現在、日常生活において、様々な電気製品(家庭用電化製品など)の操作を行う際に、端末に文字を入力する場面がある。特に、携帯電話などの小型の端末において文字入力を行う際には、「マルチタップ」と呼ばれる入力方式が多く採用されている。
マルチタップとは、例えばテンキーの数字キー等に、それぞれ平仮名の各行(例えば「あ行(=あ・い・う・え・お)」や「か行(=か・き・く・け・こ)」)などの複数の文字を割り当てて、それらのキーに対する押下入力を受け付ける入力方式である。この入力方式では、同一のキーに対する複数回の連続した押下入力を受け付けると、その押下回数に応じて、各キーに割り当てられた複数の文字を、順次切り換えて表示する。
すなわち、例えば、ユーザ(操作者)が「あ行」のキーを1回押下すると「あ」が入力され、2回連続で押下すると「あ」が「い」に変化して入力され、3回連続だと「あ」→「い」→「う」のように変化して入力される。このように、ユーザが、同じキーを連続して押下すると、キーを押すごとに順番に次の文字が現れる。このマルチタップ入力方式は、「かなめくり」、「トグル打ち」などと称されることもあるが、本願では「マルチタップ」と記す。
このマルチタップは、ユーザに求められる操作が直感的で非常に分かりやすい入力方式であるため、現在ほとんどの携帯電話に採用されている。しかしながら、このマルチタップは、キーの押下回数の観点から見ると、文字入力の際にユーザがキーを押下しなければならない回数が非常に多くなるという欠点がある。
ところで、近年、携帯電話などの携帯端末の入力装置として、タッチパネルを備えたものが急増している。このタッチパネルは、多くの場合、接触による押圧入力を受け付ける入力部を、液晶ディスプレイなどの表示部の前面に配置して構成する。そのため、このようなタッチパネルにおいては、表示部にキーボードやボタンなどを表示して、当該表示の位置に対して、直接、ユーザの指やスタイラスペンなどによる押圧入力を受け付けることができる。
入力装置としてタッチパネルを採用すると、ユーザは極めて直感的で分かりやすい操作入力を行うことができるため、その操作性を向上することができる。また、タッチパネルを採用した端末は、入力に係るキーボードやボタンなどを表示部に表示する。このため、機械式のキーとは異なり、操作入力を受け付ける態様に応じて自由自在にユーザインタフェースを構成することができる。このような事情のもと、タッチパネルが採用される端末機器の分野は、近年、携帯電話機にとどまらず、デジタルカメラやデジタルオーディオ再生機、あるいは携帯ゲーム機など、広範な広がりをみせている。
ところが、タッチパネルを用いた入力装置においては、タッチタイピング(ブラインドタッチ)を行うことが困難である、という問題点がしばしば挙げられる。これは、入力装置にタッチパネルを採用する場合、キーやボタンが表示部に表示された仮想的なものであることに主として起因する。すなわち、タッチパネルを用いて押圧入力を行う場合、ユーザは、キーのエッジ部分などキーの外形を指先の感触で判別することができない。このため、ユーザは、押下するキーを変更する際には、表示されたキーを注視して入力を行わないと、キーの位置を正確に把握することができない。
一方、入力した文字を確認するためには、ユーザは、入力文字が表示された箇所に視線を移す必要がある。このため、入力した文字を確認しながら、押圧するキーを変更しつつ入力を行うと(つまりタッチタイピングを行うと)、ユーザはキーの位置を正確に把握できないままに入力を行うことになる。このような状態で入力を行うと、ユーザは自らの意図と異なるキーを押圧してしまうことが多くなり、そのような入力はユーザにとって入力ミスとなる。したがって、タッチパネルを用いた入力装置においては、このような入力ミスが頻発することが懸念される。入力ミスが発生した場合、ユーザは、ミスして入力した文字を削除する操作を行ってから、正しく文字入力をやり直すのが一般的である。
タッチパネルを備える携帯電話のような携帯端末においても、文字入力を行う際の入力方式として、上述したマルチタップが採用されていることが多い。マルチタップの入力方式では、文字入力の際にユーザがキーを押下しなければならない回数が非常に多くなることは上述したとおりである。したがって、タッチパネルを用いてマルチタップの入力を行うと、入力ミスした文字を削除して、やり直し入力を行う必要から、一連の操作においてユーザがキーを押下しなければならない回数は一層多くなることが懸念される。これは、ユーザにとって、相当な手間および負担になるものと考えられる。それだけでなく、入力するユーザに手間および負担がかかるということは、そのような入力を行うために相応の時間も要することになる。
そこで、タッチパネルを用いてマルチタップ方式に相当する入力を行う際に、押下回数を低減させて、なおかつ入力ミスも低減させることが期待できる入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1に記載の文字入力装置は、タッチパネルに対するユーザの操作入力を受け付ける。その際、この文字入力装置は、通常の押圧入力を受け付けるだけでなく、タッチパネル上でドラッグ操作(なぞる操作)を行うようなスライド移動の入力も受け付ける。この文字入力装置は、このようなスライド移動の入力の折り返しの回数に応じて、マルチタップの入力方式に対応する処理を行うものである。
図11は、特許文献1に記載の文字入力装置の動作を説明する概略図である。
図11に示す文字入力装置100は、入力部200と、この入力部200が受け付けた入力の結果を表示する表示部300を備えている。入力部200はタッチパネルで構成され、この入力部200には、テンキーの数字キーに平仮名の各行を対応させたキー群400が表示されている。この入力部200は、ユーザの指の接触、すなわちユーザによる押圧入力の有無および押圧入力の位置を検出する。入力部200がユーザによる押圧入力を検出すると、文字入力装置100の制御部(図示せず)は、入力が検出された入力部200の位置の座標に基づき、当該座標に対応する1つの仮名文字の「行」(あ行、か行、さ行等)を決定する。
また、文字入力装置100の制御部(図示せず)は、入力部200が検出した押圧位置の座標をバッファに記録し、各座標を記録した順に繋ぎ合わせた軌跡に「折り返し」があるか否かを判定する。ここで「折り返し」とは、ユーザが入力部200上をドラッグする操作入力を行っている最中に、そのドラッグ操作の進行方向の角度を変えることにより、入力部200により検出される押圧位置の座標の軌跡が成す角度が、所定以上に変化する入力をいう。
この文字入力装置100は、入力部200に対する最初の押圧入力に基づいて、その位置のキーに対応する文字グループ(平仮名の「行」)を決定する。以後、文字入力装置100は、最初の押圧入力が検出されたまま折り返しが判定されるたびに、当該文字グループに属する文字を順次変更して表示する。この文字グループには、各「行」の平仮名の文字が含まれている。
例えば、図11に示すように、キー群400のうち「た」行のキーに対する押圧入力が検出されると、「た」行の文字グループが決定される。この「た」行の文字グループには、「た・ち・つ・て・と」の仮名文字が含まれる。「た」行のキーに対する押圧入力が最初に検出されると、文字入力装置100は、決定された文字グループ(「た」行)に含まれる最初の文字である「た」の文字を表示部300に表示する。以後、押圧入力が「折り返し」と判定されるたびに、文字入力装置100は、この文字グループ内の文字を、「ち」→「つ」→「て」→「と」のように、順次、表示部300に表示する。
図11は、「とうきょう」の文字が入力された後、キー群400の「た」行のキーに押圧入力が検知され、そのまま入力部200上で4回の折り返しが行われた様子を示している。図11の入力部200上に示す折れ線は、ユーザの入力の折り返しによる軌跡を認識できるように、実線にて示したものである。図11は、「とうきょう」の文字の後に、最初の押圧入力による「た」の文字がまず表示部300に表示され、以後、入力が折り返しと判定されるたびに文字の表示が順次変化して、現在は「と」の文字が表示されている様子を示している。所望の文字が表示部300に表示されたら、ユーザは入力部200に対する接触を解除する(つまり指を入力部200から離す)ことにより、表示されている文字を入力文字として確定する。
このように、特許文献1に記載の文字入力装置によれば、各文字を入力するに際し、どの文字も原則1回の押圧入力をスライドさせることにより、文字を入力することができる。したがって、文字入力の際にユーザがキーを押下しなければならない回数をかなり低減させることができる。
また、この文字入力装置によれば、最初の押圧入力により文字グループが決定されたら、その後、ユーザは、入力部200の任意の位置でスライド入力を行うことができる。そのため、ユーザは、最初の入力さえミスせずに正確な位置を押圧すれば、その後は入力部200を注視することなく入力を行うことができる。したがって、ユーザは、文字グループ(すなわち「行」)を決定する最初の入力の時だけ入力部を注視すれば、それ以後は入力結果が表示される表示部のみを注視していても、入力ミスをしてしまう恐れはほとんどない。
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各実施の形態においては、本発明の文字入力装置の一例として、例えば携帯電話やPDAなどのタッチパネルを有する携帯端末を想定して説明する。しかしながら、本発明の文字入力装置は携帯端末に限定されるものではなく、銀行のATMや駅の乗車券販売機など、タッチパネルを有する任意の入力端末にも適用できる。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る文字入力装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、第1実施の形態に係る文字入力装置1は、制御部10と、入力部20と、表示部30と、位置検出部40と、を備えている。制御部10は、文字入力装置1の全体の動作を制御する。また、この制御部10は、通過入力判定部12と、文字選定部14と、を備えている。これらの各機能部については後述する。入力部20は、本実施の形態では、タッチパネルまたはタッチパッドなどで構成する。この入力部20は、ユーザ(操作者)による押圧入力を受け付ける。ユーザは、指またはスタイラスペンなどのペン型入力デバイスなどを用いて、この入力部20に接触することにより、押圧入力を行う。表示部30は、本実施の形態では、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどで構成する。この表示部30は、入力された文字を表示する。具体的には、文字選定部14により選定された文字を表示する。また、後述するように、表示部30はさらに、ユーザの入力を受け付けるに際し、キーやボタンなどのオブジェクトも描画して表示する。位置検出部40は、入力部20にて行われた押圧入力の位置を検出する。
本実施の形態では、入力部20および位置検出部40を透明電極などの部材で構成し、表示部30の前面に重ねて配置することにより、入力部20および位置検出部40と表示部30とでタッチパネルを構成している。したがって、本実施の形態のタッチパネルは、表示部30にキーやボタンなどのオブジェクトを表示することにより、当該オブジェクトの位置に対応する入力部20が、ユーザによる押圧入力を受け付ける。このようにして、入力部20は、ユーザによる押圧入力を受け付け、その押圧入力の位置を位置検出部40が検出し、当該検出結果を制御部10に出力する。なお、本実施の形態で使用するタッチパネルは、抵抗膜方式、静電容量方式など、任意の方式のものを用いることができる。
次に、本実施の形態に係る通過入力判定部12による通過入力の判定について説明する。
本実施の形態においては、タッチパネルの表示部30に、従来の文字入力に用いたテンキーの数字キーの代わりに、平仮名の各行に対応する「文字送り線」を表示する。表示部30に表示された各文字送り線のそれぞれは、平仮名の各行の文字群に対応する。入力部20において押圧入力が検出されている状態で、位置検出部40により検出される当該押圧入力の位置が、この文字送り線を通過した場合、通過入力判定部12は、当該入力を「通過入力」と判定する。すなわち、通過入力判定部12は、入力部20が受け付けている押圧入力の位置が、所定の文字群に対応する文字送り線を通過した場合、この入力を通過入力と判定する。この通過入力が判定されると、当該通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群の文字が順番に変化して表示される。本実施の形態では、このように、所定の文字群の文字が順番に変化して選定され表示されること(すなわち、従来のマルチタッチに相当する動作)を、「文字送り」と記す。
ここで、押圧入力の位置が「文字送り線を通過する」とは、押圧入力の位置に基づいた押圧入力の軌跡が、文字送り線を通過することを意味する。つまり、押圧入力の位置が文字送り線上で検出された後に、該文字送り線以外の位置で押圧入力の位置が検出される場合や、逆に、文字送り線以外の位置で押圧入力の位置が検出された後に、文字送り線上で押圧入力の位置が検出される場合を意味する。また、連続して検出された2点の押圧入力の位置の間に文字送り線が存在する場合も、押圧入力の位置が「文字送り線を通過する」場合に該当する。すなわち、ユーザが行う動作の観点からみると、ユーザの指またはスタイラスのようなペン型入力デバイスなどが、文字送り線を通過することを意味する。
図2は、タッチパネルの表示部30に、平仮名の各行の文字群に対応する文字送り線を表示した例を複数示した図である。図2(A)、図2(B)、および図2(C)ともに、「あ行」、「か行」、「さ行」など、それぞれ平仮名の「行」に対応する文字送り線を表示している。なお、図2(A)、図2(B)、および図2(C)は、それぞれ文字送り線のデザインが異なるのみであり、これらを用いて行う操作、および当該操作に基づく処理などは、どの例においても同じである。これらは、あくまでも「文字送り線」のいくつかの例を示したに過ぎず、他にも種々のデザインの文字送り線を想定することができる。本実施の形態において、この「文字送り線」は、ユーザのスライド入力が当該「文字送り線」を通過したことの基準とするためのものであり、その基準となり得るものであれば、任意のものを「文字送り線」とすることができる。
このように、表示部30に各文字送り線を表示して、その前面に配置された入力部20は、ユーザによる押圧入力を受け付ける。入力部20がユーザによる押圧入力を検出したら、通過入力判定部12は、位置検出部40が検出している押圧入力の位置が、所定の文字群に対応する文字送り線を通過した場合、当該押圧入力を通過入力と判定する。本実施の形態では、このようにして判定された通過入力の回数に応じて、文字送り線に対応する文字群に属する文字を、順次、文字送りして表示する。
図3は、各文字送り線に対応する文字群の文字送りを説明する図である。
本実施の形態において、「文字送り」を行う、すなわち、押圧入力が通過入力と判定される回数に応じて、順次、平仮名を変化させて表示することについては、従来のマルチタップの入力方式と同じ思想に基づいている。図3に示す平仮名の各「行」(「あ行」、「か行」、「さ行」など)は、それぞれ図2に示した各「文字送り線」に対応する。本実施の形態では、これら各「行」に属する文字を「文字群」と記す。例えば「た行」の文字群には「た・ち・つ・て・と」の各仮名文字が属する。これらの文字が、通過入力が判定された回数に応じて上から下に順次変化することを、本実施の形態における「文字送り」と記す。
本実施の形態では、例えば、「た行」の文字送り線について、第1回目の通過入力が判定されたら、「た行」の文字群に属する文字のうち、通過入力回数が最初(1回目)の「た」の文字を表示する。また、本実施の形態では、第1回目の通過入力が判定された後、当該入力に係る押圧がされたまま、第2回目の通過入力が判定されると、文字送りを行う。すなわち、この場合、「た行」の文字群に属する文字のうち、通過入力回数が2回目の「ち」の文字の表示に変化させる。なお、各「行」の平仮名の文字群の末尾に示した上方の矢印(↑)は、その矢印を示した回数の通過入力が判定されると、各行の最初に戻って文字送りが繰り返されることを意味している。このように、本実施の形態では、文字選定部14は、上述した通過入力が判定された回数に応じて、所定の文字群に属する文字を順次選定する。
図4は、本実施の形態による通過入力の判定を説明する図である。
図4は、簡略化のために、図2(A)に示した文字送り線のうち「あ行」のものだけを示している。このように、文字送り線をタッチパネルの表示部30に表示して、この表示に対して行われるユーザの押圧入力を、タッチパネルの入力部20が受け付ける。
なお、図4において、各矢印は、ユーザの押圧入力による軌跡を示している。また、図4に示す白丸の印(○)は、ユーザの押圧入力の位置が文字送り線を通過して通過入力と判定されたことに応じて文字送りが行われたことを表す。このように、ユーザの押圧入力が通過入力と判定された際には、ユーザに認識可能なように、表示部30上に目印となる表示を行うこともできる。また、このような表示の代わりに、あるいはこのような表示と共に、音を発したり、あるいは振動を発生させたりして、押圧入力が通過入力と判定されたことをユーザに報知することもできる。図4に示すカッコ内の仮名文字は、通過入力の判定に応じて、表示部30において入力文字が表示される箇所に表示すべき仮名文字を示している。
図4(A)において、ユーザの押圧入力が最初に入力部20に検出された状態(矢印の始点に接触した状態)では、文字は何も表示されない(まだ通過入力が判定されていないため)。このように、入力部20がユーザの押圧入力を検出したままの状態で、ユーザが、図4(A)に示す矢印に沿って押圧位置をスライドする入力を行ったとする。当該入力の位置が「あ行」の文字送り線を通過することにより、当該押圧入力が「通過入力」と判定されたら、この時点で初めて表示部30に「あ」の文字を表示する。このように「あ」の文字が表示された状態で、ユーザの押圧入力が入力部20に検出されなくなったら(すなわち図4(A)に示す矢印の終点の位置でユーザが押圧入力をやめたら)、「あ」の文字を入力文字として確定する。
一方、図4(A)に示す状態で押圧入力が維持されたまま、図4(B)に示すように、押圧位置をスライドする入力の方向が反転して、文字送り線を逆方向に通過したとする。このようにして、当該押圧入力が再び「通過入力」と判定されると、図4(B)に示すように、その時点で表示部30に表示されている文字を「あ」から「い」に変化させる。このように「い」の文字が表示された状態で、ユーザの押圧入力が入力部20に検出されなくなったら(すなわち図4(B)に示す矢印の終点の位置でユーザが押圧入力をやめたら)、「い」の文字を入力文字として確定する。
一方、図4(B)に示す状態で押圧入力が維持されたまま、図4(C)に示すように、押圧位置をスライドする入力の方向がさらに反転して、文字送り線を再び逆方向に通過したとする。このように、当該押圧入力がさらに「通過入力」と判定されると、図4(C)に示すように、その時点で表示部30に表示されている文字を「い」から「う」に変化させる。このように「う」の文字が表示された状態で、ユーザの押圧入力が入力部20に検出されなくなったら(すなわち図4(C)に示す矢印の終点の位置でユーザが押圧入力をやめたら)、「う」の文字を入力文字として確定する。
この後は、押圧入力が維持されたまま、当該押圧入力が通過入力と判定されるたびに、文字送り線に対応する文字群に属する文字を、順次変更して表示する。なお、文字群に属する最後の順序の文字が表示された後で、さらに通過入力が判定された場合、文字群に属する最初の順序の文字に戻って、順次変更する表示を繰り返す。
このように、本実施の形態では、文字送り線を通過する回数に応じて、文字送りを行う。したがって、ユーザが文字送りをしようとする際に、文字送りが行われる基準となるのは、押圧入力が文字送り線を通過するか否かであって、押圧入力の途中の軌跡は問題にならない。そのため、例えば図4(D)に示すような、非常に緩い角度でスライド入力の方向を変化させる押圧入力を行ったり、図4(E)に示すように円を描くようにして押圧位置をスライドする入力を行っても、正確に文字送りを行うことができる。なお、本実施の形態では、文字送り線を通過する方向の差異は検出しないため、例えば図4(F)に示すように、図4(B)とは逆方向に文字送り線を通過したとしても、同じ結果が出力される。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図5は、第1実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。図5に示すフローチャートにおいて、第1実施の形態による文字入力処理は、ユーザによる押圧入力が入力部20に検出された時点から開始する。
本実施の形態による文字入力処理が開始すると、まず、制御部10は、入力部20に対する押圧入力が、押圧状態のまま継続しているか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11において、入力部20に対する押圧入力が継続している場合、通過入力判定部12は、通過入力がなされた否かを判定する(ステップS12)。すなわち、ステップS12において、通過入力判定部12は、継続している押圧入力の位置が文字送り線を通過したか否かを判定する。ステップS12にて、通過入力がなされたと判定されない場合、すなわち通過入力がなされていない場合は、ステップS11に戻って処理を続行する。
一方、ステップS12にて、通過入力がなされたと判定された場合、制御部10は、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字が既に選定済みか否かを判定する(ステップS13)。ここで、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字が既に選定済みではない場合とは、押圧入力が検出されてから、当該押圧入力の位置が最初に文字入力線を通過して通過入力と判定された場合である。この場合、それ以前には、当該押圧入力は通過入力と判定されていないので、表示部30に表示されている入力に係る文字はまだ存在しない。
ステップS13において、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字が既に選定済みではない場合、文字選定部14は、当該文字送り線に対応する文字群に属する文字のうち、最初の文字を選定する(ステップS14)。すなわち、例えば「な行」の文字送り線についての通過入力と判定されたのであれば、「な」の字を選定する。ステップS14において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を表示部30に表示してから(ステップS15)、ステップS11に戻って処理を続行する。
一方、ステップS13において、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字が既に選定済みである場合、ステップS16に移行する。ここで、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字が既に選定済みである場合とは、すなわち、押圧入力が入力部20に検出されてから、当該押圧入力の位置が文字入力線を通過して通過入力と判定されたのが最初でない(2回目以降の)場合である。この場合、既に選定されて表示部30に表示されている文字が存在する。
ステップS16においては、文字選定部14は、既に選定されて表示されている文字が属する文字群に属する文字のうち、当該既に選定されて表示されている文字の次の順序の文字を選定する。例えば、既に選定されて表示されている文字が「な」の文字の場合、次の文字である「に」を選定する(図3参照)。ステップS16において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を、表示部30に表示してから(ステップS15)、ステップS11に戻って処理を続行する。
また、ステップS11において、入力部20に対する押圧入力が継続しなくなった場合、すなわち、ユーザが押圧入力をやめた場合、制御部10は、既に選定された入力に係る文字が表示部30に表示されているか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17において、表示部30に既に選定された文字が表示されている場合、制御部10は、当該表示された文字を入力文字として確定して(ステップS18)、本実施の形態による文字入力処理を終了する。したがって、制御部10は、選定された文字が表示部30に表示された状態で、入力部20が押圧入力を受け付けなくなった場合、当該表示された文字を入力文字として確定するように制御を行う。
一方、ステップS17において、表示部30に既に選定された文字が表示されていない場合、確定すべき入力文字が存在しないため、本実施の形態による文字入力処理は終了する。
このように、本実施の形態によれば、図2に示したような文字送り線を通過する通過入力を行うことにより、図4に示したような文字送りを行うことができる。
また、本実施の形態に係る文字入力装置1によれば、最初の文字送り線さえ正確に通過する入力を行えば、後は、表示部30に表示される文字が変化することによって、ユーザは文字送り線を通過したことを認識できる。したがって、ユーザは、文字送りを行うごとに、いちいち文字送り線を注視しながら入力を行う必要はない。
さらに、本実施の形態に係る文字入力装置1によれば、押圧入力の位置がスライドして文字送り線を通過するか否かの判定によって文字送りを行う。したがって、ユーザが行う操作の個人差にほとんど依存することなく、正確な入力を行うことができる。このため、本実施の形態に係る文字入力装置1は、一連の文字入力を行う操作において、入力ミスを低減させることができる。
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態に係る文字入力装置について説明する。
第2実施の形態に係る文字入力装置は、上述した第1実施の形態に係る文字入力装置1において、通過入力判定部12および文字選定部14の動作を変更するものである。したがって、第2実施の形態に係る文字入力装置は、第1実施の形態で説明した文字入力装置1と同じ構成により実施することができるため、上述した第1実施の形態と同じ説明は、適宜省略する。
第2実施の形態においては、図2に示したように、表示部30に複数の文字送り線を表示して、入力部20に対する押圧入力を受け付ける際に、入力部20を広く用いて通過入力を行うことができる。すなわち、第2実施の形態においては、入力部20に対する押圧入力が最初に文字送り線を通過して通過入力と判定された後は、当該押圧入力が、どの文字送り線を通過しても通過入力と判定して、文字送りを行う。例えば、入力部20に対する押圧入力が、図2(A)に示す「ま行」の文字送り線を最初に通過して通過入力と判定されたら、その後は、任意の文字送り線をどこでも通過する入力を行うことで、「ま行」に属する文字群の文字を文字送りすることができる。
ただし、第2実施の形態においては、押圧入力の位置が最初に文字送り線を通過して、文字送り線に対応する文字群に属する最初の文字が表示されたら、その後は、押圧入力が前回と異なる方向の通過入力と判定された場合にのみ、文字送りを行う。ここで、通過入力の「方向」とは、押圧入力の位置が文字送り線を通過した場合、当該文字送り線を基準として、右から左に通過したか、または左から右に通過したかを区別するものである。
例えば、入力部20に対する押圧入力が、図2(A)に示す「あ行」の文字送り線を最初に左から右に通過して「あ」の文字が表示された場合、継続する押圧入力が、任意の文字送り線を右から左に通過しない限り、「あ」の文字は「い」の文字にならない。したがって、ユーザが、例えば、複数の文字送り線を横方向に一気に通過してスライドする押圧入力を行ったとしても、最初に通過入力と判定された文字送り線に対応する文字群に属する最初の文字が表示されるだけである。その後、維持したままの押圧入力が、最初に文字送り線を通過した方向と逆方向に、任意の文字送り線を通過して通過入力と判定された場合、表示された文字の文字送りを行う。これ以降は、維持したままの押圧入力が、前回と逆方向に、任意の文字送り線を通過して通過入力と判定される回数に応じて、表示された文字の文字送りを行う。
このような処理のため、第2実施の形態に係る文字入力装置1において、通過入力判定部12は、位置検出部40が検出している押圧入力の位置が文字送り線を通過して通過入力と判定された際、当該文字送り線を基準とした当該通過入力の方向も判定する。すなわち、通過入力判定部12は、押圧入力を通過入力と判定した際、当該通過入力が、通過した文字送り線を基準として、右から左に通過したのか、または左から右に通過したのか、を判定する。
さらに、第2実施の形態に係る文字入力装置1においては、文字選定部14は、通過入力が最初に判定された文字送り線に対応する所定の文字群に属する文字を、任意の文字送り線について通過入力が判定された回数および当該通過入力の方向に応じて、順次選定する。具体的には、押圧入力が最初に通過入力と判定された時点で、通過した文字送り線に対応する文字群に属する文字のうち順序が最初の文字を表示する。その後は、任意の文字送り線を通過した押圧入力が、前回の通過入力と逆方向の通過入力と判定された場合、表示されている文字を次の順序の文字に変化させて文字送りを行う。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図6は、第2実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。図6に示すフローチャートにおいて、第2実施の形態による文字入力処理は、第1実施の形態と同様に、ユーザによる押圧入力が入力部20に検出された時点から開始する。
本実施の形態による文字入力処理が開始すると、まず、制御部10は、入力部20に対する押圧入力が、押圧状態のまま継続しているか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31において、入力部20に対する押圧入力が継続している場合、通過入力判定部12は、通過入力がなされた否かを判定する(ステップS32)。すなわち、ステップS32において、通過入力判定部12は、継続している押圧入力の位置が文字送り線を通過したか否かを判定する。ステップS32にて、通過入力がなされたと判定されない場合、すなわち通過入力がなされていない場合は、ステップS31に戻って処理を続行する。
一方、ステップS32にて、通過入力がなされたと判定された場合、制御部10は、当該通過入力の方向(左から右または右から左)を判定するとともに、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群が既に選定済みか否かを判定する(ステップS33)。本実施の形態において、文字送り線に対応する文字群とは、仮名文字の各「行」である。ここで、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群が既に選定済みではない場合とは、押圧入力が入力部20に検出されてから、当該押圧入力の位置が最初に文字入力線を通過して通過入力と判定された場合である。この場合、それ以前には、当該押圧入力は通過入力と判定されていないので、表示部30に表示されている入力に係る文字はまだ存在しない。
ステップS33において、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群が既に選定済みではない場合、文字選定部14は、当該文字送り線に対応する文字群を選定する(ステップS34)。ステップS34にて、文字送り線に対応する文字群が選定されたら、文字選定部14は、当該文字群に属する文字のうち、最初の文字を選定する(ステップS35)。すなわち、例えば「ら行」の文字送り線についての通過入力と判定されたのであれば、「ら」の字を選定する。ステップS35において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を表示部30に表示してから(ステップS36)、ステップS31に戻って処理を続行する。
一方、ステップS33において、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群が既に選定済みである場合、ステップS37に移行する。ここで、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群が既に選定済みである場合とは、すなわち、押圧入力が入力部20に検出されてから、当該押圧入力の位置が文字入力線を通過して通過入力と判定されたのが最初でない(2回目以降の)場合である。この場合、既に選定された文字群に属する文字のいずれかが選定されて、表示部30に表示されている。
ステップS37においては、文字選定部14は、今回の通過入力が前回の通過入力と同じ方向であるか否かを判定する。なお、本実施の形態では、今回通過入力が判定された文字送り線は、前回通過入力が判定された文字送り線と同じである必要はない。上述したように、本実施の形態では、最初に文字送り線を通過して通過入力と判定された後は、当該押圧入力が、どの文字送り線を通過しても通過入力と判定して、文字送りを行う。ステップS37において、今回の通過入力が前回の通過入力と同じ方向である場合、文字送りは行わないため、ステップS31に戻って処理を続行する。
一方、ステップS37において、今回の通過入力が前回の通過入力と同じ方向でない、つまり逆方向の場合、文字選定部14は、既に選定されている文字群に属する文字のうち、既に選定されて表示されている文字の次の順序の文字を選定する(ステップS38)。ステップS38においては、例えば、既に選定されて表示されている文字が「ら」の文字の場合、次の文字である「り」を選定する(図3参照)。ステップS38において文字が選定されたら、制御部10は、当該選定された文字を、表示部30に表示してから(ステップS36)、ステップS31に戻って処理を続行する。
また、ステップS31において、入力部20に対する押圧入力が継続しなくなった場合、すなわち、ユーザが押圧入力をやめた場合、制御部10は、既に選定された入力に係る文字が表示部30に表示されているか否かを判定する(ステップS39)。ステップS39において、表示部30に既に選定された文字が表示されている場合、制御部10は、当該表示された文字を入力文字として確定して(ステップS40)、本実施の形態による文字入力処理を終了する。したがって、制御部10は、選定された文字が表示部30に表示された状態で、入力部20が押圧入力を受け付けなくなった場合、当該表示された文字を入力文字として確定するように制御を行う。
一方、ステップS39において、表示部30に既に選定された文字が表示されていない場合、確定すべき入力文字が存在しないため、本実施の形態による文字入力処理は終了する。
このように、本実施の形態によれば、上述した第1実施の形態と同様の効果を維持しつつ、さらに、ユーザは、入力部20(表示部30)を広く用いて入力の動作を行うことができる。本実施の形態においては、最初に文字送り線を通過する押圧入力を行った後は、押圧入力をスライドさせる位置が例えば隣の文字送り線の位置にずれてしまったとしても、その位置で、もとの文字送り線に対する操作と同様の操作を行うことができる。したがって、本実施の形態においては、最初に文字送り線を通過する押圧入力さえ確実に行えば、その後は、文字送り線の位置をほとんど意識することなく、文字入力を行うことができる。そのため、ユーザが入力ミスをしてしまうおそれを一層低減する効果が期待できる。
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態に係る文字入力装置について説明する。
第3実施の形態に係る文字入力装置は、第2実施の形態と同様に、上述した第1実施の形態に係る文字入力装置1において、通過入力判定部12および文字選定部14の動作を変更するものである。したがって、第3実施の形態に係る文字入力装置は、第1および第2実施の形態で説明した文字入力装置1と同じ構成により実施することができるため、上述した第1および第2実施の形態と同じ説明は、適宜省略する。
第3実施の形態においては、図2に示したように、表示部30に複数の文字送り線を表示して、入力部20に対する押圧入力を受け付ける際に、ユーザの意図しない入力ミスを低減することができる。すなわち、第3実施の形態においては、ユーザが、最初に通過すべき文字送り線を間違えてしまったり、またはユーザの意図通りに通過入力が行われた後で間違えて他の文字送り線を通過してしまった場合でも、ユーザの意図通りの文字が選定される。
このような処理のため、第3実施の形態に係る文字入力装置1において、通過入力判定部12は、第2実施の形態と同様に、押圧入力の位置が文字送り線を通過して通過入力と判定された際、当該文字送り線を基準とした当該通過入力の方向も判定する。すなわち、通過入力判定部12は、押圧入力を通過入力と判定した際、当該通過入力が、通過した文字送り線を基準として、右から左に通過したのか、または左から右に通過したのか、を判定する。
さらに、第3実施の形態に係る文字入力装置1においては、文字選定部14は、通過入力が複数の文字送り線について判定された場合、最も多くの通過入力が判定された文字送り線に対応する所定の文字群に属する文字を、順次選定する。なお、この場合、文字選定部14は、最も多くの通過入力が判定された文字送り線に対応する所定の文字群に属する文字を、当該文字送り線について通過入力が判定された回数および当該通過入力の方向に応じて、順次選定する。以下、具体例を用いて説明する。
図7は、第3実施の形態による文字入力処理を説明する図である。図7は、図2(A)に示した複数の文字送り線のうち、簡略化のため、「あ行」および「か行」の文字送り線のみを示したものである。
例えば、図7(A)に示すように、ユーザが、本来は「か行」の文字送り線を通過する入力から押圧入力を開始すべきであったところ、操作を行う位置を間違えて、左隣の「あ行」の文字送り線を通過する入力から文字入力を開始してしまったとする。なお、図中に示す矢印の曲線は、ユーザの押圧入力がスライドする軌跡を示している。このように入力に基づいて、ユーザの押圧入力が「あ行」の文字送り線を通過したと判定されると、表示部には、選定された文字として「あ」の文字が表示される。この文字を見ることで、ユーザは、本来「か行」の文字送り線を通過する入力から押圧入力を開始すべきであったが、間違えて「あ行」の文字送り線を通過する入力から文字入力を開始したことに気が付く。
しかしながら、ここでユーザは、誤った入力に基づいて表示された「あ」の文字を削除して入力をやり直すのではなく、押圧入力を行ったまま、本来通過すべきであった「か行」の文字送り線を通過するようにする。すると、「あ行」の文字送り線を通過する入力に引き続き、同じ方向に押圧入力が「か行」の文字送り線を通過したと判定されるが、前回の通過入力と同じ方向の通過入力であるため、この場合、表示部に表示された「あ」の文字は変化しない。なお、図7に示す黒丸の印(●)は、ユーザの押圧入力が文字送り線を通過して通過入力と判定されたが、文字送りが行われないことを示す。
その後、ユーザは、さらに押圧入力を行ったまま、「か行」の文字送り線を再び通過したとする。すると、「か行」の文字送り線を前回通過した入力に引き続き、前回とは逆方向にユーザの押圧入力が「か行」の文字送り線を通過したと判定されるため、この時点で、表示部に表示された「あ」の文字を「か行」の「き」の文字に変化させて表示する。このような処理は、最も多くの通過入力が判定された文字送り線が変更された際に行う。すなわち、この時点で、「あ行」についての通過入力は1回であるのに対し、「か行」についての通過入力が2回判定されて、最も多くの通過入力が判定された文字送り線が変更されたため、当該文字送り線に対応する文字群を新たに選定する。なお、図7に示す二重丸の印(◎)は、ユーザの押圧入力が最も多く通過した文字送り線が変更されて、表示される文字が属する文字群の選定が変更されたことを示す。
このように、ユーザの押圧入力が最も多く通過した文字送り線が変更された際は、それまでに行われた通過入力に基づく文字送りを反映した上で、変更された後の文字群に属する文字の選定を行う。すなわち、図7に示す二重丸の印(◎)の時点までは、すでに1回の文字送りが(白丸の印(○)を付した時点で)行われているため、文字送り線が変更された際は、新たに選定された文字群「か行」において2番目の順序の文字を選定する。
この後は、「か行」の文字送り線を前回通過した入力に引き続き、前回とは逆方向にユーザの押圧入力が「か行」の文字送り線を通過したと判定されたら、表示部に表示された「き」の文字を「く」の文字に変化させて表示する。なお、この時点で、「あ行」についての通過入力は1回であるのに対し、「か行」についての通過入力は3回判定されている。この後も、押圧入力が継続している限り、引き続き文字送りを行うことができる。したがって、ユーザが、最初に通過すべき文字送り線を間違えてしまった場合でも、ユーザの意図通りの文字を選定することができる。
また、例えば、図7(B)に示すように、ユーザが「あ行」の文字送り線を通過する入力を3回連続して行い、「あ」→「い」→「う」のような文字送りを意図通りに行った後に、操作を誤って、右隣の「か行」の文字送り線を通過する入力をしてしまったとする。この場合、この時点で、「あ行」についての通過入力は3回であるのに対し、「か行」についての通過入力は1回判定されている。したがって、最も多くの通過入力が判定された文字送り線は変更されないため、選定される文字が属する文字群の変更も行わない。なお、「か行」の文字送り線を通過する入力が行われた時点では、この通過入力は、前回の通過入力と同じ方向の通過入力であるため、表示部に表示された「う」の文字は変化しない。
したがって、ユーザが、意図通りの通過入力が行われた後に、間違えて他の文字送り線を通過してしまった場合でも、ユーザの意図通りの文字を選定することができる。なお、図7(B)に示す状態の後、「か行」の文字送り線を前回通過した入力に引き続き、前回とは逆方向にユーザの押圧入力が「か行」の文字送り線を通過したと判定されたら、表示部に表示された「う」の文字を「え」の文字に変化させて表示する。この時点で、「あ行」についての通過入力は3回であるのに対し、「か行」についての通過入力は2回判定されている。したがって、最も多くの通過入力が判定された文字送り線は変更されないため、選定される文字が属する文字群の変更も行わない。この後も、押圧入力が継続している限り、引き続き文字送りを行うことができる。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図8は、第3実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。図8に示すフローチャートは、第2実施の形態による文字入力処理において、ステップS33の後に、ステップS51およびステップS52を追加するものである。したがって、第2実施の形態による文字入力処理と同じ説明は、適宜省略する。図8に示すフローチャートにおいて、第3実施の形態による文字入力処理は、第2実施の形態と同様に、ユーザによる押圧入力が入力部20に検出された時点から開始する。
本実施の形態による文字入力処理が開始すると、入力部20に対する押圧入力が通過入力と判定された際(ステップS32のYes)、通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群が既に選定済みの場合(ステップS33のYes)、ステップS51に移行する。ステップS51では、文字群が既に選定済み、すなわち、押圧入力が通過入力と判定されたのが2回目以降であるため、文字選定部14は、最も多くの通過入力が判定された文字送り線が変更されたか否かを判定する。
ステップS51において、最も多くの通過入力が判定された文字送り線が変更されていない場合、ステップS37に移行し、これ以後は、上述した第2実施の形態と同様の処理を行う。すなわち、通過入力が前回の通過入力と同じ方向か否かを判定し(ステップS37)、同じ方向であればステップS31に戻る。一方、通過入力が前回の通過入力と逆方向であれば、現在最も多くの通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群において、順序が次の文字を選定して(ステップS38)、当該選定された文字を表示部30に表示する(ステップS36)。
一方、ステップS51において、最も多くの通過入力が判定された文字送り線が変更された場合、文字選定部14は、当該最も多くの通過入力が判定された文字送り線に対応する文字群を選定し直す(ステップS52)。すなわち、ここでは、選定された文字群を変更する。これ以降は、新たに選定された文字群に属する文字を用いて文字送りを行うが、ステップS37において、通過入力が前回の通過入力と逆方向である場合、既に行われた通過入力に基づく文字送りを反映した上で、順序が次の文字を選定する(ステップS38)。すなわち、ステップS52にて文字群が選定し直された際、例えば、当該文字群に変更される前の文字群において既に3回の文字送りが行われていた場合、ステップS38にて、選定し直された文字群において4回目の文字送りを行う。
このように、本実施の形態によれば、ユーザが、最初に通過すべき文字送り線を間違えてしまった場合でも、その後正しい文字送り線を通過する押圧入力を行うことで、それまでの文字送りを反映しつつ文字入力を継続できる。また、本実施の形態によれば、ユーザが意図通りの通過入力を行った後に、間違えて他の文字送り線をある程度通過してしまった場合でも、それまでに意図通りに入力した文字に影響を与えない。したがって、本実施の形態によれば、上述した第1実施の形態と同様の効果を維持しつつ、ユーザが入力ミスをしてしまったとしても、当該入力ミスを修正して文字入力をやり直す手間と時間を省くことができる。
(第4実施の形態)
次に、本発明の第4実施の形態に係る文字入力装置について説明する。
第4実施の形態に係る文字入力装置は、上述した第1〜第3実施の形態に係る文字入力装置1において、通過入力判定部12および文字選定部14の動作を変更するものである。したがって、第4実施の形態に係る文字入力装置は、第1〜第3実施の形態で説明した文字入力装置1と同じ構成により実施することができるため、上述した各実施の形態と同じ説明は、適宜省略する。
本発明の第4実施の形態では、上述した第1〜第3の各実施の形態において、入力部20に対する押圧入力が最初に通過入力と判定された際、当該通過入力が順方向であるか逆方向であるかを判定し、逆方向の通過入力に対しては逆方向の文字送りを行う。
なお、上述した第1実施の形態においては、文字送り線を通過する方向の差異は検出していない。そのため、本実施の形態を第1実施の形態に係る文字入力装置1に適用する場合、通過入力判定部12が、押圧入力の位置が文字送り線を通過して通過入力と判定された際、当該文字送り線を基準とした当該通過入力の方向も判定できるようにする。すなわち、本実施の形態において、通過入力判定部12は、押圧入力を通過入力と判定した際、当該通過入力が、通過した文字送り線を基準として、右から左に通過したのか、または左から右に通過したのか、の判定を行う。なお、本実施の形態を第1実施の形態に適用する場合、上述した方向の判定は、図5のフローチャートにおいて、ステップS12で通過入力が判定された際に行う。
本実施の形態において、文字選定部14は、最初の通過入力の方向の判定結果に応じて、通過入力が所定の順方向とは逆方向に開始された場合、所定の文字群に属する文字を、前記所定の順方向とは逆の順序で順次選定する。なお、通過入力が順方向に開始された場合は、上述した第1〜第3実施の形態と同様の処理を行う。
本実施の形態では、最初に通過入力と判定された際、当該通過入力が順方向であるか逆方向であるかを判定するため、まず、通過入力の順方向および逆方向を設定する必要がある。ここでは、便宜上、文字送り線を左から右に通過する通過入力を「順方向」の通過入力とし、逆に、文字送り線を右から左に通過する通過入力を「逆方向」の通過入力とする。
図9は、第4実施の形態による文字入力処理を説明する図である。本実施の形態を実施するに際しては、文字入力装置1がユーザの押圧入力を受け付けるにあたり、文字送り線を通過する際の「順方向」をユーザに意識させる必要がある。したがって、本実施の形態において、表示部30に表示する各文字送り線は、例えば図9(A)に示す「か行」の文字送り線のように、各文字送り線の「順方向」を示唆する矢印などと共に表示するのが好適である。
例えば、ユーザの押圧入力が通過入力と判定された際、図9(B)に示すように、当該押圧入力が順方向に開始されたものである場合、文字選定部14は、上述の第1〜第3実施の形態で説明した順序で文字送りを行う。図9(B)は、ユーザの押圧入力が、「か行」の文字送り線を最初に順方向に通過して「か」の文字が表示され、ひき続き当該押圧入力が順方向と逆方向に文字送り線を通過したため、「き」の文字に(順方向に)文字送りがされた様子を表している。
一方、例えば、ユーザの押圧入力が通過入力と判定された際、図9(C)に示すように、当該押圧入力が逆方向に開始されたものである場合、文字選定部14は、上述の第1〜第3実施の形態で説明した順序とは逆の順序で文字送りを行う。図9(C)は、ユーザの押圧入力が、「か行」の文字送り線を最初に逆方向に通過したため、「か行」の文字群で最後の順序の文字である「こ」が表示された様子を表している。その後、逆方向に開始した当該押圧入力が、ひき続き前回とは逆方向に文字送り線を通過したため、「こ」の文字が「け」の文字に、逆の順序で文字送りがされた様子を表している。
次に、本実施の形態による文字入力を行うための処理の流れについて説明する。
図10は、第4実施の形態による文字入力処理を説明するフローチャートである。上述したように、第4実施の形態は、第1〜第3実施の形態の処理を一部変更するものである。具体的には、第4実施の形態を第1実施の形態に適用する場合、図5のフローチャートにおけるステップS14を、図10(A)に示す処理に変更し、図5のフローチャートにおけるステップS16を、図10(B)に示す処理に変更する。また、第4実施の形態を第2または第3実施の形態に適用する場合、図6または図8のフローチャートにおけるステップS35を、図10(A)に示す処理に変更し、図6または図8のフローチャートにおけるステップS38を、図10(B)に示す処理に変更する。
図10(A)は、本実施の形態において、入力部20に対する押圧入力が最初に文字送り線を通過して通過入力と判定された際に、当該文字送り線に対応する文字群に属する文字を選定する処理である。
この処理が開始すると、まず、文字選定部14は、入力部20に対する押圧入力が最初に文字送り線を通過して通過入力と判定された際の当該通過入力の方向が順方向であるか否かを確認する(ステップS71)。ステップS71にて、判定された方向が順方向である場合、文字送り線に対応する文字群に属する文字のうち、最初の文字を選定して(ステップS72)、本処理を終了する。これは、上述した第1〜第3実施の形態で説明した通常の処理と変わらない。
一方、ステップS71にて、判定された方向が逆方向である場合、文字送り線に対応する文字群に属する文字のうち、最後の文字を選定して(ステップS73)、本処理を終了する。この処理により、図9(C)に示したように、ユーザの押圧入力が逆方向の通過入力から開始されたものである場合、文字送り線に対応する文字群に属する文字の文字送りを逆の順序で行うことができる。
図10(B)は、本実施の形態において、入力部20に対する押圧入力が文字送り線を2回目以降に通過して通過入力と判定された際に、既に選定されている文字群に属する文字の中から、文字送りして表示する文字を選定する処理である。
この処理が開始すると、まず、文字選定部14は、入力部20に対する押圧入力が最初に文字送り線を通過して通過入力と判定された際の当該通過入力の方向が順方向であるか否かを確認する(ステップS91)。ステップS71にて、判定された方向が順方向である場合、既に選定されている文字群に属する文字のうち、順序が次の文字を選定して(ステップS92)、本処理を終了する。これは、上述した第1〜第3実施の形態で説明した通常の処理と変わらない。
一方、ステップS91にて、判定された方向が逆方向である場合、既に選定されている文字群に属する文字のうち、順序が前の文字を選定して(ステップS93)、本処理を終了する。この処理により、図9(C)に示したように、ユーザの押圧入力が逆方向の通過入力から開始されたものである場合、前回の通過入力とは逆方向の通過入力を行うことにより、文字群に属する文字の文字送りを逆の順序で行うことができる。
このように、本実施の形態によれば、順方向とは逆方向の通過入力を行うことにより、通常と逆の順序で文字送りを行うことができる。したがって、本実施の形態によれば、ユーザは、このような入力方法に慣れれば、通過入力の方向を使い分けることにより、通常の文字入力よりも少ない手間と時間で文字入力を行うことができる。
なお、本発明は、上述した各実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変更または変形が可能である。例えば、上述した各実施の形態では、文字送り線を表示部30に表示してユーザの押圧入力を受け付けたが、当該文字送り線は、必ずしも表示部30に表示しなくてもよい。例えば、入力部と表示部とを重ねて配置せずに別個に配置する構成にして、表示部に文字送り線を表示しない構成にもできる。この場合、入力部に文字送り線を予め塗料などでペイントして描いておいたり、または入力部20上に線状の凸部を設けるなどして、ユーザが文字送り線を認識できるようにしておくことが考えられる。このように構成すれば、入力した文字を表示する表示部は、入力部とは別の位置に設けることができる。
上述した各実施の形態においては、説明の便宜上、制御部10が通過入力判定部12および文字選定部14を含むものとして記したが、本発明を具現化する機器の構成に応じて、これら各機能部を別個のものとして構成することもできる。また、本発明を具現化する機器の構成に応じて、通過入力判定部12および文字選定部14の機能を、制御部10が兼ねる構成にすることもできる。
また、上述した各実施の形態においては、表示部30に選定された文字が表示された状態で、入力部20が押圧入力を受け付けなくなった場合に、当該表示された文字を入力文字として確定した。しかしながら、入力部20が押圧入力を受け付けているままの状態であっても、所定の時間が経過したら、当該表示された文字を入力文字として確定するようにもできる。