JP2010260014A - カーボン繊維強化プラスチックへの塗膜形成方法 - Google Patents

カーボン繊維強化プラスチックへの塗膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線による表層劣化の著しいCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)表面に適用できる塗膜形成方法であって、複層塗膜に高いレベルで耐候性を付与するとともに、その優れた耐候性を長期間持続させることのできる、CFRPへの塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の塗膜形成方法は、CFRPからなる基材表面に目止め処理を行った後、プライマー塗料、ベース塗料およびクリヤー塗料を順次塗装する、CFRPへの塗膜形成方法であって、前記プライマー塗料が、特定の化学構造からなる紫外線吸収剤(A)と、紫外線吸収モノマーを必須のモノマー成分とするアクリルポリマーからなる紫外線吸収剤(B)とを含有する、2液硬化型アクリルウレタン塗料である、ことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、カーボン繊維強化プラスチック(以下、本明細書において「CFRP」と略記する。)への塗膜形成方法に関する。詳しくは、CFRP表面に目止め処理をした後、プライマー塗膜、ベース塗膜、クリヤー塗膜からなる複層塗膜を形成する方法に関する。
プラスチック表面への塗装系では、プラスチック表面の意匠性とともにプラスチック素材の耐候性および隠蔽性を確保することもあって、プラスチック表面に、ベース塗膜、クリヤー塗膜の2層からなる複層塗膜を形成するのが一般的であるが、従来、屋外での使用を考慮して、塗膜に耐候性を与えるために、前記ベース塗膜やクリヤー塗膜に紫外線吸収剤や酸化防止剤、ラジカル捕捉剤などの紫外線安定剤を添加することが一般に行われてきた。
しかし、ベース塗膜やクリヤー塗膜中に前記紫外線安定剤を配合した場合、前記紫外線安定剤がベース塗膜からクリヤー塗膜へ流出し、さらにクリヤー塗膜から塗膜外へと揮散することにより、徐々に塗膜中から失われるために、その耐候性は、持続性の低いものであった。
プラスチック中でも、ポリプロピレンなどの外装向けプラスチックは、その用途上、耐候性を特に強く求められている。ポリプロピレンの表面はベース塗料との密着性が弱いので、その表面に予めプライマー塗膜を形成しておいて、上記の2層塗膜を形成するようにしている。
そこで、上記の耐候性向上要求に応えるために、このプライマー塗膜を利用することが考えられた。すなわち、ベース塗膜やクリヤー塗膜に覆われているプライマー塗膜に紫外線安定剤を配合することにより、耐候性をより一層持続的に高める技術である。このような方法で持続性が向上するのは、プライマー塗膜が、ベース塗膜とクリヤー塗膜に覆われているので、前記紫外線安定剤が3層塗膜中に長く留まることができるからである。
このような技術としては、例えば、ポリカーボネート樹脂基板の少なくとも一面に、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンを含むベンゾフェノン系紫外線吸収剤が塗料中の不揮発分100重量部に対して8〜17重量部添加された熱硬化性アクリル樹脂からなるプライマー塗料を塗付・硬化させ、次いで、該被膜上に2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが塗料中の不揮発分100重量部に対して1〜4重量部添加されたコロイダルシリカ含有ポリオルガノシロキサンからなるトップ塗料を塗付・硬化させてなる、ポリカーボネート樹脂積層体が知られている(特許文献1参照。)。
特開平11−58654号公報
ところで、最近、自動車用途などにおいては、衝突時の衝撃に耐え得るなどの面から、強度の高いプラスチック材料が求められており、そのような材料として、例えば、CFRPが知られているが、CFRPはカーボン繊維のマトリックス材としてエポキシ樹脂が一般に用いられており、紫外線による素材表層の劣化が著しく、他のプラスチック素材以上に高いレベルでの耐候性とその持続性が求められているものであり、他のプラスチック素材についての耐候性を高めるための上記の手法、すなわち、プライマー塗料に従来型の紫外線安定剤を配合するという手法を採用してみても、耐候性の持続性が未だ十分でないことが分かった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、紫外線による表層劣化の著しいCFRP表面に適用できる塗膜形成方法であって、複層塗膜に高いレベルで耐候性を付与するとともに、その優れた耐候性を長期間持続させることのできる、CFRPへの塗膜形成方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、プライマー塗料に配合する紫外線吸収剤として、紫外線吸収モノマーを必須のモノマー成分とするアクリルポリマーからなる紫外線吸収剤(B)を用いれば、このものは、ポリマーであって分子量が高いことから、ベース塗膜やクリヤー塗膜にたやすく移行することがなく、したがって、複層塗膜外にも揮散し難いことから、複層塗膜の耐候性の持続性が非常に高くなることを見出した。
しかしながら、この紫外線吸収剤(B)は、上述の理由で耐候性の持続性を高めることはできるが、多量使用する必要があり、プライマー塗膜の凝集力を弱めることが分かった。そのため、持続性については問題はないが、結果として、耐候性と塗膜性能の両立ができなかった。
そこで、さらなる検討を図った結果、前記プライマー塗料に、特定の化学構造を有して高い紫外線吸収能を持つ紫外線吸収剤(A)を配合するようにすれば、この紫外線吸収剤(A)が非常に優れた紫外線吸収能を発揮するために、複層塗膜の耐候性が所望の高いレベルにまで向上すること、したがって、3層塗膜に高いレベルでの耐候性を付与でき、かつ、前記紫外線吸収剤(B)の作用によりその高い耐候性を長期間持続させることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかるCFRPへの塗膜形成方法は、CFRPからなる基材表面に目止め処理を行った後、プライマー塗料、ベース塗料およびクリヤー塗料を順次塗装する、CFRPへの塗膜形成方法であって、前記プライマー塗料が、下式(1)で表される紫外線吸収剤(A)と、紫外線吸収モノマーを必須のモノマー成分とするアクリルポリマーからなる紫外線吸収剤(B)を含有する、2液硬化型アクリルウレタン塗料である、ことを特徴とする。
Figure 2010260014
本発明にかかるCFRPへの塗膜形成方法によれば、複層塗膜に高いレベルで耐候性を付与することができ、かつ、前記耐候性を長期間持続させることができる。
以下、本発明にかかるCFRPへの塗膜形成方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
まず、本発明の塗膜形成方法で用いられる、CFRP、プライマー塗料、ベース塗料およびクリヤー塗料について、詳しく説明する。
〔CFRP〕
本発明で用いられるCFRPとは、カーボン繊維強化プラスチック(carbon fiber reinforce plastics)のことであり、カーボン繊維にマトリックス材料を含浸した後、硬化させて成形した複合材料のことである。
前記カーボン繊維としては、ポリアクリロニトリルを焼成して得られるポリアクリロニトリル系のものと、石炭・石油化学の残渣として出るピッチを溶融紡糸後に焼成して得られるピッチ系のものに大別することができる。一般的には、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
前記マトリックス材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
CFRPの製造方法としても、特に限定されず、公知の方法を採用すれば良く、例えば、カーボン繊維を一方向に引き揃えたテープや織物にプラスチックを含浸させて得られる中間素材(プリプレグ)を何枚も積層して、この積層体をオートクレーブに入れて、高温化で加圧・硬化して製造する方法(プリプレグ法)や、連続したカーボン繊維に樹脂を染み込ませたものを芯金に巻きつけ筒状に成形する方法(フィラメントワインディング法)、型内にカーボン繊維の織物をセットし、母材となる樹脂を含浸したのち、これを硬化させる方法(レジントランスファー成形法(RTM))などが挙げられる。
CFRPの市販品としては、例えば、東レ社製の「P3051S−5」、「P3051S−7」、「P3052Sシリーズ」、「P2053Fシリーズ」、「P8053Sシリーズ」、「P8052Gシリーズ」、「F6151B−05M」などを挙げることができる。
〔プライマー塗料〕
本発明で用いられるプライマー塗料は、2液硬化型のアクリルウレタン塗料であり、特定の2種の紫外線吸収剤を必須に含むものである。
<プライマー用樹脂>
本発明で用いられるプライマー塗料としては、プライマー用樹脂として、例えば、耐候性に優れるアクリル樹脂を用いることが好ましく、特には、低温硬化が可能である点で、アクリルポリオール樹脂とイソシアネートを含むものが好適に挙げられる。
前記アクリルポリオール樹脂は、例えば、水酸基含有不飽和モノマー、酸基含有モノマーおよびその他の不飽和モノマーから選択された不飽和モノマー混合物を重合させて得られるものである。
上記水酸基含有不飽和モノマーとしては特に限定されず、例えば、ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、カプロラクトン変性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(例えば、ダイセル化学社製のε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレートである「プラクセルFM−1」)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
上記酸基含有不飽和モノマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸類やスルホン基やリン酸根を持ったその他のアクリルモノマーなどを挙げることができる。
上記その他の不飽和モノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどのエステル基含有アクリル系単量体;ビニルアルコールと酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸とのビニルアルコールエステル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ブタジエン、イソプレンなどの不飽和炭化水素系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体などを挙げることができる。
上記アクリルポリオール樹脂としては、特性によって顔料分散性の良し悪しがあり、顔料分散用アクリルポリオール樹脂と膜性能を重視したアクリルポリオール樹脂の2種を用いることが好ましい。ただ、顔料分散用樹脂としては、特性がその機能を発揮するだけでなく、プライマーとしての機能を発揮する樹脂であることは、いうまでもない。具体的には、それぞれ、以下の特性を有するものが好ましい。なお、このような特性の違いを持たせるためには、例えば、上記したようなモノマーを用いて、その種類や量を適宜選択すればよい。
アクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は、上記2種のいずれのアクリルポリオール樹脂においても、10000〜50000の範囲であることが好ましい。10000未満であれば膜凝集力が小さくなり、膜凝集破壊したりするおそれがあり、50000を超えると塗料の粘度が高くなり過ぎ、塗装粘度まで希釈する溶剤量が多く入り、塗装時不揮発分が低くなって、塗装後のタレが起こり易くなる。
顔料分散用のアクリルポリオール樹脂の水酸基価は、10〜80mgKOH/gの範囲が好ましい。10mgKOH/g未満では、硬化剤との架橋反応度が小さくなり、塗膜凝集力が低く凝集破壊を起こしやすくなったり、耐溶剤性や耐薬品性が低下したりするおそれがあり、80mgKOH/gを超えると、反応しない水酸基が残存したりして、耐水性が低下したりするおそれがある。また、顔料分散用のアクリルポリオール樹脂の酸価は、
2〜20mgKOH/gの範囲が好ましい。酸価が2mgKOH/g未満では、硬化剤とこの水酸基の反応触媒としての働きが弱くなり、その結果、架橋密度が低くなり、膜性能全体が低下する可能性があり、一方、酸価が20mgKOH/gを超えると、残存カルボキシル基が多いので耐水性が低下するおそれがある。さらに、顔料分散用のアクリルポリオール樹脂のガラス転移温度は0℃〜80℃の範囲が好ましい。0℃未満であると、塗膜の耐熱性が低くなり、上層の塗料を塗装後、熱風乾燥する際、プライマー層が熱変形して上層(ベース)塗膜の意匠が成立しなくなるおそれがあり、80℃を超えると、プライマー塗膜が硬すぎて、衝撃などの力を受けると、プライマー膜がクラックをおこし、複層塗膜全体がクラックを発生するおそれがある。
膜性能を重視したアクリルポリオール樹脂の水酸基価は、40〜140mgKOH/gの範囲が好ましい。40mgKOH/g未満では、架橋密度が小さくなり、膜強度が低下するおそれがあり、140mgKOH/gを超えると、未架橋のヒドロキシル基が多く残存し、耐水性試験で白化するおそれがある。また、膜性能を重視したアクリルポリオール樹脂の酸価は、5〜40mgKOH/gの範囲が好ましい。5未満KOH/gでは、硬化剤との架橋反応触媒としての役割が小さく、架橋が十分行われないおそれがあり、一方、酸価が40mgKOH/gを越えると、硬化剤との架橋反応は十分であるが、残存するカルボキシル基が多くなり、耐水性が低下するおそれがある。さらに、膜性能を重視したアクリルポリオール樹脂のガラス転移温度は0℃〜100℃の範囲が好ましい。0℃未満であると、塗膜硬度が低く傷がつき易くなるおそれがあり、100℃を超えると塗膜が硬すぎて割れやすくなるおそれがある。
特に、上記顔料分散用のアクリルポリオール樹脂は、顔料分散用のアクリルポリオール樹脂、膜性能を重視したアクリルポリオール樹脂および硬化剤の固形分合計100重量部中に5〜50重量部の割合で使用されることが望ましい。5重量%未満であると顔料を十分に分散することができなくなるおそれがあり、その結果、顔料凝集などの不具合を起こす可能性があり、50重量%を超えると耐水性が低下するおそれがある。
つぎに、硬化剤として好適な前記イソシアネートとしては、イソシアネート基を1分子あたり2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネートなどの芳香族のもの;イソホロンジイソシアネートなどの脂環族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族のもの;上記の単量体およびそれらのヌレートタイプ、ビューレットタイプ、アダクトタイプなどの多量体などを挙げることができる。硬化性の観点からは、多量体であることがより好ましく、耐黄変性の観点からは、脂肪族系および脂環族系のイソシアネート化合物がより好ましい。市販の硬化剤としては、例えば、住化バイエル社製のディスモジュール3600やスミジュール3300、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、三井武田ケミカル社製のタケネートD−140NL、D−170N、旭化成社製のデュラネート24A−90PX、THA−100などを挙げることができる。
アクリルポリオールとイソシアネートを用いる場合の比率は、固形分の重量基準で、90/10〜40/60の範囲であることが好ましい。上記比率が90/10を超えると、塗膜の架橋度が低下し、塗膜凝集力が低く、結果、密着性が不良となるおそれがあり、一方、40/60未満では、塗料のポットライフが短くなり安定性が低下したり、芳香族系や脂環族系の多量体ポリイソシアネートを用いたりする場合は、塗膜が硬く脆くなり、衝撃を受けて塗膜がワレたり、剥離するおそれがある。
本発明にかかるプライマー塗料は、前記アクリルポリオール樹脂とイソシアネートを、両者の合計固形分量が塗料固形分中において、40〜95重量%となるように含有するものが好ましい。
他のプライマー用樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂をブレンド用として用いることができる。
<紫外線安定剤>
本発明にかかるプライマー塗料には、必須の紫外線安定剤として、以下に詳述する紫外線吸収剤(A)および紫外線吸収剤(B)が配合される。
(紫外線吸収剤(A))
紫外線吸収剤(A)は下式で表される構造を有するものである。
Figure 2010260014
上式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基である。
紫外線吸収剤(A)の分子量は、R〜Rが全て水素原子である場合は約615、R〜Rが全て炭素数12のアルキル基である場合は約1119となる。615未満では塗膜外へ流出し易くなり、1119を超えるとアクリル樹脂に溶解しにくくなり、塊状となって紫外線吸収能が低下するおそれがある。
紫外線吸収剤(A)は、一般的に、ルイス酸、特に塩化アルミニウムの存在下において、モノクロロトリアジンとα−ヒドロキシフェニル化合物とのフリーデルクラフツ反応によって得ることができる。
そして、前記モノクロロトリアジンは、公知の製造方法、例えば、グリニャール反応によって、塩化シアヌルと対応するフェニルマグネシウムブロマイド化合物とを反応する方法によって製造することができる(例えば、Hirtet al.,Helv.Chem.Acta,33,1368(1950)参照)。
また、塩化シアヌルと対応するフェノール化合物とのフリーデルクラフツ反応によりモノクロロトリアジン化合物を得た後、さらに、別のフェノール化合物とフリーデルクラフツ反応を行い、トリアジン化合物を得ることもできる(例えば、米国特許第3118887号明細書、欧州特許出願第165608号公報参照)。
紫外線吸収剤(A)は、樹脂固形分100重量部に対して0.5〜10重量部の割合で配合することが好ましく、1〜7重量部であることがより好ましい。0.5重量部未満では十分なレベルで耐候性を保持できなくなるおそれがあり、10重量部を超えると塗料中での溶解性が低下し、塗膜に凹凸を生じさせるおそれがある。特に好ましくは、1.5〜5重量部である。
(紫外線吸収剤(B))
紫外線吸収剤(B)は、紫外線吸収モノマーを必須のモノマー成分とするアクリルポリマーである。
前記紫外線吸収モノマーとしては、従来公知のものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収モノマーやベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーなどが好適に挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーとしては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシブチル)フェニル]−5−メチルベンゾトリアゾール、[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(アクリロイルオキシエトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
紫外線吸収性モノマーは、アクリルポリマーを構成するアクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸やメタクリル酸などと、前記アクリル酸やメタクリル酸が有するカルボキシル基と反応し得る官能基を有し、かつ、2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格や2−ヒドロキシベンゾトリアゾール骨格などの紫外線吸収能を発現する骨格を有する紫外線吸収性化合物とを反応させて結合させること(エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合など)により調製することができる。
紫外線吸収剤(B)は、上記紫外線吸収性モノマーのみからなるものであると、アクリル樹脂との相溶性が悪く、膜中に均一に分布しにくく、紫外線吸収能力が低下するおそれがあるので、他のモノマー成分との共重合体であることが好ましい。このような他のモノマー成分としては、例えば、顔料分散用アクリルポリオール樹脂や膜性能を重視したアクリルポリオール樹脂で用いることのできるモノマーなどが挙げられる。紫外線吸収剤(B)が紫外線吸収性モノマーと他のモノマー成分との共重合体である場合、全モノマー成分に対する紫外線吸収性モノマーの割合が20〜50重量%以上であることが好ましい。20重量%未満では、紫外線吸収能が低くなるおそれがあり、50重量%を超えると、他のモノマー成分との共重合性が低下し、ポリマー中に固定されない紫外線吸収モノマーが増加したり、ポリマーが黄色を呈したりするおそれがある。
また、紫外線吸収剤(B)は、水酸基を含有し、硬化剤を介して、アクリル樹脂との架橋させることにより、膜中残存性を高めることがより好ましい。
紫外線吸収剤(B)の重量平均分子量としては、特に限定されないが、例えば、2000〜20000であることが好ましい。2000未満では複層塗膜の耐候性の持続性を十分に高めることができないおそれがあり、20000を超えるとアクリル樹脂との相溶性が低下し、紫外線吸収能が低下するおそれがある。
紫外線吸収剤(B)は、樹脂固形分100重量部に対して0.5〜10重量部の割合で配合することが好ましく、1〜7重量部であることがより好ましい。0.5重量部未満では十分な紫外線吸収性が得られないおそれがあり、10重量部を超えると配合量に見合うだけの耐候性レベルとはならずにコスト高となるおそれがあるとともに塗料中での溶解性が悪くなるおそれがある。特に好ましくは、1.5〜5重量部である。
(その他の光安定剤)
本発明にかかるプライマー塗料は、紫外線吸収剤(A)および紫外線吸収剤(B)以外の他の光安定剤を含有するものであっても良い。
他の光安定剤としては、例えば、他の紫外線吸収剤、金属酸化物、ラジカル捕捉剤などが挙げられる。
具体的には、前記他の紫外線吸収剤として、例えば、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリドや、その他の紫外線吸収剤が挙げられる。
前記サリシレート系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、4−t−ブチル−フェニルサリシレート、4−t−オクチル−フェニルサリシレート、p−オクチル−フェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5’−ジ−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロー2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどが挙げられ、市販品としては「シーソープ103」(シプロ化成社製)などが挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミル−フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−アミル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]などが挙げられ、市販品としては「チヌビン1130」(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)などが挙げられる。
その他の紫外線吸収剤としては、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニル−アクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニル−アクリレート、ヒドロキシ−5−メトキシ−アセトフェノン、2−ヒドロキシ−ナフトフェノン、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、ニッケル−ビスオクチルフェニルスルファイド、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、シュウ酸アニリドなどのその他の紫外線吸収剤などが挙げられ、市販品としては「チヌビン292」(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)などが挙げられる。
前記金属酸化物として、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどが挙げられる。
前記ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン、具体的には、例えば、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン(市販品としては商品名:サンドバー3055、クラリアント社製)、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン(市販品としては商品名:サンドバー3056、クラリアント社製)、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン(市販品としては商品名:サンドバー3058、クラリアント社製)、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(市販品としては商品名:スミソーブ577、住友化学工業社製)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(市販品としては商品名:サノールLS−765、三共社製)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(市販品としては商品名:アデカスタブLA−57、旭電化工業社製)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(市販品としては商品名:アデカスタブLA−52、旭電化工業社製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデカノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−67、旭電化工業社製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデカノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−62、旭電化工業社製)、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン(市販品としては商品名:サノールLS−440、三共社製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−63または63P、旭電化工業社製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−68LD、旭電化工業社製)などが挙げられる。
ただし、上記他の紫外線吸収剤、金属酸化物、ラジカル捕捉剤を配合すると、プライマー塗料中の他成分の配合の自由度を妨げ、また、特に金属酸化物を高配合すると塗料の着色を招き、コスト高となるおそれもあることから、樹脂固形分100重量部に対して、他の紫外線吸収剤の配合量を2重量部以下、金属酸化物の配合量を5重量部以下、ラジカル捕捉剤の配合量を2重量部以下とすることが好ましい。
<他の配合剤>
プライマー塗料には、必要に応じて、顔料や公知の補助配合剤を含有させておくことができる。
前記顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、紺青などの無機顔料;アゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、インジゴ系、フタロシアニン系などの有機顔料などが挙げられ、1種のみまたは2種以上併用してもよい。
プライマー塗料中における顔料固形分量は、2〜60重量%の範囲が好ましい。2重量%未満では、CFRP素材の色を十分に隠ぺいすることができず、上塗りベースへの色の影響が出るおそれがあり、60重量%を超えると、プライマー塗膜の平滑性が低下したり、塗膜が硬く脆くなるおそれがある。
前記補助配合剤としては、例えば、導電性カーボン、導電性フィラー、金属粉などの導電性付与剤;無機充填剤;有機改質剤;安定剤;可塑剤;添加剤などが挙げられる。特に、プライマー塗料が導電性付与剤を含有したものであると、プライマー塗料から得られる塗膜の水分含有量にかかわらず導電性が付与され、ベース塗料および/またはクリヤー塗料を容易に静電塗装法で塗り重ねることができるため好ましい。
〔ベース塗料〕
ベース塗料に含まれるベース用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、繊維素樹脂などが挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。硬化剤をさらに含むものであってもよい。また、溶剤型塗料、水性ベース塗料のいずれを用いることもできるが、環境負荷の低減の観点から、水性ベース塗料やハイソリッドベース塗料が好ましい。特に、アクリル樹脂系を主体とするメラミン硬化型の水性ベース塗料や、イソシアネート硬化型あるいはブロックイソシアネート硬化型のハイソリッドベース塗料が好ましい。
硬化剤としてメラミン樹脂やブロックイソシアネートを用いることで、1液型で良好な貯蔵安定性を得ることが可能となり、特にイソシアネート硬化剤を用いることで低温硬化が可能となる。そして、各々の硬化剤によって発揮される耐候性や耐水性などの膜性能を備えた良好な塗膜を形成することができる。
前記アクリル樹脂としては、プライマー塗料で述べたアクリルポリオール樹脂を用いることが好ましい。
前記メラミン樹脂としては、トリアジン環を1分子中に1個以上有するメラミン樹脂であれば、特に制限されるものではない。例えば、メトキシメチロールメラミン、n−ブトキシメチロールメラミン、イソブトキシメチロールメラミン、メトキシブトキシメチロールメラミン、メトキシ/n−ブトキシ混合メチロールメラミン(メラミン骨格にメトキシ基およびn−ブトキシ基がエーテル化されたもの)、およびこれらの縮合物などのようなアルコキシメチロールメラミン類が挙げられる。これらの中でも、平均縮合度が1〜4であるメトキシメチロールメラミン、n−ブトキシメチロールメラミン、メトキシ/n−ブトキシ混合メチロールメラミンが好ましい。
ハイソリッドベース用硬化剤としてのイソシアネートやブロックイソシアネートについては、前記プライマー塗料用硬化剤として用いることのできるものを同様に用いることができる。
ベース塗料には、例えば、着色顔料や体質顔料が含まれていてよい。
前記着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、金属錯体顔料などの有機顔料などが挙げられ、また、前記体質顔料としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカなどが挙げられる。これらを、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
ベース塗料は、必要に応じて、公知の補助配合剤を含有させることができる。補助配合剤としては、例えば、有機溶剤、無機充填剤、有機改質剤、安定剤、可塑剤、添加剤などが挙げられる。
ベース塗料中には、一般的に紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤(例えば、ヒンダードアミンタイプ)などの光安定剤を用いて、後述のごときクリヤー塗膜ではカットできない数%の紫外線によるベース塗膜の劣化を抑える方法がとられているが、本発明においても、同様に、これらの光安定剤を添加しておくことができる。具体的には、上記した紫外線吸収剤(A)、紫外線吸収剤(B)や、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリドその他の紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などが挙げられる。
上記紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などの光安定剤を配合する場合、それらの配合量としては、樹脂固形分100重量部に対して、紫外線吸収剤は0.5〜10重量部、ラジカル捕捉剤は0.1〜5重量部であれば良い。耐候性とのコストパフォーマンスを考慮すれば、紫外線吸収剤は0.5〜5重量部、ラジカル捕捉剤は0.1〜2重量部の範囲がより好ましい。
〔クリヤー塗料〕
本発明で用いられるクリヤー塗料は、3層塗膜のトップ層(最上層)を形成させるのに用いられる塗料であり、優れた耐候性や耐溶剤性などの物性を硬化塗膜に付与する。
特に、環境負荷の低減の観点から、溶剤量の少ないハイソリッドクリヤー塗料が好ましく用いられる。
前記クリヤー塗料としては、特に限定されず、従来公知のものを用いればよいが、例えば、硬化剤がイソシアネートである2液クリアー塗料(例えば、2液硬化型ウレタン塗料)が好ましい。得られるクリヤー塗膜の外観が良好で、耐酸性にも優れたものとなるからである。
前記2液硬化型ウレタン塗料を用いる場合、ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。ポリオールの市販品としては、ユリアーノ2377(荒川化学社製)、オレスターNL2249E(三井東圧社製)、アロタン181−M−60(日本触媒社製)などが挙げられる。プライマー塗料の説明において、先に詳しく述べたアクリルポリオールが好ましく用いられる。
硬化剤として用いるイソシアネートとしては、プライマー塗料に関して説明したものと同様のものを例示でき、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する無黄変タイプの化合物(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどのアダクト体、ヌレート体、ビューレット体など)などを挙げることができる。市販の硬化剤としては、例えば、住化バイエル社製のディスモジュール3600やスミジュール3300、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、三井武田ケミカル社製のタケネートD−140NL、D−170N、旭化成社製のデュラネート24A−90PX、THA−100などを挙げることができる。
市販のクリヤー塗料としては、例えば、2液硬化型ウレタン塗料であるモートン日本コーティングス社製のR788−1、日本ビー・ケミカル社製のR288、R291、日本ペイントオートモーティブヨーロッパ社製のR788SHSなどを挙げることができる。
クリヤー塗料中に紫外線安定剤を添加しておくこともできるが、添加しても、プライマー塗料中に添加する場合のような顕著な耐候性の向上効果は得られず、逆にクリヤー塗膜の無色透明性を阻害してしまうこともあるため、このような場合には、むしろ添加しないほうが良い。添加する場合には、プライマー塗料中の紫外線安定剤として例示した紫外線吸収剤(A)、紫外線吸収剤(B)、他の紫外線吸収剤、金属酸化物、ラジカル捕捉剤などを用いることができる。
上記紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などの光安定剤を配合する場合、それらの配合量としては、樹脂固形分100重量部に対して、紫外線吸収剤は0.5〜10重量部、ラジカル捕捉剤は0.1〜5重量部であれば良い。耐候性とのコストパフォーマンスを考慮すれば、紫外線吸収剤は0.5〜5重量部、ラジカル捕捉剤は0.1〜2重量部の範囲がより好ましい。
〔塗膜形成方法〕
次に、塗膜形成工程の操作について詳しく説明する。
塗膜形成工程は、目止め工程と塗膜形成工程とに分けられる。
<目止め工程>
目止め工程は、従来公知の方法を採用すれば良いが、例えば、以下の手順で行うことができる。
CFRP表面に付着している離型剤(シリコーンオイルなど)を水研することで取り除く。例えば、水研ペーパー♯400などで粗研ぎした後に、水研ペーパー♯1200などで表面を整える。
パテと硬化剤を混ぜ合わせた後、CFRPの表面に塗付する。この際、ウエスなどを用いて練りこむようにして塗付するのがよい。
過剰量のパテを拭き取ったのち、乾燥し、水研ペーパー♯400などで粗研ぎした後に、水研ペーパー♯1200などで表面を整える。
前記パテとしては、特に限定されず、例えば、多価アルコールと不飽和多塩基酸および飽和多塩基酸をエステル化して得られる不飽和ポリエステルに、スチレンモノマーやアクリル酸エステルモノマーなどの不飽和モノマー、さらに、必要に応じて、硬化剤の有機過酸化物の分解促進剤としてのコバルト系、3級アミン、バナジウムやマンガンなどや、体質顔料、着色顔料、特殊フィラーなどを含んだポリエステルパテなどが挙げられる。
前記硬化剤としては、特に限定されず、例えば、有機過酸化物などが挙げられる。
前記パテと硬化剤の使用割合は、特に限定されないが、例えば、パテ100重量部に対して硬化剤1〜5重量部とすることができる。
パテと硬化剤の混合物を塗付したのちの乾燥は、例えば、20〜80℃で5分〜30分とすることができる。
<塗膜形成工程>
塗膜形成工程は、さらに細分化すると、プライマー塗膜形成工程と、ベース塗膜形成工程と、クリヤー塗膜形成工程とに分けられる。
まず、プライマー塗膜形成工程は、CFRPの表面にプライマー塗料を塗って、プライマー塗膜を形成させる工程である。プライマー塗料を塗るのに先立って、必要に応じて、CFRPを洗浄、脱脂しておいてもよい。プライマー塗料は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ロール塗り、流し塗りなどの手法で塗ることができる。
プライマー塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、10〜50μmである。10μm未満では外観不良を招くおそれがあり、50μmを超えるとタレ、ヨリ、ムラなどを招くおそれがある。好ましくは20〜40μmである。
CFRPの表面にプライマー塗料を塗布した後、得られたプライマー塗膜の乾燥が行われる。この乾燥は、自然乾燥および強制乾燥のいずれで行ってもよい。強制乾燥としては、例えば、温風乾燥や、近赤外線乾燥、電磁波乾燥などのいずれで行ってもよい。乾燥を行う際には、得られたプライマー塗膜の不揮発分を、例えば、70〜100重量%になるように調整することが好ましい。
次に、ベース塗膜形成工程は、プライマー塗膜形成工程で得られたプライマー塗膜上に、ベース塗料を塗装し、プライマー塗膜の表面にベース塗膜を形成させる工程である。ベース塗料は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ロール塗り、流し塗りなどの手法で塗ることができるし、プライマー塗料に導電性付与剤を配合しておけば、静電塗装によって塗ることもできる。
ベース塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、10〜30μmである。10μm未満では外観不良を招くおそれがあり、30μmを超えるとタレ、ヨリ、ムラなどを招くおそれがある。好ましくは15〜25μmである。
最後に、クリヤー塗膜形成工程は、ベース塗膜形成工程で得られたベース塗膜の表面に、クリヤー塗料を塗装し、ベース塗膜上にクリヤー塗膜を形成させる工程である。クリヤー塗料は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ロール塗り、流し塗りなどの手法で塗ることができるし、プライマー塗料に導電性付与剤を配合しておけば、静電塗装によって塗ることもできる。
クリヤー塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、20〜50μmである。20μm未満では外観不良を招くおそれがあり、50μmを超えるとタレ、ヨリ、ムラなどを招くおそれがある。好ましくは30〜40μmである。
以上のようにして、CFRPの表面に、プライマー塗料、ベース塗料およびクリヤー塗料をこの順番に塗り重ねて、各塗料成分を含む3つの塗膜をCFRP表面に形成される。
プライマー塗料、ベース塗料およびクリヤー塗料の選択に当たっては、焼付けの際に十分に硬化乾燥できる塗料を選択する必要がある。乾燥が不十分で水または溶剤が硬化塗膜内部に残存すると、硬化塗膜において、耐水性および耐溶剤性などの性能が低下し易くなる。
3層の塗膜の焼付けは、前述の塗膜形成工程における、プライマー塗膜形成工程、ベース塗膜形成工程、クリヤー塗膜形成工程のそれぞれの各工程において、その都度、塗膜を焼付けてもよいし、各塗料をウェットオンウェットで未硬化のまま塗り重ね、3層同時に焼付けてもよい。3層を同時に焼付ける方が、工程の簡素化、省エネルギー化の点で好ましい。
焼付け温度は、迅速な硬化とCFRPへの変形防止との兼ね合いから、例えば、70〜100℃とすることが好ましい。好ましくは、80〜90℃である。
焼付け時間は、通常10〜60分間であり、好ましくは15〜50分間、さらに好ましくは20〜40分間である。焼付け時間が10分間未満であると、塗膜の硬化が不十分であり、硬化塗膜において、耐水性および耐溶剤性などの性能が低下する。他方、焼付け時間が60分間を超えると、硬化しすぎでリコートにおける密着性などが低下し、塗装工程の全時間が長くなり、エネルギーコストが大きくなる。なお、この焼付け時間は、CFRP表面が実際に目的の焼付け温度を保持しつづけている時間を意味し、より具体的には、目的の焼付け温度に達するまでの時間は考慮せず、目的の温度に達してから該温度を保持しつづけているときの時間を意味する。
塗膜の焼付けに用いる加熱装置としては、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線などの加熱源を利用した乾燥炉などが挙げられ、また、これら加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量%」を「%」と記すことがある。

〔プライマー塗料の製造〕
<製造例1:プライマー用アクリルポリオール樹脂の製造>
(製造例1−1)
撹拌装置、温度計、滴下装置、還流冷却管、反応温度制御装置、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン36部、メチルイソブチルケトン27部を仕込み、撹拌しながら内部液を120℃まで昇温した。これとは別に、メチルメタクリレート36部、メタクリル酸1部、n−ブチルアクリレート58部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部からなるモノマー混合液を滴下ロートに仕込み、さらに別の滴下ロートにトルエン16部、t−ブチルパーオクトエート4部からなる重合開始剤溶液を仕込んだ後、両滴下ロートから前記反応器中へそれぞれの液を3時間に渡って滴下した。滴下終了後、撹拌を維持しながら120℃で1時間熟成した。その後、さらに、t−ブチルパーオクトエート0.5部、トルエン5部からなる重合開始剤溶液を1時間に渡って滴下した。この間においても、反応容器内は、撹拌しながら120℃を保持していた。重合反応終了後、内部温度を室温にまで冷却することにより、プライマー用アクリルポリオール樹脂ワニス(1)を得た。得られたプライマー用アクリルポリオール樹脂ワニス(1)の固形分は55%であり、前記ワニス中のアクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は15000、酸価は6mgKOH/g、水酸基価は22mgKOH/g、ガラス転移温度は−8℃であった。
(製造例1−2)
撹拌装置、温度計、滴下装置、還流冷却管、反応温度制御装置、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン30部、メチルイソブチルケトン40部を仕込み、撹拌しながら内部液を120℃まで昇温した。これとは別に、メタクリル酸2.5部、n−ブチルメタクリレート29部、t−ブチルメタクリレート64.5部、2−ヒドロキシメタクリレート4部からなるモノマー混合液を1つの滴下ロートに仕込み、さらに別の滴下ロートにトルエン20部、t−ブチルパーオクトエート2.5部からなる重合開始剤溶液を仕込んだ後、製造例1−1と同様の条件で同様の操作を行い、プライマー用アクリルポリオール樹脂ワニス(2)を得た。得られたプライマー用アクリルポリオール樹脂ワニス(2)の固形分は50%であり、前記ワニス中のアクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は16000、酸価は15mgKOH/g、水酸基価は15mgKOH/g、ガラス転移温度は65℃であった。
<製造例2:紫外線吸収剤(A)の製造>
(製造例2−1)
撹拌機、温度計、滴下口、還流装置、サーモスタット付き温度制御装置のついた反応容器に、1,2−ジクロロベンゼン360部を仕込み、塩化シアヌル110.7g(0.60mol)にあらかじめ塩化アルミニウム200g(1.50mol)を混合していたものを、撹拌しながら反応容器に加えた。反応容器中の懸濁液を撹拌しながら室温から85℃まで30分かけて昇温し、その後、この温度を15分間維持した。次いで、撹拌しながら、m−キシレン58.6部(0.55mol)を上記反応容器中へ、4時間に渡って加えた。この間も反応容器中の温度は85℃に保持した。この後、1時間30分かけて反応懸濁液温度を35℃に下げ、m−キシレン87.95g(0.83mol)をこの温度条件で6時間に渡って反応容器に滴下した。滴下の最終近くで少量の塩化水素ガスが発生するので40%水酸化ナトリウム溶液により中和した。m−キシレンの添加を完了した後に、反応容器中の茶色の反応混合物をさらに撹拌を継続しながら35℃に保持した。
上記反応液中に、レゾンシノール9.9g(0.09mol)を1時間に渡って加え、35℃に保持した。次いで、レゾルシノール9.9gを同様にして1時間に渡って追加添加し、このときに、反応液温を35℃からゆっくりと48℃に上げた。さらに、反応溶液温度を48℃に保持して、追加のレゾルシノール29.7g(0.45mol)を3時間に渡って滴下した。この後、反応混合物溶液を5分かけて80℃に昇温し、この温度で1時間撹拌した。また、塩化水素ガスが発生したので40%水酸化ナトリウム溶液で中和した。
つぎに、純水750gとメチルイソブチルケトン750gの混合液の入った蓋付きガラス容器内を撹拌しながら、上記反応混合物溶液全量を15分間に渡って加えた。さらに10分間撹拌を続けて、上相の有機相側に生成物を抽出し、下相側(水相)を相分離除去した。次いで、上相の有機相を撹拌装置、温度計、温度調節装置つきの別容器に準備した3%塩酸375g中に加えて撹拌し、この混合物を撹拌しながら69℃まで昇温し、一方、容器内を初期常圧から徐々に減圧して最終155mPaで有機溶剤を除去したのち、内部を常圧に戻し、かつ、1,2−ジクロロベンゼン400gを蒸留残渣に加えた。内部液温が120℃より下がらないように調整した。
次いで、へプタン異性体混合物580gを秤量して、還流条件下で1時間にわたって加えた。このようにして得られた粘性のある反応混合懸濁液を20℃まで徐々に冷却し、吸引ろ過して、ろ過残渣を1,2−ジクロロベンゼンとヘプタンの1:1混合溶液で洗浄し、さらに、メタノール400gで洗浄した。こうして洗浄したろ過残渣を減圧下、70℃で乾燥して、紫外線吸収剤(A)の中間体を得た。
撹拌装置、温度調節装置、還流装置付きの容器に、メシチレン100mlを仕込み、次いで、上記中間体10.00g(25.2mmol)、グリシジルラウリルエーテル14.91g(62.9mmol)およびエチルトリフェニルホスホニウムブロミド1.12g(3.02mmol)の混合物を仕込んで撹拌し、140℃まで昇温して、この温度を5時間保持し反応を行った。次いで、容器を室温で冷却して、脱溶剤用エバポレーターに移し、揮発分を留去し、残渣液をシリカゲルカラム(塩化メチレン/メタノール=95/5溶液)で分離し、紫外線吸収剤(A)(1)を得た。
(製造例2−2)
製造例2−1で用いたものと同様の反応容器に、2,4,6−トリス(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン15部およびジグリム80ml(キシダ化学社製)の混合物をまず加え、窒素雰囲気下で微粉状KOH(キシダ化学社製、85%濃度)9.2部(0.139mol)、ヨウ化カリウム0.3部(0.002mol)およびエチル−2−ブロモプロピオネート(東京化成工業社製)21.8部(0.120mol)を順に反応容器中へ加え、均一混合した。その後、攪拌しながら徐々に混合物を108℃に昇温し、この温度で19時間攪拌しながら反応させた。次いで、冷却し、無機沈殿物をろ過除去し、残渣液をロータリーエバポレーターにかけ、減圧条件下で、溶媒を除去し、固形物を得た。この固形粗生成物に酢酸エチル100mlを吸収させ、シリカゲルペット(シリカゲル60、230〜400メッシュ、Φ=6cm、h=4cm)を介してろ過し、さらに酢酸エチル300mlにて溶離させ、ろ過液を取り出し、ここから溶媒除去して乾固した後、減圧装置により、130℃、0.1mmHg条件下で2時間乾燥し、紫外線吸収剤(A)(2)を得た。
<製造例3:紫外線吸収剤(B)の製造>
(製造例3−1)
撹拌装置、温度計、滴下装置、還流冷却管、反応温度制御装置、窒素ガス導入管を備えた反応容器に酢酸n−ブチル30部、トルエン20部、メチルイソブチルケトン20部を仕込み、内部液を撹拌しながら、液温度が100℃になった時点で、モノマー混合液および連鎖移動剤の混合溶液を仕込んでおいた滴下ロートと、ラジカル重合開始剤溶液を仕込んでおいた滴下ロートのそれぞれから、各液を3時間に渡って反応容器内に滴下して重合を行った。前記モノマー混合液としては、紫外線吸収モノマーとしての2−[2'−ヒドロキシ−5’−(メタクリルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール35部と、メチルメタクリレート10部、スチレン19部、エチルヘキシルアクリレート30.6部、ヒドロキシプロピルアクリレート4.6部、メタクリル酸0.8部からなるものを用い、前記連鎖移動剤としてはドデシルメルカプタン1部を用い、前記ラジカル重合開始剤溶液としては、t−ブチル−パーオクトエート6部、酢酸n−ブチル8部、トルエン8部、メチルイソブチルケトン8部からなるものを用いた。滴下開始から5分後に、反応液内部温度を120℃に保持し、重合反応中は常に内部を撹拌していた。3時間の滴下終了後、内部液温度を120℃に保持し、1時間熟成後、t−ブチル−パーオクトエート0.5部、酢酸n−ブチル2部、トルエン2部、メチルイソブチルケトン2部からなる後重合開始剤溶液を1時間に渡って滴下して、その間、内部を撹拌しながら120℃に維持して重合反応の完結操作を行い、その後、さらに120℃で1時間熟成し、内部温度を室温に冷却して紫外線吸収剤(B)の溶液(1)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は35%、重量平均分子量は5500、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は8℃であった。
(製造例3−2)
上記製造例3−1において、モノマー混合液における紫外線吸収モノマーの割合を45.0部、メチルメタクリレートの割合を5.0部、スチレンの割合を14.0部に変更したこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(2)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は45%、重量平均分子量は6000、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は4℃であった。
(製造例3−3)
上記製造例3−1において、モノマー混合液における紫外線吸収モノマーの割合を25.0部、メチルメタクリレートの割合を15.0部、スチレンの割合を24.0部に変更したこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(3)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は25%、重量平均分子量は5000、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は3℃であった。
(製造例3−4)
上記製造例3−1において、モノマー混合液における紫外線吸収モノマーを、2−[2'−ヒドロキシ−5’−(メタクリルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール35部に代えて、2−(2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン)35部としたこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(4)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は25%、重量平均分子量は5500、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は8℃であった。
(製造例3−5)
上記製造例3−1において、モノマー混合液における紫外線吸収モノマーの割合を25.0部、メチルメタクリレートの割合を15.0部、スチレンの割合を24.0部に変更したこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(5)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は25%、重量平均分子量は5000、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は3℃であった。
(製造例3−6)
上記製造例3−1において、連鎖移動剤であるドデシルメルカプタンの量を0.5部としたこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(6)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は35%、重量平均分子量は8000、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は8℃であった。
(製造例3−7)
上記製造例3−1において、連鎖移動剤であるドデシルメルカプタンの量を2.0部としたこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(7)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は35%、重量平均分子量は4000、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は8℃であった。
(製造例3−8)
上記製造例3−1において、モノマー混合液における紫外線吸収モノマーの割合を15.0部、メチルメタクリレートの割合を20.0部、スチレンの割合を29.0部に変更したこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(8)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は15%、重量平均分子量は4800、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は15℃であった。
(製造例3−9)
上記製造例3−1において、モノマー混合液における紫外線吸収モノマーの割合を55.0部、メチルメタクリレートの割合を2.0部、スチレンの割合を7.0部に変更したこと以外は、製造例3−1と同様にして紫外線吸収剤(B)の溶液(9)を得た。前記溶液の固形分は50%であり、前記溶液中の紫外線吸収剤(B)における紫外線吸収モノマーの割合は55%、重量平均分子量は6100、酸価は5mgKOH/g、水酸基価は20mgKOH/g、ガラス転移温度は1℃であった。
<製造例4:顔料分散ペーストの製造>
撹拌機のついた容器に、酢酸n−ブチル48部、メチルイソブチルケトン40部、トルエン40部を仕込み、撹拌しながら、上述のプライマー用アクリルポリオール樹脂ワニス(1)(固形分55%)382部、タイペークCR−95(二酸化チタン、石原産業社製)485部を仕込み、次いで、パリオトールブラックL0080(BASF社製)5部を仕込み、この混合物を十分撹拌してから、DYNO−MILL(顔料分散機、Willy A.Bachofen Ag Mashinenfabrik社製)を用いて顔料を分散することにより、顔料分散ペースト(固形分70%。内訳は、プライマー用樹脂固形分21%、顔料49%)を得た。
<製造例5:プライマー塗料の製造>
(製造例5−1)
撹拌機のついた容器に、キシロール53部、メチルエチルケトン159部を仕込み、撹拌しながら、さらに、製造例1−1で得たプライマー用アクリルポリオール樹脂ワニス(2)(固形分50%)270部、製造例4で得た顔料分散ペースト(固形分70%。内訳は、プライマー用樹脂固形分21%、顔料49%)663部、製造例2−1で得た紫外線吸収剤(A)(1)9.7部、製造例3−1で得た紫外線吸収剤(B)の溶液(1)55.4部、ディスパロン6901−20X(顔料沈降防止剤、楠本化成社製、固形分20%)9部、ジブチルスズラウレート0.1%濃度の酢酸エチル(DBTL)触媒溶液35部を順次加えて、十分に撹拌し、プライマー塗料用主剤を得た。
一方、デュラネート24A−90PX(旭化成社製、固形分90%)100部を酢酸ブチルおよびキシレンの9:1混合溶剤30部で希釈し、これを硬化剤希釈液とした。
上記プライマー塗料用主剤100部と硬化剤希釈液5.8部を撹拌しながら混合し、次いで、酢酸エチルおよび3−メチルメトキシブチルアセテートの7:3混合シンナー10部で、フォードカップ♯4/20℃で14秒の粘度に希釈し、製造例5−1にかかるプライマー塗料を得た。このプライマー塗料用主剤中のOH当量と硬化剤中のNCO当量の比は1:1であった。
(製造例5−2〜5−11)
製造例5−1において、配合を表1に示すとおりに変更したこと以外は同様にして製造例5−2〜製造例5−6にかかる各プライマー塗料(2)〜(11)を得た。
Figure 2010260014
(製造例5−12〜5−17)
製造例5−1において、配合を表2に示すとおりに変更したこと以外は同様にして製造例5−12〜5−17にかかる比較用の各プライマー塗料(12)〜(17)を得た。
Figure 2010260014
なお、表1,2中のチヌビン900は、チバ・スペシャリティーケミカルズ社製の従来型紫外線吸収剤である。また、表1,2では、用いた紫外線吸収剤(A)、(B)の種類、プライマー塗料固形分量に対するアクリルポリオール樹脂とイソシアネートの合計固形分量の割合、および、前記アクリルポリオール樹脂とイソシアネートの合計固形分100重量部に対する前記紫外線吸収剤(A)もしくは前記紫外線吸収剤(B)の割合についても併記した。

〔溶剤型ベース塗料の製造〕
<製造例6:溶剤型ベース用アクリルポリオール樹脂の製造>
(製造例6−1)
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管、サーモスタット付き加熱温度調整装置を備えた反応容器に、トルエン14部、酢酸n−ブチル11部、n−ブタノール2部を仕込み、撹拌しながら内部液を110℃まで昇温した。この温度を維持し撹拌しながら内部に窒素流入を行い、一方、これとは別にメチルメタクリレート3部、n−ブチルアクリレート20部、エチルアクリレート68部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート7部、メタクリル酸2部からなるモノマー混合液を滴下ロートに仕込み、さらに別の滴下ロートにカヤエステルO(パーオキサイド系ラジカル重合開始剤、日本化薬社製)3.4部、トルエン9部、酢酸n−ブチル9部からなる重合開始剤溶液を仕込んだ後、両滴下ロートから前記反応器中へそれぞれの液を3時間に渡って滴下した。滴下終了後、撹拌を維持しながら110℃で1時間熟成した。その後、さらに、カヤエステルO 0.6部、トルエン3部、酢酸n−ブチル3部からなる重合開始剤溶液を2時間に渡って滴下した。この間においても、反応容器内は、撹拌しながら110℃を保持していた。重合反応終了後、内部温度を80℃に下げ、トルエン7部、酢酸n−ブチル7部、n−ブタノール2部を順に仕込んで、溶剤型ベース用アクリルポリオール樹脂ワニス(1)を得た。得られた溶剤型ベース用アクリルポリオール樹脂ワニス(1)の固形分は60%であり、前記ワニス中のアクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は29000、水酸基価は30mgKOH/gであった。
(製造例6−2)
上記において、モノマー混合液のモノマー組成を、メチルメタクリレート8部、n−ブチルアクリレート52部、n−ブチルメタクリレート15部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート24部、メタクリル酸1部とし、重合開始剤であるカヤエステルOの量について、前半(熟成前)の滴下量を2.5部、後半(熟成後)の滴下量を0.5部に変更したこと以外は同様にして、溶剤型ベース用アクリルポリオール樹脂ワニス(2)を得た。得られた溶剤型ベース用アクリルポリオール樹脂ワニス(2)の固形分は60%であり、前記ワニス中のアクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は49000、水酸基価は100mgKOH/gであった。
<製造例7:溶剤型ベース塗料の製造>
撹拌装置を備えたステンレス容器に、上記ベース用アクリルポリオール樹脂ワニス(1)9部を仕込み、撹拌しながら、ベース用アクリルポリオール樹脂ワニス(2)19部を仕込み、次いで、ディスパロン6900−20X(沈降防止剤、楠本化成社製、固形分20%)26部、AZS−522−30(粘度制御剤、日本ペイント社製)12部、トルエン8部、酢酸エチル8部、イソブタノール4部を順に仕込んだ。次いで、デュラネートK6000(ブロックイソシアネート、ヌレートタイプ、旭化成社製)9部を仕込み、最後にアルミペースト60−600(東洋アルミニウム社製)5部を仕込んで十分に撹拌し、均一化し、次いで、T−536MBシンナー(日本ビー・ケミカル社製)を用いて、フォードカップ♯4/20℃で12秒の粘度に希釈し、製造例7にかかる溶剤型ベース塗料を得た。

〔水性ベース塗料の製造〕
<製造例8:水性ベース用アクリルポリオール樹脂の製造>
(製造例8−1)
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管およびサーモスタットつき温度調整装置、減圧装置を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルグリコール27部を仕込み、撹拌しながら内部液を110℃まで昇温した。この温度を維持し撹拌しながら内部に窒素流入を行い、一方、これとは別にメタクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8部、メチルメタクリレート30部、エチルアクリレート57部からなるモノマー混合液を滴下ロートに仕込み、さらに別の滴下ロートにラジカル重合触媒のt−ブチルパーオキシヘキサノエート1.5部および2−エチルヘキシルグリコール10部からなる重合開始剤溶液を仕込んだ後、それぞれの液を3時間かけて前記反応容器内に滴下した。この間、撹拌しながら内部液温を110℃に維持し、その後、さらに、110℃で1時間熟成反応を行った。次いで、撹拌しながら、内部液温を110℃に保持しながら、t−ブチルパーオキシヘキサノエート0.5部および2−エチルヘキシルグリコール5部からなる後ショットラジカル重合触媒溶液を1時間かけて滴下した。その後、さらに1時間の熟成反応を行った後、液温を70℃に下げ、2−エチルヘキシルグリコール2部、メトキシプロパノール30部を添加して希釈した。続いて、減圧条件下で液温を70℃に保持しながら脱溶剤し、主にメトキシプロパノールを留出させて約2時間かけて留分が25部の時点で脱溶剤を終了した。次いで、内部温度を70℃にしながら、ジメチルエタノールアミン5部を反応容器内に加え、十分撹拌しながら、さらに、純水370部を徐々に反応容器内に加えていき、強制撹拌により水相に転相することで、水性ベース用アクリルポリオール樹脂溶液(1)を得た。得られた水性ベース用アクリルポリオール樹脂溶液(1)の固形分は19%であり、前記溶液中のアクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は40000、酸価は30mgKOH/g、水酸基価は39mgKOH/gであった。
(製造例8−2)
上記製造例8−1において、モノマー混合液として、メタクリル酸8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8部、メチルメタクリレート15部、エチルアクリレート52部、スチレン10部からなるもの(合計100部)を用い、モノマー混合溶液と並行して滴下する重合触媒溶液として、2−エチルヘキシルグリコールエーテル10部、t−ブチルパーオキシヘキサノエート3部を用いたこと以外は同様にして重合反応を行い、次いで、内部温度を70℃にしながら、ジメチルエタノールアミン5部を反応容器内に加え、十分撹拌しながら、さらに、純水182部を徐々に反応容器内に加えていき、強制撹拌により水相に転相することで、水性ベース用アクリルポリオール樹脂溶液(2)を得た。得られた水性ベース用アクリルポリオール樹脂溶液(2)の固形分は30%であり、前記溶液中のアクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は27000、酸価は53mgKOH/g、水酸基価は67mgKOH/gであった。
<製造例9:水性ベース塗料の製造>
撹拌機を備えた容器に、水性ベース用アクリルポリオール樹脂溶液(1)70部、水性ベース用アクリルポリオール樹脂溶液(2)200部、メラミン樹脂(XM2677、日本サイテック社製)38部、10%ジメチルエタノールアミン水溶液4部を撹拌しながら仕込んだ。さらに、2−エチルヘキシルグリコール10部、アルミペースト65−388(東洋アルミ社製)27部および添加剤BYK192(ビッグケミー社製)0.7部を別容器で予め撹拌混合しておいて、この混合溶液を上記樹脂配合溶液に撹拌しながら仕込んだ後、ウレタンディスパージョン(ネオレッツR972、アビシア社製)66部、JP508(城北化学社製)0.4部、増粘剤(アデカノールUH752、ADEKA社製)4部とを加え、次いで、さらに撹拌しながら、純水を用いて、フォードカップ♯4/20℃で20秒の粘度に希釈し、製造例9にかかる水性ベース塗料を製造した。このものの不揮発分は19%であり、顔料濃度は固形分中で12.9%であった。

〔ハイソリッドベース塗料の製造〕
<製造例10:ハイソリッドベース用アクリルポリオール樹脂の製造>
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管およびサーモスタットつき温度調整装置を備え、かつ、耐圧性の反応容器に、酢酸ブチル25部を仕込み、撹拌しながら内部液を100℃まで昇温した。この温度を維持し、窒素を吹き込みながら加圧し、内部液相温度を170℃まで昇温した。ついで、メタクリル酸18.5部、アクリル酸0.5部、n−ブチルアクリレート17部、n−ブチルメタクリレート51部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13部からなるモノマー混合液を滴下ロートに仕込み、さらに別の滴下ロートにパーオキサイド系重合開始剤(ジ−t−アミルパーオキサイド)1.5部および酢酸n−ブチル7部からなる重合開始剤溶液を仕込んだ後、それぞれの液を3時間かけて前記反応容器内に滴下した。この間、撹拌しながら内部液温を170℃に維持し、その後、さらに、170℃で30分熟成反応を行った。次いで、撹拌しながら、内部液温を120℃に下げた後、パーオキサイド系重合開始剤(t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、アルケマ吉富製薬社製)および酢酸n−ブチルからなる重合触媒溶液を滴下ロートから30分かけて滴下し、重合反応を完了した。ついで、内部液温を80℃に下げ、容器内圧力を常圧に戻して、不揮発分75%のハイソリッドベース用アクリルポリオール樹脂ワニスを得た。
<製造例11:ハイソリッドベース用ポリエステル樹脂の製造>
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管およびサーモスタットつき温度調整装置を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン134部、ε−カプロラクトン912部(トリメチロールプロパンに対して8倍モル量)およびジ亜リン酸ナトリウム0.8部を仕込み、内部液相温度を170℃まで昇温した。この温度を維持し、窒素を吹き込みながら14時間撹拌を行った。ガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies,Inc社製)により、ε−カプロラクトンに基づくピークが消失していることを確認し、内部液相温度を100度まで下げた。ついで、上記反応容器中に、無水ヘキサヒドロフタル酸154部(トリメチロールプロパンに対して1倍モル量)を加え、150℃まで昇温し、この温度を維持しながら、1.5時間撹拌を続け、反応を行った。FT−IR(Thermo ELECTRON CORPORATION社製)出三無水物に基づくピークが消失していることを確認して反応を終了し、酢酸n−ブチル300部を加えて希釈した。得られたポリエステルポリカルボン酸樹脂ワニスは不揮発分が80%であり、ワニス中のポリエステルポリカルボン酸樹脂の重量平均分子量は2900、数平均分子量は2100、水酸基価が161mgKOH/gであった。
<製造例12:ハイソリッドベース塗料の製造>
撹拌装置付き容器に、上記製造例10で得たアクリルポリオール樹脂ワニス15.9部を仕込み、撹拌しながら、上記製造例11で得たポリエステルポリカルボン酸樹脂ワニス34.5部を仕込み、ついで、メチルアミルケトン4.5部、DBE(三強化学社製の溶剤)4.5部を加えて十分に撹拌した。ついで、撹拌しながら、顔料として光輝性のアルミフレーク顔料(アルペーストMH8801、不揮発分64%、旭化成メタルズ社製)を凝集しないように注意して加えた。アルミフレーク顔料が十分にほぐれ均一分散した時点で、エチル−3−エトキシプロピオネート0.4部、DBE5.5部、酢酸エチル5.4部、酢酸n−ブチル2.3部を加え、ベース塗料主剤とした。続けてこの主剤に硬化剤としてイソシアネート硬化剤(コロネートHX、不揮発分100%、日本ポリウレタン社製)17.2部を添加し、均一になるように十分撹拌し、次いで、メチルエチルケトンを用いて、フォードカップ♯4/20℃で15秒の粘度に希釈し、製造例12にかかるハイソリッドベース塗料を得た。この塗料の不揮発分は63%であった。

〔ハイソリッドクリヤー塗料の製造〕
<製造例13:ハイソリッドクリヤー用アクリルポリオール樹脂の製造>
撹拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管およびサーモスタット付き温度調節装置を備えた反応容器に、酢酸n−ブチル42部を仕込み、撹拌しながら内部液温度を125℃まで昇温した。そして、反応容器内を窒素気流下とし、反応容器内溶液を撹拌しながら、滴下ロートから、エチルヘキシルアクリレート5.3部、t−ブチルメタクリレート45.1部、スチレン10部、メタクリル酸1.1部、ヒドロキシブチルアクリレート38.5部および重合開始剤(t−ブチルパーオキシジエチルヘキサネート)からなるモノマー・触媒混合溶液を3時間にわたって滴下した。内部温度は重合反応熱で128度くらいとなり、弱いリフラックス状態を維持した。ついで、この温度と撹拌を1時間維持して熟成反応を行い、ついで、重合開始触媒(t−ブチルパーオキシジエチルヘキサネート)0.5部を酢酸n−ブチル5部に溶解した重合触媒溶液を、内部撹拌および128℃の内部温度を維持しながら、滴下ロートから、1時間かけて滴下した。さらに2時間熟成反応を行い、ハイソリッドクリヤー用アクリルポリオール樹脂ワニスを得た。このものの不揮発分は70%であり、ワニス中のアクリルポリオール樹脂の重量平均分子量は6000、水酸基価は150mgKOH/gであった。
<製造例14:ハイソリッドクリヤー塗料の製造>
撹拌機のついた容器に、上記ハイソリッドクリヤー塗料用アクリルポリオール樹脂ワニス100部を仕込み、さらに、ソルフィットAC(クラレ社製)と酢酸n−ブチルを重量比で3/2の混合溶液15部を仕込み、撹拌して均一状態にした。続いて、前記ソルフィットAC(クラレ社製)と酢酸n−ブチルの重量比で3/2の混合溶液10部に、チヌビン292(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製のヒンダードアミン)0.7部とチヌビン384−2(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製の紫外線吸収剤)1.4部とを溶解した液を、前記反応容器に仕込み、続いて、BYK310(ビッグケミー社製の表面調整剤)0.7部、BYKETOL SPECIAL(ビッグケミー社製の表面調整時亜)2.8部、ジブチルチンジラウリレート(硬化触媒)0.1部を仕込み、全体を均一に撹拌混合した。続いて撹拌しながら、R−271硬化剤(日本ビー・ケミカル社製のポリイソシアネート硬化剤、不揮発分75%、NCO%=16.5%)47.6部を仕込み、原液クリヤー塗料とした。この原液クリヤー塗料を、上記ソルフィットAC(クラレ社製)と酢酸n−ブチルを重量比で3/2の混合溶液13部を用いて希釈し、♯4フォードカップ(上島製作所製)を用いて、20℃での粘度を測定したところ、20秒であった。そして、前記希釈後の塗料の不揮発分は57%であった。

〔実施例1〕
ミクニペイント社製パテ、ロメンフィラーを用いて、上述の通りの手順で目止め処理を行ったCFRP素材(TLS−FA168、東レ社製)に、製造例5−1で得られたプライマー塗料を乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装し、室温にて10分間セッティングした後、90℃で30分間乾燥し、プライマー塗膜を得た。次に、製造例7で得られた溶剤型ベース塗料を乾燥膜厚16〜17μmとなるようにスプレー塗装し、室温にて3分間セッティングした。次に、溶剤型クリヤー塗料を乾燥膜厚45μmとなるようスプレー塗装し、室温で5分放置した。次に、90℃で20分間焼付け、硬化乾燥した実施例1にかかる最終塗板を得た。
ここで、前記溶剤型クリヤー塗料としては、撹拌機のついた容器にR−2700カイクリヤー(主剤、日本ビー・ケミカル社製)を100部加え、撹拌しながらH−2700(硬化剤、日本ビー・ケミカル社製)を40部加え混合し、次いで、505HCL(シンナー、日本ビー・ケミカル社製)を用いてフォードカップ♯4/20℃で14秒の粘度に希釈することにより得られたものを用いた。
〔実施例2〜13、比較例1〜8〕
実施例1において、プライマー塗料、ベース塗料、クリヤー塗料を表1に示すとおりに変更して、同様に塗膜を形成し、実施例2〜13、比較例1〜8にかかる各最終塗板を得た。
ただし、実施例12、比較例7においては、ベース塗料をスプレー塗装後、1分間セッティングし、80℃で3分間プレヒートし、さらに空冷した後に、クリヤー塗装を行うように変更し、さらに、クリヤー塗装後の乾燥は、120℃で20分間に変更した。
Figure 2010260014
表3に示す初期塗膜外観、耐候性、塗膜中の紫外線吸収剤残存量の項目は、以下の評価方法・測定方法に基づく。
<初期塗膜外観>
塗膜形成後に直ちに外観を目視し、以下の基準で評価を行った。
(黄変)
○:塗膜黄変が認められない
△:やや塗膜黄変が認められる
×:明らかに塗膜黄変が認められる
(平滑性)
○:ツヤ、肌などに外観異状が認められない
△:ツヤ、肌などに一部異状が認められるが市場品質にて許容できる範囲
×:ツヤ、肌などに市場で問題になる程度に異状が認められる
<耐候性>
スガ試験機製の強エネルギータイプ(180W)の促進耐候性試験機を用い、102分間キセノン灯を照射した後、18分間キセノン照射と降雨を行い、これを1サイクルとして合計2000時間実施し、試験後の塗膜表面を目視観察して、以下のとおり評価した。
(クラック)
○:目視でクラックが認められない
△:目視でわずかにクラックが認められる
×:目視で明らかにクラックが認められる
(白化)
○:目視で白化が認められない
△:目視でわずかに白化が認められる
×:目視で著しい白化が認められる
<塗膜中の紫外線吸収剤残存量>
初期塗膜の透過率と上記促進耐候性試験後の透過率を測定し、それらの値を、
塗膜の紫外線吸収剤残存量(%)={(100−A)/(100−B)}×100
A:促進耐候性試験後の透過率(%)、B:初期塗膜の透過率(%)
に代入して、紫外線吸収剤残存量を算出した。
具体的には、縦20cm×横70cmのスライドグラス(マツナミ社製)に試験の対象となる塗料を膜厚30μmで塗装し、これを光線透過率測定用試料として用い、紫外線分光光度計(UV−265FW、島津製作所製)を用いて測定波長300〜350nmの平均透過率で評価した。
〔考察〕
表3に示すように、実施例1〜12では、いずれも、黄変がなく、平滑性にも優れた複層塗膜が形成され、促進耐候性試験後においても、クラックや白化を生じないことが分かる。紫外線吸収剤残存量の項目を見ても、経時的な紫外線吸収剤の流出が少ないことも確認できる。
比較例1は、紫外線吸収モノマーの割合が少ないため、促進耐候性試験後において、クラックや白化を生じてしまっている。紫外線吸収剤残存量の項目を見ても、経時的な紫外線吸収剤の流出が多いことが確認できる。
比較例2は、紫外線吸収モノマーの割合が多いが、初期塗膜において黄変を生じてしまっている。
比較例3は、紫外線吸収剤(B)を配合していないため、促進耐候性試験後において、クラックや白化を生じてしまっている。紫外線吸収剤残存量の項目を見ても、経時的な紫外線吸収剤の流出が多いことが確認できる。
比較例4は、紫外線吸収剤(A)を配合していないため、促進耐候性試験後において、クラックや白化を生じてしまっている。紫外線吸収剤残存量の項目を見ても、経時的な紫外線吸収剤の流出が多いことが確認できる。
比較例5は、紫外線吸収剤(A)を配合せず、代わりに、従来型の紫外線吸収剤(チヌビン900)を配合したものであるが、促進耐候性試験後において、クラックや白化を生じてしまっている。紫外線吸収剤残存量の項目を見ても、経時的な紫外線吸収剤の流出が多いことが確認できる。
比較例6は、紫外線吸収剤(A)、紫外線吸収剤(B)を配合せず、代わりに、従来型の紫外線吸収剤(チヌビン900)を配合したものであるが、促進耐候性試験後において、クラックや白化を生じてしまっている。紫外線吸収剤残存量の項目を見ても、経時的な紫外線吸収剤の流出が多いことが確認できる。
比較例7,8は、比較例1と同様に紫外線吸収モノマーの割合が少ないため、促進耐候性試験後において、クラックや白化を生じてしまっている。紫外線吸収剤残存量の項目を見ても、経時的な紫外線吸収剤の流出が多いことが確認できる。
本発明にかかるCFRPへの塗膜形成方法は、CFRPが用いられる種々の分野、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外装品や、家庭電化製品の外板部などの表面に塗膜を形成する方法として好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. カーボン繊維強化プラスチックからなる基材表面に目止め処理を行った後、プライマー塗料、ベース塗料およびクリヤー塗料を順次塗装する、カーボン繊維強化プラスチック基材への塗膜形成方法であって、
    前記プライマー塗料が、下式(1)で表される紫外線吸収剤(A)と、紫外線吸収モノマーを必須のモノマー成分とするアクリルポリマーからなる紫外線吸収剤(B)とを含有する、2液硬化型アクリルウレタン塗料である、
    ことを特徴とする、カーボン繊維強化プラスチック基材への塗膜形成方法。
    Figure 2010260014

    (上式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基である。)
  2. 前記プライマー塗料が、アクリルポリオール樹脂とイソシアネートを含有するとともに、これらの合計固形分量がプライマー塗料固形分量に対して40〜95重量%であり、かつ、前記アクリルポリオール樹脂とイソシアネートの合計固形分100重量部に対して、前記紫外線吸収剤(A)が0.5〜10重量部、前記紫外線吸収剤(B)が0.5〜10重量部の割合である、請求項1に記載のカーボン繊維強化プラスチック基材への塗膜形成方法。
  3. 前記ベース塗料が水性ベース塗料である、請求項1または2に記載のカーボン繊維強化プラスチック基材への塗膜形成方法。
  4. 前記水性ベース塗料がアクリル樹脂とメラミン樹脂を含有するものである、請求項3に記載のカーボン繊維強化プラスチック基材への塗膜形成方法。
  5. 前記クリヤー塗料がハイソリッド塗料である、請求項1から4までのいずれかに記載のカーボン繊維強化プラスチック基材への塗膜形成方法。
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