JP2010240248A - 車両用シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シート外形をなすクッション材4Pと、クッション材4Pを覆う表皮材4Sとを備える車両用シート2において、表皮材4Sを、吸湿により発熱可能とするとともに、クッション材4Pに、外部と連通する連通部20を設けて、表皮材4S中の湿気を外部に放散可能とした。
【選択図】図1
Description
ところでこの種の車両用シートでは、消費電力の低減(省電力化)が求められている。上述の技術では、シートヒータに通電してシートの着座部等を発熱させるのであるが、このとき表皮材が断熱材となり、シートヒータの消費電力が増加することがあった。
そして布材は、吸湿と放湿(吸放湿)を繰り返すことで、通電を要することなく継続的に発熱することができる。そこで車両用シートの表皮材に、特許文献2の布材を用いることで、シートの省電力化を期待することができる。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、表皮材の吸湿と放湿を効率良く行うことにある。
そこで本発明では、上述の表皮材を、吸湿により発熱可能とする。そしてクッション材に外部と連通する連通部を設けて、表皮材中の湿気を外部に放散可能とすることにより、表皮材の吸放湿を効率良く行う構成とした。
図1の車両用シート2は、シートクッション4とシートバック6とヘッドレスト8を有する。そして本実施形態では、シートクッション4とシートバック6を発熱させて乗員を保温するのであるが、この種の構成ではシートの省電力化を図ることが望まれる。
そこで本実施形態では、吸湿により発熱可能な表皮材S(4S,6S)を用いて、車両用シート2をより効率良く発熱させることとした。
本実施形態のシートクッション4とシートバック6は、各々、シート外形をなすクッション材(4P,6P)と、クッション材を被覆する表皮材(4S,6S)を有する。
そして表皮材(4S,6S)の一部又は全部は、後述する吸湿発熱繊維によって構成されている(発熱可能な構成である)。またクッション材(4P,6P)は、外部に通じる連通部20を有する。
ここでシートクッション4の上記構成とシートバック6の上記構成はほぼ同一である。このため以下においては、専らシートクッション4の各構成を詳述することとし、シートバック6には、シートクッション4の各構成に対応する符号を付すことで詳細な説明を極力省略する。以下、各構成について詳述する。
表皮材4Sは、シートの着座面をなす表材10と、表材10裏面のパッド材12を有する。これら部材は、ラミネート等の接合方法によって一体化される。パッド材12は、湿気を通気可能な多孔性の部材であり、例えばウレタンパッドなどの発泡性の樹脂部材(連続気泡体)を用いることができる。
そして表材10は、袋状の布帛(織物、編物又は不織布)であり、吸湿により発熱可能な繊維(後述の吸湿発熱繊維)にて構成することができる。
上述の吸湿発熱繊維の線材(紡績糸やフィラメント等)によって表材10の一部又は全部を作製することにより、表皮材4S自体が吸湿によって発熱可能となる。
ここで表材10の一部を吸湿発熱繊維で構成する場合には、表材10の他部を、吸湿発熱繊維とは異なる他の繊維で構成することができる。他の繊維として、天然繊維、合成繊維及びこれらの混紡繊維を例示することができる。
上述の吸湿発熱繊維の種類は特に限定しないが、例えばアクリレート系の吸湿発熱繊維(架橋アクリル系繊維)を使用することができる。
ここで架橋アクリル系繊維は、出発繊維としてのアクリルニトリル(AN)を40重量%以上、好ましくは50重量%以上含有するAN系重合体により形成された繊維である。
ここでAN系重合体は、AN単独重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでもよい。他の単量体として、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン;アクリル酸エステル;メタリルスルホン酸、p―スチレンスルホン酸等のスルホン酸含有単量体及びその塩;メタアクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸含有単量体及びその塩;アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等の単量体を例示することができる。
例えば吸湿発熱性を有する高分子化合物が付着した繊維を、吸湿発熱繊維として使用することができる。この高分子化合物は、ビニルカルボン酸とビニルモノマーの重合体である(特開2002−212880号を参照)。
またアクリル系繊維などの吸湿発熱繊維を30%以上含有する紡績糸を、吸湿発熱繊維として使用することができる(特開2003−227043号を参照)。
クッション材4Pは、シート中央の凹部(着座部C)と、シート両側の凸部(サイドサポート部L)と、後述の連通部20を有する。
このクッション材4Pは、軟質ウレタンフォームやスラブウレタンフォームなどの多孔性の部材(独立気泡体や連続気泡体等)にて形成できる。
そして連通部20は、着座部Cをシート上下に貫通する貫通孔である。連通部20の上部開口が表皮材側に開口するとともに、連通部20の下部開口がクッション材4Pの底部に開口する(目立ちにくい構成である)。
本実施形態では、複数の連通部20をシート幅方向に並列して形成する。このとき図1を参照して、乗員との接触部(例えばシート後方位置)に複数の連通部20を配置することが好ましい。そしてクッション材4Pを表皮材4Sで密着状に被覆することにより、表材10で意匠面を構成しつつ、連通部20を表皮材4Sで覆う。
そしてこの種のシートバック6では、その後部が、バックボード部材(図示省略)にて被覆される。このバックボード部材によって連通部20の後部開口が被覆される(目立ちにくい構成である)。
このように本実施形態によれば、表皮材4S(6S)の吸放湿を効率良く行うことにより、車両用シート2を効率的に発熱させることができる。そして表皮材4S(6S)は、通電を要することなく継続的に発熱できるため、車両用シート2の省電力化とともに、車両の燃費を低減することができる。
さらに車両用シート2では、連通部20によって表皮材4S(6S)の湿気が適度に調節される。このため本実施形態では、湿気が原因の不快感(例えば夏場のムレによる不快感)を鎮めることができる。
本実施形態の車両用シート2aは、実施形態1の車両用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。また以下においては、専らシートクッション4の各構成を詳述する。シートバック6には、シートクッション4の各構成に対応する符号を付すことで詳細な説明を省略する。
そして案内溝部22は、クッション材4Pに形成された凹部である。本実施形態のクッション材4Pには、各連通部20から着座部C中央に延びる線状の案内溝部22が形成されている。
なお案内孔部の深さ寸法は特に限定しないが、シートの着座性に悪影響を与えない程度の深さ寸法とすることが好ましい。なお案内溝部22を浅くしても、湿気(気体)の流通を確保することが可能である。
このように本実施形態によれば、シートの着座感を比較的好適に維持しつつ、より効率良く表皮材4Sを発熱させることができる。
本実施形態の車両用シート2bは、実施形態1又は2の車両用シート2(2a)とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。また以下においては、専らシートクッション4の各構成を詳述する。シートバック6には、シートクッション4の各構成に対応する符号を付すことで詳細な説明を省略する。
複数の連通部20は着座部Cの側端に形成されている。このように連通部20を着座部Cの側端に形成することで、クッション材4Pの伸縮性が維持されて、シートの着座性を好適に維持することができる。
支持部材30は、着座時の押圧により弾縮可能なクッション性と、湿気が通過可能な通気性を有する部材である。この支持部材30を、クッション材4Pと表皮材4Sの間に介装することでシートの着座性が向上する。
ここで支持部材30として、三次元立体編物(3Dネット体)を例示することができる。例えば本実施形体の支持部材30(3Dネット体)は、天然繊維や合成繊維の線材を三次元的に編製した面状部材であり、乗員の押圧により弾縮可能である。そして支持部材30(3Dネット体)内部には、線材の網目間に空隙(通気部32)を有する。
また3次元スプリング構造体は、天然繊維や合成繊維の線材がランダムに交絡集合してなる面状部材である。3次元スプリング構造体は、ゴム弾性を有して乗員の押圧によって弾縮可能であり、繊維と繊維の間に空隙(通気部)を備える。
このように本実施形態では、車両用シート2bの着座性を好適に維持しつつ、より効率良く表皮材4Sを発熱させることができる。
(実施例1)
実施例1の構成は、実施形態1のシート構成に相当する(図7を参照)。表皮材4Sとして、アクリレート系の吸湿発熱繊維を備える織物(表材10)と、スラブウレタンのパッド材12を用いた。
本実施例では、重量比で、吸湿発熱繊維6.7%(東洋紡社製、商品名「モイスケア(登録商標)」)とポリエステル(他の繊維)93.3%とからなる表材10を使用した。
またクッション材4P(ウレタンパッド)に、上下に貫通する複数の連通部20(貫通孔)を設けた。連通部の孔径はφ20mmに設定した。
そしてクッション材4Pの上面側を表皮材4Sで被覆するとともに、クッション材4Pの下面側を露出させた面状部材(縦400mm×横400mm×高さ100mm)を実施例1のシート構成とした。
比較例1の表皮材として、100%ポリエステルの表材(織物)と、スラブウレタンのパッド材を用いた。またクッション材としてウレタンパッドを用いた。
そしてクッション材の上面側を表皮材で被覆するとともに、クッション材の下面側を露出させた面状部材(実施例1と同寸法)を比較例1のシート構成とした。
参考例1の表皮材として、アクリレート系の吸湿発熱繊維を備える織物(表材)と、スラブウレタンのパッド材を用いた。本実施例では、ポリエステル(他の繊維)93.3%と、上記アクリレート系吸湿発熱繊維6.7%の表材を使用した。
そしてクッション材の上面側を表皮材で被覆するとともに、クッション材の下面側を露出させた面状部材(実施例1と同寸法)を参考例1のシート構成とした。
本試験では、放熱板42と、放熱板42に水を供給する供給機構(容器44、ポンプ46、供給パイプ48)を有する装置40を用いた(図7を参照)。
放熱板42は、ラバーヒータを備える銅板(90mm×130mm)であり、その一面(表皮材を臨む面)に、ポリエステル製の擬似皮膚41を貼付した。そして放熱板42に6つの貫通孔(孔径φ20mm)を等間隔に設けて、これら貫通孔から水を表皮材に供給する構成とした。
そして容器44の水を、放熱板42によって表皮材4Sに付与した。このときの条件は、放熱板42の温度:37℃、水の供給量(発汗量):80ml/m2・hrに設定した。そして表皮材表面に取付けたセンサ47によって表皮材の温度を測定した。
また同様に、比較例1及び参考例1の表皮材の温度測定試験を行った。
これとは異なり、実施例1では、表皮材の温度が3℃以上昇温した(体感温度としては極端な温度上昇であった)。そして実施例1の表皮材は、参考例1と比較して、同一素材を用いたにもかかわらず2.6℃も温度が高かった。
このことから実施例1では、表皮材が吸放湿を繰り返すことで、効率良く昇温したことがわかった。このため実施例1の表皮材によれば、車両用シートを効率良く発熱させて、車両の省電力化を図ることができることがわかった。
(1)本実施形態では、シート上下に貫通する連通部を説明したが、連通部の構成を限定する趣旨ではない。例えばサイドサポート部Lに、シート幅方向に貫通する連通部を設けてもよい。また着座部のみを有するシートクッション(サイドサポート部Lを省略した構成)では、着座部の側面に上下に走る溝部(連通部)を設けることができる。
(3)また本実施形態では、専ら複数の連通部をクッション材に形成したが、単数の連通部をクッション材に形成してもよい。また連通部の形状は、円形や楕円形や半円形、三角形や四角形などの各種形状を取り得る。
(5)本実施形態では、表材の一部又は全部を吸湿発熱繊維にて構成する例を説明した。これとは異なり、他の繊維で表材を構成したのち、吸湿発熱繊維の面状体(表材とは別体)を表材に取付けることもできる。
なおシートヒータは、通気性を備える構成であることが望ましい。例えば、布帛製の基材と、導電糸(加熱線)を有するシートヒータを好適に用いることができる。またクッション材に導線(加熱線)を配設してなるシートヒータを用いることもできる。
4 シートクッション
6 シートバック
10 表材
12 パッド材
20 連通部
22 案内溝部
30 支持部材
32 通気部
4P,6P クッション材
4S,6S 表皮材
Claims (3)
- シート外形をなすクッション材と、前記クッション材を覆う表皮材とを備える車両用シートにおいて、
前記表皮材を、吸湿により発熱可能とするとともに、前記クッション材に、外部と連通する連通部を設けて、前記表皮材中の湿気を外部に放散可能とした車両用シート。 - 前記クッション材が、前記連通部に通じる案内溝部を有する請求項1に記載の車両用シート。
- 前記クッション材と前記表皮材の間に、着座時の押圧により弾縮変形可能な支持部材を介装して、
前記表皮材中の湿気を、前記支持部材に設けた通気部を通じて前記連通部に導く構成とした請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
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