JP2010271455A - 光学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学素子に入射する光束の入射角度が入射位置により異なるどの点においても、優れた反射防止特性を有する光学素子を得る。
【解決手段】対物レンズ11の後方の光学素子12は、入射光束の光軸に対し傾斜して配置された透明基板13上に微細凹凸形状から成る構造層14を有している。対物レンズ11の主平面11Hに対して直交方向に異なる位置から光学素子12に入射した3つの光束Y1、Y2、Y3は、反射光束Y1’、Y2’、Y3’と透過光束Y1”、Y2”、Y3”に分割される。光束Y1、Y2、Y3の光学素子12への入射角度α1、α2、α3は、α1<α2<α3の関係となる。構造層14は使用波長よりも十分に小さなピッチ構造から成り、その高さは膜厚方向に変化しているので、屈折率が連続的に変化するように扱うことができる。構造層14内では振幅の小さな反射光が無数に発生し、干渉を起こして減衰するため、膜厚精度の依存が少ない。
【選択図】図1
【解決手段】対物レンズ11の後方の光学素子12は、入射光束の光軸に対し傾斜して配置された透明基板13上に微細凹凸形状から成る構造層14を有している。対物レンズ11の主平面11Hに対して直交方向に異なる位置から光学素子12に入射した3つの光束Y1、Y2、Y3は、反射光束Y1’、Y2’、Y3’と透過光束Y1”、Y2”、Y3”に分割される。光束Y1、Y2、Y3の光学素子12への入射角度α1、α2、α3は、α1<α2<α3の関係となる。構造層14は使用波長よりも十分に小さなピッチ構造から成り、その高さは膜厚方向に変化しているので、屈折率が連続的に変化するように扱うことができる。構造層14内では振幅の小さな反射光が無数に発生し、干渉を起こして減衰するため、膜厚精度の依存が少ない。
【選択図】図1
Description
本発明は、反射光量を減少させる反射防止構造体を有する光学素子に関するものである。
テレビ用カメラに使用されるプリズムにおけるダイクロイック膜や、一眼レフカメラに使用されるハーフミラーにおける誘電体多層膜は、入射光束の入射光軸に対し、傾きを持って配置されている。そして、入射光束の一部を反射し、残りを透過することで、入射光束を2つの光束に2岐する役割を有している。このような撮像光学系では、プリズムやハーフミラーの特定面における反射光の影響により生ずる二重像によって、解像感の悪化が問題となっている。
例えば、テレビ用カメラの撮像光学系は、色分解プリズム系とレンズで構成されている。一般的なテレビ用カメラの色分解プリズムは、3つのプリズムから成り、対物レンズから射出した光束は色分解プリズムが有するダイクロイック膜により、青・緑・赤の色に分解される。
図5に示す撮像光学系の主要断面概略図のように、テレビカメラは交換可能な対物レンズ1からの光を色分解する第1、第2、第3プリズム2、3、4と、複数の固体撮像素子5B、5R、5Gを有している。プリズム2、3、4で色分解された光束は、それぞれ各固体撮像素子5B、5R、5Gに至り、各固体撮像素子5B、5R、5Gは各色光で形成される像を撮像し、電気信号に変換している。
対物レンズ1を透過した光L1は第1プリズム2の入射面2aを透過し、第1プリズム2内を伝播する。そして、面2bに施した青反射用ダイクロイック膜により青色光L2のみが反射し、残りは透過する。反射した青色光L2は、面2aで全反射し、面2cから射出して青色用の固体撮像素子5Bに入射する。
ところが、残りの光束L3は空気間隔dを伝播し、面3aに入射する際に一部の光束L4が反射され、更に残りの光束L5が透過する。面3aからの反射光束L4は、再びプリズム2の第1プリズム2内を伝搬してから、面2aで全反射して、面2cから出射し、青色用の固体撮像素子5Bに入射する。
面3aを透過した光束L5は面3bに施した赤反射用ダイクロイック膜によって、赤色光L6のみが反射し残りは透過する。反射した赤色光L6は面3aで全反射し、面3cから射出して赤色用の固体撮像素子5Rに入射する。
第2プリズム3の面3b、第3プリズム4の面4aを透過した光L7は緑色光であり、第3プリズム4内に伝搬して面4bを出射し、緑色用の固体撮像素子5Gに入射する。このようにして、色分解プリズム2、3、4は光束を色分解する。
このようにして、対物レンズ1を経た光束L1は青反射用ダイクロイック膜により分解されるため、青色用の固体撮像素子5Bに入射する際に、分解された光束の一部である光束L2、L4が異なる場所に入射する。このため、青色用の固体撮像素子5B上では2重像を生ずることになる。
この問題を解決するために、反射防止膜を付与する面内において、任意の位置の入射光束に対し、反射率が最も低くなる光学膜厚で反射防止膜を形成する手法がある。一般的な光学干渉の理論では、反射防止膜表面での反射光と、反射防止膜と透過基材の境界での反射光との光路差が、波長の1/2の奇数倍となり、これらの光が干渉により打ち消し合う。この理論を利用し、面3b上の反射防止膜の膜厚に、入射光束の入射角度に対応した膜厚変化を設ければ、面3b上の全ての位置で、高い反射防止効果が得られる。
しかし、一般的な光学干渉の理論に従った反射防止膜は、膜厚に大きく依存し、所望の膜厚からずれると有効な反射防止効果が得られない。従って、面内に膜厚分布を持った反射防止膜を作製するには、高精度の膜厚制御が必要である。
一方、光学素子に反射防止機能を付与するには、入射する光の波長よりも細かい凹凸形状を有した構造体を透過基材の表面に付与するといった手法も提案されている。入射する光の波長よりも細かい凹凸形状において、光はその微細凹凸形状を認識できずに、一様な媒質であるかのような振舞いを示す。このとき、構造体は微細凹凸形状を構成する材料の体積比に準じた屈折率となり、通常の材料では得られないような低屈折率を示す。従って、微細凹凸形状による構造体を用いれば、従来の低屈折率材料から作製される反射防止膜と比較し、高性能な反射防止構造体が作製できる。
微細凹凸形状を形成するには、特許文献1の波長以下の粒径の微粒子を分散した膜を塗布する方法、特許文献2の微細加工装置によるパターン形成によって形成する方法、特許文献3のゾルーゲル法を用いた花弁状アルミナにより形成する方法が提案されている。
微細凹凸形状を有する構造体は、干渉の理論に従った反射防止膜と比較すれば、広帯域での反射防止特性に優れている。しかし、光軸に対し傾きをもって配置される光学素子は、入射面に対する光束の入射角度範囲が非常に広い。そのため、面上に均一に作製した場合に反射防止効果の低い部分を有することになる。
特許文献4には、微細凹凸形状を有する構造体の凸部高さを、配置される表面個所に応じて変化させることで、光量調整を行う手法が提案されている。この手法では、光軸に対し直交して配置された光学素子の光量調整が目的であり、微少な凹凸形状を有する構造体の凸部高さ分布は、面対称や軸対称に変化する場合が開示されている。しかし、上記したような光軸に対し、傾きを持って配置される光学素子に関しては、適切な構造は開示されていない。
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、入射光束の光軸に対し傾きを持って配置し、入射する光束の入射角度が入射位置によって異なっても、優れた反射防止特性を有する光学素子を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る光学素子は、光軸に対し傾きを持って配置した光学面上に、使用する波長よりも小さいピッチを有する微細凹凸構造から成る反射防止のための構造層を形成し、該構造層は前記光学面上への入射角度が小さい側から大きい側にかけて、次第に高さが高くなるように変化させたことを特徴とする。
本発明に係る光学素子によれば、光束の有効部に、平均ピッチが使用波長以下の微細凹凸構造体を具備し、微細凹凸構造体の凸部高さが、形成される面に対し傾斜方向の一端側から他端側にかけて次第に高くなるように変化している。これにより、入射する光束の入射角度が入射位置によって異なっても、反射防止効果が良好な優れた反射防止特性を有する。入射する光束の入射角度が入射位置によって異なっても、優れた反射防止特性を示すと共に、先行技術よりも量産性に優れる。
本発明を図1〜図4に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は光学素子の概略断面図である。理解を容易にするため、対物レンズと反射防止効果を付与する光学素子のみを描いている。更に、微細凹凸形状は拡大しデフォルメして描いている。
対物レンズ11の後方に配置される光学素子12は、入射光束の光軸に対し傾斜して配置された透明基板13上に微細凹凸形状から成る構造層14を有している。対物レンズ11の主平面11Hに対して直交方向から入射した光束のうち、光学素子12の光学面上で、対物レンズ11の主平面11Hとの距離が遠い位置に入射する任意の光束Y1とする。また、対物レンズ11の中心部に入射した任意の光束Y2、対物レンズ11の主平面11Hとの距離が近い位置に入射する任意の光束Y3が存在する。
これらの光束Y1、Y2、Y3は、光学素子12の光学面上で一部が反射し、それぞれ反射光束Y1’、Y2’、Y3’と、透過光束Y1”、Y2”、Y3”に分割される。このとき、光学素子12に対するそれぞれの光束Y1、Y2、Y3の入射角度α1、α2、α3は、α1<α2<α3の関係となる。
この微細凹凸形状を有する構造層14は、使用波長よりも十分に小さなピッチ構造から成り、その高さは膜厚方向に変化しているので、屈折率が連続的に変化するような構造体として扱うことができる。この連続的な屈折率の変化により、構造層14内では振幅の小さな反射光が無数に発生し、干渉を起こして減衰するため、膜厚精度の依存が少ない。
更に、構造層14の凸部高さが形成される面への入射角度が小さい側から大きい側にかけて、次第に構造層14の高さが高くなるように変化し、構造層14は入射角度に対応した凸部高さを持つため、良好な反射防止効果を得ることができる。この構造層14の作成方法は特に限定されることはなく、前述の特許文献1、特許文献3等の方法により作製できる。
微細凹凸形状から成る構造層14は、アルミナを主成分とすることが好ましい。以下に、ディップコート法を例として、構造層14の作成方法を説明するが、この構造層14はこの方法により製造したものに限定されることはない。
先ず、アルミナを含むゾル−ゲルコート液を塗工液とし、この塗工液に透明基板13を浸して引き上げるというディップコート法を繰り返してゲル膜を形成する。このとき、引き上げ方向に液溜まりや膜むらが生ずることを防ぐために、透明基板13を保持する治具は液逃げ方向を遮らないように設置する。面内の構造層14の凸部高さは、塗布するゲル膜に依存する。ゲル膜の厚さに傾斜を持たすには、引き上げ速度を変化させることで実現する。
そして、形成したゲル膜を温水に浸漬処理することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、最表面の微細凹凸形状を形成させる。温水に浸漬することで、アルミナを含むゾル−ゲルコーティング液を塗布して形成したゲル膜の表層が、解膠作用などを受け一部の成分が溶出する。各種水酸化物の温水への溶解度の違いにより、アルミナを主成分とする板状結晶がゲル膜の表層に析出し成長することで、微細凹凸形状が形成される。温水の温度は40〜100℃とすることが好ましく、温水処理時間としては、約5分間〜24時間程度である。
実施例で使用される透明基板13としては、ガラス、樹脂、ガラスミラー、樹脂製ミラーなどが挙げられる。また、透明基板13は最終的に使用目的に応じた形状にできるものであれば、平板、フィルム或いはシートなどでもよい。
図2は上述の光学系素子を用い、色分解プリズムを有するテレビカメラの撮像光学系の主要概略断面図である。微細凹凸構造層14の凸部高さが、形成される面に対し傾斜方向の一端側から他端側にかけて、次第に構造層14の高さが高くなるよう変化している。
色分解プリズムは、第1プリズム15、第2プリズム16、及び第3プリズム17の3つのプリズムから構成され、これらのプリズム15、16、17の屈折率は全て1.6である。第1プリズム15の面15bと第2プリズム16の面16aは、対物レンズ11からの入射光軸に対し26度傾いている。また、対物レンズ11のFナンバは1.4である。
色分解プリズムを作成するには、第1プリズム15の面15bには青反射用ダイクロイック膜、第2プリズム16の面16bには赤反射用ダイクロイック膜を蒸着法により形成する。次いで、第2プリズム16の面16aに反射防止用の構造層14を形成させるが、このとき面16a以外の面に膜が付着しないようなカバー付の治具を使用する。
ゾル−ゲルコート液を満たした容器に第2プリズム16を浸し、速度を次第に上げながら引き上げることで、一端側から他端側にかけて凸部高さが次第に高くなるようなゲル膜を面16a上に形成する。そして、それを温水に浸漬処理することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、最表面の凹凸形状を形成させる。
得られた構造層14の凸部高さ、屈折率はエリプソメータによる測定から得ることができる。面16aに施した構造層14の凸部高さは、面16aに対し対物レンズ11の主平面11Hから距離が離れた傾斜方向の一端側から、距離が近い他端側にかけて滑らかに増加している。更に、屈折率はプリズム側から空気の方向に1.5〜1.0まで連続的に減少している。
また、面16aに施した構造層14の反射防止効果は、反射率測定により得ることができる。図2において、対物レンズ11の主平面11Hに対し直交方向から入射した光束の任意の一部が、対物レンズ11によりその光路が曲げられ、面16aに入射した場合の入射角度をβとする。面16a上で、対物レンズ11の主平面11Hとの距離が離れた点での入射角度βは小さく、距離が近い点では大きくなる。反射率測定は入射角度βが最も大きいβ=47°となる点、βが面16aの光軸に対する傾きと等しいβ=26°となる点、入射角度βが最も小さいβ=5°となる点で行った。
表1は第2プリズム16の面16aに対する光束の入射角度β、入射角度βで入射した光束と面16aが交叉する点での構造層14の高さh、及びその点での400以上、700nm以下の波長領域における平均反射率R(h)を示している。
表1
入射角度β 構造層14の高さh 平均反射率R(h)
実施例1 5.0゜ 200nm 0.50%
26.0 250 0.37
47.0 280 0.53
入射角度β 構造層14の高さh 平均反射率R(h)
実施例1 5.0゜ 200nm 0.50%
26.0 250 0.37
47.0 280 0.53
また、図3は実施例1の入射角度β=47゜の点での400以上、700nm以下の波長領域における反射特性を示している。反射率特性は400以上、700nm以下の波長領域で1%以下であり、極めて良好に結果を示している。更に、実施例1の光学素子は、構造層が形成される全面で、60°の入射角、400以上、700nm以下の波長領域における反射率が5%以下であった。
3つのプリズム15、16、17から成る色分解プリズムは図2で示す配置に固定され、この色分解プリズムを有するテレビカメラは、二重像のない極めて良好な解像感を示す。
[比較例1]
実施例1に対する比較例1として、テレビカメラ用に使用される色分解プリズムの特性を説明する。比較例1は実施例1の反射防止特性との比較を行うため、蒸着法による反射防止膜を形成している。
実施例1に対する比較例1として、テレビカメラ用に使用される色分解プリズムの特性を説明する。比較例1は実施例1の反射防止特性との比較を行うため、蒸着法による反射防止膜を形成している。
比較例1における色分解プリズムは、図2と同様に第1プリズム15、第2プリズム16、第3プリズム17の3つのプリズムから構成され、各プリズムの屈折率は全て1.6である。面15bと面16aは、対物レンズ11からの入射光軸に対し26゜傾いており、また対物レンズ11のFナンバは1.4である。
色分解プリズムのダイクロイック膜作製法は実施例1と同様である。ダイクロイック膜の作成後に、図2の面16aに相当する面に蒸着により反射防止膜を形成した。得られた膜の膜厚、屈折率はエリプソメータにより測定し、面16aに施した反射防止膜は135nmである。また、面16aに施した反射防止膜の効果は、反射率測定により得ることができる。
表2は面16aに対する光束の入射角度β、入射角度βで入射した光束と面16aが交叉する点での反射防止膜の膜厚h’、及びその点での400以上、700nm以下の波長領域における平均反射率R(h’)を示している。
表2
入射角度β 反射防止膜の膜厚h’ 平均反射率R(h)
比較例1 5.0゜ 135nm 0.50%
26.0 135 0.63
47.0 135 1.42
入射角度β 反射防止膜の膜厚h’ 平均反射率R(h)
比較例1 5.0゜ 135nm 0.50%
26.0 135 0.63
47.0 135 1.42
図3は比較例1の入射角度β=47゜の点での400以上、700nm以下の波長領域における反射特性を示す。反射防止膜の膜厚h’は光束の入射角度βに拘わらず同じであるので、比較例1の反射率特性は400以上、700nm以下の波長領域で実施例1と比較して劣る結果を示している。
更に、比較例1の光学素子では、反射防止膜が形成される全面で、60°の入射角、400以上、700nm以下の波長領域における反射率が5%よりも高い。このことからも、本実施例の光学素子は、比較例1の光学素子に比べて優れた結果を示す。
3つのプリズム15、16、17は図1で示す配置に固定され、この色分解プリズムを有するテレビカメラは、二重像が生じており、実施例1の色分解プリズムと比較し、劣った解像感を示している。
[比較例2]
比較例2として、テレビカメラ用に使用される色分解プリズムを示す。この比較例2は実施例1の反射防止特性との比較を行うため、微細凹凸構造層14の凸部高さが、形成される面に対し均一となる場合を示す。
比較例2として、テレビカメラ用に使用される色分解プリズムを示す。この比較例2は実施例1の反射防止特性との比較を行うため、微細凹凸構造層14の凸部高さが、形成される面に対し均一となる場合を示す。
比較例2における色分解プリズムは、プリズム15、16、17の3つのプリズムから構成されており、プリズム15、16、17の屈折率は全て1.6である。面15bと面16aは、対物レンズ11からの入射光軸に対し26゜傾いており、対物レンズ11のFナンバは1.4である。
第1プリズム15の面15bには青反射用ダイクロイック膜、第2プリズム16の面16bには赤反射用ダイクロイック膜を蒸着法により形成されている。次いで、第2プリズム16の面16aに構造層14を形成させるが、このとき面16a以外の面に膜が付着しないようなカバー付の治具を使用する。
ゾル−ゲルコート液を満たした容器に第2プリズム16を浸し、一定速度で引き上げ、面内均一膜厚となるゲル膜を面16a上に形成する。そして、それを温水に浸漬処理することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、最表面の微細凹凸構造層14を形成した。
第2プリズム16の面16aに施した構造層14の厚さは、面16a内で均一な200nmである。更に、屈折率はプリズム側から空気の方向に1.5〜1.0まで連続的に減少している。
また、面16aに施した微細凹凸形状から成る構造層14の反射防止効果は、反射率の測定により得ることができる。
表3は面16aに対する光束の入射角度β、入射角度βで入射した光束と面16aが交叉する点での構造層14の高さh、及びその点での400以上、700nm以下の波長領域における平均反射率R(h)を示している。
表3
入射角度β 構造層14の高さh 平均反射率R(h)
比較例2 5.0゜ 200nm 1.08%
26.0 200 1.11
47.0 200 2.00
入射角度β 構造層14の高さh 平均反射率R(h)
比較例2 5.0゜ 200nm 1.08%
26.0 200 1.11
47.0 200 2.00
また、図3は比較例2の入射角度β=47゜の点での400以上、700nm以下の波長領域における反射特性を示す。構造層14の高さhは光束の入射角度βに拘わらず同じなので、比較例2の反射率特性は400以上、700nm以下の波長領域で、実施例1と比較して劣る結果を示している。
更に、比較例2の光学素子では、反射防止膜が形成される全面で、60°の入射角、400以上、700nm以下の波長領域における反射率が5%よりも高い。このことからも、本実施例の光学素子は、比較例2の光学素子に比べて優れた結果を示す。
3つのプリズム15、16、17は図2で示す配置に固定され、この色分解プリズムを有するテレビカメラでは二重像が生じており、実施例1の色分解プリズムと比較して劣った解像感を示している。
図4は実施例2のハーフミラーを有する一眼レフカメラにおける撮像光学系の主要概略断面図である。対物レンズ21の後方に配置されたハーフミラーのクイックリターンミラー22に微細凹凸形状から成る構造層14が形成されている。
対物レンズ21を通過した光束はクイックリターンミラー22に入射し、クイックリターンミラー22でその光束が分岐され、一方の光束は焦点板23、プリズム24、接眼レンズ25に導かれ、他方の光束はサブミラー26、結像面27に導かれる。結像面27には、フィルム又はCCD、CMOSなどの光電変換素子が配置され、サブミラー26で反射した光束は焦点検出装置28に入射される。
クイックリターンミラー22の面22aを透過した光束は、後面22bに設けられた構造層14により、後面22bにおける反射を低減している。これにより、焦点板23での二重像が低減され、ファインダ像の見えが改善されることになる。
本発明に係る反射防止構造体は、各種の光学系、撮像光学系、光学装置に搭載して使用することができる。
11、21 対物レンズ
12 光学素子
13 透明基板
14 構造層
22 クイックリターンミラー
23 焦点板
12 光学素子
13 透明基板
14 構造層
22 クイックリターンミラー
23 焦点板
Claims (9)
- 光軸に対し傾きを持って配置した光学面上に、使用する波長よりも小さいピッチを有する微細凹凸構造から成る反射防止のための構造層を形成し、該構造層は前記光学面上への入射角度が小さい側から大きい側にかけて、次第に高さが高くなるように変化させたことを特徴とする光学素子。
- 前記構造層はディップコートにより形成することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記構造層はディップコートの引き上げ方向に高さが変化することを特徴とする請求項2に記載の光学素子。
- 前記構造層は形成される全面で、60°の入射角、400以上、700nm以下の波長領域における反射率が5%以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光学素子。
- 前記構造層はアルミナを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の光学素子。
- 前記使用する波長は400以上、700nm以下の波長領域であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つの請求項に記載の光学素子。
- 請求項1〜6の何れか1つの請求項に記載の光学素子を備えたことを特徴とする光学系。
- 請求項7に記載の光学系を備えたことを特徴とする撮像光学系。
- 請求項7に記載の光学系を搭載したことを特徴とする光学装置。
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