JP2010261131A - 防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維 - Google Patents

防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】防黴剤を含有するバインダー繊維として使用することが可能であり、防黴性、防黴性の耐久性ともに優れ、また、防黴剤を含有することによる着色(黄変)も防ぐことができ、織編物や不織布等の布帛、繊維製品に良好な防黴性を付与することができる防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合成分として含有し、結晶開始温度80〜140℃、融点130〜200℃、防黴剤を含有する共重合ポリエステルからなる繊維であって、防黴剤としてトリアゾール系有機化合物を繊維質量に対して0.1〜1.5質量%含有している防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、低融点でありながら結晶性に優れるポリエステル中にトリアゾール系有機化合物の防黴剤を含有するポリエステルからなる熱接着性のポリエステル繊維であって、バインダー繊維として用いることにより、織編物や不織布等の繊維製品に良好な防黴性能を付与することができる防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維に関するものである。
合成繊維、特にポリエステル繊維は、その優れた機械特性及び化学特性を有するため、衣料、産業資材等、様々な用途に使用されている。近年、消費者の健康、衛生、快適性に対する意識の高まりにより、種々の防黴性繊維が実用化されている。
その中でも、例えば寝装具やエアコンフィルター、水処理フィルター等の用途においては、繊維に付着した有機物等を栄養分として黴が繁殖しやすいため、防黴性が強く求められている。
従来、繊維構造物に各種機能剤を固定化する方法として、浸漬法、スプレー法、コーティング法、パッド法等の後加工法が知られており、特許文献1には防黴剤を含む処理液を後工程にて付与した防黴性繊維構造物が提案されている。
しかしながら、これらの繊維構造体は表面に防黴剤が付与され、固着させたものであるため、摩擦、磨耗、洗濯等により防黴剤が脱落しやすく、防黴性能の耐久性に問題があった。
また、優れた防黴性を有する防黴剤として、塩化ベンザルコニウム、8-キノリノール、クレゾール等に代表される有機系防黴剤があるが、これらは一般に耐熱性に乏しく、溶融紡糸時に熱劣化、分解して防黴性能が低下したり、分解物による繊維の着色(黄変)が生じたりするという欠点があるため、繊維中への含有は難しかった。
特許文献2には、防カビ抗菌作用を有する化合物として、アルカリ性無機化合物とその他無機化合物からなる複合化合物(炭酸カルシウム粒子とアルミナ、シリカを焼成した複合化合物)を含有する抗菌防カビ性ポリエステル繊維が記載されている。
特許文献2記載のポリエステル繊維は、防カビ抗菌作用を有する化合物をポリエステル中に含有させて溶融紡糸して得られたものであるが、このポリエステル繊維が含有する防カビ剤は無機系化合物からなるものであり、防カビ性、防カビ性の耐久性ともに不十分であり、防カビ剤を含有することによるポリエステル繊維の着色の改善も不十分なものであった。
また、ポリエステル繊維が使用される用途として、織編物や不織布等を得る際に熱接着性を有するバインダー繊維が多く使用されている。バインダー繊維は熱処理により溶融して接着成分となるものであるため、防黴剤を含有するバインダー繊維であると、熱処理により溶融したポリマーが防黴剤を含有する接着成分となり、得られる繊維製品に防黴性を付与することが可能となるものである。中でも各種フィルター、メッシュシート用途においては、このようなバインダー繊維を使用することで防黴性を付与することが有効であり、防黴剤を含有するバインダー繊維が要望されている。
特開平7−70935号公報 特開2004−91998号公報
本発明は上記課題を解決するものであり、防黴剤を含有するバインダー繊維として各種フィルター、メッシュシート用途に好適に使用することが可能であり、防黴性、防黴性の耐久性ともに優れ、また、防黴剤を含有することによる着色(黄変)も防ぐことができ、織編物や不織布等の布帛、繊維製品に良好な防黴性を付与することができる防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合成分として含有し、結晶開始温度80〜140℃、融点130〜200℃、防黴剤を含有する共重合ポリエステルからなる繊維であって、防黴剤としてトリアゾール系有機化合物を繊維質量に対して0.1〜1.5質量%含有していることを特徴とする防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維を要旨とするものである。
本発明の防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維は、防黴剤としてトリアゾール系有機化合物を用い、これを低融点でありながら結晶性に優れたポリエステル中に含有させたものであるため、紡糸操業性よく得ることができ、熱水収縮率を低くすることができるものである。そして、防黴性及び防黴性の耐久性に優れるとともに、繊維の着色(黄変)も生じることがなく、熱水収縮率も低く品位に優れるものである。本発明の熱接着性ポリエステル繊維は、熱接着性を有し、バインダー繊維として加工糸や織編物、不織布やメッシュシート等に用いることが好適なものであり、熱接着処理することによって、防黴剤を含有するポリエステルが溶融し、防黴剤を含有する接着成分となり、加工糸や布帛等の繊維製品に良好な防黴性を付与することができる。さらには、熱水収縮率が低いため、得られる繊維製品はバインダー繊維が収縮することによる風合の硬化を生じることがない。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、紡糸操業性よく得ることが可能で、熱水収縮率が低く、比較的低温での熱接着処理が可能な熱接着性ポリエステル繊維とするために、ポリエステル繊維を形成するポリエステルとして、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合成分として含有する共重合ポリエステルを用いるものである。
上記した共重合ポリエステルは、結晶開始温度(Tc)が80〜140℃であり、中でも85〜120℃であることが好ましいものである。Tcが80℃未満では、好適な結晶性を得ることが困難となる。一方、140℃を超えると、融点(Tm)が200℃を超えることとなり好ましくない。
融点(Tm)は130〜200℃であり、中でも135〜195℃であることが好ましく、さらには、140〜190℃であることが好ましい。Tmが130℃未満であると、溶融紡糸が困難となり、たとえ繊維化できたとしても高温雰囲気下で使用した場合の耐熱性に乏しいものとなる。一方、Tmが200℃を超えると、熱接着処理温度を高くする必要があり、加工性、経済性に劣るばかりか、熱処理によって得られる製品の品質や風合いなどを損ねるため好ましくない。
また、本発明の熱接着性ポリエステル繊維を形成する共重合ポリエステルは、ガラス転移点(Tg)が20〜80℃であることが好ましく、中でも30〜70℃であることが好ましい。Tgが20℃未満であると、溶融紡糸時に単糸間の密着が発生し、製糸性が悪くなりやすく、一方、Tgが80℃を超えると、製糸工程において高温で延伸する必要があり、延伸による塑性変形と同時に部分的な結晶化が始まり、糸切れが発生するなど延伸性が低下しやすくなる。
本発明の熱接着性ポリエステル繊維を形成する共重合ポリエステルは、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合成分として含有するものである。まず、1,4−ブタンジオール成分を共重合する場合、全グリコール成分に対して30〜70モル%となるようにすることが好ましい。共重合量が30モル%未満であったり、70モル%を超えると、Tm、Tcが上がる傾向となり、本発明で規定するTmおよびTcの範囲外のものとなりやすい。
次に、脂肪族ラクトン成分を共重合する場合、その共重合量は全酸成分に対して20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とすることが好ましい。脂肪族ラクトン成分の割合が少ないと結晶性はよくなるが、Tmが高くなり、200℃以下とすることが困難となる。一方、20モル%より多いと結晶性が低下し、Tgが低くなりやすく、紡糸時に単糸密着が発生して製糸性が悪くなり好ましくない。
脂肪族ラクトン成分としては、炭素数4〜11のラクトンが好ましく、特に好ましいラクトンとしては、ε−カプロラクトン(ε−CL)が挙げられる。
アジピン酸成分を共重合する場合、その共重合量は全酸成分に対して、20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とすることがより好ましい。アジピン酸成分の共重合量が10モル%未満であると、結晶性はよくなるが、Tmが高くなり、Tmを200℃以下とすることが困難になる。一方、20モル%より多いと結晶性が低下し、Tgが低くなりやすく、紡糸時に単糸密着が発生して製糸性が悪くなり好ましくない。
上記のような1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分は、ポリエステル中に少なくとも一成分が共重合されていればよく、二成分以上が共重合されているものでもよい。
そして、本発明の熱接着性ポリエステル繊維は、上記した共重合ポリエステル中に防黴剤が含有されているものである。そして、熱接着処理を施すと熱接着性ポリエステル繊維を形成する防黴剤を含有するポリエステルが融解して接着成分となり、本発明の熱接着性繊維とともに用いた他の繊維の表面に付着するので、他の繊維からなる布帛等の繊維製品は良好な防黴性を有するものとなる。
本発明における防黴剤としては、トリアゾール系有機化合物を用いるものであり、中でも、トリアゾール系有機化合物を層間に担持させた層状珪酸塩を用いることが好ましい。
トリアゾール系有機化合物は優れた防黴性を示すものであり、溶融紡糸時の熱劣化が生じにくいものであるため、ポリエステル中に含有させて溶融紡糸することができ、得られた繊維は防黴性に優れるとともに、防黴性の耐久性にも優れたものとなり。さらには、熱変性に伴う繊維の着色(黄変)を抑制することができる。
中でも、トリアゾール系有機化合物を層間に担持させた層状珪酸塩を防黴剤として使用すると、トリアゾール系有機化合物が無機化合物の層間に担持されていることから、さらに熱劣化の生じにくいものとなる。このため、この防黴剤をポリエステル中に含有させて溶融紡糸すると、得られた繊維はさらに防黴性に優れるとともに、防黴性の耐久性にも優れたものとなり、熱変性に伴う繊維の着色(黄変)もより抑制することが可能となる。
トリアゾール系有機化合物としては、防黴性、コストなどの面から、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2−トリアゾール−1−イル−エタノール、β−(クリロロフェノキシ)−α−(1,1−ジメチル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールなどを用いることが好ましい。
層状珪酸塩としては、結晶層単位が互いに積み重なって層状構造を呈している珪酸塩であれば特に制限されることなく用いることが可能であり、脆雲母族、合成雲母等を用いることが好ましい。
このようなトリアゾール系化合物からなる防黴剤としては、大和化学工業社製の『バイオデン』が挙げられる。また、トリアゾール系有機化合物を層間に担持させた層状珪酸塩の防黴剤としては、東亞合成社製の『カビノン800』が挙げられる。
そして、防黴剤は上記した共重合ポリエステル中に含有されるものであるが、含有量は繊維質量に対して0.1〜1.5質量%とするものであり、中でも0.3〜1.0質量%とすることが好ましい。防黴剤の含有量が0.1質量%未満では充分な防黴性が得られず、一方、1.5質量%を超えると製糸性が悪化しやすく、また、防黴剤の熱変性による繊維の着色(黄変)が生じやすくなるため好ましくない。
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、共重合ポリエステル中には、防黴剤の他に、酸化防止剤、艶消し剤、着色剤、滑剤、結晶核剤等の添加剤を含有していてもよい。
さらに、本発明の熱接着性ポリエステル繊維は、繊維の着色(黄変)が生じにくいものであるが、その色調は、ミノルタ社製の色彩色差計CR−100を用いて測定したb値が6.0以下であることが好ましく、中でも4.0以下であることが好ましい。なお、b値は繊維の黄−青系の色調(+は黄味、−は青味)を示す値であり、0に近いほど黄味が少なく、繊維として好ましい色調である。なお、色調は本発明の熱接着性ポリエステル繊維を筒編みした筒編地を測定するものである。
さらに、本発明の熱接着性ポリエステル繊維は、強度が1.5cN/dtex以上であることが好ましく、中でも2.5cN/dtex以上であることが好ましく、さらには、3.0cN/dtex以上であることが好ましい。強度が1.5cN/dtex未満であると、加工糸とする際の仮撚加工、エアーやインターレース等での混繊加工、撚糸機などでの撚糸加工や製編織工程における張力や擦過抵抗によって糸切れが発生し、工程通過性が悪くなり、得られる製品の品位も悪化しやすい。
上記した繊維の強度は、JIS L−1013の引張強さ及び伸び率の標準時試験に従い、ORIENTEC社製引っ張り試験機RTC−1210型を用い、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/分で測定するものである。
さらに、本発明の熱接着性ポリエステル繊維は熱水収縮率が15%以下であることが好ましく、中でも12%以下、さらには10%以下であることが好ましい。熱水収縮率が15%を超えると、本発明の熱接着性繊維を用いた加工糸、織編物や不織布、各種シート等は、熱接着処理して本発明の熱接着性繊維を溶融させた際の収縮が大きく、得られた繊維製品の風合いが硬化したり、寸法安定性が悪くなりやすい。そして、繊維が熱接着処理により溶融した際にできるポリマー塊が点在し、非接着体側の繊維の交点に万遍なく行きわたらないことから、接着性も低下する傾向にある。さらに、接着後の染色処理、熱水処理の際には接着部位の剥離が生じやすいものとなる。
本発明における熱水収縮率とは、JIS L−1013の熱水収縮率のかせ収縮率(A法)に従って測定するものである。
本発明の接着性ポリエステル繊維の単糸繊度は特に限定するものではないが、1〜50dtexが好ましく、中でも3〜30dtexとすることが好ましい。また、単糸数は特に限定するものではなく、目的や用途によって、モノフィラメントやマルチフィラメントとすることができる。さらには、本発明の熱接着性ポリエステル繊維は長繊維としても短繊維としてもよい。
そして、本発明の熱接着性ポリエステル繊維の単糸の横断面形状(繊維の長さ方向に対して垂直に切断した断面の形状)は、特に限定されるものではなく、通常の丸断面のほか、扁平断面、多角形、多葉形、ひょうたん形等の各種の異形のものであってもよい。
本発明の熱接着性ポリエステル繊維は、上記したような低融点で結晶性に優れたポリエステルを用いているため、このポリエステルのみからなる単一成分型の繊維であっても、紡糸性よく、強度、熱収縮特性に優れた繊維を得ることができるものである。そして、熱接着性成分のみからなる繊維であるため、鞘部のみ溶融する成分を用いた芯鞘型の熱接着性繊維に比べて接着性にも優れるものである。
このような本発明の熱接着性ポリエステル繊維は、加工糸や織編物、不織布、シート等に用いることができるが、本発明の熱接着性繊維ポリエステル繊維のみを用いて(100%使用して)これらの繊維製品としてもよいし、他の繊維とともに用いてこれらの繊維製品としてもよい。
例えば、本発明の熱接着性ポリエステル繊維が好適に用いられる例としては、複数の繊維の一部に混繊させて混繊糸とし、熱処理により形態を固定してモップなどに用いるモップ糸やカーペット用のパイル糸として用いる例や、織物を構成する繊維の一部に使用し、熱処理を施すことによって繊維間を接着してフィルターとして用いる例などが挙げられる。
次に、本発明の熱接着性ポリエステル繊維の製造方法について一例を(長繊維、マルチフィラメントとする場合)を用いて説明する。
防黴剤を含有する共重合ポリエステルを押出機に導入して溶融し、常用の紡糸装置を用いて溶融紡糸する。そして、紡糸した糸条を冷却、固化した後、2000m/分以上の高速紡糸により延伸することなく半未延伸糸として巻き取るPOY法、また、半未延伸糸を延伸熱処理する二工程法、あるいは、2000m/未満の低速紡糸で溶融紡糸し、一旦捲き取った後、糸条を延伸熱処理する二工程法、または、一旦捲き取ることなく連続して延伸を行う一工程法により得ることができる。
そして、紡糸速度や延伸を行う際の延伸倍率及び熱処理温度等を適宜調整することによって、強度1.0cN/dtex以上、熱水収縮率が15%以下の特性を有するポリエステル繊維とすることができる。
なお、共重合ポリエステル中に防黴剤を含有させる方法としては、粒子状態で共重合ポリエステルの重合段階や紡糸段階で添加する方法や、共重合ポリエステル中への高濃度添加によってマスターバッチ化した後に、チップブレンドや溶融ブレンドによって、各々計量した後に溶融ブレンドする方法等を挙げることができる。
また、短繊維とする際には、溶融紡糸し、冷却、油剤を付与した後、糸条を延伸することなく一旦巻き取る。この未延伸糸を数十万〜二百万dtexの糸条束に集束して、延伸熱処理を行う。続いて、押し込み式クリンパーにより必要に応じて機械捲縮を施した後、ECカッター等のカッターで目的とする長さにカットして短繊維とする。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における特性値の測定及び評価は以下の通りに行った。
(a)極限粘度
フェノールと四塩化エタンの当質量混合液を溶媒とし、温度20℃で測定した溶液粘度より求めた。
(b)融点(Tm)、結晶開始温度(Tc)、ガラス転移点(Tg)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。融点ピークが不明瞭なものはホットステージ付きの顕微鏡を用いて流動開始温度を目視にて測定した。
(c)防黴性
JIS Z−2911に基づいて試験を行った。なお、得られた熱接着性ポリエステル繊維1本と、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル繊維(84dtex/36f、強度4.3cN/dtex、伸度35%)2本を合わせて混繊し、混繊工程の途中でスピンドル回転によって撚りを施し、15ヶ/mの撚糸を得、この撚糸を筒編みした筒編地(50×50mm)を試験片とした。
試験片を1000mlのビーカーに入れ、ビーカーの底にゴム管を差し入れ、これを通して水を1000ml/minの割合にて連続24時間注ぎ込んだ。次いで、試験片を取り出し、別の1000mlビーカーに満たした精製水の中で振って洗い、更に1回精製水を取り替えて同様にして洗った。試験片を取り出して精製水を切り、平板培地の培養面の中央に接着するように置き、混合胞子懸濁液を培養面と試験片との面に均等に1mlまきかけ、蓋をして、温度28℃の環境下にて14日間培養した。
培地として、精製水=1000ml、硝酸アンモニウム=3.0g、燐酸カリウム=1.0g、硫酸マグネシウム=0.5g、塩化カリウム=0.25g、硫酸第一鉄=0.002g、寒天=25gの組成のものを使用した。
黴の種類として、アスペルギルス ニゲル、ペニシリウム シトリナム、ケトミウム グロボスム、ミロテシウム ベルカリアを使用した。
(1)防黴性の初期評価は、14日間培養した培地(試験片面)の黴の生育状況により、以下の4段階で行った。
◎:黴の生育が試料面の10%未満
○:黴の生育が試料面の10%以上40%未満
△:黴の生育が試料面の40%以上70%未満
×:黴の生育が試料面の70%以上
(2)防黴性の耐久性評価は、試験片を家庭用洗濯洗剤を2g/l濃度で含有する40℃の水溶液で5分間洗濯し、流水洗を2分間行って脱水し、更に流水洗を2分間行って脱水した後、乾燥する操作を50回繰り返した(50回洗濯)。そして、上記と同様にして14日間培養し、(1)と同様に4段階で評価した。
(d)強度、熱水収縮率
前記した方法により測定した。
(e)紡糸操業性
24時間連続して紡糸を行い、操業中の切れ糸回数(1錘あたり)により、以下の3段階で評価した。
○:切糸無し
△:切糸1〜2回
×:切糸3回以上
(f)色調
得られた熱接着性ポリエステル繊維を筒編みし、未染色の状態でミノルタ社製の色彩色差計CR−100を用いてb値を測定した。
(g)接着性
(c)の評価で用いた撚糸を10cmに切断し、伸ばした状態で両端を固定し、熱接着処理温度(ローラ温度)を(Tm+10)℃とし、ローラスピード0.5m/分、プレス圧力0.07MPaの条件で繊維軸方向に加熱圧着し、その後に両端をカットして長さ5cmのサンプルを得た。
このサンプルをガラス製の300mlビーカーに入れ、95℃に加熱した熱水中で、巾4cmのラグビーボール型マグネチック攪拌子により200rpmの回転数で30分間攪拌処理した。サンプル10個についてこのような攪拌処理を行い、処理後サンプルを自然乾燥させ、乾燥後の繊維の剥離状態を目視により観察し、下記の3段階で評価した。
○:全てのサンプルで剥離なし
△:剥離を起こし、撚糸の形態を維持していないサンプルが4個以下である。又は部 分的に剥離を起こしているサンプルがある。
×:剥離を起こし、撚糸の形態を維持していないサンプルが5個以上ある。
実施例1
共重合ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール50モル%、1,4−ブタンジオール(BD)50モル%を共重合した共重合ポリエステル(極限粘度0.67、Tm180℃、Tc98℃、Tg48℃)を用いた。そして、共重合ポリエステルを押出機に導入して溶融し、常用の紡糸装置を用いて、紡糸温度220℃、孔数24孔の紡糸口金より吐出量24.5g/分で溶融紡糸を行った。
このとき、防黴剤としてトリアゾール系有機化合物を層間に担持させた層状珪酸塩である『カビノン800』を用い、共重合ポリエステルを押出機に導入して溶融させる際に添加し、繊維中の防黴剤の含有量が0.6質量%となるように含有させた。
そして、紡出された糸条を冷却し、油剤を付与した後、速度3000m/分のローラで引取り(紡糸速度3000m/分)、巻き取った。得られた半未延伸糸を80℃の加熱ローラを介して延伸倍率1.45にて熱延伸し、さらに140℃のヒートプレートで熱処理を行った後に巻取り、56デシテックス/24フィラメントの熱接着性ポリエステル繊維を得た。
実施例2
共重合ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール30モル%、1,4−ブタンジオール(BD)60モル%、ε−カプロラクトン(ε−CL)10mol%を共重合した共重合ポリエステル(極限粘度0.67、Tm175℃、Tc98℃、Tg49℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル繊維を得た。
実施例3
共重合ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール20モル%、1,4−ブタンジオール(BD)60モル%、ε−カプロラクトン(ε−CL)20mol%を共重合した共重合ポリエステル(極限粘度0.67、Tm154℃、Tc92℃、Tg32℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル繊維を得た。
実施例4
共重合ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール25mol%、1,4−ブタンジオール(BD)60mol%、ε−カプロラクトン(ε−CL)15mol%を共重合した共重合ポリエステル(極限粘度0.67、Tm158℃、Tc94℃、Tg40℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル繊維を得た。
実施例5
共重合ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール25mol%、1,4−ブタンジオール(BD)60mol%、アジピン酸(AD)15mol%を共重合した共重合ポリエステル(極限粘度0.67、Tm160℃、Tc84℃、Tg30℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル繊維を得た。
比較例1
共重合ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール80mol%、1,4−ブタンジオール(BD)20mol%を共重合した共重合ポリエステル(極限粘度0.67、Tm231℃、Tc150℃、Tg71℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル繊維を得た。
比較例2
共重合ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール10mol%、ε−カプロラクトン(ε−CL)30mol%、1,4−ブタンジオール(BD)60mol%を共重合した共重合ポリエステル(極限粘度0.67、融点120℃、Tc95℃、Tg10℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル繊維を得た。
実施例6〜7、比較例3〜4
繊維中の防黴剤の含有量が表1に示す値となるように、共重合ポリエステル中の防黴剤の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル繊維を得た。
比較例5
トリアゾール系有機化合物の防黴剤に代えて、ケイ酸塩を主成分とする防黴剤(石塚硝子社製『イオンピュア』)を用いた以外は、実施例1と同様にして防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維を得た。
比較例6
共重合ポリエステルとして、イソフタル酸を25mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(極限粘度0.67、流動開始温度180℃、Tcなし、Tg60℃)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1〜7、比較例1〜6で得られた熱接着性ポリエステル繊維の特性値及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜7の熱接着性ポリエステル繊維は、防黴性及び防黴性の耐久性ともに優れており、b値が小さく色調にも優れていた。また、紡糸操業性よく得ることができた。さらに、これらの熱接着性ポリエステル繊維は、繊維の強度が2.0cN/dtex以上、熱水収縮率が12%以下であり、接着性及び熱接着時の寸法安定性に優れているものであった。
一方、比較例1の熱接着性ポリエステル繊維は、融点、結晶開始温度ともに高いため、接着性評価の熱接着処理温度を高くする必要があり、コスト高であった。比較例2では共重合ポリエステル中のε−カプロラクトン(ε−CL)の共重合量が多すぎるため、融点が低く、溶融紡糸することができなかった。比較例3の熱接着性ポリエステル繊維は、防黴剤の含有量が少なすぎるため、防黴性及び防黴性の耐久性ともに劣るものであった。比較例4の熱接着性ポリエステル繊維は、防黴剤の含有量が多すぎるため、b値が高く色調に劣るものであり、紡糸操業性にも劣るものであった。比較例5の熱接着性ポリエステル繊維は、トリアゾール系有機化合物からなる防黴剤を用いなかったため、防黴性及び防黴性の耐久性ともに劣るものであり、b値も高く色調に劣るものであった。比較例6では、非晶性のポリエステルを用いたため、紡糸操業性が非常に悪く、繊維を得ることができなかった。

Claims (3)

  1. テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合成分として含有し、結晶開始温度80〜140℃、融点130〜200℃、防黴剤を含有する共重合ポリエステルからなる繊維であって、防黴剤としてトリアゾール系有機化合物を繊維質量に対して0.1〜1.5質量%含有していることを特徴とする防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維。
  2. 強度が1.5cN/dtex以上、熱水収縮率が15%以下である請求項1記載の防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維
  3. 防黴剤が、トリアゾール系有機化合物を層間に担持させた層状珪酸塩である請求項1又は2記載の防黴性を有する熱接着性ポリエステル繊維。

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