以下、添付図面を参照して本発明の自動変速機の変速制御装置の好適な実施形態を詳細に説明する。本実施形態の自動変速機は、後述するように、1速段にワンウェイクラッチを設けているが、1速ホールドクラッチを設けていない自動変速機である。本発明では、このような自動変速機に手動変速モードを適用するものである。
図1は、本発明の一実施形態における自動変速機の変速制御装置を備えた車両の動力伝達系統および制御系統を概略的に示すブロック図である。車両の動力伝達系統は、動力源であるエンジン1と、エンジン1の回転出力を変速ギヤ機構3に伝達するための流体継手であるトルクコンバータ2と、トルクコンバータ2の回転出力を入力して設定された速度比で変速して出力する変速ギヤ機構3と、変速ギヤ機構3の出力回転を左右の車輪(例えば後輪)5に分配するディファレンシャルギヤ機構4とを含む。トルクコンバータ2および変速ギヤ機構3に付属して油圧制御装置6が設けられており、この油圧制御装置6は、トルクコンバータ2および変速ギヤ機構3内に設けられている油圧制御型の複数の摩擦係合要素(クラッチなど)を所定の組み合わせで締結または解放することにより、トルクコンバータ2のロックアップや、該変速ギヤ機構3における入出力速度比を所要の変速段に設定することを行う。車両の自動変速機は、これらのトルクコンバータ2、変速ギヤ機構3、油圧制御装置6などによって構成される。
車両の動力伝達系統を制御するための制御系統は、車両の各部に設けられたセンサと、該各センサの出力が入力される電子制御ユニット(ECU)10と、該電子制御ユニット10によって制御される油圧制御装置6などで構成される。回転センサ11はトルクコンバータ2の入力軸の回転数(エンジン回転数)Neを検出し、回転センサ12は変速ギヤ機構3の入力軸の回転数Niを検出し、回転センサ13は変速ギヤ機構3の出力軸の回転数Noを検出し、車速センサ14は車速Nvを検出する。なお、車速Nvを専用に検出する車速センサ14を設けることなく、入力軸回転数Niまたは出力軸回転数Noから車速Nvを算出するようにしてもよい。例えば、「Nv=Ni×変速レシオ×タイヤ周長」あるいは「Nv=No×タイヤ周長」のような関係式に基づいて車速Nvを検出(算出)することができる。
シフトレバーポジションセンサ15は、運転者によって操作されるシフトレバー31のポジションを検出する。シフトレバー31のポジションには、公知のように、例えば、P(パーキング)、R(後進走行)、N(ニュートラル)、D(自動変速モードでの前進走行)などがあり、さらに、3速、2速、1速等の特定の変速段を手動で指定するためのポジションが設けられてもよい。本実施形態では、図2に示すように、1速〜3速等のポジションやシフトレバー31により手動変速制御を入力するための+および−ポジションは設けられておらず、自動変速機においてマニュアルライクな走行を可能にするS(スポーツ)レンジが設けられている。図2は、シフト装置30の概略的な上面図である。本発明に係る自動変速機の変速制御装置では、ステアリング21近傍に設けられたパドルスイッチ20を利用して手動変速モードにおける制御を行うものである。ここで、自動変速モードとは、設定すべき変速段を車両の走行状態に基づいて判断して自動的に変速動作を行うモードであり、手動変速モードとは、運転者の手動操作によって指示された変速動作を行うモードである。
なお、図示を省略するが、車両の運転席のフロントパネルに設けられたメータ部には、シフトポジションセンサ15により検出された現在のシフトレバー31のポジションに対応するセグメントランプが点灯するように構成される。このセグメントランプには、シフトレバー31の各ポジションP、R、N、D、S等とともに、後述するパドルスイッチ20により手動変速モード(Dパドル制御モードまたはSパドル制御モード)が設定されている場合には、現在設定されている変速段が示される。
ブレーキセンサ16は、運転者によりブレーキペダルが所定量以上踏み込まれるとブレーキがかけられたことを検出する。スロットルセンサ17は、アクセルペダルの踏み込みに応じて開度が設定されるエンジン1のスロットルの開度(スロットル開度)THを検出する。アクセルペダルセンサ22は、アクセルペダルの踏み込みに応じたアクセルペダル開度APATを検出する。ATF温度センサ18は、油圧制御装置6における作動油の温度(ATF油温)TATFを検出する。冷却水温センサ19は、エンジン冷却液の温度(冷却水温)を検出する。また、車輪速センサ24は、車両の各車輪5の車輪速度Nwを検出する。なお、図1では後輪の1輪にのみ車輪速センサ24を示したが、車輪速センサ24は4輪すべてにそれぞれ設けられている。
また、パドルスイッチ20は、手動変速モードでシフトダウンを指示するための−(マイナス)パドルスイッチ20aと、手動変速モードでシフトアップを指示するための+(プラス)パドルスイッチ20bとから構成される。各パドルスイッチ20a、20bは、図2に示すように、例えば、車両のステアリング(ハンドル)21のグリップ部分の近傍の裏側に設けられる。図2は、パドルスイッチ20(−パドルスイッチ20aおよび+パドルスイッチ20b)が設けられたステアリング31の正面図である。なお、運転者がパドルスイッチ20を容易に操作することができる限り、この−および+パドルスイッチ20aおよび20bは、ステアリング21と一体的に回転するように構成されてもよく、ステアリング21の回転とは無関係にステアリング21のロッド部分(操舵軸:図示せず)に固定されていてもよい。
なお、本実施形態の自動変速機の変速制御装置では、後述するように、Dレンジでのパドルによる手動変速モード(以下、「Dパドル制御モード」という)と、Sレンジでのパドルによる手動変速モード(以下、「Sパドル制御モード」という)とを行うことができる。運転者は、所望により、自動変速制御および手動変速制御(Dパドル制御モードまたはSパドル制御モード)において、Dレンジのノーマルモード(通常運転パターン)とSレンジのスポーツモード(スポーツ運転パターン)とを切り替えることができる。後述するように、ノーマルモードの手動変速モード(Dパドル制御モード)では、手動変速モードで走行中に所定の条件が満たされると、手動変速モードから自動変速モードに変速モードが切り替えられるような制御が行われる。一方、スポーツモードでの手動変速モード(Sパドル制御モード)では、オーバーレブ(エンジン1が高回転状態)やアンダーレブ(エンジン1が低回転状態)等の異常走行状態を除き、原則的に運転者のパドルスイッチ20の操作に応じて手動変速がなされるように制御される。このように、スポーツモードでは、ノーマルモードに比べ、発進、加速等の走行性能(走り)を重視した自動変速マップに基づいて変速制御が行われる。
なお、図示していないが、電子制御ユニット10には、後述する自動変速モードや手動変速モードにおける各種処理を実行するために、所定の時間を計時するためのタイマや各データを一時的に保存するメモリ等が設けられる。
図1に示した車両の動力伝達系統および制御系統の具体的構成は、公知の構成を適宜採用することによりなされればよい。本発明に係る自動変速機の変速制御装置は、電子制御ユニット10に含まれるものであり、該電子制御ユニット10が実現可能な種々の制御機能のうちの一つとして実施される。以下述べる実施形態においては、本発明に係る自動変速機の変速制御装置は、電子制御ユニット10が具備するコンピュータプログラムによって実行されるものとする。しかしながら、本発明に係る自動変速機の制御装置は、このようなコンピュータプログラムに限らず、専用の電子回路ハードウェアで構成することができるのは勿論である。
次に、本実施形態の変速ギヤ機構3の構成を説明する。図4は、図1に示す変速ギヤ機構3の構成を概略的に示すスケルトン図である。本実施形態の変速ギヤ機構3は、上述のように、油圧制御装置6内の図示しないオイルポンプにより発生された油圧を制御することにより変速制御がなされる前進6速および後進1速の平行軸式の変速機構である。変速ギヤ機構3は、トルクコンバータ2を介してエンジン1のクランクシャフト1aに接続されたメインシャフト(第1入力軸)61と、複数のギヤ列を介してこのメインシャフト61に接続されたセカンダリシャフト(第2入力軸)62、サードシャフト(第3入力軸)63およびカウンタシャフト(出力軸)64とを備える。なお、メインシャフト61、セカンダリシャフト62、サードシャフト63およびカウンタシャフト64は互いに平行に配置されている。また、変速ギヤ機構3は、それぞれ湿式多板クラッチである1速〜6速クラッチC1〜C6を備えている。
メインシャフト61上には、3速ドライブギヤ73と、6速ドライブギヤ76とが回転可能に取り付けられる。また、メインシャフト61には4速ドライブギヤ74と噛み合うギヤ77が固定的に取り付けられる。3速クラッチC3を係合すると、3速ドライブギヤ73はメインシャフト61に対して固定される。同様に、6速クラッチC6を係合すると、6速ドライブギヤ76はメインシャフトに対して固定される。
セカンダリシャフト62上には、1速ドライブギヤ71と、2速ドライブギヤ72と、5速ドライブギヤ75とが回転可能に取り付けられている。また、セカンダリシャフト62にはギヤ87が固定的に取り付けられる。1速(LOW)クラッチC1を係合すると、1速ドライブギヤ71はセカンダリシャフト62に対して固定される。2速クラッチC2を係合すると、2速ドライブギヤ72はセカンダリシャフト62に対して固定される。また、5速クラッチC5を係合すると、5速ドライブギヤ75セカンダリシャフト62に対して固定される。
サードシャフト63上には、4速ドライブギヤ74と、6速ドライブギヤ76と噛み合うギヤ78と、リバースギヤ79とが回転可能に取り付けられる。4速クラッチC4を係合すると、4速ドライブギヤ74はサードシャフト63に対して固定され、ギヤ77を介してメインシャフト61の回転駆動がサードシャフト63に伝達される。また、ギヤ78およびリバースギヤ79は、図において左右に移動可能なドグ歯機構を利用したリバースセレクタ80によりサードシャフト63に対して選択的に固定される。
カウンタシャフト64には、第1〜第3ドリブンギヤ81、82、83と、ファイナルドライブギヤ84が固定的に取り付けられている。第1ドリブンギヤ81は1速ドライブギヤ71と噛み合っており、第2ドリブンギヤ82は2速ドライブギヤ72および3速ドライブギヤ73と噛み合っており、第3ドリブンギヤ83は5速ドライブギヤ75および6速ドライブギヤと噛み合っている。また、ファイナルドライブギヤ84はディファレンシャルギヤ機構4に連結されたファイナルドリブンギヤ85と噛み合っている。
第1ドリブンギヤ81は、ワンウェイクラッチCWを介してカウンタシャフト64に接続される。このような構成の変速ギヤ機構3において、1速クラッチC1を係合させて1速ドライブギヤ71をセカンダリシャフト62に係合させると、メインシャフト61の回転駆動は、ギヤ77、アイドルギヤ86、ギヤ87、1速ドライブギヤ71および第1ドリブンギヤ81からなる1速ギヤ列を介してカウンタシャフト64に伝達される。このようにして1速段が設定される。1速クラッチC1を結合させて設定された1速段では、第1ドリブンギヤ81がワンウェイクラッチCWを介してカウンタシャフト64に結合されるため、アクセルをオフにしたときにワンウェイクラッチCWが滑ること(ニュートラル状態)により車速Nvが急激に減速しないようになっている。
なお、本実施形態の変速ギヤ機構3では、従来のようにワンウェイクラッチCWに対応して1速ホールドクラッチが設けられていない。このため、1速段では所定の条件下においては減速駆動力(エンジンブレーキ)を作動させることができない。
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態の自動変速機の変速制御装置の全体フローを説明する。図5は、本発明の自動変速機の変速制御装置の変速段決定シーケンスの全体フローを示すフローチャートである。この全体フローは車両の走行中に所定の時間毎に行われる。
まず、電子制御ユニット10は、登降坂判定を実行する(ステップS1)。すなわち、電子制御ユニット10は、車速Nvとエンジン負荷(スロットル開度TH)とに基づいて電子制御ユニット10のメモリ内に記憶されたマップ上の規範加速度を特定し、特定した規範加速度と実加速度との差に応じて、登降坂度合い(勾配)を推定する。ここで、電子制御ユニット10は、実加速度と規範加速度が概略一致するときは車両が平坦路を走行していると判定し、実加速度が規範加速度を超えるときには車両が降坂路を走行していると判定し、実加速度が規範加速度よりも小さいときには車両が登坂路を走行していると判定する。このように規範加速度と実加速度とを比較することにより、傾斜センサを用いることなく車両走行路の登降坂判定を行うことができる。
次いで、電子制御ユニット10は、路面μ判定処理を実行する(ステップS2)。すなわち、電子制御ユニット10は、車速センサ14により検出された車速Nv、車輪速センサ24により検出された各車輪5の車輪速度Nw、アクセルペダルセンサ22により検出されたアクセルペダル開度APAT、シフトレバーポジションセンサ15により検出されたシフトレバー31のポジション(レバー操作)、ステップS1において推定された登降坂度合い(推定勾配)等に基づいて、路面のμ状態を判断する。
次いで、電子制御ユニット10は、シフトマップ選択処理を実行する(ステップS3)。すなわち、電子制御ユニット10は、自動変速機において現在設定されている変速段、上記登降坂度合い、アクセル操作、ブレーキセンサ16により検出されたブレーキ操作等に基づいて、メモリ内に記憶されている複数種類のシフトマップから走行路に適したシフトマップを選択する。
次いで、電子制御ユニット10は、変速段決定処理を実行する(ステップS4)。すなわち、電子制御ユニット10は、ステップS3において選択されたシフトマップを基準にして、シフトレバー31の操作や変速禁止条件などを加味して、最終の変速段を決定する。
次いで、電子制御ユニット10は、クラッチ圧制御処理を実行する(ステップS5)。すなわち、電子制御ユニット10は、油圧制御装置6を制御することにより、ステップS4において決定された変速段に基づいて、この変速段のクラッチ圧を制御して、最終の変速段を締結させるように油圧制御装置6を制御する。
次いで、電子制御ユニット10は、Fi協調制御処理を実行する(ステップS6)。すなわち、電子制御ユニット10は、最終の変速段の設定時に、エンジン1の制御と強調して、入力トルクを制御する。
次いで、電子制御ユニット10は、LC領域判断処理を実行する(ステップS7)。すなわち、電子制御ユニット10は、ステップS1において推定された登降坂度合い、ステップS4において決定された最終変速段、アクセル操作、ブレーキ操作等に基づいて、トルクコンバータ2のLC(ロックアップ)制御を決定する。このLC制御の決定としては、スロットルセンサ17により検出されたスロットル開度THと車速センサ14により検出された車速Nvとに基づいて、ロックアップ可能領域であるかを判断し、その判断結果に応じて、LCをOFFにするか、スリップ制御(加速または減速)にするか、タイト制御にするかなどが決定される。
最後に、電子制御ユニット10は、LC圧制御処理を実行する(ステップS8)。すなわち、電子制御ユニット10は、ステップS7において判断されたLC制御に基づいて、油圧制御装置6において設定されるLC油圧を制御する。このLC圧制御処理を終えると、電子制御ユニット10は、変速段決定シーケンスの全体フローを終了し、次の処理を実行するタイミングまで待機する。
ここで、本発明の自動変速機の変速制御装置は、Dパドル制御モードまたはSパドル制御モードにおいて、1速段または2速段からパドルスイッチ20によりシフトアップやシフトダウンを行う際に、ワンウェイクラッチCWがニュートラル領域であるか否かに基づいて、シフトアップまたはシフトダウンすべきか否かを決定する点に特徴を有する。以下、本発明の特徴的な制御について説明する。
まず、−パドル操作時の処理について説明する。図6は、−パドル操作時の処理を示すフローチャートである。この処理はエンジン1がONの状態において(エンジン1の駆動中に)所定の時間間隔(インターバル)で実行される。電子制御ユニット10は、現在Dパドル制御モードにて自動変速機(変速ギヤ機構3および油圧制御装置6)を制御中であるか否か(ステップS101)、あるいはSパドル制御モードにて制御中であるか否か(ステップS102)を判断する。いずれのパドル制御モードの制御も実行中でない場合には、電子制御ユニット10は本処理を終了する。
一方、Dパドル制御モードまたはSパドル制御モードにて自動変速機を制御中であると判断した場合には、続いて、電子制御ユニット10は、運転者により−パドルスイッチ20aが操作されたか否か(−パドルスイッチ20aの操作があったか否か)を判断する(ステップS103)。−パドルスイッチ20aの操作がないと判断した場合には、電子制御ユニット10はそのまま本処理を終了する。
−パドルスイッチ20aの操作があったと判断した場合には、電子制御ユニット10は、油圧制御装置6への変速指令に基づいて、変速ギヤ機構3において現在設定されているのが1速段であるか否かを判断する(ステップS104)。現在1速段が設定されていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、図示しないメモリに設定されているフラグ等に基づいて、変速ギヤ機構3に1速ホールドクラッチ(LOWホールドクラッチ:LHC)がないか否かを判断する(ステップS106)。1速ホールドクラッチを備えていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、変速ギヤ機構3を1速段のままとして(ステップS108)、この処理を終了する。
一方、1速ホールドクラッチがないと判断した場合には(本実施形態では、このように判断される)、電子制御ユニット10は、ワンウェイクラッチCWが空回りをしているようなニュートラル領域であるか否かを判断する(ステップS107)。ワンウェイクラッチCWがニュートラル領域ではないと判断した場合には、1速段においても減速駆動力を発揮することができるため、電子制御ユニット10は、変速ギヤ機構3を1速段のままとして(ステップS108)、この処理を終了する。また、ワンウェイクラッチCWがニュートラル領域である(例えば、−パドルスイッチ20aを操作した際にアクセルペダルを踏み込んでいない状態)と判断した場合には、電子制御ユニット10は、運転者に減速をする意志があるものとみなし、変速ギヤ機構3の変速段を1速段から2速段に切り替えて(ステップS109)、この処理を終了する。このように、運転者が車両を減速させたいものであると判断した場合には、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態のときには2速段に切り替えることによりエンジンブレーキ感を出す(減速駆動力を発揮する)ことができる。
一方、ステップS104において、現在1速段が設定されていないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、続いて、変速ギヤ機構3において現在設定されているのが2速段であるか否かを判断する(ステップS105)。現在2速段が設定されていないと判断した場合には、3速段以上の変速段が設定されている状態であり、減速駆動力の問題が生じないため、電子制御ユニット10はそのままこの処理を終了する。
ステップS105において、現在2速段が設定されていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、図示しないメモリに設定されているフラグ等に基づいて、変速ギヤ機構3に1速ホールドクラッチ(LOWホールドクラッチ:LHC)がないか否かを判断する(ステップS110)。1速ホールドクラッチを備えていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、1速段においても減速駆動力を発揮することができるので、変速ギヤ機構3を2速段から1速段にダウンシフトして(ステップS112)、この処理を終了する。
一方、ステップS110において、1速ホールドクラッチがないと判断した場合には(本実施形態では、このように判断される)、電子制御ユニット10は、ワンウェイクラッチCWが空回りをしているようなニュートラル領域であるか否かを判断する(ステップS111)。ワンウェイクラッチCWがニュートラル領域ではないと判断した場合には、1速段においても減速駆動力を発揮することができるため、電子制御ユニット10は、変速ギヤ機構3を2速段から1速段にダウンシフトして(ステップS112)、この処理を終了する。また、ワンウェイクラッチCWがニュートラル領域である(例えば、−パドルスイッチ20aを操作した際にアクセルペダルを踏み込んでいない状態)と判断した場合には、電子制御ユニット10は、運転者に減速をする意志があるものとみなし、変速ギヤ機構3の変速段を2速段のままにして(ステップS113)、この処理を終了する。このように、運転者が車両を減速させたいものであると判断した場合には、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態のときには2速段のままとすることによりエンジンブレーキ感を出す(減速駆動力を発揮する)ことができる。
次に、Dパドル制御解除処理について説明する。図7は、Dパドル制御解除処理を示すフローチャートである。このDパドル制御解除処理もエンジン1の駆動時に所定のインターバルで実行される。
まず、電子制御ユニット10は、現在Dパドル制御モードにて自動変速機(変速ギヤ機構3および油圧制御装置6)を制御中であるか否かを判断し(ステップS201)、Dパドル制御モードで制御中でないと判断した場合には、電子制御ユニット10はこのDパドル制御解除処理を終了する。一方、Dパドル制御モードにて制御中であると判断した場合には、上述の全体フローにおけるステップS1において推定された登降坂度合い(推定勾配)に応じたDレンジマップを決定(選択)する(ステップS202。ステップS3参照)。
次いで、電子制御ユニット10は、油圧制御装置6への変速指令に基づいて、変速ギヤ機構3において現在設定されているのが1速段であるか否かを判断する(ステップS203)。現在1速段に設定されていないと判断した場合には、電子制御ユニット10はこのDパドル制御解除処理を終了する。
一方、現在1速段が設定されていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、図示しないメモリに設定されているフラグ等に基づいて、変速ギヤ機構3に1速ホールドクラッチ(LOWホールドクラッチ:LHC)がないか否かを判断する(ステップS204)。1速ホールドクラッチを備えていると判断した場合には、処理フローはステップS206に移行する。
1速ホールドクラッチがないと判断した場合には(本実施形態では、このように判断される)、電子制御ユニット10は、ワンウェイクラッチCWが空回りをしているようなニュートラル領域であるか否かを判断する(ステップS205)。ワンウェイクラッチCWがニュートラル領域ではないと判断した場合には、処理フローはステップS206に移行する。ワンウェイクラッチCWがニュートラル領域であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、Dパドル制御モードを解除して(ステップS208)、このDパドル制御解除処理を終了する。
ステップS206において、電子制御ユニット10は、車速センサ14により検出された現在の車速NvがDレンジ1−2アップ車速以上であるか否かを判断する。ここで、本実施形態に係る1速段走行時におけるDパドル制御モードのシフトマップを従来の制御と比較しつつ説明する。図8は、1速段走行時におけるDパドル制御モードのシフトマップ(アクセルペダル開度APATと車速Nvとの関係を示すグラフ)であり、図8(a)は従来の制御を示し、図8(b)は本実施形態の制御を示す。
従来の1速段走行時におけるDパドル制御では、図8(a)において、Dレンジ2−1キックダウン線およびDレンジ1−2アップ線に囲まれた領域<1>は、パドルスイッチ20の+パドルスイッチ20bの操作により1速段から2速段へのアップシフトが許可された領域である。したがって、現在のアクセルペダル開度APATおよび車速Nvから得られるシフトマップ上のポイントが領域<1>に存在する場合、電子制御ユニット10は、+パドルスイッチ20bによるアップシフト操作を受け付け、油圧制御装置6を制御して、1速段から2速段に切り替える。
Dレンジ1−2アップ線よりも高車速域である領域<2>では、従来、運転者が+パドルスイッチ20bを操作した場合であっても、電子制御ユニット10はクルーズ判定を行った後でなければ2速段にアップシフトを行わなかった。
本実施形態のアップシフト制御では、領域<2>内に1−2アップ線を設け、1−2アップ線よりも高車速側の領域(一部、低アクセルペダル開度APAT領域を含む)<3>では、電子制御ユニット10は、従来のクルーズ判定を行うことなく、即座に1速段から2速段にアップシフトさせるものである。この領域<3>は、ワンウェイクラッチCWのニュートラル領域であり、この領域<3>において2速段に設定されることにより、減速駆動力を確保することができる。
図7のフローチャートに戻って、ステップS206において、車速NvがDレンジ1−2アップ車速以上ではないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、Dパドル制御モードを解除することなく、このDパドル制御解除処理を終了する。
一方、車速NvがDレンジ1−2アップ車速以上であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、上述のように車両がクルーズ状態にあるか否かを判断する(ステップS207)。車両がクルーズ状態ではないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、Dパドル制御モードを解除することなく、このDパドル制御解除処理を終了する。車両がクルーズ状態であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、Dパドル制御モードを解除して(ステップS208)、このDパドル制御解除処理を終了する。
次に、Sパドル制御モード中における自動1−2アップシフト処理について説明する。図9は、Sパドル制御モード中における自動1−2アップシフト処理(以下、「Sパドル自動1−2アップシフト処理」という)を示すフローチャートである。このSパドル自動1−2アップシフト処理もエンジン1の駆動時に所定のインターバルで実行される。
まず、電子制御ユニット10は、現在Sパドル制御モードにて自動変速機(変速ギヤ機構3および油圧制御装置6)を制御中であるか否かを判断し(ステップS301)、Sパドル制御モードで制御中でないと判断した場合には、電子制御ユニット10はこのSパドル自動1−2アップシフト処理を終了する。
一方、Sパドル制御モードで制御中であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、油圧制御装置6への変速指令に基づいて、変速ギヤ機構3において現在設定されているのが1速段であるか否かを判断する(ステップS302)。現在1速段に設定されていないと判断した場合には、電子制御ユニット10はこのSパドル自動1−2アップシフト処理を終了する。
現在1速段が設定されていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、図示しないメモリに設定されているフラグ等に基づいて、変速ギヤ機構3に1速ホールドクラッチ(LOWホールドクラッチ:LHC)がないか否かを判断する(ステップS303)。1速ホールドクラッチを備えていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、1速段から2速段にアップシフトすることなく、1速段を保持したまま(ステップS306)、このSパドル自動1−2アップシフト処理を終了する。
一方、1速ホールドクラッチがないと判断した場合には(本実施形態では、このように判断される)、電子制御ユニット10は、上述の全体フローにおけるステップS1において推定された登降坂度合い(推定勾配)に応じたDレンジマップを決定(選択)する(ステップS304。ステップS3参照)。
次いで、電子制御ユニット10は、車速センサ14により検出された現在の車速NvがDレンジ1−2アップ車速以上であるか否かを判断する(ステップS305)。ここで、本実施形態に係る1速段走行時におけるSパドル制御モードのシフトマップを従来の制御と比較しつつ説明する。図10は、1速段走行時におけるSパドル制御モードのシフトマップ(アクセルペダル開度APATと車速Nvとの関係を示すグラフ)であり、図10(a)は従来の制御を示し、図10(b)は本実施形態の制御を示す。
従来の1速段走行時におけるSパドル制御では、図10(a)に示すように、Sパドル2−1自動ダウンシフト線のみが設けられ、このSパドル自動ダウンシフト線よりも低車速側の領域では、Sパドル制御モードに設定されている場合であっても、電子制御ユニット10は、運転者のパドルスイッチ20の操作にかかわらず、2速段から1速段に自動で切り替える(ダウンシフトする)。一方、Sパドル2−1自動ダウンシフト線よりも高車速側の領域<1>は、+パドルスイッチ20bの操作により1速段から2速段へのアップシフトが許可された領域である。したがって、現在のアクセルペダル開度APATおよび車速Nvから得られるシフトマップ上のポイントが領域<1>に存在する場合、電子制御ユニット10は、+パドルスイッチ20bによるアップシフト操作を受け付け、油圧制御装置6を制御して、1速段から2速段に切り替える。
本実施形態のアップシフト制御では、Sパドル制御モードにおいて自動的に2速段から1速段へダウンシフトすることなく(すなわち、Sパドル2−1自動ダウン線を設けず)、シフトマップにDレンジ2−1キックダウン線(図8参照)を設けている。このDレンジ2−1キックダウン線よりも低車速側では、Sパドル制御モード中においても、アクセルペダルの踏み込みにより1速段へのキックダウンを可能としている。
また、図9のステップS304において決定される推定勾配に応じたDレンジマップに基づいて、Dレンジ1−2自動アップシフト線(推定勾配により図10(b)の矢印の間で変化)が設けられる。そして、Dレンジ2−1キックダウン線とDレンジ1−2自動シフトアップ線の間の領域<1>では、従来の制御と同様に、+パドルスイッチ20bの操作により、1速段から2速段へのアップシフトが許可される。また、Dレンジ1−2自動シフトアップ線よりも高車速側の領域(一部、低アクセルペダル開度APAT領域を含む)<2>では、Sパドル制御モードであっても、電子制御ユニット10は、1速段から2速段にアップシフトさせるものである。
図9のフローチャートに戻って、ステップS305において、車速NvがDレンジ1−2アップ車速以上ではないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、自動的に2速段へのアップシフトを実行することなく、1速段のまま(ステップS306)、このSパドル自動1−2アップシフト処理を終了する。
一方、車速NvがDレンジ1−2アップ車速以上であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、そのポイントが図10の領域<2>に含まれることになるので、自動で2速段へのアップシフトを実行し(ステップS307)、このSパドル自動1−2アップシフト処理を終了する。
次に、Sパドル制御モード中における2−1キックダウン許可処理について説明する。図11は、Sパドル制御モード中における2−1キックダウン許可処理(以下、「Sパドル2−1キックダウン許可処理」という)を示すフローチャートである。このSパドル2−1キックダウン許可処理もエンジン1の駆動時に所定のインターバルで実行される。
まず、電子制御ユニット10は、現在Sパドル制御モードにて自動変速機(変速ギヤ機構3および油圧制御装置6)を制御中であるか否かを判断し(ステップS401)、Sパドル制御モードで制御中でないと判断した場合には、電子制御ユニット10はこのSパドル2−1キックダウン許可処理を終了する。
一方、Sパドル制御モードで制御中であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、油圧制御装置6への変速指令に基づいて、変速ギヤ機構3において現在設定されているのが2速段であるか否かを判断する(ステップS402)。現在2速段に設定されていないと判断した場合には、電子制御ユニット10はこのSパドル2−1キックダウン許可処理を終了する。
現在2速段が設定されていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、図示しないメモリに設定されているフラグ等に基づいて、変速ギヤ機構3に1速ホールドクラッチ(LOWホールドクラッチ:LHC)がないか否かを判断する(ステップS403)。1速ホールドクラッチを備えていると判断した場合には、処理フローはステップS406に移行する。
一方、1速ホールドクラッチがないと判断した場合には(本実施形態では、このように判断される)、電子制御ユニット10は、上述の全体フローにおけるステップS1において推定された登降坂度合い(推定勾配)に応じたDレンジマップを決定(選択)する(ステップS404。ステップS3参照)。
次いで、電子制御ユニット10は、ステップS404において取得した推定勾配が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS405)。推定勾配が所定値以上であると判断した場合には、処理フローはステップS409に移行し、推定勾配が所定値以上ではないと判断した場合には、処理フローはステップS406に移行する。
ステップS406において、電子制御ユニット10は、車速センサ14により検出された現在の車速NvがSパドル2−1自動ダウン車速以下であるか否かを判断する。車速NvがSパドル2−1自動ダウン車速以下ではないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、2速段から1速段にダウンシフトすることなく、2速段を保持したまま(ステップS408)、このSパドル2−1キックダウン許可処理を終了する。
一方、車速NvがSパドル2−1自動ダウン車速以下であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、運転者のパドルスイッチ20の操作にかかわらず、2速段から1速段に自動で切り替え(ステップS407)、このSパドル2−1キックダウン許可処理を終了する。
また、ステップS409において、電子制御ユニット10は、車速センサ14により検出された車速NvがDレンジ2−1キックダウン車速以下であるか否かを判断する。車速NvがDレンジ2−1キックダウン車速以下ではないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、2速段から1速段にダウンシフトすることなく、2速段を保持したまま(ステップS410)、このSパドル2−1キックダウン許可処理を終了する。
一方、車速NvがDレンジ2−1キックダウン車速以下であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、運転者のパドルスイッチ20の操作にかかわらず、2速段から1速段に自動で切り替え(ステップS411)、このSパドル2−1キックダウン許可処理を終了する。
ここで、本実施形態に係る2速段走行時におけるSパドル制御モードのシフトマップを従来の制御と比較しつつ説明する。図12は、2速段走行時におけるSパドル制御モードのシフトマップ(アクセルペダル開度APATと車速Nvとの関係を示すグラフ)であり、図12(a)は従来の制御を示し、図12(b)は本実施形態の制御を示す。
従来の2速段走行時におけるSパドル制御では、図12(a)に示すように、Sパドル2−1自動ダウンシフト線と、2−1ダウン禁止線とが設けられる。Sパドル2−1自動ダウンシフト線よりも低車速側の領域では、Sパドル制御モードに設定されている場合であっても、電子制御ユニット10は、運転者のパドルスイッチ20の操作にかかわらず、2速段から1速段に自動で切り替えられる(ダウンシフトする)。Sパドル2−1自動ダウンシフト線と2−1ダウン禁止線との間の領域<1>は、−パドルスイッチ20aの操作により2速段から1速段へのダウンシフトが許可された領域である。また、2−1ダウン禁止線よりも高車速側の領域<2>は、−パドルスイッチ20aの操作にかかわらず、2速段から1速段へのダウンシフトが禁止された領域である。これは、1速段にダウンシフトしたことにより、エンジン1の回転がオーバーレブ(REV:過回転)となってしまうのを防止するためである。
本実施形態のSパドル制御モードのダウンシフト制御では、従来のSパドル2−1自動ダウンシフト線と2−1ダウン禁止線との間の領域<1>内に、図12(b)に示すように、新たに2つの領域<3>、<4>を設けている。領域<2>、2−1ダウン禁止線およびSパドル2−1自動ダウン線(平坦路〜中登坂)に囲まれた領域<3>は、低アクセルペダル開度APAT領域であるため、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態となる領域であり、減速駆動力を発揮させるために1速段へのダウンシフトを禁止するものである。
また、Sパドル2−1自動ダウン線(平坦路〜中登坂)およびDレンジ2−1キックダウン線(推定勾配により変化:中登坂〜重登坂)に囲まれた領域<4>は、高アクセルペダル開度APAT領域であり、電子制御ユニット10は、アクセルペダルの所定以上の踏み込みにより、1速段へキックダウンを行う。なお、Dレンジ2−1キックダウン線は、中登坂(中程度の勾配がある傾斜面)以上の坂を車両が登坂する場合に、上述した全体フローのステップS1において推定された推定勾配に応じて図12(b)の矢印のように領域が変化するものである。
ここで、本実施形態に係る2速段走行時におけるDパドル制御モードのシフトマップを従来の制御と比較しつつ説明する。図13は、2速段走行時におけるDパドル制御モードのシフトマップ(アクセルペダル開度APATと車速Nvとの関係を示すグラフ)であり、図13(a)は従来の制御を示し、図13(b)は本実施形態の制御を示す。
従来の2速段走行時におけるDパドル制御では、図13(a)に示すように、Dレンジ2−1キックダウン線よりも高アクセルペダル開度APATの領域<1>は、アクセルペダルを踏み込むにより2速段から1速段にキックダウンする領域である。Dレンジ2−1キックダウン線と2−1ダウン禁止線とで囲まれた領域<2>は、−パドルスイッチ20aの操作により2速段から1速段へのダウンシフトが許可された領域である。
また、2−1ダウン禁止線よりも高車速側の領域<3>は、−パドルスイッチ20aの操作にかかわらず、2速段から1速段へのダウンシフトが禁止された領域である。これは、上記2速段走行時におけるSパドル制御モードと同様に、1速段にダウンシフトしたことにより、エンジン1の回転がオーバーレブ(REV:過回転)となってしまうのを防止するためである。
本実施形態のDパドル制御モードのダウンシフト制御では、従来の領域<2>内に、新たに領域<4>を設けている。2−1ダウン禁止線、パドルダウン禁止領域<3>およびDレンジ2−1キックダウン線に囲まれた領域<4>は、低アクセルペダル開度APAT領域であるため、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態となる領域であり、減速駆動力を発揮させるために1速段へのダウンシフトを禁止するものである。
最後に、Dパドル制御モードおよびSパドル制御モードにおける制御作動イメージを図14および図15のタイミングチャートを参照しつつ説明する。図14は、Dパドル制御モード中における登降坂時の制御状態を示すタイミングチャートである。図15は、Sパドル制御モード中における登降坂時の制御状態を示すタイミングチャートである。
まず、Dパドル制御モードにおける制御作動イメージを説明する。車両は最初勾配0%の平坦路面を走行している。アクセルペダル開度APATが徐々に大きくなるにつれて、車両の車速Nvが0km/hから徐々に増加する。時間Aのタイミングで運転者が+パドルスイッチ20bを操作することにより、変速段が1速段から2速段にアップシフトする。その後、車両が上り坂に差しかかり、運転者がアクセルペダルを踏み込むことにより、2−1キックダウンが行われ、変速段は2速段から1速段にダウンシフトする。登り坂は勾配7%であるため、登坂中に1速段からアップシフトすることがない。
坂を上り切って今度は下り坂(降坂)に差しかかると、時間Cのタイミングでアクセルペダルを戻すことにより、自動で1速段から2速段にアップシフトする。降坂時には減速駆動力を確保するために、1速段へのダウンシフトは行われない。なお、このとき、例えば、運転席前面のメータ部には「−パドルスイッチ20aの操作による2速段から1速段へのダウンシフトが禁止されていることを示すインジケータ(警報ランプ等)が点灯されればよい。勾配5%の下り坂を降りると、平坦路面を走行しているため、クルーズ走行状態と判定され、上記インジケータが消灯されればよい。
また、時間Eのタイミングでアクセルペダルを踏み込んでいる状態において−パドルスイッチ20aを操作することにより、変速段は2速段から1速段にダウンシフトされるが、時間Fのタイミングでアクセルペダルが戻されたことにより、変速段は1速段から2速段にアップシフトされる。
以上のように、Dパドル制御モードでは、1速段にワンウェイクラッチCWが設けられているため、1速段による減速駆動力が得られない。そのため、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態となる領域では2速段にアップシフトすることにより、あるいは1速段へのダウンシフトを禁止することにより、減速駆動力を確保することができる。
また、1速段で走行中において、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態となる領域で運転者により−パドルスイッチ20aが操作された場合には、運転者に車両を減速させたいとの意志があるものとみなし、1速段から2速段にアップシフトして、減速駆動力を発揮させればよい。
さらに、1速段による走行時にワンウェイクラッチCWがニュートラル状態となる領域では、Dパドル制御モードを解除して、2速段にアップシフトするようにしてもよい。
これに対し、Sパドル制御モードでは、Dパドル制御モードと同様に、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態となる領域では2速段にアップシフトすることにより、あるいは1速段へのダウンシフトを禁止することにより、減速駆動力を確保すればよい。なお、図15に示すように、Sパドル制御モードでは、平坦路においてキックダウンをすることはない。
また、1速段で走行中において、ワンウェイクラッチCWがニュートラル状態となる領域で運転者により−パドルスイッチ20aが操作された場合には、Dパドル制御モードと同様に、運転者に車両を減速させたいとの意志があるものとみなし、1速段から2速段にアップシフトして、減速駆動力を発揮させればよい。
さらに、Sパドル制御モードであっても、1速段で走行中にDレンジ1−2アップ線(推定勾配に応じて変化)に従って自動的に2速段にアップシフトを行ってもよい。2速段で走行中に、平坦路や緩勾配登坂路ではアクセルペダルを踏み込むことによるキックダウンを禁止するとともに、急勾配登坂路(例えば、約7%以上の勾配)ではDレンジ2−1ダウン線(推定勾配に応じて変化)に従ってキックダウンが行われてもよい。
以上説明したように、本発明の自動変速機の変速制御装置(電子制御ユニット10、変速ギヤ機構3および油圧制御装置6)は、1速段(1速(LOW)クラッチ)から2速段(2速クラッチ)に変速する際、1速段(LOWクラッチC1)に対応して配置されたワンウェイクラッチCWが空転されることで変速を行う自動変速機の変速制御装置であって、設定すべき変速段もしくは変速比を走行状態に基づいて判断して変速動作を行う自動変速モードと、運転者の手動操作によって指示された変速動作を行う手動変速モード(Dパドル制御モードやSパドル制御モード)との間で変速モードの設定を切替可能な自動変速機の変速制御装置において、変速モードがDパドル制御モードまたはSパドル制御モードに設定されているときに、ワンウェイクラッチCWが空転するニュートラル状態である場合には、運転者の手動操作により2速段(2速クラッチC2)から1速段(1速クラッチC1)に変速する変速指令が出力されたとしても、該変速動作を禁止することとした。このように構成することにより、減速駆動力を必要とする際に1速段をホールドする1速ホールドクラッチが設けられていない自動変速機においても、1速段にダウンシフトすることを禁止しているので、2速段を利用して減速駆動力を確保することができる。
また、本発明の自動変速機の変速制御装置では、第1の変速段から第2の変速段に変速する際、第1の変速段に配置されたワンウェイクラッチが空転されることで変速を行う自動変速機の変速制御装置であって、設定すべき変速段もしくは変速比を走行状態に基づいて判断して変速動作を行う自動変速モードと、運転者の手動操作によって指示された変速動作を行う手動変速モードとを備え、これらのモードを切替可能な自動変速機の変速制御装置であって、手動変速モードは、運転者が手動変速レンジのシフトポジション(位置)を選択してアップシフトスイッチまたはダウンシフトスイッチを操作することにより指示された変速動作を行う第1手動変速モードと、運転者が自動変速レンジのシフトポジション(位置)を選択してアップシフトスイッチまたはダウンシフトスイッチを操作することにより指示された変速動作を行う第2手動変速モードとを含み、変速制御装置は、車両のクルーズ状態を判定して、第1手動変速モードから自動変速モードに変更する変速モード変更手段を備え、第1手動変速モードの第1の変速段にあって所定の運転領域にある場合には第1手動変速も度から自動変速モードに変更するようにしてもよい。
以上、本発明の自動変速機の変速制御装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は、これらの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書および図面に記載のない形状・構造・機能を有するものであっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。すなわち、自動変速機の変速制御装置を構成する電子制御ユニット10、変速ギヤ機構3および油圧制御装置6の各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。