JP2010274772A - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレーキング性能、ハンドリング応答性能等の諸性能を維持しつつコーナリング性能を向上した、自動二輪車用低扁平空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部1と、サイドウォール部2と、ビード部3とからなり、これら各部を補強し、かつ、タイヤ赤道面に対して60〜90°をなすコードをゴムで被覆した少なくとも1層のカーカスプライからなるカーカス層5を具備する自動二輪車用空気入りタイヤである。カーカス層5のタイヤ半径方向外側に、タイヤ赤道面に対して20〜80°をなす少なくとも2層の交錯ベルト層6と、交錯ベルト層6のタイヤ半径外側に、タイヤ赤道方面に対して、実質上平行に螺旋巻き形成された少なくとも一層のスパイラルベルト層7と、を有し、かつ、スパイラルベルト層7のコードが、実質的に同一ピッチで型付けされたスチール素線の複数本を略同位相で撚り合わせずに束ねられてなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動二輪車用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、ブレーキング性能、ハンドリング応答性能等の諸性能を維持しつつコーナリング性能を向上した、自動二輪車用低扁平空気入りタイヤに関する。
自動二輪車用空気入りタイヤとしては、1本または並列した複数本のスチールコードが被覆ゴム中に埋設された帯状体を、略タイヤ周方向に向かう角度で螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻回してなる、いわゆるスチールスパイラルベルト層を有するものがある。スチールスパイラルベルトを適用した場合、タイヤの高速耐久性、直進安定性、ユニフォーミティー、ブレーキング性能、ハンドリング応答性能等を向上させることができる。しかしながら、一方では、荷重が小さい状況でのコーナリング性能が不満足なものとなってしまう。
上記の各性能が両立しないメカニズムを検討した結果、スチールスパイラルベルト層を設けることにより、タイヤベルト層の剛性を高めることができるが、ハンドリング応答性能が向上するとともに、低荷重時の路面との接地性が失われ、結果としてコーナリング性能が失われることがわかった。
すなわち、タイヤなどのゴム製品においては、初期は路面との接触面積を上げるためにしなやかさが求められるが、ブレーキング時など、さらに入力が加えられた際には、高い剛性が求められることになる。したがって、上記問題を解消するためには、タイヤに対して低負荷側ではベルト層がしなやかに変形することで接地面積を確保し、かつ、高負荷時には、スチールの持つ高引張り剛性と高曲げ剛性を発揮できるようなスパイラルベルトを適用することが有効であると考えられる。
上述のようなスパイラルベルト層を実現するためには、その補強材であるスチールコード単体が、低荷重域において低剛性であって、一定荷重以上においては高剛性となるような物理特性を有する必要がある。このようなコードとしては、コードを構成する素線に大きな型付けをしたスチールコードが知られている。
例えば、特許文献1には、螺旋巻きされたスチールコードからなるベルトコードの引張伸びを所定の範囲に規定することで、高速走行時における直進性および旋回性を著しく低下させることなく、また、ハンドリング性を維持して耐摩耗性を向上した自動二輪車用ラジアルタイヤが開示されている。特許文献2には、螺旋巻きされた帯状プライを構成するバンドコードの荷重−伸び曲線により規定された自動二輪車用ラジアルタイヤが開示されている。特許文献3には、所定の引っ張り強さのスチール素線の複数本を撚り合わせた単撚り構造であって、所定の切断時伸びを有するベルトコードを用いた二輪車用空気入りラジアルタイヤが開示されている。特許文献4には実質的に同一ピッチで螺旋型付けされたスチール線状体の複数本を略同位相で撚り合わせずに束ねたスチールコードがゴムに埋設されてなるゴム−スチールコード複合体からなる自動二輪車用空気入りラジアルタイヤが開示されている。また、特許文献5には、スチールコードの外接円内にゴムが付着した状態での伸び量を規定した自動二輪車用空気入りラジアルタイヤが開示されている。
特開平04−362402号公報 特開2001−130218号公報 特開2002−19413号公報 特開2007−302033号公報 特開2007−191096号公報
一般に、スパイラルベルト層を有するタイヤにおいて、コーナリング性能を向上させるには、低荷重〜高荷重域のコードの引張り剛性をさらに下げて、ベルトパッケージの面外曲げ剛性を低減し、低荷重〜高荷重域でのタイヤの路面に対する接地面積を増加させる手法が有効である。しかしながら、上述のようなスパイラルコードの、特に高荷重域のコード引張り剛性を下げた場合、ベルトパッケージの面内せん断剛性の低下によりブレーキング性能やハンドリング応答性能等が低下する結果となっていた。
そこで、本発明の目的は、各荷重領域でのベルトパッケージの面外曲げ剛性の低減と面内せん断剛性の維持の両立により、ブレーキング性能、ハンドリング応答性能等の諸性能を維持しつつコーナリング性能を向上した、自動二輪車用空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、オープンコード構造を持つスチールコードからなるスパイラルベルト層と、高剛性な有機繊維コードを有する交錯ベルト層からなるベルトパッケージを適用することで、ベルト層のせん断剛性を維持しつつ面外曲げ剛性を低減し、ブレーキング性能やハンドリング応答性能を低下させることなくコーナリング性能を向上させることが可能であることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、トレッド部と、該トレッド部の両縁部からタイヤ半径方向内側に配設された一対のサイドウォール部と、該サイドウォール部のタイヤ半径方向内側に連なるビード部とからなり、これら各部をビード部内に埋設されたビードコア相互間にわたり補強し、かつ、タイヤ赤道面に対して60〜90°をなすコードをゴムで被覆した少なくとも1層のカーカスプライからなるカーカス層を具備する自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層のタイヤ半径方向外側に、タイヤ赤道面に対して20〜80°をなすコードをゴムで被覆した少なくとも2層の交錯ベルト層と、該交錯ベルト層のタイヤ半径外側に、タイヤ赤道方面に対して、実質上平行に螺旋巻き形成された少なくとも一層のスパイラルベルト層と、を有し、かつ、
前記スパイラルベルト層がゴム−スチールコード複合体からなり、該スチールコードが、実質的に同一ピッチで螺旋型付けされたスチール素線の複数本を略同位相で撚り合わせずに束ねられてなることを特徴とするものである。
本発明においては、前記スチールコードの外接円内にゴムが付着した状態での歪−荷重特性において、該スチールコードのスチール部断面積をS(mm)としたとき、負荷荷重Wを1500×S(N)から1600×S(N)まで変化させた際の伸び量が0.05〜0.12%であり、かつ、0.35%伸び時の負荷荷重W1(N)と0.45%伸び時の負加荷重W2(N)とが下記式、
(W2−W1)/S<35
で表される関係を満足することが好ましく、また、前記交錯ベルト層は高剛性有機繊維コードをゴムで被覆してなることが好ましく、前記高剛性有機繊維コードとしては高剛性アラミド繊維コードを好適に用いることができる。
本発明によれば、各荷重領域でのベルトパッケージの面外曲げ剛性の低減と面内せん断剛性の維持の両立により、ブレーキング性能、ハンドリング応答性能等の諸性能を維持しつつコーナリング性能を向上した、自動二輪車用空気入りタイヤを提供することができる。
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤを示す概略断面図である。 本発明に係るゴム−スチールコード複合体のコード部を示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤの一例の概略断面図を示す。図示するように、本発明のタイヤは、トレッド部1と、トレッド部1の両縁部からタイヤ半径方向内側に配設された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ半径方向内側に連なるビード部3とからなる。また、これら各部をビード部3内に埋設されたビードコア4相互間にわたり補強し、かつ、タイヤ赤道面に対して60〜90°をなすコードをゴムで被覆した少なくとも1層(図示例では1層)のカーカスプライからなるカーカス層5を具備する。
本発明においては、カーカス層5のタイヤ半径方向外側に、タイヤ赤道面に対して20〜80°をなすコードをゴムで被覆した少なくとも2層の交錯ベルト層6と、交錯ベルト層6のタイヤ半径外側に、タイヤ赤道方面に対して、実質上平行に螺旋巻き形成された少なくとも一層のスパイラルベルト層7と、を有し、かつ、スパイラルベルト層7がゴム−スチールコード複合体からなり、スチールコードが、実質的に同一ピッチで螺旋型付けされたスチール素線の複数本を略同位相で撚り合わせずに束ねられてなることが肝要である。
自動二輪車用空気入りタイヤを構成するベルト層には、高負荷時に高剛性であることが要求される。しかしながら、さらなるコーナリング性能の向上に際しては、タイヤと路面の接地面積の増加が不可欠である。したがって、スパイラルベルト層7の剛性低減によるベルト層の面外曲げ剛性の低減が求められる。そこで、スパイラルベルト層7のコードを上記構成とすることにより、スパイラルベルト層7の高荷重時剛性の低減によりベルト面外曲げ剛性を低減するとともに、交錯ベルト層6を追加して面内せん断剛性を維持し、コーナリング性能の向上と、ブレーキング性能、ハンドリング応答性能の維持とを両立している。
一般に、スチール素線に過大な型付けをして撚り合わせたスチールコードは、引っ張り荷重を加えた際に素線間に隙間がある初期においては、撚り絞まることでばねのように低い剛性を示し、荷重が増すことでこれらが接して隙間がなくなると、急激に剛性が高くなるという特性を示す。しかし、これをゴムに埋設して加硫すると、コード内部のゴムがほとんど体積変化しないために、隙間があっても撚り絞まることができなくなって初期から高い剛性を示し、ゴムの存在しないときのような、途中から大きく剛性が変化するような物理特性を示さなくなる。
そこで本発明においては、型付けをした素線を撚り合わせないことで、ゴムをコード内部に閉じ込めずにコード外に逃げられるようにしたことにより、加硫後でも生コードと同様に、型付けによるばねのような初期の伸びを保つことが可能となった。一方で、型付けした素線を撚り合わせないと、打ち込みの限界でも、断面内の補強材密度を大きくすることができず、十分な強度が得られない。そのため本発明では、型付けした素線を実質的に同一ピッチ、同位相で束ねることとして、束ねた素線が接して干渉せず、補強材密度を高めることができるものとして、強度を向上することを可能とした。
また、本発明においては、スチール素線の任意の1本と、少なくとも1本の他のスチール素線との、型付け螺旋の外接円同士が重なり合うことが好ましい。即ち、スチールコードを構成する各スチール素線を、互いの型付けの外接円同士が重なり合う状態に配置することで、高負荷時における高い剛性強度を得ることができる。
さらに、本発明においては、スチールコードを構成する全てのスチール素線の構造および型付け量を同一とすることも好ましく、これにより、応力が各スチール素線に均一にかかることになり、強度効率を向上することができる。
なお、本発明においてスチールコードを構成するスチール素線は、必要な強度・剛性に応じて、略円形断面を有するスチール素線であってもよい。
また、本発明においては、スチール素線の、型付け螺旋の外接円直径をD、外径をdとしたとき(図2参照)、下記式、
D>2.5d
を満足することが好ましい。スチール素線の、型付けによる外接円の直径Dを、スチール素線の直径dの2.5倍より大きくすることで、初期の剛性と、一定入力以上で発揮される高剛性部分との剛性差が大きくなり、本発明のゴム−スチールコード複合体の特徴をいっそう強く出すことができる。
かかるゴム−スチールコード複合体を、安定して効率的に作製する方法としては、例えば、別個のリールに巻かれた複数本の前記スチール素線を一つの口金に通して束ねてスチールコードとし、このスチールコードを、ゴムにより被覆した後、ゴム複合体に埋設する方法が有用である。
本発明の効果を良好に得るためには、具体的には、スチールコードの外接円内にゴムが付着した状態での歪−荷重特性において、スチールコードのスチール部断面積をS(mm)としたとき、負荷荷重Wを1500×S(N)から1600×S(N)まで変化させた際の伸び量が0.05〜0.12%であり、かつ、0.35%伸び時の負荷荷重W1(N)と0.45%伸び時の負加荷重W2(N)とが下記式、
(W2−W1)/S<35
で表される関係を満足することが好ましい。スチールコードの歪−荷重特性が(W2−W1)/S≧35となる場合、周方向剛性が高すぎてタイヤ回転方向の滑りを誘発し、旋回時の操縦安定性が低下してしまうおそれがある。
本発明においては、交錯ベルト層6は高剛性有機繊維コードをゴムで被覆してなるものであることが好ましい。交錯ベルト層6にスチールコードを用いると剛性が高くなりすぎてコーナリング時の接地面積の確保が困難となる。そこで、交錯ベルト層6の高剛性有機繊維コードを用いる。本発明に用いる高剛性有機繊維コードとしては特に制限はないが、高剛性アラミド繊維コードが好適である。
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、上記スパイラルベルト層7および交錯ベルト層6の構造に係る条件を満足するものであれば、それ以外の具体的なコード構造、スチール素線の本数や線径、具体的構造、スチールおよびゴムの材質等については、特に制限されるものではない。また、それ以外のタイヤ構造、各構成部材の材質等についても、特に制限されるものではない。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(比較例1、2および実施例)
下記の表1に従い、図1に示す断面構造を有する自動二輪車用空気入りタイヤを作製した。タイヤサイズは190/50ZR17とし、リムサイズをMT3.50×17インチ、内圧250kPaとして各供試タイヤを二輪車に装着した。その後、ブレーキング性能、ハンドリング応答性能およびコーナリング性能のそれぞれにつき評価した。
なお、スパイラルベルト層は、実質的に同一ピッチで螺旋型付けされたスチール素線の複数本を略同位相で撚り合わせずに束ねてなるスチールコードを用いたゴム−スチールコード複合体からなるものとし、そのスチールコードの打ち込み数は40本/50mmとした。コーティングゴムとしては、天然ゴム(NR)100質量部と、カーボンブラック(HAF)55質量部と、酸化亜鉛(ZnO)7質量部と、硫黄5質量と、Co塩(ナフテン酸コバルト)0.1質量部とからなるゴム組成物を使用した。また、各タイヤの交錯ベルト層にはアラミド繊維コードを用い、打ち込み数は38本/50mmとした。
<評価方法>
ブレーキング性能、ハンドリング応答性能およびコーナリング性能について、テストコースでの実車走行にて、ライダーによるフィーリング評価をおこなった。結果を、比較例1を100とする指数にて示す。いずれも数値が大なるほど性能に優れ、結果が良好である。これらの結果を下記の表1中に併せて示す。
Figure 2010274772
上記表1より、本発明のタイヤは比較例1、2のタイヤと比して、ブレーキング性能、ハンドリング応答性能およびコーナリング性能に優れていることがわかる。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 ビードコア
5 カーカス層
6 交錯ベルト層
7 スパイラルベルト層

Claims (4)

  1. トレッド部と、該トレッド部の両縁部からタイヤ半径方向内側に配設された一対のサイドウォール部と、該サイドウォール部のタイヤ半径方向内側に連なるビード部とからなり、これら各部をビード部内に埋設されたビードコア相互間にわたり補強し、かつ、タイヤ赤道面に対して60〜90°をなすコードをゴムで被覆した少なくとも1層のカーカスプライからなるカーカス層を具備する自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
    前記カーカス層のタイヤ半径方向外側に、タイヤ赤道面に対して20〜80°をなすコードをゴムで被覆した少なくとも2層の交錯ベルト層と、該交錯ベルト層のタイヤ半径外側に、タイヤ赤道方面に対して、実質上平行に螺旋巻き形成された少なくとも一層のスパイラルベルト層と、を有し、かつ、
    前記スパイラルベルト層がゴム−スチールコード複合体からなり、該スチールコードが、実質的に同一ピッチで螺旋型付けされたスチール素線の複数本を略同位相で撚り合わせずに束ねられてなることを特徴とする自動二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 前記スチールコードの外接円内にゴムが付着した状態での歪−荷重特性において、該スチールコードのスチール部断面積をS(mm)としたとき、負荷荷重Wを1500×S(N)から1600×S(N)まで変化させた際の伸び量が0.05〜0.12%であり、かつ、0.35%伸び時の負荷荷重W1(N)と0.45%伸び時の負加荷重W2(N)とが下記式、
    (W2−W1)/S<35
    で表される関係を満足する請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
  3. 前記交錯ベルト層が高剛性有機繊維コードをゴムで被覆してなる請求項1または2記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
  4. 前記高剛性有機繊維コードが高剛性アラミド繊維コードである請求項3記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007191830A (ja) * 2006-01-20 2007-08-02 Bridgestone Corp ゴム−スチールコード複合体
JP2009001080A (ja) * 2007-06-19 2009-01-08 Bridgestone Corp 二輪車用空気入りタイヤ

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