JP2010270399A - 耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性を低下させることなく、耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼を製造する方法を提供する。
【解決手段】質量%で、0.040%≦C≦0.100%、0.20%≦Si≦1.00%、0.30%≦Mn≦1.00%、P≦0.040%、S≦0.010%、Ni≦0.45%、16.0%≦Cr≦18.0%、Mo≦0.50%、Cu≦0.30%、N≦0.050%と、残部がFeと不可避不純物からなり、且つ、
下記式1の値が、55%≦オーステナイト・ポテンシャル≦65%となる成分を有したスラブを1,000℃〜1,200℃の範囲で加熱した後、
粗圧延機で、1パス当たりの圧下率が30%以上の熱間粗圧延を2パス以上行い、
その後、1分以上保持させ、
然る後、仕上げ圧延機の両側に保温炉を備えた可逆式圧延機で、鋼板温度を前記保温炉にて850℃以上に維持した状態で、1パス当たり圧下率30%以上の高圧下仕上げ圧延で、3ハパス以上行って熱間仕上げ圧延を行い、
次いで、900℃以上の温度で4時間以上の均熱下でバッチ焼鈍を行った後、鋼板温度が600℃になるまで自然冷却させることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼を製造する製造方法である。
オーステナイト・ポテンシャル(%)
=288(%C)+350(%N)+22(%Ni)+7.5(%Mn)-18.75(%Cr)-54(%Si)+338.5……式1
【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼の成形加工の際に圧延方向と平行方向に発生する、「リジング」或いは「ローピング」と呼ばれる表面欠陥を低減したフェライト系ステンレス鋼の製造方法に関するものである。なお、「リジング」は、「ローピング」とも呼ばれるが、以下、「リジング」に統一して記載する。
SUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼は、一般に、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて安価であると共に、マルテンサイト系ステンレス鋼に比べて耐食性、耐熱性、および成形加工性に優れている。このため、フェライト系ステンレス鋼は、厨房機器や食器類、家電用機器および建築用金物などの用途に広く使用されている。
しかし、フェライト系ステンレス鋼に圧延加工を施すと、鋼板表面に生じる圧延方向と平行方向に縞状或いは筋状の起伏である「リジング」と呼ばれる表面欠陥が生じる。リジングが生じると、成形品の美感が損なわれるので、リジングを除去するための研磨工程が必要となるが、この「リジング」が大きいと研磨量が増え、このため、研磨作業の負荷が増大して成形品のコスト増に跳ね返る。
前述のように、「リジング」は、鋼板表面に圧延方向と平行方向に、縞状或いは筋状の起伏で、これをそのまま成形すると成形品の表面に「リジング」がそのまま残って現れ成形品の美観を損ねる。そのため成形加工した後にそれを除去するための研磨工程が必要となるが、鋼板表面の「リジング」が過大であると研磨量もそれだけ増え、成形工程における研磨負荷を増大させる。
「リジング」は、連続鋳造で製造したスラブ組織の柱状晶に起因すると言われており、スラブ組織の微細化や電磁攪拌などによって等軸晶率を上げる試みがされてきたが、実際にはそれだけでは不十分であった。また、冷延工程において、圧延と焼鈍を繰返し行うことで、「リジング」を改善することができるが、コストの増大が問題となる。
「リジング」の原因となるスラブ組織の柱状晶の破壊には、再結晶を繰返し生じさせることが必要であり、例えば熱間圧延(以下、熱延と略称する。)を利用することが考えられる。しかし、フェライト系ステンレス鋼は、動的再結晶が極めて生じ難く、反面、回復現象が生じやすいため、熱延において大加工歪の付与と再結晶時間を設ける必要がある。しかしながら、そのようにするとその分だけ生産性が低下する。
このように、「リジング」は成形品市場における競争力を低下させる要因となることから、フェライト系ステンレス鋼のリジング発生を防止又は軽減するために、従来から様々な技術が開発されている。「リジング」は、前述のように連続鋳造で製造されたスラブ組織の柱状晶に起因することから、例えば、特許文献1に記載の「スラブ組織の微細化や電磁攪拌などによって等軸晶率を上げる技術」を挙げることができる。また、特許文献2に記載の「オーステナイト・ポテンシャルを増加させる技術」や、特許文献3に記載の「スラブの冷却制御」や、特許文献4、5に記載の「粗圧延条件」や、特許文献6に記載の「圧延板焼鈍」などを挙げることができる。
特公昭64−149(等軸晶率の増加) 特開平7−118754(A.P.の増加) 特公平7−112595(スラブの冷却制御) 特開平7−126757(粗圧延条件) 特開平7−310122(粗圧延条件) 特公平6−94575(圧延板焼鈍)
本発明はこのような状況を鑑み、耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法を提供する。
本発明者は、熱延条件とフェライト系ステンレス鋼の再結晶挙動との関係を種々研究した結果、圧延温度、圧下率、圧延後の保持時間と再結晶挙動の関係を明らかにし、本発明に至った。すなわち、本発明は、
質量%で、0.040%≦C≦0.100%、0.20%≦Si≦1.00%、0.30%≦Mn≦1.00%、P≦0.040%、S≦0.010%、Ni≦0.45%、16.0%≦Cr≦18.0%、Mo≦0.50%、Cu≦0.30%、N≦0.050%と、残部がFeと不可避不純物からなり、且つ、
下記式1の値が、55%≦オーステナイト・ポテンシャル≦65%となる成分を有したスラブを1,000℃〜1,200℃の範囲で加熱した後、
粗圧延機で、1パス当たりの圧下率が30%以上の熱間粗圧延を2パス以上行い、
その後、1分以上保持させ、
然る後、仕上げ圧延機の両側に保温炉を備えた可逆式圧延機で、鋼板温度を前記保温炉にて850℃以上に維持した状態で、1パス当たり圧下率30%以上の高圧下仕上げ圧延で、3パス以上行って熱間仕上げ圧延を行い、
次いで、900℃以上の温度で4時間以上の均熱下でバッチ焼鈍を行った後、鋼板温度が600℃になるまで自然冷却させることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼を製造 する製造方法である。
オーステナイト・ポテンシャル〔以下、A.P.という〕(%)
=288(%C)+350(%N)+22(%Ni)+7.5(%Mn)-18.75(%Cr)-54(%Si)+338.5……式1
請求項1の発明によれば、請求項1の化学組成を有し、且つ、A.P.が55%〜65%であるスラブを請求項1に記載の条件で熱間粗圧延を行うことにより、フェライト系ステンレス鋼板組織を再結晶させることが出来、耐リジング性を向上させることができた。その後に可逆式圧延機(例えば、ステッケルミル)による高圧下仕上げ圧延を行う。
可逆式圧延機の使用による高圧下仕上げ圧延をすることにより、生産性を落とす事なく更に耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法を提供することができる。更に詳述すれば、可逆式圧延機では保温炉が仕上げ圧延機の両側に設けられているため、1のパスと次のパスとの間に生じる数分の保温炉による加熱保温時間が再結晶のための待ち時間として利用することができ、組織の再結晶時間を別に設ける必要がなく、耐リジング性向上のために特別な手段を必要としないことから、生産性を損なうことがない。
そして、高い温度(オーステナイト+フェライト域)で焼鈍することにより、リジングを改善し、且つ、焼鈍後の冷却条件を制御すればマルテンサイトサイト組織が生じず、耐食性のよいフェライト系ステンレス鋼を製造することが出来る。
本発明によれば、フェライト系ステンレス鋼の組成、オーステナイト・ポテンシャル、粗圧延、および仕上げ圧延などを適切に選定することにより、コスト増なくフェライト系ステンレスの表面に発生するリジングを大幅に軽減することができ、成形品へのフェライト系ステンレス鋼の適用をより容易にすることができる。
圧下率20%、30%及び40%の粗圧延時における圧延温度、保持時間、再結晶指数との関係を示すグラフである。 圧延温度700℃、800℃、850℃、900℃の仕上げ圧延時における圧下率、保持時間、ビッカース(Hv)硬さとの関係を示すグラフである。 比較鋼及び開発鋼の表面の図面に代わるリジング外観写真である。
以下、本発明におけるスラブの化学組成の限定理由について説明する。これら各成分の割合はすべて質量%である。
0.040%≦C≦0.100%:Cには、フェライト系ステンレス鋼(以下、単に「ステンレス鋼」と記載する。)を加熱して1100℃にしたときに、ステンレス鋼の全組織におけるオーステナイト組織の占める割合を示すオーステナイト・ポテンシャル(以下、「A.P.」と記載する。)を上げる作用があることから、少なくとも0.04%の含有量が必要である。一方、多量の炭素は、炭化物の析出が多くなることでステンレス鋼の耐食性が低下するとともに、ステンレス鋼の耐力が増加してプレス成形性に悪影響を与えるため含有量の上限を0.100%とした。
0.20%≦Si≦1.00%:Siは溶解時、溶湯の脱酸剤の役割をすると同時にフェライト系ステンレス鋼の耐食性を増加させる効果もあり、0.20%以上は必要となる。一方、SiはA.P.を下げるため、1.00%を上限とする。
0.35%≦Mn≦1.00%:MnはA.P.を上げる作用があり、0.35%は必要である。マンガンの含有量が0.35%よりも多くなったとしても、特に材料特性には大きく影響しないが、A.P.の上限を超えないようにするために1.00%を上限とした。
P≦0.040%:Pの含有量が多くなると、ステンレス鋼の熱間加工性に悪影響を及ぼすため、その上限を0.040%とした。
S≦0.010%:Pと同様、Sの含有量が多くなると、熱間加工性に悪影響を及ぼすため、その上限を0.010%とした。
Ni≦0.45%:NiはA.P.を上げる方向に作用する元素であるが、本発明はフェライト系ステンレス鋼のため上限を0.45%とした。
16.0%≦Cr≦18.0%:Crは耐食性に効果的な元素であるため、16.0%以上は必要である。しかし、CrはA.P.を下げる方向に作用する元素であるため、含有量の上限を18.0%とした。
Mo≦0.50%:Moはステンレス鋼の耐食性に効果的な元素であるが、高価なため0.50%を上限とした。
Cu≦0.30%:Cuはステンレス鋼の熱間加工性に悪影響を及ぼすため、0.30%を含有量の上限とした。
N≦0.050%:NはA.P.を上げる方向に作用する元素であるが、多量の添加は、窒化物の形成による耐食性の低下や、耐力の増加をもたらすため成形性が悪くなる。したがって、0.050%を含有量の上限とした。
55%≦A.P.≦65%:A.P.は、1100℃に加熱した時に組織中のオーステナイト組織の占める割合を表している。フェライト系ステンレス鋼の高温加工では、回復しやすいので、再結晶を生じさせるためには大加工歪と再結晶時間を要する。加熱組織中にオーステナイト組織が存在していると、熱延の際、フェライトよりも硬質なオーステナイトによって、フェライトが分断されることになる。これによって、スラブ組織が分断され、かつオーステナイトとフェライトの結晶粒界に歪が集中し、再結晶核の生成サイトとなり、再結晶を促進する。しかし、その効果を得るためには、55%以上のA.P.が必要である。一方、多量のA.P.となる成分では、最終製品で、フェライト組織が得られ難くなるため、65%を上限とした。
本発明は、このような組成成分を含有するスラブを所定の粗圧延温度まで加熱してから高圧下粗圧延し、この高圧下粗圧延した鋼板を所定時間保持し、続いて、所定の鋼板温度を維持した状態で仕上げ熱延し、更にこれを所定温度で鋼板を焼鈍することによりリジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼を製造する方法である。リジング改善のためには従来から連続鋳造組織を破壊し、再結晶を促進させることが有効であることが知られていたが、従来の圧延方法では再結晶指数(再結晶率を段階で示したもの)で1又は2程度しか実現できずリジング改善が限定的であった。そこで、発明者らはリジングの改善をするための方策として、熱延条件とその後の焼鈍条件について更に検討した。換言すれば、耐リジング性に優れたステンレス鋼を製造するために必要なスラブの粗圧延条件と仕上げ熱延条件とその後の焼鈍条件とを決定した。以下、この根拠について説明する。
本発明では、粗圧延機と可逆式圧延機(例えば、ステッケルミル)からなる熱延設備でフェライト系ステンレス鋼を熱延することが前提である。可逆式圧延機は、仕上げ圧延機の前後に保温炉を備え、仕上げ圧延中の鋼板温度の低下を避けるために保温している。
まず、粗圧延機において、圧延温度、圧下率および保持時間と再結晶率との関係を検討した。図1に、研究段階での圧延温度、圧下率および保持時間と再結晶指数との関係を示す。これは所定の温度に加熱後、研究実験用の4段圧延機にて、所定の圧下率で1パス圧延した後、所定の温度炉内で所定の時間保持した後、水冷した試験片の再結晶率を測定して得られた結果を示す。この結果、1,000〜1,200℃の圧延温度において、圧下率30%以上で圧延し、所定時間保持した時、再結晶が生じることが明らかとなった。
リジング改善のためには、前述のように再結晶率が高いほど好ましいことが分かっているが、従来方法では再結晶指数が1又は2程度しか実現できなかった処、圧下率30%、1,200℃で1分以上保持した場合、再結晶指数3以上(つまり、再結晶率50%以上)を達成することが出来た。実機製造では、3以上の再結晶指数を確実に達成するため、圧下率30%以上の高圧下粗圧延を2パス以上行い、そして、その後、1分以上保持することとし、これによって再結晶指数3以上(再結晶率50%以上)の実現を確認した。
また、実機製造における粗圧延では被圧延材の板厚が厚いため、特に加熱保持しなくても材料が保有する熱で再結晶が進行することを確認した。
続いて、仕上げ熱延が行われるが、本実施例では、仕上げ熱延用の熱間圧延機として、可逆式圧延機であるステッケルミルを用いている。そして、このステッケルミルの前後には、鋼板保温炉(コイラーファーネス)が設けられている。このようなステッケルミルを用いることで、1のパスと次のパスとの間に生じる数分の待ち時間において、鋼板を保温炉で所定温度に保温することができ、当該「待ち時間」を鋼板組織の再結晶時間として利用することができる。
このような仕上げ可逆式圧延機(ステッケルミル)を用いて、仕上げ圧延時の圧延温度、圧下率および保持時間と組織および硬さ変化との関係から再結晶挙動を検討した。図2に、圧延温度、圧下率および保持時間と硬さとの関係を示す。なお、試験方法は、温度が異なる以外は図1の場合と同じであり、硬さは板厚中央部をビッカース硬度計で測定した。この測定結果について以下に説明する。
700℃での圧延では、圧下率および保持時間が変化しても硬さの変化はほとんど認められなかった。
次に800℃では、圧下率40%の時、保持時間の経過とともに硬さが低下したが、それ以外の条件では、硬さに変化はほとんど認められなかった。そして、組織観察の結果、硬さ変化が認められた40%圧下率試験片は、保持時間の経過とともに再結晶組織が得られた。
さらに、850℃では、圧下率10%と20%の時は、保持時間が経過しても硬さに変化は認められなかったが、それ以外(即ち、圧下率が30%および40%の時)は、保持時間の経過とともに硬さが低下し、しかも圧下率の増加とともに、軟化の大きさが大きくなった。そして、保持時間の経過とともに再結晶組織が得られた。軟化の度合いが大きくなるのは、組織観察の結果、圧下率および保持時間の増加に伴い、再結晶組織が増加することが要因であることが分かった。
900℃では、硬さの変化が大きく、圧下率、保持時間と硬さに規則性は認められなかった。組織観察の結果、マルテンサイト組織が多く観察されたため、この温度域ではフェライトとオーステナイトの2相組織での圧延となっていたと思われる。
これら結果から、仕上げ圧延では、圧延温度850℃で、1パス(実機製造では安全のため3パスとする。)の圧下率が30%以上であれば、保温炉に保持中に再結晶が進行する可能性が高いことが分かった。また、特に900℃以上でも仕上げ圧延は、粗圧延時と同様の再結晶発生効果が得られると推定された。なお、実機製造では3パス以上とすることで確実に再結晶が進行することが確認された。
最後に、熱延板の焼鈍条件について検討した。フェライト系、特に高温域での焼鈍によりオーステナイトが生じるSUS430などでは、焼鈍は、通常、変態点温度以下で行われる。これは、焼鈍時に、オーステナイトが発生し、冷却時にマルテンサイトが生じると、最終製品での耐食性に問題が生じる場合があるためである。
一方、スラブ組織の破壊、またはフェライトの微細化には、オーステナイト−フェライト変態が有効である。そのため、バッチ焼鈍後の冷却速度を下げることで、マルテンサイトの発生を避ける事とした。
即ち、従来の冷却方法は、800〜850℃の温度範囲でバッチ焼鈍した後、直ちに、専用の冷却機で強制的に冷却していたが、本発明では900〜950℃の温度範囲でバッチ焼鈍をした後は強制的な冷却を行わず、鋼板温度が600℃になるまで自然冷却し、鋼板温度が600℃以下になった時点で、強制冷却を行った。この結果、冷却後の組織にマルテンサイトが生じることはなかった。
ステンレス鋼のA.P.が本発明の範囲内である開発鋼1〜6と、A.P.が本発明の範囲を外れる比較鋼1〜4を比較し、更に製造工程、条件を従来法と本発明法で比較し、本発明にかかるステンレス鋼の耐リジング効果を検証した。
表1に示す化学成分を有する比較鋼1〜4及び開発鋼1〜6をそれぞれ電気炉で溶解し、AOD炉(アルゴン−酸素−脱炭精錬炉)で精錬し、連続鋳造機でスラブを製造した。これらスラブに表2に示す製造工程および製造条件に基づき加工を施し、比較鋼1〜4及び開発鋼1〜6について「リジング」を評価した。
リジングの測定は、冷延板(厚さ:0.7mmまたは0.8mm)を圧延方向に15%引張加工したときに生じる表面のうねり『=ろ波中心線うねり』を、粗さ計を用いて測定し、リジング評価とした。なお、バッチ焼鈍後に連続焼鈍酸洗工程を通過しているが、これは、酸洗によるスケールオフが目的である。
比較鋼1は連続焼鈍のみが施された鋼であり、比較鋼2はバッチ焼鈍(810℃)が施された鋼である。これら鋼に生じたリジングは、それぞれ4.0μmおよび4.2μmであった。比較鋼3はバッチ焼鈍(900℃)したもので、そのリジングは3.8μmとなり若干改善された。しかし、いずれの比較鋼もA.P.が本発明の範囲を外れているため、そのリジングは本発明例に比べると大きい。
開発鋼1〜3は、本発明に係る成分組成およびA.P.(=56%)で製造した実施例である。しかし、開発鋼1は、同じ製造工程で製造された比較鋼1とを比較すると、リジングは3.5μmと改善されてはいるが、開発鋼1の製造工程は本発明の条件を満たしておらず、リジングの改善程度は不十分である。
開発鋼2及び開発鋼3は本発明例である。開発鋼2は、開発鋼1に対し、熱間圧延粗圧延工程において、高圧下圧延(1パス当たりの圧下率が30%以上…以下同じ)を行ったものであり、リジングは2.6μmであり、耐リジング性が大きく改善されている。
開発鋼3は、開発鋼2に対し、更に熱間圧延仕上げ圧延において、高圧下圧延を行ったものであり、リジングは更に小さい2.5μmであった。
開発鋼4〜6も、本発明にかかる成分組成及びA.P.(=63%)を有している。開発鋼4のリジングは2.0μmであり大きく改善されているが、冷延を2ヒート行っているので製造コスト増大の問題が付きまとう。
開発鋼5及び開発鋼6は本発明例である。開発鋼5は熱間粗圧延において、高圧下圧延を行い、更にバッチ焼鈍(900℃)を行ったものであり、リジングは1.4μmと大きく改善された。
開発鋼6は、開発鋼5に対し、熱間仕上げ圧延において高圧下圧延を行ったものであり、リジングは1.1μmと更に改善された。以上のように、本発明例である開発鋼2、開発鋼3、開発鋼5及び開発鋼6は大きなリジング改善効果が得られている。
図3に、比較鋼1および4と、開発鋼1〜6に生じたリジングの外観写真を示す。図の上下方向が圧延方向であり、この圧延方向に15%の引張加工が施されている。試験片の表面に観察される縞状の模様がリジングである。リジングが4μmであった比較鋼1に係る試験片に比べ、本発明に係る製造方法で製造した開発鋼6のリジングが、外観においても非常に軽微なものであることがわかる。

Claims (1)

  1. 質量%で、0.040%≦C≦0.100%、0.20%≦Si≦1.00%、0.30%≦Mn≦1.00%、P≦0.040%、S≦0.010%、Ni≦0.45%、16.0%≦Cr≦18.0%、Mo≦0.50%、Cu≦0.30%、N≦0.050%と、残部がFeと不可避不純物からなり、且つ、
    下記式1の値が、55%≦オーステナイト・ポテンシャル≦65%となる成分を有したスラブを1,000℃〜1,200℃の範囲で加熱した後、
    粗圧延機で、1パス当たりの圧下率が30%以上の熱間粗圧延を2パス以上行い、
    その後、1分以上保持させ、
    然る後、仕上げ圧延機の両側に保温炉を備えた可逆式圧延機で、鋼板温度を前記保温炉にて850℃以上に維持した状態で、1パス当たり圧下率30%以上の高圧下仕上げ圧延で、3パス以上行って熱間仕上げ圧延を行い、
    次いで、900℃以上の温度で4時間以上の均熱下でバッチ焼鈍を行った後、鋼板温度が600℃になるまで自然冷却させることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼を製造する製造方法。
    オーステナイト・ポテンシャル(%)
    =288(%C)+350(%N)+22(%Ni)+7.5(%Mn)-18.75(%Cr)-54(%Si)+338.5……式1

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