JP2010247399A - スポット溶接性に優れた樹脂塗装亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

スポット溶接性に優れた樹脂塗装亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】OA機器等をスポット溶接によって組み立てるに際して、良好な通電性と、連続打点におけるナゲット径の安定性を達成することのできるようなクロメートフリーの樹脂塗装亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】冷延鋼板の表面に亜鉛めっき皮膜が形成され、更に亜鉛めっき皮膜上に樹脂皮膜が形成された樹脂塗装亜鉛めっき鋼板であって、前記冷延鋼板表面の粗さ曲線におけるクルトシス(Rku)が3.0以下であり、且つ前記粗さ曲線において、2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=0.5μm)が300以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、亜鉛めっき鋼板の表面に樹脂皮膜を形成した樹脂塗装亜鉛めっき鋼板に関するものであり、特に樹脂皮膜の存在にも拘わらず、スポット溶接性に優れたものとした樹脂塗装亜鉛めっき鋼板に関するものである。
従来、家電、自動車、建材等の分野において、亜鉛めっき鋼板が広く使用されている。これらの用途に用いられる亜鉛めっき鋼板には、耐食性、耐指紋性、塗膜密着性等を向上させるため、亜鉛めっき層表面にクロメート処理を施した後、膜厚1μm前後の樹脂系皮膜が塗装されてきた。
近年では、環境負荷抑制の観点から、6価クロムの使用を削減する動きがあり、亜鉛めっき鋼板の表面に膜厚1μm前後の樹脂系皮膜を直接塗装したり、或はクロメートフリー下地を介して塗装するクロメートフリー処理が開発されてきた。
一方、家電分野におけるOA機器等においては、シャーシの組み立て工程でスポット溶接を行う場合があり、高い生産性を確保するためには、安定した連続打点性が要求される。しかしながら、樹脂系の皮膜は絶縁物であるため、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板表面の通電性が阻害され、スポット溶接の際に通電不良を起こすことがある。
また、シャーシを溶接によって組み立てる場合には、例えばコの字型に成型した樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の端部7〜8mm部分を溶接代として直角に折り曲げ、同様の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の平板部にスポット溶接にて固定するが、ナゲット[溶接部に形成され、溶接金属(鋼板)が碁石状に溶融凝固した部分]が溶接代からはみ出さず、且つ強度が確保できる最小サイズを維持するため、連続打点においては、そのサイズの均一性が要求される。
各元素の融点(Fe:約1500℃、Zn:約420℃)や沸点(Fe:約2900℃、Zn:約900℃)を考慮すると、ナゲット形成過程で鋼板表面の樹脂や亜鉛めっきは排除され、ナゲットは、下地となる鋼板の成分のみで構成されることになるが、樹脂や亜鉛めっきの排除が円滑に行なわれないと、ナゲットの形成が不安定なものとなる。
これまでにも、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の通電性を改善する技術について、様々提案されている。例えば、特許文献1には、有機樹脂皮膜中にNi粉を含有させることによって、通電点を確保した樹脂塗装鋼板が提案されている。また特許文献2には、表面に一定の山カウント数RPVCを有する鋼板にZn系めっきと特定膜厚の有機樹脂皮膜を形成することによって、通電性を確保した有機樹脂被覆鋼板が提案されている。更に、特許文献3には、めっき鋼板表面の凸部の高さ、密度、傾斜度合いと皮膜の被覆率を規定した表面処理金属材が開示されている。
しかしながら、これらの技術では、通電性の改善については開示されているが、溶接性については、基準となるナゲット径に至るまでの連続打点数で評価されているのみであり、ナゲット径の安定性については考慮されていない。
一方、特許文献4には、樹脂の分解温度、付着量、鋼板表面の最大粗さ等を規定した複合被覆鋼板が開示されている。また特許文献5には、鋼板表面のRa(算術平均粗さ)と有機樹脂被膜厚との関係、および1インチ当りの山の数PPIを規定した塗装鋼板が開示されている。これらの技術では、通電路を確保し、発熱により樹脂を分解あるいは融解除去できることが示されている。
しかしながら、これらの技術においても、通電性の改善および樹脂の除去については開示されているものの、溶接性については、基準となるナゲット径に至るまでの連続打点数や、スパーク・軽溶着の発生数、溶接可能電流範囲等で評価されているのみであり、ナゲット径の安定性については開示されていない。
溶接時における亜鉛めっきの排除について考慮した技術としては、めっき除去後の鋼板のRaを規定した亜鉛めっき鋼板(特許文献6)や、亜鉛めっき鋼板表面および鋼板表面のRaを規定した亜鉛めっき鋼板(特許文献7)等が提案されている。
しかしながらこれらの技術では、樹脂塗装が施された場合については開示されておらず、しかも特許文献6の技術は溶接方法が基本的に異なり、また特許文献7における溶接性は、基準となるナゲット径に至るまでの連続打点数で評価されているのみで、その径の安定性については開示されていない。
特開平4−71840号公報 特開2002−363766号公報 特開2005−139551号公報 特開平9−41157号公報 特開平3−79341号公報 特開平1−123091号公報 特開2005−240109号公報
本発明は上述のような事情に着目してなされたもので、その目的は、OA機器等をスポット溶接によって組み立てるに際して、良好な通電性と、連続打点におけるナゲット径の安定性を達成することのできるようなクロメートフリーの樹脂塗装亜鉛めっき鋼板を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板とは、冷延鋼板の表面に亜鉛めっき皮膜が形成され、更に亜鉛めっき皮膜上に樹脂皮膜が形成された樹脂塗装亜鉛めっき鋼板であって、前記冷延鋼板表面の粗さ曲線におけるクルトシス(Rku)が3.0以下であり、且つ前記粗さ曲線において、2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=0.5μm)が300以上である点に要旨を有するものである。尚、「亜鉛めっき皮膜上」とは、亜鉛めっき鋼板の表面に樹脂皮膜を直接塗装する場合、およびクロメートフリー下地を介して樹脂皮膜を塗装する場合の両方を含む趣旨である。
本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板においては、樹脂皮膜の平均膜厚が0.8μm以下であり、且つ前記樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の粗さ曲線において、2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=2.54μm)が50以上であることが好ましい。また、前記樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の0.2%耐力σが250MPa以下であることも実施態様である。
本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板となる冷延鋼板表面の粗さ曲線におけるクルトシス(Rku)や2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=0.5μm)を適切に規定することによって、連続打点におけるナゲット径の安定性を達成することができ、このような特性を発揮する樹脂塗装亜鉛めっき鋼板はOA機器等の構成素材として有用である。
PPIの概念を説明するための図である。 Rkuの概念を説明するための図である。
本発明者は、樹脂皮膜が形成された樹脂塗装亜鉛めっき鋼板について、良好なスポット溶接性、特に連続打点におけるナゲット径の安定性を達成するべく、様々な角度から検討を進めた。その結果、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の樹脂被膜および亜鉛めっきを除去した鋼板(冷延鋼板)の細かい凹凸の数値[ピークカウントレベル2H=0.5μm(20μin.)の1インチ当りの山数:PPI]、および凹凸の形状を特徴づける尖り度(クルトシス:Rku)を適切に制御することによって、良好なスポット溶接性が得られることを見出し、本発明を完成した。
ここで、上記PPIとは、SAE J911−1986(アメリカ自動車技術規格)に定められる方法に準じて測定される値で、表面性状の指標となるものである。このPPIは、図1に示すように、粗さ曲線Z(x)の平均線から、正(+)、負(−)の両方向に夫々一定レベルHを設け(正負間の基準レベルの幅=2H)、負の基準レベル(−H、谷部分、図1中a)を超えて正の基準レベル(+H、山部分、図1中b)を超えたときを「1カウント」としたとき、2.54cm(1インチ)当りのカウント数(山−谷カウントの数)をいう。ここで、上記正負間の基準レベルの幅(2H)はピークカウントレベルと呼ばれ、本発明では、2H=0.5μm(20μin.)または2.54μm(100μin.)を採用した。
一方、上記クルトシス(Rku)とは、JIS B0601(ISO 4287:1997)の規定に準じて測定される値であり、基準長さlrにおける粗さ曲線(山の高さ)Z(x)の四乗平均を、粗さ曲線の二乗平均平方根粗さRqの四乗(下記式(II))で割ることで算出される値である(下記式(I))。
このクルトシス(Rku)値は、粗さ曲線における確率密度関数の分布の尖り度を表し、Rkuが3のとき、正規分布であることを示す。また、Rku値が大きい程、粗さ曲線を形成するピーク(山または谷)が尖った形状であることを示しており、Rkuが小さくなる程、そのピークがなだらかで高さが揃っていることを示す(図2参照)。
冷延鋼板表面のPPIやRkuを適切に制御することによって、スポット溶接性(特に、連続打点におけるナゲット径の安定性)が良好になる原理については、その全てを解明し得た訳ではないが、次の様に考えることができた。
スポット溶接は、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板同士を2枚重ね、これを外側から溶接用電極で挟み付けて通電し、通電部分を発熱させて鋼板を融解溶着させることにより実施されるものである。この際、鋼板間に存在する樹脂皮膜および亜鉛めっきは液化し、更にはガス化し、ナゲット形成前に鋼板間から抜ける必要があり、これが不十分であると、一部、非溶着部分が発生してナゲット径のばらつきの原因となる。
樹脂塗装亜鉛めっき鋼板同士の通電点(凸部)に電気が流れて発熱が始まった際、まず樹脂の変質(炭化)およびガス化、次に亜鉛の液化およびガス化が起こるものと推定されるが、これらは電極による鋼板間の押し付け圧力および体積膨張によって、鋼板間の微細な隙間を通って、ナゲット形成部の外に排出される。続いて、凸部のFeの融解が始まって鋼板同士の間隔が狭まり、次に高さの低い凸部同士が接触して融解すると、順に接触、融解が起こって鋼板の間隔が狭まり、ナゲット形成に至るものと考えられる。
この際、初期の通電に資する高い凸部のみで、これより低位の凸部が不足すると、鋼板の間隔が狭まっても、新たな通電点が形成されず、なお暫くは同じ凸部での発熱が続くことになり、鋼板表面凹部の温度上昇が、既に凸部から通電されている鋼板内部よりも遅れることになる。従って、凹部においても、周囲の熱で、徐々に樹脂や亜鉛の液化、ガス化は進むと思われるが、通電部より遅れるため、外部へのガスの排出が不十分となって最終的にナゲットに残存し、ナゲット形成不良を引き起こすものと思われる。
これに対し、冷延鋼板の表面に細かい凸部が多数存在すると、初期の通電部が融解して鋼板の間隔が狭まった際、周囲の熱で樹脂の変質やガス化は進んでいるため、次々と通電点が確保され、冷延鋼板表面での発熱が面方向へ円滑に進行することになる。従って、樹脂や亜鉛の液化、ガス化も速やかに進行し、これに加えて、細かい凹凸が排出経路となり、鋼板間の押し付け圧力を受けて、ガスはナゲット形成部の外に速やかに排出される。これらの理由によって、冷延鋼板表面の細かい凹凸(2H=0.5μm(20μin.)の1インチ当りの山谷カウント数PPI)が多数必要になるものと考える。
上記の効果を発揮させるためには、冷延鋼板表面のPPI値は300以上とする必要あり、好ましくは320以上である。このPPI値の上限は特に限定されないが、生産性や鋼板の機械的特性等の観点から、400以下であるのが好ましい。
一方、クルトシス(Rku)が大きくなると、切れ込みが鋭い凹部が多くなって、亜鉛や樹脂の炭化物等が残存し易くなり、ナゲット形成不良を引き起こし易くなるものと思われる。こうした観点から、冷延鋼板表面のクルトシス(Rku)は3.0以下とする必要がある。
樹脂塗装亜鉛めっき鋼板をスポット溶接する場合には、当該鋼板同士を通電する必要があり、スポット溶接性を良好にするための要件として、少なくとも通電性が良好であることも必要である。通電性を良好にする要件について、本発明者が検討したところ、(a)樹脂皮膜の平均膜厚を0.8μm以下とすること、(b)前記樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の粗さ曲線において、2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=2.54μm)が50以上であること、等の要件を満足させることが有効であることが判明した。
本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板における樹脂皮膜は、上記の観点からして平均膜厚が0.8μm以下であるのが好ましい。より好ましくは0.7μm以下である。但し、樹脂皮膜が薄すぎる場合には、樹脂皮膜を設けることによる効果(耐食性、装飾性、耐指紋性)が得られ難くなる場合があるので、0.3μm以上であることが好ましい。
樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の通電性には、粗さ曲線において、2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=2.54μm)が相関し、PPIを所定値以上(50以上)確保することが有効である。これは、樹脂皮膜は絶縁物であり、通常これを亜鉛めっき表面に塗装すると通電性は劣化するが、亜鉛めっき鋼板表面の凸部の樹脂皮膜は薄くなり、スポット溶接用電極や樹脂塗装亜鉛めっき鋼板同士を押し付け接触させた場合、この凸部の絶縁性が破壊されて通電性が確保されることになる。
樹脂皮膜のPPIにおけるピークカウントレベルについては、これまで殆ど着目されていないが、本発明者が検討したところによれば、樹脂皮膜厚が0.8μm以下の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板では、ピークカウントレベル2H=2.54μmでのPPIを指標とし、これを制御することで、良好な通電性が確保できることが判明したのである。
ピークカウントレベル2H=2.54μmとすることが、通電性に良好な結果を与える理由については、次のように考えることができた。樹脂皮膜を亜鉛めっき鋼板上に塗装する場合、一般的には、液体を亜鉛めっき鋼板上に塗布して水分・溶剤を蒸発させるが、乾燥皮膜の大部分は下地の亜鉛めっき鋼板の粗さに沿って形成されるものの、その一部は乾燥過程でレベリングするため、下地の亜鉛めっき鋼板の凹凸は若干緩和されることになる。
本発明者が実験によって確認したところによれば、樹脂皮膜が1μm以下となる場合には、皮膜塗装前・後でほぼ同数のPPIになるのは、皮膜塗装後のピークカウントレベル2Hに対し、皮膜塗装前では10%程度大きな2Hであることを確認している。これによって、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板表面のピークカウントレベル2H=2.54μmの凹凸は、塗装前には2H=2.8μm程度であったと推察され、亜鉛めっき鋼板表面の凹凸を三角波と仮定し、樹脂が完全にレベリングして凹みが全て樹脂で埋まる平均皮膜厚が理論的には1.4μmと計算される。樹脂皮膜の厚さが1μm程度では、ピークカウントレベル2H=2.0μm程度と計算されるが、実際は前述の如く、樹脂皮膜は下地の粗度に追随するため、計算値以上のピークカウントレベル2Hが必要であり、本発明では塗装前の2H=2.8μm、即ち塗装後の亜鉛めっき鋼板において、ピークカウントレベル2H=2.54μm(100μin.)を採用することが適切であると判断できた。
本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板、および冷延鋼板の表面粗さ特性を上記のように制御する方法としては、所定のPPIを有する様に放電ダル加工したロールを用い、冷間圧延後に焼鈍された冷延鋼板の表面を調質圧延するのが好ましい。上記放電ダル加工ロールは、鋼板表面に細かい多数の凹凸を付与でき、また冷延鋼板表面のRkuを適切に制御できることになる。
具体的には、放電ダル加工ロールとしては、Ra≧1μm、PPI(ピークカウントレベル2H=0.5μm)≧300、PPI(ピークカウントレベル2H=2.54μm)≧170のものを用いることが好ましい。また、調質圧延を行う鋼板を冷間圧延により製造する際に、冷間圧延の最終スタンドにおいては、Ra≧1μm、PPI(ピークカウントレベル2H=0.5μm)≧150、PPI(ピークカウントレベル2H=2.54μm)≧100のロールを用い、圧下率1.5%以上の冷間圧延を行うことが好ましい。
これは、焼鈍された調質圧延前の鋼板表面にある程度のPPIが付与されていないと、放電ダル加工ロールによる調質圧延によっても、所定のPPIを付与できないためである。また、調質圧延だけで所定のPPIを達成するべく、ロール表面を鋼板表面に過剰に転写するには、圧下率を上げる必要があり、耐力が高くなり過ぎる可能性があるからである。
尚、上記圧下率は、圧延前の鋼板に、ある長さで印を入れ、圧延後に、再度、この印間の長さを測定して下式にて算出したものである。
圧下率=[(圧延後の長さ)−(圧延前の長さ)]/(圧延前の長さ)×100(%)
上記のようにして調質圧延されて表面性状が調整された冷延鋼板は、その表面に亜鉛めきが施されるが、この亜鉛めっきとしては、鋼板表面にめっき層が鋼板表面の凹凸にほぼ沿う様にして形成される電気亜鉛めっきであることが好ましい。例えば、水平搬送鋼板を挟む上下に設けられた金属製コンダクターロールおよびゴム製バックアップロールとの組からなる通電部を備える、水平型電気めっき装置を通板され、アルカリスクラバー脱脂、電解脱脂、水洗、硫酸酸洗を施された後、亜鉛めっき浴中で陰極電解処理、水洗されて電気亜鉛めっきが形成される。このときの亜鉛めっきの付着量は、例えば、40g/m2以下とするのが好ましく、より好ましくは30g/m2以下である。特に、電気亜鉛めっき鋼板の場合は、通常20g/m2とするのが一般的である。めっき付着量の下限は特に限定されないが、耐食性の面からは、5g/m2であることが好ましく、10g/m2であることがより好ましい。
上記のようにして得られる亜鉛めっき鋼板は、その亜鉛めっき上に樹脂皮膜が形成されるが、このとき用いる樹脂皮膜としては、従来、樹脂塗装金属板の樹脂皮膜として用いられているものはいずれも使用できる。具体的には、本発明に係る樹脂皮膜を構成する主成分となるベース樹脂としては、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アミノプラスト系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
本発明に係る樹脂皮膜としては、上記ベース樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂のエマルジョン組成物から形成されるものが好ましい。好ましいポリオレフィン系樹脂エマルジョン組成物としては、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体(中和状態も含む)を主成分とし、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボキシル基1モルに対して0.2〜0.8モル(20〜80モル%)に相当する沸点100℃以下のアミンと、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボキシル基1モルに対して0.02〜0.4モル(2〜40モル%)に相当する1価の金属の化合物とを含むと共に、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する架橋剤をエマルジョン組成物の固形分100質量%に対し0.5〜20質量%含み、沸点100℃超のアミンおよびアンモニアは、実質的に含まないものが好ましい。
エマルジョン組成物の調製には、1価の金属イオンも用いられる。耐溶剤性や皮膜硬度の向上に効果的である。1価の金属の化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含むことが好ましく、これらの金属の水酸化物、炭酸化物または酸化物が好ましい。中でも、NaOH、KOH、LiOH等が好ましく、NaOHが最も性能が良く好ましい。
この1価の金属の化合物の量は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対して、0.02〜0.4モル(2〜40モル%)の範囲とする。上記金属化合物量が0.02モルより少ないと乳化安定性が不充分となるが、0.4モルを超えると、得られる樹脂皮膜の吸湿性(特にアルカリ性溶液に対して)が増大し、脱脂工程後の耐食性が劣化することがあるため好ましくない。より好ましい金属化合物量の下限は0.03モル、さらに好ましい下限は0.1モルであり、より好ましい金属化合物量の上限は0.3モル、さらに好ましい上限は0.2モルである。
上記アミン類と上記1価の金属化合物のそれぞれの使用量の好ましい範囲は上記したとおりであるが、これらはいずれもエチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基を中和してエマルジョン化するために用いられる。従って、これらの合計量(中和量)が多すぎると、エマルジョン組成物の粘度が急激に上昇して固化することがある上に、過剰なアルカリ分は耐食性劣化の原因となるため、揮発させるために多大なエネルギーが必要となるため好ましくない。しかし、中和量が少なすぎると乳化性に劣るため、やはり好ましくない。従って、上記アミン類と上記1価の金属化合物の合計使用量は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対し、0.3〜1.0モルの範囲とすることが好ましい。
上記アミン類と1価の金属イオンによるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体の中和工程(エマルジョン化工程)では、沸点100℃以下のアミンと1価の金属の化合物とを略同時に共重合体へと添加するか、沸点100℃以下のアミンを先に添加することが望ましい。理由は定かではないが、沸点100℃以下のアミンを後添加すると、耐食性の向上効果が不充分となることがあるためである。
上記エマルジョン組成物には、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する架橋剤が配合される。上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体を化学的に架橋させ、皮膜強度の向上を図るためである。架橋剤量は、エマルジョン組成物中の固形分100質量%のうち、1〜20質量%(より好ましくは5〜10質量%)とするのが好ましい。1質量%より少ないと、化学結合による架橋の効果が不充分となり、耐食性の向上効果が発揮されにくい。一方、20質量%を超えて配合すると、樹脂皮膜の架橋密度が過度に高くなりすぎて硬度が上昇し、プレス加工などを施す場合に金属板の変形に追従できなくなることからクラックが発生し、その結果耐食性や塗装性を低下させる場合があるため好ましくない。尚、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体に対する架橋剤量の比率としては、共重合体中のカルボキシル基量に応じて架橋剤量を適宜変更することが望まれるが、通常、共重合体100質量部に対し、架橋剤を0.5〜50質量部(より好ましくは5〜20質量部)とすることが好ましい。
カルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤としては特に限定されないが、ソルビトールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類や、ポリグリシジルアミン類等のグリシジル基含有架橋剤;4,4’−ビス(エチレンイミンカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トルエンビスアジリジンカルボキシアミド等の2官能アジリジン化合物;トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、トリス〔1−(2−メチル)アジリジニル〕ホスフィンオキサイド、トリメチロールプロパントリス(β−アジリジニルプロピオネート)、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、テトラメチルプロパンテトラアジリジニルプロピオネート等の3官能以上のアジリジン化合物あるいはこれらの誘導体等のアジリジニル基含有架橋剤が好適例として挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。中でも、アジリジニル基含有架橋剤が好ましい。尚、多官能アジリジンと、1官能アジリジン(エチレンイミン等)を併用してもよい。
また、上記樹脂皮膜に無機微粒子が含まれているもの(有機無機複合皮膜)は、本発明の好ましい実施態様である。一般に、スポット溶接用電極は主にCuよりなり、連続打点において、Znめっきと合金化して劣化すると言われているが、無機微粒子を含有させることによって、こうした劣化を抑制できるものと考えられる。
上記で用いる好ましい無機微粒子としては、シリカ(二酸化ケイ素)、Caイオン交換シリカ、Al,Ti,Ce,Sb,Zr,Fe,Sn,Mg,Ca,Znなどの酸化物・水酸化物、リン酸、硫酸、硝酸、炭酸等のAl,Mn,Mg,Ca、Ni等の金属塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、バナジン酸塩、リンモリブデン酸塩などが挙げられる。これらの無機微粒子は、レーザー回折法(散乱式)で測定される50%体積平均粒子径が1〜100nmであるのが好ましい。より好ましくは2〜20nmである。上記無機微粒子の量は、樹脂皮膜中5〜80質量%であるのが好ましい。無機微粒子量が少ない場合には、無機微粒子の添加による効果が得られ難い場合があり、一方、多すぎる場合には、皮膜中の樹脂量が相対的に減少するため、皮膜に亀裂が入り易くなる傾向がある。より好ましくは10〜75質量%であり、更に好ましくは20〜70質量%である。
上記原料組成物を金属板に塗布する方法は特に限定されず、バーコーター法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等が採用可能である。塗布後には乾燥を行うが、架橋剤を添加する場合には、架橋剤が反応し得る温度で加熱乾燥を行うことが好ましい。具体的には、40〜250℃で、1〜60秒程度加熱乾燥を行うとよい。
上記のような樹脂塗装亜鉛めっき鋼板を用いてスポット溶接することによって、スポット溶接性が良好なものとなるが(その前提として良好な通電性が得られている)、その効果をより一層高めるためには、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の耐力(0.2%耐力)を一定以下にすることが好ましい。即ち、スポット溶接するに際して、通電性の確保、液化、ガス化した樹脂、亜鉛の排出、Fe同士の融着のためには、溶接用途電極によって樹脂塗装亜鉛めっき鋼板同士を十分に押し付ける必要があるが、鋼板表面は常に平坦とは限らないため、溶接電極で挟み付けた際に、耐力が大きいと反発力が大きくなって鋼板同士の接触が不十分となる場合がある。これを防止するという観点から、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の0.2%耐力σは250MPa以下とすることが好ましい。
上記のように耐力を制御するためには、素地鋼板となる冷延鋼板の化学成分組成も適切なものを選ぶことが好ましい。こうした観点からして、本発明で用いる冷延鋼板の化学成分組成は、C:0.030〜0.060%(質量%の意味、化学成分組成については以下同じ)、Si:0.03%以下(0%を含まない)、Mn:0.15〜0.25%、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.020%以下(0%を含まない)、sol.Al:0.030〜0.060%、Cr:0.04〜0.10%、N:0.0040〜0.0080%(残部:鉄および不可避不純物)であることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適切に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
(実験例1)
下記表1に化学成分組成を示す低炭素Alキルド鋼を、厚み0.5mmとなるように冷間圧延した後、脱脂、洗浄し、630〜670℃でバッチ焼鈍を行ない、下記表2に示した各条件で調質圧延を行った。このとき使用した圧延ロールのPPI(ピークカウントレベル2H=0.5μmおよび2.54μm)およびロール加工条件についても表2に併せて示す。尚、冷間圧延の最終スタンドでの圧延は、下記表3に示した3種類(A〜C)の条件で行なった。
次いで、調質圧延後の鋼板を、水平型の電気めっき装置に通し、下記の工程で電気亜鉛めっきを行った。亜鉛めっき付着量は後述する方法で測定し、その結果を表2に示した。
(電気亜鉛めっき)
(i)アルカリスクラバー脱脂工程:3%オルソ珪酸ナトリウム水溶液を用いて、60℃で鋼板表面の脱脂を行った。
(ii)電解脱脂,水洗工程:3%オルソ珪酸ナトリウム水溶液を用いて、60℃、20A/dm2で鋼板表面の電解脱脂を行った後、水洗した。
(iii)酸洗,水洗工程:5%硫酸水溶液を用いて常温で鋼板を酸洗した後、水洗した。
(iv)電気亜鉛めっき,水洗工程:電気亜鉛めっきは、以下のめっき液組成および条件に従って実施し、その後、水洗した。
めっき液組成:ZnSO4・7H2O 300〜400g/L、Na2SO4 50〜100g/L、H2SO4 25〜35g/L
電流密度:50〜200A/dm2
めっき液温度:60℃
めっき液流速:0.8〜2.4m/sec
得られた亜鉛めっき鋼板の表面に、引き続いて、有機無機複合皮膜処理液をロールコート法にて塗布した後、水分を蒸発させた。乾燥後の平均皮膜厚さを下記の方法によって測定した。その測定結果も、下記表2に示す。このとき用いた有機無機複合皮膜処理液の調整および乾燥条件を以下に示す。
(有機無機複合皮膜処理液の調製)
水626質量部(以下、単に「部」とする)と、エチレン−アクリル酸共重合体(アクリル酸20質量%、メルトインデックス(MI)300)160部とを加え、上記エチレン−アクリル酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対して、40モル%のトリエチルアミンと、15モル%のNaOHを含有するエチレン−アクリル酸共重合体のエマルジョンを得た。次いで、このエマルジョンに、架橋剤として4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン(「ケミタイト(登録商標)DZ−22E」;株式会社日本触媒製)を固形分で5質量%(エマルジョン組成物の固形分を100質量%とする、以下同様。)と、グリシジル基含有化合物(「デナコール(登録商標)EX−321L」(以下、「EX−321L」と略す);ナガセケムテックス株式会社製)を固形分で5質量%、粒子径10〜20nmのシリカ粒子(「スノーテックス40」;日産化学工業社株式会社製)を固形分で30質量%、軟化点120℃,平均粒径1μmの球形ポリエチレンワックス(「ケミパール(登録商標)W−700」;三井化学株式会社製)を固形分で5質量%となる様に配合して攪拌し、エマルジョン組成物(処理液B)を調整した。得られたエマルジョン組成物の固形分は15質量%であった。
乾燥条件:得られたエマルジョン組成物を、電気亜鉛めっき、水洗工程後の鋼板にロールコート法により塗布した後、風温200℃、風速53m/sec、乾燥時間1〜2秒、の条件で乾燥し、鋼板上に、有機無機複合皮膜を形成した。
得られた各樹脂塗装亜鉛めっき鋼板について、以下の評価方法に従って評価し、結果を表2に示した。また冷延鋼板の表面性状(PPI,Rku)についても評価した。
[評価方法]
(1)PPI
PPIは、SAE(Society of Automotive Engineers)J911−1986に準拠して測定した。尚、ピークカウントレベル2H=0.5μmまたは2.54μmとした(冷延鋼板の場合は、2H=0.5μm)。測定には、表面粗さ形状測定器(「サーフコム1400A−3DF」;株式会社東京精密製)を用いた。尚、調質圧延時に使用したロール表面のPPI測定には、小型表面粗さ測定器(「サーフテスト SJ−301」;株式会社ミツトヨ製)を用いた。測定は、カットオフ値:0.8mm、触針先端半径R:2μm(触針部分を球とみなす)、測定長さ:25.4mm(ロールの場合は、測定長さを4mmとし、得られた値を、測定長さ25.4mmとした場合の値に換算した。)の条件で行った。尚、測定場所は、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板表面および冷延鋼板の夫々の同一方向に2箇所、当該方向と垂直な方向に2箇所(ロールの場合は幅方向のみ)とし、その平均値を算出した。
(2)クルトシス(Rku)
クルトシス(Rku)は、JIS B0601(ISO 4287:1997)の規定に従って測定した。測定装置としては、PPIの測定と同様、表面粗さ形状測定機(「サーフコム1400−3DF」、株式会社東京精密製)を用いた。測定条件は、カットオフ値0.8mm、触針先端半径R:2μm(触針部分を球と見なす)、測定長さ:25.4mmとした。また、測定場所は、冷延鋼板の同一方向に2箇所、当該方向と垂直な方向に2箇所とし、その平均値を算出し、冷延鋼板表面のRkuとした。
(3)亜鉛めっき付着量
蛍光X線分析装置(「MIF−2100」;株式会社島津製作所製)を用い、冷間圧延鋼板上の亜鉛めっき付着量を測定した。亜鉛めっき付着量の測定にあたっては、予め、亜鉛量と蛍光X線強度との関係を表す検量線を作成しておき、この検量線に基づき、亜鉛めっき付着量を決定した。
(4)樹脂皮膜の平均厚さ
皮膜中に含まれるシリカ粒子(二酸化ケイ素)に由来するSi付着量を蛍光X線分析法により測定した。蛍光X線分析装置としては、株式会社島津製作所製の「MIF−2100」を用いた。Si付着量の測定に当たっては、予め、Si量と蛍光X線強度との関係を表す検量線を作成しておき、この検量線に基づいて皮膜中のSi付着量を決定した。得られたSi含有量(蛍光X線値)の値を基に、比重換算を行って樹脂皮膜の質量を算出し、平均厚さt(μm)を求めた。具体的な換算方法は、以下の通りである。
[Si/SiO2]=28/60
SiO2の質量比率=0.3
樹脂皮膜の比重は、以下の方法によって、単位面積当りの皮膜質量を膜厚で除することにより求めた。まず、SUS304−BAに有機無機複合皮膜処理液を塗布して乾燥した後、20mm×20mmの樹脂塗装SUS板を切り出し、皮膜表面にAu蒸着を行い、当該樹脂皮膜塗装SUS板の切断面が露出するように樹脂に埋め込み、樹脂塗装SUS板の切断面を研磨して測定サンプルを調製した。次いで、加速電圧:20kV、倍率:5000倍でサンプル表層断面」のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、写真から樹脂皮膜の膜厚を測定した。このときの写真撮影は、任意の3箇所で行い、膜厚の測定は1つの写真について任意の3箇所で行い(即ち、計9箇所)、これらから算出される平均値を膜厚とした。一方、100mm×100mmの樹脂塗装SUS板を切り出し、樹脂皮膜を皮膜剥離材(「ネオリバ−SP−751」 三彩化工社製)にて剥離し、剥離前・後の質量差より、100mm×100mm当りの皮膜質量を求めた。
(5)スポット溶接性の評価
下記表2に記した樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の同種を2枚重ね、上側F(凸)型(元径:16mm、先端径:8mm)、下側DR型(元径:18mm、先端径:8mm)のCu−1%Cr製の電極(スポット溶接用電極)を用い、加圧力:1960N、通電時間:12サイクル(60Hz)、溶接電流:7kAの条件にて連続打点を行い、ナゲット径が3.54mmよりも小さくなった場合を溶接打点の限界とした。尚、ナゲット径は100打点毎にその最小径と最大径を測定し、その平均値を採用した。また、100打点ごとに測定したナゲット径の標準偏差を求め、スポット溶接性として、下記表4に示した基準でスポット溶接性を評価した。
表2〜4から、次のように考察できる。まず試験No.1〜7の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板は、いずれも本発明で規定する要件を満足しており、良好なスポット溶接性を示していることが分かる。特に、試験No.1〜5のものでは、本発明の好ましい要件をも満足するものであり、スポット溶接性が極めて良好になっていることが分かる。
これに対して、No.8〜10の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板では、Rkuが3.0を超えており、鋼板表面の凹部の切れ込みが鋭くなりすぎるため、樹脂、Znの排出が阻害され、良好なスポット溶接性が得られていないものと考えられる。No.11の例は、Rku値は満足するが、凸部の個数が少ないため(PPI値が300未満)、樹脂、Znの排出が十分でなく、良好なスポット溶接性が得られなかったものと考えられる。
(実施例2)
下記表5に化学成分組成を示す低炭素Alキルド鋼を、厚みが0.5mmとなるように冷間圧延した後、脱脂、洗浄、焼鈍し、下記表5に併記した条件でバッチ焼鈍を行った。次いで、下記表6に示した条件で調質圧延を行った。尚、冷間圧延の最終スタンドでの圧延(冷間加工条件)は、前記表3と同様である。
上記で得られた各冷延鋼板について、実施例1と同様にして、電気亜鉛めっきを形成し、更にその上に樹脂皮膜を形成して樹脂塗装亜鉛めっき鋼板を得た。
得られた各樹脂塗装亜鉛めっき鋼板について、JIS Z 2241に従って、永久伸びが0.2%になったときの耐力(0.2%耐力σ)を測定すると共に、亜鉛めっき付着量、PPI、膜厚、およびスポット溶接性について、実施例1と同等にして測定若しくは評価した。その結果を、下記表6に併記する。
この結果から明らかなように、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の0.2%耐力を250MPa以下とすることは、優れたスポット溶接性を得るために有効であることが分かる。

Claims (3)

  1. 冷延鋼板の表面に亜鉛めっき皮膜が形成され、更に亜鉛めっき皮膜上に樹脂皮膜が形成された樹脂塗装亜鉛めっき鋼板であって、前記冷延鋼板表面の粗さ曲線におけるクルトシス(Rku)が3.0以下であり、且つ前記粗さ曲線において、2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=0.5μm)が300以上であることを特徴とするスポット溶接性に優れた樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の樹脂皮膜の平均膜厚が0.8μm以下であり、且つ前記樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の粗さ曲線において、2.54cm当りの山数(PPI、ピークカウントレベル2H=2.54μm)が50以上である請求項1に記載の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の0.2%耐力σが250MPa以下である請求項1または2に記載の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
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