しかしながら、上記のように複数のセグメントがシール材で接合された従来の接合型DPFでは、熱応力が十分に緩和されているとは言えないのが現状である。例として、炭化珪素質のセラミックスで形成されたセグメントの複数を、炭化珪素質のシール材で接着したDPF100について、粒子状物質を堆積させた後に再生処理を行った際の温度分布を図14に示す。ここで、測定に用いたDPF100は、セル密度150cpsi,隔壁の厚さ0.4mmのセグメント4個×4個をシール材で接合した後、直径5.66インチ,長さ10インチの円柱状に外形を加工したものであり、再生処理は、粒子状物質8g/Lを堆積させた段階で、約680℃まで排ガス温度を上昇させた後でエンジンを一気にアイドリング状態とし、酸素供給量を増加させた環境下で粒子状物質を燃焼させることにより行った。なお、図14は、再生処理の開始後30秒が経過した時点での温度分布を示しており、図中の矢印は排ガスの流通方向を示している。
図14から、DPF100では再生処理時に温度分布が著しく不均一であることが分かる。即ち、ガス流通の下流側では900℃以上と極めて高温になっており、上流側である端部とでは約250℃の温度差が生じている。また、温度分布は径方向においても不均一であり、下流側ではフィルタ基体の中心部と周縁部とでは約200℃の温度差が生じている。このように、複数のセグメントが接合された接合型のDPFでは、セグメントの位置によって温度が大きく相違し、これに応じて熱膨張率に著しい差異が生じる。また、一般的に高温になるほど、セグメントを構成する材料の熱膨張率とシール材の熱膨張率との差異も大きくなる。その結果、従来の接合型のDPFでは、シール材層では緩和できないほどの大きな熱応力が発生し、亀裂の発生に至ることが多い。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、高温下で使用されることがあるガス浄化フィルタであって、フィルタ基体における温度分布が不均一であっても亀裂が発生しにくいガス浄化フィルタ、の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかるガス浄化フィルタは、
「ガスの流通路に配設されてガス中の物質を捕集するガス浄化フィルタであって、
多孔質セラミックス焼結体で形成され単一の軸方向に延びて列設された隔壁により区画された複数のセルからそれぞれ構成された複数のセグメント部、及び、隣接する前記セグメント部を連結する連結部を備えるフィルタ本体を具備し、
前記連結部は、前記セグメント部と一体のセラミックス焼結体で形成されていると共に、前記軸方向の長さが前記セグメント部の前記軸方向の長さより短く、
前記フィルタ本体は、隣接する前記セグメント部が前記連結部によって連結されている一体型フィルタ部、及び、隣接する前記セグメント部間に前記連結部が存在しない分離型フィルタ部から構成されている」ものである。
セグメント部を構成する「多孔質セラミックス焼結体」としては、炭化珪素質、窒化珪素質、コージェライト質、アルミナ質、ムライト質セラミックス等の多孔質焼結体を使用することができる。
連結部を構成する「セラミックス焼結体」は、多孔質であっても緻密質であっても良いが、多孔質であれば連結部によってもフィルタリング作用が発揮される。また、連結部を構成するセラミックス材料の種類は、セグメント部を構成するセラミックス材料の種類と同じであっても相違していても良いが、両者の熱膨張率が近い方が望ましい。
連結部が「前記セグメント部と一体のセラミックス焼結体で形成されている」構成としては、セグメント部の未焼成体と連結部の未焼成体とが焼結によって一体化した構成、セグメント部と連結部とが一体成形された後に焼成された構成、を例示することができる。
本発明は、複数のセグメント部を連結している連結部が、軸方向の長さにおいてセグメント部より短いことを特徴としている。この点で、上記のように、複数のセグメントのそれぞれが、軸方向の全長にわたり、シール材層を介して隣接するセグメントと接着されている従来のフィルタと大きく相違している。
上記構成の本発明のガス浄化フィルタでは、複数のセグメント部のそれぞれが、隣接するセグメント部と部分的にしか連結されていない。そのため、隣接するセグメント部が連結されていない分離型フィルタ部においては、各セグメント部は隣接するセグメント部によって動きを制限されることなく、伸縮することが可能である。即ち、温度分布が不均一となって、セグメント部ごとに熱膨張率に差異が生じても、個々のセグメント部はそれぞれの熱膨張率で熱膨張する自由度が高い。これにより、熱膨張率の差異に起因して、フィルタ本体に亀裂が発生することが抑制される。
加えて、本発明では、複数のセグメント部を連結している連結部が焼結体であることも特徴である。この点でも、無機粉末等をバインダーと混合して得たペースト状のシール材をセグメントの表面に塗布し、隣接するセグメントと接着した後、乾燥処理のみが行われてシール材層が形成されている従来の接合型フィルタと相違する。従来のフィルタでは、シール材層の弾性によって熱応力を緩和することを意図しているため、シール材層が焼成されることはない。これに対し、本発明では、セグメント部間に発生する熱応力を連結部によって緩和させるのではなく、連結部の長さを短くし、個々のセグメント部をそれぞれの熱膨張率に応じて、できるだけ自由に熱膨張させることにより熱応力の発生を抑制する。そのため連結部は、部分的な連結であってもセグメント部間を強固に連結させられることが必要となる。
そこで、本発明では、連結部をセグメント部と一体の焼結体とした。セラミックスの焼結体は、一般的に焼結していないセラミックス材料に比べて常温及び高温下での機械的強度が高い。従って、一体型フィルタ部において、複数のセグメント部は連結部を介して強固に一体化されており、複数のセグメント部の集合体としてのフィルタ本体の形態が保持され易いものとなっている。これにより、複数のセグメント部が部分的にのみ連結されている構成であっても、フィルタ本体の外形を切削加工する作業や、フィルタ本体をケーシング缶にセットする作業(キャニング)を、支障なく行うことができる。
更に、分離型フィルタ部においては、セグメント部において最外周に位置するセルに流入したガスは、隔壁を通過してセグメント部間の空間を流通する。そのため、隣接するセグメント部がシール材で接着されており、シール材層中はガスが流通することができない従来の接合型のフィルタと比べて、本発明のガス浄化フィルタはフィルタリングの効率が高いと共に、圧力損失が小さいという利点も有している。
本発明にかかるガス浄化フィルタは、
「前記一体型フィルタ部は、前記フィルタ本体においてガス流通の上流側となるべき端部側に形成されており、
前記分離型フィルタ部は、前記フィルタ本体においてガス流通の下流側となるべき端部側に形成されている」ものとすることができる。
ガス浄化フィルタがDPFとして用いられた場合、再生処理の際には、上述のように、ガス流通の下流側では上流側に比べてセグメント部が極めて高温となると共に、下流側では上流側に比べて温度分布が著しく不均一となりやすい。
上記構成の本発明では、複数のセグメント部が連結部で連結されていることにより、セグメント部の個々の伸縮が制限されている一体型フィルタ部は、再生処理の際にセグメント部の温度がさほど高くならず、且つ、セグメント部間の温度差も大きくない上流側である。そのため、一体型フィルタ部において個々のセグメント部の自由な伸縮が制限されていることは、熱応力に起因する亀裂の発生につながりにくい。一方、セグメント部が連結されていない分離型フィルタ部は、再生処理時にセグメント部の温度が極めて高温となることがあり、セグメント部間の温度差も大きくなりやすい下流側に設けられているため、個々のセグメント部がそれぞれの熱膨張率に応じて自由に熱膨張することができるという本発明の作用を、より効果的に得ることができる。
本発明にかかるガス浄化フィルタは、
「前記連結部は、前記一体型フィルタ部において、隣接する前記セグメント部間を閉塞している閉塞型連結部である」ものとすることができる。
隣接するセグメント部間が閉塞型連結部で閉塞されていることから、当然ながら、フィルタ本体において上流側の端部から下流側の端部まで、隣接するセグメント部間に貫通する空間は存在しない。なお、ここでは、連結部の内部に存在する連続気孔については、上記の“セグメント部間に貫通する空間”という概念に含めていない。
従って、上記構成の本発明によれば、ガス中の物質が捕集されることなく、隣接するセグメント部間を介して外部に排出される事態が防止されている。
本発明にかかるガス浄化フィルタは、
「前記連結部は、隣接する前記セグメント部間を前記軸方向に垂直な方向に架橋している架橋型連結部であって、架橋している方向に垂直な方向の幅は、隣接する前記セグメント部において互いに対面している側面の前記軸方向に垂直な方向の長さより短く、
前記セグメント部及び前記架橋型連結部の間には、未焼成の充填材によって未焼成材充填層が形成されている」ものとすることができる。
架橋型連結部の「架橋している方向に垂直な方向の幅」とは、換言すれば、架橋型連結部の軸方向に垂直な二方向の長さのうち、隣接するセグメント部間の距離に相当する長さ、ではない方の長さである。
「未焼成材充填層」は、炭化珪素・アルミナ・ムライト等のセラミックス粉末あるいはセメント等の無機材料粉末を、無機バインダー及び/又は有機バインダーと混合して得た充填材を、隣接するセグメント部間に充填した後、焼成することなく、有機成分や水分を除去するための熱処理を行うことによって形成することができる。なお、充填材には、アルミナ繊維等のセラミックス繊維を添加しても良い。
本発明の連結部は架橋型連結部であって、その幅は、連結部によって連結されているセグメント部の辺(即ち、セグメント部が隣接するセグメント部と対面している側面の軸方向に垂直な方向の長さ)より短いため、セグメント部の前記辺の全長にわたる幅で架橋する構成を採用した場合に比べて機械的強度が低い。そのため、万一、一体型フィルタ部に大きな熱応力が発生した場合には、架橋型連結部が破壊しやすく、その破壊によって熱応力を吸収・緩和することができる。
また、セグメント部より幅の短い架橋型連結部及びセグメント部間に生じる空間が、未焼成の充填材で充填され閉塞されていることにより、ガス中の物質が捕集されることなく、隣接するセグメント部間の空間を介して外部に排出されることが防止されている。そして、この充填材層は未焼成の充填材によって形成されているため、焼結体に比べれば機械的強度が低く、架橋型連結部の破壊によって熱応力を吸収・緩和するという作用が、充填材の存在によって妨げられることがないものとなっている。
本発明にかかるガス浄化フィルタは、
「前記分離型フィルタ部において隣接する前記セグメント部間に、前記セグメント部の表面に接着されていない充填材によって非接着材充填層が形成されている」ものとすることができる。
「非接着材充填層」としては、セラミックス繊維やシート状のセラミックス材料が、隣接するセグメント間に単に挿入されることにより形成された層を例示することができる。
フィルタ本体において分離型フィルタ部の占める割合が大きい場合、換言すれば、各セグメント部において他のセグメント部と連結されていない部分が長い場合は、ガス浄化フィルタの使用に際して、各セグメント部が振動しやすくなるおそれがある。これに対し、本発明では、分離型フィルタ部のセグメント部間に充填材の層が設けられているため、各セグメント部の振動を低減することができる。
加えて、セグメント部間に充填された充填材は、セグメント部の表面に接着されていないため、セグメント部に対して相対的に摺動可能である。これにより、各セグメント部は自由な伸縮を充填材によって制限されることがなく、個々のセグメント部がそれぞれの温度に応じた熱膨張率で自由に熱膨張できるという本発明の作用効果が、妨げられることのないものとなっている。
以上のように、本発明の効果として、高温下で使用されることがあるガス浄化フィルタであって、フィルタ基体における温度分布が不均一であっても亀裂が発生しにくいガス浄化フィルタ、を提供することができる。
以下、本発明の第一実施形態であるガス浄化フィルタについて、図1乃至図6に基づいて説明する。ここでは、ディーゼルエンジンから排出されるガスの流通路に配設されてガス中の粒子状物質を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタに、本発明のガス浄化フィルタを適用する場合を例示する。なお、焼結体は熱収縮により成形体より全体的にサイズが小さくなるが、このようなサイズ差については図面では表していない。
第一実施形態のガス浄化フィルタは、図1に示すように、多孔質セラミックス焼結体で形成され単一の軸方向Zに延びて列設された隔壁4により区画された複数のセル5からそれぞれ構成された複数のセグメント部10、及び、隣接するセグメント部10を連結する連結部11を備えるフィルタ本体1aを具備し、連結部11は、セグメント部10と一体のセラミックス焼結体で形成されていると共に、軸方向Zの長さLがセグメント部10の軸方向Zの長さNより短く、フィルタ本体1aは、隣接するセグメント部10が連結部11によって連結されている一体型フィルタ部Cf、及び、隣接するセグメント部10間に連結部11が存在しない分離型フィルタ部Sfから構成されている。
ここで、各セグメント部10において複数のセル5は、一方向に開放したセルと他方向に開放したセルとが交互となるように、それぞれの一端が封止部6によって封止されている。このようにセル5が交互に封止されていることにより、セグメント部10の軸方向Zが排ガスの流通方向に一致するようにガス浄化フィルタをガスの流通路に配設すると、排ガスは上流側に開口したセル5から流入し、多孔質の隔壁4を通過してから下流方向に開口したセルから流出するため、ガスが隔壁4を通過する際に、隔壁4の表面及び気孔内に排ガス中の粒子状物質が捕集される。
第一実施形態のフィルタ本体1aについてより詳細に説明すると、一体型フィルタ部Cfはフィルタ本体1aの一端側に形成されており、残部が分離型フィルタ部Sfとなっている。より具体的には、一体型フィルタ部Cfはフィルタ本体1aにおいてガス流通の上流側となるべき端部Eu側に形成されており、フィルタ本体1aにおいてガス流通の下流側となるべき端部Ed側が分離型フィルタ部Sfとなっている。加えて、連結部11は図1(c)に示すように、一体型フィルタ部Cfにおいて、隣接するセグメント部間を閉塞している閉塞型の連結部11である。ここで、閉塞型の連結部11は本発明の「閉塞型連結部」に相当する。なお、本実施形態では九つのセグメント部10が連結部11によって連結されてフィルタ本体1aが形成されており、フィルタ本体1aの外形は円柱状である。
また、本実施形態のフィルタ本体は、上記の構成に加え、図2にA−A線端面図に相当する端面図を示すように、分離型フィルタ部Sfにおいて隣接するセグメント部10間に、セグメント部10の表面に接着されていない充填材により非接着材充填層8が形成されているフィルタ本体1bとすることができる。なお、非接着の充填材としては、セラミックス繊維のように弾性に富んだ材料とすれば、セグメント部10の振動を抑制するのに好適である。また、アルミナ質セラミックスなど熱膨張率の大きな材料でセグメント部10を形成した場合は、セグメント部10の自由な熱膨張を充填材によって妨げないためには、摺動性が良好で耐磨耗性に優れる充填材を用いることが望ましく、かかる充填材としては、セグメント部間の空間に嵌め込まれる寸法のシート状に形成されたセラミックス焼結体を例示することができる。
第一実施形態のガス浄化フィルタのフィルタ本体1a,1bは、例えば、次のように製造することができる。まず、フィルタ本体1aの製造方法は、図3(a)に示すように、単一の軸方向Zに延びて列設された隔壁4により区画された複数のセル5からなるセグメント成形体10gを、焼成により多孔質体となる未焼成のセラミックス材料の押出成形により複数成形する成形工程S1と、各セグメント成形体10gにおいてセル5の一端を交互に封止する目封止工程S2と、複数のセグメント成形体10g間に、セラミックス材料で形成され軸方向Zの長さがセグメント成形体10gの軸方向Zの長さより短い未焼成の連結体11gを配設し、隣接するセグメント成形体10gを連結体11gで貼り合わせる貼合工程S3と、貼り合わされたセグメント成形体10g及び連結体11gを焼成し、セグメント成形体10gと連結体11gとを焼結させることにより、セグメント部10及びセグメント部10より軸方向Zの長さが短い連結部11が一体化された一体型フィルタ部Cf、及び、隣接するセグメント部10間に連結部が存在しない分離型フィルタ部Sfを備えるフィルタ本体の焼結体15を得る焼成工程S4と、フィルタ本体の焼結体15の外形を加工する外形加工工程S5とを具備している。
より詳細に説明すると、成形工程S1では押出成形により、例えば、図4(a)に示すような四角柱状のセグメント成形体10gを成形する。ここでは、18個×18個のセル5を有し、軸方向Zに垂直な方向における断面形状が正方形であるセグメント成形体10gを例示している。次に、目封止工程S2では、セグメント成形体10gにおいて列設されているセル5のそれぞれについて、セル5の一端または他端のみに目封止材料を充填することにより、図4(b)に示すように、セル5が交互に封止されるように封止部6を形成する。ここで、図4(b)は、セグメント成形体10gの一方の端部近傍において軸方向Zに垂直な面で切断した断面図である。
貼合工程S3では、図5に示すように、九つのセグメント成形体10gを3個×3個配置した上で、隣接するセグメント成形体10g間に未焼成の連結体11gを配設し、連結体11gによって隣接するセグメント成形体10gを貼り合わせる。このとき、連結体11gの軸方向Zの長さはセグメント成形体10gの軸方向Zの長さより短いため、連結体11gによってセグメント成形体10gを軸方向Zの全長にわたって貼り合わせることはできない。本実施形態では、セグメント成形体10gの一端と連結体11gの端部が一致するように貼り合わせており、より具体的には、セグメント成形体10gにおいて、ガス浄化フィルタの使用時にガス流通の上流側となるべき端部に連結体11gを貼り付けている。なお、未焼成の連結体11gとしては、例えば、セグメント成形体10gに用いられたセラミックス材料と同質のセラミックス材料をバインダーと混合し、得られた粘土状の混合物から形成されたシート材を使用することができる。
このようにして複数のセグメント成形体10gが未焼成の連結体11gで貼り合わされた成形体を、焼成工程S4で焼成しフィルタ本体の焼結体15を得る。この焼成工程S4により、セグメント成形体10gと未焼成の連結体11gとが焼結により強固に結合する。その結果、図6に示すように、セグメント成形体10gが焼結して形成されたセグメント部10と、連結体11gが焼結して形成された連結部11とが一体化されている一体型フィルタ部Cfが、ガス流通の上流側となるべき端部Eu側に形成され、隣接するセグメント部10間に連結部が存在しない分離型フィルタ部Sfが、ガス流通の下流側となるべき端部Ed側に形成された四角柱状のフィルタ本体の焼結体15が得られる。その後、切削により外形を円柱状に加工する外形加工工程S5を行うことにより、図1を用いて上述した円柱状のフィルタ本体1aの焼結体を得ることができる。
なお、上記では、成形工程S1に引き続いて目封止工程S2が行われる場合を例示したが、成形工程S1に引き続いて貼合工程を行い、その後に目封止工程を行うこととしても構わない。
また、図2に示したように、更に非接着材充填層8を備えるフィルタ本体1bを製造する場合は、図3(b)に示すように、外形加工工程S5の後に非接着材充填工程S6を設ければ良い。
このようにして得られた第一実施形態のフィルタ本体1a,1bは、外周面を弾性を有する耐熱材料のシート材で被覆しつつキャニングし、軸方向Zを排ガスの流通方向と一致させて排ガスの流通路に設置することにより、排ガス中から粒子状物質を捕集し除去するDPFとして使用することができる。
上記の製造方法で製造された上記構成の第一実施形態のガス浄化フィルタによれば、分離型フィルタ部Sfにおいては、各セグメント部10は隣接するセグメント部10に動きを制限されることなく自由に伸縮することができるため、温度分布が不均一であっても、個々のセグメント部10はそれぞれの温度に応じた熱膨張率で熱膨張することができる。これにより、熱膨張率の差異に起因して、フィルタ本体に亀裂が発生することを抑制することができる。
加えて、連結部11は、焼結によってセグメント部10と強固に一体化している焼結体であるため、部分的な連結であっても、複数のセグメント部10の集合体としてのフィルタ本体1a,1bの形態が保持され易いものとなっている。
また、DPFとして使用されるガス浄化フィルタは、捕集された粒子状物質を燃焼させて除去する再生処理の際に、ガス流通の下流側では上流側に比べて極めて高温となると共に、温度分布が著しく不均一となる。上記のフィルタ本体1a,1bでは、再生処理の際に熱応力がそれほど作用しないガス流通の上流側となるべき端部Euに、各セグメントの自由な伸縮が制限される一体型フィルタ部Cfが設けられ、極めて高温となることがあると共に温度分布が不均一となる下流側の端部Edに分離型フィルタ部Sfが設けられているため、個々のセグメント部10の自由な熱膨張により亀裂の発生を抑制するという作用を、効果的に発揮することができる。
更に、第一実施形態では、連結部として閉塞型の連結部11を用いているため、排ガス中の粒子状物質が、隣接するセグメント部10間を介して外部に排出される事態が防止されている。また、フィルタ本体1bでは、分離型フィルタ部Sfにおいてセグメント部10間に非接着材充填層8が設けられているため、個々のセグメント部10の自由な膨張を許容しつつセグメント部10の振動を抑制することができる。
なお、フィルタ本体1a,1bにおいて、連結部11の長さLが短過ぎるとセグメント部10を連結する力が弱くなるが、実際に、セグメント部10の長さNに対する連結部11の長さLの比L/Nが1/30のときは、貼合工程S3において未焼成の連結体11gによってセグメント成形体10gを貼り合わせることが困難であった。一方、連結部11の長さLがセグメント部10の長さNと等しくなるほど長い場合は、分離型フィルタ部Sfにおいて個々のセグメント部10を自由に熱膨張せるという作用効果が小さいものとなる。そのため、比L/Nは1/2以下であることが望ましい。
また、比L/Nの異なるフィルタ本体を用いて、所定温度の炉内で15分保持した後、炉外に出して急冷する熱衝撃試験を行ったところ、比L/Nが1/15〜2/15のとき、650〜700℃の炉内からの急冷で閉塞型の連結部11に亀裂が生じた。このことから、比L/Nを上記範囲とすることにより、極めて大きな熱衝撃が加わったときには、一体型フィルタ部Cfで連結部11に亀裂が生じることで、熱衝撃を吸収できることが分かる。なお、連結部11に亀裂が生じたとしても、フィルタ本体1bのように、連結部11より下流側に非接着材充填層8が設けられている場合は、非接着材充填層8によって粒子状物質を捕集することが可能であり、セグメント部10間を介して粒子状物質が外部に排出されることを防止することができる。また、極言すれば、複数のセグメント部10の集合体としてのフィルタ本体の形態を連結部11によって保持するという作用は、外形加工工程S5及びキャニング作業を終えるまで得られれば足りる。即ち、その後の使用においては、非接着材充填層8を適切に設けると共にフィルタ本体の外周面とケーシングとの間に被覆材を適切に充填することにより、仮に連結部11に亀裂が生じたとしても、フィルタ本体の形態を保持することが可能である。
従って、上記より、比L/Nは1/15〜1/2とすると好適であり、1/15〜2/15とすればより好適である。
次に、第二実施形態のガス浄化フィルタについて、図7乃至図10を用いて説明する。ここで、第二実施形態のガス浄化フィルタも、第一実施形態と同様にディーゼルエンジンから排出されるガスの流通路に配設されてガス中の粒子状物質を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタである。なお、第一実施形態のガス浄化フィルタと同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
第二実施形態のガス浄化フィルタは、図7及び図8に示すように、多孔質セラミックス焼結体で形成され単一の軸方向Zに延びて列設された隔壁4により区画された複数のセル5からそれぞれ構成された複数のセグメント部20、及び、隣接するセグメント部20を連結する連結部21を備えるフィルタ本体2aを具備し、連結部21は、セグメント部20と一体のセラミックス焼結体で形成されていると共に、軸方向Zの長さMがセグメント部20の軸方向Zの長さNより短く、フィルタ本体2aは、隣接するセグメント部20が連結部21によって連結されている一体型フィルタ部Cf、及び、隣接するセグメント部20間に連結部が存在しない分離型フィルタ部Sfから構成されている。ここで、一体型フィルタ部Cfはフィルタ本体2aの一端側に形成されており、残部が分離型フィルタ部Sfとなっている。より具体的には、第一実施形態と同様に、一体型フィルタ部Cfはフィルタ本体2aにおいてガス流通の上流側となるべき端部Eu側に形成されており、フィルタ本体2aにおいてガス流通の下流側となるべき端部Ed側が分離型フィルタ部Sfとなっている。
また、第一実施形態と相違する構成として、連結部は、隣接するセグメント部20間を軸方向Zに垂直な方向に架橋している架橋型の連結部21であって、架橋している方向に垂直な方向の幅dは、隣接するセグメント部20において互いに対面している側面の前記軸方向Zに垂直な方向の長さWより短く、セグメント部20及び架橋型の連結部21の間には、未焼成の充填材により未焼成材充填層29が形成されている。なお、架橋型の連結部21は、本発明の「架橋型連結部」に相当する。
具体的には、図8に示すように、連結部21の幅dはセル5を区画する隔壁4の厚さとほぼ等しく、複数のセル分の間隔をおいて、隣接するセグメント部20の隔壁4が延設されるように連結部21が形成されている。そして、各セグメント部20において複数のセル5は、一方向に開放したセルと他方向に開放したセルとが交互となるように、それぞれの一端が封止部6によって封止されている。このようにセル5が交互に封止されていることにより、セグメント部20の軸方向Zが排ガスの流通方向に一致するようにガス浄化フィルタをガスの流通路に配設すると、排ガスは上流側に開口したセル5から流入し、多孔質の隔壁4を通過してから下流方向に開口したセルから流出するため、ガスが隔壁4を通過する際に、隔壁4の表面及び気孔内に排ガス中の粒子状物質が捕集される。なお、図8は、一体型フィルタ部Cfの端部Eu近傍において軸方向Zに垂直な面で切断した断面の一部を拡大して示した図である。また、図7及び後述の図9,図10は、構成を明示して説明するため、連結部21の幅を実際より大きく、且つ実際より連結部21の数を減じて、模式的に図示している。
そして、分離型フィルタ部Cfにおいては、図7(d)に示すように、隣接するセグメント部20間には連結部が存在せず、空間Opが形成されている。本実施形態では、空間Opは、軸方向Zに垂直な方向にフィルタ本体を貫通するように開放している。
また、本実施形態のフィルタ本体は、上記の構成に加え、図9にイ−イ線端面図を示すように、分離型フィルタ部Sfにおいて隣接するセグメント部20間に、セグメント部20の表面に接着されていない充填材により非接着材充填層8が形成されているフィルタ本体2bとすることができる。なお、非接着の充填材としては、第一実施形態に関して上述したものを好適に使用することができる。
第二実施形態のガス浄化フィルタのフィルタ本体2a,2bは、例えば、次のように製造することができる。まず、フィルタ本体2aの製造方法は、図11(a)に示すように、単一の軸方向Zに延びて列設された隔壁4により区画された複数のセル5からそれぞれ構成された複数のセグメント部20、及び、隣接するセグメント部20間を軸方向Zに垂直な方向に架橋していると共に、隣接するセグメント部20を軸方向Zの全長にわたり連結している架橋型の連結部21であって、架橋している方向に垂直な方向の幅が隣接するセグメント部20において互いに対面している側面の軸方向Zに垂直な方向の長さより短い連結部21を備える成形体25gを、焼成により多孔質体となる未焼成セラミックス材料で押出成形する成形工程P1と、成形体25gの一端から他端に向かって、他端に至ることなく軸方向Zに平行に連結部21に沿って成形体25gを切断することにより、隣接するセグメント部20が未切断の連結部21によって連結されている一体型フィルタ部Cf、及び、隣接するセグメント部20間に連結部が存在しない分離型フィルタ部Sfを備えるフィルタ本体の成形体25gを得る切断工程P2と、各セグメントにおいてセル5の一端を交互に封止する目封止工程P3と、フィルタ本体の成形体25gを焼成する焼成工程P4と、フィルタ本体の焼結体の一体型フィルタ部Cfにおいて、セグメント部20及び連結部21の間に未焼成の充填材を充填する未焼成材充填工程P5とを具備している。
より詳細に説明すると、成形工程P1では、セグメント部20と連結部21とを備える成形体25gを押出成形により一体成形する。即ち、第二実施形態では第一実施形態とは異なり、最初からセグメント部20が連結部21によって連結されている構成の成形体25gを得る。ただし、押出成形であるから、図10にイ−イ線端面図を示すように、成形体25gにおける連結部21の軸方向Zの長さは、成形体25gの軸方向Zの全長に等しい。なお、成形工程P1では、最終的なフィルタ本体2aの外形に合わせて成形体25gを成形することができる。本実施形態では、外形が円柱状の成形体25gを成形する場合を例示している。
次に、切断工程P2で、成形体25gの一端から他端に向かって、連結部21に沿って軸方向Zに平行に切断する。即ち、円柱状の成形体25gを縦割りにするように切断するのであるが、このとき、他端に至るまでは切断せず、他端側に未切断部を残す。なお、本実施形態では、軸方向Zに垂直な方向では、成形体25gの端から端までを切断する。このように切断することにより、成形工程P1では成形体25gの軸方向Zの全長にわたり形成された連結部21は、一端側を部分的に残して切除される。なお、本実施形態では、製造されたガス浄化フィルタが使用される際にガス流通の下流側となる端部Edから、成形体25gの切断を開始する。
このようにして、セグメント部20と連結部21とが一体的に形成された一体型フィルタ部Cfが、ガス流通の上流側となるべき端部Eu側に形成され、連結部21が切除されたことにより隣接するセグメント部20間に連結部が存在しない分離型フィルタ部Sfが、ガス流通の下流側となるべき端部Ed側に形成された成形体が得られる。次に、目封止工程P3を行い、続いて焼成工程P4で成形体25gを焼成することにより、上記構成の成形体が焼結しフィルタ本体の焼結体が得られる。更に、未焼成材充填工程P5では、一体型フィルタ部Cfにおいてセグメント部20と連結部21との間の空隙に、未焼成の充填材を充填して未焼成材充填層29を形成することにより、上流側の端部Euから下流側の端部Edに向けて、セグメント部20間を貫通する空間が閉塞される(図7(b),(c)参照)。上記の製造工程により、上述した構成のフィルタ本体2aを得ることができる。なお、未焼成材充填工程P5の後に、未焼成の充填材に含有される有機成分や水分を除くための加熱処理工程を設けても良い。
また、図9を用いて上述したように、更に非接着材充填層8を備えるフィルタ本体2bを製造する場合は、図10(b)に示すように、未焼成材充填工程P5後またはその後に行われる加熱処理工程後に、非接着材充填工程P6を設ければ良い。
なお、上記では、成形工程P1に引き続いて切断工程P2を行う場合を例示したが、成形工程P1に引き続いて目封止工程及び焼成工程を行い、その後に切断工程を行うこととしても、上記構成の第二実施形態のフィルタ本体2a,2bを製造することができる。
このようにして得られた第二実施形態のフィルタ本体2a,2bは、外周面を弾性を有する耐熱材料のシート材で被覆しつつキャニングし、軸方向Zを排ガスの流通方向と一致させて排ガスの流通路に設置することにより、排ガス中から粒子状物質を捕集し除去するDPFとして使用することができる。
上記の製造方法で製造された上記構成の第二実施形態のガス浄化フィルタによれば、分離型フィルタ部Sfにおいては、各セグメント部20は隣接するセグメント部20に制限されることなく自由に伸縮することができるため、温度分布が不均一であっても、個々のセグメント部20はそれぞれの温度に応じた熱膨張率で熱膨張することができる。これにより、熱膨張率の差異に起因して、フィルタ本体2aに亀裂が発生することを抑制することができる。
加えて、連結部21は、セグメント部20と一体成形された後に焼成された焼結体であるため、部分的な連結ではあっても、複数のセグメント部20の集合体としてのフィルタ本体2aの形態が保持され易いものとなっている。
また、DPFとして使用されるガス浄化フィルタは、捕集された粒子状物質を燃焼させて除去する再生処理の際に、ガス流通の下流側では上流側に比べて極めて高温となると共に、温度分布が著しく不均一となるところ、フィルタ本体2a,2bでは、ガス流通の上流となるべき端部Eu側に、各セグメント部20の自由な伸縮が制限される一体型フィルタ部Cfが設けられ、下流となるべき端部Ed側に各セグメント部20が自由に伸縮できる分離型フィルタ部Sfが設けられているため、個々のセグメント部20の自由な熱膨張により熱応力を緩和するという作用を、効果的に発揮することができる。
更に、第二実施形態の連結部21として、機械的強度が低い架橋型の連結部21を採用しているため、万一、一体型フィルタ部Cfに大きな熱応力が発生しても、架橋型の連結部21が破壊しやすく、その破壊によって熱応力を吸収・緩和することができる。なお、連結部21に亀裂が生じたとしても、フィルタ本体2bのように、連結部21より下流側に非接着材充填層8が設けられている場合は、セグメント部20間を介して粒子状物質が外部に排出されることを防止することができる。また、第一実施形態と同様、複数のセグメント部20の集合体としてのフィルタ本体の形態を連結部21によって保持するという作用は、キャニング作業を終えるまで得られれば足りる。その後の使用においては、非接着材充填層8を適切に設けると共に、フィルタ本体の外周面とケーシングとの間に被覆材を適切に充填することにより、複数のセグメント部20の集合体としての形態を保持することが可能である。
そして、連結部21の軸方向Zの長さMは、個々のセグメント部20をそれぞれ自由に熱膨張させ、且つ、大きな熱応力が発生した場合には適度に破壊してその熱応力を緩和・吸収する作用を効果的に発揮するためには、長過ぎないことが求められる。一方、少なくともキャニング作業を終えるまでは、セグメント部20の集合体としての形態を保持できるだけの長さは必要である。このような観点から、連結部21の軸方向Zの長さMは、連結部21の幅やセルの数に対する連結部21の数等にもよるが、フィルタ本体の軸方向Zの長さNの1/5〜1/2とすると好適である。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、連結部として閉塞型の連結部11を備える第一実施形態では、ガス流通の上流となる端部Eu側に一体型フィルタ部が設けられる場合を例示したが、これに限定されず、図12(a)に示すように、フィルタ本体の軸方向の中間部分においてセグメント部10が連結部11によって連結されている構成とすることもできる。このような構成のフィルタ本体1cは、ガス流通の上流となる端部Eu側及び下流となる端部Ed側の両方に分離型フィルタ部Sfを備え、軸方向Zの長さの中間部分に一体型フィルタ部Cfを備える。
或いは、図12(b)に示すように、一つのフィルタ本体が閉塞型の連結部として、隣接するセグメント部10を上流となる端部Eu側で連結している連結体11uと、下流となる端部Ed側で連結している連結体11dとを共に備える構成とすることもできる。このような構成のフィルタ本体1dは、隣接するセグメント部10が連結部11uまたは連結部11dで連結されている一体型フィルタ部Cfと、隣接するセグメント部10間に連結部が存在しない分離型フィルタ部Sfとを、フィルタ本体における同じ端部側に備える構成となる。
また、連結部として架橋型の連結部21を備える第二実施形態として、分離型フィルタ部Sfにおいてセグメント部20間の空間Opが、軸方向Zに垂直な方向でフィルタ本体を貫通するように開放している場合を例示したが、これに限定されず、図13に示すように、セグメント部20間の空間Opが軸方向Zに垂直な方向にフィルタ本体を貫通してはいない構成とすることもできる。このような構成のフィルタ本体2cは、分離型フィルタ部Sfを備える端部側、即ち、製造の際に切断工程で切断が開始される方の端部側においても、隣接するセグメント部が連結部で連結されている一体型フィルタ部Cfを部分的に備える構成である。
更に、第一実施形態のセグメント部10、及び第二実施形態のセグメント部20が、ともに四角柱状である場合を例示したが、これに限定されず、例えば、三角柱状とすることもできる。また、最終的なフィルタ本体の外形が円柱状である場合を例示したが、これに限定されず、角柱状や断面が楕円の柱状とすることができる。
加えて、上記では、本発明のガス浄化フィルタをディーゼルエンジンから排出されるガスを浄化するDPFに適用した場合を例示したが、これに限定されず、その他の内燃機関や蒸気タービン等で使用されるガス浄化フィルタ、即ち、高温下で使用されることがあるガス浄化フィルタに広く適用することが可能である。