JP2010261064A - 機械部品及び機械部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】側面の全面に亘ってムラ無く均等に潤滑油を保持することができる機械部品を提供する。
【解決手段】電鋳により所定の厚みに形成された金属製のプレート体132と、該プレート体の側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔133と、を備えている機械部品。該機械部品であるがんぎ歯車部132の側面は、全面に亘って形成された複数の保油孔133によって潤滑油が表面張力或いは毛細管現象等により保持されている。よって、摺動面132bを含む側面の全体は、潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として機能する。
【選択図】図6
【解決手段】電鋳により所定の厚みに形成された金属製のプレート体132と、該プレート体の側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔133と、を備えている機械部品。該機械部品であるがんぎ歯車部132の側面は、全面に亘って形成された複数の保油孔133によって潤滑油が表面張力或いは毛細管現象等により保持されている。よって、摺動面132bを含む側面の全体は、潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として機能する。
【選択図】図6
Description
本発明は、機械部品に関し、特に時計等の小型の精密機械用の部品として好適な機械部品及びその製造方法に関するものである。
小型の精密機械の1つである機械式時計には、機械部品である歯車が非常に多く用いられている。この種の歯車は、用途に応じて様々な形状に形成されているうえ、複雑に組み合わされて動力を伝達している。特に、歯車の1つであるがんぎ車は、アンクルの爪石が側面に対して高速に摺動するので、両者の間に摩擦が生じて摩耗し易い。そのため、摩擦をできるだけ軽減するために、側面に潤滑油を保持させておく必要がある。しかも、余計な箇所に潤滑油が波及することを防止するために、爪石が摺動するポイントに局所的に潤滑油を保持させる必要がある。
そこで、このようなニーズに応えるものとして、がんぎ歯車部に形成された特殊な鉤型をした複数の歯部の先端に潤滑油を局所的に保持して、爪石との摩擦を軽減することができるがんぎ車が知られている(特許文献1参照)。
このがんぎ車は、歯部の先端の厚みが薄くなるように段付き加工されており、厚みの異なる部分の境である境界面(隆起部)を利用して潤滑油を保持することが可能とされている。
このがんぎ車は、歯部の先端の厚みが薄くなるように段付き加工されており、厚みの異なる部分の境である境界面(隆起部)を利用して潤滑油を保持することが可能とされている。
ところが、従来のがんぎ車では、境界面の部分を中心に潤滑油が保持される構成であるので、必要な領域に潤滑油がムラ無く均等に行き渡り難かった。つまり、境界面に近い位置と離れた位置とでは、潤滑油の量が異なり易かった。そのため、摩擦抵抗にばらつきが生じる可能性があり、偏った摩耗に繋がる恐れがあった。
ところで、がんぎ車を含む歯車等の機械部品は、通常、打ち抜き加工等の各種の機械加工により製造されている。この際、短時間で大量に製造できるように、できるだけ少ない製造工程で効率良く製造することが望まれている。
この点、上述したがんぎ車を製造する場合には、機械加工により、複数の歯部を有するがんぎ歯車部の外形形状を作製した後、さらに複数の歯部の先端を段付き加工するといった追加工がどうしても必要になってしまっていた。そのため、効率良く製造することができず、コスト高を招くものであった。
この点、上述したがんぎ車を製造する場合には、機械加工により、複数の歯部を有するがんぎ歯車部の外形形状を作製した後、さらに複数の歯部の先端を段付き加工するといった追加工がどうしても必要になってしまっていた。そのため、効率良く製造することができず、コスト高を招くものであった。
また、近年では、機械加工ではなく電鋳を利用して機械部品を製造する方法が採用されている。特に、電鋳を利用する方法は、機械加工に比べて機械公差が小さいうえ、複雑な外形形状であっても精度良く作製できるので、今後の主流となるものと考えられる。しかしながら、この電鋳を利用した方法で上述したがんぎ車を製造する場合であっても、やはり歯部の先端に段付き加工を施すためには、2段の電鋳型が必要になってしまい、製造工程が増えてしまわざるを得ない。そのため、やはり効率良く製造することができず、コスト高を招いてしまうものであった。
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、側面の全面に亘ってムラ無く均等に潤滑油を保持することができる機械部品を提供することに加え、この機械部品を、電鋳を利用した方法で効率良く製造することができる機械部品の製造方法を提供することである。
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る機械部品は、電鋳により所定の厚みに形成された金属製のプレート体と、該プレート体の側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔と、を備えていることを特徴とする。
本発明に係る機械部品は、電鋳により所定の厚みに形成された金属製のプレート体と、該プレート体の側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔と、を備えていることを特徴とする。
また、本発明に係る機械部品の製造方法は、所定の厚みに形成された金属製のプレート体と、該プレート体の側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔と、を備えた機械部品を製造する方法であって、感光性材料に複数の光透過性の微粒子を混合させた混合材料を、基材の表面に形成された導電膜上に所定の厚みだけ塗布する塗布工程と、マスクを通して前記混合材料を部分的に露光する露光工程と、露光した前記混合材料を現像して、前記プレート体の外形形状に倣って前記導電膜を露出させると共に、内壁面に前記微粒子が現れた貫通孔を形成する現像工程と、全体を電鋳液に浸漬した後に前記導電膜を電極として電鋳を行い、前記貫通孔内で露出する前記導電膜上に金属を析出させると共に、貫通孔を少なくとも完全に塞ぐ金属体となるまで金属を成長させる電鋳工程と、前記貫通孔から溢れた前記金属体を除去すると共に、残った金属体の厚みが前記プレート体の厚みになるように厚み調整を行う厚み調整工程と、前記混合材料、前記導電膜及び前記基材を除去し、前記貫通孔の内壁面に現れた前記微粒子によって側面の全面に亘って複数の前記保油孔が凹み形成された前記プレート体を得る除去工程と、を備えていることを特徴とする。
この発明においては、まず、感光性材料に複数の光透過性の微粒子を所定の比率で混合させた混合材料を準備した後、この混合材料を基材の表面に形成された導電膜上に塗布する塗布工程を行う。この際、十分な厚みとなるように混合材料を塗布しておく。
次いで、塗布した混合材料を、マスクを通して部分的に露光する露光工程を行う。この際、混合材料に含まれる複数の微粒子は光透過性であるので、微粒子によって遮られることなく混合材料を確実に露光することができる。
次いで、部分的に露光された混合材料を現像して、露光した領域或いは露光されていない領域のいずれかの領域を溶解させる現像工程を行う。これにより、混合材料に、プレート体の外形形状に倣って導電膜を露出させると共に内壁面に微粒子が現れた貫通孔を形成することができる。
次いで、塗布した混合材料を、マスクを通して部分的に露光する露光工程を行う。この際、混合材料に含まれる複数の微粒子は光透過性であるので、微粒子によって遮られることなく混合材料を確実に露光することができる。
次いで、部分的に露光された混合材料を現像して、露光した領域或いは露光されていない領域のいずれかの領域を溶解させる現像工程を行う。これにより、混合材料に、プレート体の外形形状に倣って導電膜を露出させると共に内壁面に微粒子が現れた貫通孔を形成することができる。
次いで、全体を電鋳液に浸漬した後に、導電膜を電極として電鋳を行う電鋳工程を行う。すると、貫通孔内で露出する導電膜上に金属が析出し、この金属が徐々に成長する。そして、少なくとも貫通孔を完全に塞ぐ金属体になるまで金属を成長させる。この際、貫通孔は、プレート体の外形形状に倣っているので、成長した金属体に関してもプレート体の外形形状に倣った状態となっている。また、貫通孔の内壁面には、複数の微粒子が現れているので、金属体の側面には該微粒子によって凹み形成された複数の保油孔が全面に亘って形成される。
電鋳が終了した後、貫通孔から溢れた金属体を除去すると共に、残った金属体の厚みがプレート体の厚みとなるように研磨等により厚み調整する厚み調整工程を行う。そして、最後に、混合材料、導電膜及び基材を除去する除去工程を行う。これにより、電鋳によって作製された金属製のプレート体と、このプレート体の側面の全面に亘って凹み形成された複数の保油孔と、を備えた機械部品を製造することができる。
特に、この製造方法によれば、電鋳を利用するので複雑な形状であっても精密にプレート体を作製することができ、高品質化を図ることができる。しかも、感光性材料に光透過性の微粒子を混合させる以外は一般的な電鋳方法と同じ工程で製造できるので、製造工程が増えることもなく非常に効率良く製造することができる。よって、機械部品の低コスト化に繋げることができる。
更に、このように製造された機械部品は、側面の全面に亘って複数の保油孔が形成されているので、側面の全面に亘ってムラ無く均等に潤滑油を保持することができる。従って、側面を、潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として利用することができる。よって、摩擦抵抗にばらつきが生じ難く、摩耗に偏りが生じてしまうことを抑制することができる。
更に、このように製造された機械部品は、側面の全面に亘って複数の保油孔が形成されているので、側面の全面に亘ってムラ無く均等に潤滑油を保持することができる。従って、側面を、潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として利用することができる。よって、摩擦抵抗にばらつきが生じ難く、摩耗に偏りが生じてしまうことを抑制することができる。
また、本発明に係る機械部品は、上記本発明の機械部品において、前記プレート体が、鉤型状の歯部を複数有するがんぎ歯車部であり、前記側面の一部が、アンクルの爪石が摺動される摺動面とされていることを特徴とする。
この発明に係る機械部品においては、アンクルと共に機械式時計の脱進・調速を行うがんぎ車として利用することができる。特に、全面に亘って保油孔が形成されている側面の一部が、アンクルの爪石が摺動される摺動面であるので、爪石の摺動時に生じる摩擦抵抗を効果的に軽減することができる。従って、耐久性に優れた信頼性の高いがんぎ車とすることができる。
また、本発明に係る機械部品の製造方法は、上記本発明の機械部品の製造方法において、前記塗布工程の際、前記微粒子として、前記感光性材料と略同一の屈折率を有する微粒子を用いることを特徴とする。
この発明に係る機械部品の製造方法においては、微粒子の屈折率が感光性材料と略同一であるので、露光時に微粒子で分散されることなく光を直進させることができる。そのため、マスクされていない部分のみを正確に露光することができる。よって、プレート体の外形形状に正確に倣うように貫通孔を形成することができ、機械部品をより精密に製造することができる。
また、本発明に係る機械部品の製造方法は、上記本発明の機械部品の製造方法において、前記塗布工程の際、前記微粒子として、前記感光性材料に対して比重の異なる微粒子を用いることを特徴とする。
この発明に係る機械部品の製造方法においては、感光性材料に対して比重の異なる微粒子を混合させるので、貫通孔を形成した際に内周壁に現れる微粒子の分布を厚み方向で変化させることができる。
例えば、感光性材料よりも比重の重い微粒子を混合した場合には、導電膜上に混合材料を塗布した際に、微粒子を導電膜側により多く存在させることができる。従って、貫通孔の形成時、内周壁に現れる微粒子は導電膜に近い側により多く分布する。その結果、側面に形成される保油孔をプレート体の下面側により多く分布させることができる。このように、保油孔の形成割合をプレート体の厚み方向で若干変化させることができ、機械部品の用途に応じて保油性能のより優れた領域の位置を微調整することができる。
例えば、感光性材料よりも比重の重い微粒子を混合した場合には、導電膜上に混合材料を塗布した際に、微粒子を導電膜側により多く存在させることができる。従って、貫通孔の形成時、内周壁に現れる微粒子は導電膜に近い側により多く分布する。その結果、側面に形成される保油孔をプレート体の下面側により多く分布させることができる。このように、保油孔の形成割合をプレート体の厚み方向で若干変化させることができ、機械部品の用途に応じて保油性能のより優れた領域の位置を微調整することができる。
また、本発明に係る機械部品の製造方法は、上記本発明の機械部品の製造方法において、前記塗布工程の際、前記微粒子として、前記感光性材料を微粒子状に固めたものを用いることを特徴とする。
この発明に係る機械部品の製造方法においては、微粒子が感光性材料を固めたものであるので、除去工程の際に、感光性材料と微粒子とを同じ手法で、且つ、同じタイミングで除去できるので、この工程に費やす手間及び時間を軽減でき、さらなる製造効率の向上化に繋げることができる。
本発明に係る機械部品によれば、側面の全面に亘ってムラ無く均等に潤滑油を保持することができ、この側面を潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として利用することができる。
また、本発明に係る機械部品の製造方法によれば、上記機械部品を、電鋳を利用した方法で効率良く製造することができ、低コスト化に繋げることができる。
また、本発明に係る機械部品の製造方法によれば、上記機械部品を、電鋳を利用した方法で効率良く製造することができ、低コスト化に繋げることができる。
以下、本発明に係る機械部品及びその製造方法の一実施形態について、図1から図18を参照して説明する。なお、本実施形態では、機械部品の一例として、機械式時計を構成する歯車の1つであるがんぎ車を例に挙げて説明する。
はじめに、機械式時計について、図1から図4を参照して説明する。なお、図1は、ムーブメント表側の平面図である。図2は、ムーブメント裏側の一部を図示した平面図である。図3は、香箱車からがんぎ車の部分を図示する概略部分断面図である。図4は、がんぎ車からてんぷの部分を図示する概略部分断面図である。
これら図1から図4に示すように、機械式時計のムーブメント100は、このムーブメント100の基板を構成する地板102を有している。地板102の巻真案内穴102aには、巻真110が回転可能に組み込まれている。また、ムーブメント100には、文字板104(図3及び図4参照)が取り付けられている。
一般に、地板102の両側のうち、文字板104が配される側をムーブメント100の裏側と称し、文字板104が配される側の反対側をムーブメント100の表側と称する。また、ムーブメント100の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント100の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
一般に、地板102の両側のうち、文字板104が配される側をムーブメント100の裏側と称し、文字板104が配される側の反対側をムーブメント100の表側と称する。また、ムーブメント100の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント100の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
おしどり190、かんぬき192、かんぬきばね194、裏押さえ196を含む切換装置により、巻真110の軸線方向の位置が決められている。きち車112は、巻真110の案内軸部に回転可能に設けられている。巻真110が、回転軸線方向に沿ってムーブメント100の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真110を回転させると、つづみ車111の回転を介してきち車112が回転する。丸穴車114は、きち車112の回転により回転する。また、角穴車116は、丸穴車114の回転により回転する。角穴車116が回転することにより、香箱車120に収容されたぜんまい122(図3参照)が巻き上げられる。
二番車124は、香箱車120の回転により回転する。がんぎ車130は、四番車128、三番車126、二番車124の回転を介して回転する。これら香箱車120、二番車124、三番車126及び四番車128は、表輪列を構成する。
表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置は、てんぷ140と、がんぎ車130と、アンクル142とで構成されている。てんぷ140は、図4に示すように、てん真140aと、ひげぜんまい140cとを備えている。図3に示すように、二番車124の回転に基づいて、筒かな150が同時に回転する。そして、筒かな150に取り付けられた分針152が「分」を表示する。
また、筒かな150には、二番車124に対するスリップ機構が設けられている。筒かな150の回転に基づいて、日の裏車の回転を介して筒車154が回転する。そして、筒車154に取り付けられた時針156が「時」を表示する。
また、筒かな150には、二番車124に対するスリップ機構が設けられている。筒かな150の回転に基づいて、日の裏車の回転を介して筒車154が回転する。そして、筒車154に取り付けられた時針156が「時」を表示する。
図4に示すようにひげぜんまい140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい140cの内端部は、てん真140aに固定されたひげ玉140dに固定されている。一方、ひげぜんまい140cの外端部は、てんぷ受166(図1参照)に固定されたひげ持受170に取り付けたひげ持170aを介してねじ締めにより固定されている。
緩急針168は、てんぷ受166に回転可能に取り付けられている。また、てんぷ140は、地板102及びてんぷ受166に対して回転可能に支持されている。
緩急針168は、てんぷ受166に回転可能に取り付けられている。また、てんぷ140は、地板102及びてんぷ受166に対して回転可能に支持されている。
図3に示すように香箱車120は、香箱歯車120dと、香箱真120fと、ぜんまい122とを備えている。香箱真120fは、上軸部120aと、下軸部120bとを備えている。香箱真120fは、炭素鋼等の金属で形成されている。香箱歯車120dは、黄銅等の金属で形成されている。
二番車124は、上軸部124aと、下軸部124bと、かな部124cと、歯車部124dと、そろばん玉部124hとを備えている。二番車124のかな部124cは、香箱歯車120dと噛み合うように構成されている。上軸部124a、下軸部124b及びそろばん玉部124hは、炭素鋼等の金属で形成されている。歯車部124dは、ニッケル等の金属で形成されている。
三番車126は、上軸部126aと、下軸部126bと、かな部126cと、歯車部126dとを備えている。三番車126のかな部126cは、歯車部124dと噛み合うように構成されている。
四番車128は、上軸部128aと、下軸部128bと、かな部128cと、歯車部128dとを備えている。四番車128のかな部128cは、歯車部126dと噛み合うように構成されている。上軸部128a及び下軸部128bは、炭素鋼等の金属で形成されている。歯車部128dは、ニッケル等の金属で形成されている。
がんぎ車130は、上軸部130aと、下軸部130bと、がんぎかな部130cと、がんぎ歯車部132とを備えている。がんぎかな部130cは、歯車部128dと噛み合うように構成されている。
図4に示すように、アンクル142は、アンクル体142dと、アンクル真142fとを備えている。アンクル真142fは、上軸部142aと、下軸部142bとを備えている。
図4に示すように、アンクル142は、アンクル体142dと、アンクル真142fとを備えている。アンクル真142fは、上軸部142aと、下軸部142bとを備えている。
香箱車120は、図3に示すように、地板102及び香箱受160に対して回転可能に支持されている。即ち、香箱真120fの上軸部120aは、香箱受160に対して回転可能に支持されている。香箱真120fの下軸部120bは、地板102に対して回転可能に支持されている。
また、二番車124、三番車126、四番車128及びがんぎ車130は、地板102及び輪列受162に対してそれぞれ回転可能に支持されている。即ち、二番車124の上軸部124a、三番車126の上軸部126a、四番車128の上軸部128a、がんぎ車130の上軸部130aは、それぞれ輪列受162に対して回転可能に支持されている。また、二番車124の下軸部124b、三番車126の下軸部126b、四番車128の下軸部128b、がんぎ車130の下軸部130bは、それぞれ地板102に対して回転可能に支持されている。
また、二番車124、三番車126、四番車128及びがんぎ車130は、地板102及び輪列受162に対してそれぞれ回転可能に支持されている。即ち、二番車124の上軸部124a、三番車126の上軸部126a、四番車128の上軸部128a、がんぎ車130の上軸部130aは、それぞれ輪列受162に対して回転可能に支持されている。また、二番車124の下軸部124b、三番車126の下軸部126b、四番車128の下軸部128b、がんぎ車130の下軸部130bは、それぞれ地板102に対して回転可能に支持されている。
図4に示すように、アンクル142は、地板102及びアンクル受164に対して回転可能に支持されている。即ち、アンクル142の上軸部142aは、アンクル受164に対して回転可能に支持されている。アンクル142の下軸部142bは、地板102に対して回転可能に支持されている。
香箱真120fの上軸部120aを回転可能に支持する香箱受160の軸受部と、二番車124の上軸部124aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、三番車126の上軸部126aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、四番車128の上軸部128aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、がんぎ車130の上軸部130aを回転可能に支持する輪列受162の軸受部と、アンクル142の上軸部142aを回転可能に支持するアンクル受164の軸受部には、潤滑油が注油されている。
また、香箱真120fの下軸部120bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、二番車124の下軸部124bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、三番車126の下軸部126bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、四番車128の下軸部128bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、がんぎ車130の下軸部130bを回転可能に支持する地板102の軸受部と、アンクル142の下軸部142bを回転可能に支持する地板102の軸受部には、潤滑油が注油されている。
上述した潤滑油は、精密機械用油であるのが好ましく、いわゆる時計油であるのが特に好ましい。
上述した潤滑油は、精密機械用油であるのが好ましく、いわゆる時計油であるのが特に好ましい。
地板102のそれぞれの軸受部、香箱受160の軸受部、輪列受162のそれぞれの軸受部には、潤滑油の保持性能を高めるために、円錐状、円筒状、又は円錐台状の油溜め部を設けるのが好ましい。この油溜め部を設けると、潤滑油の表面張力により油が拡散するのを効果的に阻止することができる。
また、地板102、香箱受160、輪列受162及びアンクル受164は、黄銅等の金属で形成しても良いし、ポリカーボネート等の樹脂で形成しても良い。
また、地板102、香箱受160、輪列受162及びアンクル受164は、黄銅等の金属で形成しても良いし、ポリカーボネート等の樹脂で形成しても良い。
次に、上述したがんぎ車130について、より詳細に説明する。
このがんぎ車130は、図5及び図6に示すように、電鋳により所定の厚みに形成された金属製のがんぎ歯車部(プレート体)132と、側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔133と、がんぎ歯車部132の中心に打ち込まれた軸部材131と、で構成されている。
なお、図5は、互いに噛合したがんぎ車130及びアンクル142の平面図である。図6は、がんぎ車130の歯部132aを拡大した斜視図である。
このがんぎ車130は、図5及び図6に示すように、電鋳により所定の厚みに形成された金属製のがんぎ歯車部(プレート体)132と、側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔133と、がんぎ歯車部132の中心に打ち込まれた軸部材131と、で構成されている。
なお、図5は、互いに噛合したがんぎ車130及びアンクル142の平面図である。図6は、がんぎ車130の歯部132aを拡大した斜視図である。
がんぎ歯車部132は、上面及び下面が平坦面とされた板状部材であり、特殊な鉤型状に形成された複数の歯部132aを有している。これら複数の歯部132aの先端に、後述するアンクル142の爪石144a、144bが接触するようになっている。つまり、がんぎ歯車部132の側面の一部、即ち、歯部132aの先端の側面は爪石144a、144bが接触して摺動する摺動面(衝撃面)132bとされている。
また、がんぎ歯車部132の側面は、全面に亘って形成された複数の保油孔133によって潤滑油が表面張力或いは毛細管現象等により保持されている。よって、摺動面132bを含む側面の全体は、潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として機能する。
また、がんぎ歯車部132の側面は、全面に亘って形成された複数の保油孔133によって潤滑油が表面張力或いは毛細管現象等により保持されている。よって、摺動面132bを含む側面の全体は、潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として機能する。
軸部材131は、がんぎ歯車部132の中心に設けられた図示しない保持孔内に打ち込まれることで取り付けられた部材であり、中心軸ががんぎ歯車部132の中心軸と同一とされている。また、軸部材131の上端部に上述した上軸部130aが設けられ、下端部に下軸部130bが設けられている。また、上軸部130aの下方にがんぎかな部130cが設けられている。このがんぎかな部130cは、上述したように、四番車128の歯車部128dに噛合しており、これによって四番車128の回転力を軸部材131に伝達してがんぎ歯車部132を回転させる役割を果している。
このように構成されたがんぎ車130は、複数の歯部132aがアンクル142に噛合するようになっている。アンクル142は、3つのアンクルビーム143によってT字状に形成されたアンクル体142dと、アンクル真142fとを備えたもので、軸であるアンクル真142fによってアンクル体142dが回転可能に構成されている。
3つのアンクルビーム143のうち2つのアンクルビーム143の先端には、爪石144a、144bが設けられ、残り1つのアンクルビーム143先端には、アンクルハコ145が取り付けられている。爪石144a、144bは、四角柱状に形成されたルビーであり、接着剤等によりアンクルビーム143に接着固定されている。
3つのアンクルビーム143のうち2つのアンクルビーム143の先端には、爪石144a、144bが設けられ、残り1つのアンクルビーム143先端には、アンクルハコ145が取り付けられている。爪石144a、144bは、四角柱状に形成されたルビーであり、接着剤等によりアンクルビーム143に接着固定されている。
このように構成されたアンクル142は、アンクル真142fを中心に回転した際に、爪石144a或いは爪石144bが、がんぎ車130の歯部132aの先端、より詳細には摺動面132bに接触するようになっている。また、この際、アンクルハコ145が取り付けられたアンクルビーム143が、ドテピン(図示せず)に接触するようになっており、これによってアンクル142は、同方向にそれ以上回転しないようになっている。その結果、がんぎ車130の回転も一時的に停止するようになっている。
次に、上述したがんぎ車130の製法方法について、図7に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
本実施形態の製造方法は、塗布工程(S1)と、露光工程(S2)と、現像工程(S3)と、電鋳工程(S4)と、厚み調整工程(S5)と、除去工程(S6)と、を行って製造する方法である。以下、これら各工程について、詳細に説明する。
本実施形態の製造方法は、塗布工程(S1)と、露光工程(S2)と、現像工程(S3)と、電鋳工程(S4)と、厚み調整工程(S5)と、除去工程(S6)と、を行って製造する方法である。以下、これら各工程について、詳細に説明する。
はじめに、塗布工程(S1)を行う。
まず、図8に示すように、シリコン基板(基材)10を用意した後、シリコン基板10の表面に導電膜11を形成する。この導電膜11としては、例えば、金、銀、銅やニッケル等を用いて形成することができる。また、形成方法としては、例えば、スパッタリング、蒸着や無電解メッキ等の各種の成膜方法を用いることができる。また、導電膜11の膜厚としては、例えば、数nm〜数μmの範囲であることが好ましい。
まず、図8に示すように、シリコン基板(基材)10を用意した後、シリコン基板10の表面に導電膜11を形成する。この導電膜11としては、例えば、金、銀、銅やニッケル等を用いて形成することができる。また、形成方法としては、例えば、スパッタリング、蒸着や無電解メッキ等の各種の成膜方法を用いることができる。また、導電膜11の膜厚としては、例えば、数nm〜数μmの範囲であることが好ましい。
また、導電膜11の形成と同時或いは前後のタイミングで、図9に示すように、ペースト状の感光性材料12に複数の光透過性のガラスビーズ(微粒子)13を所定の割合で混合させたフォトレジスト(混合材料)14を準備しておく。なお、感光性材料12としては、ポジ型でもネガ型でも構わないが、本実施形態ではネガ型を用いた場合を例に挙げて説明する。また、ガラスビーズ13は、直径が数μm程度の微粒子である。
導電膜11の形成とフォトレジスト14の準備とが終了した後、図10に示すように、フォトレジスト14を導電膜11上に塗布する。この際、例えば、スプレーコート法やスクリーン印刷法等によって、十分な厚みとなるようにフォトレジスト14を塗布する。
この時点で、塗布工程(S1)が終了する。
この時点で、塗布工程(S1)が終了する。
次に、露光工程(S2)を行う。
まず、図11に示すように、がんぎ歯車部132の外形形状にパターニングされ、それ以外の領域が開口したフォトレジストマスク(マスク)Mを準備する。そして、図12に示すように、フォトレジストマスクMをフォトレジスト14の上方にセットする。なお、図12では、図11に示すフォトレジストマスクMをA−A線で断面視した状態で図示している。この際、図面を見易くするために、大きさや間隔を変えて図示している。
まず、図11に示すように、がんぎ歯車部132の外形形状にパターニングされ、それ以外の領域が開口したフォトレジストマスク(マスク)Mを準備する。そして、図12に示すように、フォトレジストマスクMをフォトレジスト14の上方にセットする。なお、図12では、図11に示すフォトレジストマスクMをA−A線で断面視した状態で図示している。この際、図面を見易くするために、大きさや間隔を変えて図示している。
フォトレジストマスクMをセットした後、該マスクMの上方から光を照射し、フォトレジストマスクMを通してフォトレジスト14を部分的に露光する。本実施形態の場合には、フォトレジストマスクMでマスクされていない領域を露光する。この際、フォトレジスト14に含まれる複数のガラスビーズ13は、光透過性であるので、このガラスビーズ13によって遮られることなく露光を確実に行うことができる。
この時点、露光工程(S2)が終了する。
この時点、露光工程(S2)が終了する。
次に、現像工程(S3)を行う。
即ち、フォトレジストマスクMを除去した後、図示しない現像液を利用して部分的に露光されたフォトレジスト14を現像する。すると、フォトレジスト14はネガ型であるので、図13に示すように、露光されていない領域が溶解される。これにより、がんぎ歯車部132の外形形状に倣った貫通孔15をフォトレジスト14に形成することができる。この貫通孔15によって、がんぎ歯車部132の外形形状に倣って導電膜11が露出する。また、貫通孔15の内壁面には、フォトレジスト14に含まれるガラスビーズ13が現れた状態となる。
この時点で、現像工程(S3)が終了する。なお、貫通孔15が形成された状態のフォトレジスト14は、電鋳型として利用されるものである。
即ち、フォトレジストマスクMを除去した後、図示しない現像液を利用して部分的に露光されたフォトレジスト14を現像する。すると、フォトレジスト14はネガ型であるので、図13に示すように、露光されていない領域が溶解される。これにより、がんぎ歯車部132の外形形状に倣った貫通孔15をフォトレジスト14に形成することができる。この貫通孔15によって、がんぎ歯車部132の外形形状に倣って導電膜11が露出する。また、貫通孔15の内壁面には、フォトレジスト14に含まれるガラスビーズ13が現れた状態となる。
この時点で、現像工程(S3)が終了する。なお、貫通孔15が形成された状態のフォトレジスト14は、電鋳型として利用されるものである。
次に、電鋳工程(S4)を行う。
まず、図14に示すように、処理槽20内に貯液された電鋳液Wにシリコン基板10全体を漬浸させる。なお、この電鋳工程(S4)を行うにあたって、電鋳すべき金属材料に応じて電鋳液Wを選択する。例えば、ニッケル電鋳を行う場合には、スルファミン酸浴、ワット浴や硫酸浴等が用いられる。
まず、図14に示すように、処理槽20内に貯液された電鋳液Wにシリコン基板10全体を漬浸させる。なお、この電鋳工程(S4)を行うにあたって、電鋳すべき金属材料に応じて電鋳液Wを選択する。例えば、ニッケル電鋳を行う場合には、スルファミン酸浴、ワット浴や硫酸浴等が用いられる。
仮にスルファミン酸浴を用いてニッケル電鋳を行う場合には、処理槽20の中にスルファミン酸ニッケル水和塩を主成分とするスルファミン酸浴を入れる。また、電鋳すべき金属材料からなる陽極電極21をスルファミン酸浴の中に浸漬させる。陽極電極21としては、例えば、電鋳すべき金属材料からなるボールを複数用意し、この金属ボールをチタン等で作った金属製のかごの中に入れることで構成する。
そして、シリコン基板10をスルファミン酸浴の中に浸漬した後、シリコン基板10に形成した導電膜11を電源22の陰極に接続すると共に陽極電極21を電源22の陽極に接続して、電鋳を開始する。すると、陽極電極21を構成する金属がイオン化してスルファミン酸浴中を移動し、貫通孔15内で露出する導電膜11上に金属として析出し、この金属が徐々に成長する。そして、図15に示すように、少なくとも貫通孔15を完全に塞ぐ金属体23になるまで金属を成長させる。
この際、貫通孔15は、上述したようにがんぎ歯車部132の外形形状に倣っているので、成長した金属体23に関してもがんぎ歯車部132の外形形状に倣った状態となっている。また、貫通孔15の内壁面には、複数のガラスビーズ13が現れているので、金属体23の側面にはこのガラスビーズ13によって凹み形成された複数の保油孔133が全面に亘って形成される。
この際、貫通孔15は、上述したようにがんぎ歯車部132の外形形状に倣っているので、成長した金属体23に関してもがんぎ歯車部132の外形形状に倣った状態となっている。また、貫通孔15の内壁面には、複数のガラスビーズ13が現れているので、金属体23の側面にはこのガラスビーズ13によって凹み形成された複数の保油孔133が全面に亘って形成される。
この時点で、電鋳工程(S4)が終了する。なお、この工程を行う際、処理槽20に配管(図示せず)を介して弁(図示せず)を接続し、さらにこの配管に濾過用フィルタ(図示せず)を設けることにより、処理槽20から排出されるスルファミン酸浴を濾過することが好ましい。更に、濾過したスルファミン酸浴を、注入用配管(図示せず)によって処理槽20内に返送し、スルファミン酸浴を循環させることが好ましい。
次に、厚み調整工程(S5)を行う。
まず、処理槽20からシリコン基板10を引き上げ、純水等で洗浄処理する。その後、図16に示すように、貫通孔15から溢れた金属体23を除去すると共に、残った金属体23の厚みががんぎ歯車部132の厚みとなるように厚み調整する。この方法としては、CMP法(化学機械研磨法)等の研磨加工によって行えば良い。
まず、処理槽20からシリコン基板10を引き上げ、純水等で洗浄処理する。その後、図16に示すように、貫通孔15から溢れた金属体23を除去すると共に、残った金属体23の厚みががんぎ歯車部132の厚みとなるように厚み調整する。この方法としては、CMP法(化学機械研磨法)等の研磨加工によって行えば良い。
そして、最後にフォトレジスト14、導電膜11及びシリコン基板10を除去する除去工程(S6)を行う。
即ち、図17に示すように、アッシング処理や剥離液法等によりフォトレジスト14を除去すると共に、CMP法等によりシリコン基板10及び導電膜11を除去する。続いて、図18に示すように、残ったガラスビーズ13を、フッ酸等を利用して除去する。
その結果、側面の全面に亘って凹み形成された複数の保油孔133を有するがんぎ歯車部132を電鋳によって作製することができる。そして、がんぎ歯車部132の中心に軸部材131を打ち込むことで、図5に示すがんぎ車130を製造することができる。
即ち、図17に示すように、アッシング処理や剥離液法等によりフォトレジスト14を除去すると共に、CMP法等によりシリコン基板10及び導電膜11を除去する。続いて、図18に示すように、残ったガラスビーズ13を、フッ酸等を利用して除去する。
その結果、側面の全面に亘って凹み形成された複数の保油孔133を有するがんぎ歯車部132を電鋳によって作製することができる。そして、がんぎ歯車部132の中心に軸部材131を打ち込むことで、図5に示すがんぎ車130を製造することができる。
特に、本実施形態の製造方法によれば、電鋳を利用するので複雑な外形形状を有するがんぎ歯車部132であっても、精密に作製することができ、高品質化を図ることができる。しかも、感光性材料12にガラスビーズ13を混合させる以外は一般的な電鋳方法と同じ工程で製造できるので、製造工程が増えることもなく非常に効率良く製造することができる。よって、がんぎ車130の低コスト化に繋げることができる。
更に、このように製造されたがんぎ車130は、側面の全体に亘って複数の保油孔133が形成されているので、側面の全面に亘ってムラ無く均等に潤滑油を保持することができる。従って、側面を、潤滑油の量にばらつきがない保油性能に優れた保油面として利用することができる。特に、側面の一部が、アンクル142の爪石が摺動される摺動面(衝撃面)132bであるので、爪石144a、144bの摺動時に生じる摩擦抵抗を効果的に軽減することができる。しかも、潤滑油の量にばらつきがないので、摩擦抵抗にばらつきが生じ難く、摩耗に偏りが生じてしまうことを抑制することができる。従って、耐久性に優れた信頼性の高いがんぎ車130とすることができる。
また、本実施形態のがんぎ車130を有するムーブメント100を備えた機械式時計は、時計自体の生産性向上や低コスト化や高品質化が図られたものになる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、ネガ型の感光性材料12を用いた場合を例に挙げて説明したが、ポジ型の感光性材料であっても構わない。この場合には、がんぎ歯車部132の外形形状に倣ってパターニングされた開口を有するフォトレジストマスクを利用すれば良い。こうすることで、露光時にがんぎ歯車部132の外形形状に倣って光を当てることができ、同様に貫通孔15を形成することができる。
また、感光性材料12に混合する微粒子としてガラスビーズ13を例に挙げて説明したが、ガラスビーズ13に限られず光透過性のものであれば他のものを採用して構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
特に、ガラスビーズ13を利用する場合には、感光性材料12と略同一の屈折率を有するものを用いることが好ましい。この場合には、露光時にガラスビーズ13で分散されることなく光を直進させることができる。そのため、マスクされていない部分のみを正確に露光することができる。よって、より正確にがんぎ歯車部132の外形形状に倣うように貫通孔15を形成することができ、がんぎ車130をより精密に製造することができる。
また、微粒子として、感光性材料12に対して比重の異なるものを採用しても構わない。この場合には、貫通孔15を形成した際に内周壁に現れる微粒子の分布を厚み方向で変化させることができる。
例えば、感光性材料12よりも比重の重い微粒子を混合してフォトレジストを準備した場合には、導電膜11上に塗布した際に、微粒子を導電膜11側により多く存在させることができる。従って、貫通孔15を形成した際に、内周壁に現れる微粒子は導電膜11に近い側により多く分布する。その結果、がんぎ歯車部132の側面に形成される保油孔133を下面側により多く分布させることができる。
また、これとは逆に、感光性材料12よりも比重の軽い微粒子、例えば、透明なプラスチック製の微粒子を用いた場合には、がんぎ歯車部132の側面に形成される保油孔133を上面側により多く分布させることができる。
このように、保油孔133の形成割合をがんぎ歯車部132の厚み方向で若干変化させることができ、保油性能のより優れた領域の位置を微調整することができる。なお、プラスチック製の微粒子を用いた場合には、除去工程(S6)時に有機溶剤を利用して除去することが可能である。
例えば、感光性材料12よりも比重の重い微粒子を混合してフォトレジストを準備した場合には、導電膜11上に塗布した際に、微粒子を導電膜11側により多く存在させることができる。従って、貫通孔15を形成した際に、内周壁に現れる微粒子は導電膜11に近い側により多く分布する。その結果、がんぎ歯車部132の側面に形成される保油孔133を下面側により多く分布させることができる。
また、これとは逆に、感光性材料12よりも比重の軽い微粒子、例えば、透明なプラスチック製の微粒子を用いた場合には、がんぎ歯車部132の側面に形成される保油孔133を上面側により多く分布させることができる。
このように、保油孔133の形成割合をがんぎ歯車部132の厚み方向で若干変化させることができ、保油性能のより優れた領域の位置を微調整することができる。なお、プラスチック製の微粒子を用いた場合には、除去工程(S6)時に有機溶剤を利用して除去することが可能である。
更に、微粒子として、感光性材料12を微粒子状に固めたものを用いても構わない。この場合には、除去工程(S6)の際に、感光性材料12と微粒子とを同じ手法で、且つ、同じタイミングで除去することができる。よって、除去工程(S6)に費やす手間及び時間を軽減でき、さらなる製造効率の向上化に繋げることができる。
また、上記実施形態では、機械部品をがんぎ車130に適用した場合を例に挙げて説明したが、がんぎ車130に限定されるものではない。例えば、本発明に係る機械部品を、図19に示すように、側面がおしどり190との摺動面196aとされた裏押さえ196に適用しても構わない。この場合であっても、摺動面196aの全面に亘って形成された保油孔133によって、ムラ無く均等に潤滑油を保持できるので、おしどり190との摺動による摩擦抵抗を効果的に軽減することができる。
更に、本発明に係る機械部品は、機械式時計用の部品に限定されるものではなく、小型な精密機械用の部品として好適に用いることができる。
更に、本発明に係る機械部品は、機械式時計用の部品に限定されるものではなく、小型な精密機械用の部品として好適に用いることができる。
M…フォトレジストマスク(マスク)
10…シリコン基板(基材)
11…導電膜
12…感光性材料
13…ガラスビーズ(微粒子)
14…フォトレジスト(混合材料)
15…貫通孔
23…金属体
130…がんぎ車(機械部品)
132…がんぎ歯車部(プレート体)
132a…歯部
133…保油孔
142…アンクル
144a、144b…爪石
196…裏押さえ(機械部品)
10…シリコン基板(基材)
11…導電膜
12…感光性材料
13…ガラスビーズ(微粒子)
14…フォトレジスト(混合材料)
15…貫通孔
23…金属体
130…がんぎ車(機械部品)
132…がんぎ歯車部(プレート体)
132a…歯部
133…保油孔
142…アンクル
144a、144b…爪石
196…裏押さえ(機械部品)
Claims (6)
- 電鋳により所定の厚みに形成された金属製のプレート体と、
該プレート体の側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔と、を備えていることを特徴とする機械部品。 - 請求項1に記載の機械部品において、
前記プレート体は、鉤型状の歯部を複数有するがんぎ歯車部であり、
前記側面の一部は、アンクルの爪石が摺動される摺動面とされていることを特徴とする機械部品。 - 所定の厚みに形成された金属製のプレート体と、該プレート体の側面の全面に亘って凹み形成され、潤滑油を保持可能な複数の保油孔と、を備えた機械部品を製造する方法であって、
感光性材料に複数の光透過性の微粒子を混合させた混合材料を、基材の表面に形成された導電膜上に所定の厚みだけ塗布する塗布工程と、
マスクを通して前記混合材料を部分的に露光する露光工程と、
露光した前記混合材料を現像して、前記プレート体の外形形状に倣って前記導電膜を露出させると共に、内壁面に前記微粒子が現れた貫通孔を形成する現像工程と、
全体を電鋳液に浸漬した後に前記導電膜を電極として電鋳を行い、前記貫通孔内で露出する前記導電膜上に金属を析出させると共に、貫通孔を少なくとも完全に塞ぐ金属体となるまで金属を成長させる電鋳工程と、
前記貫通孔から溢れた前記金属体を除去すると共に、残った金属体の厚みが前記プレート体の厚みになるように厚み調整を行う厚み調整工程と、
前記混合材料、前記導電膜及び前記基材を除去し、前記貫通孔の内壁面に現れた前記微粒子によって側面の全面に亘って複数の前記保油孔が凹み形成された前記プレート体を得る除去工程と、を備えていることを特徴とする機械部品の製造方法。 - 請求項3に記載の機械部品の製造方法において、
前記塗布工程の際、前記微粒子として、前記感光性材料と略同一の屈折率を有する微粒子を用いることを特徴とする機械部品の製造方法。 - 請求項3又は4に記載の機械部品の製造方法において、
前記塗布工程の際、前記微粒子として、前記感光性材料に対して比重の異なる微粒子を用いることを特徴とする機械部品の製造方法。 - 請求項3から5のいずれか1項に記載の機械部品の製造方法において、
前記塗布工程の際、前記微粒子として、前記感光性材料を微粒子状に固めたものを用いることを特徴とする機械部品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009111230A JP2010261064A (ja) | 2009-04-30 | 2009-04-30 | 機械部品及び機械部品の製造方法 |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP (1) | JP2010261064A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016176714A (ja) * | 2015-03-18 | 2016-10-06 | セイコーインスツル株式会社 | 電鋳部品及び電鋳部品の製造方法 |
-
2009
- 2009-04-30 JP JP2009111230A patent/JP2010261064A/ja not_active Withdrawn
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