JP6480753B2 - 芯鞘型複合繊維、これを用いた繊維構造物及び芯鞘型複合繊維を用いた紡績糸の製造方法 - Google Patents

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本発明は、芯成分がポリプロピレン、鞘成分がポリエステルである芯鞘型複合繊維及びこれを用いた繊維構造物に関する。
従来からポリプロピレンを芯成分とし、ポリエステルを鞘成分とした複合繊維は知られている。特許文献1〜2には芯部にポリプロピレンを配置し、鞘部にポリエチレンテレフタレート(PET)を配置した芯鞘型複合繊維が提案されている。本出願人らは、特許文献3において芯部にポリプロピレンを配置し、鞘部に分散染料可染性の変性ポリエステルを配置した芯鞘型複合繊維を提案している。
特開平4−11006号公報 特開平7−34328号公報 特開2012−193483号公報
しかし、従来の芯鞘型複合繊維は、紡績時又は使用時に発生する摩擦などにより、繊維が割ける、いわゆるフィブリル化が発生しやすい問題があった。フィブリル化が発生すると、染色されている繊維表面のポリエステル成分が割け、繊維内部の染色されていないポリプロピレン成分が外側に露出するため、黒など濃色に染色した場合、徐々に繊維製品が白化して見た目が悪化することに加え、フィブリル化で生じた細い繊維が絡まることにより毛玉が生じる、いわゆるピリングが生じやすいという問題があった。また、芯鞘型複合繊維を濃色に染色しても染色濃度が十分ではなく、染色時に高温での染色(約120℃)が必要であることから生産性が低いという問題もあった。さらに繊維自体の強度が低いという問題もあった。
そこで、発明者らは種々検討を行い、これらの問題が鞘成分のポリエステルに起因していると考え、鞘成分の改良を行った。その結果、今まで使用していたポリエステルとは異なる共重合ポリエステルを鞘成分として使用することで、ピリング性、染色性、低い強度、生産性といった諸問題が改善することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、抗ピリング性、染色性、高強度及び生産性の高い芯鞘型複合繊維及びこれを用いた繊維構造物を提供する。
本発明の芯鞘型複合繊維は、 芯成分と鞘成分を含む芯鞘型複合繊維であって、前記芯鞘型複合繊維は繊度が0.4dtex以上3.5dtex以下であり、前記芯成分はポリプロピレンを50質量%以上含み、前記鞘成分は融点が180℃以上250℃以下の少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルであり、前記少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルが、下記に示す酸成分およびグリコール成分とから成る繰り返し単位を具え、少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルのガラス転移温度が40℃以上70℃以下の範囲内にあり、前記芯鞘型複合繊維の単繊維強度が1.8cN/dtex以上5.0cN/dtex以下であることを特徴とする。
本発明の繊維構造物は、前記の芯鞘型複合繊維からなる繊維構造物又は前記芯鞘型複合繊維(A)とその他の繊維(B)を含む繊維構造物であって、前記芯鞘型複合繊維(A)とその他の繊維(B)の混合割合が質量%で10≦A≦100、0≦B≦90の範囲であることを特徴とする。
また、本発明の芯鞘型複合繊維を用いた紡績糸の製造方法は、前記の芯鞘型複合繊維を使用した紡績糸の製造方法であり、前記紡績糸は渦流法(MVS法)にて製造することを特徴とする。
本発明は、芯成分はポリプロピレンを50質量%以上含み、鞘成分は融点が180℃以上250℃以下の少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルであり、複合繊維の単繊維強度が1.8cN/dtex以上5.0cN/dtex以下であることにより、抗ピリング性、染色性、強度及び生産性の高い芯鞘型複合繊維及びこれを用いた繊維構造物を提供できる。すなわち、脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルは、フィブリル化(繊維の長さ方向の割れ)が発生しにくく、白化現象もピリング現象も起こりにくい。加えて、染色温度も従来の約120℃より低くすることができ、かつ濃色染色が可能で生産性を高くすることができる。
図1は本発明の一実施例における芯鞘型複合繊維の概略断面図である。 図2は本発明の実施例1と比較例1の染色濃度を比較するグラフである。 図3は本発明の実施例1の芯鞘型複合繊維からなる不織布を洗濯した後の電子顕微鏡観察写真(SEM,倍率200倍)である。 図4は同実施例2の芯鞘型複合繊維からなる不織布を洗濯した後の電子顕微鏡観察写真(SEM,倍率200倍)である。 図5は同実施例3の芯鞘型複合繊維からなる不織布を洗濯した後の電子顕微鏡観察写真(SEM,倍率200倍)である。 図6は同実施例4の芯鞘型複合繊維からなる不織布を洗濯した後の電子顕微鏡観察写真(SEM,倍率200倍)である。 図7は同実施例5の芯鞘型複合繊維からなる不織布を洗濯した後の電子顕微鏡観察写真(SEM,倍率200倍)である。 図8は同比較例1の芯鞘型複合繊維からなる不織布を洗濯した後の電子顕微鏡観察写真(SEM,倍率200倍)である。
本発明は、鞘成分として融点が180℃以上250℃以下の少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルを配置する。脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルは、ポリエステルの結晶性を落とし、靱性又はねばり性を上げる性質があり、フィブリル化(繊維の長さ方向の割れ)が発生しにくい。これにより白化現象もピリング現象も起こりにくい。加えて、結晶性を落としていることから、染料が拡散しやすくなり、染色温度も分散染料により100〜110℃、好ましくは102〜108℃まで低くすることができ、かつ濃色染色も可能である。これにより生産性を高くすることができる。
脂肪族ジカルボン酸成分は、炭素数2〜18の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。より好ましくは炭素数2〜10の脂肪族ジカルボン酸である。具体的には、アゼラン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸などを挙げることができる。さらに好ましくはアジピン酸である。アジピン酸はナイロン原料としても使用されており、コストが安いからである。特に好ましくはアジピン酸を共重合したエチレンテレフタレート−アジペート共重合体である。
ポリエステルは下記に示す酸成分及びグリコール成分とから成る繰り返し単位を含んでも良い。
[酸成分]
(1)テレフタル酸が50モル%以上90モル%以下
(2)スルホン酸金属塩が0.2モル%以上6モル%以下
(3)脂肪族ジカルボン酸が4モル%以上49.8モル%以下
[グリコール成分]
(1)エチレングリコールが50モル%以上99.9モル%以下
(2)ジエチレングリコールが0.1モル%以上50モル%以下
本発明で使用する鞘成分のポリエステルは通常の衣料用に使用する分子量のものを使用できる。ポリエステルの場合、通常分子量は極限粘度に置き換えて表現する。極限粘度はJIS K 7367−5に規定されており、例えばポリエチレンテレフタレート1gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒100ml中に溶解し、30℃でウベローデ型粘度計を用いて測定する。極限粘度[η]0.58〜0.70程度が衣料用に適する。重量平均分子量で約18000〜25000程度が好ましい。
本発明で使用する鞘成分のポリエステルは、そのガラス転移温度が、40℃以上70℃以下の範囲内にあることが好ましい。より好ましいガラス転移温度の下限は、42℃である。さらにより好ましいガラス転移温度の下限は、44℃である。より好ましいガラス転移温度の上限は、68℃である。さらにより好ましいガラス転移温度の上限は、65℃である。鞘成分に含まれるポリエステルのガラス転移温度が40℃未満であると、このポリエステルを含む鞘成分の結晶化が困難となり、可紡性が低下する可能性がある。鞘成分に含まれるポリエステルのガラス転移温度が70℃を超えると、鞘成分の結晶性が著しく高くなり、染色性が低下したり、繊維及びそれを用いて製造される繊維集合物の風合いが硬くなったりする可能性がある。
本発明で使用する鞘成分のポリエステルは、グリコール成分として本質的にエチレングリコールとジエチレングリコールとを用い、酸成分として本質的にテレフタル酸とスルホン酸金属塩と脂肪族ジカルボン酸を用いて、従来の重縮合法により製造することができる。
本発明で使用する鞘成分のポリエステルを重合する際の酸成分において、酸成分中に含まれているテレフタル酸の含有量は、50モル%以上90モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、84モル%以上90モル%以下である。テレフタル酸の量が多い程、得られるポリエステル樹脂そのものの機械的強度が高くなりやすい。
本発明で使用する鞘成分のポリエステルを重合する際の酸成分において、前記スルホン酸金属塩は、5−スルホイソフタル酸の金属塩、4−スルホイソフタル酸の金属塩、4−スルホフタル酸の金属塩などを挙げることができ、5−スルホイソフタル酸の金属塩が好ましい。金属イオンは、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属が好ましい。最も好ましいスルホン酸金属塩は、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩である。
前記酸成分中に含まれるスルホン酸金属塩は、0.2モル%以上6モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.2モル%以上1モル%以下である。この成分は比較的高価であるばかりでなく、過剰量で用いるとポリエステルが水溶性になる可能性があるほか、得られるポリエステル樹脂そのものの物理的性質に影響を及ぼす可能性がある。
前記酸成分中の脂肪族ジカルボン酸成分単位は、4モル%以上49.8モル%以下、好ましくは4モル%以上15モル%以下である。脂肪族ジカルボン酸成分が4モル%未満であると、ガラス転移温度を適度に下げることができず、その結果、鞘成分の結晶性が著しく高くなり、染色性が低下したり、繊維及びそれを用いて製造される繊維集合物の風合いが硬くなったりする可能性がある。一方、脂肪族ジカルボン酸成分が49.8モル%を超えると、ガラス転移温度の極端な低下を招き、繊維の可紡性が悪化する可能性がある。なお、ジカルボン酸の代わりに、酸のジメチルエステルなどのエステル形成誘導体を使用することもできる。
前記グリコール成分中のエチレングリコールは50モル%以上99.9モル%以下、及びジエチレングリコールは0.1モル%以上50モル%以下であることが好ましい。ジエチレングリコール単位が50モル%を超えると、繊維の単繊維強度や、それを用いて得られる紡績糸の引張強さが低下する可能性がある。一方、0.1モル%を未満であると、ポリエステルの結晶性が高くなりやすく、染色性が低下したり、繊維及びそれを用いて製造される繊維集合物の風合いが硬くなったりする可能性がある。
前記の少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルを主体として鞘成分を構成すると、この脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルは、ポリエステルの結晶性が適度に低下しているため、靱性又はねばり性が上がっている傾向があり、このポリエステル成分が複合繊維の表面、すなわち鞘成分を構成することで得られる複合繊維はフィブリル化(繊維の長さ方向の割れ)が発生しにくい。これにより白化現象もピリング現象も起こりにくい。加えて、結晶性を落としていることから、染料が拡散しやすくなり、低温でも濃色染色が可能となる。特に、酸成分がテレフタル酸を84モル%以上90モル%以下の範囲内とし、スルホン酸金属塩を0.2モル%以上1モル%以下の範囲内とし、脂肪族ジカルボン酸を4モル%以上15モル%以下の範囲内とし、グリコール成分がエチレングリコールを50モル%以上99.9モル%以下の範囲内とし、ジエチレングリコールを0.1モル%以上50モル%以下の範囲内とする、ガラス転移温度が55℃以上70℃以下の範囲にある芳香族脂肪族ポリエステル成分(以下、高テレフタレートポリエステル成分とも称す)を鞘成分の主体にすることによって、生産性、染色性、及び紡績糸にしたときに機械的特性に優れる複合繊維を得ることができる。
芯成分のポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR)が25g/10min以上60g/10min以下が好ましい。この範囲であれば、実生産が可能な程度に糸切れはなく安定して紡糸できる。メルトフローレート(MFR)が25g/10min未満では、ポリプロピレンの溶融時の流動性が低く、糸切れが多くなる傾向となる。またメルトフローレート(MFR)が60g/10minを超えると、ポリプロピレンの溶融時の粘性がなくなり、糸切れが発生し易くなる。メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準じて、230℃、21.2Nで測定する。
ポリプロピレンは、ポリプロピレンのホモポリマー及び50モル%未満の範囲で共重合可能な成分を含む共重合体が好ましい。ポリプロピレン成分に含まれるポリプロピレン樹脂の割合は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは、実質的にポリプロピレン樹脂のみから成る。好ましい上限は100%質量である。ここで、「実質的に」という用語は、通常、製品として提供される樹脂は安定剤等の添加剤を含むため、及び/又は繊維の製造に際して各種添加剤が添加されるため、ポリプロピレン樹脂のみから成り、他の成分を全く含まない形態の繊維が得られないことを考慮して使用している。通常、添加剤の含有量は、最大で15質量%である。
ポリプロピレン成分は、他の樹脂成分を30質量%未満の範囲で、好ましくは10質量%未満の範囲で含んでよい。他の樹脂成分は、例えば、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6等のポリアミドなどのホモポリマーや共重合体である。ポリプロピレンとポリエステル成分との両成分に相溶する成分を加えると、ポリプロピレン成分とポリエステル成分との相溶性が高くなり、剥離しにくい芯鞘型複合繊維となる。
ポリプロピレンは、2以上の異なるポリプロピレンからなってもよく、例えば、2以上のポリプロピレンを混合することにより、本発明のメルトフローレート(MFR)の範囲のポリプロピレンを得ることができる。
前記芯成分と前記鞘成分の複合割合(芯鞘比)は、質量%で芯成分:鞘成分=35〜78:65〜22が好ましい。この範囲であると、得られる芯鞘型複合繊維の染色性や発色性が良好であるだけでなく、芯鞘型複合繊維を用いた繊維構造物の速乾性、保温性等が高くなる。前記芯成分と前記鞘成分の複合割合(芯鞘比)は、質量%で芯成分:鞘成分=50〜75:50〜25であるとより好ましく、芯成分:鞘成分=52〜70:48〜30であると特に好ましく、52〜65:48〜35であると最も好ましい。また、ポリプロピレンの比重は0.90〜0.91、ポリエステルの比重は1.3〜1.4であり(ASTM D792による測定)、前記範囲であれば複合繊維の比重を軽くでき、さらに染色可能な芯鞘型複合繊維とすることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維を製造するための方法は、芯成分と鞘成分を複合紡糸口金から芯鞘状態で溶融紡糸して未延伸糸とし、得られた未延伸糸を延伸し、定長又は緊張熱処理セットするのが好ましい。前記において、延伸後の定長又は緊張熱処理セットは、寸法安定化のために行う。この定長又は緊張熱処理セットにより、後の工程で収縮や弛緩が起こることを防止できる。延伸後の定長又は緊張熱処理セットは、85〜100℃の熱水中で行うのが好ましい。時間は15秒〜180秒間程度が好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維を製造するための方法において、延伸は50〜70℃程度の比較的低温の温水浴中で湿式延伸するのが好ましい。穏やかな延伸条件により、芯成分と鞘成分の剥離を起こさないようにするためである。また、比較的低温で延伸することにより、ポリエステル成分の加水分解を防止し、繊維同士の融着ないしは膠着も防止できる。延伸倍率は1.3〜4.5倍程度の比較的穏やかな延伸条件が好ましい。より好ましくは1.5〜3.8倍であり、さらに好ましくは1.8〜3.5倍である。これも芯成分と鞘成分の剥離を起こさないようにするためである。好ましい製造工程は、延伸し、定長又は緊張熱処理セットし、クリンパーで捲縮を付与し、乾燥する工程である。乾燥は105〜115℃の温度で、15分間程度乾燥機で行う。本発明の複合繊維を紡績糸や不織布にするには、トウの状態で乾燥工程まで行い、その後所定の繊維長にカットして短繊維とする。フィラメントにする場合は、延伸し、定長又は緊張熱処理セットし、巻き取る。
本発明の芯鞘型複合繊維の繊維長は特に限定されず、複合繊維の用途に合わせた繊維長に切断されるが、その範囲は1〜110mmである。本発明の複合繊維を紡績糸に使用する場合、複合繊維の繊維長は24〜75mmであることが好ましく、28〜65mmであることがより好ましく、32〜54mmであることが特に好ましく、34〜48mmが最も好ましい。本発明の複合繊維を不織布、あるいは短繊維を充填したクッション材を始めとする中綿材料として使用する場合、繊維長は20〜80mmであることが好ましく30〜75mmがより好ましく、35〜65mmが特に好ましく、40〜55mmが最も好ましい。
以下図面の説明をする。図1は本発明の一実施例における芯鞘型複合繊維の概略断面図である。複合繊維1はポリプロピレンからなる芯成分2と、ポリエステルからなる鞘成分3で構成されている。鞘成分(ポリエステル)3が染色され、芯成分(ポリプロピレン)2は染色されないままであっても、複合繊維1全体としては染色された状態に見える。
本発明の芯鞘型複合繊維は、単繊維強度が1.8〜5.0cN/dtexであることが好ましく、2.0〜4cN/dtexであることがより好ましい。単繊維強度が1.8cN/dtex以上であると、繊維を加工する際の外力(例えば、紡績張力など)を受けても、繊維が切れにくい。また、単繊維強度が5cN/dtex以下であると、抗ピリング性がさらによい繊維が得られる。本発明の複合繊維の単繊維強度は2.0〜3.5cN/dtexであると特に好ましく、2.2〜3.2cN/dtexであると最も好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維は、伸度が5〜70%であることが好ましく、10〜40%であることがより好ましい。伸度が5〜70%であると、やわらかな風合いの繊維が得られる。
本発明の芯鞘型複合繊維の好ましい単繊維繊度は、0.4〜20dtexである。この繊度範囲であれば得られる芯鞘型複合短繊維の特徴を活かし、様々な繊維構造物、例えば、得られた芯鞘型複合繊維を含む紡績糸を用いて織編物としたり、得られた芯鞘型複合繊維を用いて各種中綿材料としたり、当該芯鞘型複合繊維を含む各種不織布にすることが可能である。特に、前記繊度範囲を満たす本発明の芯鞘型複合繊維を含む紡績糸を用いて製造した織編物は柔軟なものとなり、衣類などに好適である。本発明の芯鞘型複合繊維を含む紡績糸及びそれを用いた織編物に適した繊度範囲は0.4〜3.5dtexであるとより好ましく、0.6〜2.5dtexであると特に好ましく、0.8〜2.0dtexであると最も好ましい。
次に本発明の繊維構造物について説明する。本発明の繊維構造物は、芯鞘型複合繊維からなる繊維構造物又は前記芯鞘型複合繊維(A)とその他の繊維(B)を含む繊維構造物であって、前記芯鞘型複合繊維(A)とその他の繊維(B)の混合割合が質量%で10≦A≦100、0≦B≦90の範囲である。この範囲であれば本発明の芯鞘型複合繊維の特徴を生かすことができる。その他の繊維はアクリル系繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、アクリレート繊維、エチレンビニルアルコール系繊維、ウレタン繊維、絹繊維、ウール繊維、カシミヤ繊維、コットン繊維、麻繊維、レーヨン繊維又はキュプラ繊維等が一例として挙げられる。これらの繊維を併用又は混合して使用することもできる。本発明の繊維構造物は、糸、織物、編物、不織布、詰め綿又は繊維製品等が一例として挙げられる。
前記繊維構造物糸は、リング法、オープンエンド法、結束法、交互撚糸法、ラッピング法、渦流法(MVS法)又は無撚法等いずれの方法でも製造できる。この場合の好ましい番手は英式綿番手で5〜100Sの範囲である。単糸使いでも複数本撚り合わせて使用しても良い。前記繊維構造物が紡績糸の場合は、構成する芯鞘型複合繊維の繊度0.4dtex以上3.5dtex以下、繊維長24mm以上75mm以下が好ましい。前記の範囲であれば紡績糸を製造しやすい。
糸は、本発明の芯鞘型複合繊維を10質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは本発明の芯鞘型複合繊維を20質量%含み、更に好ましくは本発明の芯鞘型複合繊維を50質量%含む。好ましい上限は100質量%である。本発明の芯鞘型複合繊維を10質量%以上含む糸は、保温性、速乾性、軽量性に優れる。
糸は、本発明の芯鞘型複合繊維に加えて、他の繊維を90質量%以下の範囲で、好ましくは80質量%以下の範囲で、より好ましく50質量%以下の範囲で含んでよい。例えば、本発明の芯鞘型複合繊維として、比較的単繊維強度が低いものを糸に用いる場合には、糸全体の強度を高くするために、他の繊維と混紡することが好ましい。他の繊維は、特に限定されないが、前述のその他の繊維(B)で挙げた繊維であってよく、なかでも、アクリル系繊維、又はポリエステル繊維であることが好ましい。アクリル系繊維やポリエステル繊維は、染色性、洗濯堅牢度、強度に優れるため、本発明の芯鞘型複合繊維の特徴を阻害することなく、糸に強度を与える。
糸を構成する繊維の構成本数は、90本以上であることが好ましく、100本以上であることがより好ましい。好ましい上限は500本である。糸を構成する繊維の構成本数が90本以上であると、精紡工程や巻糸工程で糸切れし難い。
前記繊維構造物が編物の場合も組織や目付、密度等は特に限定されるものではなく、平編、ゴム編又は両面編等いずれであっても良い。また、前記繊維構造物が織物であっても良い。
他の繊維との併用又は混合は、例えば下記の方法を採用できる。
(1)混紡:混紡は綿段階において2種以上の繊維の混合である。例えば混打綿、カード、練条、スライバーなどでの混合である。糸、不織布の主に均一混合の場合に使用される。
(2)合糸:合糸は2種以上の糸を撚り合わせる混合である。例えば双糸の場合、本発明の繊維糸と他の繊維糸とを撚り合せる混合である。紡績糸同士、紡績糸とフィラメント糸、フィラメント糸同士の撚り合わせに使用される。
(3)混繊:混繊は、フィラメント糸同士の単繊維を混合するときに使用される。
(4)交織:交織は、織物を構成する糸を複数種類使用して織物にする場合の混合である。例えば、経糸と緯糸を異なる種類の糸にするとか、経糸、緯糸をそれぞれ複数種使用することもできる。
(5)交編:交編は編物を製造する際に複数種類の糸を使用する場合の混合である。
(6)不織布製造におけるニードルパンチ、水流交絡によって、積層した複数種類の繊維層を混合する。
繊維構造物が、織編物である場合、繊維構造物は、本発明の芯鞘型複合繊維を含む糸を10質量%以上含む織編物であることが好ましい。より好ましくは、本発明の芯鞘型複合繊維を含む糸を20質量%以上含み、さらに好ましくは、本発明の芯鞘型複合繊維を含む糸を30質量%以上含む。好ましい上限は100質量%である。このような織編物は、染色性、保温性、速乾性、軽量性に優れる。
織編物は、本発明の芯鞘型複合繊維を含む糸と他の繊維の糸とからなることが好ましい。この場合、織編物は他の繊維を90質量%以下範囲で含んでよく、好ましくは80質量%以下の範囲で、より好ましく70質量%以下の範囲で含んでよい。他の繊維の形態は、糸、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸等いずれの形態であってもよい。他の繊維は、前述のその他の繊維(B)で挙げた繊維であってよく、なかでも、ポリエステル繊維又はウレタン繊維であることが好ましい。ポリエステル繊維は、染色性、洗濯堅牢度、強度に優れるため、本発明の繊維の特徴を阻害することなく、糸に強度を与える。また、ウレタン繊維は伸縮性に優れており、かつ緩やかに収縮するので、本発明の繊維の柔らかい風合いを活かしながら、ストレッチ性を付与した織編物を得ることができる。
本発明の繊維構造物は、衣類、寝装具の側地、詰め綿、毛布、ひざ掛け又はカーペット等の繊維製品も含む。衣類としては、例えば、肌着、下着、シャツ、ジャンパー、セーター、パンツ、トレーニングウエア、タイツ、腹巻、マフラー、帽子、手袋、靴下、耳あて等がある。防寒衣料、スポーツウエア、衣料用詰め綿等にも好適である。さらにフリース等のように生地表面を起毛しても良い。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた測定方法は以下のとおりである。
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210に準じて、230℃、21.2Nで測定した。
(2)極限粘度
JIS K 7367−5に従い、ポリエステル1gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒100ml中に溶解し、30℃でウベローデ型粘度計を用いて測定する。
(3)単繊維強度及び破断伸度
JIS L 1015に準じて、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとしたときの繊維切断時の荷重値及び伸度を測定し、それぞれ単繊維強度及び繊維伸度とした。糸強度と糸の破断伸度も同一である。
(4)紡績糸の正量番手
JIS L 1095に準じて測定した。管糸を109.73m(120ヤード)採取し、絶乾質量を測定し、紡績糸の長さ、及び前記絶乾質量から正量番手を求める。測定は管糸を10本採取してその正量番手を測定し、その平均値とした。
(5)紡績糸の単糸引張強さ及び伸び率
JIS L 1095 9.5.1 JIS法に準じて、紡績糸の単糸引張強さ及び伸び率を測定した。測定には引張試験機を用い、試料のつかみ間隔を50cmとして測定を行い、紡績糸切断時の荷重値及び伸度を測定し、それぞれ単糸引張強さ及び伸び率とした。測定は、管糸を5本採取し、各管糸に対し4回測定を行うことで20回の測定を行い、単糸引張強さの平均値を平均強力とした。この平均強力と、各測定値の差から単糸引張強さの変動率を求めた。
(6)糸の外観(糸むら、カス、ネップ)
糸の外観の評価をJIS L 1095 9.19法に準じて評価した。
(7)糸のむら(A法)
糸のむらをJIS L 1095 9.20.2 A法に準じて測定した。測定には糸むら試験機を用いて5回行い、その平均値から平均むら偏差の100分率(U%)を求めた。
(8)糸のむら(IPI法)
糸のむらをJIS L 1095 9.20.2 B法に準じて測定した。測定には欠点個数表示装置付糸むら試験機を使用し、糸1000mあたりに発生する平均太さに対する太むら(THIN)、細むら(THICK)、ネップ(Nep)の個数を求めた。
(9)糸切れ回数
得られた複合短繊維を用いて紡績糸を製造する際の生産性を評価するため精紡工程において紡績糸を100km生産した際に発生する糸切れ回数を測定した。
(10)フィブリル化試験(家庭洗濯103法)
JIS L 0217に定められている家庭洗濯103法に基づく洗濯試験を行い、洗濯試験終了後の生地を観察してフィブリル化の評価を行った。まず、縦30cm、横21cmの大きさに裁断した試料を用意する。用意した試料片の質量を測定し、試験片の質量との和が1kgになるように負荷布を用意する。用意した試験片及び負荷布を家庭用洗濯機に投入し、水30リットルの条件でJAFET標準配合洗剤を使用した洗浄を25分間行う。脱水後2分間水洗し、再度脱水する。再び2分間水洗した後4分間脱水処理をする。この処理を2回行った後、試料片を室内にて吊干し乾燥させる。乾燥した後の試料について表面を肉眼にて観察し、フィブリル化の状況、生地の白化の発生状況を確認し、下記の基準で評価した。
+:フィブリル化やフィブリル化に伴う白化が肉眼でほとんど確認できない。
−:肉眼で生地の白化がはっきりと確認でき、フィブリル化に伴う毛羽立ちが表面に発生している。
(11)抗ピリング試験(家庭洗濯103法)
洗濯時に発生する摩擦にてピリング(毛玉)が発生するかを確認するため、前記フィブリル化試験と同じ方法で洗濯試験を行った。室内にて吊干しにて乾燥させた試料表面を肉眼にて観察し、ピリング(毛玉)の発生状況を確認し、下記の基準にて評価した。
+:肉眼ではピリング(毛玉)がほとんど確認できない。
−:生地表面の毛羽立ちがひどく、肉眼で確認出来るピリング(毛玉)が多数発生する。
(12)染色堅牢性(家庭洗濯103法)
染色した布帛に対し、前記フィブリル化試験・抗ピリング試験と同じ方法で洗濯試験を行い、洗濯後の布帛について色落ちを肉眼で確認して染色の耐久性(染色堅牢性)を評価した。
前記(10)フィブリル化試験と同じ方法で試料片を採取し、得られた試験片に対し、前記フィブリル化試験と同じ条件で洗濯処理を行う。室内にて吊干しにて乾燥させた後、洗濯後の試料と洗濯前の布帛を肉眼にて比較し、下記の基準にて評価した。
+:洗濯試験前の布帛と洗濯後の試料を比較して濃度、色合いの変化がわずかである。
−:洗濯試験後の試料全体に明らかな退色が確認でき、色合いの変化、生地の白化が発生している。
(13)洗濯後の表面観察(家庭用洗濯103法)
洗濯で生じるフィブリル化、ピリングを電子顕微鏡で観察するため、得られた複合繊維を用いて不織布を製造し、この不織布を試料としてJIS L 0217に定められている家庭洗濯103法に基づく洗濯試験を行った。まず、評価する繊維を用い、パラレルカード機にて100g/m2のカードウェブを作製する。このカードウェブに対し、ニードルパンチ処理を行い、さらに両表面から水流交絡処理を行い乾燥して不織布とした。前記方法で製造した不織布を縦15cm、横21cmになるように裁断し、その質量を測定する。そして、試験片の質量との和が1kgになるように負荷布を用意する。用意した試験片及び負荷布を洗濯用ネットに入れた状態で家庭用洗濯機に投入し、水30リットルの条件でJAFET標準配合洗剤を使用した洗浄を25分間行う。脱水後2分間水洗し、再度脱水する。再び2分間水洗した後4分間脱水処理をする。この処理を2回行った後、試料片を室内にて吊干し乾燥させる。乾燥した後の試料について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面に発生しているフィブリル化、ピリングの観察を行った。
(14)熱伝導率
得られた天竺編ニット生地の熱伝導率をカトーテック株式会社製 精密迅速熱物質測定装置サーモラボIIを使用して測定した。
(15)抗ピリング性(ICI形試験機)
得られた天竺編ニット生地の抗ピリング性を、JIS L 1076 A法に基づき、ICI形試験機を使用して抗ピリング性を測定した。
(実施例1〜5、比較例1)
<使用ポリマー>
下記のポリプロピレンとポリエステルを用いた。
1.ポリプロピレン
(1)サンアロマー株式会社製、商品名:PLA000A(以下「PP-1」という)
(2)日本ポリプロ社製、商品名:SA03(以下「PP-2」という)
2.ポリエステル
(1)米国デュポン社製、製品名:APEXA4027(エチレンテレフタレート−アジペート共重合体、融点:235℃ 、極限粘度[η]0.63、以下「PES-1」という)
(2)Woongjin Chemical Co.Ltd.製、製品名:A2802(5−ナトリウムスルホイソフタレート共重合体PET(カチオン染料可染性PET)、融点:241℃ 、極限粘度[η]0.63、以下「PES-2」という)
<芯鞘型複合繊維の製造>
表1の紡糸条件で、複合紡糸を行い、芯鞘型複合繊維を得、延伸し、トウとした。紡糸条件は下記のとおりとし、下記以外は表1にまとめて示した。
(1)延伸温度:55℃の温水浴中で湿式延伸
(2)延伸後の定長熱処理セット:95℃の熱水浴
(3)捲縮付与:クリンパーを用いた機械的圧縮による捲縮付与
(4)乾燥:110℃、15分間の熱風乾燥
(5)延伸〜乾燥工程までトウ状態とし、乾燥工程し、その後所定の長さにカットした。
表1から、実施例1〜5の延伸繊維は比較例1に比べて単繊維強度が高いことが分かる。
(実施例6〜10、比較例2)
<糸の製造>
前記カットした実施例1〜5の芯鞘型複合繊維、及び比較例1の繊維を、常法により開繊して当該芯鞘型複合繊維からなるウェブとし、粗糸、糸を製造し、それぞれ実施例6〜10、及び比較例2とした。糸の評価試験結果を表2に示す。
表2から本発明の実施例である、実施例1〜5の芯鞘型複合繊維を用いて紡績糸を製造する際、実生産が可能な程度に糸切れはなく、安定して紡糸できる。そして、得られる紡績糸(実施例6〜10)は比較例1の複合繊維を用いた紡績糸(比較例2)に比べて太むら、細むら、ネップ共に少なく高品質な糸が得られている。それに加え、実施例6〜10の紡績糸は比較例2の紡績糸と比較して平均強力が高く、その変動が小さい、あるいは同程度の糸になっていることが分かる。比較例2の紡績糸と比較して、実施例の紡績糸は平均強力が高く、その変動が小さい、加えて紡績糸の太さむらが少ないことから、これらの紡績糸を用いて織編物を製造する際、より生産性が高くなり、得られる織編物の地合も均一なものが生産しやすくなると考えられる。
(実施例11〜15、比較例3)
<編地の製造及び染色性評価>
実施例6〜10、及び比較例2の紡績糸について、易染色性、各種洗濯耐久性(フィブリル化、ピリングの発生、染色の洗濯耐久性)を評価するため、下記の方法で編地を製造し、得られた編地を黒色に染色し、染色後の生地に対して家庭洗濯試験を行った。
前記の方法で得られた紡績糸を使用して丸編機(24ゲージ)を用い、筒編(目付110g/m2)の生地を作成した。前記の筒編の生地に対し、以下の方法で染色試験を行った。本発明の実施例6〜10の紡績糸を用いて製造した編地(実施例11〜15)に対しては、使用している実施例6〜10の紡績糸が分散染料で染まることから、市販されている分散染料(日本化薬株式会社製 Kayalon(登録商標) Polyester Black)を使用し、染料の量が8% owf(owfはon the weight of fiberの略)となるように秤量した。秤量した染料を用いて浴比1:15となるように染液を調整し、105℃で1時間染色した。その後、常法にしたがって還元洗浄し、乾燥した。染色後の実施例1〜5の編地は全て黒色に染色されており、ムラなく均一に染色されていた。
比較例2に示す紡績糸を、実施例11〜15と同じ方法で筒編の生地(比較例3)を作製した。この生地に対し、以下の方法で染色試験を行った。比較例3の編地に対し、市販のカチオン染料(日本化薬株式会社製 Kayacryl(登録商標)Black R-ED)を8%owfとなるよう秤量し、秤量した染料を混合して浴比1:15となるように染液を調整し、120℃で1時間染色した。その後、常法にしたがってソーピング処理した後に洗浄し、乾燥した。染色後の編地は均一にムラなく染まっていたものの、黒色ではなく濃い青色であった。
上記の方法で得られた染色後の編地(実施例11〜15、比較例3)に対し、上記フィブリル化試験(家庭洗濯103法)、抗ピリング試験(家庭洗濯103法)、染色堅牢性(家庭洗濯103法)を行った。また洗濯後の複合繊維表面の変化を電子顕微鏡で確認するため、前記の方法で実施例1〜5及び比較例1の複合繊維を使用しニードルパンチと水流交絡処理で繊維同士を交絡させた不織布を作製し、得られた不織布に対し洗濯試験を行った後、不織布の表面を電子顕微鏡(SEM,倍率200倍)で観察した。染色後の色合い、染色堅牢性、フィブリル化試験及び抗ピリング試験の結果と、洗濯試験後の不織布表面の電子顕微鏡による観察結果を下記の表3及び図3〜8にまとめて示す。
表3及び図3〜8から明らかなとおり、本発明の実施例の紡績糸を用いた編地は濃染、特に黒色に染色できるが、比較例2に示す紡績糸を用いた比較例3の編地は、黒色の染料を使用しても染色後の色合いは青みがかったものになった。また、実施例の紡績糸を用いた編地は繰り返し洗濯を行っても色の抜けが少なく、染色堅牢性の高い編地となっているが、比較例3に示す編地は染料の抜けに加え、フィブリル化に伴う白化により、洗濯後の編地は洗濯前の編地と比較して大幅に退色している。加えて、実施例1〜5の複合繊維を使用した不織布は、洗濯試験後の表面観察にてフィブリル化、ピリングがほとんど発生しなかったが、比較例1の複合繊維を使用した不織布は、洗濯試験後の表面観察にてフィブリル化が発生して表面が毛羽立っており、表面には多数のピリングが発生していることが電子顕微鏡を用いた観察、及び肉眼の観察にて確認された。
<染色の比較>
実施例11と比較例3の筒編地を用いて染色温度と染色の濃度の比較を行った結果を図2に示す。図2は、比較例3の編地に対し、市販のカチオン染料(日本化薬株式会社製 Kayacryl(登録商標)Black R-ED)を8%owfとなるよう秤量し、秤量した染料を用いて浴比1:15となるように染液を調整し、120℃で1時間染色した。その後、常法にしたがってソーピング処理した後に洗浄し、乾燥した染色物の濃度を100%としたときの実施例1の筒編地の染色濃度割合(%)である。比較例1は120℃がもっとも濃く染色で来る温度である。
実施例11の編地は市販されている分散染料(日本化薬株式会社製 Kayalon(登録商標) Polyester Black)を使用し、染料の量が8% owfとなるように秤量し、秤量した染料を用いて浴比1:15となるように染液を調整した。調整した染液を用い、90〜130℃の各温度で1時間染色した。その後、常法にしたがって還元洗浄し、乾燥して染色した編地を得た。
図2から明らかとおり、実施例11の筒編地は染色温度105℃にピークがある。その時の染色濃度は、比較例3の筒編地を120℃で1時間染色したものに比べて192%である。以上から、実施例1の複合繊維は低温で濃色に染まりやすいことが確認できた。
(実施例16、比較例4)
<編地特性>
実施例9の紡績糸(番手40s:単糸)及び比較例2の紡績糸(番手40s:単糸)を使用して28ゲージの丸編み機により天竺編(平編)組織のニットを編製し、それぞれ実施例16、及び比較例4のニット生地を得た。得られたニット生地に対し、前記と同様の方法、すなわち、実施例16の編地は、市販されている分散染料(日本化薬株式会社製 Kayalon(登録商標) Polyester Black)を使用し、染料の量が8%owf、浴比1:15の染液を用意し105℃で1時間染色し、比較例4の編地は、市販のカチオン染料(日本化薬株式会社製 Kayacryl(登録商標)Black R-ED)を8%owfとなるよう秤量し、秤量した染料を用いて浴比1:15となるように染液を調整し、120℃で1時間染色した。得られた染色済のニット生地(実施例16、比較例4)に対し、熱伝導率、ピリング(ICI形試験機)の評価を行った。実施例16と比較例4のニット生地の基本的物性を表4に示す。
表4から明らかなとおり、実施例16のニット生地は抗ピリング性が高いことが分かる。また、実施例16のニット生地は比較例4のニット生地と比較して熱伝導率が小さいことが分かる。ニット生地にした際の熱伝導率が小さいことから、肌から生地への熱の移動が遅くなり、この生地を衣料品、特に直接肌に触れる肌着といった衣料製品に使用すると、外気温が低いとき着用した際、肌と生地が触れた瞬間に生地を冷たいと感じにくくなり、着用時の快適性が向上すると考えられる。
本発明の芯鞘型複合繊維は、衣類、寝装具の側地、詰め綿、毛布、ひざ掛け又はカーペット等の繊維製品に好適である。衣類としては、例えば、肌着、下着、シャツ、ジャンパー、セーター、パンツ、トレーニングウエア、タイツ、腹巻、マフラー、帽子、手袋、靴下、耳あて等がある。防寒衣料、スポーツウエア、衣料用詰め綿等にも好適である。さらにフリース等のように生地表面を起毛しても良い。
1 芯鞘型複合繊維
2 芯成分(ポリプロピレン)
3 鞘成分(ポリエステル)

Claims (7)

  1. 芯成分と鞘成分を含む芯鞘型複合繊維であって、
    前記芯鞘型複合繊維は繊度が0.4dtex以上3.5dtex以下であり、
    前記芯成分はポリプロピレンを50質量%以上含み、
    前記鞘成分は融点が180℃以上250℃以下の少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルであり、
    前記少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルが、下記に示す酸成分およびグリコール成分とから成る繰り返し単位を具え、少なくとも脂肪族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルのガラス転移温度が40℃以上70℃以下の範囲内にあり、
    前記芯鞘型複合繊維の単繊維強度が1.8cN/dtex以上5.0cN/dtex以下であることを特徴とする芯鞘型複合繊維。
    [酸成分]
    (1)テレフタル酸が50モル%以上90モル%以下
    (2)スルホン酸金属塩が0.2モル%以上6モル%以下
    (3)脂肪族ジカルボン酸が4モル%以上49.8モル%以下
    [グリコール成分]
    (1)エチレングリコールが50モル%以上99.9モル%以下
    (2)ジエチレングリコールが0.1モル%以上50モル%以下
  2. 前記ポリエステルが、エチレンテレフタレート−アジペート共重合体である請求項1に記載の芯鞘型複合繊維。
  3. 前記芯成分と前記鞘成分の複合割合(芯鞘比)が質量%で芯成分:鞘成分=35〜78:65〜22の範囲である請求項1又は2に記載の芯鞘型複合繊維。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の芯鞘型複合繊維からなる繊維構造物又は前記芯鞘型複合繊維(A)とその他の繊維(B)を含む繊維構造物であって、前記芯鞘型複合繊維(A)とその他の繊維(B)の混合割合が質量%で10≦A≦100、0≦B≦90の範囲であることを特徴とする繊維構造物。
  5. 前記繊維構造物が、糸、織物、編物、不織布、詰め綿及び繊維製品から選ばれる少なくとも一つである請求項4に記載の繊維構造物。
  6. 前記繊維構造物が紡績糸であり、前記紡績糸を構成する芯鞘型複合繊維の繊度が0.4dtex以上3.5dtex以下、繊維長が24mm以上75mm以下である請求項5に記載の繊維構造物。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の芯鞘型複合繊維を使用した紡績糸の製造方法であり、
    前記紡績糸は渦流法(MVS法)により製造することを特徴とする紡績糸の製造方法。
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