JP2010238920A - リアクトル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リアクトル1は、導体線111を巻回してなると共に通電により磁束を発生するコイル11と、コイル11の内側及び外側に配設され、電気絶縁性の樹脂中に磁性粉末を分散させた磁性粉末混合樹脂からなるコア13とを備えている。コイル11の表面110は、電気絶縁性の樹脂からなる絶縁皮膜12により覆われている。絶縁皮膜12の弾性率をA、コア13の弾性率をBとした場合、弾性率比A/Bは、0.000005〜0.1である。
【選択図】図1
Description
このようなリアクトルとしては、高電圧が作用するコイルの絶縁保護のために、コイルの表面を絶縁皮膜で覆っているものがある(特許文献1参照)。
また、温度変化の大きい環境下で使用した場合には、その温度変化(冷熱サイクル)によって各部に生じる熱膨張及び熱収縮の度合いが異なることにより応力が発生する。この応力によって絶縁皮膜とコアとが剥離し、リアクトルに不具合が生じることがあった。
上記コイルの表面は、電気絶縁性の樹脂からなる絶縁皮膜により覆われており、
該絶縁皮膜の弾性率をA、上記コアの弾性率をBとした場合、弾性率比A/Bは、0.000005〜0.1であることを特徴とするリアクトルにある(請求項1)。
すなわち、本発明では、上記絶縁皮膜の弾性率を上記コアよりもある程度小さくし、上記絶縁皮膜に適度な柔軟性を持たせている。
上記コイルを構成する上記導体線としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀等を用いることができる。
上記樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
上記磁性粉末としては、例えば、フェライト粉末、鉄粉、珪素合金鉄粉等を用いることができる。
上記弾性率比A/Bが0.000005未満の場合には、上記コアの注型時において、該コアの重量によって上記コイル表面の上記絶縁皮膜が変形し、膜厚を十分に確保することができず、最終的に絶縁不良となるおそれがある。一方、0.1を超える場合には、上記コイルの発熱によって生じる応力を上記絶縁皮膜によって十分に緩和・吸収することができず、上記絶縁皮膜及び上記コアにクラックが生じ、最終的に絶縁不良となるおそれがある。
したがって、上記弾性率比A/Bは、0.000007〜0.01であることがより好ましい(請求項2)。さらに、0.00001〜0.005であることがより一層好ましい。
上記絶縁皮膜の弾性率Aが0.5MPa未満の場合には、上記絶縁皮膜の強度を十分に確保することができず、変形等が生じて最終的に絶縁不良となるおそれがある。一方、800MPaを超える場合には、上記コイルの発熱によって生じる応力を上記絶縁皮膜によって十分に緩和・吸収することができず、上記絶縁皮膜及び上記コアにクラックが生じ、最終的に絶縁不良となるおそれがある。
上記コアの弾性率Bが10000MPa未満の場合には、上記コイルへの通電により、上記コア中の上記磁性粉末の磁歪による微振動及びこれに伴う上記リアクトル全体の振動を十分に抑制することができないおそれがある。また、上記コアによって上記コイルを十分に保持(ホールド)することができないおそれがある。
一方、上記コアの弾性率Bが高くなると、該コア中の上記磁性粉末の含有量が増大し、磁気特性が低下するおそれがある。また、上記コアの注型性が悪化するおそれがある。したがって、上記コアの弾性率Bは、25000MPa以下であることが好ましい。
上記コアの軟化点又はガラス転移点が70℃未満の場合には、上記コアの耐熱性を十分に確保することができないおそれがある。そのため、上記コア中の上記樹脂が熱によって軟化し、該コア中の上記磁性粉末の磁歪による微振動及びこれに伴う上記リアクトル全体の振動を十分に抑制することができないおそれがある。また、上記コアによって上記コイルを十分に保持(ホールド)することができないおそれがある。
上記コアにおける上記磁性粉末の含有率が40体積%未満の場合には、上記リアクトルの磁気特性を十分に確保することができないおそれがある。一方、上記磁性粉末の含有率が高くなると、上記コアを形成する際に、上記磁性粉末混合樹脂の粘度が上昇し、注型性が悪化するおそれがある。また、樹脂分の減少による硬化物(コア)の脆性化が生じるおそれがある。
したがって、上記コアにおける上記磁性粉末の含有率は、磁気特性を確保すると共に注型性の悪化及び硬化物の脆性化を防止するため、50〜70体積%であることがより好ましい(請求項7)。
この場合には、上記絶縁皮膜によって上記コイル表面の絶縁保護を十分に図ることができる。
上記絶縁皮膜の厚みが300μm未満である場合には、絶縁性を十分に確保することができないおそれがある。一方、700μmを超える場合には、均一な膜厚管理が困難となるおそれがある。
また、例えば、上記絶縁皮膜としてシリコーン樹脂を用いた場合、上記コアとの密着性が不足する場合がある。このような場合には、上記絶縁皮膜の表面にプライマーを塗布しておき、上記コアとの密着性を十分に確保しておくことが好ましい。上記絶縁皮膜と上記コアとの密着性が不足すると、温度変化の大きい環境下で使用した際に、その温度変化(冷熱サイクル)によって各部に生じる熱膨張及び熱収縮の度合いが異なることにより応力が発生し、この応力によって上記絶縁皮膜と上記コアとが剥離するおそれがあるからである。
本発明の実施例にかかるリアクトルについて、図を用いて説明する。
本例のリアクトル1は、図1、図2に示すごとく、導体線111を巻回してなると共に通電により磁束を発生するコイル11と、コイル11の内側及び外側に配設され、電気絶縁性の樹脂(コア用樹脂)中に磁性粉末を分散させた磁性粉末混合樹脂からなるコア13とを備えている。
コイル11の表面110は、電気絶縁性の樹脂(絶縁皮膜用樹脂)からなる絶縁皮膜12により覆われている。そして、絶縁皮膜12の弾性率をA、コア13の弾性率をBとした場合、弾性率比A/Bは、0.000005〜0.1である。
以下、これを詳説する。
図1、図2に示すごとく、リアクトル1は、放熱性に優れたアルミニウムからなる収納ケース14内に、コイル11及びコア13を収納して構成されている。
本例では、絶縁皮膜12としては、ウレタン樹脂を用いている。また、絶縁皮膜12の厚みは、700μmである。また、絶縁皮膜12の弾性率Aは、50MPaである。
本例では、コア用樹脂としては、エポキシ樹脂を用いている。また、コア用樹脂中に分散させる磁性粉末としては、珪素合金鉄粉を用いている。また、コア13における磁性粉末の含有率は、60体積%である。また、コア13の弾性率Bは、22.5GPaである。
リアクトル1を製造するに当たっては、まず、図3(a)に示すごとく、一本の平角状の導体線111をエッジワイズ加工により、同心円状の螺旋を描くように巻回する。これにより、図3(b)に示すごとく、円筒状のコイル11を形成する。具体的には、巻回する前の直線状の導体線111における軸方向に直交する断面の幅方向がコイル11の径方向となるように、導体線111を巻回してコイル11を形成する。
このとき、液体状の絶縁皮膜用樹脂の粘度を50Pa・s以下に調整することにより、絶縁皮膜用樹脂を均一に塗布することができる。
以上により、リアクトル1を作製する。
本例のリアクトル1において、コイル11の表面110は、絶縁皮膜12により覆われている。そして、絶縁皮膜12の弾性率Aとコア13の弾性率Bとの比である弾性率比A/Bは、0.000005〜0.1である。すなわち、本例では、絶縁皮膜12の弾性率をコア13よりもある程度小さくし、絶縁皮膜12に適度な柔軟性を持たせている。
本例は、本発明のリアクトルの効果を示すため、冷熱サイクル試験を行い、絶縁性、耐クラック性を評価した例である。
本例では、表1に示すごとく、弾性率比A/Bの異なる複数のリアクトル(試料A〜試料H)を準備した。試料Aは、従来のリアクトルである。また、試料Cは、実施例1のリアクトルである。
また、試料F〜試料Hのリアクトルは、絶縁皮膜を構成する樹脂としてシリコーン樹脂を用いているため、絶縁皮膜とコアとの密着性を確保するために、絶縁皮膜の表面にプライマーを塗布してある。プライマーとしては、信越化学工業製のプライマーCを用いた。
その他、試料A〜試料Hのリアクトルの基本的な構成は、実施例1のリアクトルと同様である。
冷熱サイクル試験は、2通りの方法で行った。1つは、氷点下の所定温度T1(−20℃以下)の庫内でリアクトル全体を均一に冷却した後、コイルに通電し、コイルを発熱させ、所定温度T2まで加熱する。このとき、ΔT(=T2−T1)が150℃以上となるようにする。そして、通電を止め、庫内で再びリアクトル全体を均一に冷却させる。この作業を1サイクルとして繰り返し行った。これを冷熱サイクルaとする。
もう1つは、恒温槽にリアクトルを入れ、その恒温槽内の温度を上記所定温度範囲(T1〜T2)において加熱及び冷却する。この作業を1サイクルとして繰り返し行った。これを冷熱サイクルbとする。
耐クラック性は、冷熱サイクルを所定回数行ったリアクトルをファインカッターでカットし、顕微鏡、SEM等で断面精査を実施することにより評価した。そして、クラックが発生していない場合には合格(○)、クラックが発生している場合には不合格(×)とした。
同表からわかるように、従来品であり、弾性率比A/Bが0.1を超える試料Aは、冷熱サイクルa及び冷熱サイクルbにおいて、繰り返し数が100サイクル以下の段階で絶縁性及び耐クラック性を確保することができない結果となった。また、弾性率比A/Bが0.000005未満である試料Hは、初期破壊を起こし、絶縁性及び耐クラック性を全く確保することができない結果となった。
すなわち、本発明のリアクトルは、弾性率比A/Bを上記特定の適正な範囲に調整することにより、コイルの発熱によって生じる応力、また温度変化によって生じる応力を絶縁皮膜によって十分に緩和・吸収することができることがわかった。そして、絶縁皮膜及びコアにおけるクラックの発生、絶縁皮膜とコアとの剥離を抑制することができる、耐久性に優れたものであることがわかった。
11 コイル
110 表面(コイルの表面)
111 導体線
12 絶縁皮膜
13 コア
Claims (8)
- 導体線を巻回してなると共に通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外側に配設され、電気絶縁性の樹脂中に磁性粉末を分散させた磁性粉末混合樹脂からなるコアとを備えたリアクトルであって、
上記コイルの表面は、電気絶縁性の樹脂からなる絶縁皮膜により覆われており、
該絶縁皮膜の弾性率をA、上記コアの弾性率をBとした場合、弾性率比A/Bは、0.000005〜0.1であることを特徴とするリアクトル。 - 請求項1において、上記弾性率比A/Bは、0.000007〜0.01であることを特徴とするリアクトル。
- 請求項1又は2において、上記絶縁皮膜の弾性率Aは、0.5〜800MPaであることを特徴とするリアクトル。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記コアの弾性率Bは、10000MPa以上であることを特徴とするリアクトル。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、上記コアにおける上記樹脂の軟化点又はガラス転移点は、70℃以上であることを特徴とするリアクトル。
- 請求項1〜5のいずれか1項において、上記コアにおける上記磁性粉末の含有率は、40体積%以上であることを特徴とするリアクトル。
- 請求項1〜5のいずれか1項において、上記コアにおける上記磁性粉末の含有率は、50〜70体積%以上であることを特徴とするリアクトル。
- 請求項1〜7のいずれか1項において、上記絶縁皮膜は、エポキシ、ポリエステル、シリコーン又はウレタンのいずれかの樹脂からなることを特徴とするリアクトル。
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