JP2010267740A - 電子装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子部品と回路基板とのハンダ付け実装品質が高い電子装置を提供する。
【解決手段】電子素子を収納するガラスパッケージの底面に形成された外部電極は、ガラス製のベース3と接合する電極金属層と、電極金属層の表面に形成された表面層から構成されている。電極金属層は、ガラスと密着がよく、使用される温度範囲で、ハンダとの化合物を形成しない金属元素、Cr、Ti、Mo、W、Taなどで構成される。表面層は、使用される温度範囲で、酸化されにくく、電極金属層との拡散が少なく、ハンダ付け時にハンダ中に拡散しやすい金属、Au、Ag、Pdなどで構成される。更に、表面層にハンダとの化合物を構成しない金属元素(電極金属層を構成するものと同じもの)を含めておくと、ハンダ接合面の剪断強度と耐曲げ性が良好である。これにより、ハンダ付け実装品質が高い電子装置を提供することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、電子装置に関し、例えば、電子部品と回路基板とのハンダ付け実装品質を向上させたものに関する。
例えば、水晶振動子や半導体など、電子素子にはパッケージに封入されて提供されるものがある。
これらパッケージには外部電極が形成されており、電子素子は、当該外部電極をハンダ付けすることによりパッケージごと回路基板に電気的、及び物理的に接続される。
図7は、従来の外部電極8を説明するための図である。
外部電極8は、例えば、Cr、Ni、Auによる3層構造を有している。
Cr層はパッケージのベース3を構成するガラスとの密着性がよいため、ベース3の底面に形成されている。
そして、Cr層の表面には、ハンダの主成分であるSnとの金属間化合物を形成するNi層が形成されており、更にその表面には、Niの酸化を防止するAu層が形成されている。
このように構成された外部電極8を回路基板にハンダ付けすると、Au層はハンダ中に拡散すると共に、Au層が形成されていた側のNiがハンダのSnと金属間化合物層を構成し、Snとの金属間化合物を形成しなかったNi層とCr層が当該金属間化合物層とハンダを介して回路基板に接合する。
このように基材がガラスの場合にCrを用いる技術は、下の特許文献1、2に提案されている。
特許文献1では、基材がガラスなどの場合に、密着層としてCr層を形成している。
特許文献2では、ガラスの上に外部電極をCrとAu、あるいは、CrとNi合金−Auの薄膜2層で形成する技術が提案されている。
また、基材がガラスでない場合には、Niを下地として酸化防止のためのAuを表層に覆ったものや、Cuを下地として、その上にSnを形成するものなどが知られている。
ところで、ハンダ接合で加熱される際に、ハンダ中(又は電極皮膜中)のSnとCuやNiが金属間化合物層を形成するが、金属間化合物層は、母材に比べ脆いので、外力が加わった時にクラックが入りやすいという問題があった。
また、高温化では、金属間化合物層が成長し、NiやCuの層が完全に反応してしまうと、強度低下が発生するため、ある程度の厚さが必要になるという問題もあった。
そこで、特許文献2の技術を用いて、Ni層を含まない構造を、CrとAuの薄膜による2層構造により構成した場合、Au層の厚さによっては強度が十分でないという問題があった。
更に、ベース3がガラス製の場合、NiやCuの厚さが大きいと、形成(めっき)時や、膜そのものの応力が大きくなり、耐基板曲げ性などが不十分になる場合がある。
特表2007−528591公報 特開2006−197278公報
本発明は、電子部品と回路基板とのハンダ付け実装品質が高い電子装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明では、電子素子と、内部に形成された中空部に前記電子素子を収納する収納容器と、前記電子素子と電気的に接続し、前記収納容器の内部から外部にかけて形成された容器電極と、前記容器電極と電気的に接続し、前記収納容器の底面に形成された電極金属層と、Snとの前記電極金属層を介さずに前記電極金属層と接合する接合部と、前記接合部を介して、他の電子素子が設けられた回路基板と、を具備したことを特徴とする電子装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記電極金属層は、Cr、Ti、Mo、W、Taのうちの何れか1つの金属であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記接合部には、Cr、Ti、Mo、W、Taのうちの少なくとも1つの金属が混在していることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の電子装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記電極金属層と、前記接合部に混在している金属は、同じ金属であることを特徴とする請求項3に記載の電子装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、前記接合部にはAuが含まれていることを特徴とする請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載の電子装置を提供する。
本発明によれば、金属間化合物層を用いないことにより、電子部品と回路基板とのハンダ付け実装品質が高い電子装置を提供することができる。
電子部品の断面図などを示した図である。 酸化防止膜の各種変形例を説明するための図である。 回路基板に接合した場合の電子部品の断面図などを示した図である。 実験結果を説明するための表などを表した図である。 実験結果を説明するための表などを表した図である。 電子装置の構成を説明するための図である。 従来例を説明するための図である。
(1)実施形態の概要
電子装置には電子素子が実装されるが、この電子素子を収納するガラスパッケージの底面に形成された外部電極は、ガラス製のベース3と接合する電極金属層と、電極金属層の表面に形成された表面層から構成されている。
電極金属層は、ガラスと密着がよく、使用される温度範囲で、ハンダ(主成分はSn(スズ))との化合物を形成しない金属元素、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ta(タンタル)などで構成される。
表面層は、使用される温度範囲で酸化されにくく、電極金属層との拡散が少なく、ハンダ付け時にハンダ中に拡散しやすい金属、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Pd(パラジウム)などで構成される。
このように電極金属層、表面層が形成された外部電極をハンダ付けすると、ハンダ接合面の剪断強度が良好であることが後述の実験により示される。
そして、外部電極をハンダ付けすると、その接合部には、Snと表面層の金属が含有されることになる。
更に、表面層にハンダとの化合物を構成しない金属元素(電極金属層を構成するものと同じもの)を含めておくと、ハンダ接合面の剪断強度と耐曲げ性が良好であることが後述の実験により示される。
このように、電極金属層、表面層が形成された外部電極をハンダ付けすることにより、ハンダ付け実装品質が高い電子装置を提供することができる。
図1は、上記のように、表面層にハンダとの化合物を構成しない金属元素を含めた形態の一例を示している。
電子部品1(図1(a))は、ベース3とリッド2によって形成された空洞部13に水晶振動子6を配置して構成されている。
ベース3は、貫通電極7、17が形成されたガラスによって構成されており、ベース3の底面には、貫通電極7、17を介して水晶振動子6の電極と導通する外部電極8、18が形成されている。
ベース3は、ガラスによって構成されており、外部電極8(図1(c))は、ガラスとの密着性のよいCrで形成された接合用電極膜31(電極金属層に該当)と、その表面に形成された酸化防止膜51(表面層に該当)から構成されている。そして、酸化防止膜51には、Au層とCr層が交互に形成されている。外部電極18の構成も同様である。
外部電極8を回路基板36(図3(a))にハンダ付けすると、酸化防止膜51を形成していたAu層は、ハンダ33(図3(b))の中に溶解して拡散し、酸化防止膜51中のCr層は、ハンダの成分であるSnと金属間化合物を形成しないため、溶解せずにハンダ中に混在する。
このようにして外部電極8をハンダ付けすると、酸化防止膜51は、ハンダ中に拡散し、接合用電極膜31がハンダ33と直接接合する。
このように、本実施の形態によると、NiとSnの金属間化合物などを介さずにハンダ33と接合用電極膜31が接合するため、金属間化合物層の脆弱性を回避することができ、後述の実験によると、電子部品1と回路基板36とのハンダ付け実装品質を向上させることができる。
また、酸化防止膜51をAuのみで形成した場合(表面層がハンダとの化合物を構成しない金属元素を含まない場合)も、Auの厚さが所定範囲にある場合、ハンダ接合面の剪断強度が良好であることが、後述の実験により示される。
(2)実施形態の詳細
図1(a)は、本実施の形態に係る電子部品1を示しており、回路基板に接合した場合に、当該回路基板の表面に平行な方向に電子部品1を見た場合の断面図であり、図1(b)は、電子部品1の底面図である。
ただし、図を分かりやすくするため、図1(b)では、図1(a)よりも貫通電極7、17の直径を大きく描いている。
以下では、実装時に電子部品1の回路基板に面する側を底面側、これに対向する側を上面側とする。
電子部品1は、ベース3、リッド2、支持部5、水晶振動子6、内部電極4、16、貫通電極7、17、外部電極8、18などを用いて構成されている。
水晶振動子6は、例えば、音叉型水晶振動子により構成された電子素子であって、音叉型の基部が支持部5によって保持されている。
図示しないが、水晶振動子6の音叉腕部には電極が設置してあり、この電極に所定のパルスを供給することにより、水晶振動子6を所定の周波数で発振させることができる。
支持部5は、水晶振動子6の音叉腕が空洞部13内で振動できるように、水晶振動子6をベース3に対して所定の姿勢に片持ちで保持している。
なお、本実施の形態では、電子素子の一例として水晶振動子6を用いるが、半導体など、他の電子素子でもよい。
ベース3は、例えばガラスで構成された板状の部材であり、上面に支持部5が保持する水晶振動子6が取り付けられている。
ベース3の素材としては、例えば、安価で陽極接合可能などの利点を有するソーダガラスが用いられており、厚さは例えば、0.05〜2[mm]、好ましくは0.1〜0.5[mm]程度である。
また、ソーダガラスの他に、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、結晶化ガラス(場合によっては強化処理したもの)などを用いることができる。
ベース3の上面部には、水晶振動子6の電極に電気的に接続する内部電極4、16が形成されている。
また、ベース3には、上面部から底面部に貫通するスルーホールが形成されており、スルーホール内に貫通電極7、17が形成されている。
内部電極4と貫通電極7、及び内部電極16と貫通電極17は、それぞれ電気的に接続している。
リッド(蓋)2は、ガラスや金属などで形成されており、ベース3に面する面の中央部がえぐられて水晶振動子6を収納するための凹部が形成されている。金属リッドの場合は、線膨張係数がガラスに近いものが望ましい。
リッド2の凹部のへこみ量は、例えば、0.05〜1.5[mm]程度であり、エッチング、サンドブラスト、ホットプレス、レーザなどにより加工することができる。
リッド2の開口部は、陽極接合や接合材を用いてベース3に接合されており、ベース3の上面とリッド2の凹部により水晶振動子6を収納する空洞部13が形成されている。
また、ベース3とリッド2の接合方法には、陽極接合の他に、直接接合、金属接合、低融点ガラス、ろう材、溶接、高融点ハンダによるものなどがある。
更に、ベース3とリッド2の間に中間材料を用いる場合もある。
空洞部13は、リッド2とベース3によって密閉されて外気から遮断されており、例えば、真空が保たれたり、あるいは所定のガスを封入するなど、気密封止されている。
なお、電子部品1では、リッド2に凹部を設けて空洞部13を形成したが、ベース3に凹部を設けると共に平板状のリッド2を接合して空洞部13を形成してもよいし、あるいは、リッド2とベース3の両方に凹部を設けて形成してもよい。
このように、電子部品1では、ベース3とリッド2により、ガラスケースによるパッケージが電子素子を収納している。
パッケージをガラスで構成すると、材料費が安価である上、電子部品1の下面側の外部から水晶振動子6をレーザによってトリミング・接合・ゲッタリングすることができる。
ここで、ゲッタリングとは、真空封止を行う場合に、空間内に配置したAlパターンなどにレーザを照射して加熱することにより、Alと周囲の空気(酸素)を反応させて消費させて真空度を向上させる技術である。
外部電極8は、ハンダなどで回路基板上の電極ランドに電気的、及び機械的に接合するための金属膜で構成された接合部であり、ベース3の底面上に形成され、貫通電極7と導通している。
外部電極18も外部電極8と同様に構成され、貫通電極17と導通している。
なお、電子部品1では、貫通電極7、17により水晶振動子6の電極が外部電極8、18と電気的に接続するが、例えば、内部電極4、16がリッド2とベース3の接合部を介して電子部品1の外部に引き出され、更に、引き出された内部電極4、16をベース3の側面から底面に至るまで延設し、ベース3の底面にて内部電極4、16が外部電極8、18と電気的に接続するように構成することもできる。
この場合、ベース3に貫通電極7、17を形成する必要はない。
図1(c)は、外部電極8の構成を詳細に示した図である。
外部電極8は、ベース3の表面に形成された接合用電極膜31と、接合用電極膜31を酸化から保護する酸化防止膜51から構成されている。
接合用電極膜31は、ガラスと密着性がよく、使用される温度範囲でハンダの主成分であるSnとの金属間化合物を形成しない(ハンダに溶解しない)金属元素、例えば、Crで構成されている。
この他に、接合用電極膜31の材質としては、Ti、Mo、W、Taなども可能である。
酸化防止膜51は、使用される温度範囲で酸化されにくく、接合用電極膜31との拡散が少なく、ハンダ付け時にハンダ中に拡散しやすい金属元素の層、例えば、Au層(Auは、ハンダ付けをする際に、AuSn2や、AuSn4などの金属間化合物(合金)を生成してハンダ中に拡散しやすい)と、ハンダとの金属間化合物を構成しない金属元素の層、例えば、Cr層を交互に重ねて形成されている。
また、接合用電極膜31との拡散が少なく、ハンダ付け時にハンダ中に拡散しやすい金属元素の層としてAg層、Pd層を用いることも可能である。
このように、接合用電極膜31は、Cr、Ti、Mo、W、Taから選択された1の金属膜とし、酸化防止膜51は、Cr、Ti、Mo、W、Taから単数、又は複数選択された金属の層と、Au、Ag、Pdから単数、又は複数選択された金属の層を交互に重ね合わせた金属膜とすることができる。
ただし、酸化防止膜51の表面の金属層は、酸化しないAu層とするのが望ましい。
このように、接合用電極膜31と酸化防止膜51を構成する金属は任意に選択できるが、接合用電極膜31と酸化防止膜51中のハンダによる金属間化合物を生成しない金属元素の層を同じ金属(例えば、Cr)とし、酸化防止膜51のハンダ中に拡散しやすい金属元素の層を全て同じ金属(例えば、Au)とすると、ベース3に2種類の金属層を交互に重ねればよく、製造が容易になると共に製造コストも低減することができる。
また、内部電極4、16をCr層とAu層を重ねて形成すると、内部電極4、16の製造と外部電極8の製造を同じ装置で行うことができる。
更に、内部電極4、16のCr層の膜厚、接合用電極膜31のCr層の膜厚、及び酸化防止膜51のCr層の膜厚を同じにし、内部電極4、16のAu層の膜厚、酸化防止膜51のAu層の膜厚を同じにすると、装置の条件変更も不要になり、製造をより効率化し、生産性を高めることができる。
このように、酸化防止膜51は、複数のAu層を用いて形成されているが、これらAu層の厚さの合計値は、一例として、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
図の例では、各Au層の厚さは均等となっているが、これは均等である必要はなく、Au層の厚さの合計値が当該値の範囲となればよい。
Au層の厚さの合計値をこの範囲に設定すると、ハンダ付け後の剪断強度などが良好であることが後述する実験結果により示される。
以上のような構成を有する電子部品1は、次のようにして製造することができる。
ベース3にスルーホールを形成し、当該スルーホール内に貫通電極7、17を形成する。
そして、ベース3に水晶振動子6を設置して貫通電極7、17と接続し、その後、リッド2をベース3に陽極接合などにより接合して、パッケージを形成する。
そして、外部電極8を構成する各層は、例えば、スパッタリングを用いたスパッタ法でベース3の底面にこれら金属元素の膜を作成することにより形成する。
即ち、ベース3の底面にCrによる接合用電極膜31を形成し、次いで、Auの膜とCrの膜を交互に形成する。又は、メッキ法によってこれら各層を形成することも可能である。
以上により、電子部品1が完成する。
なお、ベース3に外部電極8、18を形成してからベース3にリッド2を接合するなど、工程順序を変更することも可能である。
また、ベース3を多数個取りできるベースウエハに貫通電極7、17と水晶振動子6を設置し、これにリッド2を多数個取りできるリッドウエハを接合して、電子部品1が多数形成されたウエハを形成し、外部電極8、18の形成後、これを切断して電子部品1を多数個取りするように構成することもできる。
図2の各図は、酸化防止膜51の各種変形例を説明するための図である。
図2(a)は、酸化防止膜51の2つのAu層の間に1つのCr層を形成した例であり、Cr層の下側のAu層の厚さを上側のAu層の厚さより厚くした例である。
これらAu層の厚さの合計は、一例として、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
図2(b)も酸化防止膜51の2つのAu層の間に1つのCr層を形成した例であり、Cr層の下側のAu層の厚さを上側のAu層の厚さより薄くした例である。
これらAu層の厚さの合計は、一例として、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
図2(a)、(b)の例では、2つのAu層の厚さが異なるが、これら2つのAu層の厚さが同じになるように形成してもよい。
図2(c)は、酸化防止膜51を単一のAu層によって構成した例であり、当該Au層の厚さは、一例として、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
この例は、酸化防止膜51がハンダと金属間化合物を形成する金属元素を含まず、ハンダに拡散しやすい金属元素のみによって形成された場合である。
図3(a)は、電子部品1をハンダ33、34によって回路基板36に接合したところの断面を示した図である。
図に示したように、外部電極8は、ハンダ33、34を介して回路基板36上の基板配線32と電気的、及び物理的に接合し、外部電極18は、ハンダ34を介して回路基板36上の基板配線35と電気的、及び物理的に接合し、これによって、電子部品1は、回路基板36に電気的、及び物理的に接合する。
図3(b)は、外部電極8のハンダ33との接合面の詳細を示した図である。
接合用電極膜31のCrは、ハンダとの金属間化合物を形成しないため、ベース3に接合した状態でハンダ33と接合している。
このように、接合用電極膜31は、例えば、NiとSnの金属間化合物などを介さずに直接ハンダ33と接合することができる。
一方、酸化防止膜51は、ハンダ33に拡散しており、そのため図示していない。
酸化防止膜51がCr層を含む場合、Cr層は、ハンダとの金属間化合物を形成しないため、Au層が拡散すると外部電極8から離脱し、ハンダ33の何れかの場所に存在する。
図3(c)は、図3(b)の領域50を分析機器によって拡大した様子を模式的に表した図である。
領域50は、ベース3、接合用電極膜31、及びハンダ33に渡っており、接合用電極膜31と、ハンダ33の接合面付近を観察対象としている。
なお、図3(b)では、図を分かりやすくするため、接合用電極膜31の厚さを誇張して描いており、分析機器で観察すると、図3(c)のように薄い層となっている。
領域50を複数回にわたって観察したところ、図3(c)のようにハンダ33中に遊離した帯状のCr層60が観察されたことがあった。
これは、酸化防止膜51中のAu層がハンダ33中に拡散する一方、Crはハンダ33中の主成分であるSnと金属間化合物を形成しないため、Cr層60は、酸化防止膜51中のCr層がハンダ33中に遊離したものと考えられる。
このようにCrは、Snと金属間化合物を形成しないため、酸化防止膜51中のCr層は、Cr層60のようにハンダ33中にちぎれて帯状に存在するほか、もっと小さいCr片やCr粒として存在することも考えられ、他の反応や粒成長している可能性も考えられる。
後の実験結果に示すように、電子部品1のハンダ接合面は、高い剪断強度と耐曲げ性を発揮するが、これは、何れの形態にせよ、ハンダ33中に遊離した酸化防止膜51のCr層が何らかの働きをして、電子部品1のハンダ接合面の機械的特性に影響しているものと考えられる。
図4(a)は、外部電極8の剪断強度に関する実験結果を表にしてまとめたものである。
この実験に係る酸化防止膜51は、図2(c)に示したように、単層のAu層によって構成されている。
項目「電極膜構成」は、Cr(接合用電極膜31)とAu(酸化防止膜51)の膜厚を[Å]で表したものであり、例えば、「Cr600−Au750」は、接合用電極膜31のCr層の厚さが600[Å](60[nm])であり、酸化防止膜51のAu層の厚さが750[Å](75[nm])の場合を表している。
また、剪断試験方法は、JIS Z 3198−7に準拠し、剪断速度は、5[mm/m]とした。
項目「Au層の厚さ」は、酸化防止膜51を構成するAu層の厚さを[nm]で表したものである。
項目「強度(指数)」は、Au層の厚さが150[nm]の場合の剪断強度を1として、他の剪断強度の比を表した指数である。
そして、図4(b)は、この指数をグラフ化したものである。
この表・グラフから明らかなように、Au層の厚さが75〜150[nm]の範囲では、剪断強度が1程度であるのに対し、300〜900[nm]では、2〜3程度の実用可能な値となっている。
Au層の厚さが1000[nm]の場合の実験値はないが、データの連続性から900[nm]と同程度と考えられる。
なお、一般に、金が多くなると、ハンダ付け箇所が脆くなることが知られており、Au層が1000[nm]以上になると、この脆弱性が表れてくると考えられる。
そのため、金層の厚さが300[nm]以上1000[nm]以下であることが実用に適した厚さとなる。
また、実験結果によると450[nm]にピークが現れているため、300[nm]以上で450[nm]以下がより好ましい値となっている。
図5(a)は、外部電極8の剪断強度に関する更なる実験結果を表にしてまとめたものであり、図5(b)は、これをグラフにしたものである。
この実験では、酸化防止膜51の金層の厚さを150[nm]として、単層(1層)、2層、3層とし、単層の場合の剪断強度を1として測定結果を指数化した。
Au層が2層、3層の場合、これらのAu層の間にはCr層が形成されている。
この実験結果によると、Au層の厚さの合計が300[nm]以上となる場合、即ち、Au層が2層、3層の場合、剪断強度がそれぞれ1.9、及び2.1と、2程度となって実用水準となっている。
図5(c)は、基板の曲げ耐性を表す実験結果を表として示したものである。
曲げ試験方法は、JEITA ET−7409/104に準拠し、1.6[mm]厚のガラスエポキシ回路基板を用い、押し込み量1、2、3[mm]で外観上のクラックの有無を判断することにより行った。
項目「電極仕様」は、電極の仕様であり、接合用電極膜31のCr層の厚さを0.06[μm](600[Å])とし、酸化防止膜51のAu層の厚さを0.15[μm](1500[Å])として当該Au層を3層に構成した場合(Au層を3層にした場合の外部電極8)、Cr層の厚さを0.06[μm]、Cu層の厚さを10.5[μm]、Sn層の厚さを10[μm]として電極を構成した場合(第1の比較電極)、及びCr層の厚さを0.06[μm]、Cu層の厚さを0.5[μm]、Ni層の厚さを2[μm]、Sn層の厚さを10[μm]として電極を構成した場合(第2の比較電極)を示している。
これらの電極を電子部品1に形成して回路基板36に接合し、当該回路基板36を押し込み機構により押し込んだところ、押し込み量が1[mm]の場合、外部電極8の場合は20回中クラックが生じた回数は0回であり、第1の比較電極の場合は、5回中1回、第2の比較電極の場合は、5回中0回であった。
押し込み量が2[mm]の場合、それぞれ、20回中0回、5回中4回、5回中2回であり、押し込み量が3[mm]の場合、それぞれ、20回中0回、5回中4回、5回中4回であった。
当該外部電極8では、Au層の厚さの合計値が450[nm]となるが、この場合、優れた耐曲げ性が実現されている。
以上のように、酸化防止膜51を構成するAu層の厚さが300[nm]以上1000[nm]以下の場合、外部電極8の剪断強度などが向上するが、これは、Au層が厚くなることにより、接合用電極膜31のCrの酸化防止能力が向上するためと考えられる。
また、酸化防止膜51のAu層を多層化した場合、これらのAu層に挟まれていたCr層がハンダ中に微細になって混入ないし包含されることにより、強度などがより向上するものと考えられる。
なお、Au層が薄膜の場合、Cr層を大気中でハンダ付けするのは困難な場合があるが、Au層の厚さを300[nm]以上とすると、Cr層の酸化防止機能が向上するので、大気中でのハンダ付け(リフロー)が可能となり、ハンダ付けのための特殊な雰囲気を用意する必要がなく、ハンダ付けコストを低減することができる。
図6は、回路基板36に実装した電子部品1を有する電子装置70の構成を説明するための図である。
電子部品1は、回路基板36上にハンダ付けされ、図示しないコイルや容量などの電子素子と共に発振回路71を構成している。
デジタル信号処理回路72は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の電子素子が回路基板36上に取り付けられて構成されており、発振回路71が生成する動作タイミングに従って入力をデジタル信号処理して出力する。
電子装置70としては、例えば、電子卓上計算機、電子辞書、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビ、ラジオ、エアコンや冷蔵庫といった家電製品の制御装置など、各種の形態が可能である。
また、電子部品1の発振によって時間を計測する時計やタイマなども可能である。
以上に説明した本実施の形態において、回路基板36にハンダ付けされた電子部品1は、電子素子(例えば、水晶振動子6、半導体なども可能)と、内部に形成された中空部(空洞部13)に電子素子を収納する収納容器(リッド2とベース3から成るパッケージ)と、電子素子と電気的に接続し、前記収納容器の内部から外部にかけて形成された容器電極(内部電極4、16、及び貫通電極7、17など)と、容器電極と電気的に接続すると共に収納容器の底面に形成された電極金属層(接合用電極膜31)と、を備えている。
そして、接合用電極膜31は、例えば、SnとNiとの金属間化合物などのSnとの金属間化合物層(Snと電極金属層との金属間化合物層)を介さずに直接接合部(ハンダ33)に接合している。
また、電子部品1は、接合部を介して、例えば、回路基板36に接合されて、容量やコイルなどの他の電子素子と共に発振回路を構成し、当該発振によりコンピュータが動作タイミングを取得したり、時計が時間を計測したりするのに用いられるため、電子部品1と他の電子素子が設けられた回路基板36を用いて、電子部品1により発振する発振手段(発振回路)と、発振手段の発振により動作タイミングを取得して動作する動作手段(CPUなど)を備えた各種の電子装置を提供することができる。
また、接合用電極膜31の材料としては、Cr、Ti、Mo、W、Taが使用可能であるため、電極金属層(接合用電極膜31)は、Cr、Ti、Mo、W、Taのうちの何れか1の金属とすることができる。
更に、酸化防止膜51にCr層を備える場合、酸化防止膜51をハンダ付けすることによりハンダ33中にCrが混在し、また、当該Cr層の代わりにTi層、Mo層、W層、Ta層を用いることも可能であるため、ハンダ付け後のハンダ33中には、Cr、Ti、Mo、W、Taのうちの少なくとも1つの金属が混在するように構成することができる。
また、例えば、接合用電極膜31をCr層で形成し、酸化防止膜51にAu層とCr層を形成したり、あるいは、接合用電極膜31をTi層で形成し、酸化防止膜51にAu層とTi層を形成したりなど、接合用電極膜31と酸化防止膜51の金属層を同じ材質で形成すると、当該金属層とAu層を交互に形成することにより、接合用電極膜31と酸化防止膜51が形成できるため、製造プロセスが単純になり、製造コストを低減することができる。
このように接合用電極膜31と酸化防止膜51の金属層を同じ金属で構成した外部電極8をハンダ付けすると、接合用電極膜31と同じ金属がハンダ33に混在することになる。
この場合、電極金属層(接合用電極膜31)と、前記ハンダ(ハンダ33)に混在している金属は、同じ金属となる。
以上に説明した本実施の形態により次のような効果を得ることができる。
(1)SnとNiの金属間化合物などの金属間化合物層を介さずに接合用電極膜31のCr層とハンダ33を直接接合するため、金属間化合物層による脆弱性を回避することができる。
(2)酸化防止膜51を、Crなどのハンダと金属間化合物を形成しない金属層とAuなどのハンダに拡散する金属層を交互に重ねて形成することにより、外部電極8をハンダ付けした際にハンダと金属間化合物を形成しない金属層が例えば帯状となってハンダ33に混在し、ハンダ接合面の実装強度や耐曲げ性が向上すると考えられる。
(3)電子素子を収納し、リペア性・耐熱性・耐基板曲げ性などを両立した品質の高いガラスパッケージを実現することができる。
(4)接合用電極膜31の上にAu層の厚みの合計値が所定の範囲となるように構成することにより接合用電極膜31が酸化されにくくなると共に、Auが多すぎることによるハンダの脆弱化を抑制することができ、電子部品1の実装強度が高まる。
(5)Au層の酸化防止機能が高いため、電子部品1を大気中でハンダ付けすることができる。
(6)Au層は、ハンダ中に均一に拡散し、外部電極8の接合界面はCrとSnになるが、CrとSnは、リフローや高温試験の温度範囲(〜260℃)では合金の形成・成長が殆どなく、また、耐熱性・耐衝撃性に優れる。
(7)Crとハンダによる合金の成長がないため、Cr層を厚く形成する必要がなく、膜応力を小さく抑えられるので、耐基板曲げ性などに優れる。
(8)内部電極4、16などにCr−Auが使用されている場合、外部電極8、18の形成に際して装置を兼用化することができる。更に、各層の膜厚を内部と外部で同一にすれば、装置の条件変更も不要になり、設備投資を抑え、生産性を高めることができる。
(9)セラミックなどに比べ、脆く強度が低いが、コストが安く透明なガラスパッケージを採用することが可能である。
(10)外部電極8の形成領域に段差部が存在する場合、Cr層とAu層を積層することによって断線のリスクを低減することができる。
(11)外部電極8をスパッタ法で形成することができるため、ドライ雰囲気で金属層が成膜可能であり、これによって、貫通電極7の溶出などを防ぐことができる。
1 電子部品
2 リッド
3 ベース
4 内部電極
5 支持部
6 水晶振動子
7 貫通電極
8 外部電極
13 空洞部
16 内部電極
17 貫通電極
18 外部電極
31 接合用電極膜
32 基板配線
33 ハンダ
34 ハンダ
35 基板配線
36 回路基板
51 酸化防止膜
70 電子装置

Claims (5)

  1. 電子素子と、
    内部に形成された中空部に前記電子素子を収納する収納容器と、
    前記電子素子と電気的に接続し、前記収納容器の内部から外部にかけて形成された容器電極と、
    前記容器電極と電気的に接続し、前記収納容器の底面に形成された電極金属層と、
    Snとの前記電極金属層を介さずに前記電極金属層と接合する接合部と、
    前記接合部を介して、他の電子素子が設けられた回路基板と、
    を具備したことを特徴とする電子装置。
  2. 前記電極金属層は、Cr、Ti、Mo、W、Taのうちの何れか1つの金属であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
  3. 前記接合部には、Cr、Ti、Mo、W、Taのうちの少なくとも1つの金属が混在していることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の電子装置。
  4. 前記電極金属層と、前記接合部に混在している金属は、同じ金属であることを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
  5. 前記接合部にはAuが含まれていることを特徴とする請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載の電子装置。
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