JP2010261009A - ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとの複合樹脂成形品であって、耐薬品性と、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、また成形品外観も良好なポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂85〜99質量%と、密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体1〜15質量%とからなる樹脂成分を主成分とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を射出成形してなるポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。該成形品の表面から深さ20μmの範囲の表層部における、エチレン系共重合体により形成されるドメインの短径(D)が0.01〜1μmで、長径(L)と短径(D)との比(L/D)が10〜2000であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品及びその製造方法に係り、詳しくは、ポリカーボネート樹脂にエチレン系共重合体を複合化することにより、ポリカーボネート樹脂の耐薬品性を改良したポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品と、このポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品を製造する方法に関する。
ポリカーボネート樹脂、特に芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性、寸法安定性等に優れるため、電気機器、通信機器、精密機械、自動車部品等、幅広い用途に使用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は耐薬品性が低いことから、耐薬品性を改善するためにポリエチレンとの複合化が種々検討されている。
しかし、ポリカーボネート樹脂と非相溶性のポリエチレンをポリカーボネート樹脂に複合化すると、ポリカーボネート樹脂をマトリックスとし、ポリエチレンをドメインとする二相構造が形成され、特に、このポリエチレンとして結晶性の高い高密度ポリエチレンを用いた場合には、成形工程でポリカーボネート樹脂の固化後にポリエチレンの成形収縮が起こり、その際にポリカーボネート樹脂マトリックスとポリエチレンドメインとの間に空洞(ボイド)が形成される。そして、このボイドにおける光線の反射のために、例えばカーボンブラックの配合等で黒色に着色した成形品の場合、白化現象により黒色度が低下し、外観が著しく損なわれるという欠点がある。
また、高密度ポリエチレンを用いた場合には、その相溶性が悪いことによりポリカーボネート樹脂に対する分散性が悪く、耐薬品性改善のためのポリエチレンが成形品表面に均一に分散した状態とならず、ポリエチレンの局在化でポリエチレンの存在しない部分が形成され、この部分で耐薬品性が劣ることにより、結果として成形品の耐薬品性が劣るものとなるという問題もある。
更に、ポリカーボネート樹脂とポリエチレンとの流動性の差から、比較的大きなドメインが形成される場合、ポリカーボネート樹脂マトリックスとポリエチレンドメインとの界面での剥離(層状剥離)が起こり易く、耐衝撃性等の機械的強度にも劣るものとなるという問題もある。
これに対して、従来、ポリカーボネート樹脂と複合化するポリエチレンとして、より低密度のポリエチレンを用いた複合樹脂組成物について、いくつかの提案がなされている(例えば、特許文献1〜5)。低密度ポリエチレンは、成形時の収縮率が、高密度ポリエチレンよりもポリカーボネート樹脂に近いことから、ポリカーボネート樹脂に複合化するポリエチレンとして低密度ポリエチレンを用いることにより、上述のような問題が改善されることが考えられる。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、ポリカーボネート樹脂と複合化するポリエチレンとして低密度ポリエチレンを用いても、必ずしも上述の層状剥離や耐薬品性不良の問題を解決し得るものではなく、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとの複合化で、良好な耐薬品性、耐衝撃性、並びに成形品外観を得るためには、用いる低密度ポリエチレンの物性ないし特性に応じて、成形条件を十分に制御することが必要となることが考えられた。
特表平10−505380号公報 特表平11−503193号公報 特表2001−508680号公報 特開2001−131401号公報 特開平8−3433号公報
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとの複合樹脂成形品であって、耐薬品性と、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、また成形品外観も良好なポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとの複合樹脂組成物を射出成形する際、特定の形状のポリエチレンドメインが形成されるような条件で射出成形することにより、耐薬品性、耐衝撃性等の機械的特性が改善され、また白化現象もなく外観も良好な成形品を得ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] ポリカーボネート樹脂85〜99質量%と、密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体1〜15質量%とからなる樹脂成分を主成分とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を射出成形してなるポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品において、該成形品の表面から深さ20μmの範囲の表層部における、エチレン系共重合体により形成されるドメインの短径(D)が0.01〜1μmで、長径(L)と短径(D)との比(L/D)が10〜2000であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
[2] [1]において、該ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000〜50,000であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
[3] [1]又は[2]において、該エチレン系共重合体がエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、該エチレン系共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜4.0であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、該エチレン系共重合体の190℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10minであることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、下記の耐薬品性の評価試験で測定される破断伸び保持率が60%以上であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
<耐薬品性の評価試験>
厚さ4mmの引張試験片に変形率0.94%の撓みを負荷した状態で、試験薬品としてイソプロパノールを塗布し、この状態で48時間保持した後の試験片の破断伸びEに対して、薬品を塗布せず同様の撓みを同じ時間負荷した試験片の破断伸びEに対する保持率(%)(E/E×100)を算出する。
[7] ポリカーボネート樹脂85〜99質量%と、密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体1〜15質量%とからなる樹脂成分を主成分とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を、得られる成形品の表面から深さ20μmの範囲の表層部における、エチレン系共重合体により形成されるドメインの短径(D)が0.01〜1μmで、長径(L)と短径(D)との比(L/D)が10〜2000となるように射出成形することを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の製造方法。
[8] ポリカーボネート樹脂85〜99質量%と、密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体1〜15質量%とからなる樹脂成分を主成分とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を射出成形してなるポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品において、該成形品の表面から深さ20μmの範囲の表層部における、エチレン系共重合体により形成されるドメインの最大短径(Dmax)が1.0μm以下であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂に低密度ポリエチレンを複合化させた複合樹脂成形品において、ポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性等の機械的特性を損なうことなく、また、優れた外観を維持した上で、ポリエチレンを複合化することによる耐薬品性の向上効果を十分に発揮させることができる。従って、本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品は、ポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性等の機械的特性や外観に優れる上に耐薬品性に優れた高品質のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品である。
このような本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品は、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類などの各種用途に有用であり、特に車輌外装・外板部品、車輌内装部品への適用が期待できる。
本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品が適用される車輌外装・外板部品としては、例えばアウタードアハンドル、バンパー、フェンダー、ドアパネル、トランクリッド、フロントパネル、リアパネル、ルーフパネル、ボンネット、ピラー、サイドモール、ガーニッシュ、ホイールキャップ、フードバルジ、フューエルリッド、各種スポイラー、モーターバイクのカウルなどが挙げられる。
また、車輌内装部品としては、インナードアハンドル、センターパネル、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、ラゲッジフロアボード、カーナビゲーションなどのディスプレイハウジングなどが挙げられるが、本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の適用分野は、何らこれらのものに限定されるものではない。
耐薬品性の評価試験方法を示す模式図であり、(a)図は試験片に撓みを負荷した状態を示す側面図、(b)図は同平面図、(c)図は同底面部である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[ポリカーボネート樹脂]
本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物の主要成分であるポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂である。
芳香族ポリカーボネート樹脂とは、原料として、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを使用し、又は、これらに併せて少量のポリヒドロキシ化合物を使用して得られる直鎖又は分岐の熱可塑性重合体又は共重合体である。
上記の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が挙げられる。
また、上記以外の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等で例示されるカルド構造含有ビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
上記の中では、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性の点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]が好ましい。芳香族ジヒドロキシ化合物は2種類以上を併用してもよい。
前記のカーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメート等が挙げられ、その具体例としては、ホスゲン;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。これらのカーボネート前駆体は2種類以上を併用してもよい。
また、本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂は、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した、分岐芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物類の他、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。これらの中では、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。多官能性芳香族化合物は、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用することができ、その使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%である。
ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などが挙げられる。本発明で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法に制限はないが、工業的には界面重合法又は溶融エステル交換法が有利である。
本発明に使用するポリカーボネート樹脂の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)として、機械的強度と流動性(成形加工性容易性)の観点から、通常10,000〜50,000、好ましくは12,000〜40,000であり、更に好ましくは14,000〜35,000であり、特に好ましくは16,000〜32,000である。なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量に調整してもよい。また、必要に応じ、粘度平均分子量が上記の好適範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよい。
ここで、粘度平均分子量(Mv)とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10−40.83の式から算出される値を意味する。ここで極限粘度([η])とは各溶液濃度(C)(g/dl)での比粘度(ηsp)を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2010261009
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は、通常1000ppm以下であり、中でも700ppm以下、更には400ppm以下、特に300ppm以下であることが好ましい。またその下限は、10ppm以上、中でも20ppm以上、更には30ppm以上、特に40ppm以上であることが好ましい。末端水酸基濃度を10ppm以上とすることで、分子量の低下が抑制でき、樹脂組成物の機械的特性がより向上する傾向にある。また末端基水酸基濃度を1000ppm以下にすることで、樹脂組成物の耐熱性、滞留熱安定性が、より向上する傾向にあるので好ましい。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂重量に対する、末端水酸基の重量をppmで表示したものであり、測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88
215(1965)に記載の方法)である。
また、本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、成形品外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は、通常1,500〜9,500、好ましくは2,000〜9,000である。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの使用量は、ポリカーボネート樹脂に対し、通常30質量%以下である。
更に、本発明においては、ポリカーボネート樹脂として、バージン樹脂だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、所謂マテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂を使用してもよい。使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体、導光板、自動車窓ガラス・自動車ヘッドランプレンズ・風防などの車両透明部材、水ボトル等の容器、メガネレンズ、防音壁・ガラス窓・波板などの建築部材が挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品又はそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。再生されたポリカーボネート樹脂の使用割合は、バージン樹脂に対し、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下である。
[エチレン系共重合体]
本発明で用いるエチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、この共重合可能なモノマーとしては特に制限はないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィン、酢酸ビニル、イソプレン、ブタジエン或いはアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸類、或いはこれらのエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸或いはその酸無水物等の1種又は2種以上が挙げられ、これらは主鎖に共重合されていてもよく、また、グラフト重合可能なものはグラフト重合せしめてもよい。
これらのエチレン系共重合体は通常の方法で製造することができる。
なかでも好ましいエチレン系共重合体としては、エチレンと炭素数3〜10、好ましくは炭素数4〜8のα−オレフィンの1種又は2種以上との共重合体であり、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、特に共重合成分が主鎖に導入された線状エチレン系共重合体が好ましい。
このようなエチレン系共重合体中のエチレンの含有量は、少な過ぎると融点の低下によるハンドリングの悪化やコストアップが問題となり、多過ぎると結晶化による成形収縮で白化現象が起こる。従って、エチレン系共重合体中のエチレンの含有量は90〜40モル%、特に85〜50モル%であることが好ましい。
本発明で用いるエチレン系共重合体は、上述のようなエチレン系共重合体であって、密度が0.85〜0.92g/cmの低密度のエチレン系共重合体である。このエチレン系共重合体の密度が0.92g/cmを超えると、前述の高密度ポリエチレンを用いる場合の問題点を解決し得ず、ドメインのボイドによる白化現象、層状剥離、ポリエチレンの分散不良に起因する耐薬品性の低下の問題がある。密度0.92g/cm以下の低密度のエチレン系共重合体を用いることにより、ポリカーボネート樹脂に対する流動性、分散性が良好なものとなり、また結晶性が低減され、成形時の収縮率がポリカーボネート樹脂の収縮率と近いものとなり、ボイドの形成が抑えられる。また、比較的小さいドメインが形成されるようになり層状剥離が防止され、更にはポリエチレンドメインが均一に分散することにより、良好な耐薬品性が得られる。
しかし、エチレン系共重合体の密度が0.85g/cmよりも小さいと物性の低下が起こるので、密度0.85g/cm以上のエチレン系共重合体を用いる。エチレン系共重合体の密度は、特に0.86〜0.92g/cm、とりわけ0.88〜0.90g/cmであることが好ましい。
なお、本発明において、エチレン系共重合体の密度はISO 1183 D法に準拠して測定した値である。
以下に、本発明で用いる密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体を単に「低密度ポリエチレン」と称す。
なお、本発明で用いる低密度ポリエチレンは重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜4.0であることが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が4.0よりも大きいと耐衝撃性が低下するなどの問題があり、1.3より小さいと成形性が劣る。低密度ポリエチレンのより好ましい分子量分布(Mw/Mn)は1.5〜3.5である。
低密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatografy)により測定される。具体的には、後述の実施例の項に記載される通りである。
また、本発明で用いる低密度ポリエチレンの、190℃におけるメルトフローレート(MFR)は0.1〜50g/10minであることが好ましい。低密度ポリエチレンのMFRが0.1g/10minよりも小さいと分散性が乏しく、大きなドメインを形成しやすくなるため白化や層状剥離が生じやすくなり、50g/10minよりも大きいとドメインが大きく引き伸ばされた構造をとることから真珠光沢による外観不良や物性の低下が生じやすくなる。
低密度ポリエチレンのより好ましいMFRは0.2〜30g/10minである。
MFRが0.1〜50g/10minの低密度ポリエチレンを用いて、低密度ポリエチレンのドメイン構造を、後述の如く、短径(D)が0.01〜1μmで、長径(L)と短径(D)との比(L/D)が10〜2000となるように制御することで、層状剥離を抑制し、さらにはポリカーボネート樹脂のマトリックスと低密度ポリエチレンドメインとの間のボイドの形成を抑えることで、優れた耐衝撃性向上効果を得ることができる。
なお、ここでMFRとは、ISO 1133に準拠して、温度190℃、荷重21.18Nで測定した値である。
[樹脂成分]
本発明に係る樹脂成分は、前述のポリカーボネート樹脂の1種又は2種以上の85〜99質量%と、上述の低密度ポリエチレンの1種又は2種以上の1〜15質量%とからなる。
樹脂成分中のポリカーボネート樹脂の割合が上記上限よりも多く、低密度ポリエチレンの割合が上記下限よりも少ないと、低密度ポリエチレンを用いることによる耐薬品性の向上効果を十分に得ることができず、逆に、ポリカーボネート樹脂の割合が上記下限よりも少なく、低密度ポリエチレンの割合が上記上限よりも多いと、ポリカーボネート樹脂本来の特性が損なわれ、弾性率や熱変形温度、熱滞留安定性の低下が生じる。
好ましい割合は、ポリカーボネート樹脂90〜98質量%、低密度ポリエチレン2〜10質量%である。
なお、本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとからなる樹脂成分を主成分とするものであるが、ここで、「主成分とする」とは、樹脂組成物中の50質量%以上、特に60質量%以上が、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとからなる樹脂成分であることを意味する。
[その他の成分]
本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの他、通常のポリカーボネート樹脂組成物に含有される他の種々の添加剤を含有していてもよい。
含有し得る各種添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、難燃剤、強化剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。以下、本発明に係る樹脂組成物に好適な添加剤の一例について具体的に説明する。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
上記の中では、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのフェノール系酸化防止剤は、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社より、「イルガノックス1010」及び「イルガノックス1076」の名称で市販されている。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの合計100質量部に対し、通常0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。酸化防止剤の含有量が0.001質量部未満の場合は抗酸化剤としての効果が不十分であり、1質量部を超える場合は効果が頭打ちとなり経済的ではない。
本発明で使用される熱安定剤としては、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物(a)、亜リン酸(b)及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト(c)の群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記の亜リン酸エステル化合物(a)の具体例としては、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合して使用してもよい。上記の中で、特にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの合計100質量部に対し、通常0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。熱安定剤の含有量が0.001質量部未満の場合は熱安定剤としての効果が不十分であり、1質量部を超える場合は耐加水分解性が悪化する場合がある。
離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族1価、2価又は3価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中では、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価又は2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸および/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。ここで、脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。数平均分子量は、好ましくは200〜5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であればよい。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの合計100質量部に対し、通常0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。離型剤の含有量が0.001質量部未満の場合は離型性の効果が十分でない場合があり、2質量部を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などの問題がある。
紫外線吸収剤の具体例としては、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などの有機紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステルの群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物が挙げられる。また、その他のベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、2−ビス(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール][メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]である。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの合計100質量部に対し、通常0.01〜3質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。紫外線吸収剤の含有量が0.01質量部未満の場合は耐候性の改良効果が不十分の場合があり、3質量部を超える場合はモールドデボジット等の問題が生じる場合がある。
染顔料としては、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、酸化チタン、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料が挙げられる。有機顔料および有機染料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、熱安定性の点から、カーボンブラック、酸化チタン、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
染顔料の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの合計100質量部に対し、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。染顔料の含有量が5質量部を超える場合は耐衝撃性が十分でない場合がある。
特に、本発明では、ポリエチレンドメインの収縮によって起こる白化現象の防止で、カーボンブラック等の黒色顔料を配合した黒色成形品において、高い黒色度を得るという効果が得られる点から、カーボンブラック等の黒色顔料をポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとの合計100質量部に対して0.01〜5質量部含む黒色樹脂組成物への適用に有効である。
難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレンなどのハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の有機金属塩系難燃剤、ポリオルガノシロキサン系難燃剤などが挙げられるが、リン酸エステル系難燃剤が特に好ましい。
リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、トリフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジキシレニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
難燃剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの合計100質量部に対し、通常1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、更に好ましくは5〜20質量部である。難燃剤の含有量が1質量部未満の場合は難燃性が十分でない場合があり、30質量部を超える場合は耐熱性が低下する場合がある。
滴下防止剤としては、例えば、ポリフルオロエチレン等のフッ素化ポリオレフィンが挙げられ、特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これは、重合体中に容易に分散し、且つ、重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示す。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。ポリテトラフルオロエチレンは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル社より、「テフロン(登録商標)6J」又は「テフロン(登録商標)30J」として、ダイキン工業社より「ポリフロン(商品名)」として市販されている。
滴下防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンの合計100質量部に対し、通常0.02〜4質量部、好ましくは0.03〜3質量部である。滴下防止剤の配合量が5質量部を超える場合は成形品外観の低下が生じる場合がある。
なお、本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレン以外の他の樹脂成分やゴム成分が含まれていてもよく、この場合、他の樹脂ないしゴム成分としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、低密度ポリエチレン以外のエチレン系共重合体などが挙げられるが、これらの他の樹脂ないしゴム成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂と低密度ポリエチレンとの併用による効果を十分に確保する上で、ポリカーボネート樹脂低密度ポリエチレンとの合計100質量部に対して40質量部以下とすることが好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物は、強化剤としてガラス繊維(チョップドストランド)、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズ等のガラス系フィラー;炭素繊維、炭素短繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛などの炭素系フィラー;チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー;タルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリナイト、ゾノトライト、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイトなどの珪酸塩化合物;シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機フィラーを含むことも可能であるが、これらの無機フィラーは、射出成形工程において、ポリエチレンドメインの形状に影響を及ぼすことが多いことから、これらの無機フィラーを用いる場合には、ドメイン形状に応じて成形条件を十分に制御する必要がある。
[ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物の製造方法]
本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を製造するには、多軸押出機を用いて各配合成分を溶融混練する事が好ましい。以下に、一般に多く用いられるスクリュー径が30mm程度の2軸押出機を例に代表的な混練条件を記す。この場合、シリンダー温度は200〜320℃とし、スクリュー回転数は100〜400rpm、吐出量10〜60kg/hで押し出すことが望ましい。押し出されたストランドは冷却しながら切断してペレット化を行う。混練の際にはスクリュー回転数と吐出量をバランスさせ、ダイスにおける樹脂圧を2〜40MPa程度として、樹脂圧力を一定にかけながら押し出すことで、効果的にせん断応力がかかり、ポリカーボネート樹脂中における低密度ポリエチレンの分散性が向上する。シリンダー内に樹脂が充填されない状態で混練しても十分なせん断応力がかからず、低密度ポリエチレンの分散性が上がらない為、大きなドメインを形成しやすくなってしまう。また、シリンダー内での樹脂の滞留時間が長くなると分子量低下に伴い、物性の低下が起こるため、機器のサイズに合わせた吐出量にする。
その他、ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂、低密度ポリエチレン及び必要に応じて添加される他の添加剤を用いて、従来公知の任意の方法を適宜選択して製造することもできる。
具体的には、ポリカーボネート樹脂、低密度ポリエチレン及び必要に応じて配合される添加剤を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練して樹脂組成物を製造することができる。また、各成分を予め混合せずに、又は、一部の成分のみ予め混合してフィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して樹脂組成物を製造することもできる。
[ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の製造方法]
本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物から本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品を製造する成形法としては、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、多色射出成形法、多色射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、断熱金型を用いた成形法、高速加熱冷却金型を用いた成形法、インサート成形法、IMC(インモールドコーティング)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を挙げることができる。
本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の製造方法においては、この射出成形に際して、得られる成形品に、以下に説明するポリエチレンドメイン形状が形成される条件で射出成形を行う。
本発明においては、本発明に係るポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を他の熱可塑性樹脂組成物と多色複合成形して複合成形品とすることもできる。
[ポリエチレンドメイン形状]
本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品は、その表面から深さ20μmの範囲の表層部における、低密度ポリエチレンにより形成されるドメインの短径(D)が0.01〜1μmで、長径(L)と短径(D)との比(L/D)が10〜2000であることを特徴とする。
本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品はまた、その表面から深さ20μmの範囲の表層部における、低密度ポリエチレンにより形成されるドメインの最大短径(Dmax)が1.0μm以下であることを特徴とする。
このドメインの短径(D)が0.01μm未満では十分な耐薬品性が確保されず、1μmを超えると白化や層状剥離等の問題が生じる。また、長径(L)と短径(D)との比(以下「アスペクト比」と称す。)(L/D)が10未満では可視光を散乱しうる大きなボイドが形成されやすくなることから白化の原因となり、2000を超えると流動方向に配向したポリエチレンドメインにより強い真珠光沢が生じる。好ましい短径(D)の範囲は0.05〜0.5μmであり、また、アスペクト比(L/D)は15〜1000である。
また、特にドメインの最大短径(Dmax)は、白化や層状剥離等の問題を確実に防止するために、1.0μm以下であり、好ましくは0.05〜0.7μmである。
なお、このドメインの短径(D)とアスペクト比(L/D)は、以下のようにして測定、算出された値である。
即ち、成形品の流動方向の切断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、表面から深さ20μmの範囲の表層部におけるこの切断面から、短径0.05μm以上の低密度ポリエチレンドメインを抽出し、このドメインについて、それぞれ短径と長径を測定し、短径の数平均値を算出して、この値をドメインの短径(D)とする。また、個々のドメインについて長径と短径の比を算出し、その数平均値をドメインのアスペクト比(L/D)とする。また、短径(D)のうち、最も大きい短径をドメインの最大短径(Dmax)とする。
本発明において、このような所定の短径(D)とアスペクト比(L/D)ないしは最大短径(Dmax)のドメイン形状を有する成形品を得るための混練ないしは成形条件は、用いるポリカーボネート樹脂及び低密度ポリエチレンの物性、その配合割合、その他の添加剤の有無等により異なり、一概には言えないが、例えば、以下のような条件を採用することができる。
即ち、ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の製造に際しては、前述の如く、配合しブレンドした組成物をシリンダー温度100〜340℃、スクリュー回転数80〜400rpmで混練し、ストランドとして押し出す。押し出されたストランドは冷却し、切断してペレット化する。混練の際にはスクリュー回転数と吐出量をバランスさせ、ダイスにおける樹脂圧を2〜40MPa程度として、樹脂圧力を一定にかけながら押し出すことで、効果的にせん断応力がかかり、ポリカーボネート樹脂中における低密度ポリエチレンの分散性が向上する。シリンダー内に樹脂が充填されない状態で混練しても十分なせん断応力がかからず、低密度ポリエチレンの分散性が上がらない為、大きなドメインを形成しやすくなってしまう。
また、ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の射出成形を行う場合においては、好ましくは成形を行うペレットを事前に80〜140℃、例えば120℃で3時間以上、例えば3〜20時間乾燥を行う。より低い温度で乾燥を行う場合にはさらに乾燥時間を長くする。射出成形の条件としては、シリンダー温度を230〜340℃として、金型温調を40〜120℃の条件下において、射出成形を行う。この際、気泡の巻き込み等を抑えるため、背圧を1〜10MPaかけて40〜150rpmの回転数で計量を行う事が望ましい。射出速度の条件は目的とする成形品の形状に大きく依存するため、金型形状にあわせて段階的に射出速度を制御することが好ましい。射出速度としては、スプルーやランナー部位は高速で、ゲート部や製品部の初期充填段階や充填完了時、細い部位の通過時は低速が好ましい。
本発明では、このような成形条件を採用した上で、ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物の配合毎に、成形品サンプルについてドメイン形状を調べ、更に成形条件を微調整することにより、目的とするドメイン形状を実現することができる。即ち、ドメインの短径(D)が小さ過ぎる場合はせん断応力が強くかかり過ぎている、または低密度ポリエチレンの流動性が高すぎるので射出速度を遅くする、樹脂温を下げるなどすればよい。また、ドメインの短径(D)ないしは最大短径(Dmax)が大き過ぎる場合はせん断応力が弱くなりすぎている、または低密度ポリエチレンの流動性が低すぎるので射出速度を上げる、樹脂温を上げるなどすればよい。また、ドメインのアスペクト比(L/D)が小さ過ぎる場合はせん断応力が弱くなりすぎている、または固化前にドメインの緩和が起こっているので射出速度を上げる、金型温度を低めに設定する、樹脂温を上げるなどすればよい。また、このアスペクト比(L/D)が大き過ぎる場合は、せん断応力が強くかかり過ぎている、または引き伸ばされたドメインが緩和する前に急冷されているので射出速度を遅くする、金型温度を高めに設定する、樹脂温を下げるなどすればよい。
[ポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の耐薬品性]
本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品は、下記の耐薬品性の評価試験で測定される破断伸び保持率が60%以上、特に70%以上であることが好ましい。
<耐薬品性の評価試験>
厚さ4mmの引張試験片(ISO 3167 typeA)を成形時の残留歪みを除くために120℃で2時間アニール処理を行う。その後、変形率0.94%の撓みを負荷した状態で、試験薬品としてイソプロパノールを塗布し、この状態で48時間保持した後の試験片の破断伸びEに対して、薬品を塗布せず同様の撓みを同じ時間負荷した試験片の破断伸びEに対する保持率(%)(E/E×100)を算出する。
上記の破断伸び保持率が60%未満では、本発明で目的とする耐薬品性の改良効果を十分に得ることができない。
なお、ここで、耐薬品性の評価試験の詳細は、後掲の実施例に記載される通りである。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、用いた樹脂の物性の測定方法は以下の通りである。
<ポリエチレン樹脂のMFR>
ISO 1133に準拠して、温度190℃、荷重21.18Nで測定した。
<ポリエチレン樹脂の密度>
ISO 1183 D法に準拠して測定した。
<ポリエチレン樹脂の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn>
ポリエチレン樹脂の分子量分布Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnを測定して求めた。GPCの測定は、武内著、丸善発行の「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー」に準じて行なった。すなわち、分子量既知の標準ポリスチレン(東洋ソーダ製単分散ポリスチレン)を使用し、ユニバーサル法により、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)に換算し、Mw/Mnの値を求めた。測定は、ウォーターズ社製「150C−ALC/GPC」を用い、カラムは昭和電工製「AD80M/S」を3本使用した。サンプルは、ポリエチレン樹脂をo−ジクロルベンゼンに0.2質量%に希釈したものを、200μl使用した。測定は140℃、流速1ml/minで実施した。
<ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量Mvの測定>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:[η]=1.23×10−40.83の式から算出した。ここで極限粘度[η]とは各溶液濃度(C)(g/dl)での比粘度(ηsp)を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2010261009
また、実施例及び比較例において使用した樹脂組成物の配合成分は、以下の通りである。
ポリカーボネート樹脂:下記のポリカーボネート樹脂A81質量%と下記のポリカーボネート樹脂B19質量%との混合樹脂
ポリカーボネート樹脂A:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品
芳香族ポリカーボネート樹脂「商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000」
粘度平均分子量22000、末端水酸基濃度180ppm
ポリカーボネート樹脂B:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品
芳香族ポリカーボネート樹脂「商品名:ユーピロン(登録商標)H−4000」
粘度平均分子量16000、末端水酸基濃度150ppm
低密度ポリエチレンA:日本ポリエチレン(株)製品 エチレン−プロピレン共重合体「商品名:カーネルKF282」、エチレン含有量80〜85モル%、密度0.915g/cm、Mw/Mn2.6、MFR2.2g/10min
低密度ポリエチレンB:日本ポリエチレン(株)製品 エチレン−プロピレン−へキセン共重合体「商品名:カーネルKS240T」、エチレン含有量50〜55モル%、密度0.88g/cm、Mw/Mn2.5、MFR2.2g/10min
高密度ポリエチレンA:日本ポリエチレン(株)製品 エチレン−プロピレン共重合体「商品名:HF310」、エチレン含有量98モル%、密度0.950g/cm、Mw/Mn25、MFR0.06g/10min
高密度ポリエチレンB:日本ポリエチレン(株)製品 エチレン−プロピレン共重合体「商品名:HF350」、エチレン含有量98モル%、密度0.950g/cm、Mw/Mn22、MFR2.5g/10min
カーボンブラック:越谷化成工業(株)製「商品名:ROYAL BLACK 904G」
酸化防止剤:チバスペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製「商品名:Irganox1076」(オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
熱安定剤:チバスペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製「商品名:Irgafos168」(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト)
また、各種物性ないし特性の評価方法は次の通りである。
<耐衝撃性・シャルピー衝撃試験(ノッチ付き>
ISO規格多目的試験片(ISO 3167 typeA)をノッチングマシーン(東洋精機製「ノッチングツールA−4型」)を用いて、一枚歯Vカッター(45°、R=0.25mm)、ノッチ回転速度300rpm、ノッチ切削回数を2回としてノッチ加工し、同時にスライサーにより中心部を80mm切り出した。得られたノッチ付きシャルピー試験片を用いてシャルピー衝撃試験をISO 179に準拠して行った。測定は、シャルピー衝撃試験機(東洋精機製「DG−CB」)を用い、ハンマー容量:4.0J、測定温度:23℃で行った。
<耐薬品性>
厚さ4mmのISO規格引張試験片(ISO 3167 typeA)を、成形時の残留歪みを除くために120℃で2時間アニール処理を行った。その後、図1(a),(b),(c)に示す如く、高さ10mmのスペーサー2と直径10mmの支持円柱4a,4bを用いて、固定枠3で表1に示す変形率の撓みを負荷した状態で、試験薬品としてイソプロパノール(和光純薬工業(株)社製 2−プロパノール99.9+%(cGC))を試験片1の凸面側(図1(c)のX部)に塗布し、この状態で48時間、25℃、湿度50%の恒温恒湿条件で放置し、その後、ISO527引張試験により、破断伸びEを測定した。
別に、イソプロパノールを塗布しないこと以外は上記と同様の条件で撓みを負荷して同条件に放置した後、ISO527引張試験により破断伸びEを測定した。
この破断伸びEに対する保持率(%)として(E/E×100)を算出した。
ここで、変形率とは、試験片1と、これを支える円柱4a,4bとの接点A,Bとを結ぶ直線距離をL、試験片の厚みをa、たわみ量をδとすると、変形率=6aδ/Lで算出される値である。
たわみ量δは、次式により計算される。
δ=([支持円柱の高さ]+[試験片の厚み]−[スペーサーの高さ])
なお、治具支持点間距離Lは101mm、試験片1の厚みaは4mm、スペーサー2の高さは10mm、支持円柱4a,4bの高さ(直径)は10mmである。
<外観評価>
目視により、試験片の外観を観察し、その黒色度を以下の4段階で評価した。
◎:白化が全くなく、完全な黒。
○:部分的にうっすらと白化が見られるが、ほとんど黒。
△:全体的にうっすらと白化。
×:全体的に白化が見られる。
[実施例1〜4、比較例1〜3]
表1に示す各配合成分を、表1に示す割合で混合した。得られた組成物を二軸押出機(日本製鋼所(株)製「TEX30α」にて、L/D=52.5、シリンダー径=32mm、シリンダー温度=200〜280℃とし、スクリュー回転数200rpmで混練し、ダイスにおける樹脂圧10〜15MPa、吐出量30kg/hでストランドとして押し出した。押し出したストランドは冷却ベルトコンベアを用いて、冷却水をかけることで冷却し、3〜6mmの長さにカッティングしてペレット化した。
得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(MEIKI「NADEM2000」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、背圧5MPa、スクリュー回転数100rpm、射出速度5〜10%、成形サイクル40秒(射出+保圧20秒、冷却20秒)の条件で射出成形を行い、必要な試験片を成形して、前述の評価を行った。
[比較例4]
実施例2と同一の配合で得られたペレットを、120℃で5時間乾燥後、射出成形機(MEIKI「NADEM2000」)にて、シリンダー温度250℃、金型温度120℃、背圧5MPa、スクリュー回転数100rpm、射出速度4%、成形サイクル60秒(射出+保圧30秒、冷却30秒)の条件で射出成形を行い、必要な試験片を成形して、前述の評価を行った。
評価結果を表1に示す。なお、表1には、各試験片について、SEM観察により、前述の方法で測定、算出した、成形品表層部のポリエチレンドメインの短径(D)及び最大短径(Dmax)とアスペクト比(L/D)を併記した。
Figure 2010261009
表1より、本発明のポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品は、耐薬品性に優れ、また外観、耐衝撃性にも優れることが分かる。
1 試験片
2 スペーサー
3 固定枠
4a,4b 支持円柱

Claims (8)

  1. ポリカーボネート樹脂85〜99質量%と、密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体1〜15質量%とからなる樹脂成分を主成分とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を射出成形してなるポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品において、該成形品の表面から深さ20μmの範囲の表層部における、エチレン系共重合体により形成されるドメインの短径(D)が0.01〜1μmで、長径(L)と短径(D)との比(L/D)が10〜2000であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
  2. 請求項1において、該ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000〜50,000であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
  3. 請求項1又は2において、該エチレン系共重合体がエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、該エチレン系共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜4.0であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、該エチレン系共重合体の190℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10minであることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、下記の耐薬品性の評価試験で測定される破断伸び保持率が60%以上であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
    <耐薬品性の評価試験>
    厚さ4mmの引張試験片に変形率0.94%の撓みを負荷した状態で、試験薬品としてイソプロパノールを塗布し、この状態で48時間保持した後の試験片の破断伸びEに対し、薬品を塗布せず同様の撓みを同じ時間負荷した試験片の破断伸びEに対する保持率(%)(E/E×100)を算出する。
  7. ポリカーボネート樹脂85〜99質量%と、密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体1〜15質量%とからなる樹脂成分を主成分とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を、得られる成形品の表面から深さ20μmの範囲の表層部における、エチレン系共重合体により形成されるドメインの短径(D)が0.01〜1μmで、長径(L)と短径(D)との比(L/D)が10〜2000となるように射出成形することを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品の製造方法。
  8. ポリカーボネート樹脂85〜99質量%と、密度0.85〜0.92g/cmのエチレン系共重合体1〜15質量%とからなる樹脂成分を主成分とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂組成物を射出成形してなるポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品において、該成形品の表面から深さ20μmの範囲の表層部における、エチレン系共重合体により形成されるドメインの最大短径(Dmax)が1.0μm以下であることを特徴とするポリカーボネート/ポリエチレン系複合樹脂成形品。
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