JP3727812B2 - 保温椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保温性および除湿性などに優れた椅子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電車や自動車の椅子に、発熱保温する機能を持たせることが行われている。
【0003】
従来より、この保温椅子としては、例えば、背もたれの部分に熱源となるヒーターを挿入し、電気抵抗によってその部分を発熱させるようになされた電気加熱によるものや、プロパンやイソブタンなどのガスと、白金などの触媒とによって触媒発熱を起こさせ、これによって加熱されたガスを椅子内部に組み込まれたチューブ管内に循環させて温める化学反応によるものなどが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の保温椅子の場合、ヒーターやチューブ管などを組み込まなければならないので、椅子本来のクッション性を損なったり、局部的に硬さが異なったりして、違和感を生じ易くなる。
【0005】
また、電気加熱による保温椅子の場合、バッテリーや電源コードなどが必要となり、化学反応による保温椅子の場合、チューブ管などが必要となる。また、熱源となるバッテリーやガスなどのコストが嵩むこととなる。
【0006】
さらに、これら上記従来の保温椅子は、ヒーターやチューブ管の部分が局部的に温かくなるため、均一で快適な温もりが得られない。また、これらヒーターやチューブ管が局部的に温かくなるため、低温火傷になる可能性も懸念される。そのため、これらヒーターやチューブ管の組み込み方を工夫して人体から離れた位置に設けることが考えられるが、この場合、すぐに温かくならず、温かさを感じるまでに相当な時間がかかることとなる。
【0007】
さらに、人体からは、常に水蒸気(不感蒸泄)が発生しているため、人体周りの雰囲気温度が低いほど、温度の低い表面生地やクッション部に結露が生じ易くなり、不快感を増幅させてしまうといった不都合を生じる。
【0008】
このような人体からの水蒸気(不感蒸泄)に反応して吸湿発熱する保温品としては、例えば、特公平7−59762号公報に示すように、吸放湿発熱性繊維を使用した衣類などが提案されている。しかし、このような衣類などの保温品と異なり、椅子の場合は、人体によって椅子の表面材が圧縮され、人体と表面材とが密着するので、吸放湿発熱による熱を保持しておくための充分な空気層を確保することができないといった不都合を生じることとなる。また、充分な空気層を確保することができないので、吸湿飽和しても、放湿されないこととなり、吸放湿発熱の持続性が得られないといった不都合を生じることとなる。
【0009】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、クッション性を損なうことなく、着座した際には瞬時に均一な温かさが得られ、しかもエネルギーコストを生じることなく、快適性を持続することができる保温椅子を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の保温椅子は、椅子本体を構成する中芯材の表面に被覆される表面材のうち、人体が接することとなる着座面の少なくとも一部に吸放湿発熱性繊維が含まれてなるものである。
【0011】
椅子本体を構成する中芯材としては、通常使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、プラスチック、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの硬質または半硬質の発泡体、樹脂、金属、木材などを格子状またはメッシュ状に組み合わせり、曲げ加工して構成した構造体、樹脂、金属、木材などの板材をプレス加工、曲げ加工、グラインダー加工などして構成した成形体、または上記発泡体、構造体、成形体などを複合した複合体などが挙げられる。
【0012】
このような中芯材は、通気性を付与させたものであってもよい。中芯材が上記発泡体による場合は、非独立発泡体の成形体にすることで通気性を得ることができる。中芯材が上記構造体による場合は、そのままで通気性が得られる。中芯材が上記成形体による場合は、板面に複数の孔を穿孔することによって通気性を得ることができる。また、中芯材は、単に通気性を持たせるだけでなく、その内部に空気の溜まりとなる中空部を形成したものであってもよい。
【0013】
吸放湿発熱性繊維としては、繊維自体が非常に強い高架橋構造になっていて染料を受け付ける非晶領域が小さく、非常に隙間の少ない繊維構造となっているものが挙げられる。すなわち、このような吸放湿発熱性繊維は、水分を吸湿する時に、吸放湿発熱性繊維の官能基と水分子との反応(水和反応)による熱の発生、および水分子のエントロピーの変化に基づく熱の発生を生じる。このうち、水分子のエントロピー変化に基づく熱の発生量は、吸放湿時に、繊維自体が体積変化を伴わないことによってより大きくなる。したがって、上記したように、繊維自体が非常に強い高架橋構造になっていて染料を受け付ける非晶領域が小さい吸放湿発熱性繊維は、体積変化(膨潤)がし難く、吸湿時の熱の発生量が大きいが、染色性が極めて悪くなる。このような吸放湿発熱性繊維として、具体的なものとしては、例えば、アクリレート系吸放湿発熱性繊維(東洋紡績社製 商品名 ブレスサーモ(N−38)、商品名 エクス(G−800)、東邦レーヨン社製 商品名 サンバーナ)などが挙げられる。このアクリレート系吸放湿発熱性繊維は、出発繊維としてアクリルニトリル(以下、ANという)を40重量%以上、好ましくは50重量%以上含有するAN系重合体により形成された繊維が用いられる。AN系重合体は、AN単重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでも良い。この他の単量体としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン;アクリル酸エステル;メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸などのスルホン酸含有単量体およびその塩;メタアクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸含有単量体およびその塩;アクリルイミド、スチレン、酢酸ビニルなどの単量体を挙げることができるが、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。
【0014】
以上のアクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物を架橋剤として導入する方法が適用される。この方法においては、窒素含有量の増加を1.0〜10.0重量%に調整し、ヒドラジン系化合物の濃度を5〜60重量%、温度を50〜120℃とした状態で5時間以内で処理する。この方法は工業的に好ましい。ここで、窒素含有量の増加とは、原料のアクリル系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化合物を架橋剤として導入された状態のアクリル系繊維の窒素含有量との差をいう。この窒素含有量の増加が、上記の下限(1.0重量%)に満たない場合は、最終的に満足し得る物性の繊維を得ることができず、さらに難燃性、抗菌性などの特性を得ることができない。また、窒素含有量の増加が、上記の上限(10.0重量%)を超えた場合には、高吸放湿性が得られない。したがって、ここで使用するヒドラジン系化合物としては、窒素含有量の増加が上記の範囲となるような化合物であれば特に限定されない。このようなヒドラジン系化合物としては、例えば、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネート等や、エチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のアミン基を複数個含有する化合物を挙げることができる。
【0015】
なお、この架橋工程においては、ビドラジン系化合物が加水分解反応により架橋されずに残存した状態のニトリル基を実質的に消失させるとともに、1.0〜4.5meq/gの塩型カルボキシル基と残部にアミド基を導入する方法が適用される。その方法としては、アルカル金属水酸化物、アンモニアなどの塩基性水溶液、あるいは硝酸、硫酸、塩酸などの鉱酸の水溶液を含浸させるか、またはその水溶液中に原料繊維を浸漬した状態で加熱処理する方法、あるいは、上記した架橋剤の導入と同時に加水分解反応を起こす方法を用いることができる。なお、この加水分解反応が、酸による加水分解である場合は、カルボキシル基を塩型に変換させる必要がある。また、セルロース系繊維を改質し、セルロースの親水基の量を増やすようにしたり、水和反応を起こし発熱しやすい官能基、例えばカルボキシル基、水酸基等に置き換え発熱効果を高めるように改質した素材の利用も考えられる。
【0016】
表面材としては、通常の表面材として使用される繊維素材と、上記したような吸放湿発熱性繊維とによって構成したものを使用することができる。この場合、通常の繊維素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウール、綿などの素材を使用することができる。
【0017】
表面材に吸放湿発熱性繊維を使用する場合、表面材としては、吸放湿発熱性繊維を含んだ織物および編物、吸放湿発熱性繊維を基布にした人工皮革などを挙げることができる。人工皮革の基布としては、織物、不織布が挙げられる。
【0018】
織物として吸放湿発熱性繊維を使用する場合、吸放湿発熱性繊維と他の繊維との複合率は、吸放湿発熱性繊維:他の繊維=3:97〜50:50(重量比)、特に好ましくは10:90〜20:80とするのが良い。吸放湿発熱性繊維:他の繊維=3:97よりも吸放湿発熱性繊維の複合率が低下すると、充分な吸放湿性および発熱性が得られないこととなる。また、吸放湿発熱性繊維:他の繊維=50:50よりも吸放湿発熱性繊維の複合率が増加すると、色目が整え難く、品位の低下が生じ易い。この織物を表面材として使用する場合、吸放湿発熱性繊維の形態としては、例えば、内側に多くの吸放湿発熱性繊維が織られるように工夫できる経片二重織や緯片二重織を使用することもできるし、表面の形態によっては、一般の一重組織であってもよい。
【0019】
編物として吸放湿発熱性繊維を使用する場合、吸放湿発熱性繊維と他の繊維との複合率は、上記織物の場合と同様である。この編物を表面材として使用する場合、吸放湿発熱性繊維の形態としては、シングル、ダブルの丸編機、横編機などの緯編機、シングル、ダブルのラッセル編機、トリコット編機などの経編機を用いて一層構造、二層構造、三層構造の経、緯編生地として編成したものが挙げられる。それらの生地表面をパイル状に編成したもの、起毛機により起毛加工したもの、ロール等でエンボス加工したもの、カレンダー加工等の後加工を施したものも可能である。ダブルラッセル、ダブルトリコット機を用いて三層構造にした生地はそのまま使用する場合と、中間層にて半裁(センターカット)し、起毛側(中間層側)を表側とした二層構造生地として使用することも可能である。吸放湿発熱性繊維の生地への含ませかたは特に限定されるものではないが、生地の表面と裏面とを構成する吸放湿発熱性繊維の割合は、ほぼ等しいか、裏面の方が多い方が望ましい。
【0020】
表面材は、上記吸放湿発熱性繊維によって構成した織物、編物、人工皮革などを単体で使用したものであっても良いし、これら吸放湿発熱性繊維の層と、連続気泡体の層とを積層して構成したものであってもよい。
【0021】
この場合、連続気泡体としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ゴム系化合物などによって構成した連続気泡を有する発泡体シートを使用することができる。発泡体シートの密度としては、15〜80kg/m3 のものを使用することが望ましい。ただし、このような発泡体シートの場合、発泡体シートの密度によっては、着座時に圧縮されることによって連続気泡が圧縮破壊された状態になりやすい。したがって、このような連続気泡の圧縮破壊を防ぐ場合、連続気泡体としては、織物および編物によって構成されたメッシュ状のシートやメッシュ状の不織布、樹脂材料などによって構成されたメッシュ状の成形体などを使用することができる。
【0022】
これら、連続気泡体の厚みとしては、1mm以上のものを使用する。この連続気泡体は、上記吸放湿発熱性繊維からなる織物、編物、人工皮革などの層と、厚み30mm以下の範囲で積層される。この場合、各層間は、単なる重ね合わせだけであってもよいし、接着、縫い合わせなどを行ってもよい。積層する際、吸放湿発熱性繊維の層と、連続気泡体の層とは、交互に積層することが好ましい。積層される各吸放湿発熱性繊維の層における吸放湿発熱性繊維の含有量は、表面材の表面側の層から裏面側の層に向かうに従って多くなるようにすることが好ましい。また、連続気泡体の層にも、吸放湿発熱性繊維を含有させていてもよい。この場合、連続気泡体は、吸放湿発熱性繊維の粉末または10mm以下の短繊維を混合分散させたものを使用することができる。
【0023】
上記のようにして構成される表面材は、椅子本体を構成する中芯材の表面に被覆される。この場合、表面材は、椅子本体の全体を被覆するものであってもよいし、人体が接触することとなる着座面の少なくとも一部(例えば、お尻部分だけ、背中部分だけ、お尻部分および背中部分の両方)を被覆するものであってもよい。
【0024】
椅子本体を構成する中芯材の一部分を表面材で被覆する場合、残りの中芯材を被覆する被覆材としては、通気性を有する各種素材のものを使用することができる。この被覆材としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウール、綿、皮革などによって形成されたものを使用することができる。この場合、被覆材の通気性は、表面材の通気性と同等かより優れたものを使用することが望ましい。
【0025】
このようにして構成された椅子に座ると、人体が接触している表面材の部分が、人体からの水蒸気(不感蒸泄)に反応して吸湿発熱することとなる。これによって、椅子に座った人は、椅子との接触面が、べとつくことなくサラッとし、かつ、温かく感じることとなる。
【0026】
この際、表面材に含まれる吸放湿発熱性繊維の含有量は、表面材の表面側よりも裏面側に向かうに従って高くなるようにしておくことで、人体からの水蒸気は、人体側から椅子の内部側へと移行させて行くことができる。
【0027】
また、表面材は、吸放湿発熱性繊維の層と、連続気泡体の層とを積層して構成したものにしておけば、連続気泡体の部分に空気の層を形成することができる。この連続気泡体によって得られる空気の層の部分は、吸放湿発熱性繊維の吸放湿によって水蒸気が速やかに移行するのを助けるとともに、吸放湿発熱によって発生した熱を保持することができる。この連続気泡体の層は、着座時に人体によって圧縮されることによって連続気泡が圧縮破壊されないようになされたメッシュ状の成形体にしておけば、吸放湿発熱性繊維間に確実に空気の層を確保することができ、上記した吸放湿による水蒸気の移行と、発生した熱の保持を一層有効なものにすることができる。
【0028】
さらに、中芯材は、通気性を持たせたものにしておけば、人体側から椅子の内部側へと移行させ表面材からの水蒸気を、中芯材から外へ換気することができる。この際、表面材以外の被覆材の部分の通気性を、表面材の通気性と同等かより優れたものにしておくことで、この被覆材の部分からの換気能力が高まることとなり、表面材による吸放湿発熱の持続力が向上することとなる。
【0029】
また、中芯材は、着座時に沈み込み、非着座時には復元するクッション性に優れたものにしておけば、椅子に座ったり、立ったり、また椅子に座った状態で姿勢を変えたりといった状況で、椅子内部の空気が、椅子外部の空気と置換されることとなる。したがって、吸放湿発熱によって椅子内部に溜まった水蒸気を、椅子外部に出すことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
−表面材の構成−
A:ブレスサーモ(東洋紡績社製 アクリレート系吸放湿発熱性繊維 N−38)20%、ポリエステル80%の平二重組織で、人体と接する表面にポリエステルが位置し、裏面にブレスサーモが位置するように織られた織物生地
B:ブレスサーモ30%、ポリエステル70%の平組織で、ブレスサーモが生地全体に均等に含まれるように織られた織物生地
C:ポリエステル100%、開孔率40%、厚み0.7mmのトリコットメッシュ生地
D:密度40kg/m3 、厚み10mmのエーテル系ウレタンフォームの連続発泡体
E:密度40kg/m3 、厚み10mmのポリエチレンフォームの独立発泡体
F:ポリエステル100%の平二重組織の織物生地
上記A〜Fの各素材を組み合わせて表面材の試験片▲1▼〜▲5▼を調製した。
【0031】
試験片▲1▼:表面側からA、D、Bの順で積層した積層体
試験片▲2▼:表面側からA、D、C、Bの順で積層した積層体
試験片▲3▼:Fのみ
試験片▲4▼:Aのみ
試験片▲5▼:表面側からA、E、Bの順で積層した積層体
積層体の各層間はウレタン系接着剤をドット状に塗布して通気性を損なわないようにして接着。
−試験内容−
図1および図2に示すように、103mm角の開口部を有する筒状のシリンダ部材1内に、100mm平方のサイズに切断した試験片Sをそれぞれ入れる。シリンダ部材1の上方からは、このシリンダ部材1内を摺動可能となされたピストン部材2を挿入し、このピストン部材2の上に重り3を載せ、試験片Sを圧縮状態にする。重り3は、椅子に人が座った際に、椅子の表面材に加わる荷重を9800Pa{100gf/cm2 }と仮定し、それに見合う重量のものを載せる。ピストン部材2に設けられた給気管21から調温調湿空気を導入し、このピストン部材2に設けられた多数の空気吹出口20から吹き出させ、圧縮された試験片Sに吹き付ける。試験片Sを通過した調温調湿空気は、シリンダ部材1に設けられた排気管11から排出させる。この間、ピストン部材2によって圧縮される試験片Sは、その表面に温度センサー4を設けておき、この温度センサー4によって経時的な温度の変化を測定する。
【0032】
試験は、20℃、35%RHの環境雰囲気下で行った。測定は、20℃、20%RHの調温調湿空気を5000cm3 /分の流量で流し込み、温度センサ4の値が安定してから温度測定を開始し、開始一分後に、流量は同じで20℃、90%RHの調温調湿空気に切り替えて行った。
【0033】
試験片Sは、上記各試験片▲1▼〜▲5▼に変更してそれぞれ試験を行った。
−試験結果−
図3に示すように、本発明に係る試験片▲1▼および▲2▼については、吸放湿発熱の持続性に優れていることが確認できる。
−椅子の作成−
図4に示すように、中芯材5の表面に表面材6を被覆してカーシート7を構成する。
【0034】
カーシート7の座部7aは、鋼板芯材51の表面に密度100kg/m3 の硬質ポリウレタンフォーム52を設けた中芯材5を使用する。カーシート7の背部7bは、鋼線芯材53の周囲に密度100kg/m3 の硬質ポリウレタンフォーム52を設けた中芯材5を使用する。
【0035】
表面材6は、下記G〜Mの各素材を組み合わせて調製した四種類の表面材(1)〜(4)を用意し、それぞれの表面材6毎にカーシート7を構成した。
【0036】
G:22Gのダブルラッセル編機で、表糸、裏糸にポリエステルフィラメント220dtex/48f{200d/48f}とポリエステル70%、ブレスサーモ(東洋紡績社製 アクリレート系吸放湿発熱性繊維 N−38)30%を混紡した混紡糸30S /2を1:1で用い、中糸にポリエステルフィラメント220dtex/48f{200d/48f}を用いそれぞれ表地、裏地、中間層を編成し、三層構造の厚み5mmの生地にする。この生地を半裁機にてセンターカットした後に、表地、裏地(これらは全く同一の生地となる。)とも中間層側の起毛部の長さが約2mmぐらいで均一になるようにシャーリングする。その後、染色、乾燥した後に整毛機で起毛を一定方向に片倒しした後に熱セットで仕上げる。
【0037】
H:22Gのダブルラッセル編機で、表糸、裏糸にポリエステルフィラメント220dtex/48f{200d/48f}とポリエステルスパン30S /2を1:1で用い、中糸にポリエステルフィラメント220dtex/48f{200d/48f}を用いそれぞれ表地、裏地、中間層を編成し、三層構造の厚み5mmの生地にする。この生地を半裁機にてセンターカットした後に表地、裏地(これらは全く同一の生地となる。)とも中間層側の起毛部の長さが約2mmぐらいで均一になるようにシャーリングする。その後、染色、乾燥した後に整毛機で起毛を一定方向に片倒しした後に熱セットで仕上げる。
【0038】
I:厚み10mm、密度35kg/m3 、セル数35個/25mmのエーテル系ウレタンフォームの連続発泡体
J:厚み3mm、密度35kg/m3 、セル数35個/25mmのエーテル系ウレタンフォームの連続発泡体
K:ブレスサーモ30%、ポリエステル70%の平組織で、ブレスサーモが生地全体に均等に含まれるように織られた織物生地
L:ブレスサーモ40%、ポリエステル60%の平組織で、ブレスサーモが生地全体に均等に含まれるように織られた織物生地
M:ポリエステル加工糸110dtex/48f{100d/48f}を用い、開孔率40%としたトリコットメッシュ生地
表面材(1)
図5(a)に示すように、表面側からG、Iの順で積層し、両者間をフレームラミネートによって接着。
【0039】
表面材(2)
図5(b)に示すように、表面側からG、J、K、J、L、Jの順で積層し、各層間をフレームラミネートによって接着。
【0040】
表面材(3)
図5(c)に示すように、表面側からG、J、M、K、J、M、L、Jの順で積層し、各層間をフレームラミネートによって接着。ただし、M、K間、M、L間は、ウレタン系接着剤によって接着。
【0041】
表面材(4)
図5(d)に示すように、表面側からH、Iの順で積層し、両者間をフレームラミネートによって接着。
−椅子の使用試験−
上記各表面材毎に構成したカーシートを20℃、65%RHの雰囲気下に配置し、被験者に座ってもらい、表面温度の経時的変化を測定した。温度の測定は、表面材を構成する複数の層のうちの表面側の層の裏側に温度センサーを装着して行った。
−試験結果−
図6に示すように、本発明に係る表面材(1)〜(3)を使用したカーシートについては、吸放湿発熱の持続性に優れていることが確認できる。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によると、吸放湿発熱性繊維が、椅子と人体との間の調湿材として作用するとともに、吸放湿性、保温性、抗菌性といった衛生的性質に優れた効果を発揮する。また、この保温椅子に使用されている吸放湿発熱性繊維自体が、この保温椅子の設けられた空間の湿度調整もすることとなり、冬場の静電気の発生や、それに伴うチリ、埃の付着を防止して心地よい座り感を得ることができる。さらに、椅子に座った時に冷たく感じる、いわゆる冷刺激が少ないポリエステルの場合、逆に静電気が発生しやすくなり、静電気が発生し難いセルロース系繊維の場合、逆に冷刺激が大きくなってしまうが、吸放湿発熱性繊維を用いた本発明の保温椅子を使用することで、静電気の発生を防止するとともに、冷刺激を少なく抑えることができる。
【0043】
また、表面材は、吸放湿発熱性繊維を有する層と連続気泡体からなる層との積層体としておけば、連続気泡体に形成される空気の層を利用して吸放湿発熱性繊維による吸放湿発熱を効率良く行うことができる。
【0044】
さらに、連続気泡体の少なくとも一部分は、着座時に人体圧によって圧縮破壊されない網状体としておけば、椅子のクッション性の良さに相まって連続気泡体による空気の層が無くなるといったことを防止できる。したがって、吸放湿発熱性繊維による吸放湿発熱の効率が低下してしまうといったことを無くすことができる。
【0045】
さらに、吸放湿発熱性繊維を有する層は、人体に接する側(表面)と裏面とでは、裏面の方に多く吸放湿発熱性繊維を使用することで、吸放湿発熱性繊維が吸湿した湿気は、人体に接する表面側から、吸放湿発熱性繊維の多い裏側へと移行する流れを形成することができる。したがって、人体の湿気を吸湿した吸放湿発熱性繊維が吸湿によって飽和状態になるのを防止して吸湿発熱を半永久的に持続させることができる。
【0046】
さらに、中芯材に通気孔を設けることで、この中芯材の表面に被覆される表面材中の吸放湿発熱性繊維が吸湿によって飽和状態になるのを防止して吸湿発熱を半永久的に持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る椅子の表面材についての試験装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る椅子の表面材についての試験装置を示す部分破断斜視図である。
【図3】図1および図2に示す試験装置による各試験片の吸放湿発熱の経時的変化を示すグラフである。
【図4】カーシートの全体構成の概略を示す部分破断斜視図である。
【図5】(a)ないし(d)は、図4に示すカーシートに使用される各種表面材の構成を示す部分断面図である。
【図6】図5に示す各種表面材によって構成されたカーシートの吸放湿発熱の経時的変化を示すグラフである。
【符号の説明】
5 中芯材
6 表面材
7 カーシート(保温椅子)
Claims (3)
- 椅子本体を構成する中芯材の表面に被覆される表面材のうち、人体が接することとなる着座面の少なくとも一部に、吸放湿発熱性繊維が含まれてなる保温椅子であって、
吸放湿発熱性繊維を有する層と、連続気泡体からなる層との積層体からなる表面材が使用され、吸放湿発熱性繊維を有する層は、人体に接する側(表面)と裏面とでは、裏面の方に多く吸放湿発熱性繊維が使用されてなることを特徴とする保温椅子。 - 連続気泡体の少なくとも一部分には、着座時の人体圧によって気泡部分が圧縮破壊されないメッシュ状のものが使用された請求項1記載の保温椅子。
- 中芯材に通気性が付与されてなる請求項1または2記載の保温椅子。
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