JP2010280776A - ポリエステル樹脂、その製造方法、及び成形品 - Google Patents

ポリエステル樹脂、その製造方法、及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れた成形品を製造するために用いることができる、新規なポリエステル樹脂及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フランジカルボン酸及びジオールの構造単位から成る式(2)で表される構造単位を有し、式(2)で表される構造単位を、ジオールの構造単位及び式(2)の構造単位合計のうち3.8モル%以上9.7モル%以下含有するポリエステル樹脂。(式(2)中、Aはフランジカルボン酸構造単位を示す。)

【選択図】なし

Description

本発明は、各種樹脂材料等に有用なポリエステル樹脂、その製造方法、及び成形品に関する。
ポリオレフィン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリアクリレート樹脂系、ポリカーボネート樹脂系、ポリイミド樹脂系などに代表される高分子材料は、様々な産業用資材として広く利用されている。これらの汎用高分子材料は、耐熱性や耐衝撃性等の機械物性には優れているが、自然環境下ではほとんど分解しないため、埋設処理すると、半永久的に地中に残留する。
一方、生分解性材料に近年注目が集まり、脂肪族ポリエステル樹脂などの生分解性樹脂の開発が活発に行われている。分解生成物の二酸化炭素は、もともと大気中にあった二酸化炭素を固定したものと考えられるため、植物由来樹脂はカーボンニュートラルな材料として注目されている。
植物由来樹脂のうち、主にポリ乳酸について、OA・家電製品筐体、自動車部品、ボトル、フィルム、シート、食器等への応用が行われている。しかしながら、一般にこれらの用途では、耐熱性を必要とする場合が多い。脂肪族ポリエステル樹脂であるポリ乳酸は、ガラス転移温度(Tg)が57〜60℃付近であり、耐熱性が十分とはいえない。そのため、現状では、耐熱性が低いポリ乳酸を使用することは困難であり、実際には用途が限定されている。耐熱性が改善された植物由来樹脂は、様々な用途展開が可能なことから産業界からも強く要望されている。よって植物由来樹脂の耐熱性を改善するために様々な工夫がなされている。
植物由来樹脂の耐熱性の改良として、具体的には植物由来材料を用いたポリエステル樹脂が報告されている(特許文献1)。
特開2007−146153号公報
特許文献1にはフラン環を含む骨格構造を持ち、重合度を規定することにより、機械物性が改善された樹脂が記載されている。しかし、特許文献1に記載される方法では、耐熱性の改善は必ずしも十分とは言えず、様々な用途に展開するためには耐熱性の一層の改善が求められる。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れた成形品を製造するために用いることができる、新規なポリエステル樹脂及びその製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記ポリエステル樹脂を用いることにより、耐熱性に優れた各種成形品を提供するものである。
前記の課題を解決するポリエステル樹脂は、下記式(1)及び式(2)で表される構造単位(繰り返し単位)を有し、式(2)で表される構造単位を、式(1)及び式(2)の合計に対して3.8モル%以上9.7モル%以下含有することを特徴とする。
(式(1)中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。式(1)及び(2)中、Aは式(3)を示す。)
また、前記の課題を解決する成形品は、前記のポリエステル樹脂を含む成形品用組成物を成形してなることを特徴とする。
また、前記の課題を解決するポリエステル樹脂の製造方法は、フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコール及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと共重合する工程を有し、前記2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの使用量が、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し16モル%以上40モル%以下であることを特徴とする。
本発明は、耐熱性に優れ、各種成形品製造用材料に好適であるポリエステル樹脂及びその製造方法を提供できる。
また、本発明は、前記ポリエステル樹脂を用いることにより、耐熱性に優れた各種成形品を提供できる。
本発明の実施例1のポリエステル樹脂のプロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)測定によるスペクトルを示す図である。 本発明の実施例2のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。 本発明の実施例3のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。 本発明の比較例4のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。 本発明の比較例1のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。 本発明の比較例2のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。 本発明の比較例3のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は、鋭意検討した結果、所望の成分を共重合させることにより、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、フラン環を有するポリエステル樹脂に関して、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを共重合することにより、架橋構造と、耐熱性を示すアミド結合を導入することを特徴とする。
アミノ基を持つジオール成分として2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを用いた場合、ポリエステル中のジオールのうち、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール含有量が3.8モル%以上9.7モル%以下のとき、架橋構造と、耐熱性を示すアミド結合により耐熱性が改善されることが分かった。すなわち、ジカルボン酸成分としてフラン環を有し、さらにジオール成分のうち、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが3.8モル%以上9.7モル%以下のとき、架橋構造と、耐熱性を示すアミド結合を有する構造を持つことで、耐熱性の改善されたポリエステル樹脂とすることができる知見を得た。
また、前記ポリエステル樹脂を成形品用組成物として用いると、優れた耐熱性を持った成形品となることを見出し、かかる知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
下記式(1)及び式(2)で表される構造単位を有し、前記式(2)で表される構造単位を、式(1)及び式(2)の合計に対して3.8モル%以上9.7モル%以下含有することを特徴とするポリエステル樹脂。
(式(1)中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。式(1)及び(2)中、Aは式(3)を示す。)
本発明にかかるポリエステル樹脂は、前記R1がエチレン基であることを特徴とする。
本発明に係る成形品は、前記のポリエステル樹脂を含む成形品用組成物を成形してなることを特徴とする。
本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコール及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと共重合する工程を有し、前記2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの使用量が、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し16モル%以上40モル%以下であることを特徴とする。
前記式(1)及び式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂は、架橋構造と、耐熱性を示すアミド結合を有する部分を含有し、これを用いて得られる成形体に高い耐熱性を付与する。
また、前記式(1)及び式(3)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂は、架橋構造と、耐熱性を示すアミド結合を含有し、これを用いて得られる成形体に高い耐熱性を付与する。
フラン環を有するジカルボン酸としては、2,5−フランジカルボン酸を原料として用いる。2,5−フランジカルボン酸はセルロースやグルコース,フルクトース、粘液酸などのバイオマスから公知の方法で変換して得たものを用いることができる。そのためフラン環を用いると、耐熱性に寄与する芳香族環として植物由来の材料を用いることができる。
式(1)におけるR1は、それぞれ、芳香族炭化水素基、直鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基を示し、これらは置換基を有していてもよい。前記芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ビフェニル環及びビス(フェニル)アルカンの他、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合環や、複素環の2価の基を挙げることができる。前記ビス(フェニル)アルカンとしては、例えば、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。一方、前記複素環としては、例えばフラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール等の五員環。ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の六員環。インドール、カルバゾール、クマリン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ベンゾチアゾール、キノリキサン、プリン等の縮合環を挙げることができる。
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基等を挙げることができる。これらのうち、エチレン基、プロピレン基及びn−ブチレン基の炭素数が2から4の直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基及びn−ブチレン基を特に好ましいものとして挙げることができる。
本発明のポリエステル樹脂の分子量としては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に溶解させたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、数平均分子量が10000以上160000以下の範囲が望ましい。数平均分子量が10000以上の場合、優れた機械特性を示し、数平均分子量が160000以下の場合、成型加工が容易であるため好ましい。より好ましい範囲は数平均分子量が12000以上140000以下である。
本発明の式(1)及び式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を合成するには、多価アルコール過剰下で、エチレングリコール及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと、フランジカルボン酸又はそのエステルを重縮合させることにより得ることができる。
フラン環を有するジカルボン酸として、具体的には、2,5−フランジカルボン酸、2,4−フランジカルボン酸、又は3,4−フランジカルボン酸を挙げることができる。特に、2,5−フランジカルボン酸を用いることが好ましい。2,5−フランジカルボン酸はセルロースやグルコース,フルクトース、粘液酸などのバイオマスから公知の方法で変換して得たものを用いることができる。そのため、ジカルボン酸として植物由来の原料を転換して合成した2,5−フランジカルボン酸を用いることにより、植物由来の成分を樹脂に導入することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、フランジカルボン酸のエステルとしては、先に挙げたフラン環を有するジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル等を挙げることができる。具体的には2,5−フランジカルボン酸ジメチル、2,5−フランジカルボン酸ジエチル、2,5−フランジカルボン酸エチルメチル、2,5−フランジカルボン酸ジプロピル、2,5−フランジカルボン酸ジブチル、2,4−フランジカルボン酸ジメチル、2,4−フランジカルボン酸ジエチル、3,4−フランジカルボン酸ジメチル、3,4−フランジカルボン酸ジエチルなどを例示することができる。また、前記の混合物等も挙げることができる。
また、多価アルコールとしては、下記の式(4)で示すものを挙げることができる。
式(4)中、aは2以上の整数であってもよいが、式(1)から(3)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を得るために、2を示すことが好ましい。式中、R’は、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。具体的には、式(1)中のR1が示す基や、その置換基として具体的に例示した置換基と同じ置換基を有するR1が示す基を挙げることができる。
このような2価のアルコールとしては、具体的には、以下のものを例示することができる。鎖状又は環状脂肪族ジオールとしてエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール。ジヒドロキシベンゼンとして1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン。ビスフェノールとしてビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン。グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、糖類。ヒドロキシ安息香酸など、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール類などである。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。
これらのうち、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましい。ポリエステル樹脂を合成する際の重縮合反応においては、過剰な2価アルコールや、重縮合反応が進行するにつれて生成する2価アルコールは、減圧したときに留去させて、反応を進行させる必要がある。エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールは2価のアルコールの中で、比較的沸点が低い。そのため、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールを用いたときには、過剰な2価アルコールや、重縮合反応が進行するにつれて生成する2価アルコールは減圧したときに留去させやすく、さらに重縮合反応を進行させることができる。
本発明の式(1)及び式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を合成する時には、フランジカルボン酸又はそのエステルの量に応じて、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの量を決定することができる。
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと、前記2価アルコールとフランジカルボン酸の重縮合方法としては、これらを直接重縮合する方法が挙げられる。また、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと、前記2価アルコールとフランジカルボン酸とのエステルを合成した後、これを重縮合する方法(エステル交換法)等を挙げることができる。2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと、前記2価アルコールとフランジカルボン酸を重縮合方法する方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等を挙げることができ、成形する成形品に応じて適宜選択することができる。重合温度、重合触媒、溶剤などの媒体等についてはそれぞれの重合方法により適宜選択することができる。
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと、前記2価アルコールとフランジカルボン酸の重縮合方法としては、エステル化工程と、その後のエステル化合物の重縮合工程によることが好ましい。
重縮合方法としては、アルコールとジカルボン酸を直接反応させる直接重縮合法と、エステルとアルコールをエステル交換させて重合させるエステル交換法が挙げられる。
直接重縮合法は原料の使用量を厳密に制御しなければ高分子量化したものが得られにくいとされる。
一方、エステル交換法においては、ジカルボン酸の使用量に対して、原料の2価アルコールの使用量を多く用いて、エステル交換反応により高分子量化を進行させる。過剰な2価アルコールあるいは、重縮合反応が進行するにつれて生成する2価アルコールは反応系外へ除去させる。
そのため、エステル交換法においては、2価アルコールの使用量をジカルボン酸の使用量に対して過剰に用いれば良いので、直接重縮合よりも高分子量化させやすいとされる。
すなわち、重縮合方法としては、直接重縮合、エステル交換法のいずれも用いることができるが、高分子量化させたポリエステル樹脂を得られやすいエステル交換法を用いることがより好ましい。
前記エステル化工程においては、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと、2価アルコールと、フランジカルボン酸又はそのエステルと、触媒とを撹拌しながら110℃から200℃、好ましくは150℃から185℃に加熱し、エステル化合物を得る。
エステル化合物を得るためには、110℃から200℃の範囲で段階的に昇温させることが好ましい。すなわち、低い温度から、温度を変えたいくつかの段階に分けて反応を進行させることができる。具体的にはある温度で1から3時間程度保持した後、次の加熱温度に昇温して、1から3時間程度保持して脱水反応を進行させる工程を用いることができる。
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの使用量としては、モル比で、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し、16モル%以上40モル%以下が好ましい。16モル%未満のとき、十分な耐熱性を示しうる架橋構造と耐熱性を示すアミド結合を形成することができない。また、40モル%より大きいと、過度に架橋構造が形成され、樹脂の熱可塑性が損なわれたりして好ましくない。
また、2価アルコールの使用量としては、フランジカルボン酸又はそのエステルのモル数に対し、2価アルコールが1倍から3倍のモル数であることが好ましい。過剰な2価アルコールや、重縮合反応が進行するにつれて生成する2価アルコールは、反応系を減圧下にすることで留去するか、または他の溶媒と共沸させ留去するか、または他の方法により反応系外へ除去することができる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、フランジカルボン酸又はそのエステル、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び多価アルコール以外のその他のモノマーを用いることができる。
その他のモノマーとしてはジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のような芳香環を有する脂肪族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ジグリコール酸などの脂肪族ジカルボン酸など、以上のジカルボン酸のエステルも挙げることができる。また、ヒドロキシカルボン酸成分として、p−ヒドロキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、グリコール酸、乳酸などを挙げることができる。また、ラクトン類としてカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ビニルナフタレン、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル化合物及びジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレート等のアリル化合物も挙げることができる。
これらは単独あるいは併用で使用してもよい。
また、その他のモノマーの添加量は、原料の合計量100重量部に対して50重量部以下、好ましくは5重量部以下が好ましい。
触媒は、ジカルボン酸の自己触媒作用のために添加しなくとも反応は進行するが、反応の進行に伴いジカルボン酸の濃度が低下するため、添加することが好ましい。使用する触媒としては、金属酸化物や塩、スズ、鉛、チタン等の有機金属化合物や、塩化ハフニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)・(THF)等の四価のハフニウム化合物が好ましい。
このエステル化工程の終点は、反応混合物が透明になった時点であり、容易に確認することができる。
その後の重縮合工程においては、反応系の温度を180℃から280℃、好ましくは180℃から240℃の範囲に加熱し、重縮合反応を開始させる。重縮合反応は真空下で行うことが好ましい。この重縮合に最適な触媒として、具体的には以下のものを挙げることができる。鉛、亜鉛、マンガン、カルシウム、コバルト、マグネシウム等の酢酸塩や炭酸塩、又はマグネシウム、亜鉛、鉛、アンチモン等の金属酸化物やスズ、鉛、チタン等の有機金属化合物。また、両工程に有効な触媒としてチタンアルコキシドを用いることもできる。触媒の添加時期としては、エステル化工程と重縮合工程において、それぞれ別途に加えても、また、重縮合工程における触媒を当初から添加してもよい。触媒の添加に当たり、必要に応じてフランジカルボン酸と2価アルコールを加熱してもよく、複数回に分割して添加してもよい。
エステル化に続く重縮合反応においては、エステル化工程で消費されなかった余剰の2価アルコールや副生成物として生成する2価アルコ−ルを反応系から除去することにより重縮合反応を促進させることができる。2価アルコールの除去は反応系を減圧して留去するか、又は他の溶媒と共沸させ留去する等の方法により反応系外へ除去する方法によることができる。また、重縮合反応により高分子を得た後に、公知の方法で固相重合を行うこともできる。
このような重縮合工程において得られる本発明のポリエステル樹脂の数平均の重合度は50以上700以下、好ましくは60以上600以下である。
また、本発明のポリエステル樹脂の分子量としては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に溶解させたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、数平均分子量が10000以上160000以下、好ましくは12000以上140000以下である。
本発明のポリエステル樹脂は、式(1)及び式(2)で表される構造単位を含むことを特徴とする。ポリエステル樹脂に含有され式(2)で表される構造単位の含有量は式(1)及び式(2)の合計に対して、3.8モル%以上9.7モル%以下、好ましくは4.1モル%以上9.7モル%以下の範囲である。(2)で表される構造単位の含有量が3.8モル%未満のとき、十分な耐熱性を示しうる架橋構造と耐熱性を示すアミド結合を形成することができない。また、9.7モル%より大きいと、過度に架橋構造が形成され、樹脂の熱可塑性が損なわれたりして好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂には、前記式(1)及び式(2)で表される構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
本発明の成形品用組成物は、前記ポリエステル樹脂を含む。本発明の成形品用組成物に含有されるポリエステル樹脂の含有量は、50重量%以上100重量%以下が好ましい。
更に、本発明の成形品用組成物は前記ポリエステル樹脂の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。具体的には、難燃剤、着色剤、内部離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種フィラー等を挙げることができる。本発明の成形品用組成物に含有される添加剤の含有量は、0.5重量%以上50重量%以下が好ましい。
前記成形品用組成物を用いて成形可能な成形品としては、耐熱性に優れることから、繊維・フィルム、シート、各種成形品等、広い分野における成形品を挙げることができる。例えば、ボトル等の容器や、パイプ、チューブ、シート、板、フィルム等である。特に、好ましい成形品としては、インクジェットプリンターのインクタンク、電子写真のトナー容器、包装用樹脂や複写機、プリンター等の事務機又はカメラの筐体等の構成材料を挙げることができる。
前記成形品用組成物を用いた成形品の成形方法としては、熱可塑性樹脂の成形方法と同様の方法を使用挙げることができ、例えば、圧縮成形、押出成形又は射出成形等を利用することができる。
本発明のポリエステル樹脂を、具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例のポリエステル樹脂の評価は以下の測定方法を用いて行った。
[分子量測定]
分析機器:高速液体クロマトグラフ Waters社製アライアンス2695
検出器:示差屈折検出器
溶離液:5mMトリフルオロ酢酸ナトリウムの濃度のヘキサフルオロイソプロパノール溶液
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
分子量:ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の標準を用いて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)を求めた。
[NMR測定]
装置名:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置JNM−ECA−400
測定条件:1H−NMR
溶媒:CFCOOD
[ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)測定]
装置名:ティー・エイ・インスツルメント製示差走査熱量測定装置Q1000
パン:アルミニウムパン
試料重量:3mg
昇温開始温度:30℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素
[熱分解温度(Td)測定]
装置名:ティー・エイ・インスツルメント製熱重量測定装置Q500
パン:アルミニウムパン
試料重量:3mg
測定温度:50から500℃
昇温速度:50℃/min
測定モード:高分解能ダイナミック
雰囲気:窒素熱分解温度;10%重量減少温度を熱分解温度とした。
以下の実施例及び比較例において、AMPDは2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、PEFはポリエチレン−2,5−フランジカルボキシレート、を示す。また、AMPD、PEF、の%はモル%を示す。
実施例1
[2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、2,5−フランジカルボン酸からなるポリエステル樹脂(AMPD(40%)−PEF)の調製]
温度計、ステンレス鋼(SUS)製撹拌羽根を取り付けた100mLの三口フラスコを用意した。この三口フラスコに、2,5−フランジカルボン酸に対してAMPDが40モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(7.81g)、エチレングリコール(8.07g)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(2.10g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.014g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.014g)を加えた。
三口フラスコ内にて窒素を導入しながら撹拌を開始するとともに、オイルバスによりこれら内容物を昇温させた。内温が160℃に達した後、1時間保持し、さらに165℃で1時間、185℃で2時間保持した。
185℃で減圧を開始し、約一時間かけて約133Paとし、さらに230℃まで昇温させた。約133Pa、230℃で4.5時間反応を続けて、AMPD(40%)−PEFを調製した。NMR測定における面積比より計算すると、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの導入量は、2,5−フランジカルボン酸のモル数に対して、9.7%であった。
実施例2
[2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、2,5−フランジカルボン酸からなるポリエステル樹脂(AMPD(30%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量(使用量)が、2,5−フランジカルボン酸に対して2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが30モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(7.81g)、エチレングリコール(8.38g)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(1.58g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.019g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.019g)とした以外は実施例1の調製と同様とし、AMPD(30%)−PEFを調製した。NMR測定における面積比より計算すると、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの導入量は、2,5−フランジカルボン酸のモル数に対して、6.7%であった。
実施例3
[2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、2,5−フランジカルボン酸からなるポリエステル樹脂(AMPD(20%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量(使用量)が、2,5−フランジカルボン酸に対して2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが20モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(7.81g)、エチレングリコール(8.69g)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(1.05g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.019g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.019g)とした以外は実施例1の調製と同様とし、AMPD(20%)−PEFを調製した。NMR測定における面積比より計算すると、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの導入量は、2,5−フランジカルボン酸のモル数に対して、3.8%であった。
実施例4
[2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、2,5−フランジカルボン酸からなるポリエステル樹脂(AMPD(16%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量(使用量)が、2,5−フランジカルボン酸に対して2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが16モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(7.81g)、エチレングリコール(8.81g)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(0.841g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.019g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.019g)とした以外は実施例1の調製と同様とし、AMPD(16%)−PEFを調製した。NMR測定における面積比より計算すると、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの導入量は、2,5−フランジカルボン酸のモル数に対して、4.1%であった。
比較例1
[2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、2,5−フランジカルボン酸からなるポリエステル樹脂(AMPD(10%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量(使用量)が、2,5−フランジカルボン酸に対して2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが10モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(7.81g)、エチレングリコール(9.36g)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(0.526g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.019g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.019g)とした以外は実施例1の調製と同様とし、AMPD(10%)−PEFを調製した。NMR測定における面積比より計算すると、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの導入量は、2,5−フランジカルボン酸のモル数に対して、2.8%であった。
比較例2
[2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、2,5−フランジカルボン酸からなるポリエステル樹脂(AMPD(2%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量(使用量)が、2,5−フランジカルボン酸に対して2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが2モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(7.81g)、エチレングリコール(9.36g)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(0.105g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.019g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.019g)とした以外は実施例1の調製と同様とし、AMPD(2%)−PEFを調製した。NMR測定における面積比より計算すると、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの導入量は、2,5−フランジカルボン酸のモル数に対して、1.7%であった。
比較例3
[ポリエチレン−2,5−フランジカルボキシレート(PEF)の調製]
原料の仕込み量(使用量)を2,5−フランジカルボン酸(7.81g)、エチレングリコール(9.36g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.014g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.014g)とした以外は実施例1の調製と同様とし、PEFを調製した。
次に、実施例1、2、3、4及び比較例1、2、3のガラス転移温度(Tg)の測定結果、分子量測定結果、架橋の測定結果を表1に示す。
実施例に示したように2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを2,5−フランジカルボン酸に対して3.8%以上導入した実施例のポリエステル樹脂は、比較例にくらべガラス転移温度の値が大きく、耐熱性が改善されていることが分かる。
本発明のポリエステル樹脂は、耐熱性に優れた成形品を製造するために利用することができる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)及び下記式(2)で表される構造単位を有し、前記式(2)で表される構造単位を、前記式(1)及び前記式(2)の合計に対して3.8モル%以上9.7モル%以下含有することを特徴とするポリエステル樹脂。
    (式(1)中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。式(1)及び(2)中、Aは式(3)を示す。)
  2. 前記R1がエチレン基であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
  3. 請求項1、2のいずれかに記載のポリエステル樹脂を成形してなることを特徴とする成形品。
  4. フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコール及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールと共重合する工程を有し、前記2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの使用量が、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し16モル%以上40モル%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
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