JP2010275157A - セメント硬化体の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無水石膏を含むセメントが用いられてなる水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させるセメント硬化体の作製方法における手間の削減を図ることを目的としている。
【解決手段】セメント硬化体の作製方法に係る本発明は、無水石膏を含むセメントが用いられてなる水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させるセメント硬化体の作製方法であって、前記無水石膏として、1gを5℃の水100mlに5分間分散させた際に前記水に抽出される硫酸イオン濃度が100ppm以上500ppm以下となる無水石膏を用いることを特徴としている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無水石膏を含むセメントが用いられてなる水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させるセメント硬化体の作製方法に関するものである。
従来、セメントを含んだ水硬性組成物に加水して、モルタルやコンクリートなどを作製し、種々のセメント硬化体を作製することが行われている。
このセメント硬化体を形成させるために用いられるセメントの一成分として、特に短時間硬化が求められるような場合において、無水石膏が使用されている(下記特許文献1、2参照)。
この無水石膏としては、フッ酸製造時の副生成物として得られるものが主として用いられており、このようにして得られる無水石膏は品質が安定していないことがあり、同一の組成で水硬性組成物を構成させても、使用する無水石膏の製造ロットなどの違いによってモルタルやコンクリートの硬化挙動が変動する場合がある。
このようなことから、従来、無水石膏を用いる場合には、モルタルやコンクリートに練り上がりから所定の時間までの間に求める強度が発揮されるかどうかを予測することが困難であるため、一旦所定の配合割合で水硬性組成物を作製し、該水硬性組成物を使った試し練りを実施してその硬化の様子を予備試験し、求める強度が発揮されるかどうかを確認した上で実際の製品を作製することが行われている。
特開2002−68795号公報 特開2005−75719号公報
上記のようなことから、無水石膏を含有するセメントを用いる場合には、セメント硬化体を作製させるために余分な手間がかかる状況となっており、その改善が従来求められている。
特には、水硬性組成物の硬化を常温よりも低い温度、例えば、10℃以下の温度としてセメント硬化体を作製すると、常温での硬化を実施した予備試験に比べて、硬化挙動を異ならせる場合があり、所定の時間内に求める強度が発揮されない場合が多く、ロットの異なる無水石膏を用いて予備試験を再実施する必要が生じる。
このようなことから低温での硬化が実施されるセメント硬化体の作製方法においては、予備試験を再実施する手間の削減を図ることがより一層困難な状況となっている。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、無水石膏を含むセメントが用いられてなる水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させるセメント硬化体の作製方法における手間の削減を図ることを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、無水石膏から低温の水に対して抽出される硫酸イオンの濃度と、この低温における水硬性組成物の硬化挙動との相関を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、セメント硬化体の作製方法に係る本発明は、無水石膏を含むセメントが用いられてなる水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させるセメント硬化体の作製方法であって、前記無水石膏として、1gを5℃の水100mlに5分間分散させた際に前記水に抽出される硫酸イオン濃度が100ppm以上500ppm以下となる無水石膏を用いることを特徴としている。
本発明によれば、水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させてセメント硬化体を作製する場合であっても、強度の出現が予想外の結果となることを防止することができる。
したがって、予備調査を再実施するなどの手間の削減を図ることができる。
すなわち、本発明によれば、無水石膏を含むセメントが用いられてなる水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させるセメント硬化体の作製方法における手間の削減を図り得る。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明のセメント硬化物の作製方法において用いる水硬性組成物について説明する。
本実施形態においてセメント硬化物の作製に用いる水硬性組成物は、5℃の水に抽出される硫酸イオン濃度が所定の値となる無水石膏を用いること以外は、その成分について特に限定がなされるものではなく、従来、急硬性セメント組成物に用いられているような成分を、従来一般的に採用されているような比率で含有させて構成させることができる。
前記無水石膏としては、天然石膏、フッ酸石膏、リン酸石膏等が挙げられ、当該無水石膏ともにセメントを構成させる成分としては、例えば、速硬性のカルシウムアルミネート系クリンカーや、消石灰、ボウ硝などを挙げることができる。
本実施形態におけるセメント硬化体の作製方法においては、前記無水石膏として、1gを5℃の水100mlに5分間分散させた際に前記水に抽出される硫酸イオン濃度が100ppm以上500ppm以下となる無水石膏を用いることが重要である。
前記硫酸イオン濃度が上記の範囲外であると水硬性組成物を加水して硬化させるのに際して、所定の時間内に十分な強度が出現しない恐れを有する。
なお、この硫酸イオン濃度は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
上記セメント以外に、水硬性組成物を構成する成分としては、例えば、減水剤、AE剤、AE減水剤、増粘剤、凝結遅延剤、消泡剤、収縮低減剤や増量材等の混和剤を適宜使用することができる。
また、セメント硬化体の作製に際しては、上記の成分以外に細骨材や粗骨材などを加えるとともに所定の水/セメント比となるように加水して、モルタルやコンクリートなどとしてセメント硬化体を構成させることができる。
なお、上記材料の混合方法は特に限定されず、前記材料中の一部を予め混合して用いてもよいし、また全材料を一度に混合してもよく、この混合の条件、混合機の種類に限定はなく、ヘンシャルミキサー、オムニミキサー、V型ミキサーやナウターミキサー等の慣用の混合機を用いることができる。
そして、本実施形態のセメント硬化体の作製方法においては、得られるモルタルやコンクリートを、通常、10℃以下の環境下で硬化させてセメント硬化体を作製させる。
なお、このモルタルやコンクリートの硬化挙動が従来特に予測困難であったことから、5℃以下の環境下で硬化させる場合には、本発明の効果がより一層顕著に発揮されうる。
セメント硬化体の具体的な作製方法としては、型枠を用いる方法など、従来公知の方法を採用することができる。
作製するセメント硬化体としては、床、壁などの建築構造物や、管、トラフといった土木工事部材などが挙げられ、その目的が特に限定されるものではない。
また、補修材等としての利用において不定形のセメント硬化体を作製する場合も本発明の意図する範囲である。
特に冬季における屋外での補修工事などとして、本発明のセメント硬化体の作製方法が実施される場合には、補修に要する期間を短縮化させることができ、補修箇所に、予定していた強度が発揮されないという不測の事態が生じることを回避することができる点において好適であるといえる。
なお、本発明の効果が著しく損なわれない範囲においては、ここでは詳述していない、水硬性組成物やセメント硬化体の作製方法に関する従来公知の技術事項を本発明において採用することが可能である。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(無水石膏)
まず、無水石膏として以下の3種類のものを用意した。
無水石膏1:大金社製、ブレーン値 6500cm2/g
無水石膏2:旭硝子社製、ブレーン値 3750cm2/g
無水石膏3:旭硝子社製、ブレーン値 5550cm2/g
(水抽出試験)
上記無水石膏1〜3をそれぞれ、1g精秤し、5℃の純水100mlが入ったビーカーに入れて攪拌し、5分経過後にこれをろ過し、ろ液を純水で希釈して誘導結合プラズマ分析装置(ICP)で定量分析して得られた硫黄(S)濃度を硫酸イオン(SO4 2-)濃度に換算して各無水石膏からの硫酸イオン抽出量を求めた。
そして、無水石膏1〜3のICP分析において、それぞれ、硫酸イオン濃度が400ppm、272ppm、642ppmの値を得た。
なお、ろ液の硫酸イオン濃度は、予め標準試料によって作製した検量線を用いてICP測定試料の硫酸イオン定量し、得られた値に純水での希釈倍率を乗じて求めた。
(実施例1)
住友大阪セメント社製クリンカー、商品名「ジェットクリンカー粉」820gと「無水石膏1」180gとを混合してセメント1kgを作製した。
このセメントと、「水道水」360g、花王社製高性能減水剤、商品名「マイティー150」20g、住友大阪セメント社製凝結遅延剤、商品名「ジェットセッター」0.5g、「6号珪砂」1200gをミキサーで練り混ぜてモルタルを作製した。
そして、JIS R5201に基づく圧縮強さ測定用試料を作製し、練り混ぜ開始から3時間経過した後の圧縮強さの測定を実施した。
なお、圧縮強さ測定用試料の作製においては、一連の作業を5℃の環境下で実施した。
また、この実施例1におけるモルタルの練り上がり温度は、10.7℃でフローは269mmであった。
(実施例2)
「無水石膏1」に代えて「無水石膏2」を用いたこと以外は、実施例1と同様に圧縮強さの測定を実施した。
なお、この実施例2におけるモルタルの練り上がり温度は、11.1℃でフローは269mmであった。
(比較例1)
「無水石膏1」に代えて「無水石膏3」を用いたこと以外は、実施例1と同様に圧縮強さの測定を実施した。
なお、この比較例1におけるモルタルの練り上がり温度は、10.6℃でフローは260mmであった。
(参考例)
セメントを構成させる石膏を「無水石膏3」180gに代えて、「無水石膏3」155gと吉野石膏社「半水石膏」25gの混合品としたこと、住友大阪セメント社製「ジェットセッター」の配合量を0.5gに代えて2.0gとしたこと、ならびに、圧縮強さ測定用試料の作製における一連の作業を20℃の環境下で実施したこと以外は、比較例1と同様に圧縮強さの測定を実施した。
以上の結果をまとめて下記表1に示す。
Figure 2010275157
上記のように、比較例1では、所定の時間に出現する強度が、実施例に比べて劣っていることがわかる。
しかも、参考例の結果から、このことが低温でセメント硬化体を作製する際に特有のものであることがわかる。
すなわち、本発明によれば、同じ配合を用いて予め試し練りを行ったり、使用する無水石膏を変更して改めてセメント硬化体を作製し直したりすることを防止することができ、手間の削減を図り得ることがわかる。

Claims (2)

  1. 無水石膏を含むセメントが用いられてなる水硬性組成物を10℃以下の環境下で硬化させるセメント硬化体の作製方法であって、
    前記無水石膏として、1gを5℃の水100mlに5分間分散させた際に前記水に抽出される硫酸イオン濃度が100ppm以上500ppm以下となる無水石膏を用いることを特徴とするセメント硬化体の作製方法。
  2. 前記硬化を5℃以下の環境下で実施する請求項1記載のセメント硬化体の作製方法。
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JP2012206884A (ja) * 2011-03-29 2012-10-25 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 表面改質無水石膏、該無水石膏を用いたセメント組成物及び該セメント組成物の製造方法

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WO2006134711A1 (ja) * 2005-06-14 2006-12-21 Denki Kagaku Kogyo Kabushiki Kaisha セメント混和材、セメント組成物、並びに、モルタル又はコンクリート製品の製造方法

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