以下に、本発明に好適な実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、本発明の駆動信号発生器の実施形態を光走査装置及び画像表示装置に適用した例について説明する。
[1.光走査装置]
まず、本発明の駆動信号発生器を光走査装置に適用した例について説明する。
図1に示すように、光走査装置1は、当該光走査装置1全体を制御し、画像信号Sに応じた駆動信号Saを出力する制御部2と、この制御部2から出力される駆動信号Saに基づき画像信号Sに応じたレーザ光(画像光)を出射する光出射部3と、この光出射部3から出射されたレーザ光を走査する光走査部4と、ユーザにより操作可能な操作部7とを備えている。
光走査部4は、ガルバノミラーなどの光走査素子5(偏向素子)とこの光走査素子5を駆動させるための駆動信号S1を生成する駆動信号発生器6などを含んでおり、制御部2から入力される制御信号(同期信号、パラメータ調整信号、ON/OFF信号など)に基づいて動作する。なお、光走査素子5は、光出射部3から出射されるレーザ光を走査するようにその反射ミラー5a(偏向面)を非共振モードで強制的に揺動(回転)することができるものであれば、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等いずれの駆動方式によるものであってもよい。
(駆動信号発生器6の構成)
駆動信号発生器6は、光走査素子5の反射ミラー5aを非共振モードで強制的に駆動する駆動信号であって、周期的な駆動信号を生成するための基礎波形信号にノッチフィルタ処理を行なった鋸波形の駆動信号S1を生成するものであり、以下のように構成される。なお、この駆動信号S1は、図2に示すように、最小レベルから最大レベルまで移行する期間に比べ、最大レベルから最小レベルへ移行する期間が十分に短い信号である。この基礎波形信号は、直線変化する鋸波形信号(図3(a)参照。)にローパスフィルタ処理(図3(b)参照。)を行って生成されている。なお、本実施形態においては、鋸波形の駆動信号S1を図3(c)に示すような波形とするがこれに限られず、三角波、台形波、正弦波などの略直線的な傾斜を有し周期性を持つ波形についても適用することができる。
この駆動信号発生器6は、図1に示すように、駆動処理部10、基礎波形記憶部11、フィルタ部12、フィルタ特性調整部13、リンギング検出部14、駆動波形記憶部15、駆動信号生成部16を備えている。
基礎波形記憶部11には、直線変化する鋸波形信号S10にローパスフィルタ処理を施した基礎波形信号S11のデータを予め記憶させている。例えば、図3に示すように、直線変化する鋸波形信号S10(図3(a)参照。)に対し18次のローパスフィルタによるフィルタ処理を行なうことにより基礎波形信号S11を生成し、この基礎波形信号S11を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてA/D変換したデータを基礎波形信号S11のデータとして基礎波形記憶部11に予め記憶している。
例えば、光走査素子5固有の共振特性として、1次共振がf1[Hz]、2次以上の共振がf2[Hz]以上であるとすると、このローパスフィルタ処理は、f2(>f1)[Hz]以上の周波数を減衰させることにより、光走査素子5固有の共振特性のうち2次以上の共振による影響を抑制する。
フィルタ部12は、駆動処理部10によって基礎波形記憶部11から読み出された基礎波形信号S11のデータが入力され、図4に示すように、基礎波形信号S11に所定のパラメータでローパスフィルタ処理とノッチフィルタ処理とを行なって駆動波形信号S12を生成する。
例えば、光走査素子5固有の共振特性として、1次共振がf1[Hz]、2次以上の共振がf2[Hz]以上であるとすると、このノッチフィルタ処理は、f1[Hz]の周波数を中心として減衰させることにより、光走査素子5固有の共振特性のうち1次の共振による影響を抑制する。
ここで、2次ノッチフィルタによるフィルタ処理は以下の(式1)による演算を行なうことによって実現している。このノッチフィルタ処理は、分子の次数が分母の次数以上でなければ行なうことができないことから、フィルタ部12では、図4(b)に示すように、2次のノッチフィルタ処理に加え、2次ローパスフィルタ処理を行なっている。従って、駆動波形信号S12は、鋸波形信号S10に20次ローパスフィルタと2次ノッチフィルタ処理が施された信号となる。
このように、光走査素子5の1次共振を2次ノッチフィルタ処理で抑制することにしていることから、ローパスフィルタのカットオフ周波数をf1[Hz]以下とすることに比べ、駆動信号S1の直線性を向上させることができる。
ここで、フィルタ部12で用いるパラメータは、フィルタ特性調整部13で決定されて、フィルタ部12へ入力される。フィルタ特性調整部13が調整するパラメータは、ノッチフィルタ12aにおける減衰域の中心周波数foと尖鋭度Q(Quality Factor)である。このフィルタ特性調整部13の処理動作については後に詳説する。
フィルタ部12は上述のように基礎波形信号S11にノッチフィルタ処理及びローパスフィルタ処理を行なって駆動波形信号S12を生成すると、この駆動波形信号S12のデータを駆動波形記憶部15に記憶する。
駆動信号生成部16は、駆動処理部10により駆動波形記憶部15から所定の周波数のクロックCLKで読み出された駆動波形信号S12のデータが入力され、内部のD/A変換器15aによりアナログ変換することによって駆動信号S1を生成する。駆動信号生成部16は生成した駆動信号S1を光走査素子5に入力して、光走査素子5の反射ミラー5aを非共振モードで強制的に駆動する。
そして、光走査装置1は、画像信号Sに応じて光出射部3から出射した光を光走査素子5の反射ミラー5aによって走査する。なお、駆動処理部10は、基礎波形記憶部11から鋸波形信号S10のデータを読み出して駆動信号S1を駆動信号生成部16により生成させる処理を繰り返すことにより鋸波形の駆動信号S1を駆動信号生成部16から連続して出力するようにしており、これにより光出射部3から出射された光が連続して所定方向に光走査素子5により繰り返し走査されることになる。
このように本実施形態に係る光走査装置1では、光走査素子5の反射ミラー5aを非共振モードで強制的に駆動する駆動信号S1であって、鋸波形信号S10にローパスフィルタ処理及びノッチフィルタ処理を行なった駆動信号S1を生成する駆動信号発生器6を有している。
特に、この駆動信号発生器6は、鋸波形信号S10にローパスフィルタ処理を施した基礎波形信号S11のデータを予め基礎波形記憶部11に記憶しておき、この基礎波形信号S11にノッチフィルタ処理及びローパスフィルタ処理を行なって駆動波形信号S12を生成する。
従って、駆動信号発生器6によるローパスフィルタ処理の演算時間を省略又は低減することができる。特に、高次のローパスフィルタ処理(例えば、上述した20次のローパスフィルタ処理。)を行なうときに必要となる膨大な演算時間を省略又は低減することができる。
しかも、フィルタ部12は、フィルタ特性調整部13により調整したパラメータでノッチフィルタ処理を行なって基礎波形信号S11を生成するようにしている。これにより、ローパスフィルタ処理に比べてパラメータを変動させる必要性が高いノッチフィルタ処理を、必要に応じて変動させたパラメータで行なうことができる。しかも、フィルタ特性調整部13が決定するパラメータを光走査素子5固有の共振特性に応じたパラメータとすることにより、光走査素子5固有の共振周波数に個体差があるときにでも、その対応が可能となる。
フィルタ部12によりノッチフィルタ処理を行なうことで、記憶容量の低減を図ることができる。すなわち、ローパスフィルタ処理及びノッチフィルタ処理を施したデータを予め記憶手段に記憶する場合には、異なるパラメータでノッチフィルタ処理を施したデータが複数必要となる。しかし、本実施形態においては駆動信号S1を生成する際にノッチフィルタ処理を行なうので、記憶手段に記憶するデータ量を低減することができる。
このように、本実施形態に係る駆動信号発生器6では、フィルタ部12でノッチフィルタ処理を行い、しかも、フィルタ特性調整部13でそのノッチフィルタ処理に用いるノッチフィルタ12aの減衰域の中心周波数foの調整を行うようにしており、以下に具体的に中心周波数foの調整方法を説明する。
(中心周波数foの調整方法の原理)
まず、ノッチフィルタ12aの中心周波数foの調整方法について、その原理を説明する。
ガルバノミラーなどの光走査素子は、反射ミラーの揺動振幅(揺動角)θの大きさにその固有の共振周波数frが変化する。
従って、反射ミラーの揺動振幅θを変化させたときに、光走査素子の反射ミラーの揺動時に生じる共振振動成分(以下、「リンギング」と呼ぶ。)の大きさがどのように変化するかを検出することにより、光走査素子固有の共振周波数frとノッチフィルタにおける減衰域の中心周波数foとがどのようにずれているかを検出することができる。
例えば、光走査素子が図5に示すように反射ミラーの揺動振幅θが大きくなるほど共振周波数frが低くなる特性を有しているとする。
このような特性を有する光走査素子において、例えば、反射ミラーの揺動振幅θをレーザ光を走査するときの揺動振幅(以下、「走査時の揺動振幅」とする。)にするために反射ミラーの揺動振幅θを大きくしていったときにリンギングの振幅(以下、「リンギング振幅」と呼ぶ。)が小さくなっていけば、走査時の揺動振幅での共振周波数frは中心周波数foよりも低い周波数であることがわかる。従って、このとき、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを下げることにより、中心周波数foが共振周波数frに近づくことになる。
一方、反射ミラーの揺動振幅θを大きくしていったときにリンギング振幅が大きくなっていけば、走査時の揺動振幅での共振周波数frは中心周波数foよりも高い周波数であることがわかる。従って、このとき、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを上げることにより、中心周波数foが共振周波数frに近づくことになる。
また、光走査素子5が図6に示すように反射ミラーの揺動振幅θが大きくなるほど共振周波数frが高くなる特性を有しているとする。
このような特性を有する光走査素子5において、反射ミラーの揺動振幅θを走査時の揺動振幅にするために反射ミラーの揺動振幅θを大きくしていったときにリンギング振幅が小さくなっていけば、走査時の揺動振幅での共振周波数frは中心周波数foよりも高い周波数であることがわかる。従って、このとき、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを上げることにより、中心周波数foが共振周波数frに近づくことになる。
一方、反射ミラーの揺動振幅θを大きくしていったときにリンギング振幅が大きくなっていけば、走査時の揺動振幅での共振周波数frは中心周波数foよりも低い周波数であることがわかる。従って、このとき、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを下げることにより、中心周波数foが共振周波数frに近づくことになる。
以下、ノッチフィルタ12aの中心周波数foの調整方法について図7を参照して具体的に説明する。なお、光走査素子5の反射ミラー5aの揺動振幅θが大きくなるほど共振周波数frが低くなる特性を有しているものとする。また、基礎波形信号S11として、反射ミラー5aの揺動振幅θがそれぞれ4度,8度,12度,16度,20度,24度となるような駆動信号S1を生成するための第1〜第6の基礎波形信号S11が基礎波形記憶部11に記憶されているものとし、光出射部3から出射するレーザ光を走査する際に揺動させる反射ミラー5aの揺動振幅(走査時の揺動振幅)は24度であるとする。駆動処理部10は、かかる第1〜第6の基礎波形信号S11をタイミングを変えて読み出して、反射ミラー5aの揺動振幅θを変更する振幅変更手段として機能する。
まず、駆動処理部10は、光走査素子5の駆動を開始し、反射ミラー5aの揺動振幅(揺動角)θを4度で揺動させる。すなわち、駆動処理部10は、基礎波形記憶部11、フィルタ部12、駆動波形記憶部15及び駆動信号生成部16を制御して、反射ミラー5aの揺動振幅θが4度となるような駆動信号S1を駆動信号生成部16から光走査素子5に出力させる(ステップS31)。
このステップS31の具体的な動作は次の通りである。まず、駆動処理部10は、基礎波形記憶部11から第1の基礎波形信号S11を読み出して、フィルタ部12に入力する。このフィルタ部12において基礎波形信号S11にノッチフィルタ処理及びローパスフィルタ処理を施した駆動波形信号S12が生成され、駆動処理部10はこの駆動波形信号S12のデータを駆動波形記憶部15に記憶する。駆動処理部10は、駆動波形記憶部15に記憶した駆動波形信号S12のデータを所定クロックで読み出して、駆動信号生成部16に入力する。駆動信号生成部16では、駆動波形信号S12のデータを繰り返しアナログ変換することで周期的な駆動信号S1を繰り返し生成して出力し、光走査素子5を駆動する。
このように光走査素子5の駆動を開始した後、リンギング検出部14は、光走査素子5のリンギングの振幅を検出する(ステップS32)。すなわち、リンギング検出部14は、光走査素子5の反射ミラー5aの揺動波形を取得し、この揺動波形に含まれるリンギング波形をバンドパスフィルタ処理等により抽出し、当該リンギング波形の振幅(リンギング振幅)を検出してフィルタ特性調整部13へ出力する。フィルタ特性調整部13はこのリンギング振幅の情報を内部の記憶部に記憶する。なお、反射ミラー5aの揺動信号波形S20の取得は、例えば、反射ミラー5aを駆動する梁部材の変位を圧電素子等で検出し、この圧電素子が生成する電圧をリンギング検出部14で検出することによって行うことができる。なお、リンギング振幅を取得することができれば、かかる構成に限らずどのような構成であってもよい。例えば、電極を反射ミラー5aの底部等に取り付け、当該電極に対向する光走査素子5の本体に電極を取り付けて、これらの電極間に生じる静電容量を検出するようにすることで反射ミラー5aの揺動信号波形S20を取得し、当該揺動信号波形S20に含まれるリンギング振幅を検出することができる。
次に、駆動処理部10は、反射ミラー5aの揺動振幅(揺動角)θを4度アップする(ステップS33)。すなわち、駆動処理部10は、基礎波形記憶部11から揺動振幅θを4度アップする基礎波形信号S11を読み出し、フィルタ部12によりフィルタ処理を実行して駆動波形信号S12を生成し、そのデータを駆動波形記憶部15に記憶する。そして、駆動信号生成部16を制御して、駆動波形記憶部15に記憶した駆動波形信号S12から駆動信号S1を光走査素子5に出力させる。
次に、リンギング検出部14は、ステップS32の処理と同様に、光走査素子5のリンギング振幅を検出し、当該検出結果をフィルタ特性調整部13へ出力する(ステップS34)。
駆動処理部10は、上記ステップS33の処理が、反射ミラー5aの揺動振幅(揺動角)θが24度となるまで繰り返されたか否かを判定する(ステップS35)。この処理において、反射ミラー5aの揺動振幅θが24度となっていないと判定すると(ステップS35:NO)、駆動処理部10は、ステップS33へ処理を戻す。
一方、駆動処理部10が、反射ミラー5aの揺動振幅θが24度となっていると判定すると(ステップS35:YES)、フィルタ特性調整部13は、駆動処理部10による要求に従ってリンギング振幅が極小になる角度があるか否かを判定する(ステップS36)。すなわち、フィルタ特性調整部13は、ステップS32,S34にてリンギング検出部14から出力され、内部の記憶部に記憶したリンギング振幅の情報を読み出して、反射ミラー5aの揺動振幅θが4度から24度までの間で、リンギング振幅が極小になる角度があるか否かを判定する。例えば、図8に示すように、反射ミラー5aの揺動振幅θが4度から24度まで変化する過程で、光走査素子5固有の共振周波数frがノッチフィルタ12aの中心周波数foを通過する場合、フィルタ特性調整部13内に記憶したリンギング振幅は、図9に示すように変化するため、極小値があると判定される。
ステップS36において、リンギング振幅が極小になる角度があると判定すると(ステップS36:YES)、フィルタ特性調整部13は、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを低くする設定処理を行う(ステップS37)。中心周波数foの低減量は、予め設定された量でもよいが、極小値となった揺動振幅θの角度に応じた量とすることもできる。
一方、リンギング振幅が極小になる角度がないと判定すると(ステップS36:NO)、フィルタ特性調整部13は、振幅増大過程でリンギング振幅が順次減少するか否かを判定する(ステップS38)。すなわち、フィルタ特性調整部13は、ステップS32,S34にてリンギング検出部14から出力され、内部の記憶部に記憶したリンギング振幅値を読み出して、反射ミラー5aの揺動振幅θが4度から24度へ増加するに従って、リンギング振幅が低減していくか否かを判定する。例えば、図10に示すように、反射ミラー5aの揺動振幅θが4度から24度まで変化する過程で、光走査素子5固有の共振周波数frがノッチフィルタ12aの中心周波数foを通過しないものの、共振周波数frが中心周波数foに近づくとき、フィルタ特性調整部13内に記憶したリンギングの振幅値は、図11に示すように変化するため、振幅増大過程でリンギング振幅が順次減少すると判定する。
ステップS38において、幅増大過程でリンギング振幅が順次減少せず、順次増加すると判定すると(ステップS38:NO)、フィルタ特性調整部13はノッチフィルタ12aの中心周波数foを高くする設定処理を行う(ステップS39)。中心周波数foの増加量は、予め設定された量でもよいが、リンギング振幅の減少変化の度合いに応じた量とすることもできる。
一方、ステップS38において、振幅増大過程でリンギング振幅が順次減少すると判定すると(ステップS38:YES)、フィルタ特性調整部13は、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを低くする設定処理を行う(ステップS40)。例えば、図12に示すように、反射ミラー5aの揺動振幅θが4度から24度まで変化する過程で、光走査素子5固有の共振周波数frがノッチフィルタ12aの中心周波数foから離れていくとき、フィルタ特性調整部13内にその情報を記憶したリンギング振幅は、図13に示すように変化するため、振幅増大過程でリンギング振幅が順次増加すると判定する。中心周波数foの増加量は、予め設定された量でもよいが、リンギング振幅の増加変化の度合いに応じた量とすることもできる。
ステップS37,S39,S40の処理が終了すると、駆動処理部10は、駆動信号S1の出力を停止して(ステップS41)、中心周波数foの調整処理を終了する。
このように、本実施形態に係る光走査装置1の駆動信号発生器6では、揺動振幅θを順次増大させたときに、リンギング振幅の増減を検出し、当該検出結果に応じてノッチフィルタ12aにおける減衰域の中心周波数foを調整する。
従って、光走査素子5の反射ミラー5aを非共振モードで強制的に駆動する駆動信号S1をノッチフィルタ12aを用いて生成する際に、当該ノッチフィルタ12aにおける減衰域の中心周波数foを変化させていきながらそのリンギング振幅を検出して、中心周波数foを調整していくのに比べ、高速な調整を行うことができる。
また、光走査素子5の反射ミラー5aの揺動を開始し、反射ミラー5aを所定揺動振幅(ここでは、光走査時の揺動振幅である24度)にするまでの間で行うことで、反射ミラーの揺動開始時に併せて行うことができ、その調整処理により発生する消費電力を低減することができる。さらに、光走査素子5によるレーザ光の走査の精度をその走査開始時から高めることができる。
また、フィルタ特性調整部13において、光走査素子5の特性に応じてノッチフィルタ12aのパラメータを動的に決定するので、修理等で光走査素子5を交換したときや光走査装置1を生産するときの作業等を容易に行なうことができる。
また、中心周波数foの調整処理は、操作部7へ所定の操作がされたときに実行されるようにしてもよい。必要に応じて中心周波数foの調整処理を実行させることで消費電力を抑えることができ、しかも、レーザ光の走査中にリンギングの影響がでてしまうことを防止することができる。
上述においては、反射ミラー5aの揺動振幅を順次増加させてリンギング振幅の変化を検出するようにしたが、反射ミラー5aの揺動振幅を順次減少させてリンギング振幅の変化を検出するようにしてもよい。この場合、ステップS31において、反射ミラー5aの揺動振幅θを光走査時の揺動振幅である24度とし、ステップS33で反射ミラーの揺動振幅θを4度だけダウンさせ、ステップS35において反射ミラーの揺動振幅θが4度になったか否かを判定する。そして、ステップS35で反射ミラーの揺動振幅θが4度になったと判定すると(ステップS35:YES)、ステップS36からの処理が行われる一方、反射ミラーの揺動振幅θが4度になっていないと判定すると(ステップS35:NO)、再度ステップS33からの処理を行う。そして、ステップS36’において、フィルタ特性調整部13は、振幅減少過程でリンギング振幅が極小になる角度があるか否かを判定し、極小になる角度があると判定すると(ステップS36’;YES)、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを低くする設定処理を行う(ステップS37’)。一方、リンギング振幅が極小になる角度がないと判定すると(ステップS36’:NO)、フィルタ特性調整部13は、振幅減少過程でリンギング振幅が順次減少するか否かを判定する(ステップS38’)。このとき、振幅減少過程でリンギング振幅が順次減少せず、順次増加すると判定すると(ステップS38’:NO)、フィルタ特性調整部13はノッチフィルタ12aの中心周波数foを低くする設定処理を行う(ステップS39’)。一方、振幅減少過程でリンギング振幅が順次減少すると判定すると(ステップS38’:YES)、フィルタ特性調整部13は、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを高くする設定処理を行う(ステップS40’)。
このように反射ミラー5aの揺動振幅を順次減少させてリンギング振幅の変化を検出することで、例えば、光走査装置1を動作状態から停止状態に移行するときに、ノッチフィルタ12aにおける減衰域の中心周波数foの調整を行うことができる。すなわち、反射ミラーの揺動終了時に併せて行うことができ、当該中心周波数foの調整処理により発生する消費電力を低減することができる。
また、光走査素子5によるレーザ光の走査範囲を変更することなく揺動振幅θのみを変更して、当該調整処理を行うようにしてもよい。このようにすることで、例えば、レーザ光の走査を連続して行うときにおいて、周囲温度等により光走査素子5固有の共振周波数frが変化したときであっても、ノッチフィルタ12aの中心周波数foの調整を行うことが可能となり、レーザ光の走査を精度よく行うことができる。
ここで、光走査素子5によるレーザ光を走査中に、揺動振幅θのみを変更する際の中心周波数foの調整処理の流れを図14を参照して説明する。なお、光走査素子5が反射ミラー5aの揺動振幅θが大きくなるほど共振周波数frが低くなる特性を有しているものとする。また、基礎波形信号S11として、反射ミラー5aの揺動振幅θがそれぞれ24度,28度となるような駆動信号S1を生成するための第6及び第7の基礎波形信号S11が基礎波形記憶部11に記憶されているものとし、光出射部3から出射するレーザ光を走査する際に揺動させる反射ミラー5aの揺動振幅(光走査時の揺動振幅)は24度であるとする。
駆動処理部10は、光走査素子5の反射ミラー5aの揺動振幅(揺動角)θを24度で揺動させて、光出射部3から出射されるレーザ光を反射ミラー5aで走査している状態で、リンギング検出部14により、ステップS32と同様に、光走査素子5のリンギング振幅を検出する(ステップS51)。その後、駆動処理部10は、ステップS33の処理と同様に、反射ミラー5aの揺動振幅(揺動角)θを4度アップし(ステップS52)、さらに光出射部3からの出射タイミングを変更し、光出射部3からのレーザ光の出射が反射ミラー5aの揺動振幅θのうち24度までの間となるようにする(ステップS53)。その後、フィルタ特性調整部13は、ステップS38と同様に、振幅増大過程でリンギング振幅が順次減少するか否かを判定する(ステップS54)。この処理において、振幅増大過程でリンギング振幅が順次減少すると判定すると(ステップS54:YES)、ステップS39の処理と同様に、フィルタ特性調整部13は、ノッチフィルタ12aの中心周波数foを高くする設定処理を行う(ステップS55)。一方、幅増大過程でリンギング振幅が順次減少せず、順次増加すると判定すると(ステップS54:NO)、ステップS40と同様に、フィルタ特性調整部13はノッチフィルタ12aの中心周波数foを低くする設定処理を行う(ステップS56)。ステップS55,S56の処理が終了すると、駆動処理部10は、反射ミラー5aの揺動振幅(揺動角)θを4度ダウンして(ステップS47)、中心周波数foの調整処理を終了する。
なお、上述においては、反射ミラー5aの揺動振幅θが大きくなるほど共振周波数frが低くなる特性を有する光走査素子5を例に挙げて説明したが、反射ミラー5aの揺動振幅θが大きくなるほど共振周波数frが高くなる特性を有する光走査素子5においても同様の調整処理を行うことができる。この場合、例えば、図7に示す調整処理では、ステップS39の処理とステップS40の処理を入れ替え、また、図14に示す調整処理では、ステップS55の処理とステップS56の処理を入れ替えればよい。
[2.画像表示装置]
次に、本発明の駆動信号発生器を画像表示装置に適用した例について説明する。ここでは、画像表示装置の一例として網膜走査ディスプレイについて説明する。この網膜走査ディスプレイは、走査した画像光をユーザの少なくとも一方の眼の網膜に投射してユーザに画像を視認させる画像表示装置である。
本実施形態に係る網膜走査ディスプレイ100では、後述する垂直駆動信号発生器93が上述する駆動信号発生器6に対応するものであり、同様の動作をするものであり、まず、網膜走査ディスプレイ100の概略構成について説明した後に、垂直駆動信号発生器93を中心としてその動作を説明する。
(網膜走査ディスプレイ100の概略構成)
図15に示すように、網膜走査ディスプレイ100は、信号供給回路18と、光出射部20と、走査部30と、操作部40と、光ファイバケーブル50と、ハーフミラー31とを備えて構成される。
信号供給回路18は、画像信号Sに基づいて、画像を形成するための要素となる各信号を画素単位で生成する。すなわち、信号供給回路18は、画像信号Sに基づいて、R(赤色)駆動信号60r,G(緑色)駆動信号60g,B(青色)駆動信号60bを生成して出力し、また、信号供給回路18は、水平走査部80を制御する水平制御信号61と、垂直走査部90を制御する垂直制御信号62とをそれぞれ出力する。
光出射部20では、信号供給回路18から出力される信号に応じて強度変調されたレーザ光(以下、「画像光」ともいう。)を出射する。具体的には、Rレーザドライバ66,Gレーザドライバ67,Bレーザドライバ68により各駆動信号60r,60g,60bに応じた強度のレーザ光をRレーザ63,Gレーザ64,Bレーザ65から出射させる。各レーザ63,64,65より出射されたレーザ光はコリメート光学系71,72,73により平行光にコリメートされ、ダイクロイックミラー74,75,76により、各レーザ光が波長に関して選択的に反射・透過されて結合光学系77に達し、集光されて光ファイバケーブル50へ出射される。
走査部30では、光出射部20から出射されたレーザ光を2次元走査する。具体的には、光出射部20から光ファイバケーブル50を介して出射されたレーザ光をコリメート光学系79で平行光化した後、このレーザ光を水平走査部80及び垂直走査部90で水平方向及び垂直方向に2次元走査し、第2リレー光学系95を介して瞳孔101aへ向けて出射する。このレーザ光により網膜101b上に画像信号Sに応じた画像が投影され、ユーザは画像信号Sに応じた画像を認識する。
なお、第2リレー光学系95から出射されるレーザ光は、眼101の前方に位置させたハーフミラー31で反射され、また、外光200はハーフミラー31を透過してユーザの瞳孔101aに入射させるようにしており、これによりユーザは外光に基づく外景にレーザ光に基づく画像を重ねた画像を視認することができる。また、第2リレー光学系95においては、レンズ95aによって、それぞれの走査光はその中心線を相互に略平行にされ、かつそれぞれ収束レーザ光に変換される。つまりレンズ95aはテレセントリックな光学系となっている。そして、レンズ95bによってそれぞれほぼ平行なレーザ光となると共に、これらのレーザ光の各中心線がユーザの瞳孔101aに収束するように変換される。また、水平走査部80と垂直走査部90との間でレーザ光を中継する第1リレー光学系85は、水平走査部80における光走査素子81の反射ミラーによって水平方向に走査されたレーザ光を垂直走査部90における光走査素子91の反射ミラーに収束させる機能を有している。なお、レンズ95bは投射部として、走査部30によって走査されたレーザ光をユーザの眼101に入射させて、前記ユーザの網膜101b上に画像信号Sに応じた画像を投影する接眼光学系として機能する。
ここで、水平走査部80は、表示すべき画像の1走査線ごとに、レーザ光を水平方向に水平走査する光学系であり、ガルバノミラーなどの反射ミラー82を有する共振型の光走査素子81(第2光走査素子の一例)と、この光走査素子81を共振駆動する水平駆動信号発生器83(第2駆動手段の一例)と、光走査素子81の反射ミラー82の揺動状態を検出する揺動検出回路84とを備えている。また、垂直走査部90は、表示すべき画像の1フレームごとに、レーザ光を最初の水平走査線から最後の水平走査線に向かって垂直に垂直走査する光学系であり、ガルバノミラーなどの反射ミラー92を有する光走査素子91(光走査素子の一例)と、この光走査素子91の反射ミラー92を非共振状態で揺動させる駆動信号S101を垂直制御信号62に基づいて生成する垂直駆動信号発生器93を備えている。なお、光走査素子81,91は、ここではガルバノミラーを用いることとするが、レーザ光を走査するようにその反射ミラー(偏向面)を揺動又は回転させられるものであれば、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等いずれの駆動方式によるものであってもよい。
図16には、水平走査部80及び垂直走査部90の光走査素子81,91による最大走査範囲W(図16に示す水平走査最大範囲Xa及び垂直走査最大範囲Yaにより形成される範囲)と有効走査範囲Z(図16に示す水平有効走査範囲X1及び垂直有効走査範囲Y1により形成される範囲)との関係が示されている。ここで、「最大走査範囲」とは、水平走査部80の光走査素子81及び垂直走査部90の光走査素子91が画像光を走査できる最大の範囲を意味する。
水平駆動信号発生器83,垂直駆動信号発生器93は、信号供給回路18より出力される水平制御信号61,垂直制御信号62に基づいて、光走査素子81,91を駆動する。そして、光走査素子81及び光走査素子91の最大走査範囲Wのうち、有効走査範囲Zに光走査素子81及び光走査素子91の走査位置があるタイミングで光出射部20から画像信号に応じて強度変調された画像光が出射される。これにより、光走査素子81及び光走査素子91によって画像光が有効走査範囲Zで走査され、1フレーム分の画像光が有効走査範囲Z内で走査される。この走査が1フレームの画像ごとに繰り返される。なお、図16には、光出射部20から画像光が常時出射されたと仮定したときに光走査素子81及び光走査素子91によって走査される画像光の軌跡γが仮想的に示されている。ただし、光走査素子81による水平走査方向Xの走査数は、1フレームあたり数百又は千程度あり、図16では画像光の軌跡γを簡略して記載している。
(垂直駆動信号発生器93の構成及び動作)
ここで、網膜走査ディスプレイ100の特徴的部分である垂直駆動信号発生器93の構成及び動作を中心に、以下図17を参照して詳細に説明する。
垂直駆動信号発生器93は、光走査素子91の反射ミラー92を非共振モードで強制的に駆動する駆動信号であって、直線変化する鋸波形信号にローパスフィルタ処理及びノッチフィルタ処理を行なった駆動信号S101を生成し、光走査素子91の反射ミラー92を鋸波状に揺動(図16参照)するものであり、以下のように構成される。
すなわち、図17に示すように、垂直駆動信号発生器93は、駆動処理部170と、基礎波形記憶部171と、フィルタ部172、フィルタ特性調整部173、リンギング検出部174、駆動波形記憶部175、駆動信号生成部176を備えている。なお、駆動処理部170と、基礎波形記憶部171、フィルタ部172、フィルタ特性調整部173、リンギング検出部174、駆動波形記憶部175及び駆動信号生成部176は、それぞれ駆動処理部10、基礎波形記憶部11、フィルタ部12、フィルタ特性調整部13、リンギング検出部14、駆動波形記憶部15及び駆動信号生成部16と同様の処理を行うものである。
基礎波形記憶部171には、鋸波形信号S10と同様に直線変化する鋸波形信号に、ローパスフィルタ処理(例えば、18次のローパスフィルタによるフィルタ処理)を施した基礎波形信号S111のデータを予め記憶させている。基礎波形記憶部171に記憶した基礎波形信号S111のデータは駆動処理部170により読み出されてフィルタ部172に入力される。フィルタ部172は、この基礎波形信号S111に所定のパラメータ(中心周波数foや尖鋭度Q)でノッチフィルタ処理を行なって駆動波形信号S112を生成する。
ここで、フィルタ部172で用いるパラメータのうち中心周波数foは、フィルタ特性調整部173で決定されて、フィルタ部172へ入力される。このフィルタ特性調整部173が決定する中心周波数foは光走査素子91固有の共振特性に応じた中心周波数foとしており、光走査素子91固有の共振周波数に個体差があるときにでも、その対応が可能としている。
このフィルタ特性調整部173は、リンギング検出部174から出力される光走査素子91のリンギング波形に基づいて、フィルタ部172の中心周波数foを決定する。このフィルタ特性調整部173は、上記光走査装置1のフィルタ特性調整部13と同様に、中心周波数foの調整処理を実行可能としており、この処理によりノッチフィルタ172aにおける減衰域の中心周波数foを決定可能としている。なお、中心周波数foの調整処理は、フィルタ特性調整部13の処理と同様の処理であり、ここでの説明は省略する。
リンギング検出部174は、光走査素子91の反射ミラー92の揺動信号波形S120を取得し、この揺動信号波形S120に含まれるリンギングの波形をバンドパスフィルタ処理等により抽出し、当該リンギング振幅の情報をフィルタ特性調整部173へ出力する。なお、反射ミラー92の揺動信号波形S120の取得は、例えば、反射ミラー92を駆動する梁部材の変位を圧電素子等で検出し、この圧電素子が生成する電圧をリンギング検出部174で検出することによって行うことができる。なお、リンギング振幅を取得することができれば、かかる構成に限らずどのような構成であってもよい。例えば、電極を反射ミラー92の底部等に取り付け、当該電極に対向する光走査素子91の本体に電極を取り付けて、これらの電極間に生じる静電容量を検出するようにすることで反射ミラー92の揺動信号波形S120を取得し、当該揺動信号波形S120に含まれるリンギング振幅を検出することができる。
駆動信号生成部176は、駆動波形信号S112のデータを所定の周波数のクロックCLK0で駆動波形記憶部175から読み出して内部のD/A変換器によりアナログ変換することにより駆動信号S101を生成する。ここで、クロックCLK0は、信号供給回路18により生成されて駆動信号生成部176へ通知されるクロック信号である。信号供給回路18は、揺動検出回路84により検出した光走査素子81の揺動周波数に基づいて、クロックCLK0を生成して駆動信号生成部176へ通知する。これにより水平走査周波数が変わったことにより垂直走査周波数(フレーム周波数)を変えなければならないときでも、基礎波形記憶部171に記憶する鋸波形信号S110のデータを変える必要がなくなり、記憶容量の増加を抑制することができる。
なお、駆動処理部170は、クロックCLK0の周波数が所定値以上変動すると、基礎波形信号S111のデータをクロックCLK0で基礎波形記憶部171から読み出して、フィルタ部172へ入力し、当該フィルタ部172から出力される駆動波形信号S112のデータを駆動波形記憶部175に記憶して、駆動波形信号S112を更新する。これにより、リンギングを精度よく抑制する駆動信号S101を駆動信号生成部176から出力させることができる。
その後、駆動信号生成部176は生成した駆動信号S101を光走査素子91に入力して、光走査素子91の反射ミラー92を非共振モードで強制的に駆動する。
駆動処理部170は、基礎波形記憶部171から鋸波形信号S110のデータを読み出して駆動信号S101を生成する処理を連続して繰り返すことにより複数の鋸波状の駆動信号S101を出力するようにしており、これにより光出射部20から出射されたレーザ光が連続して垂直方向に繰り返し走査される。
なお、網膜走査ディスプレイ100では、信号供給回路18からの垂直制御信号62に基づき、垂直駆動信号発生器93におけるフィルタ部172の中心周波数foの調整処理(図7に示す処理と同様の処理)を実行する。ここでは、光出射部20から画像信号Sに応じたレーザ光を出射する前であって垂直駆動信号発生器93によって光走査素子91の駆動を開始した直後に中心周波数foの調整処理を行い、かかる調整によりフィルタ部172の中心周波数foが設定された後に、光出射部20から画像信号Sに応じたレーザ光を出射する。また、光出射部20から画像信号Sに応じたレーザ光の出射が停止した後、光走査素子91の駆動を終了するときに行うようにしてもよい。
また、操作部40へのユーザによる操作があったときに、信号供給回路18からの垂直制御信号62に基づき、垂直駆動信号発生器93におけるフィルタ部172の中心周波数foの設定を実行させる。また、網膜走査ディスプレイ100において有効走査範囲で画像光を走査しているときに、有効走査範囲のサイズを維持しつつ反射ミラー92の揺動範囲を大きくして、フィルタ部172の中心周波数foの設定を実行させるようにしてもよい(図14に示す処理と同様の処理)。
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態の駆動信号発生器6及びそれを備えた光走査装置1並びに垂直駆動信号発生器93を備えた画像表示装置によれば、以下の効果が期待できる。
(1)周期的な駆動信号を生成するための基礎波形信号S11,S111のデータを記憶する基礎波形記憶部11,171と、この基礎波形記憶部11,171から基礎波形信号S11,S111のデータを読み出し、当該基礎波形信号S11,S111にノッチフィルタ処理を行なって駆動波形信号を生成するフィルタ部12,172と、フィルタ部12,172で生成した駆動波形信号のデータを記憶する駆動波形記憶部15,175と、前記駆動波形信号のデータを前記駆動波形記憶部15,175から読み出してアナログ変換することにより駆動信号S1,S101を生成する駆動信号生成部16,176とを備え、駆動信号S1,S101により光走査素子の反射ミラーを非共振モードで強制的に揺動させる駆動信号発生器6,93であって、駆動信号S1,S101の振幅を変化させて駆動信号生成部16,176から出力させ、反射ミラー5a,92の揺動振幅を変化させる振幅変更手段として機能する駆動処理部10,170と、この駆動処理部10,170によって反射ミラー5a,92をその振幅を変化させながら揺動させているときに、光走査素子5,91の固有共振によるリンギングの振幅を検出するリンギング検出部14,174と、リンギング検出部14,174で検出したリンギングの振幅に応じて、ノッチフィルタ12a,172aにおける減衰域の中心周波数を調整するフィルタ特性調整部13,173とを備えたので、光走査素子5,91の反射ミラー5a,92を非共振モードで強制的に駆動する駆動信号S1,S101をノッチフィルタ12a,172aを用いて生成する際に、当該ノッチフィルタ12a,172aの中心周波数foを迅速に調整することができる。
(2)フィルタ特性調整部13,173は、駆動処理部10,170によって反射ミラー5a,92をその振幅を順次増加又は順次減少させながら揺動させたときに、リンギング検出部14,174で検出したリンギングの振幅が途中で極小となった場合には、中心周波数foを変更するので、反射ミラー5a,92の振幅の増加過程或いは減少過程で中心周波数foを調整することが可能となる。
(3)また、光走査素子5,91は、その固有の共振周波数が反射ミラー5a,92の振幅の増加に応じて減少するものであり、フィルタ特性調整部13,173は、駆動処理部10,170によって反射ミラー5a,92をその振幅を順次増加又は順次減少させながら揺動させたときに、リンギング検出部14,174で検出したリンギングの振幅が途中で極小となった場合には、中心周波数foを下げるので、当該中心周波数foがずれていることを確実に検出して調整することが可能となる。
(4)また、光走査素子5,91は、その固有の共振周波数が反射ミラー5a,92の振幅の増加に応じて増加するものであり、フィルタ特性調整部13,173は、駆動処理部10,170によって反射ミラー5a,92をその振幅を順次増加又は順次減少させながら揺動させたときに、リンギング検出部14,174で検出したリンギングの振幅が途中で極小となった場合には、中心周波数foを上げるので、当該中心周波数foがずれていることを確実に検出して調整することが可能となる。
(5)また、光走査素子5,91は、その固有の共振周波数が反射ミラー5a,92の振幅の増加に応じて減少するものであり、フィルタ特性調整部13,173は、駆動処理部10,170によって反射ミラー5a,92の振幅を増加させて揺動させたときに、リンギング検出部14,174で検出したリンギングの振幅が増加する場合には、ノッチフィルタ12a,172aの中心周波数を上げるので、反射ミラー5a,92をすくなくとも2つの揺動範囲で揺動させることにより、中心周波数foの調整が可能となる。
(6)また、光走査素子5,91は、その固有の共振周波数が反射ミラー5a,92の振幅の増加に応じて増加するものであり、フィルタ特性調整部13,173は、駆動処理部10,170によって反射ミラー5a,92の振幅を増加させて揺動させたときに、駆動処理部10,170で検出したリンギングの振幅が増加する場合には、ノッチフィルタ12a,172aの中心周波数を下げるので、反射ミラー5a,92をすくなくとも2つの揺動範囲で揺動させることにより、中心周波数foの調整が可能となる。
(7)また、フィルタ特性調整部13,173は、光走査素子5,91の反射ミラーの揺動開始時に、ノッチフィルタ12a,172aの中心周波数foの調整を行うので、光走査素子5,91によるレーザ光の走査の精度をその走査開始時から高めることができる。
(8)また、ノッチフィルタ12a,172aの中心周波数foの調整を開始するための操作部7,40を備え、フィルタ特性調整部13,173は、操作部7,40が操作されたときに、ノッチフィルタ12a,172aの中心周波数の調整を行うので、必要に応じて調整処理が行うことで消費電力を抑えることができる。