JP2010274868A - 車両の制御装置 - Google Patents

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勇三 大久保
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Abstract

【課題】4輪駆動機構におけるビスカスカップリングによる引き摺り抵抗をハードウエアの変更に依存することなく、解消するようにした車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン(内燃機関)の出力をCVT(変速機)で変速して前後輪をそれぞれ駆動すると共に、VC(ビスカスカップリング)をプロペラシャフトに介挿した車両において、VCの前後の回転差を算出し(S12)、算出された回転差からNN(モデル)を用いてVCが発生すると推定されるトルクを算出し(S14)、算出されたトルクを打ち消すためにエンジンに要求される要求トルクを算出し、算出された要求トルクを出力するようにエンジンの運転を制御する(S16)。
【選択図】図2

Description

この発明は車両の制御装置に関し、より具体的にはビスカスカップリングを駆動系に介挿した4輪駆動の車両においてそれによって発生するトルクの引き摺りを解消するようにした装置に関する。
流体の粘性抵抗によって動力を伝達するビスカスカップリングを駆動系に介挿した4輪駆動の車両においては、旋回中に前輪と後輪に差回転が発生するため、ビスカスカップリングによって発生するトルクが大きな引き摺りとなり、ドライバビリティを損なう場合がある。この現象は、特に低負荷かつ低速度で大舵角時に顕著であり、運転者は車両の状態に合わせた操作を要求される。
そこで、例えば特許文献1に記載される如く、最小回転半径に応じてトランスファのレシオを設定する技術が提案されている。さらにはビスカスカップリングの特性を物理的に変更して対策することも行われている。
特開平2−158426号公報
上記したように、従来技術はハードウエアの変更に依存して4輪駆動機構におけるビスカスカップリングによる引き摺り抵抗を解消するものであり、対策が大掛かりとなる不都合があった。
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、4輪駆動機構におけるビスカスカップリングによる引き摺り抵抗をハードウエアの変更に依存することなく、解消するようにした車両の制御装置を提供することにある。
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、内燃機関の出力を変速機で変速して前後輪をそれぞれ駆動すると共に、流体の粘性抵抗によって動力を伝達するビスカスカップリングを前記駆動系に介挿した車両において、前記駆動系の前記ビスカスカップリングの前後の回転差を算出する回転差算出手段と、前記算出された回転差からモデルを用いて前記ビスカスカップリングが発生すると推定されるトルクを算出する推定トルク算出手段と、前記算出されたトルクを打ち消すために前記内燃機関に要求される要求トルクを算出するトルク算出手段と、前記算出された要求トルクを出力するように前記内燃機関の運転を制御する制御手段とを備える如く構成した。
請求項2に係る車両の制御装置にあっては、前記モデルは所定の走行条件で得られる情報に基づいて修正される如く構成した。
請求項1に係る車両の制御装置にあっては、駆動系のビスカスカップリングの前後の回転差を算出し、算出された回転差からモデルを用いてビスカスカップリングが発生すると推定されるトルクを算出し、算出されたトルクを打ち消すために内燃機関に要求される要求トルクを算出し、算出された要求トルクを出力するように内燃機関の運転を制御する如く構成したので、ハードウエアの変更に依存することのない簡易な構成でありながら、ビスカスカップリングによる引き摺り抵抗を効果的に解消することができる。
即ち、内燃機関の出力トルクを増加させることで、引き摺りによるクリープ力の低下を打ち消すことができ、車両の旋回時に運転者に良好なドライバビリティを与えることができる。
特に、変速機として無段変速機を用いると、低速での車輪・ギヤの慣性によるイナーシャの変化を最小にすることができるため、耐久性が上がるという副次的な効果を得ることもできる。
さらには、低速度での4輪駆動機構の特性への配慮を軽減することができるので、車両のスタビリティをよりニュートラルな方向に設定することも可能となる。
請求項2に係る車両の制御装置にあっては、モデルは所定の走行条件で得られる情報に基づいて修正される如く構成したので、ビスカスカップリングの特性が車両の状態や経年劣化などから変化した場合も、推定トルクの算出精度を上げることができ、引き摺り抵抗をより正確に推定でき、一層良好なドライバビリティを与えることができる。
この発明の実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図である。 図1に示す車両の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。 図2に示すフロー・チャートの推定VC(ビスカスカップリング)トルクの算出などの処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。 図3に示す処理で使用されるシグモイド関数を示す説明グラフである。 図2に示す処理で使用されるVC初期特性を示す説明グラフである。
以下、添付図面に即してこの発明に係る車両の制御装置を実施するための形態について説明する。
図1は、この発明の実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
図1において符号10は車両を示し、車両10には水冷式のガソリンを燃料とする内燃機関(以下「エンジン」という)12が搭載される。エンジン12の出力はCVT(Continuous Variable Transmission。変速機)14に入力される。
CVT14は、メインシャフトMSに配置されたドライブプーリ14aと、カウンタシャフトCSに配置されたドリブンプーリ14bと、その間に掛け回される金属製のベルト14cと、それに作動油を供給する油圧機構(図示せず)とからなり、トルクコンバータ14dとフォワードクラッチ14eを介してメインシャフトMSから入力されたエンジン12の出力を無段階の変速比で変速する。
CVT14で変速されたエンジン12の出力はカウンタシャフトCSから減速ギヤ16を介してトランスファ18に入力され、そこで前輪側と後輪側に分配される。前輪側の出力は、フロントディファレンシャル機構20を介して前輪22に伝達される。
後輪側の出力はプロペラシャフト24とリアディファレンシャル機構26を介して後輪30に伝達される。このように、車両10はエンジン12の出力をCVT14で変速して前輪22と後輪30をそれぞれ駆動する、4輪駆動4WD型の車両として構成される。
プロペラシャフト24上には、ビスカスカップリング(以下「VC」という)32が介挿される。VC32は、容器の中に多数のクラッチプレートが収納されると共に、高粘度のシリコンオイル(流体)が封入されており、プレート間に発生する回転差によって発生する剪断力によって動力を伝達する。
CVT14においてドライブプーリの付近にはNDRセンサ34が設けられてCVT14の入力回転数に応じた出力を生じると共に、ドリブンプーリの付近にはNDNセンサ36が設けられてCVT14の出力回転数に応じた出力を生じる。
左右の前輪16と後輪30のドライブシャフト(図示せず)の付近には車輪速センサ40がそれぞれ設けられ、左右の前後輪の回転数に応じた出力を生じる。
車両10の運転席床面のアクセルペダル(図示せず)の付近にはアクセル開度センサ42が設けられてアクセル開度(運転者によるアクセルペダル踏み込み量)APに応じた出力を生じると共に、ブレーキペダル(図示せず)の付近にはブレーキ(BRK)スイッチ44が設けられ、運転者によってブレーキペダルが操作されるとき、オン信号を出力する。
上記したセンサの出力はECU(Electronic Control Unit。電子制御装置)50に送られる。ECU50はCPU,ROM,EEPROM,RAMおよび入出力I/Oなどで構成されるマイクロコンピュータからなり、CVT14の動作を制御する。
ECU50は、CAN(Controller Area Network)52を介してエンジン12の動作を制御するECU54と、トラクション制御やアンチスキッド制御などを行うECU56などに接続される。
次いで、この実施例に係る車両の制御装置の動作を説明する。
図2はその動作を示すフロー・チャートであり、ECU50によって所定時間ごとに実行される。
以下説明すると、S10において要求トルク値算出を実施する実施条件1が成立しているか否か判断する。
実施条件1は、スキッド(過大スリップ)判定がなされていないこと(車輪速センサ40の出力に基づく別ルーチンの処理結果から車両10の対地速度に対して車輪22,30がそれ以上の回転速度を示すときにスキッドと判定)、トラクション制御やアンチスキッド制御と干渉しないこと(ECU56との通信結果から判定)、車輪加減速度が所定範囲内にあること(車輪速センサ40の出力から判定)、車両10の左右後輪速度差から推定される旋回Rが所定範囲内にあることからなり、かかる4つの条件が全て成立するとき、実施条件1が成立したと判断される。
S10の処理は、車両10がVCによる引き摺りを生じる走行状態にあるか否か判断することに相当する。
S10で肯定されるときはS12に進み、VC前後回転差(より一般的にはVC差回転数)を算出する。
これは、左右の前輪22の車輪速度(回転数)を2で除算した前輪平均値にトランスファ18のギヤレシオを乗じて得た積から、左右の後輪30の車輪速度(回転数)を2で除算した後輪平均値にディファレンシャル機構26のギヤレシオを乗じて得た積を減算することで算出する。このVC32の前後の回転差は、プロペラシャフト24の回転数を算出することに相当する。
次いでS14に進み、推定VCトルクを算出する。
これは、S12で算出されたVC前後回転差からモデルを用いてVC32が発生すると推定されるトルクを算出する処理を意味する。モデルとして3層構造のニューラルネットワーク(以下「NN」という。後記するS104に示す)を使用する。
図3はその推定VCトルクの算出処理などを示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
以下説明すると、S100においてS12で算出されたVC前後回転差とS10の実施条件1の判定で使用された左右後輪速度差を入力値とする。即ち、VC32の特性は前後輪16,30の回転速度の差によって発生するからである。また、旋回時は左右後輪差が発生し、その差は旋回半径と相関があるからである。
次いでS102に進み、バイナリ変換を行う。
NNのノードの中は図4に示すような標準シグモイド関数で構成され、その入力値は−1から+1、出力値は0から+1である。一方、S100での入力値は物理値であるため、バイナリ変換によって物理値を−1から+1の範囲に変換する。標準シグモイド関数のゲインは0.5に設定される。
次いでS104に進み、算出されたVC前後回転差と左右後輪速度差(回転差)からNNを用いて推定されるトルクを算出させる。
次いでS106に進み、S102と逆の処理を行ってNNの出力値を物理値に変換し、S108に進み、得られた値を推定VCトルクとする(推定VCトルクを算出する)。
図2フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS16に進み、要求トルク値を算出する。これは、S14で算出されたトルクを打ち消すためにエンジン12に要求される要求トルク、即ち、算出された推定トルクに等しいエンジントルクを算出する処理を意味する。エンジントルクは具体的には、エンジン12の回転数とスロットル開度で規定される。
それと共に、ECU50はCAN52を介してECU54に通信し、算出された要求トルクを出力するようにエンジン回転数とスロットル開度を増加させる。換言すれば、ECU50は、CAN52とECU54を介して算出された要求トルクを出力するようにエンジン12の運転を制御する。
次いでS18に進み、教師を選定する。
教師には、S12で算出されたVC前後回転差と、VC初期特性−不足分を使用する。
図5はそのVC初期特性を示す説明グラフである。初期値(学習初期値)としては、VC32が車両10の駆動系に介挿される前の、VC32の単体としての特性を使用する。より正確には、その単体としての特性(図5に実線で示す)を、ロジスティック関数Y(図5の上部に示す)で記述した値(図5に破線で示す)を初期値として設定する。即ち、机上学習値をNN初期値とする。
他方、S10で否定されるときはS20に進み、前記した実施条件1と別の実施条件2が成立しているか否か判断する。
実施条件2は、アクセルペダルが操作されていないこと(アクセル開度センサ42の出力から判定)、ブレーキペダルが操作されていないこと(ブレーキスイッチ44の出力から判定)、出力トルク(エンジン出力とCVT14のレシオの積)が算出されていること、車輪速度が学習許可範囲にあること、教師が選定済みであることからなり、かかる5つの条件が全て成立するとき、実施条件2が成立したと判断される。
S20の処理はVC特性モデルの学習を実施する条件が成立したか否か判断することに相当する。
S20で否定されるときはS12以降に進んで要求トルク算出を繰り返すと共に、肯定されるときはS22に進み、VC特性モデル学習を実行する。
図3は、前記した推定VCトルクの算出に加え、VC特性モデル学習についての処理も示すフロー・チャートである。
S100においてVC前後回転差とS10の実施条件1の判定で使用された左右後輪速度差を入力値とし、S110に進み、実施条件2が成立したか否か判断する。
図2フロー・チャートにおいてS20で実施条件2の成立が肯定されて図3フロー・チャートにジャンプしたことから、S110の判断は当然肯定されてS112に進み、S102と同様なバイナリ変換を実行する。
次いでS114に進み、NN(S104に示す)に教師を入力し、S116からS118を介してS120に進み、S114で入力される教師と、S104で出力された教師から、最急降下法に従ってS118に示すように結合子を入れ換える(NNのノードを変更する)。
即ち、NNの入出力に教師信号を与え、入出力が教師と同じ解となる結合子の重みを修正することでVC特性モデルを学習する。具体的には誤差逆伝播学習(Back Propagation。BP則)を用いる。尚、誤差逆伝播学習あるいは最急降下法(最速降下法)などは公知な概念なので、説明は省略する。
即ち、この実施例においてはVC単体の物バラツキ、タイヤ(車輪)・ギヤ特性の変化を吸収するため、特定の走行条件で得られる情報に基づいて選定された教師により、VC特性モデル(図5)を修正するようにした。
修正に必要な教師が、図5に示すVC特性の横軸の全領域で得られるとは限らないため、非線形処理を得意とするNNを用いると共に、その学習はNN分野で広く使用されるBP則を用いるようにした。図3フロー・チャートのS104に示す3層構造のNNは、NNの中でも単純な構造であることから、BP則を用いた学習が比較的容易となる。
これにより、VC32の特性が車両10の状態あるいは経年劣化などから変化したときも、その変化に応じてVC32の特性を変化させることができ、VC32による引き摺りの推定精度を向上させることができ、良好なドライバビリティを運転者に与えることができる。
この実施例は上記した如く、エンジン(内燃機関)12の出力をCVT(変速機)14で変速して前後輪22,30をそれぞれ駆動すると共に、流体の粘性抵抗によって動力を伝達するVC(ビスカスカップリング)32をプロペラシャフト(駆動系)24に介挿した車両10において、駆動系のVC32の前後の回転差を算出する回転差算出手段(ECU50,S12)と、算出された回転差からNN(モデル)を用いてVC32が発生すると推定されるトルクを算出する推定トルク算出手段(ECU50,S14)と、算出されたトルクを打ち消すためにエンジン12に要求される要求トルクを算出するトルク算出手段(ECU50,S16)と、算出された要求トルクを出力するようにエンジン12の運転を制御する制御手段(ECU50,S16)とを備える如く構成したので、ハードウエアの変更に依存することのない簡易な構成でありながら、VC32による引き摺り抵抗を効果的に解消することができる。
即ち、エンジン12の出力トルクを増加させることで、引き摺りによるクリープ力の低下を打ち消すことができ、車両10の旋回時に運転者に良好なドライバビリティを与えることができる。
特に、変速機としてCVT14を用いるため、低速でのタイヤ(車輪)・ギヤの慣性によるイナーシャの変化を最小にすることができるため、耐久性が上がるという副次的な効果を得ることもできる。
さらには、低速度での4輪駆動機構の特性への配慮を軽減することができるので、車両10のスタビリティをよりニュートラルな方向に設定することも可能となる。
また、NN(モデル)は所定の走行条件で得られる情報に基づいて修正される(S20,S22,S100からS120)如く構成したので、VC32の特性が車両10の状態や経年劣化などから変化した場合も、推定トルクの算出精度を上げることができ、引き摺り抵抗をより正確に推定でき、一層良好なドライバビリティを与えることができる。
10 車両、12 内燃機関(エンジン)、14 変速機(CVT)、18 トランスファ、22 前輪、24 プロペラシャフト(駆動系)、30 後輪、32 ビスカスカップリング(VC)、40 車輪速センサ、42 アクセル開度センサ、44 ブレーキスイッチ、50 ECU(電子制御ユニット)

Claims (2)

  1. 内燃機関の出力を変速機で変速して前後輪をそれぞれ駆動すると共に、流体の粘性抵抗によって動力を伝達するビスカスカップリングを前記駆動系に介挿した車両において、前記駆動系の前記ビスカスカップリングの前後の回転差を算出する回転差算出手段と、前記算出された回転差からモデルを用いて前記ビスカスカップリングが発生すると推定されるトルクを算出する推定トルク算出手段と、前記算出されたトルクを打ち消すために前記内燃機関に要求される要求トルクを算出するトルク算出手段と、前記算出された要求トルクを出力するように前記内燃機関の運転を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記モデルは所定の走行条件で得られる情報に基づいて修正されることを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
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