が314.5nmとなり、λ0/4とほぼ等しくなる。曲線aの場合、反射率が1%以下の低反射率の範囲が265nmと広くなるが、厚さが必ずしも十分厚くとれないので放熱が悪く半導体レーザ素子202の端面劣化の原因になる場合がある。
また曲線bでは、熱伝導をよくするためにトータル膜厚が約927nmと厚くすることができるが、反射率が1%以下の低反射率の範囲が55nmと極端に狭くなる。
例えば特許第3014208号の3層膜による無反射コーティング膜があり、この3層膜による無反射コーティング膜は、各コーティング膜の屈折率をそれぞれn01、n02、n03、各コーティング膜の膜厚をそれぞれ、d01、d02、d03、としたときに、トータル膜厚(n01・d01+n02・d02+n03・d03)を所望の波長λ0の1/4の整数倍に構成すれば、特性行列が理想的単層膜と等しくなるというものである。
また2層膜において、1層目の膜厚n01・d01、1層目の膜厚n02・d02をそれぞれ所望の波長λ0の1/4とし、これを2層重ねると言う方法もある。
しかし、(n01・d01+n02・d02+n03・d03)を所望の波長λ0の1/4の整数倍に構成することや、1層目の膜厚n01・d01、1層目の膜厚n02・d02をそれぞれ所望の波長λ0の1/4にすることに、材料的選択の自由度が少なく、設計が困難になる場合があった。
この発明に係る光半導体装置においては、光を入射または出射する端面を有し、等価屈折率ncを有する光半導体素子と、この光半導体素子の端面上に配設され、屈折率がn1で係数a0を正の実数としたときに、膜厚がa0×d1である第1の被覆膜とこの第1の被覆膜上に配設された屈折率がn2で膜厚がa0×d2の第2の被覆膜とを有する被覆膜層と、を備え、被覆膜層の表面上の自由空間の屈折率をn0としたときに、光半導体素子を伝播する光の波長λ0に対して、この波長λ0、屈折率n1、n2、膜厚a0×d1、a0×d2により規定される振幅反射率の実部及び虚部がゼロとなるとともにn1,n2のいずれか一方のみがncとn0との積の平方根より小さいもので、この構成により、波長λ0に対して理想的単層膜の置き換えとは異なる低反射被覆膜層を配設することができる。このため低反射被覆膜層の材料選定の自由度を高めることができる。延いては所望の低反射被覆膜層を備えた光半導体装置を簡単に構成することができる。
実施の形態1.
図1は、この発明の一つの実施の形態に係る半導体レーザの模式図である。
図1において、10はこの実施の形態に係る半導体レーザで、12は等価屈折率ncを有する光半導体素子としての半導体レーザ素子、14はこの半導体レーザ素子12の表面に配設された被覆膜層としての低反射コーティング膜で、一方の界面は半導体レーザ素子12の、例えば前端面に密着して、他方の境界は空気層、窒素層あるいは真空層などの屈折率n0が、n0=1である自由空間に接している。
今、半導体レーザから出射される光のうち所望の波長をλとし、第1層コーティング膜16及び第2層コーティング膜18における位相変化をそれぞれφ1、φ2とすると、φ1、φ2は次式のようになる。
φ1=(2π・n1・d1)/λ (1)
φ2=(2π・n2・d2)/λ (2)
このとき振幅反射率rは次式で表される。
r=(A−iB)/(C−iD) (3)
A=(nc−1)cosφ1cosφ2
+{(n1/n2)−(n2・nc)/n1}sinφ1sinφ2 (4)
B=((nc/n2)−n2)cosφ1 sinφ2
+((nc/n1)−n1)sinφ1 cosφ2 (5)
C=(nc+1)cosφ1cosφ2
−{(n1/n2)+(n2・nc)/n1}sinφ1sinφ2 (6)
D=((nc/n2)+n2)cosφ1 sinφ2
+((nc/n1)+n1)sinφ1 cosφ2 (7)
である。またiは虚数単位である。
このとき次の(7)式及び(8)式を満たす場合に電力反射率Rはゼロとなる。
すなわち、
nc−1+{(n1/n2)−(n2nc)/n1}tanφ1tanφ2=0 (8)
((nc/n1)−n1)tanφ1+((nc/n2)−n2)tanφ2=0 (9)
である。
さらに、n1とn2のいずれか一方が(nc×n0)1/2より小さく、他方が(nc×n0)1/2より大きいことである。いまはn0=1であるので、n1とn2の値の間に(nc)1/2があるということになる。
半導体レーザの等価屈折率nc=3.37、第1層コーティング膜16をTa2O5で形成するとその屈折率はn1=2.057、第2層コーティング膜18をAl2O3で形成するとその屈折率はn2=1.62となり、想定するレーザ光の波長λ0=980nmとすると、第1層コーティング膜16の膜厚d1が、d1=71.34nmで、第2層コーティング膜18の膜厚d2が、d2=86.20nmの時に無反射となる。当然のことながらこれら膜厚の組み合わせに限らず、φ1及びφ2が2πの整数倍の時も無反射となる。これは以下の実施の形態の場合においても同様である。
なお、トータル膜厚とは、被覆膜を構成する各層の膜厚にその層の屈折率を乗じた値の総和である。
図2は、この発明の一つの実施の形態に係る半導体レーザ装置の模式図である。
図2において、図1と同じ符号は同一のものか相当のものである。以下の各図においても、同じ符号は同一のものか相当のものである。
この実施の形態に係る一つの半導体レーザ装置は、屈折率n1の材料で膜厚をa0×d1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をa0×d2としたコーティング膜の上に、屈折率n1の材料で膜厚をa1×d1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をa1×d2としたコーティング膜とを一対としたコーティング膜対を、さらに重ねて2段構成として、低反射コーティング膜14としたものである。
24は基底コーティング膜対22の上に配設された第1コーティング膜対で、24aは第3の被覆膜としての第3層コーティング膜で、屈折率n1の材料で膜厚をa1×d1としたものである。24bは第4の被覆膜としての第4層コーティング膜で屈折率n2の材料で膜厚をa1×d2としたものである。
低反射コーティング膜14は基底コーティング膜対22とこの上に配設された第1コーティング膜対24とで構成されている。
ここでa0、およびa1はパラメータで正の実数である。
すなわち、(10)式の振幅反射率rの実部と虚部とがゼロになるように膜厚d1、d2を定める。
r={(m11+m12)nc−(m21+m22)}/
{(m11+m12)nc+(m21+m22)} (10)
但し、
また、実施の形態1と同様に、n1とn2のいずれか一方が、(nc×n0)1/2より小さく、他方が(nc×n0)1/2より大きいとする。いまはn0=1であるので、n1とn2の値の間に(nc)1/2が存在するように設定する。
半導体レーザの等価屈折率nc=3.37、第1層コーティング膜22a及び第3層コーティング膜24aをAl2O3で形成するとその屈折率はn1=1.62、第2層コーティング膜22b及び第4層コーティング膜24bをTa2O5で形成するとその屈折率はn2=2.057となり、想定するレーザ光の波長λ0=980nmとし、a0=1.2、a1=0.8とすると、d1=319.91nm、d2=33.40nmの時に無反射になる。
図3はこの発明に係る一実施例である実施例2の反射率の計算結果を示すグラフである。
次に半導体レーザ端面に配設された基底コーティング膜対の上にさらに2段のコーティング膜対を重ね、3段重ね構成の低反射コーティング膜としたものについて説明する。
この半導体レーザ装置においては、屈折率n1の材料で膜厚をa0×d1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をa0×d2としたコーティング膜からなる基底コーティング膜対の上に、屈折率n1の材料で膜厚をa1×d1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をa1×d2としたコーティング膜とを一対とした第1コーティング膜対を形成し、この第1コーティング膜対の上に屈折率n1の材料で膜厚をa2×d1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をa2×d2としたコーティング膜とを一対とした第2コーティング膜対をさらに重ねて形成し、コーティング膜対を3段とし低反射コーティング膜14としたものである。
第2コーティング膜対32は第5層コーティング膜32aと第6層コーティング膜32bで構成される。この第6層コーティング膜32bの一方の界面は第5層コーティング膜32aに密着し、もう一方の界面は屈折率n0、この実施の形態では、n0=1の自由空間に接している。a2はパラメータで正の実数である。
また、n1とn2のいずれか一方が、(nc×n0)1/2より小さく、他方が(nc×n0)1/2より大きいく設定する。いまはn0=1であるので、n1とn2の値の間に(nc)1/2が存在するように設定する。
半導体レーザの等価屈折率nc=3.37、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a及び第5層コーティング膜32aをAl2O3で形成するとその屈折率はn1=1.62、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bをTa2O5で形成するとその屈折率はn2=2.057となり、想定するレーザ光の波長λ0=980nmとし、a0=1.2、a1=1.0、a2=0.8とすると、d1=251.65nm、d2=303.73nmの時に無反射になる。
このときレーザ光の波長λ0=980nm近傍の反射率が1%以下になる波長領域幅は、20nmとなり、4層のコーティング膜で形成された低反射コーティング膜14の場合よりも反射率が1%以下になる波長領域幅が狭くなっている。
さらにこの3段重ねの低反射コーティング膜14を使用したもう一つの実施例について説明する。
半導体レーザの等価屈折率nc=3.37、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a及び第5層コーティング膜32aをAl2O3で形成するとその屈折率はn1=1.62、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bをTa2O5で形成するとその屈折率はn2=2.057となり、想定するレーザ光の波長λ0=980nmとし、a0=1.2、a1=1.0、a2=0.8とすると、d1=64.86nm、d2=61.60nmの時に無反射になる。
この実施例4は先の実施例3と同じ計算条件であるが実施例3と異なる位相変化の値φ1、φ2を選定したものである。
なお、この実施例4の第1層コーティング膜22aから第6層コーティング膜32bまでのトータル膜厚つまり各層コーティング膜の屈折率と膜厚との積の総和は695.35nmとなり、λ0/4である245nmより大きくなっている。
次に屈折率n1の材料で膜厚をd1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をd2としたコーティング膜とを一対とし、パラメータa0、a1、及びa2により厚さを変えた3段重ねの低反射コーティング膜にさらに、屈折率n1の材料で膜厚をb1d1(パラメータb1は正の実数)とした第5の被覆膜としての表面層コーティング膜を加えた低反射コーティング膜14を備えた半導体レーザ装置の実施例5について説明する。
この構成により、さらに被覆膜層が配設された端面における反射率の波長依存性の設定の自由度を高めることができる。延いてはより広範な所望の反射率の波長依存性を有する低反射被覆膜層を備えた光半導体装置を簡単に構成することができる。
図5はこの発明の一つの実施の形態に係る半導体レーザ装置の模式図である。
図5において、36は半導体レーザ装置、38は屈折率n1の材料で膜厚をb1d1とした表面層コーティング膜である。
半導体レーザの等価屈折率nc=3.37、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a及び表面層コーティング膜38をAl2O3で形成するとその屈折率はn1=1.62、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bをTa2O5で形成するとその屈折率はn2=2.057となり、想定するレーザ光の波長λ0=980nmとし、a0=1.0、a1=0.5、a2=1.5及びb1=3.5とすると、d1=32.07nm、d2=70.75nmの時に無反射になる。
このときレーザ光の波長λ0=980nm近傍の反射率が1%以下になる波長領域幅は、図6に示される如く83nmとなり非常に広い波長領域幅になっている。
このとき第1層コーティング膜22aから表面層コーティング膜38までのトータル膜厚、つまりa0n1d1+a0n2d2+a1n1d1+a1n2d2+a2n1d1+a2n2d2+b1n1d1は774.36nmであり、λ0/4よりも大きくなっている。
図4に示した、3段重ねの低反射コーティング膜14を使用したもう一つの実施例について説明する。
半導体レーザの等価屈折率nc=3.37、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、及び第5層コーティング膜32aをa−Siで形成するとその屈折率はn1=2.60、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bをAl2O3で形成するとその屈折率はn2=1.65、想定するレーザ光の波長λ0=980nmとし、a0=1.0、a1=2.0、及びa2=4.0とすると、d1=29.50nm、d2=37.89nmの時に無反射になる。
このときレーザ光の波長λ0=980nm近傍の反射率が1%以下になる波長領域幅は、図7に示される如く、224.0nmとなり非常に広い波長領域幅になっている。
なお、ここでa−Siの屈折率を2.60としたが、これはa−Siが酸素導入等の製膜条件によって3.0以下の屈折率を持つように容易に実現できることを考慮したものである。
また同様に、この実施例の計算において、Al2O3の屈折率を1.65として計算している。
図8はこの発明に係る半導体レーザ装置の低反射コーティング膜の反射率の波長依存性を示すグラフである。
図8において、この半導体レーザ装置は所望の波長λ0において無反射または反射率が極小となるようにし、その他の波長においては反射率がより高くなるようになっており、半導体レーザ装置この様な反射率の波長依存性を持つように無反射膜または低反射膜を構成することは、実施の形態1や実施の形態2に記載した低反射コーティング膜を構成することにより容易に実現することができる。
αt=αin+(1/(2L))ln(1/(RfRr)) (12)
図9はこの発明に係る半導体レーザ装置のトータル損失αtの波長依存性を示すグラフである。
前端面反射率Rfが、所望の波長λ0において反射率が極小となる場合には、図9に示すように、この波長λ0において損失が極大となる波長依存性を有することになる。
図10において、実線は利得g1、g2、g3を示す曲線、破線はトータル損失αtを示す曲線である。曲線g1は注入電流が小さいときまたは低温の時、曲線g3は注入電流が大きいときまたは高温の時で、曲線g2は曲線g1と曲線g3の中間的な条件の時である。
曲線g2の場合は、波長λ0を挟んで、λ2とλ3の2箇所において利得とトータル損失が等しくなっていて、λ2とλ3でレーザ発振が可能となる。
すなわち、まず注入電流が小さいかまたは低温であるために発熱による温度上昇が小さいときは、曲線g1の場合に示したように少ない利得で済み、波長λ0の短波長側でのみ損失と利得が等しくなり、半導体レーザは発振することとなる。
曲線g1の場合よりも温度状態が高いかまたは注入電流が増加して温度上昇が増したときは、曲線g2に示すように多くの利得を必要とするため、波長λ0を挟んで短波長側と長波長側の2箇所で利得と損失とが等しくなる。従って、この場合には半導体レーザはλ2とλ3の2波長で発振する。
この様に、所望の波長λ0において反射率が極小となるようにし、かつ波長λ0を挟んで短波長側と長波長側の2箇所で利得と損失とが等しくなるように無反射膜を構成し半導体レーザ端面に配設することにより、2波長で発振する半導体レーザ装置を構成することができる。
図11はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの断面図である。
図11において、40は半導体レーザ、42はこの半導体レーザ40のn型GaAs基板(以下“n型”を“n−”、“p型”を“p−”と表記する)、44はn−GaAs基板42上に配設されたn−AlGaAsクラッド層、46はn−AlGaAsクラッド層上に配設されたアンドープのn側AlGaAsガイド層、48はn側AlGaAsガイド層46の上に配設されたアンドープのn側GaAsガイド層、50はn側GaAsガイド層48上に配設された量子井戸構造の活性層で、活性層50はアンドープInGaAs量子井戸層50aとアンドープGaAsバリア層50bを有している。
低反射コーティング膜の構成は、実施の形態1の低反射コーティング膜14と同じ構成で、半導体レーザの等価屈折率ncをnc=3.37、第1層コーティング膜16を屈折率n1がn1=1.62のAl2O3により240nmの膜厚に形成し、第2層コーティング膜18を屈折率n2がn2=2.057のTa2O5により183nmの膜厚に形成した。後端面反射率Rrは98%である。
なおこの半導体レーザ40はファイバアンプ励起用980nm半導体レーザであるが、これの限るものではない。
λ0=980nm近傍の1%以下の低反射率領域幅は約52nmである。
図13はこの実施の形態に係る半導体レーザ装置の発振波長の注入電流依存性の実験結果を示すグラフである。
図13において、注入電流を増加してゆくと約100mA近傍で波長が15nmだけ急激に長波長領域に遷移している。つまり一つの半導体レーザで15nm離れた2波長の光を出射することができる。さらに詳細に実験した結果、1%以下の低反射率領域幅が約55nmより狭くなると2波長発振が可能であることが明らかになった。
この実施例は、半導体レーザの構成は実施例7と同じにし、低反射コーティング膜の構成を実施の形態2に記載した、6層構成の低反射コーティング膜とした場合である。
第1層、第3層、及び第5層のコーティング膜に屈折率n1がn1=1.62のAl2O3を使用し、第2層、第4層、及び第6層のコーティング膜に屈折率n2がn2=2.057のTa2O5を使用し、その膜厚を、
第1層/第2層/第3層/第4層/第5層/第6層=24.2nm/196.3nm/30.2nm/245.4nm/36.2nm/294.5nmとしたものである。
図14はこの発明の一実施例である実施例8の反射率を示すグラフである。
図14に示すように、1%以下の低反射率領域幅が28nmと狭くなるので、レーザ光の波長変化が15nm以上の変化が可能となる。
この実施例は、実施例7の半導体レーザの共振器長が1500μmであったのに対して、この実施例9では共振器長を900μmとしたものである。
前端面の低反射コーティング膜の構成は、実施の形態1の低反射コーティング膜14と同じ構成で、半導体レーザの等価屈折率ncをnc=3.37、第1層コーティング膜16を屈折率n1がn1=1.62のAl2O3により240nmの膜厚に形成し、第2層コーティング膜18を屈折率n2が2.057のTa2O5により183nmの膜厚に形成した。また後端面反射率Rrは98%である。
図15は共振器長の相違による半導体レ―ザのトータル損失を比較したグラフである。
図16はこの発明の一実施例である実施例9の半導体レーザにおける発振波長の実験結果を示すグラフである。
共振器長さをさらに短くすれば、さらに波長の離れた光を出射できることは言うまでもない。また同様に、共振器長が短い場合は、1%以下の低反射波長領域幅が55nmを越えても波長変化を起こさせることは可能である。
通信用として使用される半導体レーザは波長変化の少ない安定した特性が必要となる。一般に、端面におけるコーティング膜のトータル膜厚が所定の波長の1/4以下であれば、1%以下の低反射率となる波長領域幅が100nmを越えるので、波長変化を少なくすることは可能であるが、トータル膜厚が薄いために放熱が悪く、端面劣化の原因となる場合がある。
この半導体レーザ装置は、実施の形態1または2で述べた低反射コーティング膜を半導体レーザの出射端面側に配設した構成を有し、所定の波長λ0において、反射率を極小にするとともに、図17のように所定の波長λ0の短波長側でトータル損失と利得とが等しくなり、式(12)で示したトータル損失と利得g(λ)が長波長側の波長λにおいて式(13)を満たせば波長変化を抑制することが可能となる。
αin+(1/(2L))ln(1/(RfRr)) >g(λ) (13)
そして詳細に検討した結果、所定の波長λ0の近傍において、1%以下の低反射率となる波長領域幅が55nm以上あれば式(13)が満足され、10nm以上の波長変化が生じない半導体レーザを構成することができることが明らかになった。
式(13)左辺第2項のミラー損失は共振器長に反比例するので共振器長が長くなるとミラー損失は小さくなる。この実施例10の半導体レーザは実施例7に示された図11と同じ構成の半導体レーザで、半導体レーザの等価屈折率ncはnc=3.37である。ただ共振器長を1800μmとするとともに、出射前端面の低反射コーティング膜を実施の形態1で説明した2層構造の低反射コーティング膜としたものである。
図18はこの発明の一実施例である実施例10における発振波長の電流依存性の実験結果を示すグラフである。
この実施例は共振器長が1800μmの場合であるが、実施の形態に係る発明はこれに限るものではない。また共振器長が長くなると発振波長の近傍の1%以下の低反射率を示す波長領域幅がより狭くなっても波長変化は抑制される。
さらに半導体レーザの端面に低反射コーティング膜を形成し、所定の波長λ0に極小値を有する反射率の波長依存性を確保するとともに、1%以下の低反射率となる波長領域幅を55nm以上にすることにより、温度変化や注入電力量の変化に対して波長変動が少なく安定した半導体レーザ装置を構成することができる。
延いては発振波長の安定した半導体レーザを簡単に構成することができる。
この実施の形態5も実施の形態4と同様に、通信用として使用される半導体レーザにおいて波長変化の少ない安定した特性を有する半導体レーザの構成に係るものである。
この実施の形態5は、実施の形態4で明らかになった、所定の波長λ0の近傍において、1%以下の低反射率となる波長領域幅が55nm以上確保するための構成を、実施の形態1または2で述べた低反射コーティング膜を半導体レーザの出射端面側に配設するものではなく、半導体レーザの光導波路の軸を共振器端面に対して少し傾ける構成を有する半導体レーザである。
図19はこの実施の形態に係る半導体レーザにおける反射率の波長依存性を示したグラフである。図19には比較のために、半導体レーザの光導波路の軸に対して共振器端面を傾けない場合の反射率の波長依存性も記載している。
図19から分かるように、半導体レーザの光導波路の軸を共振器端面に対して1.5°偏倚させることにより、1%以下の低反射率となる波長領域幅が160nmに拡大していることが分かる。
図20において、周囲温度をパラメータとして検討した結果、注入電流を変化させても、また周囲温度を変化させても10nmを越える波長変化は認められない。
この実施の形態に係る半導体レーザ装置は、半導体レーザの活性層から決まる発振波長よりも無反射となる波長を長波長側にした構成を有する。
すなわち波長λ0よりも半導体レーザの発振波長を短くしたもので、周囲温度や注入電流を変えても発振波長の変化の少ない半導体レーザを構成することができる。延いては使用条件によらず発振波長の安定した半導体レーザ装置を構成することができる。
例えば、実施の形態1に記載した2層のコーティング膜からなる低反射コーティング膜14を、共振器長が900μmの半導体レーザの出射端面に形成した構成において、電子ビーム蒸着により第1層コーティング膜16として半導体レーザ端面にAl2O3のコーティング膜を240nmの膜厚で形成し、第2層コーティング膜18として、Ta2O5のコーティング膜を183nmの膜厚で形成し、λ0が965nmにおいて、反射率が極小となるようにした。
図21において、半導体レーザの発振波長を周囲温度をパラメータとして調べた結果、ほとんど発振波長が変化しないことが分かる。
また発振波長は955nmの近傍にあるので、発振波長は反射率が極小値を示すλ0より短波長側に存在している。
図22は半導体レーザの反射率に波長依存性がない場合の損失と利得の関係を示す模式図である。
図22において、破線a10はトータル損失を、実線b10、b20は利得を示す。またSl0は低温における総利得、Sh0は高温における総利得であり、それぞれ注入電流に比例する値である。
一般には高温ほど注入電流が利得に変換される割合が低下するため、高温ほど多くの注入電流が必要となる。図22に示されるように、この半導体レーザにおいては、低温状態では波長λl0で、また高温状態においては波長λh0で発振するので、温度に対する波長変化は(λh0−λl0)/(Sh0−Sl0)に比例する。通常はAlGaAs系半導体レーザでは約0.2〜0.3nm/℃、InGaAs系半導体レーザでは約0.4〜0.7nm/℃と言った大きな値になる。
図23において、破線a1はトータル損失を、実線b1、b2は利得を示す。またSlは低温における総利得、Shは高温における総利得であり、それぞれ注入電流に比例する値である。
一方この実施の形態に係る半導体レーザにおいては、図23に示されるように、低温状態では波長λlで、また高温状態では波長λhで発振するので、温度に対する波長変化は(λh−λl)/(Sh−Sl)に比例する。ところが破線aで示されるようにトータル損失が波長とともに増加する領域にあるので、Sh>>Slとなる。
(λh−λl)/(Sh−Sl)<(λh0−λl0)/(Sh0−Sl0) (14)
となる。
以上の説明では、波長依存性がない場合について説明したが、損失が波長依存性を有する程度によっても、波長変化の程度が変わる。つまり、波長に対する損失増加が大きいほど波長の温度変化及び波長の注入電流による変化を抑制することができる。
図24はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の模式断面図である。
図24において、80は半導体レーザ装置、82は半導体レーザ、84は半導体レーザ82の出射端面に対向しレーザ光の光軸に合わせて配設されたレンズ、86はレンズ84を介して半導体レーザ82の出射端面に対向しレーザ光の光軸に合わせて配設された光ファイバである。
この半導体レーザ装置80は、半導体レーザ82の発振波長を安定化させるために光ファイバ86内にファイバグレーティング94を設けて、特定の波長の光を反射させて、かつ半導体レーザ82の前端面を低反射または無反射に、また半導体レーザ82の後端面を高反射率にすることで、ファイバグレーティング94と半導体レーザ82の後端面との間で共振器を構成している。またレンズ84は半導体レーザ82からの光を効率よく光ファイバ86内に入射させるためのものである。
図25及び図26は従来のファイバグレーティングを有する半導体レーザ装置の利得と損失とを示すグラフである。
図25において、ファイバグレーティングは特定の波長λfgに対して反射率はRfgであるが、その他の波長に対しては反射率はほぼゼロである。このため波長λfgで損失が小さくなり通常はこの波長で半導体レーザは発振する。
しかしながら、例えば周囲温度が低いときは、利得分布が短波長に変位するため、図26に示されるように、ファイバグレーティングによって決まる損失より半導体レーザ前端面のコーティング膜によって決まる損失の方が小さくなる場合がある。このときには、波長λfgではなく波長λLDで発振する。
この実施の形態では半導体レーザの出射前端面に低反射コーティング膜をもうけるとともにこの低反射コーティング膜の1%以下の低反射率となる波長領域幅を55nm以上にしたもので、半導体レーザの前端面のコーティング膜の反射率の波長依存性で決まる発振を抑制することができ、サイドモード抑圧比が小さくなることを防ぐことができる。延いてはファイバーグレーティングによって規定される発振波長で安定して発振する半導体レーザ装置を簡単に構成することができる。
図27において、この半導体レーザ82の前端面の低反射コーティング膜90を1%以下の低反射率となる波長領域幅を、例えば100nm以上有するものとしたので、周囲温度または注入電流を変えたときでも、半導体レーザ82の前端面の低反射コーティング膜90で決まる波長で発振することはなく、ファイバグレーティングで決まる波長で発振させることができる。延いては発振波長の安定した半導体レーザ装置を構成することができる。
この実施の形態の半導体レーザ装置は、実施の形態7と同様にファイバグレーティングを有する半導体レーザ装置で、基本構成は実施の形態7と同じである。ただ、半導体レーザ82の前端面に配設された低反射コーティング膜90の構成が異なり、反射率が極小になる所定の波長λ0がファイバグレーティングの波長λfgより短い場合には、低反射コーティング膜90の反射率が波長λ0の長波長側で短波長側より緩やかに上昇し、反射率が極小になる所定の波長λ0がファイバグレーティングの波長λfgより長い場合には、低反射コーティング膜90の反射率が波長λ0の短波長側で長波長側より緩やかに下降するように設定したものである。
この実施例11は、等価屈折率ncがnc=3.37の半導体レーザの前端面に、実施の形態2に記載した4層膜の低コーティング膜90を形成したものである。
低コーティング膜90の構成は、第1層として屈折率n1=1.62のAl2O3膜を膜厚25.23nm形成し、第2層として屈折率n2=2.057のTa2O5膜を膜厚24.69nm形成し、第3層として屈折率n1=1.62のAl2O3膜を膜厚37.84nm形成し、第4層として屈折率n2=2.057のTa2O5膜を膜厚37.04nm形成したものである。
図28において、波長λ0=980nmで反射率はゼロとなり、短波長側及び長波長側にずれるにつれて反射率は増加する。ただし反射率の増加は波長λ0=980nmを中心として対象ではなく、長波長側の波長の変化に伴う反射率の変化の方が短波長側の波長の変化に伴う反射率の変化に比べて緩やかに変化している。
図29はこの発明の一実施例である実施例11のファイバグレーティングを伴う半導体レーザ装置の損失と利得を示すグラフである。
図29に示されるように、トータル損失の変化は波長λ0の長波長側で緩やかになる。従って、ファイバグレーティングの波長λfgを低反射または無反射となる波長λ0より長波長側に設定すると半導体レーザの利得が短波長では損失と等しくなりにくくサイドモード抑圧比が大きくとれることになる。
この実施の形態9は、既に述べた実施の形態2の実施例5をさらに拡張したものである。
この実施の形態9は、実施の形態2の実施例5と同様に、屈折率n1の材料で膜厚をa0×d1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をa0×d2としたコーティング膜からなる基底コーティング膜対の上に、屈折率がn1で係数ak(k=1,2,・・,m)を正の実数としたときに膜厚がak×d1である第3の被覆膜とこの第3の被覆膜上に配設された屈折率がn2で膜厚がak×d2の第4の被覆膜とを有する被覆膜対を、k=1,2,・・,mと変化させてさらにm対重ねて形成し、最上層の被覆膜対の第4の被覆膜表面に、屈折率n1の材料で膜厚をb1×d1とした第5の被覆膜を形成するものである。
図30はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の模式図である。
図30において、100は半導体レーザ装置、102は第2コーティング膜対32の上に形成された第3コーティング膜対で、102aは第3の被覆膜としての第7層コーティング膜で、屈折率n1の材料で膜厚をa3d1としたものである。102bは第4の被覆膜としての第8層コーティング膜で、屈折率n2の材料で膜厚をa3d2としたものである。a3はパラメータで正の実数である。
第3コーティング膜対102は第7層コーティング膜102aと第8層コーティング膜102bで構成される。表面層コーティング膜38の一方の界面は第8層コーティング膜102bに密着し、もう一方の界面は、この実施の形態では、屈折率n0がn0=1の自由空間に接している。
無反射条件の導出は実施の形態2の場合と同様で、低反射コーティング膜14が配設された端面の振幅反射率rの実部と虚部とがゼロになるように膜厚d1、d2を定める。
特にこの実施の形態では、(nc×n0)1/2より小さい屈折率を有した材料で構成されるコーティング膜を半導体レーザ素子12の端面に密着させて低反射コーティング膜14を構成している。
この様に構成することにより、低反射膜の設計の自由度が高くなることは既に述べた実施の形態と同様である。
さらに反射率が1%以下になる低反射領域が非常に広い被覆膜を容易に構成できるので、複数波長の光を伝播させる光半導体装置の被覆膜として使用しやすくなる。
また、実施の形態7において記載した、ファイバグレーティングを設けた半導体レーザ装置に用いられる半導体レーザの出射端面に、この実施の形態で述べる反射率が1%以下になる低反射領域が非常に広い被覆膜を使用すると、広い波長範囲に亘ってファイバグレーティングの損失を半導体レーザ端面反射率で求まる損失よりも小さくできるので、半導体レーザの利得と端面反射率から決まる半導体レーザ自身の発振を抑制でき、延いてはサイドモード抑圧比が小さくなるのを防ぐことができ、レーザ特性の良い半導体レーザ装置を構成することができる。
この実施例12は図5に示された構成と同じ構成になる。
図5において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a及び表面層コーティング膜38を屈折率がn1=1.62のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=2.057の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
図31から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は150nmと広くなっている。
実施例12の半導体レーザを先に述べたようなファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。つまり半導体レーザの光の波長λ0と反射率が1%である波長領域幅の中心波長とを合致させることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには低反射コーティング膜14の構成は実施例12と同じにして、a0=0.8、a1=2.0、a2=2.0及びb1=2.0とし、アルミナ及び酸化タンタルそれぞれの位相変化φ1、φ2を、φ1=0.695388、φ2=1.05768とし、波長λ=944nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、実施例12とa0、a1、a2、及びb1の値、および位相変化φ1、φ2の値が同じである場合、無反射となる波長が変化するに対応して、d1、d2の値が変化し、従って、各層の膜厚D1、D2、D3、D4、D5、D6、Dsの値が変化する。
図32はこの発明の一実施例13に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図32において、反射率が1%以下の波長領域幅は144nmである。
この実施例14は図30に示された構成と同じ構成になる。
図30において、半導体レーザの等価屈折率nc=3.37とし、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a、第7層コーティング膜102a、及び表面層コーティング膜38を、屈折率がn1=1.62のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b、第6層コーティング膜32b、及び第8層コーティング膜102bを屈折率がn2=2.057の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
そしてトータル膜厚(n1×D1+n2×D2+n1×D3+n2×D4+n1×D5+n2×D6+n1×D7+n2×D8+n1×Ds)は2067.23nmである。これはλ0/4膜厚245nmの約8.4倍と非常に厚くなっている。
図33はこの発明の一実施例14に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図33から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は127nmと広くなっている。
実施例14の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例14と同じにして、a0=0.8、a1=2.15、a2=1.8、a3=2.08及びb1=2.0とし、アルミナ及び酸化タンタルそれぞれの位相変化φ1、φ2を、φ1=0.471712、φ2=1.3307とし、波長λ=945nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D1/D2/D3/D4/D5/D6/D7/D8/Ds=35.04/77.84/94.16/209.19/78.83/175.13/91.09/202.38/87.59nmである。
図34はこの発明の一実施例15に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図34において、反射率が1%以下の波長領域幅は122nmである。
この実施例16は図5に示された構成と同じ構成になる。実施例12との相違は、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=2.954のシリコン(Si)で形成する点で、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a及び表面層コーティング膜38を屈折率がn1=1.62のアルミナ(Al2O3)で形成する点は実施例12と同じである。
この実施例16では、a0=0.66、a1=2.5、a2=2.0及びb1=2.0とし、アルミナ及びシリコンそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.561105、φ2=1.33856であるとき、波長λ0=980nmで無反射とすることができる。
また、トータル膜厚は1703.92nmである。これはλ0/4膜厚245nmの約7.0倍と非常に厚くなっている。
図35はこの発明の一実施例16に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図35から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は127nmと広くなっている。
実施例16の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例16と同じにして、a0=0.66、a1=2.5、a2=2.0及びb1=2.0とし、アルミナ及びシリコンそれぞれの位相変化φ1、φ2を、φ1=0.561105、φ2=1.33856とし、波長λ=993nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D1/D2/D3/D4/D5/D6/Ds=36.13/47.27/136.85/179.03/109.48/143.23/109.48nmである。
図36はこの発明の一実施例17に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図34において、反射率が1%以下の波長領域幅は129nmである。
この実施例18は図5に示された構成と同じ構成になる。実施例12との相違は、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a及び表面層コーティング膜38を屈折率がn1=1.45の石英(SiO2)で形成する点で、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを屈折率がn2=2.057の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する点は実施例12と同じである。
この実施例18では、a0=0.74、a1=2.0、a2=2.0及びb1=2.0とし、石英及び酸化タンタルそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.516451、φ2=1.33632であるとき、波長λ0=980nmで無反射とすることができる。
また、トータル膜厚は1530.87nmである。これはλ0/4膜厚245nmの約6.2倍と非常に厚くなっている。
図37はこの発明の一実施例18に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図37から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は137nmと広くなっている。
実施例18の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例18と同じにして、a0=0.74、a1=2.0、a2=2.0及びb1=2.0とし、石英及び酸化タンタルそれぞれの位相変化φ1、φ2を、φ1=0.516451、φ2=1.33632とし、波長λ=978nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D1/D2/D3/D4/D5/D6/Ds=41.03/74.83/110.88/202.34/110.88/202.34/110.88nmである。
図38はこの発明の一実施例19に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図38において、反射率が1%以下の波長領域幅は137nmである。
この実施例20は図5に示された構成と同じ構成になる。実施例12との相違は、第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a及び表面層コーティング膜38を屈折率がn1=1.45の石英(SiO2)で形成すること、及び第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを屈折率がn2=2.954のシリコン(Si)で形成することである。
この実施例20では、a0=0.55、a1=2.3、a2=2.0及びb1=2.0とし、石英及びシリコンそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.570164、φ2=1.4274であるとき、波長λ0=980nmで無反射とすることができる。
また、トータル膜厚は1688.92nmである。これはλ0/4膜厚245nmの約6.9倍と非常に厚くなっている。
図39はこの発明の一実施例20に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図39から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は112nmと広くなっている。
実施例20の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例20と同じにして、a0=0.55、a1=2.3、a2=2.0及びb1=2.0とし、石英及びシリコンそれぞれの位相変化φ1、φ2を、φ1=0.570164、φ2=1.4274とし、波長λ=992nmで無反射とすればよい。
図40はこの発明の一実施例21に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図40において、反射率が1%以下の波長領域幅は114nmである。
この実施の形態10は、半導体レーザ素子12の端面に、屈折率n2の材料で膜厚をc1×d1(c1は正の実数)とした第6の被覆膜としての予備層コーティング膜を先に形成し、この予備層コーティング膜の上に、屈折率n1の材料で膜厚をa0×d1としたコーティング膜と屈折率n2の材料で膜厚をa0×d2としたコーティング膜からなる基底コーティング膜対を形成し、この基底コーティング膜対の上に、屈折率がn1で係数ak(k=1,2,・・,m)を正の実数としたときに膜厚がak×d1である第3の被覆膜とこの第3の被覆膜上に配設された屈折率がn2で膜厚がak×d2の第4の被覆膜とを有する被覆膜対を、k=1,2,・・,mと変化させてさらにm対重ねて形成するものである。
図41において、110は半導体レーザで、半導体レーザ素子12の端面上に7層のコーティング膜が形成されている。
112は予備層コーティング膜で、予備層コーティング膜112は半導体レーザ素子12の端面に密着して形成され、予備層コーティング膜112の界面上には屈折率n1の材料で膜厚をa0×d1とした第1層コーティング膜22aが密着して形成されている。
第6層コーティング膜32bの一方の界面は第5層コーティング膜32aに密着し、もう一方の界面は、この実施の形態では、屈折率n0がn0=1の自由空間に接している。
図42において、120は半導体レーザ装置である。
半導体レーザ装置120は、半導体レーザ素子12の端面に密着して形成された予備層コーティング膜112上に基底コーティング膜対22、第1コーティング膜対24、第2コーティング膜対32が形成され、さらにこの第2コーティング膜対32の上に第3コーティング膜対102が形成され、予備コーティング膜112と合わせて9層のコーティング膜からなる低反射コーティング膜14が形成されている。
第3コーティング膜対102の第8層コーティング膜102bは一方の界面が第7層コーティング膜102aに密着し、もう一方の界面は、この実施の形態では、屈折率n0がn0=1の自由空間に接している。
図41で示された低反射コーティング膜14も、図42で示された低反射コーティング膜14もともに、無反射条件の導出は実施の形態2の場合と同様で、低反射コーティング膜14が配設された端面の振幅反射率rの実部と虚部とがゼロになるように膜厚d1、d2を定める。
特にこの実施の形態では、(nc×n0)1/2より小さい屈折率を有した材料で構成されるコーティング膜を半導体レーザ素子12の端面に密着させて低反射コーティング膜14を構成している。
この様に構成することにより、この実施の形態10においても、実施の形態9と同様の効果を奏する。
このために、実施の形態9の効果に加えて、実施の形態9の様に第1層コーティング膜22aと第2層コーティング膜22bとを対で設定する必要がある場合に比べて、この実施の形態10では、半導体レーザ素子12の端面に最も近接しているコーティング膜を比較的自由度高く設定できるので、反射率が1%以下となる部分の形状をより自由に設定することができるという効果がある。例えば反射率が1%以下となる部分のバスタブ形状をより端正な形状にすることが出来る。
したがって、被覆膜層が配設された端面における反射率の波長依存性の設定の自由度をさらに高めることができる。延いてはより広範な所望の反射率の波長依存性を有する低反射被覆膜層を備えた光半導体装置を簡単に構成することができる。
さらに、光半導体素子の端面に最も近接する被覆膜の屈折率が、この被覆膜の上層に隣接する被覆膜の屈折率よりも小さくしたもので、この構成により、被覆膜の膜厚を厚く構成しかつ低反射領域を広くすることができる。延いては熱伝導特性がよく光半導体素子の端面における熱劣化の少ない光半導体装置を構成することができる。
さらに光半導体素子の端面に最も近接して配設された被覆膜をアルミナにより、またこのアルミナの被覆膜に隣接して配設された被覆膜を酸化タンタルによりそれぞれ構成したもので、簡単な材料構成で被覆膜の膜厚を厚く構成しかつ低反射領域を広くすることができる。延いては光半導体素子の端面における熱劣化の少ない光半導体装置を安価に提供することができる。
この実施例22は図41に示された7層膜の構成である。
図41において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=1.62のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、及び第5層コーティング膜32aを屈折率がn1=2.057の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
予備層コーティング膜112の膜厚D0をc1×d2、第1層コーティング膜22aの膜厚D1をa0×d1、第2層コーティング膜22bの膜厚D2をa0×d2、第3層コーティング膜24aの膜厚D3をa1×d1、第4層コーティング膜24bの膜厚D4をa1×d2、第5層コーティング膜32aの膜厚D5をa2×d1、第6層コーティング膜32bの膜厚D6をa2×d2としたとき、c1=0.38、a0=2.0、a1=2.0、及びa2=2.0とし、酸化タンタル及びアルミナそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.52568、φ2=0.963283であるとき、波長λ0=980nmで無反射とすることができる。
図43はこの発明の一実施例22に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図43から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は150nmと広くなっている。
実施例22の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例22と同じにして、c1=0.38、a0=2.0、a1=2.0、及びa2=2.0とし、酸化タンタル及びアルミナそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.52568、φ2=0.963283とし、波長λ=956nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D0/D1/D2/D3/D4/D5/D6=34.38/77.77/180.95/77.77/180.95/77.77/180.95nmである。
図44はこの発明の一実施例23に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図44において、反射率が1%以下の波長領域幅は146nmである。
この実施例24は図42に示された9層膜の構成である。
図42において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b、第6層コーティング膜32b、及び第8層コーティング膜102bを、屈折率がn2=1.62のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a、及び第7層コーティング膜102aを屈折率がn1=2.057の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
図45はこの発明の一実施例24に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図45から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は100nmと広くなっている。
実施例24の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例24と同じにして、c1=0.58、a0=2.0、a1=2.0、a2=2.0及びa3=2.0とし、酸化タンタル及びアルミナそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.382042、φ2=1.05165であるとき、波長λ=978nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D0/D1/D2/D3/D4/D5/D6/D7/D8=58.61/57.82/202.09/57.82/202.09/57.82/202.09/57.82/202.09nmである。
図46はこの発明の一実施例25に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図46において、反射率が1%以下の波長領域幅は100nmである。
この実施例26は図41に示された7層膜の構成である。
図41において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=1.62のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、及び第5層コーティング膜32aを屈折率がn1=2.954のシリコン(Si)で形成する。
この実施例26では、c1=0.75、a0=1.98、a1=2.0、及びa2=2.0とし、シリコン及びアルミナそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.182114、φ2=1.08902であるとき、波長λ0=980nmで無反射とすることができる。
図47はこの発明の一実施例26に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図47から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は140nmと広くなっている。
実施例26の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例26と同じにして、c1=0.75、a0=1.98、a1=2.0、及びa2=2.0とし、シリコン及びアルミナそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.182114、φ2=1.08902であるとき、波長λ=1002nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D0/D1/D2/D3/D4/D5/D6=80.40/19.47/212.26/19.66/214.41/19.66/214.41nmである。
図48はこの発明の一実施例27に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図48において、反射率が1%以下の波長領域幅は143nmである。
この実施例28は図41に示された7層膜の構成である。
図41において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=1.45の石英(SiO2)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、及び第5層コーティング膜32aを屈折率がn1=2.057の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
この実施例28では、c1=0.2、a0=2.7、a1=2.0、及びa2=2.0とし、酸化タンタル及び石英それぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.302025、φ2=1.0705であるとき、波長λ0=980nmで無反射とすることができる。
図49はこの発明の一実施例28に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図49から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は134nmと広くなっている。
実施例28の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例28と同じにして、c1=0.2、a0=2.7、a1=2.0、及びa2=2.0とし、酸化タンタル及び石英それぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.302025、φ2=1.0705であるとき、波長λ=966nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D0/D1/D2/D3/D4/D5/D6=22.70/60.95/306.46/45.15/227.01/45.15/227.01nmである。
図50はこの発明の一実施例29に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図50において、反射率が1%以下の波長領域幅は133nmである。
この実施例30は図41に示された7層膜の構成である。
図41において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=1.45の石英(SiO2)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、及び第5層コーティング膜32aを屈折率がn1=2.954のシリコン(Si)で形成する。
この実施例30では、c1=0.5、a0=2.5、a1=2.0、及びa2=2.0とし、シリコン及び石英それぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.131051、φ2=1.16158であるとき、波長λ0=980nmで無反射とすることができる。
図51はこの発明の一実施例30に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図51から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域幅は134nmと広くなっている。
実施例30の半導体レーザをファイバグレーティングと組み合わせる場合には、半導体レーザの光の波長λ0をバスタブ形状をした反射率分布の中心にすることが望ましい。
この場合、λ0=980nmを反射率が1%である波長領域幅の中心波長とするためには、低反射コーティング膜14の構成は実施例30と同じにして、c1=0.5、a0=2.5、a1=2.0、及びa2=2.0とし、シリコン及び石英それぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.131051、φ2=1.16158であるとき、波長λ=969nmで無反射とすればよい。
なおこのとき、各層の膜厚は、D0/D1/D2/D3/D4/D5/D6=61.77/17.10/308.86/13.68/247.09/13.68/247.09nmである。
図52はこの発明の一実施例31に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図52において、反射率が1%以下の波長領域幅は132nmである。
この実施の形態11は、実施の形態6をさらに発展させたものである。
この実施の形態11に係る半導体レーザ装置は、半導体レーザの活性層から決まる発振波長よりも無反射となる波長を長波長側にした構成を有する。すなわち半導体レーザの共振器の出射端面に被覆膜を設けて反射率が所定の波長λ0に対応して極小値を有するようにし、半導体レーザの利得が最大になる波長を被覆膜層の反射率が極小となる波長よりも短波長側に設定することにより、波長が長くなるにつれて端面の反射率が低くなる領域において、半導体レーザの総損失と半導体レーザの利得とが等しくしたものである。
そしてこの半導体レーザ装置の被覆膜の構成を、実施の形態10において提示した構成にしている。すなわちこの実施の形態11の半導体レーザ装置の構成は、図41に示した7層構成の低反射コーティング膜14を有する半導体レーザ装置110あるいは図42に示した9層構成の低反射コーティング膜14を有する半導体レーザ装置120の構成をしている。
この実施例32は図41に示された7層膜の構成である。
図41において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=1.63のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、及び第5層コーティング膜32aを屈折率がn1=2.00の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
図56はこの発明の一実施例32に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図56から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域は954nmから1114nmに亘っており、反射率が1%以下の波長領域の中心波長は1034nmである。したがって無反射となる波長1000nmは反射率が1%以下の波長領域の中心波長の短波長側に存在する。
この実施例33も図41に示された7層膜の構成である。
図41において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b及び第6層コーティング膜32bを、屈折率がn2=1.63のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、及び第5層コーティング膜32aを屈折率がn1=2.00の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
予備層コーティング膜112の膜厚D0をc1×d2、第1層コーティング膜22aの膜厚D1をa0×d1、第2層コーティング膜22bの膜厚D2をa0×d2、第3層コーティング膜24aの膜厚D3をa1×d1、第4層コーティング膜24bの膜厚D4をa1×d2、第5層コーティング膜32aの膜厚D5をa2×d1、第6層コーティング膜32bの膜厚D6をa2×d2としたとき、c1=0.20、a0=1.80、a1=2.10、及びa2=2.00とし、酸化タンタル及びアルミナそれぞれの位相変化φ1、φ2が、φ1=0.800845、φ2=0.785781であるとき、波長λ0=1000nmで無反射とすることができる。
図57はこの発明の一実施例33に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図57から分かるように、反射率の波長依存性はU字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域は944nmから1098nmに亘っており、反射率が1%以下の波長領域の中心波長は1021nmである。したがって無反射となる波長1000nmは反射率が1%以下の波長領域の中心波長の短波長側に存在する。
この実施例34は図42に示された9層膜の構成である。
図42において、半導体レーザ素子12の等価屈折率nc=3.37とし、予備層コーティング膜112、第2層コーティング膜22b、第4層コーティング膜24b、第6層コーティング膜32b、及び第8層コーティング膜102bを、屈折率がn2=1.63のアルミナ(Al2O3)で形成する。
第1層コーティング膜22a、第3層コーティング膜24a、第5層コーティング膜32a、及び第7層コーティング膜102aを屈折率がn1=2.00の酸化タンタル(Ta2O5)で形成する。
図58はこの発明の一実施例34に係る半導体レーザの端面における反射率の波長依存性を示すグラフである。
図58から分かるように、反射率の波長依存性はW字状をしたバスタブ形状に近く反射率が1%以下の波長領域は979nmから1121nmに亘っており、反射率が1%以下の波長領域の中心波長は1050nmである。したがって無反射となる波長1000nmは反射率が1%以下の波長領域の中心波長の短波長側に存在する。
図59はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの一例の利得分布を示すグラフである。
この図59に示されている半導体レーザ12の利得が最大になる波長、つまり利得ピーク波長は約972nmである。
なお、この利得分布を示すグラフは端面の低反射コーティング膜14を設ける前のものであり、後に述べる従来の半導体レーザ装置においても同様の利得分布を示していると考えることができる。
図60はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の損失と利得との関係を示す模式図である。
図60において、実線a1はこの発明に係る半導体レーザ装置のトータル損失を、実線b1、b2はこの発明に係る半導体レーザ装置の利得を示す。またSlは低温における総利得、Shは高温における総利得であり、それぞれ注入電流に比例する値である。
従来の半導体レーザ装置においては、トータル損失である破線a10は波長の変化にほとんど依存しない。低温時に利得とトータル損失が等しくなるのはA点であるため波長λl0で発振する。高温時にはバンドギャップの収縮により長波長から利得が発生し、このため利得と損失が等しくなるのはB点となり、波長λh0で発振する。したがって発振波長差はλh0−λl0である。
一方、この実施の形態に係る半導体レーザ装置においては、ミラー損失に波長依存性があり、しかも実線a1で示されるように波長が長くなるつれてトータル損失が増加する。このためにC点で示されるように低温時では小さな利得で損失と等しくなり、波長λlで発振する。高温時は逆に大きな利得を必要とし、D点で示されるλhで発振することになる。したがって発振波長差はλh−λlである。
ここで図60から明らかなように、λh−λl<λh0−λl0である。
したがって、温度変化または注入電流変化に対する波長変化を、従来の半導体レーザ装置とこの実施の形態に係る半導体レーザ装置とにおいて比較すると、
(λh−λl)/(Sh−Sl)<<(λh0−λl0)/(Sh0−Sl0)
となり、この実施の形態に係る半導体レーザ装置の温度変化及び注入電流変化に対する波長変化は従来の半導体レーザ装置のそれに比べて極端に小さくすることができる。
図61において比較のために従来の半導体レーザ装置の反射率の波長依存性とミラー損失の波長依存性を示している。
図61におけるA群の曲線はミラー損失の値で、実線a1はこの実施の形態に係る半導体レーザ装置のミラー損失の波長依存性を、また破線a2は従来の半導体レーザ装置のミラー損失の波長依存性を示している。
またB群の曲線は反射率の値で、実線b1はこの実施の形態に係る半導体レーザ装置の反射率の波長依存性を、また破線b2は従来の半導体レーザ装置の反射率の波長依存性を示している。
図61に示されるように、従来の半導体レーザ装置のミラー損失の値および反射率の値は、それほど波長に依存しないものになっている。
図61に示されたこの実施の形態に係る半導体レーザ装置の、波長変化に対するミラー損失の変化Δα/Δλは約0.18cm−1/nmである。
図62はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置における発振波長の温度及び注入電流に対する依存性を示すグラフである。
温度は5℃から85℃まで10段階変化させ、注入電流は100mAから600mAまで変化させ、50mA間隔で測定している。
図62においては、温度が5℃、注入電流が100mAの場合から温度が85℃、600mAの場合までの間の発振波長の変化ΔλLは11.2nmである。
図63は従来の半導体レーザ装置における発振波長の温度及び注入電流に対する依存性を示すグラフである。この実施の形態に係る半導体レーザ装置の発振波長の、温度及び注入電流に対する依存性と比較のために示している。
図63においては、温度が5℃、注入電流が100mAの場合から温度が85℃、600mAの場合までの間の発振波長の変化ΔλLは33.5nmである。
図62と図63との比較からこの実施の形態に係る半導体レーザ装置では従来の半導体レーザ装置に比べて温度及び注入電流に対する発振波長の変化はおおよそ1/3程度となっている。
P−I特性の測定は温度25℃から85℃まで10段階で変化させて連続動作(CW)で行われた。
図65は従来の半導体レーザ装置におけるP−I特性の温度依存性を示すグラフである。
従来の従来の半導体レーザ装置におけるP−I特性の測定も、この実施の形態に係る半導体レーザ装置の場合と同様に実施されている。
この実施の形態の半導体レーザ装置におけるP−I特性と半導体レーザ装置におけるP−I特性を比較すると、この実施の形態の半導体レーザ装置においては従来の半導体レーザ装置よりもP−I特性の曲線群が粗に分散しているおり、しきい値電流の変化が大きい。
図66はこの発明の実施の形態に係る半導体レーザ装置において反射率を指標とした場合の波長変化抑制効果を示すグラフである。
この実施の形態に係る半導体レーザ装置において、種々の利得ピーク波長を有する半導体レーザと低反射コーティング膜とを有する半導体レーザ装置に対して各々発振波長変化が抑制されているが、図66においては従来の半導体レーザ装置に比べて発振波長変化が1/2以下になる出射端面の反射率を一つの指標として発振波長変化の効果を判定している。
図67においては、利得ピーク波長近傍における波長変化に対するミラー損失変化Δα/Δλを一つの指標として、従来の半導体レーザ装置に比べて発振波長変化が1/2以下になる場合のΔα/Δλにより発振波長変化の効果を判定している。
図67の○印のものが従来の半導体レーザ装置に比べて発振波長変化が1/2以下なったもので、□印のものは従来の半導体レーザ装置に比べて発振波長変化が1/2以下にならなかったものである。したがって半導体レーザ装置の波長変化に対するミラー損失変化Δα/Δλが0.13cm−1/nm以上になると、従来の半導体レーザ装置に比べて発振波長変化が1/2以下になっている。
さらに、出射端面の反射率をおおよそ4%以下にし、かつ利得波長近傍の波長変化に対するミラー損失変化Δα/Δλを0.13cm−1/nm以上にすることにより従来の半導体レーザ装置に比べて発振波長変化が1/2以下になり、顕著な発振波長変化の抑制効果を有する半導体レーザ装置を構成することができる。
またパラメータak、b1、c1はここに記載したものに限定するものではない。
また各実施の形態の光半導体装置の伝播する光を、980nm近傍の光を例として、記述しているが、この波長に限らず、他の波長の可視光、赤外線、遠赤外線にも実施することができる。
また、ここでは例として半導体レーザ装置を例として説明したが、他の光半導体装置、例えば半導体光増幅器(SOA)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、光変調器などに適用できることはいうまでもない。
Claims (1)
- 第1の端面に高反射率膜が配設された共振器を有し、利得が極大値となる第1の波長を有する半導体レーザと、
この半導体レーザの上記共振器の第1の端面と対向する第2の端面上に配設され、反射率が極小値となる第2の波長が上記第1の波長より長くかつ反射率が4%以下である低反射率膜とを備え、
上記第1の波長近傍における波長変化に対するミラー損失の変化率が0.13cm−1/nm以上であることを特徴とする光半導体装置。
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