JP2010280952A - 真空成膜装置 - Google Patents

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Abstract


【課題】容器内の真空度を短時間で高められる真空成膜装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板を配置可能な空間部101dを備えた反応容器101と、空間部101d内に設置された成膜手段と、空間部101dの内部を減圧状態とする排気手段と、空間部101dに連通された開口部101cを覆うように反応容器101に取り付けられ、開口部101cを開閉自在とする扉部801と、前記反応容器101と扉部801との間に、開口部101cを囲むように配置されたOリング802と、空間部101d内で、開口部101cに沿ってOリング802の近傍に配置され、冷却媒体を流通させる冷却管811と、を有する真空成膜装置を用いることにより、上記課題を解決できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、真空成膜装置に関する。
近年、磁気ディスク装置、可撓性ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。
特に、HDD(ハードディスクドライブ)では、MRヘッド、およびPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TuMRヘッドなども導入され1年に約100%ものペースで増加を続けている。
一方、HDDの磁気記録方式として、いわゆる垂直磁気記録方式が従来の面内磁気記録方式(磁化方向が基板面に平行な記録方式)に代わる技術として近年急速に利用が広まっている。
垂直磁気記録方式では、情報を記録する記録層の結晶粒子が基板に対して垂直方向に磁化容易軸をもっている。この磁化容易軸とは、磁化の向きやすい方向を意味し、一般的に用いられているCo合金の場合、Coのhcp構造の(0001)面の法線に平行な軸(c軸)である。垂直磁気記録方式は、このように磁性結晶粒子の磁化容易軸が垂直方向であることにより、高記録密度が進んだ際にも、記録ビット間の反磁界の影響が小さく、静磁気的にも安定という特徴がある。
垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上に下地層、中間層(配向制御層)、磁気記録層、保護層の順に成膜されるのが一般的である。また、保護層まで成膜した上で、表面に潤滑層を塗布する場合が多い。また、多くの場合、軟磁性裏打ち層とよばれる磁性膜が下地層の下に設けられる。下地層や中間層は磁気記録層の特性をより高める目的で形成される。具体的には、磁気記録層の結晶配向を整えると同時に磁性結晶の形状を制御する働きがある。
垂直磁気記録媒体の高記録密度化には、熱安定性を保ちながら低ノイズ化を実現する必要がある。ノイズを低減するための方法としては、一般的に2つの方法が用いられる。
1つ目は記録層の磁性結晶粒子を磁気的に分離、孤立化させることで、磁性結晶粒子間の磁気的相互作用を低減する方法、2つ目は磁性結晶粒子の大きさを小さくする方法である。
具体的には、例えば、記録層にSiO等を添加し、磁性結晶粒子がSiO等を多く含む粒界領域に取り囲まれた、いわゆるグラニュラ構造を有する垂直磁気記録層を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
そして、グラニュラ構造を有する垂直磁気記録層を形成する方法として、非特許文献1には、CoCrPt合金とSiOを含有する複合型ターゲットを用い、アルゴン酸素混合ガス雰囲気中でDCマグネトロンスパッタによりグラニュラ構造を有する記録層を形成する方法が開示されている。この文献では、酸素含有雰囲気中で反応性スパッタを行うことにより、保磁力が増加するとともに記録再生特性が向上することが報告されている。
また、SiOの濃度により最適な酸素分圧が決まり、SiO濃度が低いほど最適酸素分圧が高くなること、酸素濃度が最適値を超えて過剰な状態になると磁気特性や記録再生特性が大幅に劣化することが報告されている。
ところで、前述のように磁気記録媒体は複数の薄膜を有して構成されている。このような磁気記録媒体は、例えば、磁気記録媒体を構成する各薄膜を成膜する複数の成膜装置を、ゲートバルブを介して一列に接続したインライン型成膜装置を用いて製造されるのが一般的である。
図12は、前記インライン型成膜装置の一例を示す模式図である。図12に示すように、前記インライン型成膜装置は、基板供給・収容室901、基板取り付け室902、キャリア転送室903、第1コーナー室904、第1シード層形成室(スパッタチャンバ)905、第1加熱室906、第2コーナー室907、第2加熱室908、第2シード層形成室(スパッタチャンバ)909、第1下地層形成室(スパッタチャンバ)910および第2下地層形成室(スパッタチャンバ)911、第1磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)912および第2磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)913、第3コーナー室914、第3磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)915および第4磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)916、第4コーナー室917、予備室918、第1保護膜形成室919および第2保護膜形成室920、予備室921および基板取り外し室922と、複数のキャリア925とを有している。これら各室901〜922内に、キャリア925を順次搬送する。
図13は、前記成膜装置のスパッタチャンバを示す模式図である。図13に示すように、キャリア925には、複数の成膜用基板(非磁性基板)923、924が装着される。各室919、909、906、905は、それぞれ真空ポンプ936が接続されており、これらの真空ポンプ936の動作によって減圧状態となされる。
なお、各成膜装置は、一対の電極を有する反応容器と、反応容器内にガスを供給するガス供給手段と、反応容器内のガスを排気する真空ポンプ等を有して構成される。このインライン型成膜装置では、成膜用基板が、各成膜装置内に順次搬送され、各成膜装置内で所定の薄膜が成膜される。したがって、インライン式成膜装置を一巡させることにより、成膜用基板に、成膜装置の数と同数の薄膜を成膜することができる。
各成膜装置間での成膜用基板の移行は、具体的には、次のような工程で行われる。なお、ここでは、第1の成膜装置で成膜用基板上に1層目の薄膜を成膜した後、これに続いて、第2の成膜装置、第3の成膜装置・・・第nの成膜装置で成膜を行う場合を例にする。
まず、(1)第1の成膜装置と第2の成膜装置との間のゲートバルブを開く、(2)第2の成膜装置の反応容器内に成膜用基板を搬入する、(3)ゲートバルブを閉じる、(4)第2の成膜装置の反応容器内を排気する、(5)第2の成膜装置の反応容器内に反応用ガスを導入する、(6)成膜用基板に対して成膜を行う、(7)第2の成膜装置内の反応用ガスを排気する、(8)第2の成膜装置と第3の成膜装置との間のゲートバルブを開く、(9)第3の成膜装置の反応容器内に成膜用基板を搬入する。そして、第2成膜装置の場合と同様に(3)〜(7)の工程を行う。さらに、成膜装置毎に(1)〜(7)の工程を行い、最後の成膜装置(第nの成膜装置)から成膜用基板を搬出する。
記成膜装置を十数台環状に配置してなるインライン式成膜装置は、たとえば、1時間に数百枚程度の磁気記録媒体を生産することができる。通常、前記インライン式成膜装置は、1日くらいかけて整備した後、2週間ほど連続稼働することを繰り返して使用する。
前記連続稼働中に、前記インライン式成膜装置が緊急停止する場合がある。その原因で最も多いのは、前記成膜装置の内部に配置した被成膜基板が偶発的に落下して、前記成膜装置内の搬送機構に挟まる場合である。
この場合、(1)成膜装置を開放する工程と、(2)落下した基板を取り出す工程と、(3)成膜装置を閉じて減圧する工程と、(4)成膜装置を再稼働させる工程、の少なくとも4つ工程を行うことが必要となる。これらの工程で、(1)と(2)の工程は数分程度で済むが、(3)と(4)の工程では前記成膜装置内の真空度を高める必要があるので、通常、1時間程度の時間を要するので、磁気記録媒体の製造効率は大幅に低下する。そのため、内部の真空度を短時間で高めることができる成膜装置が求められていた。
また、前記成膜装置内の真空度を高め、ベースプレッシャー(到達圧)を低くすることにより、不純物の混入を減少させ、結晶性の高い膜を成膜することができる。特に、最近の磁気記録媒体は、前記磁気記録媒体を構成する磁性膜等が薄膜化され、また、その積層構造が複雑になっているため、前記成膜装置内の真空度をより高め、ベースプレッシャー(到達圧)をさらに下げることが求められていた。
一般に、超高真空容器を用いた成膜装置では、シール材として無酸素銅を用いたガスケットを使用することにより、1×10−7Pa〜1×10−8Paクラスのベースプレッシャーが得られている。
しかし、従来の磁気記録媒体用の成膜装置では、その構成部材のほとんどの接合部分では無酸素銅からなるシール材を用いているが、ターゲット交換、シールド交換、偶発的に落下した基板の除去、その他の整備などで頻繁に開け閉めを行うため、扉部と反応容器との間では樹脂製のOリングからなるシール材を用いている。そのため、前記クラスのベースプレッシャーを得ることができなかった。
各社から多種多様なOリングが製品として販売されている。たとえば、パーフロロエラストマーからなるOリングとしては、カルレッツ(商品名、デュポン製)、ブレイザブラック(商品名、ニチアス製)、ダイエル パーフロ(商品名、ダイキン工業製)、フローリッツ(商品名、日本バルカー工業製)などがある。また、フッ素ゴムからなるOリングとしては、バイトンETP(商品名、デュポン製)、アフラス(商品名、旭硝子製)、アーキュリーAL(商品名、日本バルカー工業製) などがある。さらに、耐オゾンのOリングとしては、バルフロン クリスタルラバー(商品名、日本バルカー工業製)、ピュアラバー(商品名、ニチアス製)などがある。耐プラズマ性のOリングとしては、プラズマX−F6アルファ(商品名、ニチアス製)、アーマークリスタル(商品名、日本バルカー工業製)などがある。低摩擦・非粘着性のOリングとしては、フロロプラス(商品名、ニチアス製)、ニューラバフロン(商品名、日本バルカー工業製)などがある。その他、表面にテフロン(登録商標)コーティングしたOリングなどがある。
しかし、上記に示す樹脂材料から作られるOリングは、水(HO)などの吸着・吸収を完全になくすことはできず、いかなる材料からなるOリングを用いても、反応容器の内部の真空度を高めることが困難であった。
特許文献2は、低放射率ガラスおよびその製法に関するものであり、その請求項5には、真空度を高めるためにコールドトラップを使用することが記載されている。具体的には、スパッタリング法において、ターゲット(Agターゲット)近傍に設置して、Agターゲット周辺の真空度を局所的に高めることが記載されている。
しかし、ターゲット近傍にコールドトラップを設けても、反応容器の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することは困難であった。
特開2002−342908号公報 特開2000−226235号公報
IEEE Transactions on Magnetics,Vol.40,No.4,July 2004,pp.2498−2500
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、容器内の真空度を短時間で高められる真空成膜装置を提供することを目的とする。
本発明者は、多くの実験を繰り返すことにより、真空成膜装置内の真空度を悪化させる主要因が、Oリングの隙間を通って装置内に入り込む大気などのガスより、Oリング自身からのリークガス、すなわち、Oリングが吸着・吸収している物質が放出されてなるガスであることを解明した。そして、前記物質が水(HO)である場合が多いことを解明した。そして、Oリングの近傍に、HOを捕獲することが容易なコールドトラップを設けることにより、装置内の真空度を高めることができることを見出した。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、
(1) 基板を配置可能な空間部を備えた反応容器と、前記空間部内に設置された成膜手段と、前記空間部内を減圧状態とする排気手段と、前記空間部に連通された開口部を覆うように前記反応容器に取り付けられ、前記開口部を開閉自在とする扉部と、前記反応容器と前記扉部との間に、前記開口部を囲むように配置されたOリングと、前記空間部内で、前記開口部に沿って前記Oリングの近傍に配置され、冷却媒体を流通させる冷却管と、を有することを特徴とする真空成膜装置。
(2) 前記冷却管がジャバラ管であることを特徴とする(1)に記載の真空成膜装置。
(3) 前記反応容器または前記扉部に前記開口部を囲むように枠部が取り付けられており、前記枠部に前記開口部を囲むように設けられた溝部に前記Oリングが嵌合されており、前記枠部の前記溝部が設けられた面と反対側の面に加熱部が取り付けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の真空成膜装置。
(4) 前記反応容器または前記扉部がステンレス合金からなり、前記枠部がアルミニウム合金からなることを特徴とする(3)に記載の真空成膜装置。
(5) 前記成膜手段が、一対の電極と、前記一対の電極の各対向面側に設けられたターゲットと、を有しており、該ターゲットから弾き出されたスパッタ粒子を基板の表面に被着させることによって薄膜を成膜自在としてなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
(6) 前記反応容器に隣接して前記空間部と連通する排気手段取り付け室が設けられており、前記排気手段が前記排気手段取り付け室のいずれかの壁に取り付けられていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
(7) 前記反応容器の上方に上部の排気手段取り付け室が設けられており、前記上部の排気手段取り付け室のいずれかの壁に排気手段が取り付けられており、前記反応容器の下方に下部の排気手段取り付け室が設けられており、前記下部の排気手段取り付け室のいずれかの壁に排気手段が取り付けられていることを特徴とする(6)に記載の真空成膜装置。
(8) 前記排気手段が真空ポンプであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
(9) 前記空間部内に基板を搬送する基板搬送機構が備えられていることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
上記の構成によれば、容器内の真空度を短時間で高められる真空成膜装置を提供することができる。
本発明の真空成膜装置は、基板を配置可能な空間部を備えた反応容器と、前記空間部内に設置された成膜手段と、前記空間部内を減圧状態とする排気手段と、前記空間部に連通された開口部を覆うように取り付けられ、前記開口部を開閉自在とする扉部と、前記反応容器と前記扉部との間に、前記開口部を囲むように配置されたOリングと、前記空間部内で、前記開口部に沿って前記Oリングの近傍に配置され、冷却媒体を流通させる冷却管と、を有する構成なので、枠部およびOリングを加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリングと扉部との間およびOリングと枠部との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリングから脱離された水などを冷却管でトラップして、反応容器の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の真空成膜装置は、前記冷却管がジャバラ管である構成なので、表面積を大きくして冷却効果を高めることにより、ガストラップ効果を高めることができ、反応容器の内部をより短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置の一例を示す概略図であって、図1(a)は縦断面図であり、図1(b)は左側面図である。 本発明の実施形態である真空成膜装置の別の一例を示す縦断面図である。 図2に示す真空成膜装置の右側面図である。 図2に示す真空成膜装置が備えるガス流入管を示す側面図である。 図2に示す真空成膜装置のA部の拡大断面図である。 図2に示す真空成膜装置のB部の拡大断面図である。 冷却管のガストラップ効果を説明する図であって、図7(a)は冷却管がない場合のOリングからのガスの流れを示す図であり、図7(b)は冷却管がある場合のOリングからのガスの流れを示す図である。 本発明の実施形態である真空成膜装置の更に別の一例を示す縦断面図である。 図8に示す真空成膜装置のC部の拡大断面図である。 図8に示す真空成膜装置のD部の拡大断面図である。 真空度の測定結果を示すグラフである。 インライン型成膜装置の一例を示す模式図である。 成膜装置のスパッタチャンバを示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態である真空成膜装置の一例を示す概略図であって、図1(a)は縦断面図であり、図1(b)は側面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である真空成膜装置11には、基板を配置可能な空間部101dを備えた反応容器101と、反応容器101の一面に設けられ、空間部101dに連通された開口部101cと、開口部101cを覆うように取り付けられ、開口部101cを開閉自在とする扉部801と、が備えられている。
真空成膜装置11には、図示略の排気手段が備えられており、空間部101dの内部を減圧可能とされている。また、空間部101d内には図示略の成膜手段が設置され、空間部101dに配置した基板に成膜可能とされている。
<冷却管>
図1(a)及び図1(b)に示すように、冷却管811は、空間部101d内に配置されており、円筒状の冷却管811は、開口部101cに沿って、Oリング802の近傍に配置されている。
また、冷却管811は、反応容器101の上部から外部へ取り出されており、冷却管811の一端811aは冷却媒体供給部(図示略)に接続され、他端811b側は冷却媒体排出部(図示略)に接続されている。前記冷却媒体供給部から前記冷却媒体排出部へ向けて、冷却管811内に液体窒素または液体空気などの冷却媒体を流通させることにより、冷却管811の表面811cを冷却することができる。
前記排気手段により、空間部101dの内部を減圧状態する際に、Oリング802に吸収または吸着されていた水または窒素等が脱離して、ガスとして空間部101dへ排出される。通常、このガスが空間部101d内の真空度を悪化させる。
本実施形態では、空間部101d内であって、Oリング802の近傍にマイスナートラップのような冷却管811を配置することにより、Oリング802から排出されたガスは、冷却管811の表面811cに吸着され(ガストラップされて)、空間部101dの真空度を短時間で高めることができる。
冷却管811の表面811cの温度は、155K以下とすることが好ましく、100K以下とすることがより好ましい。冷却管811の表面811cの温度を155K以下とすることにより、水などを効果的にトラップすることができる。
冷却管811の材料としては、たとえば、Cr、Cu、ステンレス、アルミニウム合金、Niなどの金属材料を用いることができる。これにより、表面811cの温度を155K以下としても、安定して使用することができる。
冷却管811としては、円筒管よりもジャバラ管を用いることが好ましい。冷却管811として、表面積が円筒管よりも大きいジャバラ管を用いることにより、冷却効果を高めて、Oリング802から脱離された水などを冷却管で効率よくトラップ(ガストラップ効果を高めること)ができ、より短時間に真空度を上げることができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置11は、基板を配置可能な空間部101dを備えた反応容器101と、空間部101d内に設置された成膜手段と、空間部101d内を減圧状態とする排気手段と、空間部101dに連通された開口部101cを覆うように反応容器101に取り付けられ、開口部101cを開閉自在とする扉部801と、反応容器101と扉部801との間に、開口部101cを囲むように配置されたOリング802と、空間部101d内で、開口部101cに沿ってOリング802の近傍に配置され、冷却媒体を流通させる冷却管811と、を有する構成なので、Oリング802に吸着されている水、Oリング802が吸収している水または窒素ガス等を、冷却管811でトラップして、反応容器101の空間部101d内を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置11は、冷却管811がジャバラ管である構成なので、冷却管811の表面積を大きくして、冷却効果を高めることにより、ガストラップ効果を高めることができ、反応容器101の空間部101d内をより短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の実施形態である真空成膜装置の別の一例を示す縦断面図であり、図3は図2に示す真空成膜装置の左側面図である。また、図4は、図2に示す真空成膜装置が備えるガス流入管を示す側面図である。さらに、図5は、図2で示すA部の拡大断面図であり、図6は、図2で示すB部の拡大断面図である。
図2に示すように、本発明の実施形態である真空成膜装置12には、基板を配置可能な空間部101dを備えた反応容器101と、空間部101d内に設置された成膜手段808と、空間部101dの内部を減圧状態とする排気手段807と、反応容器101の一面に設けられ、空間部101dに連通された開口部101cと、開口部101cを覆うように取り付けられ、開口部101cを開閉自在とする扉部801と、開口部101cの外周に取り付けられた枠部803と、が備えられている。
さらにまた、開口部101cに沿って、Oリング802の近傍に冷却管811が配置されている。
なお、図2に示すように、成膜手段808は、一対の電極113、115と、一対の電極113、115の各対向面側に設けられたターゲット117、118と、を有しており、該ターゲット117、118から弾き出されたスパッタ粒子を基板の表面に被着させることによって薄膜を成膜自在としてなる。また、排気手段807は、真空ポンプ130、131、132である。
さらに、図5および図6に示すように、枠部803の空間部101dと反対側の面803aに開口部101cを囲むように形成された溝部803cと、溝部803cに嵌めこまれたOリング802と、枠部803の空間部101d側の面803bに取り付けられ、枠部803を加熱する加熱部804と、を有する。
<扉部>
図2に示すように、扉部801は、種々の構成部品が取り付けられた反応容器101の一側壁である。真空成膜装置12の反応容器101の一側壁側には開口部101cが設けられ、扉部801は開口部101cを覆うように取り付けられている。また、開口部101cは空間部に連通されている。
図3に示すように、扉部801は、反応容器101の別の側壁に蝶番805により取り付けられており、反応容器101の開口部101cを開閉自在としている。
反応容器101は、剛性の高い材料を用いて作製されることが好ましい。これにより、ターゲット用カソード、ターゲット、真空ポンプおよび搬送機構などの磁気記録媒体の製造に用いられる多数の部品を取り付けることができる。具体的には、鉄、ステンレス、インコネル、ハイマンガン鋼などが好ましく、ステンレス合金がより好ましい。
<枠部>
反応容器101には、開口部101cを囲むように枠部803が取り付けられている。枠部803は熱伝導性の高い材料からなることが好ましい。これにより、枠部803を短時間で加熱・冷却して枠部803をベーキングすることができ、内部の真空度を短時間で高めることができる。熱伝導性の高い材料としては、たとえば、アルミニウム合金などを挙げることができる。例えば、図6の枠部803をアルミニウム合金とし、下部排気手段取り付け壁135bの箇所をステンレス合金とし、両者を金属製のガスケットを用いて接合することにより、枠部803を加熱部804によって効率的に加熱することができる。
<溝部>
枠部803の空間部101dと反対側の面803aには、開口部101cを囲むように溝部803cが形成されている。溝部803cの深さは、嵌合させるOリングが面803aから若干突出する深さとすることが好ましい。これにより、扉部801を閉じたときにOリング802を十分弾性変形させることができる。
<Oリング>
溝部803cには、樹脂製のOリング802が嵌合されている。Oリング802はシール材として用いられ、扉部801を枠部803に押し付けたときにOリング802を弾性変形させて、Oリング802と扉部801および枠部803との間を密着させることにより、反応容器101の空間部101dの気密性を向上させることができる。
Oリング802としては、各社から販売されている多種多様の製品を採用できる。たとえば、パーフロロエラストマーからなるOリングとしては、カルレッツ(商品名、デュポン製)、ブレイザブラック(商品名、ニチアス製)、ダイエル パーフロ(商品名、ダイキン工業製)、フローリッツ(商品名、日本バルカー工業製)などがある。また、フッ素ゴムからなるOリングとしては、バイトンETP(商品名、デュポン製)、アフラス(商品名、旭硝子製)、アーキュリーAL(商品名、日本バルカー工業製) などがある。さらに、耐オゾンのOリングとしては、バルフロン クリスタルラバー(商品名、日本バルカー工業製)、ピュアラバー(商品名、ニチアス製)などがある。耐プラズマ性のOリングとしては、プラズマX−F6アルファ(商品名、ニチアス製)、アーマークリスタル(商品名、日本バルカー工業製)などがある。低摩擦・非粘着性のOリングとしては、フロロプラス(商品名、ニチアス製)、ニューラバフロン(商品名、日本バルカー工業製)などがある。その他、表面にテフロン(登録商標)コーティングしたOリングなどがある。
<加熱部>
枠部803の空間部101d側の面803bには、薄型の加熱部804が取り付けられている。なお、加熱部804は配線(図示略)を介して電源部(図示略)に接続されており、前記電源部を介して加熱部804に電圧を印加することにより、加熱部804を任意の温度に加熱することができる。これにより、枠部803を短時間で加熱・冷却して、枠部803をベーキングすることができ、空間部101d内の真空度を短時間で高めることができる。
加熱部804は、枠部803を効率的に加熱できるものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、リボンヒータなどのベーキングヒータを用いることができる。
<冷却管>
図3に示すように、冷却管811は、扉部801の外周に取り付けられたOリング802の内周側の近傍に配置されている。冷却管811の一端811aは冷却媒体供給部(図示略)に接続され、他端811b側は冷却媒体排出部(図示略)に接続されている。
図5および図6に示すように、円筒状の冷却管811は、開口部101cに沿って、配置されている。
冷却管811内を、液体窒素または液体空気などの冷却媒体を流通させることにより、冷却管811の表面811aを冷却することができる。
図7は、冷却管811のガストラップ効果を説明する図であって、図7(a)は冷却管811がない場合のOリング802からのガスの流れを示す図であり、図7(b)は冷却管811がある場合のOリング802からのガスの流れを示す図である。
図7(a)に示すように、冷却管811がない場合には、ガスGは、空間部101dの方向へ流れていき、空間部101dの真空度を悪化させる。
しかし、本実施形態では、図7(b)に示すように、Oリング802の近傍にマイスナートラップのような冷却管811が配置されるので、Oリング802から排出されたガスを、冷却管811の表面811cに吸着させて(トラップして)、空間部101dの真空度を高めることができる。
冷却管811の表面811cの温度は、155K以下とすることが好ましく、100K以下とすることがより好ましい。冷却管811の表面811cの温度を155K以下とすることにより、水などを効果的にトラップすることができる。
冷却管811の材料としては、たとえば、Cr、Cu、ステンレス、アルミニウム合金、Niなどの金属材料を用いることができる。これにより、表面811cの温度を155K以下としても、安定して使用することができる。
冷却管811としては、円筒管よりもジャバラ管を用いることが好ましい。冷却管811として、表面積が円筒管よりも大きいジャバラ管を用いることにより、冷却効果を高めて、ガストラップ効果を高めることができ、より短時間に真空度を上げることができる。
図2〜図4に示す真空成膜装置12は、縦型かつ薄型の反応容器(反応チャンバ)101と、反応容器101内に、不活性ガスおよび/または反応性ガスを供給するガス供給手段(図4参照)102と、反応容器101内のガスを排気する真空ポンプ130、131、132と、これら真空ポンプ130、131、132が取り付けられる上部真空ポンプ取り付け室134および下部真空ポンプ取り付け室135と、外部から搬入された2枚の被処理基板200を所定の位置に搬送する基板搬送装置105とを有している。
ここで、真空ポンプ130、131、132が排気手段807である。
反応容器101の一対の側壁106、107には、一対のカソード(プラズマ発生用の電極)113、115が、その電極面113a、115aを互いに対向させて配設されている。さらに、図3に示すように、一対のカソード(プラズマ発生電極)114が、一対のカソード113、115と横並びで、且つ、その電極面を互いに対向させて配設されている。すなわち、この真空成膜装置12は、一対のカソードを2組有しているタイプとされている。
また、カソード(プラズマ発生用の電極)113、115の電極面にそれぞれターゲット117、118が離間して支持されている。
ここで、カソード(プラズマ発生用の電極)113、114、115およびターゲット117、118が成膜手段808である。
<反応容器>
反応容器101は、外部と反応空間101aとを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有するものとされる。
なお、以下の説明では、この反応容器101において、図2中、右側の側壁を「第1の側壁106」、左側の側壁を「第2の側壁107」、図2の奥行き側の側壁を「第3の側壁108」、手前側の側壁を「第4の側壁109(図3参照)」と呼称する。
<側壁>
第1の側壁106および第2の側壁107は、図3に示す如く正面視正方形に近い若干縦長の長方形状をなしており、これら側壁同士の間に図2に示す如く扁平の縦長の空間を構成するように、相互の間隔を狭めて垂直に配置されている。そして、第1の側壁106と第2の側壁107の左右両側には、幅狭の第3の側壁108と第4の側壁109とが接続されるとともに、これら各側壁106〜109の上下両側には、天板(天井部)142と底板(底部)143とが接続されている。これら側壁106〜109と、天板142および底板143とによって囲まれた縦長の扁平の空間が、反応容器101の内部空間を構成する。
<窓部>
この反応容器101の第1の側壁106には、後述する第1のカソード(電極)113および第2のカソード(電極)114が取り付けられる第1の窓部127が設けられている。また、第2の側壁107には、後述する第3のカソード(電極)115および第4のカソード(電極)が取り付けられる第2の窓部128が第1の窓部127と対向するように設けられている。
第1の窓部127と第2の窓部128は、図3を参照する如く側面視横長のレーストラック形状とされ、互いの形成位置は互いに対向するように同一高さ位置とされている。
また、第1の側壁106には、第1の窓部127の下方に、後述する基板搬送装置室136を取り付けるための小型の第3の窓部116が設けられている。
一方、天板142には、後述する上部真空ポンプ取り付け室134を取り付けるための第4の窓部144が設けられ、底板143には、後述する下部真空ポンプ取り付け室135を取り付けるための第5の窓部145が設けられている。第4の窓部144は、天板142の奥行き方向の中央部に左端部から右端部に亘って設けられ、図2の上面視において、奥行き方向が幅広とされた長方形状をなしている。また、第5の窓部145は、底部143の奥行き方向の中央部に左端部から右端部に亘って設けられ、図2の下面視において、奥行き方向が第4の窓部144より幅狭とされた略正方形状をなしている。
<カソード>
第1のカソード113〜第4のカソードはいずれも同等の構成とされ、第1の窓部127に左右に並んで2基、第2の窓部128に左右に並んで2基取り付けられている。なお、図2および図3においては一部を略して示している。
具体的には、図3に示すように、第1のカソード113および第2のカソード114は、横方向に並んだ状態で、第1の側壁106に設けられた横長の第1の窓部127に、フレームを介して気密的に接合される。
また、第3のカソード115および第4のカソードは、横方向に並んだ状態で、第2の側壁107に設けられた第2の窓部128に、フレームを介して気密的に接合される。
そして、第1のカソード113〜第4のカソードは、それぞれ、その電極面が水平面に対して略直交するような縦置き状態となっており、第1のカソード113と第3のカソード115とは、その反応空間101a側の表面(電極面)113a、115a同士が対向し、第2のカソード114と第4のカソードとは、その反応空間101a側の表面(電極面)同士が対向した位置関係になっている。すなわち、第1のカソード113と第3のカソード115とが対をなし、第2のカソード114と第4のカソードとが対をなしている。
第1のカソード113〜第4のカソードには、それぞれ、図示略の電源に接続されており、これら電源によって電力が供給される。
<ターゲット>
ここで、この真空成膜装置12を、例えばスパッタ法によって薄膜を成膜する真空成膜装置として用いる場合には、第1のカソード113〜第4のカソードの各電極面に、それぞれ、ターゲット117、118が離間して支持される。各ターゲット117、118は、それぞれ、板状をなし、目的とする薄膜の組成に応じた組成とされる。
各ターゲット117、118は、単体であってもよく、複数のターゲット片によって構成されていてもよい。また、各ターゲット117、118の平面形状は、特に限定されない。単体のターゲットの場合には、例えば、円形または円環状であるのが望ましく、各カソードと同軸的位置関係で配置されるのが望ましい。
例えば、成膜装置100によってグラニュラ構造を有する磁性層を成膜する場合には、各ターゲット117、118として、それぞれCo、Cr、Ptを含有する半円状のターゲット片と、SiOを含有する半円状の酸化物ターゲット片などを複合して用いることもできる。
なお、各ターゲット117、118は必要に応じて設けられるものであり、CVD法による成膜等のようにターゲットを使用しない成膜の場合はターゲットが省略される。すなわち、CVD法による成膜時にはターゲット部分に成膜装置内にプラズマ空間を形成するRF電極等が設置される。
<ガス流入管>
反応容器101の内部には、図4に示す形状の第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124がそれぞれ配設されている。
図4に示すように、第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124は、それぞれ、一方向に延在された直管部125と、直管部125の一端に連結された円環状の環状部126とを有し、環状部126の内周壁126cに、複数のガス放出口126aが円周に沿って略等間隔に設けられている。
環状部126に設けられるガス放出口126aの孔径は、該ガス放出口126aの直管部125に対する位置に応じて、各孔からの放出ガス量が一定となるように変えることが好ましい。具体的には、環状部126を流れるガスの上流側においては孔径を小さくし、下流においては孔径を大きくすることが好ましい。
第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124は、各直管部125の他端が延出されて、それぞれ反応容器101の外部に設けられているガス供給手段102に接続されている。また、第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124の各環状部126は、第1のカソード113〜第4のカソードと各被処理基板200との間の空間(反応空間101a)の外周を囲むように配置されている。
ガス供給手段102と各ガス流入管121〜124とを接続する各配管の途中には、図示しないバルブが設けられている。これらのバルブは、それぞれ、図示しない制御機構によって開閉が制御されるように構成されている。
ガス供給手段102によって送出されるガスは、上述の各バルブによって流量が制御されつつ、第1のガス流入管121〜第4のガス流入管124に、それぞれ、導入される。
各ガス流入管121〜124に導入されたガスは、直管部125を通過して環状部126に流入する。そして、このガスは、図4中矢印に示されるように、円環状に配置されている複数のガス放出口126aから放出され、被処理基板200の外周部200bから中央部200aへ向けて流れる。
<上部真空ポンプ取り付け室、下部真空ポンプ取り付け室>
上部真空ポンプ取り付け室(上部排気手段取り付け室)134は、その下端部が、反応容器101の第4の窓部144の周囲に取り付けられ、その内部が、反応容器101内の空間と連通している。
上部真空ポンプ取り付け室134は、一対の上部真空ポンプ取り付け壁(第1の上部真空ポンプ取り付け壁134a、第2の上部真空ポンプ取り付け壁134b)と、一対の上部真空ポンプ取り付け壁134a、134b同士の間隙を第4の窓部144側を除いて囲む枠部134cとを有する。
第1の上部真空ポンプ取り付け壁(上部排気手段取り付け壁)134aおよび第2の上部真空ポンプ取り付け壁(上部排気手段取り付け壁)134bは、それぞれ、第4の窓部144の右端部の外側および左端部の外側(第1の側壁106および第2の側壁107の各上端面)に縦置き状に取り付けられており、その面方向が第1の側壁106および第2の側壁107と略平行となっている。
図3に示すように、各上部真空ポンプ取り付け壁134a、134bは、側面視で、上方において半円状をなし、下端部において第4の窓部144の奥行き方向の長さと略等しい長さの直線状をなしており、下端部が第1の側壁106および第2の側壁107の上端部に取り付けられている。第1の上部真空ポンプ取り付け壁134aには、後述する第1の真空ポンプ130の吸引口と連通する開口が設けられており、第2の上部真空ポンプ取り付け壁134bには、後述する第2の真空ポンプ131の吸引口と連通する開口が設けられている。
下部真空ポンプ取り付け室(下部排気手段取り付け室)135は、その上端部が、反応容器101の第5の窓部145の周囲に固定され、その内部が、反応容器101内の空間と連通している。
下部真空ポンプ取り付け室135は、一対の下部真空ポンプ取り付け壁(第1の下部真空ポンプ取り付け壁135a、第2の下部真空ポンプ取り付け壁135b)と、一対の下部真空ポンプ取り付け壁135a、135b同士の間隙を第5の窓部145側を除いて囲む枠部135cとを有する。
第1の下部真空ポンプ取り付け壁(下部排気手段取り付け壁)135aおよび第2の下部真空ポンプ取り付け壁(下部排気手段取り付け壁)135bは、第5の窓部145の右端部の外側および左端部の外側に縦置き状に取り付けられており、その面方向が第1の側壁106および第2の側壁107と略平行となっている。
図3に示すように、各下部真空ポンプ取り付け壁135a、135bは、側面視で、各辺の長さが第5の窓部の奥行き方向の長さと略等しい略正方形状をなしている。また、このうち第1の下部真空ポンプ取り付け壁135aには、後述する第3の真空ポンプ132の吸引口と連通する開口が設けられている。
<排気手段>
第1の真空ポンプ(排気手段)130〜第3の真空ポンプ(排気手段)132は、それぞれ、吸引機構と、吸引機構のガス通路と連通する吸引口と、吸引口の周囲に設けられたフランジ130a〜132aと、吸引口の内部に設けられた図示しないゲートバルブとを有している。ゲートバルブは、図示しない制御機構によって開閉が制御されるように構成されている。
このうち第1の真空ポンプ130は、そのフランジ130aが第1の上部真空ポンプ取り付け壁134aに設けられた開口の周囲に取り付けられ、上部真空ポンプ取り付け室134に固定されている。また、第2の真空ポンプ131は、そのフランジ131aが第2の上部真空ポンプ取り付け壁134bに設けられた開口の周囲に取り付けられ、上部真空ポンプ取り付け室132に固定されている。また、第3の真空ポンプ132は、そのフランジ132aが第1の下部真空ポンプ取り付け壁135aに設けられた開口の周囲に取り付けられ、下部真空ポンプ取り付け室135に固定されている。
各真空ポンプ130〜132は、反応容器101内を減圧状態にしたり、被処理基板200に処理を行う際および処理を行った後、反応容器101内のガスを所定の流量で排気する。
ここで、従来の真空成膜装置は、上部真空ポンプ取り付け室134および下部真空ポンプ取り付け室135と、を有しておらず、真空ポンプは、反応容器の底部のみ、または、天井部と底部に直接取り付けられていた。すなわち、真空ポンプは、そのフランジが、例えば底部に設けられた開口の周囲に取り付けられることによって反応容器に固定されていた。
ここで、この真空ポンプのフランジ径は、真空ポンプの排気能力が高くなる程大きくなる。このため、従来の真空成膜装置で、排気能力の高い真空ポンプを取り付けるためには、フランジを取り付けるスペースを確保すべく天井部および底部の面積を大きくすること、すなわち、第1の側壁と第2の側壁との離間距離(反応容器の横幅)を大きくすることが必要となっていた。しかし、反応容器の横幅を大きくすると、反応容器の容積も大きくなるため、排気能力の高い真空ポンプをもってしても、反応容器内を排気するのに長時間を要してしまう。つまり、底部や天井部に真空ポンプを取り付ける構成では、真空ポンプの排気能力を高めることと反応容器の容積を小さく抑えることとの両立が難しく、どうしても反応容器内を排気するのに要する時間が長くなってしまう。
これに対して、真空成膜装置12では、反応容器101の天井部に、上部真空ポンプ取り付け室134が設けられ、該上部真空ポンプ取り付け室134の側壁を構成する各上部真空ポンプ取り付け壁134a、134bに、それぞれ、真空ポンプ130、131が取り付けられている。また、反応容器101の底部に、下部真空ポンプ取り付け室135が設けられ、該下部真空ポンプ取り付け室135の側壁の一方を構成する第1の下部真空ポンプ取り付け壁135aに真空ポンプ132が取り付けられている。
この場合、フランジ径の大きい真空ポンプを取り付けるためには、各上部真空ポンプ取り付け壁134a、134bおよび各下部真空ポンプ取り付け壁135a、135bの面積を大きくすればよく、これによる排気容積の増大は、反応容器101の横幅を大きくする場合に比べて小さく抑えられる。すなわち、真空成膜装置12では、各上部真空ポンプ取り付け壁134a、134bおよび第1の下部真空ポンプ取り付け壁135aに、それぞれ、真空ポンプ130〜132が取り付けられる構成であることにより、排気容積を小さく抑えながら、排気能力の高い真空ポンプ(フランジ径の大きい真空ポンプ)を用いることができる。また、各上部真空ポンプが取り付け壁134a、134bおよび各下部真空ポンプ取り付け壁135a、135bに、少なくとも1台の真空ポンプを取り付けることができるため、反応容器101の底部や天井部に直接真空ポンプを取り付ける構成に比べて多数の真空ポンプを取り付けることができる。これにより、反応容器101内の排気を短時間で行うことができる。
真空ポンプ130〜132としては、ターボ分子ポンプやクライオポンプを用いるのが望ましく、ターボ分子ポンプを用いることがより望ましい。
ターボ分子ポンプは、油を使用しないため清浄度(クリーン度)が高く、また、排気速度が大きいので高い真空度が得られる。さらにまた、比較的反応性の高いガスをも排気することができる。このため、ターボ分子ポンプを用いることにより、ガスの種類に関わらず、反応容器101内のガスを効率よく排気することができる。
クライオポンプは、排気速度やクリーン度がターボ分子ポンプより優れている。得に、クライオポンプは溜め込み式のポンプであるため、不純物の発生が少なく、反応容器内をクリーンな排気環境に保つことが可能である。その反面、溜め込み式のポンプであるため、可燃ガスやハロゲンガスなどの反応性の高いガスの排気には適さない、定期的にポンプの再生処理を行う必要があるという短所がある。
このため、反応容器101内に供給されるガスが反応性の高いガスである場合には、ターボ分子ポンプを主体として排気を行うことが望ましい。
なお、第1の真空ポンプ130および第2の真空ポンプ131としてターボ分子ポンプを用い、第3の真空ポンプ132としてクライオポンプを使用する。これにより、反応容器101内を短時間で排気することができ、また、反応容器101内を精度よく所定の減圧状態とすることができる。また、清浄度の高い環境で各種処理を行うことができる。また、さらに、反応容器101内に供給されるガスが反応性の高いものである場合には、ターボ分子ポンプ(第1の真空ポンプ130および第2の真空ポンプ131)を主体として排気を行うことにより、このようなガスの排気を正常に行うことができる。
また、上側に2台の真空ポンプ130、131が取り付けられ、下側に1台の真空ポンプ132が取り付けられているが、真空ポンプの台数はこれに限るものではない。例えば、上側の真空ポンプの台数は、1台であってもよく、3台以上であっても構わない。また、下側には、真空ポンプを取り付けなくてもよく、2台以上の真空ポンプを取り付けても構わない。例えば、下側に2台の真空ポンプを取り付ける場合、もう1台の真空ポンプは、第2の下部真空ポンプ取り付け壁135bに第3の真空ポンプ132と対向するように取り付けられる。
反応容器101内を排気するのに要する時間は、真空ポンプの数が多くなる程短縮されるが、真空ポンプの数が余り多くなると、装置の大型化、消費電力の増大を招くおそれがある。このような観点から、上側および下側に取り付けられる真空ポンプの数は、それぞれ、2台を上限とするのが望ましい。
また、反応空間101aの下方に複雑な形状の機器(本実施形態ではキャリア搬送装置137)が設けられている場合には、下側に少なくとも1台の真空ポンプが取り付けられているのが望ましい。
反応空間101aの下方にキャリア搬送装置137が設けられた構成で、下側に真空ポンプが取り付けられていないと、上側の真空ポンプ130、131によって反応容器101内を排気する際、キャリア搬送装置137の駆動機構141等が流動抵抗となり易く、反応容器101内を目的の減圧状態とするのに長時間を要してしまう。これに対して、下側に真空ポンプ132が取り付けられていると、この真空ポンプ132とキャリア搬送装置137とが近接していることから、キャリア搬送装置137の周囲の空間を効率よく排気することができる。その結果、反応容器101内を短時間に目的の減圧状態とすることができる。
ここで、本実施形態の真空成膜装置12では、上側に2台の真空ポンプ130、131が取り付けられ、下側に1台の真空ポンプ132が取り付けられている。
このため、上側に取り付けられた2台の真空ポンプ130、131が共同して働くとともに、下側に取り付けられた真空ポンプ132によってキャリア搬送装置137の周囲が効率よく排気される。これにより、反応容器101内を短時間に所定の減圧状態とすることができる。
<Oリング加熱機構>
本実施形態の真空成膜装置12では、枠部803に加熱部804が取り付けられ、枠部803を加熱することができる構成とされている。これにより、前記排気処理工程において、排気を開始すると同時に枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリング802と扉部801との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させて気密性を上げて、反応容器101の空間部101dの真空度を短時間で高めることができる。
Oリング802の加熱温度は80℃〜150℃の温度範囲とすることが好ましい。80℃未満では、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができず、気密性を上げる効果が少なく、短時間で所定の真空度とすることができない。また、150℃超ではOリング802が分解・変形して気密性を低下させるおそれが発生するので好ましくない。
<基板搬送装置>
基板搬送装置105は、外部から搬入された被処理基板200を、第1のカソード113と第3のカソード115の間、および、第2のカソード114と第4のカソードとの間に、被処理基板200の両面が電極面113a、115aまたは電極面114aと対向するように、かつ、縦置き状態となるように搬送する。
この基板搬送装置105は、基板搬送装置室136と、キャリア搬送装置137と、キャリア搬送装置137に保持された第1のキャリア138および第2のキャリアとを有する。
なお、第2のキャリアおよび第2のキャリア保持部は、第1のキャリア138および後述する第1のキャリア保持部140と同様の構成とされており、図示は省略する。
基板搬送装置は図2及び図3に示すように、前記のようなキャリア138を搬送させる搬送機構として、キャリア138を非接触状態で駆動する駆動機構141を備えている。
この駆動機構141は、キャリア138の下部にキャリア138の移動方向に沿ってN極とS極とが交互に並ぶように配置された複数の磁石202と、その下方にキャリア138の搬送方向(図2の紙面垂直方向、図3の左右方向)に沿って配置された回転磁石203とを備え、この回転磁石203の外周面には、N極とS極とが二重螺旋状に交互に並んで形成されている。
また、複数の磁石202と回転磁石203との間には、真空隔壁204が介在されている。この真空隔壁204は、複数の磁石202と回転磁石203とが磁気的に結合されるように透磁率の高い材料で形成されている。また、真空隔壁204は、回転磁石203の周囲を囲むことによって、反応容器101の内側と大気側とを隔離している。
また、回転磁石202は、回転モータ205により回転駆動される回転軸206と互いに噛合される複数のギアを介して連結されている。これにより、回転モータ205からの駆動力を回転軸206を介して回転磁石204に伝達しながら、この回転磁石204を軸回りに回転させることが可能となっている。
以上のように構成される基板搬送装置は、キャリア138側の磁石202と回転磁石204とを非接触で磁気的に結合させながら、回転磁石203を軸回りに回転させることにより、キャリア138を回転磁石203の軸方向(図2の紙面垂直方向、図3の左右方向)に沿って直線駆動する。
また、反応容器101内には、搬送されるキャリア138をガイドするガイド機構として、水平軸回りに回転自在に支持された複数の主ベアリング175がキャリア138の搬送方向(図2の紙面垂直方向、図3の左右方向)に並んで設けられている。一方、キャリア138は、支持台226の下部側に複数の主ベアリング175が係合されるガイドレール176を有しており、このガイドレール176には、溝部が支持台226の長手方向に沿って形成されている。
また、反応容器101内には、垂直軸回りに回転自在に支持された一対の副ベアリング177が、その間にキャリア138を挟み込むようにして設けられている。これら一対の副ベアリング177は、複数の主ベアリング175と同様に、キャリア138の搬送方向に複数並んで設けられている。
なお、主ベアリング175及び副ベアリング177は、機械部品の摩擦を減らし、スムーズな機械の回転運動を確保する軸受であって、具体的には転がり軸受からなり、反応容器101内に設けられたフレーム(取付部材)に固定された支軸(図示略)に回転自在に取り付けられている。
キャリア138は、ガイドレール176に複数の主ベアリング175を係合させた状態で、これら複数の主ベアリング175の上を移動すると共に、一対の副ベアリング177の間に挟み込まれることによって、その傾きが防止されていて、被処理基板200を垂直に保持したまま搬送することができるように構成されている。
次に、キャリア138を移動させてカソード115、115間に被処理基板200を位置させた状態で、反応空間101aに、例えばハロゲンを含有するガス(ハロゲン含有ガス)が供給され、また、第1のカソード113〜第4のカソードにそれぞれ電力が供給されると、反応空間に供給されたハロゲン含有ガスがプラズマ化し、ハロゲンイオンを含有する反応性プラズマが生成する。この反応性プラズマによって、各被処理基板200の表面がプラズマ処理される。
また、第1のカソード113〜第4のカソードの各電極面にターゲット117、118が支持されている場合に、反応空間101aに、例えば反応性ガスと不活性ガスとの混合ガスが供給され、第1のカソード113〜第4のカソードにそれぞれ電力が供給されると、反応空間101aに供給された混合ガスが、プラズマ化する。そして、このプラズマ中で生成された不活性ガスのイオンが、各ターゲットに衝突し、各ターゲットからターゲット物質(スパッタ粒子)が弾き出される。弾き出されたスパッタ粒子はその一部が活性化された反応ガスと反応し、各被成膜基板200の各表面に被着する。これにより、2枚の被成膜基板200の両面に、スパッタ膜が成膜される。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、基板を配置可能な空間部101dを備えた反応容器101と、空間部101d内に設置された成膜手段808と、空間部101d内を減圧状態とする排気手段807と、空間部101dに連通された開口部101cを覆うように反応容器101に取り付けられ、開口部101cを開閉自在とする扉部801と、反応容器101と扉部801との間に、開口部101cを囲むように配置されたOリングと、空間部101d内で、開口部101cに沿ってOリング802の近傍に配置され、冷却媒体を流通させる冷却管811と、を有する構成なので、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等を、冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、冷却管811がジャバラ管である構成なので、冷却管811の表面積を大きくして、冷却効果を高めて、ガストラップ効果を高めることができ、反応容器101の内部をより短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、反応容器101または扉部801に開口部101cを囲むように枠部803が取り付けられており、枠部803に開口部101cを囲むように設けられた溝部803cにOリング802が嵌合されており、枠部803の溝部803cが設けられた面と反対側の面に加熱部804が取り付けられている構成なので、枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリング802と扉部801との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、反応容器101がステンレス合金からなり、枠部803がアルミニウム合金からなる構成なので、反応容器101の剛性を保持すると共に、枠部803を短時間で昇温して、枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進するとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、成膜手段808が、一対の電極113、115と、一対の電極113、115の各対向面側に設けられたターゲット117、118と、を有しており、該ターゲット117、118から弾き出されたスパッタ粒子を基板の表面に被着させることによって薄膜を成膜自在としてなる構成なので、枠部803およびOリング802を加熱してOリング802と扉部801との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧して、成膜を行うことができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、反応容器101に隣接して空間部101dと連通する排気手段取り付け室134、135が設けられており、排気手段807が排気手段取り付け室134、135のいずれかの壁に取り付けられている構成なので、枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリング802と扉部801との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、反応容器101の上方に上部の排気手段取り付け室134が設けられており、上部の排気手段取り付け室134のいずれかの壁に排気手段807が取り付けられており、反応容器101の下方に下部の排気手段取り付け室135が設けられており、下部の排気手段取り付け室135のいずれかの壁に排気手段807が取り付けられている構成なので、枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリング802と扉部801との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、排気手段807が真空ポンプ130、131、132である構成なので、枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリング802と扉部801との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置12は、空間部101d内に基板を搬送する基板搬送機構137が備えられている構成なので、枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリング802と扉部801との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
(第3の実施形態)
図8は、本発明の実施形態である真空成膜装置の更に別の一例を示す縦断面図であり、図9は、図8で示すC部の拡大断面図であり、図10は、図8で示すD部の拡大断面図である。なお、第1の実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
図8に示すように、本発明の実施形態である真空成膜装置13は、基板を配置可能な空間部101dを備えた反応容器101と、空間部101d内に設置された成膜手段808と、空間部101dの内部を減圧状態とする排気手段807と、反応容器101の一面に設けられ、空間部101dに連通された開口部101cと、開口部101cを覆うように取り付けられ、開口部101cを開閉自在とする扉部801と、扉部801の外周に取り付けられた枠部803と、を有する。
さらにまた、開口部101cに沿って、Oリング802の近傍に冷却管811が配置されている。
なお、成膜手段808は、一対の電極113、115と、一対の電極113、115の各対向面側に設けられたターゲット117、118と、を有しており、該ターゲット117、118から弾き出されたスパッタ粒子を基板の表面に被着させることによって薄膜を成膜自在としてなる。また、排気手段807は、真空ポンプ130、131、132である。
さらに、図9および図10に示すように、枠部803の空間部101d側の面803bに開口部101cを囲むように形成された溝部803cと、溝部803cに嵌めこまれたOリング802と、枠部803の空間部101dと反対側の面803aに取り付けられ、枠部803を加熱する加熱部804と、を有する。
<扉部801>
図8に示すように、扉部801は種々の構成部品が取り付けられた反応容器101の一側壁107からなる。真空成膜装置13の反応容器101の一側壁側には開口部101cが設けられ、扉部801は開口部101cを覆うように取り付けられている。また、開口部101cは空間部に連通されている。また、第1の実施形態と同様に、扉部801は、反応容器101の別の側壁に蝶番805により取り付けられており、反応容器101の開口部101cを開閉自在としている。
<枠部803>
枠部803は、扉部801の外周を囲むように取り付けられている。枠部803は熱伝導性の高い材料からなることが好ましい。これにより、枠部803を短時間で加熱・冷却して枠部803をベーキングすることができ、内部の真空度を短時間で高めることができる。熱伝導性の高い材料としては、たとえば、アルミニウム合金などを挙げることができる。例えば、図10の枠部803をアルミニウム合金とし、一側壁107をステンレス合金とし、両者を金属製のガスケットを用いて接合することにより、枠部803を加熱部804によって効率的に加熱することができる。
<溝部803c>
枠部803の空間部101d側の面803bには、開口部101cを囲むように溝部803cが形成されている。溝部803cの深さは、嵌合させるOリングが面803bから若干突出する深さとすることが好ましい。これにより、扉部801を閉じたときにOリング802を十分弾性変形させることができる。
<Oリング802>
溝部803cには、樹脂製のOリング802が嵌合されている。Oリング802はシール材として用いられ、扉部801を枠部803に押し付けたときにOリング802を弾性変形させて、Oリング802と反応容器101および枠部803との間を密着させることにより、反応容器101の空間部101dの気密性を向上させることができる。
<加熱部804>
枠部803の空間部101dと反対側の面803aには、薄型の加熱部804が取り付けられている。なお、加熱部804は配線(図示略)を介して電源部(図示略)に接続されており、前記電源部を介して加熱部804に電圧を印加することにより、加熱部804を任意の温度に加熱することができる。これにより、枠部803を短時間で加熱・冷却して、枠部803をベーキングすることができ、空間部101d内の真空度を短時間で高めることができる。加熱部804は、枠部803を効率的に加熱できるものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、リボンヒータなどのベーキングヒータを用いることができる。
本発明の実施形態である真空成膜装置13は、反応容器101または扉部801に開口部101cを囲むように枠部803が取り付けられており、枠部803に開口部101cを囲むように設けられた溝部803cにOリング802が嵌合されており、枠部803の溝部803cが設けられた面と反対側の面に加熱部804が取り付けられている構成なので、枠部803およびOリング802を加熱して、Oリングに吸着されている水、Oリングが吸収している水または窒素ガス等の脱離を促進することができ、Oリング802と反応容器101との間およびOリング802と枠部803との間の密着性を向上させることにより、気密性を上げるとともに、Oリング802から脱離された水などを冷却管811でトラップして、反応容器101の内部を短時間で所定の真空度(ベースプレッシャー)まで減圧することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
まず、図2に示す真空成膜装置の開口部の外周に合わせて、アルミニウム合金からなる枠部を作製し、前記枠部の一面に前記開口部を囲むように溝部を形成した。次に、前記枠部を前記開口部に取り付けた後、前記枠部の内部側の面に所定の間隔でリボンヒータ(加熱部)を取り付けた。次に、前記開口部に沿って、Crからなる冷却管を取り付けた。次に、前記溝部に断面直径7mmのバイトンETPのOリングを嵌合して、前記扉部を閉じた。なお、前記真空成膜装置には、上側に2台の真空ポンプを設置するとともに、下側に1台の真空ポンプを設置した。
「排気特性評価」
前記真空ポンプを動作させると同時に、リボンヒータ(加熱部)を加熱して、Oリングの取付枠部を110℃に加熱したところ真空成膜装置内が約1×10−5Paの圧力になった。
次に、前記冷却管に液体窒素を流し、前記冷却管の表面温度を約80K(約−190℃)に冷却を開始したところ、真空成膜装置内が5分程度で約5×10−6Paの圧力となった(実施例1−1:1st run)。
次に、前記冷却管に液体窒素を流すのを止め、前記冷却管の冷却を止めたところ、再び、真空成膜装置内が約1×10−5Paの圧力になった。
次に、再び、前記冷却管に液体窒素を流し、前記冷却管の冷却を開始したところ、真空成膜装置内が5分程度で約5×10−6Paの圧力となった(実施例1−2:2nd run)。
(実施例2)
まず、Cuからなる冷却管を用いた他は実施例1と同様に真空成膜装置を準備した。
次に、実施例1と同様に2回の排気特性評価(実施例2−1:1st run、実施例2−2:2nd run)を行った。実施例1と同様の結果が得られた。
実施例1および実施例2の排気特性結果については、図11に示す。
本発明の真空成膜装置は、短時間で所定の真空度まで減圧することができる装置であり、磁気記録媒体などの製造効率を飛躍的に向上させることができるので、磁気記録媒体を製造・利用する産業において利用可能性がある。
11、12、13…真空成膜装置、101…反応容器、101a…反応空間、101c…開口部、101d…空間部、102…ガス供給手段、105…基板搬送装置、106…側壁、107…側壁(扉部)、108、109…側壁、113…第1のカソード(プラズマ発生用の電極)、113a…電極面、114…第2のカソード(プラズマ発生用の電極)、115…第3のカソード(プラズマ発生用の電極)、115a…電極面、116…窓部、121〜124…第1〜第4のガス流入管、125…直管部、126…環状部、126a…ガス放出口、126c…内周壁、130、131、132…真空ポンプ(排気手段)、130a、131a、132a…フランジ、134…上部真空ポンプ取り付け室(上部排気手段取り付け室)、134a…第1の上部真空ポンプ取り付け壁(上部排気手段取り付け壁)、134b…第2の上部真空ポンプ取り付け壁(上部排気手段取り付け壁)、135…下部真空ポンプ取り付け室(下部排気手段取り付け室)、135a…第1の下部真空ポンプ取り付け壁(下部排気手段取り付け壁)、135b…第2の下部真空ポンプ取り付け壁(下部排気手段取り付け壁)、136…基板搬送装置室、137…キャリア搬送装置(基板搬送機構)、138…第1のキャリア、140…キャリア保持部、141…駆動機構、150…磁石、200…被処理基板(基板)、200a…中央部、200b…外周部、300…磁気記録再生装置、801…扉部、802…Oリング(シール材)、803…枠部、804…加熱部(ヒーター)、805…蝶番、807…排気手段、808…成膜手段、811…冷却管、811a…一端、811b…他端、811c…表面、901…基板供給・収容室、902…基板取り付け室、903…キャリア転送室、904…第1コーナー室、905…第1シード層形成室(スパッタチャンバ)、906…第1加熱室、907…第2コーナー室、908…第2加熱室、909…第2シード層形成室(スパッタチャンバ)、910…第1下地層形成室(スパッタチャンバ)、911…第2下地層形成室(スパッタチャンバ)、912…第1磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)、913…第2磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)、914…第3コーナー室、915…第3磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)、916…第4磁気記録膜形成室(スパッタチャンバ)、917…第4コーナー室、918…予備室、919…第1保護膜形成室、920…第2保護膜形成室、921…予備室、922…基板取り外し室、923、924…成膜用基板(非磁性基板)、925…キャリア。

Claims (9)

  1. 基板を配置可能な空間部を備えた反応容器と、
    前記空間部内に設置された成膜手段と、
    前記空間部内を減圧状態とする排気手段と、
    前記空間部に連通された開口部を覆うように前記反応容器に取り付けられ、前記開口部を開閉自在とする扉部と、
    前記反応容器と前記扉部との間に、前記開口部を囲むように配置されたOリングと、
    前記空間部内で、前記開口部に沿って前記Oリングの近傍に配置され、冷却媒体を流通させる冷却管と、を有することを特徴とする真空成膜装置。
  2. 前記冷却管がジャバラ管であることを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
  3. 前記反応容器または前記扉部に前記開口部を囲むように枠部が取り付けられており、前記枠部に前記開口部を囲むように設けられた溝部に前記Oリングが嵌合されており、前記枠部の前記溝部が設けられた面と反対側の面に加熱部が取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空成膜装置。
  4. 前記反応容器または前記扉部がステンレス合金からなり、前記枠部がアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項3に記載の真空成膜装置。
  5. 前記成膜手段が、一対の電極と、前記一対の電極の各対向面側に設けられたターゲットと、を有しており、該ターゲットから弾き出されたスパッタ粒子を基板の表面に被着させることによって薄膜を成膜自在としてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
  6. 前記反応容器に隣接して前記空間部と連通する排気手段取り付け室が設けられており、
    前記排気手段が前記排気手段取り付け室のいずれかの壁に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
  7. 前記反応容器の上方に上部の排気手段取り付け室が設けられており、前記上部の排気手段取り付け室のいずれかの壁に排気手段が取り付けられており、前記反応容器の下方に下部の排気手段取り付け室が設けられており、前記下部の排気手段取り付け室のいずれかの壁に排気手段が取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の真空成膜装置。
  8. 前記排気手段が真空ポンプであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
  9. 前記空間部内に基板を搬送する基板搬送機構が備えられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
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