JP2010255657A - 有歯ケーブル、有歯ケーブルを備えたケーブル装置および移動体の移動システム - Google Patents

有歯ケーブル、有歯ケーブルを備えたケーブル装置および移動体の移動システム Download PDF

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Abstract

【課題】ヤーンが切損することなく案内部材の内面に確実に摺動して摺動音を小さくすることができ、さらに接着せずにヤーンの柔軟性を維持したままヤーンを溝に保持することができる有歯ケーブルを提供する。
【解決手段】コアケーブルと、コアケーブルの周囲へ一定のピッチで螺旋状に巻き付けたワイヤと、芯糸と芯糸に固定されたパイルとを備え、溝へ螺旋状に巻き付けられたヤーンとから構成される有歯ケーブルにおいて、コアケーブルとワイヤにより形成された側壁面と底面とを備えた溝へヤーンを螺旋状に巻き付けたとき、パイルは側壁面に接するように芯糸から半径外方向に向かって配置され、かつ溝の外側へ突出する長さを有しており、芯糸の中心から底面までの間隔は、溝へ巻き付ける前の芯糸の中心から前記パイルの先端までの間隔よりも小さい。
【選択図】 図1

Description

本発明は有歯ケーブル、有歯ケーブルを備えたケーブル装置および移動体の移動システムに関するものである。
従来、有歯ケーブルは、コアケーブルと、コアケーブルの周囲に一定のピッチで螺旋状に巻き付けたワイヤとから構成されて可撓性を有しており、有歯ケーブルを移動させるための歯車をワイヤへ噛み合わせることによって歯車の回転運動を有歯ケーブルの直線運動に変換するものである。有歯ケーブルは適宜湾曲された案内部材に沿って移動し、その端部が自動車のサンルーフやウインドウガラス等の移動体に接続されて、移動体の移動システムとして用いられる。有歯ケーブルのワイヤ表面が案内部材の内面と摺動するときの摺動音を低減させるために、コアケーブルとワイヤにより形成される溝へヤーンを設けることによって、ワイヤではなくヤーンを案内部材の内面と摺動させるものが知られている。
特許文献1には、半径方向に弾性を有するヤーンを溝へ巻き付け、該ヤーンをワイヤより半径外方向へ突出させてヤーンを案内部材の内面と摺動させる有歯ケーブルが開示されている。
また、特許文献2には、コアケーブルと螺旋状のワイヤを加熱し、熱可塑性樹脂から成るヤーンを溝へ巻き付け、コアケーブルとワイヤの熱によりヤーンを溶融固定させて得られる中間層を設けた有歯ケーブルが開示されている。
さらに、特許文献3には、芯糸のまわりに接着剤を塗布してパイルを放射状に植毛させたヤーンを溝へ接着固定した有歯ケーブルが開示されている。
実開昭55−170518号公報 特開昭63−28991号公報 特開平6−294460号公報
しかしながら、特許文献1に記載された有歯ケーブルは、有歯ケーブルを移動させる歯車とヤーンが常に接触するために、ヤーンが次第に磨耗して切損に至り、ヤーンと案内部材の内面が摺動しなくなって摺動音が大きくなる問題があった。
また、特許文献2に記載された有歯ケーブルは、ヤーンの融点よりも高い温度へ加熱するためにパイルが溶融してその長さが短くなり、ヤーンと案内部材の内面が摺動しなくなって摺動音が大きくなる問題があった。
さらに、特許文献3に記載された有歯ケーブルは、ヤーンをコアケーブルへ接着するときの接着剤の量が多いと、接着剤が案内部材側のパイルに回り込んでパイルを硬化させ、ヤーンと案内部材の内面との摺動音が大きくなる問題があった。一方で、接着剤の量が少ないと、接着不良によりヤーンが溝から外れてしまい、ヤーンと案内部材の内面が摺動しなくなって摺動音が大きくなる問題があった。また、巻き付けるときに芯糸とコアケーブルの間で圧縮力を受けて変形したパイルが元の形状に戻ろうとして芯糸を押し上げ、その状態で接着剤が硬化して芯糸が溝から浮いた状態となり、芯糸が歯車との接触を繰り返すことによってやがてヤーンが切損し、ヤーンと案内部材の内面が摺動しなくなって摺動音が大きくなる問題があった。
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものであり、ヤーンが切損することなく案内部材の内面に確実に摺動して摺動音を小さくすることができ、さらに接着せずにヤーンの柔軟性を維持したままヤーンを溝に保持することができる有歯ケーブルを提供することを目的とする。
本発明の有歯ケーブルは、コアケーブルと、前記コアケーブルの周囲へ一定のピッチで螺旋状に巻き付けたワイヤと、芯糸と前記芯糸に固定されたパイルとを備え、前記コアケーブルと前記ワイヤにより形成された側壁面と底面とを備えた溝へ螺旋状に巻き付けられたヤーンとから構成される有歯ケーブルにおいて、前記ヤーンを前記溝へ螺旋状に巻き付けたとき、前記パイルは前記側壁面に接するように芯糸から半径外方向に向かって配置され、かつ前記溝の外側へ突出する長さを有しており、前記芯糸の中心から前記底面までの間隔は、前記溝へ巻き付ける前の前記芯糸の中心から前記パイルの先端までの間隔よりも小さいことを特徴とする。
また、本発明の有歯ケーブルは、コアケーブルと、前記コアケーブルの周囲へ一定のピッチで螺旋状に巻き付けたワイヤと、芯糸と前記芯糸に固定されたパイルとを備え、前記コアケーブルと前記ワイヤにより形成された側壁面と底面とを備えた溝へ螺旋状に巻き付けられたヤーンとから構成される有歯ケーブルにおいて、張力を付与した状態で前記ヤーンを前記溝へ巻き付ける工程と、前記張力を保持した状態で加熱して前記芯糸を軟化させる工程と、軟化させた前記芯糸を冷却する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする。
(1)本発明の有歯ケーブルは、ヤーンを溝へ螺旋状に巻き付けたとき、パイルが溝の外側へ突出する長さを有しているため、ヤーンを案内部材の内面へ確実に摺動させることができ、さらに芯糸の中心から溝の底面までの間隔が、溝へ巻き付ける前の芯糸の中心からパイルの先端までの間隔よりも小さいため、歯車に接触しない位置へ芯糸を確実に保持することができる。
(2)ヤーンの少なくとも両端部がコアケーブルおよび/またはワイヤに固定されている場合は、ヤーンが溝から外れることなくコアケーブル上に確実に保持させることができる。
(3)さらに本発明の有歯ケーブルは、張力を付与した状態でヤーンを溝へ巻き付ける工程と、張力を保持した状態で加熱して芯糸を軟化させる工程と、軟化させた芯糸を冷却する工程を含む製造方法により得られるため、溝へ巻き付けたときの芯糸の位置を確実に保持させることができる。
(4)ヤーンが熱可塑性樹脂から成り、芯糸の融点が、パイルの融点より低い場合は、芯糸を軟化させたときにパイルが溶融しないため、ヤーンの柔軟性を維持させることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る有歯ケーブルの側面図である。 図2は、本発明の実施形態に係るヤーンの一例を示す拡大断面図である。 図3は、図1の有歯ケーブルの一部拡大側面図である。 図4は、図3の有歯ケーブルの使用状態の一部拡大側面図である。 図5は、本発明の実施形態に係るヤーンの他の例を示す拡大断面図である。 図6は、本発明の実施形態に係る有歯ケーブルと案内部材の摺動音の測定形態を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態に係る有歯ケーブルについて図面を用いて説明する。図1は本発明の実施形態に係る有歯ケーブルの側面図、図2は本発明の実施形態に係るヤーンの一例を示す拡大断面図、図3は図1の有歯ケーブルの一部拡大側面図、図4は図3の有歯ケーブルの使用状態の一部拡大側面図、図5は本発明の実施形態に係るヤーンの他の例を示す拡大断面図、図6は本発明の実施形態に係る有歯ケーブルと案内部材の摺動音の測定状態を示す説明図である。
図1に示すように、コアケーブル1は直径が0.6〜0.8mmの直線状の亜鉛めっき硬鋼線である芯線2と、前記芯線2の上に直径が0.4〜0.6mmの亜鉛めっき硬鋼線6本を巻き付けた下層3と、前記下層3の上に直径が0.4〜0.6mmの亜鉛めっき硬鋼線6本を前記下層3と逆方向へ巻き付けた上層4とから構成されており、前記上層4の上には直径が1.0〜1.2mmの亜鉛めっき硬鋼線であるワイヤ5が2.4〜2.6mmのピッチで前記下層3と同じ方向へ巻き付けられている。
前記ワイヤ5と前記コアケーブル1とにより形成される溝6は、前記ワイヤ5の外表面である側壁部7と、コアケーブル1の外表面である底部8によって螺旋状に構成されており、ここへ後述するヤーン9が巻き付けられる。
ヤーン9は、図2に示すように芯糸9aとパイル9bにより構成されている。芯糸9aとしてはナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、セルロースなどの熱可塑性樹脂繊維を集束させたものが用いられる。パイル9bとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6.10、ナイロン6.12、ポリエステルなどの太さ25〜40μm、長さ1.5〜2.0の繊維が用いられるが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。
前記ヤーン9の製造方法としては、前記芯糸9aに接着剤を塗布し、静電植毛などにより前記芯糸9aへパイル9bを放射状に固定する方法が用いられる。他には、2本の芯糸の間へ芯糸の方向と垂直方向にパイルを配置し、2本の芯糸を撚り合わせることによって芯糸へパイルを固定する方法等の公知の技術を用いることができる(図5参照)。
前記溝6へヤーン9を巻き付けるには、まずコアケーブルおよびワイヤが回転しないように固定したままヤーン9の供給装置を回転させて、芯糸が溝の底部へ接触する程度の張力を付与しながら巻き付ける。ヤーン9を巻き付ける張力は、芯糸とコアケーブルの間に位置したパイルが変形し、図3に示すように芯糸の中心から底面までの間隔Laが、溝へ巻き付ける前の芯糸の中心からパイルの先端までの間隔Lb(図2参照)よりも小さくなるように、また図4に示すようにワイヤ5と歯車11を噛み合わせたときに、歯車11の先端が芯糸9aに接触しないように設定される。このとき、芯糸には溝から離れる方向へ応力が加えられた状態となっている。
次に、その張力を保持したまま、高周波誘導加熱によりヤーンの芯糸が軟化する温度までコアケーブル1およびワイヤ5を加熱すると、芯糸が軟化し、芯糸が溝から離れる方向への応力が取り除かれる。このとき、芯糸は溶融しないため、La<Lbの関係を保持する。なお、パイルに用いる熱可塑性樹脂の融点を芯糸に用いる熱可塑性樹脂の融点をより高く設定すれば、芯糸の軟化時にパイルが溶融することがないため、パイルの柔軟性を維持することができる。
次に、芯糸を自然冷却すると、ヤーンが溝に初めに巻き付けられたときの形状を維持したまま硬化する。これにより、芯糸に加えられた溝から離れる方向への応力のみが取り除かれ、La<Lbの関係でヤーンを溝に確実に保持させることが可能となる。
最後に、連続して製造された有歯ケーブルが所望の長さになるように、切断機を用いてコアケーブル、ワイヤ、ヤーンを一度に切断する。このとき発生する切断機の回転刃と有歯ケーブルの摩擦熱によって切断部のヤーンが溶融し、ヤーンの両端はコアケーブルおよび/またはワイヤに固定される。
このようにして得られた有歯ケーブルは、ワイヤが歯車と噛み合ったときに芯糸が歯車の先端と接触しないため、ヤーンが切損に至ることがない。また、パイルを溝の外側に突出させているため、ヤーンが案内部材の内面と確実に摺動して摺動音を小さくすることができる。また、ヤーンを接着しないため、ヤーンの柔軟性を維持することができる。
前記有歯ケーブルは、適宜湾曲し、前記ワイヤの外径よりも大きい内径を有する金属または合成樹脂製のパイプや、前記ワイヤの外径よりも大きい幅および高さを有する断面U字状のガイド等により構成された案内部材に挿通されることにより、前記案内部材内を移動するケーブル装置として使用できる。
また、前記有歯ケーブルは、その端部を自動車のサンルーフ、ウインドウガラス、シート、スライドドア、二輪車の風防等の移動体に連結することで、歯車の回転運動を移動体の直線運動に変換する移動システムとして使用できるが、前記移動体に限られるものではない。
つぎに、具体的な実施例および比較例を参照して、本発明の有歯ケーブルを説明する。
<実施例1>
直径0.7mmの直線状の亜鉛めっき硬鋼線の芯線の上に直径0.5mmの亜鉛めっき硬鋼線6本を巻き付けて下層とし、その上に直径0.5mmの亜鉛めっき硬鋼線6本を下層と逆方向に巻き付けて上層としたコアケーブルを形成した。さらにそのコアケーブルの上層の上にワイヤとして直径1.2mmの亜鉛めっき硬鋼線をピッチ2.54mmで下層と同じ方向へ巻き付けた。また、ナイロン6製のフィラメントを集束した直径400μmの芯糸に接着剤を塗布し、外径28.6μm、長さ1.8mmのナイロン66製のパイルを芯糸へ静電植毛してヤーンを構成した。ヤーンに張力を付与しながらコアケーブルとワイヤにより形成された溝へ巻き付けたあと、高周波誘導加熱により約160度で約10秒間加熱し、自然冷却して実施例1の有歯ケーブルを得た。
<比較例1>
直径0.68mmの直線状の未めっき硬鋼線の芯線の上に直径0.51mmの未めっき硬鋼線6本を巻き付けて下層とし、その上に直径0.49mmの未めっき硬鋼線6本を下層と逆方向に巻き付けて上層としたコアケーブルを形成した。さらにそのコアケーブルの上層の上にワイヤとして直径1.18mmの亜鉛めっき硬鋼線をピッチ2.50mmで下層と同じ方向へ巻き付けた。また、ナイロン6製のフィラメントを集束した直径380μmの芯糸に接着剤を塗布し、外径47.4μm、長さ1.94mmのナイロン66製のパイルを芯糸へ静電植毛してヤーンを構成した。コアケーブルとワイヤにより形成された溝へ接着剤を塗布し、そこへヤーンに張力を付与しながら巻き付け、接着剤を乾燥させて比較例1の有歯ケーブルを得た。
<比較例2>
直径0.72mmの直線状の未めっき硬鋼線の芯線の上に直径0.53mmの未めっき硬鋼線6本を巻き付けて下層とし、その上に直径0.53mmの未めっき硬鋼線6本を下層と逆方向に巻き付けて上層としたコアケーブルを形成した。さらにそのコアケーブルの上層の上にワイヤとして直径1.2mmの未めっき硬鋼線をピッチ2.60mmで下層と同じ方向へ巻き付けた。また、ナイロン6製のフィラメントを集束した直径334μmの芯糸に接着剤を塗布し、外径30.7μm、長さ1.73mmのナイロン66製のパイルを芯糸へ静電植毛してヤーンを構成した。コアケーブルとワイヤにより形成された溝へ接着剤を塗布し、そこへヤーンに張力を付与しながら巻き付け、接着剤を乾燥させて比較例2の有歯ケーブルを得た。
<実験方法>
実施例1、比較例1および比較例2の有歯ケーブル10を、約20度の環境温度の中で、図6に示すようにR=100mmで90度に湾曲させた内径φ5.2mm、肉厚2.0mmの公知のサンルーフシステム用ポリエチレンテレフタレート製案内部材12に挿通し、有歯ケーブルの一端を100mm/秒の速さで引き操作したときの有歯ケーブルと案内部材内面との摺動音を、案内部材の湾曲部の頂点Pから距離M=300mm離れた位置へ取り付けたマイクロホン13で測定した。その結果を表1に示す。
表1によれば、実施例1と比較例1との摺動音の差は5.4dB、実施例1と比較例2との摺動音の差は3.4dBであり、比較例1および比較例2に比べて実施例1の摺動音が小さくなっていることがわかる。
1 コアケーブル
2 芯線
3 下層
4 上層
5 ワイヤ
6 溝
7 側壁部
8 底部
9 ヤーン
9a 芯糸
9b パイル
10 有歯ケーブル
11 歯車
12 案内部材
13 マイクロホン

Claims (6)

  1. コアケーブルと、
    前記コアケーブルの周囲へ一定のピッチで螺旋状に巻き付けたワイヤと、
    芯糸と前記芯糸に固定されたパイルとを備え、前記コアケーブルと前記ワイヤにより形成された側壁面と底面とを備えた溝へ螺旋状に巻き付けられたヤーンとから構成される有歯ケーブルにおいて、
    前記ヤーンを前記溝へ螺旋状に巻き付けたとき、
    前記パイルは前記側壁面に接するように芯糸から半径外方向に向かって配置され、かつ前記溝の外側へ突出する長さを有しており、
    前記芯糸の中心から前記底面までの間隔は、前記溝へ巻き付ける前の前記芯糸の中心から前記パイルの先端までの間隔よりも小さいことを特徴とする有歯ケーブル。
  2. 前記ヤーンの少なくとも両端部が前記コアケーブルおよび/または前記ワイヤに固定されていることを特徴とする請求項1記載の有歯ケーブル。
  3. コアケーブルと、
    前記コアケーブルの周囲へ一定のピッチで螺旋状に巻き付けたワイヤと、
    芯糸と前記芯糸に固定されたパイルとを備え、前記コアケーブルと前記ワイヤにより形成された側壁面と底面とを備えた溝へ螺旋状に巻き付けられたヤーンとから構成される有歯ケーブルにおいて、
    張力を付与した状態で前記ヤーンを前記溝へ巻き付ける工程と、
    前記張力を保持した状態で加熱して前記芯糸を軟化させる工程と、
    軟化させた前記芯糸を冷却する工程を含む製造方法により得られることを特徴とする有歯ケーブル。
  4. 前記ヤーンは熱可塑性樹脂から成り、前記芯糸の融点が、前記パイルの融点より低いことを特徴とする請求項3記載の有歯ケーブル。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の有歯ケーブルを備えたケーブル装置。
  6. 請求項1から4のいずれか1項に記載の有歯ケーブルを備えた移動体の移動システム。
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