JP2010270288A - 表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を用いる薬液注入材及び薬液注入工法。 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の薬液注入材は地盤中に薬液の含水ゲルを生成し、土粒子間隙を該含水ゲルで充填することにより地盤強度を増し、透水係数を減少させ、地盤改良を実施してきた。しかし、従来薬液の該含水ゲルは地盤中での長期安定性に欠け、数ヶ月で地盤改良効果が減少または失われるという重大な欠陥を有していた。
【解決手段】表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散して注入薬液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂の含水ゲルを形成し、吸水性能を発現し、地盤改良効果を発揮させることが可能となった。該被覆材は、注入作業完了まで、一時的に該吸水性樹脂と水との接触を妨げる効果を発揮し、注入完了後は、分散液として用いた水などにより、溶解または離散消失させ、該吸水性樹脂と水が接触可能となり、該吸水性樹脂の吸水性能が発揮させられることとなる。
【解決手段】表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散して注入薬液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂の含水ゲルを形成し、吸水性能を発現し、地盤改良効果を発揮させることが可能となった。該被覆材は、注入作業完了まで、一時的に該吸水性樹脂と水との接触を妨げる効果を発揮し、注入完了後は、分散液として用いた水などにより、溶解または離散消失させ、該吸水性樹脂と水が接触可能となり、該吸水性樹脂の吸水性能が発揮させられることとなる。
Description
本発明は、地盤強度の改良または地盤の透水性の減少に用いられる地盤改良分野に好適な、表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂による地盤改良材および地盤改良工法に関するものである。
従来の一般的な地盤改良材及び地盤改良工法は、対象とする地盤の性質によって種々の地盤改良材が選定使用されている。例えば、水ガラスを希釈した水溶液の主剤液と、リン酸や硫酸などの無機酸類、炭酸水素ナトリウムなどの重炭酸塩類を用いる水溶液硬化剤液、またはセメントやスラグなどの水懸濁液などの硬化剤液とをY字管などを用いて、両薬液を合流させながら同時に地盤中に注入し、両薬液を反応させて、数秒から数分単位で硬化させ、地盤中で水ガラスの含水ゲルを生成させて、地盤強度の改良および地盤透水性の減少を図り地盤改良効果を発揮させてきた。
しかし、該水ガラス含水ゲルは地盤中での長期安定性に欠け、特に滞水または伏流水のある地盤中では、数ヶ月で地盤改良効果が減少または失われるという重大な欠陥を有していた。
また、一度該水ガラス含水ゲル中から水が流失すると、再び水に遭遇しても、その水を取り込んで、再度同じ体積の該水ガラス含水ゲルを生成することはできなかった。そのため水ガラスを主剤として用いる地盤改良工法は「仮設工法」と称され地盤改良効果の持続性、長期性、恒久性はないとされ、限られた用途にしか適用されなかった。
さらに、従来の一般的な地盤改良材は、適宜主剤液および硬化剤液濃度を決め地盤中で水ガラスの含水ゲルを生成させて地盤強度の改良および地盤透水性の減少を図り地盤改良効果を発揮させてきた。しかし両薬液の注入液濃度は、地盤中の滞水または伏流水により希釈されて、注入先端薬液(注入初流)は濃度不足となり、強度不足の含水ゲルを生成するか、あるいはまったく含水ゲルを生成せずに流出する場合があった。これらの未硬化流出地盤改良材は周辺環境の汚染を引き起こし、過去には重大な社会問題を惹起した経緯がある。
それ故、地盤改良効果の持続性が期待される水との親和性の良い含水ゲルおよび地盤中で、地盤中の滞水または伏流水により希釈されて含水ゲルの生成が阻害され難い地盤改良材およびその工法の開発が求められてきた。
一方、水との親和性が良いという視点から吸水性樹脂に期待されるが、吸水性樹脂は地盤中に注入することができなかった。すなわち地盤中に注入を実施する場合、環境汚染などを考慮すると用いることができる溶媒または分散液は唯一水だけと言っても過言ではない。吸水性樹脂の分散液として水を用いて注入用薬液を作成すると、数秒ないし数十秒で注入薬液が激しい増粘をきたし、高粘調液体となり、または容器中でゲル化し、地盤中に注入することができなかった。
表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂含水ゲルを形成させ吸水性樹脂性能を発現し、地盤改良効果を発揮させることが可能となった。すなわち、吸水性樹脂表面を被覆する親水性高分子化合物または粉末などの被覆材は、注入作業完了まで、一時的に該吸水性樹脂と水との接触を妨げる作用効果を発揮し、注入完了後は、分散液として用いた水、地盤中の滞水または伏流水などの水により、溶解または該吸水性樹脂表面から離散し該吸水性樹脂表面から消失させ、該吸水性樹脂と水が接触可能となり、該吸水性樹脂の吸水性能が発揮させられることとなる。
地盤中での長期安定性が期待される吸水性樹脂は水との親和性が極めて強く、圧力を加えても容易に水を離さないという性能を有している。表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂は分散液として用いた水、または地盤中の滞水あるいは伏流水により、徐徐に水と接触することにより、吸水性樹脂性能を発揮し該吸水性樹脂の含水ゲルが地盤中で形成される。該吸水性樹脂含水ゲルにより地盤改良効果が発現され、水との親和性の良い地盤改良材及びその工法を提供することが可能となる。また表面を親水性高分子化合物または粉末にて覆われた該吸水性樹脂を水に分散した状態の注入薬液として用いる場合、該吸水性樹脂は一時的には直接水との接触を妨げられているため、注入用薬液はすぐに増粘することはなく、水に分散した状態の分散液として地盤中に注入することが可能となり、地盤中で該吸水性樹脂の吸水性能を発揮させられることとなる。さらに上記分散液は地盤中の滞水あるいは伏流水により含水ゲルの生成が阻害され難いことから地盤改良周辺の環境汚染を引き起こすことなく地盤改良を実施することが可能である。
発明者等は、上記問題点に鑑み、本発明を完成させるに到った。すなわち、表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂は分散液として用いた水、または地盤中の滞水あるいは伏流水などにより、徐徐に吸水性樹脂性能を発揮し、該吸水性樹脂の含水ゲルが地盤中で形成される。該吸水性樹脂含水ゲルにより地盤改良効果が発現され、水との親和性の良い地盤改良材及びその工法を提供することが可能となった。
上記の表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂は、注入液の作成時は、吸水性樹脂が直接水に接していないため、注入液はすぐに増粘することはなく、水に分散した状態の分散液として地盤中に注入することが可能である。
さらに上記分散液は地盤中の滞水あるいは伏流水により吸水性樹脂含水ゲルの生成が阻害され難いことから地盤改良周辺の環境汚染を引き起こすことなく地盤改良を実施することが可能である。
地盤中に注入された該吸水性樹脂は吸水性樹脂性能として吸水性樹脂が備える吸水特性、例えば、地盤中で水に接した際の高い吸水倍率や優れた吸水速度等の特性を発揮しながら吸水性樹脂含水ゲルが形成され硬化し、地盤改良効果が発現される。また水との親和性の良い地盤改良材及びその工法を提供することが可能である。
上記の表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、放置することにより、被覆材は地盤中で分散液として用いた水、地盤中の滞水または伏流水などの水により、溶解または該吸水性樹脂表面から離散し該吸水性樹脂表面から消失させ、該吸水性樹脂と水が接触可能となり、該吸水性樹脂の吸水性能が発揮させられることとなる。
吸水性樹脂は、一般的に、自重の数十倍から数百倍の水を吸収し含水ゲルを生成可能である。つまり、吸水性樹脂の吸水倍率は数十倍から数百倍である。この性能を利用して、地盤中の水を取り込んで吸水性樹脂の含水ゲルを地盤中に生成させることにより、土木建築業界が永年の目的であった地盤中の水を制御することが可能となった。すなわち、表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂は、分散液として水を、用いられている該吸水性樹脂の吸水倍率以下の倍率で用いた分散液を注入薬液とすることにより、該吸水性樹脂は地盤中の水を吸水倍率まで取り込んで、地盤中で吸水性樹脂含水ゲルを生成することができる。このことは、表面を親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂タイプの注入液は地盤中で含水ゲルの未生成や、流失が起こり難く、周辺環境問題に対して極めて安全な薬液であるといえる。
さらに、地盤中で一度該吸水性樹脂含水ゲルから水が失なわれて、体積収縮が生じても、再び水に遭遇すると極めて短時間でその水を取り込んで、再びほぼ同体積の該吸水性樹脂含水ゲルを生成することができる。地盤中の水は季節の乾季、雨季により変動するが、この再度ほぼ同体積の含水ゲルを生成することができる性質は、地盤改良材の止水性能としては、極めて有用な性能である。すなわち、地盤中に水がない時には特に含水ゲルによる止水効果を発揮させる必要性はなく、水の多い場合に含水ゲルとして、該水を取り込んで圧力の加わった状態でもその水を離さず、止水効果を維持することは地盤改良効果としては極めて有益である。また、この水の放出、再取り込みは繰り返し行われても含水性能が大きく損なわれることはなく、吸水性樹脂含水ゲルによる地盤改良効果の長期安定性を示す要因である。
また、吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物または粉末を、別に準備された酸性物質またはアルカリ物質などにより、溶解または溶解を促進しながら注入することにより、該吸水性樹脂の性能を、地盤中で急激に発揮させることが可能で、地盤改良効果を自在に発現させることもできる。
表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂を地盤に注入する方法として、いわゆるワンショット(1ショット)工法、すなわち該吸水性樹脂を水に分散した状態で、一液の分散液だけを地盤中に注入し、放置することにより、吸水性樹脂は地盤中で水と接触し、その吸水性樹脂性能を発揮し、硬化し、地盤改良効果を発現することが可能である。この一液だけで注入作業ができることと、地盤中で硬化させられることは、地盤改良工法としては大変有益である。すなわち二液を用いる方法に比べて、注入液作成手間の減少に加えて、注入機器の小型化、軽量化などの作業効率が格段に向上する。さらに地盤改良効果を発揮させるに最も基本的な二液の配合、混合比率などのミスを完全に防止することができることが信頼性を増すことになる。
また、表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液と、別に準備された酸性物質またはアルカリ物質を含む水溶液または懸濁液を準備し、両液をY字管などを用いて会合させながら地盤中に注入する方法、いわゆる1.5ショット工法で注入することも可能である。本方法では、酸性物質またはアルカリ物質などにより、吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物または粉末を、溶解または溶解を促進しながら注入することにより、該吸水性樹脂の性能を地盤中で急激に発揮させることが可能で、地盤改良効果を自在に発現させることもできる
さらに、表面を親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態で一液の分散液として地盤中に注入した後、さらに別の酸性物質またはアルカリ物質を含む水溶液または分散液を一液として注入する方法、いわゆるツウショット(2ショット)工法で地盤中に注入することも可能である。本方法では、予め地盤中に注入された該吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物または粉末を地盤中で溶解または溶解を促進することにより、その時点から吸水性樹脂性能を発揮させることが可能である。上記のワンショット工法からツウショット工法を適宜選択することにより地盤改良目的に合致した効果を自在に発揮させることが可能となる。
上記ワンショット工法からツウショット工法のうち、どの工法を選択するかは、それぞれの工法の特徴、改良地盤の土質および地盤改良目的により選択されるべきである。
本地盤改良材及び地盤改良工法は、従来の地盤改良目的の用途、例えば軟弱地盤の止水工事、地盤強度改良工事、地下トンネル築造工事、下水道築造工事、および家屋防護工事などにももちろん使用可能である。
さらに、地盤中の水を取り込んで、地盤中で吸水性樹脂含水ゲルを生成するという性能は、地盤中の水を拘束することになり圧力を加えても容易に水を離なさないという保水力により、従来は不可能とされた地震による地盤の液状化現象の防止に極めて有効である。特に、国内石油備蓄基地の多くは埋め立て地盤に立地しており、地震時の液状化現象防止対策は永年求められてきている。現在の液状化現象防止技術は地盤中の水を減少または抜く工法が知られているが充分な効果はあげられていない。また、この水を減少または抜く工法では地盤の沈下が懸念され使用可能な場所は限定的である。さらに、同様の問題は埋め立て型の空港や原子力発電所などの国の基盤産業にもみられ、液状化現象防止技術に対する期待は極めて大きい。
また、吸水性樹脂が地盤中の水を取り込むと、該吸水性樹脂の膨潤効果により、地盤の圧密効果を発揮させることとなり、地盤強度が増加し、地盤透水係数は減少することになり、河川の堤防崩壊防止、岸壁保護などの工事に寄与できるものである。この性能は前記液状化現象防止技術にも通じるものである。
本地盤改良材及び地盤改良工法は、コンクリート構造物の亀裂からの漏水の止水材及び止水工法としても多大な貢献ができる。
吸水性樹脂性能を地盤中で発揮させると、該吸水性樹脂重量の数十倍から数百倍の水を取り込んで吸水性樹脂含水ゲルを生成するため、周辺地盤への影響も考慮されなければならないが、この点は対象地盤の土質性能、粒径分布、空隙率などを考慮して薬液の充填率、損失係数および使用する吸水性樹脂の吸水性能などから決めることができる。
上記目的を達成する吸水性樹脂地盤改良材の製造方法について鋭意検討した結果、少なくとも、吸水性樹脂表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われている場合に吸水性樹脂が備える吸水性能を地盤改良材および地盤改良工法として充分に発揮させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
吸水性樹脂地盤改良材の製造方法としては、吸水倍率が数十倍から数百倍である吸水性樹脂をアセトン、メチルアルコールまたはエチルアルコールなどの低沸点有機溶剤を分散液として、分散し、親水性高分子化合物を添加混合し、減圧するなどにより低沸点有機溶剤などの分散液を除去することにより、該吸水性樹脂の表面が親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂地盤改良材を製造することが可能である。
上記製造方法の吸水性樹脂と用いる低沸点有機溶剤などの分散液の重量比率は用いる吸水性樹脂、低沸点有機溶剤により異なるが、分散液を凡そ吸水性樹脂の数倍用いることが好ましい。さらに用いる親水性高分子化合物は、吸水性樹脂の凡そ5%〜200%が好ましい。この親水性高分子化合物と吸水性樹脂の重量比率は、被覆材としての親水性高分子化合物の被覆厚さを意味しており、この被覆厚さは被覆材の吸水性樹脂表面からの溶解または離散速度を意味することであり、地盤中で該吸水性樹脂性能を発揮させる速度にも大きく関わる要素である。すなわちこの重量比率は地盤中での吸水性能を発揮させる速度により決められるべきである。
また同様に親水性高分子化合物の代わりに無機粉末または有機粉末を添加混合後、減圧するなどにより分散液を除去する方法により、該吸水性樹脂の表面が無機粉末または有機粉末にて覆われた吸水性樹脂地盤改良材を製造することも可能である。
この際用いる分散液としての低沸点有機溶剤は親水性高分子化合物または粉末を分散させても、溶解させても良い。すなわち該低沸点有機溶剤を除去した後、該吸水性樹脂表面が親水性高分子化合物または粉末で覆われた状態であれば良い。
上記吸水性樹脂地盤改良材は用いる吸水性樹脂と表面を被覆する親水性高分子化合物または粉末の重量比率を変化させることにより該吸水性樹脂の、注入時の分散液としての水、また注入後の地盤中の滞水または伏流水による水による該吸水性樹脂表面への水の直接接触するまでの時間が異なることになる。すなわち、該吸水性樹脂に対して表面を被覆する親水性高分子化合物または粉末の重量比率が大きい場合は、該吸水性樹脂と水との直接接触するまでの時間が長くなり、注入時には注入作業時間が長く取れることとなり、作業性は良くなるとも言える。また注入後の地盤中では該吸水性樹脂の吸水性能が徐徐に発揮されることになる。
上記吸水性樹脂地盤改良材の、用いる吸水性樹脂と表面を被覆する親水性高分子化合物または粉末の重量比率は、用いる吸水性樹脂の給水倍率、形状、平均粒径または粒度分布などの要因によっても異なるが、吸水性樹脂と表面を覆う親水性高分子化合物または粉末、またはその合計との重量比が5/95〜95/5の範囲内であれば、特に制限はない。上記重量比率よりも吸水性樹脂比率が少ない場合、充分な地盤改良効果を発揮させることができない。また吸水性樹脂比率が多い場合、注入作業中の容器中でゲル化する恐れがある。また吸水性樹脂比率が多くなりすぎると、該吸水性樹脂表面を親水性高分子化合物または粉末で充分に覆うことができなくなるため、好ましくない。尚、上記吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物または粉末は、それぞれの単独または二種以上を用いても良いが、上記被覆材の親水性高分子化合物と粉末を組み合わせて用いることも可能である。その組み合わせは、特に限定されるものではなく、改良効果、用途、注入作業時間、工法等を考慮に入れて適宜選択すればよい。
吸水性樹脂の表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末で被覆すると上記吸水性樹脂地盤改良材の粒径は大きくなり、地盤中への注入が懸念されるが、現在の地盤改良工法に一般的に用いられている工法としてセメント粒子または高炉スラグを用いる工法があり、このセメント粒子または高炉スラグの粒径が目安となる。
本発明に用いられる吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸及びその誘導体、デンプン−アクリル酸共重合体およびその誘導体、デンプン−アクリロニトリル共重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体等が挙げられる。このうち、ポリアクリル酸及びその誘導体、デンプン−アクリル酸共重合体、および、これらの混合物が、吸水特性や安全性等の点で好ましい。これらの吸水性樹脂は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
また本発明の目的は耐久性の良い地盤改良材を目標としているが、従来の地盤改良目的と同じく、必ずしも長期耐久性を必要としないまたは地盤中に吸水性樹脂を長期残存させたくない用途用としては、ポリ乳酸またはその誘導体、架橋ポリアミノ酸重合体に代表される生分解性の吸水性樹脂も使用可能である。
本発明に用いられる被覆材とは、吸水性樹脂表面を覆い、注入作業中は該吸水性樹脂と水との接触を妨げることを目的とし、該吸水性樹脂を地盤中に注入後は、該被覆材は注入時の分散液として用いた水、地盤中の滞水または伏流水などにより、溶解するかまたは該吸水性樹脂表面から離散し、該吸水性樹脂と水の接触を妨げなくなる作用を持つことが必須である。水と接触後、該吸水性樹脂はその吸水性能を発揮し、吸水性樹脂含水ゲルを地盤中で生成し、硬化し、地盤改良効果を発現する。
被覆材としては、前述の作用効果を有するものであれば良く、特に限定されるものではないが、安価で、安全性に優れたものが好ましい。
被覆材としては、吸水性樹脂地盤改良材の製造時は、該吸水性樹脂の分散液として用いられる低沸点有機溶剤に分散または溶解し、該低沸点有機溶剤を除去後、該吸水性樹脂の表面を被覆し、一時的に該吸水性樹脂と水との接触を妨げることができるもので、地盤中に注入後は、水と該吸水性樹脂とが接触し、吸水性樹脂の吸水性能を発揮させることができるものであれば良く、例えば親水性を有する化合物などがあげられるが特に限定されるものではない。例えば、水溶性ポリビニルアルコール(PVA、ポバール)やカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸(塩)、架橋ポリアクリル酸(塩)、アルギン酸(塩)、デンプン、各種水性エマルジョン、ポリアクリルアミド、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、デキストリン、カゼイン等が挙げられる。これら化合物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
また同様に被覆材としての無機粉末は、例えば、酸化物無機材料としてシリカ、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、アパタイト、ガラスなど、炭素、窒素系材料としてカーボン、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ケイ素などをあげることができる。また、タルク、炭酸カルシウムなども用いることができる。さらに発泡させた無機粉末は多孔質となり吸水性樹脂性能、特に吸水速度を適宜発現させることが可能となり、工法の適用範囲が格段に拡大される。また有機粉末としては、パルプ綿、故紙、廃パルプなどのパルプ繊維が好適である。これらの粉末は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。しかし、無機粉末は水に溶けて電解質溶液として、含まれる吸水性樹脂の吸水倍率に影響を与えるものもあり、この点を考慮して無機粉末および吸水性樹脂の種類を選択することが好ましい。
また、上記親水性高分子化合物または粉末を用いて吸水性樹脂地盤改良材を製造する場合、親水性高分子化合物などの液状物と固体粉末を同時に用いることも可能である。すなわち先に親水性高分子化合物の液状物で該吸水性樹脂表面を被覆し(樹脂被覆吸水性樹脂と称す。)さらに該樹脂被覆吸水性樹脂を固体粉末で被覆し、該吸水性樹脂と水との接触を時間的に確実に妨げることを目的とすることができる。また同様の目的でその逆の被覆も可能である。すなわち先に固体粉末で該吸水性樹脂表面を被覆し(粉末被覆吸水性樹脂と称す。)さらに該粉末被覆吸水性樹脂を親水性高分子化合物の液状物で被覆する方法である。両方法とも目的は全く同じである。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(比較例1) 現在、都市土木の地盤改良工法用グラウト剤は、市販のJIS3号水ガラス80リットルに水120リットルを加え主剤液とし、また一方、炭酸水素ナトリウム20Kgを、水180リットルに溶解し、硬化剤液とした2液型が多く用いられている。この主剤液、硬化剤液の各々100mlを500mlビーカーに量り取り、室温にて攪拌混合したところ、約60秒で硬化し、水ガラス含水ゲルを生成し、ビーカー全体が硬化した。
(比較例2) (比較例1)にて作成した硬化物(水ガラス含水ゲル)200mlを、500mlビーカーに蓋をせずに解放状態のまま、7日間室温で気中放置したところ、重量が約25%減少した。該水ガラス含水ゲルの体積もほぼ25%収縮した。
(比較例3) (比較例2)の気中放置後の水ガラス含水ゲル150gにイオン交換水50gを加え、2時間室温にそのまま放置した。該水ガラス含水ゲルに再度取り込まれずに残った上澄みの水を取り除き、その水の重量測定の結果、約48gであった。すなわち気中放置後の該水ガラス含水ゲルは再度わずかに水を取り込んで再び水ガラス含水ゲルを生成するが、長時間を要するし、元の体積とほぼ同じ全体的な含水ゲルを生ずることはなかった。
(比較例4) 500mlのビーカー中で、吸水性樹脂としてアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(アクアリックCA−K4:(株)日本触媒)2gをイオン交換水200mlに徐徐に添加混合し一液の主剤液を作成した。本主剤液は室温で添加混合中から急激に増粘が始まり、約20秒後には流動性が失われビーカー中で吸水性樹脂含水ゲルを生成し、硬化し、地盤注入液としては使用不可能であった。
(比較例4)にて作成した吸水性樹脂含水ゲル200mlを、500mlビーカー中に蓋をせずに解放状態のまま、7日間室温で気中放置したところ、重量が約35%減少した。吸水性樹脂含水ゲルの体積もほぼ35%収縮した。本気中放置後の吸水性樹脂含水ゲル130gにイオン交換水70gを加えたところ、約40秒後には再び吸水性樹脂含水ゲルを生成し、ビーカー内の内容物全体が硬化し、外見上ほぼ均一のゲルとなった。この気中放置し、体積収縮後の吸水性樹脂に重量減少したとほぼ同量の水を加えて再度吸水性樹脂含水ゲルを生成させる方法の操作を5回繰り返したが、いずれの場合も吸水性樹脂含水ゲルを生成し、ビーカー内の内容物全体が硬化し、外見上ほぼ均一のゲルとなった。
500mlのビーカー中で、メタノール300gに、親水性高分子化合物としてポリアクリル酸ナトリウム(分子量:約10,000;試薬和光純薬)4gを溶解した。この溶液に吸水性樹脂として(比較例4)のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(アクアリックCA−K4:(株)日本触媒)2gを分散混合後、本ビーカーをデシケーター中に移し、減圧によりメタノールを除去し、親水性高分子化合物被覆吸水性樹脂を得た。該親水性高分子化合物被覆吸水性樹脂6gをイオン交換水200mlに徐徐に添加混合し、水分散の主剤液を作成した。本主剤液は30分後でも、増粘は起きず、地盤注入液として充分使用可能であった。本主剤液200mlはそのまま常温放置の結果、約2時間後吸水性樹脂含水ゲルを生成し、ビーカー全体が硬化した。
500mlのビーカー中で、メタノール300gに、無機粉末として炭酸カルシウム(試薬和光純薬)5gを分散混合した。この分散液に吸水性樹脂として[比較例4]のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(アクアリックCA−K4:(株)日本触媒)2gを分散混合後、本ビーカーをデシケーター中に移し、減圧によりメタノールを除去し、無機粉末被覆吸水性樹脂を得た。該無機粉末被覆吸水性樹脂7gをイオン交換水200mlに徐徐に添加混合し、水分散の主剤液を作成した。本主剤液は5分後でも、増粘は起きず、地盤注入液として充分使用可能であった。本主剤液200mlはそのまま常温放置の結果、約10分後吸水性樹脂含水ゲルを生成し、ビーカー全体が硬化した。
(比較例5) 以下にサンドゲルについて詳細に述べる。1辺が10cmの四角、高さ15cmの鋼鉄製枠容器を準備し、その中に豊浦標準砂をいっぱいに充填し、水で締め固めをし、2日放置し砂質土モデル地盤を用意した。モデル地盤の中心部かつその容器低部から5cm上がった位置にグラウト注入管を設置した。比較例1の主剤液及び硬化剤液の各々250mlを容器に用意し、液温が約20℃に調製した後、両液を容量比1:1にて送液ポンプで上記砂質土モデル地盤中に、グラウト注入管から圧入した。注入圧力2〜5kgf/cm2でグラウト注入管周辺の全方向に注入しながら少しずつ該注入管を引上げて、10cm引上げた所で全ての作業を停止すると共にグラウト注入管を引き抜いて放置した。砂質土モデル地盤中の水及び過剰な主剤液及び硬化剤液の混合液は鋼鉄製枠容器の上蓋から漏出した。5時間経過後に該モデル地盤構築用容器を解体して後、該砂質土モデル地盤に水道水を勢いよく吹き付けて非固結部分を洗い流した結果、該モデル地盤構築用容器の中心部が固結した固結地盤体が表れた。その体積は該モデル地盤構築用容器の凡そ40%程度であった。またその固結地盤体から3個のサンドゲルコアを採取し1軸圧縮強度特性を測定した結果、3〜6kgf/cm2と測定値にはバラツキがあった。なお、固結地盤体の総重量は1.5Kgであった。
(比較例5)で準備した鋼鉄製枠容器に、実施例2で作成した親水性高分子化合物被覆吸水性樹脂15gを純水500mlに分散し、一液の主剤液を容器に用意し、液温が約20℃に調製した後、送液ポンプで上記砂質土モデル地盤中に、グラウト注入管から圧入した。注入圧力2〜3kgf/cm2でグラウト注入管周辺の全方向に注入しながら少しずつ該注入管を引上げて、10cm引上げた所で全ての作業を停止すると共にグラウト注入管を引き抜いて放置した。砂質土モデル地盤中の水及び過剰な主剤液は鋼鉄製枠容器の上蓋から漏出した。 5時間経過後に該モデル地盤構築用容器を解体して後、該砂質土モデル地盤に水道水を勢いよく吹き付けて非固結部分を洗い流したが、該モデル地盤構築用容器全体が一体化された固結地盤体が表れた。すなわちその体積は該モデル地盤構築用容器の凡そ100%であった。その固結地盤体から3個のサンドゲルコアを採取し1軸圧縮強度特性を測定した結果、8〜10kgf/cm2と測定値にはバラツキはあるが、その値は充分な改良効果を示すものであった。なお、固結地盤体の総重量は3.9Kgであった。
(実施例5)で作成した該固結地盤体をそのまま7日間室温で気中放置したところ、該固結地盤体にはやや収縮がみられた。放置固結体の総重量は3.75Kgであった。この放置固結体をモデル地盤構築用容器に入れ、水道水を0.3Kg周囲に満たしたところ約10分後ほぼ収縮前の大きさに復元し、総重量も3.9Kgに回復した。外観的にも特に変化は見られなかった。
本発明の吸水性樹脂を用いた地盤改良材及び地盤改良工法は、従来の地盤改良目的の用途、例えば軟弱地盤の止水工事、地盤強度改良工事、地下トンネル築造工事、下水道築造工事、および家屋防護工事などにももちろん使用可能であるが、地盤改良効果の持続性、地盤中の水を取り込んで含水ゲルを生成すること、吸水性樹脂が圧力を加えても容易に水を離なさない保水性を有するなどの特徴により、地震による地盤の液状化現象の防止に、また河川の堤防の安定化などに寄与できるものである。さらに地盤中で含水ゲルの未生成や、流失が起こり難く、周辺環境問題に対して汚染を惹起し難い極めて安全な薬液であるといえる。分散用に用いた水以外の地盤中の水を取り込むことができる性質は止水材、漏水防止剤などの広い応用が可能で、地盤改良材及び地盤改良工法のさらなる用途拡大に寄与できるものである。
本発明は、地盤強度の改良または地盤の透水性の減少に用いられる地盤改良分野に好適な、表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入する薬液注入材及び薬液注入工法に関するものである。
従来の一般的な薬液注入材及び薬液注入工法は、対象とする地盤の性質によって種々の薬液注入材が選定使用されている。例えば、水ガラスを希釈した水溶液の主剤液と、リン酸や硫酸などの無機酸類、炭酸水素ナトリウムなどの重炭酸塩類を用いる水溶液硬化剤液、またはセメントやスラグなどの水懸濁液などの硬化剤液とをY字管などを用いて、両薬液を合流させながら同時に地盤中に注入し、両薬液を反応させて、数秒から数分単位で硬化させ、地盤中で水ガラスの含水ゲルを生成させて、地盤強度の改良および地盤透水性の減少を図り地盤改良効果を発揮させてきた。
しかし、該水ガラス含水ゲルは地盤中での長期安定性に欠け、特に滞水または伏流水のある地盤中では、数ヶ月で地盤改良効果が減少または失われるという重大な欠陥を有していた。
また、一度該水ガラス含水ゲル中から水が流失すると、再び水に遭遇しても、その水を取り込んで、再度同じ体積の該水ガラス含水ゲルを生成することはできなかった。そのため水ガラスを主剤として用いる薬液注入工法は「仮設工法」と称され地盤改良効果の持続性、長期性、恒久性はないとされ、限られた用途にしか適用されなかった。
さらに、従来の一般的な薬液注入材は、適宜主剤液および硬化剤液濃度を決め地盤中で水ガラスの含水ゲルを生成させて地盤強度の改良および地盤透水性の減少を図り地盤改良効果を発揮させてきた。しかし両薬液の注入液濃度は、地盤中の滞水または伏流水により希釈されて、注入先端薬液(注入初流)は濃度不足となり、強度不足の含水ゲルを生成するか、あるいはまったく含水ゲルを生成せずに流出する場合があった。これらの未硬化流出薬液注入材は周辺環境の汚染を引き起こし、過去には重大な社会問題を惹起した経緯がある。
それ故、地盤改良効果の持続性が期待される水との親和性の良い含水ゲルおよび地盤中で、地盤中の滞水または伏流水により希釈されて含水ゲルの生成が阻害され難い薬液注入材およびその工法の開発が求められてきた。
一方、水との親和性が良いという視点から吸水性樹脂に期待されるが、吸水性樹脂は地盤中に注入することができなかった。すなわち地盤中に注入を実施する場合、環境汚染などを考慮すると用いることができる溶媒または分散液は唯一水だけと言っても過言ではない。吸水性樹脂の分散液として水を用いて注入用薬液を作成すると、数秒ないし数十秒で注入薬液が激しい増粘をきたし、高粘調液体となり、または容器中でゲル化し、地盤中に注入することができなかった。
表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂含水ゲルを形成させ吸水性樹脂性能を発現し、地盤改良効果を発揮させることが可能となった。すなわち、吸水性樹脂表面を被覆する親水性高分子化合物の被覆材は、注入作業完了まで、一時的に該吸水性樹脂と水との接触を妨げる作用効果を発揮し、注入完了後は、分散液として用いた水、地盤中の滞水または伏流水などの水により、溶解または該吸水性樹脂表面から離散し該吸水性樹脂表面から消失させ、該吸水性樹脂と水が接触可能となり、該吸水性樹脂の吸水性能が発揮させられることとなる。
地盤中での長期安定性が期待される吸水性樹脂は水との親和性が極めて強く、圧力を加えても容易に水を離さないという性能を有している。表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂は分散液として用いた水、または地盤中の滞水あるいは伏流水により、徐徐に水と接触することにより、吸水性樹脂性能を発揮し該吸水性樹脂の含水ゲルが地盤中で形成される。該吸水性樹脂含水ゲルにより地盤改良効果が発現され、水との親和性の良い薬液注入材及びその工法を提供することが可能となる。また表面を親水性高分子化合物にて覆われた該吸水性樹脂を水に分散した状態の注入薬液として用いる場合、該吸水性樹脂は一時的には直接水との接触を妨げられているため、注入用薬液はすぐに増粘することはなく、水に分散した状態の分散液として地盤中に注入することが可能となり、地盤中で該吸水性樹脂の吸水性能を発揮させられることとなる。さらに上記分散液は地盤中の滞水あるいは伏流水により含水ゲルの生成が阻害され難いことから地盤改良周辺の環境汚染を引き起こすことなく地盤改良を実施することが可能である。
発明者等は、上記問題点に鑑み、本発明を完成させるに到った。すなわち、表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、地盤中で該吸水性樹脂は分散液として用いた水、または地盤中の滞水あるいは伏流水などにより、徐徐に吸水性樹脂性能を発揮し、該吸水性樹脂の含水ゲルが地盤中で形成される。該吸水性樹脂含水ゲルにより地盤改良効果が発現され、水との親和性の良い薬液注入材及びその工法を提供することが可能となった。
上記の表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂は、注入薬液の作成時は、吸水性樹脂が直接水に接していないため、注入液はすぐに増粘することはなく、水に分散した状態の分散液として地盤中に注入することが可能である。
さらに上記分散液は地盤中の滞水あるいは伏流水により吸水性樹脂含水ゲルの生成が阻害され難いことから地盤改良周辺の環境汚染を引き起こすことなく地盤改良を実施することが可能である。
地盤中に注入された該吸水性樹脂は吸水性樹脂性能として吸水性樹脂が備える吸水特性、例えば、地盤中で水に接した際の高い吸水倍率や優れた吸水速度等の特性を発揮しながら吸水性樹脂含水ゲルが形成され硬化し、地盤改良効果が発現される。また水との親和性の良い薬液注入材及びその工法を提供することが可能である。
上記の表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤中に注入し、放置することにより、被覆材は地盤中で分散液として用いた水、地盤中の滞水または伏流水などの水により、溶解または該吸水性樹脂表面から離散し該吸水性樹脂表面から消失させ、該吸水性樹脂と水が接触可能となり、該吸水性樹脂の吸水性能が発揮させられることとなる。
吸水性樹脂は、一般的に、自重の数十倍から数百倍の水を吸収し含水ゲルを生成可能である。つまり、吸水性樹脂の吸水倍率は数十倍から数百倍である。この性能を利用して、地盤中の水を取り込んで吸水性樹脂の含水ゲルを地盤中に生成させることにより、土木建築業界が永年の目的であった地盤中の水を制御することが可能となった。すなわち、表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂は、分散液として水を、用いられている該吸水性樹脂の吸水倍率以下の倍率で用いた分散液を注入薬液とすることにより、該吸水性樹脂は地盤中の水を吸水倍率まで取り込んで、地盤中で吸水性樹脂含水ゲルを生成することができる。このことは、表面を親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂タイプの注入液は地盤中で含水ゲルの未生成や、流失が起こり難く、周辺環境問題に対して極めて安全な薬液であるといえる。
さらに、地盤中で一度該吸水性樹脂含水ゲルから水が失なわれて、体積収縮が生じても、再び水に遭遇すると極めて短時間でその水を取り込んで、再びほぼ同体積の該吸水性樹脂含水ゲルを生成することができる。地盤中の水は季節の乾季、雨季により変動するが、この再度ほぼ同体積の含水ゲルを生成することができる性質は、薬液注入材の止水性能としては、極めて有用な性能である。すなわち、地盤中に水がない時には特に含水ゲルによる止水効果を発揮させる必要性はなく、水の多い場合に含水ゲルとして、該水を取り込んで圧力の加わった状態でもその水を離さず、止水効果を維持することは地盤改良効果としては極めて有益である。また、この水の放出、再取り込みは繰り返し行われても含水性能が大きく損なわれることはなく、吸水性樹脂含水ゲルによる地盤改良効果の長期安定性を示す要因である。
また、吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物を、別に準備された酸性物質またはアルカリ物質などにより、溶解または溶解を促進しながら注入することにより、該吸水性樹脂の性能を、地盤中で急激に発揮させることが可能で、地盤改良効果を自在に発現させることもできる。
表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液として地盤に注入する方法として、いわゆるワンショット(1ショット)工法、すなわち該吸水性樹脂を水に分散した状態で、一液の分散液だけを地盤中に注入し、放置することにより、吸水性樹脂は地盤中で水と接触し、その吸水性樹脂性能を発揮し、硬化し、地盤改良効果を発現することが可能である。この一液だけで注入作業ができることと、地盤中で硬化させられることは、薬液注入工法としては大変有益である。すなわち二液を用いる方法に比べて、注入液作成手間の減少に加えて、注入機器の小型化、軽量化などの作業効率が格段に向上する。さらに地盤改良効果を発揮させるに最も基本的な二液の配合、混合比率などのミスを完全に防止することができることが信頼性を増すことになる。
また、表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態の分散液と、別に準備された酸性物質またはアルカリ物質を含む水溶液または懸濁液を準備し、両液をY字管などを用いて会合させながら地盤中に注入する方法、いわゆる1.5ショット工法で注入することも可能である。本方法では、酸性物質またはアルカリ物質などにより、吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物を、溶解または溶解を促進しながら注入することにより、該吸水性樹脂の性能を地盤中で急激に発揮させることが可能で、地盤改良効果を自在に発現させることもできる
さらに、表面を親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂を水に分散した状態で一液の分散液として地盤中に注入した後、さらに別の酸性物質またはアルカリ物質を含む水溶液または分散液を一液として注入する方法、いわゆるツウショット(2ショット)工法で地盤中に注入することも可能である。本方法では、予め地盤中に注入された該吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物を地盤中で溶解または溶解を促進することにより、その時点から吸水性樹脂性能を発揮させることが可能である。上記のワンショット工法からツウショット工法を適宜選択することにより地盤改良目的に合致した効果を自在に発揮させることが可能となる。
上記ワンショット工法からツウショット工法のうち、どの工法を選択するかは、それぞれの工法の特徴、改良地盤の土質および地盤改良目的により選択されるべきである。
本薬液注入材及び薬液注入工法は、従来の地盤改良目的の用途、例えば軟弱地盤の止水工事、地盤強度改良工事、地下トンネル築造工事、下水道築造工事、および家屋防護工事などにももちろん使用可能である。
さらに、地盤中の水を取り込んで、地盤中で吸水性樹脂含水ゲルを生成するという性能は、地盤中の水を拘束することになり圧力を加えても容易に水を離なさないという保水力により、従来は不可能とされた地震による地盤の液状化現象の防止に極めて有効である。特に、国内石油備蓄基地の多くは埋め立て地盤に立地しており、地震時の液状化現象防止対策は永年求められてきている。現在の液状化現象防止技術は地盤中の水を減少または抜く工法が知られているが充分な効果はあげられていない。また、この水を減少または抜く工法では地盤の沈下が懸念され使用可能な場所は限定的である。さらに、同様の問題は埋め立て型の空港や原子力発電所などの国の基盤産業にもみられ、液状化現象防止技術に対する期待は極めて大きい。
また、吸水性樹脂が地盤中の水を取り込むと、該吸水性樹脂の膨潤効果により、地盤の圧密効果を発揮させることとなり、地盤強度が増加し、地盤透水係数は減少することになり、河川の堤防崩壊防止、岸壁保護などの工事に寄与できるものである。この性能は前記液状化現象防止技術にも通じるものである。
本薬液注入材及び薬液注入工法は、コンクリート構造物の亀裂からの漏水の止水材及び止水工法としても多大な貢献ができる。
吸水性樹脂性能を地盤中で発揮させると、該吸水性樹脂重量の数十倍から数百倍の水を取り込んで吸水性樹脂含水ゲルを生成するため、周辺地盤への影響も考慮されなければならないが、この点は対象地盤の土質性能、粒径分布、空隙率などを考慮して薬液の充填率、損失係数および使用する吸水性樹脂の吸水性能などから決めることができる。
上記目的を達成する吸水性樹脂薬液注入材の製造方法について鋭意検討した結果、少なくとも、吸水性樹脂表面を被覆材として親水性高分子化合物にて覆われている場合に吸水性樹脂が備える吸水性能を薬液注入材及び薬液注入工法として充分に発揮させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
吸水性樹脂薬液注入材の製造方法としては、吸水倍率が数十倍から数百倍である吸水性樹脂をアセトン、メチルアルコールまたはエチルアルコールなどの低沸点有機溶剤を分散液として、分散し、親水性高分子化合物を添加混合し、減圧するなどにより低沸点有機溶剤などの分散液を除去することにより、該吸水性樹脂の表面が親水性高分子化合物にて覆われた吸水性樹脂薬液注入材を製造することが可能である。
上記製造方法の吸水性樹脂と用いる低沸点有機溶剤などの分散液の重量比率は用いる吸水性樹脂、低沸点有機溶剤により異なるが、分散液を凡そ吸水性樹脂の数倍用いることが好ましい。さらに用いる親水性高分子化合物は、吸水性樹脂の凡そ5%〜200%が好ましい。この親水性高分子化合物と吸水性樹脂の重量比率は、被覆材としての親水性高分子化合物の被覆厚さを意味しており、この被覆厚さは被覆材の吸水性樹脂表面からの溶解または離散速度を意味することであり、地盤中で該吸水性樹脂性能を発揮させる速度にも大きく関わる要素である。すなわちこの重量比率は地盤中での吸水性能を発揮させる速度により決められるべきである。
上記吸水性樹脂薬液注入材は用いる吸水性樹脂と表面を被覆する親水性高分子化合物の重量比率を変化させることにより該吸水性樹脂の、注入時の分散液としての水、また注入後の地盤中の滞水または伏流水による水による該吸水性樹脂表面への水の直接接触するまでの時間が異なることになる。すなわち、該吸水性樹脂に対して表面を被覆する親水性高分子化合物の重量比率が大きい場合は、該吸水性樹脂と水との直接接触するまでの時間が長くなり、注入時には注入作業時間が長く取れることとなり、作業性は良くなるとも言える。また注入後の地盤中では該吸水性樹脂の吸水性能が徐徐に発揮されることになる。
上記吸水性樹脂薬液注入材の、用いる吸水性樹脂と表面を被覆する親水性高分子化合物の重量比率は、用いる吸水性樹脂の吸水倍率、形状、平均粒径または粒度分布などの要因によっても異なるが、吸水性樹脂と表面を覆う親水性高分子化合物の重量比が15/85〜85/15の範囲内であれば、特に制限はない。上記重量比率よりも吸水性樹脂比率が少ない場合、充分な地盤改良効果を発揮させることができない。また吸水性樹脂比率が多い場合、注入作業中の容器中でゲル化する恐れがある。また吸水性樹脂比率が多くなりすぎると、該吸水性樹脂表面を親水性高分子化合物で充分に覆うことができなくなるため、好ましくない。尚、上記吸水性樹脂の表面を覆う親水性高分子化合物は、二種以上を用いても良い
吸水性樹脂の表面を被覆材として親水性高分子化合物で被覆すると上記吸水性樹脂薬液注入材の粒径は大きくなり、地盤中への注入が懸念されるが、現在の薬液注入工法に一般的に用いられている工法としてセメント粒子または高炉スラグを用いる工法があり、このセメント粒子または高炉スラグの粒径が目安となる。
本発明に用いられる吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸及びその誘導体、デンプン−アクリル酸共重合体およびその誘導体、デンプン−アクリロニトリル共重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体等が挙げられる。このうち、ポリアクリル酸及びその誘導体、デンプン−アクリル酸共重合体、および、これらの混合物が、吸水特性や安全性等の点で好ましい。これらの吸水性樹脂は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
また本発明の目的は耐久性の良い薬液注入材を目標としているが、従来の地盤改良目的と同じく、必ずしも長期耐久性を必要としないまたは地盤中に吸水性樹脂を長期残存させたくない用途用としては、ポリ乳酸またはその誘導体、架橋ポリアミノ酸重合体に代表される生分解性の吸水性樹脂も使用可能である。
本発明に用いられる被覆材とは、吸水性樹脂表面を覆い、注入作業中は該吸水性樹脂と水との接触を妨げることを目的とし、該吸水性樹脂を地盤中に注入後は、該被覆材は注入時の分散液として用いた水、地盤中の滞水または伏流水などにより、溶解するかまたは該吸水性樹脂表面から離散し、該吸水性樹脂と水の接触を妨げなくなる作用を持つことが必須である。水と接触後、該吸水性樹脂はその吸水性能を発揮し、吸水性樹脂含水ゲルを地盤中で生成し、硬化し、地盤改良効果を発現する。
被覆材としては、前述の作用効果を有するものであれば良く、特に限定されるものではないが、安価で、安全性に優れたものが好ましい。
被覆材としては、吸水性樹脂薬液注入材の製造時は、該吸水性樹脂の分散液として用いられる低沸点有機溶剤に分散または溶解し、該低沸点有機溶剤を除去後、該吸水性樹脂の表面を被覆し、一時的に該吸水性樹脂と水との接触を妨げることができるもので、地盤中に注入後は、水と該吸水性樹脂とが接触し、吸水性樹脂の吸水性能を発揮させることができるものであれば良く、例えば親水性を有する化合物などがあげられるが特に限定されるものではない。例えば、水溶性ポリビニルアルコール(PVA、ポバール)やカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸(塩)、架橋ポリアクリル酸(塩)、アルギン酸(塩)、デンプン、各種水性エマルジョン、ポリアクリルアミド、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、デキストリン、カゼイン等が挙げられる。これら化合物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(比較例1)現在、都市土木の地盤改良工法用グラウト剤は、市販のJIS3号水ガラス80リットルに水120リットルを加え主剤液とし、また一方、炭酸水素ナトリウム20Kgを、水180リットルに溶解し、硬化剤液とした2液型が多く用いられている。この主剤液、硬化剤液の各々100mlを500mlビーカーに量り取り、室温にて攪拌混合したところ、約60秒で硬化し、水ガラス含水ゲルを生成し、ビーカー全体が硬化した。
(比較例2)(比較例1)にて作成した硬化物(水ガラス含水ゲル)200mlを、500mlビーカーに蓋をせずに解放状態のまま、7日間室温で気中放置したところ、重量が約25%減少した。該水ガラス含水ゲルの体積もほぼ25%収縮した。
(比較例3)(比較例2)の気中放置後の水ガラス含水ゲル150gにイオン交換水50gを加え、2時間室温にそのまま放置した。該水ガラス含水ゲルに再度取り込まれずに残った上澄みの水を取り除き、その水の重量測定の結果、約48gであった。すなわち気中放置後の該水ガラス含水ゲルは再度わずかに水を取り込んで再び水ガラス含水ゲルを生成するが、長時間を要するし、元の体積とほぼ同じ全体的な含水ゲルを生ずることはなかった。
(比較例4)500mlのビーカー中で、吸水性樹脂としてアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(アクアリックCA−K4:(株)日本触媒)2gをイオン交換水200mlに徐徐に添加混合し一液の主剤液を作成した。本主剤液は室温で添加混合中から急激に増粘が始まり、約20秒後には流動性が失われビーカー中で吸水性樹脂含水ゲルを生成し、硬化し、薬液注入液としては使用不可能であった。
(比較例4)にて作成した吸水性樹脂含水ゲル200mlを、500mlビーカー中に蓋をせずに解放状態のまま、7日間室温で気中放置したところ、重量が約35%減少した。吸水性樹脂含水ゲルの体積もほぼ35%収縮した。本気中放置後の吸水性樹脂含水ゲル130gにイオン交換水70gを加えたところ、約40秒後には再び吸水性樹脂含水ゲルを生成し、ビーカー内の内容物全体が硬化し、外見上ほぼ均一のゲルとなった。この気中放置し、体積収縮後の吸水性樹脂に重量減少したとほぼ同量の水を加えて再度吸水性樹脂含水ゲルを生成させる方法の操作を5回繰り返したが、いずれの場合も吸水性樹脂含水ゲルを生成し、ビーカー内の内容物全体が硬化し、外見上ほぼ均一のゲルとなった。
500mlのビーカー中で、メタノール300gに、親水性高分子化合物としてポリアクリル酸ナトリウム(分子量:約10,000; 試薬和光純薬)4gを溶解した。この溶液に吸水性樹脂として(比較例4)のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(アクアリックCA−K4:(株)日本触媒)2gを分散混合後、本ビーカーをデシケーター中に移し、減圧によりメタノールを除去し、親水性高分子化合物被覆吸水性樹脂を得た。該親水性高分子化合物被覆吸水性樹脂6gをイオン交換水200mlに徐徐に添加混合し、水分散の主剤液を作成した。本主剤液は30分後でも、増粘は起きず、薬液注入液として充分使用可能であった。本主剤液200mlはそのまま常温放置の結果、約2時間後吸水性樹脂含水ゲルを生成し、ビーカー全体が硬化した。
(比較例5)以下にサンドゲルについて詳細に述べる。1辺が10cmの四角、高さ15cmの鋼鉄製枠容器を準備し、その中に豊浦標準砂をいっぱいに充填し、水で締め固めをし、2日放置し砂質土モデル地盤を用意した。モデル地盤の中心部かつその容器低部から5cm上がった位置にグラウト注入管を設置した。比較例1の主剤液及び硬化剤液の各々250mlを容器に用意し、液温が約20℃に調製した後、両液を容量比1:1にて送液ポンプで上記砂質土モデル地盤中に、グラウト注入管から圧入した。注入圧力2〜5kgf/cm2でグラウト注入管周辺の全方向に注入しながら少しずつ該注入管を引上げて、10cm引上げた所で全ての作業を停止すると共にグラウト注入管を引き抜いて放置した。砂質土モデル地盤中の水及び過剰な主剤液及び硬化剤液の混合液は鋼鉄製枠容器の上蓋から漏出した。5時間経過後に該モデル地盤構築用容器を解体して後、該砂質土モデル地盤に水道水を勢いよく吹き付けて非固結部分を洗い流した結果、該モデル地盤構築用容器の中心部が固結した固結地盤体が表れた。その体積は該モデル地盤構築用容器の凡そ40%程度であった。またその固結地盤体から3個のサンドゲルコアを採取し1軸圧縮強度特性を測定した結果、3〜6kgf/cm2と測定値にはバラツキがあった。なお、固結地盤体の総重量は1.5Kgであった。
(比較例5)で準備した鋼鉄製枠容器に、実施例2で作成した親水性高分子化合物被覆吸水性樹脂15gを純水500mlに分散し、一液の主剤液を容器に用意し、液温が約20℃に調製した後、送液ポンプで上記砂質土モデル地盤中に、グラウト注入管から圧入した。注入圧力2〜3kgf/cm2でグラウト注入管周辺の全方向に注入しながら少しずつ該注入管を引上げて、10cm引上げた所で全ての作業を停止すると共にグラウト注入管を引き抜いて放置した。砂質土モデル地盤中の水及び過剰な主剤液は鋼鉄製枠容器の上蓋から漏出した。 5時間経過後に該モデル地盤構築用容器を解体して後、該砂質土モデル地盤に水道水を勢いよく吹き付けて非固結部分を洗い流したが、該モデル地盤構築用容器全体が一体化された固結地盤体が表れた。すなわちその体積は該モデル地盤構築用容器の凡そ100%であった。その固結地盤体から3個のサンドゲルコアを採取し1軸圧縮強度特性を測定した結果、8〜10kgf/cm2と測定値にはバラツキはあるが、その値は充分な改良効果を示すものであった。なお、固結地盤体の総重量は3.9Kgであった。
(実施例5)で作成した該固結地盤体をそのまま7日間室温で気中放置したところ、該固結地盤体にはやや収縮がみられた。放置固結体の総重量は3.75Kgであった。この放置固結体をモデル地盤構築用容器に入れ、水道水を0.3Kg周囲に満たしたところ約10分後ほぼ収縮前の大きさに復元し、総重量も3.9Kgに回復した。外観的にも特に変化は見られなかった。
本発明の吸水性樹脂を用いた薬液注入材及び薬液注入工法は、従来の地盤改良目的の用途、例えば軟弱地盤の止水工事、地盤強度改良工事、地下トンネル築造工事、下水道築造工事、および家屋防護工事などにももちろん使用可能であるが、地盤改良効果の持続性、地盤中の水を取り込んで含水ゲルを生成すること、吸水性樹脂が圧力を加えても容易に水を離なさない保水性を有するなどの特徴により、地震による地盤の液状化現象の防止に、また河川の堤防の安定化などに寄与できるものである。さらに地盤中で含水ゲルの未生成や、流失が起こり難く、周辺環境問題に対して汚染を惹起し難い極めて安全な薬液であるといえる。分散用に用いた水以外の地盤中の水を取り込むことができる性質は止水材、漏水防止剤などの広い応用が可能で、薬液注入材及び薬液注入工法のさらなる用途拡大に寄与できるものである。
Claims (7)
- 表面を被覆材として親水性高分子化合物または粉末にて覆われた吸水性樹脂からなる地盤改良材。
- 吸水性樹脂と表面を覆う親水性高分子化合物または粉末との重量比が5/95〜95/5の範囲内である請求項1記載の地盤改良材。
- 水を分散液として用いた注入薬液からなる請求項1記載の地盤改良材。
- 水を分散液として、使用する吸水性樹脂の吸水倍率以下の量で用いた注入薬液からなる請求項1記載の地盤改良材。
- 吸水性樹脂がアクリル酸共重合体及びその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の地盤改良材。
- 被覆材が親水性高分子化合物または粉末のそれぞれまたは両者の混合された二種以上を用いる請求項1記載の地盤改良材。
- 請求項1〜6記載の地盤改良材を地盤中に一液の注入薬液として注入することを特徴とする地盤改良工法。
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