以下、図面を参照して本発明に係る携帯端末及びこの携帯端末を用いた情報表示方法の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、携帯端末を用いた情報表示方法の一例として、文字入力操作における変換候補のスクロール表示について説明する。
まず、本実施形態に係る携帯端末の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る携帯端末の斜視図であり、図2は、図1に示す携帯端末の機能ブロック図であり、図3は、図1中のタッチパネルの表示画面の一例を示す図である。
本実施形態の携帯端末10は、図1に示すように、本体正面の大部分を占めるようにタッチパネル11を備え、さらに本体内部に制御部12を備えている。この携帯端末10は、従来のハードウェアのテン・キーを持つ携帯電話とは異なり、タッチパネル11を利用して、文字入力などの入力操作と、この入力操作に応じた情報表示とを併せて行うよう構成されている。
タッチパネル11は、図2に示すように、操作部13及び表示部14を含んで構成されている。操作部13は、ユーザが指やタッチペン(スタイラス)などでタッチパネル11に接触している位置を検知する部分であり、具体的には、透明材料などで成形され表示部14の表示画面を視認可能な状態で表示部14の表面に取り付けられたパネル部材である。接触位置を検知する手法としては、マトリクススイッチ方式、静電容量方式、光学方式、感圧方式、電磁誘導方式などがある。操作部13は、ユーザの接触位置を検知すると、この位置情報を制御部12へ送信する。表示部14は、制御部12から受信した各種情報をユーザに提示する部分であり、具体的には液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどである。
タッチパネル11には、文字入力操作においては図3に示すような画面が標準画面として表示される。図3に示すように、タッチパネル11の標準画面には、入力された文字列を表示する本文シート21が画面全体に配置され、この本文シート21を上から重ねて(オーバーレイして)表示するように漢字及びひらがな入力用の「漢」シート22aが配置されている。
この「漢」シート22aには、従来の携帯電話のテン・キーと同様の12個のソフトウェアキーが設けられており、それぞれのキーは、50音のあ行からわ行までの各行、句読点、記号のいずれかに対応付けられている。そして、ユーザがタッチパネル11上のこれらのキーの領域に指などで触れたときに、当該キーに対応する文字が選択されて本文シート21上に表示される。
また、標準画面の下端には、他の文字入力シートとして、「カナ」シート22b、「Aa(英字)」シート22c、「12(数字)」シート22d、「絵」シート22eのタブが配置されている。これらのシート22b〜22eも、「漢」シートと同様に12個のソフトウェアキーが設けられており、それぞれ異なる種類の文字に対応付けられている。ユーザがタッチパネル11上で「カナ」シート22b、「Aa(英字)」シート22c、「12(数字)」シート22d、「絵」シート22eのいずれかのタブに指などで触れて、接触状態を保ったまま上方へスライドさせると、当該タブのシートが画面の最前側に配置されるように画面下方から引き出される。
このように、文字入力シート22a〜22eは、本文シート21にオーバーレイして表示されることにより、タッチパネル11の画面全体を使って表示可能として、各シートのキーサイズを大きくして入力ミス防止を図るよう構成されている。また、これらの文字入力シート22a〜22eは、本文シート21にオーバーレイしたときには例えば本文シート21に対して半透明で表示され、ユーザが常に本文シート21を視認できるように構成されている。
また、図3のタッチパネル11の画面において、上述の文字入力シート22a〜22eのいずれかで文字が入力されると、入力された文字列に応じた変換候補リスト31(図9参照)が画面上部の変換候補表示領域23に表示される。上述のように文字入力シート22a〜22eがタッチパネル11の画面全体に配置されるため、変換候補表示領域23の大きさは制限される。このため、変換候補リスト31が変換候補表示領域23に一度に表示しきれない場合には、表示可能な一部のみ表示した上で、変換候補表示領域23の右端にスクロールボタン23aが表示される。このスクロールボタン23aは、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31のスクロール表示を開始するトリガであり、スクロール表示の方向を下方向に決定するものである。
なお、図3に示した下方向のスクロールボタン23aの代わりに、上方向へのスクロール表示を開始するトリガとなる逆スクロールボタン23bが変換候補表示領域23に表示される場合もある。これらのスクロールボタン23a及び逆スクロールボタン23bによる変換候補リスト31のスクロール表示の詳細については後述する。
再び図2を参照すると、制御部12は、入力制御部(入力受付手段)15、変換候補作成部(情報作成手段)16、及び画面表示制御部(情報表示手段、表示制御手段)17を含んで構成されている。
入力制御部15は、タッチパネル11の操作部13を介してユーザから入力された入力データを受け付ける。より詳細には、入力制御部15は、タッチパネル11に文字入力シート22a〜22eのうちいずれが表示されているかを、例えば画面表示制御部17から現在の表示内容を受信することにより認識しており、ユーザが現在表示されている文字入力シートのどのボタンを何回触れたかに応じて、入力された文字の種類を識別する。そして、入力制御部15は、ユーザにより入力された文字データを変換候補作成部16及び画面表示制御部17に送信する。
また、入力制御部15は、ユーザがスクロールボタン23a又は逆スクロールボタン23bに触れたことを検知したときには、変換候補表示領域23のスクロール表示が開始されるトリガを検出したことを画面表示制御部17に送信する。
変換候補作成部16は、入力制御部15により受け付けられた文字データに応じた変換候補リスト31を作成する。より詳細には、変換候補作成部16は、入力制御部15より文字データを受け取ると、当該文字データを頭文字とする単語を予測し、さらに過去の選択履歴を考慮するなどユーザの傾向に応じて順番を決めて、変換候補リスト31を作成する。変換候補作成部16は、作成した変換候補リスト31を画面表示制御部17に送信する。
画面表示制御部17は、入力制御部15より受信した入力データや、変換候補作成部16より受信した変換候補リスト31を利用して、タッチパネル11の表示部14に表示される画面の構成を制御する。より詳細には、画面表示制御部17は、(1)ユーザが文字入力シート22a〜22eのキーに触れた場合には当該キーに応じた文字を本文シート21に表示すると共に、この文字から予測された変換候補リスト31を変換候補表示領域23に表示する、(2)変換候補リスト31が変換候補表示領域23に表示しきれない場合に、スクロールボタン23a又は逆スクロールボタン23bを変換候補表示領域23に表示する、(3)ユーザがスクロールボタン23a又は逆スクロールボタン23bに触れ、そのままタッチパネル11との接触状態を途切ることなくタッチパネル11上を移動させ続ける、所謂「接触移動」を検知した場合に、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31を当該移動に伴ってスクロール表示する、などの表示部14の画面の構成を制御する。
制御部12は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、等のハードウェアにより構成されている。制御部12を構成する入力制御部15、変換候補作成部16及び画面表示制御部17の各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとでタッチパネル11の操作部13及び表示部14を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
次に、本実施形態に係る携帯端末10の動作について説明し、併せて、本実施形態に係る携帯端末10を用いた情報表示方法について説明する。図4は、本実施形態に係る携帯端末10により実行される文字入力処理を示すフローチャートであり、図5〜図8は、図4に示す文字入力処理における変換候補のスクロール表示の概略を示す図であり、図9は、図4に示す文字入力処理における変換候補リストのスクロール方向を示す図である。
図4に示すように、本実施形態に係る携帯端末10において文字入力操作が開始されると、まず、タッチパネル11の操作部13により、ユーザが触れたタッチパネル上の位置情報が検出され、この位置情報が制御部12に送信される。制御部12では、入力制御部15により、現在表示部14に表示されている文字入力シート22a〜22eにこの位置情報が適用されて、ユーザが入力した文字データが特定される(S101:入力受付ステップ)。
つぎに、特定された文字データが変換候補作成部16へ送信され、変換候補作成部16により、この文字データを頭文字とする単語が予測され、さらに過去の選択履歴を考慮するなどユーザの傾向に応じて順番が決められて、変換候補リスト31が作成される(S102:情報作成ステップ)。本実施形態では、ユーザにより「漢」シート22aを用いて「よろ」という文字入力があったときに、図9に示すように「宜しく 喜んで ヨロシク よろしゅう 宜しくね…」との順番で配列された変換候補リスト31が作成された状態を例として以下の説明を続ける。作成された変換候補リスト31は画面表示制御部17へ送信される。
つぎに、画面表示制御部17により、変換候補リスト31がタッチパネル11の表示部14の変換候補表示領域23に表示され(S103:情報表示ステップ)、変換候補表示領域23に表示しきれない変換候補リスト31があるか否かが確認される(S104)。変換候補表示領域23に全ての変換候補リスト31が表示されていると判定された場合には、ステップS109に移行する。
ステップS104において、変換候補表示領域23に表示しきれない変換候補リスト31があると判定された場合には、図5に示すように、変換候補表示領域23にスクロールボタン23aが表示される(S105:表示制御ステップ)。本実施形態では、図3及び図9に示すように、変換候補リスト31の1列目である「宜しく 喜んで ヨロシク」のみが変換候補表示領域23に表示されているので、変換候補表示領域23にスクロールボタン23aが併せて表示されている。
そして、操作部13及び入力制御部15により、ユーザが、例えば指でスクロールボタン23aに対して接触操作を行い、この接触操作から継続して、タッチパネル11に接触している状態を途切ることなくタッチパネル11上を移動し続ける、図5の接触軌跡L1のような所謂接触移動が検知されると、画面表示制御部17により、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31が、図9に示すように下方向にスクロール表示される(S106:表示制御ステップ)。このスクロール表示は、操作部13及び入力制御部15により、ユーザがタッチパネル11から指を離したことが検知されるまで続けられる。
ステップS106のスクロール表示処理において、画面表示制御部17は、例えばタッチパネル11上の接触軌跡L1の移動距離に応じてスクロール量を決定し、移動速度に応じてスクロール速度を決定する。図5に示す例では、変換候補表示領域23に表示されている変換候補が、図9に示す変換候補リスト31の1列目の「宜しく 喜んで ヨロシク」だった状態から、タッチパネル11上の接触軌跡L1の移動距離に応じて、4列目の「寄ろう 鎧 よろめく よろ」まで下方向にスクロールされている。
つぎに、ユーザがタッチパネル11から指を離して変換候補リスト31の下方向へのスクロール表示が停止すると、図6に示すように、画面表示制御部17により、変換候補表示領域23に表示されていたスクロールボタン23aが、上向きスクロールのトリガとなる逆スクロールボタン23bに置き換えられる(S107)。
そして、操作部13及び入力制御部15により、ユーザが、例えば指で逆スクロールボタン23bに対して接触操作を行い、この接触操作から継続して、図7の接触軌跡L2のような接触移動が検知されると、画面表示制御部17により、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31が、図9に示すように上方向にスクロール表示される(S108)。このスクロール表示は、操作部13及び入力制御部15により、ユーザがタッチパネル11から指を離したことが検知されるまで続けられる。
図7に示す例では、変換候補表示領域23に表示されている変換候補が、図9に示す変換候補リスト31の4列目の「寄ろう 鎧 よろめく よろ」だった状態から、タッチパネル11上の接触軌跡L2の移動距離に応じて、2列目の「寄よろしゅう 宜しくね」まで上方向にスクロールされている。
そして、操作部13及び入力制御部15により、ユーザが変換候補表示領域23に表示されている変換候補リスト31の中から変換候補を選択したか否かが確認される(S109)。ユーザが変換候補を選択していないと判定された場合には、ステップS104に戻り、再びステップS104〜S108の変換候補リスト31をスクロール表示する処理が繰り返される。
つまり、ユーザが変換候補リスト31から変換候補を選択するまでは、変換候補リスト31をスクロールするたびに、変換候補表示領域23にスクロールボタン23aと逆スクロールボタン23bとが交互に表示され、変換候補リスト31のスクロール方向が逆向きに切替えられる。なお、スクロールボタン23a及び逆スクロールボタン23bは、ユーザが接触移動を行わずこれらのボタン23a,23bをタッチしただけの場合にも切り替えて表示される。
ステップS109においてユーザが変換候補を選択したと判定された場合には、画面表示制御部17により、選択された変換候補が本文シート21に表示され、処理が終了する。図8に示す例では、最終的に「宜しくね」との文字列が選択され、この後に本文シート21にこの文字列が表示される。
次に、本実施形態にかかる携帯端末10の作用及び効果について説明する。本実施形態に係る携帯端末10においては、入力制御部15が、タッチパネル11を介してユーザから入力された文字データを受け付け、変換候補作成部16が、この文字データに応じた変換候補リスト31を作成する。画面表示制御部17が、この変換候補リスト31をタッチパネル11の変換候補表示領域23に表示し、変換候補リスト31が変換候補表示領域23にすべて表示できない場合、ユーザによるタッチパネル11との接触状態が途切れることなくタッチパネル11上を移動し続ける接触移動中に、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31をこの接触移動に伴ってスクロール表示する。
この構成により、ユーザから入力された文字データに応じて作成された変換候補リスト31がタッチパネル11の変換候補表示領域23にすべて表示できない場合、ユーザによる接触移動中に、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31がこの移動に伴ってスクロール表示されるため、スクロール表示の操作を受け付ける領域や軌跡に制約を受けることなく簡便にスクロール操作を行うことができ、携帯端末10による入力操作や情報表示の利便性及び操作性を向上させることができる。
また、画面表示制御部17は、変換候補リスト31が変換候補表示領域23にすべて表示できない場合、変換候補リスト31のスクロール表示を開始するトリガであると共に当該スクロールの方向を決定するスクロールボタン23aをタッチパネル11上に表示し、ユーザによりスクロールボタンとの接触がされると、当該接触から継続した接触移動中に、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31を移動に伴ってスクロール表示する。
この構成により、ユーザによる接触移動中に、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31がスクロールボタン23aにより決定される方向にスクロール表示されるため、ユーザがどのような軌跡でタッチパネル11を接触移動したとしても所定の方向(ここでは下方向)のみで変換候補リスト31をスクロール表示することができ、携帯端末10による入力操作や情報表示の利便性及び操作性をさらに向上させることができる。
また、スクロールボタン23a及び逆スクロールボタン23bにより変換候補リスト31のスクロール方向が任意に選択される。変換候補リスト31のスクロール方向は、スクロールボタン23aにより下方向に決定され、逆スクロールボタン23bにより上方向に決定される。これらのボタン23a,23bは、ユーザが表示中の一方のボタンにタッチしてタッチパネル11から離したときに、他方のボタンに切替えて表示される。つまり、スクロール操作又はボタンへのタッチ操作を行うたびに、次のスクロール方向が逆方向となる。
この構成により、変換候補表示領域23に表示される変換候補リスト31が、スクロールボタン23a及び逆スクロールボタン23bにより決定される下方向及び上方向にスクロール表示されるため、ユーザがスクロール方向を適宜選択して所望の情報へ迅速に到達することができ、携帯端末10による入力操作や情報表示の利便性及び操作性をさらに向上させることができる。
また、本発明の携帯端末10では、ユーザから入力された文字データに対応して作成された変換候補リスト31が、ユーザによるタッチパネル11上の接触移動に伴ってスクロール表示されるため、電子メール作成などの文字入力操作の際に特に有効となる。
以上、本発明に係る携帯端末10及びこの携帯端末10を用いた情報表示方法について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、情報表示方法の一例として文字入力操作における変換候補のスクロール表示について説明したが、本発明に係る情報表示方法は、携帯端末を用いたウェブブラウザのスクロール表示などの他の入力操作及び情報表示の用途にも適用可能である。
10…携帯端末、11…タッチパネル、15…入力制御部(入力受付手段)、16…変換候補作成部(情報作成手段)、17…画面表示制御部(情報表示手段、表示制御手段)、23…変換候補表示領域(所定領域)、23a…スクロールボタン、23b…逆スクロールボタン、31…変換候補リスト(情報、変換候補)。