JP2010262962A - ピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリベンザゾール繊維のように優れた、耐熱性、難燃性、低線膨張係数を有し、プリント配線板の製造時の加工性に優れ、かつ電気絶縁性に優れるピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】ピリドビスイミダゾール繊維の表層部(表面〜1μm)から得られた電子線回折図において、赤道方向プロファイルにおける結晶(200)面由来の回折ピーク面積をS1、結晶(110)面、(210)面および(400)面由来の回折ピーク面積をS2としたとき、S2/S1が0.1〜1.5を満足するピリドビスイミダゾール結晶の存在状態であり、かつ、原子間力顕微鏡で測定される繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下であるピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板。
【選択図】図1

Description

本発明は、ピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板に関し、詳しくは、従来のポリベンザゾール繊維を用いたプリント配線板に比べて、プリント配線板の製造時の加工性に優れるだけでなく、絶縁性などの電気特性に優れるプリント配線基板に関する。
近年、通信用、産業用、民生用の電子機器の分野における実装方法の小型化、高密度化への指向は著しいものがあり、それに伴って材料の面でもより優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性が求められるようになった。例えば、プリント配線基板においては、従来、ガラス布を基材とするプリプレグを用いて製造されるガラス布基材銅張り積層板が多く使用されてきたが、近年、軽量化、低誘電率化、レーザー加工性等の要請から、全芳香族ポリアミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維を基材とするプリプレグを用いたプリント配線板が提案されている。しかしながら、これらの有機繊維を用いると積層板の電気絶縁性、耐熱性、熱膨張率などの点で問題点があった。
そこで、これらの欠点を改善するものとして負の線膨張係数を有するポリベンザゾール繊維で補強する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
ポリベンザゾール繊維は、強度、弾性率、耐熱性、難燃性、全ての点において有機繊維の中で最高レベルの性能を有している。そのため、これらの特徴を生かした各種の用途に展開されている。しかしながら、耐熱性、難燃性を生かした用途の中では、補強材繊維の高強度、高弾性率がゆえに、繊維の切断が容易でない。そのため、ポリベンザゾール繊維を用いてプリプレグを作製し、次いで、複数の前記プリプレグを積層してプリント配線板を製造する際の加工性に劣るという問題があった。このような状況のもと、プリント配線板の製造時の加工性に優れ、絶縁特性に優れるプリント配線板が要望されている。
特開2001−18324号公報
本発明の目的は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、ポリベンザゾール繊維のように優れた、耐熱性、難燃性、低線膨張係数を有し、プリント配線板の製造時の加工性に優れ、かつ電気絶縁性に優れる、ピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)ピリドビスイミダゾール繊維の表層部(表面〜1μm)から得られた電子線回折図において、赤道方向プロファイルにおける結晶(200)面由来の回折ピーク面積をS1、結晶(110)面、(210)面および(400)由来の回折ピーク面積をS2としたとき、S2/S1が0.1〜1.5を満足するピリドビスイミダゾール結晶の存在状態であり、かつ、原子間力顕微鏡で測定される繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下であることを特徴とするピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板。
(2)ピリドビスイミダゾール繊維の表層部(表面〜1μm)及び中心部から得られたピリドビスイミダゾール結晶の(200)面の電子線回折の方位角プロファイルにおいて、表層部から得た回折ピークの半値幅を中心部から得た回折ピークの半値幅で割った値Tが0.75〜1.25であるピリドビスイミダゾール繊維からなる(1)に記載のピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板。
(3)ピリドビスイミダゾール繊維の面方向の熱膨張率が−3ppm/℃以上、6ppm/℃以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板。
本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維は、電子線回折法による分析によれば、少なくとも繊維表層部の結晶のa、b軸方向の選択配向がランダム化しており、繊維の表層部と中心部との結晶の配向の差が少なく、繊維全体として結晶の配向がランダム化している。このことにより、高強力繊維に属する繊維でありながら、後加工性に支障がない程度の繊維強度を実現できる。さらに、繊維表面構造が緻密であるため、吸湿性が著しく低下する。
このため、本発明のピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板は、優れた耐熱性、難燃性、低線膨張係数を有し、しかも低吸湿性であるため、絶縁特性に優れている。
本発明で用いられるピリドビスイミダゾール繊維の表層部(表面〜1μm)の制限視野電子線回折図の赤道方向プロファイルの例を示す説明図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるピリドビスイミダゾールよりなる繊維は、少なくとも50%が、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)の繰り返し単位からなる。一方、残部は、2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレンが置換されているか又は置換されていないアリーレンにより置き換えられており、及び/又はピリドビスイミダゾールが、ベンゾビスイミダゾール、ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、ピリドビスチアゾール及び/又はピリドビスオキサゾールにより置き換えられている。
この場合、繰り返し単位の少なくとも75%は、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)から作られる、ラダーポリマーが好ましい。一方、残部は、2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレンが置換されているか又は置換されていないアリーレンにより置き換えられており、及び/又はピリドビスイミダゾールが、ベンゾビスイミダゾール、ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、ピリドビスチアゾール及び/又はピリドビスオキサゾールにより置き換えられている。
2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレンの部分的置き換え(せいぜい50%まで)の場合、アリーレンジカルボン酸、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸及び2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾールのカルボキシル基の除去後に残存する化合物が好ましい。
ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)の構造単位は、[化1]で示される。
Figure 2010262962
ポリマーのドープを形成するための好適な溶媒として、クレゾールやそのポリマーを溶解し得る非酸化性の酸が含まれる。好適な酸溶媒としては、例えば、ポリ燐酸、メタンスルホン酸、高濃度の硫酸、或いはそれらの混合物があげられる。より好ましい溶媒は、ポリ燐酸及びメタンスルホン酸であり、特に好ましい溶媒は、ポリ燐酸である。
ドープ中のポリマー濃度は、7質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは14質量%以上である。例えば、最大濃度は、ポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際上の取り扱い性により限定される。それらの限界要因のために、ポリマー濃度は通常では20質量%を越えることはない。
本発明において、好適なポリマーまたはコポリマーとドープは公知の方法で合成される(例えば、特表平8−509516号公報)。好適なモノマーは、非酸化性で脱水性の酸溶液中、非酸化性雰囲気で高速撹拌及び高剪断条件のもと、60℃から230℃までの段階的または一定昇温速度で温度を上げることによって反応させることができる。
このようにして重合されるドープは、紡糸部に供給され、紡糸口金から通常100℃以上の温度で吐出される。口金細孔の配列は、通常円周状、格子状に複数個配列されるが、その他の配列であってもよい。口金細孔数は特に限定されないが、紡糸口金面における紡糸細孔の配列は、紡出糸条(ドープフィラメント)間の融着などが発生しないような孔密度を保つことが肝要である。
紡出糸条において、十分な延伸比(SDR)を得るためには、米国特許第5296185号明細書の記載のように、十分な長さのドローゾーン長を設定することが重要である。さらに、比較的高温(具体的には、ドープの固化温度以上で紡糸温度以下)の整流された冷却風で均一に冷却させることが好ましい。ドローゾーンの長さ(L)は、非凝固性の気体中で固化が完了する長さが要求され、大雑把には単孔吐出量(Q)によって決定される。良好な繊維物性を得るには、ドローゾーンの取り出し応力をポリマー換算で(ポリマーのみに応力がかかるとして)2.2g/dtex以上とすることが好ましい。
本発明においては、上記で得られたピリドビスイミダゾールのドープフィラメント(延伸又は未延伸)は、凝固浴に浸漬される前に、ピリドビスイミダゾールが非相溶性である液体、すなわち、凝固剤の蒸気に積極的に接触させる蒸気処理を施すことが好ましい。
ポリベンザゾールの凝固剤としては、水、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコールの少なくとも1種が好ましく、簡便性の点で、水がより好ましい。
この蒸気処理によれば、ドープフィラメントが前記の液体の蒸気を含む気体(空気)に積極的に接触させられるため、ドープフィラメント中に凝固剤が繊維内部全体にわたって急激に浸透、拡散し、凝固核のようなものが繊維中心部方向に形成されるのではないかと考えられる。
繊維化した後に繊維断面を観察すると、驚くべきことに、構造形成開始のタイミングの違いに基づいて発生したと考えられる境界線、いわゆる、シース・コアと表現できる二層の発現が認められることがある。凝固剤が中心部までよく浸透するほど、コア層は小さくなり、最終的には境界線が認められなくなる。なお、蒸気処理をしない従来の繊維においても、シース・コアの二層構造は認められない。
蒸気処理の温度は、凝固剤の種類によっても異なるが、水の場合は、水蒸気雰囲気の温度または噴きつける水蒸気の温度は50〜200℃が好ましく、さらに好ましくは60〜160℃である。前記温度が50℃未満では、強度を低下させる効果が小さくなる。一方、前記温度が200℃を越えると、糸切れが多発して生産性が著しく低下する傾向がある。水より低沸点の凝固剤であれば、より低温でもよい。また、水より高沸点の凝固剤であれば、より高温でもよく、沸点と蒸気圧とを考慮して適宜選定することができる。
蒸気相中の全気体成分に対する蒸気成分の含有率は、短時間処理のためには、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
蒸気相温度が低すぎると、シース層の厚みが発達せず、逆に温度が高すぎるとシース・コア構造は発現するが、通過中のフィラメントの温度が上昇し、糸切れが多発する傾向がある。蒸気の含有率についても、低すぎるとシース・コア構造を発現しにくくなる。
蒸気処理する装置は、ドープフィラメントが蒸気に接触し、少なくとも表層部の凝固を進行させることができるものであればよく、連続式、非連続式、密閉形、非密閉形など特に限定されない。
蒸気相を通過した後のフィラメントは、次に凝固(抽出)浴に導かれて、ピリドビスイミダゾールの溶剤の抽出とフィラメントの完全な凝固がなされる。凝固浴は、特に限定されず、如何なる形式の凝固浴でもよい。例えばファンネル型、水槽型、アスピレータ型あるいは滝型などが使用できる。
最終的に、凝固浴においてフィラメント中に残存する溶剤が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下になるように抽出する。本発明における抽出媒体として用いられる液体に特に限定はないが、好ましくはピリドビスイミダゾールに対して実質的に相溶性を有しない水、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコール等である。抽出液は燐酸水溶液や水が簡便で好ましい。
また、凝固(抽出)浴を多段に分離し燐酸水溶液の濃度を順次薄くし、最終的に水で水洗する方法も採用できる。また、凝固(抽出)工程において、フィラメント束を水酸化ナトリウム水溶液などで中和処理して後、水洗することは好ましい方法である。この後乾燥、熱処理を施してシース・コアの二層に識別できる繊維とすることができる。
本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維は、繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下であり、好ましくは16nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。このことは、従来のものに比べて、特に繊維表面構造が緻密であることを示し、このことにより、吸湿性が下がるため、プリント配線板の部材として使用したとき、信頼性が高まるなどの効果が得られる。
繊維表面の平均自乗粗さRmsは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。例えば、AFMとしては、Seiko Instruments(SII)社製のSPI3800N−SPA300を使用する。探針はバネ定数2N/m、長さ450μm、幅60μm、厚さ4μmのSi製矩形型カンチレバーSII社からSi−DF3を用いる。スキャナーは100μmスキャナーを観察モードはDFMモードを採用する。走査は速度0.5Hz、走査方向は繊維軸に平行とし、大気中20℃、相対湿度65%の条件で測定する。
測定に供する繊維は、エタノールとn−ヘキサンの混合液で洗浄、乾燥後用いた。観察視野範囲は一片5μm四方の正方形領域とし、観察後付属のソフトウエアの三次元傾斜補正等を施し平面化処理を行う。繊維の曲率の存在により画像を平面化した時に生じる歪みを考慮するため、中心部の3μm四方の正方形領域のみの平均自乗粗さRmsを付属のソフトウエアを用いて補正の後算出する。観察はランダムに10点以上の場所で行い、それぞれのRmsを求め、平均値を算出した。なお、Rmsは下記式を用いて表現することができる。
Rms =[(1/N)Σ(Zi−Z0)0.5
ここでZiは各測定点での高さ、Z0は測定個所全体にわたっての平均の高さ、Nは測定点数を表す。
次に、繊維表面の平均自乗粗さを20nm以下にして、繊維表面構造を緻密にする方法について述べる。
吸湿性を低下させるためには、繊維表面の結晶配向を高くすることが重要である。このために、抽出過程において繊維ドープの凝固速度を遅くして、繊維の内外層で構造に変化をつけることが肝要である。
凝固速度を遅くする方法としては、凝固液の燐酸水溶液濃度を濃くしたり、浴温度を低くしたり、非水系の凝固剤を選択することが有効である。燐酸水溶液の濃度は50%以上80%未満が好ましい。より好ましくは55%以上70%未満であり、特に好ましくは60%以上65%未満である。
濃度が高い方が効果は大きいが、重要以上に濃いと繊維強度が低下し、好ましくない。凝固浴温度については、5℃以下であればよい。好ましくは4℃から−30℃、さらに好ましくは0℃から−15℃の温度範囲である。しかしながら、あまり温度を下げすぎても、浴のまわりに露が発生するため、製造機械運転上好ましくない。
非水系の凝固剤を選択する場合は、エタノール、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、エチレングリコールなどのグリコール類など、水と親和性のある有機溶剤が好ましい。勿論、複数の上記非水系凝固剤や水を混合して使ってもよい。この後、繊維を乾燥させさらに熱処理工程を通す。
乾燥温度は、繊維強度の低下をもたらさない温度であればよく、例えば、150℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下、さらに好ましくは220℃以上270℃以下とする。熱処理温度については、400℃以上700℃以下、好ましくは500℃以上680℃以下、さらに好ましくは550℃以上630℃以下とする。
次いで、繊維を乾燥させ、さらに重要に応じて熱処理工程を通す。乾燥温度は、凝固剤や溶剤が飛びやすい温度であれば特に限定されない。具体的には150〜400℃、好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは220〜270℃とする。弾性率を向上させる目的で、重要に応じて張力下にて熱処理を施してもよい。熱処理温度については、400〜700℃、好ましくは500〜680℃、さらに好ましくは550〜630℃とする。かける張力は0.3〜1.2g/dtex、好ましくは0.5〜1.1g/dtex、さらに好ましくは0.6〜1.0g/dtexである。
上記のような方法で製造された、本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維は、電子線回折法による繊維微細構造分析により、下記のような特徴が得られる。
すなわち、本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維は、表層部(表面〜1μm)から得られたポリベンザゾール結晶の電子線回折図(図1参照)において、赤道方向プロファイルにおける結晶(200)面由来の回折ピーク面積を(S1)、結晶(110)、(210)面及び(400)面由来の回折ピーク面積を(S2)としたとき、S2/S1が0.1〜1.5であることが重要である。
S2/S1は、好ましくは0.2〜1.3である。0.1未満では繊維の強度低下が不十分になりやすく、逆に1.5を超えると後加工性は高くても繊維の強度低下が大きくなりすぎて、操業性、工程通過性などが悪くなることがある。
また、ピリドビスイミダゾール繊維の表層部(表面から1μm)及び中心部から得られたポリベンザゾール結晶の(200)面の電子線回折の方位角プロファイルにおいて、表層部から得た回折ピークの半値幅を中心部から得た回折ピークの半値幅との比Tが0.75〜1.25であることが好ましい。より好ましくは、0.85〜1.15である。
前記の半値幅比Tが0.75未満では、繊維の強度低下が不十分になることがある。一方、1.25を超えると繊維の強度低下が大きくなりすぎて、操業性、工程通過性などが悪くなることがある。
本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維について、電子線回折法による分析法で回折図や解析結果を得るには、公知の方法が採用できる。測定用繊維は、繊維軸(長さ)方向で、かつ繊維の表層部と中心部とを含むように、厚さ70nm程度の超薄切片としたものを使用する。
すなわち、単繊維をLuft法(J.Biophys.Biochem.Cytol.,9,409(1961))にしたがって調製したエポキシ樹脂に包埋し、60℃のオーブン中で一夜放置し、固化固定して繊維を包埋させたレジンブロックを得る。次に、このレジンブロックをライヘルト社製のウルトラマイクロトームに取り付け、ガラスナイフを用いて、包埋した繊維がブロック表面近傍に現れるまで研磨し、次いでダイアトーム社製ダイアモンドナイフを用いて単繊維の繊維軸方向に平行な方向に切削する。
例えば、単繊維の直径が10μmの場合、繊維表面から連続的に約70nmの厚さの超薄切片を切削すると、約140枚の切片に切り分けることができる。切削した全ての切片を、切削順に10枚ごとのグループとして銅グリッドに選択的に回収した。切削開始から10枚目までをグループ1とし、順次グループ1,グループ2・・・グループnと定義する。
このグループのうちnが偶数の場合には(n/2)番目のグループを、奇数の場合には(n/2−0.5)番目のグループを制限視野電子線回折測定に供する。一本の単繊維を、ほぼ同じ厚さの超薄切片に全て切り分けると、上記のグループの繊維切片は、繊維の表層部(表面)と中心部との両方が含まれたものとなる。
厚さ約70nmで、繊維の表層部(表面)と中心部との両方が含まれた超薄切片を作成後、得られた超薄切片を、300メッシュの銅グリッド上に回収し、薄くカーボン蒸着を施す。なお、本発明における中心部とは、繊維の断面を円とみなしたときに中心点とみなせる部分を含む場所であり、直径で数ミクロン程度までの芯部を意味し、超薄切片で言えば、両表面の中間部である。
次いで、電子顕微鏡内に超薄切片を導入し、繊維の表層部と中心部の両方について制限視野電子線回折像を撮影し、電子線回折図を得る。なお、前記の電子線回折像を撮影する際、制限視野(アパチャー)の径は1μm以下とし、繊維の超薄切片に切削時に発生したアーティファクト(例えば、シワや切片のやぶれなど)の無い部分を回折像撮影部位に選択した。
得られた電子線回折図のうち、赤道方向のプロファイルを、ローレンツ関数を用いて近似して、(200)と(110)、(210)および(400)由来の回折ピークの積分強度(面積)と半値幅を算出し、(200)由来の面積をS1、(110)、(210)および(400)由来の面積の和をS2とし、S2/S1を算出する。
また、見かけの結晶サイズ(ACS)は、次式を用いて算出する。
ACS=0.9λ/βcosθ
ここで、λは電子線の波長、βは半値幅(単位はラジアン)、θは回折角2θの半値である。
さらに(200)回折については、方位角方向の回折プロファイルをローレンツ関数で近似して半値幅を算出する。
本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維において、シース層とコア層の二層構造が形成されている場合、その簡便な判別は、繊維断面を光学顕微鏡で観察することによって可能である。すなわち、繊維断面を光学顕微鏡で観察できる厚さに切断し、光学顕微鏡で40倍程度に拡大して観察すると、シース層とコア層の境界が円形の線として認められる。この円形の線の外側がシース層で、内側がコア層である。
シース層が凝固剤蒸気の浸透に起因して形成された場合、シース層の厚みはできるだけ厚く、コア層の直径はできるだけ小さい方が好ましい。本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維におけるコア層の割合、すなわち、繊維断面方向におけるコア層の平均径rの、繊維断面径rに対する比率であるR(%)[=(r/r)×100]は、90%以下であることが好ましい。より好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは60%以下であり、0%に近づくことが最も好ましい。蒸気が、よく浸透、拡散するような蒸気処理条件を選択すれば、コア層の比率が低くなり、最終的にコア層の比率を0%にすることができる。
本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維が、適度に強度低下し、後加工性が向上する理由は明確ではない。
しかしながら、上記の電子線回折法によるピリドビスイミダゾール結晶の電子線回折図から下記のように推定される。
(a)少なくとも繊維表層部の結晶のa、b軸方向の選択配向が、従来のものに比べてランダム化している。
(b)繊維の表層部と中心部との結晶の配向の差が少なくなり、繊維全体として結晶の配向が従来のものに比べてランダム化している。
(c)このことにより、繊維強度が低下し、ピリドビスイミダゾール繊維の後加工性が向上するものと考えられる。
また、結晶の選択配向が適度に乱れて特定方向への応力集中が緩和され、繊維内部の潜在歪も少なくなるため、フィブリル化が抑制できるものと考えられる。
本発明で用いるピリドビスイミダゾール繊維の使用形態としては、前記の方法で得たフィラメントを用いた織物、UD(一軸方向に繊維を平行に並べて作成した補強材)、不織物などのシート状物が挙げられる。シート状物の密度を調整するなどの目的で、ガラス、アラミド、天然セルロース系繊維のクロス又はミクロフィブリルを混用してもよい。
織物にする場合は、例えば、特開平2006−203142号公報に記載の方法によって好適に得ることができる。
織物の組織は、平組織、綾組織、その他通常プリプレグに用いられる組織のいずれを用いてもよいが、好ましくは平組織、綾組織など目ずれが起きにくい組織を用いると、高い補強性能を発現させることができる。織物に使用される繊維は、600dtex以下、好ましくは300dtex以下、さらに好ましくは200dtex以下の低い繊度であると、高い性能を得やすい。また、織り密度は。40本/25mm以下であることも重要である。さらに、織物の目付は200g/m以下であり、好ましくは150g/mであると性能を発揮できる。
さらに、ピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリプレグは、プリント配線板用の基布に用いることができる。すなわち、プリント配線板は、前記のシート状物に硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを積層して、構成される。
プリント配線板に用いられる硬化性樹脂組成物として、エポキシ樹脂を成分として含有する硬化性樹脂組成物が好ましい。上記のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する樹脂であればよく、公知の樹脂が1種若しくは2種以上の組み合わせて用いられる。また、エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂としては、例えば、シアネート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂も好適である。
このようなエポキシ樹脂として、例えば、フェノール類またはアルコール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリヂジルエーテル型エポキシ樹脂、カルボン酸類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、アミン類またはシアヌル酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジル型エポキシ樹脂、2重結合の酸化によって得られる内部エポキシ樹脂等、又はエポキシ樹脂変成BT樹脂、エポキシ樹脂変成シアネートエステル樹脂が挙げられる。
また、上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、ポリアミン系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、アニオン重合触媒型硬化剤、カチオン重合触媒型硬化剤、潜在型硬化剤等が使用できる。また、用途に応じて所望の性能を発現せしめる目的で、本来の性質を損なわない範囲で、充填剤や添加物を硬化性樹脂組成物に配合させてもよい。
プリプレグ中におけるピリドビスイミダゾール繊維の割合は、5〜90質量%が好ましく、より好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは20〜70質量%である。ピリドビスイミダゾール繊維の割合が5質量%未満では、硬化後の寸法安定性や強度が不十分となりやすい。また、この割合が90質量%を越えると、接着力不足や金属箔のはがれが発生しやすくなる。
樹脂組成物と基材との複合方法については、例えば、樹脂生成物を溶融して基材中に含浸させる溶融法、樹脂組成物を溶媒に溶解後基材に含浸させ次いで溶媒を乾燥してプリプレグを得る湿式法等が好適である。成形及び硬化は、温度80〜300℃、時間1分〜10時間、圧力0.1〜500kg/cmの範囲が好ましく、より好ましくは温度150〜250℃、時間1分〜5時間、圧力1〜100kg/cmの範囲である。
積層体に用いる金属箔としては、例えば、銅箔やアルミニウム箔が挙げられる。その厚みは、例えば、3〜200ミクロンが好ましく、より好ましくは5〜120ミクロンである。本発明のプリプレグは、両面に銅箔を積層して硬化することにより、銅張積層板を得ることができる。また、プリプレグをプリント配線板の上下に積層した後、レーザー照射によりビアホールを形成し、次いでメッキしてビアホールの接続とパターン形成する、いわゆるブルドアップ工法用プリプレグとして用いることができる。この時は、予め金属箔の片面にプリプレグ積層した、いわゆる樹脂つき銅箔の形で使用してもよい。また、プリント配線板の外側にプリプレグを積層する際に、最外層に銅箔を同時に積層することもできる。この場合、最外層の銅箔はレーザーによるビア形成の時に利用できる。
さらに、前記のプリプレグに、レーザー又は機械的パンチングにより穴加工し、次いでこの穴に導電性ペーストを充填した後に、その両面に銅箔を積層し硬化することによりコア材とすることができる。このコア材をパターニングし、プリント配線板を作製し、次いで同様に作製された充填剤含有プリプレグを、引き続き積層する多層配線板にも用いることができる。
以下、実施例を例示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例で用いたピリドビスイミダゾール繊維及びそれを用いたプリント配線板の特性値の測定及び各種評価は下記の通りである。
(1)極限粘度
メタンスルホン酸を溶媒として、0.5g/Lの濃度に調製したポリマー溶液の粘度を、オストワルド粘度計を用いて、25℃に制御された恒温槽中で測定した。
(2)繊維断面におけるコア層の平均径rの繊維断面径rに対する比率R(%)
測定用繊維をエポキシ樹脂(ガタン社製、G−2)に胞埋した後、クロスセクションポリッシャー(日本電子(株)製、SM−09010)を用いてアルゴンイオンエッチングして、観察用繊維断面を得た。次いで、光学顕微鏡によってコア層とシース層との境界線を観察し、コア層の平均径rと繊維断面径rとを測定し、コア層の平均径rの繊維断面径rに対する比率R(%)を下記式により算出した。
R(%)=(r/r)×100
(3)引張強度及び弾性率
標準状態(温度:20±2℃、相対湿度(RH):65±2%)の試験室内に24時間以上放置後、繊維の引張強度及び弾性率を、JIS L 1013に準じて引張試験機にて測定した。
(4)耐熱性
熱重量分析計(TA Instrument社、TGA Q50)を用いて、空気中、20℃/minの昇温速度で、常温から温度を上昇させたときに、重量保持率[(ある温度のときのサンプル重量/元のサンプル重量)×100]が90%となる温度で評価した。
(5)S2/S1、見かけの結晶サイズ、及び半値幅
電子線回折測定用サンプルは、以下に記載した方法で、測定用繊維を繊維軸(長さ)方向で、かつ繊維の表層部と中心部とを含むように、厚さ70nm程度の超薄切片にしたものを使用した。
すなわち、単繊維をLuft法(J.Biophys.Biochem.Cytol.,9,409(1961))にしたがって調製したエポキシ樹脂に包埋し、60℃に制御されたオーブン中で一夜放置し、固化固定して繊維を包埋させたレジンブロックを得た。次に、このレジンブロックをウルトラマイクロトーム(ライヘルト社製)に取り付け、ガラスナイフを用いて、包埋した繊維がブロック表面近傍に現れるまで研磨した。次いで、ダイアトーム社製ダイアモンドナイフを用いて、単繊維の繊維軸方向に平行な方向に切削して、厚さ約70nmで、繊維の表層部(表面)と中心部との両方を含む超薄切片を作成した。
得られた超薄切片を、300メッシュの銅グリッド上に回収し、薄くカーボン蒸着を施し、次いで電子顕微鏡内に超薄切片を導入し、繊維の表層部と中心部の両方について制限視野電子線回折像を撮影し(この際、制限視野(アパチャー)の径は1μm以下とし、繊維の超薄切片に切削時に発生したアーティファクト(例えば、シワや切片のやぶれなど)の無い部分を回折像撮影部位に選択した)電子線回折図を得た。
得られた電子線回折図のうち、赤道方向のプロファイルを、ローレンツ関数を用いて近似して、(200)と(110)、(210)及び(400)由来の回折ピークの積分強度(面積)と半値幅を算出した。(200)由来の面積をS1、(110)、(210)および(400)由来の面積の和をS2とし、S2/S1を算出した。
また、見かけの結晶サイズ(ACS)は、次式を用いて算出した。
ACS=0.9λ/βcosθ
ここで、λは電子線の波長、βは半値幅(単位はラジアン)、θは回折角2θの半値である。
さらに(200)回折については、方位角方向の回折プロファイルをローレンツ関数で近似して半値幅を算出した。
(6)繊維表面の平均自乗粗さ(Rms)
Rmsは原子間力顕微鏡(Seiko Instruments(SII)社製、SPI3800N−SPA300)を用い、探針はバネ定数2N/m、長さ450μm・幅60μm・厚さ4μmのSi製矩形型カンチレバーSII社からSi−DF3を用いた。スキャナーは100μmスキャナーを観察モードはDFMモードを採用し、走査は速度0.5Hz、走査方向は繊維軸に平行とし、大気中で20℃、相対湿度65%の条件で測定した。
測定に供する繊維は、エタノールとnヘキサンの混合液で洗浄、乾燥後用いた。観察視野範囲は一片5μm四方の正方形領域とし、観察後付属のソフトウエアの三次元傾斜補正等を施し平面化処理を行なった。繊維の曲率の存在により画像を平面化した時に生じる歪みを考慮するため、中心部の3μm四方の正方形領域のみの平均自乗粗さRmsを、付属のソフトウエアを用いて補正後算出する。観察はランダムに10点以上の場所で行い、それぞれのRmsを求め、平均値を算出した。なお、Rmsは下記式を用いて算出した。
Rms =[(1/N)Σ(Zi−Z0)0.5
(ここで、Ziは各測定点での高さ、Z0は測定個所全体にわたっての平均の高さ、Nは測定点数を表す。)
(7)後加工性
押込捲縮法により座屈捲縮を与えた評価繊維を、カット長44mmにカットしてステープルとした。得られたステープルをオープナーにより開綿後、ローラーカードにより目付450g/mのウェブを作製した。得られたウェブを順次9枚積層し、Foster社製ニードル(品番:15×18×40×3.5PB−A F20 2−18−3B/LI/CC/CONICAL)を用いて、針深度7mmで、フェルトの片側面からのみ、ニードルパンチング数が2000/cmになるまでニードルパンチしてフェルトを得た。ウェブを順次積層してフェルトを得るまでの間に折れたニードルの本数(出来上がりのフェルト1m当たりの本数に換算)を調べた。折れた本数が少ないほど後加工性が良好である。
(8)工程通過性
紡糸から繊維ウェブ製造に至るまでの工程における製造トラブルの発生状況をもとに、工程通過性を判断した。
(9)プリント配線板のマイグレーションテスト
40μmピッチの櫛形電極に、電圧(DC60V)を印荷し、85℃、85%RHの恒温恒湿槽(FX412Pタイプ、エタック社製)の中に入れ、電圧負荷状態のまま5分毎に絶縁抵抗値を測定し、記録した。線間の抵抗値が100Mオーム以下に達する時間を測定し、マイグレーションの評価とした。
(10)線膨張係数
熱膨張率は、TMA(セイコーインスツルメンツ社)を使用して、熱機械的分析方法(TMA法)により測定した。
(実施例1)
先に繊維の調整法について述べる。
米国特許第4533693号明細書に示される方法によって得られた、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が19.3dL/gであるピリドビスイミダゾール(14.0質量%)及び五酸化リンの含有率が83.17%のポリ燐酸から成る紡糸ドープを紡糸に用いた。
ドープは金属網状の濾材を通過させた後、2軸混練装置で混練りと脱泡を行った。次いで、昇圧し、重合体溶液温度を170℃に保ちながら、孔数66を有する紡糸口金から170℃で紡出し、温度60℃の冷却風を用いて吐出糸条を冷却した。さらに、自然冷却で40℃まで吐出糸条を冷却した後、凝固浴中に導入した。凝固浴では、まず0.3秒間蒸気にさらした後、凝固液に接触せしめた。凝固液はイソプロパノール、その温度は20℃に調整して繊維を作成した。
次に、繊維をゴゼットロールに巻き付け一定速度を与えて第2の抽出浴中でイオン交換水で糸条を洗浄した後、0.1規定の水酸化ナトリウム溶液中に浸漬し、中和処理を施した。さらに、水洗浴で水洗した後、巻き取り、80℃の乾燥オーブン中で乾燥し、繊維中に含まれる水分率が2%以下になるまで放置した。次いで、張力5.0g/d、温度600℃の状態で、2.4秒間熱処理を行った。
得られた繊維は、S2/S1が1.1、Tが0.98、平均自乗粗さが15.4nm、線膨張係数が−4ppm/℃であった。
また、得られたピリドビスイミダゾール繊維の工程通過性は特に問題はなく、繊維ウェブを積層してフェルトを製造する前記の後加工性の評価では、折れたニードルの本数は60本/mであり、後加工性が優れていることが確認できた。
次に、上述の方法で得られた繊維(104dtex)を用いて、平織物(織密度:経糸、緯糸とも25mmあたり25本)を得た。
さらに、ビスフェノールAエポキシ樹脂(100質量部)、2−メチル−4−メチルイミダゾール(3質量部)を、メチルエチルケトン(100質量部)に溶解してワニスを作製した。次いで、該ワニスを上述のピリドビスイミダゾール繊維を用いた平織物に含浸してプリプレグを作製した。
このようにして得られたプリプレグを8枚重ね、上下に18μm厚の銅箔を重ね、ステンレス板で挟み、真空プレス成型機を用い、4MPaの圧力で170℃、90分間の加熱成型を行った。こうして半導体パッケージ用多層プリント配線板のコア材を製造した。
さらに、同様のコア材の両面に、接着シートとして厚み40μmのABF SH−9K(味の素テクノファイン社製、商品名)を用い、従来のセミアディティブ工法によりビルドアップ層をそれぞれ2層ずつ形成したプリント配線板を製造した。
得られたプリプレグは、吸湿率が1.7%、面方向の熱膨張係数が1ppm/℃であった。また、プリント配線板は、マイグレーションテストの結果が473時間であった。
(比較例1)
凝固液として20%燐酸水溶液(40℃)を使うこと以外は実施例1と同じ方法で繊維を製造した。
得られた繊維は、S2/S1が0.97、Tが1.1、平均自乗粗さが39.1nm、線膨張係数が−4ppm/℃であった。
また、得られたピリドビスイミダゾール繊維の工程通過性は問題なしであり、繊維ウェブを積層してフェルトを製造する前記の後加工性の評価では、折れたニードルの本数は370本/mであり、後加工性に問題があった。
さらに、得られた繊維から実施例1と同様にして、平織物、プリプレグ、プリント配線板を作製した。
得られたプリプレグは、吸湿率が4.5%、面方向の熱膨張係数が1ppm/℃であった。また、プリント配線板は、マイグレーションテストの結果が171時間であった。
これらの結果より、本発明は、従来に比べて吸湿率の著しい低下が認められ、物性上、極めて優れていることが理解できる。
本発明は、これまで得られなかった繊維表面が緻密であるという特異な繊維微細構造を有し、後加工性に優れ、かつ低吸湿性、低誘電率であるピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板であるため、電気絶縁性における貢献が高い。
本発明のピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板は、ポリベンザゾール繊維のように優れた耐熱性、難燃性、低線膨張係数を有し、しかも電気絶縁性に優れているため、シリコンチップを実装するための高密度高性能回路基板用途はもとより、特に、半導体実装分野や次世代情報携帯電話分野に好適である。

Claims (3)

  1. ピリドビスイミダゾール繊維の表層部(表面〜1μm)から得られた電子線回折図において、赤道方向プロファイルにおける結晶(200)面由来の回折ピーク面積をS1、結晶(110)面、(210)面および(400)由来の回折ピーク面積をS2としたとき、S2/S1が0.1〜1.5を満足するピリドビスイミダゾール結晶の存在状態であり、かつ、原子間力顕微鏡で測定される繊維表面の平均自乗粗さが20nm以下であるピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板。
  2. ピリドビスイミダゾール繊維の表層部(表面〜1μm)及び中心部から得られたピリドビスイミダゾール結晶の(200)面の電子線回折の方位角プロファイルにおいて、表層部から得た回折ピークの半値幅を中心部から得た回折ピークの半値幅で割った値Tが0.75〜1.25であるピリドビスイミダゾール繊維からなる請求項1に記載のピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板。
  3. ピリドビスイミダゾール繊維の面方向の熱膨張係数が−3ppm/℃以上、6ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のピリドビスイミダゾール繊維を用いたプリント配線板。
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