JP2010283309A - 電気化学キャパシタ用電解液およびそれを用いた電気化学キャパシタ - Google Patents
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Abstract
【課題】 高温で使用しても内部抵抗が小さく、出力特性に優れた電気化学キャパシタ用電解液およびそれを用いた電気化学キャパシタを提供する。
【解決手段】 非水溶媒としてラクトン化合物を含有し、電解質塩としてテトラフルオロホウ酸塩を含有する電気化学キャパシタ用電解液において、ホウ酸を100〜8000重量ppmおよびフッ素イオンを30〜3000重量ppm含有することを特徴とする電解液。
【選択図】 なし
Description
電気二重層キャパシタの分極性電極には、一般的に活性炭素繊維や活性炭粒子の成型体や塗布膜が使用される。一方、シュードキャパシタの非分極性電極には、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化鉛などの金属酸化物あるいはポリピロールやポリチオフェンなどの導電性高分子を使用する。電気化学キャパシタに使用される電解質には、例えば、硫酸水溶液あるいは水酸化カリウム水溶液などの水系電解液、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒に四級アンモニウム塩あるいは四級ホスホニウム塩などを溶解した非水系電解液、ポリエチレンオキシド−アルカリ金属塩錯体あるいはRbAg4I5などの固体電解質などがある(非特許文献2)。
電気二重層キャパシタの単セルに蓄積されるエネルギーWは、一定電流Iで、電圧ViからVfまで放電させる時、次式で表わされる。
[数1]
W=1/2・C・(Vi 2−Vf 2)=1/2・C・[(V0−IR)2−Vf 2]
C:静電容量(F)
V0:開回路電圧(V)
R:内部抵抗(Ω)
数1に示されるように、内部抵抗R(Ω)を小さくすることは、エネルギー密度の増加に繋がる。このように、電気二重層キャパシタを高性能化する上で、内部抵抗の低減は非常に重要である。
一方、非水溶媒としてラクトン化合物を含有する電解液は、従来使用されているプロピレンカーボネートを主溶媒とした電解液と同等の耐電圧を有し、同一の塩濃度の場合、プロピレンカーボネートを主溶媒とした電解液より高い電気伝導率が得られる。すなわち、γ-ブチロラクトンやその誘導体を含有する電解液を用いた方が、電気二重層キャパシタ
の内部抵抗は小さくなる。しかしながら、γ-ブチロラクトンおよびその誘導体を含有す
る電解液を用いた電気二重層キャパシタは、高温での保存や充放電により内部抵抗が大幅に上昇することから、電気二重層キャパシタへの採用は非常に限定的であった。
(1)非水溶媒としてラクトン化合物を含有し、電解質塩としてテトラフルオロホウ酸塩を含有する電気化学キャパシタ用電解液において、ホウ酸を100〜8000重量ppmおよびフッ素イオンを30〜3000重量ppm含有することを特徴とする電解液。
(2)ラクトン化合物としてγ−ブチロラクトンを含有することを特徴とする(1)記載の電解液。
(4)電解質塩を、0.5〜3.0mol/lの濃度で含有することを特徴とする(1
)ないし(3)のいずれかに記載の電解液。
(6)(5)記載の炭素質物質が、活性炭であることを特徴とする電気化学キャパシタ。
上記のように、本発明では、非水溶媒としてラクトン化合物を含有し、電解質塩としてテトラフルオロホウ酸塩を含有する電気化学キャパシタ用電解液において、ホウ酸を100〜8000重量ppmおよびフッ素イオンを30〜3000重量ppm含有することで電気化学キャパシタの内部抵抗が小さくなる、というこれまでの検討からは予想できなかった効果を見出し、本発明を完成した。
[非水溶媒]
本発明に係る電解液の非水溶媒は、ラクトン化合物を含有することを特徴とする。ラクトン化合物としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等の5〜7員環のものが挙げられる、これらは単独で使用しても、複数を併用して用いてもよい。これらの中でも電解質塩を高濃度で溶解し、電気伝導率の高い電解液が得られる、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンが好ましく、γ-ブチロラクトンがさらに好ましい。これらは単独で使用しても、複数を併用してもよい。 非水系溶媒の全量をラクトン化合物とすれば、最も電気化学キャパシタの抵抗の低減や充放電による抵抗上昇の抑制に効果があるが、他の溶媒との混合使用も可能である。混合する非水溶媒としては、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;酢酸メチル、プロピオン酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル類;アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;およびスルホラン、トリメチルホスフェートなどの非プロトン性溶媒から選ばれ、2種類以上が混合されていてもよい。混合される非水溶媒の中で、ラクトン化合物が最も多く含まれることが好ましく、その割合は、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
本発明に係る電解液に使用される電解質は、テトラフルオロホウ酸塩を含有することを特徴とする。テトラフルオロホウ酸塩は、テトラフルオロホウ酸アニオンと第四級アンモニウムイオン、第四級ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリニウムイオン、イミダゾリウムイオン、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンなどのカチオンとを組み合わせてなる塩である。
ウム、1-エチル-1-メチルピロリジニウム、1,1’-スピロビピロリジニウム、1,1
−ジメチルピペリジニウム、1-エチルピリジニウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、テトラメチルホスホニウム、トリエチルメチルホ
スホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウムなどが挙げられ、2種類以上が混合されていてもよい。
が好ましく、1,1’-スピロビピロリジニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、
トリエチルメチルアンモニウムがさらに好ましく、トリエチルメチルアンモニウムが特に好ましい。
本発明に係る電解液中の、ホウ酸の総含有率は、下限としては、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、さらに好ましくは300ppm以上、特に好ましくは500ppm以上であり、上限としては、通常8000ppm以下、好ましくは7000ppm以下、さらに好ましくは5000ppm以下、特に好ましくは3000ppm以下である。ホウ酸の含有率が、上限値を超えている場合には、充放電により、電気化学キャパシタの内部抵抗は大きくなる。また、下限値を下回る場合には、電気化学キャパシタの内部抵抗低減を小さくする、十分な効果が得られない。
[電解液の調製]
テトラフルオロホウ酸塩は、テトラフルオロホウ酸とハロゲン化物、水酸化物または炭酸塩を反応させる一般的な方法で合成できる。得られたテトラフルオロホウ酸塩を、溶媒に溶解することで電解液が得られる。
テトラフルオロホウ酸は、水の存在下で下記の反応式(I)から(IV)のように段階
的な加水分解を起こす。
HBF4 + H2O → HBF3OH + HF (I)
HBF3OH + H2O → HBF2(OH)2 + HF (II)
HBF2(OH)2 + H2O → HBF(OH)3 + HF (III)
HBF(OH)3 → B(OH)3 + HF (IV)
したがって、テトラフルオロホウ酸塩は、テトラフルオロホウ酸の加水分解物の〔BFn(OH)4−n〕−(nは1〜3の自然数)やホウ酸を含む。通常、電気化学キャパシタ用の電解液では、これらは再結晶法などの精製によって除去されている。すなわち、ホウ酸やフッ素イオンは、テトラフルオロホウ酸の加水分解物の一部として生成するが、電解液中の含有率は、テトラフルオロホウ酸塩を再結晶法などで精製することにより低減することが可能である。反対に、テトラフルオロホウ酸塩と水を反応させ、BF4 -部分の加水分解を進行させることで、電解液中のホウ酸やフッ素イオンの含有率を増加させることが可能である。また、電解液にホウ酸や四級アンモニウムフルオリドなどを溶解して、電解液中のホウ酸やフッ素イオンの含有率を増加させることも可能である。本発明においては、非水溶媒としてラクトン化合物を含有し、電解質塩としてテトラフルオロホウ酸塩を含有する電気化学キャパシタ用電解液において、ホウ酸を100〜8000重量ppmおよびフッ素イオンを30〜3000重量ppm含有することで得られるため、電解液中のホウ酸やフッ素イオンは、テトラフルオロホウ酸やテトラフルオロホウ酸塩のBF4 −部分より生成したものでも、別途添加したものでも構わない。
電解液中のホウ酸の含有率は、例えば、ホウ酸と糖や糖アルコールとの反応によって生じる錯体を滴定することで定量できる。糖としては、D-グルコース、D-マンノースなどが使用でき、糖アルコールとしては、D-マンニトール、D-ソルビトール、D-キシリト
ールなどが使用できる。電解液中のフッ素イオン含有率は、イオンクロマトグラフィーによって定量できる。
。
上述の炭素質物質を主体として用いる分極性電極は、通常、該炭素質物質、導電剤およびバインダー物質から構成される。該電極は、従来より知られている方法によって成形することが可能である。たとえば、炭素質物質とアセチレンブラックとの混合物に、ポリテトラフルオロエチレンを添加し、混合した後、プレス成形して得られる。また、炭素質物質とピッチ、タール、フェノール樹脂などのバインダー物質を混合して成形した後、不活性雰囲気下で熱処理して焼結体が得られる。あるいは、導電剤やバインダーを用いず、炭素質物質のみを焼結して分極性電極とし、または導電剤を用いず、炭素質物質とバインダーを焼結して分極性電極とすることも可能である。電極の形状は、基材表面の薄い塗布膜、シート状または板状の成形体、および複合物からなる板状成形体のいずれであってもよい。
バインダー物質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボ
キシメチルセルロース、ポリイミド、フェノール樹脂、石油ピッチおよび石炭ピッチが好ましく、1種または2種以上を用いることができる。
集電体は、電気化学的および化学的に耐食性なものであればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、正極集電体としてはステンレス、アルミニウム、チタン、タンタルなど;負極集電体としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケルおよび銅などが、好適に使用される。
[セルの作製]
電気二重層キャパシタ用塗工型電極(Al箔厚30μm、活性炭層厚85μm、宝泉(株)より購入)をタブ部を持った長方形状に切り出し、各タブ部にスポット溶接でアルミ製のリードを溶接し、一対の電極を得た。得られた電極を0.1torr以下の真空中、150 ℃で12時間乾燥した後、露点−40℃以下の乾燥窒素を流通したグローブボック
ス中へ移動した。グローブボックス中で、活性炭電極とポリプロピレン製セパレータを、セパレータ、電極、セパレータ、電極、セパレーターの順に積層した。この積層体をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内にリード端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に1.0mL注入し、真空封止を行ない、シート状電気二重層キャパシタを作製した。
得られた電気二重層キャパシタを温度25℃の恒温槽内で市販の充放電試験装置により、2.8V印加した後、0.5mAの定電流で放電した。これを3サイクル繰り返し、特性を安定化させた。その後、恒温槽内の温度を80℃にして、2.8Vの定電圧を6時間連続印加した後、10mAの定電流で放電し、放電カーブから電気二重層キャパシタの内部抵抗を算出した。
下記(A)〜(E)のテトラフルオロホウ酸塩を用意した。
(A)ホウ酸含有率100重量ppm、フッ素イオン含有率20重量ppmのテトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム
(B)ホウ酸含有率8700重量ppm、フッ素イオン含有率530重量ppmのテトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム
(C)ホウ酸含有率28000重量ppm、フッ素イオン含有率19000重量ppmのテトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム
(D)ホウ酸含有率8700重量ppm、フッ素イオン含有率530重量ppmのテトラフルオロホウ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム
(E)ホウ酸含有率8700重量ppm、フッ素イオン含有率530重量ppmのテトラフルオロホウ酸1,1’-スピロビピロリジニウム
(A)と(B)を重量比4対1の割合でγ-ブチロラクトンに溶解し、濃度1.8mo
l/lの電解液を調製した。得られた電解液を用いて、電気二重層キャパシタを作製した
。高温下定電圧連続印加試験を実施し、電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(A)と(B)を重量比3対1の割合で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
(A)と(C)を重量比9対1の割合で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(A)と(C)を重量比3対1の割合で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
(B)を単独で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(A)を単独で用いて実施例1と同じ方法で電解液を調製した。調製した電解液99.99重量部に対して、ホウ酸0.01重量部を溶解させ、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
(A)を単独で用いて実施例1と同じ方法で電解液を調製した。調製した電解液99.3重量部に対して、ホウ酸0.7重量部を溶解させ、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(D)を単独で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(実施例9)
(E)を単独で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(A)を単独で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
(C)を単独で用いた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(A)を単独でプロピレンカーボネートに溶解させた以外は、実施例1と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
(B)を単独で用いた以外は、比較例3と同じ方法で電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
比較例1および3の結果から分かるように、ホウ酸およびフッ素イオンの含有率が少ない場合には、γ-ブチロラクトンを含有する電解液を用いた電気二重層キャパシタは、プ
ロピレンカーボネートを含有する電解液を用いた電気二重層キャパシタより内部抵抗が大きくなる。これは、高温、高電圧により電解液が一部分解したものと思われる。その一方で、上記範囲でホウ酸およびフッ素イオンを含有する実施例1〜9の電解液を用いた電気二重層キャパシタは、プロピレンカーボネートを含有する電解液を用いた電気二重層キャパシタより内部抵抗が小さくなった。なお、比較例3および4の結果から分かるように、プロピレンカーボネートを含有する電解液では、上記範囲でホウ酸およびフッ素イオンを含有していても内部抵抗は低減しなかった。
Claims (6)
- 非水溶媒としてラクトン化合物を含有し、電解質塩としてテトラフルオロホウ酸塩を含有する電気化学キャパシタ用電解液において、ホウ酸を100〜8000重量ppmおよびフッ素イオンを30〜3000重量ppm含有することを特徴とする電解液。
- ラクトン化合物としてγ−ブチロラクトンを含有することを特徴とする請求項1に記載の電解液。
- 電解質塩として、テトラフルオロホウ酸第四級アンモニウムおよび/またはテトラフルオロホウ酸第四級ホスホニウムを含有することを特徴とする請求項1または2記載の電解液。
- 電解質塩を、0.5〜3.0mol/lの濃度で含有することを特徴とする請求項1な
いし3のいずれか一項に記載の電解液。 - 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電解液を使用し、正極と負極の少なくとも一方は、炭素質物質を含有する電極であることを特徴とする電気化学キャパシタ。
- 請求項5記載の炭素質物質が、活性炭であることを特徴とする電気化学キャパシタ。
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