JP2010261939A - 質量画像の形成方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】腫瘍組織などに発現しているタンパク質を、細胞レベルで網羅的に可視化する画像の形成方法で、詳しくは定量性の高い二次元画像の形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】細胞または組織を含む生体組織切片を対象とした質量分析法において、生体切片の測定範囲における各画素に対し、その領域に存在量が既知の生体分子を内部標準として用い、得られる測定スペクトルについて(対象分子の強度)/(内部標準物質の強度)値を算出して用いることにより、測定範囲における対象分子の分布像を得るものである。本発明により、検体における対象構成物の質量分析情報に基づく二次元分布画像を取得する際、測定範囲内での各画素間での感度差を補正でき、画像の定量性が向上する。これにより、特に組織切片上のタンパク質について、細胞レベルでの定量的可視化が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、検体中の構成物の質量に関する情報を質量分析法を用いて画像として取得する方法に関し、特に生体組織切片中に含まれるタンパク質、ペプチドなどの生体関連物質の二次元分布状態を、信号強度を規格化して画像を形成する方法に関する。
飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF−SIMS)を用いて、腫瘍組織などに発現しているタンパク質の発現量を信号強度に基づいて網羅的に可視化する分析手法が知られる(特許文献1)。
また、質量分析において、標準物質を用いた信号強度の規格化が知られる。プロテオーム解析においては、検体抽出物を二次元電気泳動で分離し、各タンパク質成分を質量分析により解析する際、含有量が既知のタンパク質の強度を基準として規格化し、定量性のある結果を得る。
TOF−SIMSやマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MS)を用いる場合も、目的のタンパク質成分の信号強度を規格化して二次元分布像を形成する方法が知られる。
この際、一次イオンの総ドーズ量やパルスレーザーの入射量、または、得られた二次イオンのトータルカウント数を基準として規格化する方法が知られている。
また、外部標準物質を用いた規格化も提案されている。ここで外部標準物質とは、質量分析により得られる質量信号強度を規格化するための標準物質で、測定試料に含まれず、該試料に添加する物質をいう。例えば、TOF−SIMSを用いる場合、試料の測定範囲外に外部標準となる物質を配置し、同一測定条件で得られた外部標準の信号強度を基準として規格化する方法が開示されている(特許文献2)。MALDI−MSでは、生体組織切片の構成物における質量スペクトルの二次元分布像を得る際に、マトリックス剤中に特定のペプチドを一定量混在させて試料表面に均一に噴霧して、外部標準として使用する方法が知られる。
さらに、内部標準を用いた規格化も提案されている。ここで内部標準物質とは、質量分析により得られる質量信号強度を規格化するための標準物質で、測定試料にあらかじめ含まれている物質をいう。例えば、TOF−SIMSで、脂質成分から得られるフラグメント・イオンの信号強度を基準として、細胞膜表面に含まれるコレステロール量の信号強度を規格化して、その二次元分布像を形成する方法が開示されている(非特許文献1)。
米国特許7446309 特開2004−037120
S.G.Ostrowski et al.,Anal.Chem.79,3554(2007).
特許文献2では、外部標準物質を対象となる構成物から離れた位置に配置するため、測定範囲内での局所的に存在する塩や脂質などのイオン化阻害物質に起因する局所的な感度のばらつきを補正することが難しかった。
非特許文献1においては、培養細胞を二次元分布測定する際に、細胞膜上の脂質分子のフラグメント・イオン(CH )の信号を、画像における各画素において内部標準として用いる。しかしながら、内部標準に用いる脂質分子が細胞膜の形状に則し偏った二次元分布を持つため、例えば、組織切片においては、内部標準となる脂質分子があまり存在しない核や細胞以外の領域においては、規格化された信号が、実際の存在量に対する信号より高く算出されていた。そのため、二次元分布画像を形成した際に、測定対象物の存在量を適切に反映した画像を形成することが難しかった。
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討した結果、本発明に至った。
本発明は、生体組織切片の構成物の質量に関する情報に基づいて、前記構成物中の対象構成物の二次元分布画像を形成する画像形成方法であって、
前記構成物が属する領域を少なくとも細胞内部の領域、核の領域、細胞外部の領域に決定する工程、
前記工程で決定した領域ごとに、前記構成物の質量スペクトルにおける前記対象構成物に由来する質量信号の強度と前記構成物中の内部標準物質に由来する質量の信号強度から前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度を算出する工程、
前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度に基づいて前記対象構成物の二次元分布画像を形成する工程、
を有し
前記内部標準物は、(i) 細胞内部の領域ではアクチン、チューブリン、GAPDHのいずれかを用い、(ii)核の領域ではヒストン又は核酸を用い、(iii)細胞外部の領域ではアルブミン又はサイトカインを用いる
ことを特徴とする対象構成物の二次元分布画像を形成する画像形成方法に関する。
本発明により、検体における構成物の質量情報に基づく二次元分布画像を取得する際、画素ごとに質量分析の際の感度差などのばらつきを補正した信号強度を得られる。さらに、画素が属する領域によって内部標準を選択するため、より適当な内部標準が選択され、これにより規格化された信号強度の分布は、実際の対象構成物としてタンパク質等の存在分布を正しく示す。
検体の光学顕微鏡像、測定範囲における画素座標XYの模式図 「画素が属する領域」を特定するための補正した脂質フラグメント二次イオン信号分布(128×128ピクセル) (a),(b),(c):「画素が属する領域」に特定されたそれぞれの領域(a),(b),(c)に割り当てられた各内部標準物質の信号強度の二次元信号分布(128×128ピクセル) 測定により得られた規格化処理をおこなっていないタンパク質Cの二次イオン信号強度の分布(128×128ピクセル) 「画素が属する領域」を特定し、各画素に内部標準物質を割り当てての規格化処理をおこなったタンパク質Cの信号強度の二次元分布(128×128ピクセル) 「画素が属する領域」を特定せず、測定範囲全画素に同一の内部標準物質を適用しての規格化をおこなったタンパク質Cの信号強度の二次元分布。内部標準物質として(a)β−アクチン、(b)脂質成分、をそれぞれ用いて規格化した信号強度の分布(128×128ピクセル) (a),(b),(c):「画素が属する領域(a),(b),(c)」の特定、および、各領域における内部標準物質として割り当てられた各内部標準物質の規格化信号強度の二次元分布(64×64ピクセル) 測定により得られた規格化処理をおこなっていないタンパク質Cの二次イオン信号強度の分布(64×64ピクセル) 「画素が属する領域」を半自動的に特定し、各画素に内部標準物質を割り当てての規格化をおこなったタンパク質Cの信号強度の二次元分布(64×64ピクセル) 「画素が属する領域」を特定せず、全画素に同一の内部標準物質を適用しての規格化をおこなったタンパク質Cの信号強度の二次元分布。内部標準物質として(a)β−アクチン、(b)脂質成分、をそれぞれ用いて規格化した信号強度の分布(64×64ピクセル)
本発明は、生体組織切片の構成物の質量に関する情報に基づいて、構成物中の対象構成物の二次元分布画像を形成する画像形成方法であって、
前記構成物が属する領域を少なくとも細胞内部の領域、核の領域、細胞外部の領域に決定する工程、
前記工程で決定した領域ごとに、前記構成物の質量スペクトルにおける前記対象構成物に由来する質量信号の強度と前記構成物中の内部標準物質に由来する質量の信号強度から前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度を算出する工程、
前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度に基づいて前記対象構成物の二次元分布画像を形成する工程、を有し
前記内部標準物は、(i)細胞内部の領域ではアクチン、チューブリン、GAPDHのいずれかを用い、(ii)核の領域ではヒストン又は核酸を用い、(iii)細胞外部の領域ではアルブミン又はサイトカインを用いる対象構成物の二次元分布画像を形成する画像形成方法に関する。
本発明の画像形成方法は、検体中の構成物の質量に関する情報を質量分析法を用いて取得し、取得した質量情報に基づいて対象構成物の二次元分布画像を形成する画像の形成方法であって、以下の工程で実施できる。
(1)検体の測定範囲を決定する工程
(2)前記測定範囲を画素に分割する工程、
(3)質量分析法により前記画素の質量スペクトルを得る工程、
(4)前記画素が属する領域を決定する工程
(5)前記画素の質量分析用内部標準物質を決定する工程、
(6)前記画素における質量スペクトルにおける対象構成物に由来する質量の信号強度と内部標準物質に由来する質量の信号強度から、前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度を算出する工程、
(7)前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度の測定範囲における二次元分布画像を構築する工程
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)検体の測定範囲を決定する工程
測定範囲の決定は検体を観察して行う。観察の手段は特に限定されないが、質量分析装置に付属の顕微鏡、光学顕微鏡などが用いられる。また、蛍光染色処理の施された生体組織切片を対象とする場合には、蛍光顕微鏡を使用してもよい。
質量分析装置に付属の顕微鏡を用いる場合は、例えば、まず、低倍率で試料を観察しながら、試料ののったステージを移動し、観察すべき測定範囲をおおまかに決定し、さらに高倍率で観察し、対象となる細胞が測定範囲に含まれる様に微調整することができる。
なお、本発明においては、多くの場合、検体は生体組織切片であり、測定範囲は概ね細胞レベルである。「細胞レベル」とは、少なくとも一つ一つの細胞を識別できるレベルを意味する。細胞の径は概ね10μmから20μmの範囲にあり、神経細胞などの大きなものは約50μmである。したがって、本工程の観察は、空間分解能が10μm以下であることが必要であり、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。
(2)測定範囲を画素に分割する工程
測定範囲を画素に分割する際は、各画素のサイズが、一辺の長さが10μm以下とすることが必要であり、さらには各画素のサイズは、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下とすることが望ましい。
質量分析装置に付属の顕微鏡で観察する場合は、ソフトウェア上で、測定画素数を選択することにより画素への分割を行うことができる。画素数は例えば64×64、128×128、256×256、512×512ピクセルのなかから選択することができる。
なお、全工程を通じて、複数の二次元データを参照する場合があるが、それぞれのデータにおける画素を一致させるために、それぞれの二次元データにおいて、二次元座標を設定することができる。
(3)質量分析法により前記画素の質量スペクトルを得る工程
質量分析装置で、検体の測定範囲について、二次元的に網羅的に質量分析を行い、画素に対応する質量スペクトルを得る。工程(1)及び(2)を質量分析装置に付属の顕微鏡及び付属のソフトウェアを用いて行う場合は、本工程では、自動的に画素ごとの質量スペクトルを得ることが可能である。一方、工程(1)、(2)を質量分析装置に付属の顕微鏡及びソフトウェア上で行わない場合や、その他必要な場合は、それぞれの二次元データにおいて、各画素を対応させる必要がある。画素あたり得られる質量スペクトルは1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の場合はそれらのいずれかを用いてもよいし、複数のスペクトルの平均をとってもよい。
質量分析の際の測定条件は、予め定めていてもよいし、その都度決定してもよい。質量分析の際は一次プローブの照射領域が、工程(2)で決定した各画素面積より小さいことが好ましい。また、さらには、質量スペクトルの二次元分布像から、各画素の領域が、例えば、細胞内、細胞外、または核のいずれに属するのか区別できるほどに十分に微細な二次元分布像を得られることが好ましい。このため、一次プローブのアパーチャーやレンズ系電圧を手動または自動で調整してもよい。
尚、本工程で用いる質量分析装置は、特に限定されるものではない。以下、質量分析装置について詳述する。
質量分析法をおこなう質量分析装置は一般的に、試料のイオン化をおこなう試料導入部と、イオン化した試料を分析する分析部とを有し、この分析部の方式によって様々な質量分析法に分類できる。
ここで、試料導入部でのイオン化の方法としては、以下の方法を挙げることができる。
・一次イオンを用いる方法。
・FAB(Fast Atom Bombardment、高速原子衝突)法。
・MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization、マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法。
ここで、FAB法とは、試料をマトリックスに混ぜ、ここに高速で中性原子を衝突させてイオン化する方法である。
また、MALDI法とは、試料をマトリックス中に混ぜて結晶を作り、これにレーザーを照射することでイオン化する方法である。
また、分析部の方式としては、以下の方法を挙げることができる。
(a)四重極型。
(b)磁場偏向型。
(c)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型。
(d)イオントラップ型。
(e)飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)型。
(f)タンデム型。
ここで、(a)四重極型とは、イオンを4本の電極内に通し、電極に高周波電圧を印加することで試料に摂動をかけて、目的とするイオンのみを通過させる分析法である。
(b)磁場偏向型とは、イオンを磁場中に通し、その際に受けるローレンツ力による飛行経路の変化を利用する分析法である。
(c)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型では、イオンを静電場と静磁場のかかったセルに導入し、イオン運動を励起するための高周波電圧を印加してイオンの周回周期を検出する。そして、サイクロトロン条件から質量を算出する分析法である。
(d)イオントラップ型とは、イオンを電極からなるトラップ室に保持し、この電位を変化させることで選択的にイオンを放出することで分離をおこなう分析法である。
また、(f)タンデム型は、上記の分析法を複数組み合わせる方法である。
好ましくは、イオン化に一次イオンを用いる(e)飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS法)を使用するのが良い。TOF−SIMS法は、質量分析法の中でも微量な試料を高精度で測定できる方法である。また、一次イオンをパルス状に試料表面に照射することによって、試料のイオン化をおこなうため、試料へのダメージを少なくすることができ、目的の構成物質の分布情報を正確に得ることができる。
TOF−SIMS法では、試料のイオン化は一次イオンを照射することによっておこなう。一次イオン種としては、イオン化効率、質量分解能等の観点からガリウムイオン(Ga)などの一般的な液体金属イオンの他、3量体金イオン(Au )や3量体ビスマスイオン(Bi )などのクラスターイオンを用いることができる。なお、Biイオンを用いると、極めて高感度の分析が可能となる点で好ましい。
TOF−SIMS法では、一次イオンの入射により、構成物質の表面から二次イオンが発生する。TOF−SIMS法の分析中は、構成物質と飛行時間型二次イオン質量分析計との間に数kVの電界がかけられており、二次イオンはこの電界により検出器へ取り込まれて分析される。
TOF−SIMSを用いてイメージングをおこなう場合には、質量分解能、分析面積、測定条件の一次イオンパルス周波数、一次イオンビームエネルギー、一次イオンパルス幅等の条件が、イメージング能力と密接に関係している。このため、好ましい分析条件は一義的には決まらない。しかしながら、分析可能であるという観点から、前記測定条件の各設定値はある範囲であることが必要となる。本発明では、一次イオンビームパルス周波数は1kHz〜50kHzの範囲であることが好ましい。また、一次イオンビームエネルギーは、12keV〜25keVの範囲であること、さらには、一次イオンビームパルス幅は0.5ns〜10nsの範囲であることが好ましい。この一次イオンビームを10μm〜500μm角の測定範囲で、64〜512ピクセル角の画素面で16〜512回繰り返し走査をおこなうことにより、各画素におけるイオン質量信号強度を得られる。ここで得られた特定の質量数における各画素での信号強度を取り出し、それぞれの座標に合わせて配置することにより画像が得られる。
MALDIを用いてイメージングをおこなう場合も同様に、好ましい分析条件は一義的には決まらず、各設定値はある範囲であることが必要となる。本発明では、パルスレーザー周波数は1Hz〜200Hzの範囲であることが好ましい。また、パルスレーザーのエネルギーは、10〜300mWの範囲であること、さらには、パルスレーザーパルス幅は0.5ns〜10nsの範囲であることが好ましい。MALDIの場合は、サンプルステージを1μm単位で移動させることにより、パルスレーザーの照射位置を走査させて各画素の質量信号を得る。サンプルステージを10μm〜500μm角の範囲で10〜500ピクセル角の画素面で1回の走査をおこなうことにより、各画素におけるイオン質量信号強度を得られる。ここで得られた特定の質量数における各画素での信号強度を取り出し、それぞれの座標に合わせて配置することにより画像が得られる。
また、特に限定されるものではないが、対象とする構成物をタンパク質や脂質とした場合に、TOF−SIMSもMALDIも正イオンの検出が好ましく、逆に、対象とする構成物をDNAやRNAなどのオリゴマーや、糖鎖のフラグメントとした場合には、負イオンの検出が好ましい。正、負イオン両方の計測を同じ測定範囲でおこなって多くの構成物の情報を得てもよい。また、質量分析をし易くするため、特に対象とする構成物をタンパク質とする場合には、検体試料にあらかじめ消化酵素や増感物質の付与といった前処理を施してもよい。しかしながら、この時、対象となる構成物の分布を維持し、拡散させないように細心の注意を施す必要がある。
(4)画素が属する領域を決定する工程
本発明において検体は主に生体組織切片であり、画素が属する領域は、たとえば、細胞の内部、細胞内側における核の断面内部、および、細胞以外から選択することができる。さらには、領域として、小胞体、ゴルジ体、エンドソーム、リソソーム、ミトコンドリア、ペルオキシソームなどの細胞内小器官、あるいは、骨組織、脂肪組織などを設定してもよい。
画素が属する領域は、工程(1)の観察に基づく形状等から決定してもよいし、次のような工程を付加してもよい。すなわち、検体試料を、より精度の高い光学顕微鏡を用いて測定範囲のデジタル画像を得、このデジタル画像のコントラスト差等により検体における細胞の断面輪郭を判別することにより、それぞれの画素が属する領域を特定する。光学顕微鏡の観察は通常は反射型を用いるが、検体試料にHE染色や蛍光染色を施した場合には、蛍光顕微鏡を使用することも可能である。
あるいは、画素が属する領域は工程(3)で得られた質量スペクトルの二次元分布に基づいて決定してもよい。この場合、工程(3)の質量分析の結果から、特定の質量の信号強度の二次元分布に基づいて領域を決定する。特定の質量とは、細胞の断面輪郭や細胞膜の分布を表すことができる脂質成分のフラグメント・イオン、細胞質の領域(以後、細胞内部と呼称)の核の位置に多く存在することが知られているタンパク質やペプチド、DNA、RNAなどのフラグメント・イオンなどに対応する質量であることが望ましい。より具体的には、細胞内部においては、アクチン、チューブリン、GAPDH、核においてはヒストン、核酸、細胞外部においてはアルブミン、サイトカインのフラグメント・イオンに対応する質量が望ましい。これらの信号強度の二次元分布像に基づいて、特定の画素が、検体中のどのような領域に属するのかを決定することができる。
信号強度は、塩のきょう雑物によるイオン検出感度の影響を取り除くため各画像にNaの信号強度を、上記それぞれの画像の画素ごとに掛け加え強度補正をしても良い。
なお、いずれの場合も、画素が属する領域1つの画素内に、2つ以上の領域成分が重なる場合は、画素内に含まれるそれぞれの領域成分の面積割合を算出し、後の工程における内部標準適用時に面積割合を重み付けする形で用いることも可能である。
(5)前記画素の質量分析用内部標準物質を決定する工程
画素の内部標準は、その画素が属する領域の属性により決定することができる。なお、内部標準物質は、好ましくは次の二つの条件を満たすものを選択することが望ましい。
(1)細胞の断面内部、細胞内側における核の断面内部、または、細胞以外、の領域それぞれに安定して存在すること、
(2)存在量が3〜100個/1μmのレベルであること、
具体的には、タンパク質類、ペプチド類、アミノ酸類、脂質類、リン酸類、糖鎖類、核酸が好ましく、より具体的には、領域が細胞内部に属する場合は、アクチン、チューブリン、GAPDHなど、核に属する場合はヒストンや核酸、細胞外部においてはアルブミンやサイトカイン、などのタンパク質分子を内部標準物質として適用するのが好ましい。
(6)画素における質量スペクトルにおける対象構成物に由来する質量の信号強度と内部標準物質に由来する質量の信号強度から、前記対象構成物に由来する質量の、規格化された強度を算出する工程
工程(3)で得た質量スペクトルに、工程(5)で決定された各画素に割り当てられた内部標準物質に基づき、各画素について「対象構成物の信号強度と割り当てられた内部標準物質の信号強度」により、対象構成物の信号強度を規格化し算出する。この時、割り当てられた内部標準物質の信号強度とは、内部標準物質の分子そのものの強度である必要はなく、内部標準物質を特定できるものの信号であればよい。例えば、工程(2)の際に前処理としてタンパク質の消化処理をおこなっていれば、内部標準物質の信号としてタンパク質が消化されることにより生成されるフラグメント分子の検出信号を用いることができる。
規格化された信号強度は、例えば、(対象構成物の信号強度)/(割り当てられた内部標準物質の信号強度)を用いることができる。
また、規格化された信号強度の値は、(対象構成物の信号強度)/(割り当てられた内部標準物質の信号強度)に割り当てられた内部標準物質の重量等の適当な定数を掛けたり、さらなる演算を加えてもよい。
また、上述のように、一つの画素に複数の内部標準物質が割り当てられた場合は、画素内のそれぞれの占有面積比に応じた重み付けをして補正することもできる。
また、規格化処理をおこなう対象構成物が、複数である場合、本工程を複数の対象構成物に対して同時におこなってもよい。
(7)前記対象構成物に由来する質量の規格化された信号強度の測定範囲における二次元分布画像を構築する工程
画像の再構築には、工程(4)で得た各画素の規格化された信号強度を、測定範囲中の各画素の位置に基づいて二次元分布画像として形成する。
また、上記のように画像を再構築する対象構成物は、複数であっても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。以下の具体例は本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるが、本発明はかかる具体的形態に限定されるものではない。
(実施例1)
以下に、生体組織切片を検体とし、TOF−SIMS法により画像を取得する例を示す。
分析基板は、不純物を含まないシリコン(Si)基板を用い、アセトン、エタノールおよび脱イオン水の順番で洗浄し、さらに金(Au)を100nm成膜する。
本実施例では検体は病変組織切片を用いる。病理組織をOCTコンパウンドに包埋した状態で冷凍下においてミクロトームで4μmの厚さ程度に削りだし、切片を得、ミクロトーム内に予め設置し冷却しておいた前記基板上に、分析面が上になるよう配置し、羊毛筆で端を押さえ、付着させることにより固定する。凍結乾燥後、試料表面に適度な濃度のトリプシン溶液を10μL滴下し、37℃で湿度を保持した状態で一晩消化をおこない試料構成物のタンパク質成分のフラグメント化をおこなう。
上記のように基板上に固定し、消化処理を施した生体組織切片をTOF−SIMS装置内に導入し、装置に付属する顕微鏡により観察し、顕微鏡像のコントラスト差を元に測定範囲を選択すると同時に、TOF−SIMS装置に付属のソフトウェア上で測定範囲を構成する画素数を決定する。このときのサンプルステージ位置をXY座標として記録する。さらに、測定範囲の外枠線が生体組織切片上に重ねられた光学顕微鏡画像をデジタルデータとして保存し、画像における測定範囲の位置をXY座標として記録する。この時の光学顕微鏡像、測定範囲における画素座標XY取得の様子を表した模式図を図1に示す。本実施例においては、ION−TOF社製 TOF−SIMS5型装置(商品名)および、その付属ソフトウェアとして、ION−TOF社製 IONSPEC(商品名)およびIONIMAGE(商品名)を用い、以下の条件でTOF−SIMS分析および解析作業を行う。なお、測定範囲をより明瞭にするため、TOF−SIMS測定後に生体組織切片試料における細胞核、および、細胞膜の箇所を染色してから光学顕微鏡像を得てもよい。
一次イオン:25kV Bi 、0.3pA(パルス電流値)、sawtoothスキャンモード
一次イオンのパルス周波数:2.5kHz(400μs/shot)
一次イオンパルス幅:約0.8ns
一次イオンビーム直径:約0.8μm
測定範囲:26μm×26μm
二次イオンの測定画素数:128×128
積算時間:128回スキャン(約500秒)
二次イオンの検出モード:正イオン
得られた質量スペクトルの二次元分布、及び「画素が属する領域」の情報から、それぞれの画素について内部標準物質を決定する。この時、試料の測定と以下に示す解析処理を連続しておこなう必要はなく、あらかじめ測定しておいた質量スペクトルの二次元分布の情報を電子データとして保持して用いても良い。その際、その測定での「画素が属する領域」を判別するために必要な情報も別に保管しておき、必要に応じて参照できるようにしておけば、解析処理作業を、例えば後日にTOF−SIMS装置とは別のコンピューター上などでまとめておこなう事も可能である。詳しくは、下記実施例2で説明する。本実施例では「画素が属する領域」の判別に、質量スペクトル二次元分布として、細胞膜より検出される脂質フラグメント・イオン(Phosphocholine:m/z 184)の信号強度に、塩の影響を除去するため各画素でのナトリウムイオン(Na:m/z 23)信号強度と適当な定数を掛けて規格化した信号分布を用いる。図2に示すように、脂質フラグメントの信号強度の分布が描く細胞の輪郭や細胞核を除いた細胞膜箇所を主な基準として、それぞれの各画素座標XY(0〜127、0〜127)に対応する位置が(a)細胞の内部、(b)核内部、または、(c)細胞以外、のそれぞれの領域を特定する。領域の区別を明瞭にするため図2では特定された領域の境を白い枠線で記した。なお、本実施例では複数の領域が含まれる画素は設定しない。また、この画素が属する領域の特定において、上記で得られた図1に示す光学顕微鏡写真からの各画素座標XYが属する(a)〜(c)のそれぞれの領域の特定をおこなっても良い。
続いて、各画素座標XYでの「画素が属する領域」(a)〜(c)にそれぞれ適した内部標準物質を割り当てる。本実施例では、(a)領域にはタンパク質β−アクチンのフラグメント・イオン(アミノ酸配列LDLAGR+H:m/z 644)、(b)領域にはタンパク質ヒストンのフラグメント・イオン(LLGR+H:m/z 457)、(c)領域にはタンパク質血清アルブミンのフラグメント・イオン(FPK+Na:m/z 413)をそれぞれ内部標準物質として割り当てる。図3に、各領域(a)〜(c)に割り当てられた内部標準物質の信号強度の二次元分布をその領域ごとに明示する。ここで用いている上記の各タンパク質におけるフラグメント・イオンは、TOF−SIMS法においてそれぞれの親タンパク質から特異的に検出される物質であることから、元の内部標準であるタンパク質の分布や量を間接的に表現することができ、規格化に用いる検出信号として適している。しかしながら、必ずしもこれらの内部標準物質、および、そのフラグメント・イオンを用いることに限定をせず、測定方法や対象とする構成物や試料の状態に応じて適切な内部標準物質やそのフラグメント・イオンを用いるとよい。
本実施例では、病変細胞に特異的に細胞内部に多く発現するタンパク質サイトケラチン19(cytokeratin−19)(以後、タンパク質Cと呼称)を対象に、そのタンパク質Cより特異的に検出されるフラグメント・イオン(IRDWYQK+H:m/z 1008)の信号強度を用いる。規格化処理をしていないフラグメント・イオン信号強度の分布を図4に示す。
次に、上記のように規格化したタンパク質Cフラグメント・イオンの強度値をもとに、測定画像の構成をおこなう。その結果を図5に示す。図5は、信号強度が規格化されているため、画素ごとの測定によるばらつきが補正されている。また図5で、フラグメント・イオン種間での検出効率差を無視すれば、内部標準に用いた物質の存在量と規格化したイオンの強度値から、タンパク質Cのおおよその存在量を見積もることもできる。本実施例の場合、(a)細胞の断面内部の領域での内部標準に用いたタンパク質β−アクチンの存在量が1細胞あたりおよそ105〜6個と言われていることから概算して、細胞の断面内部の領域平面におけるタンパク質Cの存在量は、おおよそ30〜1×100個/μmであると見積もることができる。さらに、図5の規格化信号強度1Count当りの量で換算すると、細胞の断面内部の領域平面におけるタンパク質Cの存在量は4〜100個/Countとなる。
(比較例)
比較として、測定範囲全面の画素に全てに同一の内部標準物質(上記、タンパク質β−アクチンのフラグメント・イオン、または、脂質フラグメント・イオン)を用いた規格化による測定画像の再構成をおこなう場合の結果を図6(a)、(b)にそれぞれ示す。また、規格化の際、内部標準の信号強度がゼロによる除算エラーが生じる時は適当に小さな値(例えば1)を内部標準の信号に加えての補正をおこなう。
タンパク質β−アクチンのフラグメント・イオンを内部標準として用いると、図6(a)の画像が得られる。測定範囲全面の画素に同一の内部標準物質のフラグメント・イオン信号強度を用いたために、例えば、タンパク質β−アクチンがあまり存在しない細胞外や核内部の領域では、タンパク質Cフラグメント・イオンの信号強度は実際の存在量に対する信号強度より高い値となっている。図5では、細胞外の規格化された信号強度は、ほとんどの画素において0−10を示している。一方、図6(a)では、細胞外の規格化された信号強度は画素によって、0−10と90−100と極端にばらついている。本来タンパク質Cは細胞内部にのみ存在するため、図6(a)では実際のタンパク質Cの存在量との相関を欠いていることが分かる。
脂質フラグメント・イオンを内部標準として用いると、図6(b)が得られる。やはり、脂質があまり存在しない、細胞外や核内部の領域においては、規格化信号強度は実際の存在量との相関を欠いて表示される。
また、図5では、領域ごとに適した内部標準を用いて規格化されるため、領域同士のコントラストが調整され、図6と比較して画像が明瞭となる。
さらに、表1に、規格化処理を施していないタンパク質Cの信号分布(図4)、上記実施例1、および、比較例における規格化処理法で得られたタンパク質Cの信号分布(図5、図6)での、細胞の断面内部、細胞内側における核の断面内部、または、細胞以外のそれぞれの領域におけるタンパク質Cの信号強度(CountsまたはArbitrarily Unit)およびその分布比率を示す。表1より、上記実施例の規格化手法によって得られたタンパク質Cの信号分布(図5)において、全信号の97%以上の高い比率で細胞の断面内部の領域からタンパク質Cの信号が検出されることが判る。これは、細胞の内部に多く存在するタンパク質Cの本来の分布に適合する存在分布を示す。一方、規格化処理を施していない信号分布(図4)や、比較例での規格化処理法で得られた信号分布(図6a,b)では、細胞の断面内部の領域での検出率はそれほど高くなく、核の断面内部や細胞外の領域でも信号が検出され、タンパク質C本来の分布を正しく示さない。以上のことからも本実施例の手法により適切な信号規格化が行われることが判る。このように、従来のような、「画素が属する領域」を特定せずに、内部標準物質を検体の測定範囲内の画素全体に適用する規格化手法では、細胞レベルでのタンパク質を可視化することが極めて困難であり、また、安定した定量的な結果を得ることも難しい。
以上のように、実施例1および比較例により、TOF−SIMS測定に、「画素が属する領域」に応じた内部標準物質の適用による対象構成物の規格化、および、画像再構成をおこなうことにより、病変組織切片に存在する特定タンパク質の二次元分布状態に関する情報を、より定量的に得られることが確認できる。
(実施例2)
以下に、決められた測定範囲から得られた検体中の構成物の質量に関する情報を電子データとして保持し、その電子データに対して、コンピューターソフトウェアを用い、半自動的に前記対象構成物の二次元分布画像を形成する方法を例示する。
処理に用いるデータは、実施例1で得られたトリプシン消化処理生体組織切片の測定質量スペクトル2次元分布が収められた電子データを用いる。処理の手順は次のようになる。
(ステップ1)測定範囲における画素数を指定する。該質量スペクトルの2次元分布データは、XY方向に128×128の測定画素で構成されている。このことから、処理時間の軽減を目的とし、XY方向に2×2の測定画素を1つの画素として、測定範囲を64×64の画素に分割する。そして、それぞれの画素に新しく0〜63の番号をXY座標に当てはめる。
(ステップ2)各画素から質量スペクトルを抽出し、それぞれを個別のデータとして、XY座標とともにメモリー領域に保持する。
(ステップ3)得られた質量スペクトルから、各画素が属する領域を決定する。(1)実施例1で用いた、イオンピーク:(a)タンパク質β−アクチンのフラグメント・イオン(アミノ酸配列LDLAGR+H:m/z 644)、(b)タンパク質ヒストンのフラグメント・イオン(LLGR+H:m/z 457)、(c)タンパク質血清アルブミンのフラグメント・イオン(FPK+Na:m/z 413)のそれぞれを領域判別の基準とする。(2)各画素の質量スペクトルにおける(a)、(b)、(c)それぞれの信号強度を算出する。イオンピーク:(a)、(b)、(c)を順にN=1,2,3とし、各画素の座標XYをインデックスとして、配列P(X,Y,N)に該信号強度の値を記憶する。(3)全測定画素におけるイオンピーク:(a)、(b)、(c)それぞれの強度平均値を求め、配列Q(N)にその値を記憶する。(4)全ての画素において、Nを1から3まで順に変化させ、P(X,Y,N)>Q(N)となる場合を検索する。その場合が、N=1すなわち(a)であれば細胞内部、N=2すなわち(b)であれば細胞核上、N=3すなわち(c)であれば細胞以外と、それぞれの画素が属する領域を振り分ける。また、いずれの場合にも相当しない場合は属する領域なしとして、以降のステップ4から6の処理は除外する。参考として、図7に、64×64の画素における(a)、(b)、(c)それぞれのイオンピーク強度(規格化値)を図示する。
(ステップ4)属する領域が決定した画素に対して、それぞれの属する領域に合わせて規格化算出に適用する内部標準物質を決定する。本実施においては、画素が属する領域(a)細胞内部、(b)細胞核上、(c)細胞以外のそれぞれに対して、前述の領域判別時に用いた(a)のタンパク質β−アクチンとそのフラグメント・イオン(LDLAGR+H:m/z 644)、(b)のタンパク質ヒストンとそのフラグメント・イオン(LLGR+H:m/z 457)、(c)のタンパク質血清アルブミンとそのフラグメント・イオン(FPK+Na:m/z 413)をそれぞれ内部標準物質とその物質に由来するフラグメント・イオンとして割り当てる。
(ステップ5)各画素における質量スペクトルの対象構成物に由来する質量の信号強度と、ステップ4で割り当てられた内部標準物質に由来するフラグメント・イオンの強度を用い、規格化された信号強度を算出する。得られた規格化値を画素のXY座標で示された配列記憶領域R(X,Y)にメモリーする。本実施例では、実施例1と同様に、タンパク質Cを対象構成物とし、そのフラグメント・イオン(IRDWYQK+H:m/z 1008)の信号強度を規格化の対象に用いる。図8に規格化前のたんぱく質Cフラグメント・イオンの信号強度の分布を示す。
(ステップ6)対象構成物に由来する質量信号強度の規格化された値を用いて、測定範囲における二次元分布画像を構築する。図9に構築された規格化質量信号の二次元分布画像を構築する。
比較として、測定範囲全面の画素に全てに同一の内部標準物質を用いて規格化を行う場合の結果を示す。用いた内部標準物質は、上記に記載の、タンパク質β−アクチンのフラグメント・イオン(LDLAGR+H:m/z 644)、または、脂質フラグメント・イオン(Phosphocholine:m/z 184)を用い、その結果を図10(a)、(b)にそれぞれ示す。また、規格化の際、内部標準の信号強度がゼロによる除算エラーが生じる時は、あらかじめ演算をスキップして、配列記憶領域R(X,Y)に0(ゼロ)の値を入力する。以上の処理により、領域ごとに適した内部標準を用いて規格化された信号分布(図9)は、他の方法で規格化した信号分布(図10(a)、(b))と比較して、細胞内部に存在するといったタンパク質C本来の分布を正しく示すことが判る。
Figure 2010261939
1 生体組織切片
2 細胞
3 核
4 測定範囲(128×128の測定画素で構成)
5 測定画素
6 細胞の断面内部領域
7 細胞内側の核断面領域
8 細胞以外の領域

Claims (3)

  1. 生体組織切片の構成物の質量に関する情報に基づいて、前記構成物中の対象構成物の二次元分布画像を形成する画像形成方法であって、
    前記構成物が属する領域を少なくとも細胞内部の領域、核の領域、細胞外部の領域に決定する工程、
    前記工程で決定した領域ごとに、前記構成物の質量スペクトルにおける前記対象構成物に由来する質量信号の強度と前記構成物中の内部標準物質に由来する質量の信号強度から前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度を算出する工程、
    前記対象構成物に由来する質量の規格化された強度に基づいて前記対象構成物の二次元分布画像を形成する工程、
    を有し
    前記内部標準物は、(i) 細胞内部の領域ではアクチン、チューブリン、GAPDHのいずれかを用い、(ii)核の領域ではヒストン又は核酸を用い、(iii)細胞外部の領域ではアルブミン又はサイトカインを用いる
    ことを特徴とする対象構成物の二次元分布画像を形成する画像形成方法。
  2. 前記構成物の質量スペクトルは、TOF−SIMS法によって測定されたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
  3. 前記構成物の質量に関する情報は、一辺の長さが5μm以下の画素ごとの情報に基づくことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
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