JP2010285328A - 透光性セラミックス及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】可視光線の透過率が高く、しかも常圧焼結法というセラミックス分野で通常用いられている方法で製造可能な透光性セラミックス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の透光性セラミックスは、結晶性金属酸化物粒子からなる焼結体であり、平均粒子径は1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径は1nm以上かつ7nm以下、可視光線透過率は80%以上、相対密度は80%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、透光性セラミックス及びその製造方法に関し、更に詳しくは、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の結晶性金属酸化物粒子を用いることにより、可視光線の透過率が高く、しかも常圧焼結法というセラミックス分野で通常用いられている方法で製造可能な透光性セラミックス及びその製造方法に関するものである。
従来、透光性セラミックスとしては、透光性アルミナ(Al)、透光性マグネシア(MgO)、PLZT((Pb,La)(Zr,Ti)O)等がよく知られていたが、近年、従来品より可視光線の透過率が高く、しかも、複雑な制御無しに、簡単な方法で容易に作製することができる透光性セラミックスが提案されている(特許文献1)。
この透光性セラミックスは、Alと、Y、Ce、Nd、Sm、La、Gd、Prからなる群より選ばれた1種または2種以上の元素を含有する金属酸化物からなる結晶粒径が100nm以下の透光性セラミックスであり、上述の元素を含有するアモルファス合金を酸素または大気中で加熱、例えば、AlYまたはAlNdの組成を有する厚み20μm〜30μmのアモルファス金属薄膜を大気雰囲気中、1500℃にて1時間加熱することにより得られる。
また、上記以外の透光性セラミックスとしては、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素の総含有量が50ppm以下であり、厚み0.85mmにおける波長が600nmの光の直線透過率が40%以上の透光性アルミナ焼結体が提案されている(特許文献2)。この透光性アルミナ焼結体における結晶組織の平均粒径は5μm〜50μmである。
この透光性アルミナ焼結体は、多面体一次粒子からなるBET比表面積1〜10m/gの純度99.99%以上のαアルミナ粉末にMgOなどの焼結助剤を添加した混合粉末を、成形し、常圧から真空までの還元性雰囲気下、1700℃〜1900℃の範囲で焼成することにより得られる。
さらに、上記以外の透光性セラミックスとして、相対密度が95%以上、結晶粒径が100nm以下、純度が99.5%以上、平均細孔径が100nm以下であり、組成として、酸化物系セラミックス、窒化物系セラミックス、硫化物系セラミックスおよびフッ化物系セラミックスのうち少なくとも1種を含有する透光性セラミックスが提案されている(特許文献3)。
この透光性セラミックスは、特に、YAG(Yttrium Aluminium Garnet)、Al、SiO、Y、ZrO、Si、AlN、ZnS、CaFおよびBaFのうち少なくとも1種を含有する組成であり、この透光性セラミックスは、純度が99.5%以上、粒径が5nm〜100nmの原料粉末を、500MPa以上にて加圧焼成することで得られる。
特許第2880860号公報 特開2001−64075号公報 特開2006−315878号公報
ところで、従来のAl及びY等を含む透光性セラミックスでは、用いられる材料がAlと、Y、Ce、Nd、Sm、La、Gd、Pr等の元素を含む金属酸化物に限定されてしまうという問題点、及び1500℃という高温で加熱する必要があるために、製造コストが高くなるという問題点があった。
また、従来の光透過率が40%以上の透光性アルミナ焼結体では、原料として使用するアルミナが特定の物性を有するαアルミナに限定され、容易に製造することができないという問題点があった。また、この透光性アルミナ焼結体は、結晶粒径が5μm〜50μmと粗大化しているために、高い機械的特性が得られないという問題点があった。
さらに、従来の相対密度が95%以上であり、結晶粒径が100nm以下の透光性セラミックスでは、材料がYAG、Al、SiO、Y、ZrO、Si、AlN、ZnS、CaF、BaFに限定されてしまうという問題点、及び原料粉末を500MPa以上にて加圧焼成するために、高温高圧下にて焼成することができる設備が必要となり、したがって、製造コストが高くなり、実用的ではないという問題点があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、可視光線の透過率が高く、しかも常圧焼結法というセラミックス分野で通常用いられている方法で製造可能な透光性セラミックス及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の結晶性金属酸化物粒子を含む成形材料を所定の形状に成形して透明セラミック成形体とし、この透明セラミック成形体を常圧にて焼成すれば、可視光線透過率が80%以上の透光性セラミックスを容易に得ることができ、しかも安価であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の透光性セラミックスは、結晶性金属酸化物粒子からなる焼結体であって、平均粒子径は1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径は1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率は80%以上であることを特徴とする。
前記結晶性金属酸化物粒子は、Zr、Ti、Yの群から選択される1種または2種以上の元素を含むことが好ましい。
前記焼結体の相対密度は80%以上であることが好ましい。
本発明の透光性セラミックスの製造方法は、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の結晶性金属酸化物粒子を含む成形材料を所定の形状に成形し、透明セラミック成形体を得る成形工程と、前記透明セラミック成形体を常圧にて焼成し、平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径が1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率が80%以上の透光性セラミックスを得る焼成工程と、を備えたことを特徴とする。
前記結晶性金属酸化物粒子は、Zr、Ti、Yの群から選択される1種または2種以上の元素を含むことが好ましい。
前記成形材料は、前記結晶性金属酸化物粒子を溶媒中に分散してなる結晶性金属酸化物粒子分散液であることが好ましい。
本発明の透光性セラミックスによれば、結晶性金属酸化物粒子からなる焼結体の平均粒子径を1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径を1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率を80%以上としたので、機械的強度を保持した状態で、可視光線透過率を向上させることができる。したがって、従来の透光性セラミックスでは対応が困難であった高温用光学レンズ、ナトリウム放電ランプまたはメタルハライドランプ等の高輝度ランプの発光管、マイクロ波照射窓、高温用窓材、赤外線用窓材、光シャッタ等へ適用することが可能になる。
本発明の透光性セラミックスの製造方法によれば、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の結晶性金属酸化物粒子を含む透明セラミック成形体を、常圧にて焼成するので、可視光線透過率が80%以上の透光性セラミックスを、常圧焼結法というセラミックス分野で通常用いられている方法、及び汎用の常圧焼成設備を用いて容易に作製することができ、従来の透光性セラミックスと比べて容易かつ安価に作製することができる。
本発明の透光性セラミックス及びその製造方法を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の透光性セラミックスは、結晶性金属酸化物粒子からなる焼結体であり、この焼結体の平均粒子径は1nm以上かつ20nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ5nm以下、さらに好ましくは2nm以上かつ5nm以下である。
ここで、この焼結体の平均粒子径を1nm以上かつ20nm以下と限定した理由は、この範囲が可視光線に対して透明性が高く、かつ均質性に優れた透光性セラミックスを得ることができるからである。
この焼結体の平均細孔径は1nm以上かつ7nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ6nm以下、さらに好ましくは1nm以上かつ5nm以下である。
ここで、この焼結体の平均細孔径を1nm以上かつ7nm以下と限定した理由は、平均細孔径が1nm未満という数値は、測定値自体に有意性がないからであり、一方、平均細孔径が5nmを超えると、可視光線透過率の減衰が顕著となるからである。
この焼結体の相対密度((焼結体の測定密度/焼結体の理論密度)×100(%))は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
ここで、この焼結体の相対密度を80%以上と限定した理由は、相対密度が80%未満では、焼結体中に気孔、マイクロクラック、欠陥等が生じ易くなり、その結果、緻密な焼結体が得られず、得られた焼結体の可視光線透過率も低く、高温用光学レンズ、ナトリウム放電ランプまたはメタルハライドランプ等の高輝度ランプの発光管、マイクロ波照射窓、高温用窓材、赤外線用窓材、光シャッタ等の光学的特性を満足することができなくなるからである。
この焼結体の可視光線透過率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
ここで、この焼結体の可視光線透過率を80%以上とした理由は、可視光線透過率80%が、高温用光学レンズ、ナトリウム放電ランプまたはメタルハライドランプ等の高輝度ランプの発光管、マイクロ波照射窓、高温用窓材、赤外線用窓材、光シャッタ等における可視光線透過率の下限値だからであり、可視光線透過率が80%を下回ると、上記の光学部材の光学的特性を満足することができず、実用に供されないので、不適である。
この焼結体を構成する結晶性金属酸化物粒子とは、単結晶または多結晶の金属酸化物からなる粒子のことであり、この結晶性の有無は、例えば、粉末X線回折を用いて定性分析を行った場合に、得られたX線回折図形の回折線が先鋭であるか否かや、低角側から高角側に向かって減少する非晶質特有のハローがあるか否かにより評価することができる。
例えば、正方晶ジルコニア粒子やルチル型チタニア粒子の場合、正方晶やルチル型に特有の複数の回折線が観測され、低角側にはハローが殆ど認められない。
この金属酸化物としては、可視光線に対する透明性及び均質性に優れていることが必要であり、Zr、Ti、Yの群から選択される1種または2種以上の元素を含む金属酸化物が好ましい。
このような金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムを含む複合酸化物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムを含む複合酸化物、酸化チタン、酸化チタンを含む複合酸化物、酸化セリウム、酸化セリウムを含む複合酸化物、酸化亜鉛、酸化亜鉛を含む複合酸化物、酸化インジウム、酸化インジウムを含む複合酸化物等が挙げられる。
次に、本実施形態の透光性セラミックスの製造方法について説明する。
この透光性セラミックスは、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の結晶性金属酸化物粒子を含む成形材料を所定の形状に成形し、透明セラミック成形体を得る成形工程と、前記透明セラミック成形体を常圧にて焼成し、平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径が1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率が80%以上の透光性セラミックスを得る焼成工程とにより、得ることができる。
次に、この透光性セラミックスの製造方法について詳細に説明する。
透光性セラミックスの出発原料である成形材料に含まれる結晶性金属酸化物粒子の一次粒子径は、1nm以上かつ10nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ5nm以下、さらに好ましくは2nm以上かつ5nm以下である。
ここで、結晶性金属酸化物粒子の一次粒子径を1nm以上かつ10nm以下と限定した理由は、この範囲が、可視光線に対して透明性が高く、かつ均質性に優れた透明セラミック成形体を容易に得ることができる範囲であるからである。
この結晶性金属酸化物粒子の一次粒子径が1nm未満では、この結晶性金属酸化物粒子の結晶性が乏しくなるために、屈折率等の粒子特性を発現することが難しくなり、また、粒子同士の凝集も生じ易くなり、この結晶性金属酸化物粒子を用いて成形体を作製した場合に、この成形体における粒子の集合状態が不均一(均質性が低下)になり、可視光線に対する透過率も低下するので好ましくなく、一方、一次粒子径が10nmを超えると、粒子同士の凝集は軽減することができるものの、この結晶性金属酸化物粒子を用いて成形体を作製した場合に、この成形体における粒子の集合状態が不均一(均質性が低下)になり、可視光線に対する透過率も低下するので好ましくない。
この成形材料としては、上記の結晶性金属酸化物粒子の分散性がよく、しかも凝集等が生じない点で、上記の結晶性金属酸化物粒子を溶媒中に分散させた結晶性金属酸化物粒子分散液が好ましい。
この結晶性金属酸化物粒子分散液は、上記の結晶性金属酸化物粒子を溶媒と混合し、必要に応じて分散剤や水溶性バインダーを混合し、次いで、この混合物にサンドミル、ホモジナイザー等の分散機を用いて分散処理を施すことにより、得ることができる。
このような溶媒としては、水が好適であるが、その他、例えば、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール(イソペンチルアルコール)、2−メチル−2−ブタノール(t−ペンチルアルコール)、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール(ネオペンチルアルコール)、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンゼンメタノール(ベンジルアルコール)、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、α−テレピネオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、プロピレンオキシド、メチルエチルケトン、2−エチル酪酸、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、トルイジン、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の有機溶媒も好適に用いられる。これらの溶媒のうち1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
この分散液における結晶性金属酸化物粒子の分散粒子径は、1nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ50nm以下、さらに好ましくは1nm以上かつ10nm以下である。
ここで、結晶性金属酸化物粒子の分散粒子径を1nm以上かつ100nm以下と限定した理由は、この範囲が、この結晶性金属酸化物粒子分散液を用いて透明セラミック成形体を作製した場合に、平均細孔径が1nm以上かつ10nm以下に制御され、可視光線に対して透明性が高く、かつ均質性に優れた透明セラミック成形体を容易に得ることができる範囲であるからである。
この分散液における結晶性金属酸化物粒子の含有率は1質量%以上かつ70質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ50質量%以下である。その理由は、含有率が1質量%を下回ると、乾燥過程で散逸させる溶媒の量が多くなってしまい、その結果、成形体の製造に要する時間が長くなり過ぎてしまい、成形体の生産効率が低下するからであり、一方、含有率が70質量%を超えると、粘性及び流動性が低下し、この結晶性金属酸化物粒子の均一分散が難しくなり、その結果、得られた成形体の均質性が低下するからである。
この分散液は、その特性を損なわない範囲において、分散剤、水溶性バインダー等を含有していてもよい。
分散剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤等のイオン系界面活性剤、あるいは非イオン系界面活性剤が好適に用いられる。これらの界面活性剤は、使用する結晶性金属酸化物粒子の種類や粒子径により適宜選択すればよい。
水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
このような水溶性バインダーの添加量は、得られた成形体の取扱時における欠け破損等の防止、あるいは、この成形体をさらに焼成する等、その目的に応じて適宜設定すればよい。
このようにして得られた結晶性金属酸化物粒子分散液を、成形用型に注入する。
成形用型としては、この結晶性金属酸化物粒子分散液を透過することなく良好に保持するとともに、目的とする成形体の外形形状を維持することができるものであればよく、例えば、ステンレス鋼、テトラフルオルエチレン等からなる型が好適である。
次いで、この分散液が注入された成形用型を、0.1g/cm/hr以下、より好ましくは0.01g/cm/hr以下、さらに好ましくは0.005g/cm/hr以下の乾燥速度にて乾燥する。
ここで、乾燥速度の上限値を0.1g/cm/hrとした理由は、この上限値が、得られる成形体に乾燥時における収縮に起因する反りや割れ等が生じない限界であり、かつ、この成形体の可視光線透過率を80%以上とすることができる限界であるからである。
この分散液が注入された成形用型を0.1g/cm/hr以下の乾燥速度にて乾燥することにより、この分散液に含まれる溶媒は極めてゆっくりと蒸発することとなり、この溶媒の緩慢な蒸発により分散液中の結晶性金属酸化物粒子同士は徐々に接近して最も安定した状態で互いに接触することとなり、結晶性金属酸化物粒子の粒子間接合を制御することが可能になる。これにより、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下である結晶性金属酸化物粒子を多数個集合させた透明セラミック成形体を容易に得ることが可能になる。さらに、この透明セラミック成形体は、粒子間接合の制御により保形性を付与することが可能になる。
また、結晶性金属酸化物粒子分散液の分散粒子径を1nm以上かつ100nm以下に保持したまま成形体を得ることにより、成形体の平均細孔径を1nm以上かつ10nm以下に制御することが可能である。
このようにして得られた透明セラミック成形体を、常圧の大気中にて焼成する。
ここで、常圧とは、1013±50hPaの範囲の圧力のことであり、自然界における大気圧の変動範囲である。
焼成時の温度範囲及び時間は、上記の透明セラミック成形体が緻密な焼結体となる温度範囲であればよく、結晶性金属酸化物粒子の組成や平均一次粒子径により異なるが、例えば、ジルコニア粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、チタニア粒子等の場合、焼成温度の範囲は、400℃以上かつ1500℃以下、好ましくは500℃以上かつ1000℃以下であり、焼成時間の範囲は、10分以上かつ72時間以下、好ましくは30分以上かつ6時間以下である。
以上により、平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径が1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率が80%以上の焼結体からなる透光性セラミックスを得ることができる。
以上説明したように、本実施形態の透光性セラミックスによれば、結晶性金属酸化物粒子からなる焼結体の平均粒子径を1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径を1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率を80%以上としたので、機械的強度を十分に保持した状態で、可視光線透過率を向上させることができる。
また、緻密性が高く、均質性に優れているので、耐熱性及び高精度が要求される光学用部材に適用可能である。
本実施形態の透光性セラミックスの製造方法によれば、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の結晶性金属酸化物粒子を含む透明セラミック成形体を、常圧にて焼成するので、可視光線透過率が80%以上の透光性セラミックスを、汎用の常圧焼成設備を用いて容易に作製することができ、従来の透光性セラミックスと比べて容易かつ安価に作製することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
一次粒子径が3nmのイットリア安定化ジルコニア(8mol%Y−ZrO:8YSZ)粒子を水に分散した分散液(分散粒子径:10nm、固形分(8mol%Y−ZrO):20質量%、住友大阪セメント製)5gを、テフロン(登録商標)製の容器(内径20mm、高さ25mm)に注入し、この分散液が注入された容器を、乾燥機内にて2日間乾燥させ、実施例1の透明セラミック成形体を得た。
次いで、この透明セラミック成形体を、大気(常圧)中、600℃にて3時間焼成し、実施例1の焼結体を得た。
この焼結体の短軸側の厚みは1mmであった。
次いで、この焼結体の可視光線透過率、相対密度、平均粒子径、平均細孔径、表面粗さを測定した。また、上記の分散液の分散粒子径を測定した。これらの測定方法は下記のとおりである。また、これらの測定結果を表1に示す。
(1)可視光線透過率
焼結体の短軸側の可視光線透過率を、透過率測定装置を用いて測定した。
(2)相対密度
焼結体の密度を、密度測定器 アキュピック1330(島津製作所社製)を用いて測定し、この焼結体の測定密度と、この焼結体の理論密度との比から、この焼結体の相対密度を求めた。
(3)平均粒子径
X線回折装置 X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いて焼結体のX線回折図形(チャート)を得、このX線回折図形(チャート)の回折線のピークの半値幅からScherrerの式により焼結体の結晶子の平均粒子径を算出した。
(4)平均細孔径
焼結体の平均細孔径を、高精度ガス/蒸気吸着測定装置 BELSORP(日本ベル株式会社製)を用いて測定した。
(5)表面粗さ
焼結体の表面の一辺が5μmの正方形の領域を、原子間力顕微鏡 SP−300(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて測定し、表面粗さを算出した。
(6)分散粒子径
動的散乱法を測定原理としたZetasizer Nano S(Malvern社製)を用いて測定した。
(実施例2)
透明セラミック成形体の焼成温度を800℃に変更した以外は、実施例1に準じて、実施例2の焼結体を得た。
次いで、この焼結体の可視光線透過率、相対密度、平均粒子径、平均細孔径、表面粗さ、を実施例1に準じて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
(実施例3)
一次粒子径が3nmのチタニア(TiO)粒子を水に分散した分散液(分散粒子径:8nm、固形分(TiO):20質量%、住友大阪セメント製)5gを、テフロン(登録商標)製の容器(内径20mm、高さ25mm)に注入し、この分散液が注入された容器を、乾燥機内にて2日間乾燥させ、実施例3の透明セラミック成形体を得た。
次いで、この透明セラミック成形体を、大気(常圧)中、600℃にて3時間焼成し、実施例3の焼結体を得た。
次いで、この焼結体の可視光線透過率、相対密度、平均粒子径、平均細孔径、表面粗さ、を実施例1に準じて測定した。また、上記の分散液の分散粒子径を実施例1に準じて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例1)
透明セラミック成形体の焼成温度を1000℃に変更した以外は、実施例1に準じて、比較例1の焼結体を得た。
次いで、この焼結体の可視光線透過率、相対密度、平均粒子径、平均細孔径、表面粗さ、を実施例1に準じて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例2)
一次粒子径が100nmのイットリア安定化ジルコニア(8mol%Y−ZrO:8YSZ)粒子(TZ−8Y:東ソー株式会社製)2gを、内径20mmの金型に投入し、100MPaの圧力にて3分間、一軸加圧成形し、比較例2のセラミック成形体を得た。
次いで、このセラミック成形体を、大気(常圧)中、600℃にて3時間焼成し、比較例2の焼結体を得た。
次いで、この焼結体の可視光線透過率、相対密度、平均粒子径、平均細孔径、表面粗さ、を実施例1に準じて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例3)
セラミック成形体の焼成温度を1000℃に変更した以外は、比較例2に準じて、比較例3の焼結体を得た。
次いで、この焼結体の可視光線透過率、相対密度、平均粒子径、平均細孔径、表面粗さ、を実施例1に準じて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
(比較例4)
セラミック成形体の焼成温度を1400℃に変更した以外は、比較例2に準じて、比較例4の焼結体を得た。
次いで、この焼結体の可視光線透過率、相対密度、平均粒子径、平均細孔径、表面粗さ、を実施例1に準じて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
Figure 2010285328
表1によれば、実施例1〜3の焼結体は、可視光線透過率が80%を超えており、相対密度も80%を超えており、平均細孔径も1nm以上かつ7nm以下の範囲に入っており、透明性、均質性及び緻密性に優れていることが分かった。また、これらの焼結体の表面は、極めて平滑性に富むものであった。以上により、実施例1〜3の焼結体は、優れた透光性セラミックスであることが分かった。
一方、比較例1は、透明セラミック成形体の焼成温度を1000℃と高く設定したために、得られた焼結体は、相対密度が94%と高く、焼結性は向上したものの、粒成長が進行し過ぎて粒子が粗大化してしまい、その結果、可視光線透過率が大きく低下し、失透してしまっていた。
比較例2は、一次粒子径が100nmのイットリア安定化ジルコニア粒子を用い、しかも600℃という低温で焼成したために、得られた焼結体は、十分に焼結しておらず、可視光線透過率も大きく低下し、失透してしまっていた。
比較例3、4は、一次粒子径が100nmのイットリア安定化ジルコニア粒子を用いて1000℃以上の高温で焼成したために、得られた焼結体は、粗大粒子が生じて焼結性が悪くなり、可視光線透過率も大きく低下し、失透してしまっていた。
本発明の透光性セラミックスは、結晶性金属酸化物粒子からなる焼結体の平均粒子径を1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径を1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率を80%以上としたことにより、機械的強度を十分に保持した状態で可視光線透過率を高めることができ、均質性及び緻密性に優れたものとすることができ、さらに、製造も容易にすることができたものであるから、従来の透光性セラミックスでは対応が困難であった高温用光学レンズ、ナトリウム放電ランプまたはメタルハライドランプ等の高輝度ランプの発光管、マイクロ波照射窓、高温用窓材、赤外線用窓材、光シャッタ等の分野においてもその効果は大であり、その工業的効果は極めて大きなものである。

Claims (6)

  1. 結晶性金属酸化物粒子からなる焼結体であって、
    平均粒子径は1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径は1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率は80%以上であることを特徴とする透光性セラミックス。
  2. 前記結晶性金属酸化物粒子は、Zr、Ti、Yの群から選択される1種または2種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1記載の透光性セラミックス。
  3. 前記焼結体の相対密度は80%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の透光性セラミックス。
  4. 一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の結晶性金属酸化物粒子を含む成形材料を所定の形状に成形し、透明セラミック成形体を得る成形工程と、
    前記透明セラミック成形体を常圧にて焼成し、平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下、平均細孔径が1nm以上かつ7nm以下、かつ可視光線透過率が80%以上の透光性セラミックスを得る焼成工程と、
    を備えたことを特徴とする透光性セラミックスの製造方法。
  5. 前記結晶性金属酸化物粒子は、Zr、Ti、Yの群から選択される1種または2種以上の元素を含むことを特徴とする請求項4記載の透光性セラミックスの製造方法。
  6. 前記成形材料は、前記結晶性金属酸化物粒子を溶媒中に分散してなる結晶性金属酸化物粒子分散液であることを特徴とする請求項4または5記載の透光性セラミックスの製造方法。
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