JP2010265940A - プロペラシャフト - Google Patents

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Abstract

【課題】車両衝突時におけるプロペラシャフトの収縮ストローク量を増大化しつつこれに伴う騒音の増大を抑制し得るプロペラシャフトを提供する。
【解決手段】2つの筒状部材である外筒部材11と内筒部材12とを相対移動可能に重合してなり、所定の軸方向入力に基づいて軸方向へ収縮可能に構成されたプロペラシャフト1において、外筒部材11の軸方向一端部側を、その内周側に歯溝13aを有するスプライン穴部13として構成する一方、内筒部材12の外筒部材11と重合する軸方向一端部側を、その外周側に歯溝17aを有するスプライン軸部17として構成し、スプライン軸部17の内周側にダイナミックダンパ20を配置することにより、プロペラシャフト1の十分な収縮ストローク量の確保とこれに伴うプロペラシャフト1の振動増大の抑制との両立を図った。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば自動車の動力伝達装置に適用されるプロペラシャフトの改良に関する。
自動車の動力伝達装置に適用される従来のプロペラシャフトとしては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
概略を説明すれば、このプロペラシャフトは、トランスミッションから出力される駆動トルクをディファレンシャル装置に伝達するものであって、軸方向の一部を、2つの中空部材を互いに重合させてこれらの中空部材同士を軸方向に相対移動可能に構成することで、プロペラシャフトを軸方向に収縮変形させ、トランスミッションとディファレンシャル装置との間の距離の変化を吸収するようになっている。
特開平8−109918号公報
ところで、近年では、車両が衝突した際にプロペラシャフトを軸方向に収縮変形させて当該車両衝突時における車体の緩衝作用の円滑化が図られていると共に、その際におけるプロペラシャフトの収縮量(収縮ストローク量)の増大化の要求が高まっている。しかし、前記従来のプロペラシャフトにあっては、プロペラシャフトの収縮ストローク量を増大させると、当該プロペラシャフトが長尺化してしまうことから、プロペラシャフトの共振が発生しやすくなってしまい、これによって騒音が増大してしまうおそれがあった。
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであって、車両衝突時におけるプロペラシャフトの収縮ストローク量を増大化しつつこれに伴う騒音の増大を抑制し得るプロペラシャフトを提供するものである。
本願発明は、2つの筒状部材を相対移動可能に重合してなり、所定の軸方向入力に基づいて軸方向へ収縮可能に構成されたプロペラシャフトにおいて、前記重合部分において径方向外側に配置される外筒部材の軸方向一端部側を、その内周側に歯溝を有するスプライン穴部として構成する一方、径方向内側に配置される内筒部材の前記外筒部材と重合する端部側を、その外周側に歯溝を有するスプライン軸部として構成し、前記スプライン軸部の内周側にダイナミックダンパを配置したことを特徴としている。
本発明によれば、プロペラシャフトの収縮ストローク量の増大化を図るべく当該プロペラシャフトを長尺化した場合であっても、このプロペラシャフトの長尺化に伴う当該プロペラシャフトの共振の増大化を、ダイナミックダンパの減衰作用によって抑制することが可能となる。これにより、プロペラシャフトの十分な収縮ストローク量の確保とこれに伴うプロペラシャフトの振動増大の抑制との両立が図れる。
本発明に係るプロペラシャフトの正面図である。 図1に示すプロペラシャフトA部拡大図である。 図1に示すプロペラシャフトのB−B線に沿う断面図である。 図1に示すプロペラシャフトの収縮状態を示す要部拡大図である。 本発明に係るプロペラシャフトと従来のプロペラシャフトの共振周波数の特性を比較したグラフである。 ダイナミックダンパの配置を変更したプロペラシャフトの要部拡大図である。
以下、本発明に係るプロペラシャフトの実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、本実施形態では、このプロペラシャフトを、従来と同様、自動車の動力伝達装置に適用した例を示している。
すなわち、このプロペラシャフト1は、いわゆる3ジョイント型と称されるものであって、図1に示すように、その軸方向一端に設けられる第1自在継手5を介して車両前方側(図中の左側)に配置される図外のトランスミッションに連係される第1軸部材2と、その軸方向一端部に第1軸部材2の他端部と共に構成されるセンターベアリング8を介して第1軸部材2に連結される中間軸部材4と、その軸方向一端に設けられる第2自在継手6を介して中間軸部材4に連結され、その軸方向他端に設けられる第3自在継手7を介して車両後方側(図中の右側)に配置される図外のディファレンシャル装置に連係される第2軸部材3と、から主として構成され、センターベアリング8の外周に弾性部材9を介して取り付けられるブラケット10を介して車体のフロア部材の一部を構成する図外のクロスメンバに固定されている。
前記第1軸部材2は、図2に示すように、それぞれアルミ合金材によりほぼ円筒状に形成された2つの筒状部材11,12が軸方向の所定範囲において径方向に重合され、プロペラシャフト1が車両前方側から軸方向入力を受けた際に、前記2つの筒状部材11,12のうち、外側に配置される外筒部材11が内側に配置される内筒部材12に対し車両後方側へ相対移動することにより、当該プロペラシャフト1が収縮可能となるように構成されている。
前記外筒部材11は、その軸方向一端側の所定範囲に、後記のスプライン軸部17の歯部17bと噛合する歯溝13aを内周側に有するスプライン穴部13が例えばプレス成形されていて、このスプライン穴部13を介して内筒部材12と係合するようになっている(図3参照)。また、この外筒部材11の他端には、第1自在継手5の一部を構成する入力側ヨーク部材14が摩擦溶接等によって相対回転不能に結合されていて、この入力側ヨーク部材14には十字軸15を介してスリーブヨーク16が連結され、これら入力側ヨーク部材14と十字軸15とスリーブヨーク16とにより第1自在継手5が構成されている。そして、スリーブヨーク16が前記トランスミッションに連結されることで、プロペラシャフト1と前記トランスミッションとが相互に連結されている。
一方、前記内筒部材12には、外筒部材11と重合する軸方向一端側の所定範囲に、前記スプライン穴部13の歯部13bと噛合する歯溝17aを外周側に有するスプライン軸部17が例えばプレス成形されている(図3参照)。そして、これらの両スプライン13,17は、前記両筒部材11,12が軸方向へ相対移動可能となるように構成されていて、かつ、当該両スプライン13,17が係合することにより前記両筒部材11,12が一体回転可能に連結されている。なお、前記内筒部材12の他端部には、当該他端部を外輪とし、また、中間軸部材4の一端部を内輪として、これら両輪間に図外のボールが介装されることによってセンターベアリング8が構成されている。
そして、前記外筒部材11と内筒部材12の重合量(オーバーラップ量)は、外筒部材11の一端縁から当該外筒部材11の一端縁の内径よりも大きく拡径された内筒部材12の拡径部12aまでの距離L1と内筒部材12の一端縁から当該内筒部材12の一端縁の外径よりも縮径された外筒部材11の縮径部11aまでの距離L2とがほぼ等しくなるように構成されると共に、前記両スプライン13,17は、外筒部材11の一端縁が内筒部材12の拡径部12aに当接するまで、言い換えれば、内筒部材12の一端縁が外筒部材11の縮径部11aに当接するまで、外筒部材11が内筒部材12に対して相対移動可能となるように構成されている。これによって、後述するような内筒部材12に対する外筒部材11のスライド量、つまりプロペラシャフト1の収縮ストローク量を最も大きく確保することが可能となっている。
また、前記内筒部材12のスプライン軸部17の内周側には、第1軸部材2の軸方向ほぼ中央となる位置に、いわゆるダイナミックダンパ20が収容配置されている。なお、このダイナミックダンパ20を配置する位置については、スプライン軸部17の軸方向範囲内であれば任意に変更することができるが、ダイナミックダンパ20を前述のような第1軸部材2の軸方向ほぼ中央位置に配置することにより、当該位置はプロペラシャフト1の回転時に振幅が最大となる位置であることから、当該ダイナミックダンパ20による制振作用を最大限に発揮させることが可能となっている。
また、前記ダイナミックダンパ20は、ほぼ筒状に形成されたマス部材21と、該マス部材21の外周面全体に加硫接着された弾性部材22と、によって構成され、弾性部材22がスプライン軸部17の歯溝17aの内面17cに圧接するようにして、該スプライン軸部17の内周側に圧入によって固定されている。そして、かかるダイナミックダンパ20の圧入により、内筒部材12が弾性部材22の弾性力によって径方向外側へと押圧され、これによってスプライン穴部13の各歯部13bがスプライン軸部17の各歯溝17aに隙間なく噛合するようになっている(図3参照)。この結果、外筒部材11と内筒部材12との間のがたつきを低減することが可能となっている。
さらには、前記内筒部材12のスプライン軸部17の内周側にダイナミックダンパ20が圧入されることにより、当該スプライン軸部17の歯部17bとダイナミックダンパ20との間に、軸方向に延びる空間である軸方向通路23が画成されている。ここで、プロペラシャフト1は、その組み立てが行われた後、防錆等の目的で塗装されることになるが、塗料の付着性向上のため、前記塗装前に所定の洗浄液による洗浄が行われる。つまり、前記軸方向通路23は、この洗浄時における洗浄液の流路として供される。換言すれば、スプライン軸部17の内周側にダイナミックダンパ20を圧入するのみで自動的に洗浄液の流路が形成されることから、これによって当該流路をダイナミックダンパ20の外周面等に切削するなどして別途形成する必要がなく、製造工程の簡略化や作業性の向上が図れる。この結果、生産性の向上に供されると共に製造コストの低廉化に寄与することができる。
以下、本実施形態に係るプロペラシャフト1の特徴的な作用について、図1〜図6に基づいて説明する。
車両が前方衝突した場合には、当該衝突によって前記トランスミッションが車両後方側へ押圧され、該トランスミッションを介してプロペラシャフト1に前記車両衝突による衝撃力Fが入力される。そうすると、プロペラシャフト1は、前記軸方向入力Fによって外筒部材11が前記両スプライン13,17の係合により軸方向へ沿って滑動(スライド)して内筒部材12に対して車両後方側へ相対移動することとなって、その結果、図1に示す状態から図4に示すような収縮した状態となる。このように、車体の損壊に伴いプロペラシャフト1が収縮することで、車両衝突時における車体による緩衝作用を妨げることがなく、車室内への前記衝撃力の作用を低減することに供される。
そして、前記内筒部材12のスプライン軸部17の内周側にダイナミックダンパ20を配置したことにより、プロペラシャフト1の収縮ストローク量を大きく確保するために当該プロペラシャフト1が長尺化してしまった場合であっても、このプロペラシャフト1の長尺化に伴う当該プロペラシャフト1の共振の増大化を、ダイナミックダンパ20の減衰作用によって抑制することが可能となる。具体的には、図5に示すように、従来のようなダイナミックダンパを装着していない場合には、ある特定の周波数Xにおいてプロペラシャフト1に大きな共振が発生することになるが(図中の破線)、ダイナミックダンパ20を設けたことによって前記従来の共振点を前記特定の周波数Xの前後域へずらすことが可能となり(図中の実線)、これによってプロペラシャフト1の共振レベルを前記従来の場合と比べて低く抑えることが可能となる。この結果、プロペラシャフト1の十分な収縮ストローク量の確保とこれに伴うプロペラシャフト1の振動増大の抑制との両立が図れる。
ここで、図6に示すように、前記ダイナミックダンパ20を外筒部材11の内周側、つまり前記スプライン穴部13の内周側に配置した場合であっても、当該ダイナミックダンパ20による減衰作用を得ることは可能であるが、この場合、ダイナミックダンパ20がプロペラシャフト1の収縮ストロークの妨げとなってしまう。すなわち、外筒部材11が内筒部材12に対し車両後方側へ相対移動する際に、当該外筒部材11が最大ストロークするよりも前、つまり外筒部材11の一端縁が内筒部材12の拡径部12aに当接するよりも前に、該内筒部材12の一端縁がダイナミックダンパ20に当接してしまって、当該外筒部材11のスライド量が制限されてしまうこととなる。これに対して、本実施形態のように、内筒部材12の内周側にダイナミックダンパ20を配置することで、前記外筒部材11に配置する場合のようにダイナミックダンパ20が外筒部材11のスライドを妨げてしまうことがなく、プロペラシャフト1の収縮ストロークをより大きく確保することができる。
また、前記内筒部材12の内周側にダイナミックダンパ20が圧入されることによって両者12,20は一体的なものとなることから、プロペラシャフト1の回転時には、図3に示すように、外筒部材11と、内筒部材12とダイナミックダンパ20との結合体と、において、それぞれの質量に応じた遠心力が作用することとなる。すなわち、外筒部材11には当該外筒部材11の質量に基づく遠心力f1が作用すると共に、内筒部材12とダイナミックダンパ20との結合体には当該両者12,20の合計質量に応じた遠心力f2が作用することとなる。
ここで、前記内筒部材12とダイナミックダンパ20との結合体に作用する遠心力f2は前記外筒部材11に作用する遠心力f1よりも大きくなることから、プロペラシャフト1の回転時においては、前記外筒部材11に作用する遠心力f1と、前記内筒部材12とダイナミックダンパ20との結合体に作用する遠心力f2の差分となる力f(=f2−f1)が外筒部材11側から内筒部材12側へ反力として作用することとなる。すると、かかる反作用の力fに基づいて、スプライン軸部17の歯溝17aにスプライン穴部13の歯部13aがより強く噛合することとなる。これによって、スプライン穴部13の歯先面13dとスプライン軸部17の歯底面17dとの隙間及びスプライン穴部13の歯面13e,13eとスプライン軸部17の歯面17e,17eとの隙間を小さくすることが可能となり、この結果、外筒部材11と内筒部材12との間のがたつきを低減することができる。すなわち、2つの中空部材を重合して第1軸部材2を構成する場合、従来では外筒部材11と内筒部材12の間に樹脂材(例えばナイロンコーティング)を介装することとしていたが、本実施形態では、プロペラシャフト1の回転時に発生する遠心力の反作用の力fによって両筒部材11,12の間のがたつきを低減することができるため、従来のように両筒部材11,12の間に樹脂材を介装する必要がなく、製造工程の簡略化及び作業性の向上が図れ、製造コストの低廉化に寄与することができる。
なお、図6に示すようにダイナミックダンパ20を外筒部材11の内周側に配置した場合には、この外筒部材11側の遠心力が大きくなって、当該遠心力が外筒部材11を拡径する方向に作用することとなるため、前記ダイナミックダンパ20を内筒部材12の内周側に配置した場合のような作用効果は得られない。
以上のことから、本実施形態では、前記ダイナミックダンパ20を内筒部材12の内周側に配置したことで、プロペラシャフト1の十分な収縮ストローク量の確保とこれに伴うプロペラシャフト1の振動増大の抑制との両立が図れるだけでなく、ダイナミックダンパ20を外筒部材11側ではなく内筒部材12側に配置したことで、当該ダイナミックダンパ20によってプロペラシャフト1の収縮が制限されることがなく、プロペラシャフト1の収縮ストロークをより大きく確保することができる。
また、前記ダイナミックダンパ20を内筒部材12のスプライン軸部17の内周、すなわち当該スプライン軸部17の歯溝17aの内面17cに圧入固定するように構成したことから、当該ダイナミックダンパ20を内筒部材12の円筒部12bの内周に圧入する場合に比べて、弾性部材22の接触面積を低減することが可能となる。これによって、ダイナミックダンパ20の圧入作業が容易となり、生産性の向上に寄与することができる。
本発明は前記実施形態に係る構成に限定されるものではなく、例えばダイナミックダンパ20の形状については、前記プロペラシャフト1の共振周波数の特性等に応じて自由に変更することができる。
また、前記ダイナミックダンパ20の固定方法についても、前記圧入のほか、より強固に固定したい場合には、接着等によって固定してもよい。
さらに、前記実施形態においては、第1軸部材2を構成する外筒部材11及び内筒部材12や第2軸部材3について、アルミ合金材によって形成した例を示しているが、これらの材質についても、前記アルミ合金材のほか、その他の鉄系金属あるいはCFRP等の繊維強化プラスチックなど、必要な強度や重量及びコストの制約等に応じて自由に変更することが可能である。
1…プロペラシャフト
11…外筒部材(筒状部材)
12…内筒部材(筒状部材)
13…スプライン穴部
13a…歯溝
17…スプライン軸部
17a…歯溝
20…ダイナミックダンパ

Claims (3)

  1. 2つの筒状部材を相対移動可能に重合してなり、所定の軸方向入力に基づいて軸方向へ収縮可能に構成されたプロペラシャフトにおいて、
    前記重合部分において径方向外側に配置される外筒部材の軸方向一端部側を、その内周側に歯溝を有するスプライン穴部として構成する一方、径方向内側に配置される内筒部材の前記外筒部材と重合する端部側を、その外周側に歯溝を有するスプライン軸部として構成し、
    前記スプライン軸部の内周側にダイナミックダンパを配置したことを特徴とするプロペラシャフト。
  2. 前記ダイナミックダンパの外周面を前記スプライン軸部における歯溝の内面に当接させるようにして当該ダイナミックダンパを配置し、前記スプライン軸部の各歯部と前記ダイナミックダンパとの間に、それぞれ軸方向に延びる空間を形成したことを特徴とする請求項1に記載のプロペラシャフト。
  3. 前記ダイナミックダンパを、所定の質量を有するマス部材と該マス部材の外周に設けたほぼ円形の断面を有する弾性部材とによって構成し、
    前記弾性部材を前記スプライン軸部における歯溝の内面に圧接させるようにして前記ダイナミックダンパを配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロペラシャフト。
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